食品・化学分野
(成果情報名)光学活性 3-ヒドロキシ酪酸の大量生産法
(要約)生分解性プラスチックの原料等として注目されている (R)-3-ヒドロキシ酪酸はこれま
で大量生産が困難だったが、独自に開発した微生物及び生成技術を用いて高純度・高効率に生産
する技術を開発した。
(担当機関)工業技術センター 環境・資源班 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 資源化学 対象 微生物 分類 実用化研究
[背景・ねらい]
沖縄県産バイオマス資源である糖蜜等は一部を除くほとんどが飼料や肥料等として扱われて
いる。しかし、これらのバイオマス資源は有価物を発酵生産するための重要な工業原料であり、
実際に県内で排出される糖蜜の約2割はアルコール原料として県外で工業利用されている。一
方、3-ヒドロキシ酪酸(3HB)等の光学活性有機酸は生分解性プラスチックの原料等として注
目されているが、製造コストや生産性が課題となり一般には流通していない。様々な用途に応
用可能な光学活性有機酸を糖蜜等から大量生産するとともにこれを原料にした生分解性樹脂の
合成方法が確立されれば、沖縄独自の循環型社会構築に向けた低環境負荷型製品の開発が期待
できる。
[成果の内容・特徴]
1.沖縄の海洋細菌 OITC1261 株が3HB を効率的に生産できることを明らかにした。 2.OITC1261 株を用いて3HB を高濃度(10%)で生産できる培養条件を開発した。 3.大型培養槽(1kL 容量)を用いた培養試験においても、小スケール試験と同程度の生産速度
で3HB 生産が可能であることを示すことができた。 4.発酵液中から3HB を高純度(≧98%)で精製する技術を開発し、キロ単位の試験生産に成功
した。 5.試験生産した高純度3HB は、食品や樹脂等の開発研究を行う研究機関へ提供して用途開発の
基礎的な知見を蓄積することができた。
[成果の活用面・留意点]
1.3HB を含有する樹脂は海でも生分解することから、新たな生分解性樹脂の原料として期待さ
れており、当面は研究開発用に需要が見込まれる。
2.認知機能改善等の効果が期待できることから、機能性食品素材としても注目されている。
3.高純度3HB の試験生産が可能になったことから、樹脂原料や食品等として用途開発を行う企
業等への供給・支援を行うことができる。
[残された問題点]
3HB を原料とする樹脂合成技術や食品としての摂取方法を確立する必要がある。また、汎用
的な樹脂原料等として利用するためにはさらなる製造コストの低減が求められる。
-91-
食品・化学分野
[具体的データ]
[研究情報]
課題 ID:2015 技 003 研究課題名:おきなわ型グリーマテリアル製品開発事業
予算区分:その他(おきなわ型グリーマテリアル生産技術の開発)
研究期間(事業全体の期間):平成 27~30 年度
研究担当者:世嘉良宏斗、照屋盛実
発表論文等:1) Hiroto Y. et al. (2018) Biotechnol. J. DOI: 10.1002/biot.20170034 2) 世嘉良宏斗ら、平成 30 年度 沖縄工技セ研究報告、第 21 号:1-5 3) 世嘉良宏斗ら(2019)特許第 6521243 号
砂糖を原料とする大量生産方法の開発
沖縄産微生物を使って砂糖等の植物由来原料か
らR3HBを発酵生産するための条件を確立した。
0
50
100
150
200
250
0
20
40
60
80
100
120
0 50 100
スク
ロー
ス(g/
L)
R3
HB
(g/
L)
培養時間(h)
R3HB
スクロース
砂糖(スクロース)から
高濃度で生産が可能!
大型発酵槽による実証試験
1tタンクを用いた試験で小スケール時と同様
の生産性を得るための条件を確立した。
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0 20 40 60 80
R3HB
(g
/L
)
培養時間(h)
条件最適化で
生産性UP!
