Title 日本の政府開発援助 : 援助供与政策と途上国への影響(1)...

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Title 日本の政府開発援助 : 援助供与政策と途上国への影響(1) Author(s) 星野, 英一 Citation 琉大法学(52): 458-425 Issue Date 1994-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/533 Rights

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Title 日本の政府開発援助 : 援助供与政策と途上国への影響(1)

Author(s) 星野, 英一

Citation 琉大法学(52): 458-425

Issue Date 1994-03

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/533

Rights

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458

日本の政府開発援助

一援助供与政策と途上国への影響(1)-

星野英

はじめに

1.問題の設定

2.日本の対外経済協力

3.援助供与の目的(以上本号)

4.途上国経済への影響

5.援助供与の目的と途上国経済への影響

おわりに

はじめに

10月5日、例年通り「国際協力の日」にちなんで、外務省は1993年版『我が

国の政府開発援助』を発表した。「人々の支持と参加を得た援助」との副題を

付けた「ODA白書」によれば、92年度の政府開発援助(ODA)の実績は、

前年比2.7%増の113億3200万ドルと、米国を抑えて2年連続で世界一であっ

た(図1)。白書は、93年6月に決定した第5次中期目標での「今後5年間に

700-750億ドルのODAを実施する」(過去5年間の実績の4-5割程度の増

加)との公約に従って、今後も援助額を拡大するとともに、ODAの対

GNP比の引き上げや、無償資金協力・技術協力などの贈与比率の向上、

ODAの質の充実を提言している(表1)。

「ODA白書」は、また、先進諸国の支援がロシア・東欧に傾き、途上国

離れを起こしていることを指摘している。そのような流れの中での日本の途

(21)

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457 日本の政府開発援助(星野英 )

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琉大法学第52号(1994) 456

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455 日本の政府開発援助(星野英一)

上図援助拡大に関して、自番は 「国際的地位に見合った貫敵は当然の嚢務」

であり、援助は日本に対する 「国際社会の倍新を増進させ、国益に資する」

として、資金提供者である国民の幅広い理解を求めている。援助の使われ方

(マルコス 「疑惑」・「やりっぱなし」の援助)や被援助国に与える影響 (自然

環境破壊 ・先住民の生活環境破壊)など様々な問題が指摘されている中で、

はたして 「国民の幅広い理解」を得ることはできるのだろうか。

この点に関 して、10月 6日く国際協力の日)の2つの新聞社説は対照的だ。

読売新聞の社説は、「稔理府の調査では 『援助を墳痩的に進めるべきだJが91

年から92年にかけて41%から35%へ下がり、『なるべく減らすべきだ』が8%

から11%に増えた。/自書は 『国内の生活項境の改善を優先すべきだという

考えが国民にある』と分析する。 不況で援助どころではなくなったという人

や、援助を通 じて途上国を西側に引きつけておく意魂が冷戦終結で低下 した

とみる人もあろう。国際的には対外協力の要請が強まっているのに、国内で

は援助増大に逆風が吹き出している」 と、援助に対する国民の 「関心の低下」

に懸念を表明している。

読売社説は、続けて、「だが、日本は財政が苦しくても着実に援助を拡大 し

たい。国際社会の安定なくして日本の発展もないからだ。 さらに援助は日本

ができる最も効率的な国際協力である。しかも援助は日本の外交の最重要の

手段、特に対途上国ではそうだ。/国民は援助政策に対する理解を深めてい

く必要がある.政府も国民に援助の目的を明示し、援助の効果を評価、公表

する努力を怠ってはならない」 と、現在の日本の援助政策をおおむね評価す

る方向で、これに対する 「国民の幅広い理解」を得るための広報活動の充実

を提言している。

一方、毎日新聞の社説は、前日から東京で姶まった7フリ力闘発会講にお

ける細川首相のあいさつに触れながら、「私たちは、ODA白書が発表される

(24)

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琉大法学 第52号(1994) 454

たびに援助体質の改書を求め、人材賓戊を急げ、と訴えてきた。/ …良き友

人関係…を築くためにも、最の拡大ばかりを追うのではなく、質の向上に努

めてもらいたい.Jと、現在の日本の援助政策に欠けているものを指摘 し、「国

民の幅広い理解」を得るためには、白書の言う質の事実に加えて、「援助の内

容そのものの点検と効果の測定」や 「事前調査の不十分やフォローアップ不

足」の解消など、質の向上に力を注がなければならないと主張 している。読

売社説の紹介した国民の 「関心の低下」は、むしろ援助に対する国民の 「評

価の変化」である、という立場だろう。

これ らの社説を含めて、10月1日から7日の1週間の新聞報道を読んだだ

けでも、世界全体での援助資金の需要が拡大していることを実感せずにはい

られない。「米対外援助法が成立/旧ソ連諸国へ25億 ドル」(共同通信、10月 1

日)、「地域開発援助で合意/ASEAN4国と日本」-カンボジア支援 (共同

通信、10月 1日)、「5年で計20億ドルの援助約束/中東和平支援会議」(共同

通信、10月2日)、「カンボジア向け体制移行融資を承認-IMF」(時事通信、

10月5日)、「アフリカ開発会議で細川首相が基調演説」(毎日新聞、10月5日)、

「中央ア4国と経済委」-カザフスタン、ウズベキスタンなど四カ国との民間

経済交流の窓口の設立 (朝日新聞、10月6日)、「IMFがベ トナム融資再開

/総領2億2300万ドル」(共同通信、10月7日)、といった具合だ。

また、畳的拡大もさることながら、市場捷済への移行や和平以後の再建支

援など 「援助目的の多様化という質的変化が起きている」(読売新聞、社説、

10月6日)ことにも気付かされる。OECDの開発援助委員会 (DAC)に

おいて、ODAの概念について新たな検討が加えられているのも、こうした

変化に関わっている。このように、畳の拡大、質の改著、対象地域の増加、

使用目的の多様化、ODA概念の再検討、と新たな転換点に立っ一ている日本

の政府開発援助に関して、本稿では、次節で述べるような援助供与の要因と

(25)

