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Instructions for use Title 肝門部胆管癌における術前予後予測スコアリングシステムに関する研究 Author(s) 齋藤, 博紀 Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第12350号 Issue Date 2016-06-30 DOI 10.14943/doctoral.k12350 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/62541 Type theses (doctoral) Note 配架番号:2248 File Information Hiroki_Saito.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Instructions for use

Title 肝門部胆管癌における術前予後予測スコアリングシステムに関する研究

Author(s) 齋藤, 博紀

Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第12350号

Issue Date 2016-06-30

DOI 10.14943/doctoral.k12350

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/62541

Type theses (doctoral)

Note 配架番号:2248

File Information Hiroki_Saito.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学 位 論 文

肝門部胆管癌における術前予後予測

スコアリングシステムに関する研究

(A study of the prognostic scoring system

using preoperatively available factors to

predict survival after surgical resection of

perihilar cholangiocarcinoma)

2016年 6月

北 海 道 大 学

齋 藤 博 紀

Hiroki Saito

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学 位 論 文

肝門部胆管癌における術前予後予測

スコアリングシステムに関する研究

(A study of the prognostic scoring system

using preoperatively available factors to

predict survival after surgical resection of

perihilar cholangiocarcinoma)

2016年 6月

北 海 道 大 学

齋 藤 博 紀

Hiroki Saito

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目 次

発表論文目録および学会発表目録・・・・・・・・・・・・・・・・・1頁

緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁

略語表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12頁

対象および検討方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13頁

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22頁

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37頁

総括および結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40頁

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42頁

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43頁

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発表論文目録および学会発表目録

本研究の一部は以下の論文に発表した。

1. Hiroki Saito, Takehiro Noji, Keisuke Okamura, Takahiro Tsuchikawa,

Toshiaki Shichinohe, Satoshi Hirano

A New Prognostic Scoring System Using Preoperatively Available

Factors to Predict Survival after Surgical Resection of Perihilar

Cholangiocarcinoma

Surgery 159, 842-851 (2016).

本研究の一部は以下の学会に発表した。

1. Hiroki Saito, Takehiro Noji, Keisuke Okamura, Takahiro Tsuchikawa,

Toshiaki Shichinohe, Satoshi Hirano

演題名:New Prognostic Scoring System Using Preoperatively

Available Factors to Predict Survival after Surgical Resection of

Perihilar Cholangiocarcinoma

学会名:International Association of Surgeons, Gastroenterologists

and Oncologists Continuing Medical Education: Advanced

Post-Graduate Course in Tokyo 2015, June 2015, Tokyo

2. 齋藤博紀、田中栄一、加藤健太郎、土川貴裕、七戸俊明、平野 聡、近

藤 哲

演題名:肝門部胆管癌切除例における予後因子の検討

学会名:第 110 回日本外科学会定期学術集会, 2010 年 4 月, 名古屋

3. 齋藤博紀、野路武寛、中西善嗣、浅野賢道、田本英司、中村 透、岡村

圭祐、土川貴裕、七戸俊明、平野 聡

演題名:術前血液生化学検査を用いた肝門部胆管癌における予後予測シ

ステムの開発

学会名:第 116 回日本外科学会定期学術集会, 2016 年 4 月, 大阪

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緒言

肝門部胆管癌は消化器癌の中でもっとも予後不良な疾患の 1 つである。

近年、化学療法や放射線療法などの集学的治療が発達してきているにも関わ

らず、外科的切除が肝門部胆管癌に対する唯一の根治療法である 1-11。しか

しながら外科的切除後の死亡率および周術期合併症率は各々0~15%、14~

66%と他の消化器癌の術後に比べてかなり高い。一方で術後の 5 年生存率は

High volume center からの報告を持ってしても 22~40%1-11 と未だに満足

のいく成績とは言い難い。これらの事実は選別された患者のみが手術療法か

ら満足な恩恵を受けることを示している。したがって、手術療法を受けて予

後が良好な患者を選別するような基準を確立することは急務である。しかし

ながら今まで胆管癌の予後因子および Staging Systemに関するいくつかの

研究がなされてきたが、それらの因子の多くは術後に利用可能なものである

1-4,6-10,12,13。

現在、肝門部胆管癌における手術療法後の予後を予測する術前に利用可能

な因子を用いた Staging System は無い。術前に手術療法後の予後が予測で

きれば、治療戦略決定に重要な情報を得ることが出来る。最近、いくつかの

研究で Systemic Inflammatory Response (SIR)の状態がさまざまな癌腫の

予後に関連があるという報告が散見される 14-28。肝門部胆管癌においても

SIR を反映する因子と予後の関連性を指摘する報告が少なからず認められ

てきた。肝門部胆管癌においても SIR を反映する因子が手術療法を受けて

予後が良好な患者を選別するための術前因子として有用な可能性がある。

本研究の目的は術前因子のみで予後予測可能なスコアリングシステムを

構築することである。すなわち、北海道大学大学院消化器外科学分野Ⅱで

1999 年より一貫した治療方針で肝門部胆管癌に対する手術療法を実施し

10 年間蓄積した患者データベースを基に手術成績を後方視的に検討した。

それらの臨床データの中から独立した予後規定因子の解析を行い、そこから

術前に評価可能な因子の抽出を行った。さらに、抽出したそれらの因子を用

いて予後予測可能な Scoring System の開発を試みた。

本研究において術前の Platelet-Lymphocyte Ratio (PLR), C-Reactive

Protein (CRP), Albumin, CEA が予後規定因子として抽出できた。その4因

子を用いて構成した Scoring System と予後を検討したところ相関関係を認

めた。今回、肝門部胆管癌切除例において、術前に利用可能な因子を用いた

予後予測 Staging System の構築、検証を世界で初めて行ったため、ここに

報告する。

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肝門部胆管癌に関して

肝門部胆管癌の解剖、疫学、発生率

肝門について Couinaud30 は「方形葉と尾状葉との間にある長いくぼみで

あり、境界は左側では門脈左枝臍部が走行する溝で右側では辺縁が丸かった

り、時には Rouviere 溝に移行している」と述べている。解剖学的には肝十

二指腸間膜の肝側端で左側は肝円索から門脈臍部 (Umbirical point)を含む

漿膜で、右側は胆嚢の左縁までの部位である。肝門は門脈、肝動脈、胆管が

複雑に絡み合い、肝臓内に流入する部位であり個々の脈管走行には様々な様

式がみられる。本邦でまとめられた胆道癌取扱い規約第 6 版は、肝門部領

域とは、左側を門脈臍部 (Umbilical point)の右縁から、右側は門脈前後枝

分岐点(Posterior point)の左縁までの範囲の組織と定義し、その領域に含ま

れる胆管を肝門部領域胆管と規定した 12(図 1)。

図 1. 肝門部領域胆管の範囲(文献 12 より引用)