発酵液からの回収・精製技術の開発
発酵液中のR3HBを、食品利用への応用も可能な
方法で、高純度に精製する技術を開発した。
試作品を活用した応用研究の推進
試験製造したR3HBを共同研究先6機関へ提供し、
食品や樹脂等への用途開発研究で活用された。
発酵液
7~9%
R3HB
高純度結晶
≧98%
R3HB有機溶媒フリー
回収・精製
用途開発研究
企業×3
大学×2
国機関×1
total 230kg分
のR3HBを提供
図1 沖縄の海で発見した 3HB 生産菌
海洋由来細菌 OITC1261 株は、3HB 生産のために多段階の工程が必要になる従来の方法とは異なり、ワンステップで継続的に生産できるため、大量生産が可能になった。 R3HB (3HB) : (R)-3-hydroxybutyric acid PHB : Poly[(R)-3-hydroxybutyric acid]
図2 図3
図4 図5
-92-
食品・化学分野
(成果情報名) 県産植物の染料素材としての調査研究
(要約)県産植物の染料活用を検討するため、11 種類の県産樹木の樹皮と葉を用いて絹布の染
色を行った。また、有用な植物染料であるゲットウの実とヤエヤマアオキの根の特徴を調べる
ため、保存方法、前処理方法、抽出条件等について検討した。染色した試験布は測色により色
みの傾向と濃淡を比較した。さらに、水に対する染色堅ろう度試験を行った。
(担当機関)工業技術センター 食品・醸造班 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 資源化学 対象 植物染料 分類 基礎研究
[背景・ねらい]
県内には染料に活用できる植物が数多くあり、県内の染織産地でも琉球藍やフクギなど特徴
のある亜熱帯植物が染料として利用されている。植物染料については、利用方法や材料に関す
る相談も多いが、従事者が生産活動を行いながら新規材料の探索や染色条件を検討することは
難しい。本研究では県産植物の染色に関する知見を得るため、未利用植物も含め染料として有
用な植物の活用方法について検討した。11 種類の県産樹木について、樹皮と葉を用いた染色を
行い、色みの傾向や染色堅ろう度を調べた。また、有用な植物染料ではあるが、採取時期が限ら
れているゲットウの実や、採取が困難なヤエヤマアオキの根について保存方法を検討し、さら
に素材や前処理方法及び抽出条件等、染色に最適な方法を調べた。
[成果の内容・特徴]
1.県産樹木の樹皮と葉の染色布の測色値及び色濃度から、色みの傾向と濃淡を数値化すること
ができ、植物及び部位の違いによる色の比較ができた。(図1) 2.樹皮と葉で同色に染まるフクギでは、樹皮の方が水に対する染色堅ろう度が良いことが分か
った。 3.ゲットウの実は、生試料の冷蔵保存で2ヶ月、生試料の冷凍保存及び乾燥試料の室温保存で
は5ヶ月半、染色に影響なく保存ができた。(図2)
4.ゲットウの実は、7~8月の若い青実を使用した方が良いこと、また、抽出時のソーダ灰濃
度は 0.06~0.075g/L 程度が適していること等が分かった。(図3)
5.ヤエヤマアオキの根の生試料の冷蔵保存では樹皮を取り除くことで1ヶ月、生試料の冷凍
保存及び乾燥試料の室温保存では2ヶ月、染色に影響なく保存ができた。(図4)
6.ヤエヤマアオキの根は樹皮と木部で色みが異なること、樹皮は根の下部ほど濃色に染まる
こと、水に対する染色堅ろう度は樹皮より木部が良いこと等が分かった。(図5)
[成果の活用面・留意点]
1.染色布の測色値から色濃度及び色濃度マグニチュードを求めることで濃淡の数値化と区分分
けができ、染色時の必要量や染色堅ろう度の比較を行うことができる。
2.ゲットウの実やヤエヤマアオキの根は、乾燥や冷凍処理をすることで色濃度が減少する傾向
