Title グリニャール反応の機構に関する研究(...

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Title グリニャール反応の機構に関する研究( Dissertation_全文 ) Author(s) 片桐, 利真 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 1988-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k3921 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

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Title グリニャール反応の機構に関する研究( Dissertation_全文 )

Author(s) 片桐, 利真

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 1988-03-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k3921

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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学位申請論文

グ リニ ャール反応 の機 構 に関 する研究

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学位申請論文

グ リニ ャール 反 応 の機 構 に関す る研 究

片桐利真

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(一 一)

目次

1 序論 一1一

2.結 果 と考察

2・1ベ ンジルの反応

2・1-1ラ ジ カル種の発生 と反応生成物 について

2・1-2ラ ジ カル中間体 の構造

2・1-3ア ルキル(又 はアリール)ラ ジカルの移動過程 につ いて

2・2モ ノケ トンの反応

-・

2

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五,

2

2

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O

(∠

(∠

∩∠

∩∠

ラジカル種の発生と反応生成物について

ラジカル中間体の椴造

ラジカル中閤体の挙動

付加反応と遠元反応の比較

一8-

-8-

-8-

-21-

-32-

-42-

-42-

-48-

-65-

-69一

3.反 庵 の機靖 一79一

4.実 験 の部

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4,

反応溶媒 グ リニ ャール試薬

応容器

SR法 による測定

応速度定数の決定

応生成物の定量

々の反応 について

基 質ケ トンの謂製

ベンジルの反応

フル オレノンの反応

1一 メチルフル オレノンの反応

ベ ンゾ フ ェノンの反応

2一 メチルベンゾ フェノ ンの反応

4一 メチルベンゾ フェノンの反応

一81ご

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5一 引 用 文 献一96一

6 謝辞 100一

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(/)

1.序 論

炭 素一炭 素結合の形成 は有巖合成化学において最 も重要 な課題で あ り、その目的で多 く

の手 段が開発されてきている。 近年 、有機金属試薬を用いた炭素 一炭素結合の形成 は生

理活性物質な どの合成 における一般 的な手段 として広 く実験室 的に用い られている。 こ

れ らの有機金属試薬の先駆けとな ったのが、1901年V.Grignardに より開発された

1)グ リニ ャール 試薬であ る。

グ リニ ャール試薬は、一般に"RMgX"と 書き表される化合物であ り、乾燥 した

エーテル系溶媒中において金属マグネ シウム とアルキル(又 はア リール)ハ ライ ドとを反

2)応させることにより容易 に得る ことができる。

-t-ax・Mg(0)___RtllgX(1)一

このよう にして簡単 に得 られるグ リニ ャール試薬 は高 い反応性を持ち 、種 々の種性官能

基 と容 易に反応する。 た とえば、ケ トン、アルデ ヒド、エボキシ ド、エステル との反応

で アルコールを生成 し、

R\

C==0+RMgX

Rヲ!

 

R\

C=O

H/

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CH2一CH2

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RCOOR

+RMgX

R

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(5)

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(2)

また、二酸化炭素との反応においてカルボン酸を生成し、

H20

C・2・ 磁1gX→RCOOMgX→RCOOH (6)

さ らに二 トリル との反応 においてはケ トンを生成 する。

R-C三N ・RMgX-1)一 」 党 〉 ・ (7)

また、グ リニ ャール試薬 は合成 が容易であ り高収率で あるため、多 くの有機金属化合物

の前駆体と しても用い られている')

MXn+RMgX 'Rl,IX。.1+MgX2

(8)

このグ リニ ャール試薬 とケ トンとの反応の機構は、有機金属化合 物の反応モデル として 、

4)試薬の発 明以来多数の研究者達によ って研究 されてきている。 古 くから、この反応

はグ リニャール試薬中 の炭素一マグネ シウム結 合間の分極 によ り生 じたカルバ ニオン的な

性質を持つ アルキル(又 はアリール)基 の、カルボカチ オン的な性 質を持つカルボニル炭

5)素へのイオン的な付加反応である と考え られてきた。 しか し、ここ25年 閤 の研究

によりこの反応が グ リニ ャール試薬か らケ トンへの電子移 動により開始 するラジカル反応

であるこ とが明らか1にされてきた 。

グ リニャール反応 におけるラジ カル的な反応機構は、1929年 にBlickeとPowers

6)に より、単 に生成物 だけの検討か ら、初めて提 唱された。 彼 らは、ベンゾ フ ェノン

と種々のグ リニ ャール 試薬 とのエチル エーテル 溶媒中での反応 につい て検討 し、反応生成

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(3)

物 中に通常 の付加生成物 の他 に 還 元生成物で あるベンズ ヒドロール 、あるい はベ ンゾフ

ェノンが二量化 したベ ンズ ピナコールの生成 を確 認した。 このこ とよ り彼 らはスキーム

1の ような反応機構を提 唱 した。

6)ス キー ム/

 Ph2C-・ ・RMgX-[Ph2C-・MgX・R●]

RHll

-一 → 一'Ph2C-OMgX+Ph2C-OMgX+Ph2C-CPh2

iIXMgOOMgX

(9)

しか し、 こ の 時点 に お い て中 間 体 ラ ジ カル 種 の存 在 は 、証 明 し得 な か っ た。

1945年 に開 発 さ れ た電 子 ス ピン共 鳴(ESR)法 が 、1960年 代 に有 機 化 学 の分

野 で 広 く用 い ら れる よ う にな り、 こ の グ リニ ャ ール反 応 の 中間 体 ラ ジ カル に関 す る直 接 的

な 知 見 が得 ら れる よ う にな った 。

1964年 、丸 山 は 、種 々 の ベ ンゾ フ ェノ ン誘 導体 とエ チル マ グ ネ シウム ・プ ロ ミ ド

(EtMgBr),フ ェニ ルマ グネ シ ウム ・ブ ロミ ド(PhMgBr'),あ る い はp一 ト

リルマ グネ シ ウム'プ ロ ミ ド(P-CH3C6H4MgBr)と を テ トラ ヒ ドロ フラ ン

(THF)溶 媒 中 低 温 で 反応 させ る と、そ の 反 応溶 液 中 に大 量 の ラ ジ カル種 が 現 れ る こ 、

7)とを発 見 した。ESRス ペ ク トル 、可 視 吸 収 スペ ク トル よ り こ の観 測 さ れ た ラ ジ カ

ル 中 閤体 は 、電 子 移 動 に よ り生 じ る ベ ンゾ フ ェノ ン類 の メ タル ・ケ チ ル ラ ジカ ル に 似 て い

る が 、単 純 な ケ チ ル ラ ジ カルで は な い こ とが 示 さ れた 。

ほ ほ同 時 期 、G.Russellら は 、同 じくESR法 を用 い てn一 ブ チ ル マ グネ シ ウ ム ・プ ロ

ミ ド(n-BuMgBr)と ベ ンゾ フ ェノ ン と の 丁HF溶 媒 中 に お け る 反応 に お い て 、 グ

リニ ャール 試薬 か ら ベ ン ゾ フ ェノ ン へ の電 子 移 動 によ り生 じた ベ ンゾ フ エ ノン の ア ニ オ ン

8)ラ ジ カル の生 成 を 観 測 した。

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(4)

1968年 には、BlombergとMosherに より、ネオペンチルマ グネシウム ・ブ ロミ ド

とベンゾフ エノ ンとのTHF溶 媒中 における反応におい て、大量の ラジカル種が発生 する

9)こ とが報告 されている。

しか し、この観測さ れたラジカル 中閤体が 、グ リニ ャール反応 の通常の付加生成物を与

える反応の中 間体であるのか 、そ れ とも還元生成物や二量 体を生成 する過程にのみ関与す

る中閤体であ るのかについては明らかにされて いなか った。

その後、Ashbyの 研究 グル ープ は、種々の純度のマグネシウム金属を用いて作 ったメチ

ルマグネシウム ・プ ロミ ド(MeMgBr)と ベンゾフ ェノ ンとのエチルエ ーテル溶媒中

での反応 につ いて検討 し、このラジカル種 の生成 は金属マグネ シウム中に含 まれる微量の

10)遷移金属の作 用による ものである と考えた。 さ らに、彼 らは反応系に塩化鉄(III)

(FeCI3)を 加え ることによ り反応溶液 中に大量の安定なラジカル種を生 じさせ ・ラ

11)ジ カルの発生 とベンズ ピナコールの生成 とを 関連づけよう とした。 あるい は、

MeMgBrと2一 メチル ベンゾ フ ェノンとの反応 において、溶液 中にラジ カル種の生 成

を認めたが 、そ の絶対量が少ないこ となどよ り このようなラジカル種が通常の付加反応

の中間体で はないと主張 し、グ リニ ャール反応 はスキーム2の ように 、通常の付加物 を与

えるイオン的 な反応 と、還元生成物 やケ トンの二量体生成物を与えるラジカル反 応か ら成

12)る と結論 した。

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(5)

12)ス ヰー ム2

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〔G)

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Savinら は 、t一 ブ チ ルマ グネ シ ウ ム ・ブ ロ ミ ド(t-BuMgBr>と ベ ンゾ フ ェノ

ン との ジメ トキ シ エ タ ン(DME>溶 媒 中で の反 応 に お い て 、"副 反 応"に よ り生 成 す る

一…

イ ソ ブ タ ン とイ ソ ブ チ レ ンの1H-NMRのCIDNPを 観測 し、 こ の副 反応 が ケ ージ 外

一一一一

の ラ ジ カル 反 応 で あ る こ とを 示 した 。13)

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(6)

グ リニ ャール正常付加反応も、熱的な電子 移動により開始するラジカル反応で あるこ と

が、Hoimら の1971年 か らの一連の研究 により明 らかにされた。彼 らは、ベンゾフ エ

ノン類のエチル エーテル溶媒中での グリニャ ール反応が発熱反応で あることを用いて、そ

の反応速度 を求めた。 そ して,正 常反応 のみをおこすMeMgBrの 場合や 、主に"副

反応"が おこるt一 ブ チルマグネ シウム ・ク ロリド(t-BuMgCI)の 反応の場合な

どについて検討 し、グ リこ ヤール試薬の酸化電 位あるいはベンゾ フ ェノン類の還元電位 と

反応速度の対数 との閤に直eeac係 が成立するこ とを示 した.14)こ れは、ベ ンゾフ 。ノ

ン類のグリニ ャール 反応 においては、正常付加反応 も いわゆる"副 反応"も 共通の発熱

過程(Holmは 律速過程 と考えている 〉である電子移動に より開始 する反応であ ることを示

唆 する。

以上 のように、グ リニ ャール反応の機構が古 くか ら考 え られてきた ような カルバ ニオン

種の反応で はな く、実際 は、熱的な電子移動 により開始 するラジカル反応であるこ とが確

15) これに刺激され 近年、他の有機金属試薬 などのカルバニオ ン種 の反認されたが 、

応 」6)あ るいは ヒ ドリド金属試薬の反応17)が 再検 討され、これらの反応が電子移

18)動によ り開始 する反応 であることが明らか にされつつある。

しか し、ケ トンのグ リニ ャール反応が、グ リニャール試薬か らケ トンへの電 子移動 によ

り開始する反応である ことは明らか になったが、その電 子移動 によ り生 じた反応中問体ラ

ジカル種の構造 、あ るいはその中間体か ら生成物に至るアルキル(又 はアリール)ラ ジカ

… 一 ル の移 動 過 程 に関 す る知 見 は1まと ん どな い 」4,15)

