Sand for Students 野外実習の手引き - JAMSTEC...Sand for...

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Sand for Students 野外実習の手引き

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Sand for Students野外実習の手引き

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はじめにこのプログラムは、参加者が自分たちの身近な河川や海岸において、砂の採集・観察・分析を行い、河川によって海に運ばれた堆積物が地層を形成し、やがて自分たちの住む足下の地層を形成するという一連のプロセスの理解を通じて、地球科学、環境科学への興味を深めます。採集した砂試料は、実習後に研究所に持ち込み、分析結果が実際の研究に活かされます。

授業構成案岩石の観察と分類河川礫を見ながら周辺及び上流の地質の概説椀掛けによる重鉱物の採集本プログラムと IODP(統合国際深海掘削計画)の関わり

本プログラムによる学習効果将来の日本を担う生徒達に、野外で学習を行うことの楽しさを体感してもらうことが第一にあげられます。知識を深めるために、実際の作業の楽しさを知ることは、上達への重要な要素と思われます。また、野外で実際に岩石や砂を観察することにより、机上の知識として得ることのできる、岩石・砂の種類や地球の歴史の多くは、実は多く野外の観察結果に基づいていることを学び、参加した生徒達に机上の知識と、自分の観察結果を融合させるといった、複合的な思考方法の一端を知ってもらうことが可能です。

対象学年:中学生~高校生野外実習の時間:1日

野外実習の準備について実習河川の選定方法実習を行う河川は自分たちの身近な場所にある大きな河川で、かつ、できるだけ河口に近い場所を選びましょう。もし、選択した河川の河口が、過去の国際深海掘削計画で掘削された場所にあればさらに良いです。また、2河川調べることができれば、2河川の違いについて、考察を深めることが可能です。もちろん1河川でも十分です。

野外実習下見野外実習を行う講師は、事前に下見を行い、下記の項目について確認しましょう。1.河川敷の安全状況(足場の確保、危険な昆虫類や動物の確認など)2.トイレや駐車場の場所3.河川敷に岩石と砂両方があるかどうか4.急な増水時など、緊急避難の経路

下見時の持ち物地形図、地質図、カメラ、ハンマー、野帳、ボールペン、巻き尺(定規)、試料用ビニール袋(大、小)、シ ャ ベ ル、椀 か け 用 の 椀、ふ る い

(2mm メッシュ程度)、ガムテープ、応急箱

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下見時の試料採集下見時には下記のデータを採取すると、後々に役立ちます。1. 実習を行う河川敷、トイレ、駐車場、駐車場から河川敷までの移動経路などの写真2. 河川敷に見られる岩石。流域の地質にもよりますが、通常数種類程度の岩石が見られます。3. 砂試料4. 椀掛けにより濃集させた重鉱物試料

野外実習当日のスケジュール通常の野外実習は、下記のように行っています。

時間

8:30

8:30-10:00

10:00-11:30

11:30

12:00-13:00

13:00-13:30

13:30-14:30

14:30-15:30

15:30

17:00

行程

集合

移動

移動中に野外実習の概要、目的、河川敷の砂と海底堆積物の

関係、海洋掘削について説明を行います

河川敷実習 1(60-90 分)

・岩石の観察と分類

・河川礫を見ながら周辺及び上流の地質解説

・ 砂の採取(椀かけによる重鉱物の採取)

移動

昼食・休憩(場所未定)

木津川河川敷実習地へ移動昼食・休憩(場所未定)

木津川野外実習(60 分)

移動

顕微鏡実習

・ スミアスライド作成

・ 鉱物同定休憩

・ 鉱物と河川流域地質との関係

・ 日本列島の成り立ちと地質について

・ 「ちきゅう」による掘削研究の紹介

解散

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野外実習での指導要領授業の目的について:野外に出て実際に岩石砂を観察することは、地球科学を学ぶ上での基礎になります。岩石や鉱物を観察することにより、それらが、火山活動である、変成によるなど、どのようにしてできたのか、説明して下さい。また、実際に岩石や鉱物の特徴を観察する作業は、IODP の研究航海でも共通しています。参加した生徒達にも、IODP に参加する研究者と同じ作業をしていることも是非紹介して下さい。

