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Hitotsubashi University Repository Title � : � (� : �[1]) Author(s) �, Citation �, 19(3): 5-15 Issue Date 1975-03 Type Journal Article Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/16752 Right

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Hitotsubashi University Repository

Title雁行形態論とプロダクトサイクル論 : 赤松経済学の一展

開 (人と業績 : 故赤松要先生をしのんで[1])

Author(s) 小島, 清

Citation 世界経済評論, 19(3): 5-15

Issue Date 1975-03

Type Journal Article

Text Version publisher

URL http://hdl.handle.net/10086/16752

Right

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雁行形態論とプ

ロダクトサイクル論

J展

(貼

監鰐

範qn:)lrHllrrHrlhrllH川=1日仙日日1日‖lhlrHⅢHmlEHtHllL"hl‖川l‖rhll川=lrl11日EllHl日日川lmlhrrIY

llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ

赤松経済学の体系

わが赤松要博士の学問体系は広-

かつ深い。

ヴィジョン豊かな包容力の大きい

構想である。入れようとすれば何で

も入ってしまうような尤大な器であ

る。現実問題に適切に通用し切れ味

のよい政策解答を得るには、使用者

の勘とか手腕に依存する点が多分に

あるように見うけられる。つま-赤

松先生でなければ有効に使いこなせ

(T-1)

ない面がある。巨匠の体系をいかに

厳密化し'まざれもない唯

一の解答

が導けるように仕上げるかというこ

とが'われわれに残された課題であ

る。私

は赤松先生の御薫淘と御慈愛を

最も多-受けた門下生である。もう

二八年も昔に'

ここまでは

ついて来しかど

これからは

わが体系を

乗-こえてゆげ

じ例川H凸

という激励を頂いている.負荷の重

きに今もっておののく。だがこの歌

は'私だけでな-すべての弟子や孫

弟子に対する、先生の期待であ-義

愛である。

本稿は赤松先生を追憶Ltその優

れたユニークな業績を顕彰すること

を本来の目的としている。だがそれ

だけにとどまらず、先生の体系に対

し若干の卒直な疑問を提出するとと

もに、先生の構想を今後どのような

方向に拡充し精微化しうるかを'私

なりに模索しようとしている。

「批

判な-して学問の進歩なし」と常に

教えて下さった先生は、このような

型破-の追悼論文も、笑

って許して

下さることであろう。

赤松経済学は多彩であ-'いずれ

もきわめてユニークであ-tかつプ

ロポカティヴである。最近数カ年に

おける最大の関心は、‖雁

形態

(っ也

論tとr1金廃貨

にあった.だが

赤松経済学の全体系を貫-基本は、

一-i

白綜合弁証

tであ-'これが経済政

〕=甘n〔

して開花している。他方、綜

合舟証法が国際経済に適用された基

本的構想が'囲世界経済の異質化と

l'h)

同質

'である。これはコンドラチ

ェフの長期波動に沿

って、技術革新

- 5-

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とその後進工業国への波及'金鉱の

発見またはそれに代る平価切下げ'

自由貿易主義と保護貿易思潮の交替

などが生ずるが'これは世界経済の

異質化と同質化という本質的動向に

起因すると見るものである。後進工

業国が技術革新をと-いれて追いあ

げをはか-'世界経済が薗質化する

プロセスとして'産業発展の雁行形

態が位置づけられる。また金の束縛

から離れて世界貿易

・投資の拡大を

支えるものとして金廃貨が位置づけ

られるのである。

以上のほかに'餌名和統

1教授と

わされた国際価

(不等価交換)請

1j:A争

t

と内終戦直後

の日本

経済復興の

現状から着想され'塩野谷九十九教

授らとの間にかわされた輸入

(供給)

乗数論争とがあげられる.田は先進

国の技術革新によってひきおこされ

る後進国の構造調整が

「低転換」を

強制する場合のあ-うることを指摘

するものであ-、雁行形態論に組み

入れるべき問題である。また内は、

終戦値後の日本や現在の開発途上国

の経済復興

・発展は'原材料

・食糧

の職人によって始発されることをモ

デル化したものであるから'やは-

後進国産業発展の雁行形態論の中に

包摂することができよう。したがっ

て赤松経済学は「練合弁証法とい-

基本的分析トウールの問題と'雁行

形態論と金廃貨論という二つの実際

問題とに凝集されてきたと見てよい

であろう。赤松経済学の全体系を取

-

上げるのは至難の技でもあるので.'

本稿は雁行形態論に焦点をあわせて

検討することにしたい。

(1)

これは私の直観にすぎず'

一つ一

っ証拠をあげることのできるような問

題ではない。同様な評価として次を参

照。坂本二郎「赤松要教授の人と学説」

経済往釆、一九五九二二。同、書評

「赤

松要博士還暦記念論集

・経済政策と国

際貿易」

一橋論叢

一九七〇

・七

(赤松

要名誉教授記念号)0

(2)

赤松要

歌集

『わが旅路』

一九六

一、

1七四ThI。

(3)

赤松要

金廃貨と国際経済』東

洋経済新報社'

一九七四、第

一-第四

章に集約されている。

これをめぐって阪大渡辺太郎教授と

の論争を生むに至った.渡辺太郎、昏

『金廃貨と国際経済』'世界経済評

論、

1九七四

・八。赤松要

『金廃貨と

国際経済』について1

渡辺太郎教授

の批判に答える-

'世界経済評論、

1九七四

・lOo磯辺太郎

「金廃貨諭

と金復位論1赤松要博士の反論に答え

るー

」世界経済評論、

一九

五・

一。これに対する再返答を試みること

なく'また金廃貨

へ向っての事態の進

展に心を残しっつ、赤松先生が急逝さ

れたことは'痛恨事である。

(4)

処女作

『ヘーゲル哲学と経

学』同文館、

1九三

lに構想がのせら

れ、学位論文『経済新秩序の形成原理』

理想社'

一九四四、にまとまった展開

が果されている。

(5)

何回かの改訂を経て

『新訂

・経済

政策論』青林書院新社、

一九六六'に

集大成された。

(6)

「世界経済の異質化と同質化」名

高商蘭英経済叢論'第十巻上冊、

一九

三二・七に最初に発表されたが'

