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地 方 分 権 の こ れ ま で と 今 後

1 . 日 本 の 地 方 自 治 制 度 の 系 譜

  地 方 自 治 法 は 、 日 本 国 憲 法 と の 同 日 の 1947年 5 月 3 日 に 施 行 さ れ た 。 こ の 事 実 が 示 す よ う

に 、 地 方 自 治 法 は 、 我 が 国 の 戦 後 民 主 化 の 中

で 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。 同 時 に 、 地 方 自

治 制 度 は 、 戦 後 ま っ た く 新 し い も の と し て 導

入 さ れ た も の で も な い 。

戦 後 の 地 方 自 治 制 度 改 正 は 、 敗 戦 の 翌 年 で

あ る 1946 年 、 戦 前 の 地 方 自 治 制 度 の 基 本 法 で

あ る 市 制 、 町 村 制 、 府 県 制 、 都 制 等 の 法 律 を

改 正 し 、 知 事 及 び 市 町 村 長 に 直 接 公 選 の 制 度

を 導 入 す る な ど の 改 正 が 行 わ れ 、 翌 1947 年 に 、

こ れ ら の 法 律 を 集 大 成 し て 現 在 の 地 方 自 治 制

度 の 基 本 法 典 で あ る 地 方 自 治 法 が 制 定 さ れ た

こ の よ う に 我 が 国 の 地 方 自 治 制 度 は 、 戦 前 の

制 度 を も と に 成 立 し て お り 、 そ の 原 型 は 、 市

制 町 村 制 ( 1888 年 制 定 ) に あ る 。

  明 治 政 府 は 、 大 日 本 帝 国 憲 法 の 制 定 ( 1889年 ) の 前 年 に 、 市 制 町 村 制 を 、 翌 年 に 府 県 制

を 制 定 し た 。 明 治 政 府 の リ ー ダ ー た ち は 、 近

代 国 家 の 建 設 に 当 た り 、 地 方 自 治 制 度 の 存 在

が 不 可 欠 と 考 え 、 明 治 維 新 か ら 約 20 年 を か け

て 、 地 方 自 治 制 度 の 整 備 に 心 血 を 注 い だ 。

  制 定 の 当 初 の 地 方 自 治 制 度 は 、 中 央 集 権

的 統 制 的 な 色 彩 が 濃 い も の で あ っ た が 、 デ、モ ク ラ シ ー の 高 ま り 、 政 党 政 治 の 確 立 の 動 き

の 中 で 、 男 子 普 通 選 挙 制 度 の 導 入 、 内 務 省 の

関 与 の 縮 小 な ど 民 主 的 な 改 革 も 行 わ れ 、 自 治

権 が 拡 大 さ れ て い っ た 。 し か し 、 戦 時 色 が 濃

く な る に つ れ 、 こ の よ う な 改 革 は 頓 挫 し 、 首

都 の 防 空 体 制 の 強 化 を 主 た る 目 的 と し て 、 東

京 府 と 東 京 市 の 一 体 化 に よ る 東 京 都 の 創 設

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( 都 区 制 度 ) な ど が 行 わ れ て い る 。

  地 方 自 治 法 の 施 行 以 来 、 60 年 余 を 経 過 し 、

数 多 く の 改 正 も 行 わ れ て い る が 、 次 の 事 項 を

基 本 と す る 地 方 自 治 制 度 の 根 幹 は 変 化 し て い

な い 。

・ 長 と 議 会 の 議 員 を 住 民 が 直 接 選 挙 す る 二

元 代 表 制

・ す べ て の 地 域 に 、 広 域 自 治 体 で あ る 都 道

府 県 と 基 礎 自 治 体 で あ る 市 区 町 村 の 二 層 制

を 適 用

・ 代 表 民 主 制 を 基 本 と し 、 条 例 の 制 定 に 関

す る 直 接 請 求 、 議 会 の 解 散 請 求 及 び 長 と 議

会 議 員 の 解 職 請 求 に 関 す る 住 民 投 票 な ど 直

接 参 政 制 度 を 補 完 的 に 取 り 入 れ た 住 民 自 治

制 度

・ 事 務 の 種 類 を 限 定 せ ず 、 法 令 に 違 反 し な

い 限 り に お い て 地 域 の 事 務 を 処 理 す る こ と

が で き る と す る 総 合 行 政 主 体 と し て 地 方 公

共 団 体 を 位 置 づ け

2 . 地 方 分 権 が め ざ す も の

  地 方 分 権 が 何 を 目 指 す か に つ い て は 、 さ ま

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ざ ま な 議 論 が あ り 得 る が 、 少 な く と も 、 次 の

