第2グループ エラーマネジメント研究会 平成19年度...

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1 第2グループ エラーマネジメント研究会 平成19年度 活動報告 エラーマネジメントに関する調査研究 エラーマネジメントへのアプローチ H20.5.28 経団連会館 エラーマネジメント研究会 三角 竜二

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第2グループ エラーマネジメント研究会

平成19年度 活動報告

エラーマネジメントに関する調査研究

~ エラーマネジメントへのアプローチ ~

H20.5.28 経団連会館

エラーマネジメント研究会 三角 竜二

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エラーマネジメント研究会 活動の経緯

H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19

活動内容

外部活動

•考慮すべき背後要因の明確化

•実務者分析手法の検討

•ヒューマンエラー

分析方法の調査

•実務者へのアン

ケート調査

•実務者用分析手法の開発

部門担当者用

QA担当者用

HF担当者用

第Ⅰ期 ヒューマンエラー低減対策の検討

•エラーマネジメント基礎講座開

催(原産主催)

•社内インシデント分析支援

(K社)

定着化と分析支援

第Ⅱ期 組織事故・不祥事低減対策の検討

•組織事故・不祥事の事例分析•組織事故モデルの開発•関連分野の調査

•組織事故・不祥事の

事例分析

•組織事故モデルの拡張

•共通要因分析の検討

•関連分野の調査

ホルナゲル著小松原明哲監訳

「ヒューマンファクターと事故防止」

翻訳出版(有志)

・「安全・安心」研究会でEM研紹介

・日本人間工学会

関東支部会

「エラーマネジメント」へのアプローチ

・RCA研修会協力

分析手法: ・拡張CREAM法

・HINT/J‐HPES

・人間エラー発生FT図

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1.平成19年度活動の概要

(1)ヒューマンエラー分析手法を用いた社内インシ

デント事例の分析

(2)組織事故・不祥事への展開について

・エラーマネジメントプロセスモデル考え方と事例紹介

・FRAMの考え方と組織事故分析への適用研究

(3)エラーマネジメントシステムの検討

・共通要因抽出の枠組みの検討

(4)関連領域調査

・講演 海上技術安全研究所 伊藤主任研究員

「海難事故CREAM分析」

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研究幹事会メンバー

特別会員 ・・・・・・・・・ 小松原 明哲(早稲田大学理工学術院教授)

リーダ ・・・・・・・・・ 三角 竜二(三菱重工)

副リーダ ・・・・・・・・・ 清川 和宏

研究幹事 ・・・・・・・・・ 氏田 博士(エネルギー総合工学研究所)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 作田 博(原子力安全システム研究所)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 弘津 祐子(電力中央研究所)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 増田 浩通(千葉工業大学社会システム科学部)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 中村 誠(清水建設)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 渡邊 邦道(東京電力)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 奈良 順一(東京電力)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 伊藤 甫(日立製作所)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 笹島 洋幸(東芝)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 南 聡(早稲田大学理工学部)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 手島 華乃(東芝)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 稲田 茂和(三菱重工)

研究幹事 ・・・・・・・・・ 鎌田 信也(三菱重工)

事務局 ・・・・・・・・・ 岡 澤 需(日本原子力産業協会)

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2.社内インシデント事例の分析

「再処理施設の耐震計算誤り」の事例について以下の分析手法により組織要因を分析した。

①拡張CREAM法 ②HINT/J-HPES

③人間エラー発生FT図 ④FRAMによる分析

(1)エラーモード

①耐震計算で固有振動数を入力すべきところ固有周期を

入力したエラ-:H4~5年 設工認申請書作成時

②入力誤りを発見できなかったエラー:

・H4~5年 設工認申請書作成時・H8年 設工認総点検のための入力データの確認時

③計算誤り発見時に報告しなかったというエラー :・H8年 設工認総点検のための入力データの確認時

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(2)事例分析から得られた教訓

①品質保証責任の分担の明確化

耐震計算は複数の部署で審査・承認がされており、

「どこかで確認されるだろう」というETTO(効率・完全

性トレードオフ)が発生しやすい状況の中で、審査・

承認という品質保証の責任分担が不明確であった。

②コンプライアンスを支援する仕組みの充実

コンプライアンス教育と同時に、コンプライアンスを支

援する仕組み(相談窓口、免責制度)

