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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日 Kyoto Association of 2nd & 3rd Generation HibakushaAtomic Bomb Survivors2018年4月22日(日)2018年度総会 高橋博子さんの記念講演 京都「被爆2世・3世の会」会報 京都市中京区壬生仙念町30-ラボール京都4階 京都原水爆被災者懇談会気付 TEL075-811-3203 FAX075-811-3213 HP http://aogiri2-3.jp 2018年度総会 44人の参加で開催しました。 第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」に集まりましょう 被爆73年目を迎えた被爆者の今と課題 被爆地ヒロシマが被曝を拒否する! (守田敏也さん) 10 会員から会員へ@みなさんからのお便り紹介 11 本・DVD・映画・番組の紹介と交流 13 SCRAPBOOK再び原爆症認定 東京高裁 国控訴を棄却(中國) 14 731部隊の構成全容明らかに 国立公文書館が名簿開示 15 編集後記 15 5月の行事カレンダー 16 被爆体験の継承(64) 綾部と広島で、 私の被爆体験と「ふりそでの少女」を語り継ぐ 福留美智子さん

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

Kyoto Association of 2nd & 3rd Generation Hibakusha(Atomic Bomb Survivors)

2018年4月22日(日)2018年度総会 高橋博子さんの記念講演

別 冊

京都「被爆2世・3世の会」会報 京都市中京区壬生仙念町30-2

ラボール京都4階 京都原水爆被災者懇談会気付

TEL075-811-3203 FAX075-811-3213

HP http://aogiri2-3.jp

2018年度総会 44人の参加で開催しました。 2

第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」に集まりましょう 4

被爆73年目を迎えた被爆者の今と課題 6

被爆地ヒロシマが被曝を拒否する! (守田敏也さん) 10

会員から会員へ@みなさんからのお便り紹介 11

本・DVD・映画・番組の紹介と交流 13

SCRAPBOOK/ 再び原爆症認定 東京高裁 国控訴を棄却(中國) 14

731部隊の構成全容明らかに 国立公文書館が名簿開示 15

編集後記 15

5月の行事カレンダー 16

被爆体験の継承(64) 綾部と広島で、

私の被爆体験と「ふりそでの少女」を語り継ぐ 福留美智子さん

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

京都「被爆2世・3世の会」2018年度年次総会

44人の参加で開催しました。4月22日(日)

2018年度年次総会は予定通り4月22日(日)13:30から開催しました。(ラボール京都)

参加者は一般参加者15人を含めて44人。議長に石角敏明さんを選出して運営を進めました。

■冒頭、参加者全員で石田信己さんを追悼して黙とうを捧げました。

■来賓として原発賠償京都訴訟原告団共同代表の福島敦子さんよりごあいさついただきました。

京都「被爆2世・3世の会」2018年度総会おめでとうございます。

私は南相馬市から京都へ避難して7年目を迎えました。原発賠償京都訴訟の共同代表を務めてきま

した。京都「被爆2世・3世の会」のみなさまには以前から力強く支援していただき、心からお礼を

申し上げます。

私たちの裁判は今年3月15日、京都地裁で第一審の判決を迎えま

した。一部勝訴ということになっていますが、174人の原告の内1

10人の避難の権利が認められる判決でした。60人余りが認められ

なかったのですが、世帯数でみると認められなかった地域はつくば市

や仙台市だけでした。

私たち原告のほとんどが避難指示地域以外からの自主避難してきた

人たちでした。その自主避難してきた人たちに避難の権利が認められ

たということで、私自身も驚くほど原告の人たちの喜びは大きなもの

でした。原発事故によって帰る場所を失った私たちの7年間の苦労、

辛い体験が、本来国や東電が負うべきものとして認められたのです。

しかし判決はまだまだ不十分さをたくさん残していたため、私たち原告は満額認められた原告1名

を除き全員一人も欠けることなく控訴しました。裁判は大阪高裁に舞台を移して闘い続けることにな

ります。ここまでこれたのも、京都「被爆2世・3世の会」のみなさまはじめ、多くの支援者さんの

支えがあり、私たちの民意が裁判官に届いた「大きな一歩」であると思っています。引き続いてのご

支援をお願いいたします。

福島第一原発事故は、日本最大級のというよりも世界最大級の公害問題だと思っています。私たち

が追及し解決すべき最大の問題は健康被害です。福島では今でも特に子どもたちの健康被害がどんど

ん広がっています。甲状腺がんだけではありません。この問題解決のためにさらに頑張っていきたい

と思っています。私たち自身もどんどん力をつけて政治的解決していけるように、みなさまと一緒に

闘っていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

■総会の一部は2017年度の活動のまとめと2018年度方針の議案の提案と審議。平世話人代表が

提案し、短時間でしたが審議を行いました。議案は全員一致で承認されました。承認された2018

年度世話人のみなさんは表の通りです。

井坂博文さん (京都市北区) 平 信行さん(京都市南区)世話人代表

吉田妙子さん (京都市北区)会計監査 米重節男さん(向日市) 世話人副代表

掘 照美さん (京都市上京区) 石角敏明さん(長岡京市)

守田敏也さん (京都市左京区) 谷口公洋さん(城陽市)

