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2013年度数学 IA演習第 13回理 I 1 ~ 10組
1月 20日 清野和彦
数理科学研究科棟 5階 524号室 (03-5465-7040)
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/index.html
問題 1. 次の 2重積分を極座標変換 x = r cos θ, y = r sin θ を利用して計算せよ。
(1)
∫∫D
(x+ y)2dxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ 1}
(2)
∫∫D
ydxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ 1, 0 ≤ x ≤ y}
(3)
∫∫D
√xdxdy D = {(x, y) | x2 + y2 ≤ x}
(4)
∫∫D
log(x2 + y2)dxdy D = {(x, y) | 1 ≤ x2 + y2 ≤ e2}
(5)
∫∫D
xydxdy D = {(x, y) | 1 ≤ x2 + y2, 0 ≤ y ≤ x ≤ 1}
(6)
∫∫D
xy
(x2 + y2)(1 + x2 + y2)2dxdy D =
{(x, y)
∣∣ (x2 + y2)2 ≤ x2 − y2, 0 ≤ x, 0 ≤ y}
(7)
∫∫D
1√x2 + y2
dxdy D =
{(x, y)
∣∣∣∣ (x2 + y2)2 − 2x(x2 + y2)− y2 ≤ 0,1
4≤ x2 + y2
}問題 2. 次の 2重積分を指定された変数変換を利用して計算せよ。
(1)
∫∫D
(y2 − x2)2dxdy D = {(x, y) | |x+ y| ≤ 1, |x− y| ≤ 1} u = x+ y, v = x− y
(2)
∫∫D
(x2 + y2)dxdy D ={(x, y)
∣∣ (x− 1)2 + (y − 1)2 ≤ 1}
x = 1 + r cos θ, y = 1 + r sin θ
(3)
∫∫D
x2dxdy D ={(x, y)
∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y,√x+
√y ≤ 1
}x = u2, y = v2
(4)
∫∫D
x2dxdy D ={(x, y)
∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y,√x+
√y ≤ 1
}x = r cos4 θ, y = r sin4 θ
(5)
∫∫D
x2 + y2
(x+ y)3dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x, 0 ≤ y, 1 ≤ x+ y ≤ 2} x = u− uv, y = uv
(6)
∫∫D
(x+ 1) cos(2x− x2 + 2y)dxdy
D ={(x, y)
∣∣∣ 0 ≤ x, 0 ≤ y − x2 ≤ π
6≤ 2x+ y ≤ π
3
}u = 2x+ y, v = y − x2
(7)
∫∫D
y2ex2y2
dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ y ≤ 3x, 1 ≤ xy ≤ 2} u = xy, v =y
x
問題 3. 次の広義 2重積分を指定された変数変換を利用して計算せよ。
(1)
∫∫D
ey−xy+x dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x, 0 ≤ y, 0 < x+ y ≤ 1} x = u− uv, y = uv
(2)
∫∫D
1√x2 − y2
dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ y ≤ x, y ≤ 1− x, x = y } u = x+ y, v = x− y
(3)
∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ y, xy ≤ 1} u = xy, v = x2 + y2
(4)
∫∫D
1
1− x2y2dxdy D = {(x, y) | 0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1, (x, y) = (1, 1)} x =
sin θ
cosφ, y =
sinφ
cos θ
問題 4. 第 8回の演習で、正実数 x, y に対し、
Γ(x) =
∫ ∞
0
e−ttx−1dt B(x, y) =
∫ 1
0
tx−1(1− t)y−1dt = 2
∫ π2
0
sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ
と定義されるガンマ関数とベータ関数を紹介した。
(1) Γ
(1
2
)= 2
∫ ∞
0
e−x2
dx を証明せよ。
(2) ガウス積分∫ ∞
−∞e−x2
dx =√π を、
(∫ ∞
0
e−x2
dx
)2
=π
4を示すことによって証明せよ。
(3)
∫∫R2
e−(3x2−2xy+3y2)dxdy =
π
2√2を示せ。
(4)
∫∫∫R3
e−(3x2+3y2+5z2+2xy−2yz−2zx)dxdydz =
√π3
6を示せ。
(5) ガンマ関数とベータ関数の関係 B(x, y) =Γ(x)Γ(y)
Γ(x+ y)を、Γ(x)Γ(y) = Γ(x+ y)B(x, y) を示す
ことで導け。
(6) a, b, c を正実数、D = {(x, y) | 0 < x, 0 < y, x+ y < 1} とする。次を示せ。∫∫D
xa−1yb−1(1− x− y)c−1dxdy =Γ(a)Γ(b)Γ(c)
Γ(a+ b+ c)
(7) a, b, c, d を正実数、D = {(x, y, z) | 0 < x, 0 < y, 0 < z, x+ y + z < 1} とする。次を示せ。∫∫∫D
xa−1yb−1zc−1(1− x− y − z)d−1dxdydz =Γ(a)Γ(b)Γ(c)Γ(d)
Γ(a+ b+ c+ d)
(8) a > 2, D = {(x, y) | 0 < x, 0 < y} とする。次を示せ。∫∫D
1
1 + xa + yadxdy =
1
a2Γ
(1− 2
a
)(Γ
(1
a
))2
(9) a > 3, D = {(x, y, z) | 0 < x, 0 < y, 0 < z} とする。次を示せ。∫∫∫D
1
1 + xa + ya + zadxdydz =
1
a3Γ
(1− 3
a
)(Γ
(1
a
))3
(10) D ={(x, y)
∣∣ x2 + y2 ≤ 1}とする。次を示せ。
∫∫D
√1− x2 − y2
1 + x2 + y2dxdy =
√π2
2Γ(1)
(B
(1
2,1
2
)−B
(1,
1
2
))=
π
2(π − 2)
(11) D ={(x, y, z)
∣∣ x2 + y2 + z2 ≤ 1}とする。次を示せ。
∫∫∫D
√1− x2 − y2 − z2
1 + x2 + y2 + z2dxdydz =
√π3
2Γ(32
) (B(3
4,1
2
)−B
(5
4,1
2
))= π
(B
(3
4,1
2
)−B
(5
4,1
2
))
2013年度数学 IA演習第 13回解答理 I 1 ~ 10組
1月 20日 清野和彦
数理科学研究科棟 5階 524号室 (03-5465-7040)
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計算問題の答
問題 1 (1)π
2(2)
1
3√2
(3)8
15(4) π
(e2 + 1
)(5)
1
16(6)
1
8(1− log 2) (7)
2
3π+
√3
問題 2 (1)2
9(2)
5
2π (3)
1
84(4)
1
84(5)
2
3(6)
2−√3
4(7)
e4 − e
2
問題 3 (1)1
4
(e− 1
e
)(2) 1 (3)
π
8log(2 +
√5)
(4)π2
8
目 次
1 重積分の変数変換公式 1
1.1 一般の変数変換公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
1.2 「扇形分割」によるリーマン和と極座標変換公式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
2 重積分の変数変換に関する一般的な注意 7
2.1 変換した後の変数の積分範囲について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
2.2 変数変換が逆変換で与えられている場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
2.3 広義重積分と変数変換 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
3 解答 9
3.1 問題 1の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
3.2 問題 2の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
3.3 問題 3の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
3.4 問題 4の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22
1 重積分の変数変換公式
この節では、重積分の変数変換公式を紹介し、2変数関数の極座標変換の場合に限り「なぜその
ような公式になるのか」を説明します。
第 13 回解答 2
1.1 一般の変数変換公式
まず、2変数に限らない一般の変数変換に対する重積分の変数変換公式を紹介しましょう。n 個
の実数 t1, t2, . . . , tn に n 個の実数 x1, x2, . . . , xn を対応させる写像 Φ を
(x1, x2, . . . , xn) = Φ(t1, t2, . . . , tn) =(ξ1(t1, t2, . . . , tn), ξ2(t1, t2, . . . , tn), . . . , ξn(t1, t2, . . . , tn)
)とします。このとき、f(x1, x2, . . . , xn) の重積分は
f ◦ Φ(t1, t2, . . . , tn) = f(ξ1(t1, t2, . . . , tn), ξ2(t1, t2, . . . , tn), . . . , ξn(t1, t2, . . . , tn)
)にどのように手を加えたものの重積分で表されるのか、それを与えてくれるのが重積分の変数変換
公式です。
1変数関数の場合には ∫ b
a
f(x)dx =
∫ β
α
f ◦ ξ(t) · ξ′(t)dt
でした。つまり、f(x) の積分は f ◦ ξ(t) · ξ′(t) の積分に変換されるわけです。n 変数の場合の結論は、∫· · ·∫∫
D
f(x1, . . . , xn)dx1dx2 · · · dxn =
∫· · ·∫∫
E
f ◦ Φ(t1, . . . , tn)|JΦ(t1, . . . , tn)|dt1dt2 · · · dtn
となります。ただし、E は Φ によって D に 1対 1に写る (t1, . . . , tn) の領域です。また、JΦ は
JΦ(t1, . . . , tn) = det
∂ξ1∂t1
∂ξ1∂t2
· · · ∂ξ1∂tn
∂ξ2∂t1
∂ξ2∂t2
· · · ∂ξ2∂tn
......