肝側左側は門脈臍部(U point)の右縁から肝右側は門脈前後枝分岐点(P

point)の左縁までの範囲

The American Joint Committee on Cancer (AJCC)病期分類第 7 版にお

いて肝外胆管癌は肝門周囲(perihilar)胆管癌と遠位(distal)胆管癌で各々独

立した分類になっている 13。

肝門部胆管は解剖学的に門脈、肝動脈と近接しており同部位に発生した癌

は容易に門脈、肝動脈に浸潤する。したがって発見時には切除不能に陥って

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いる場合も多く、難治癌の1つとされている。

肝門部胆管癌はおよそ 50 年前に Altemeier と Klatskin によって最初に

報告され、胆管癌の 60%以上を占める疾患である 31-33。胆管癌は全悪性腫

瘍のうち 2%未満に認められる稀な腫瘍であるが、原発性肝腫瘍において2

番目の頻度である 34,35。

米国での発生頻度は人口 10 万人あたり 1~2 人と稀である一方で、アジ

アでは罹患率は人口 10 万人当たり男性で 113 人、女性で 50 人であり西欧

圏よりも高い 36。我が国での 2010 年の胆嚢癌、胆管癌の罹患数は男性で約

11,300 人、女性で約 11,300 人であり、それぞれがん罹患数の 2%、3%を占

める。我が国における 2013 年の胆管癌における死亡数は男性約 8,900 人、

女性約 9,300 人で、それぞれがん死亡全体の 4%および 6%を占める 37。

肝門部胆管癌には高齢、男性、肝硬変、炎症性腸疾患、慢性膵炎などの併

存が危険因子として挙げられている 38。胆道回虫症、肝吸虫、肝住血吸虫な

どの寄生虫性肝疾患は胆管結石症と共に肝門部胆管癌の危険因子として知

られている 34,38。最もよく知られている危険因子は原発性硬化性胆管炎

(PSC)である。PSC 患者における胆管癌の生涯罹患率は 6~36%である

36,38,39。特に PSC は肝内および肝外胆管に及ぶ。したがって PSC は肝内胆

管癌、肝外胆管癌両方の危険因子である 39。

肝門部胆管癌の分類

肝門部胆管癌には現在多くの分類が用いられている。Bismuth ら 40 は

1991 年に肝門部胆管癌を腫瘍進展に応じて分類し、術後の予後、再発形式

を検討した。予後に最も影響を及ぼしたのはリンパ節転移ではなく、腫瘍の

根治切除の有無であった。このため、彼らは肝門部胆管癌を遺残なく切除す

るために進展形式に応じて TYPE I-IV に分類(図 2)し、進展形式に応じ

た手術方法を提示した。TYPE I では胆管切除。TYPE II では胆管切除+尾

状葉切除、TYPE IIIa では胆管切除、尾状葉切除、肝右葉切除、TYPE IIIb

では胆管切除、尾状葉切除、肝左葉切除、TYPE IV では肝切除+肝移植が

必要であると結論づけた。今日でも Bismuth-Corlette 分類は術前の局所腫

瘍進展の評価に役立ち、切除術式の決定に用いられる 40,41。しかし

Bismuth-Corlette 分類は血管狭窄や転移性疾患の情報は得られない為、診

断的価値は限定的なものとされている 38,42。

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TYPE I TYPE II TYPE IIIa TYPE IIIb TYPE IV

図 2. 肝門部胆管癌の Bismuth-Corlette 分類(文献 40 より引用一部改編)

TYPE I:腫瘍が肝管合流部よりも遠位側に位置。TYPE II:肝管合流部ま

で進展。TYPE IIIa:肝管合流部と右肝管近位側まで進展。TYPE IIIb:肝

管合流部と左肝管近位側まで進展。TYPE IV:区域胆管手前までの両側肝

管まで進展。

Memorial Sloan Kettering Cancer Center (MSKCC)分類は左右肝管合流

部への浸潤、胆管2次分枝への浸潤、門脈への浸潤、肝葉の萎縮を指標にし

た分類であり局所腫瘍進展について詳述している 43(表1)。

表 1. MSKCC 分類(文献 43 より引用)

Stage

Criteria

Biliary confluence

involvement

2nd order biliary

radicle involvement

PV involvement Hepatic lobar atrophy

T1 Yes +/- Unilateral No No

T2 Yes +/- Unilateral Ipsilateral +/- Ipsilateral

T3 Yes Bilateral Yes/no Yes/no

Yes Unilateral Contralateral Yes/no

Yes Unilateral Yes/no Contralateral

Yes +/- Unilateral Bilateral Yes/no

Bismuth-Corlette 分類同様に肝門部胆管癌に対する MSKCC 分類は転移性

病変やリンパ節転移については言及していないものの、局所切除可能性の分

類には最も適しているとする報告もある 43-45。AJCC 分類が

Bismuth-Corlette 分類、MSKCC 分類と異なる点は AJCC 分類が血管浸潤

(門脈、肝動脈)、リンパ節浸潤、遠隔転移に着眼して病期分類を行ってい

ところである。しかし、多くの報告において、AJCC 分類の予後評価の不正

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確性が指摘されている。その理由として本分類が腫瘍浸潤の程度に言及して

いないことがあげられている 46-49。実際、いくつかの後ろ向き症例集積研究

では MSKCC 分類は AJCC 分類よりも正確に全生存率を反映していると結

論づけている 50,51。

肝門部胆管癌に対する治療戦略の現状

手術療法

現在、肝門部胆管癌に対して、長期生存が得られる治療法は手術療法のみ

であるとされている。浸潤癌を残さず切除し得た症例のみが長期生存の可能

性があるとされている 43,52-58。しかし腫瘍の局在や進展性により、時として

広範囲な切除を要するため、周術期合併症率、死亡率は各々40~70%、0~

15%1-11,52-55,59 と報告され、他の癌腫と比較しても周術期の危険度は高いと

考えられる。

術式に関しては腫瘍の局在に応じて様々な術式が考案されてきた。2000

年以前は拡大肝葉切除の合併症が多くみられていた 2,11 ため、前述の

Bismuth ら 40 は左右肝管に進展を認めないいわゆる TYPE I に対しては胆

管切除を提唱し、Miyazaki ら 60,61 は大量肝切除を伴わず、内側区と尾状葉

の切除による根治切除として肝実質温存胆管切除を、Shimada ら 62 は胆管

を肝門部で切除する拡大胆管切除術などを提示した。

肝門部胆管癌に対する“肝葉切除を伴わない胆管切除による切除”の手術

成績に関しては様々な報告がある。Ito ら 8 や Jarnagin ら 43 は R0 手術を施

行した肝門部胆管癌において、胆管切除のみが予後不良因子であったと報告

している。Neuhaus ら 2 と Capussotti ら 63 は胆管切除のみは予後不良と関

連があったが、一方、Bismuth TYPE I, II については肝葉切除が予後を改

善するとは結論できないと報告している。Jang ら 10 は Bismuth TYPE I, II

においては肝葉切除と胆管切除では予後に差がなかったと報告している。

これに対して 2004 年に北海道大学大学院消化器外科学分野Ⅱの Kondo

ら 1 は肝門部胆管癌の術式に関して、Bismuth TYPE I, II に対しても前述

の縮小手術ではなく、肝右葉尾状葉胆管切除を施行する事で予後延長が出来

る可能性を示唆した。Ikeyama ら 64 は Bismuth TYPE I, II 症例 54 例の検

討で結節浸潤型では肝葉切除を行った群が予後良好であったとしている。さ

らに、肝外胆管のみの局所切除は避けるべきであるという報告も散見される

2,53,58,65。Noji ら 65 は肝外胆管を肝切除を行わずに切除出来る限界点で切除

する“Hilar Plate Resection: 肝門板切除”の 52 例の成績を報告した。こ

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の報告も含め、肝門部胆管癌に対しては肝葉切除を伴わない胆管切除のみで

は顕微鏡的癌遺残や肉眼的癌遺残の可能性が高くなり、予後が不良になる可

能性が指摘されている 2,53,58。また、術前の胆道ドレナージや門脈塞栓など

により死亡率、周術期合併症は改善されつつあり、肝門部胆管癌に対する標

準術式として拡大肝葉切除が選択されるようになった 46,59,68-70。一般的に

Bismuth TYPE I, II, IIIa の病変には右側からの肝切除、TYPE IIIb の病変

には左側からの肝切除が標準術式とされている。いずれの術式においても尾

状葉の完全切除が局所再発、長期生存率を改善させる事が示されている 69-72。

切除可能な肝門部胆管癌の予後因子と生命予後

切除後の生命予後は High volume center からの報告でも 5 年生存率は 22

~40%1-11 と未だに満足のいく成績とは言い難い。

リンパ節転移、神経周囲浸潤は比較的早期から起こり、予後不良と関連す

る 73,74。リンパ節郭清は生存率向上に寄与しない一方で、局所制御の一助と

なり、臨床経過を考えると重要である。リンパ節転移陽性患者の 5 年生存

率は 15%である 75-77。

ほとんどの外科切除症例の集積研究では肝外胆管切除を伴う肝切除であ

り、顕微鏡的癌遺残の無い割合は一般的に 60~80%と報告されている

52,53,55,59,66,78。最も頻度が高い癌遺残部位は胆管断端である。肝側切除断端

を癌陰性にするためには、術前診断において癌の水平方向進展の診断を正確

に行い、各肝切除術式における胆管切離限界、すなわち胆管分離限界点との

対比によって術式を選択する事が必須である。肝内胆管を Glisson 枝の中で

剥離を進めると上流側の末梢に向かうにつれ肝動脈、門脈との癒着が強固と

なり、それらのとの剥離が困難になる。また、胆管枝が温存すべき門脈枝の

陰に隠れてしまいそれ以上追求することが不可能になる。これら胆管が他の

脈管から分離できなくなる直前の点、すなわち切除可能な最も上流側の胆管

部位は各肝切除術式において定まっており、これを胆管分離限界点と呼ぶ

(図 3)。常にこの胆管分離限界点で胆管切除を行うことが断端陰性率の向

上に重要である 79。

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図 3. 各肝切除術式における胆管分離限界点(文献 79 より一部改編)