よ う な 内 容 を 含 む 改 革 と 運 動 で あ る と 考 え ら

れ て い る 。

○国 の 権 限 、 財 源 、 組 織 、 人 員 を 地 方 自 治 体

に 移 譲

併 せ て 、 広 域 自 治 体 ( 都 道 府 県 ) か ら 基 礎

自 治 体 ( 市 町 村 ) に も 移 譲

○地 方 自 治 体 の 自 由 度 の 拡 大

法 律 、 政 令 、 省 令 な ど か ら 地 方 自 治 体 の 条

例 へ

○中 央 政 府 の ス リ ム 化 な ど 国 ・ 地 方 を 通 ず る

政 府 の 再 構 築

  一 方 、 地 方 分 権 を 進 め て 行 く に 当 た っ て は 、

た と え ば 、 次 の よ う な 課 題 へ の 対 応 が 求 め ら

れ る と 考 え ら れ て き た 。

○住 民 の 意 見 を 地 方 自 治 体 の 運 営 に 的 確 に 反

○地 方 自 治 体 の 公 正 で 透 明 な 運 営 の 確 保

○地 方 自 治 体 の 行 政 体 制 の 整 備 ( 市 町 村 合 併

な ど )

  地 方 分 権 と い う 言 葉 は 、 改 革 志 向 的 な 響 き

を 伴 っ て い る が 、 我 が 国 お け る 取 り 組 み の 歴

史 は 古 い 。

  市 制 町 村 制 ( 1888 年 ) に 付 け ら れ た 長 文 の

「 理 由 」 は 、 「 本 制 ノ 趣 旨 ハ 自 治 及 分 権 ノ 原

則 ヲ 実 施 セ ン ト ス ル ニ 在 リ 」 で 始 ま る 。 ま た

我 が 国 お い て 束 の 間 花 開 い た 政 党 政 治 の 時 代

に お け る 内 政 問 題 の テ ー マ の ひ と つ が 地 方 分

権 で あ っ た 。 た と え ば 、 1928 年 に 執 行 さ れ た

衆 議 院 議 員 選 挙 に お い て 立 憲 政 友 会 は 、 地 方

分 権 を 前 面 に 押 し 出 し て 選 挙 戦 を 展 開 し た 。

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さ ら に 、 戦 時 色 が 濃 く な っ て い た 1936 年 に 開

催 さ れ た 地 方 長 官 会 議 に 出 さ れ た 意 見 の 中 に

は 、 地 方 分 権 の 拡 充 、 中 央 省 庁 の 権 限 の 地 方

へ の 移 譲 、 主 務 大 臣 の 関 与 の 整 理 、 内 閣 調 査

局 へ の 地 方 代 表 の 参 与 な ど 、 現 在 議 論 さ れ て

い る 項 目 と 酷 似 し た も の が 見 ら れ る 。 80 年 以

上 、 地 方 分 権 は 、 格 段 に 進 ん だ と は 言 え な い

と い う 指 摘 も あ り 、 地 方 分 権 の 推 進 は 、 そ れ

だ け 各 方 面 の 利 害 が 絡 み 合 う 、 非 常 に 難 し い

内 政 課 題 で あ り 続 け て き た と も 言 え る 。

3 . 地 方 分 権 一 括 法 の 制 定

  戦 後 に お け る 地 方 分 権 改 革 で も っ と も 大 き

な 改 正 は 、 地 方 分 権 一 括 法 ( 1999 年 ) に よ る

改 正 で あ り 、 そ の 主 要 な 項 目 は 、 次 の と お り

で あ る 。

○国 と 地 方 自 治 体 の 役 割 分 担 の 明 確 化

・ 地 方 自 治 体 は 、 地 域 に お け る 行 政 を 自 主

的 か つ 総 合 的 に 実 施 す る 役 割 を 広 く 担 う

・ 国 は 、

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① 国 際 社 会 に お け る 国 家 と し て の 存 立 に