が見られたが、長期保存には有効である。
3.ヤエヤマアオキの根は樹皮と木部、樹皮の位置により色みが異なるため、再現性の一因とし
て考えられる。
[残された問題点]
県産樹木の樹皮と葉の染色では、淡色域から中色域までの色濃度を示したため、今後さらに
濃色に染める条件を検討する必要がある。
-93-
食品・化学分野
[具体的データ]
[研究情報]
課題 ID:2016 技 002 研究課題名:県産植物の染料素材としての調査研究
予算区分:工業研究費(単独)
研究期間(事業全体の期間):平成 28 年度~平成 30 年度
研究担当者:湧田裕子
発表論文等:1) 湧田裕子、平成 30 年度 沖縄工技セ研究報告、第 21 号:36-42 2) 湧田裕子、平成 30 年度 沖縄工技セ研究報告、第 21 号:43-53
0
20
40
60
80
100
色濃
度マ
グニ
チュ
ード
(D
XL)
Al媒染 Cu媒染 Fe媒染
0
20
40
60
80
100
色濃
度マ
グニ
チュ
ード
(D
XL)
Al媒染 Cu媒染 Fe媒染
濃
中
淡
濃
中
淡
〔樹皮〕 〔葉〕
図 1 県産樹木の樹皮と葉で染色した試験布の色濃度マグニチュード 淡:淡色域(DXL=30~50)、中:中色域(DXL=50~70)、濃:濃色域(DXL=70~90)
■ Al媒染 ■ Cu媒染 ■ Fe媒染
02468
101214161820
色濃
度(D
X)
【平成29年】
02468
101214161820
色濃
度(D
X)
【平成28年】
図 3 ゲットウ実の採取時期による 色濃度の変化
0
20
40
60
80
100
0 2
L*
0
20
40
60
80
100
0 2
L*
白←
黒→
○ 根(樹皮) △ 根(木部) ■ 根(小)(樹皮・木部)
● 枝(樹皮) ▲ 枝(木部) ◇ 葉
0
20
40
60
80
-10 0 10 20 30 40
b*
a*
0
20
40
60
80
-10 0 10 20 30 40
b*
a*
→ 赤
黄←
黄色み
赤み
〔Al媒染〕
図 5 ヤエヤマアオキの部位による 色みの違い(Al 媒染)
図 4 ヤエヤマアオキ根の前処理、保存条件の違いによる色差の 経時変化
3.5
0
2
4
6
8
10
0 0.5 1 1.5 2 2.5
色差
(Δ
E)
経過月数
①生試料_冷凍保存 Al媒染
Cu媒染
Fe媒染
3.3
0
2
4
6
8
10
0 0.5 1 1.5 2 2.5
色差
(Δ
E)
経過月数
②温風乾燥_室温保存 Al媒染
Cu媒染
Fe媒染
図 2 ゲットウ実の前処理、保存条件の違いによる色差の経時変化
0
2
4
6
8
10
0 1 2 3 4 5 6
色差
(Δ
E)
経過月数
②温風乾燥_室温保存 Al媒染
Cu媒染
Fe媒染
0
2
4
6
8
10
0 1 2 3 4 5 6
色差
(Δ
E)
経過月数
①生試料_冷凍保存 Al媒染
Cu媒染
Fe媒染
-94-
食品・化学分野
(成果情報名)イオン交換膜を利用した海水濃縮装置の開発
(要約)県内製塩業者向けのナトリウム以外のミネラル濃度の高いかん水を生産可能な、イオ
ン交換膜利用した海水濃縮装置の開発を行った。この装置を用いて生産を行ったかん水は、塩
分濃度 20%前後であり、硫酸イオン濃度が低く異物晶析トラブルが発生しにくく、カリウム、
マグネシウム、カルシウムを海水より多く含むことが認められた。
(担当機関)工業技術センター 環境・資源班 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 環境化学 対象 製塩企業、 製塩設備企業 分類 実用化研究
[背景・ねらい]
県内において中小合わせて 30 社を超える企業が塩製品を生産している。これらの企業では、
