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Title 酸化物半導体における点欠陥の電子構造と機能 : -第一原理計算によるアプローチ

Author(s) 大場, 史康

Citation セラミックス (2011), 46(6): 490-494

Issue Date 2011-06-01

URL http://hdl.handle.net/2433/193956

Right © 2011 日本セラミックス協会

Type Journal Article

Textversion publisher

Kyoto University

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特集 セラミックス計算材料設計の進展

酸化物半導体における点欠陥の電子構造と機能一第一原理計算によるアプローチElectronic Structure and Functions of Point Defects in Oxide Semiconductors: A First Principles Approach Key-words ZnO. S1 TiO:i. Fi1 st p1 inciples. ab i111tiθ. Point defect.

Semiconducto1. Defect level

大場史康Fumiyasu OBA (Kyoto University)

1.はじめに

酸化物半導体における点欠陥は, ドーパント添加・

無添加系のいずれにおいても諸特性を決定する上で重

要な役割を担う 酸化物などの化合物では,複数のサ

イトにおける空孔や格子問原子,アンチサイ ト原子と

いった多様な欠陥種が存在しさらに各欠陥がフェル

ミレベルに応じてさまざまな電荷状態をとることで自

由度が増す その結果として多彩な欠陥由来の電子状

態が生じ,興味深い電気的,光学的,磁気的機能をも

たらしている 酸化物半導体中の点欠陥は, このよう

な重要性から数多 くの研究の対象となってきた しか

しながら,点欠陥の実験によ る直接的な検出や評価は

容易でなく ,ZnOやSrTi03などの代表的な系につい

てさえ,その原子 ・電子レベルでの理解は十分になさ

れていない

点欠陥の原子 ・電子構造の理解には,計算科学的ア

プローチも有効で、ある とくに第一原理計算を用いた

研究が近年盛んに行われており, 有益な知見を与えて

いる 本稿では, ZnOおよびSrTi03中の点欠陥の原

子 ・電子構造や点欠陥由来の機能に関する筆者らの最

近の研究を紹介する Il.21.

2. ZnO中の点欠陥一高精度計算に基づいた再

検討

ZnOは典型的な機能性セラミックスと して,パリ

スタや触媒,ガスセンサーなど,さまざまな用途に用

いられてきた また,最近では酸化物半導体として。

その高いn型伝導性 と可視光透過性を前かした透明

490

電極,jJ-nヘテロ接合やホモ接合を用いた紫外発光素

子などが活発に研究されている:JI. このよ うな応用に

おいて.点欠陥の性質の理解や制維IIは本質的であ り,

ZnO 中の点欠陥は古くから基礎研究の対象となって

きた しかし,ZnOの還元によ りn型伝導性をもた

らす点欠陥種については,0空孔,格子間 Zn.合成

時に混入 した不純物など,さまざまな候補が挙げられ

ており. 未だに統一的な見解が得られていない 第一

原理計算による検討も多数なされているが, 通常用い

られる局所密度近似 (LDA) や一般化勾 配近似

(GGA)などの密度汎関数理論への近似を ZnOに適

用した場合,後述のように 3.4eVのバンドギャップが

114程度に過小評価されるなど,電子構造の再現性が

極めて悪い.そこで,これらの近似によ り得られた点

欠陥の形成エネルギーや準位に,経験的な補正を加え

ることが広く行われている しかし, 補正のモデルに

依存して, 定性的にも異なるさまざまな結果が報告さ

れているのが現状である。 このよ うな中.筆者らはハ

イブリッ ド・ハー トリ ー フォア ク密度汎関数 (/\イ

ブリッド汎関数)と 3次元周期的境界条件下での欠陥

間相互作用のモデル化に基づいて, ZnO中の点欠陥

の電子構造および\形成エネルギーを再検討した II

ハイ ブリッ ド汎関数は, LDAやGGAの交換エネ

ルギーを部分的にハー トリー ・フォックの厳密な交換

エネルギーに置き換えるものであり,半導体や絶縁体

など,さまざまな系について全エネルギーや電子構造

を改善することが報告されている しかし,平面波基

底を用いた固体の計算では, 計算コス トがLDAや

GGAの数 10倍から数 100倍となり ,一般に点欠陥な

どの大規模計算は困難である 本研究では,交換エネ

ルギーの近距離部分のみを置換することで固体の言「算

のコストを削減できる HSE型のハイブリッド汎関数4)