『世

界経済論』国元書房'

一九六五、での

展開を経て、前掲『金廃貨と国際経済』

第五葦に要約されている。

(7)

木下悦二編

『論争

・国際価値論』

弘文堂'

一九六〇。前掲

『金廃貨と国

際濯済』第八軍

「不等価交換」と南北

問題-国際価値論争の回顧から-0

(8)

赤松要

『世界経済の構造と原理』

繁明春房'

一九五〇'第八葦

「世界経

済の構造と乗数理論」にまとめられて

いる。

後進国産業発展の雁行形態

ー 6-

赤松経済学の中核たる雁行形態

論'もっと正確には'後進国産業発

展の雁行形態論というのは'先生自

身の最近の要約によると、次のとお

-である。

比較生産費の構造は動態的には

.絶えず変動しているものであり'

初め1次産品の輸出と工業品の輸

入が行われ'その比較生産費構造

は異質的'分業的であるが、第二段

階では国内の工業生産がおこ-r

輸入工業品と次第に同質的

とな

-、輸入代替を生じ、輸入品の漸

減傾向となる。第三段階では国内

工業品の比較的優位が次第に増大

し、国内工業品は輸出品に進展す

る。初め後進国に向って、次には先

進国に向っての輸出とな-、先進

(・1)

国は「代替抽入」を行うにいた

後進国の工業化の進展

にお

て'まず最初に一次産品の輸出に

対して工業品の輸入があ-、つい

で生産がおこ-'ついで輸出に進

出する三つのカーブが雁行的であ

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- 雁行 形態 論と プロ ダクトサイクル論-

)‖以Un

ることから名づけられてい

日本は今日でこそ

「経済大国」と

問塩祝されるが'つい一五年か二〇

年前までは中進国とか中進工業国と

呼ばれていた。赤松先生は

一九三五

年の段階において'後進国の工業が

いかにしてつぎつぎと興るか'そし

て先進国に追跡

(キャッチングアブ)

してい-かの法則を見出され'それ

を雁行的発展と名づけられた。

輸入経済学ではな-'日本経済に

根ざした独白の日本型経

であ

るO戦後盛んになった開発経済学の

内外の研究者が先ず注目したのは由

なしiJしない。けだし欧米先進国の

経済学をそのまま開発途上国の開発

問題に適用できないことはいうまで

もないことであ-、そうすることは

むしろ危険でさえあ-失敗を生むか

らである。そして今日開発途上国の

学者'官僚が雁行形態論に強い関心

と高い評価を寄せているのである㍉

日本の輸入経済学は雁行形態論とい

う独白の理論を自己生産し、それを

u払】n〔

輸出するまでに至ったのであ

る。

私は雁行形態

(英訳ではWi-dGeese

FtyingPattern)というきわめて純

本的な'しかし英訳Lに-い名称を

付されたことが、世界への周知を遅

らせたのでないかと述べたことが透

(・o)る。そして後述ヴァ-ノンの

「自生

genuineプロダクトサイクル」に

対比して雁行形態を

「キャッチング

アブ

・プロダクトサイクル」と名づ

(l.〇)

けて世界に宣伝することにした。先

生はこのことを気にかけておられ'

「雁行形態と名づけたのは、秋の月

夜に雁が列をなして飛ん

でゆ-

き、山形の列をなし'その列が二つ

三つ交錯して飛んでゆ-ようなイメ

ージが、わたくLにあったためであ

(・]')る

と説明され'最後の著

『金廃貨

と国際経済』の口絵に雁行形態の写

真を飾られているのである。

t雁行形態論を世界に浸透させたに

ついては先生の二つの英文、

"A

Theory

ofUnbatanced

Growthin

the

W

ortdEcono・

my."

WeltuJirtschaftliches・Ar・

chiv.Band86.)96).Heft2,

(ヱ

pp.

)96-2)7.

"A

HistoricalPatternofEco・

nomic

Growth

in

Devetoplng

Countries."TheDeLJeloPingEco・

nomies(Th

einstituteofA

sian

Economi

cAffairs,Tokyo),Pre・

)iminaryIssue

No.).March・

Augustt962.pp.

LI25.

が大きな効果

をもった

であ

が、

1九三五年の着想というのにい

かにも遅すぎた。前者の発表につい

ては篠原三代平教授の勧説と授助に

よるところが多い。同教授は自ら大

GrouJihandCyclesintheJaPa・

neseEconomicDeLJeloi)ment,Kino・

kuniya.Tokyo,)962.pp157I59.

において願行形態論を紹介し評価さ

(C,5'

。海外での雁行形態論

への反響は、

先ずヒギンズ教授が

BenjaminHi・

ggins.EconomicDeue/TopmentJPro・

blems.Principles,and

Policies.

revised.,Norton.NewYork.)969,

pp.623-24.において詳し-取上げ

た。lgnacyS

achs-ForeignTrade

and

EconomicDeL)eloPme7d

of

UnderdevelopedCountries,p.114.

も取上げてい

ると聞-。さらに経済

企画庁に来-篠原三代平教授の指導

をうけたク-スチャン・ソテー氏が

ChristianSautter.JaPon,・LePrix

dZTlaPuis

sance.EditionsduSeuil.

)9734,pp.233-51.が雁行形態論を

全面的に紹介するとともに自らの研

究を追加している。これは今や邦訳

されク-スチャン・ソテー著'小金

芳弘訳

「ジャポンー

その経済力は

本物か」(産業能率大学出版部、一九七

四年刊)として'いわば逆輸入され

るに至った。

これらは'私の知る限-の若干の

公表された海外での反響

にす

い。既述のように開発経済学者'開

発途上国の官僚などにかな-広く知

られている。私は先生の急逝

の直

前'

1九七四年

一月中旬、アジア

開銀とナショナル・ビ

ュロI・オブ

・イコノ-ック

・-サーチ共同主催

による

「開発途上国の貿易自由化戦

略」

マニラ会議に出席していたので

あるが'その席上M

・Ⅰ

・Tのバグ

ワティ教授すら'雁行形態論を口に

し高-評価していた。

ところで、既に引用した、各産業

についての輸入1生産1輸出の三カ

ーブの雁行的移行は雁行的

「基本形態」

(あるいは基本型)であ

る。それは'比較生産費において初

- 7 -

Page 5: URL - HERMES-IR | HOME...llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ 一赤松経済学の体系 わが赤松要博士の学問体系は広-かつ深い。ヴィジョン豊かな包容力の大きい