. . ....
∂ξn∂t1
∂ξn∂t2
· · · ∂ξn∂tn
という t1, . . . , tn の関数です。(見た目をすっきりさせるために、右辺では (t1, . . . , tn) を省略しま
した。)JΦ を写像 Φ のヤコビアンと言います。
このことから分かるように、写像 Φ、すなわち n 個の n 変数関数 ξ1, . . . , ξn は少なくとも偏
微分可能でなければなりません。また、JΦ が連続なら変換後の重積分も可能になります。だから、
Φ すなわちすべての ξi が C1 級であることは変数変換公式が成り立つための十分条件です。
n 変数の場合の公式はごちゃごちゃして見にくいので、2変数関数と 3変数関数の場合に変数変
換公式を書き下ろしておきましょう。
2変数関数 f(x, y) に二つの C1 級関数 ξ(s, t), η(s, t) を合成します。このとき、変数変換公式は∫∫D
f(x, y)dxdy =
∫∫E
f(ξ(s, t), η(s, t)
) ∣∣∣∣∣det(
ξs(s, t) ξt(s, t)
ηs(s, t) ηt(s, t)
)∣∣∣∣∣ dsdt=
∫∫E
f(ξ(s, t), η(s, t)
) ∣∣∣∣∂ξ∂s (s, t)∂η∂t (s, t)− ∂ξ
∂t(s, t)
∂η
∂s(s, t)
∣∣∣∣ dsdtとなります。
特に、極座標変換
ξ(r, θ) = r cos θ η(r, θ) = r sin θ
の場合、この変換のヤコビアンは
det
(ξr ξθ
ηr ηθ
)= det
(cos θ −r sin θ
sin θ r cos θ
)= r
第 13 回解答 3
ですので、極座標変換に対する重積分の変数変換公式は∫∫D
f(x, y)dxdy =
∫∫E
f(r cos θ, r sin θ)|r|drdθ
となります。
3変数関数 f(x, y, z) に三つの C1 級関数 ξ(s, t, u), η(s, t, u), ζ(s, t, u) を合成する場合の変数変
換公式は∫∫∫D
f(x, y, z)dxdydz
=
∫∫∫E
f(ξ(s, t, u), η(s, t, u), ζ(s, t, u)
) ∣∣∣∣∣∣∣det ξs(s, t, u) ξt(s, t, u) ξu(s, t, u)
ηs(s, t, u) ηt(s, t, u) ηu(s, t, u)
ζs(s, t, u) ζt(s, t, u) ζu(s, t, u)
∣∣∣∣∣∣∣ dsdtdu
となります。
特に、空間極座標変換
ξ(r, θ, φ) = r sin θ cosφ η(r, θ, φ) = r sin θ sinφ ζ(r, θ, φ) = r cos θ
の場合(図 1)、ヤコビアンは
det
ξr ξθ ξφ
ηr ηθ ηφ
ζr ζθ ζφ
= det
sin θ cosφ r cos θ cosφ −r sin θ sinφ
sin θ sinφ r cos θ sinφ r sin θ cosφ
cos θ −r sin θ 0
= r2 sin θ (1)
ですので、空間極座標変換に対する重積分の変数変換公式は∫∫∫D
f(x, y, z)dxdydz =
∫∫∫E
f(r sin θ cosφ, r sin θ sinφ, r cos θ)r2| sin θ|drdθdφ
となります。(多くの場合 E は 0 ≤ θ ≤ π を満たすように選ぶので、| sin θ| = sin θ となり、絶対
値は不要になります。)� �z
x
y
θ
φr r
r
図 1: 空間極座標における角度 θ と φ の取り方。� �次の節では 2変数関数の極座標変換の場合に「なぜ |r| を掛けることになるのか」を説明します。
第 13 回解答 4
1.2 「扇形分割」によるリーマン和と極座標変換公式
1変数関数の場合、微分積分の基本定理によって積分の話を微分の話に置き換えることができま
した。置換積分の公式も、そのように考えて合成関数の微分法から導きました。しかし、重積分に
ついては微分積分の基本定理に当たるものがないので、重積分の定義に従って考えなければなりま
せん。重積分の定義とは「リーマン和の極限」です。だから、まず
xy 平面でのリーマン和と rθ 平面でのリーマン和の関係
を明らかにする必要があります。� �
x
y
0
Dij
a bα
β
図 2: 扇形の分割。� �さて、本来の重積分では積分範囲が扇形であっても x 軸と y 軸に平行な直線だけで積分範囲を
切り刻まなければならないわけですが、「軸に平行」にこだわらなければ図 2のように分割しても
リーマン和に当たるものを考えることはできます。直感的には明らかだと思いますが、このような
分割を使ったリーマン和の極限もちゃんと重積分の値と一致することを証明しなければなりませ
ん。しかし、証明は(重要ではあるのですが、)ここでは省略します。次回の講義における一般論
で学んでいただくということで、申し訳ありませんがご了承ください。
一方、xy 平面における図 2の分割は、「rθ 平面(という仮想的な平面)における軸に平行な分
割(図 3)」を x = r cos θ, y = r sin θ で 1対 1に写したものになっています。だから、図 2に関す
る f(x, y) のリーマン和を図 3に関する「g(r, θ) に手を加えたもの」のリーマン和で表すにはどの
ように「手を加えればよいか」がわかれば、極座標変換すると重積分の式がどう変わるかがわかる
ことになります。
図 3 の長方形 Eij が図 2 の Dij に写されているとし、Eij の中に代表点 (ρij , ϑij) を取り、
ξij = ρij cosϑij , ηij = ρij sinϑij とすることでDij の代表点 (ξij , ηij) を決めましょう。すると、
g(ρij , ϑij) = f(ξij , ηij)
ですので、Eij を底面とし g(ρij , ϑij) を高さとする直方体の体積と Dij を底面とし f(ξij , ηij) を
高さとする「一切れのバームクーヘン」のようなものの体積との違いは、高さが同じなのですから
第 13 回解答 5
底面積の違いだけに依存しています。目標の重積分の値に収束する方のリーマン和は「バームクー
ヘン」の方の和ですから、Eij を底面とする直方体の体積に
Dij の面積Eij の面積
を掛けてからすべての Eij についての和を取ってやれば、g(r, θ) を使った式で目標の重積分の値
の近似値が得られることになります。� �
r
θ
Eij
0 a bri−1 ri
α
β
θj−1
θj
図 3: 扇形の分割に当たる分割。� �Eij を [ri−1, ri]× [θj−1, θj ] とすると、
Dij の面積 =1
2(ri
2 − ri−12)(θj − θj−1) =
1
2(ri + ri−1)(ri − ri−1)(θj − θj−1)
=ri + ri−1
2× Eij の面積
となります。(E を r > 0 の範囲に取ったので ri2 > ri−1
2 となっています。)リーマン和で書けば∑i,j
f(ξij , ηij)×Dk の面積 =∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1)
です。これで分割を細かくした極限を取ると、左辺は目標の重積分の値∫∫D
f(x, y)dxdy D は図 2の扇形
に収束するわけですから右辺も同じ値に収束します。
しかし、右辺は「r と θ の関数のリーマン和」という形になっていません。まずいのは ri+ri−1
2
の部分です。ここが ρij , ϑij の関数(h(ρij , ϑij) と書くことにします)になっていれば右辺は
g(r, θ)h(r, θ)
という関数のリーマン和なので、分割を細かくすれば∫∫E
g(r, θ)h(r, θ)drdθ
第 13 回解答 6
に収束します。そこで、分割を細かくしたときの極限値が右辺のもとの一致するような関数 h(r, θ)
を探してみましょう。分割が細かいと ri と ri−1 はどちらも ρij に近いことから、ri+ri−1
2 を ρij
で置き換えれば、つまり
h(r, θ) = r
とすればよいのではないかと考えられるでしょう。(今は r > 0 の範囲に E をとってあるので絶
対値記号はついていませんが、r < 0 の範囲に E を選ぶことまで考慮に入れるなら、h(r, θ) = |r|とすることになります。)
このことくらいは証明しておきましょう。つまり、分割を細かくしたとき、∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1) (2)
と ∑i,j
g(ρij , ϑij)ρij(ri − ri−1)(θj − θj−1) (3)
の極限値が一致することを証明しておこうというわけです。今、上の式 (2)が重積分の値∫∫Df(x, y)dxdy
に一致することは認めているので、式 (2)の極限値は存在するわけですから、式 (2)と (3)の差の