,一.ま た、H。1,、19,20)K、i,21)は 、ESR法 、ある い は可 視吸 収 ス ペ ク トル な ど に よ

・… ・り確認 さ れ た 中 間体 ラ ジ カル 種 が真 の 中間 体 で あ る か否 か につ い て はな お疑 問 を 提 出 して

・・一 ・い る 。

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(7)

申請者 は、このグ リニ ャール反応 の基質 と してジケ トン化合物であるベンジルを用いて

22,23)研 究を行い 、 そ の反応中に現 れる中 間体ラジカル種の構造 をESR法 、あるいは

可視吸収スペ ク トル 法を用いて決定 し、その挙動を速度論的な手法 を用いて詳細 に検討す

る ことにより、反応 機構を明らか にした。 さ らにモノケ トン化合 物を基質と して用いた

28)24-27)反応における反応中間体の構造 と挙動、 あるい は反応生成 物よ り ベンジル

の反応 において明らか に した反応機構が一般 的なもので あることを確認 した。

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(8)

2. 結果 と考察

2.1ベ ン ジ ノレの 反 応22123)

2・/-/ラ ジ カル 種 の 発 生 と反 応 生 成 物 に つ い て

グ リニ ャール試薬、例えばフェニルマグネシ ウム ・プ ロミ ド(PhMgBr)と ベンジ

ル(1)と を厳密 に乾燥 かつ脱気 したテ トラ ヒドロフラン溶媒中 において室温で反応させ

る と、そのPhMgBrと ベンジル とのモル混合比(ベ ンジル/グ リニ ャール試薬;

B/G)に 応 じて2種 類の室温でも安定なラジ カル種が溶液中に現 れた。 これ らのラジ

カル種は図1に 示すよ うな鋭い超徴細講造 を持つESRス ペ ク トルを与えた。 反応混合

比B/Gが1.0よ りも大 きい、すなわちベンジルが過剰の条件で は安定な紫色のラジ カル

種(PCR>が 観測された。 可視領域においてこのラジ カル種 は515nmに 吸

収 極大 を持つ広幅な吸収 スペク トル を示 した 。ESRス ペク トル の超滋細構造の解析 よ

り、このPCRは ベンジルのアニオンラジ カルを講成要素 とするラジカル種(2)で ある

ことが明らかにな った 。

一方 、反応 混合比B/Gが1.0よ りも小 さい、すなわちグ リニ ャール試薬が過 剰の条件

で は反応開始直後 に一 瞬反応溶液は紫色にな ったがすぐ にその色は消失 し、安定なオ レン

ジ色のラジカル種(GCR)が 現れた。 可視領域において このラジカル種は472

nmに 極大 を持つ吸収 スペク トルを示 した 。 このGCRは α一フ エニルベンゾイン'

マ グネシウム塩 のアニ オンラジカルを構成要 素 とするラジカル種(3〉 で あるこ とが・

'…ESR法 な どを用 いて確 認された。

この2種 類のラジカル種が同時に溶液中 に現 れることはなく、B/G=1・0を 境に して

一方のみが 観測 された 。

_一 グリニャール試薬 と してPhMgBrに 代 えてメチルマグネシ ウム ・プ ロミ ド

....〈MeMgBr)あ る いはエチルマ グネシウム ・プロミ ド(EtMgBn)を ベ ンジル と

一.一.反応 させた場合もPhMgBrの 場 合と同 じく、それぞ れ2種 類のラジカル種 がB/G=

1.Oを 境 にして現れた 。MeMgBrと ベ ンジル との反応 におい て現れたPCRと

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(9)

GCRのESRス ペ ク トルを図2に 、EtMgBrの 反応 において現 れたPCRとGCR

のESRス ペク トルを 図3に 示す。

図1、2、3のGCRのESRス ペク トル はそれぞれ異な った超微細構造を示 している

が 、これ はカルボニル基 に付加 したアルキル(又 はアリール)基 の α位の水素 の数が異な

る ことに由来 している。

◎一π† ◎00

二L

◎ 一鷲 一◎OO

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2(PCR)

R

◎-1-1◎9-OMgBr

+∫"RMgBr"2

/3(GCR)

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11

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12

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(13)

安定に得 られるPCRお よびGCRの 絶対量 は、グ リニ ャール試薬 とベンジル との混ぜ一

方 により大 きく変化するが 、まった く同 じように混ぜた場合 には図4-6に 示すように、

グ リニ ャール試薬 とベ ンジルとの反応混合比(B/G)に よ って変化 した。

PhMgBrと ベンジル との反応 において現 れる安定なPCRの 量 は、B/G-1.8で

は用いたPhMgBnの 量のおおよそ10%に 達 した。 安定 に得 られるPCRの 量はB

/G比 が小さ くなるのに従 って小 さ くな ってゆき、B/G=1.0に お いてPCRは 安定に

は得 られなか った。 グ リニャール試薬がベンジル に対 して過剰の場合(B/G〈0.9)

には安定なGCRが 現 れるが、B/G=0.7で その絶対量 は最大 とな り反応させた

PhMgBrの 量の5%に 達 した。

グ リニャール試薬 としてMeMgBr、EtMgBnを ベンジル と反応させた場合に得

られる中閤体ラジ カル の量 と、グ リニ ャール試薬 とベンジル との反応混合比(B/G)と

の関係も、PhMgBrの 反応における結果 と同 じ傾向を示 す。 どの場合もB/G=

1.OにPCRとGCRの 境界が存在 した。

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14

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15

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(/7)

乾 燥脱 気THF溶 媒 中 で のPhMgBrと ベ ンジル との 反 応 生成 物 を 調べ た 。PCR

を 含 む反 応 溶 液(B/G>1.0)を 、脱 気 したNH4Cl水 溶 液 でマ グ ネ シ ウム塩 を分 解 し

た 後 、エ ー テル で 抽 出 して 得 られ る反 応生 成 物 は 、回 収 さ れ る ベ ン ジ ル と、ベ ン ジル の1

つ の カル ボ ニル 基 の 炭 素 にPhMgBrの フ ェニ ル基 が 付 加 した一 付 加 物 で あ る α 一 フ ェ

ニ ル ベ ンゾ イ ン(4a)で あ った 。

GCRを 含 む 反応 溶 液(B/G〈1.O)を 同 様 に後 処 理 した後 に得 られる反 応 生 成 物 は 、

α 一 フ エニ ル ベ ンゾ イ ン(4旦)と 、 α一 フ エニル ベ ンゾ イ ン の も う1つ の カル ボニ ル

基 の炭 素 にPhMgBrの フ ェニ ル基 がさ ら に付 加 した 二 付 加 物で あ る1,1,2,2一

テ トラ フ ェニ ル エ タ ン ー1,2一 ジ オ ール(5a)で あ った 。

これ らの 生 成 物 の収 率 とB/G比 との関 係 を 図7に 示 す 。

ラ ジ カル 的 な異 常反 応 の 生成 物 と して考 え ら れる還 元 生 成 物 で あ る ベ ンゾ イ ン 、 ベ ンジ

ル が 二量 化 した1,2,3,4一 テ トラ フ ェニ ル フ タ ン ー2,3一 ジ オ ール ー1,4一 ジ

オ ン 、ある い はグ リニ ャ ール試 薬 の フ ェニ ル 基 が二 量化 して で き た ビ フ ェニル の生 成 は確

認 で き なか っ た 。

MeMgBrと ベ ン ジ ル とのTHF溶 媒 中 に お ける反 応 生 成 物 は 、PCRを 含 む 溶液 か

ら は回 収ベ ン ジル と 、通 常 の一 付 加 物 で あ る α一 メチル ベ ンゾ イ ン(4b)で あ った 。

ま たGCRを 含 む反 応 溶 液 か らは α 一メ チル ベ ンゾイ ン(4b)と 、二 付加 物 で あ る2,

3一 ジフ ェニ ルブ タ ン ー2.3一 ジ オ ール(5b)が 得 られ た 。 一一一一一一

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18

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(/9)

還 元性 を 有 す るEtMgBrと ベ ンジル との 乾燥 脱 気THF溶 媒 中 で の反 応 の 生 成 物 と

して は 、PCRを 含 む 溶 液(B/G>1.O)か らは回 収 ベ ン ジル と 、一 付加 物 で あ る α 一

エチ ル ベ ンゾ イ ン(4c)と 、さ らに安 息 香 酸 、安 息香 酸 エ チ ル エ ス テル が得 られ た 。

GCRを 含 む 溶 液 か らは α一エ チ ル ベ ンゾ イ ン(4c>と 、二 付 加 物で あ る3,4一

ジ フ ェニル ヘ キサ ン ー3,4一 ジ オ ール(5c)と 、安 息 香 酸 、安 息 香 酸 エチ ル エ ス テル

が 得 られ た 。

アル ゴ ン気 流 下 の 厳 密 に酸 素 を遮 断 した条 件 で この 反応 の抽 出 、乾 燥等 の 後処 理 を行 う

と 、安 息香 酸 や安 息 香 酸 エチ ル エス テ ル の代 わ りに 、ベ ンゾ イ ン ・エ チル エ ー テル(6)

が 得 られ た(式 〈10)〉 。

こ れ は 、カ ル ボ ニル 基 の酸 素 上 に グ リニ ャ ール試 薬 の エ チル 基 が 付 加 した 、1,2一 ジ

20)フ ェ.ニル ー2一 工 トキ シ エ チ レ ンー1一 オー ル(7)の 生 成 を示 唆 する 。 実際 、 反

13

応 の後処理の直後においてはオレフ ィン炭素を含む化合物がC-NMRに より確認さ

れた。 この化合物 は熱的に不安定 で、室温で もケ ト ・エ ノー一ル互変 異性をお こし、安定

なベンゾ イン ・エチル■ 一テル(6)に 変化 することが確認された。

この類いの化合物 は、オル トキノン類 と有機亜鉛試薬の反応 にお いてその生成が知 られ

29) これは、 α一ジケ トン化合物の アニオンラジカルの 不対電子が電子移動をている。

受 けたカルボニル基 の炭素上だけで なくもう1つ のカルボニル基の 酸素上にも存在するこ

30,31)とから説明 し得 る(後 述 スキーム5の 旦)。 ベンジル とEtMgBrと の反

応 においてもこの酸素 上の不対電子 に対 してグ リニャール試薬からエチルラジ カルの移動

がお こり このようなカル ボニル酸素 にエチル基が付加 した化合物 が得 られた ものと考え

られる 。

EtMgBrは 還元 性を持つグ リニ ャール試薬である にもかかわ らず、反応 生成物 中に

還 元生成物であるベンゾイ ンは確認できなか った。

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(21)

2・1-2ラ ジ カ ル 中 閤 体 の 構 造

前節で示 したように、ベンジル のグ リニ ャール反応 において得 られた中間体ラジカルで

あるPCRお よびGCRは 乾燥かつ脱気 した条件下で は非常に安定で あり、鋭 い超微細構

造 を持つESRス ペク トル を示す。

PCRのESRス ペク トルはグ リニャール試薬の種類にかかわ らず 同 じ超微細構造を

持 ち、その超微綱結合定数は表1に 示 すよ うに ベンジルのメタル ケチルの値 に非常に近

い.32133)こ れは、このPCRのESRス ペク トルがベンジルの アニオンラジカル に

極 めて類似 したもの く2)で あるこ とを示す 。

一方、GCRはPCRと 異な り、反応させたグ リニ ャール試薬の種類により異な った超

微 紹講造を持つESRス ペク トルを示 す。 このGCRのESRス ペ ク トルがα一アル キ

ル(又 はアリール)置 換 ベンゾインのマグネ シウム塩のアニ オンラジ カル部(3)の もの

で あることは以下 のような方法で確認された。 すなわ ち、PhMgBrと ベンジル との'