川の砂と深海の堆積物との関係について:河川敷で見られる砂は、上流の地層が崩れて岩石となって川の流れに乗って下流まで運ばれます。川で運ばれる間に岩石は細かくなり、やがては砂になります。さらに砂は、河口から海へ運ばれ、深海までたどり着いた砂は、海底に堆積します。「ちきゅう」で得られる海底の堆積物試料には、そのような陸から川を伝って運ばれた砂が多く含まれます。この、陸から海まで岩石や砂が運ばれることを説明して下さい。

岩石の観察について:実習を行う河川敷では、まず、足下に見られる全ての種類の岩石を並べてみて下さい。たいていの場合、その場で見られる岩石の種類は数種類以内であることが多いです。河川敷で見られる岩石は、その川の上流の地層から来ているので、反対に考えると、河川敷の岩石を観察することによって、上流の地層を推測することができるのです。興味があれば、別の日に上流の地層を観察してみましょう。

岩石試料の採集について:観察した岩石は全ての種類を並べて写真を撮ってから持ち帰りましょう。というのも、砂の中に見られる鉱物は、元々、河川敷に見られるものと同じ種類の岩石に入っていると思われるので、砂がどこから来ているのか確かめるのに役立ちます。岩石を採集するときは、岩石を入れるビニール袋に採集した日時、採集者氏名、場所を記入しましょう。

砂の観察について:石英、長石類、雲母など、比較的見分けやすい鉱物については、実習時にルーペを使って、是非生徒達に説明して下さい。また、2カ所以上、河川敷の砂を観察すると、砂の色の違いが気になってきます。石英、長石、石灰石など無色や白い鉱物を多く含む場合、砂の色が白く見えます。一方、磁鉄鉱、角閃石など有色鉱物を多く含むようになると、砂の色は黒っぽく見えるようになります。

重鉱物の濃集と椀掛けについて:椀掛けによる重鉱物の濃集作業は、野外実習の中で、一番参加者が楽しく感じる作業だと思います。椀掛けの前に、椀掛けの原理と効果を説明して下さい。椀の中に無作為に砂を入れ、水中で椀をまわすと、遠心力の効果で、比重の軽い鉱物が水中に飛ばされ、比重の重たい重鉱物が椀の中に残ります。

砂と重鉱物試料の採集について椀掛けにより得られた重鉱物試料は、ビニール袋に入れて、持ち帰りましょう。また、河川敷の砂もカップ1杯程度採取しましょう。採取した試料を入れるビニール袋には、必ず日時、採集者氏名、場所を記入しましょう。ビニールにこれらの情報を記入した後で、写真を撮っておくと後で役立ちます。

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実験室での作業について河川敷で採取した砂試料について、まず、生徒達と一緒にスミアスライドをつくり、顕微鏡で観察してみましょう。スミアスライドでもある程度、鉱物を観察することができます。もし、可能であれば、スライド内の各鉱物比を計測してみましょう。

色々な河川の鉱物比を計測していくと、川によって鉱物比が異なることに気がつくと思います。そのときに、河川敷で観察した砂の色の違いを思い出して下さい。砂の色の違いと鉱物比の違いはどのように関係があるのか、参加者で紹介しあい議論するのも良いでしょう。この議論は、河川流域の地質について知識を深めることができます。さらに、河川流域の地質の歴史を調べることで、日本列島の歴史を知ることができるでしょう。

データベースへの登録についてSand for Students では、参加した生徒達の分析結果をデータベースに登録していきます。その際、可能な範囲で結構ですので、下記の情報をお寄せ頂けますと幸いです。また、さらに追加データが出たら、その都度ご連絡頂けますと幸いです。

・河川名・ 試料採集場所(google 地図等もご利用ください)・ 登録者の氏名・ 登録者の所属校(学校名、住所、電話番号)・ 登録者の連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)・ 参加人数・ 岩石の写真、砂試料の写真・ 河川と実習場所の紹介・ 河川流域の地質の紹介・ 参加者の感想文・ 鉱物比のデータ

さらに可能なら、・ 薄片の顕微鏡写真・ 砂に含まれる意外な鉱物の紹介頂いたデータに含まれる個人情報は、登録者ご本人からのお問い合わせ・お申し込みへの回答や返信、確認のご連絡、関連学会での発表等、独立行政法人海洋研究開発機構の各種事業のご案内送付のために利用します。また、登録された写真や文章、データにつきましては、当機構や統合国際深海掘削計画のホームページ上またはプレス発表、関連学会での発表、広報誌等に使用する場合がありますのでご了承ください。

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