極限値が 0であることを示せばよいことになります。
|ri − ρij | < |∆| |ri−1 − ρij | < |∆|
ですので、∣∣∣∣ri + ri−1
2− ρij
∣∣∣∣ = |ri − ρij + ri−1 − ρij |2
≤ |ri − ρij |+ |ri−1 − ρij |2
<|∆|+ |∆|
2= |∆|
です。よって、∣∣∣∣∣∣∑i,j
g(ρij , ϑij)ri + ri−1
2(ri − ri−1)(θj − θj−1)−
∑i,j
g(ρij , ϑij)ρij(ri − ri−1)(θj − θj−1)
∣∣∣∣∣∣=
∣∣∣∣∣∣∑i,j
g(ρij , ϑij)
(ri + ri−1
2− ρij
)(ri − ri−1)(θj − θj−1)
∣∣∣∣∣∣≤ |∆|
∑i,j
|g(ρij , ϑij)|(ri − ri−1)(θj − θj−1)
という不等式が導かれます。ここで、f(x, y) は積分可能な関数であり、ξ(r, θ) = r cos θ, η(r, θ) =
r sin θ は連続関数ですので、合成関数 g(r, θ) やその絶対値 |g(r, θ)| も積分可能です。よって、
|∆|∑i,j
|g(ρij , ϑij)|(ri − ri−1)(θj − θj−1)|∆|→0−−−−→ 0×
∫∫E
|g(r, θ)|drdθ = 0
となります。
以上により、 ∫∫D
f(x, y)dxdy =
∫∫E
g(r, θ)rdrdθ, E = [a, b]× [α, β]
が成り立つこと、すなわち f(x, y) の重積分は g(r, θ) := f(r cos θ, r sin θ) に「局所的な底面積の
比」の近似値である r を掛けるという「手を加えたもの」の重積分になることが示せました。
結局、g(r, θ) = f(r cos θ, r sin θ) に「r を掛ける」ということの内容は、関数 f(x, y) に由来す
るのではなく、
第 13 回解答 7
� �
rr0
θ0
θ
O
y
x
h
ϕ
r0
hr0ϕ
ϕ
図 4: 極座標変換で [r0, r0 + h]× [θ0, θ0 + ϕ] を xy 平面に写すと、面積はほぼ r0 倍になる。� �rθ 平面での図形の面積と xy 平面での図形の面積が x = r cos θ, y = r sin θ によって
どのように関係しているか、
その局所的な面積の比の値を g(r, θ) の方に押しつけることだということがわかりました。全く同
様に、はじめに証明抜きで紹介した一般の変数変換の公式においても、一般の変数変換ではヤコ
ビアンの絶対値 |JΦ(t1, . . . , tn)| が写像 Φ(t1, . . . , tn) による ‘体積’変化の「局所的な ‘体積’比」に
なっているのです。
2 重積分の変数変換に関する一般的な注意
2.1 変換した後の変数の積分範囲について
変数変換 x = ξ(s, t), y = η(s, t) によって x と y に関する重積分を s と t に関する重積分に変
換する場合、x と y に関する積分範囲 D にもれなく「ほぼ」1対 1に写る s と t に関する積分範
囲 E を見つけなければなりません。すぐに E を見つけられない場合には、次のように考えてみて
ください。
1. (ξ(s, t), η(s, t)) ∈ D となる (s, t) をすべて見つける。(それを E とする。)
2. E の部分集合で D に 1対 1に写されているもののうち積分を計算しやすそうなも
のを見つけて E とする。
1対 1という条件は多少は守られていなくても大丈夫です。どのくらい守られていなくてもよいか
というと、「1対 1に写されていない E の部分がゼロ集合」なら O.K.です。
例えば、D が単位円で x = r cos θ, y = r sin θ の場合で考えてみましょう。(r cos θ, r sin θ) ∈ D
となる (r, θ) の全体 E は
E = {(r, θ) | − 1 ≤ r ≤ 1, θは何でもよい }
です。そして、θ1 = θ0 + 2nπ のとき (r, θ0) と (r, θ1) は同じ点に写り、r1 = −r0 かつ θ1 =
θ0 + (2n+ 1)π のとき (r0, θ0) と (r1, θ1) 同じ点に写ります。また、r = 0 の点は θ が何であって
第 13 回解答 8
もすべて原点に写っています。これらのことから、E として、例えば
[0, 1]× [0, 2π] [0, 1]× [−π, π] [−1, 1]× [0, π]
などいくらでも選びようがあることになります。これらの中から、自分で好きなものを E に選べ
ばよいわけです。
これらはどれを選んでも単位円に 1対 1には写っていません。そうであっても変数変換の公式が
成り立つことを見ておきましょう。例として E = [0, 1]× [0, 2π] とします。このとき、(0, θ) は任
意の θ について (x, y) = (0, 0) に写り、また、任意の r について (r, 0) と (r, 2π) は xy 平面上の
同じ点に写りますので 1対 1ではありません。そこで、積分範囲を適当に狭めて、極座標変換が 1
対 1になるようにしましょう。十分小さな二つの正実数 δ と ε に対して E の部分集合 Eδε を
Eδε = [δ, 1]× [ε, 2π]
とし、D の部分集合 Dδε を極座標変換による Eδε の像とします。極座標変換は Eδε から Dδε へ
の 1対 1の上への写像になっているので、ここでは重積分の変数変換公式が成り立ちます。すな
わち、 ∫∫Dδε
f(x, y)dxdy =
∫∫Eδε
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
が成り立っています。ここで、f が D で重積分可能な関数ならば、
limδ,ε→0
∫∫Dδε
f(x, y)dxdy =
∫∫D
f(x, y)dxdy
が成り立ちます。このことは f は D で有界であることと D から Dδε を除いた部分の面積が 0に
収束することからわかります。実際、|f(x, y)| < M とすると、∣∣∣∣∫∫D
f(x, y)dxdy −∫∫
Dδε
f(x, y)dxdy
∣∣∣∣ ≤ ∫∫D−Dδε
f(x, y)|dxdy ≤ M ×「D −Dδε の面積」
という不等式で右辺は 0に収束します。同様に、
limδ,ε→0
∫∫Eδε
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ =
∫∫E
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
が成り立ちます。以上により、極座標変換は E では 1対 1ではありませんが、∫∫D
f(x, y)dxdy =
∫∫E
f(r cos θ, r sin θ)rdrdθ
は成り立ちます。
極座標変換に限らず、一般の場合にも以上の議論が成り立つので、変数変換の写像が 1対 1でな
くとも、ゼロ集合を除いて 1対 1でさえあれば変数変換の公式を使うことができるのです。
2.2 変数変換が逆変換で与えられている場合
x と y に関する重積分を s と t に関する重積分に変換するには、x = ξ(s, t), y = η(s, t) に関
するヤコビアンが必要ですが、逆変換の s = σ(x, y), t = τ(x, y) しか得られなかったり与えられ
ていなかったりすることがあります。しかし、逆変換を x と y について解かなくても、ξ(s, t) と
第 13 回解答 9
η(s, t) についてのヤコビアンを得ることができます。(ただし、ヤコビアンは x と y の関数として
しか得られません。)なぜなら、ヤコビ行列が互いの逆行列になっている、つまり(∂σ∂x
∂σ∂y
∂τ∂x
∂τ∂y
)(∂ξ∂s
∂ξ∂t
∂η∂s
∂η∂t
)=
(1 0
0 1
)
という関係があるので、ヤコビアン(すなわち行列式)は互いの逆数になっているからです。つ
まり、
欲しい変換のヤコビアン =1
逆変換のヤコビアン
という関係があるわけです。
2.3 広義重積分と変数変換
講義では広義重積分をとりたてて扱いませんでしたが、1変数関数の定積分で積分範囲の極限を
とることを広義積分と呼んだように、重積分においても積分範囲の極限をとる操作を広義重積分と
言います。
1変数関数の広義積分では積分範囲の広げ方が事実上一つしかなかったので議論は明快でしたが、
2変数以上になると積分範囲の広げ方が無数にあるのでとたんに状況が複雑になってしまいます。
ただし、関数の値が定符号なら普通の重積分のように計算して問題ないことが証明できます。今回
の問題に出てくる広義重積分はすべて負にならない関数の積分ですので、普通の重積分の場合と完
全に同じように計算することができます。
3 解答
3.1 問題 1の解答
(1) (r, θ) に関する積分範囲 E は、例えば
