黒点とその11年周期変動 - Solar Science Observatorysolar1 黒点とその11年周期変動...

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1 黒点とその11年周期変動 歴史 16101611:望遠鏡による黒点観測 オランダのファブリチウス(J.Fabricius, ドイツのシャイナー(C.Scheiner), イタリ アのガリレオ(Galileo Galilei, イギリスのハリオット(T.Harriot太陽の自転、自転軸の傾き 暗部と半暗部 黒点の出現帯(高緯度には現れない) 差動自転(赤道に近いほど速い) 1843:約10年の周期性 シュヴァーベ(H.Schwabe、ドイツ) 1848:黒点相対数の導入 ヴォルフ(R.Wolf、スイス) 1858:黒点帯の赤道への移動 キャリントン(R.C.Carrington、イギリス) 、 シュペーラー(G.Spörer、ドイツ) 1908:黒点の磁場の発見 ヘール(G.E.Hale、アメリカ) 1909:半暗部のエバーシェッド流 J.Evershed(イギリス;インドのKodaikanal で) 1925:ヘール・ニコルソンの黒点極性法則(南北逆極性、22年周期)

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黒点とその11年周期変動

歴史

• 1610‐1611:望遠鏡による黒点観測オランダのファブリチウス(J.Fabricius), ドイツのシャイナー(C.Scheiner), イタリアのガリレオ(Galileo Galilei), イギリスのハリオット(T.Harriot)

– 太陽の自転、自転軸の傾き

– 暗部と半暗部

– 黒点の出現帯(高緯度には現れない)

– 差動自転(赤道に近いほど速い)

• 1843:約10年の周期性 シュヴァーベ(H.Schwabe、ドイツ)

• 1848:黒点相対数の導入 ヴォルフ(R.Wolf、スイス)

• 1858:黒点帯の赤道への移動 キャリントン(R.C.Carrington、イギリス) 、シュペーラー(G.Spörer、ドイツ)

• 1908:黒点の磁場の発見 ヘール(G.E.Hale、アメリカ)

• 1909:半暗部のエバーシェッド流 J.Evershed(イギリス;インドのKodaikanalで)

• 1925:ヘール・ニコルソンの黒点極性法則(南北逆極性、22年周期)

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黒点のチューリッヒ分類Zurich Classification (Waldmeier, 1938)

• 大体、成長・消滅の時系列になっている

• 東側(太陽の自転が向かって行く方向)を先行黒点(p)、西側を後続黒点(f)という

Bray and Loughhead (1964)

入江 他(1990)

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黒点の磁場の分類Mt. Wilson Classification (1919)

入江 他(1990)

δ型はキュンツェル(Künzel、1960)が導入した。

大フレアを起こすことが多い

いろいろな大きさの磁場構造

Zwaan (1987)

黒点 短命磁場領域 ポア 微細磁束管(集まると白斑)

明るさ 暗い 磁場、Hαで検出 暗い 明るい

直径(km) 8000‐50000 10000 1500‐3000 200

磁場 (G) 3000 100‐200 2000 1000

磁束(Mx) 5‐300×1020 1×1020 0.5‐2.5×1020 1018

寿命 数日~3ヶ月 1‐2日 1日 20分

Mx: マクスウェル = ガウス(G)×cm2

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短命活動領域( Ephemeral Active Regions)

• Hαや磁場マップに見える(黒点のように暗くはない)

• 双極磁場領域、浮上後1‐2日の寿命

• 黒点には発達しない

• 大きさ1万km程度、典型的活動領域より小さい

• 磁束 1020 Mx程度

• 黒点数と似た変化をするが、サイクルの始まりが早い(前のサイクルとの重なりがある)

• 黒点より緯度分布が広い

活動領域(AR)

短命活動領域(ER)

Martin and Harvey (1979)北 sin(緯度) 南

個数

5

次のサイクルの極性を持ったERが早くから高緯度に現れる

Wilson et al. (1988)

