子どもから学ぶ - library.u-gakugei.ac.jp · 子どもから学ぶ 櫻井 眞治 優しいお兄さんやお姉さんであるだけでは、いけない。子どもと、どういう関係であ
幼児期から 就学につなげる支援 - Ehime Prefecture...5歳児健診の目的...
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幼児期から就学につなげる支援
上島町発達支援センター松浦 里佳
はじめに
1.母子保健体系、5歳児健診について
2.健診後のフォロー体制
3.フォローの取り組み
4.フォローの実際(事例紹介)
5.まとめ
妊娠 出産 1歳半 3歳 5歳 就学
《
発
達
支
援
セ
ン
ター
》
【
健康推進課】
【
教育委員会】
【
住民課】
母子健康手帳発行
妊婦健診受診券発行
妊婦教室
新生児全戸訪問
予防接種予診票発行
乳幼児健康診査受診券発行
離乳食教室育児教室
1歳6か月児健診 3歳児健診
歯みがき教室、食育 健康教室(食育、歯みがき、思春期)
小児生活習慣病健診事後指導
保育所連絡会
相談、訪問
妊婦健診交通費助成
不妊治療交通費助成
チャイルドシート購入費助成
医療費助成制度
児童手当・児童扶養手当
特別児童扶養手当・障害児福祉手当
保育所入所手続き
療育手帳・身体障害者(児)手帳手続き
療育支援交通費助成
発達相談
療育教室
★保育所巡回相談
5歳児健診
教育相談
就学前健診 小児生活習慣病健診
要保護児童対策地域協議会
特別支援連携協議会
教育支援委員会
★5歳児健診フォローアップ連絡会
5歳児健診の目的
・子どもの成長・発達、親子関係などを
客観的に評価する。
・子どもの特性、問題を明らかにし、
必要な支援を提供する。
・保護者が子どもの発達状況を把握し、支援の必要性を理解できる機会とする。
5歳児健診内容と流れ
受付 計測 問診
小児神経医の診察 講話・集団遊び
歯科相談 育児相談 栄養相談 就学相談
生活相談
・
・ ・ ・
必須項目
希望者・必要時
フォロー体制
5歳児健診(年中)
保育所巡回相談 等
5歳児健診フォローアップ連絡会情報共有、対応検討
就学前健診 学校への情報提供
〈要観察〉 〈要支援〉
保健師・保育士・学校・教育委員会で定期的に開催
発達相談員と発達支援センターによって定期的に実施。保育士への助言も行う
療育教室・発達相談・療育機関 等
保健センターが主体となり事業
展開
発達支援センターが主体となり事業展開1歳6か児健診
3歳児健診
保育所連絡会情報共有、対応検討
各種教室への勧奨個別訪問 個別相談
学校への情報提供
教育支援委員会
保育所での対応
フォローを通じての工夫や改善
保護者への働きかけがしやすくなった
学校につなげやすくなった
気になる子の関わりからクラス運営につながる意識が
できた
保育士が変われば子どもが変わる
保護者への声かけを具体的にするようになった
個別対応の評価を専門的視点でできる場ができた
フォローを通じての悩み
記録が多くて大変
支援の言語化が難しい
保育士の役割が大きすぎない?
役割分担しすぎ?
個別すぎる?
支援のつながりを実感できない
共有できてる?
(対象児について)
氏名 ( 歳 か月)
プラン(配慮・留意点)
生活からだ
コミュニケーション
行動
カンフ
ァレンス
目標重点支援項目
現状
必要な視点:気になる姿や本
人が困っていること、ひどく苦
手なこと
支援にいかす視点:できること、
得意なこと、好きなこと、興味
があること
目標に対しての支援内容、配慮していること、
留意していることを整理する。
身体、姿勢、食事、身支度等生活
面やからだに関すること
人とのかかわりやコミュニケーション
すきなこと、きらいなこと
行動の様子。集団の中での様子
こどもを主語にして「~できるようになる」「~できる」
評価を通じて、修正できる表現をつかうどのような視点でかかわっていくかを意識して項目を選択する
保育所巡回相談での記録
氏名
目標
(つけた
い力)
評価
生活からだ
コミュニケーショ
ン
行動
年中年度末まで
重点支援項目
プラン(支援の手立て)
どのような視点でかかわっていくかを意識して項目を選択する
こどもを主語にして「~できるようになる」「~できる」 評価を通じて、修正していく表現をつかう
「つけたい力」のための具体的な支援内容を整理する。
支援者を主語にして実践する内容を表現する。
実践した支援を通じて
の本人の様子やできる
ようになったこと等で評
価し、次期の支援内容
を検討する
5歳児健診フォローアップ連絡会での記録(抜粋)
事例:小学校 特別支援学級(情緒級)在級児
(経過)
1歳6か月児健診:言葉の発達遅れ、生活リズム不安定
やりとり力等で経過観察
事後フォローの療育相談等の利用勧奨
2歳1か月:本町転入
2歳4か月:本町保育所入所
3歳児健診:言葉、発達の遅れ指摘 療育教室の利用勧奨され、
療育教室利用を開始(月1~2回)
3歳11か月:療育手帳取得 「自閉スペクトラム症」の診断を受ける
4歳~卒園まで:福祉サービス利用(保育所訪問支援事業)5歳児健診:支援中として、関係機関との情報共有をすすめていく
氏名 A ( 5歳 5か月)
目標
・数字や文字を場面で、皆の前で発表する
・体を使って遊び、友達とのかかわりを楽しむ重点支援項目
自分の思いを伝えることができ、友だちがふえる
自ら周りを見回し、新たなモデルを求め取り入れる
現状 プラン(配慮・留意点)
生活からだ
・食べるのに時間がかかるが、好き嫌いなく食べることができる・箸をうまく使うことができず、かきこんで食べることが多い
・食事量を2/3に減らしてから食べる・箸の使い方をそばで声をかけする
コミュニケーション
・言葉での理解はある程度わかっている。・保育者が手本を見せると真似することができる
・制作などでは、保育者がそばで手本を見せる
行動
・数字や文字が読める・一人遊びが中心で自由時間を過ごすことが多い
・当番の内容をボードにひらがなで書いておく・約束をして、本児が理解してから活動をはじめる
カンファレンス