か か わ る 事 務

② 全 国 的 に 統 一 し て 定 め る こ と が 望 ま し

い 国 民 の 諸 活 動 又 は 地 方 自 治 に 関 す る 基

本 的 な 準 則 に 関 す る 事 務

③ 全 国 的 な 規 模 、 全 国 的 な 視 点 に 立 っ て

行 わ な け れ ば な ら な い 施 策 及 び 事 業 の 実

  そ の 他 の 、 国 が 本 来 果 た す べ き 役 割 を 重 点

的 に 担 う

  た だ 、 こ の 原 則 は 、 個 別 の 法 令 の 分 野 で は 、

か な ら ず し も 徹 底 さ れ て お ら ず 、 役 割 分 担 の

明 確 化 は 、 引 き 続 き 課 題 で あ り 続 け て い る 。

○機 関 委 任 事 務 の 廃 止

  機 関 委 任 事 務 は 、 地 方 自 治 体 の 執 行 機 関

( 知 事 、 市 町 村 長 な ど ) が 大 臣 の 指 揮 監 督 の

下 に 国 の 機 関 と し て 処 理 す る 国 の 事 務 の こ と

で 、 明 治 期 に ド イ ツ 法 を 参 考 に し て 導 入 さ れ

国 が 地 方 自 治 体 を 使 っ て 自 ら の 事 務 を 処 理 さ

せ る 手 段 と し て 活 用 さ れ て き た 。 こ の 制 度 の

廃 止 は 、 長 年 の 懸 案 で あ っ た 。

○関 与 の 法 定 化 と 係 争 処 理 手 続 き の 整 備

  こ の 制 度 改 正 に よ り 、 地 方 自 治 体 は 、 独 立

の 行 政 主 体 、 法 的 な 主 体 と し て 、 そ の 関 係 は

法 律 に よ り 規 律 さ れ る 原 則 が 確 立 さ れ た 。 国

に よ る 関 与 が 法 律 に よ っ て 類 型 化 さ れ 、 是 正

の 要 求 、 是 正 の 指 示 な ど の 大 臣 か ら の 関 与 に

不 服 が あ る 地 方 公 共 団 体 は 、 第 三 者 機 関 に 審

査 を 申 し 出 る こ と が で き 、 さ ら に 高 等 裁 判 所

に 出 訴 す る 制 度 が 設 け ら れ た 。

       

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4 . 市 町 村 合 併 ― 行 政 体 制 の 整 備 ―

  地 方 分 権 は 、 地 方 自 治 体 が よ り 多 く の 事 務

権 限 を 、 よ り 多 く の 人 員 と 財 源 を 活 用 し て 処

理 す る よ う に な る こ と を 重 要 な 要 素 と し て 含

ん で い る が 、 そ の 重 要 な ス テ ー ジ に お い て 提

起 さ れ た 課 題 が 、 地 方 自 治 体 と く に 市 町 村 の

行 政 体 制 の 整 備 で あ る 。

  市 町 村 の 行 政 体 制 の 整 備 の た め に 進 め ら れ

た の が 、 市 町 村 合 併 で あ り 、 3 つ の 時 期 に 、

集 中 し て 進 め ら れ 、 市 町 村 数 は 減 少 し た 。

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  平 成 の 合 併 は 約 10 年 に わ た っ て 推 進 さ れ た

