Title 農家の副業にマッシュルーム栽培 琉大農家便り(101): 8...
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Title 農家の副業にマッシュルーム栽培
Author(s) 与那覇, 哲義
Citation 琉大農家便り(101): 8-10
Issue Date 1964-04
URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/20868
Rights
農家の副業にマッシュルーム栽培マッシュルームは、古来欧米諸国で広 く栽培されている代表
的なキノコである。現今、この栽培は各Egにおいて専業として、
また農家の副業として急速に発展 し、副菜換金作物 として大 き
くグロ-ズア/プしている。
沖縄での栽培は、数年前琉球煙草KKが、今帰仁村の煙草乾
燥室を利用 して始められ、普及奨励に努めたが、農家に普及さ
れるまでには至 L,なかった. しかL最近、国頭村在の沖縄缶詰
KKで 250坪、大宜味村在の大東パインKKで40坪および大宜
味村宰如寡の一部農家で小面積に栽培 されている。その殆んど
は生食用として挙向けに、残 り少量が民間に販売されている。
この栽培が、農家の副業に有利であることは、堆刷 巴の材料
が料易く、虚聞凧の余剰労力を活印 し、栽培技術が容易および
冊易な施設を利mするなどである。また栄養価の高い両かL,皮
村の食改善のためL二も重要である.
もし、これを栽培-4~るには、鼓初から大fTIJ根に栽培 しか ,で、
Jl三し い栽培技術を体得 し、それを基礎 として両税 を拡張するこ
とが肝腎であるo副業的両税は10坪程度にするとよい。
マッシュルームの概説
マッシュルーム (Mushroom) は、キ/コを意味する英名で、
仏名をシャンピニオン (Charnpignon)、和名を西洋松茸 (松茸
とは種属、生態的Lに全く異なる)、洋茸、洋菌などと呼んでし,
る。
担+菌類のハラタケ属で現在の栽培種はPsa1110taCampestr
lS(L.)Fr.で、他に野生種も数種あって、時には栽培 される場合
がある.マッ シュルームは、1700年頃フランスにか 、て洞穴内
で栽培 されたのが、その起源である。爾来、欧米諸国で広 く栽
培 されている。
品種は、その色沢によって区別され、ホワイ ト掘、クリ-ム
種、ブラウン種があり、現在最も普偏的に栽培されている品種
はホワイ ト機である。
種菌は、胞子或いは組織分離 して菌糸を純粋に培養されるも
ので、これには科学的な設備と熟練 した技術 を要するので、栽
培者の自家獣道は困難である。種菌製造全社から瓶培拳種菌が
販売 されている。
マッシュルームは欧米人の日常食に常用され、その独特な風
味 と美味 しさ、歯切れもよくて栄養価に優れた栄養食品である。
繊維質は極めて少なく、蛋白質、無機質に富み、ビタミンB1、
B2、またヒタミンDの母体となるナイアシンおよびエルゴス ト
リンを含有 し、数種の消化辞素と血圧降下に有効なチロシナー
ゼ辞葉も含まれているO
栽培の環境要素
1 温度 :マッシュルーム栽培において、温度は特に重要な要
素であり、常に一定 していることが理想的であるが、しかし実
際の栽培に当っては恒温に維持することは困難である.菌糸の
発育と茸の発生温度は異なり、この温度変化は発育の必要条件
の 1つである。
菌糸の発育温度は8-27℃で、23-25℃が適温である。8℃
以下では、生長が遅延または停止するが、大 きな被害はない。
27℃以上になると害菌と害虫の繁殖が旺盛となり、マッシュル
-ム菌糸の発育は阻害 されて死滅する.
茸の発生温度は、菌糸の発育温度よりも低 く8-18℃で、13
-15℃が適温である。20℃以上になると発育を停止 し、21℃以
上の高温が数日続 くと茸の生産に悪影響をおよほし減収する.
2 湿度 :菌糸の暑さ育期には60-70%に保持 されるのが望まし
い.75%以上では菌床に病害が起 り易 く、60%以下では菌床が
乾燥 Lて栽培が困難となるC
茸の矩生期には80-85%が適 し、菌床面に水蒸気が静かに蒸
5'JをLている程度がよし.090%以上は菅の発生悪 くなるばかりで
なく、傘に病害を′巨じ易い。70%以下は茸を硬 くなり外層が亀
裂する。50%以下の低湿は茸の生長を停止 して枯死する.湿度
の調節は換妄ftと関過 し、通風が過度になると乾燥状態になり、
換'R]Lが不十分であれば過湿状態となるので十分注意する.