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453 日本の牧村開発援助(星野英一・)

援助効果とに関する2つの問題を数定し,実証的な分析を行なうことにする。

以下、第 2節では、日本の対外経済協力に関するこれまでの研究を概観する

ことで、本稿における研究課題の設定が、日本の援助研究に対 して持つ意疎

を明らかにする。第3節は、援助供与国政府の政策目的に関わる分析に当て、

第 4節では、途上国の経済成長と分配の平等に及ぼす影響の分析を行なう。

第 5節では、これらの分析を踏まえて、両者が 「なぜ援助なのか ?」という

問いを核として、どのように結びついているのかを議論し、最後に、残され

た課題を整理することで結論に代える。

1.問題の設定:

先進国から発展途上国へのカネ ・モノ.ヒト.技術などの移転は、一般に

「経済協力」あるいは 「援助」と呼ばれる。 そのうち政府 レベルのもので、途

上国の発展に寄与することを主な日的とし、かつ供与条件の膚やかなものが

「政府開発援助」であるoODAは二国間のも.Oと国際機関に対するものとに

大別されるが、二国間援助はさらに贈与 (技術協力・無償資金協力)と借款

(有依資金協力)に、国際機関援助は贈与 ・貸付 ・出資尊に分析される。以下、

本稿で扱うのはこの政府開発援助である。

本稿の目的は、対外経済協力をめぐる理論的諸問題のうち、

(1)援助供与国政府の政策目的は経済援助の地理的配分の決定に影響を与

えているのか、

(2)供与された援助は途上国の経済成長と分配の平等にどのような貢献を

するのか、

に焦点を当て、日本の政府開発援助を例にとって、実証的な分析を行なうこ

とである。

このような研究課題の設定の背景には、これまでの経済援助研究について

(26)

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琉大法学 第52号(1994) 452

の以下のような認識がある。

(1)ODAに関する従来の政治経済学的研究には、大別 して、供与国側の

援助の日的 ・動椀に注目する主として政治学的研究と、援助受取国に

対する援助の彫響 ・結果に関する経済学的分析とがある.両者の問題

意識は相互に関連しており、とりわけ 「なぜ援助なのか ?」という問

いをその核として結びっいている。 にもかかわらず、これを結び付け

ようとする試みは、襲証研究のレベルでは、ほとんど行なわれてこな

かった。

(2)援助供与の目的 ・意図について実証的に分析する場合、供与国の国

益追求と途上国の発展に寄与することとを別々に扱うのではなく、両

者を一つの分析枠組の中で姐上に載せるべきである。 本稿では、従来

の二分法を路盤した 「国益モデル」と 「ニーズモデル」だけでなく、

途上国の発展を通して供与国の国益が満たされる場合を想定 した 「相

互依存モデル」をこれらに加えて検討する。

(3)r援助が途上国の経済成長と分配の平等になしうる貢献」に関する一

般的なマクロ分析や、「合理的行為者の公的な消費 ・投資行動と供与さ

れた援助や国内の課税との関連」を分析するモデルは、これまでもあっ

た。しかし、これらの成果を援助供与に関する政治学的研究と結び付

けようとする試みは見られなかった。

(4)これまでの日本の対外経済協力に関する研究には、上述のような体

系的な研究が見られなかった。

Riddell(1987)は 『対外援助再考』の中で、政府や援助政策の支持者によ

る道義的援助静、つまり豊かな国の政府は貧しい国に対 し援助を供与する人

道主義的な義務を持つとする議論に注目し、この種の援助諭が1950年代の後

期から政府の公式発言のなかに何度も繰り返し現われてきており、 しかもそ

(27)

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451 8本の政府開発援助(星野英-・・)

れが多くの場合なんの説明もなしに主張されていることを指摘 し、これを

「疑問視されないコンセンサス」 と呼んでいる (星野、1991)01992年6月30

日の閣議決定 「政府開発援助大綱 (ODA大桐)」 も、「世界の大多数を占め

る開発途上国においては、今なお多数の人々が飢餓と貧軌 こ苦しんでおり、

国際社会は、人道的見地からこれを看過することはできない」と、日本の

ODAの基本理念の第1に人道主義を掲げている。

この道義的援助諭に関して、Riddellは、援助執行機関や援助政策支持者が

右派・左派の 「反援助」静に含まれる道義的 ・倫理的立場を十分に吟味 しな

いままこの人道主義的主張を続けているために、最近の援助をめぐる論争が

表面的で 「議論のための議論」になってしまっているのではないか、さらに、

右派の 「自由放任主義」経済学の援助批判 (開発過程への介入に対する批判)

の政策決定者に与える彫響がとりわけ1980年代になって高まってきたのもそ

のためではないのか、という判断から、援助論争の根底にある倫理的 ・理論

的諸間借を市点検し、援助支持 ・反援助のそれぞれの諌論を体系的に再考す

る必要を強く主張した。Riddellが目にしているアメリカでの援助論争と、 日

本における援助をめぐる議静のあり方は、必ずしも同じものではないが、先

に言及した国民の 「関心の低下」 ないしは 「評価の変化」 を、 こうした

Riddenの主張との閑適で捉えかえしてみてもよいかもしれないO

ともあれ、Riddellは、道義的援助諭に対する左右両派からの批判のうち

「現在のやり方では、あるいはどのようなやり方であろうと、援助は発展をも

たらすことができない」という主張の内容を検討し、こうした議論は、実は、

人道主義的援助論の批判であるよりは現行の援助のあり方に対する批判であ

ると結論づける。したがって、これらの議論が正しいかどうかは、これまで

援助が達成 してきたことは何か、現在の発展戦時の下で援助がなしうること

は何か、そしてどのような条件下でなら援助が望ましい発展を促進すること

(28)

