No. 83...遺については,FPDAM(Final Proposed Amendment)か...

24
No. 83 2009 年 9 月 標準活動トピックス: OOXML 規格のメンテナンス状況 - SC 34/WG 4 は無料の OOXML サポートセンタ........... 2 村田 真(国際大学) 最近の国際会議から: JTC 1/WG 6 会議報告 ........................................................................ 5 平野 芳行(日本電気(株)) SC 6(Telecommunications and Information Exchange Between Systems)総会報告................. 5 山下 博之(独立行政法人情報処理推進機構) SC 7(Software Engineering)総会報告 ....................................................... 6 山本 喜一(慶應義塾大学) SC 24(Computer Graphics, image processing and environmental data representation)総会報告 .. 8 青野 雅樹(豊橋技術科学大学) SC 28(Office Equipment)総会報告 .........................................................10 小澁 弘明(コンサルタント・NPO エコデザイン推進機構代表理事) SC 29(Coding of Audio, Picture, Multimedia and Hypermedia Information)総会報告...........11 守谷 健弘(日本電信電話(株)) SC 31(Automatic Identification and Data Capture)総会報告 ................................12 小橋 一夫((社)電子情報技術産業協会) SC 32(Data Management and Interchange)総会報告 ..........................................12 鈴木 健司(東京国際大学) SC 34(Document Description and Processing Languages)総会報告 ............................14 小町 祐史(大阪工業大学),村田 真(国際大学) 声のページ: 2 つの委員会 ..............................................................................16 原田 敬((株)日立製作所) バイオメトリクス用語の標準化に参加して ....................................................16 溝口 正典(日本電気(株)) 解説:IT ガバナンスの標準化 .......................................................... 17 平野 芳行(日本電気(株)) 第 24 回規格総会の報告 ............................................................... 20 2009 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................. 20 2009 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰 ............................................. 21 オープン分散処理 - 統一モデリング言語 JIS X 4170:2009 公示について ................. 24 薮田 和夫(富士通(株)) 編集後記 ............................................................................ 24

Transcript of No. 83...遺については,FPDAM(Final Proposed Amendment)か...

No. 83 2009 年 9 月

目 次 標準活動トピックス:

OOXML 規格のメンテナンス状況 - SC 34/WG 4 は無料の OOXML サポートセンタ........... 2 村田 真(国際大学)

最近の国際会議から:

JTC 1/WG 6 会議報告 ........................................................................5 平野 芳行(日本電気(株))

SC 6(Telecommunications and Information Exchange Between Systems)総会報告.................5 山下 博之(独立行政法人情報処理推進機構)

SC 7(Software Engineering)総会報告 .......................................................6 山本 喜一(慶應義塾大学)

SC 24(Computer Graphics, image processing and environmental data representation)総会報告..8 青野 雅樹(豊橋技術科学大学)

SC 28(Office Equipment)総会報告 .........................................................10 小澁 弘明(コンサルタント・NPO エコデザイン推進機構代表理事)

SC 29(Coding of Audio, Picture, Multimedia and Hypermedia Information)総会報告...........11 守谷 健弘(日本電信電話(株))

SC 31(Automatic Identification and Data Capture)総会報告 ................................12 小橋 一夫((社)電子情報技術産業協会)

SC 32(Data Management and Interchange)総会報告 ..........................................12 鈴木 健司(東京国際大学)

SC 34(Document Description and Processing Languages)総会報告 ............................14 小町 祐史(大阪工業大学),村田 真(国際大学)

声のページ:

2 つの委員会 ..............................................................................16 原田 敬((株)日立製作所)

バイオメトリクス用語の標準化に参加して ....................................................16 溝口 正典(日本電気(株))

解説:IT ガバナンスの標準化 .......................................................... 17 平野 芳行(日本電気(株))

第 24 回規格総会の報告 ............................................................... 20

2009 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................. 20

2009 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰 ............................................. 21

オープン分散処理 - 統一モデリング言語 JIS X 4170:2009 公示について ................. 24 薮田 和夫(富士通(株))

編集後記 ............................................................................ 24

<標準活動トピックス>

OOXML 規格のメンテナンス状況 - SC 34/WG 4 は無料の OOXML サポートセンタ

SC 34 専門委員会

委員 村田 真(国際大学)

要約

OOXML(Office Open XML File Formats)の欠点を直

す作業は SC 34/WG 4 において急ピッチで進んでおり,

200 以上の欠陥に対処した正誤票と補遺がまもなく

SC 34 での投票にかけられる.実装も,それに合わせ

て修正されていく可能性が高い.OOXML 文書を利用す

るプログラムを作成するにあたって疑問点・問題点に

気づいたなら,SC 34 国内専門委員会を通じて欠陥報

告をどんどん提出してほしい.

1. はじめに

OOXML が ISO/IEC 規格(IS 29500)となったときの騒

動はまだ記憶に新しい.日本はもともと反対したが,

BRM(Ballot Resolution Meeting)の結果を受けて賛成

に変えた.賛成する一つの理由として,OOXML を JTC 1

においてきちんとメンテナンスしていくことへの期

待があった.

本稿は,OOXML がその後どうメンテナンスされてい

るかを述べる.筆者は,OOXML を担当する SC 34/WG 4

のコンビーナを務めている.

2. SC 34/WG 4 の設立

SC 34 では,OOXML のメンテナンス方法についてロ

ンドンでの ad-hoc group meeting(2008 年 7 月)と

済州島での総会(2008 年 11 月)で審議した.これら

の会議には,OOXML のファストトラック提案元である

Ecma TC45 のメンバも参加していた.

ここで決まったこと及び確認されたことを列挙す

る.

・ OOXMLのメンテナンスを行うのはSC 34であって

Ecma TC45 ではない.

・ Ecma の OOXML は,JTC 1 の OOXML と技術的に完

全に一致するよう修正していく.

・ SC 34 は,OOXML メンテナンスのために WG 4 を

設立する.

・ Ecma TC45 のメンバは SC 34/WG 4 の審議に参加

する.

・ Ecma TC45 は,SC 34 セクレタリアトである日本

の管理のもとに WG 4 のセクレタリアトを務める.

・ WG 4 のコンビーナには筆者が就任する.

WG 4 の最初の対面会議は,沖縄で 2009 年 1 月に開催

された.その後,ほぼ二週間に一回の電話会議と,対

面会議を二回(2009 年 3月プラハと 2009 年 6 月コペ

ンハーゲン)行っている.

WG 4 の会議に出席しているのは,イギリス,日本,

韓国,デンマーク,フランス,チェコ,フィンランド,

アメリカ,Ecma などである.出席こそしないが WG 4

に参加している国,WG 4 に参加もしないが欠陥報告

は出す国もある.

3. 欠陥報告

ISO/IEC 29500 の出版直後(済州島会議直前)に,

日本が口火を切って欠陥報告を提出し,イギリスが追

随した.これによって,WG 4 がしばらくは欠陥報告

の審議に注力するという流れができた.その後,2009

年 7 月までの審議は,ほぼ欠陥報告にあてられている.