・得意な力を発揮する場面を大切にしてゆく・給食の狙いをどこにするか、関わりかたがかわる・筋力が弱いので、噛み疲れるため、余計に力がいる。量を減らしたりして、「食べきる」「みんなと一緒に食べ終える」という達成感を得る機会にする・指先を鍛える=体幹を鍛える。体幹を鍛えることで筋力がついて指先を使いやすくなる
5歳児健診フォローアップ連絡会での記録(巡回相談)
年長年度末まで
重点支援項目
自己主張ができ、相手の主張と折り合いをつける
自ら周りを見回し、新たなモデルを求め取り入れる
目標(つけたい力)
友達に自分の思いを言葉で伝えることができる
プラン(支援の手立て) 評価
生活からだ
・食事量を2/3に減らしてから食べる・箸の使い方をそばで声をかけする
時間はかかるが、いろいろな食材を食べきることができるようになった
コミュニケーション
・制作などでは、保育者がそばで手本を見せる 苦手なことは、友達に手伝ってもらうことができる
行動
・当番の内容をボードにひらがなで書いておく・約束をして、本児が理解してから活動をはじめる
ボードを見て自分で考えたり、簡単なやり取りを楽しむことが増えた
5歳児健診フォローアップ連絡会での支援目標と評価
就学にむけて
保護者のねがい 本人のペースで成長できる環境を整えたい
支援のポイント(大切にしてきたこと・意識してきたこと)
・「できた」「できない」の2択ではなく、評価の見方の幅があり、その幅を広げていく
・筋力が弱いため、余計に力がいるが、「みんなと一緒にできた」という達成感を得る機会を意識してつくる
・指先を鍛える=体幹を鍛える。体幹を鍛えることで筋力がついて指先を使いやすくなることを理解して関わる
具体的な支援内容(参考になる方法)
・言葉だけの指示ではなく、個別にやりとりをして行動を促す
・丸いものを握ると落ち着き、屋外活動も落ち着いてできる
就学にむけての引継ぎ事項
ふりがな 性別 就学先 小学校
氏名 A 男 生年月日 〇〇年 〇月 △日生
保育所名及び所在地
(保育所名) (所在地)〒794-2410〇〇保育所 愛媛県越智郡上島町
保育期間 〇年〇月 △日 ~ 〇 年〇 月 △ 日 ( 4年 △か月)
子どもの育ちに関する事項・偏食がかなり多く食べられるものが少なかったが、1口ずつ進めていくことで、時間はかかるがいろいろな食材が食べられるようになってきた。
・興奮すると奇声を発することがあったが、少しずつ奇声から言葉になり、簡単なやりとりができるようになってきた。
・数字、ひらがなに興味があり、読むことができる。
養護(生命の保持及び情緒の安定)に関わる事項 (子どもの健康状態等)
・戸外遊びでは、丸い物を握ると落ち着いて遊ぶことができる。
・興奮すると奇声を発していたが、年長児になるにつれ、減ってきている。
・アトピー性皮膚炎がある。・左ひじが脱臼しやすい。
保育所児童要録
保育所児童要録 教育(発達援助)に関わる事項
健康
・明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
・自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
・健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。
人間関係
・生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
・身近な人と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼関係を持つ。
・社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
環境
・身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心を持つ。
・身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする。
・身近な事物を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。
言葉
・自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
・人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。
・日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、保育士や友達と心を通わせる。
表現
・いろいろなものの美しさなどに対する豊かな表現を持つ。
・感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
・生活の中でイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむ。
・保育所生活での基本的生活習慣は自立している。
・友達との関係は良好。苦手なことは、手伝ってもらいながら過ごしている。
・感覚遊びをとても楽しみ、水遊びや泥んこ遊びは、ダイナミックに遊ぶ。
・語彙数が少なく言葉で思いを伝えることが少なかったが、全体的に言葉だけでの援助は理解が難しく、個別に言葉かけをすると行動できる。考えたり、簡単なやりとりができるようにすると、少しずつ語彙数も増え、やりとりを楽しむ姿がみられるようになった。
・運動会や発表会などでは、人前で堂々と歌ったり踊ったりできる。
まとめ・保育所が中心となる「発達支援」は、特別な支援をすることではなく、日々の繰り返される関わりの中で、子どもの得意を発展させる関わりである。
・子どもに関わる支援者が共通した視点で目標設定し、具体的に評価することで、子どもの生活全般にわたって、切れ目のない継続した支援につなげていきたい。
・今後とも、こどもと保護者を一緒にサポートする子育て支援の一つとして、地域で実施していきたい。
ご静聴ありがとうございました。
ありがとりん♡
上島町ゆるきゃらかみりん