が 、 2010 年 3 月 の 法 改 正 に よ り 、 一 区 切 り を つ

け る こ と と さ れ た 。 合 併 に 対 し て は 、 社 会 保

障 な ど の 分 野 で 専 門 的 な 職 員 部 署 の 配 置 、、行 政 コ ス ト の 削 減 が 進 ん だ な ど 評 価 す る 意 見

が あ る 一 方 で 、 周 辺 地 域 が 寂 れ た 、 基 礎 自 治

体 と し て の 一 体 感 が 薄 れ た 、 な ど 批 判 的 な 意

見 も あ る 。

5 . 現 在 進 め ら れ つ つ あ る 地 方 分 権 改 革 

  2009 年 の 政 権 交 代 後 発 足 し た 鳩 山 内 閣 、 菅

内 閣 は 、 こ れ ま で の 地 方 分 権 改 革 を 「 地 域 主

権 改 革 」 と 定 義 し 直 し 、 法 整 備 を 含 め 、 改 革

を 進 め よ う と し て い る 。

  改 革 の 鳥 瞰 図 的 な イ メ ー ジ を 、 下 図 の よ う

に 描 い て み た 。

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  確 か に 、 地 方 分 権 一 括 法 に よ り 、 地 方 自 治

法 に 、 国 と 地 方 自 治 体 と の 役 割 分 担 に 関 す る

規 定 が 置 か れ た が 、 現 実 に は 、 国 は 、 出 先 機

関 を 中 心 に 、 住 民 生 活 と 密 接 に 関 連 す る 多 く

の 事 務 を 処 理 し て い る 。 そ の 結 果 、 国 の 出 先

機 関 は 、 地 方 自 治 体 、 特 に 都 道 府 県 指 定 都、市 と の 間 で 二 重 行 政 を 行 っ て い る 側 面 も あ り

そ の よ う な 面 で の 非 効 率 も 見 受 け ら れ る 。

  ま た 、 国 は 、 広 範 な 事 務 に つ い て 、 詳 細 な

基 準 を 法 令 で 規 定 し 、 画 一 的 な 規 制 を 行 っ て

い る た め 、 地 方 自 治 体 が 地 域 の 実 情 に 応 じ た

行 政 を 展 開 で き に く く し て い る 。 さ ら に 、 国

に よ る 許 可 、 承 認 、 協 議 な ど が 義 務 づ け ら れ

る こ と も 多 く 、 地 方 自 治 体 に 交 付 さ れ る 補 助

金 は 、 使 途 が 限 定 さ れ て い る た め 、 真 に 地 方

自 治 体 が 必 要 と す る 行 政 ニ ー ズ に 応 え ら れ な

い 一 方 、 陳 情 、 事 前 調 整 、 報 告 な ど の 折 衝 コ

ス ト も 膨 大 な も の に 上 っ て い る 。

  住 民 の ニ ー ズ が 多 様 化 し 、 国 ・ 地 方 を 通 ず

る 財 政 状 況 も 厳 し さ を 増 す 中 に あ っ て 求 め ら

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れ る 改 革 は 、 国 と 地 方 自 治 体 と の 役 割 分 担 を

地 方 自 治 法 の 原 則 に 立 ち 返 っ て 明 確 に す る こ

と で あ る 。 こ の こ と は 、 国 の 役 割 を 縮 小 す る

こ と で は な い 。 む し ろ 、 国 の 役 割 を 純 化 ・ 強

化 し 、 国 は 、 国 防 、 外 交 、 海 上 保 安 、 通 貨 、

司 法 、 私 法 秩 序 の 形 成 、 公 正 取 引 の 確 保 、 直

轄 国 道 、 河 川 ( 重 要 な も の に 限 る ) 、 大 規 模 災

害 な ど 国 家 の 司 令 塔 と し て の 役 割 を し っ か り

と 担 う よ う に す る こ と が 求 め ら れ る 。 国 の

役 割 が 求 め ら れ な が ら 必 要 な 人 員 ・ 予 算 が

措 置 さ れ て い な い 分 野 に つ い て は 、 必 要 な 手

当 を 行 っ て い く こ と が 必 要 で あ る 。

  そ の 上 で 、 地 方 自 治 体 が 自 ら の 判 断 で 、 地

域 に お け る 行 政 を 幅 広 く 担 う こ と が で き る よ

う に す る こ と が 改 革 の 眼 目 で あ る 。

  具 体 的 な 改 革 の 項 目 は 、 お お む ね 次 の と お

り で あ る 。 ○国 の 出 先 機 関 の 整 理 ・ 合 理 化

  * あ わ せ て 、 国 の 出 先 機 関 の 権 限 を 都 道 府

県 、 指 定 都 市 に 移 譲

○国 の 関 与 等 の 縮 減

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・ 国 の 法 令 に よ る 基 準 の 設 定 を 縮 減 し 、