反応 において生成 、単蔭 した α一フ ェニルベンゾイン(4a)に 対 して2当 量 の

EtMgBrをTHF溶 媒中反応 させる と、図1のGCRと 超徴細構造が同 じESRス ペ

ク トルを示す オレンジ色のラジカル種が観測された。 このα一フ ェニルベ ンゾインと

EtMgBrと の反応 により得 られたオレンジ色のラジカル種 は、GCRと 同 じ吸収極大

(475nm)を 持つ可視吸収スペク トルを示 した。

ス キ ー ム3

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(22)

PhMgBrと ベンジル との反応で得 られたGCRのESRス ペ ク トルの超微細構造は

グ リニ ャール試薬か らの電子移動を受けた カル ボニル基 と共役 しているフェニル基のパラ

位(1H)、 オル ト位(2H)、 メタ位(2H)の5つ の水素 によるもの と帰属される。

また、MeMgBrやEtMgBrと ベ ンジル との反応において得 られるGCRの 超徴細

構造には、カルボニル基 に共役 しているフ ェニル基の5つ の水素 による分裂 に加え 、1番

目の反応 により付加 したメチル基、エチル位の α位の水素(ラ ジカル 中心からは γ位 の水

素)の 寄与 が見 られる 。

このPCRあ るいはGCRは 、ベンジルあるいは一付加物 の中性分子 に対するグ リニャ

ール試薬か らの電子移動 により生 じたもので ある。 しか し、ESR法 で は、単純な電

子移動 によ り生 じる と考え られるグ リニ ャール試薬 のカチオンラジ カル は観測できなか っ

21,34)た。

スキーム4

⑤1-1《 ◎ ・RMgBr一 σ 罵 一◎(13)

十 冒 冒山 幽

(RMgBr)●

そ こで申請者 は、カチオ ン部の構造 に関する知見を得るため,PCRの 超徴細結合定数

および可視吸収スペク トルの吸収極大を、ベンジルのメ タルケチル のもの と比較 した 。

ケ トンの アニ オンラジカルの超微細結合定 数 は、その対 力チオン との距離により変化す

る。 ベンジルの アニ オンラジ カル の場合そ の基底状態 は、スキーム5の8-14の

7つ の構造の一次結合によ り近似 することができる。 カルボニル 酸素に対 してカチオン

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(23)

が近 づ け ば 、 酸素 上 に ア ニ オ ン中心 が存 在 す る 構 造 、す な わ ち8,9,11,12が エ ネ

ル ギ ー的 に 有 利 に な りそ の寄 与 が大 き くな る 。 そ のた め 、 フ エニ ル 基 の オル ト位 、パ ラ

33,35)位のス ピン 密度 が高 くな る こ とが 予 想 さ れ る 。

従 って表1の 結 果 か らPCRの 場 合 につ い て 、 ベ ンジル ・ア ニ オ ン ラ ジ カル と対 力 チ オ

ン種 との間の距離 を見積 もることができる'6β7)

ベンジルのメタルケ チル はTHF溶 媒中で は、そのアニオンラジカル とメタル カチオン

32)とが"Tight"な イオン対を形成 していることが知 られている。 メ タルのイオ

38)ン半径 と超微細結合定数 との比較からPCR中 のベ ンジル ・アニ オンラジ カル部 と

カチオン部 問の距離 は、おおよそ3Aと 見積も られた。

同様の結果 が表2に 示 すPCRと ベンジルの メタルケチル との可 視部における吸収極大

の位置からも求めるこ とができた。McClellandは 、可視吸収極大 の波数 レとアニオンラ

ジ カルとカチ オン閤の距離の逆数1/nの 閻 には直線関係があるこ と、ケ トンのアニ オン

ラジカルのイ オン半径 が2.0醍 購 も られる ことを示 した.39)こ の結果をPCRに

 

あ て はめ る と 、グ リニ ャール 試薬 の カチ オ ン 部 の平 均 イ オ ン半 径 は0.7Aと 見 積 も られ 、

PCRの アニ オンラジ カル部 とカチ オン部 問の距離 は約2,7Aと 見積 もられた。 これは

 

ESRス ペ ク トル か ら求 め た値(約3A)と ほ ほ一 致 す る 。

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24

表/, ベ ン ジ ル ・ア ニ オ ン ラ ジ カ ル 部 の 超 微 細 結 合 定 数. (mT)

ラジカル種 a(O位,P位)

a(m位)

a(その他)

PhMgBrの 反 応 のPCR(r.t.)

MeMgBrの 反 応 のPCR(r -t.)

EtHgBrの 反 応 のPCR(「 ・t・)

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(27)

PCRに おいて、 カチオン部がグ リニ ャール試薬のカチ オンラジ カルであり、ベ ンジル

の アニオンラ ジカル部 と"Tight"な イ オン対を形成 しているのならば、PCRの

ESRス ペ ク トルはス ピン ・ス ピン閤の相互作用による影響を受 けるはずであるが 、線幅

異常などの現象 は認め られない。 あるいは 、グ リニ ャール試薬 のカチオンラジカルも

ESR法 により観測されなかった。 このこ とは、最初の熱的電子移動過程 において生成

したグ リニ ャール試薬の カチオンラジカルは 、会合によってそのラ ジカル性 を失 っている

ことを示唆 する。 すなわち、2つ のラジカルイオン対がカチオン部で会合し、た とえば

15の ような構造を とることによりカチオ ン部のラジ カル性 を失 っているのな らば、上記

の現象を説明できる。 さらに、PCRが このような構造 ならば 、2つ のアニ オンラジカ

ル部 にある2つ のス ピン閤の相互作用による微細構造を持つ三重項分子特有のESRス ペ

ク トルが観測されるはずである。

実際に、2一 メチルテ トラヒドロフラ ン(MTHF)溶 媒 中にお いて 、安定なPCRを

大量 に発生 させ 、それを液体窒素温度にまで冷却 し溶媒をガラス状 に してESRを 測定す

35,40)る と、図8に 示すよ うな三重項のESRス ペク トルがg=2.0に 観測された 。

また、三重項分子に特有のg=4.0の 禁制遷 移スペク トルも観測 された。

この三重項 のESRス ペク トルの微細構造 の解析より、2つ のス ピン閤の相互作用 のエ

ネルギー(D')が 求まる。 このD'よ り15の2つ のアニ オンラジカル部の2つ の

ス ピン閤の平均距離は5.O武 と見積も られた。40)こ の値 は15の 構造より予想 される

値 として妥当なもので ある。

同様に、GCRもMTHF溶 媒中で発生 させ 、その溶液 を冷却 しガラス状 にしてESR

を測定する と、図9に 示すような三重項 のESRス ペ ク トルが観測さ れた。 微細構造 か

ら決定 したス ピン間相互作用のエネルギー(D')よ り見積 もられ た2つ のアニ オンラジ

カルの平均 スピン閤距離は5.9Aで あ った。 このGCRの 場合 、カチオン部 の会合にマ

グネシウム ・モノハライ ド塩部が関与するため 、たとえば16の ような より

"Tight"な カチオ ン部の会合が予想される。

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(32)

2・/-3ア ル キ ル(又 は ア リ ー ル 〉 ラ ジ カ ル の 移 動 過 程 に

つ い て

グ リニ ャール 試薬 に対 して過剰量 のベ ンジルを反応 させ たときに得 られるPCRは 非常

に安定であ り、完全 に乾燥脱気 したTHF溶 媒中に数年閤存在 し続 ける。 しか し、この

PCRを 含 む溶液にグ リニャール試薬を加 えてそのB/G比 を変化させる と、その変化量

に対応 して図10に 示 すように、(A)PCRの 量 は減少 し、(B)あ るいは完全に消失

'し、(C)代 わ りにGCRが 現れる 。

この結果 はグ リニ ャール反応の最初の電子移動 は一分 子のベンジル に対して一 分子 のグ

'リニ ャール試薬 が作用すれば起 こるが、それ につづ くアルキルラジ カルの移動にはさらに

'もう一分子 のグリニ ャール試薬の作用が必要で ある ことを示唆する 。

ベ ンジル のグリニ ャール反応 において、PCRが α一置換ベ ンゾインに変化するアルキ

・ル(又 はア リール)ラ ジ カルの移動における もう一分子 のグ リニ ャール試薬の作用 はス ト

.ップ トフロー(Stopped-flow)法 を用いてPCRの 挙動を直接的に追跡 した

結 果を速度論 的に解析 し、確認 した。

グ リニ ャール試薬が大過乗ilの条件下(B/G=1/10)、THF溶 媒中、ベンジルを

反 応させると、一瞬の間溶液中にPCRが 現 れるが 、アル キルラジ カルの移動 がすばや く

進 み一段階目の付加反応が完結 し、次の電子移動 によ りGCRが 溶液中に現れる。 この

速 いPCRの 生成過程(グ リニャール試薬か らベンジル への電子移動)と 減衰過程(ア ル

キルラジカルの移動過程)の(擬)一 次の速度定数を 、グ リニ ャール試薬の初期濃度 を変

化 させて求め た。

この反応条件で は、PCRの 減衰は一次の反応曲線に乗 り、Guggenheim法 によ り得 られ

41)る図11の ような直線の傾きからその一次の減衰速度定数 が求 まる 。 その結果 を表

3に まとめる。

表3か ら明 らかなように、どのグリニ ャール試薬 についても、PCRの 減衰(ア ルキル

ラジ カルの移 動 〉の一次 の速度定数 は、グ リニ ャール試薬の初期濃度に比例する。 この

結 果 は、以下のスキーム6に より訳明するζ とができる ・

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(37)

グ リニ ャール 試薬 大 過 剰 の条件 で は 、ス キ ーム6の(14)式 は(17)の よ う に表現

で き る 。

…d[B1/dt= -kl[G]o[B](17)一

一…([G]o:グ リニ ャー ル試 薬 の 初期 濃 度,[G]盤[G]o>〉[B]o)

_ま た 、(15)式 よ り 一一

_K、-k、/k-・ 一[D]/[MIP]2(18)

k2>>k3と 仮定 して(16)式 よ り

d[A]/dt=k3[G]o[D](19)

こ こで 、

[B]+[MIP]+2[D]+[A]=[Bjo(=一 定 〉

が 成 立 す る ので

"一一d[Bl+d[MIP】+2d[D]+d[A]=0(20)

・… とな る。(14)(15)(16>(18>式 よ り

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(38)

d[MIP】/dt-kl[G]。[B]-2k、[MIP]2-

+2k_2[D]+k3[G]o[D1

=kl[G]o[B]+k3[G]o[D]〈21) 一

(17)(19)(21)よ り

'…d[MIP]/dt+d[B]/dt=k3[G]o[Dl=・d[A1/dt

._従 って

.-d[MIP]+d[BJ=d[A】-r(22)一

(20>(22>よ り

2d〔D]+2d[A]ニ0

.'.d[D]/d[A]=-1(23>

従 って

一_d[D]/dt=(d[D]/d[A]〉 ・(d〔A]/dt)

...一=-k3[G]o[D]=-kobs.[D](24)