塩分濃度 3.5%程度の海水を直煮法や塩田法(入浜式、流下式)、RO(逆浸透)膜法によって濃
縮してかん水をつくり、さらにこのかん水を煮詰めることによって塩結晶を析出させる方法が
一般的に行われている。こうした濃縮方法(水分除去法)では大量の水分を除去しなくてはなら
ず、高湿多雨な気候である沖縄県では効率的で安定した海水の濃縮は期待できない。そこで、県
外で多く行われているイオン交換膜法を利用して、ナトリウム以外の成分を多く含む塩を生産
可能な海水濃縮システムの開発を行った。
[成果の内容・特徴]
1.県内製塩業者向けの純塩率の低いかん水を生産可能なイオン交換膜を利用した海水濃縮装置
の開発が出来た。
2.塩分濃度 20%前後のかん水を得ることが可能となった。
3.硫酸イオン濃度が低く、異物晶析トラブルが発生しにくいかん水を生成することができる。
4.生成したかん水は、カリウム、マグネシウム、カルシウムを海水より多く含む。
5.生成したかん水の純塩率は 75%であり、県内製塩業者の製造しているかん水と近い値である。
6.海水を煮詰めたかん水と似たような化学組成となるかん水を効率よく得ることができる。
[成果の活用面・留意点]
1.海水利用率が 40%であるので、現状より多くの海水の取水が必要となる。
2.長期的に使用する場合、膜間異物発生に注意が必要である。
3.装置を稼働させるには、亜硫酸ナトリウム水溶液および塩酸等の電極液を調整する必要があ
る。
[残された問題点]
・長期的な利用による膜劣化について実証試験を行う必要がある。
・現場に設置することを想定した安全に対する仕組みが必要である。
・かん水中の微量元素の含有量の測定。
-95-
食品・化学分野
[具体的データ]
[研究情報]
課題 ID:2017 技 018 研究課題名:沖縄県内製塩企業向け多品種変量製塩装置を実現する為の
イオン交換膜法による海水濃縮システムの開発
予算区分:受託研究(ものづくり基盤技術強化支援事業)
研究期間:2017~18 年度
研究担当者:中村英二郎、湧田裕子
発表論文等:なし
図1 イオン交換膜を利用した海水濃縮装置外観
表1 イオン交換膜を利用した海水濃縮装置主要能力
(表面)
(裏面)
表2 海水およびかん水の化学組成
試料名Na
(g/kg)K
(g/kg)Ca
(g/kg)Mg
(g/kg)Cl
(g/kg)SO4
(g/kg)合計(%)
県内製塩企業 海水 10.58 0.44 0.39 1.28 19.0 2.86 3.5県内製塩企業 かん水 64.50 2.61 0.69 7.86 116.2 13.31 20.5海水濃縮装置 試作かん水 60.53 2.87 3.19 8.62 126.0 0.98 20.2
-96-
食品・化学分野
(成果情報名)琉球藍染めの抗菌成分
(要約)リュウキュウアイ等の植物に藍色素インディゴとともに含まれている抗菌成分(トリプ
タンスリン)について、藍染めによる布への吸着量を調べたところ、抗菌活性に有効な濃度で存
在していることが分かった。
(担当機関)工業技術センター 環境・資源班 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 資源化学 対象 藍染め 分類 基礎研究
[背景・ねらい]
リュウキュウアイ等の藍含有植物には抗菌成分トリプタンスリンが含まれていることが知ら
れており、これらの藍含有植物を染色原料として用いる天然藍染め製品についても抗菌機能が
期待されている。しかし藍染め製品中の抗菌成分の有無等についてはこれまで報告されていな
かった。植物由来の抗菌成分が布へ吸着されていることを明らかにすることで、天然藍染め製
品が抗菌機能を有することを示すとともに、合成インディゴを用いた製品との差別化を図るこ
