Update 2017.11.07 第10期生 沼田博幸さんの近況報告 ·...

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第 10 期生 沼田博幸さんの近況報告 Update 2017.11.07 こんにちは。第 10 期生の沼田と申します。在学中は、先生方、諸先輩方そして同期および後 輩の皆様には大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、修了 後におきましても多くの方々に大変お世話になり感謝申し上げます。同窓会の運営は多大な労 力がかかるかと思いますが、事務局の方々のご尽力により同窓生のつながりを日々感じること ができております。 思い返すと在学中の 2 年間の学びや出会いはとても刺激的で今も私の大切な財産になって おります。兵庫県の自宅、勤務先の大阪府からの働きながらの通学でしたが、老体にムチうちな がらやり遂げて良かったと思っています。しんどさを知った今となっては二度とできません。(笑) さて、修了後ご活躍されている方が多数いらっしゃる中で大した活躍ができていない私のよ うな者が近況を述べるのはいささか恐縮ではございますが、少し珍しい取り組みをしております のでご紹介させていただきます。 私は、学校法人に勤務しておりますが、この 4 月より学校法人が 100% 出資する株式会社に 出向となりました。出向して約 7 か月の間、出会った方々になぜ学校法人が株式会社を設立する 必要があったのか、この会社は何を生業とするのかを聞いていますが、まずはよくわからないと 言われます。それも当然で、本学院に勤務する者ですら残念ながらその意味を理解できていない ので無理もありません。今は、会社の存在意義を理解していただくことから始めています。 学校法人は少子化の影響でマーケットが縮小し護送船団の時代から競争時代に突入してい ます。経営難で廃校になることも不思議ではない時代です。加えて、学校法人の仕事は過去に 比して複雑化多様化しています。時代は確実に変わってきているのです。 それでは、そこで働いている職員はどうでしょうか?真渕勝先生の著書「行政学」では、“官僚 制の合理性と非合理性”の章の中でマートンの逆機能論として規則の強調による官僚の硬直性 や保守性が出てくるとともに、“官僚制の演繹モデル”の章の中でセクショナリズムや予算極大 化の話が出てきます。学校法人の職員も同様の傾向があるように思います。なかでも近年、そう いった傾向と学校法人の取り巻く環境とに齟齬がでてきているのではないかと思うのです。 1980 年代のイギリスのエージェンシー化や 2000 年代の日本の行政改革のように学校法 人も組織をスリム化し政策形成部分に注力するとともに、執行業務や付随業務は民間企業と同 様の効率的な運用を求める必要がでてきたのではないかと思います。そして、この機能こそ 100% 出資会社が求められているものではないかと考えています。 現在、特に注力しているのはアメリカやオーストラリアで行われているように多くの大学が連 携しシェアードサービス化を図ることです。幸い他法人からも共感を得ており、いい事例を作れ そうな気がします。もう一つは、縦割りの部署から事務仕事を受託し、その仕事を標準化および 平準化ならびに効率化を図りながら学校法人より少ない人数で執行するように取り組んでいる ことです。 このような発想の基礎となっているのは、実は 2 年前期に受講した塩地洋先生の「産業政策 論」で学んだトヨタ生産方式です。授業で最終発表した「トヨタ生産方式を学校業務に導入した ら」の内容を今まさに実務として取り組んでいるところです。 内部から組織を改革するのは至難の業。だからこそ税金の負担をしたとしても株式会社を設 立することで、学校法人が持っている伝統や文化、職場の風土を少しずつ改革していくことが できます。残念ながら職員の抵抗がないわけではありませんが、受け入れてもらえるように地道 に活動していくしかありません。 その他、大学キャンパス内に保育所と老人ホームを作り、日本版 CCRC(※)の実現を目指し ておりまして、保育所設置や地域住民対象スポーツ教室の開催等も行っています。今のところ 自由にやりたいことを機嫌よくやっております。 (笑) 最後になりましたが、同窓会の HP にリサーチペーパーを掲載いただいている縁で大学誘致 を検討している自治体から講演依頼もあり、今も大学院で残したものに対してブラッシュアップ を図っております。 これからも臆せず前に進み続けます。いつも皆さまに助けていただきながら歩んでおります が、いつしか皆さまのお役に立てるときが来るように日々精進いたします。今後ともよろしくお 願いいたします。 沼田 博幸 (ぬまた ひろゆき) 株式会社アンデレパートナーズ 取締役総務部長 ※日本版CCRCとは「東京圏を はじめとする高齢者が、自らの希 望に応じて地方に移り住み、地域 社会において健康でアクティブな 生活を送るとともに、医療介護が 必要な時には継続的なケアを受け ることができるような地域づく り」を目指すもの。 京都大学公共政策大学院同窓会「鴻鵠会」