各国(イギリスや日本など)および Ecma から 300

近くの欠陥報告が出されている.今後も,各国が本腰

を入れれば,さらに多くの欠陥が見つかるだろう.信

頼できる規格となるためにはこれらの欠陥を修正し

ていくことが必要不可欠である.

3.1 対処状況

WG 4 はこれらの欠陥報告に積極的に対処している.

対処状況を,図-1 のグラフに示す.欠陥報告を出せ

ば数か月で何らかの結論が出ることが分かる.なお,

このグラフの最新版は,

http://www.itscj.ipsj.or.jp/sc34/wg4/statistics

/DefectReportsOn29500.html

から得られる.

(1) 左端のグラフの読み方

7 月 1 日の時点で 290 の欠陥報告が出されている.

そのうち,205 については WG 4 としての結論を出し

ている(closed).60 については WG 4 でさらに考慮す

る必要がある.25 については project editor が最初

の判断をまだ示していないものである.

(2) 中央のグラフの読み方

提出後 180 日以上たっても WG 4 としての結論が出

ていない欠陥報告は存在しない.提出後 150 日以上

180 日未満であって,WG 4 としての結論が出ていない

ものは24件,提出後120日以上150日未満であって,

WG 4 としての結論が出ていないものは 3 件.以下は

省略する.

(3) 右端のグラフの読み方

欠陥報告のうち技術的なものが 146 件,編集上のも

のが100件,詳細説明を求めているのが44件である.

3.2 WG 4 の対処

欠陥の多さは,OOXML が ISO/IEC 規格になるために

十分な品質を備えていなかったことの証拠だという

主張がある.確かに OOXML の欠陥は多い.しかし,欠

陥のない規格など存在するだろうか?完成度が高い

と広く認められている XML 1. 0 は 40 ページ程度しか

ないが,200 をこえる欠陥が報告された.7000 ページ

以上の OOXML には,万単位の欠陥があっても驚くに足

りない.むしろ重要なのは報告された欠陥にきちんと

対処していくことだろう.W3C が XML の欠陥にきちん

と対処したように,SC 34/WG 4 は OOXML の欠陥にき

ちんと対処している.これが数年続けば OOXML の品質

は向上するだろう.コンビーナとしては,毎年 1000

の欠陥に対処することを目標としている.

4. 正誤票と補遺

報告された欠陥を修正するには,正誤票を発行する

のが普通である.しかし,ごく小さな機能拡張と考え

られる欠陥修正があるという理由,及び既存の実装に

深刻な影響を与える欠陥修正があるという理由によ

り,一部は補遺によって対処することにした.補遺に

よって対処した欠陥の一つに,Ecma OOXML(1st

edition)と ISO/IEC 29500とを簡単に区別できないと

いう問題がある.この欠陥に対処するため,適合性ク

ラス strict における名前空間の多くを変更した.

正誤票は,Draft Technical Corrigenda として始

め,SC 34 における三カ月投票だけで出版できる.補

遺については,FPDAM(Final Proposed Amendment)か

ら始めることにしたので,最短の場合には SC 34 での

四か月投票と JTC 1 での投票だけで出版できる.

2009 年 8月に,ISO/IEC 29500 の四つのパートにつ

いてそれぞれ一件の DCOR 投票が開始され,パート 1

とパート4についてそれぞれ一件のFPDAM投票が開始

される予定である.正誤票は 2009 年中に出版される

可能性が高いが,補遺については 2010 年 4 月以降に

なるものと思われる.

未解決の欠陥報告が 100 近く存在すること,各国が

さらに欠陥報告を提出することを考えると,2009 年

中(すなわち最初の正誤票が出版される以前)には,

また別の正誤票と補遺を作り始める可能性が高い.

5.保守手続きにかかわる問題点

OOXMLをめぐる問題点にはいろいろなものがあるが,

保守手続きにかかわる問題点だけをここでは述べる.

(1) 頻繁な正誤票と補遺

多くの欠陥を修正するためには,正誤票と補遺をな

んども発行することが必要になる.しかし,正誤票と

補遺は規格本体から切り離された編集指示であるた

め読みにくく保守しにくい.

より深刻な問題点として,技術的には簡単な変更で

あっても,膨大な編集指示が必要になることがある.

たとえば,属性の名前空間についての変更は,技術的

には簡単だが,数千か所にのぼる編集指示を作成しな

ければならない.この件は,膨大な編集指示を作成で

きないという理由により実現が危ぶまれている.用語

の変更についても事情は同じである.

今後は,正誤票や補遺ではなく revision をしばし

ば出版するようにしたいと私は考えている.revision

図-1 Statistics of OOXML Defect Reports

であれば,置換コマンドを実行すればそれで済んでし

まう.FPDAM 投票が終了した後で revision として出

版すること,DCOR 投票が終了した後で reprint とし

て出版することも考えられる.

(2) Part 1 と Part 4 の関係

Part 4 は BRM によって誕生したパートであり,過

去との互換性のための機能がまとめられている.逆に

言えば,Part 1 は過去との互換性のための機能を含

まない.

Part 1 の機能だけを用い,Part 4 の機能を用いな

い OOXML 文書は,適合性クラス strict に属する.Part

1 の機能だけではなく,Part 4 の機能まで用いる文書

は適合性クラス transitional に属する.BRM におい

て,各国は,適合性クラス transitional から適合性

クラス strict への移行を明らかに望んでいた.

Part 1とPart 4の関係をどのようにするかはOOXML

の将来を左右する.適合性クラス strict への移行を

どのようにすれば推進できるのか,今後の新機能はい

ずれの適合性クラスにも導入するのかどうかなど考

慮すべきことは多い.

ISO/IEC 29500 出版時点においては,Part 4 は Part

1 への編集指示(機能追加)の形式で書かれている.

この方法は,すでに名前空間の変更において問題を引

き起こしている.名前空間の変更は,適合性クラス

strict にだけ適用し,適合性クラス transitional に

は適用しないので,Part 1 への FPDAM と Part 4 への

FPDAM の両方を必要とした.Part 1 への FPDAM には新

しい名前空間名に書き換えるための修正指示があり,

これに 100 ページ程度を費やしている.Part 4 への

FPDAM には,Part 1 への変更が Part 4 に及ばないよ

うにするために元の名前空間名に戻すための修正指

示がある.これにも 100 ページ程度を費やしている.

本質的には,Part 1 における新名前空間名の一覧表

(2ページ程度)に過ぎないものに,これほどの手間

がかかるのはおかしい.