E = {(r, θ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ 2π}
を取れます。よって、∫∫D
(x+ y)2dxdy =
∫∫E
(r cos θ + r sin θ)2rdrdθ =
(∫ 1
0
r3dr
)(∫ 2π
0
(1 + 2 sin θ cos θ)dθ
)=
[r4
4
]10
[θ + sin2 θ
]2π0
=π
2となります。 □
(2)極座標変換によって D に写る集合として、例えば
E ={(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1,π
4≤ θ ≤ π
2
}を取ることができます。よって、∫∫
D
ydxdy =
∫∫E
r sin θ rdrdθ =
(∫ 1
0
r2dr
)(∫ π2
π4
sin θdθ
)=
1
3√2となります。 □
第 13 回解答 10
(3) D の条件式 x2 + y2 ≤ x を極座標で表すと r2 ≤ r cos θ となるので、極座標変換によって D
に写る集合として、例えば
E ={(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤ cos θ, −π
2≤ θ ≤ π
2
}を取ることができます(図 5)。 よって、� �
x
y
1
図 5: 問題 1(3)の積分範囲 D。� �∫∫
D
√x dxdy =
∫∫E
√r cos θ rdrdθ =
∫ π2
−π2
√cos θ
(∫ cos θ
0
r32 dr
)dθ =
∫ π2
−π2
2
5cos3 θdθ
=2
5
∫ π2
−π2
(cos θ − sin2 θ cos θ
)dθ =
2
5
[sin θ − 1
3sin3 θ
]π2
−π2
=8
15となります。 □
(4) 極座標変換によって D に写る集合として、例えば
E = {(r, θ) | 1 ≤ r ≤ e, 0 ≤ θ ≤ 2π}
を取ることができます。よって、∫∫D
log(x2 + y2)dxdy =
∫∫E
log(r2)rdrdθ =
(∫ 2π
0
dθ
)(∫ e
1
2r log r dr
)= 2π
([r2 log r
]e1−∫ e
1
r21
rdr
)= π
(e2 + 1
)となります。 □
(5) D の条件を極座標で表すと
1 ≤ r2 かつ 0 ≤ r sin θ ≤ r cos θ ≤ 1
となります。一つ目の条件は「r ≤ −1 または r ≥ 1」ですので、r ≥ 1 を満たす範囲に E をとり
ましょう。r = 0 のとき二つ目の条件は θ が何であっても満たされているので、r > 1 の範囲で二
つ目の条件を考えます。二つ目の条件は、全体を r で割ると
0 ≤ sin θ ≤ cos θ ≤ 1
r
となります。最初の不等式を満たす θ の範囲として、たとえば 0 ≤ θ ≤ π を選んでみましょう。
この範囲で二番目の不等式を満たす範囲は 0 ≤ θ ≤ π4 です。よって、E として
E =
{(r, θ) | 0 ≤ θ ≤ π
4, 1 ≤ r ≤ 1
cos θ
}
第 13 回解答 11
と取れることが分かりました。よって、∫∫D
xydxdy =
∫∫E
(r cos θ)(r sin θ)rdrdθ =
∫ π4
0
(∫ 1cos θ
1
r3dr
)cos θ sin θdθ
=
∫ π4
0
[r4
4
] 1cos θ
1
cos θ sin θdθ =
∫ π4
0
(1
4 cos4 θ− 1
4
)cos θ sin θdθ
=1
4
∫ π4
0
(1
cos3 θ− cos θ
)sin θdθ =
1
4
∫ 1√2
1
(1
t3− t
)(−1)dt
=1
4
[1
2t2+
t2
2
] 1√2
1
=1
4
(1
4+ 1− 1
2− 1
2
)=
1
16となります。 □
(5)別解 積分範囲は、三角形
D1 = {(x, y) | 0 ≤ y ≤ x ≤ 1}
から扇形
D2 ={(x, y)
∣∣∣ x = r cos θ, y = r sin θ, 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
4
}を取り除いたものです。よって、∫∫
D
xydxdy =
∫∫D1
xydxdy −∫∫
D2
xydxdy
です。D1 での重積分はそのまま累次積分によって∫∫D1
xydxdy =
∫ 1
0
(∫ x
0
xydy
)dx =
∫ 1
0
[xy2
2
]x0
dx =
∫ 1
0
x3
2dx =
[x4
8
]10
=1
8
と計算できます。D2 での重積分は極座標変換を利用して計算しましょう。極座標変換によって D
に写る集合として、例えば
E ={(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
4
}を取ることができます。よって、∫∫
D2
xydxdy =
∫∫E
(r cos θ)(r sin θ)rdrdθ =
(∫ 1
0
r3dr
)(∫ π4
0
cos θ sin θdθ
)
=
[r4
4
]10
[1
2sin2 θ
]π4
0
=1
16
となります。以上より ∫∫D
xydxdy =1
8− 1
16=
1
16です。 □
(6) D の条件式に x = r cos θ, y = r sin θ を代入すると、x ≥ 0 と y ≥ 0 は合わせて r ≥ 0 と
0 ≤ θ ≤ π2 となり、(x2 + y2)2 ≤ x2 − y2 は
r4 ≤ r2(cos2 θ − sin2 θ
)すなわち r2 ≤ cos 2θ
となります(図 6)。 以上より、(r, θ) についての積分範囲 E は
第 13 回解答 12
� �
O
y
x
図 6: 問題 1(6)の積分範囲 D。� �E =
{(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤√cos 2θ, 0 ≤ θ ≤ π
4
}となります。よって、∫∫
D
xy
(x2 + y2)(1 + x2 + y2)2dxdy =
∫∫E
r2 cos θ sin θ
r2(1 + r2)2rdrdθ
=
∫ π4
0
cos θ sin θ
(∫ √cos 2θ
0
r
(1 + r2)2dr
)dθ =
∫ π4
0
cos θ sin θ
[− 1
2(1 + r2)
]√cos 2θ
0
dθ
=1
2
∫ π4
0
cos θ sin θ
(1− 1
1 + cos 2θ
)dθ =
1
4
∫ π4
0
sin 2θ
(1− 1
1 + cos 2θ
)dθ
ここで cos 2θ = t と置換して、
=1
4
∫ 0
1
(1− 1
1 + t
)(−1
2
)dt =
1
8
[t− log |1 + t|
]10=
1
8(1− log 2) となります。 □
(7) D を極座標で表示するために、D を表す不等式に x = r cos θ, y = r sin θ を代入しましょう。
すると、一つ目の不等式は
r2(r2 − 2r cos θ − sin2 θ
)≤ 0
となります。
r2 − 2r cos θ − sin2 θ = r2 − 2r cos θ − (1− cos2 θ) = (r − 1− cos θ)(r + 1− cos θ)
ですので、r ≥ 0 であることに注意すると、これを満たす (r, θ) は
0 ≤ r ≤ 1 + cos θ
であることがわかります。一方、二つ目の方程式は
r2 ≥ 1
4
であり、やはり r ≥ 0 であることを考慮すると、
r ≥ 1
2
となります。よって、問題の積分範囲 D は極座標では
1
2≤ r ≤ 1 + cos θ
第 13 回解答 13
を満たす (r, θ) ということになります。このような r が存在するための θ の条件は
1
2≤ 1 + cos θ すなわち − 2
3π ≤ θ ≤ 2
3π
です。以上より、D に写る rθ 平面の集合 E として
E =
{(r, θ)
∣∣∣∣ 12 ≤ r ≤ 1 + cos θ, −2
3π ≤ θ ≤ 2
3π
}をとれることがわかりました(図 7)。� �
y
x2
1
1
2
0
図 7: 問題 1(7)の積分範囲 D。� �一方、
√x2 + y2 = r ですので、計算したい重積分は重積分の極座標変換の公式を使って∫∫
D
1√x2 + y2
dxdy =
∫∫E
1
rrdrdθ =
∫ 23π
− 23π
(∫ 1+cos θ
12
1dr
)dθ
=
∫ 23π
23π
(1
2+ cos θ
)dθ =
[θ
2+ sin θ
] 23π
− 23π
=2
3π +
√3 となります。 □
3.2 問題 2の解答
(1) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | − 1 ≤ u ≤ 1, −1 ≤ v ≤ 1}