通常分岐形態でのそれぞれの肝切除術式における切除可能な胆管な最も上

流側の胆管部位を指す。

肝門部胆管癌に対する化学療法の成績

切除不能進行胆道癌に対する化学療法の標準レジメンは Gemcitabine

(GEM)にプラチナ製剤(cisplatin)を併用した GC 療法である。GEM 単剤療

法と GC 療法の第 III 相試験(ABC-02 試験)の結果、GC 療法の生存期間にお

ける優越性が示された(GEM 群 vs GC 療法群の全生存期間中央値 8.1 ヶ月

vs 11.7 ヶ月, p<0.001)80。我が国でも GEM 単剤療法と GC 療法のランダ

ム化第 II 相試験(BT22 試験)が行われ、ABC-02 試験に比べて規模は小さい

ものの結果として類似する傾向(GEM 群 vs GC 療法群の 1 年生存率 31.0%

vs 39.0%, 全生存期間中央値 7.7 ヶ月 vs 11.2 ヶ月)が認められた 81。以上

より、国内外を問わず GC 療法が標準治療と位置づけられることになった。

その他、GC 療法と GEM+S1 併用療法の第 III 相比較試験(JCOG1113 試験)、

GC 療法と GC+S1 併用療法の第 III 相比較試験(KHBO KHBO1401 試験)

などが進行中である。

GEM などの既存の抗癌剤に分子標的薬剤を用いた複数の臨床試験が報

告されているが、有効性が証明された分子標的薬は無い。

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放射線療法の成績

放射線療法に関して Todoroki ら 82 は切除例のうち顕微鏡学的断端陽性患

者を対象において術中照射と術後体外照射の組み合わせの効果を検討した。

5年生存率は術後体外照射群で 33.9%、術中照射+術後体外照射群で 39.2%、

手術単独群で 13.5%と報告している。Gerhards ら 83 は切除例のうち術後照

射群が手術単独群に比し有意に生存期間中央値が長かった(24 ヶ月 vs 8 ヶ

月、p<0.01)が体腔内接近照射には効果を認めなかったと報告している。し

かしいずれも、単施設の少数の後ろ向き研究である。現状では十分な治療効

果を証明する前向き無作為抽出試験研究は行われていない。

その他治療の成績

その他には光線力学的療法に関してはいくつかの前向き、後ろ向き試験で

緩和目的に胆管ステントを挿入した患者に照射し 2-3 ヶ月の予後延長が示

された 84-87。腫瘍縮小を狙った術前照射の効果評価の第 II 相試験もある 88。

Systemic Inflammatory Response について

最近 10 年の間に腫瘍と宿主の間に生じる炎症反応の複雑な相互関係が癌

の進展に関連している事が解明されてきた 89-91。感染、組織損傷、免疫異常、

癌などが人体に炎症を起こすが、これにより無数の全身性反応が引き起こさ

れる 92。これらの反応は、神経内分泌代謝の変化(内分泌ホルモンを含む)、

造血性の変化(血液中の白血球と血小板の相対数の変化)、蛋白質とエネル

ギー代謝の変化(筋肉や蛋白の減少)、CRP の上昇などを引き起こす事が知

られている。肝臓も SIR に大きく関わっており、肝細胞は刺激を受け、SIR

を開始・維持・抑制するような様々な急性相蛋白質を合成し血液中に放出す

る。癌における SIR は非特異的炎症反応を反映した結果、二次的に腫瘍が

低酸素に陥り、壊死や局所組織損傷が起こる。それとは対照的にアポトーシ

スは炎症性免疫反応に一切関連なく、自動的に細胞死が生じる現象である

93。実際、担癌患者において SIR を示す多くの証拠が示される様になってき

た。宿主の SIR を表す体重減少や Performance Status (PS)の低下が腫瘍病

期から独立した予後規定因子である事がわかってきた 94-97。特に CRP の上

昇によって示される SIR は体重減少や PS の低下と関連がある。したがっ

て SIR は進行癌患者の低栄養や機能低下に関連する因子かもしれない 98-103。

また、SIR の指標である免疫機能低下と宿主抗腫瘍反応に関連がある事もわ

かってきた。リンパ球減少や腫瘍内障害性Tリンパ球反応や補体とマクロフ

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ァージ機能を含む先天的免疫システムの活性化などは細胞免疫の低下の結

果であり、CRP 値の上昇と細胞免疫の低下には関連性があるとされる

89,106-109。特にマクロファージの活性化は腫瘍血管新生と癌細胞の血管内播

種には密接な関係がある 110。加えて、SIR に関係する前炎症性サイトカイ

ンと成長因子は腫瘍増殖の促進・制御を司っている可能性がある 109,111。

最近、手術可能な原発性や早期の悪性腫瘍の進行における SIR を評価す

る多数の研究報告がなされている。臨床的に癌患者における SIR に対して

最も頻繁に利用されている測定項目は生物学的および血液学的マーカーで

ある。すなわち CRP 値の上昇や白血球数、好中球数、血小板数などの増加

である。低アルブミン血症も SIR の一部であるとみなされている 92。実際、

癌悪液質に関する最近の定義に CRP 値上昇と低アルブミン血症が含まれる

104,105。このように SIR に関する各々の構成要素と癌特異的生存率の関係は

繰り返し研究されているが、さらに、これらの因子の組み合わせで炎症に基

づく予後予測スコアが使用されてきた。Forrest ら 18 が最初に非小細胞肺癌

において報告しているが、Glasgow prognostic score は SIR の指標として

広く知られ、CRP≥1.0 mg/dL、アルブミン≤3.5 g/dL に対して各 1 点を付し、

2項目の合計が予後に関係するという簡便な方法である。消化器癌において

も多くの癌腫で SIR との関連性が報告されており、肝内胆管癌 14、大腸癌

15、大腸癌の肝転移 19,20、肝細胞癌 21、肝門部胆管癌 29、などがある。

また、好中球とリンパ球を組み合わせた好中球リンパ球比

(Neutrophil–lymphocyte ratio: NLR)、血小板とリンパ球を組み合わせた

血小板リンパ球比(Platelet–lymphocyte ratio: PLR)なども SIR の指標と

して用いられている。NLR は肝内胆管癌 14、大腸癌 15 などを含む消化器癌

で予後因子となるという報告がある。さらに、Dumitrascu ら 29 は肝門部胆

管癌切除症例において NLR が独立予後規定因子であったと報告している。

一方で、Hakeem ら 112 は肝門部胆管癌において NLR は予後規定因子とは

ならなかったと報告している。また、PLR も膵癌の予後因子であったとい

う報告もある 16。SIR と血液中のリンパ球数、単球数、血小板数の関係を報

告したのは Riesco ら 17 である。以下様々な研究により浸潤癌と SIR の関

連は以下のように説明されている。浸潤癌は腫瘍に近接した組織に損傷を与

え、その結果、局所および全身性に慢性炎症を引き起こす。炎症は炎症誘発

性因子および免疫抑制因子を誘導する。Interleukin (IL)-10 と

transforming growth factor (TGF)-βがもっとも重要な抑制サイトカイン

であり、これらはリンパ球の機能を減弱させたり、循環リンパ球を減少させ

る 22。リンパ球減少症は大腸癌や胃癌を含む他の消化器癌とも関連があると

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されている 23。IL-1, IL-3, IL-6 などの多くの炎症誘発性サイトカインによ