めに比較劣位にあ-輸入されていた

ものが'輸入技術の摂取'生産方法

の改善'生産能率の向上'コストの

低下を待

って'比較優位に立つよ-

にまで進展することによって実現さ

れるoこの故に私は、樵行的発展の

基本形態を各産業の

「生産の能率化

プロセス」と呼んだ。

このほかに'

「輸入

・生産

・輸出

の移行形態には消費財から資本財に

って、また粗製品から精製品に向

って」の継起が生まれる。

これを

「副次的な雁行形態」

(あるいは雁行

形態の変型)と先生は名づけられてい

)Eij=Eる

これは明らかに

「生産

(と棉出)

の多様化上席度化プロセス」である。

先生は最近'さらに第二の

「副次

的雁行形態」を追加された。

「最先

進国を先端として後続するそれぞれ

(川り

の発展段階の諸国の系列」である。

つま-アメ-カを追跡する日本の雁

行形態的発展があ-'日本を追跡す

る韓国、韓国より工業化の遅れた束

南ア諸国といった雁行形態の地域的

継起が見られるのである。ここでは

か-に

「雁行形態の地域的波及」と

名づけておこう。

直接

・間接に薫淘をうけた弟子や

孫弟子による雁行形態論の拡充

・精

微化はへ世界経済研究協会編'ー小島

清監修

『野本貿易の構造と発展』至

誠堂、

1九七二年、なる大冊に集大

成された。

他の箇所に発表されたものも含め

て見ると'これら諸研究は第

1に'

(ーー払

繊維産業

(松浦茂

)

'鉄鋼業

(小島

(M也

(過

(〓川じ

'

山沢逸平

)、

機械産業など

(山沢

)'

個別産業についての雁行的発展の基

本形態の検証に向けられている。赤

松先生も羊毛工業'綿工業、機械工

業の三つを検討されている。海外に

おける紹介もこの基本形態に力点が

おかれている。

第二は、雁行形態の地域的波及に

1けnU

関するもので、毛馬内勇

本格的

に取組んでいるが、小島清や田中拓

(…m)

男の労作も

ここで

「生産

(と輸出)の多様化・

高度化プロセス」の本格的研究が欠

LL.‖)

けていることに気づ

-

基本形態の

方が余-に有名にな-'この副次的

雁行形態が軽視されてきたきらいが

ある。しかし両者は

一体として考え

られねはならず'国民経済約

・マク

ロ的考察にとっては後者の方がいっ

そう重要であるときえいえるのであ

る。第

三は、雁行形態論の理論化

・モ

デル化の試みである。実は私は次の

ようなコメントを出した

ことが

る。

「赤松博士のビジョンはまこと

に優れたものであ-世界的に高-秤

価されている。だが'い-つかの産

業について実証分析が進められ、雁

行形闇

(の基本型)がきれいにえがき

だされたという段階にとどま-、い

まだ十分な理論モデル化や動因分析

(‖ぴ

は果たされ′ていない

。」

赤松先生は

このコメントをいた-気にされて.い

た。われわれ門下生の努力も'理論

・精微化の

一点に集中しているの

であるが'いまだ満足すべきものと

はいえない。

先ず小島は、雁行的発展の基本形

(生産の能率化)も副次的形態

(坐

産の多様化)も、

一国の資本蓄積の進

展'いいかえれば資本対労働賦存比

率が高まることを軸として継起する

(盟

とのモデル

提出した。すなわちへ

一産業の生産方法の改善'生産能率

の向上'コストの低下は'資本蓄積

が進み資本対労働比率が高ま-'よ

-資本集約的な生産方法に移ること

によって可能になる。他方'所与の

労働

・資本価格比率の下で、ズ財よ

-もy財はty財よりもZ財はさら

にい

っそう'よ-資本集約的な生産

方法をとるとしをつ.そうであるな

らば資本蓄積が進み

1国の資本

・労

働賦存比率が高まってはじめて、ズ

財のほかによ,I,資本集約的な

y財

も'さらにZ財も生産しう

に至

る。つま-生産の多様化も資本蓄積

の関数とみなしうる。こうして資本

蓄積が避むにつれ'生産の能率化と

多様化との二つが可能になる。しか.

し両者の間にはかな-の選択の余地

が残されてお-'そこに興味ある国

際分業の動態問題が発生する。すな

わち、資本蓄積が進み資本

・労働賦

存比率が高まるにつれ、第

一に、労

・資本相対価格を低-抑えておけ

ば'76り資本集約的な財も生産でき

るように、生産の多様化をはか-う

る。だが第二に、よ-資本集約的な

財の国際競争力を高めるには、労働

・資本相対価格を高め、生産の能率

化をはからねばならない。第三に'

- 8 -

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- 雁行形態論とプロダクトサイクル 論-

労働

・資本相対価格が高まると、よ

-労働集約的な財の生産費は相対的

隻尚ま-'比較劣位に陥る.よ-育

利な産業

への転換か

(構造調整の必

要)海外直接投資進出かを求めざる

をえな-なる。これらの選択に値面

しっつ'生産の多様化と'多様化し

た各生産の能率化、さらには海外直

接投資進出を-り返してい-のが'