を,平面波基底 PAW法51 (VASPコード 6)7))と共

に用い,計算条件を最適化することで200原子程度の

点欠陥モデル(スーパーセル)による計算を実現した

さらに,GGAで 1000原子程度まで、の系統的な計算を

行い, その結果に基づいて3次元周期的境界条件によ

り繰り返された点欠陥聞の相互作用をモデル化し。こ

れを取り 除く ことで,モデルサイズ無限大の極限 (希

薄極限)での孤立した点欠陥の形成エネルギーと準位

を予測した

表 1に, ZnOの格子定数とバン ドギャッ プの計算

値を示す 標準的な近似である GGA(PBE型) や.

価電子帯下部に位置する Zn-3d状態のオンサイトクー

ロン相互作凡lをハバー ドモデルに基づいて補Jトー した

GGA+U 法に比べて,HSE06ハイ ブリッド汎関数は

セラミック ス 46 (2011) No.6

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表 1 ZnOの裕子定数 (a,c)および、バンドギヤ yプ (E")

の言|算値と実験値の比較 PBE GGA, PBE GGA +

u (U一.!= 7.5巴V).HSE06ハイブリ yl、汎|羽数日SE

(α=0375)ハイブリ yド汎関数の結果を示す 括弧

内に実験{直に対するエラーを示す

a (λ) c (A) E, (eV)

PBE GGA 3.286 5.299 0.74

( + 14%) ( +2.1 %) (ー784%)

PBE GGA+U 3.196 5.149 181 (U一!=75eV) (-1.4%) (-08%) (-474%)

HSE06 3.261 5.225 2.49

( +06%) (+0.7%) ( +27.6%)

HSE 3.249 5.196 343 (a= 0375) (+02%) (+02%) ( 03%)

主~I~史値引 91 3242 5.188 344

格子定数とともにバンドギャップを改善することがわ

かる. しかし,バンドギャップは.実験値に比べて

leVほど過小評価されている ハイブリッド汎関数に

おけるハー トリー ・フ ォッ ク交換エネルギーの最適な

割合は,系に依存することが知られている IO)ーZnO

のバンドギヤ yプが再現されるよう に,その割合を標

準的な α=0.25から 0.375に変更した場合(HSE(α=

0.375)汎関数),格子定数は実験値により近づき, ま

た1illi電子帯における Zn3d状態の位置にも改善が見

られた I) このため, HSE (α= 0.375)汎関数は ZnO

に適していると考え, これを点欠陥の計算に適用 した.

図 1に, ZnO中の O空孔の形成エネルギーと準位

を示す 図 l(a)では. 0空孔の形成エネルギーが最

も低くなる還元側極限(ZnOと金属 Znが平衡する条

件)における各帯電状態の O空孔の形成エネルギー

のフェルミレベル依存性を示している 形成エネル

ギーはフェルミレベルに対して直線的に変化し,その

傾きは帯電状態に対応する 図から,フェルミ レベル

が低いときは 2+の帯電状態が,高いときは中性の状

態が安定であることがわかる 各帯電状態の形成エネ

ルギーを表す直線の交点が熱力学的な欠陥準位となる

これを,縦軸をフェルミレベルと したエネルギーダイ

アグラ ムとして図 1(b)に示す この熱力学的欠陥準

位の位置は, ドナーやアクセプタのイオン化エネル

ギーに対応し,格子緩和の寄与を含ま ない光学的な欠

陥準位(光学遷移のエネルギー)と はストークス シフ

ト分だけ異なることになる.ZnO中のO空孔の場合は,

l+の帯電状態が不安定で、あるため,2+から中|主に遷

移する 2+/0準位が見られる このように,O空孔は

2+に帯電しう るこ とから ドナー型の欠陥と言える

が, 2+/0ドナー準位が伝導帯下端から l.2eVも離れ

セラ ミyクス 46 (2011) No. 6

(a) (b) 4

4

~ 2 〉ω

’什 ’ぐ 2 四一一ー2+/0=ミ 0 ーュfキ

ti(

H 霊竺 =ミ11 2+が安定

世-2叶r、

E長o-t理事棚引

-4 。 1 2 3 4 フエjレミレベjし(eV)