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琉大法学 第52号(1994) 450

ができるのかについての理論的 ・実証的検討の結果如何であると主張するの

である。

本稿がRiddellのこの大きな問題提起に答えている、と主張 したいのではな

い.本節の初めに限定したように、本稿が扱っているのはRiddellの問いの-

部分である。 しかし、本稿は、Riddellが扱っていない問題にもチャレンジし

ている。それは、援助の日的 ・動機に注目する政治学的研究の成果を受け継

ごうとしている点である。このチャレンジは、Riddellの問題捉起と第 3節の

実証分析の結論とを 「なぜ援助なのか ?」という問いを核にして結び付けよ

うとする試みである、と言ってもよい。

以上、本稿における問題の設定とその背景を確認した上で、第 8-4節の

実証的分析にはいる前に、次節において日本の援助に関する従来の研究を概

観しておきたい。

2.日本の対外経済協力

まず、引用から始めよう。

この事業に対する報道は=-・①この事菜を実際上とりしきっているのは

日本のコンサルタンツであり、③円借款はひもなし借款であるが、コン

サルタンツが日本の工業規格 (JIS)を使ったり、日本のブランドを

指定するために、日本の賛材しか納入できず、したがって資金は日本に

還流する、③工業団地に入居する企業の大多数は日系企業であり、事実

上ODAを使用した日本企業のための事業である、と結んでいる。--・

私は本件がほぼスタートしたときからかかわってきたが--最初にタイ

政府から相談を受けたのは世界銀行であって、日本ではない。その後-・-

わが国政府に要請があり、専門家が派過され、調査が国際協力事業団に

よって行なわれたものであり、日本の企業が 「画策」する余地などあり

得ないように思われる。(笹沼、1991、42-43貢)

(29)

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449 日本の政府開発援助(星野英一・)

住民移転を伴うプロジェクトの場合には、移転川地の確保--電気、

水道、道路はもちろんのこと、漁民にとっては死活問題の港湾施設等イ

ンフラ盤騰が最低限必要である。しかし、その点での [政府側の]対応

が必ずしも十分ではないというのが率直な印象である。 ---OECF側

にも問題はあった。工業団地および商業港建設地域で直接的に生 じた住

民移転問題出はなかったためでもあろうか、やはりここでも実施機関の

人員の不足の結果が情報の伝達を遅らせたといえよう。---1989年10月に盤僻を終えた 「環境のためのOECFガイドライン」--・・に従えば今

後はレムチャパン村で起きているような事態は、事前に避けられること

になろう。-・-繰り返しになるが、住民移転問題がこじれているといっ

て、レムチャパン商業港 ・工業団地のメリットが失われるというわけで

はまったくない。・--タイの経済成長が急速に進む中で、露呈した壮湾・

道路等のインフラの乗鞍僻、バンコク周辺への一極集中を解決する手料

かりとなると同時に、すべてが完成すれば三万人の雇用創出効果をもた

らすのである. っまりタイが輸出志向型工業国に転換する-助として円

借款は用いられたということになろう。-- 「道路、鉄道からダム、送

水管にまで日本の資金が投入されている」 という点だけを強調すること

は、このプロジェクト全体の評価を見誤ることになる。

(渡辺 ・草野、1991、129-132貢)

東部臨海開発計画では、工業化により雇用機会の創出を図ることが目

的の一つになっている。しかし、漁業や農業より労働集約型の工場労働

者になることのほうをよしとする発想は、レムチャバン村の人びとの暮

らしを見てもでてこない。--政府と企業が進めた住民参加を許さない

日タイ共同プロジェクトに対し、タイの研究者は-・- 「経済のための開

発から人間のための開発へ」と訴える。/村人たちは、「私たちは国の発

展のために必要な商業港や工業団地の建設に反対しているわけではない。

ただ自分が生まれ育った土地を大切に守っていきたいだけだ」と考えて

いる。--・開発は、発展という名のもとでつつましい民の生活を奪って

いく。その一方で、一部の人間に莫大な利益をもたらそうとしている0

援助という名のもとで開先利益や企業活動をもくろむ日本人は、村人た

ちの 「誰のための援助か」という問いに、どう答えればよいのだろうか。

(佐竹、1992、190頁)

(30)

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琉大法学 第52号(1994) 448

長い引用になってしまったが、これらは、ダイの東部臨海開発計画の一部

であるレムチャバン商業港 ・工業団地のプロジェクトへの日本のODAの閉

わり方に対する様々な評価である。 「どれが正しいのか ?」の議給に立ち入る

ことはしない (またその準備もない)が、「なぜ同じプロジェクトに対する評

価がこうも遭うのか?」については別の場所で論じたいと考えている (星野、

近刊)。さしあたり、ここでこれらの引用によって明らかにしたかったことは、

日本の政府開発援助についての評価もこれと同様のかなりの振れ幅を持って

いる、ということである。

草野厚は、日本の援助に関して 「わかりやすくしかも客観的に沓かれた文

献がほとんどない.J(渡辺 ・草野、1991、108貢)として、学生や一般の人々

向けの文献を3つのグループに分類している。つまり、(1)政府の自書の頬、

例えば外務省 『我が国の政府開発援助Jや通産省 『経済協力の現状と閉居点』、

(2)新聞記者によるもの、例えば朝日の 『援助途上国日本』や毎日の 『国際

援助ビジネス』、(3)援助に関心を持つ学者 ・市民グループによるもの、例

えば想見一夫 『ODA援助の現実』や村井膏故地 『無安住援助ODA大国ニッ

ポン』、である。また、草野は、(4)研究書として、五十嵐武士縮 『日本の

ODAと国際秩序』などがあることを指摘 している。 さらに、村井膏敬

(1992)が 「多数の利益のためには少数の犠牲はやむをえないとする立場から

のODA擁准諭」と呼んでいる、渡辺利夫 ・草野厚 『日本のODAをどうす

るか』や笹沼充弘 『ODA援助批判を考える』を、5番 目のグループとして

もよいかもしれない。

「ODA大綱」では、これまで日本の援助の基本理念とされてきた 「人道

的考慮」と国際社会における 「相互依存性の認識」に加えて、「環境の保全」

を 「基本理念」 として掲げている。 しか し、(2)や (3)のような日本の援

助に批判的な文献は、これまでの日本の援助について、環境破壊、住民移転

(31)