です。 また、(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが
det
(1 1
1 −1
)= −2
ですので、(u, v) を (x, y) にする変換のヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣ 1
−2
∣∣∣∣ = 1
2
第 13 回解答 14
� �
u
v
1
1
x
y
1
1
� �です。以上より、∫∫
D
(y2 − x2)2dxdy =
∫∫E
(uv)21
2dudv =
1
2
(∫ 1
−1
u2du
)(∫ 1
−1
v2dv
)=
1
2
2
3
2
3=
2
9となります。 □
(2) (r, θ) に関する積分範囲 E として、たとえば
E = {(r, θ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ 2π}
をとることができます。ヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣∣det(
cos θ −r sin θ
sin θ r cos θ
)∣∣∣∣∣ = r
となります。よって、∫∫D
(x2 + y2)dxdy =
∫∫E
((1 + r cos θ)2 + (1 + r sin θ)2
)rdrdθ
=
∫ 1
0
(∫ 2π
0
(2r + 2r2(cos θ + sin θ) + r3
)dθ
)dr =
∫ 1
0
2π(2r + r3
)dr =
5
2π です。 □
(3) (u, v) に関する積分範囲 E は、例えば
E = {(u, v) | u ≥ 0, v ≥ 0, u+ v ≤ 1}
を選べます。 また、ヤコビアンの絶対値は、� �
O
y
x1
1 √x+
√y = 1
O
v
u1
1
� �∣∣∣∣∣det
(2u 0
0 2v
)∣∣∣∣∣ = |4uv| = 4uv
第 13 回解答 15
となります。以上より、∫∫D
x2dxdy =
∫∫E
u44uvdudv =
∫ 1
0
4u5
(∫ 1−u
0
vdv
)du
=
∫ 1
0
4u5
[v2
2
]1−u
0
du = 2
∫ 1
0
(u5 − 2u6 + u7)du =1
84となります。 □
(4)√x+
√y ≤ 1 に x = r cos4 θ と y = r sin4 θ を代入すると、
√r cos2 θ +
√r sin2 θ =
√r ≤ 1
となります。よって、(r, θ) に関する積分範囲 E は、例えば
E ={(r, θ)
∣∣∣ 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π
2
}を選ぶことができます。 また、ヤコビアンの絶対値は� �
O
y
x1
1 √x+
√y = 1
O
θ
r1
π2
� �∣∣∣∣∣det
(cos4 θ −4r cos3 θ sin θ
sin4 θ 4r sin3 θ cos θ
)∣∣∣∣∣ = 4r cos3 θ sin3 θ
です。以上より、∫∫D
x2dxdy =
∫∫E
(r cos4 θ)24r cos3 θ sin3 θdrdθ = 4
(∫ 1
0
r3dr
)(∫ π2
0
cos11 θ sin3 θdθ
)
= 41
4
∫ π2
0
(1
1212 cos11 θ sin θ − 1
1414 cos13 θ sin θ
)dθ
=
[− 1
12cos12 θ +
1
14cos14 θ
]π2
0
=1
12− 1
14=
1
84となります。 □
(5) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 1 ≤ u ≤ 2, 0 ≤ v ≤ 1} = [1, 2]× [0, 1]
となります。 また、ヤコビアンの絶対値は∣∣∣∣∣det(
1− v −u
v u
)∣∣∣∣∣ = |u| = u
第 13 回解答 16
� �
21
1
0 21
1
0
2
x
y
u
v
� �となります。以上より、∫∫
D
x2 + y2
(x+ y)3dxdy =
∫∫E
(u− uv)2 + (uv)2
u3ududv =
∫∫E
(1− 2v + 2v2
)dudv
=
(∫ 2
1
1du
)(∫ 1
0
(1− 2v + 2v2
)dv
)=
2
3となります。 □
(6) (u, v) に関する積分範囲 E は
E ={(u, v)
∣∣∣ π6≤ u ≤ π
3, 0 ≤ v ≤ π
6
}となります。 また、(u, v) を (x, y) に変換する逆変換のヤコビアンは� �
O
y
x
y = x2
y = x2 + π6
y = −2x+ π3
y = −2x+ π6
O
v
uπ3
π6
π6
� �det
(2 1
−2x 1
)= 2(1 + x)
なので、(x, y) を (u, v) に変換する変数変換のヤコビアンは
1
2(x+ 1)
です。以上より、∫∫D
(x+ 1) cos(2x− x2 + 2y)dxdy =
∫∫E
(x+ 1) cos(u+ v)1
2|x+ 1|dudv
=1
2
∫ π6
0
(∫ π3
π6
cos(u+ v)du
)dv =
1
2
∫ π6
0
(sin(v +
π
3
)− sin
(v +
π
6
))dv
=1
2
(− cos
(π6+
π
3
)+ cos
(π6+
π
6
)+ cos
(0 +
π
3
)− cos
(0 +
π
6
))=
2−√3
4となります。 □
第 13 回解答 17
(7) (u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 1 ≤ u ≤ 2, 1 ≤ v ≤ 3}
です。 また、逆変換のヤコビアンは� �
O
v
u
3
1
1 2 O
y
x
y = x
y = 3x
xy = 2
xy = 1
� �det
(y x
− yx2
1x
)= 2
y
x= 2v
ですので、元の変換のヤコビアンは1
2v
となります。以上より、∫∫D
y2ex2y2
dxdy =
∫∫E
uveu2 1
2|v|dudv =
1
2
(∫ 2
1
ueu2
du
)(∫ 3
1
1dv
)=
1
2
[1
2eu
2
]21
(3− 1)
=e4 − e
2となります。 □
3.3 問題 3の解答
(1) (これは、変換が問題 2の (5)と全く同じであり、積分範囲もとても似ています。)
(u, v) に関する積分範囲 E は
E = {(u, v) | 0 < u ≤ 1, 0 ≤ v ≤ 1} = [0, 1]× [0, 1]
となります。 また、ヤコビアンの絶対値は� �
1
1
0 1
1
0 x
y
u
v
� �
第 13 回解答 18
∣∣∣∣∣det(
1− v −u
v u
)∣∣∣∣∣ = |u| = u
となります。以上より、∫∫D
ey−xy+x dxdy =
∫∫E
e2v−1ududv =
(∫ 1
0
udu
)(∫ 1
0
e2v−1dv
)=
1
2
(1
2e1 − 1
2e−1
)=
1
4
(e− 1
e
)となります。 □
(2) (u, v) に関する積分範囲 E は
E =
{(u, v)
∣∣∣∣ 0 ≤ u− v
2≤ u+ v
2,u− v
2≤ 1− u+ v
2, v = 0
}= {(u, v) | 0 ≤ u ≤ 1, 0 < v ≤ u}
となります。 また、(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが� �
O
v
u1
1
O
y
x
y = 1− x
y = x
� �det
(1 1
1 −1
)= −2
なので、逆変換のヤコビアンの絶対値は ∣∣∣∣ 1
−2
∣∣∣∣ = 1
2
です。以上より、∫∫D
1√x2 − y2
dxdy =
∫∫E
1√uv
1
2dudv =
∫ 1
0
(∫ u
0
1
2√uv
dv
)du =
∫ 1
0
[√v
u
]u0
du
=
∫ 1
0
1du = 1 となります。 □
(3) (u, v) に関する積分範囲を求めるために、変換 u = xy, v = x2 + y2 を x と y について解きま
しょう。
v + 2u = x2 + 2xy + y2 = (x+ y)2 v − 2u = x2 − 2xy + y2 = (x− y)2
ですので、まず v + 2u ≥ 0 かつ v − 2u ≥ 0 でなければなりません。しかし、u = xy ≥ 0 かつ
v = x2 + y2 ≥ 0 ですので、v + 2u ≥ 0 は成り立っています。よって、v ≥ 2u が必要であること
が分かります。その上で、0 ≤ x ≤ y に注意して二つの式の両辺の平方根をとると√v + 2u = x+ y
√v − 2u = y − x
第 13 回解答 19
となります。これを解いて
x =
√v + 2u−
√v − 2u
2y =
√v + 2u+
√v − 2u
2
となります。ここまでで、0 ≤ x ≤ y という条件は満たされているので、残るは 0 ≤ xy ≤ 1 とい