(3)各分析手法の特徴

・各分析手法の出発点は、時系列の整理である。

・各分析手法には、それぞれに背後要因抽出のガイド

ラインとなる視点があり、それを活用して効果的に

背後要因を抽出する。

(定式化されたFT図、背後要因一覧表等)

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拡張CREAM法

エラー

結果

エラーモード 一般的結果/一般的原因 最終原因 共通要因

耐震設計計算の誤り

固有周期の入力を考えた

固有振動数を入力すべきところを誤って固有周期を入力した。(設計者A)

入力単位の変更を知らなかった

解析コード変更時の周知の不徹底

入力単位の変更を知らされていない

入力誤りを発見できず(設計者B、協力会社Ⅰ)

誤入力を発見できる確認方法ではなかった

検査方法が明確に定められていない

コード変更箇所の徹底方法が不十分

入力単位が明確に識別できない画面表示

改訂版マニュアルを所有しているので変更を認識していると思った

計算誤り防止のためのルールがない

入力誤りを検出する眼力なし

計算審査時の審査方法の不備

入力画面で入力単位の変更に気がつかない

【対象/類似の対象】

【計画/計画不適切】

【コミュニケーション/コミュニケーションの失敗】

【順序/オミッション】

【コミュニケーション/コミュニケーションの失敗】

【教育/知識不足】

【インターフェ-ス/ラベルのミス】

【思い込み】

【組織/管理運用の問題】

【組織/規格基準の問題】

【教育/知識不足】

設計審査者の眼力不足?

【計画/計画不適切】【作業条件/困難な作業】

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人間エラー発生FT図(分析シート)

外 部 要 因マ ネ ジ メ ン トマ ン ( 関 係 者 )メ デ ィ アマ シ ン

力を増強しすぎる治工具

機器配置が悪い

複雑な設備

機器の識別性が悪い

監視・協力等が悪い

模擬訓練が不適切

手順に関する教育が不適切

作業のやり方が悪い

外部要因(1)

B

作業性が悪い

設計者Bは担当者Aがマニュアルを所持していることから、変更を認識していると思い込んだ。また、担当者Aに直接確認していなかった。

耐震コードの入力形式の変更の周知、及びその教育が協力会社まで実施されていなかった。

耐震コードの入力形式の変更箇所が識別されていなかった。(推測)

人間の情報処理段階

当事者

要求された作業結果からの逸脱

同時発生せず

動作誤り

選択上の誤り慣れによるやり損ない

内部要因 外部要因(1)内部要因 外部要因(1)

やり損ない知識に基づく行動

規則に基づく行動

慣れに基づく行動

A BA B

担当者Aは固有振動数で入力するところ、固有周期を入力した。

変更された解析コード(新版)でも、旧版コードと同様に固有周期を入力すると思い込んだ。

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HINT/J‐HPES(設工認申請書作成時)

協力会社Ⅱ設計者Bおよび協力会社Ⅰは、誤入力を発見するための実効的な確認を行わなかった

協力会社Ⅱ,協力会社Ⅰでは解析コードへの誤入力や発見するための、入力条件と入力データを含む出力データシートによる一貫した確認、簡易モデル計算を行うなどの効果的な入力ミス防止のための実効的な確認を行うルールがなかった

日立では解析コードへの誤入力や発見するための、入力条件と入力データを含む出力データシートによる一貫した確認、簡易モデル計算を行うなどの効果的な入力ミス防止のための実効的な確認を行うルールがなかった

計画、準備、評価段階

 [作業、設備・環境]

日常管理

解析コードの変更を周知・教育するルールが明確でなかった

CNDYNに関する教育が無かった

実施段階[人] 担当者Aは「CNDYN」におい

ても「HISTDYN」と同様に固有周期を入力するものと思い込んでいた

担当者Aは耐震計算用コードの「HISTDYN」に対し3年程度の経験により習熟していた

担当者Aは「CNDYN」に関するマニュアルを保有していたが、固有振動数を入力しなければならないことに気づかなかった

担当者Aは燃料取替固有振動数(Hz)を入力すべきところ、固有周期(秒)を入力して耐震計算を実施した

不具合状態

分析対象行為

入力画面が入力単位の変更に気づかせるような表示になっていなかった(推定)

担当者に入力ミスを検出する眼力がなかった/品質管理意識が低かった(推定)

