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Vol.47,No.6,November 2016. 1265 研究論文 20164618

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SI エンジンのエンドガス自着火と圧力振動成長過程に着目した Knock 強度の考察 研究論文

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(K)

Crank Angle (deg.ATDC)

Temp. Calculated by Low-passed PressureTemp Calculated by Pressure with OscillationBP cylinder Pressure

(b)Calculated Temperature Profiles Fig.16 Auto Ignition Timing Difference between Low-pass Filtered and Knocking Pressure Profiles and Calculated Temperature Profiles

Fig.17 A temporal sequence of pressure profiles for an initial temperature of 500 K with the isothermal wall condition(2).

着火発生タイミングに大きな変化はなかった.ノックの圧力

振幅増加には,圧力波通過により未燃ガスの自着火が誘発さ

れると考えたが,実測された高周波振動による断熱圧縮過程

では自着火が誘発されることはなかった.

それでは,試験結果に見られるような急峻な熱発生と圧力

波振幅の成長はどのように発生するだろうか. らの

報告 に興味深い計算結果が示されている.彼らは初期温度

の 混合気において,端面より火炎伝播を発生さ

せたところ,火炎伝播面近傍より圧力波が生成する計算結果

を示した 図 .火炎伝播面,もしくは温度勾配を有してい

る未燃領域に対して,同様の現象は本研究で着目した圧力波

の成長過程でも起こりえると考えられる.よって圧力波の成

長は,初期の弱い圧力波が火炎面,もしくは温度勾配を有し

た領域を通過した際に自着火を誘発し,圧力振幅を更に成長

させる過程が存在すると考えられる.

.ま と め

本研究の結果より, エンジン燃焼で発生するノック強度

は以下の過程で決定されると考えられる.

ⅰ 火炎伝播の成長に伴い未燃ガスが圧縮され,自着火が発

生し初期の圧力波が生成する.

ⅱ 初期の圧力波が生成された後,圧力波がエンジン筒内を

伝播し未燃ガスを断熱圧縮する.

ⅲ 温度勾配を有した未燃ガス領域を圧力波が通過するこ

とにより自着火が誘発され,圧力波振幅を増幅し,ノック強

度が決定される.

次元予混合反応計算において未燃ガスが初期の圧力振動

で断熱圧縮されても,詳細反応計算では振動周期内で自着火

する結果は得られなかったため,空間的に温度勾配を有して

いる領域で自着火が誘発し,圧力振幅を増幅したと考えられ

る.

ノック音の大きさは圧力波の振幅と相関があるため,自着

火発生を抑制と同時に圧力振幅の増加を抑制することにより,

ノックの発生及び強度を効果的に抑制できると考えられる.

参 考 文 献

’ , No.

松浦勝也 中野恵人 志水啓祐 飯田訓正 佐藤義久 火炎伝

播時の発熱過程がエンドガスの圧縮および自着火過程に及ぼ

す影響 自動車技術会論文集 ,

飯島晃良 吉田裕貴 林智敏 島田貴司 山田将徳 田辺光

昭 庄司秀雄 可視化エンジンを用いた 機関におけるノッキ

ング現象の研究 第 回内燃機関シンポジウム予

稿集

参照

(a)Pressure Profiles

20134020164618

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数値シミュレーションを用いた火花点火ガソリンエンジンにおける燃料改質による高効率化に関する基礎検討 数値シミュレーションを用いた火花点火ガソリンエンジンにおける燃料改質による高効率化に関する基礎検討

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1270 自動車技術会論文集

数値シミュレーションを用いた火花点火ガソリンエンジンにおける燃料改質による高効率化に関する基礎検討

高圧燃焼場における実用ガソリンの自着火特性*

田中 光太郎1) 吉田 翔一

2) 岡田 寛也

3) 成毛 政貴4) 金野 満

5)

Ignition Characteristics of Commercial Gasoline under the High Pressure Conditions

Kotaro Tanaka Shouichi Yoshida Hiroya Okada Masaki Naruke Mitsuru Konno

Ignition delay times of regular gasoline (SIP regular gasoline) and gasoline surrogate (SIP gasoline surrogate S5R) consisting of n-heptane, iso-octane, diisobutylene, methylcyclohexane and toluene were measured using a rapid compression machine (RCM) in the temperature range 660 - 730 K and the pressure range 3 - 5 MPa at an equivalence ratio of 0.5. The measured ignition delay times were compared with the simulated ones

using a detailed kinetic model of the gasoline surrogate. Ignition delay times of both fuels decreased with increasing pressure and ignition delay times of gasoline surrogate were similar to those of regular gasoline. The simulated results were in reasonable agreement with those of the experiments. The kinetic mechanism of the gasoline autoignition under the high-pressure conditions was investigated using the kinetic model.