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447 日本の政府開発援助(星野英一・・)

などによる人権の侵害、政治家と企業との癒着による&.済的利益の追求、冷

戦下のアメリカの世界戦時を助ける 「粗略援助」など、数多くの問題点を指

摘している。贈与の割合が少ないことやアジア地域を偏重 しているとの批判

もあり、援助が輸出促進や天然資源の安定確保などの経済的な国益を守るた

めの道具として使われてきた、との見解もある (樋口、1991;松井、1983;

山本、1988)0(5)の文献は、これらのODA批判に対する反論である。ま

た、「ODA大綱」の基本理念に 「環境の保全」が加えられたことは、援助が

環境破壊を助長しているとの批判に対する反応である、と考えることもでき

る。

一方、稲田十一 (1990)は日本のODAに関する研究における政治学的ア

プローチ、つまり草野のいう (4)の部分のうち政治学的なものを、以下の

ように3通りに分煩している。 すなわち、(a)歴史的アプローチ、例え畔、60

年代の対アジア援助の政治過程を分析 したMasashiNishihara(1976)や西

和夫 (1970)らの仕事、(ち)政策決定論アプローチ、例えば、官僚の役割や

議会 ・企業の関与の仕方を分析した後藤一美 (1978)やAlanRix(1980)ら

の菜鱗、(C)国際政治経済論のアプローチ、例えば、「戦喝援助」についての(1)

DenniSYaButOmO (1986)の研究、であるo

また、経済学的アプローチに関して、小浜裕久は、「ODAに関して、経済

的に説明した文献がほとんどない--日本の援助に関する分析は、これまで

にもかなりの蓄帝があるが、政策志向的な優れた分析のかなりの部分が内部

資料という形のために、一般的にはみることがむずかしい」(1992、2-3貢)

と述べている。この点に関 しては、第 4節でふれることにする (例えば、

KhanandHoShino、1992).

このように、日本のODAに関する従来の研究は、様々な評価と様々な研

究視角の交差の中で、多様な間商領域を作り出している。 しか し、前節で握

(32)

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琉大法苧 節52号(1994) 446

起した木桶のような問題の設定は他にあまり例がない。第 3節および第 4節

の冒頭で紹介する日本以外の供与国に関する研究の蓄積を生かそうとする試

みがもっとあって良いのではないだろうか。本稿は、そうした試みの 「はじ

めの一歩」である。

3.援助供与の目的

日 )人道主義 ・国益主義 ・相互利益

本節で叔うのは 「援助供与国政府の政策目的は経済援助の地理的配分の決

定に影響を与えているのか?」という問いである。別の表現をするなら、「な

ぜ政府は援助をしているのか、あるいはしてきたのか ?」ということだ。こ

の問いに対する典型的な答として,人道主義と国益主義のそれがある。

人道主義に着目する見カによれば、供与国は国内の福祉増進と同様の乗務

を国際社会においても認識し、その原理の適用として援助供与を行なってい

る (Pear80n、1969)のである。 これに対 し、国益主義に着目する見方によれ

ば、「援助」とは言っても実際には供与国が自国の国益を増進するための道具

に過ぎないのであり、「援功は援助受取国を支配しコントロールするために利

用されている」(Weissmann、1975,15-18貫)ということになるo

供与国の目的としてよく言及されるものは、(1)援助受取国に対する輸出

を増や したり、民間の投資のための環境を生えるなどの経済的利益の追求,

(2)援助受取国に対する政治的影響力の維持、あるいは友好関係の促進、と

りわけ (2b)国連の場など国際社会における供与国の外交政策への支持の調

達、(3)援助受取国内における基地の確保など供与国の安全保障政策の補強、

などである。

供与国が国益追求の道具として援助を利用していることについて、「途上国

の発展に寄与するために政治的要素は抑制されなければならない」 とする人

(33)

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445 日本の政府開発援助(星野英一・一)

道主義からの批判があるが、供与国の国益追求と途上国の発展に寄与するこ

ととは相容れないものなのか、については議論の余地があるo 途上国の発展

を通して供与国の国益が満たされる場合を想定することができるからである。

H.shino(1993)は、中華人民共和国の対外経済援助政策を実証分析の対象と

し、供与国政府の意図に関する理論的考察を行なう中で、途上国の発展を通

して供与国の国益が満たされる場合を想定した 「相互依存モデル」 を提案 し

た。

例えば、途上国経済の発展と市場の拡大を通して、援助受取国に対する供

与国のあるいは 「北」側諸国全体の輸出を増やしたり、民間資本の投資のた

めの環境を整えることができる場合を想定できる。経済発展が達成されるか

どうかは別にして、途上国への 「資金の流れ」が、援助受取国の 「国益」を

満たすと同時に友好関係 ・政治的影響力の維持 ・促進、さらには国際社会に

おける供与国の外交政策あるいは 「北」側諸国全体の対 「第三世界」外交へ

の支持の調達に役立つ場合もあるだろう。 さらに、途上国経済の発展と安定

は、受取国内における供与国のあるいはその同盟国の軍事基地の機能の安定

化などを通 して供与国の安全保障の補強となりうる、との議論も可能だろう。

日本のODAにおける 「相互依存性の認識」 という基本理念は、その実現が

可能かどうかは別として、少なくともその意図としては、こうした 「相互利

益」を指していると考えられる。

したがって、援助供与の日的 ・意図について実証的に分析する場合にも、

供与国の国益追求と途上国の発展に寄与することとを別々に倣うのではなく、

両者を一つの分析枠組の中で姐上に載せるべきである。 供与国政府の政策 目

的に関して、国益を重視するMcKinlayandLittle(1979)の包括的な研究

や発展ニーズを強調するMoSley(1981)の分析がある。また、Ra主(1980)、

Roeder(1985)らは援助の政治的影響力を評価するが、nato(1969)やMoon

(34)