って巨核球の急増が促進された結果、血小板増加を生じる。血小板数増加も

大腸癌、食道癌、膵癌などの消化器癌と関連があると言われている 26-28。宿

主の SIR の程度と関係する血小板増加とリンパ球数減少、すなわち、血症

板とリンパ球の両方を含んだ PLR は比較的新しいマーカーである。

本研究の概要

以上より、肝門部胆管癌症例のうち適正な手術適応を決定するために、術

前因子によって予後を予測できるシステムを構築することが必要と考える

に至った。本研究では、1999 年より一貫した治療方針で肝門部胆管癌に対

する手術適応の下に治療を実施してきた 10 年間に前方視的に蓄積された臨

床データベース 1 を用い、全症例の予後として疾患特異的生存率を解析し、

独立した予後規定因子を抽出し、術前に評価可能な因子の選択を行い、それ

らの因子を用いて予後予測のためのスコアリングシステムを構築した。

本研究の結果、スコアリングシステムで予測された予後良好群は他群と強

い有意差を認め、既存の Stage 別の生存曲線では得られない情報を得ること

ができた。この結果は、術前の予後予測で予後良好が予想された症例に対し

ては、積極的に手術治療を検討し、予後不良が予測された症例に対しては、

化学療法などの非手術療法の適応を考慮する指標になると考えた。本研究の

ように、肝門部胆管癌症例の臨床データを詳細に検討し、予後予測システム

を開発した報告は他にない。このことは、肝門部胆管癌に対する大量肝切除

を含む新たな手術治療体系の確立に寄与する貴重な研究成果であることは

もちろん、今後、肝門部胆管癌全体の治療戦略に影響を与え得る新たな知見

であると考えられる。

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略語表

本文中および図中で使用した略語は以下のとおりである。

AJCC American Joint Committee on Cancer

CA19-9 carbohydrate antigen 19-9

CEA carcinoembryonic antigen

CI confidence interval

CRP c-reactive protein

CT computed tomography

DFS disease free survival

DSS disease specific survival

ENBD endoscopic nasobiliary drainage

GPS Glasgow prognostic score

ICG R15 indocyanine green retention rate at 15 min

MSKCC Memorial Sloan Kettering Cancer Center

MST median survival time

NA not available

NLR neutrophil–lymphocyte ratio

NPV negative predictive value

NS not significant

OS overall survival

PLR platelet–lymphocyte ratio

PPS preoperative prognostic score

PPV positive predictive value

PS performance status

PSC primary sclerosing cholangitis

PTBD percutaneous transhepatic biliary drainage

PVE portal vein embolization

RBC red blood cell

SIR systemic inflammatory response

UICC The Union for International Cancer Control

UP umbilical point

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対象および検討方法

対象症例

北海道大学病院消化器外科 II において、1999 年 11 月より 2009 年 10 月

に肝門部胆管癌の診断にて開腹手術を行った 156 例のうち、非切除になっ

た 10 例を除く計 146 例を本研究の対象症例とした(図 4)。

手術症例:156 例

非切除:10 例

腹膜播種症例: 8 例

局所過進展症例:2 例

手術症例:146 例

図 4. 対象症例

開腹手術を施行された 156 例のうち非切除になった 10 例を除く、計 146

例を本研究の対象症例とした

術後観察期間

術後観察期間の中央値(範囲)は 48 (6-132)ヶ月で全 156例が観察期間中、

予後の追跡が可能であった。

統計学的解析方法

統計解析には Stat View-J 5.0 statistical software (SAS Institute, Cary,

NC)と“Exact Test” produced by Prof. S. Aoki

(http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/exact/exact.html).を用いた。

対象 156 例の患者因子 (年齢、性別、Bismuth TYPE、CEA、CA19-9、

Albumin、CRP、NLR、PLR、胆道ドレナージ法(PTBD の有無)、門脈塞栓、

術前 ICG R15)、手術因子(肝葉切除の有無、膵頭十二指腸切除の有無、門

脈切除の有無、肝動脈切除の有無、輸血の有無)、臨床病理学的因子(分化度、

T 因子、N 因子、肝浸潤の有無 (Hinf)、神経浸潤の有無 (pn)、門脈浸潤

の有無 (PV)、肝動脈浸潤の有無 (HA)、切除断端 (浸潤癌の有無)について

各因子を二分化し、全生存率、疾患特異的生存率、無再発生存率は

Kaplan-Meier 法を用いて行い、Log-rank test による群間比較を行った。

p<0.05 を有意差ありと判定した。有意差が得られた因子について、Cox 比

例ハザードモデルを用いて多変量解析を行った。ただし 146 例のうち 6 例

ではリンパ球数のデータが欠損しているため、NLR と PLR は 140 例で検

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討した。

尚、患者因子の検査値の cut-off 値は統計学的有意差の最も大きい値を選

択した。患者因子の検査値の測定に際しては、黄疸症例に関しては胆道ドレ

ナージ後に測定した。胆管炎、尿路感染、肺炎などの炎症の無い時期に測定

した。採血検査施行時期は手術日に最も近い日(中央値 7 日、範囲 1-30 日)

に測定された値を採用した。

根治切除 146 例の疾患特異生存率に関する予後規定因子の検討(単変量解

析) (表 2)

単変量解析では術前臨床因子として CEA>7.0 ng/mL (p<0.001)、

Albumin<3.5 ng/dL (p=0.023)、CRP>0.5 mg/dL (p<0.003)、NLR>2.5

(p<0.009)、PLR>150 (p<0.001)、胆道ドレナージ(p=0.018)の 6 因子が

予後規定因子として抽出された。手術因子としては肝葉切除の有無

(p=0.025)、肝動脈切除 (p=0.029)の 2 因子が予後規定因子として抽出さ

れた。病理学的因子として分化度 (p=0.013)、T 因子 (p=0.002)、N 因子

(p<0.001)、神経周囲浸潤あり (p=0.005)、門脈浸潤あり (p=0.001)、肝動

脈浸潤あり (p=0.039)、切除断端浸潤癌陽性 (p=0.001)の 7 因子が予後規定

因子として抽出された。

表 2. 疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(単変量解析)

因子 症例数

3 年

生存率(%)

5 年

生存率(%)

MST

(月) P-value

臨床因子

年齢

<70 74 66.3 40.2 46.5 0.993

≥70 72 57.5 42.1 49.2

性別

男性 110 58.8 40.1 47.5 0.329

女性 36 63.0 43.2 51.2

Bismuth-Corlette 分類

I or II 86 57.0 39.6 44.4 0.159

III or IV 60 69.2 46.9 51.8

CEA (ng/mL)

≤7.0 127 67.0 44.1 49.2 <0.001*

>7.0 19 17.1 17.1 16.9

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CA19-9 (U/mL)

≤300 74 64.7 47.8 49.3 0.200

>300 72 59.3 35.1 41.9

Albumin (g/dL)

≤3.5 95 52.0 36.0 38.5 0.023*

>3.5 51 78.1 50.3 NA

CRP (mg/dL)

≤0.5 83 67.6 58.0 NA 0.003*

>0.5 63 54.4 22.3 41.2

NLR

≤2.5 87 70.6 46.9 51.9 0.009*

>2.5 59 47.2 32.3 27.5

PLR

≤150 68 76.4 55.3 NA <0.001*

>150 78 48.3 26.5 28.9

術前胆道ドレナージ

PTBD(+) 58 51.0 28.9 38.5 0.018*

PTBD(-) 88 69.6 54.3 NA

術前門脈枝塞栓術

Yes 77 59.5 30.5 44.4 0.280

No 69 64.4 52.3 NA

ICG R15 (%)

≤10 69 58.5 51.6 NA 0.812

>10 77 64.3 33.2 47.5

手術因子

肝葉切除

Yes 121 67.7 43.9 49.2 0.025*

No 25 40.6 NA 26.5

膵頭十二指腸切除

Yes 30 62.8 NA 41.8 0.685

No 116 61.7 43.6 49.2

門脈合併切除・再建

Yes 70 59.2 40.5 44.4 0.701

No 76 64.5 42.5 51.2

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肝動脈合併切除(+再建)

Yes 24 40.5 20.2 26.5 0.029*

No 122 65.6 45.1 57.8

輸血

Yes 33 55.8 22.3 48.1 0.308

No 113 63.7 46.8 47.7

病理組織学的因子

分化度

G1 or G2 124 65.2 44.4 49.2 0.013*

G3 22 38.9 NA 21.0

T 因子

T1 or T2 78 77.8 50.0 50.8 0.002*

T3 or T4 68 43.8 30.1 28.9

N 因子

陰性 91 74.2 51.7 NA <0.001*

陽性 55 39.6 23.7 28.9

肝臓浸潤

Yes 53 58.1 37.3 40.8 0.311

No 93 64.3 43.5 51.2

神経周囲浸潤

Yes 120 56.0 35.6 40.8 0.005*

No 26 92.9 70.7 NA

門脈浸潤

Yes 41 36.4 15.2 27.4 0.001*

No 105 70.6 50.2 NA

肝動脈浸潤

Yes 11 NA NA 21.0 0.039*

No 135 64.0 42.9 48.0

切除断端

陰性 or

粘膜病変陽性 128 65.3 46.0 49.2 0.001*

浸潤癌陽性 18 36.3 12.1 15.0

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根治切除 146 例の疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(多変量

解析) (表 3)

術前臨床因子、手術因子における単変量解析で有意差を認めた因子を多変

量解析にて検討すると、CEA>7.0 ng/mL (Hazard ratio 4.939, p<0.001)、

PLR>150 (Hazaed ratio 2.898, p=0.003)、肝葉切除(Hazard ratio 3.826,

p=0.003)の 3 因子が独立した予後規定因子として抽出された。

病理組織学的因子における単変量解析で有意差を認めた因子を多変量解

析にて検討すると、N 因子(Hazard ratio 2.037, p=0.034 が独立した予後規

定因子として抽出された。

表 3. 疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(多変量解析)