条 例 に 委 ね る 範 囲 の 拡 大

・ 明 確 な ル ー ル に 基 づ い た 国 の 関 与 ・ 基

準 の 設 定 等

・ 許 可 、 承 認 、 同 意 な ど の 個 別 関 与 の 廃

止 ・ 縮 減

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○都 道 府 県 の 権 限 を 市 町 村 に 移 譲

○国 と 地 方 自 治 体 の 代 表 と の 協 議 の 場 を 法 定

○一 括 交 付 金 の 創 設 に よ る 補 助 金 の 整 理 合 理

6 . 日 本 社 会 の 変 容 と 地 方 分 権 の 今 後

  今 後 、 地 方 分 権 改 革 を 進 め て 行 く 上 で 、 我

が 国 の 社 会 が ど の よ う に 変 容 し て い く か を 念

頭 に 置 い て お く こ と は 重 要 で あ る 。 こ れ は 誰

も が 認 識 し て い る こ と だ が 、 日 本 社 会 は 、 こ

れ か ら 長 く 続 く 人 口 減 少 社 会 、 超 高 齢 社 会 と

な る 。

  ま た 、 昨 年 は 、 住 民 基 本 台 帳 や 戸 籍 に 登 録

さ れ 、 実 在 し て い る は ず の 多 く の 高 齢 者 が す

で に 死 亡 し て い た り 、 行 方 不 明 に な っ て い る

こ と が 大 き な 社 会 問 題 と な っ た 。 我 が 国 が

“ 無 縁 社 会 ” に な っ て い る こ と が ク ロ ー ズ ア ッ

プ さ れ 、 そ の 背 景 に は 、 家 族 や 地 域 共 同 体

が 衰 退 し て い る こ と が 浮 き 彫 り に な っ た 。 ま

た 、 戦 後 の 経 済 成 長 を さ さ え て 企 業 は 、 従 業

員 に 終 身 雇 用 や 家 族 を 含 め た 福 利 厚 生 を 提 供

し て き た が 、 そ の よ う な カ イ シ ャ の 存 在 も「 」衰 退 し て お り 、 多 く の 国 民 が 、 将 来 に 対 し て

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不 安 を 抱 え て い る 。

「 人 間 は ひ と り で は 生 き ら れ な い 。 し か し 、

家 族 や 地 域 や 会 社 は 、 面 倒 を 看 て く れ な い か

も し れ な い 」 と い う 不 安 で あ る 。

  一 方 、 国 家 財 政 の 状 況 は 危 機 的 で あ り 、 ま

た 、 東 京 を 中 心 と す る 大 都 市 に 人 口 集 中 す る

と と も に 、 限 界 集 落 、 シ ャ ッ タ ー 通 り に 象 徴

さ れ る よ う に 、 地 方 の 疲 弊 が 目 立 っ て き て い

る 。

  こ の よ う な 状 況 を 考 え た と き に 、 広 い 意 味

で の 公 共 サ ー ビ ス が 果 た す 役 割 は 大 き い 。 社

会 保 障 を 中 心 と す る セ ー フ テ ィ ネ ッ ト の 強

化 ・ 拡 充 が 図 ら れ な け れ ば な ら な い 。 近 年 の

議 論 で は 、 現 金 給 付 は 国 に よ っ て 、 ま た 、 現

物 給 付 は 、 地 方 自 治 体 に よ っ て 提 供 す べ き で

あ り 、 こ の よ う な 観 点 か ら 、 事 務 権 限 の 移 譲

を 行 う べ き と の 議 論 が 高 ま っ て い る 。

  ま た 、 今 後 の 地 方 分 権 に あ た っ て 重 要 な 課

題 は 、 国 ・ 地 方 関 係 の 再 構 築 で あ る 。

国 と 地 方 の 協 議 の 場 を 法 制 化 す る な ど 、 十 分

な 協 議 調 整 を 強 化 し て い く こ と が 必 要 で あ る

が 、 国 と 地 方 自 治 体 の 意 思 が ど う し て も 合 致