図1 (a)ZnO 1・1 IのO空孔の形成エネルギーと準位 還元似I]

極限における各帯電状態のO空孔の形成エネルギーのフェルミレベル依存性を示す 各;箭電状態の形成エネルギーを表す直線の交点が,欠陥準位となる l+

の帯電状態が不安定であるため,2+から0(中性)に遷移する準位が見られる (b)O空孔の準位のエネルギーダイアグラム 図(a)の黒丸に対応した 2+/0

準位を示している

ているため,キャリアの生成には寄与しないと考えら

れる 一方,還元側極限での形成エネルギーは, フェ

ルミレベルが伝導帯下端付♂近となる n型の ZnOの場

合でも,約 leVと低い値となる これは,Hagemarlく

らのZnOのノンス 卜イキオメトリの定量結果 (例えば,

1373Kで O欠損 (Zn過剰)側に 190ppm)や, ノン

ス トイキオメト リの起源となる欠陥について見積もら

れた形成エネルギーの値0.9eV111と相容れる.彼らは.

ノンスト イキオメトリ を格子問 Znに帰属しているが,

後述のように格子間 Znの形成エネルギーは非常に高

く, 0空孔がノンス 卜イキオメトリの起源、であると考

えられる

図 2(a)には, 0空孔の形成エネルギーのフェル ミ

レベル依存性を,他のドナー型欠陥および実験 ・理論

の両面から支配的なアクセプタ型欠陥と結論されてい

るZn空孔と比較して示 している.左図は図 lと同様

な還元側極限の場合であ り 右図は酸化側極限の場合

である 図 2(b)は, 欠陥準位のエネルギー ダイアグ

ラムであ り,格子間位置 (OH 様構造)およびO位

置の H不純物の ドナー準位の計算値も併せて示して

いる

0空孔や格子間 Zn,アンチサイト Znの形成エネ

ルギーは, 還元側極限において最も低くな り,酸化側

極限において最も高く なる O空孔とともにノンス ト

イキオメトリの起源や n型伝導性をもたらすドナー

の候補として考えられている格子問 Znは, 官、導帯ー|ご

端近傍にドナー準{立を導入する このため,格子問

Znは浅い ドナーと して働くことが具月侍される しか

し, フェル ミレベルが伝導帯に近い場合.還元側極限

においても その形成エネルギーは約 4eVもの高い催l

491

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(a) 還元側極限 酸化側極限8 8 3+12+ 2+1+10

6 6 4+13' z パ〈no

ー12・2+1+10

~ む;- 4 ~ 4

社I 2 ’什I 2 ーミ

え杉/ Vo vzn 時。 時 。叶 叶経 世員主ー2 E主-2

局4 ー4

-66 1 2 3 -66 2 3 フェルミレベル(eV) フエlレミレベJl-(eV)

(b)

4 叩 ,_開閉. 一一2+/+/0 2+/+/0 +/O +/O

-て「' 2 2-ー ~ 3+/2+ -/2-ーュ

4+/3+ 一0/-

-1

V。 Z「l; Z「lo H; Ho Vzn

図2 (a)ZnO中の O空干し(V。),裕子!日JZn (Zn). アンチ

サイト Zn(Zn"), Zn空孔(Vz,) の形成エネルギーのフェルミレベル依存性左は還元側極限,有は酸化似lj極限の場合を示す 直線の傾きが変わる点は欠陥単位に対応し.これを丸印および四角印で表している(b)欠陥準位のエネルギーダイアグラム 欠陥準位は

(a)の丸印および四角印に対応する 格子間 H (H;.