奥田美智子さん (京都市左京区)会計監査 鳥羽洋子さん(茨木市)

佐々本好信さん (京都市右京区)

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■2部は学習記念講演。高橋博子さんに「アメリカ公文書から迫る原発と核兵器推進体制の闇:A

BCCと核開発」と題した講演を1時間30分に渡ってお話しいただきました。講演の概要は次のよ

うな内容でした。

原爆投下後、広島・長崎で死者の発生がいつ

までも続く惨状は当初複数の外国人記者によ

って発信されていた。しかし間もなく報道は

禁止され、米政府によって原爆放射線の影響

は軽視できるものとする公式見解が発表され、

その見解が長く維持されることになる。

しかし、1943年に開始されたマンハッタ

ン計画は当初から、放射性物質の影響をもた

らす軍事兵器として開発がすすめられていた。

「日本で使用された2つの原爆の効果につい

ての研究は、わが国にとってきわめて重要で

ある。このユニークな機会は次の世界大戦ま

で再び得ることはできないであろう」として、アメリカによる広島・長崎の被爆者研究は始められ

た。

そのために1947年、広島・長崎に米国軍合同調査団による原爆医療調査を引き継ぐ形でABC

C:原爆傷害調査委員会)発足。

ABCCによって広島・長崎の被爆者の様々な調査が進められた。特に子どもたちを対象とした発

達状況調査は詳細に渡った。原爆投下当時小学校入学前後だった子どもたちの6~7年後の年代世

代の児童たちの調査計画や報告が明らかにされている。

1948年から1953年までの実施で、死産、奇形、出生時の体重、性の割合を両親の放射線被

曝との関連で調査したものもある。対象は明らかに被爆二世だ。

1953年以来、米原子力委員会(AEC)と米空軍(USAF)とランド・コーポレーションは、

ストロンチゥム90の世界への分散について研究するプロジェクト・サンシャインという実験計画

を立て、遺族の同意なく世界中から人の組織や骨を集めて分析した。日本からもABCCを通じて

収集した。

プロジェクト・サンシャインの結果を反映した国連科学委員会報告書(1958年)によると、1

950年代から既に内部被曝について詳しく分析していることが報告されている。また、子どもや

胎児への影響が大きいことも示唆されている。

しかし、これほど重要な情報は軍事機密扱いとされ、逆に被曝の影響を軽視する、無視する状況を

世界に作り出してきた。

このような事実をみなさんと共有し、みなさんの進められている活動が如何に大事かということ

をより深く認識していただきたい、と講演は締め括

られました。

講演の後、活発な質疑応答も行われました。会場

の都合で時間が足りなくなるほどでした。

■尚、講演の詳細と質疑応答の内容は、次号以降

の会報であらためて紹介することにいたします。

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」 に集まりましょう

① 開催目的

① 被爆二世・三世の各地の「会」や個人がつどい、活動の経験交流と学びあいを通して、より充

実した「2世・3世」の運動を創り出していく。

② 健康問題など2世・3世に共通する問題を掘り下げ、共同の力による問題解決の方向を考え合

っていく。

③ 被爆二世・三世の全国や各地域の「会」と個人の日常的な関係作り、ネットワークを形成して

いく機会とする。

② 開催日

2018年5月19日(土)~5月20日(日)

③ プログラムと時間と会場

[1日目/5月19日(土)]

■全体会 会場:聞法(もんぽう)会館

(西本願寺の宿)研修室1(西本願寺の北側)

13:30 受付開始

14:00 開会

14:00~14:15 開会あいさつ・諸連絡

14:15~15:45 記念講演 木戸季市さん(日本被団協事務局長)

「被爆73年目を迎えた被爆者運動の課題と2世・3世への期待」

15:45~16:00 休憩

16:00~18:00 被爆体験を語り継ぐとりくみ実例紹介

① 被爆体験伝承講話の実演(広島県被爆二・三世の会)

② 岡山「被爆2世・3世の会」被爆証言DVDの上映

18:00~18:30 チェックイン、会場移動

■夕食交流会 会場:龍谷大学大宮キャンパス・生協食堂(七条大宮東)

18:30~20:30

20:30 一日目終了

[宿泊される方] 聞法(もんぽう)会館

[2日目/5月20日(日)]

■分科会 会場:キャンパスプラザ京都(京都駅北東・ビッグカメラ向かい側)

9:00~12:00 分科会

① 被爆2世・3世の健康問題と対策について話し合おう

② 被爆の体験と証言をどう継承し普及するか話し合おう

③ 被爆3世のことについて3世同士で話し合おう

聞法会館(西本願寺の宿)

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

12:00~12:30 分科会報告と

全体のまとめ

12:30 二日目終了

■昼食後オプショナルツアー(自由参加)

① 立命館大学国際平和ミュージアム(京都市北区)

京都「被爆2世・3世の会」会員が案内

② 京都霊山護国神社(京都市東山区)

京都「被爆2世・3世の会」会員が案内

④ 参加費

会議室と資料代 1,720円 1日だけの参加の場合は別途

宿泊費 7,280円 聞法会館宿泊費 @5,940円(税込)

朝食代 @1,340円(税込)