6. 個人的な感想

私は,1980 年代半ばごろから文書フォーマットの

標準化に関わっている.この分野の標準化は失敗の連

続であった.成功したと言えるのは,ハイパーテキス

トのための簡単なフォーマットに特化した HTML と,

属性付きの要素からなる木だけに限定して成功した

XML だけだろう.ワードプロセッサやオフィスソフト

の間の文書交換フォーマットは惨憺たるものであっ

た . 例 え ば , ODA ( ISO/IEC8613 Open Document

Architecture)は普及せず,まもなく廃止される見込

みである.SGML(ISO 8879 Standard Generalized

Markup Language)は,マニュアルなどには用いられ

たが,ワードプロセッサやオフィスソフトの間での文

書交換には用いられていない.日本におけるワードプ

ロセッサ全盛期にも,標準化は成功しなかった.

OOXML 及び ODF(OpenDocument Format)をめぐる騒

動は,マスコミやブログにとって格好のネタとなった

が,巨視的にみれば過去三十年近くにわたる失敗を一

気に取り返すための止むを得ない歪みと言えるかも

知れない.オフィス文書交換フォーマットを規格とし

て記述するための膨大な工数を,これほどの騒動なし

に誰が負担しただろうか.

SC 34/WG 4 は,欠陥報告によって ISO/IEC 29500

を改善する道を提供している.日本語に関係するフォ

ントについての欠陥,日本の紙サイズについての欠陥

もすでに報告されている.JTC 1 におけるきちんとし

たメンテナンスに期待して日本は OOXML に賛成した

が,少なくともメンテナンスについては日本の期待通

りに進んでいると私は思っている.OOXML 文書を利用

するプログラムを作成するにあたって疑問点・問題点

に気づいたなら,SC 34 専門委員会を通じて欠陥報告

をどんどん提出してほしい.

<最近の国際会議から>

■ JTC 1/WG 6 会議報告

平野 芳行(日本電気(株))

1. 開催場所: ロンドン(英)

2. 開催期間: 2009-05-18/20

3. 参加国数/出席者数: 15 カ国,2 SC,1 TC,2

Liaison/30 名

コンビーナ(John Graham,豪),セクレタリ(Andrew

Mackey,豪),豪(3),英(5),米(1),南ア(1),加(2),

デンマーク(1),スウェーデン(1),韓(1),スペイン

(1),ニュージーランド(2),フィンランド(1),ベル

ギー(1),スイス(1),日(1: 平野芳行),SC7(1),

SC27(1),ISO/TC215(1),ISACA(2),itSMF-I(1)

4. 概要

本 WG は,JTC 1 の直下に新設された Corporate

Governance of IT(以下,IT ガバナンスと称する)を

審議するための組織である.

IT ガバナンスについては,これまで SC 7 の中で

Study Group 等を設置し,2006 年から標準化を進めて

きた.一方,2007 年からは,SC 27 でも情報セキュリ

ティガバナンスとして,組織の情報に関するガバナン

スの枠組みを検討し始めていた.この状況下で 2008

年 11月の JTC 1 奈良総会でガバナンスは SCのレベル

で議論すべきでないとして新規に WG の設置を決めた.

今回は,本 WG の役割の確認とこれまで SC 7,SC 27

で議論されてきたガバナンス関係の事項との調整を

行うことが主要テーマであった.

そして以下のことを RECOMMENDATION とすることが

決まった.

(1) ISO/IEC 38500 及びその実施のガイドについて,

SC 7 から以下の業務移管を行う.それに伴い,5月下

旬の SC 7 総会の決議事項に入れるように要請する.

・ NP 29151 Software and System Engineering --

Corporate Governance of Information

Technology

・ NP 29184 Corporate Governance of IT

Implementation Guide

(2) ISACA 及び itSMF-International との C リエゾ

ンを結ぶことを JTC 1 に承認を求める.

(3) C リエゾンを結ぶため ISF(international

Security Forum)にリエゾン文書の提出を要請する.

また ISO/TC68,ISO/TC215,ISO/TC176 とリエゾンを

結ぶための調整を行う.

(4)この規格の利用者及び一般の人に適用範囲の適切

で確実な理解をしてもらうために,IT ガバナンスの

中に“informantion”を含めるべきかどうかについて,

JTC 1/WG 6 が JTC 1 に確認を取る.

(5) IT Governance のモデル及び用語について,それ

ぞれ NB から新規提案を行う.担当の NB から 6月初め

に提出する.

(6) 次回の会議は,9 月初めに行う予定で,JTC 1 総

会への寄書をまとめる.現状,電話会議になりそう.

5. まとめ

今回一人でこの会議に出席したが,この会議の結果

IT ガバナンスの主な規格化が SC 7 から JTC 1/WG 6

に移されることになった.今後は,この会議が IT ガ

バナンスの議論の中心がここで行われる(事実,この

会議に出席して,SC 7/WG 1A も参加するメンバはた

った 4名しかいなかった).

今回議論を始めたところであり,まだ細かい議論に

はいたっていない.本件は重要なテーマであるので,

日本から今後意見を出していくためにこの WG に対応

した国内委員会の設立が必要である.今後,早期に立

ち上げるべく経済産業省や ISACA 等の関係者と検討

を進める予定である.

■ SC 6 ( Telecommunications and Information

Exchange Between Systems/通信とシステム間の情報

交換)総会報告

SC 6 専門委員会

委員長 山下 博之(独立行政法人情報処理推進機構)

1. 開催場所: 東京(日)

2. 開催期間: 2009-06-05

3. 参加国/機関数,出席者数:11 カ国/3 機関,44 名

議長(Dae Young Kim,韓),セクレタリ(Jooran Lee,

韓),オーストリア(1),ベルギー(1),中(8),チェコ

(1),仏(1),韓(9),スイス(1),スペイン(1),英(1),

米(4),日(7: 山下博之(HoD/C),高山佳久[ソニー],

鈴木亜矢[ソニー],向井幹雄[ソニー],脇野淳[沖電

気],山口純一,戸部美晴[NTT-AT]),Ecma(1),ITU-T(1),

ITTF(1),コンビーナ: WG1,WG7,WG8,WG9

4. トピックス

今回の SC 6 総会および WG 会合は,昨秋以降の世界

的経済不況に加え,新型インフルエンザの拡大時期と

重なり,どれだけ参加するのかが読みきれず懸念して

いたが,当初見込みより多くの参加者が各国から集ま

り,盛大に開催された.以下に,主なトピックスを記

す.

4.1 WG 1(物理層及びデータリンク層)

NFC(近距離無線通信規格)/ISO 14443(非接触 IC

カード規格) Harmonization に関し,Study Group(高

山佳久が Co-convenors の一人,以降 SG)の成果であ

る ToR(Terms of Reference)が承認される等,5 件

の決議が採択され,引き続き同 SG 主体の検討が進め

られることとなった.

ISO/IEC 8802-11(無線 LAN)標準に関するセキュ

リティメカニズム代替提案として,中国が WAPI 技術

に基づく規格をスタンドアロン(IS8802 シリーズに

含まれない形態)で『提案する』ことを奨励する決議

が承認された.(注:他のオプションとして,既存

IS8802-11 に含める形態が挙げられていた.)