とができる。
[成果の内容・特徴]
1.リュウキュウアイ等の藍含有植物に含まれる抗菌成分トリプタンスリンが、藍染め製品に
も含まれていることを明らかにした。 2.天然藍染め製品は、合成色素を用いた製品とは異なり、抗菌機能が期待できることを示すこ
とができた。 3.抗菌成分は染色時に藍色素と混在することで布への吸着量が増えることを明らかにした。
[成果の活用面・留意点]
1.植物原料を用いる天然藍染め製品は色素以外の植物成分も含有しており、抗菌機能が期待
できることから、合成色素を用いる製品との差別化を図ることができる。
2.天然藍染め製品は、その抗菌機能によって微生物由来の異臭発生を抑制する効果も期待でき
る。
[残された問題点]
藍染め布へ抗菌成分が含有していることは分かったが、抗菌成分が吸着した布自体の抗菌活
性を別途評価する必要がある。
-97-
食品・化学分野
[具体的データ]
[研究情報]
課題 ID:2018 技 016 研究課題名:琉球藍の消臭効果
予算区分:その他(企業連携共同研究開発支援事業)
研究期間(事業全体の期間):平成 30 年度
研究担当者:世嘉良宏斗、湧田裕子、池原幹人(藍ぬ葉ぁ農場)
発表論文等:1) 世嘉良宏斗ら、平成 30 年度 沖縄工技セ研究報告、第 21 号:6-9 2) 世嘉良宏斗ら(2019)日本農芸化学会 西日本・中四国支部合同沖縄大会講演要
旨集、F-p05
成分名 μg/g-布
インディゴ(藍色)
15.5 184
インジルビン(赤色)
61.8 × 10 - 2 729 × 10 - 2
トリプタンスリン(抗菌成分)
11.4 × 10 - 3 134 × 10 - 3
μg/cm2-布
01020304050607080
還元剤あり 還元剤なし 還元剤あり 還元剤なし
インディゴのみ 2成分混合
Indi
go (μ
g/cm
2 )
p < 0.02p < 0.02
有意差なし n=5
49.8
2.67
46.0
2.53
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
還元剤あり 還元剤なし 還元剤あり 還元剤なし
抗菌成分のみ 2成分混合
Tryp
tant
hrin
(μg/
cm2 ) p < 0.02 p < 0.02
p < 0.02 n=5
0.390.087
1.6
0.10
図1 インディゴの布への吸着量 インディゴを還元して水に溶かした溶液を布へ浸透させてから空気酸化することで色素を布へ吸着させることができる。 インディゴ単独で染めた場合と、トリプタンスリンと混合して染めた場合ではインディゴの吸着量に違いは確認されなかった。
図2 トリプタンスリンの布への吸着量 インディゴと同様に抗菌成分トリプタンスリンを還元して布に吸着させたところ、わずかに吸着することが分かった。 さらに、インディゴとともに染めることでトリプタンスリンの布への吸着量が 4 倍以上に増えることが分かった。
表1 藍染布に含まれる成分
藍染め布には色素成分(インディ
ゴ、インジルビン)とともに抗菌成分
トリプタンスリンが吸着されているこ
とが確認された。
今回用いた藍染め布の場合、1 cm2
あたり 0.03 mL 以下の水分量であ
れば抗菌効果が期待できる。
Indigo (μg/cm2)
Tryptanthrin (μg/cm2)
-98-
食品・化学分野
(成果情報名)小型メタン発酵槽の開発
(要約)通年を通して安定的にメタン発酵を行うことができるように「メタン発酵浄化システ
ム」を稼働させ、基礎データの収集を行った。10m3 のメタン発酵槽を用いて泡盛蒸留粕を処理
し、日量平均 7.5m3 のバイオガスを得ることが出来た。また、脱硫剤を用いてバイオガス中の
硫化水素の除去を行い、安定的にシステムを運転することが出来た。
