第6回フードバンクシンポジウム...「FOOD BANK GUIDELINE2010 」を締結したネット...

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フードバンク活動における 運営主体と行政との関係性の日韓比較 原田佳子(NPO法人あいあいねっと) 第6回フードバンクシンポジウム

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フードバンク活動における 運営主体と行政との関係性の日韓比較

原田佳子(NPO法人あいあいねっと)

第6回フードバンクシンポジウム

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平成24年度日本の米の生産高

約850万トン

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主要国の食料自給率の年次推移

出所:農林水産省諸外国の食料自給率サイトより筆者作成

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主要国の食料自給率の年次推移

出所:農林水産省諸外国の食料自給率サイトより筆者作成

カロリーベースで40%にも満たない食料自給率

主要国中最低 多くの食料を輸入に依存

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593

806

979

1053 1100

1007

1062

961

1024

1095 1104

1003 1094

1214 1292

1435

1867 1884

1941 1847

2098

2346 2366

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23

日本の輸入食品量の年次推移

(出所)農林水産省食料需給表輸入量統計データから筆者作成

千トン

年度

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703,072

750,181 803,993

869,637

939,733

997,149 1,039,570

1,073,650 1,102,945

1,145,913

1,270,588

1,405,281

315,933 341,196

370,049 402,835

435,804 465,680 451,962 473,838

497,665 523,840

563,061 603,540

50,184 55,240 61,930

72,403 84,941

94,148 107,259 109,847

111,282

121,570

171,978 227,407

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1,600,000総 数

高齢者

世帯 母子世帯

傷病者世帯

障害者世帯

その他の

世帯

(出所)国立社会保障・人口問題研究所「生活保護」に関する公的統計データから筆者作成

世帯類型別被保護世帯数の年次推移

1,405,281 世帯

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14.3 13.8

13.1 12.2 11.4

65.5

61.5 59.9 59.4 58.8

20.2

24.7 27.0 28.4 29.8

9.2 11.3

13.9 17.2 18.7

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

2010年 2015年 2020年 2025年 2030年

0~14歳

15~64歳

65歳以上

75歳以上

広島市将来人口推計 %

(出所)国立社会保障・人口問題研究所 日本の市町村別将来推移人口より筆者作成

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17.3

24.6

12.2 12.6

13 13.5

13.9 14.5

15 15.5

15.9 16.3

16.9 17.7

18.3 18.9

19.4 19.7 20.4

0

5

10

15

20

25

30

中区

東区

南区

西区

安佐南区

安佐北区

安芸区

佐伯区

合計

広島市区別・高齢化率の推移 %

出所:広島市ホームページ統計高齢者人口より筆者作成

安佐北区

平成25年日本の高齢化率25.1%

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(出所)広島市ホームページ町内会・自治会情報

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現在、わが国は、課題が山積

フードバンク活動が全国的に 増加・活発化

年間の米の生産高に匹敵する食品ロス、 主要国中最低の食料自給率、多くの輸入食品に依存 生活困窮者の増大、少子高齢社会、独居老人の増加

地域の絆が希薄に

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日本のフードバンクの展開状況

農林水産省フードバンクのサイトを参照に筆者作成 http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank/shokai/index.html2013/8/8

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日本のフードバンクの展開状況

日本のフードバンク運営主体が 取り扱った食品の総量

2009年⇒約1,000トン(運営主体数11) 2012年⇒約3,000トン(運営主体数22)

震災で取り扱った食品は除く

出所:運営主体のサイトから概算

農林水産省フードバンクのサイトを参照に筆者作成 http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank/shokai/index.html2013/8/8

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概念:食品製造、流通企業及び農家や個人などから、余剰食品を無償で寄付していただき、それを、生活困窮者支援団体に無償で分配する活動。 運営目的:原田(2012)によれば、主なミッションにより「生活困窮者を救済する」「食品ロスを削減する」「地域を活性化する」の3種に分類できるが、いずれの運営主体も、生活困窮者を救済する活動を基盤としている。 それぞれの運営主体が独自に活動を行っている。 「FOOD BANK GUIDELINE2010」を締結したネットワークがあり、必要に応じて連携しているが、全体として組織的な活動にはなっていない。

日本のフードバンクの概念と運営目的

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韓国のフードバンク組織

出典:章大寧(2010)にもとづいて筆者作成

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17 17 16 16 16 16 16

95

151

240 261 261 264

283

25

115

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1995.01 1999.12 2000.11 2005.02 2006.12 2007.12 2009.02 2011.11

フードマーケット

基礎フードバンク

広域フードバンク

全国フードバンク

拠点数

韓国フードバンクウェブサイト(http://www.foodbank.1377.org)等より、筆者作成

韓国Food Bank 拠点数の推移

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出典:韓国Food Bankウェブサイト(http://www.foodbank.1377.org)より筆者作成

利用施設

37%

各種団体

20%

福祉法人

31%

生活施設

7%

サービスセンタ

2%

市・郡・区

2%

その他

1% 156

132

84

30

10 9 3

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180主体数

2012年におけるフードバンクの運営主体数と構成比

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183 211 264

405 322

64 91

97

112

73

123

152

175

216

156

10

10

15

14

11

91

43

46

55

36

6 6

7

9

4

55

90

124

161

87

0

200

400

600

800

1000

1200

2008 2009 2010 2011 2012

その他

一般家庭

集団給食所

食品接客業

食品卸・小売業

卸売・製造加工業

食品製造

1億ウォン

出典:韓国Food Bankウェブサイト(http://www.foodbank.1377.org)より筆者作成 企業は、寄付食料の原価をフードバンクに伝える義務がある。 1ウォン≒0.07円

寄付者別寄付食料の推移(金額ベース)

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韓国のフードバンク

フードマーケットの内部 永登浦区フードバンク

配送車 フードバンクを利用したレストラン レストランの栄養士と料理長

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日本におけるフードバンク運営主体の課題

活動への社会的評価の高まり、活動規模が拡大

経費の増大で、首都圏を除き財源確保に困窮

財政基盤の強化のため、行政との協働が議論

非営利市民組織活動としての特徴を担保しつつ、行政との協働の在り方は?