協力会社Ⅱ,協力会社Ⅰは計算書の誤りを摘出できなかった

担当者Aは「CNDYN」に関するマニュアルを保有していた

計画・準備・評価段階[人]

設計者Bは担当者Aがマニュアルに則り固有振動数を入力することを理解していると思い込んだ

実施段階[作業、設備・環境]

従来用いられていた「HISTDYN」では、入力形式として固有周期(秒)が用いられていたが、「CNDYN」では変更がなされ固有振動数(Hz)を用いるようになった

設計者Bは、部下に「CNDYN」では固有振動数を入力データに使用することを教育していたが、担当者Aが戻った際には、教育を行わなかった

日立では耐震検査に係わる審査・承認体制を部門ごとに運用していた

日立では、協力会社Iからの成果物に対する審査、承認の深さが不十分であった

日立は、燃料取替固有振動数(Hz)を入力すべきところ、固有周期(秒)を入力して解析した報告書を提出した

担当者に入力ミスを検出する眼力がなかった/品質管理意識が低かった(推定)

日立の設計担当者は計算書の誤りを摘出できなかった

日立の審査では誤入力を発見するための実効的な確認が行われなかった

報告書の耐震計算誤り

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HINT/J‐HPES(設工認申請書作成時)

実施段階[人]

担当者Aは「CNDYN」においても「HISTDYN」と同様に固有周期を入力するものと思い込んでいた

担当者Aは耐震計算用コードの「HISTDYN」に対し3年程度の経験により習熟していた

担当者Aは「CNDYN」に関するマニュアルを保有していたが、固有振動数を入力しなければならないことに気づかなかった

担当者Aは燃料取替固有振動数(Hz)を入力すべきところ、固有周期(秒)を入力して耐震計算を実施した

不具合状態

分析対象行為

日立は、燃料取替固有振動数(Hz)を入力すべきところ、固有周期(秒)を入力して解析した報告書を提出した

報告書の耐震計算誤り

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HINT/J‐HPES(設工認申請書作成時)

計画、準備、評価段階

[作業、設備・環境]

日常管理

解析コードの変更を周知・教育するルールが明確でなかった

CNDYNに関する教育が無かった

入力画面が入力単位の変更に気づかせるような表示になっていなかった(推定)

担当者Aは「CNDYN」に関するマニュアルを保有していた

計画・準備・評価段階 [人]

設計者Bは担当者Aがマニュアルに則り固有振動数を入力することを理解していると思い込んだ

実施段階 [作業、設備・環境]

従来用いられていた「HISTDYN」では、入力形式として固有周期(秒)が用いられていたが、「CNDYN」では変更がなされ固有振動数(Hz)を用いるようになった

設計者Bは、部下に「CNDYN」では固有振動数を入力データに使用することを教育していたが、担当者Aが戻った際には、教育を行わなかった

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12FRAM分析(設工認申請書作成時)

平成4~5年 設工認申請書作成時

日立 協力会社Ⅱ

担当者B

協力会社Ⅱ

設計者A

協力会社

耐震計算を

依頼

検査

マニュアル

部下に教育する

役割

結果の妥当性確認

HISTDYNの経験 CNDYNのマニュアル

計算業務

受注

入力単位の思い込み

HISTDYNから

CNDYNへの変更

自社の提示条件

誤計算

確認されず

報告書

O

R P

I

T C

O

R P

I

T C

規則

O

R P

I

T C

O

R P

I

T C

協力会社

審査

教育せず

O

R P

I

T C Aがマニュアル

を持っている

固有周期での

報告書

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3.1エラーマネジメントプロセスモデルの考え方と事例紹介

本EM研で開発してきたエラーマネジメントプロセスモデルを、

組織レベルでの品質問題、安全問題にも適用できる分析用の

ツールとするための検討を行った。

(1)プロセスモデルチェックシートの作成

マネジメントシステム(QMS)と安全文化の2つの面から、「問題点・まずさの要因」を洗い出し、事象発生からその進展に合わせて、問題点を特定するチェックシートを作成した。

(2)事例検討(雪印乳業食中毒事件)

・分析結果から、安全文化に関する多数の項目にチェックが

入っていることから、この事故を不祥事にまで発展させた要

因が、様々なところに潜在的に存在していることが分かる。

・会社そのものの安全文化が劣化しており、全社的にQMSが

形骸化していたものと推察できる。

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表3.1-2b プロセスモデルチェックシート 分析対象組織事故:雪印乳業食中毒事件 大坂工場 事象発生