4.2 WG 7(ネットワーク層およびトランスポート層)

センサネットワークについて,セキュリティフレー

ムワーク(ISO/IEC 29180)を CD投票に進めることが承

認された.また,アプリケーションとサービスに関す

る参照アーキテクチャモデル(ISO/IEC 29182)に関す

る複数の提案の整合をとった文書を WD として回覧す

ることとなった.

フューチャネットワークについて,コンセプト,課

題,要件等をまとめたテクニカルレポート(TR)に関す

る各国提案の審議が行われたが合意に至らず,本会議

の結果を受けて作成する文書を WD として回覧するこ

ととなった.また,ITU-T FG-FN(Focus Group on Future

Networks)のチェアマンである NTT の森田直孝が

ITU-T リエゾンとして出席し,ITU-T における FG-FN

の活動について紹介した.今後,ITU-T FG-FN ともリ

エゾン関係を結び,相互に検討内容を共有することと

なった.

4.3 WG 8(ディレクトリ)

パスワード管理ポリシーの具体化等の検討が進捗

した.

4.4 WG 9(ASN.1)

オブジェクト識別子解決システム(Object

Identifier Resolution System)に関する文書(6N

13994)を CD 投票に進めることが承認されると共に,

2009 年 9 月の WG 9 中間会議における 2nd CD または

FCD 文書の登録及び投票の事前承認が決議された.

4.5 その他

D.Y. Kim を SC 6 議長に,また,H. I. Jeon を WG 1

の,S. G. Kang を WG 7 の convenor に,それぞれ再

任することが承認された.

WG 1 の Co-convenor ないしは幹事を募集すること

となった.

Web Services(WG 未割当て)に関しては,入力文

書もなく議論は行われず,JTC 1-SG へのリエゾンが

任命された.

■ SC 7(Software Engineering/ソフトウェア技術)

総会報告

SC 7 専門委員会

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 開催場所: ハイデラバード(インド)

2. 開催期間: 2008-05-24/29

3. 参加国数/出席者数: 29 カ国/193 名

① Pメンバ(28カ国/192名): 豪(7),ベルギー(1),

加(7),中(4),コロンビア(1),チェコ(1),コートデ

ュボアール(1),デンマーク(1),フィンランド(7),

仏(3),独(2),インド(67),アイルランド(1),日(16),

韓(8),ルクセンブルグ(2),メキシコ(3),蘭(3),ニ

ュージーランド(1),ポーランド(1),スロバキア(1),

南ア(3),スペイン(3),スウェーデン(3),スイス(2),

タイ(6),英(19),米(19)

② O メンバ(1か国/1名): エストニア(1)

③日本からの参加者詳細:山本(HOD,AG,SWG1,WG2,

WG21,WG22),東(AG,WG6),加藤(AG,WG23),村上(WG7),

込山(WG6),山田(WG6,WG7),小川(WG10,WG42,SGW5),

小山(WG25),伏見(WG24),平野(WG25),吉田(WG25),

高橋(WG6,WG10),小堀(WG7),高井(WG7),鷲崎(WG20),

篠田(WG21)

4. 議事内容

4.1 Advisory Group 会合

24 日(日)10:00~16:30 と 28 日(木)18:00~20:00

に開催され,日本からは山本喜一,小川清(名古屋市

技研),WG 6 コンビーナとして東基衞(早大),WG 23

コンビーナとして加藤重信(コンサルタント)が出席

した.24 日の会合では,総会の議事予定を確認し,

議長が作成したAction Listに基づいて決定すべき事

項の洗出しと WG への割当てを行った.28 日の会議で

は,翌日の総会に提出する決議案の審議を行い,今回

の WG の期間中に多数の Study Group を新たに発足す

ることが決まった.

4.2 総会

25 日(月)9:30~11:30,及び 29 日(金)13:30~

16:40 に開催された.例年通り事前の AG において議

案審議が尽くされていたため,総会自体は円滑に推移

し,約 100 件の議決案をほぼ全会一致で決議した.

なお,決議をまとめる Drafting Committee のメン

バには,日本意見の反映の正確性を期して小堀一雄

(NTT データ)が参加した.

以下に主要な決議を示す.

(1) Convenor

東基衞を日本 NB の承認のもと WG 6 議長に再任

(2009-2011).

(2) Project Editors

新たに任命された日本からのエディタとプロジェ

クトを次に示す.

① 鷲崎弘宜(早大)を NP: Systems Engineering

Handbook(N4258)のコエディタに.

② 加藤重信を ISO/IEC TR 90003 のエディタに(コエ

ディタからの変更).

③ 岸知二(早大)を ISO/IEC 26520 Software and

systems engineering -- Reference model for

software and systems product lines のコエディタ

に.

④ 木下佳樹(産総研)を ISO/IEC 15026 -- Part 2

及び Part 4 のコエディタに.

⑤ 高井利憲(産総研)を ISO/IEC 15026 -- Part 3

のコエディタに.

(3) Liaison

① 加藤重信を ISO TC176/SC1,SC2 及び SC3

② 木下佳樹を IEC TC65/SC65A

③ 小川清を ISO TC22 SC3 WG16 及び JTC 1/SC 22

④ 伏見諭(数理研)を JTC 1/SC 27

(4) Work Items

① 28 件を次のステージに進める.

② WG1A で行っていたプロジェクト ISO/IEC 29151

Software and System Engineering - Corporate

Governance of Information Technology 及び ISO/IEC

29184 Corporate Governance of IT Implementation

Guide の 2 件は JTC 1/WG 6 に移管する.

(5) NP

次の通り 16 件の NP をつくる.

新規提案は次の 6件

・ User documentation in an Agile Environment

・ Recommended Practice for the

Customer-Supplier Relationship in Agile

Software Projects

・ Information Technology Governance of Service

Level Management in an Outsourced Environment

・ Information Technology – Digital Forensics

Governance Framework

・ Software asset management - Staged adoption

of software asset management processes

・ Software asset management - Overview &

Vocabulary

既存規格の改訂は次の 10 件で,ISO 15504 関連の 8

件と,TR 25021 及び ISO/IEC 26702:2007 の改訂であ

る.

(6) Other Working Group

SC 7/WG 21 は Software Module Tagging 及び

Embedded Systems Tagging の 2 つの OWG を開始する

ので,WG 21 以外からも専門家の参加を呼びかける.

(7) Ad Hoc Group

Study Group 1099 Service and systems management

standards and their integration into SC 7 からの

勧告を実現するための Ad Hoc Group IT Service

management mapping を発足する.日本からは加藤重

信がメンバとして参加する.

(8) Study Group

次の 15 件の Study Group を新設又は継続する.