1国産業発展の動態なのであるO

既に指摘したことであるが'この

展開の中で、完製消費財も中間財

資本財も'資本集約度の差だけとし

一様に取扱

っていることは修正を

要しよう。中間財

・資本財について

は需要と生産両面での連関効果'そ

の立体

的構造'大市場と大規模生産

の必要など、多-の複雑な事態を考

慮にいれねばならない。

一連の消費

財工業の雁行的発展という工業化の

一段階と'中間財

・資本財工業の

設立という工業化の第二段階とでは

質的に異な-、それを恵線的継起と

みなすわけにはいかない。現在先発

開発途上国が値面している問題はま

さに第二段階

への移行なのである。

私が雁行形態的発展を規定する基

本的変数は資本蓄積であるとしたの

に対し'山沢逸平は生産能率化

・コ

ストダウンのプ

ロセスにつき、

「生

産経験の累積と生産規模の拡大につ

れて生ずる生産性の上昇」

つま

GFf。3

「技術習得の過程」を導入す

。こ

れは拙論に対する重要な補完ではあ

るが、本質的に対立

・矛盾するもの

ではない。けだし技術習得は人的資

本の蓄積とみなすことができ、人的

資本も含めた広義の資本蓄積の中に

包摂することができるからである。

右の外、山沢が需要要因と政府の保

護政策を陽表的に導入したことは

つの貢献である。

さらに池間誠は'雁行形態的産業

発展の戦略的動因は'資本蓄積を通

じての利潤率低下によってもたらさ

れる

「生産方法のスゥイチ」-

仕事から機械化

へ-

であるという

(¶也

モデルを示している

。これも拙論を

補完するものである。しかし山沢の

池間のも

雁行的

発展の基本形態

(個別産業のコストダウン・プロセス)

の考察に限られていることに注意し

なければならない。

福島義久は産業発展の雁行形態論

を'需要と供給の均衡分析の観点か

らフォー,"ユレL1トしつつ、も

っぱ

(耶也

らその要因分析に意をそそ

の新

しいアプ

ローチを試みている。産業

発展の雁行形態論の理論化

・モデル

化は結局、

一国経済発展の全側面を

包摂しなければならないので、容易

な課題ではない。だが先進国経済発

展とはかな-異なる後進国的'ある

いは日本的モデルが画き出せること

は大きな貢献である。今後さらにい

っそう展開しなければならない通産

である。

第四に'雁行形態論はさいきん全

-新しい分野'すなわち海外直接投

・技術移転

・産業移植という問題

領域において、華やかに開花LT大

きな成果を結ぼうとしている。そし

てこれがヴ

ァーノンのプ

ロダクトサ

イクル論との対比を呼び起してくる

のである。節を改めて論ずることに

したい。

か-して雁行形態論は'今や日本

においては、多くのテキストブ

ック

に取上げられているだけでなく、銀

行'会社の-サーチにも、新聞紙上

にも普通の用語として自然に用いら

れる程に広-知られ利周

(明臼る。院生

・学生の研究テーマとして

も高い関心が寄せられ'その影響力

はまことに甚大なものがあるといわ

ざるをえない。

(1)

赤松要『金廃貨と国際経済』、東洋

経済新報社二

九七傾二

五八-九3'(.

(2)

同、l六五T{o

(3)

こういった日本

の経済学自体の輸

入から自己生産へ、そして輸出へとい

う雁行形態的発展の必要を次で強調さ

れている。赤松要

橋の伝統におけ

ーる経済政策の思想」

1橋論叢、1九六

〇・七。

(4)

小島清監修

『日本貿易の構造と発

展』至誠堂、i九七二、「総括」三Tr.

(Lf,)

KiyOShiKojima."TheJapanese

Experience

and

Attitudes

Toward

Trade

A

djustm

entJ.Helen

H

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es.

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the

]970S,

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H

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Press.(973.p.237ff.

。Reorgan山zation

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N

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Foreign

Economi

c

Poticy

for

the

t970S"

H

itotsubashi

Jouynalof

Econom

ics・.Feb.)97

3,pp.

)0-

I).

『世界貿易と多国籍企業』創

文社'l九七三、第八草、二七〇Ⅰ七

二・Tr。

(6)

赤松要

『金廃贋と同僚凝済』

1七

- 9 -

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四・Tr

o

(7)

日本語版

「不均衡発展

策」明大政経論叢'二九巻三号'

一九

六〇

・九。

(8)

このほかに英文で紹介されたもの

に'MasaoBabaandMasahiro

Ta・

temoto㌔Foreign

Trade

and

Econ?

micGrowthin

Japan

,"Ktein

an

d

Ohkaw

a,ed..EconomicGowthJJa・

p

aneseExperience

since

ikeMeiji

Era.Yat

eUniv.)968.pp.)72I73.

る。

(9)

『金廃貨と国際経済』

一六五-六

ペIO.I.r

(

10)

同、

〓ハ六

Th..

(

ll)

松浦茂沿

「わが国主要貿易港発展

形態の研究」

一橋論叢二

九六〇

・七。

「繊維産業の多様化雁行的発展」

『日

本貿易の構造と発展』第三章。

「雁行形態論」

「わが国繊維産業の

雁行形態論」川、桝、川、3:、大分大

学経済論集'

第二三巻

一九(七二)五

号、第二四巻(一九七二)'二・三

・四

合併号'第二五巻

(一九七三)三号'

第二六巻

(一九七四)二

二二合併号、

「雁行形態論とプ

ロダクトサイクル論

の綜合-

世界貿易の同質化と異質化

を考える」世界経済評論二

九七四・一。

(

12)

小島清

「鉄鋼業の製品多様化と輸

出」

『日本貿易の構造と発展』所収。

(13)

山沢逸平

「鉄鋼業の雁行形態的発

展」同右O.これは英訳されている0

jndustry

Growth

and

Foreign

T

rade:A

StudyofJapan一s

Steel

Industry."

HitotsubashiJournalof

Economics.Feb.)9721

(14)

逸平「

的発展の産業

間比較」

『日本貿易の構造と発展』所

収。産構審機械産業部会

・国際経済ワ

ーキンググループ中間報告書'

一九七

・五。吹田尚

一「産業機械工業の成

長過程-

雁行形態的発展の検証-」'

三菱経済研究所

・日本機械工業連合会

共編

『日本産業機械工業の成

造』

一九六三

・一〇。

(15)

毛馬内勇士

「雁行形態の国際比較

-

韓国工業の雁行形態的発展-

『日本貿易の構造と発展』所収。

「韓

国の産業発展の雁行形態」海外事情研

究所報告第五号

(l九七〇

・二).「工

業化と雁行形態論」海外事情'

一九七

一・一。

(16)

小島清

『世界経済と日本貿易』勤

草蕃房、

一九六二へ欝七茸

「日本貿易

の構造」で展開した

「輸出前線拡延の

理論」。

田中拓男

「アジア諸国における輸出

商品の多様化の諸問題」山本登編

『ア

ジア開発のメカニズムー

貿易

・援助

編-

アジア経済研究所、

一九七

t

二二。

(17)

おそら-私の旧稿

「日本経済の雁

行形態的発展と貿易の役割J1橋論叢、

一九五八・一一

(『日本貿易の構造と発

展』所収)が唯

iのものであろう.