【生産管理】 【食中毒】コミュニケーション  0  QMSの状況把握 安全文化に関する状況

有効に維持 トップ自ら具体的方針・指示を発信   安全意識の繰り返し定着化活動  報告せず 報告有り 検査・点検・監視の具体的手順が明確   検査・点検・監視の具体的手順が明確 

フィードバックプロセスが機能している  フィードバックプロセスが機能している対応は適切か リスク評価の仕組みがある HACCPあり リスク評価の仕組みがある HACCP

ダブルスタンダード HACCPと現場ルール 安全/品質の軽視、利潤追求重視ルール違反 対策の遅れ 適切に対応 暗黙のルールが別にある 材料管理が杜撰 違反の習慣化 現場ルール簿外管理 内部監査で指摘が出ていない 危険源の放置

是正処置 安全教育の不徹底

END 品質保証・品質管理の仕組みが未確立

その他

是正処置 是正処置   ①  QMS上の問題点・まずさの要因 なぜそうしたのか 安全文化に関わる問題・まずさの要因 なぜそうしたのか報連相 報告せず 事象を理解できず 危険性を判断できず

製品回収遅れ 問題と認識せず 現場ルールで処理 リスク軽視 低い認識適切な公表せず 自分だけで解決できると問題として対応 能力・機能を過大評価

認識するも独善的判断で無視 ルール無視報告不明 局面・事実を理解できず放置 危険性を放置

問題を重要・危険と考えず 危機管理体制不備 危険性を過小評価(食中毒被害拡大) 独善的判断で無視 安全性を過大評価

他者の責ゆえ対応せず 分析を回避事実を歪曲する行動 簿外管理習慣化 不実の報告 コンプライアンス軽視隠蔽・秘匿 隠蔽・秘匿

その他

不適合事象の是正処置 危機管理体制の発動  ②  QMS上の問題点・まずさの要因 なぜそうしたのか 安全文化に関わる問題・まずさの要因 なぜそうしたのか遵 守 手順通り実施 扱いを間違えた 責任連絡体制の不備

適切な処置 手順に誤り・矛盾があった 技術者倫理

手順に欠落があった コンプライアンス意識の低さ 影響の矮小化を意図事態の収束 手順が不明確・難解 リスク認識の欠如

適切な手順が無く、他の手順を準用 組織文化原因分析 原因究明が不十分 事実関係の把握不備 安全衛生マニュアルの不備

処置が的外れ 緊急時訓練実施せず/効果なし不遵守 手順違反 従うべき手順を無視した 事故報告システム不全

規定を使おうとしたが使えなかった 記録に不備・欠落手順の存在を知らなかった 記録の記述に誤り

監視機能 事前確認 処置の事前確認がなされた 記録の記述に虚偽確認プロセスは実行されたがスルー (違反時の)成功体験の常態化確認プロセスはバイパス 事後対策のフィードバックなし

事前確認のHOLDPOINTなし 緊急時プロセスの機能不全 情報伝達を阻害BCP 状況把握管理 処置途中での状況把握なし 緊急時プロセスを不採用

事後評価 処置結果の有効性評価を実施 組織内コミュニケーションの欠如 経営層の関心度の低さ有効性評価が機能していないか手順無し 組織内圧力

処置のまずさの要因. ②

重大事故に進展

是正処置が妥当か

組織的対応が適切か

なされた報告に対して適切に対応しなかった要因 ①

報告しなかった要因

当該組織外への対応のまずさの要因 ④

組織外対応が妥当か

不適合事象対応のまずさの要因 ③

その他

処置のまずさの要因. ②

Yes

Yes

Yes

YesNo

No

No

No

No Yes

プロセスモデルチェックシート(雪印乳業食中毒事件)

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 0  QMSの状況把握 安全文化に関する状況

有効に維持 トップ自ら具体的方針・指示を発信   安全意識の繰り返し定着化活動  検査・点検・監視の具体的手順が明確   検査・点検・監視の具体的手順が明確 フィードバックプロセスが機能している  フィードバックプロセスが機能している