※朝食不要の場合は負担なし

夕食交流会 4,000円

合計 13,000円 一人当たりフル参加の場合

⑤ 主催

第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」実行委員会

(広島県被爆二・三世の会、岡山「被爆2世・3世の会」、京都「被爆2世・3世の会」)

⑥ つどい成功のために

① 広島、岡山、京都の「2世・3世の会」会員はしっかりと参加していきましょう。

② 私たちとつながりのある全国の2世、3世によびかけて、多くの参加者を募っていきましょう。

③ この「交流と連帯のつどい」は2世・3世以外の方でも、一般の関心のある方なら誰でも参加

できる企画です。とりくみを広く案内し、一般の方の参加もよびかけていきましょう。

昨年の交流会

より

キャンパスプラザ京都

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昭和20

22年

24年

26年

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32年

34年

36年

38年

40年

42年

44年

46年

48年

50年

52年

54年

56年

58年

60年

62年

平成元年

3年

5年

7年

9年

11年

13年

158年

17年

19年

21年

23年

25年

27年

被爆73年目を迎えた被爆者の今と課題 京都原水爆被災者懇談会2018年度総会(4月22日)での議案説明より

■4月22日(日)に開催された京都原水爆被災者懇談会総会において、議案書を要約して「被爆73

年目を迎えた被爆者の今と課題」を説明しました。以下その一部を紹介します。

■被爆者手帳所持者数の推移

(グラフ1 被爆者手帳所持者数の推移)

グラフ1は被爆者健康手帳所持者数の年度別推移です。手帳制度ができたのは昭和32年(195

7年)、初年度手帳所持者数は全国で20万人程度でした。手帳交付の基準も当初は厳しいもので

した。被爆者救済制度もその後改善が重ねられ、年々手帳所持者数も増え、最高時は昭和57年(1

982年)の372.179人でした。それ以降は減少傾向となり、直近の平成29年(2017

年)3月末では164,621人までになっています。この内京都府内の所持者数は941人です。

原爆医療法制定による手帳制度誕生まで12年を要しました。それまで被爆者救済措置は何もなく、

被爆者はまったく打ち捨てられた棄民とされた時期でした。被爆者にとって最も救済が必要とされ、

最も多くの命が失われたのがこの時期だったにも関わらず。

昭和29年(1954年)、ビキニ環礁水爆実験による第五福竜丸の被災が明らかとなり、それを

契機に原水爆禁止運動が国民的規模で広がり、そうした力にも励まされて被爆者の「命を救う」運

動が始まり、昭和32年の被爆医療法制定に結実しました。

もう一つ、決して忘れてはならないことがあります。被爆者救済が12年間も放置されていた一方、

原爆投下の2年後には既に広島と長崎にABCCが設置されていた事実です。被爆者の命が奪われ

ていた時期に、救済措置もとらず、一切の治療もせずに、アメリカの軍事目的のために、膨大な数

の被爆者の検査と調査、検体、データの収集が行われていたのです。

■認定被爆者はわずか5%

図1は現在の被爆者の構成です。被爆者手帳所持者は164,621人ですが、実際の被爆者数は

それを上回り正確な人数は不明です。様々な事情から手帳交付の申請をしていない人、本当は被爆

しているにも関わらず手帳交付が認められていない人々の数は少なくありません。

手帳所持者数164,621人に対して、「健康管理手当」など諸手当を受けている被爆者は現在

原爆医療法

原爆特措法

被爆者援護法

ABCC設置

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151,678人です。

被爆者の内、発症した病気が原爆放射線が原因であると認められている人を認定被爆者といいます。

全国でわずか8,169人しかいません。手帳所持者数に対して5.0%、驚くべき少なさです。

(図1 現在の被爆者の構成)

■被爆の実態を無視した現在の原爆症認定基準

(図2 現在の厚生労働省の原爆症認定審査方針)

1、放射線起因性の判断

(1)積極認定

申請疾病 直爆 入市

1 ① 悪性腫瘍 約100時間以内に2.0㌔以内

② 白血病 約3.5㌔以内 約100時間経過後から約2週間以内の期間に

③ 副甲状腺機能亢進症 約2.0㌔以内に1週間程度以上滞在

2 ① 心筋梗塞

② 甲状腺機能低下症 約2.0㌔以内 翌日までに約1.0㌔以内

③ 慢性肝炎・肝硬変

3 放射線白内障(加齢性除く) 約1.5㌔以内

(2)総合認定

2、要医療性の判断

認定被爆者が著しく少ない原因は厚生労働省が定めている現在の認定基準にあります。その内容が

図2の「原爆症認定審査方針」です。

悪性腫瘍などは比較的認定されやすい基準にされてきましたが、心筋梗塞など非がん疾患の場合に

は、直爆の場合は爆心地から2.0㌔以内で被爆した人、入市の場合には翌日中に爆心地から1.