(18)

小島漕「資本蓄積と国際分業」『赤

松要博士還暦記念論集

・経済政策と国

際貿易』春秋社tl九五八㌧四四八Th..

(19)

前輪

「資本蓄積と

国際

分業」。な

「世界経済の異質化と同質化」に対

.するコメンーとして次がある。小島清

「世界経済の構造変動とその理論-ド

赤松博士

「世界経済の異質

化」を基点として-

一橋論叢'

九六〇

・七

(赤松要名誉教授記念号)。

(小島清

『世界経済と日本貿易』勤等

書房'

一九六二、第二章に収

録)。こ

れは国際分業原理が労働対自然資源か

ら労働対資本賦存比率に移

ったことを

示し'世界経済の異質化と同質化が単

なる繰返しでな-、国際分業パターン

の基本的変化を伴

っていることを強調

している。今後の国際分業は、労働対

知識

・資本戚存比率によって規定され

ることになると見るべきであろうか。

(20)

山沢逸平

「経済発展と貿易構造」

一橋諭詣'1九七

I・二、四

1-二T(0

これは

「産業発展と外国貿易」

『日本

貿易の構造と発展』所収にまで考察が

発展されている。

(

21)

池間誠

「外国貿易と産業発展-

形態基本型のモデル化I

L

t橋

論叢'

一九七二・八。なお池間は雁行

形態的視点からオーストラリア経済の

分析を試みているO

Makoto

:kema.

ZmportDependenceintheAustral

ian

Economy,Ph.D.thesis

.Australian

National

University.Oct.)970.

(22)

義久

「産業

の雁

論」と産業

・貿易構造の変化'

『日本

貿易の構造と発展』所収。

(23)

私の手許にあるものだけ挙げても

次のように多数にのぼる。

藤野正三郎

『日本の景気循環』勤葦

書房、

一九六五、第Ⅳ編。

稲毛満春

『産業構造論』東洋経済新

報社'

一九七

1㌧二

T-三二Th.。

藤井陸

『世界の中の日本産

業』日本

地域開発センター'三二六

七郎と

興銀調査、

一五四号'

一九六九第四

号、五〇-二ThIO

機械経済研究

、第五号

一九七

1'三

-

四ThI.

「自

皐産業の雁行発展形態」日刊

自動畢新聞、

一九七二・六

・二二。

「わが国主要産業の雁行的発展」日

本経済新聞、

一九七四

・七

・一〇'和

光証券の広告。

- 10-

海外直接投資と雁行形態論

赤松先生のご-最近の関心が'金

廃貨問題とならんで海外投資問題に

集中していたことは間違いない。先

生の絶筆と思われるものが

「海外投

資と雁行形態論」世界経済評論

一九

七五年二月号巻頭言Tであることが

雄弁にそれを物語

っている。そして

先生のこの問題に対する構想は、ヴ

Page 8: URL - HERMES-IR | HOME...llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ 一赤松経済学の体系 わが赤松要博士の学問体系は広-かつ深い。ヴィジョン豊かな包容力の大きい

- 雁行 形態 論とプロ ダクトサ イクル論-

ァーノンの「プ

ロダクトサイクル論」

と'私の

「海外直接投資のアメ-カ

型と日本型」に刺激され、それらに

あるいは対抗Ltあるいは摂取Lt

超克しようとするものであ

ったよ-

に愚われる。

先生は

『金廃貨と国際経済』にお

いて'次のように述べられている。

「産業革新は生産要素の質的変化

ともいうべきもので、生産関数を著

し-変化せしめ、新たな商品や新た

な生産方法を作出すのである。--

歴史のときどきほおこる(先進工業国

での)産業革新が世界経済

構造を異

質化し、世界貿易を拡大して貿易自

(1・占

由化を促したのであ

った。

「世界経済の発展とともに生産要

素、と-に資本や技術の国際移動は

盛んとなるにいた

った。この資本や

技術は先進工業国から後進諸国

への

資本摘出として、後進諸国を工業化

し'またすでに工業国たる諸国の産

業構造を高度化したのである。かく

して導入された資本と誘発された革

新によ

って生産される商品の比較生

産費は大きく変動しいその国におい

て比較的劣位にあ

った産業が比較的

優位に変動した-する。免進の革新

国では比較生産費において従来比較

的優位にあ

った例えば繊維工業が、

重化学工業の革新によ

って優位を奪

われ、比較的劣位にたつにいたる。

資本を導入した後進国は第

i次産業

よ-も第二次産業、例えば繊維工業

において比較的優位を占めることも

リサHn

おこる。」

このモデルは私の日本型直接投資

の効果であるが、決してヴ

ァ-ノン

のプ

ロダクトサイクルの対象

とする

ものではない'ことを先ず注意して

おきたい。こう

いった質的相違を無

祝して先生は、先進国での技術革新

ロセスがプ

ロダクーサイクルであ

-'後進国での革新技術の(投資を通

ずる)摂取'

先進国

への追跡が雁行

形態的発展であるとし、両者の形態

的類同性を

容認しているo

ち、

最近ハ

ーバード大学

いて

Product

Cyc-e論とよばれ

る研究

がおこっ

ているOそれ

R.V

er・

non,"In

ternationalInvest

ment

andlnt

e

rnationa-Trade

t

hein

Product

Cycte"(Q

uarterly

Jou・

rnaiofEconomics,Mayt966)

を中心とするも

であ

るが'プ

ダクト

・サイクルというのは例え

アメ-カの革新商品が第

一段階

で輸出増大に向い(〟)、やがてそ

の増大傾向は外国

での輸入代替的

生産

(ぎ

の増加によ

って低下し'