リスク評価の仕組みがある HACCPあり リスク評価の仕組みがある HACCPダブルスタンダード HACCPと現場ルール 安全/品質の軽視、利潤追求重視

暗黙のルールが別にある 材料管理が杜撰 違反の習慣化 現場ルール内部監査で指摘が出ていない 危険源の放置

安全教育の不徹底

品質保証・品質管理の仕組みが未確立

その他

  ①  QMS上の問題点・まずさの要因 なぜそうしたのか 安全文化に関わる問題・まずさの要因 なぜそうしたのか報連相 報告せず 事象を理解できず 危険性を判断できず

問題と認識せず 現場ルールで処理 リスク軽視 低い認識自分だけで解決できると問題として対応 能力・機能を過大評価

認識するも独善的判断で無視 ルール無視報告不明 局面・事実を理解できず放置 危険性を放置

問題を重要・危険と考えず 危機管理体制不備 危険性を過小評価

独善的判断で無視 安全性を過大評価他者の責ゆえ対応せず 分析を回避

事実を歪曲する行動 簿外管理習慣化 不実の報告 コンプライアンス軽視隠蔽・秘匿 隠蔽・秘匿

その他

 ②  QMS上の問題点・まずさの要因 なぜそうしたのか 安全文化に関わる問題・まずさの要因 なぜそうしたのか

遵 守 手順通り実施 扱いを間違えた 責任連絡体制の不備手順に誤り・矛盾があった 技術者倫理

手順に欠落があった コンプライアンス意識の低さ 影響の矮小化を意図手順が不明確・難解 リスク認識の欠如

適切な手順が無く、他の手順を準用 組織文化原因分析 原因究明が不十分 事実関係の把握不備 安全衛生マニュアルの不備

処置が的外れ 緊急時訓練実施せず/効果なし不遵守 手順違反 従うべき手順を無視した 事故報告システム不全

規定を使おうとしたが使えなかった 記録に不備・欠落

手順の存在を知らなかった 記録の記述に誤り監視機能 事前確認 処置の事前確認がなされた 記録の記述に虚偽

確認プロセスは実行されたがスルー (違反時の)成功体験の常態化確認プロセスはバイパス 事後対策のフィードバックなし

事前確認のHOLDPOINTなし 緊急時プロセスの機能不全 情報伝達を阻害状況把握管理 処置途中での状況把握なし 緊急時プロセスを不採用

事後評価 処置結果の有効性評価を実施 組織内コミュニケーションの欠如 経営層の関心度の低さ有効性評価が機能していないか手順無し 組織内圧力

その他

プロセスモデルチェックシート(雪印乳業食中毒事件) (拡大)

QMS上の問題点・まずさの要因

安全文化に関する問題点・まずさの要因

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3.2 FRAMの考え方と組織事故分析への適用研究

• E.Hollnagelが提案したFRAM(Functional Resonance Accident Model)は、機能共鳴事故モデルと呼ばれ、システムを構成する機能同士の変動がどのように連鎖し、共鳴して事故が起こるかという状況を表す事故分析モデルである。

• FRAMの基本記号は、入力(Input)から入った情報が人間の行動や機能の働きの結果、出力(Output)となって出されるという流れを基本としている。

機能/プロセス

T C

O

R

I

P

時間

入力

事前条件 資源

出力

制御

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FRAM分析例(不二家の問題)

「仕入れ担当」は、品質管理担当からの細菌検査で問題がなかったことや、上司からの使用の指示、自分の腕が確かであるという過信といったシステム機能の変動が重なり消費期限切れの牛乳を使用するという、事故が発生したことを示している。

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4.エラーマネジメントシステムの検討4.1共通要因抽出の枠組みの検討

エラーマネジメントシステムの概念図を以下に示すが、組織に内在する問題点の抽出方法として、根本原因分析(RCA)と共に、複数の事例からの共通要因の抽出がある。

安全監視

不適合発生詳細分析 簡易分析

スクリーニング

発生要因抽出

RCA 発生傾向評価

要因分析スクリーニング

根本原因抽出 対象事例抽出

防止対策立案 共通要因抽出

未然防止立案

防止対策実施

対策効果の評価

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(1)共通要因分析のパターン

共通要因分析のやり方について検討し、以下の3つのパターンに分類した。

・タイプⅠ:複数の詳細RCA事例から共通要因を抽出

・タイプⅡ:簡易分析事例をもとにヒアリング等により抽出

・タイプⅢ:簡易分析事例をもとに統計的手法により抽出

タイプ Ⅰ Ⅱ Ⅲ

目的 重要事故発生の防止

推進部署 全社品証統括部門

対象事例 詳細分析対象事例

要因抽出

方法詳細RCA分析結果を使用

簡易分析結果の統計処理

事後のヒアリング調査簡易分析結果の統計処理

不具合事例の発生防止

事業所品証担当部門

簡易分析対象事例

(軽微事象が中心)