う条件です。u = xy ですから、その条件は 0 ≤ u ≤ 1 に対応します。以上より、
E = {(u, v) | 0 ≤ u ≤ 1, 2u ≤ v}
と取れることが分かりました。� �
O
v
u
v = 2u
1 O
y
x
xy = 1
y = x
� �(x, y) を (u, v) にする変換のヤコビアンが
det
(y x
2x 2y
)= 2(y2 − x2) = 2
((√v + 2u+
√v − 2u
2
)2
−(√
v + 2u−√v − 2u
2
)2)
= 2√
v2 − 4u2
ですので、(u, v) を (x, y) にする変換のヤコビアンの絶対値は
1
2√v2 − 4u2
です。
以上を使って積分を計算しましょう。まず∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
∫∫E
v
1 + v21
2√v2 − 4u2
dudv
=1
2
∫ 1
0
(∫ ∞
2u
v
1 + v21√
v2 − 4u2dv
)du
(4)
となります。v での積分において t = v2 と置換すると、∫ ∞
2u
v
1 + v21√
v2 − 4u2dv =
1
2
∫ ∞
4u2
1
1 + t
1√t− 4u2
dt
となります。さらに s =√t− 4u2 と置換すると、∫ ∞
4u2
1
1 + t
1√t− 4u2
dt =
∫ ∞
0
1
1 + s2 + 4u2
1
s2sds = 2
∫ ∞
0
1
1 + 4u2 + s2ds
第 13 回解答 20
となります。さらにさらに r = s√1+4u2
と置換すると、∫ ∞
0
1
1 + 4u2 + s2ds =
∫ ∞
0
1
1 + 4u2
1
1 + r2
√1 + 4u2dr =
[1√
1 + 4u2tan−1 r
]∞0
=π
2√1 + 4u2
となります。これを式 (4)に戻すと、∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
π
4
∫ 1
0
1√1 + 4u2
du
となります。u = 12 sinhw と置換すると、
1
2sinhw =
ew − e−w
4= 1
を満たす w は ew = 2 +√5、すなわち w = log
(2 +
√5)ですので、∫ 1
0
1√1 + 4u2
du =
∫ log(2+√5)
0
1√1 + sinh2 w
(1
2sinhw
)′
dw
=1
2
∫ log(2+√5)
0
1
coshwcoshwdw =
1
2log(2 +
√5)
となります。これで、やっと答えにたどりつきました。∫∫D
x2 + y2
1 + (x2 + y2)2dxdy =
π
8log(2 +
√5)です。 □
(4) (θ, φ) についての積分範囲 E を探しましょう。
まず、x や y についての条件を考える前に、sin や cos の周期性を利用して、(θ, φ) を探す範囲
をできるだけ狭めてしまいましょう。
sin も cos も周期 2π であることから、0 ≤ θ < 2π および 0 ≤ φ < 2π の範囲で考えれば十分で
す。しかも、sin(θ ± π)
cos(φ± π)=
sin θ
cosφ
sin(φ± π)
cos(θ ± π)=
sinφ
cos θ
なので、(θ, φ) を探す範囲を、たとえば [0, 2π]× [0, π] に狭めることができます。さらに、
sin(θ + π)
cosφ=
sin(π − θ)
cos(π − φ)
sinφ
cos(θ + π)=
sinφ
cos(π − θ)
なので、(θ, φ) を探す範囲は [0, π]× [0, π] で十分です。
次に x と y についての条件を考えましょう。
x が 0以上であることから、
sin θ が正のときは cosφ も正 (5)
でなければならず、
sin θ が負のときは cosφ も負 (6)
でなければなりません。(sin θ = 0 のときは cosφ は正でも負でもかまいません。)同様に y が 0
以上であることから、
sinφ が正のときは cos θ は正 (7)
第 13 回解答 21
でなければならず、
sinφ が負のときは cos θ は負 (8)
でなければなりません。(sinφ = 0 のときは cos θ は正でも負でもかまいません。)[0, π] × [0, π]
においては sin θ も sinφ も 0以上ですので、条件 (6)と条件 (8)を満たす (θ, φ) は存在しません。
また、条件 (5)は
θ = 0, π =⇒ 0 < φ <1
2π
であり、条件 (7)は
φ = 0, π =⇒ 0 < θ <1
2π
です。よって、ここまでで (θ, φ) の範囲は[0, π
2
]×[0, π
2
]まで狭まりました。
x ≤ 1 は sin θ ≤ cosφ となります。cosφ = sin(π2 − φ
)であり、今 0 ≤ θ ≤ π
2 および
0 ≤ π2 − φ ≤ π
2 なので、sin θ ≤ cosφ は
θ ≤ π
2− φ すなわち θ + φ ≤ π
2
と同値です。
y ≤ 1 は x ≤ 1 において θ と φ を入れ替えた条件ですので、やはり θ + φ ≤ π2 となります。
θ+ φ = π2 となる (θ, φ) はすべて (x, y) = (1, 1) に写ります。よって、(θ, φ) に関する積分範囲
E として
E ={(θ, φ)
∣∣∣ 0 ≤ θ, 0 ≤ φ, θ + φ <π
2
}をとれることが分かりました。 なお、x = 1 または y = 1 で (1, 1) ではない (x, y) に写る (θ, φ)� �
θ
φ
π2
π2
O x1
1
y
O� �は存在しませんが、そのような (x, y) の全体は測度 0で重積分の値に影響しません。
さて、ヤコビアンの絶対値を計算すると、∣∣∣∣∣det(
cos θcosφ
sin θ sinφcos2 φ
sin θ sinφcos2 θ
cosφcos θ
)∣∣∣∣∣ = 1− sin2 θ sin2 φ
cos2 θ cos2 φ= 1− x2y2
となります。よって、求める重積分は∫∫D
1
1− x2y2dxdy =
∫∫E
1
1− x2y2(1− x2y2)dθdφ =
∫∫E
1dθdφ =1
2
π
2
π
2=
π2
8となります。 □
第 13 回解答 22
3.4 問題 4の解答
(1) ガンマ関数の定義式で t = s2 と置換すると、
Γ(x) =
∫ ∞
0
e−ttx−1dt =
∫ ∞
0
e−s2s2(x−1)2sds = 2
∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
となります。これに x = 12 を代入すると Γ
(12
)= 2
∫∞0
e−s2ds となります。 □
(2) 極座標変換で
D = [0,∞)× [0,∞) = {(x, y) | x ≥ 0, y ≥ 0}
に写る範囲として
E = [0,∞)×[0,
π
2
]={(r, θ) | r ≥ 0, 0 ≤ θ ≤ π
2
}をとることができます。よって、(∫ ∞
0
e−x2
dx
)2
=
(∫ ∞
0
e−x2
dx
)(∫ ∞
0
e−y2
dy
)=
∫∫D
e−x2−y2
dxdy =
∫∫E
e−r2rdrdθ
=
(∫ ∞
0
re−r2dr
)(∫ π2
0
1dθ
)=
[−1
2e−r2
]∞0
[θ]π
2
0=
π
4となります。 □
(3) その 1 e の肩に乗っている 2次式を平方完成すると、
3x2 − 2xy + 3y2 = 3(x− y
3
)2+
8
3y2
となります。そこで、
u =√3x− 1√
3y v =
2√2√3y
と変数変換しましょう。この変換で xy 平面と uv 平面は 1対 1にもれなく対応しているので、u,
v についての積分範囲も uv 平面全体です。また、xy 平面から uv 平面への変換のヤコビアンが
det
( √3 − 1√
3
0 2√2√3
)= 2
√2
ですので、uv 平面から xy 平面への変換のヤコビアンは 12√2です。以上より、∫∫
R2
e3x2−2xy+3y2
dxdy =
∫∫R2
eu2+v2 1
2√2dudv =
1
2√2
(∫ ∞
−∞eu
2
du
)(∫ ∞
−∞ev
2
dv
)=
π
2√2
となります。
その 2 その 1とほとんど同じですが、平方完成にもっと一般性のある方法を利用して解いてみま
しょう。e の肩に乗っている 2次式は、行列の積を利用して
3x2 − 2xy + 3y2 =(
x y)( 3 −1
−1 3
)(x
y
)
と書くことができます。この 2次正方行列は対称行列ですので、直交行列で対角化できます。固有
方程式は
det
(λ− 3 1
1 λ− 3
)= λ2 − 6λ+ 8 = (λ− 2)(λ− 4)
第 13 回解答 23