遂にはそれが逆輸入

(〟)される

にいたる過程を説-

ものである。

この説は偶然ではあるが'私説に

おける革新商品がやがて他国に普

及し同質化をもたらし、革新国の

摘出は減退するにいたる過程と極

めて相似たるものである。筆者の

雁行的発展の理論は異質化、同質

化の理論とは別にわが国の生産貿

易の統計的研究から見出されたも

のであり'わが国は例えば綿製品

を始め輸入し

(〟)、こ

は国内

生産に代替さ

れ(nl)、やがて輸出

産業

(ズ)にま

で発展することを

論証

せるものであり'異質化'同

質化の理論と雁行形態の理論とは

前者は革新国より,後者は導灯国

よ-見られた逆の関係にあるが'

この二つは同じ-筆者の

一九三

(ey')

年代の着想である

雁行形態論とプ

ロダクトサイクル

諭の形態的媒同性を認め

い。また赤松経済学の中に世界経済

の異質化プ

ロセスとして'プ

ロダク

トサイクル論が包摂されていること

を強調するのもよい。しかし次のよ

うに、プ

ロダクトサイクル論に敬意

を表されることに対しては承服しか

ねるものがあるO-すなわち'

私に勇気を与え'雁行形態的研

究を

1つの研究テーマとして提案

するにいた

ったのは一九六五年頃

から

ハーバード大学のバーノン教

授を中心とする

「プ

ロダ

クト

・ラ

イフ

・サイクル」の研究がおこっ

てきたことである。プ

ロダクト

ライフ

・サイクルは先進国からみ

た惟行形態ということができ、雁

行形態ときわめて類似した産業構

造の変動形態の研究と思われる。

しかし、その類似にかかわらずプ

ロダクト

・ライ、フ

・サイクル論に

は雁行形態で十分究明されなか

た理論が展開されており'従

って

雁行形態論に'それをと-入れる

ことは有益であ-、この研究の発

(A

展に寄与しうるであろ

- ll-

Page 9: URL - HERMES-IR | HOME...llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ 一赤松経済学の体系 わが赤松要博士の学問体系は広-かつ深い。ヴィジョン豊かな包容力の大きい

実は雁行形態論とプ

ロダクトサイ

クル論は形態的類似にかかわらず、

理論体系は全-異なる。木に竹をつ

ぐわけにはいかないのであるo

Hプ

ロダクトサイクル論は'

一つ

一つの新製品の開発創造.成長、成

熟に関する本質的に

一商品分析であ

る。それ故に企業論的-クロ理論に

rLr・)

すぎ

。・雁行形態論は、その基本

形態

(生産の能率化プロセス)

はやは

-

一商品分析であ-、プ

ロダクトサ

イクル諭と形態的類似性をもつ。だ

が雁行形態論は

その副次形態

(生産

の多様化・高度化プロセス)を併せも

ってお-'それは二商品の比較優位

パダーンおよびその変動にもとづい

て国際分業パターンとその変化がき

まることを基本としているマクロ的

国際分業諭である。この意味で、赤

松先生も指摘されたように'雁行形

態論の中にプロダクトサイクル論を

包摂することはできるが'後者によ

って雁行形態論がとって代られるわ

けではない。

同じことを繰返すことになるが、

ロダクトサイクル論は

1商品分析

であって、新製品が創

される丘

地'成長

・成熟に伴う生産立地の移

動を究明する

「立地論」であ-'比

較生産費とか国際分業を考慮にいれ

ていない。ヴァ-ノンが次のように

って

いる

ことからも

明らか

であ

る。すなわちプロダクトサイクル論

「比較生産費説を余-重視せず'

むしろ貿易パターンに影響を及ぼす

技術革新のタイ-ング'規模経済の

効果'ならびに無知と不確実性の役

XFi<X

割を強調するものであ

。」これ

対し雁行形態論の全体系は本来'「世

界経済の異質化と同質化」という国

際分業の動態論なのであり'またそ

の方向にこそ展開されるべきもので

あると'私は確信している。

ログァIノンを-1ダーとするハ

ーバード多国籍企業プ

ロジェクトが

研究の対象としているのは'石油な

e汁tractiveventuresのほか、工

業品では、石油

化学、合成物質の諸

細別品目へ電子工業産業'合成結晶

産業の諸分野、プラス≠

ック産業、

LL-)

各種耐久消費財産業など'いずれも

細か-分類された先端技術の花形商

品という感じが強い。これに比べて

雁行形態論の対象になったのは'農

業、繊維工業、鉄鋼業'機械工業'

化学工業などといった大分類の基幹

産業

(keyindustries)ないし

一国経

済発展にと

っての

必需産業(essentia-

industries)である。

プロダク小サイクル諭の対象とな

った先端技術の花形商品の場合には

製品差別化

(productdifEerentiaton)

を当然伴う。

したがって独占ないし

寡占に限る。ヴ

ァ-ノンは最近の別

(qい)

の論

で'最初に技術的寡占

inn?

vation・basedotigopotyが成立し

'

いで規

模経

済が重要な役割を演ず

る成熟寡占

matureo-igopo-yに進

み'最後にカルテ

ルを結ぶ

などして

あくまで老熟寡占

Senescento-ig?

polyとして生き残

ろうとす

ること

を明らかにしている。この方が最初.

のプ

ロダクトサイクル論文よりもヴ

ァーノンの企図をよく表している。

彼はあくまでプロ多国籍企業の立場

であ-'巨大寡占企業の行動をすべ

て正当化しようとしている。プ

ロダ

クトサイクル諭は実は寡占企業正当

化論なのであるO

周知のとお-、プロダクトサイク

ル論では'技術独占が失われ腰準化

された商品に移ると要素比率

理論

(へクシャー・オ-Iン命題)に立脚す

る伝統的国際分業諭の法則に従うよ

うになるという

(技術格差貿易から低

賃金貿易への紀換)O理論的

には

そう

いえな-もないが'事実上'寡占的

行動の対象として生み出された花形

商品はあくまで寡占的商品として生

き残る。プロダクトサイクルは伝統

的国際分業論に連結することはない

のである。このことは先にあげたヴ

ァーノンの新論文

から

明らかで

る。伝

統的国際分業論'要素比率

(へ

クシャー・オ-1ン)命題に従

って'

かつての日本や現在の開発途上国の

工業化を解明しようとい-のが雁行

形態論である。それは寡占的行動を

ジャスティファイするプ

ロダクトサ

イクル論とは全く異質である。

日'開発途上国にとって繊維産業は

既に偏

ったが'銑鋼

一貫の大製鉄工

場が運営できるほどの発展段階に達

しうるかどうかが重大関心事であっ

て、あれや

これやの先端

花形

商品

(それは或る意味

でnon・essentia】goods)

をむ

つかど

うか

は'

どうで

よいこ

ー 12-

Page 10: URL - HERMES-IR | HOME...llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ 一赤松経済学の体系 わが赤松要博士の学問体系は広-かつ深い。ヴィジョン豊かな包容力の大きい

- 雁行 形態 論とプロダクトサ イクル論-

とであるばか-か'バランスのとれ

た国民経済的発展にとって撹乱でさ

えありえよう.