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(2)共通要因分析の今後の課題

1)エラーマネジメントシステムの構築

①共通要因分析の対象とする事例を予め明確に定めてお

き、その事例を収集できる仕組みが必要である。

②未然防止対策の立案と実施後の評価はQA推進部門、

対策の選択と実施は現場部門が望ましい。

③安全監視では、エラーの発生傾向を監視するとともに、

実施した防止対策の効果を監視する必要がある。

2)軽微事象からのデータ収集

①共通要因の抽出時には、事象発生時に作成したデータ

を使うことになる。このデータには、一般的な不適合情報

に加え背後要因を含む情報が必要がある。

(軽微事象用簡易分析様式等)

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(参考)共通要因分析の取り組みの検討

(1)共通要因分析の考え方

事故・トラブルは組織が抱えている問題点が顕在化するために

発生するものであり、そこには必ず人間が関与していることから

「人間の情報処理と行動のメカニズム」の考え方を活用、展開し

組織的な共通要因を簡易分析する手法を検討した。

人間は、目、耳などの感覚器を通じて外界から情報を取り入れ(認知)、これを処理して判断・意志決定し、行動という形で外界に働きかける。

この一連の情報処理、行動の過程を人間の情報処理と行動のメカニズムという。

このメカニズムの過程で種々の背後要因により不適合が発生する。

人間の情報処理と行動のメ カニズム

情報の入力

認 知

判 断

行 動

背後要因

不適合要因の形成

背後要因

不適合発生

背後要因

完 了

不適合要因の形成

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2)人間の情報処理と行動のメカニズムによる分類データ

・不適合は、入力された情報を人間が認知し、判断し、行動に移すまでのプロセスで発生するものである。そこで「情報の入力(ルールの有無)」「認知」「判断」「行動」のプロセスで発生する不適合の原因を抽出した。

・この不適合原因は「共通要因簡易分析の概念図」の共通要因区分Ⅰに示す12個の要因である。12個の要因はヒューマンファクターに係る直接的な不適合要因である。

3)ヒューマンファクターに基づいた組織要因(背後要因)

・12個の要因に対して、組織が抱えている問題点(弱点)を顕在化させ、再発防止の対策系へ繋げていくために、更に背後要因である人的要因、組織的要因を抽出する。

・この組織要因分析(共通要因区分Ⅱ)には平成18年度の本研究にある「軽微事象用簡易分析様式」を用いることを検討した。

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共通要因簡易分析の概念図 (Ⅰ)

不適合発生

②ルール無し

⑤無知

⑦バイオレーション⑧ネグリジェンス⑨サボタージュ

⑥ミステイク

Yes

Yes

Yes

YesYes

No

No

No

技術的に既知の事象か

Yes

No

No⑩技術・技量不足

①未知技術

No

Yes

③ルール不備④ハードウェア・インターフェイス不良

⑪スリップ⑫ラプス

Yes

共通要因区分Ⅰ(直接要因)

ルール(標準)があったか

作業可能なルール(標準)であったか

ルール(標準)を知っていたか

意図的にルール(標準)を違反したか

ルール(標準)を遵守したか

ルール(標準)通りにできる技術があったか

情報の入力

(ルール)

No

No

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共通要因簡易分析の概念図 (Ⅱ)

No

不適合発生

②ルール無し

⑤無知

⑦バイオレーション⑧ネグリジェンス⑨サボタージュ

⑥ミステイク

Yes

Yes

Yes

Yes

Yes

No

No

No

安全意識の高揚及びモラルの確立

教育、訓練

教育、訓練

技術的に既知の事象か

Yes

No

No⑩技術・技量不足

①未知技術

コンプライアンス意識の不足

業務プロセスの監視・測定不可

・誤判断

・誤理解

固有技術に関する要因分析

・知識不足

・伝承無視

・技量不足

技術開発

教育、訓練

No

Yes

③ルール不備④ハードウェア・インターフェイス不良

・改善活動不十分・作業環境・設備不良

⑪スリップ⑫ラプス

ヒューマンエラー低減

・注意・用心不足・思い込み、慣れ等

Yes

・ルール(標準)の整備・環境改善、設備投資

共通要因区分Ⅱ(背後要因) 対策系共通要因区分Ⅰ(直接要因)