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琉大法学 第52号(1994) 444

(1985)はこれに反対 しているO これらは 「国益」と 「ニーズ」の二分法に

依拠しており、本研究のようにこの二分法を越えようとするものは、Maizels

andNissanke(1984)やImbeau(1989)の仕事など数えるほどしかない. こ

こでは、先に言及したいくっかの政策意図を独立変数として採用 した場合、

主要な供与国の援助の地理的配分を十分に説明できたかどうか、簡単な表に

しておく (衷2)0

この裏から次のようなことが言えるO 第-に、どの政策意図に関 しても、

供与国の援助の配分を十分に説明できたかどうか、結論が分れているという

ことだ。第二に、しかし、もし多数決で決着がっくのなら、国益主義的な説

明に軍配があがり、人道主義的なそれは旗色が悪い、と言える。 もちろん、

多数決で決着をつけるわけにはいかない。本来ならばそれぞれの研究の分析

手法などの検討が必要なのだが、ここではその余裕がない。 短絡的に結論を

述べることが許されるのならば、第三に、だからこそ供与国の国益追求と途

上国の発展ニーズとの両者を一つの分析枠組みの中で吟味 しなくてほならな

いのである。

第四に、供与国によって政策意図が異なっているという可能性がある。例

えば、McKinlay(1979)によれば、フランス (FRN)・西 ドイツ (GFR)の

途上国への援助配分は経済的利益によって南軍に説明できるのに対 し、アメ

リカ (USA)・イギリス (UK)のそれは十分に説明できない。さらに、安全

保障上の利益に着目するなら、アメリカ ・イギリスおよびフランスの援助甑

分は有意に説明できるが、西ドイツのそれは十分に説明できないのである。

日本を例にとっての事例研究の意味がここにある。

く2)相互依存モデル

「経済援助の地理的配分の決定に影響を与えている供与国政府の政策日的」

に関する本稿の分析枠組は、合理的行為者による政策決定諭的アプローチで

(35)

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443 日本の政府開発援助(星野英一)

表 2:援助供与の意図に関するこれまでの実証分析結果

政策意図 有意に説明できる 有意に説明できない

貿易 ・投資

政治的彫轡力

Ibwo(1978)USA

Wi仙oprく1972)

McKin】叩く1977)FRN,GFRMAi2;BIBAndNiBS&r)ko(1984)HorvAth(1976)CHN

Wit比opr(1972)

McKinhyandLittle(1978)UxRowo(1978)us九

HorvAth(1976)CHN

DudlByAndMomtmarquett8(1976)MAi加IsAndNiBBArLkO(1984)

国連での投繋行動 Rooder(1985)us氏

RAi(1972)USA.Us氏

Rai(1980)us九,Us氏Wi仙opr(1973)USA

AIprtaridBerJIStein(1971)

AlpertaAd王事orJ18tCin(1974)

SingerAndSon朗rLig(1963)tmisAndS8125berg(1965)

安全保障上の利益 wittkopr(1971)UsA

McXirL】叩く1979)USA,UR,FAN

MAig01BandNi8馳nke(1984)M¢Guire(1982)UsA

途上国の開発 Wittkopf(1972)Ux.FRA.GFRニーズ MoAny(1981)

DudleyAndMontmarquette(1976)

McKinl卑yand1-ittlo(1977)UsA

McKi血yandLittle(1977)UsA

MCKi血yく1979)USA,UX

Wittkopf(i912)USA

MooTl(1985)USAKAto(1969)

I(eohAne(1996)

Wittkopl(i973)

Wittkopf(I971)

McKinhy(1979)GFR

McKinhy(1979)

McKirLhyaJldLittle(1977)

McKiAhyandLittle(1978)

McKinhyAndLittle(1979)

MAiBOlsandNi出anke(1984)G8喝 LLndLOhman(1986)USA

(証)国の噂苛をを持たないものは4ヶ国以上について分析 したもの。なお、国の略語は以下の通り。

CE.lN(中国)FRN(フランス)GFR晒 ドイツ)

uK(イギリス)U弘 (アメリカ合衆国)USR(ソビェト連邦)

(36)

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琉大法学 第52号(1994) 442

あるoつまり、合理的行為者としての政策決定者を仮定 し、政策決定者が、

供与国の国益 (貿易 ・資源 ・市場 ・安全保障)と途上国の発展ニーズ (発鹿

レベル ・経済の規模 ・「生晴の乳 )に関して与えられた諸条件の下で、地理

的配分に関してどのような決定を行なうか、を多変数の回帰分析モデルm

成して分析するのである。

もし、人道主義の議鞄が主張するように、経済援助が途上由の発展のため

に供与されているのだとしたら、なぜ、表2に見られるように、供与国の国

益と援助の地理的配分とのあいだに有意な く統計的に意味のある)相関関係

があるという分析結果が数多く存在するのだろうか?もし、国益主我の議論

が主張するように、経済援助は供与国の国益を満たすために供与されている

のだとしたら、なぜ、いくっかの分析結果は途上国の発展ニーズと援助の地

理的配分とのあいだに有意な相関関係を発見したのだろうか ?また、援助を

供与国の国益追求の道具として利用するためには、援助供与が受取国の政策

(例えば、国連での投票行動)に彫轡を与えることができなければならないは

ずだが、そこには有意な相関関係がないとする分析結果を、どう説明したら

よいのだろうか?