日プ

ロダクトサイクル諭は海外直

接投資進出を解明できるものとして

案出されたLtその点にメ-ットが

あるといわれる。私は

そう

[1・J

。アメ-カで開発された新製品は

先ず技術独占的地位を享受する。大

規模生産に移されコストが低下する

と摘出に進出する。しかしやがてこ

の輸出地位

に対

る脅威

export

threatが生じ輸出はスローダウンす

。相手国における関税、輸入数量

制限、国内生産の開始

・増大、他の

多国籍企業の進出などすべてが輸出

をおびやかす脅威だとされる。か-

て海外市場を防衛するために直接投

資進出するt

という

のである。だ

が'この

「輸出に対する脅威」論は

盾接投資を決して正当化することに

(川凹

はならな

。関税や高い輸送費の存

在は

「脅威説」でな-ても説明でき

る正当な理由だ。この説に従えばア

メ-カのすべての輸出可能産業は海

外壇接投資進出すべきであ-'アメ

-カの雇用機会は輸出され'アメ-

カ経済は空洞化する。相手国の国民

資本による庄産は

「脅威」であ-、

それを許さず'恵接投資し市場を防

衛するというのは'自らの寡占的地

位の拡大、確保を目的とするからに

列ならない。巨大な寡占的企業の行

動の正当化にすぎない。国民経済的

視点'ないし自国と相手国双方の国

民経済的発展、つま-国際経済的視

点'したがって比較生産費視点は全

く無視されている。か-に標準化商

品の段階に達したとしても、そして

相手国の労働

・資本相対価格が割安

であっても、新製品が他商品にくら

べてよ-資本集約的である限-'こ

の新製品はアメリカで割安に生産さ

れる

(それに規模経済の利益が加わる)

ので、輸出し続けうるはずであ-'

直接投資進出すべきではあるまい.

伝統的国際分業理論からはそう言え

l‥.-Aる

。実は伝統的国際分業理論に立脚

して、比較優位にある先端新製品か

ら企業進出する海外直接投資を'逆

貿易志向型=アメ-カ型と批判し、

比較劣位化産

業から順次開発途上国

に移植してい-貿易志向型=日本型

海外直接投資の理論を樹立し

ようと

rMi3

いうCが、私の試みであ

o

それ

桁行形態論に内在する論理に立脚す

るものであ-、その延長線上にある。

日本型

(貿易志向的)海外直接投資

というのはこうである。資本蓄積、

経済成長が進むにつれ労働力不足、

賃金高騰に見舞われてきた。繊維産

業など労働集約産業は次第に比較優

位を弱め、比較劣位化しっつある。

こうい-比較劣位化産業から順次、

労働力豊富な労働資本相対価格の割

安な開発途上国に直接投資

Lt技術と産業を移植してい-べき

である.こうすれば第

1に、開発途

上国に適した産業が順次植えつけら

れ、その工業化、産業構造の高度化

が促進される。第二に'先進投資国

側は比較劣位化した労働集約産業を

縮小し、その開放途上国からの輸入

を増すという構造調整をやらねばな

らない。と同時に中間財'資本財と

いったより資本集約的ないし知識集

約的産業を拡大し'それ

に高

度化

Ltその輸出を増すことができるd

か-して第三に'先進国も開発途上

国も、比較生産費の変動に沿

った直

接投資を通じてへともに産業博道を

高度化LT新しいパターンの貿易を

創出し調和的に拡大する(南北貿易の

再編成)ことができるのである。

ここで双方国の構造調整というプ

ロセスが導入されたことに注目せね

ばならない。比較劣位化産業から進

出する日本型では'垣

投資が構造

調整の始発者とな-'投資国'受資

国双方での構造調整を調和的に促進

させるのである。ところが比較優位

のトップにある先端新製品産業から

寡占的に進出するアメリカ型

(逆貿

易志向的)海外直接投資においては'-

lMいL

㈲投資は貿易にとって代る

で、

投資国アメ-カ経済を空

し、伽開発途上国のバラン.スのとれ

た国

民経済発展とは無関係な、時に

はディスタービングなnOn・eSSentia】

商品生産のエンクレープを築-こと

になりがらである。

ここで赤松先生が

「不等価交換」

問題において、次の指摘をされてい

【‖▲1)

とに注目したい。つま-イギ-

スの産業革命'それによる機械紡績

が、インドの土着綿糸布

(重需要品)

生産を破壊し'竹細工のような軽需

要品の生産に

「低転換」ぎせたとい

- 13-

Page 11: URL - HERMES-IR | HOME...llJJJIEIL川lHJJlllHlLuLLEll"LLHlLlllJHL‖JLllJIJ川HILuJLIJlllJIL"lllJlluLBl"llHE=LEI日EILLl日日LIJLLLLほ 一赤松経済学の体系 わが赤松要博士の学問体系は広-かつ深い。ヴィジョン豊かな包容力の大きい

うごとき矛盾が生じうるというので

ある。

アメ-カによる'余-にも早

い、しかも余-にも高

い技術の革新

は'開発途上国にエッセンシャル産

業を植え

つけるどころか既存のもの

を破壊し'代-にノン

・エッセンシ

ャル商品生産

のエンクレイブを

つ-

ると

いう

「低転換」を

かねな

い。比較優位パターンを無祝した'