① ソフトウェアプロセス方法論のための品質フレー

ムワーク(Quality framework for software processes

methodology)(インド)

日本から東基衞,込山俊博(NEC)が参加

② Agile 開発分野におけるガイド規格調査を継続

(SWG5)

③ ISO/IEC 15909 ペトリネット(Petri Net) (WG 19)

④ ISO/IEC 19793 方針及び義務を表現する企業の言

語 (Enterprise Language on the expression of

policies and obligations)

⑤ サービス指向アーキテクチャ(Service oriented

architecture)(中)

⑥ IT が可能にするサービス(IT enabled service

(ITES))(インド)

⑦ 組込みシステム領域における新たな規格の可能性

調 査 (To investigate the possibility of new

standards in the area of embedded systems)(日)

山本喜一が議長,黒川利明(CSK)が参加

⑧ SC 7 におけるサービス及びシステム管理規格とそ

れらの統合を継続 (SWG 5)

⑨ プロセス記述のための拡大ガイダンスの調査(To

investigate expanded guidance for process

description) (SWG 5)

⑩ ソフトウェア検査のツール及び方法の規格化の必

要 性 と 機 会 (The need and opportunity for

standardization of tools and methods of software

testing)

⑪ クラウドコンピューティングのための IT 統制領

域に規格又はガイダンスを追加する可能性の調査(To

start the investigation into the possibility of

additional standards or guidance in the area of IT

governance for cloud computing)

⑫ サービス提供者のための IT 統制領域に規格又は

ガイダンスを追加する可能性の調査(To investigate

the possibility of additional standards or

guidance in the area of IT governance for service

providers)

⑬ IT 監査のための IT 統制領域に規格又はガイダン

スを追加する可能性の調査(To investigate the

possibility of additional standards or guidance in

the area of IT governance for IT audit)

⑭ 企業アーキテクチャのための IT 統制領域に規格

又はガイダンスを追加する可能性の調査 (To

investigate the possibility of additional

standards or guidance in the area of IT governance

for enterprise architecture)

⑮ソフトウェア技術検定案の調査及び新規格の定義

(To investigate software engineering

certification schemes and to define the scope of

new standards)

日本から向山博(JIPDEC)がコチェアを務め,鷲崎

弘宜が参加

(9) Management

① リエゾンメンバを補助するためリエゾングループ

SLG 1: to ISO/C22/SC3/WG6 及び SLG 2: to JTC 1/SC

27 を発足する.SLG 1 には小川清が参加する.

② WG 6 のタイトルとスコープを次の通りに変更する.

タイトル:Software product and system quality

スコープ:Development of standards and technical

reports for software product and system quality

requirement and evaluation

③ WG1Aのタイトルとスコープを次の通りに変更する.

タ イ ト ル : IS(Information System) governance

frameworks and systems

ス コ ー プ : the elaboration of standards and

guidelines for IT governance to IT operations

④ SWG 1(BPG)のメンバの再任で日本からは山本喜一

が参加

⑤ SWG 5 のメンバの再任で日本からは小川清が参加

5. 今後の開催予定

2010-05-23/28 新潟(日)

6. その他

(1) 前回までのOメンバ国の多くがPメンバとなり参

加国数が増加し,予想よりも多くの参加者が集まった.

特にインド国内から多くの参加者があり,25 日の

総会直後に各 WG の説明を行った.

(2) 15 件の Study Group が新設されるなど,従来の

SC 7 のスコープよりもかなり広い範囲を扱うように

なってきている.国内の委員会体制を国際に合わせて

充実するよう努力しないと,国際の場での議論をカバ

ーできなくなってきている.特に,今回は日本から提

案した組込みシステムについてのStudy Groupが承認

されたことから,関係各位の絶大な支援をお願いした

い.

(3) ホテルと会場が一体となっていてきわめて便利

であったが,バリケードと武装警官による厳重な警備

で自由に外に出られる雰囲気ではなく,ずっとホテル

に缶詰め状態でかなりのストレスになった.会場及び

ホテルのサービスは,一生懸命やっている姿勢が見ら

れて良かったが,ネットワークサーバの回線容量不足

など細かな点でいくつか目につくところがあった.

(4) 終日の総会で新潟の紹介を行ったが,好意的な

反応であった.200 名を超える参加者があるかもしれ

ないので,十分な準備が必要である.

■ SC 24(Computer Graphics, image processing and

environmental data representation/コンピュータ

グラフィクス,画像処理及び環境データ表現)総会報

SC 24 専門委員会

委員長 青野 雅樹(豊橋技術科学大学)

1. 開催場所: ロンドン(英)

2. 開催期間: 2009-07-06/10

3. 参加国/出席者数: 7 カ国/21 名

議長(Ha-Jine Kimn,韓),セクレタリ(David Hyde,

英),米(6),豪(1), 英(4),韓(6),中(1),日(1:青

野雅樹[HoD])

4. 特記事項

4.1 WG 6(Multimedia Presentation and Interchange)

WG 6 では World Wide Web コンソーシアム(W3C)

と 協 調 し て 作 成 し た 画 像 の 交 換 形 式 で あ る

PNG(ISO/IEC 15949)のデフェクトレポート,ならびに

Web3Dコンソーシアムとの協調作業で規格化してきた

X3D(拡張三次元形式)の改訂版などの 新状況説明

があった.X3D に関する具体的な報告としては,ヒュ

ーマノイドのアニメーション記述用に規格化された

ISO/IEC19774(通称 H-Anim)で,産業界からのリクエ

ストにより,人間の皮膚の動きと骨格の動きをより滑

らかにするような改良版の動きがあること,X3Dの「基

本アーキテクチャと機能」に関する規格の第 2 版

(ISO/IEC 19775-1.2)が出版されたこと,X3D の三

次元シーンに外部のプログラムからアクセスを行う

規格である Scene Access Interface (SAI)の第 2 版

(ISO/IEC 19775-2.2)が FCD 投票(2009 年 3 月投票)

で可決されたこと,その FDIS 文書が 2009 年の 7月後

半に出るであろうこと,X3D の XML 符号化を規定した

規格の第二版(ISO/IEC 19776-1.2)が JTC 1 に送付さ

れたこと,X3D の VRML(Virtual Reality Modeling

Language)風符号化の第二版(ISO/IEC 19776-2.2)

が一足先に IS として 2008 年暮れに出版されたこと,

X3D のバイナリ符号化の第二版(ISO/IEC 19776-3.2)

の FDIS 文書の準備がはじまっていること,などが報

告された.同時に W3C および Web3D コンソーシアムと

のリエゾン要員の説明があり,今後も協調していくこ

とが確認された.なお,Web3D からは副会長の Peter

Schickel が参加し,後述の発表を行った.

X3D に関する拡張機能についての発表が韓国から 5

件あった.今後の NP 投票に向けて有望な技術の例と

しては,メートルやキログラムなどといった物理単位

でデータを指定できる拡張機能のアイデアが M.W.

Lee 教授から,高速なリアリズムを簡易に実現できる

Projective Texture Mapping の拡張機能のアイデア

が K-H. Yoo 教授から,また,拡張現実(Augmented

Reality)や混合現実(Mixed Reality)に関するアイ

デアが G. Kim からあった.このうち,物理単位でデ

ータを指定できる拡張は,今年度中に New Work Item

になる可能性があることがコンビーナから紹介され

た.