OH様の原子配置) とOサイト誼換H(日。)の ドナー準伎をjjj:せて示す

となる このため.n型の ZnOにおいては,格子間

Znの熱平衡濃度は非常に低いと考えられる.アンチ

サイ トZnについても同様に結論される

アクセプタ型の欠陥であるZn空孔は,価電子帯上

端から 0.7eVおよび2.4eVの位置に準位を形成する

つまり, Zn空孔は,ホールをほとんど生成しない深

いアクセプタとなる.Zn空孔の形成エネルギーは

酸化側極限かつフェルミレベルが伝導帯下端の場合に

最も低くなる 一方.還元側極限では,フェル ミレベ

ルが伝導帯下端の場合で、もその値は約 4eVと高い.

このような条件では,アクセプタ型の Zn空孔の形成

は十分に抑えられ。n型の ZnOにおけるキャ リア電

子はほとんど相殺されないと考えられる.これに対し

て.ZnOをp型にした場合は.酸化側極限において

も0~2'孔.格子!日1 Zn.アンチサイ トZnの形成エネ

ルギーカサ|三’常に{氏くな り これらの欠陥はホールを相

殺するように働くと考え られる。 ZnOは強い 7l型指

向性を示すことが知られているが,その要|大|としてこ

492

のような ドナー型点欠陥の振る舞いが挙げられる

以上のよう に,ZnOのノンス 卜イキオメト リは O

空孔の形成によるものと考え られる.一方, ZnOの

還元による n型伝導性は. O'.Z2'孔や格子問 Znなどの

固有な点欠陥では説明できない これについては, 第

一原理計算に基づいて,Hなどの残存不純物 !日1.J:llや

格子間 ZnとN不純物の複合体 141など, さまざま な

起源が提案されている Van de Walleらによ り提案

されている日不純物 121.13)は,格子問サイ ト, 置換サ

イトいずれの場合も図 2(b)に示すように浅いドナー

準位を生じる 彼 らの LDAおよびLDA+Uに基づ

いた計算 \3)では,いずれのサイトの形成エネルギー

も還元側極限で 2.6eVと Hの固溶エネルギーの実験

値 0.8eV151に比べかなり高く見積もられている 本

研究ではハイブリッド汎関数を適用するこ とで,格子

間サイ トで lleV,置換サイ トで l.2eVと実験値に近

い値が得られ,高濃度の Hが固溶し うることが示唆

された. しかし,さまざまなプロセスによ り作製され

た試料中に,常に高濃度の日が存在すると は限らず,

この問題については更なる実験および理論的検討が必

要であろう

3. SrTi03中の新しい欠陥種-Tiオフセンター・

アンチサイト欠陥

SrTi03は ZnOと並ぶ代表的な n型半導体であり ,

近年そのヘテロ界面における 2次元輸送特性が活発に

研究されている 161. 一方で,還元や Ar+イオン照射

された SrTi03から,バンドギャップ3.3eVに比べて

小 さなエネルギーに対応する緑色 (2.4eV)あるいは

青色発光(2.9eV)171が観測される ことや, 還元や Sr/

Ti比の調整がなされた ドーパント無添加 SrTi00薄膜

において強誘電性が発現する 181.I引など 点欠陥由来

と考えられる興味深い特性が報告されている。 SrTi03

の還元に伴う欠陥としては O空孔や O空孔のクラ

スタ ー制m.0空孔 とSr空孔の複合体制などが考

えられてきた.これに対 して,筆者らは第一原理計算

の結果に基づいて,Srサイト から大 きく変位した T1

オフセンター ・アンチサイト欠陥が, SrTi03の電気

的 ・光学的特性において重要な役割を果たすことを提

案 している山 本章では このアンチサイト欠陥につ

いての計算結果を紹介する

SrTiO:i はバンド絶縁体であるが,点欠陥の生成に

よか伝導帯下端付近の主成分である Ti-3dに由来

した局在電子状態が生 じる可能性がある このような

電子状態は,LDAや GGAでは十分に取 り扱えない

ため LDA+UおよびGGA+U法が用いられている.

七ラミyクス 46 (2011) No. 6

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本研究では,ハイブリッド汎関数との比較に基づいて.