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日本におけるフードバンク運営主体の課題

活動への社会的評価の高まり、活動規模が拡大

経費の増大で、首都圏を除き財源確保に困窮

財政基盤の強化のため、行政との協働が議論

非営利市民組織活動としての特徴を担保しつつ、行政との協働の在り方は?

フードバンク活動を国策として行っている韓国と比較し、

日本のフードバンク運営主体と行政との協働を考察

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フードバンク活動の組織、活動、行政との協働、関係性の日韓比較

日本 韓国

組織

ミッション

●食品ロスを削減 ●生活困窮者を救済 ●地域を活性化

●生活困窮者を救済 ●分かち合いの文化醸成

組織の形態と運営

●すべての運営主体は市民による非営利組織である。 ●2010年に全国ネットワークが結成されたが、必ずしも機能しておらず、各運営主体が独自のミッションと方法で活動している。

●食品を、最終的に生活困窮者に提供する運営主体は、非営利市民組織であるが、国が国策として全面的に支援している。 ●保健福祉部が、全国フードバンクを、広域市・道が広域フードバンクを、市・郡・区が基礎フードバンクを、それぞれ管理し、組織的に活動が運営されている。

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フードバンク活動の組織、活動、行政との協働、関係性の日韓比較

日本 韓国

活動

食料の流

●各運営主体は、個別に食品関連企業から無償で食料の提供を受け、生活困窮者支援団体に無償で提供 ●大都市の運営主体から地方の運営主体に提供される例もある ●大半が支援団体経由で、直接個人に提供している例は少ない

●寄贈された食料は、上位から順次下位のフードバンクを経由して、生活困窮者支援団体に提供されている ●物流の効率化のため、大田に中央物流センター設置 ●フードマーケットでは、生活困窮者に寄贈物品を直接提供 ●生活保護受給者及び予備群に月間5ポイント使用可能なポイントカード支給

活動方法 それぞれの運営主体が、それぞれのミッションを掲げ、独自の方法で活動

保健福祉部が社会福祉協議会に業務を委嘱、組織的に活動全体を管理

ホームレス支援

すべての運営主体は、ホームレス支援が起点であり活動を継続

ホームレス支援は行っていない (ホームレス支援法がある)

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フードバンク活動の組織、活動、行政との協働、関係性の日韓比較

日本 韓国

行政との協働

一部のフードバンクでは行政との協働があるが、ほとんどのフードバンクでは協働していない。

国や地方自治体に組織的に組み込まれており、全面的に協働している。

行政との関係性

●一部のフードバンクでは、行政との関係性を構築している。 ●関係性のないフードバンクがほとんどである。

国策として組み込まれており、通常の非営利市民組織と行政との関係性には当たらない。

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結論

フードバンク活動は、行政が主導する型で取り組めば、システム化され、効率よく社会秩序の中にビルトインされやすい。財政上の課題も一部緩和される。

しかし、非営利市民組織として一義的に取り組むべき「行政や市場では解決できない課題」が疎かになる、非営利組織が育たないというデメリットも指摘されている。

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今後の日本社会の担い手 政府の失敗・市場の失敗

NPO・NGO

行政 企業

有権者・納税者

役員・寄付者・ ボランティア

消費者・労働者

出所:ひろしまNPOセンター「ビジョン・中間計画」(2011年策定)を参照に筆者作成

市民

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今後、わが国のフードバンク活動を広げていく上で、韓国の事例は参考すべき点が多々あるものの、行政と協働にあたっては、フードバンク運営主体が主導となることが望ましいと考える。

考察

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参考文献・参考資料 ●農林水産省ウェブサイト(http://www.maff.go.jp/j/org/index.htmlアクセス日2013/1/2) ●セカンドハーベストジャパン(http://www.2hj.org/index.php/jpn_homeアクセス日2013/01/28) ●原田佳子(2012)「わが国のフードバンク活動に関する実態分析」広島大学大学院社会科学研究科マネジメント専攻平成23年度修士論文 ●『FOODBABK GUIDELINE2010』セカンドハーベストジャパンhttp://www.2hj.org/index.php/what_is_j/Guideline_jアクセス日2012/1/28 ●若杉英治(2012)『協働型事業における行政と市民との関係性:日米中比較を通じて』学術出版会 ●西山志保(2004)「震災ボランティアの10年」『ボランティア研究vol.5』pp.47-59 ●章大寧(2010)「韓国のFoodBank制度―環境・資源的役割に注目して―」南九州大学研報40B:21-35 ●小林富雄(2012)「韓国フードバンク活動によるフードセキュリティの形成過程―メディアを活用したダイレクトマーケティングへの展開」2012年度日本農業市場学会大会個別報告資料 ●李永淑(2012)「韓国のフードバンク事情」第5回フードバンクシンポジウム(http://www.2hj.org/images/uploads/Korea_FB_Report_in_Japanese_Part1.pdfアクセス日2013/2/10) ●ひろしまNPOセンター「ビジョン・中期計画」(2011年11月策定)

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ご清聴を感謝いたします