KEY WORDS: Heat engine, Gasoline, Combustion analysis, Gasoline surrogate, Rapid compression machine, Ignition delay time (A1)

1.緒 言

ガソリン火花点火機関の高効率化には希薄燃焼による損失

低減と圧縮比増加による理論熱効率改善が有効である.しか

し,圧縮比の増加を行うと火炎伝播の途中で未燃混合気が自

着火して急峻な圧力上昇を引き起こす異常燃焼(以下,ノック)が問題となってくる.圧縮比の限界を高めるには,ノックの発

生を予測する手段が必要である. ノックの発生時期を予測する手法の一つとして Livengood-Wu 積分が挙げられる

(1).Livengood-Wu 積分は燃料の着火遅れ

時間を一つのアレニウス式で表現するため,計算負荷が低く

多次元 CFD モデルに組み込みやすい長所がある一方,NTC (Negative temperature coefficient) 領域を持つ燃料においては予

測精度が良くないことが知られている(2).近年,着火遅れ時間

を複数のアレニウス式で表現すると予測精度が向上すること

が報告されたものの(3),NTC 領域におけるノック発生時期の

予測には,未だ誤差があり,さらに高精度な予測手法が求めら

れている.

高精度にノックの発生時期を予測するモデルでは,エンジ

ン筒内の流動を明らかにすると同時に,燃料の自着火を予測

する反応モデルを構築することが必要である.既往の研究で

は,例えば,炭化水素の自着火を簡易に表現する反応モデルと

してShellモデルが構築された(4).Shellモデルはアルカン燃料の

低温酸化反応を一般化された5つの化学種と8つの反応式で表

現しており,その簡易さからガソリンの自着火やディーゼル

着火の予測モデルとして利用されてきた(5)(6)

.近年,計算能力

の向上及び計算方法の改良により化学種と素反応数が多い詳

細素反応モデルと流体計算をカップリングすることも可能に

なってきた(7).そのため,より高精度にエンジン筒内の自着火

を予測するには,実用燃料の自着火を精度よく再現できる詳

細素反応モデルを構築することが求められている.

これまでに実用燃料に関する着火遅れ時間の計測や実用燃

料の着火特性を模擬するサロゲート詳細素反応モデルの構築

はいくつか行われてきた(8- 13)

.ガソリンに注目すると,例えば,

アメリカの標準ガソリンRD387,及びFACE(Fuels for advanced combustion engines)ガソリンを用い,衝撃波管と急速圧縮装置

により着火遅れ時間を計測した例がある(8, 10, 13)

.計測結果に基

づいてアメリカの標準ガソリンのサロゲートとして,イソオ

クタン,ノルマルヘプタン,トルエン,2-ペンテンの4成分で

構成されたサロゲート燃料が提案されている.このサロゲー

ト燃料の詳細素反応モデルは,実験で得られた着火遅れ時間

を概ね再現することが報告されている(13)

.また,オレフィン

の代表成分として2-ペンテンの代わりにジイソブチレンを用

い,さらにナフテン成分や含酸素成分としてメチルシクロヘ

キサン,エチルターシャリーブチルエーテル,エタノールを加

えた7成分のモデルも提案されている(14)

.しかし,実用ガソリ

ンの着火遅れ時間を計測した研究は少なく,また,実機相当の

温度,圧力条件における実用ガソリンの自着火特性に関する

実験データは十分ではない.特に熱効率の改善に利用される

希薄条件におけるデータは極めて限られているのが現状であ

る.

そこで,我々のグループでは,実用ガソリンの着火遅れ時間

に関するデータを様々な条件で蓄積することを目的とし,急

速圧縮装置(RCM)を用いて,実用ガソリンの着火遅れ時間を

*2016 年 5 月 25 日受理.2016 年 5 月 25 日自動車技術会春季

学術講演会において発表

1)・2)・3)・4)・5) 茨城大学(316-8511 茨城県日立市中成沢町

4-12-1)