とな る 。

式(24)は 、グ リニ ャール 試 薬 大過 剰 の条 件 でのPCRの 減 衰 の見 か けの 一 次 の 反応'…1

速 度 定 数(kobs.)が 真 の 二次 の 速 度定 数(k3)と グ リニ ャール 試 薬の 初期 渥 度

([G]o)と を 乗 じた も ので あ る こ とを示 し 、表3の 結 果 と一 致 す る もので あ る 。

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(39)

すなわち 、PCRか らのアルキルラジ カルの移動過程 には、電子移 動を起こ したグ リニャ

ール試薬以外 に、もう一 分子のグ リニ ャール 試薬の関与が必須であるこ とを示す。

このアル キルラジ カルの移動過程 の二次の速度定数(k3>を 、同様 にして求めた電子

移動過程の二次の速度定数(k1)と 共 に表4に まとめる 。

以上 、グ リニ ャール試薬 とベンジル とのTHF溶 媒中で の反応機構をスキーム7に まと

める。

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(42)

24--28)

2・2モ ノ ケ ト ン の 反 応

前節において、グ リニ ャール試薬 とベ ンジル とのTHF中 での反応では、最初の電子移

動 により生 じた安定なラ ジカル中閤体が カチ オン部で2つ のラジ カルイオン対が会合 した

二量体構造を とってい ること、そ の中間体か ら付加生成物 への アルキル(又 はアリール)

ラジカルの移動過程 にはもう一分子の中性グ リニ ャール試薬の作用が必須であるこ とを 明

らかに した 。

この反応機構が 、ベンジルのようなジケ トン化合物に特有のものであるか、それとも広

くケ トン類一般 に共通 のものであるかについ て、芳香族モ ノケ トン類のグリニ ャール反応

の中閤体 ラジカル種を直接的に観測する ことにより検討 した。

2・2-1ラ ジ カル種の発生 と反応生成物 について

MeMgBrと フル オ レノン(17)と をTHF溶 媒 中において室温で反応させると、

反応溶液はコハ ク色 にな り比較的長寿命(τ 一5min>な ラジ カル種が現れる。

このMeMgBrと フル オレノンとの反応 において現れたラジ カル種のESRス ペク ト

ル は、図12に 示 すような鋭い超 徴細構造を持ち、その解析からこのESRス ペ ク トル は

フル オ レノンのアニオンラジカルを構成要素 とする中閤体のもので あることが判明 した。

同様 にMeMgBrと1一 メチル フルオ レノン(18)と の反応で はコハ ク色のラジカ

ル 種(ESRス ペク トル;図13)が 、MeMgBrと ベ ンゾフ ェノン(ユ9)あ るいは

MeMgBrと2一 メチルベンゾフ ェノン(20)と の反応では ピンク色のラジカル種

(ESRス ペ ク トル;図14.15>が 現 れた。7)超wamaes造 の解析から、図13-

15に 示 すESRス ペ ク トルはそれぞれ1一 メチルフル オ レノンの アニオンラジカル 、

ベ ンゾフ ェノンのアニ オンラジカル、2一 メ チルベンゾ フ ェノンの アニオンラジカルを構

成 要素 とす る中問体のものである と帰属さ れた。

MeMgBrに 代え 、EtMgBr,n-BuMgBrな どのグ リニャール試薬をフル

ォ レノン,あ るいはベンゾ フェノンに対 してTHF溶 媒中で反応 させた場合も 、ほぽ同 じ

超微細構造を持つESRス ペク トル が観測され た。

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43

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44

図12フ ル オ レ ノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 間 体 のESRス ペ ク トル 。

轍ー-ー湘卿

胸 榊ト

周剛トー0 .5mT-〉

図131一 メ チ ル フ ル オ レ ノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 閻 体 の

ESRス ペ ク トル 。

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45

図/4ベ ンゾ フ エノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 閻 体 の

ESRス ペ ク トル 。

ぐ 一 〇.5mT-→ レ

図152一 メ チ ル ベ ンゾ フ エノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 間 体 の

ESRス ペ ク トル 。

ww,

ぐ 一 〇.5mT・ →レ

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(46)

完 全 に乾 燥 脱 気 したTHF溶 媒 中 で のMeMgBrと こ れ らの ケ トン との反 応 生 成 物 は

通 常 の付加 生 成 物で あ る9一 メチ ル フル オ レ ン ー9一 オ ール(21a)、1,9一 ジメ チ

ル フル オ レ ン ー9一 オ ー ル(22)、1,1一 ジ フ ェニ ル エ タ ノー ル(23a)、 お よび

1一 フ ェニ ル ー1-(o一 トリル 〉エ タ ノ ール(24>で あ った(ス キ ーム8)。 この

10)反 応 にお い て 報 告 さ れ て い る還 元 生 成 物 や ケ トンの二 量 体 は 確 認 で きな かった 。

一 方 、周 様 の 条 件 に お け るEtMgBr、n-BuMgBrな ど の β一水 素 を 持 つ グ リ

ニ ャール 試 薬 とベ ンゾ フ ェノン類,フ ル オ レ ノ ン類 との 反 応 で は、通 常 の付 加 生 成 物 に加

え て 大量 の 還 元 生 成 物 が 得 られ た 。 この 還 元 生 成 物 につ い て は(2・2-4)で 詳 し く

記 述 す る 。

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47

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(48)

乞禰7)2・2-2ラ ジ カ ル 中 間 体 の 構 造

ベンジル の場合 と同様 に、ベンゾ フ ェノンのグ リニ ャール反応 中間体につ いてそのカチ

オン側 に関 する知見を得るため、ベ ンゾ フ ェノンと種々のグ リニ ャール試薬 とのTHF溶

媒 中での反応 において現 れる ピンク色の中間体ラ ジカル種 のESRス ペク トルか らその超

微細結合定数を精確に求めた。 そ して、それをTHF中 で調裂 したベンゾ フェノンのメ

タル ケチル と比較 した。

ベンジルの場合に比 べてベンゾフ ェノンで は、電子移動 を受けた カルボニル基 とフェニ

ル基 との共役が大 きい ため 、カチオ ン部の摂動 が アニオンラジ カル 部のESRス ペ ク トル

の超徴細構造により大 き く現れるこ とが期待 される。

求めた超 徴細結合定 数を表5に ま とめる。

ベ ンゾフ ェノンのグ リニ ャール反応における反応中閤体 ラジカル種 のオル ト位の水素 に

よる超微細結合定数(entry1-4)は 、単 なるマグネ シウムモ ノハライ ド ・カチオ ン

(+MgB,)や モノアルキルマグネシウム.カ チオン 〈RMg+)と イオン対 を形成 し一

ているベンゾ フ ェノンの アニオンラジカルの場合(entry5-9)に 比べて小 さな値を示

した。

ベ ンジルの場 合と同憐 に、ベ ンゾフ ェノンの アニオンラジカル は、スキーム9の25一

旦一Ωのような構造の寄与 を持ち、カチオンが カル ボニル酸 素上 に近づ くことによ りそ のう

ちの25,27.28の 構造の寄 与が大 きくな るために、よ り大きな オル ト位 、パラ位 の

33)水素 による超 微細結合定 数が期待される。

すなわち、グ リニ ャール反応の中間体の方が 、ベンゾフ ェノンのMgBrケ チルなどに

比べてより小 さなオル ト位の超微細結合定数 を示すことよ り、グ リニ ャール反応の中間体

の カチオン部 は単なる 十MgBrやRMg+よ りも大 きなものである ことが明 らかにな っ

た。 この結果 は、グ リニ ャール反応の中間休 の カチオン部 にはアル キル基が存在する こ

とを示唆する 。

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49

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50

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(5/)

フルオ レノン とグ リニ ャール試薬 との反応 において現 れるコハ ク色 のラジカル中間体に

ついても、同 様にそ のESRス ペ ク トルか ら超微細結合定 数を検討 した。 その結果を表

6に まとめる。 フル オ レノンの場合 も、その グ リニ ャール反応 のラジカル中間体の

ESRス ペ ク トルの超 微細構造 は、単 なる+MgBrを 対 力チオン とするフル オレノ ンの

アニ オンラジ カルの場 合 とは僅かながら異な っていた。 しか し、そ のオル ト位(Ha)、

パラ位(Hc)の 水素 の超徴細結 合定数 に対す る効果はベンゾフ ェノンの場合ほど顕著 に

は現れなか った。

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52

表6フ ル オ レノ ン ・ア ニ オ ン ラ ジ カ ル の 超 微 細 結 合 定 数 。

(mT)

ラ ジカル種a(H

。)a(Hb)a(H。)a(Hd)1そ の 他

MeMgBr・ との 中 間体

EtMgBrと の 中 間体

0.2660.0430.3420.075

0.2660.0430.3420.075

n-BuMgBrと の 中間 体0.26600430 .3420.075

b)MgBrケ チル

Liケ チル

Kケ チル

0.266003903420.075

0.214(0.011)0.3191.iO

.0690.043

0.211(0.01)03190.070

a)超 徴細 結 合 定 数 は3回 の実 験 の平 均 値 。 標 準 偏差 の大 き さ は0.OOlmT以 下 。

THF中.25℃ 。b)文 献21の 方 法 に よ り フル オ レノ ン ・カ リウ ムケ チ ル と

MgBr2か ら調製 した 。

○ 全C

Hd

Hc

Hb

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(53)

これらの フル オ レノン類 、あるいはベンゾ フ ェノン類のTHF溶 媒 中におけるグ リニャ

ール反応 によ り生 じた比較的安定な中問体ラジ カル種のESR法 による観測で は、ベンジ

ルg場 合 と同様 に、グ リニ ャール試 薬のカチオ ンラジカル はESR法 で はま った く観測 さ

れなか った 。 この ことは、モノケ トン類 のグ リニャール反応において現 れる中間体ラジ

カル種 も、2つ のラジ カルイオ ン対 がカチオン部 で会合 した二量体 構造である ことを示唆

する。

実際 にMTHF溶 媒中 において 、MeMgBrと1一 メ チル フル オ レノンとの反応 中間

体 ラジカル種を調製 し、それを液体窒素温度 に冷却 してESR法 で 観測すると、g=2.O

に三重項状態に特有 の徴細構造を持 った図16の ようなESRス ペク トルが観測された。

同様に、MeMgBnと2一 メチルベンゾ フェノンとの反応 中閤体 も図17の ような三1

重項のESRス ペク トル を示 した。

また 、MeMgBnと フル オレノ ンとの反応 中間体ではその中間体 の絶対濃度が低いた

め図18の ようにはっき りとはしないが、 しか し 矢印の所 に再現性 よく三重項 のESR'

スペ ク トルの微細構造 に由来する と思われる吸 収が現れた。

しか し、MeMgBnと ベンゾフ ェノンとの反応中間体 では、や は りその中間体の濃度

が十分に高 く得 られず 、三重項のESRス ペ ク トル は観測できなか った。

微 細構造 よ り求め たスピン間の相互作用の エネルギー(D)と それより見積も った

2つ のアニオ ンラジカル上 の2つ のス ピン悶の平均距離(r>を 表7に まとめる 。 これ

らのtp'1はた とえば、31あ るいは32のJ、 うな粥造の二量休中間体の2つ のアニオ ンラ

33)ジ カル ヒの2つ のスピン闇距劇 として妥当な植である。

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54

図/61一 メ チ ル フノレオ レノ ン とMeMgBrと の 反 応 帽 体 の 三 顛 の

ESRス ペ ク トル 。

卿llCH30

十MeMgBr

一14 .2mT→ 〉

2D,=14.2mT

D量=7.1mT

r=7.3蓋

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55

図 「72一 メ チ ル ベ ンゾ フ エ ノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 間 体 の 三 重 項

のESRス ペ ク トル 。

CH3

◎†⑥0

+MeMgBr

噸 国一 園囲24.6mT團 一 蜘 レ

2Dl=24.6mT

D'=12.3mT

。.6.1区

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56

図18フ ル オ レ ノ ン とMeMgBrと の 反 応 中 間 体 の 三 重 項 の

ESRス ペ ク トル 。

 

五職ー

、 

⑳呂

十MeMgBr

<← 一一14,8mT-一 》 一

2D曾=14.8mT

Dl=74mT

r=72A

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57

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+1?添 ノ ノ  caノ 魅

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留歌認

59

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(60)

1一 メチル フル オレノンのグ リニ ャール反応で は 高濃度 にラジ カル中閤体 が得 られたヘ

が 、一方無置換 のフル オ レノンの場合にはそのラジカル 中間体の濃度 はあまり高 くな らな

か った。 これは、後者 に比べて前者では、立休障害のためにアル キルラジカルの移動速

度 が遅 くな っているためで ある と考え られる。 たとえばMeMgBrと フル オレノン と

の反応での電子移動反応の速度定数 は、後述 の表8に 示 すように、お およそ15M一is-1

であるが、1一 メチル フル オ レノンの場合は7M-1s-1と 約1/2で 大きな差 はない.