こうした疑問を解く鍵は、Moon(1985)の 「従属的合意 (dependent

consensus)」という考え方の中に兄い出すことができる。 つまり、援助を供

与国の国益を 「買い取る」交換のプロセス (Morgenthau、1962)としてでは

なく、「相互利益」の存在を前程とした 「協力」の表現として考えるのである。

供与国が援助を道具として受取国の政策に変化をもたらすことができると考

えるのではなく、受取国の政権を支持することが供与国の国益に適う場合に、

供与国は援助を通して受取国の政策を 「強化 (reinforce)」すると考えるのだ。

Moonの場合、この 「相互利益」は供与国と受取国との政治 ・経済 ・文化的

な従属関係から発生すると考えられているが、「相互依存モデル」はこうした

(37)

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441 日本の政府開発援助(星野英・一・)

従属関係が存在しない場合でも 「相互利益」がありうると考える (前項参照)0

相互依存モデルは、援助と供与国の国益との関係を否定は しないが、ある国

が、はっきりした従属関係やかなりの程度の政治 ・経済システムへの浸透な

しに、援助を道具として他国の政策に (その国の政策決定者が望んでいない

ような)変化をもたらすことができるとは考えない。また、供与国が純粋に

人道主義的な意図を持っているとは仮定しないが、合理的行為者としての政

策決定者は、自国の利益を追求するに際して、限られた資源を有効に活用す

るために、途上国の発展ニーズを考慮に入れるだろうと考えるのである。

「援助は交換のプロセスではなく、『相互利益』の表現である」という相互

依存モデルの主張は、「援助を道具として他国の政策に変化をもたらすことが

できる」とする国益主義の仮定に挑戦する一方で、供与国の国益とは鈍関係

の純粋な道義的意図を想定する人道主義の援助理解に反対 している。また、

「合理的行為者は、限られた資源を有効に活用するために、途上国の発展ニ-

ズを考慮に入れる」 という相互依存モデルの主張は、「援助とは、供与国が自

国の国益を増進するための、途上国の発展ニーズとは無関係の政策手段に過

ぎない」 とする国益主義の援助理解に反対する一方で、「供与国の国益と援助

の地理的配分とのあいだに相関関係はない」と考える人道主義の予測に挑峨

している。

したがって、本節では、以下の3つの仮説を検証の対象とする。

(仮説 la)相互依存モデル

援助の地理的配分の決定は、供与国の国益と受取国の発展ニーズとによっ

て説明される。

(仮説lb)国益主義モデル

援助の地理的配分の決定は、供与国の国益によって説明され、受収国の

発展ニーズによっては説明されない。

(38)

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琉大法学 第52号(1994) 440

(仮説 lc)人道主義モデル

援助の地理的配分の決定は、受取国の発展ニーズによって説明され、供

与国の国益によっては説明されない。

(3)二国間ODAと国益変数 ・ニーズ変数

これらの仮説は、日本の各年の二国間ODAに関して、アジア ・アフリカ・

ラテンアメリカの非共産主義発展途上国を対象として、回帰分析モデルによっ

て検証される (サンプルの選択およびデータ .ソースに関して、HoBhin.、

1993)。本節における相互依存モデルの従属変数は、1972・81・90年の各対象(2)

国に対する二国間ODAの地理的配分 (突放額)である。また、説明変数は

供与国の国益と途上国の発展ニーズに関する諾変数であり、これらは援助供

与の前年の値を採用する。つまり、1年のタイム・ラグを考える。すべての

年度についての分析は別の機会に譲り、本稿では1972・81・90年の3ヶ年の

二国間ODA実損に限って報告することとする。

図2に見られるように、日本の二国間ODAはその飴輯とともに1970年代

に着実な伸びを示し、80年代中期以降さらに急激な成長を遂げた。この背景

には、1978年以来衝み上げられてきた数次にわたる中期 目標の設定とその達

成がある。こうした継続的な畳的拡充努力の結果、1992年の日本のODAは

15年前の約8倍にまで成長した。

この間の二国間ODAの地域別配分の推移を見てみると (図3)、第 1の供

与先であるアジアの割合が減少しつつあること、つまり、その他の地域への

援助供与が少しずつではあるが増えつつあることがわかる。 それでも、アジ

アのシェアが圧倒的に多いことに変わりはなく、1991年に51.0%、92年は65.1

%となっている。

また、二国間ODAの十大供与国について見てみると (表3)、1970年の上

位10ヵ国のうち5-6ヵ国が、その後20年の間、常に上位10ヵ国に名を連ね

(39)

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439 日本の政府開発援助(星野英一)

61 66 71 76

81 86 91年資料 :外務省 『我が国の政府開発援助』

図3:日本の二国間ODA地域別配分の推移 ~~‥二

支払地額~~-.‥ニ二国間援助-65 '70 '75 -77 ●78 179 J80 J87 188 I89

注 :1970年中南米地域に対する

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琉大法学 第52号(1994) 488

ていることに気付くoこの表の50の枠を19ヵ国が埋めており、円借款の年次

供与国12ヵ国すべてがここに顔を出しているのである。さらに、上位10ヵ国

のシェアの合計が、次第に減少しっっあるとはいえ、1980年代になっても60-

70%を占めているというのは、100ヵ国にのぼる発甲声上国の存在を考えると、

かなりの集中度であるといえる。

ともあれ、 以上の観察は、日本の対外援助政策の決定が予算拘束と組織拘

束とによって硬直的なものになっているというRix(1980)の主張や、国別配

分額の変化が基本的には増分主義的 (incremental)なものであったという稲

田 (1985)の観察と、表薬をなしているといえる。 ただ し、こうした傾向が

ただちにどれかの仮説を支持する材料になるということはないO

説明変数のうち、供与国の国益としては、①安全保障 (MPW)一軍事力(3)