ですので、固有値は 2と 4です。つまり、
tP
(3 −1
−1 3
)P =
(2 0
0 4
)
となる直交行列 P があります。(tP は P の転置行列です。)そこで、(x
y
)= P
(u
v
)
という変換を積分に施しましょう。P がこの変換のヤコビ行列であり、直交行列の行列式は 1か
−1 なので、ヤコビアンの絶対値は 1です。また、
3x2 − 2xy + 3y2 =(
x y)( 3 −1
−1 3
)(x
y
)=(
u v)
tP
(3 −1
−1 3
)P
(u
v
)
=(
u v)( 2 0
0 4
)(u
v
)= 2u2 + 4v2
となっています。よって、∫∫R2
e−3x2+2xy−3y2
dxdy =
∫∫R2
e−2u2−4v2
dudv =
(∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−4v2
dv
)となります。一般に a > 0 に対し、s =
√at と置換することで、∫ ∞
−∞e−at2dt =
1√a
∫ ∞
−∞e−s2ds =
√π
a(9)
ですので、 (∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−4v2
dv
)=
π
2√2
となります。 □
(4) e の肩に乗っている 2次式を平方完成する方法でももちろんできますが、ここでは (3)その 2
の方法で解きましょう。e の肩に乗っている 2次式は、行列の積を利用して
3x2 + 3y2 + 5z2 + 2xy − 2yz − 2zx =(
x y z) 3 1 −1
1 3 −1
−1 −1 5
x
y
z
と書くことができます。この 3次正方行列は対称行列ですので、直交行列で対角化できます。固有
方程式は
det
λ− 3 −1 1
−1 λ− 3 1
1 1 λ− 5
= λ3 − 11λ2 + 36λ− 36 = (λ− 2)(λ− 3)(λ− 6)
ですので、固有値は 2と 3と 6です。つまり、
tP
3 1 −1
1 3 −1
−1 −1 5
P =
2 0 0
0 3 0
0 0 6
第 13 回解答 24
となる直交行列 P があります。そこで、 x
y
z
= P
u
v
w
という変換を積分に施しましょう。P がこの変換のヤコビ行列であり、直交行列の行列式は 1か
−1 なので、ヤコビアンの絶対値は 1です。また、
3x2 + 3y2 + 5y2 + 2xy − 2yz − 2zx =(
x y z) 3 1 −1
1 3 −1
−1 −1 5
x
y
z
=(
u v w)
tP
3 1 −1
1 3 −1
−1 −1 5
P
u
v
w
=(
u v w) 2 0 0
0 3 0
0 0 6
u
v
w
= 2u2 + 3v2 + 6w2
となっています。よって、(3)の式 (9)により∫∫∫R3
e−3x2−3y2−3z2−2xy+2yz+2zxdxdydz =
∫∫∫R3
e−2u2−3v2−6w2
dudvdw
=
(∫ ∞
−∞e−2u2
du
)(∫ ∞
−∞e−3v2
dv
)(∫ ∞
−∞e−6w2
dw
)=
√π3
6となります。 □
(3)と (4)は次のように一般化されます。
A を正定値 n 次対称行列とします。(「正定値」とは固有値が全て正であることと同値です。)そ
して、
QA(x1, x2, . . . , xn) =(
x1 x2 · · · xn
)A
x1
x2
...
xn
と定義します。このとき∫
· · ·∫∫
Rn
e−QA(x1,x2,...,xn)dx1dx2 · · · dxn =
√πn
detA
が成り立ちます。
証明も (3)の解答その 2や (4)の解答と全く同様です。ぜひ証明を完成させてみてください。
(5) (1)の解答で示した等式
Γ(x) = 2
∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
と (2)で使った E から D への極座標変換を使うと次のように計算できます。t = r cos θ, s = r sin θ
第 13 回解答 25
と変換します。
Γ(x)Γ(y) =
(2
∫ ∞
0
e−s2s2x−1ds
)(2
∫ ∞
0
e−t2t2y−1dt
)= 4
∫∫D
e−s2−t2s2x−1t2y−1dsdt
= 4
∫∫E
e−r2(r2x−1 sin2x−1 θ
) (r2y−1 cos2y−1 θ
)rdrdθ
=
(2
∫ ∞
0
r2x+2y−1dr
)(2
∫ π2
0
sin2x−1 θ cos2y−1 θ
)dθ = Γ(x+ y)B(x, y) □
(6)他にも方法はあると思いますが、ここでは極座標変換を利用してみましょう。Dの条件 x+y < 1
が極座標と相性が悪そうなので、x = u2, y = v2 という変換を間に挟み込みましょう。この変換で
D に写る (u, v) の範囲 E として、例えば
E = {(u, v) | 0 < u, 0 < v, u2 + v2 < 1}
を取ることができます。また、この変換のヤコビアンは
det
(2u 0
0 2v
)= 4uv
です。よって、∫∫D
xa−1yb−1(1− x− y)c−1dxdy =
∫∫E
(u2)a−1 (
v2)b−1 (
1− u2 − v2)c−1
4uvdudv
= 4
∫∫E
u2a−1v2b−1(1− u2 − v2
)c−1dudv
となります。ここで極座標変換 u = r cos θ, v = r sin θ をしましょう。この変換で E に写る (r, θ)
の範囲 F として、例えば
F ={(r, θ)
∣∣∣ 0 < r < 1, 0 < θ <π
2
}を選べます。また、極座標変換のヤコビアンは r です。よって、
4
∫∫E
u2a−1v2b−1(1− u2 − v2
)c−1dudv = 4
∫∫F
(r cos θ)2a−1(r sin θ)2b−1(1− r2
)c−1rdrdθ
= 4
(∫ 1
0
r2a+2b−1(1− r2
)c−1dr
)(∫ π2
0
cos2a−1 θ sin2b−1 θdθ
)となります。最後の式の最初の括弧の中は、s = r2 と置換することで∫ 1
0
r2a+2b−1(1− r2
)c−1dr =
1
2
∫ 1
0
sa+b−1(1− s)c−1ds =1
2B(a+ b, c) (10)
であることがわかります。一方、もうひとつの括弧の中は、t = sin2 θ と置換することで∫ π2
0
cos2a−1 θ sin2b−1 θdθ =1
2
∫ 1
0
(1− t)a−1tb−1dt = B(b, a) (11)
となります。これらと B(s, t) = Γ(s)Γ(t)Γ(s+t) を合わせて、目標の等式∫∫
D
xa−1yb−1(1− x− y)c−1dxdy = 41
2B(a+ b, c)
1
2B(b, a) =
Γ(a+ b)Γ(c)
Γ(a+ b+ c)
Γ(b)Γ(a)
Γ(b+ a)
=Γ(a)Γ(b)Γ(c)
Γ(a+ b+ c)が得られます。 □
第 13 回解答 26
(7) (6)と同じ方針で解いてみましょう。まず x = u2, y = v2, z = w2 と変換します。これによっ
て D に写る (u, v, w) の範囲 E として
E ={(u, v, w)
∣∣ 0 < u, 0 < v, 0 < w, u2 + v2 + w2 < 1}
をとれます。また、この変換のヤコビアンは
det
2u 0 0
0 2v 0
0 0 2w
= 8uvw
です。よって、∫∫∫D
xa−1yb−1zc−1(1− x− y − z)d−1dxdydz
=
∫∫∫E
(u2)a−1 (
v2)b−1 (
w2)c−1 (
1− u2 − v2 − w2)d−1
8uvw dudvdw
= 8
∫∫∫E
u2a−1v2b−1w2c−1(1− u2 − v2 − w2
)d−1dudvdw
となります。ここで極座標変換 u = r sin θ cosφ, v = r sin θ sinφ, w = r cos θ をしましょう。極座
標変換で E に写る (r, θ, φ) の範囲 F として、例えば
F ={(r, θ, φ)
∣∣∣ 0 < r < 1, 0 < θ <π
2, 0 < φ <
π
2
}を選べます。また、極座標変換のヤコビアンは r2 sin θ です。よって、
8
∫∫∫E
u2a−1v2b−1w2c−1(1− u2 − v2 − w2
)d−1dudvdw
= 8
∫∫∫F
(r sin θ cosφ)2a−1
(r sin θ sinφ)2b−1
(r cos θ)2c−1 (
1− r2)d−1
r2 sin θdrdθdφ
= 8
(∫ 1
0
r2a+2b+2c−1(1− r2
)d−1dr
)(∫ π2
0
sin2a+2b−1 θ cos2c−1 θdθ
)(∫ π2
0
cos2a−1 φ sin2b−1 φdφ
)
となります。最後の式の最初の括弧の中は、(6)の式 (10)から∫ 1
0
r2a+2b+2c−1(1− r2