しか し、そ れにつづ くメチルラジカルの移動反応 の速度定数 はフル オレノンの場合

0.07M-ls-1で あるが 、1一 メチルフル オ レノンの場合 く0.005M-1s-1と10倍

以上の差があ った。 実際 にフルオ レノ ンの場 合 と1一 メチル フル オ レノンの場合 とにお

いて捕捉されたラジカル量 の比は数十~数百倍であった 。

モ ノケ トンのグ リニ ャール反応における中間体ラジカル も、ベ ンジルの場 合 と同様 に二

量体構造を とっている ことを確認 したが、フル オ レノンの場 合には 、この二量体構造の寄

27)与の大きさを見積 もる ことができた。

フル オレノ ンのメタル ケチル については、その単量体 ・二量休 間の平衡が可視吸収 スペ

35)ク トルを用 いてよ く研究 されている。 フルオ レノンの リチウムケチル は図19Bの

よ うに530nmと450nmに 極大を持つ2つ の吸収帯を持つ。 このうち

530nmの 方が単量体 、450nmの 方が二量休 に帰属 されている。 フル オ レノ

ン とMeMgBrと の反応 において得 られるコハ ク色の中間体ラジ カルの可視吸収スペク

トルは、454nmに のみ吸収極 大を持 ち、530nmに は非常 に弱い肩 が存在する

だけであった(図19A)。 これは、グ リニ ャール反応の中閤休 はTHF溶 媒 中で は、

そ の大部分が二量体構造を とっていることを示唆する 。

フル オレノンのナ トリウムケチルの単 量体 と二量体の吸光度係数の文献値35)よ り、

このグ リニ ャール反応の中間体の会合定 数をおおよそ見積 もった。 会合定数は25℃

において少な くとも7×106M-1以 上で ある と見積も られた。 これは、フルオ レノ

ンのナ トリウムケチルの会合定数が、同 じTHF溶 媒中で2x103M-1で ある35)

こ とを考える と大きな値である。

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6/

図19フ ル オ レ ノ ン の ア ニ オ ン ラ ジ カ ル の 可 視 吸 収 ス ペ ク トル 。

AMeMgBrと の 反 応 中 間 体 。Bリ チ ウ ム ・ケ チ ル 。

Abs.

1,0

0400

A

500 600nm

Abs.

0.4

0400

B

500 600nm

THF中 、25℃ 。

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(62)

同様に、1一 メチル フルオ レノンとMeMgBrと の反応中間体 ラジカル と1一 メチル

フル オレノ ンの リチウムケチルの可視吸収スペ ク トルを図20に 示 す。 この場 合も、グ

リニ ャール反応のラジカル中間体 はその大部分が453nmに 吸収極大を持つ二量体

構造であるこ とがわか った。

ベンゾフ ェノン とMeMgBrと の反応中間体も図21Aに 示す ように550nm

33)に吸収極大 を持つ 二量体の寄与が大きい と思われるが、吸収 帯が広幅なためフルオ

7)レノン類の場合ほど明 白な結果 は得 られなかった。

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63

図201一 メ チ ル フル オ レ ノ ン の アニ オ ン ラ ジ カ ル の 可 視 吸 収 ス ペ ク トル

AMeMgBrと の 反 応 中 間 体 。Bリ チ ワ ム ・ケ チ ル 。

Abs.

0.2

0400

A

500 600nm

Abs.

2、0

0400

B

500 600nm

THF中 、25℃.

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64

図2/ベ ン ゾ フ エノ ン の ア ニ オ ン ラ ジ カル の 可 視 吸 収 ス ペ ク トル 。

AMeMgBrと の 反 応 中 間 体 。Bリ チ ウ ム ・ケ チ ル 。

Abs.

0.2

0500

A

600 700nm

Abs,

1.o

0500

B

600 700nm

THF中 、25℃ 。

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(65)

2・2-3ラ ジ カ ル 中 問 休 の 挙 動24-27)

ベンゾ フ ェノン類 、お よびフルオ レノン類 のTHF溶 媒中 における グ リニ ャール反応 に

つ いて、反応中間体ラジ カル種を直接的に追 跡することにより、その反応 における最初 の

電子 移動の速度定数 と、それにつづ くアル キル(又 はアリール)ラ ジ カルの移動 の速度定

26)数 を求 めた。

この最初の電子移動の過程は、グ リニャール試薬 に一次 、モノケ トンに一次の二次反応

で あ った。 また、アルキルラジカル の移動過 程は、ベ ンジルの場 合 と同 じく、二量体中

閤体ラジカル に一次 、グ リニ ャール試薬に一 次の二次反応であるこ とがわか った 。 これ

22)は、モ ノケ トンのグ リニ ャール付加反応もベンジルの場合 と同 じくスキ ーム10の

ように進むこ とを示 す。 求 めた電子移動過程の二次の速度定数(kl)と アル キル(又

はア リール)ラ ジカル 移動過程 の二次の速度定数(k3)と を表8に まとめる 。

還元性を持つグ リニ ャール試薬(EtMgBr,n-BuMgBr)と ベ ンゾ フェノン

類 との反応 において 、その反応 中間体の減衰曲線 は擬一次反応条件 でも単純な一次の曲線

には乗 らなか った。 これ は、少 なくとも2つ の減衰過程が存在 していることを示す。

このうち速い過程はMeMgBrの 場合 と同 じく中間体 に一次、グ リニ ャール試薬 に一次

で あ った。 遅い過程の一次速度定数 はグ リニ ャール試薬の初期濃度 により変化 しなか っ

た。 後述の結果(2・2-4)か ら、前者が アルキル ラジカルの移動 、後者が β水素 に

よる還元過程である と推測される。

電子移動 が非常 に速い場合、た とえばn-BuMgBrと ベンゾ フ ェノン との反応で は、

600nm付 近 に極大 を持つスキーム10の33が 現れ、そ れが二次の減衰曲線に従

い ピンクの安定 な中 間体34に 変化する様子 が図22の ように観測された。 この減衰曲

42)線 と、ベンゾフ ェノン ・マ グネシ ウムケチルの吸光度係数 の文献値 から この二量

化過程の二次 の速度定 数(k2)は 、11×107M-1s-1程 度 と見積も られた。

この結 果は(2・2-3)で 仮定 したk2>>k3を 保証する ものである。

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66

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67

表8グ リニ ャー ル 反 応 の 反 応 速 度 定 数 。a26)

1(etone RMgBr(R-) ・、(ガ1s-1) k,(M"s-1)

◎ † 宕一◎00

臥ρ昌

鮫ρllCH30

Ph

Me

n--Bu

Et

Me

Me

23X工0

42×10

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>>1×105

1.5×10

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8×10

24×10

8×103

41×10

一27

×10

一3く5×10

◎ 一曾一◎0

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Me

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Et

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22.3×10

27×10

一25×10

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-13×10

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-11×10

a)ケ トンに対 して10倍 量のグ リニ ャール試薬を用いた 。求めた一次の速度定数 はグ リ

ニ ャール試薬の初期濃 度 に比例 した。これ らの値の標準偏差 はその値 の25%以 下であ っ

た 。THF中25℃ 。b)ラ ジカル中 閤体の量が十分で はな かったため 速度論

的 な検討が行なえなか った。

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68

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(69)

28)

2・2-4付 加 反 応 と還 元 反 応 の 比 較

MeMgBrと モノケ トンとの反応の生成物 は、カルボニル基の炭素 に対 して メチル基

が付加 した正常付加生成物 のみであ った(2・2-1)。 一方、 β水素を持つ グリニ ャ

ール試薬(EtMgBr,n-BuMgBn)と モノケ トンとの反 応で は正常付加生成物

以外 に 大量の遠 元生成 物が得 られた(ス キーム11)。

この ような β水素 を持つグ リニ ャール試薬が還元反応を行う性 質 は、グ リニ ャール試

薬 の発賄 より酷 されている.1)そ の後 、翫 が β位の水剰 こよること、43)基 質

による翫 生成物の量の変化、44)付 加反応 との速戯 、45,46)立 体化学的 働 果'7)

48) につ いて研究が行われてきた が、そのあるいは水素 ・重水素 による同位体速度効果

14)15) のラジカル機構(ス キーム12>で は説明す結 果の多くはHolm' あるいはAshby

るこ とがで きなか った 。

そ こで 、フル オレノン類 、ベンゾ フ ェノン類 と還元性 を持つ グリニ ャール試薬 との反応

について、付加生成物 と還元生成物 との比が反応条件によ ってどの ように変化するかを検

討 した。

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70

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7/

スキ ~ム12Holmの 提 唱 し た 反 応 機 構。14)

Rト{gX↓Ph2C=0

コ  R+Ph2C-OMg×

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/RPh

2C \

OMgX

Ph2CHOMgX・R -H

Ph2C-OMg×

1-R.H・R.H

Ph2COMgX

Ashbyの 提 唱 し た 反 応 機 構 。15)

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(72)

ケ トンとグ リニ ャール試薬の混合 比 と、付加 ・還元生成物比 との関係を表9に 示 す。

そ の結果をグラ フ化 したのが図23で ある。 ケ トンに対 してグ リニ ャール試薬を過剰量

反 応させ た場合の方が付加生成物 が多 く得 られた。 この実験ではグ リニ ャール試薬の濃

度 を一定 に しているので 、結果は反応 次数の効果 を示 している。 すなわ ち還元反応に比

べ 、付加反応 には高次数 のグリニ ャール試薬 が作 用 しているこ とを示 す。

また、ケ トンとグ リニ ャール試薬 の混合比 が一定(ケ トン/グ リニ ャール試薬一〇.5)