因子 P-value Hazard Ratio 95%CI

臨床因子

CEA >6.5 ng/mL <0.001* 4.939 1.999-12.202

CRP >0.39 mg/dL 0.118 1.823 0.858-3.871

Albumin >3.9 g/dL 0.854 1.070 0.520-2.201

NLR >2.5 0.101 1.675 0.898-4.549

PLR >150 0.003* 2.898 1.451-5.789

術前胆道ドレナージ: PTBD(+) 0.121 1.934 0.841-4.449

手術因子

肝葉切除: No 0.003* 3.826 1.577-9.282

肝動脈合併切除(+再建): Yes 0.768 1.137 0.485-2.664

病理組織学的因子

分化度 (G3) 0.714 1.200 0.452-3.186

T 因子 (T3 or T4) 0.953 1.029 0.395-2.685

N 因子 (陽性) 0.034* 2.037 1.055-3.935

神経周囲浸潤 (Yes) 0.874 1.124 0.264-4.790

門脈浸潤 (Yes) 0.105 2.311 0.840-6.360

肝動脈浸潤 (Yes) 0.843 1.159 0.269-4.996

切除断端 (浸潤癌陽性) 0.548 1.347 0.509-3.566

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対象の再検討

手術因子で肝葉切除の有無が独立予後規定因子として同定された。対象疾

患の背景の均一化を図るために、肝葉切除を施行せず、胆管切除のみを施行

した 25 例を除外し、残る 121 例に対し同様の検討を行うこととした。

対象および検討方法

対象症例

北海道大学病院消化器外科 II において、1999 年 11 月より 2009 年 10 月

に肝門部胆管癌の診断にて開腹手術を施行した 156 例のうち、非切除とし

た 10 例および胆管切除のみを施行した 25 例を除く、計 121 例を本研究の

対象症例とした(図 5)。

手術症例:156 例

非切除:10 例

腹膜播種症例: 8 例

局所過進展症例:2 例

手術症例:146 例

胆管切除:25 例

対象症例:121 例

図 5. 対象症例

開腹手術を施行された 156 例のうち非切除になった 10 例、および胆管切除

を施行した 25 例を除く、計 121 例を本研究の対象症例とした。

対象の内訳

患者背景は表 4 に示す。年齢中央値は 70 歳(42-82 歳)で、性別は男性 88

例、女性 33 例であった。腫瘍の局在は Bismuth-Corlette 分類 35 に従って

記載した。治療方針は全例が北海道大学大学院消化器外科学分野Ⅱで報告し

た治療ガイドライン 1 に沿って行った。術前胆管ドレナージは術前に黄疸を

呈していた 112 例(92.6%)に施行された。ドレナージ法の内訳は ENBD

のみが 62 例(51.3%)、PTBD のみが 43 例(35.5%)、ENBD に PTBD を

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追加したのは 7 例(5.8%)であった。術式は葉切除以上の肝切除、尾状葉切除、

胆管切除、リンパ節廓清を標準術式として全例に根治切除を行った。肝切除

に関しては右葉切除が 71 例(58.7%)、右三区域切除が 6 例(5.0%)、左葉

切除が 39 例(32.2%)、左三区域切除が 5 例(4.1%)であった。術前術後

の化学療法は決められた治療方針はない。術前化学療法は 1 例(0.83%)で

行い、術前放射線照射は 1 例(0.83%)に、術前化学放射線療法を 1 例(0.83%)

に行っていた。術後補助化学療法は 21 例(17.4%)に行った(表 4)。

術後合併症・手術関連死亡率

術後合併症は Clavien-Dindo 分類の IIIa 以上と定義した。術後合併症は

49 例(40.5%)に認めた。術後在院死亡は 5 例(4.1%)に認め、全例肝不

全であった。術後 30 日以内の死亡は 1 例(0.83%)に認めた。術後 90 日

以内の死亡は 8 例(6.6%)であった。

表 4. 対象患者の内訳

性質 症例数または結果

患者

年齢(歳), 中央値 (範囲) 70 (42-82)

性別 (男性/女性) 88/33

Bismuth-Corlette 分類 (TYPE)

I 21 (17.4 %)

II 39 (32.2 %)

IIIa 21 (17.4 %)

IIIb 25 (20.7 %)

IV 15 (12.4 %)

胆道ドレナージ

ENBD 62 (51.2 %)

PTBD 43 (35.5 %)

ENBD and PTBD 7 (5.8 %)

なし 9 (7.4 %)

術前門脈枝塞栓術 69 (57.0 %)

ICG R15 (%), 中央値 (範囲) 10.2 (2-25.5)

術式 (肝葉切除の種類)

右葉切除 (S1, 5, 6, 7, 8) 71 (58.7 %)

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右 3 区域切除 (S1, 4, 5, 6, 7, 8) 6 (5.0 %)

左葉切除 (S1, 2, 3, 4) 39 (32.2 %)

左 3 区域切除 (S1, 2, 3, 4, 5, 8) 5 (4.1 %)

周術期データ

手術時間 (分), 中央値 (範囲) 639 (426-1023)

出血量 (ml), 中央値 (範囲) 1670 (515-8590)

赤血球輸血 30 (24.8 %)

合併症 (Clavien-Dindo 分類≧IIIa) 49 (40.5 %)

術後在院日数 (日), 中央値 (範囲) 38 (11-154)

在院死亡 5 (4.1 %)

合併切除(+再建)

肝動脈 15 (12.4 %)

門脈 68 (56.2 %)

膵頭十二指腸切除 25 (20.7 %)

切除断端

陰性 or 粘膜病変陽性 108 (89.3 %)

浸潤癌陽性 13 (10.7 %)

病理学的病期 UICC (7th, 2009 )

I 11 ( 9.1 %)

II 38 (31.4 %)

IIIA 12 ( 9.9 %)

IIIB 22 (18.2 %)

IVA 35 (28.9 %)

IVB 3 ( 2.5 %)

術前治療

化学療法 1 (0.83 %)

放射線療法 1 (0.83 %)

化学療法+放射線療法 1 (0.83 %)

なし 118 (97.5 %)

術後補助化学療法

実施 21 (17.4 %)

なし 100 (82.6 %)

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術後観察期間

術後観察期間の中央値(range)は 84 ヶ月(55-181 ヶ月)で全 121 例が観察

期間中、予後追跡可能であった。

統計学的解析方法

統計解析には Stat View-J 5.0 statistical software (SAS Institute, Cary,

NC)と“Exact Test” produced by Prof. S. Aoki

(http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/exact/exact.html).を用いた。

対象 121 例の患者因子(年齢、性別、Bismuth type、CEA、CA19-9、

Albumin、CRP、NLR、PLR、胆道ドレナージ法 (PTBD の有無)、門脈塞

栓、術前 ICG R15)、臨床病理学的因子(分化度、T 因子、N 因子、肝浸潤の

有無 (Hinf)、神経浸潤の有無 (pn)、門脈浸潤の有無 (PV)、肝動脈浸潤の

有無 (HA)、切除断端(浸潤癌の有無)について各因子を二分化し、全生存

率、疾患特異的生存率、無再発生存率は Kaplan-Meier 法を用いて行い、

Log-rank test による群間比較を行った。p<0.05 を有意差ありと判定した。

有意差が得られた因子について、Cox 比例ハザードモデルを用いて多変量解

析を行った。ただし 121 例のうち 6 例ではリンパ球数が欠損しているため、

NLR と PLR は 115 例で検討した。

尚、患者因子の検査値の cut-off 値は統計学的有意差の最も大きい値を選

択した。患者因子の検査値の測定に際しては、黄疸症例に関しては胆道ドレ

ナージ後に、胆管炎、尿路感染、肺炎などの炎症の無い時期に測定した。採

血検査施行時期は手術日に最も近い日(中央値 7 日、範囲 1-30 日)に測定

された値を採用した。

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結果

① 生存率の解析、予後因子の同定

根治切除全 121 例の生存率・生存期間の中央値

121 例の 5 年全生存率は 44.0%、全生存期間の中央値は 48.2 ヶ月であっ

た(図 6a)。5 年疾患特異的生存率は 53.0%、疾患特異的生存期間の中央値は

74.6 ヶ月であった(図 6b)。5 年無再発生存率は 42.3%、無再発生存期間の

中央値は 45.8 ヶ月であった(図 6c)。

図 6a. 根治切除例全 121 例の全生存率曲線

5 年全生存率は 44.0%、全生存期間の中央値は 48.2 ヶ月であった。

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図 6b. 根治切除例全 121 例の疾患特異的生存曲線