(軍事費と軍人数)の相対的な大きさ、②貿易 (TIM)-日本の総貿易農に占

めるA国との貿易の割合、③資源供給 (Mop)一日本のA国からの輸入結合

度、④輸出市場 (ⅩDP)一日本のA国への輸出結合度、の4つの国益変数を(り

使うことにする。これらの変数はA国が日本にもたらす効用の指標であると

考えられるので、国益主義の議静からすれば、その値が大きければ大きいほ

ど、その途上国はより多くの日本の援助を受け取る傾向にある、と想定でき

る。 人道主義モデルは、これらの変数が統計的に有意にはならないと主張す

るだろう。

また、途上国の発展ニーズとしては、⑤一人あたり国民総生産 (GND)I

目標となる一人あたりGNPとの相対的な差、⑥経済の潜在的な規模の小さ

さ (ESZ)一人口で代用、⑦ 「生活の質」(PQL)一日標となる生活の質 (平(a)

均余命と識字率)との相対的な差、の3つのニーズ変数を使うことにする。

これらの変数はその途上国の発展ニーズの指標であると考えられるので、人

道主義の議論からすれば、その値が大きければ大きいほど、その国はより多

(41)

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蓑3

:日本

のODA十

大供

与国

(1960-90

年)

4 3 7

ノーヽ

_ヽ.′

顧位

1○70年

197

5*

1980*

1985*

1090年

国名

シエ7

国名

シエ7

国名

シエ7

国名

シ工7

国名

シ工7

1イン

ドネ

シア

33.87

イン

ドネ

シア

23月7

イン

ドネ

シア

17.8与

中西

15.17

イン

ドネ

シア

12,50

2韓

国2乱

35韓

国10.28

バング

ラデ

シュ

10,97

タイ

10.33

中国

10.42

Sパ

キス

タン

10.65

フィ

リピン

8̀27

タイ

9.67

フィ

リピン

9.39

フィ

リピ

ン9.33

4イ

ンド

8.81

マレイシ

ア7_44

ビル

マT_78

イン

ドネ

シア

6.31

タイ

6.

03S

7イ

リ_ビ

ン5.18

キジ

プト

5.90

エジ

プト

6_27

ビル

マ6_02

バング

ラデ

シュ

5.38

6タ

イ4.55

バング

ラデ

シュ

5.53

パキ

スタ

ン5.7 3

マレイシア

4.91

マレイ

シア

5.岳7

7イラ

ン3.22

イン

ド5 .4

8フ

ィリピ

ン4.81

バングラデ

シュ

4.75

トルコ

4.67

8ビルマ

3.21

イ4.85

韓国

3.89

パキ

スタ

ン3ー6与

パキス

タン

2.79

9中

国亡台湾

)2.5 7

イラ

ク3_50

マレイ

シ7

3.35

スリラ

ンカ

3.28

スリラ

ンカ

■■2.54

10シ

ンガポー

ル1.55

ナイ

ジェ

リア

3.21

スリランカ 2 .28エジプト

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琉大法学 第52号(1994) 436

くの日本の援助を受け取る傾向にある、と想定できる。国益主義モデルは、

これらの変数が統計的に有意にはならないと主張するはずだ。

一方、相互依存モデルは、国益変数であれニーズ変数であれ、その値が大

きければ大きいほど、その途上国はより多くの日本の援助を受け取る傾向に

ある、という単純な関係を想定している。ただし、これまでの研究の結果を

見ても、どの国がどの国益変数やニーズ変数に強く反応す るかは確定 しにく

い。日本の場合についても、これらの変数のうち、あるものは有意になるが、

あるものは有意にならない、という結果が出ることが予想される。

(4)分析結果の検討

表4は、国益変数 ・ニーズ変数のそれぞれとその翌年の二国間ODA配分

との相関係数を示したものである。予想に反して、「経済規模の小ささ」の変

数と 「生活の質」の変数とが負の相関を示 している。前者に関 しては、人口

の多い国はど多くの投資を必要とする、という側面をうまく処理できていな

いためである。今後の課題としなくてはならない。後者については、これと

は事情が違う。 一つの可能性は、日本の援助が、一人あたり国民総生産のよ

うな指標で測られる発展ニーズには反応を示すが、「生活の質」のような指標

で測られるそれには反応を示さないことの現われである、ということだ。

それぞれの相関係数の大きさを比べてみると、概 して国益変数の係数のほ

うがニーズ変数のそれよりも大きいことがわかる。これまでの他の供与国の

研究でも、国益に関する説明変数のほうが優勢であったが、日本の場合にも

それが妥当するらしい。 しかし、他の条件が同一の場合でもこれらの変数が

.統計的に有意であるのかどうかは、重回帰分析によって検討 してみなくては

わからない。

表 5は、国益変数 ・ニーズ変数の二国間ODA配分への野響に関する、そ

のような分析の結果である。 まず、「輸出市場」 の国益変数と 「一人当り

(43)

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435 日本の政府開発援助(星野英一・)

表 4:国益変数 ・ニーズ変数と二国間ODAとの相関係数

ODA72 0DA81 -ODA90

安全保障 0.324 0.305 0.1

00貿 易 0.600 0.394 0

.329資源供給 0.399 0.39

5 0.545輸出市場 0.048 0.

096 0.039一人当りGNP 0.172

0.135 0.190経済規模の小ささ -0.248

-0.198 -0.162生活の質 -0

.209 -0.164 0.006衷5:国益変数 ・ニーズ変数の二国間ODAへの影響

ODA72 0DA81 0DA90標準係

数 (t) 標準係数 (t) 標準係数 (i)安全保障 -0.209(I.193) 0.123

(i.140) -0.079(0.540)貿 易 0.585(5.261)叫. 0.

167(1.581) 0.035(0.210)資源俄給 0.039(0.342) 0.

192(1.932)' 0.291(2.525)…輸出市場 0.274(2.348)'' 0

.475(5.051)… 0.365(2.466)''一人当りGNP 0.306(3.154)

… 0.542(6.184)… 0.253(2.219)''経済規模の小ささ -0.184(1

.121) 0.037(0.383) -0.102(0.750)生活の質 -0.116(1.242) -0.246(3.168)''' -0.086(0.