現サイクルの極性のER-次のサイクルの極性のER

北 sin(緯度) 南

個数

緯度

磁気要素の分布:べき乗則

ほぼべき乗則傾き一定、値は上下する

(Harvey & Zwaan,1993)Hagenaar et al. (2003)

面積

磁束

個数

個数

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黒点の面積の分布:対数正規分布(Log‐Normal)

(極端に小さい黒点は少ない)

Bogdan et al. (1988)

外挿

観測値だが信頼性が低い

面積

個数

國仲ほか(2011)

活動領域の形成• 磁場浮上領域(emerging flux 

region, EFR)彩層に黒い筋模様、足元の明るい領域(プラージュ)(arch filament system、AFS)個々のフィラメントの寿命は20分程度

• (1時間後)光球にポア。あいだの粒状斑がぼやけ、磁場方向に並ぶ。磁場数百ガウスAFSの成長

• 双極の向きは始めはほとんどランダム、だんだんにヘールの法則に揃っていく

00:04 00:01

00:57 00:58

06:14 06:20

(a)

(b)

(c)

黒河(2009)Zwaan (1992)

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たくさんの双極磁場が浮上し、合体して数日かけて大きな活動領域を作る(半暗部も形成)

AFS 上昇速度:数km s‐1

足元の下降速度:

彩層で数十km s‐1

光球で2 km s‐1程度

足元の分離速度:約1 km s‐1

だんだん遅くなる

誕生後2日目

誕生後3日目

AFS

黒河(2009)

Zwaan (1992)

磁気浮力 (Parker, 1955)

• 磁場の管は周りより軽く、浮き上がる

• どういう速さになるかは、周りの温度分布、空力抵抗、熱交換によって決まる

圧力pi, 密度ρi、磁場B

圧力pe、密度ρe 、磁場なし

温度は等しい

eie

2

i 8

p

Bp

8

パーカー不安定 (Parker, 1966)

曲がった磁力線に沿って物質が落下し、

磁束管が軽くなって上昇

Shibata et al. (1989)

暗部も20%の光は出しているので、エネルギーは来ている

• 一本の管

• 抑制された対流は起こっている

• 少し下層では多数の磁場の管と磁場のないプラズマに分かれる

• 暗部輝点、ライトブリッジはこのイメージを支持

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対流による磁場の排斥と掃き寄せ

表面での微細磁束管の形成には関係

ダイナモとは多分関係しない

Galloway and Weiss (1981)

磁場はどこまで強くなるか

• エネルギー等分配(equipartition)とすると

→Beq

• 空っぽの管(evacuated flux tube)になるとすると

→Bp

221

8 2

Bv

2

e8

Bp

粒状斑 超粒状斑

密度 ρ (g cm‐3) 2.7×10‐7

圧力 p (dyn cm‐2) 1.1×105

速度 v(km s‐1) 2 0.4

Beq (G) 370 74

Bp (G) 1700

VAL-C, h=0 km

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空っぽの磁束管を作る不安定性(対流崩壊)

• 対流に対して不安定な大気の中にある磁束管は

β > 1.8(磁場が弱い)で不安定

• 管の中で下降流

– 周りより冷たいのでさらに下降

– 中の圧力が減り、磁場が強まる

• 管の中で上昇流

– 周りより熱いのでさらに上昇

– 圧力上昇、磁場を散らす

Spruit and Zweibel (1979)

2

8 p

B

ガスの圧力

磁場の圧力

Nagata et al. (2008)

明るさ

磁場

速度

下向き速度

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黒点と白斑

黒点はなぜ暗いのか

対流熱

6000度 4000度

黒点の所に出られなかった熱は対流層内に散る

• 太陽の表面近くではエネルギーは対流によって運ばれる

• 黒点の強い磁場が対流を抑えるので黒点は暗い

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6000K4000K

小さな磁束管は斜めから見ると明るい

白斑 黒点

対流エネルギー

明るい壁から放射が抜け出る

=20%のエネルギー

しか来ていない

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60004000

暗部輝点 (Umbral Dots)