の条件下で の反応系の絶対濃度 と付加 ・還元生成物比 との関係を表10に 示 し、そ れをグ

ラ フ化 して図24に 示 す。 実験誤差が大 きいため定量的な議論 はで きないが、反応系 の

絶対濃度が高いほど付加生成物比も高 くなる傾 向があ った。 この結果も また付加反応 に

おける高次数のグ リニャール試薬の作用を示唆 する。

また、溶媒の種類をTHFか らジエチルエ ーテル(DEE)に 変 えた。 グ リニ ャール

試薬はTHF溶 媒中においては単量体 の形で存在するが 、DEE中 では会合 して二量体な

どを形成 しや すくなる ことが知られている 。49)他 の条件を一定 に して、溶媒 による付

加 ・還元生成物比の差を表11に ま とめる 。T日Fに くらべ,DEE中 で は付加生成物

の比が高 くな った。 これ は、二量 化 したグ リニ ャール試薬 とケ トンの反応で は、電子移

動 によりラジカル中間体ができた時点 で、その 中閤体の近傍 にも う一分子のグ リニ ャール

試薬が存在 するために アルキルラジカルの移動が起 りや すくなるためであると説明で き

る 。

以上の結果 は付加反応 と還元反応 を比較 した とき、付加 反応 には複 数分子のグ リニ ャー

ル試薬の関与 が必要で あることを示す。 この結果 はベ ンジルの系 、あるい はモ ノケ トン

の系で行 った反応速度論 的な解析の結果 と一致する。

また、還元反応につ いては、一分子の ケ トンに対 して一分子のグ リニ ャール試薬 のみが

作用 して反応が進行 していることが示 された。 一分子のグ リニ ャール試薬 と一分子のケ

21,50) を含む単量体ラジ 力トンとか ら成 り、しかも活性な有機金属 のカチオンラジ カル

ル ィオン対33が 還元反応の中間体で あると推 測される(ス キーム13)。

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73

表9 ケ トン とグ リ

の 関 係 。

ニ ャール試 薬 の反 応混 合比 と 付 加 ・還元 生成 物比

Ketone M Grignardreagent(M KIGaconversion(%) Addition/Reduction

Fluorenone 0.0790.126)(0.157)(0.188)(0.314)

(0.077)(0.122)(0.153)(0.184)(0.306)

Benzophenone

(0.079)(0.126)(0.157)(0.188)(0.314)

(0.077)(0.122)(0.153)(0.184)(0.306)

4-Methylbenzophenone(0.016)(0.079)(0.126)(0.157)(0.188)(0.314)

(0.075)(0.120)(0.150)(0.180)(O.301)

(O.Ol5)(0.077)(0.122)(0.153)(0.184)(0.306)

(0.073)(0.117)(0.146)(0.175)(0.292)

EtMgB(0.]57(0.157)(0.157)(0.157)(0.157)

C(0.153)n-BuMgBr(0.153)(0.153)(0.153)(0.153)

EtMgB,〆(・.157)

(0.157)

(0.157)

(0.157)

(0.157)

n-B・MgB・ 。(0.153)

(0.153)

(0.153)

(0.153)

(0.153)

Et,gB,イ(・.157)

(0.157)

(0.157)

(0.157)

(0.157)

(0.157)

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(0.150)

(0.150)

(0.150)

(0.150)

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(0.153)

(0.153)

(0.153)

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(0.146)

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2.58

2.342.121.75

1.75

3.383.Ol

1.881.30

1.14

0.214

0.1440.138

0.1440.139

0.1760.111

0.1420.114

0.116

0.4190.2940.1970.1790.1700.173

0.1930.1:390.1170.1210.120

0.5710.1570.1410.0660.0540.026

0.0670.0460.0300.0260.028

a)グ リニt'一 ル試薬 とケ トンの初期濃度比。b)ケ トンの反応率。c}付 加 ・還元

生成物比はIH-NMRで 求めその値をカラムク日マ トグラフィーによる単離 収 率 によ

り確認した。d)働"・ 翫 生成物比ts■H--NMRで 勅 た.

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74

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77

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78

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(79)

3.反 応 の 機 構

以上 に述べてきた研 究 により、ケ トンの グ リニ ャール反応 の機構 に関 して以下のことを

明 らかにした。

1グ リニ ャール反応 は熱的な電子移動によ り開始するラジカル 反応であ り、電子 移動

→ アルキル(又 はア リール 〉ラジカル移動 と反応は段階的 に進行する。

2.最 初の電子移動過 程により生 じた安定反応中間体ラジカル種 は、グ リニ ャール試薬

のカチオン部で会合 した二量体構造を持つ 。 中閤体はこの二量体構造であることによ り

そ のグ リニ ャール試薬 力チ オン部はもはや カチオンラジカルで はな いので、安定 な中間体

として存在 し得る。

3.通 常のグ リニ ャール 付加反応 におけるアルキル(又 はアリール)ラ ジカル の移動過

程 には、最初 に電子をケ トンに与えたグ リニ ャール試薬 の他 に、も う一分子 のグ リニ ャー

ル 試薬の作用が必須である。 また 、副反応である還元反応 におい ては一分子 のケ トンに

対 して一分子のグ リニ ャール試薬 のみが作用 している。

申請者はこれらの結果を基 に、ケ トンのグ リニ ャール反応が、以下 に示すようなスキ ーム

14で 進行 していることを明 らかに した。

hた だ し、スキーム14に おいてpathA,pathBに よる主反応 経路は明 ら

か にされたが 、pathCの 存否 を確定する には至 っていないことを付け加える必要が

ある。

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(81)

4.実 験 の部

融 点 は 柳 本 融点 計 を 用 い て測 定 した未 補 正 の 値で あ る 。IH-NMRは 日本 電 子JN

M-PS-100型 核 磁 気 共 鳴装 置 を使 用 し、化 学 シ フ トの 値 はテ トラ メ チル シ ラ ンを 内

部 標 準(δ=O)に 用 い て 決定 した 。i3C-NMRは 日本電 子JNM-FX400型

FT核 磁気 共 鳴装 置 を 使 用 し、化学 シ フ トの 値 はCDCl3(δ 一76.85)を 内 部 標

準 に用 い て 決定 した 。IRス ペ ク トル は 日本 分 光IRA-1型 赤 外 分 光 光度 計 を 、可 視

・紫 外 吸収 ス ペ ク トル は 島津UV-200お よび島 津UV-160型 分 光光 度 計 を 、マ

ス スペ ク トル は 日本電 子JNM-DX-300型 質 量分 析 計 を 用 い て 測 定 した 。

ESRは 、 日本 電 子PE-3X型ESR装 置 にES-SCXAX-bandマ イ ク ロ

波 ユ ニ ッ トを つ けた も の 、お よ び 日本 電子JES-FEIXGX-bandESR装

置 を 用 い て測 定 した 。

ス トップ トフ ロー は 、 ユ ニ オ ン技 研RA-103ス トップ トフ ロー 装 置 にRA-451

デ ー タ ー処 理 装 置 と組 み 合 せ たも の 、お よび 大 塚 電 子RA-401ス トップ トフ ロ ー分 光

光 度 計 にRA-415デ ー タ ー処 理 装 置 を 組 み 合 わ せ た も のを 用 い た 。

カ ラ ム ク ロマ トグ ラ フ ィー に は 、 ワ コ ーゲ ルC-200シ リカゲ ル を 、薄層 ク ロマ トグ

ラ フ ィー に は メル クKieselgelHF254を 用 い た 。反 応 溶 媒 以外 の溶 媒 は市 販 品 を 単 蒸 溜 し

て 用 い た 。

4・/反 応 溶 媒 グ リ ニ ャー ル 試 薬 基 質 ケ トン の 調 製

THF、MTHF、DEEは 市販 のものをベンゾフ ェノン ・ナ トリウムケチルを用いて

乾燥 し、蒸溜 したものを用いた。

2)グ リニャール試薬 はアルゴ ン気流下0℃ でマグネ シウム過剰 の反応条件 下 、常 法

に従い合成 した。金属マ グネ シウム として は、グリニ ャール反応用 マグネシウム(M9>

99.5%)か 、高純度マ グネ シウム(M9>99.995%)を 用いた。 プ ロモベ ンゼ ン、エ

チルブ ロミ ド、n一 ブ チルプ ロミ ド等 は、市販 の特級試薬を蒸溜 して用いた。 メチルブ

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(82)

ロミ ドは市販の特級試薬を気休に して用 いた。 グリニ ャール試薬の濃度はGilmanの 方

51) グ リニ ャール試薬 の保存は、アルゴンで置換 した丸 底フラスコ法 により決定 した。

に三方コックを付け外気 と遮断 し、そ の容 器中 にグ リニ ャール試薬 の溶液を入 れ 、その容

器を冷暗所 に保 存 した。

ベ ンジル(1)は 、ベ ンゾインの空気酸化 により得たものを四塩 化炭素中で4回 再結晶

52)したものを用いた。

b・ ・ziゴ1.:'"m:》.95.2・C・IR(KB・)i67・cm-1・1H-N瓦1R(亡DCf3yδ

7.4-7.7(・.6H)8.….4H)・13C-NMR〔CDCI3)δ128・8・129・7・132・8・

134・7・194・3」MS(・ ・1・.["+,)ワ7(7。)/・5(/・v?Z'・(S♪.

フ ル オ レ ノ ン(17)は 、 市 販 の 特 級 フ ル オ レ ノ ン を エ タ ノ ー ル か ら 再 結 晶 し て 得 た 。

fl・ ・ren・neL7.:m.P.840C;1H-NMR〔CC14)δ7・ ・5-7・6〔m・8H)

ppm;MS(rel.Int.)76(17〕152(32)180(100)

1一 メ チ ル フ ル オ レ ノ ン(18)は 、2一 ア ミ ノ ー2'一 メ チ ル ベ ン ゾ フ ェ ノ ン か ら

53)

Ullmann合 成 に よ り 得 た も の を メ タ ノ ー ル か ら 再 結 晶 し た 。

1-meth,1f1・ ・ren・ne坦,・m.・.98,5・C・1H-NMR(CCl4)δ2・6(・ ・3H)

6.9-7.6(m,7H)ppm;MS〔re1.Il)t.)165(58)194(100).

ベ ンゾ フ ェノ ン(19)は 、市 販 の特 級 ベ ン ゾ フ ェノ ンを 四 塩 化 炭 素 お よび エ タ ノ ー ル

中 で 再結 晶 して得 た 。

benz・ph・ ・。ne坦 ・・m…48・ ・oC・1H-NMR(CC14)δ7.4-7.8

(m,10H)PPm;MS〔re1.ll)t.)77(98)105(100)181(31)182(98〕.