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第10期生 沼田博幸さんの近況報告Update 2017.11.07

 こんにちは。第10期生の沼田と申します。在学中は、先生方、諸先輩方そして同期および後輩の皆様には大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、修了後におきましても多くの方々に大変お世話になり感謝申し上げます。同窓会の運営は多大な労力がかかるかと思いますが、事務局の方々のご尽力により同窓生のつながりを日々感じることができております。 思い返すと在学中の 2 年間の学びや出会いはとても刺激的で今も私の大切な財産になっております。兵庫県の自宅、勤務先の大阪府からの働きながらの通学でしたが、老体にムチうちながらやり遂げて良かったと思っています。しんどさを知った今となっては二度とできません。(笑) さて、修了後ご活躍されている方が多数いらっしゃる中で大した活躍ができていない私のような者が近況を述べるのはいささか恐縮ではございますが、少し珍しい取り組みをしておりますのでご紹介させていただきます。 私は、学校法人に勤務しておりますが、この4月より学校法人が100%出資する株式会社に出向となりました。出向して約7か月の間、出会った方々になぜ学校法人が株式会社を設立する必要があったのか、この会社は何を生業とするのかを聞いていますが、まずはよくわからないと言われます。それも当然で、本学院に勤務する者ですら残念ながらその意味を理解できていないので無理もありません。今は、会社の存在意義を理解していただくことから始めています。 学校法人は少子化の影響でマーケットが縮小し護送船団の時代から競争時代に突入しています。経営難で廃校になることも不思議ではない時代です。加えて、学校法人の仕事は過去に比して複雑化多様化しています。時代は確実に変わってきているのです。 それでは、そこで働いている職員はどうでしょうか?真渕勝先生の著書「行政学」では、“官僚制の合理性と非合理性”の章の中でマートンの逆機能論として規則の強調による官僚の硬直性や保守性が出てくるとともに、“官僚制の演繹モデル”の章の中でセクショナリズムや予算極大化の話が出てきます。学校法人の職員も同様の傾向があるように思います。なかでも近年、そういった傾向と学校法人の取り巻く環境とに齟齬がでてきているのではないかと思うのです。 1980 年代のイギリスのエージェンシー化や 2000 年代の日本の行政改革のように学校法人も組織をスリム化し政策形成部分に注力するとともに、執行業務や付随業務は民間企業と同様の効率的な運用を求める必要がでてきたのではないかと思います。そして、この機能こそ100%出資会社が求められているものではないかと考えています。 現在、特に注力しているのはアメリカやオーストラリアで行われているように多くの大学が連携しシェアードサービス化を図ることです。幸い他法人からも共感を得ており、いい事例を作れそうな気がします。もう一つは、縦割りの部署から事務仕事を受託し、その仕事を標準化および平準化ならびに効率化を図りながら学校法人より少ない人数で執行するように取り組んでいることです。 このような発想の基礎となっているのは、実は2年前期に受講した塩地洋先生の「産業政策論」で学んだトヨタ生産方式です。授業で最終発表した「トヨタ生産方式を学校業務に導入したら」の内容を今まさに実務として取り組んでいるところです。 内部から組織を改革するのは至難の業。だからこそ税金の負担をしたとしても株式会社を設立することで、学校法人が持っている伝統や文化、職場の風土を少しずつ改革していくことができます。残念ながら職員の抵抗がないわけではありませんが、受け入れてもらえるように地道に活動していくしかありません。 その他、大学キャンパス内に保育所と老人ホームを作り、日本版CCRC(※)の実現を目指しておりまして、保育所設置や地域住民対象スポーツ教室の開催等も行っています。今のところ自由にやりたいことを機嫌よくやっております。(笑) 最後になりましたが、同窓会のHPにリサーチペーパーを掲載いただいている縁で大学誘致を検討している自治体から講演依頼もあり、今も大学院で残したものに対してブラッシュアップを図っております。 これからも臆せず前に進み続けます。いつも皆さまに助けていただきながら歩んでおりますが、いつしか皆さまのお役に立てるときが来るように日々精進いたします。今後ともよろしくお願いいたします。

沼田 博幸(ぬまた ひろゆき)

株式会社アンデレパートナーズ取締役総務部長

※日本版CCRCとは「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すもの。

京都大学公共政策大学院同窓会「鴻鵠会」