・ルール(標準)の制定・プロセスマップによる監視ポイントの構築

人的要因 組織的要因

・教育・訓練システムの不備

・情報コミュニケーション不足・教育・訓練システムの不備

リスク管理不可

・教育・訓練システムの不備

現場の監視・監督不十分

ルール(標準)があったか

作業可能なルール(標準)であったか

ルール(標準)を知っていたか

意図的にルール(標準)を違反したか

ルール(標準)を遵守したか

ルール(標準)通りにできる技術があったか

認知

判断

行動

情報の入力(ルール)

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4.2共通要因等の抽出例1:軽微事象

(1)データ改ざんに関する総点検結果の検討

平成18年11月30日に経産省は、全電力会社に総点検を行うよう指示した。これを受け電力会社は、総点検結果と再発防止策を提出している。これをもとに共通要因を分析した。

(2)分析結果

・主要原因では、法令/規格等の理解不足や、工程優先、安全の過信、言い出しにくい風土などの意識面、規程マニュアル類の整備不十分、リスクマネジメントの不備などの管理・運用面、行政・地元などへの説明回避など外部対応面での要因が挙げられている。

・防止対策として、経営トップからの安全メッセージの発信、対話活動の推進、企業倫理意識の醸成などの意識面と法令遵守教育、実務面では第一線職場への各種支援、規格・基準等の整備、危機管理体制など、また外部対応として、社外関連部署との連携の強化などが挙げられている。

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(3)データ改ざんの構造

前述の原因と防止策からデータ改ざんの構造を検討した。背景要因(推定) 共通要因(分析結果) 再発防止対策(分析結果)

工程優先の意識

安全の過信

従業 員 の 意識 従業 員 の 意識

安全メッセージの発信

情報・意識の共有化

QMS教育 法令順守教育法令遵守意識不足

現場 制 度

マニュアル等の整備不十分

現場 制 度

規格基準類の整備

第一線への支援強化

リソースの投入

外部 対 応

内部監査の不備

管理 制 度

規制行政への説明、メディアへ

の情報開示回避

地域行政、地域住民への情報提

外部 対 応

外部監査の強化

関連会社との関係改善

電力間の情報共有化自治体の反応

実効性を実感しにくい

規制

メディア報道

組織的対応不足

↓改ざん考慮

↓改ざん

↓隠ぺい

マネジメントレビューQMS活動の強化

不透明処理の相互

経営層の意識言い出しにくい雰囲気、異議申し立て困難

企業倫理意識の向上安全文化の醸成規格等の理解不十分

問題回避・慣例依存

管理 制 度

内部監査の充実

供意識の不足

対外コミュニケーションの重視、改善

↓トラブル発生

危機管理体制の整備

組織風土、専門家意識

(独善性の萌芽)

外部対応での負の経験

黙認風土

慢性的な繁忙感、疲労感

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(3)データ改ざんの構造 (Ⅰ)前述の原因と防止策からデータ改ざんの構造を検討した。

背景要因(推定) 共通要因(分析結果) 再発防止対策(分析結果)

工程優先の意識

安全の過信

従 業 員 の 意 識 従業 員 の 意 識安全メッセージの発信

情報・意識の共有化

QMS教育 法令順守教育法令遵守意識不足

現 場 制 度

マニュアル等の整備不十分

現 場 制 度規格基準類の整備

第一線への支援強化リソースの投入

↓ 改 ざ ん 考 慮

↓ 改 ざ ん

経営層の意識

言い出しにくい雰囲気、異議申し立て困難

企業倫理意識の向上安全文化の醸成

規格等の理解不十分

問題回避・慣例依存

↓ ト ラ ブ ル 発 生

組織風土、専門家意識(独善性の萌芽)

外部対応での負の経験

慢性的な繁忙感、疲労感

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(3)データ改ざんの構造 (Ⅱ)