2一 メ チル ベ ンゾ フ エノ ン(20>は 、 ベ ンゼ ン と塩 化o一 トル オ イ ル との 塩 化 アル ミ

ニ ウ ムを 用 い たFriedel-Crafts反 応 に よ り合 成 した も の を 、減 圧 蒸 溜 を2度 行 い 得 た 。

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(83)

2-meth・lbenz・ph・ …e皿 ・:b…14・oCq2T・rr)・ 五H-NMR〔CCI4〕

δ2.3(s.3H)70-7.8(m.9H)ppm;MS〔rel.lnt.)77〔54)91(33)

105(24)ll9〔29)195(100)196〔73)

4一 メ チ ル ペ ン ゾ フ ェ ノ ン は ト ル エ ン と 塩 化 ベ ン ゾ イ ル と の 塩 化 ア ル ミ ニ ウ ム を 用 い た

Friedel-Crafts反 応 に よ り 合 成 し た も の を 、 エ タ ノ ー ル 中 で 再 結 晶 し て 得 た 。

4-m・ ・hY・benzQphen・ne・m.P.520C・1H-NMR(CC14)δ2・5(・ ・3H)

7.3-7.9(m,9H)ppm;MS(relInt.)77(62)105〔46)119(100)

196(44)

4・2反 応 容 器

反応 は特記するもの以外、すべて図25の ようなガラス製 の反応容器中で行 った 。

反応サ ンプル は以下のように して作 った。 まずAの 部分 をアルゴ ン ・ガスで 完全 に置

換 し、そ こヘグ リニ ャール試薬を注射器を用 いて導入する。 これを真空 ライ ンへつなぎ

完全 に脱気 した後に封 じ切る。 つぎ にA部 をB部 の枝 と接続 し、B部 にケ トンを入れ真

空 ライ ンで脱気後、乾燥脱気溶媒を真空蒸溜 して導入 し、さ らに脱 気 してか ら封 じ切る 。

このように してグ リニ ャール試薬 とケ トンの溶液 とがブ レイ カブル シール(C)を 隔てて

乾燥脱気条 件で存在す る反応容器ができあがる 。

反応は、ハンマ ー(D)で ブ レイカブル シール(C)を 割 り、2つ の溶液を混合する こ'

とによ り開始 する。

可視吸収 スペク トル用 のサ ンプル は 、Eの 部分を石英 、又は硬質ガラスの方形セル に し

た。

反応生成物 の分析を行 う場合には 、B部 に枝を増や し、そ こへ真空脱気 したNH4Cl

水 溶液の入 ったブ レイ カブルシール付き アンプルチ ューブ をA部 と同 じように とりつけ 、

そ れを反応 の終了 、生成物塩の加水分解 に用い た。

ケ トンの メタルケチル の観測 には 、グ リニ ャール試薬に代えてAの 部分 に金属 力 リウ

ム、金属ナ トリウム、金属 リチウムの鏡面を作 り、それ とケ トン とを反応 させ た。 マ グ

ネ シウムケ チル は、Aの 部 分にMg-Hgア マル ガムを入れて反応させて得た 。

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84

図25反 応容器

D

・'麟 醸瀬 榔

E

BA

B

C

D

E

C A

グ リニ ャ ール 試 薬

ケ トン 溶 液

ブ レイ カブ ル ・シ ー ル

ハ ン マ ー

ESR石 英 セ ル

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(85)

4・3ESR法 に よ る 測 定

2+ESRの観測 におけ る、超微細結合定数な どの標準 と してMn マ ーカー と、Fremy

塩 を用いた。 ラジカル の絶対濃度 の標 準 としては1,1一 ジフ ェニルー2一 ビクリル

ヒ ドラジル(DPPH)溶 液を用 いた。

ベ ンゾフ ェノンの反応 における超微細結合定数 の決定 には、文献11の 方法によ り得 ら

れる安定なベンゾ フ ェノンのMgBnケ チル を二次標準 に用いた。ESRス ペク トル は

通常一次微分形で観測 したが 、超 微細結 合定 数の決定の ときには二次 微分形で観測するこ

とにより精度 を上 げた。 求めた結 合定 数は3回 以上の実験による5~11回 の測定 の平

均 値である。

液体窒素温度 におけるESRの 測定 は、専用 のデ ュワ ー瓶に液体窒素を満 た し、そ こへ

図25の サ ンプル チューブのESRセ ル 部(E>を 入れ 、それをESR装 置 のキ ャビテイ

54,55)に導入 した。

4・4反 応 速 度 定 数 の 決 定

速い反応(一 次の速度定数がO.5S-1以 上)の 場合はス トップ トフロー法で 、遅 い反

応(一 次の速度定数が1s-1以 下)の 場合 は可視吸収スペク トル用 のサ ンプルを 島 津

UV-160のTimeScanモ ー ドで測定 するこ とによりその反応速 度定数を求めた 。反

応 速度定数 は、すべてグ リニ ャール 試薬 が大 過剰の条件で25℃ で求めた値 である。

一次の反応速度定数 は、5回 以上 の実験 によ り求めた。 そ して 、二次の速度定数は、

3つ 以上の異な った条件 における擬一 次の速度 定数か ら求めた。

4・5反 応 生 成 物 の 定 量

反応生成物量の定量 には主 にNMRを 用いた 。IH-NMRに よる分析が可能な場合

には、内部標準を用 いてそ の生成量 を積分比か ら決定 した 。13C-NMRに よる分析

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(86)

は 、濃度が既知の溶液か ら検量線 を作 り、そ れを用いて まった く同 じ条件で測定 する こと

により誤差 を小 さく した。NMRに よる分析の結果 は、カラムク ロマ トグラフ ィーによ

る単離、ひ ょう量 により確認 した。

少墨 しか得 られない物 質は、カラム クロマ トグラフ ィーにより単離 した後に、内部標準

を用いてNMRの 積 分比よ り定量 した。 この方法によ り2,5mmol量 の反応で は、0.05%

量の ビフェニル 、ケ トンの二量休 が確認できる 。

4・6個 々 の 反 応 に つ い て

4・6-「 ベ ン ジ ル の 反 応

PCRとGCRのESR法 による測定は、通常 の方法 により行 った 。 ラジ カル種の絶

対 濃度 は、測定当 日に作 った同 じ条件 の、既 知濃度のDPPHサ ンプルの吸収曲線 との積

55) 吸収曲線 とその面積 は、ESRの 変調幅をO.5mTに して得た分 比より求め た。

なだ らかな一次微分曲線か ら計算によ り求めた。

a)PhMgBrと の反応

反応生成物 の生成量 は、13C-NMRに より決定 し、カラム クロマ トグラ フィーに よ

る単離収率 によ り確認 した。 図7の 値 は3回 の実験の平均 値で ある。 この反応 につい

て は、その ビフ ェニル の生成量につ いても検討 したが 、その量は用いたグ リニ ャール試薬

の0.05%以 下であ り、用いたグ リニ ャール 試薬を単 に水 と反応させた場合の量 と同 程度

であ った。 反応容 器中 に酸素が若 干量 残 っている条件で反応を行 う と、2~4%の ビフ

ェニルが生成 した。 この ビフェニルは単離 した後、市販 のビフ ェニル と混溶 しその融点

(70℃)が 変化 しない ことよ り確認 した 。

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(87)

α 一Phenylbenz。in塾,・m.P.88・C;IR(KBr)16633490cm-1;

1H -NMR〔CDCI

3〕 δ3・ ・(・ ・1H〕7・ ・-7・8(・,15H)PP・ ・'3C-・N1IR〔CDCI3〕 δ

84.9,128.0,128.1,128.2,130.6.132.8.135.0,1418.200.7

ppm:MS(relInt.)77(55)105(100)182(11)183(81)184(13)

288(3)

1,1.2,2-tetraphenylethane-1,2-dio15旦,:m.P.~2000C〔dec.);

1H -NMR(CDC1

3)δ3・ ・ 〔b・,2H)7・ ・-7・6〔 ・ ・2・H〕PP・ ・13C-NMR(CDC13・ δ

82.9,126.8,127.1,128,4,144.Oppm;MS(rel.II)t.)77(47)

78(24)105(40)107〔30)121(100x)122(100)181(20)182(3)

b)MeMgBr'と の 反 応

反 応 生 成 物 比 は 、IH-NMRに よ り 決 定 し 、 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ る 単 離 収

率 に よ り 舘 認 し た,,収 率 を 表12に よ と(Y)1.〉 、、

表12反 応生成物比(%〉

2、3-diphenyl-

butanc-2,3-

diol

run B/Gratio bc丘znα 一mcthylもcnzoind,1 mesO'

4

4

σ

-

n∠

内」

∩V

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ユ」

6

<0.2...

<0.5

11… ・

2回 の実験の平均値

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(88)

α 一・・th・lb・ ・z・i・ 塾 ・:m…66-670C・IR(CDCI3)1663344・cm-1・

1H -Nl viR(CDCI3)δ1.9(・ ・3H〕4.8〔b・,IH)7.2-7.9(・,1・H)PP・ ・

MS(relInt.〕77(100x)78(lOOx)105(100x)121〔100+)122〔100+)

208〔80)226(8).

2,3-diphenylbutane-2,3-dio1旦b,(dl体 メ ソ 休 の 混 合 物):m.P.116-118

0C・1H -NMR・CDC1

3)d1体 δ1・6(・,6H)2.3(・,2H)7.2-7.3・ ・,1・H)

ppm.メ ソ 体 δL5(5.6H)2.6(s,2H)7.2-73(s.10H)ppm:

MS〔re1.Int.)混 合 物121(100)205(100x)206(100x)207(100x)

208(100x)209〔100x)242(8〕

c)EtMgBnと の 反 応

反 応 生 成 物 量 比 は 、IH-NMRに よ り 決 定 し 、 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 単 離 、 決 ・ 一.

定 し た 。 ま た 安 息 香 酸 エ チ ル エ ス テ ル は 単 離 後 マ ス ス ペ ク トル 等 で 確 認 し た 。

α一ethylbenz・in璽 ・・m・P・67・5-68・30C;IR(CDC13)16633440

cm『1;1H-NMR(CDCI3)δ ・ ・9〔t・3H)2・4(q・2H)4・7(・ ・1H)

7.0-7.8(m,10H)ppm;MS(rel.11)t.)105(100x)135(100x)221(100x)

222(100x)223〔100x)224(100)240(16).

3・4-diphenylhexqne-3・4-diol旦 ⊆ ・(dl体 メ ソ 体 の 混 合 物):m・P・116-118

・C・1H-NMR〔CDCI

3)dl体 δ ・6(t・6H)2・1(S・2H)2・3(m・4H)

7.2(br,10H)ppm.メ ソ 体 δ0.6(t,6H)15(m,4H〕1.6(5,2H)

7.2(br,10H)ppm;MS(relInt.)57(52)135(100)136(51〕270(tr)

・th・lb・-t・ ・IR(N・C1)17・ ・cm"1・1H-NMR(CCI4)δ1.4(t.3H)14.4(q,2H)75(m,3H)8.1(m.2H)ppm;MS(rel.Int.)77(100)84【70)

105(85)119(13)122〔19〕150(11).

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(89)

反応の後処理を アル ゴン気流下で行 うと、ベンゾイ ン ・エチルエ ーテルが得 られた。

これは標準サ ンプルのIH-NMRと の比較 よ り同定 した。

ben乙 ・ineth・1・ther6・:m…580C;1H-NMR(CDCI3)δ1.3(t.3H)

3・6(q・2H)5・6…1H)7・ ・-8・ ・(・ ・1・H)PP・;13C-NMR(CDCI3⊃ 芳 酪 環 部 は 除 く

δ15.2,64.8,86.3,196.8ppm.

アル ゴン下で反応の後処理 を行 った直後にiH-NMR法 で観測 すると、上記 のスペ ク

トルに似 た別のスペ ク トルが重 な っているの が見える。 この種 はi3C-NMRの 差 ス

ペ ク トルか ら、カルボニル炭素を持 たないこと、オレフ ィン炭素 を持つこと、さ らに時間

の経過によ り6に 変化する ことよ り1,2一 ジフ ェニルー2一 メ トキシエチ レンー1一 オ

ール7で ある と推定さ れた。

1・2-diph・ ・yl-2-eth・xy・th・lene-1-・1ヱ,・1H-NMR(CDCI詳 ス ペ ク トル ・

13δ1.2(t〕3.6(q)5.5(br)7.0-8.0(m);C顧NMR(CDCI3差 ス ペ ク トル)δ

114 .2,67.2,127.5,127.7,C128~12gPPmは 差 ス ペ ク トル が と れ ず)129.0,

129.3,130.1,131.3,133.5,135.1ppm.