0㌔以内まで入った人などと、被爆の実態を無視した大変厳しい条件が設定されています。さらに、

ここに挙げられているもの以外の病気はほとんど認められることはありません。

原爆症認定のためには(1)放射線に起因した病気であることと、(2)現にその病気の治療中で

あることの二つの要件が求められます。最近はこの要医療性についても、病気の経過観察は要医療

性に相当しないなど厳しい判断がなされるようになっています。

被爆者全体 人数不明

「健康管理手当」など 諸手当を受けている被爆者

151,678 人

被爆者手帳所持者 164,621 人

認定被爆者 8,169 人

手帳所持者の5%

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■原爆症を認定する裁判の判決が相次ぎ、司法と行政の乖離が広がっている

「あなたの病気は原爆放射線とは関係ない」とされる措置に納得できない被爆者は裁判に訴えて原

爆症認定を求めてきました。これをノーモア・ヒバクシャ訴訟と称して、2008年以来121人

の被爆者が提訴し、全国7つの裁判所でこれまでに21件の判決が行われてきています。

特に今年2018年に入ってからは原爆症認定のあり方に断を下す画期的な判決が相次いでいま

す。(いずれも被爆者の訴えが認められ勝訴した判決です)

1月16日 大阪高裁 甲状腺機能低下症 3.7㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

甲状腺機能低下症 4.0㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

甲状腺機能低下症 3.0㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

1月23日 大阪地裁 労作性狭心症 1.8㌔で被爆 国の基準にはない病気

2月 9日 広島高裁 白内障 2.4㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

3月 7日 名古屋高裁 慢性甲状腺炎 5.4㌔で被爆 要医療性を否定されていた

乳がん 5.4㌔で被爆 要医療性を否定されていた

3月27日 東京高裁 バセドウ病 2.3㌔で被爆 国の基準にはない病気

多重がん 8月11日広島入市 国の基準より遅い入市

心筋梗塞 3.5㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

心筋梗塞 3.0㌔で被爆 国の基準より遠距離で被爆

脳梗塞 2.2㌔で被爆 国の基準にはない病気

3.7㌔で被爆 国の基準にはない病気

各判決(司法判断)に共通する特徴点は以下のような内容でした。

① 国らの定める基準は不十分・・・被曝線量評価が過少になっている可能性が高く、残留放射線、

内部被ばくの可能性も含めて総合的にみなければならない。

② 非がん疾患にも低線量被ばくの影響はある。しきい値はない。

③ 仮に他原因(高血圧、高脂血漿など)があっても、それらと放射線の影響とが複合的に相乗し

あって病気発症に至っているとみるのが自然であり、合理的。

最近は、高血圧、高脂血漿、糖尿病など自体が放射線被ばくを原因として発症しているとみる

判決も相次いでいます。

今や、原爆症認定について、厚労省行政と司法判断との間には大きな乖離が生まれています。被爆

者は裁判に訴えれば認定されるが、訴えなければ認定を得ることができない、極めて不公正な行政

のもとに置かれているのが実態となっています。(裁判に訴えることは誰にでも簡単にできること

ではありません)

■日本被団協の原爆症認定制度改定の提案

こうした事態を踏まえて、日本被団協は現行原爆症認定制度を抜本的に改定するよう以下のような

提言を行ってきました。

① 現行の原爆症認定制度を廃止する。

② すべての被爆者健康手帳所持者(被爆者)に「被爆者手当」を支給する。

③ 被爆者手当は、障害の度合いに応じて3つの加算区分を設ける。

④ 加算対象疾病は、判決等でこれまで放射線の影響が認められる疾病等。→ 距離や入市の時間

による限定は定めない。

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現行制度の最大の問題は、被爆者個々人の被ばく線量を推定し、それに基づいて判断しようとする

ところにあります。73年も昔の線量を推定などできるわけがなく、極めて非科学的なものです。

また、残留放射線や内部被ばくをまったく無視していることも現行制度の重大な問題です。

こうした根本的問題を解決するために日本被団協から提言が行われてきました。

■原爆症認定基準を改善する当面の要求

上記の日本被団協の提言を実現させるには法律の改廃を必要とします。それに至るまでにも、現在

の法律の範囲での認定基準改善が当面の要求としてまとめられました。

基本は、裁判所の判決(司法判断)に従って行政を(認定基準を)改めるよう求めるものです。“司

法判断に行政が従う”、本来極めて当たり前のことのはずです。

(図3 原爆症認定基準改善 当面の要求 アンダーラインが改善・追加箇所)

1、積極的認定

申請疾病 直爆 入市

1 ① 悪性腫瘍

② 白血病

③ 副甲状腺機能亢進症

④ 心筋梗塞、狭心症 約100時間以内に2.0㌔以内

⑤ 甲状腺機能低下症 約3.5㌔以内 約100時間経過後から約2週間以内の期間に

甲状腺機能亢進症 約2.0㌔以内に1週間程度以上滞在

⑥ 慢性肝炎・肝硬変

⑦ 脳梗塞

2 放射線白内障(遅発性含む) 約1.5㌔以内

2、総合認定 被爆から70年以上経た被爆者の実情と国家補償的配慮を根底に、柔軟に判断。

3、要医療性の判断 経過観察が必要な場合も含めて広く認定。

■被爆者には時間がない!

