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Vol.62 No.1 工場管理

 設備点検関連の業務を効率化したいと考えている企業は少なくない。しかし、設備点検の現場では紙の書類が使われており、点検作業者は報告書の作成や記録の整理に多くの時間をかけざるを得ないのが現状だ。設備点検業務効率化のカギを握るのは、点検情報をデジタル化すること。富士通マーケティングは、報告書の作成や保管をデジタル化する点検情報管理サービス「FUJITSU Enterpr ise Appl icat ion AZCLOUD SaaS teraSpection(アズクラウド サース テラスペクション)」(以下、teraSpection)の提供を2014年に開始し、製造業やビルメンテナンス会社の点検作業の効率化を支援している(図1)。 teraSpectionはクラウド型の設備点検管理サービス。現場のスタッフがタブレットを操作して点検内容を入力するとクラウド環境にその内容がデジタルデータとして記録・蓄積される仕組みだ。報告書の作成は点検内容を入力・記録した時点で完了する。そのため、現場から事務所に戻って報告書を作成する作業は不要となる。また、過去の点検履歴の参照も迅速に行える。 teraSpectionは点検作業の効率化に加え、設備にトラブルが発生した際の対応の迅速化やベテランのノウハウの継承など、設備の保守に関連するさまざまな課題の解決にも有効だ。以下、teraSpectionの機能とその機能の活かし方について見ていくことにしよう。

組織として点検データを共有する仕組みづくりを支援

 teraSpectionの特徴は、点検現場を階層構造で管理する仕組みによって点検作業者が点検位置を

直観的に把握できるようにしていることだ。たとえば、「工場全体の構内図」から始まって構内の「各建屋」、建屋内の「設備」、設備を構成する「機器」というように階層構造で点検位置をタブレットの画面に表示する。画面を見れば経験の浅い点検担当スタッフでも、どの機器を点検するのかが正確にわかる。点検作業のスムーズな実施を後押しする。 teraSpectionはまた、機器の状態を視覚的に把握する仕組みも作り込んでいる。機器の状態を示すのは画面に表示した機器に付ける「ピン」だ。ピンは、「正常」や「停止中」「対処中」など、機器の状態を示すアイコン。teraSpectionの画面をマネジメントが参照すれば、組織として点検情報を正確に共有する仕組みが構築できる。 点検作業者が点検結果を入力する画面の作成は、Excelフォーマットに点検項目を入力して行う。点検項目を入力したフォーマットをクラウドに登録すれば入力画面が自動ででき上がる。従来から用いている報告書のフォーマットをそのままteraSpectionで利用することが可能だ。 では、どのように点検結果を入力するのだろうか、現場で行う操作について見ていくことにしよう。まず点検作業者が行うのは点検対象機器に付いているピンをタップすること。ピンをタップすると点検結果を入力する画面が現れる。点検作業者は、タッチペンを使って水圧や圧力、温度など、タブレット画面に表示されている項目に点検結果のデータを入力していく。入力を終えたら、「記録する」というボタンをタップすると点検データがクラウドに記録・蓄積される。すべての点検項目に対する入力を済ませないと記録は行えないとい

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システム導入のススメ計画 製造 保守

クラウド型の点検情報管理サービスによって設備点検管理業務の効率化を支援

第1回

富士通マーケティング

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工場管理 2016/01

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う。点検漏れを防ぐ仕組みとして機能する。 タブレット画面に表示したキーボードを使用すれば、点検作業者が気づいたことを文章として記録することもできる。ペンを使って手書き入力することも可能。開発を担当した富士通システムズ・イーストの内山球一氏(ビジネス戦略本部新規ビジネスソリューション統括部コンバージェンスソリューション部)は「キーボードに不馴れな人でも受け入れやすいよう配慮した」と話す(写真1)。ベテランのノウハウ継承に活かせそうだ。 クラウドに蓄積されている過去の点検記録の呼び出しもピンをタップして行う。teraSpectionは、クラウドに蓄積したデータをトレンドグラフで表示する機能を持っている(図2)。トレンドグラフを参照すれば、点検中の機器が正常に稼働しているかどうかを視覚的に把握できる。経験の浅い作業者でも機器の状態を的確に確認することが可能となる。

現場のニーズに対応した機能を搭載

 拡張現実(Augment Reality:AR)技術との連携

も点検作業の効率化を後押しする。ARは、現実の施設や機器に貼り付けたQRコードに似たARマーカーにタブレットのカメラを向けると、操作手順書などARマーカーに紐づいた情報をタブレット画面に呼び出す機能。たとえば、目の前の機器を点検するために、ハンドルを操作することが必要というケースを想定してみよう。新人が点検担当となった場合、作業手順書を開いて知りたいことが書いてあるページを探し出すことになり、