5 年疾患特異的生存率は 53.0%、疾患特異的生存期間の中央値は 74.6 ヶ月

であった。

図 6c. 根治切除例全 121 例の無再発生存曲線

5 年無再発生存率は 42.3%、無再発生存期間の中央値は 45.8 ヶ月であった。

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病理学的所見

病理組織学的分化度は well differentiated carcinoma (G1)が 40 例

(34.8%)、moderately differentiated carcinoma (G2)が 60 例(52.1%)、

poorly differentiated carcinoma (G3)が 15 例(13.0%)だった。UICC 病

期に基づく Stage は I が 11 例、II が 38 例、IIIA が 11 例、IIIB が 19 例、

IVA が 33 例、IVB が 3 例であった。Stage 別(I, II, IIIA, IIIB, IVA/B)の 5

年全生存率は各々77.8, 74.5, 60.0, 35.9, 22.0%であった(図 7)。各 Stage 間

で疾患特異的生存率に有意差は認めなかった。

図 7. UICC 病期分類による疾患特異的生存率曲線

各病期間に有意差は認めなかった。

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25

根治切除 121 例の疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(単変量

解析) (表 5)

単変量解析では術前臨床因子として CEA>7.0 ng/mL (p<0.001)、

CA19-9>300 U/mL (p=0.003)、Albumin<3.5 g/dL (p=0.003),CRP>0.5

mg/dL (p<0.001),PLR>150 (p=0.012),術前門脈枝塞栓術あり(p=0.036)

の 6 因子が予後規定因子として抽出された。病理学的因子として T 因子

(p<0.001)、N 因子(p<0.001)、神経周囲浸潤あり(p=0.017)、門脈浸潤あり

(p=0.001)、切除断端浸潤癌陽性(p=0.004)の 5 因子が予後規定因子として抽

出された。

表 5. 疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(単変量解析)

因子 症例数

3 年

生存率 (%)

5 年

生存率 (%) MST (月) P-value

術前臨床因子

年齢

<70 63 76.5 59.2 88.1 0.232

≥70 58 67.2 46.1 52.0

性別

男性 88 71.2 55.6 69.2 0.591

女性 33 74.2 46.6 56.3

Bismuth-Corlette 分類

I or II 60 70.1 51.9 62.5 0.520

III or IV 61 74.0 54.3 69.2

CEA (ng/mL)

≤7.0 107 77.9 56.6 88.1 <0.001*

>7.0 14 25.2 25.2 20.5

CA19-9 (U/mL)

≤300 104 78.3 57.2 74.6 0.003*

>300 17 34.4 27.5 27.6

Albumin (g/dL)

<3.5 26 48.2 28.9 34.6 0.003*

≥3.5 95 77.9 58.9 88.1

CRP (mg/dL)

≤0.5 65 80.0 67.5 NA <0.001*

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>0.5 56 61.8 34.3 44.6

NLR

≤2.5 66 81.8 57.5 74.6 0.225

>2.5 49 56.9 46.4 49.3

PLR

≤150 53 85.7 62.4 NA 0.012*

>150 62 58.3 43.8 49.3

術前胆道ドレナージ

PTBD(+) 50 66.7 43.9 49.3 0.194

PTBD(-) 71 75.5 58.9 88.1

術前門脈枝塞栓術

Yes 69 66.5 42.2 46.7 0.036*

No 52 79.1 66.9 NA

ICG 15R (%)

≤10 56 67.3 58.6 NA 0.551

>10 65 76.0 49.5 56.3

病理組織学的因子

分化度

G1 41 81.6 55.8 88.1 0.413

G2 or G3 80 66.7 51.3 60.8

T 因子

T1 or T2 60 86.2 63.6 NA <0.001*

T3 or T4 61 55.2 40.3 37.1

N 因子

陰性 77 84.2 67.6 NA <0.001*

陽性 44 49.1 25.6 34.7

肝臓浸潤

Yes 57 66.3 48.0 56.3 0.201

No 64 76.6 57.0 88.1

神経周囲浸潤

Yes 100 66.8 47.5 54.8 0.017*

No 21 95.0 77.2 NA

門脈浸潤

Yes 43 51.1 36.1 36.1 0.001*

No 78 82.1 61.1 NA

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肝動脈浸潤

Yes 9 66.7 NA 36.1 0.215

No 112 72.3 54.2 69.2

切除断端

陰性 or

粘膜病変陽性 108 74.9 57.1 74.6 0.004*

浸潤癌陽性 13 48.6 19.4 28.0

根治切除 121 例の疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(多変量

解析) (表 6)

術前臨床因子における単変量解析で有意差を認めた 6 因子を多変量解析

にて検討すると、CEA>7.0 ng/mL (Hazard ratio 5.033, p<0.001)、

Albumin<3.5 g/dL (Hazard ratio 2.264, p=0.020),CRP>0.5 mg/dL

(Hazard ratio 3.294, p<0.001),PLR>150 (Hazard ratio 2.207, p=0.011)

の 4 因子が独立した予後規定因子として抽出された。

病理学的因子における単変量解析で有意差を認めた 5 因子を多変量解析

にて検討すると、N 因子 (Hazard ratio 2.908, p<0.001)、門脈浸潤あり

(Hazard ratio 2.339, p=0.025)、切除断端浸潤癌陽性 (Hazard ratio 2.314,

p=0.027) の 3 因子が独立した予後規定因子として抽出された。

表 6. 疾患特異的生存率に関する予後規定因子の検討(多変量解析)

術前因子 Hazard Ratio (95%CI) P-value

CEA >7.0 ng/mL 5.033 (2.273-11.14) <0.001*

CA19-9 >300 U/mL 1.000 (0.461-2.166) 0.999

Albumin <3.5 g/dL 2.264 (1.140-4.497) 0.020*

CRP >0.5 mg/dL 3.294 (1.799-6.032) <0.001*

PLR >150 2.207 (1.200-4.060) 0.011*

術前門脈枝塞栓術: Yes 1.782 (0.990-3.503) 0.059

病理組織学的因子

T 因子 (T3 or T4) 1.026 (0.478-2.205) 0.947

N 因子 (陽性) 2.908 (1.609-5.258) <0.001*

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神経周囲浸潤 (陽性) 0.847 (0.295-2.429) 0.758

門脈浸潤 (陽性) 2.339 (1.114-4.912) 0.025*

切除断端 (浸潤癌陽性) 2.314 (1.099-4.872) 0.027*

PLR と病理学的因子との関係

Smith ら 16 は膵癌において PLR が独立予後規定因子であり、腫瘍径。リ

ンパ節転移陽性比と関連があったと述べている。本研究でも PLR が独立予

後規定因子として同定された。そこで PLR と病理学的因子の関係を解析す

ると、腫瘍分化度、T 因子、N 因子と PLR に関連を認めた(表 7)。関連を認

めた因子について、Mann-Whitney U 検定で解析すると腫瘍分化度について、

G1, G2, G3 と各群で PLR に有意差があり、分化度が低下するほどに PLR が

高くなっていた(図 8a)。T 因子について T4 が T1, T2, T3 に比し有意の PLR

が高かった(図 8b)。N 因子については PLR に有意差を認めなった(図 8c)。

表 7. PLR と病理学的因子との関係

因子 症例数 PLR>150 P-value

分化度

G1 40 15 0.010*

G2 or G3 75 47

T 因子

T1 or T2 57 25 0.032*

T3 or T4 58 37

N 因子

陰性 76 36 0.049*

陽性 39 26

肝臓浸潤

Yes 51 29 0.571

No 64 33

神経周囲浸潤

Yes 94 54 0.107

No 21 8

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門脈浸潤

Yes 38 24 0.162

No 77 38

肝動脈浸潤

Yes 7 4 0.860

No 108 58

切除断端

陰性 or 粘膜病変陽性 102 52 0.078

浸潤癌陽性 13 10

図 8a. PLR と病理組織学的分化度の関係

腫瘍分化度について、G1, G2, G3 と各群で PLR に有意差があり分化度が低

下するほどに PLR が高くなっていた。(G1 vs. G2, P=0.018; G2 vs. G3,

P=0.046)

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図 8b. PLR と T 因子の関係

T 因子について T4 が T1, T2, T3 に比し有意の PLR が高かった

図 8c. PLR と N 因子の関係

N 因子については PLR に有意差を認めなった

(小括1)

術前臨床因子おいて CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5

mg/dL、PLR>150 の 4 因子が独立予後規定因子として抽出された。病理学

的因子において N 因子、門脈浸潤あり、切除断端浸潤癌陽性 の 3 因子が独

立予後規定因子として抽出された。

PLR と病理学的因子の関係を解析すると、病理学的分化度、T 因子、N 因

子と PLR に関連を認めた。特に、病理学的分化度が低下するほどに PLR が

有意に高くなっていた。

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② 予後予測 Scoring System の構築、検証