個別企業の利益のみを追求する

「ア

(盟

メ-カ型」直接投資だからで

海外直接投資論とか多国籍企業論

のカバーすべき問題領域は広

い。先

進国相互間或は開発途上国相互間

双方通行的直接投資については'バ

ワティは

mutua〓nter・penetra・

(川凶

tionの理論を提唱してい

。こ

れは

lけ〓-

のいう

「合意的国際分

を多国

籍企業によ

って担わせるという構想

と同じである。だがいちばん欠けて

いるのは先進国から開発途上国

への

一万的値接投資を解明する理論であ

る。この欠点を補

ったものが、雁行

形態論の延長線上に開花した

「日本

型海外直接投資論」に他ならないの

である。

L'_J=)

私の展開のほかに、山沢逸平によ

るやや異な

サた海外直接投資論が出

(盟

されているし、斎藤

開発途上国

への技術移転の問題について'田中

闇n

輸出と投資進出

の関係

につい

ての実証分析において'それぞれ開

拓者的労作を発表している。いずれ

も惟行形態論の強

い影響をうけてい

るものである。

産業発展の雁行形態を適用し'そ

れを拡充、深化す

べき領域はなお多

(nl‖払い

偉大なる師赤松先生は惜しくも

逝かれたが、雁行形態論は永遠に世

界に残るであろう。そして多彩な花

を開くであろう。

(1)

赤松要

『金廃貨と国際経済』東洋

経済新報社、

1九七四、

1五九,T(.

(2)

同、

〓ハ○叩。

(3)

同、

l二

五-六郎.注.

(4)

同、

I五六・ThI。

(5)

小島清

『世界貿易と多国籍企業』

創文社、

一九七三㌧第三章、八四-九

ITh・参照.

(6)

RaymondVernon."(nternational

hvestmentandlnternationalTrade

in

the

Product

Cycte."Quar

terly

JournalofEconomomics.Mayt966.

p.)91.

(7)

LouisT.Wells,

JrI,ed.一The

ProductLifleCyceEandA,lternatio・

mlTrade.fTarvardUniv..1972.,Part

),GIC,Hufbauer,SyntheticMaterials

and

the

Theoryof

International

Trade,London.)966.参照。

(8)

Ray

mondVernon."The

Loca・

tionofEcohomic

Activity,"

John

H.Dunning.ed..EconomicAnalysis

andMultinationalEnterprise.A])en

andUniwin,London.

)974.

(9)

小島清

「プロダクトサイクルと海

外直接投資I

アメ-カ型対日本型の

再検討-

一橋大学経済学研究

一八

(一九七四)、二八

一Th.0

(10)

Jagdish

N.Bhagwati.

.tBook

RevieuJJRaymondVernon.Soverei・

gnty

at

Bay‥The

Mu-tinationa-

SpreadofU.SIEnterprises.)97tJ'

JournalofZnternaiionalEconomics.

September1972,pp.456I57.参照.

この書評は、ヴァ-ノンの本は多くの

点で

irritatiロgandinadequateだと

いう文句で始まる、するどい批判に満

ちている。注目すべきである。

(ll)

この点を証明したのが、前掲、小

島清

『世界貿易と多国籍企業』第三章

「輸入代替・輸出化成功の条件-

雁行

形態蘭とプロダクトサイクル論1

である。

(12)

初期のものは小島清

『世界貿易と

多国籍企業』第四・五二ハ軍に収録さ

れている。この本について赤松先生よ

-私信で、

「多国籍企業とつ-書物の

先駆的なものであり'それが以外の根

底的理論から発足していることをみな

が感得することになろう」との評価を

挽いた.ブルッキングス研究所主催の

メイドンヘッド会議(一九七三年四月)

に提出した論文、。AMacroeconomic

ApproachtoForeignDirecttnvest・

ment."a.totsuboshiJournalof

Eco・

nomics.June19731(邦訳

「海外直接

投資

のマクロ経済理論」経済評論t

I

九七三年五・六月号が高く評価され、

今や

「日本型海外直接投資論」は世界

に周知され、多くの反響を呼

る。これに対し赤松先生からやはり次

のコメントを頂いている。

「日本型直

接投贋については'貴論には高度異質

化が順調に進行するという予測ないし

前提がある。順調に進めば衆論の通-

になると思う。そしてそれはバーノン

のプロダクトサイクルでは基礎づけら

れず、雁行形態論によらねはならぬと

思う。」まさにその通-である。

入江猪太郎教授から次のような評価

をうけていることを付記し

ておきた

い。

「外国企業の自国内生産をも含ん

だ国際経済理論の構図は、海外直接投

資を熱心にと-あげるキンドルバーガ

ーにも、ジョンソンにも見出されない

。寡聞の私の知-えた範囲内では'欧

米では'わずかに'プレームスの

一論

文にすぎない(H.Brems,"A

Growth

ModeloflnternationatDirect

Znve・

stment,"AmericanE

cbnomicReview.

June1970)Oむしろこういった広義の

国際経済理

の構築は'日本の赤松-

小島理論の展開に求められる。」入江

猪太郎編

『多国籍企業-

十二人の経

- 14-

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- 雁行形態論とプロダクトサイクル論-

済学者がえが

く未来像-

』ダイヤモ

ンド社T

l九

七四、三T{o

(13)

小島措

「海外投

資と貿

易-

代替

か補完かー

」世界経済評論'

一九七

・一二。

(14)

赤松要

『金廃貨と国際経済』第八

「不等価交換と南北問題」と-に二

〇七

-九叩。

(15)

ラジオ、

冠卓などの

部品生産やア

センブリのため

アメ-カの直接投資が

東南アジアに行わ

れてきたが、アメ-

カ企業は本国での

約人化

(ロボットに

よる)生産によ

って捲き返

-、直接投資を引揚げ

つつあると聞-0

それはアメリカ企業

の利益にはなろう

が'せっかく生み出さ

れた開発途上国

の多くの雇用機会を奪

ってしまう。そ

れでよいのであろうか。技

術進歩が間

った方向に向けられて

いるのではあ

るまいか。赤松先生-こ

ういった憂慮

を表明されている。

『金

廃貨と国際経

済』二

一二桝{'J

1七-八T{o

(16)

前掲バグ

ティの書評、

四七-

1\.(-

0

ノ.,ン

(

17

)

Kiyoshi