)d−1dr =
1
2B(a+ b+ c, d)
であり、残りの二つの括弧の中身は、(6)の式 (11)から∫ π2
0
sin2a+2b−1 θ cos2c−1 θdθ =1
2B(a+ b, c)∫ π
2
0
cos2a−1 φ sin2b−1 φdφ =1
2B(a, b)
であることがわかります。これらと B(s, t) = Γ(s)Γ(t)Γ(s+t) より、目標の等式∫∫∫
D
xa−1yb−1zc−1(1− x− y − z)d−1dxdydz = 81
2B(a+ b+ c, d)
1
2B(a+ b, c)
1
2B(a, b)
=Γ(a+ b+ c)Γ(d)
Γ(a+ b+ c+ d)
Γ(a+ b)Γ(c)
Γ(a+ b+ c)
Γ(a)Γ(b)
Γ(a+ b)=
Γ(a)Γ(b)Γ(c)Γ(d)
Γ(a+ b+ c+ d)が得られます。 □
第 13 回解答 27
(8) これもいろいろな方法があると思いますが、ここでは極座標変換を利用してみます。そのため
に、極座標との相性がよくなるように、まず u2 = xa, v2 = ya という変換を施しましょう。この
変換で D に写る (u, v) の範囲 E として
E = {(u, v) | 0 < u, 0 < v}
がとれます。また、ヤコビアンは
det
(2au
2a−1 0
0 2av
2a−1
)=
4
a2u
2a−1v
2a−1
です。よって、 ∫∫D
1
1 + xa + yadxdy =
4
a2
∫∫E
u2a−1v
2a−1
1 + u2 + v2dudv
となります。ここで極座標変換 u = r cos θ, v = r sin θ を施しましょう。極座標変換で E に写る
(r, θ) の範囲 F として、例えば
F ={(r, θ)
∣∣∣ 0 < r, 0 < θ <π
2
}がとれます。ヤコビアンは r ですので、
4
a2
∫∫E
u2a−1v
2a−1
1 + u2 + v2dudv =
4
a2
∫∫F
(r cos θ)2a−1(r sin θ)
2a−1
1 + r2rdrdθ
=4
a2
(∫ ∞
0
r4a−1
1 + r2dr
)(∫ π2
0
cos2a−1 θ sin
2a−1 θdθ
)
となります。最後の式の最初の括弧の中は、t = r2
1+r2 と置換することにより、∫ ∞
0
r4a−1
1 + r2dr =
1
2
∫ 1
0
t2a−1(1− t)1−
2a−1dt =
1
2B
(2
a, 1− 2
a
)となります。(a > 2 としているので、1− 2
a > 0 です。)もうひとつの括弧の中は、式 (11)により∫ π2
0
cos2a−1 θ sin
2a−1 θdθ =
1
2B
(1
a,1
a
)となります。これらと B(s, t) = Γ(s)Γ(t)
Γ(s+t) により、目標の等式∫∫D
1
1 + xa + yadxdy =
4
a21
2B
(2
a, 1− 2
a
)1
2B
(1
a,1
a
)=
1
a2Γ(2a
)Γ(1− 2
a
)Γ(1)
Γ(1a
)Γ(1a
)Γ(2a
)=
1
a2Γ
(1− 2
a
)(Γ
(1
a
))2
が得られます。 □
(9) (8)と同じ方針で解きましょう。まず u2 = xa, v2 = ya, w2 = za と変換します。この変換で
D に写る (u, v, w) の範囲 E として
E = {(u, v, w) | 0 < u, 0 < v, 0 < w}
をとれます。また、ヤコビアンは
det
2au
2a−1 0 0
0 2av
2a−1 0
0 0 2aw
2a−1
=8
a3u
2a−1v
2a−1w
2a−1
第 13 回解答 28
です。よって、∫∫∫D
1
1 + xa + ya + zadxdydz =
8
a3
∫∫∫E
u2a−1v
2a−1w
2a−1
1 + u2 + v2 + w2dudvdw
となります。ここで極座標変換 u = r sin θ cosφ, v = r sin θ sinφ, w = r cos θ をしましょう。極座
標変換で E に写る (r, θ, φ) の範囲 F として、例えば
F ={(r, θ, φ)
∣∣∣ 0 < r, 0 < θ <π
2, 0 < φ <
π
2
}を選べます。また、ヤコビアンは r2 sin θ です。よって、
8
a3
∫∫∫E
u2a−1v
2a−1w
2a−1
1 + u2 + v2 + w2dudvdw
=8
a3
∫∫∫F
(r sin θ cosφ)2a−1(r sin θ sinφ)
2a−1(r cos θ)
2a−1
1 + r2r2 sin θdrdθdφ
=8
a3
(∫ ∞
0
r6a−1
1 + r2dr
)(∫ π2
0
sin4a−1 θ cos
2a−1 θdθ
)(∫ π2
0
cos2a−1 φ sin
2a−1 φdφ
)
となります。最後の式の最初の括弧の中は、t = r2
1+r2 と置換することにより、∫ ∞
0
r6a−1
1 + r2dr =
1
2
∫ 1
0
t3a−1(1− t)1−
3a−1dt =
1
2B
(3
a, 1− 3
a
)となります。(a > 3 としているので 1 − 3
a > 0 です。)また、残りの二つの括弧の中は、式 (11)
により ∫ π2
0
sin4a−1 θ cos
2a−1 θdθ =
1
2B
(2
a,1
a
)∫ π
2
0
cos2a−1 φ sin
2a−1 φdφ =
1
2B
(1
a,1
a
)です。これらと B(s, t) = Γ(s)Γ(t)
Γ(s+t) を合わせて、目標の等式∫∫∫D
1
1 + xa + ya + zadxdydz =
8
a31
2B
(3
a, 1− 3
a
)1
2B
(2
a,1
a
)1
2B
(1
a,1
a
)=
1
a3Γ(3a
)Γ(1− 3
a
)Γ(1)
Γ(2a
)Γ(1a
)Γ(3a
) Γ(1a
)Γ(1a
)Γ(2a
)=
1
a3Γ
(1− 3
a
)(Γ
(1
a
))3
が得られます。 □
(10) これは、積分される関数も積分範囲もいかにも極座標変換と相性がよさそうです。極座標変
換 x = r cos θ, y = r sin θ で D に写る (r, θ) の範囲 E として、例えば
E = {(r, θ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ 2π}
をとれます。ヤコビアンは r ですので、∫∫D
√1− x2 − y2
1 + x2 + y2dxdy =
∫∫E
√1− r2
1 + r2rdrdθ = 2π
(∫ 1
0
√1− r2
1 + r2rdr
)
第 13 回解答 29
となります。括弧の中は ∫ 1
0
√1− r2
1 + r2rdr =
∫ 1
0
r − r3√1− r4
dr
と変形できるので、ベータ関数の定義式に近づけるために t = r4 と置換してみましょう。すると、∫ 1
0
r − r3√1− r4
dr =
∫ 1
0
t14 − t
34
(1− t)−12
1
4t34
dt =1
4
(∫ 1
0
t12−1(1− t)
12−1dt−
∫ 1
0
t1−1(1− t)12−1dt
)=
1
4
(B
(1
2,1
2
)−B
(1,
1
2
))となります。以上より、目標の等式∫∫
D
√1− x2 − y2
1 + x2 + y2dxdy = 2π
1
4
(B
(1
2,1
2
)−B
(1,
1
2
))=
√π2
2Γ(1)
(B
(1
2,1
2
)−B
(1,
1
2
))が得られました。 □
(11) (10)と全く同じ計算でできます。極座標変換 x = r sin θ cosφ, y = r sin θ sinφ, z = r cos θ
で D に写る (r, θ, φ) の範囲 E として、例えば
E = {(r, θ, φ) | 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ θ ≤ π, 0 ≤ φ ≤ 2π}
を選べます。また、ヤコビアンは r2 sin θ です。よって、∫∫∫D
√1− x2 − y2 − z2
1 + x2 + y2 + z2dxdydz =
∫∫∫E
√1− r2
1 + r2r2 sin θdrdθdφ
=
(∫ 1
0
√1− r2
1 + r2r2dr
)(∫ π
0
sin θdθ
)(∫ 2π
0
1dφ
)= 4π
∫ 1
0
r2 − r4√1− r4
dr
となります。t = r4 と置換すれば、∫∫∫D
√1− x2 − y2 − z2
1 + x2 + y2 + z2dxdydz = 4π
∫ 1
0
r2 − r4√1− r4
dr = 4π
∫ 1
0
t12 − t√1− t
1
4t34
dt
= π
(∫ 1
0
t34−1(1− t)
12−1dt−
∫ 1
0
t54−1(1− t)
12−1dt
)= π
(B
(3
4,1
2
)−B
(5
4,1
2
))となって、目標の等式が得られました。 □