• 1”以下の大きさ

• 高温

• 磁場が弱い

• 中央で上昇流、縁で下降流 (対流)

赤:輝点 青:暗部

Borrero and Ichimoto (2011)

←高さ←高さ

温度

(×

103

K)

磁場

(×

103

G)

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半暗部(Penumbra)

• 筋状構造(penumbral filaments): 幅200 km程度

• 2成分– 明るい、より立った構造

– 暗い、ほとんど水平の構造

– これらが交錯している

• エバーシェッド流– 水平流

– 暗部の近くで上昇流、明るい

– 半暗部の外側では下降流、暗い

水平磁束管が埋め込まれたモデル

磁束管が上昇するモデル

Schlichenmeier et al. (1998)

サイフォン機構による流れ

周りが超断熱温度勾配なので、上昇してきたガスは周りより熱い

暗部

磁場のないガス

半暗部

磁力線を揺するような対流があるとする

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青:上昇流、半暗部の明るいフィラメントから赤:下降流Ichimoto et al. (2007)

Borrero and Ichimoto (2011)

暗部

上昇する熱いガス

下降流

冷える

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黒点の消滅

• 磁場浮上が止まる。ポアもなくなる。

• 黒点の面積、磁束減少、分裂。大抵、大きな先行黒点だけ残る磁束の減少率 ~1×1020 Mx/day

• プラージュは穴あきの構造に変わっていく(ネットワーク構造)

• moat(堀)領域、外向きの流れ

Hagenaar (2005)

↓水平方向の流れ ↑Ca K ↓磁場

流れ出る磁束管moving magnetic features (MMF)

• だんだん磁場がはがされて行く

Kubo et al. (2007)

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周期活動Solar Cycle

1997年12月 1999年12月

活動極小・極大期の太陽面

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黒点相対数R=k (10g+f)

g: 群の数

f: 黒点の数

k: 望遠鏡の大きさなどを調整する係数

約11年周期で増減

1750年まで:年平均

1750年以後:月平均

黒点データセンター(ブリュッセル)

http://sidc.oma.be/html/wolfaml.html

黒点

相対

黒点の赤道への移動(蝶型図)

緯度

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黒点の磁極は東西に並ぶ:極性は南北半球で逆

full-disk video magnetograph NAOJ/Mitaka

ヘール・ニコルソンの法則

1996 2008年 ~ 年1986 1996年 ~ 年

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黒点の傾き角:ジョイの法則

東 赤道 西

tilt angle

先行後続

先行黒点が赤道に近い(コリオリ力) 分散は大きい(乱対流)

自転

Fisher et al. (1995)

Arge et al. (2002)

磁場の量

極大、極小で4倍くらいの差

極磁場は活動極小期が強い

活動極大期に反転する

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磁場の極域への拡散と極磁場の反転http://solarscience.msfc.nasa.gov/images/magbfly.jpg

S-N N-S

N-S S-N

S

N

N

NS

S

赤道

北極

南極

1986年 1996年 2006年

黒点の発生帯

極域磁場

極小期 極小期 極小期極大期 極大期年

緯度

太陽の視直径の変化

• 日食が皆既になるか金環食になるか、に影響があるので– 日食の歴史記録が正しいかどうかの検証

• 過去の観測では、活動極大期に太陽直径は小さい、という傾向が得られていた– しかし逆の結果もある

• 大気圏外からの観測では、有意な変化は見つからない

• 地上観測も真実とすれば、太陽活動による地球大気の変化(屈折率?)かもしれない→ 太陽も月も同じように大きさが変わる

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Kuhn et al. (2004)

AE

E

E

A

A

A

A

A

M

M

AA

AA A

SS

MDI

A: astrolabe

E: eclipse

M: meridian transit

S: seismology

いろいろなやり方で(いろいろな人が)測った太陽直径

太陽半径

Yoshizawa (1997)

• 三鷹の子午環の観測結果– 極大期のほうが小さい傾向

極大極小 極小

太陽半径

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SOHO/MDI0.007” を超える有意な変動はないKuhn et al. (2004)

半径変化