被爆者に残された時間はそう多くありません。平均年齢は81歳を超えました。ノーモア・ヒバク

シャ訴訟を提訴した121人の被爆者の内20人は既に他界されました。判決を聞くこともできず

に亡くなることがどれほど悔しいことか。ほとんどが親族の方の承継によって裁判は続けられてい

ます。

一日も早く、被爆の実態、実相に基づいた、当たり前の原爆症認定制度となることを求めて、被爆

者は最後の訴えを続けています。一日でも長く健やかに過ごせることを願って、そして、核兵器の

人体に与える影響の本当のことが正しく評価され、地球上から核兵器が廃絶されることを求めて。

2018年4月18日(水)原爆症認定制度の抜本的改善を求める院内集会(参議院議員会館)

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■被爆地ヒロシマが被曝を拒否する! 守田敏也さん(左京区)

4月23日(月)に広島高裁に行き、伊方3号

機差止継続を求めるために審尋に参加してくる

ことにしました。

伊方3号機は昨年12月13日に広島高裁で

差し止めの仮処分決定が出て止まっています。こ

れに対して四国電力は昨年12月21日、異議申

立と(人格権)保全命令執行停止の申立を行いま

した。命令執行停止の申立は本年3月22日に広

島高裁(三木昌之裁判長 )が却下しましたが、

異議申立について23日に広島高裁において異

議審(同三木裁判長)の審尋が開かれます。

審尋は非公開なので傍聴はできないのですが、

四電が証人18人を入廷させるため、こちらも本

訴の原告が18人入れることになり、それもあっ

て参加を要請されたので駆けつけることにしま

した。往復交通費自腹ですが、意義が大きいので

行ってきます。

伊方原発差止訴訟は「被爆地ヒロシマが被曝を

拒否する」というスローガンのもとに被爆者が原

告に参加して行っているものです。すでに仮処分

で伊方原発を止めていますが、これには昨年広島

での全国交流会に参加してくれた3世の綱﨑健

太(つなさきけんた)さんが仮処分を求めた4名

のうちの1人として加わっています。彼は本訴の

方でも事務局次長を務めています。

みなさんも本訴の原告に加われます。我はと思

う方はぜひ参加されてください。

23日は12時の高裁前での宣伝から行動が

開始されるそうなので、そこから参加してきます。

午後いっぱい行動を共にし、その様子をすぐに全

国に伝えるつもりです。(4月18日)

◇ ◇ ◇

広島に来ています。伊方原発3号機を止め続け

るための高裁での審尋への参加を終えて、報告会

と記者会見に参加しています。

抗告人4人のうちの2人の小倉さんと綱崎さ

ん、代理人の弁護士さんたちが登壇しています。

会場の様子を写真で紹介します。

なお弁護士の甫守さんは昨年春に共にトルコの

シノップを訪れ、日本の脱原発運動や裁判の様子

を報告し、絶対に日本から原発を輸入してはいけ

ないと訴えて来た仲間でもあります。この時、私

たちを呼んでくださったのはトルコ弁護士協会

だったので、甫守さんの顔はトルコの弁護士たち

の間にも知られている。なので伊方原発を止めて

いる裁判での甫守さんの活躍をぜひトルコにも

伝えたいと思います。喜んで貰えると思います。

一方で綱崎さんは被爆3世。昨年、広島で行わ

れた被爆2世3世の全国交流会に参加してくだ

さいました。「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」

というこの裁判の意義を多くの被爆者、2世3世

の間にも広げていきたいです。(4月23日)

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

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他地域の2世・3世の方からいただいたお便りも紹介いたします。

■平和ツアーでの出遭い

鳥羽洋子さん(茨木市)

3月25~26日にかけて、平和ミュージアム

のガイドを中心とした「平和友の会」主催の平和

ツアーに参加してきました。今回は大久野島~呉

~広島と回るハードなスケジュールでしたが、大

久野島では長年日本の毒ガス製造について調べ

てこられた山之内さんという方のガイドで島内

の施設や資料館を回り、初めてだったこともあり

とても勉強になりました。何と言っても島全体が

戦跡、しかも数少ない日本の加害の事実を突きつ

けられる場所です。母といつも語り部に行く豊中

の小学校は、毎年必ず広島の帰りにここにも立ち

寄り、加害と被害の両面をきっちり子供たちに伝

える取り組みをされています。送ってくれた子供

たちの感想を改めて読み返したいと思います。

そこで、うれしいご報告を一つ、一緒にツアー

に参加されていた中に、お母様が広島で被爆され

たという坂上良(さかのうえりょう)さんという

方がおられました。早速、京都被爆二世三世の会

の紹介をし、持参していた総会の案内資料を渡し

たところ、総会の日は所用で行けないそうですが、

次回4月12日の例会には参加できるだろうと

いう返事でした。急な用事が入られることもある

かもしれませんが、次回の例会でご紹介できるの

ではないかと思います。

また、同じくツアー参加者から、知り合いの方

で、母親が胎内で被爆され40歳で亡くなったと

いう方のお子さん(30歳代)が被爆の影響を心

配されているという話を聞きました。私の母や峰

くんの話などして、この方にも「二世三世の会の

ことを伝えてください」とお願いしておきました。

来てくださるといいですが・・・。

■「ヤズディの祈り─林典子写真展─」の紹介

山根和代さん(右京区)