4・6-2フ ル オ レ ノ ン の 反 応

中間体ラジカル種 はフルオ レノン過剰(K/G=2.0)で 調製する と比較的安定 に得 ら

れ た。 可視吸収スペク トル は、過 剰量分の フル オ レノンの吸収スペ ク トル との差スペ ク

トルである。

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(go)

a)MeMgBrと の反 応

反 応 生 成 物 は 、付 加 生 成 物 で あ る9一 メ チル フル オ レ ン ー9一 オ ー ル21aの み で あ りK

還 元生 成 物 は1H-NMRで は確 認 さ れ な か った 。

9¶ ・th・1fl・ ・re・e-9-・1鎚 ・:1H-NMR・CDCI3・ δ17(・ ・3H〕

2.0(br,1H)7.2-7.6(m,8H)ppm;MS(relInt.)91〔38)152(84)

153(58)178(75)181(100)196(68)

b)EtMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 付 加 物 で あ る9一 エ チ ル フ ル オ レ ン ー9一 オ ー ル21bと 運 元 生 成 物 で あ

る9一 フ ル オ レ ノ ー ル21dで あ っ た 。

9-eth・1fl・ ・rene-9-・121b・:IH-NMR(CDCI3)δ ・.5(t,3H)

2.1(br,1H)2.2(q,2H)71-7.6(m.8H)ppm;MS(relInt.)152〔29)

165(22)181(100)191(34〕192(60)210〔16).

9-f1・ ・ren・121d・ ・1H-NMR(CDCI3)δ2.・(br-IH)5.5(b・,1H)

7.2-7.6(m,8H)ppm:MS(relIllt.)77(20)78〔100)181(21)182(10)

c)n-BuMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 付 加 物 で あ る9一 ブ チ ル フ ル オ レ ン ー9一 オ ー ル21cと 還 元 生 成 物 で あ

っ た 。

9-b・t・1fi・ ・rene-9-・1血,・IH-NMR(CDC13)δ ・.7(t,3H)

0.9-1.3(m,4H)1.5(br,lH)2.1(m,2H)7.2-7.7(m,8H)ppm;

MS〔re1.Int.〕152(40)165(94)181(100)182(19)191(6)238(10〕.

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(91)

4・6-3/一 メ チ ル フ ル オ レ ノ ン の 反 応

中閻休 ラジカル種 はグ リニ ャール試薬過剰の条件で もかな り安定 に得 られた。 中間体

の減衰はESRを 用 いて追跡 した。

a)MeMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1,9一 ジ メ チ ル フ ル オ レ ン ー9一 オ ー ル の み で あ っ

た 。

1・9-dimeth・1f1・ ・rene-9-・1 .22・ ・IH-NL!R・CDCI3・ δ1.8〔 ・,3H・

1.9(br.1H)2.6(s,3H)・6.9-7 .6(m,7H)ppm;1,IS(relInt.)152〔18)

165(31)195〔100)210(33)

4・6-4ベ ン ゾ フ ェ ノ ン の 反 応

中 間体 ラ ジ カル 種 は 、ベ ンジル や フル オ レノ ン類 の場 合 に比 べ て 不 安定 で あ り 、ベ ン ゾ

フ ■ ノン過 剰 の 条 件 で も 反 応 開始 後10分 か ら 数十 分でESR法 に よる 観 測 は不 能 にな っ

た 。 至 温 で の ラ ジ カル の 寿 命 はMeMgBr<PhMgBr<EtMgBr-i-PrMgBrの 順 に長 くな る 。

二 量化生成物5aの 標準サ ンプル は、ベンゾ フ エノンの光二量 化反応56)あ るいはべ ン

ジ ル とPhMgBrと の 反 応 に よ り 得 た 。

a)MeMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1,1一 ジ フ ェ ニ ル エ タ ノ ー ル23aの み で あ っ た 。

還 元 生 成 物 、 あ る い は 二 量 化 生 成 物 の 存 在 は 確 認 で き な か っ た 。

1・1-di・h・nyl・than・1麺 ・:1H-NMR(CCI4)δL8(・,3H)2.7(b・,1H)

7.0-7・6(m,10H)PPm;MS(rel,Int)105〔61)165(69)180(100)

183(86)198(ll).

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(92)

b)EtMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1,1一 ジ フ ■ ニ ル プ ロ パ ノ ー ル23b、 と 還 元 生 成

物 で あ る ベ ン ズ ヒ ド ロ ー ル23dで あ っ た 。

1,1-di・heny1…p…123b・:1H-NMR(CCI4)δ ・ ・8・t・3H)

1.8(br,1H)2.3(q,2H)7.1-74〔n,10H)ppm:MS(rel.Int.)105(60)

183(100)184(16)194〔14)212(3}

b・ ・zh・d・ ・1塑,:1H-NMR(cpcl3)δ2・4・b・ ・IH・5・8(・ ・IH)

7.1-74(br,10H)ppm;MS(re1.Int.)105(100)183(24)184〔59)

c)n-BuMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1,1一 ジ フ ェ ニ ル ペ ン タ ノ ー ル23cと 還 元 生 成 物

で あ る ベ ン ズ ヒ ド ロ ー ル23dで あ っ た 。

1,1.di,h。 。yl,。 ・t…1匙,:IH-NMR〔CC14)δ ・ ・9(t・3H)12(・ ・4H)

2.2(m.2H〕2.6〔br,1H)7.0-74(m.10H)PPm;MS(re1・lnt・)105(66)

167(100)183(72)239〔2)240〔tr)

4・6-52一 メ チ ル ベ ン ゾ フ ェ ノ ン の 反 応

中間体ラジカル種 はケ トン過剰の条件で比較的安定で あり、数時閤 の間ESRで の観測

が可能であ った。2一 メチルベ ンゾ フェノンは室温で は液体なので 、既知濃度 のTHF

溶 液 にしたものを、十分 に乾燥 アルゴ ン置換 した反応容器 に導入 した。

a)MeMgBrと の 反応

反 応生 成 物 は 、付 加 生 成 物 で あ る1一 フ ェニ ル ー1-(o一 トリル)エ タ ノ ール24の

み で あ った 。 還 元 生 成 物 の 存在 は1H-NMR法 で は確 認 で きな か っ た。

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(93)

1-phenyl-1-(・-t・1・1)・than・1璽,・1H-NMR(CDCI3)δ18(・,3H)

1.9(5,3H)2.0(br,1H)70-7.7(m,9H〕PPm;MS(re1.Int.)105〔44)

119(21)178(44)179(100〕194(48)197(84)212(12).

4・6-64一 メ チ ル ベ シ ゾ フ エ ノ ン の 反 応

グ リニ ャール試薬 との反応 中閤体ラジカル種 は、室温で は高濃度 にならず、ケ トン過剰

の条件でも数分 以内にESRに よる観測 は不能 にな った。

a)MeMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 付 加 生 成 物 で あ る1一 フ ェ ニ ル ー1-(P一 ト リ ル)エ タ ノ ー ル35a

の み で あ っ た 。 還 元 生 成 物 の 存 在 は や は り 確 認 で き な か っ た 。

1-Pheny1-1-(P-t・1・1)・than・135・ ・:1H-NMR(CDCI3)17(・,3H)

2.3(5,3H)2.5(br,1H)6.9-74(m.9H)ppm;MS(rel.Int.)105(49)

178(24)179〔51)194(34)197〔100)212〔14〕 。

35一

RlClOH

OCH3

a

b

C

d

e

f

R=Me

R=Et

R=n・-Pr

R=n-Bu

R=iso-Bu

R=H

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(94)

b>EtMgBrと の 反応

反 応生 成 物 は 、付 加 生 成物 で あ る1一 フ エニ ル ー1-(P一 ト リル)プ ロパ ノ ール

35b.と 遠 元 生 成 物 で あ る4一 メ チ ル ベ ン ズ ヒ ドロール35fで あ った 。

1-Phenyl-(P-t・1・1)P・ ・P…1三5b・ ・1H-NMR(CDCI3・ δ ・.8(t,3H・

17(br,1H)2.2(q.2H)2.3(s,3H)6.9-7.4(m,9H)ppm;MS(re1.Int.)

105(91)115(44)119(47)178(21)193〔50)197(100)208(71〕

224(6).

4-meth・1benzh・d・ ・1廻.:1H-NMR(CDCI3)δ2・3〔 ・ ・3H)3・2〔b・ ・1H)

5.5(s,lH)7.O-7.2(m,9H)ppm;MS(rel.Int.)105(100〕119(97)

183(39)197(23)198(77).

c)n-PrMgBrと の 反■応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1一 フ ェ ニ ル ー1-(p一 ト リ ル 〉 ブ タ ノ ー ル35c

と 還 元 生 成 物 で あ っ た 。

1-ph・ny1-1-(P-t・1・Db・ta・ ・1359・IH-NMR(CDC13)δ ・・9(t・3H)

1.3(m.2H)1.7(br,1H〕2。2(m,2H)2.3(5,3H)6.9-7.4(m,9H)PPm;

MS(re1.Int.)105(42〕119(21)197(100)207(41)222(38〕240(6)

;

d)n-BuMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 付 加 生 成 物 で あ る1一 フ ェ ニ ル ー'1-(P一 ト リ ル)ペ ン タ ノ ー ル β5

dと 還 元 生 成 物35fで あ っ た 。

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(95)

1-ph・ ・y1-1-(P-t・1・DP・ntall・135d・ ・1H-NMR〔CDCI3〕 δ ・.9(t,3H・

1.3〔m,4H)19(5,1H)2.1(m,2H)2.3(s,3H)6.9-7.4〔m,9H)PPm;

MS(rel.Int.)105(88)119〔82)165q4)196(100)197(93)198〔83)

237〔21)254(3)

e)iso-BuMgBrと の 反 応

反 応 生 成 物 は 、 大 最 の 還 元 生 成 物 と 微 量 の 付 加 生 成 物35eで あ っ た 。 付 加 生 成 物 を

単 離 す る こ と は で き な か っ た 。

3-methy1-1-phenyl-1-(P-tolyl)butanol35e,:(35fと の 混 合 物 の

NMR3ベ ク ト ル か ら)1H・NMR(CCI4)δ ・ ・8(d)1・8(・)2.1(・)2.3?〔 ・)

2.4(br)7.0-7.4?(m).

q

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響■駒

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100

6.謝 辞

本研究を行うにあたり、終始御指導御鞭錘をいただきました 京都大学理学部

丸山和博教授に心より感謝申し上げます。

ストップ トフロー装固の使用、ならびに反応速度論について郷教授下さいました

京都大学教養部 速水醇一教授に感謝いたします。

ラジカルイオン対の構造に関して有意義な議論をして下さいました 京都大学理学部

広田麦教授に感謝いたします。

さらに、常に叱咤 激励 議論していただいた 京都大学理学部 小野昇助教授

成田吉徳助教授 大須賀驚弘助教授 民秋均助手、 ならびに 元京都大学理学部

山本嘉則助教授 大槻哲夫助手 小川琢治博士 宇野英満博士 田井誠司博士

古田弘幸博士をはじめ有機化学研究室ならびに集合有機分子機能研究室の皆様に

御礼申し上げます。