し な い 場 合 に は 、 そ の 調 整 の 仕 組 み が 求 め ら

れ る 。 と く に 、 法 律 解 釈 の 違 い を め ぐ っ て 意

見 の 相 違 が 解 消 さ れ な い 場 合 に は 、 司 法 的 手

続 き に よ っ て 解 決 が 図 ら れ る よ う 、 訴 訟 手 続

き の 制 度 化 が 必 要 で あ る 。 大 き な 方 向 は 、 事

前 規 制 か ら 事 後 是 正 へ と い う こ と で あ ろ う 。

  権 限 、 財 源 、 組 織 ・ 人 員 の 移 譲 が 進 め ば 、

地 方 自 治 体 の 役 割 は 一 層 大 き な も の と な る 。

地 方 自 治 体 の 運 営 に 、 住 民 の 意 向 の 反 映 が よ

り 適 切 か つ 鋭 敏 に 反 映 さ れ な け れ ば な ら な い

こ の よ う な 観 点 か ら は 、 と く に 、 地 方 自 治 体

の 団 体 意 思 の 決 定 機 関 で あ る 議 会 の あ り 方 が

問 わ れ て い る 。

ま た 、 代 表 民 主 制 を 補 完 す る 住 民 参 画 手 法

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と し て 、 住 民 投 票 の 制 度 化 も 課 題 で あ る 。

  家 族 や 地 域 共 同 体 の 機 能 の 衰 退 は 、 地 方 自

治 体 が 、 N P O や 企 業 、 住 民 団 体 と 協 働 し な

が ら 、 ば ら ば ら に な り つ つ あ る 住 民 ひ と り ひ

と り に 手 を さ し の べ る こ と に よ っ て 補 わ れ な

け れ ば な ら な い 。

  我 が 国 の 基 礎 自 治 体 ( 市 町 村 ) は 、 市 町 村

合 併 に よ っ て 全 体 と し て 規 模 の 拡 大 が 図 ら れ

た が 、 行 政 と 住 民 と の 距 離 は 遠 く な っ た と い

う 側 面 も あ る 。 ま た 、 大 都 市 に お い て も 、 従

来 か ら 同 様 の 指 摘 も な さ れ て い る 。

  基 礎 自 治 体 の 域 内 に お け る 分 権 を す す め 、

た と え ば 、 一 定 の 組 織 、 財 産 を 有 す る 自 治「区 の 制 度 を 創 設 し 、 よ り 小 さ な 単 位 で 、 住」民 サ ー ビ ス を 提 供 し 、 住 民 の 相 談 に 応 じ て い

く 体 制 を つ く り あ げ て い く こ と が 課 題 と な る

地 方 自 治 法 に は 、 現 在 、 地 域 自 治 区 の 制 度 が

あ る が 、 地 域 自 治 区 に 法 人 格 を 付 与 し 、 住 民

の 参 画 を 得 な が ら そ の 役 割 を 強 化 す る こ と が

考 え ら れ る 。 こ の よ う な 意 味 で 、 従 来 か ら 、

韓 国 の 邑 ・ 面 ・ 洞 の 制 度 が 注 目 さ れ 、 研 究 者

に よ る 研 究 も 行 わ れ て い る が 、 そ の よ う な 制

度 も 参 考 に し な が ら 、 制 度 を 拡 充 し て い く こ

と が 求 め ら れ て い る 。  

  ま た 、 都 区 制 度 ( 1943 年 創 設 ) 、 指 定 都 市

制 度 (1956 年 創 設 ) を は じ め と す る 大 都 市 制 度

は 、 そ の 後 の 社 会 経 済 情 勢 の 変 化 に 対 応 し 切

れ て い な い 。 都 道 府 県 と 指 定 都 市 と の 二 重 行

政 の 排 除 、 大 都 市 に 集 中 す る 税 源 の あ り 方 、

域 内 分 権 の 推 進 な ど の 視 点 を 交 え な が ら 、 見

直 す べ き 時 期 に 来 て い る 。

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