一方,三次元物体の XML による記述方式でデファク

ト標準となりつつあるクロノスグループの Collada

(コラーダ)に関するレポートがあり,ISO TC184/SC4

として国際標準とする候補であることが紹介された.

Collada は 2004 年ごろ米国 SCE(Sony Computer

Entertainment)が開発した三次元物体やアニメーシ

ョンの記述方式でありデータ互換方式を規定してお

り,3DS MAX や Maya など商用のグラフィックス製品

にもデータ交換用に採用されており,三次元 CG のコ

ンテンツ系の作成ツールや CAD 製品でカバーされる

割合は,おそらく X3D よりはるかに多いと想像される.

ISO SC24 では,この動きに同調したい意思を持って

いるが,クロノス側は,ISO(特に X3D 規格)には興

味をあまり示していないのが現状で,クロノスとの協

調には時間がかかりそうだとの印象を持った.

Web3D コンソーシアムから参加していた Peter

Schickel は,上記のクロノスが提供する Collada に

影響されたのか,CAD 機能に B-Rep(境界表現によるソ

リッドモデルの表現方法のひとつ)を追加するとか,

Google Earth のように非常に大スケールから,非常

に細かいスケールまで追尾できる GIS 機能などを取

り入れるべきだとか,といった主旨のプレゼンを行っ

た.同時に X3D が多くの企業や国でサポートされてい

るという宣伝をしていた.

4.2 WG 7 ( Image Processing and Interchange,

Registration)

2007 年の東京会議以降,WG 7 のコンビーナになっ

た韓国の Y.K. Chung から今年の総会でも挨拶があっ

た.WG 7 では,ISO/IEC 12087-5:1998 の BIIF(Basic

Image Interchange Format)に関して,これまでは 2

つのプロファイル,すなわちモデルプロファイルと

NATO の NSIF01.01 の 2 種類であったが,これに

ISO/IEC 15444 である JPEG 2000 のバージョン 01.10

が新たに加わったことの報告があった.なお,BIIF

(Basic Image Interchange Facility)のエディタで

ある Laura Moore は,本ロンドン会議に遅れてくると

のことであったが,間に合わなかったようだ.2年前

から NP 候補になっている知的ロボット応用のための

画像処理に関する進捗報告がコンビーナからあった.

これが 24N3161(User Identification Service APIs

for Intelligent Service Robots)として NP になる

とのことである.

4.3 WG 8(Environmental Representation)

WG 8 の会議はその他の会議と並行で行われたので

詳細な報告はできないが,地理情報利用シミュレーシ

ョンのための(構造的)データ表現を規定する SEDRIS

プロジェクト,とくにその DRM(Data Representation

Model)や SRM(Spatial Reference Model)に関する,

幾つかの補遺に関する New Work Item が紹介された.

5. 今後の開催予定

2010-06-28/07-02 釜山(韓)

6. その他

SC 24 への日本からの参加は,東京会議以来 2年ぶ

りで,英国の BSI(British Standards Institution)

では,7年ぶりの開催であった.当時のセクレタリで

あるMs. Jean Strideや前任のセクレタリであるJose

Alcorta,そして現セクレタリであるDavid Hydeなど,

いずれのセクレタリも,標準化のプロセスや JTC 1 の

全体のルールなど,かなり訓練を受けているようで好

感と信頼感がもてた.

SC 24 全体での変化のきざしは,WG 6 や Plenary に

初めて中国からの delegate(Ms. Dong-Mei Xu)が参

加したことである.しかし,Pメンバであるエジプト

やポルトガルからは,まだ一度も delegate が参加し

たことはない.

後に,議長の H. Kim からは,来年の釜山での SC

24 総会に関して,Korea NVIDIA 社の研究員にグラフ

ィックボードの 新状況に関する発表をしてもらう

予定だと意気込みをみせていた.

■ SC 28(Office Equipment/事務機器)総会報告

SC 28 国内委員会(JBMIA)

委員長 小澁 弘明(コンサルタント・NPO エコデザ

イン推進機構代表理事)

1. 開催場所: 釜山市(韓)

2. 開催期間: 2009-06-10/06-12

3. 参加国数/出席者数:7 カ国/47 名

議長(斎藤輝[コンサルタント]),セクレタリ(熊倉

和正[リコー]),次期セクレタリ(杉山元邦[富士ゼロ

ックス]),豪(1),中(6),独(1),日(10),韓(16),

露(1),米(9)

3.1 日本からの参加者詳細

小澁弘明(HoD,コンサルタント),櫻井穆(JBMIA),

大久保彰徳(JBMIA),伊藤丘(KMBT),仲谷文雄(富

士ゼロックス),宮下隆明(リコー),佐田和泉(セイ

コーエプソン),稲垣敏彦(富士ゼロックス),村井和

夫(リコー),藤田徹(セイコーエプソン)

4. 議事内容

4.1 概要

JTC 1/SC 28(Office Equipment)第 20 回総会が,

韓国の招致により釜山市郊外海雲台にあるパラダイ

スホテルにて開催された.7 カ国約 47 名に及ぶメン

バ参加の会議であり盛況であった.

[特記事項]

(1)日本が Endorse した本年任期を迎える斎藤国際議

長の再任が SC 28 として承認された.また,3年間国

際幹事を務めた熊倉和正は本年任期で終了退任し,後

任に杉山元邦が就任することが報告された.いずれも

本年秋のJTC 1総会で正式に決定される.(Resolution

Busan 2/2009)

(2)日本が主導的に活動している AWG 活動の一環であ

る AWG/PWG5 からの NP が承認されたのを受けて,新た

に WG 5: Office Color を立ち上げることを日本から

提案し承認された.コンビーナに仲谷文雄,セクレタ

リに宮下隆明の就任が承認された.(Resolution

Busan 20/2009,Resolution Busan 21/2009)

4.2 AWG (戦略検討とロードマップ)

AWGの使命のひとつは現在と将来のマーケットニー

ズを分析・予測し,SC 28 の短期・中期ロードマップ

の策定を行うことにより,新たなテーマの発掘のベー

スを作ることにあるが,その成果の一つが前述の WG 5

設立として実現したことは評価できる.

(1) 今回日本から提案したSC 28ロードマップフォー

マットが正式に採用され,各国は本年 11 月末までに

それに対する追加・補足を行うこととなった.

(Resolution Busan 19/2009)

(2) 課題である SC 28 全体の WG 組織,そのスコープ

などの見直しについては,次回以降への繰越課題とな

った.