(担当機関)工業技術センター 環境・資源班 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 環境化学 対象 有機廃棄物排
出業者 分類 実用化研究
[背景・ねらい]
県内ではエネルギー利用可能な多くのバイオマス原料が廃棄されていることから、その有効
活用が期待されている。大型のメタン発酵は大手排水処理プラントメーカーが手掛けているが、
小型のものは稼働していない。共同研究先のバイオ畜産研究合同会社は、「メタン発酵浄化シス
テム」を特許登録しており、このシステムを実現すれば県内で少量廃棄されている有機系廃棄
物の処理がオンサイトで可能となる。そこで、「メタン発酵浄化システム」を稼働させ、発酵液、
バイオガス等の分析を行い、安定的・効率的な運転条件を検討した。
[成果の内容・特徴]
平成 29 年度にテストスケールプラント(70L)において、加熱と保温を行うことで冬場の寒い時
期でも発酵槽を 37℃で維持することが出来、目標であったガス発生効率 0.5L/day/g-VTS、HRT35日でメタン発酵を維持することが可能となった。
平成 30 年度、企業(バイオ畜産研究合同会社)が設置した 10m3 メタン発酵槽を用いて実証試
験を行うと共に、平成 29 年度の留意点であったバイオガス中の硫化水素の低減について検討を行
った。
その結果、10m3 メタン発酵槽に泡盛蒸留粕を1日あたり 150L 投入することで、平均 7.5m3 のバ
イオガスを発生させることが出来、0.75L/day/g-VTS のガス発生効率で安定的にシステムを運転す
ることが出来た。バイオガス中の硫化水素の低減については、脱硫剤を利用することで 0.5ppm ま
で低減することが確認できた。
[成果の活用面・留意点]
1.発酵槽運転に伴い発生する発酵液の処理について検討が必要である。
2.バイオガス中のメタン含有量は約 60%であるので、有効利用にはバイオガス専用の装置が必
要である。
[残された問題点]
・メタン発酵槽の操作は手動で行っていることから、自動制御の仕組みを構築する必要がある。
・発生したガスの有効利用および発酵液の液肥としての利用を検討する必要がある。
・設備費用と運用コストについて検討する必要ある。
-99-
食品・化学分野
[具体的データ]
[研究情報]
課題 ID:2018 技 018 研究課題名:小型メタン発酵槽の開発
予算区分:経常研究(県単)
研究期間:2018 年度
研究担当者:中村英二郎
発表論文等:なし
図1 10m3メタン発酵槽外観
図2 1 日あたりバイオガス発生量の変化
泡盛蒸留粕投入量
150L/day
年月日
-100-
食品・化学分野
(成果情報名)粉粒体殺菌技術の開発
(要約)パイロットスケール粉粒体殺菌機を用いて、共同企業5社の5つの健康食品原料素
材(粉粒体)に対し、殺菌圧力・過熱温度を変えて気流式加圧殺菌試験を行った。その結果、
全ての素材において、0.2MPa(164℃)以下の条件で菌数が低減し、素材の物性や色調、風味、ポリ
フェノール含量などを調べることで、品質劣化抑制可能な殺菌条件を得る手がかりとなった。
(担当機関)工業技術センター 連絡先 098-929-0111
部会 食品・化学 専門 食品加工 対象 健康食品粉体 分類 実用化研究
[背景・ねらい]
殺菌工程は健康食品製造にとっても欠く事の出来ない重要工程であるが、湿熱殺菌による素材
の品質(色調・風味・成分等)劣化が大きい事等から、県外企業に殺菌工程を委託している企業
もあり、コスト高、県外依存度上昇、販路縮小等の結果を招いている。そこで本研究は、県内企
業5社からなる健康食品製造共同体と連携して、各企業が選定したモロヘイヤ、シークヮーサー