785)N 63 94 74Rl 0.

597 0.596 0.394Adj.R+ 0.546 0.5

63 0.330F-test ll.645日' 18.110

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琉大法学 第52号(1994) 434

GNP」のニーズ変数が、料 こ、いずれの年にも予想 した符号で、統計的に

有意であることを確認 しておきたい。国益主波モデル ・人道主義モデルのい

ずれでもなく、相互依存モデルこそが妥当である、という結果がでたわけだ。

第2に、他にも 「貿易」と 「資源供給」の国益変数が、年によってではあ

るが、予想した符号で統計的に有意である。これが、時間の流れに関係 して

いるのか (「貿易」の係数は次第に小さくなっているし、「資源供給」 の係数

は次第に大きくなっている)、あるいは何か他の理由があるのか、はより包括

的な分析をする際に検討することにする。

第3に、1981年の二国間ODAに関して、「生活の質」のニーズ変数が、予

想に反して負の符号で、 しかも統計的に有意となっている。相関係数に開適

して一つの可能な解釈を提示したが、この点についてのもう-つの可能な解

釈は、日本の援助が、一人あたり国民総生産で測られる発展ニーズに反応を

示すと同時に、供与した援助が有効に使われ経済発展に結び付きやすい国に

竣功を振り向けやすい、ということだ.つまり、もし一人あたりGNPの水

準やその他の条件が同一ならば、「生活の質」が高い国へ援助を与えたほうが

「有効」 に使われるだろう、と考えるのである。一人あたりGNPも 「生活の

質」も共に高くない国々こそ真っ先に援助すべきだとの議論があるはずだが、

国民の税金や国民から借 りている賛金を 「無駄」に使うべきではないとの談

論 (松井、1988)も根拠がないとは言えまい。しかし、この場合でも、なぜ1

981年の二国間ODAに関してだけこういう結果がでたのかは、今後検討 しな

くてはならない。

(5)ま と め

日本の二国間ODAに関する以上の分析からみるかぎり、国益主義モデル

や人道主義モデルよりは、相互依存モデルの援助政策理解のほうがデータを

よく説明している。供与国が純粋に人道主義的な意図を持 っているかどうか

(45)

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433 日本の政府開発援助(星野卦-)

はともか く、合理的行為者としての政策決定者は、自国の利益を追求す るに

際 して、限 られた賢源を有効に活用するために、途上国の発展ニーズを考慮

に入れるのである。供与国が援助を道具として受取国の政策に変化をもた ら

し、供与国の国益を 「買い取る」ことができるかどうかのテス トは していな

いが、援助を 「相互利益」の存在を前提とした 「協力」 の表現として考え、

供与国は、受取国の政権を支持することが供与国の国益に適う場合に、援助

を通 して受取国の政策を 「親化 (reinforce)」し、友好関係を強化すると考え

ることは妥当なようだ。

では、こうした結果が、途上国の経済成長と分配の平等に及ぼす影響の分

析とどう関わるのか、また、それを踏まえて、両者が 「なぜ援助なのか ?」

という問いを核としてどのように結びついているのか、については、次節以

降の談論に謙ることとする。

(目 地にも、(b)に稲田自身の仕事 (1985;1989)やOrr(1990)を、(C)に大隈

(1990)や稲田 (1987)を加えるだけでなく、くd)として援助担当者自身の研究や報告

(例えば、五十嵐、1990、第2部)を、また (e)として日本の援助が受け取り国の政

治や社会に与える影響の研究 (例えば、松本、1978)を挙げるべきかもしれない。

(2)改質意図の検討のためには、実統領ではなく、約束額を利用したほうが良いのか

もしれないo現在は、まだ、その準備ができていないので、莫統領を利用した。 資料

は、外務省 『我が国の政府開先壌助』各年版。

(3)安全保障上の国益として 「地域レベルでの同盟関係における途上国と日本 くある

いは米国)との頼似度」の利用が望ましいが、1990年に関して準備ができなかったの

で、今後の課題とする。

(4)それぞれの変数の操作的な定義に関しては、以下の通り。

(46)

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琉大法苧 第52号(1994)

①安全保障 (MPW):軍事力 (軍事費と軍人数)の相対的な大きさ

-(A国の軍事費/世界の絵軍事費+A国の軍人数/世界の総軍人数)/2

②貿易 (TIM):日本の給貿易量に占めるA匡は の貿易の割合

-日本とA国との貿易量/日本の絵貿易盈

③資源供給 (MDP):日本のA国からの輸入結合度

- (日本のA国からの輸入/日本の総輸入)÷くA国の飴輸出/世界の総輸出)

④輸出市場 (ⅩDP):日本のA国への輸出結合度

- (日本のA国への輸出/日本の絵輸出)÷(A国の絶輸入/世界の捻輸入)

(5) 亘れぞれの変数の操作的な定我に関しては、以下の通り。

⑤一人あたり国民捻生産 (GND):目標となる一人あたりGNPとの相対的な差

- (目標となるGNPPC-A国の一人あたりGNP)/目標となるGNPPC

ただし、目標となるGNPPCとは、DAC諸国の一人あたりGNPの最低値。

⑥経済の潜在的な規模の小ささ (Es乞):人口で代用

-1-人国の人口/サンプル内の最大人口

⑦ 「生活の質」(PQL):日額となる生活の質(平均余命と識字率)との相対的な差

-くLET+LIT)/2

LET- (目標となる平均余命-A国の平均余命)/目標となる平均余命

ただし、日原となる平均余命とは、DAC常国の平均余命の最低値。

LIT- (日擦となる識字率-A国の畿字率)/目標となる識字率

ただし、目標となる識字率とは、DAC諸国の葡字率の最低値o

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