4.3 WG 2(Consumables.消耗品・イールド)

(1) フォトイールド測定法(ISO/IEC 29102)および

フォトイールド・テストチャート(ISO/IEC 29103)

の標準化作成期限は,前年に引続きさらに 1年間延期

を要求することとなった.(Resolution Busan 4/2009)

4.4 WG 3(複写機・複合機の生産性)

昨年度 FDIS に移行したディジタル・プリンタ生産

性測定方法(ISO/IEC 24734)およびディジタル複写機

生産性測定方法(ISO/IEC 24735)は本年 1 月に承認さ

れたが,それを補う標準である片面単票原稿での複写

生産性測定方法(ISO/IEC 29183)は本年 1月に NPが承

認され,本総会おいて,本年 6 月末までに CD 案を配

布し,WG 3 内でレビューした後に FCD への移行を WG 3

で決定することとなった.(Resolution Busan 8/2009,

Resolution Busan 9/2009)

4.5 WG 4(Image Quality Assessment.画質測定)

(1) 画質属性測定方法規格(ISO/IEC 24790)は日本が

エディタを引き受けている.昨年 CD に移行し開発を

1年間延期したが,今回更に DIS(FCD)登録を 1年延長

することとなり,WG 4 で検定後 FCD へ移行してよい

こ と と な っ た . (Resolution Busan 11/2009 ,

Resolution Busan 12/2009)

(2) 白黒レーザープリンタの解像力測定法およびテ

ストチャート(ISO/IEC 29112)は昨年 1 年間延期し

たが,本年7月末までにCDを配布することとなった.

(Resolution Busan 13/2009)

4.6 NP 29142(カートリッジ特性)エディターミーティ

ング

注目される米提案のトナーカートリッジ特性規格

NP 29142(5 parts) は 5 部 の う ち 4 部 の

assistant-editorsに日本から参加することになり昨

年から開発が始まったが,CD 作成に難航しており,

結局 CD 発行を当初計画の 2009 年末から 12 カ月延期

し, 初の WD を本年 8 月末までに発行することとな

った.(Resolution Busan 5/2009)

4.7 リエゾンレポートおよびオフィサー任命,他

SC 28 活動の対外コミュニケーション促進役として

設定した Ambassador は継続することを確認し,引続

き櫻井穆が任命された.(Resolution Busan 37/2009,

Resolution Busan 38/2009)

LIASON OFFICERS

・ ISO/TC42: 臼井信昭(PFU),Ann McCarthy,稲

垣敏彦 & Eric Zeise(再)

・ ISO/TC130: 臼井信昭(再)& Eric Zeise(再)

・ ISO/TC171: 臼井信昭(再)

・ SCIT Report: T. Schmeltzer(再)& K.Richter(代

行)

・ CIE Div 8: Ann McCarthy(再)& K. Richter(再)

・ CIE Div 1: K. Richter(再)

・ IEC/TC100: Fumio Nakaya(再)

・ Ecma TC38: P. Menard(再)

・ Ecma TC46: Ann McCarthy(再)

・ ICC: Ann McCarthy(再)

4.8 コンビーナの任命

・ WG 3: Dwight Lewis(新)

・ WG 5: 中谷文雄(新)

5. 今後の開催予定

2010-06-03/11 Rochester,NY(米)(tentative)

6. その他

当初,インフルエンザ問題で日本委員の不参加拡大

が懸念されたが,国内委員会委員長及び事務局 JBMIA

専務理事連名で委員各社への協力依頼状を発行して

の働きかけなども行い,結果的に各社のご協力により

13 名(国際議長・幹事含む)のメンバが参加でき,日

本としての貢献・成果を上げることができた.なお,

国際幹事から参加各国宛インフルエンザによる会議

参加への影響を打診したが,これによる不参加はなく

結局大騒ぎしていたのは日本のみであった.

■ SC 29(Coding of Audio, Picture, Multimedia and

Hypermedia Information/音声,映像,マルチメディ

ア,ハイパーメディア情報の符号化)総会報告

SC 29 専門委員会

委員長 守谷 健弘(日本電信電話(株))

1. 開催場所: マウイ(米)

2. 開催期間: 2009-4-27

3. 参加国数/出席者数: 8 カ国/11 名

議長(浅井光太郎[三菱電機]),セクレタリ(小倉由

紀子[ITSCJ/IPSJ]),フィンランド(1),英(1),仏(1),

独(1),日(1:守谷健弘),韓(1),米(2),スウェーデ

ン(1)

欠席:SC 29/AGM コンビーナ,SC 29/WG 1 コンビー

ナ,SC 29/WG 11 コンビーナ

4. 審議事項

(1) 標準化案の承認等(Res 1)

・ IS/AMD/COR の承認 15 件

・ FDIS/FDAM の承認 27 件

・ FCD/FPDAM の承認 21 件

・ CD/PDAM/PDTR の承認 24 件

(2) 標準化項目の見直し,変更(Res 2)

・ Subdivision 2 項目

JPEG(1 件),JPsearch(1 件)

・ Minor Enhancements 12 項目

JPEG 2000(1 件),MPEG-4(5 件),MPEG-21(2

件),MPEG-A(3 件),MPEG-D(1 件)

・ タイトル変更 4項目

JPsearch(1件),MPEG-4(2 件),MPEG-V(1 件)

(3) スケジュール

標準化スケジュール SC 29 N 10390 を承認.(Res 3)

(4) プロジェクトエディタ

・ 9件のべ19名の新任,1件2名の退任を承認.(Res

4)

・ JNB 在籍の新任命エディタは山田昭雄(NEC):

ISO/IEC TR 24800-1

(5) JTC 1 の特許データベース(Res 5)

JTC 1 による特許データベースの内容,更新頻度は

JTC 1 プレナリでの約束どおりでないので改善を要求

する.

(6) SC 29 ビジネスプラン案承認(Res 6)

(7) 議長推薦(Res 7)

次期3年の議長職として浅井光太郎を推薦し,JTC 1

に承認を求める.

(8) 委員任命(Res 8 ‐ 11)

・ JTC 1 のアクセシビリティグループ: 委員とし

て Ms. K. Grant(英)を任命.

・ JTC 1 のデジタルコンテンツ管理保護(DCMP)ス

タディグループ: 委員として WG 1 から 2 名,

WG 11 から 7名を任命.

・ JTC 1 のセンサーネットワークグループ: 各 NB

に委員候補の推薦を要請.

・ ISO Steering Committee on Image Technology SC

29 から JTC 1 の委員として Ms. K. Grant(英)

を推薦.

(9) 新規リエゾン締結

・ IEC TC 9(Res 12)

(10) リエゾン解消(Res 13,14)

・ ISO/IEC JTC 1/SC 36

・ ISO TC 46(ただし TC 46/SC 9 とはリエゾンを

継続)

(11) リエゾンの管理(Res 15)

現状の締結先と委員リストを閲覧.各 NB に対して

リエゾン委員の更新を要請.