3 操気 :菌舎内は菌床材料 (コンポス ト)の発群と菌の呼吸
作刷によって炭酸ガス、メタンガスおよびアンモニアガスなど
の有害ガスが発FLLて菅の′t:_長を阻害するO炭殻ガス 1%以上
が、舎内に蓄梯 されると貧弱な茸となり、槻傘が速 くなる.5
%以上になると茸は全く形成されか 、。
茸の発勺ミ中に換気を強 く行 うと茸が褐変する原因となるかL'
換気の安鱗は徐々に静かに行 うよう心がける。
4 光繰 :キ/コ類の党茸と発育には光線を必要とするのが普
通であるが、マッシュルームは光線を全然必賓としないo L
かし儀の間接光線は茸の生抜を促進 させる効果が認められてい
る。暗所では白色の短大な茸が出来るが、明るい所では徒長し
易 くなる。光線を受けると褐変する。
5 PH :菌糸の賓求する水素イオン濃度は、pH5.0- 8.0の
範臥 二あり、菌床はpH6.8- 7.0が叔適で、謙七はpH7.0がよ
い。堆穏中の菌床材料は敢性発群するので、炭酸石灰、消石灰
などでpH 修IT.するとよい。
菌舎の場所と構造
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副業的薗舎は、手近な域所を越ぶことてある。それには、ま
す不安な納屋、堆肥合、煙草幸乞髄室、物置小屋などの既存設備
を利用するとよし,.もL屋敷V,‖二空地があれば、継続的な施設
として、かやぶ き或いはブロック建の菌舎 も考えられる。
菌床は舎内の豊田三は 利別 して、2列の3-4殺糊式に作れば、
立体的で栽培面掛 よ広 くなる02列の似合は、中央に作業する
に支障のか 、程度の通路を設(i,棚の「日は90cmにする。両側通
路の場合は、棚巾は1.80mにするとよいo棚の長は、設備の大
きさにより適宜とするが、棚と棚のPEり隔は60cmにすると作業に
便利である。
床板、側板および矧 よ、囲'iiIせずに取 り外 しが出来るように
し、防腐剤を塗ってlillけ るとよいO
菌床材料
1 種類 :マッシュルールは、もともと欧米諸国において山野
の腐植 した11機物あるいは鵬肥置城付近に白土とした死物寄生菌
で、梓に,略装に好んで亨さ1=.する特性があるO元来、 マッ シュル
ームの菌床材料は、欧米紙rji)では麦利願 を敷ワラとした馬の厩
肥が月日、られ、日本においては.E.J.lJ朱を-じ体とした稲ワラとの混
用あるいは稲ワラ、変相類 を敷ワラとした馬の概肥が性糾され
た. Lかし戦後、馬朱の入手艶から合成堆肥が考案されて、馬
糞に依存した栽耕法は、もう過去のものとな-,たo
なお、琉球虚業試妹糊の長山氏は、析ワラのほかサ トウキビ
葉、ススキ、チカヤなと股家のfilF易い材料について試験中であ
る。
2 配合調製 :堆肥の魁造は脚寸1カ月前に行う。材料の稲ワ
ラをュ-4つtJJりにして、30cm毎にイ[灰'*素、尿素を4-5回に
分りて敬礼 (中央に多LIL:)して、,I(は如露で均等に散水する.
石灰窒素、尿素は固まらず分散するように注志 し、舶後に堆税
物の と部かL,敬/kLて堆機を終 るo堆柏には堆肥枠をlLh川する
とよい。
窒素源は好熱性繊縦分解菌の繁始を促過 し、高熱を碓1;_させ
るために堆柏の舶初に添加するO奄素源とLては2種類以上を
原材料 の配 合割 合 と量 (高稿 ) 堆肥の作 りプJJ順序 と別間
材 料 割合 坪 当 巌
稲 ワ ラ 100 129.8CK)kg
石灰窒素 0.8 1.030′′
尿 素 0.4 0.510′.
硫 安 1.3 1.680′′
過 石 3.0 3.890"
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マ ッシュルーム菌糸
マ ッシュルーム茸
涼加け ると好熱性繊維分解菌の繁殖に有効であるoまた燐酸や
加盟源は堆肥の物理的性質を改善するに重要である。
材料は堆概 して、普通3-4日位で最高温度になり、暫 く続
いた後陣温するので、その時第 1回切返 しを行う0第 IrUrtJJ返
し2日後には再び温度が上昇 し、3-4日位には65℃以上とな
るので、1-2Elおし、て第2匝旧 のり)返 しを行う.この要領を
以って3、4回tl)を行うのであるO堆積期間は秋は20-25EL
冬は25-35日位である0
3 堆肥の発酵程度 :材料の大部分が原形のま,の外観で堆肥
特有の臭責zlがなくなり、強 く引張れば容易に捻りJれるO色IFtは
一様にアメ色を帯びるとよい。水分は60%位がよい。つまり堅
く握 り締めると指の問かL,水分は出ないが、掌耐 :は僅に湿 り
がつく1%.であるopH は前述 Lたように、 6.8- 7.0の範囲が
良好てある。
栽 培
1 床造り.適度に発酵 した堆肥は、菌舎に搬入 して菌床を作
るO堆肥は数回に分けて床に入れ、その都度輩的Iの半力立で圧
しながら詰め込む。なるべく堅めの程度にするとよい。堆肥の
厚さは15-18cm位である。
2 後発酵 :適度に熟 した堆肥は、床人後2-3E]間は暫次昇
温 して30-40℃以上に達するが、後次第に降温するのである。
3 種菌の植付 :菌床温度が25-27℃になると種菌を植付ける
もので、床入按大体3-4日であるO 3.3m2(1坪)に36カ所
以上で、3cmの深 さに植穴を掘 り、種菌を丁寧に埋め、峯面で
強く圧 し床Ihlを平担にする。
棟菌虫は1坪当り 540g位で、市販の種菌は1坪用に瓶詰に
なっているC
4 ![土 '種菌が泊着すると、その周囲の堆肥に白色綿毛状に
菌糸の伸技が兄L,れ、もL菌糸が雅兄されなくとも堆肥が淡黄
槻色に変色する.それが種菌植付後 1-2週間であるが、普通
2過r711日に複土は厚さ 1.5- 2.0cm位で、床面一様に散布 L粗
密のか 、ように注意する。穣十川七性は pH7.0位の植壌七が
適当である。
5 潅水 :襟上の含水状態は、60-70%が望ましく、それに応
するような潅水が必賓である。菅の発生抑期における潅水過多
は、比較的被害は少ないが、中期の潅水過多は被害が大きし、の
で注芯する。潅水は3-6日毎に行い、それには噴希機を用い
るとよい。
以上がマ /シュルーム栽培の概要であるが、手刀心者でも坪当
15kgの収鬼が得 られ、熟練すると30kgの収量も可能であるo
(与 郡 市 哲 義)
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