立命館大学国際平和ミュージアムの2018

年度春期特別展「ヤズディの祈り─林典子写真展

─」(4月14日~7月16日)について、お知

らせします。

「京都国際写真祭 KYOTOGRAPHIE

2018」のアソシエイテッドプログラムでもあ

る本展は、イスラム過激派組織ISの攻撃を受け

て故郷を追われた中東の少数民族ヤズディを取

材したフォトジャーナリスト林典子氏の写真集

『ヤズディの祈り』(赤々舎2016)を、赤々

舎の協力と公益財団法人花王芸術・科学財団の助

成を受けて写真展として再構成するものです。

KYOTOGRAPHIEサイト

https://www.kyotographie.jp

特別展サイト

http://www.ritsumei.ac.jp/mng/er/wp-museum/

event/special/2018/exhibition2018_1.html

「ニュー・フォト・ジャーナリズムの旗手」と

して国内外で注目されている林氏の活動は、事件

や暴力そのものではなく、顕在化しにくい苦しみ

とともに生きる人々のポートレートや、その身の

回りのささやかな品々に共鳴する静かな眼差し

が、見る者に深い印象を残します。

林典子氏のサイト http://norikohayashi.jp

是非ご覧ください。

■京都の原発賠償訴訟のみなさんに感謝!

加百智津子さん(岡山「被爆2世・3世の会」)

京都の会報No.65の感想を述べさせていた

だきます。

「原発賠償京都訴訟判決言い渡し」と「判決の

日レポート」、「原告団からのお礼のメッセージ」

を拝見し、感動しています。本当は、「感動」な

どと書くと自体、”上から目線”の、第三者的な

言い方で失礼だなと自省をこめつつも正直な気

持ちです。ここに至るまでの避難者の皆さまのご

苦労が、「もう自分を責めなくていいよと、夫に

報告できる・・・」との言葉に集約されているよう

に思います。

生きていく上には様々に理不尽なことが降り

会員から会員へ ❁ みなさんからのお便り紹介

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

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かかります。戦争や紛争は言うに及ばず、天災や

人災、事件・事故等々による生命の危機、人権侵

害に遭遇したとき、人としてどう生きるか?が問

われると思いますが、声をあげなければ何も変わ

らない、しかし、行動を起こせば何かが確実に変

わっていくことを、この訴訟がはっきりと示して

くださいました。そのことは感動的であり、正義

や勇気の心を教えていただき感謝の気持ちでい

っぱいになりました。

岡山県にも千人を超える方が避難して来られ

ています。そのうちの一人の女性は3人の子ども

を育てながら30代の若さで県議会議員になり

大活躍しています。私の住む総社市でも東京など

から自主避難をしてきた若い方と一緒に月2回

定期的に街角スタンディングをしています。「原

発はいらない、再稼動反対」のプラスターと並び、

「核兵器は絶対悪です」、「アベさん、早く辞めて」

「九条を変えるな!”戦争にならない”は信用で

きない」「森友・加計ハッキリせにゃ、おえんじ

ゃろう」などと大書した立て看板でアピールして

います。京都の取り組みが、燎原の火となって広

がることを願っています。

高橋博子さん共著の「核の戦後史」の紹介の文

言―”闇に閉ざされた被爆二世の実態に迫る!”

―はかなり衝撃的です。私たちはそういうものを

も背負っているということなのですね。闇に葬ら

れてなるものか・・・。解明のために力を尽くした

いものです。

東義隆さんの手記では、パーティーに出てみて、

被爆2世・3世の活動にとても感服したと書かれ

ています。被爆者の被爆体験を聞き取って記録に

まとめたり、原爆症認定裁判を傍聴して記録され

る活動が、被爆者の方が自分たちも何かできるこ

とを協力しないといけないと思うようになられ

たとか。良いお話ですね。私たちの会もそうあり

たいと思います。

■広島市・幟町小学校の平和資料室

平 信行さん(南区)

広島市の幟町(のぼりちょう)小学校に今年4

月開設された平和学習のための資料室を、知人の

岡部さんに案内していただいて見学してきた。岡

部さんは幟町小学校の卒業生で、被爆二世で、今

も地元に住まわれている方。幟町一帯や小学校の

歴史、そして地域の被爆の実相の掘り起こしと継

承に長年携われてきて、資料室開設にも尽力され

た。

資料室はそれまで会議室だった一室を改修さ

れたもので、幟町小学校や地域に関わる歴史と原

爆に関わる様々な資料が展示され、手作り感に溢

れている。被爆の痕跡をそのまま保存された本川

小学校や袋町小学校とは趣が異なる。

平和公園の原爆の子の像のモデルとなった

佐々木禎子さんも幟町小学校の卒業生だ。元気だ

った頃の禎子さんの写真、禎子さんの死後同級生

たちが『原爆の子の像』建立に向けて運動したと

りくみの様子などが展示され、紹介されている。

原爆詩人の原民喜もこの地で生まれ育ち、そして

被爆。作品と共にそれらの資料が記録されている。

京都原水爆被災者懇談会の世話人代表だった

永原誠さん一家はお隣の鉄砲町に住んでおられ

て、永原さんの遺作『消えた広島』には戦前のこ

の界隈の様子が生き生きと描かれている。そして

永原誠さんの祖父にあたられる永原整造さんが、

実は幟町小学校の第2代校長だったことが分か

り、その写真も掲げられていて、京都との縁も感

じる。

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岩波書店

1800円(税別)