GGA+U 法において U=5.0eV. .T=0.64eVとするこ

とにより欠陥電子状態が十分に再現できると判断し

これを SrTi03中の点欠陥に適用した

図3に, SrTi01中の Tiオフセンター アンチサイ

ト欠陥の原子構造を示す.アンチサイト欠陥として

SrをTiで置換すると,イオン半径の大きな差により

Tiは[100]あるいは[llO]方向に大きく変位し,ほほ

%九!f?,,・4Ti~。くも九%

~~ %・.斗。

図 3 SrTi03中の 2種類の Tiオフセンター ・アンチサイト欠陥の原子構造 アンチサイ トTiは, それぞれSrサイトから [100]方向 (左)および[llO]方向(右)へ大きく変位している

A斗

a

3

つ4

41

(〉ω)

i社会品川

H

AU寸

hu

3

4

4

l

(〉心)

|社会特

H

図 4 SrTiQ1 1+1の仁川主 Tiオフセ ンター・アンチサイト欠陥

の’屯了梢i置と欠陥!Li米の屯「状態の空間分布 (a)

[100]変位および(b)[110]変0・のアンチサイト欠陥について。マジョリテイ ・スピンの屯子状態を示している

セラミ y クス 46 (2011) No.6

等しい形成エネルギーを持つ2種類の構造が得られる

また, Tiアンチサイト欠陥は,バンドギヤ yプ中に

深いドナー型の準位を形成することがわかった これ

は, 図 4に示す中性の Tiアンチサイト欠陥のー電子

構造に見られるように Sr位置近傍を占有したアン

チサイト Tiの 3d軌道が,バンドギャップ中にスピ

ン分極した局在電子状態を形成するためである この

ような Tiアンチサイト欠陥の深いドナー準位は,上

述の可視発光や,強誘電性を有する試料に見られる欠

陥由来の吸収 22)を説明できるものである 2). また,

Tiアンチサイト欠陥は,Srサイトから大きく変位す

ることにより双極子を形成しさまざまなく100)およ

び(llO)構造聞を小さな活性化エネルギー(約 0.2eV)

で移り変わることが予測された. SrTi03において,

Srサイトから変位した Caドーパントが強誘電性をも

たらすことが報告されているお) Tiアンチサイト欠

陥は。 このようなオフセンター Caドーパントに類似

しており ,SrTi03のノンストイキオメトリによる?虫

誘電性の発現 18).I日)に関係している可能性がある。 こ

の Tiアンチサイト欠陥について,今後実験的検証が

なされることを期待する

4.おわりに

酸化物半導体における点欠陥の原子 ・電子構造や点

欠陥由来の機能への第一原理計算によるアプローチと

して, ZnOとSrTi03の例を挙げて紹介した その他

にも,Sn024ト 2ti1.NaTaO:i 211. EuTi03 2R1など,さま

ざまな酸化物半導体について 原子・電子スケールで

の理解を系統的に進めている このような計算科学的

アプローチは,高精度化・高効率化へ向けた手法開発

とコンビュータの演算能力の向上が相侠って目覚まし

く進展しており,今後の材料開発・設計において重要

な役割を担っていくと考えられる.

謝 辞 本稿で中11介した研究は。京都大学 MinseokChoi I専←|一日

東後篤史紳士.回"' 功教授 ウィ ーン大半’JoachimPaier博一|Georg Kresse教授と共同で行われました ここに謝意を去します

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筆者 紹介

大場史康 (おおば ふみやす)

kff>)('子大手院工学研究科跡 |一課税修了 仁14>="t 術 振興会特IJIJliJf究員(東京大午.米間ケース

ウエスタンリザーブ大’子) 氏名ii\大午助手 |司助

教を経て現ヂ1はl百lバi教 段 第一IJ;(料計算と1'1Ff分光実験に基づいた目立化物 常化物半導体の欠陥

電子構造の許制i出よび機能の設言|にiiCτJf[連絡先] 干6J68501 京都市左京区吉1114,urr 京都大学大半院土半研究科材料工学専攻

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セラミソク ス 46 (2011) No. 6


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