第3回:ブルース~その2 - MI7 JAPAN画面② Sound②の編集画面...

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田中幸太郎:リズム生き生き、グルーヴ・プロデュース 楽曲の印象を大きく左右するリズム・アレンジ。ジャンル固有のリズム・パターンを流用するだけで満足してい ませんか? もちろんさまざまなリズム・パターンを知っておくことは、リズム・アレンジの幅を広げるために 必要なことですが、そのパターンに単純に当てはめるだけではダメ。楽曲に魂を吹き込むには、そこから先の創 意工夫が重要です。キーワードは“グルーヴ”。DTM では、データをエディットすることによって、さまざまなグ ルーヴ感を生み出すことができます。本セミナーでは、楽曲に最適なグルーヴをプロデュースするためのデータ・ エディット方法を考察。インストラクターはドラマーでもあるレコーディングエンジニア・作曲家の田中幸太郎 氏。若い感性でリズム・アレンジに切り込んでいただきます。 第 3 回:ブルース~その 2 (2009 年 12 月 6 日) 今回もブルースのリズム・プログラミングについて解説をしていきます。前回はブルースの代表的なリズム・パターンで あるシャッフル・ビートを 2 種類聴きましたが、その違いはどこから生まれてくるのでしょうか?今回はその謎解きから 始めましょう。 ■2 種類のシャッフル・ビートの違い 前回紹介した 2 種類のシ ャッフル・ビートをもう 1 回聴いてみましょう。 ●Sound① ●Sound② Sound①よりもSound②の方が、1拍目のバス・ドラムのキックが強調されているように聞こえないでしょうか? また、 スネアが鳴るタイミングも、若干ゆったりと聞こえませんか? ジャストの位置にクオンタイズしたビートとなってます。MIDI 編集画面の縦線をグリッドと呼びますが、8 分音符を 3 等 分した位置(3 連符の位置)に線が引かれています。ご覧の通り、グリッドにすべての音符が合わせてあり、完全な 3 連 符となっているので非常にキッチリとしたリズムになっているのです。しかし、生演奏を再現するような打ち込みをした い場合、ジャストに合わせすぎると人間による演奏に聴こえないようにも感じます。 画面① Sound①の編集画面

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  • 田中幸太郎:リズム生き生き、グルーヴ・プロデュース 楽曲の印象を大きく左右するリズム・アレンジ。ジャンル固有のリズム・パターンを流用するだけで満足してい

    ませんか? もちろんさまざまなリズム・パターンを知っておくことは、リズム・アレンジの幅を広げるために

    必要なことですが、そのパターンに単純に当てはめるだけではダメ。楽曲に魂を吹き込むには、そこから先の創

    意工夫が重要です。キーワードは“グルーヴ”。DTM では、データをエディットすることによって、さまざまなグ

    ルーヴ感を生み出すことができます。本セミナーでは、楽曲に最適なグルーヴをプロデュースするためのデータ・

    エディット方法を考察。インストラクターはドラマーでもあるレコーディングエンジニア・作曲家の田中幸太郎

    氏。若い感性でリズム・アレンジに切り込んでいただきます。

    第 3 回:ブルース~その 2 (2009 年 12 月 6 日)

    今回もブルースのリズム・プログラミングについて解説をしていきます。前回はブルースの代表的なリズム・パターンで

    あるシャッフル・ビートを 2種類聴きましたが、その違いはどこから生まれてくるのでしょうか?今回はその謎解きから

    始めましょう。

    ■2 種類のシャッフル・ビートの違い

    前回紹介した 2種類のシ

    ャッフル・ビートをもう 1

    回聴いてみましょう。

    ●Sound①

    ●Sound②

    Sound①よりも Sound②の方が、1拍目のバス・ドラムのキックが強調されているように聞こえないでしょうか? また、

    スネアが鳴るタイミングも、若干ゆったりと聞こえませんか?

    ジャストの位置にクオンタイズしたビートとなってます。MIDI 編集画面の縦線をグリッドと呼びますが、8分音符を 3等

    分した位置(3連符の位置)に線が引かれています。ご覧の通り、グリッドにすべての音符が合わせてあり、完全な 3連

    符となっているので非常にキッチリとしたリズムになっているのです。しかし、生演奏を再現するような打ち込みをした

    い場合、ジャストに合わせすぎると人間による演奏に聴こえないようにも感じます。

    画面① Sound①の編集画面

  • 画面② Sound②の編集画面

    画面②中に“A”および“B”とマークしてありますが、この 2つの音符はわずかながらジャストの位置よりも後ろ目に置

    かれています。この後ろ目のクオンタイズのポイントとしては、スネアで“重い”ビートを表現することにあります。“B”

    の位置にあるスネアを後ろに置くと、必然的に“A”との距離が広がる=時間が長くなります。しかし、それだけだと“も

    ったり”としたグルーヴになってしまいます。

    そこで、“A”の音符も同じように後ろにクオンタイズします。すると、弱くベロシティ調整した“A”と、4分音符の位

    置にある“B”の位置が詰まり、強い拍である“B”がより強調され、タイトになります。

    ■スロー・ブルースをよりムーディーに

    Sound②におけるプログラミングはスロー・テンポのブルースにおいて、より効果を実感できます。

    今度はシャッフル・ビートを用いずに、3連符のビートによってゆったり感を出してみましょう。

    ●Sound③ スロー・ブルース(ジャスト) ●Sound④ スロー・ブルース(後ノリ)

    Sound③のジャストなスロー・ブルースよりも、Sound④の方が、よりスローな雰囲気も出てムーディーに聞こえてきま

    す。

  • 画面③ Sound③の編集画面

    Sound④のドラムのMIDI も Sound②と同様なプログラムが施されていますが、スローの方が Sound②に比べて“A”

    と“B”をより後ろ目にクオンタイズできます。これは、両者のテンポに関係しています。Sound②が BPM=90である

    のに対して、Sound④は BPM=60となっており、そもそもの音符と音符の間が Sound④の方がはるかに長いわけです。

    それだけ音符が前後に動ける“遊びの時間”があるので、クオンタイズによってタメを作ってグルーヴを調節しやすいわ

    けです。

    楽器演奏の経験がある人だと、「速いテンポの曲よりも遅いテンポの曲を演奏する方が難しい」というようなことをよく言

    いますが、その理由のひとつに、グルーヴしているのかしていないのかがバレ易いということがあると思います。

    このように、ちょっとした工夫で黒人が演奏するような、タメがありつつ瞬発力もあるというビートを表現することがで

    きます。

    2 回にわたってブルースのリズム・プログラミングについての解説を行ってきましたが、黒人による音楽のグルーヴを感

    じ取れたでしょうか?

    次回はブルースと親和性の深い“ジャズ”のリズム・プログラミングの解説をしていきたいと思います。

  • ◎ コラム ~ブルース名曲集~

    個人的に好きなブルース曲をいくつか紹介しましょう。

    ・「Stormy Monday 」(The Allman Brothers Band)

    ~スローブルースの代表曲

    ・「Georgia On My Mind」(Ray Charles)

    ~スタンダード・ナンバー・こちらもスロー・ブルースの代表曲

    ・「Hoochie Coochie Man」(Muddy Waters)

    ~語りのようなボーカルとバンドの掛け合いがカッコ良い

    ・「Cocaine」(Eric Clapton)

    ~言わずと知れた白人ブルースの王様。ロックのファンも多い

    ・「Cookings Done」(Lightnin' Hopkins)

    ~ロックンロールを思わせるアッパーなノリ)