この資料室は、幟町小学校の子どもたちの平和

学習を目的に設置された。それは、誰かから教え

られるものだけではなく、子どもたち自らが身近

なところから歴史や戦争、原爆、平和ついて調べ、

考え、報告・記録していくことに重きを置き、そ

れを助けるための資料室になっている。とても特

徴的だ。これから子どもたちがどんどん平和学習

を積み重ねていくと、資料室の展示内容もどんど

ん変わり、広がっていく、そんな希望のある資料

室だった。

尚、幟町小学校の平和資料室を訪問するにはあ

らかじめ連絡・問い合わせが必要(☎082―2

21-3013)

■チェルノブイリという経験 尾松 亮〔著〕

紹介 石角敏明さん(長岡京市)

民主主義国家、先進国とはいったいどんな国家をさしていうのでし

ょうか。2つの大きな原発事故を起こした「旧ソ連」と「日本」、被災

者に対する対応というか「補償」「姿勢」にこれほど大きな差があると

は。日本では、「チェルノブイリ」の被害というか調査結果が引き合い

にだされ、「被害・健康」は心配ないように報告されるが、2016年

の「ロシア報告」データが紹介され、日本で言われているような状況

ではないことが述べられている。でもこの報告も、日本では正式に紹

介されていない。研究者・医者は自分の都合のよいようにデータを解

釈し、都合の悪いことは無視をする。チェルノブイリの人たちから「福

島」も語られており、日本として学ぶべきことは多々ある。被害を表

す「日本語」のあいまいさも指摘をする。例えば「居住制限地域」と

「帰還困難地域」、英語で説明するのに表現方法がない。そして日本で行

われている「被災者」切り捨て政策がチェルノブイリでも行われようとしており、次の原子力災害

(起こってはいけないが)では先例になると、警鐘を鳴らす。事故後30年以上におよび人と社会

の蓄積を紹介する中で、被曝者への「補償」が、日本は如何に不十分でお粗末かを知らしめてくれ

る。被災者だけでなく、日本人全部が再度、日本の「原発事故」に対する補償を考えるべき指針が

書かれている。

■広島の被爆と福島の被曝 斉藤 紀〔著〕

紹介 石角敏明さん(長岡京市)

著者は「医者」である。広島では、被爆者と共に裁判を闘い、福島では避難者と交流を深めている。

広島では「被爆者訴訟」に寄り添い、医者の立場で裁判を支援し、国の主張に鋭い反論をする。ここに

は「医者」としての視点から、原爆被害について分析をしている。従来の「原爆災害」を述べたものと

本・DVD・映画・番組・その他の紹介と交流

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かもがわ出版

2000 円(税別)

は違っている。例えば「白血球減少」問題についても、小西訴訟を取り上げ

「白血球減少」というのではなく「好中球減少症」と指摘する。ただ、私に

は「数字」の羅列が多くて、読むのに・理解するのに大いに苦労したが。最

近の「原爆認定訴訟」で勝訴が続いているが、そこに至るまでには、被爆者

の「生死」をかけた裁判闘争があった事がわかる。そして「国」の「国家賠

償」としての補償を認めたくない頑な姿勢がよくわかる。

「福島第一原発事故」については、あまり知らされない「避難者のこころ

の問題」を中心に述べられている。放射線量の問題でなく、「今迄信頼してき

たもの」に裏切られ将来が見えない不安からくる、避難者の問題を提起され

ている。でも「子どもの健康問題・遺伝について」は両者共通の悩みでもあ

る。子供の健康問題については、被ばく2世3世の我々の出番かもしれない。

甲状腺被ばくによる将来の甲状腺がん発症等についての発言・指摘は、運動

家ではない「医者」としての限界か。福島の被曝者からすれば、少し物足りない部分があるかもしれな

い。被爆者の原爆認定を求める裁判について、国がなぜ被爆者勝訴判決をしないよう求めているのかを

追求し、それに対する反論は鋭い主張である。

■再び全員原爆症認定 東京高裁 国控訴を棄却

広島や長崎で被爆した6人を原爆症と認めなかった国の処分は違法だとして、茨城県などの被爆者

や遺族が処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、全員を原爆症と認めた一審

東京地裁判決を支持し、国の控訴を棄却した。判決理由では「がんなど6人の病気は、一般的に放射

線被ばくとの関連性が認められる」と指摘し、国の却下処分は違法だとした。

判決理由で後藤博裁判長は「がんなど6人の病気は、一般的に放射線被曝(ひばく)との関連性が

認められる」と指摘し、被爆や発症の状況を個別に検討。「いずれも放射線によって発症が促進され

たと高い確度で言える。国の却下処分は違法だ」と述べた。

判決によると、原告は76~87歳の男女5人と、2015年に亡くなった男性の遺族。6人は3

~14歳で被爆し、がんや心筋梗塞、脳梗塞などを発症。原爆症認定を申請したが、10~12年に

いずれも却下された。15年10月の一審判決は、提訴した17人全員を原爆症と認定した。国はう

ち6人について控訴。医師5人を証人尋問し、6人には高血圧などの危険因子があり、発症は放射線

の影響ではないと主張した。

高裁は「高血圧や糖尿病、高脂血症は、それ自体被曝と関連性がある。放射線の影響と関係なく発

症したとは言い切れない」と退けた。

国の控訴を棄却した27日の東京高裁判決を受け、原告

や支援者は都内で集会を開き、原爆症の認定条件の緩和を

訴えた。広島高裁で同様の訴訟の審理を控える原告関係者

も「認定への追い風になる」と期待した。

(2018年3月28日 中國新聞)