予後予測 Scoring System の構築・検証

術前臨床因子における多変量解析で独立予後規定因子として抽出された

CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5 mg/dL、PLR>150 の 4 因

子に関して、各 1 点を付与し、その合計点を Preoperative Prognostic Score

(PPS)と定義した(表 8)。

PPS別に全生存率をみると 5年生存率は PPS 0, 1, 2, 3/4で各々75.0, 44.2,

38.5, 0%であった。PPS 2 と PPS 3/4 の間に生存率で有意差を認めた

(p<0.001)。(図 9a) PPS 別に疾患特異的生存率をみると 5 年生存率は PPS 0,

1, 2, 3/4 で各々84.3, 51.3, 46.4, 0%であった。PPS 3/4 の生存期間中央値は

11.3 ヶ月であった。PPS 0 と PPS 1 の間に生存率で有意差を認めた

(p=0.013)。PPS 2 と PPS 3/4 の間に生存率で有意差を認めた(p<0.001)。(図

9b) PPS 別に無再発生存率をみると 5 年生存率は PPS 0, 1, 2, 3/4 で各々

75.0, 41.6, 38.5, 0%であった。PPS 2 と PPS 3/4 の間に生存率で有意差を

認めた(p<0.001)。(図 9c)

PPS 3/4 の 16 例について、その死因を検討した。3 例は術後合併症で死

亡し、その内訳は肝不全 2 例、胃十二指腸仮性動脈瘤破裂 1 例であった。2

例は他病死であり、内訳は消化管出血 1 例、間質性肺炎 1 例であった。16

例のうち上記 5 例を除いた 11 例で全例に再発を認めた。内訳は多発肝転移

5 例、腹膜播種 3 例、腹膜播種と肝転移 1 例、骨転移と癌性リンパ管症 1

例、肝門部リンパ節転移 1 例であった。

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表 8. Preoperative Prognostic Score(PPS)得点換算表

因子 得点

CEA ≤7.0 ng/mL 0

>7.0 ng/mL 1

Albumin ≥3.5 g/dL 0

<3.5 g/dL 1

CRP ≤0.5 mg/dL 0

>0.5 mg/dL 1

PLR ≤150 0

>150 1

図 9a. PPS 別の全生存率曲線

5 年生存率は PPS 0, 1, 2, 3/4 で各々75.0, 44.2, 38.5, 0%であった。PPS 2 と PPS 3/4

の間に生存率で有意差を認めた(p<0.001)。

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図 9b. PPS 別の疾患特異的生存曲線

5 年生存率は PPS 0, 1, 2, 3/4 で各々84.3, 51.3, 46.4, 0%であった。PPS 3/4 の生存期

間中央値は 11.3 ヶ月であった。PPS 0 と PPS 1 の間に生存率で有意差を認めた

(p=0.013)。PPS 2 と PPS 3/4 の間に生存率で有意差を認めた(p<0.001)。

図 9c. PPS 別の無再発生存率曲線

5 年生存率は PPS 0, 1, 2, 3/4 で各々75.0, 41.6, 38.5, 0%であった。PPS 0 と PPS 2

と PPS 3/4 の間に生存率で有意差を認めた(p<0.001)。

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(小括2)

術前臨床因子における多変量解析で独立予後規定因子として抽出された

CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5 mg/dL、PLR>150 の 4 因

子に関して、各 1 点を付与し、その合計点を Preoperative Prognostic Score

(PPS)と定義すると、全生存率、疾患特異的生存率、無再発生存率におい

て予後とよく相関を認めた。特に PPS 3/4 の症例はきわめて予後不良であ

った。

③ PPS と病理組織学的因子との関連性の検討

PPS と独立予後規定因子であった病理組織学的因子との関連性を検討し

た(表 9)。PPS と N 因子(p=0.002)、切除断端陽性(浸潤癌)(p=0.022)に

関連を認めたが、門脈浸潤との関連性は認められなかった(p=0.113)。

表 9. PPS と病理組織学的因子との関連性

因子

PPS 0

(n=28)

PPS 1

(n=43)

PPS 2

(n=28)

PPS 3

(n=12)

PPS 4

(n=4)

P-value

N 因子

陽性 N=39 4 13 13 7 2 0.002*

陰性 N=76 24 30 15 5 2

門脈浸潤

陽性 N=38 6 13 13 5 3 0.113

陰性 N=77 22 30 15 7 1

切除断端(浸潤癌)

陽性 N=13 1 3 6 2 1 0.022*

陰性 N=102 27 40 22 10 3

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PPS のリンパ節転移、門脈浸潤に対する診断能の検討

PPS によるリンパ節転移の有無の診断能を検討した(表 10)。PPS 0 を検

査陰性とした場合、陰性的中率(NPV)は 85.7%であった(感度 89.7%, 特異

度 31.6%, 陽性的中率 46.1%, 正診度 51.3%)。PPS≤1、PPS≤2、PPS≤3 を

検査陰性とした場合の NPV は各々71.0, 69.7, 66.7%であった。

表 10. PPS のリンパ節転移に対する診断能の関係

PPS

N 因子

陽性 陰性

感度

(%)

特異度

(%)

PPV

(%)

NPV

(%)

精密度

(%)

0

陽性 (PPS>0) 35 52 89.7 31.6 46.1 85.7 51.3

陰性 (PPS=0) 4 24

1

陽性 (PPS>1) 22 22 56.4 71.1 50.0 71.0 68.7

陰性 (PPS≤1) 17 54

2

陽性 (PPS>2) 9 7 23.1 90.1 56.2 69.7 67.8

陰性 (PPS≤2) 30 69

3

陽性 (PPS>3) 2 2 5.1 97.4 50.0 66.7 66.1

陰性 (PPS≤3) 37 74

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PPS による門脈浸潤の有無の診断能を検討した(表 11)。PPS 0 を検査陰

性とした場合、陰性的中率(NPV)は 78.6%であった(感度 84.2%, 特異度

28.6%, 陽性的中率 36.8%, 正診度 47.0%)。PPS≤1、PPS≤2、PPS≤3 を検

査陰性とした場合の NPV は各々73.2, 67.7, 66.7%であった。

表 11. PPS による門脈浸潤の有無の診断能の関係

PPS

門脈浸潤

陽性 陰性

感度

(%)

特異度

(%)

PPV

(%)

NPV

(%)

精密度

(%)

0

陽性 (PPS>0) 32 55 84.2 28.6 36.8 78.6 47.0

陰性 (PPS=0) 6 22

1

陽性 (PPS>1) 19 25 50.0 67.5 43.2 73.2 61.7

陰性 (PPS≤1) 19 52

2

陽性 (PPS>2) 6 10 15.8 87.0 37.5 67.7 63.5

陰性 (PPS≤2) 32 67

3

陽性 (PPS>3) 1 3 2.63 96.1 25.0 66.7 65.2

陰性 (PPS≤3) 37 74

(小括3)

PPS と病理組織学的因子との関連性を検討すると、PPS とリンパ節転移

の有無、切除断端陽性(浸潤癌)に関連を認めたが、門脈浸潤との関連性は認

められなかった。PPS のリンパ節転移、門脈浸潤の予測能力を検討したが、

いずれも不十分であった。

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考察

① 生存率の解析、予後因子の同定の検討

本研究で解析した症例の肝門部胆管癌に対して根治切除(肝葉切除、胆管

切除、リンパ節廓清)後の 5 年全生存率は 44.0%、全生存期間の中央値は

48.2 ヶ月と極めて良好な成績が得られている。High volume center から報

告されている 5 年全生存率 22~40%1-11 を上回る成績が得られた。これは

本検討では根治切除症例であっても胆管切除、リンパ節廓清のみの 25 例は

除外していることによると考えられる。本検討では胆管切除のみが手術因子

として独立予後規定因子であったことより、同手術を施行した 25 例を対象

から除外した。本研究では Bismuth TYPE I, II でも肝葉切除を施行した症

例を対象にしている。術後在院死亡率および周術期合併症率は各々4.3%、

41.7%であり、種々の報告と 0~15%、14~66%と同等の成績であった。

本研究では術前臨床因子おいて CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、

CRP>0.5 mg/dL、PLR>150の 4因子が独立予後規定因子として抽出された。

病理学的因子において N 因子、門脈浸潤あり、切除断端浸潤癌陽性の 3 因

子が独立予後規定因子として抽出された。PLR と病理学的因子の関係を解

析すると、腫瘍分化度、T 因子、N 因子と PLR に関連を認めた。特に腫瘍

分化度については分化度が低下するほどに PLR が有意に高くなっていた。

胆管癌の診断には種々のバイオマーカーが用いられている。本研究でも

CEA が独立予後規定因子として同定された。Juntermanns ら 114 は肝門部

胆管癌において CEA が腫瘍の Stage と非切除率を相関があり、患者の予後

の決定の一助になる可能性があると報告している。さらに、いくつかの論文

では CEAが肝内胆管癌の独立予後規定因子であると述べられている 113-115。

一方で、肝門部胆管癌において CEA が独立予後規定因子であるという報告

はない。

知り得る限りでは、本研究が PLR が生存率の独立予後規定因子であった

という最初の報告である。なぜ、NLR ではなく PLR と CRP が独立予後規

定因子として抽出された理由は本研究では明確にできないが、他の消化器癌

と同様に肝門部胆管癌においても SIR が重要な予後因子である可能性が示

された。さらに、今回のデータは肝門部胆管癌において PLR が腫瘍進展や

組織異型度に関連しており、この疾患の悪性度を反映している可能性を示唆

している。膵癌において術前 PLR が独立予後因子であり、腫瘍の大きさと

リンパ節比に関連していたという報告がある 16。

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血清 CRP 値は SIR を示す因子と考えられており、IL-8, IL-6, tumor