搾汁残渣、ニガウリ、ノニ搾汁残渣および一次殺菌処理した春ウコンの乾燥粉砕原料を用いて、
粉体の殺菌技術に関する研究を行った。
[成果の内容・特徴]
1.過熱水蒸気を活用し、管の中を通っている間に殺菌する本装置を用いて殺菌試験を行った結
果、全ての素材において、0.1MPa (156℃)~0.2MPa(164℃)の条件で、各社の製品規格内に菌
数を低減させることができた(表1)。
2.素材の物性や色調、風味、ポリフェノール含量などを調べることで、品質劣化が抑えられる素
材に適した殺菌条件(圧力や蒸気温度など)を得る手がかりとなった(図2、図3)。
3.本試験結果を基に、1素材については製品化までに至った。また、1社では品質管理室を立
ち上げるきっかけとなった(図1)。
[成果の活用面・留意点]
1.湿熱により変性しやすい乾燥素材、例えば青汁など、品質の一つである緑色をできるだけ残
した殺菌が可能である(図2)。
2.素材の物性(粒形、流動性、見掛け密度、吸湿性など)によって、殺菌条件を変更する必要が
ある。
3.湿熱殺菌により吸湿しやすい素材、例えば糖分の多い果汁搾り粕などは、水分が上昇するた
め、過熱温度を高めにするか、殺菌後、乾燥が必要となる場合がある(表2)。
[残された問題点]
素材によっては殺菌後の原料水分が数%上昇することや、機器内の冷却工程における2次汚染
の可能性(洗浄法の改善)等が今後の課題となった。
-101-
食品・化学分野
[具体的データ]
表 1 モロヘイヤ粉末における殺菌前後の微生物検査
図1 殺菌試験・微生物検査の技術移転
図 2 モロヘイヤ粉末における殺菌前後の品質(色)の変化
表 2 シークヮーサー粉末における殺菌前後
の水分、水分活性、品質(色)の 変化
図 3 モロヘイヤ粉末における殺菌前後のポリ フェノール含量の変化
[研究情報]
課題 ID:2018 技 022 研究課題名:粉粒体殺菌技術の開発
予算区分:県単・その他(企業連携共同研究開発支援事業)
研究期間(事業全体の期間):1年
研究担当者:鎌田靖弘、喜屋武満((株) 比嘉製茶)、仲程俊規((株) 沖縄ウコン堂)、中田幸也
((株) 仲善)、稻福桂一郎(金秀バイオ(株))、呉屋克宏((有) 沖縄長生薬草本社)、比嘉賢一
発表論文等:なし
(cfu/g) 一般生菌数 耐熱性菌数 大腸菌群 酵母・真菌類
殺菌前原料 2.0×106 3.5×103 陽性
(1.3×104)1.9×104
0.1MPa,156℃ 4.9×103 1.0×103 陰性 300以下
0.2MPa,164℃ 7.2×102 3.0×102 - -
0.2MPa,185℃ 9.1×102 - 陰性 300以下
0.3MPa,171℃ 1.2×103 300以下 - -
0.3MPa,185℃(1回目) 1.8×103 1.4×103 陰性 300以下
0.3MPa,185℃(2回目) 8.4×102 300以下 - -
水分(%)
水分活性(Aw)
色差(dE)
殺菌前原料 4.2 0.3 -
0.1MPa,156℃ 7.5 0.5 3.6±1.5
0.2MPa,164℃ 8.9 0.6 3.7±1.8
0.2MPa,185℃ 8.1 0.5 3.8±2.1
0.3MPa,171℃ 10.0 0.7 5.4±1.8
0.3MPa,185℃ 8.5 0.6 4.3±1.8
4.88
6.47 6.59 6.42 6.48 6.88
0
1
2
3
4
5
6
7
8
殺菌前原料 0.1MPa,154℃
0.2MPa,164℃
0.2MPa,185℃
0.3MPa,172℃
0.3MPa,185℃
ポリ
フェ
ノー
ル含
量(m
M:没
食子
酸当
量)
-102-
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