Scrap book

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

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編集後記

▼この会報が会員のみなさん

に届くころには朝鮮半島の南

北首脳会談が開催されている

ことになります。何はさておき、

軍事力ではなく当事者同士が直接顔を合わせて

話し合いで問題解決にのぞんでいく姿勢を心か

ら歓迎し、最高の喜びを感じます。米朝首脳会談

にもつながり、朝鮮半島の非核化、休戦協定から

平和条約への締結へと期待が膨らみます。

▼朝鮮半島、北東アジアの平和と安全が具体的な

可能性をもって展望できるようになってきた今、

私たちに最も求められることは何でしょうか?

日本の国がアメリカの核の傘から脱却し、国連の

核兵器禁止条約に参加し、自ら核による威嚇、核

の脅威を取り払うことだと思います。そのことが

朝鮮半島の平和体制を力強く後押しし、北東アジ

アの本当の安全を作り出していく力となるので

はないでしょうか。

▼私たちは、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫

と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐ

る国際社会において、名誉ある地位を占めたいと

思ふ」(憲法前文)のです。(平)

■731部隊の構成全容明らかに 国立公文書館が名簿開示

ペストを投与した人体実験の疑いがある論文の検証を要請している「満州第731部隊軍医将校の

学位授与の検証を京大に求める会」(京都市中京区)が14日、京都大で記者会見し、国立公文書館

から関東軍防疫給水部・731部隊「留守名簿」の開示を受けたと発表した。

軍医や技師、看護婦など役種と階級、留守宅を記載したもので、3607人が実名で記されていた。

研究者は「731部隊構成の全容が分かる第1級の資料。政府が詳細な公文書を保管していたことが

戦後70年以上たって初めて明らかにできた」と話している。

今年1月に公開されたのは、敗戦約半年前に作成された名簿。2016年に開示請求した際は「親

族や戦犯とその親族を特定する情報」だとしてほぼ黒塗りの部分開示だったが、引き続き開示を求め

ていた。同会事務局長の西山勝夫滋賀医科大名誉教授が分析したところ、軍医52人、技師49人、

雇員1275人、衛生兵1117人など731部隊の構成が判明。戦後に京都大医学部長を務めた故

岡本耕造教授(戦前は講師)は「技師4等」の処遇だった。

また同会では、京都大文書館から、戦後に京都府立医大学長を務めた故吉村寿人・京大医学部講師

ら京大医学部の講師クラスの研究者6人が731部隊派遣を発令された日時や旧陸軍での階級を特

定できる文書「学報」(1938年・京大庶務課作成)も発掘した。同会は今月、京大に対し、73

1部隊所属者に関係する文書の開示請求を行っている。

14日は同会主催の講演会「研究者が戦争に協力する時・731部隊の生体実験をめぐって」があ

り、約150人が参加。常石敬一・神奈川大名誉教授が

京大出身の731部隊軍医少佐が博士論文として提出

したペスト菌特殊実験について講演し、「ペストに感染

させたノミが石井部隊の主要な生物兵器だった。人体実

験した論文を得難い実験として評価したのは京大に問

題がある」と指摘した。

(2018年4月15日 京都新聞)

約3000人の隊員実名が記載された関東軍防疫給水部(731

部隊)の留守名簿。国立公文書館が公開した。

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京都「被爆2世・3世の会」会報№66 2018年4月25日

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行事カレンダー

月 日 曜 行 事

5 1 火 メ―デ―

2 水

3 木

憲法記念日

5.3憲法集会in京都(13時30分・円山音楽堂)

アースキャラバン2018京都(10時・梅小路公園)

4 金 みどりの日 キンカン行動

アースキャラバン2018京都(梅小路公園・17時)

5 土 こどもの日

6 日 6・9行動

7 月

8 火

世界赤十字デー

9 水 京都「被爆2世・3世の会」例会(18時30分・ラボール京都) 6・9行動

10 木 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟第7民事部(14時・大阪地裁)

安保法制京都違憲訴訟第4回弁論(14時・京都地裁)

11 金 キンカン行動

12 土 京都原水協定期総会(13時30分・ラボール京都)

13 日 母の日

14 月

15 火

16 水 ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟第7民事部(14時・大阪地裁)

17 木

18 金 キンカン行動

19 土 戦争法廃止を求める19日行動(京都市役所)

第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」(14 時・聞法会館)

20 日 第3回「被爆2世・3世交流と連帯のつどい」(9時・キャンパスプラザ京都)

21 月

22 火

23 水

24 木

25 金 キンカン行動

26 土 ダニー・ネフセタイさん講演会(18時30分・ウィングス京都)

27 日

28 月 国際アムネスティ記念日

29 火

30 水

31 木