図1 AZCLOUD SaaS teraSpectionの概要

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写真1 富士通システムズ・イースト 内山 球一氏

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手間と時間がかかる。ARを利用すれば作業手順書を持ち歩くことは不要。タブレットのカメラを向けて映し出したハンドルの画像に操作手順を重ね合わせて表示するからだ。その手順を見ることによって点検作業者はテキパキと作業を進めることができる。 teraSpectionは、点検現場のニーズに対応するきめ細かな機能を搭載している。一例が、点検結果の入力作業を中断して、入力データを一時的に保存しておく一時保存機能だ。「点検データを入力している途中に設備の汚れを落とす作業を行い、その作業を終えたら入力を再開したい」という現場の声に対応した。 電波の届かない環境における点検作業を可能にするオフライン機能も現場のニーズに応えたもの。点検作業者は、あらかじめ構内図や点検データを入力する画面をタブレットにダウンロードしておき、オンライン環境にいるときと同様に点検作業

士通マーケティングは「Spinning Shoulder(スピニングショルダー)」と名付けたタブレットケースを提供している(写真2)。点検作業をしながら点検項目を入力することができる画板スタイルを採用。背中に斜めがけすることもできる。移動する際に工場内の機器に巻き込まれることを防ぐことを念頭に置いた設計だ。

30%の業務効率向上を達成したケースも

 リリースから1年半ほどの期間でteraSpectionを導入した企業は20社を超えた。導入企業は、点検に関する業務の効率向上や緊急時の対応の迅速化を達成しているという。 紙の点検簿に点検結果を書き込み、事務所に戻ってPCに入力するというのが従来からの点検作業。それに対してteraSpectionを利用すれば現場で点検結果を入力できるようになる。事務所に戻ってからの入力作業は不要となり、点検作業の効率が向上する。施設の点検を業務としている企業はteraSpectionを導入したことによって、点検作業の効率を30%向上させたという。 teraSpectionは、メッセージ機能を持つ。「点検した機器の場所や状態を現場から事務所にいる上司に伝達したり、工場から本社のマネジメントに情報を伝えるツールとして活用できる」(富士通マーケティング コンストラクション事業本部営業統括部第一営業部部長の森貴也氏)という(写真3)。メッセージ機能は緊急事態に迅速に対応可能な体

を進めていく。電波が届く環境に点検作業者が移ると同時に点検データがクラウドに自動的に記録される。 現場の様子を撮影した写真を鮮明にする「暗闇補正」も現場でよく使われている機能だという。設備点検の現場は十分な光量が得られないことが多い。teraSpectionは、富士通研究所が開発した画像鮮明化技術を搭載し、暗い場所で撮影した写真や逆光で撮影した写真も鮮明に見えるようにする。 teraSpectionの提供に合わせて富

図2 トレンドグラフ表示の例

写真2 Spinning Shoulder

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制づくりを支援するツールとなる。 teraSpectionは経営課題を解決するツールとしても機能する。一例が経営者の間に関心が高まっている予防保全体制の整備を後押しすること。予防保全は故障につながる設備や機器の予兆をとらえた時点で部品を交換するなどの対策を実施することにより、トラブルが発生するのを防ぐ保全方法。予防保全実行のカギを握るのは設備の稼働状態や点検・保守情報をデータとして蓄積し、分析する仕組みを構築すること。teraSpectionは、点検データを設備単位で蓄積する機能を持つ。クラウドに蓄積したデータを分析すれば故障につながる予兆をとらえることができる。それによって予防保全体制を確立することが可能となる。 APIを公開して他の業務システムとの連携を容易にしたこともteraSpectionの特徴。「設備管理システムに点検データを記録している顧客が多い」と内山氏は話す。点検データを在庫管理システムと連携させてモノの管理に活用するケースもあるという。他の業務システムとの連携を図れば設備点検業務に隣り合う領域の業務を含めて効率化を進めることが可能だ。 以上、見てきたようにteraSpectionは点検設備管理業務を効率化するICTソリューションだ。teraSpectionの活用を成功に導くためのカギは設備管理部門が主体となって導入の旗を振ること。内山氏はその進め方として2つの方法を勧める。

 1つは設備管理部門の長がリーダーシップを取って組織的かつ一気に点検業務の変革を推進するアプローチ。もう1つはタブレットの操作に慣れた若手に導入を任せるボトムアップ的なアプローチ。いずれにしても「若手を巻き込むこと」(内山氏)がポイントとなる。タブレットを使った写真撮影はだれにでも容易に行える。いったんタブレットを使い始めると次のステップへ進もうと考えるという。そのときに若手がベテランのタブレット活用をサポートする。そんな循環を生み出すことができれば点検設備管理業務の効率化を円滑に進めることができるだろう。 (小林 秀雄)

写真3 富士通マーケティング 森 貴也氏


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