前述の原因と防止策からデータ改ざんの構造を検討した。

外部 対 応

内部監査の不備

管 理 制 度

規制行政への説明、メディアへの情報開示回避

地域行政、地域住民への情報提供意識の不足

外 部 対 応

外部監査の強化

関連会社との関係改善

電力間の情報共有化自治体の反応

実効性を実感しにくい規制

メディア報道

組織的対応不足

↓ 隠 ぺ い

マネジメントレビューQMS活動の強化

不透明処理の相互黙認風土

管 理 制 度

内部監査の充実

対外コミュニケーションの重視、改善

危機管理体制の整備

背景要因(推定) 共通要因(分析結果) 再発防止対策(分析結果)

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4.3共通要因分析の実例

[問題点]燃料プールの水が地震発生によりオペレーティングフロアに溢れ出し、燃料交換機給電ボックスの電線管貫通部を通じて非管理区域へ漏れ出たこと。

[背後要因] (放射線物質)の分析結果を、分析員が当直に伝えるのか、非常災害対策本部が伝えるのかについて、関係者の認識が合っておらず、災害対策として平行して実施される通常業務においても通常の連絡体制が生きているということが十分に周知されていなかった。

K6放射性物質の海水への漏洩

[中越沖地震時の柏崎原子力発電所の対応]

2つの類似事象について、本格的に根本原因を分析した結果、共通要因が抽出された実例である。

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[問題点]運転員は、事故時の原子炉の冷温停止操作手順に傾注したことから、操作途中の通常停止手順が一部あったにもかかわらず、その操作について失念したこと。

[背後要因]非常災害対策本部設置に伴い、当直長の業務・権限と非常災害対策本部の機能・権限について明確に認識されておらず、災害対策と平行して実施される通常業務については通常の業務・権限が生きているということが十分に周知されていなかった。

[K6、K7共通要因]

非常災害対策本部が立ち上がった際の「連絡体制」と「当直長の業務における権限」について、「非常災害対策基本マニュアル」記載内容の周知が不十分であるということが、「共通要因」として抽出されたことになる。

K7におけるヨウ素の微量放出

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5.1エラーマネジメントに基づく共通要因分析

RCAとは、事故の共通の原因となる人間行動やその背後要因で

ある組織の課題及び社会との関係を明らかにすることである。

エラーマネジメントの視点から、以下の6つの視点が重要である。

①【外部の監視の目】組織の外から社会的に監視する枠組み

②【組織としての外部との関係】文書の有無とその内容の有効性により判定

③【組織としての制度】文書あるいは組織の有無とその内容の有効性により判定可能;体制の一貫性

④【組織としての管理】文書とその内容の有効性により判定可能;制度の運用方針

⑤【組織内の意識】インタビュー、アンケート、社内報などにより判定可能;組織としての制度、管理との比較で評価

⑥【技術力】技術系の組織の場合、この観点が重要

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5.3 海難事故のCREAM分析の講演

(1) 講演者:海上技術安全研究所 運航・システム部門伊藤 博子 主任研究員

(2)講演概要①船舶事故と運航における安全確保の現状・船舶の安全確保のために、GPSや詳細な海図など様々なシステムが導入されている。・大型船の事故例について、概要、影響、背後要因を紹介。②CREAMを用いた海難分析の説明・海難事故の引き金になる人間の行動の信頼性解析が重要。・「人、技術、組織」という3つの因子から構成される『共通作業条件』(Common Performance Condition)を特定する。

③まとめ・CREAMは、刻々と変化する状況や複雑な背後要因を持つ中で引き起こされるヒューマンエラーがもたらす事象の考察に有効である。

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6.今後の予定

(1)事例分析の継続とエラ-分析手法の改良エラーマネジメントプロセスモデルでの分析を行い、QMS、安全文化の観点からの分析手法として確立する。

(2)効果的なエラーマネジメントシステムの構築詳細RCAに加え、簡易分析手法を確立して、共通要因分析が可能な効果的なエラーマネジメントシステムを構築する。

(3)有効な内部監査へのアプローチ組織事故、不祥事を未然に防止するためには、QMSに留まらず安全文化の視点を積極的に取り入れて課題を抽出し、効果的な内部監査となるよう改善していかなければならない。第1グループの成果も踏まえ、エラーマネジメントの内部監査への展開を検討する。