necrosis factor (TNF)αなどの炎症性サイトカインによって発現が増加す

る。In vitro の研究では胆管癌の cell line の自己分泌成長因子として知られ

る IL-6 は抗アポトーシス蛋白の Mcl-1 の発現を誘導することがわかってお

り 116-118、IL-6 は胆管癌患者において上昇している 119。注目すべきは切除

後に IL-6 が急に減少していたことであり 119、CRP 高値は進行胆管癌患者

の IL-6 の増加を反映している可能性がある。そして CRP 値の上昇は肝門

部胆管癌を含む、他の消化器癌の予後不良に関連がある 120。

リンパ節転移は、肝門部胆管癌において強力な予後規定因子であるという

報告がある 8,121-123。本研究でもリンパ節転移は独立予後規定因子であった。

術前にリンパ節転移を予測することが出来れば肝門部胆管癌の治療戦略を

立てる上で、きわめて重要な意義を持つ。しかしながら、過去の検討で胆道

癌における術前 CT 検査によるリンパ節転移に関して最も高い陽性的中率

は 67%に過ぎず、術前 CT 検査によるリンパ節転移の予測は困難であるこ

とが示されている 124,125。したがって、本研究においてもリンパ節転移は術

前因子に含めることは困難と考えた。

Okuno ら 126 は modified GPS が肝門部胆管癌切除後の独立予後規定因子

であったと報告している。これも CRP と albumin を用いた Scoring System

である。本研究で独立予後規定因子として同定された CRP, albumin を用い

た Scoring System であり、本研究結果の一部を支持する結果であると考え

る。

② 予後予測 Scoring System の構築、検証

本研究で同定した術前臨床因子における多変量解析で独立予後規定因子

として抽出された CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5 mg/dL、

PLR>150 の 4 因子に関して各 1 点を付与し、その合計点を Preoperative

Prognostic Score(PPS)と定義したところ、全生存率、疾患特異的生存率、

無再発生存率において予後との強い相関を認め、予後予測の Scoring

System としての有用性を示すことが出来た。

本研究では PPS 0 の症例の予後はきわめて良好であることが示され、こ

れらの患者は手術療法の良い適応であると考えられる。さらに、現在施行中

の術後補助療法の臨床試験によりその有効性が示されれば、補助療法を加え

ることでさらなる成績の向上が期待される。

一方で、PPS 3 および PPS 4 の患者の術後生存率は全生存率、疾患特異

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的生存率もきわめて不良であり、先に述べた切除不能癌に対する化学療法の

臨床試験 ABC-02 試験および BT22 試験とほぼ同等の成績であった。今後、

術後補助療法の有効性が示されたとしても、これらの患者群の成績を大幅に

改善することは困難と考えられ、現時点では治療の第一選択として手術治療

を適応しがたいと考える。現時点での理想的な治療戦略としては、術前化学

療法などの非手術療法を先に施行し、残肝機能が十分で非切除因子を認めな

ければ、根治切除の適応を考慮すべきと考えるが、現状では手術を企図した

肝門部胆管癌患者に対する化学療法などの術前治療の有効性を示すエビデ

ンスは無い。さらに、手術療法への転換時期についても検討が必要である。

従って、現状では切除不能肝門部胆管癌に使用されている抗癌剤(GEM、

cisplatin など)を治療アームとして臨床試験を実施すべきであり、その準

備を進められている。

また、PPS 1 または PPS 2 の患者群についてもその治療成績は満足のい

くものではなく、今後は新規薬剤の開発により大きな進歩を遂げている化学

療法や科学放射線療法との組み合わせ治療を考慮すべきである。すなわち、

PPS 0 の患者同様、早期に有効な術後補助療法を確立し、これを治療に組

み入れるべきことはもちろん、膵癌に対して盛んに研究されている”手術可

能患者を対象とした術前化学(放射線)療法の臨床試験”を推進し、その成

果をいち早く治療に反映させるべきと考える。

本研究で構築した予後予測 Scoring System は術前の採血データのみで構

成されており、簡便かつ安価でありながら治療方針の決定に有用な情報を提

供可能なものである。特に、本研究でも母集団の約半数を占めている UICC

Stage IIIB, IVA, IVB の症例のように高度進行例に対して有用であると考

える。

本研究は、10 年間におよぶ単一施設の限られた症例に関する後ろ向き研

究である。手術適応、術式選択、複雑を極める手術手技に大きな施設間格差

が存在する疾患であることを考慮すれば、本研究が単一施設におけるコホー

トであることに一定の意義を見いだすことはできるものの、その evidence

level は決して高いとは言えない。本疾患がさほど高い罹患率を有しないこ

とを考えると、今後、本研究の追試として、多施設共同での前向き研究がで

きるだけ早期に行われる必要があると考える。また、手術治療と非手術治療

との組み合わせに関する多施設共同前向き研究も早期に推進すべき課題で

あると思われる。

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総括および結論

肝葉切除を伴う根治切除を施行した肝門部胆管癌症例において、術前臨床因

子おいて CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5 mg/dL、PLR>150

の 4 因子が、病理学的因子として N 因子、門脈浸潤あり、切除断端浸潤癌

陽性の 3 因子が独立した予後不良因子として抽出された。

PLR と病理学的因子の関係を解析すると、腫瘍分化度、T 因子、N 因子と

PLR との間に関連を認めた。

術前臨床因子における多変量解析で独立予後規定因子として抽出された

CEA>7.0 ng/mL、Albumin<3.5 g/dL、CRP>0.5 mg/dL、PLR>150 の 4 因

子に関して各 1 点を付与し、その合計点を Preoperative Prognostic Score

(PPS)と定義したところ、全生存率、疾患特異的生存率、無再発生存率に

おいて予後との強い相関を認め、予後予測の Scoring System としての有用

性を示すことが出来た。

術前の予後予測により、化学療法などの非手術療法の適応を考慮するなど、

肝門部胆管癌に対する新たな手術治療体系の確立に寄与する貴重な研究成

果であると考えられた。

本研究が単一施設の長期にわたるものであったことは、その結果について

さらに高い水準での再評価が必要である。今後、本研究の追試として多施設

共同での前向き研究ができるだけ早期に行われる必要があると考える。

今回の研究による結果を治療戦略に反映させるとすると、PPS 3 または

PPS 4 の患者群には何らかの非手術治療が行われるべきであり、現在、切

除不能胆管癌に使用されている抗癌剤を治療アームとした臨床試験が展開

されるべきである。また、その病勢維持例や奏功例に対する手術治療追加の

適否や、その施行時期に関しても臨床試験による検討が必要である。

PPS 0~2 の患者群については早期に有効な術後補助療法を確立し、これ

を治療に組み入れるべきことはもちろん、膵癌に対して盛んに研究されてい

る”手術可能患者を対象とした術前治療”の臨床試験が推進させるべきと

考える。

まとめとして、本疾患に対する手術成績向上のためには、手術治療と非手

術治療との組み合わせによる新たな治療体系を多施設共同前向き試験によ

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って早期に確立すべきであるが、患者数が多くないこと、手術適応や術式に

関する施設間格差が大きいことが多施設試験を遂行する際の課題である。

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謝辞

稿を終えるにあたり、本研究の機会をお与え頂き、全般にわたり直接御指

導・御鞭撻を賜りました、北海道大学大学院医学研究科消化器外科学分野Ⅱ

前教授 故近藤 哲先生、現教授 平野 聡先生、同特任助教 野路武寛先生

に深く感謝申し上げます。

また、本研究の遂行、学位論文の作成にあたり、様々な点で御助言や御協

力を頂きました北海道大学大学院医学研究科消化器外科学分野Ⅱ教室員一

同、秘書の皆様、および事務職員の皆様に厚く御礼を申し上げます。

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