(12) 前回議事録承認(Res 16)

(13) P メンバの参加状況を IETF に報告(Res 17)

(14) SC 29 web サイトのパスワード更新(プレナリ

ー会合後)(Res.18)

(15) 各 WG,AGM コンビーナのプレナリ会合への出席

を要請(Res 19)

(16) Editor に対する ISO/IEC Certificate の授与推

薦 28 件のべ 71 人(Res 20)

(17) その他議論

WG 1 と WG 11 の情報交換をできるだけ密にするた

め同時開催が望ましいが,WG 1 側にとっては規模の

大きいWG 11との同時開催により単独開催より参加費

が高騰することを懸念.

5. 今後の開催予定:

2010 年 4 月または 7 月の WG 1,WG 11 会合直後を

推奨.WG 1,WG 11 会合が決定次第メールで審議,連

絡.

■ SC 31 ( Automatic Identification and Data

Capture/自動認識及びデータ取得技術)総会報告

SC 31 専門委員会

委員 小橋 一夫((社) 電子情報技術産業協会)

1. 開催場所: シドニー(豪)

2. 開催日時: 2009-06-12

3. 参加国/出席者数: 17 カ国,リエゾン/44 名

議長(Chuck Biss,米),セクレタリ(Ray Delnicki,

米),豪(2),ベルギー(1),加(1),中(5),フィンラ

ンド(1),仏(1),独(1),オーストリア(1),韓(6),

露(2),シンガポール(1),南ア(1),スウェーデン(1),

英(1),米(7),蘭(2),日(3:柴田彰[HoD,デンソー

ウェーブ],吉岡稔弘[WG2 コンビーナ,AI 総研],小

橋一夫),GS1(2),TC122(1),事務局(2)

4. 概要:

昨年同様,午前 8 時からの開催で,短時間の中で,

議長報告,各 WG の報告,各国の活動状況報告,ビジ

ネスプラン,リエゾン報告が行われ,Resolution を

まとめて終わるといったスピーディーな会議進行で

あった.会議室の構造上の制約のためか,委員は席の

正面の壁に写される画面を見つめ,横から議長の声が

聞こえるといった奇異な感覚の会議であった.事前に

提出された資料に基づいて淡々と報告が進められ,昨

年以上に事務的な報告集会といった印象が残る総会

であった.

4.1 議長及び事務局の報告から

・ 近増加している電話会議に関して留意すべき

点(要領)の指摘があった.

・ RFID標準化でSC 31に密接に関連するGRIFS(The

Global RFID Interoperability Forum for

Standards)に関して,SC 31 としてどのように

参画していくかについて,C. Harmon に調査と報

告が指示された.

・ プロジェクトの番号付け(改訂,Ballot の繰り

返し数など)に関して,しばしば混乱が生じて

いるので,表記方法に関する確認が行われた.

・ SC 31 会議への参加状況と Ballot での投票率に

関して紹介された.P メンバ国は 33 カ国である

が,Plenary 会議への出席国は半数といった実態

である.

4.2 HoD 会議及び WG 活動報告から

・ WG 1 と WG 3 を一つに統合する.

・ NWIP の機能を開発の途中で確認する「Artifact

demonstration」の検証はどうあるべきかに関す

る Ad hoc を構築し,9 月までに SC 31 に報告す

る.

・ WG 7:Security を新設する.

(新設を総会決議に記載するにあたっては,反

対を表明する国も出て,投票の結果「賛成 11,

反対 2,保留 4」で新設の承認となった.)

・ ITU-R WRC-11 の Recommendation item 1.22 に対

して,SC 31 としての見解をまとめるための調査

を行い,各 NB に対しても結果に基づいて関係先

への働きかけを要請する.

・ 米国から,議長:Chuck Biss と WG 1 コンビーナ:

Sprague Ackley の 2 名が役割を継続担当する旨

の推薦の弁があり,確認.議長については JTC 1

総会へ推奨する.

5. 今後の開催予定

2010-05-24 北京(中)

2011 年 (オーストリア)

■ SC 32(Data Management and Interchange/デー

タ管理と交換)総会報告

SC 32 専門委員会

委員長 鈴木 健司(東京国際大学)

1. 開催場所: 済州島(韓)

2. 開催期間: 2009-06-22/26

3. 参加国数/出席者数: 8 カ国/60 名

議長(Bruce Bargmeyer),セクレタリ(Timothy D.

Schoechle),豪(1),加(3),中(10),独(1),韓(15),

英(4),米(13),日(11:堀内一[東京国際大],大林正

晴[管理工学研究所],岡部雅夫[東京電力],土田正士

[日立],鈴木俊宏[日本オラクル],芝野耕司[東京外

国語大],梶野智行[ビーコンインフォーメーションテ

クノロジー],小寺孝[日立],鈴木健司,オブザーバ:

安達辰巳[NEC],田口麻紀子[NEC])

4. 主な結果

4.1 WG 1(Open-edi)関連

(1) 次の新たなサブプロジェクト分割が承認された.

15944-10 Business operational view - Part 10:

Coded domains

(2) プロジェクトの進展は,CD 登録 3件,FCD 投票 1

件,FDIS 投票 2件が勧告された.

(3) 昨年度のシドニー総会で国内での事前承認なし

に日本から提案された15944-9(Part 9: Traceability

framework)については,提案者でかつエディタとな

った国内 WG 1 主査が退任したため,代わってコンビ

ーナの Wenfeng Sun(中)がプロジェクトエディタと

なり,co-editor が求められている.

※(補足)国内 WG 1 は,WG 1 主査の退任,国際

会議での活動の停滞,日本から国際会議に派遣できる

エキスパートの欠如等の状況から,小委員会としての

任務を終了したものとし,2009 年 4 月の SC 32 専門

委員会にて審議し廃止を決定した.このことにより,

今回の WG 1 国際会議にはエキスパートを派遣してい

ない.

4.2 WG 2(Metadata)関連

(1) 中国,韓国からの参加者が増え,サブプロジェク

トや Study Period の提案が多くなされている.全体

として Web サービスに関する関心が非常に高まって

いて,日本が推進する Registry Of Registries(ROR)

もその一つとして受け取られている.

(2) 次の7つのサブプロジェクト分割が承認された.

・ ISO/IEC 19763-7 Metamodel Framework for

Interoperability (MFI) -- Part 7: Metamodel

for Service Registration

・ ISO/IEC 19763-8 Metamodel Framework for

Interoperability (MFI)-- Part 8: Metamodel

for Role and Goal Registration

・ ISO/IEC TR 19763-9 Metamodel Framework for

Interoperability (MFI) -- Part 9: On Demand

Model Selection

・ ISO/IEC 24706-1 Metadata for technical

standards -- Document description elements

・ ISO/IEC 24706-2 Metadata for technical

standards -- URI naming and resolution

techniques

・ ISO/IEC 20943-5 Achieving metadata registry

content consistency -- Part 5: Semantic

Metadata Mapping Procedure

・ ISO/IEC 20943-6 Metadata Content Consistency

-- Part 6: Procedure of the Specification for

the Semantic Web

(3) 次の2件の新規Study Periodと 2件の継続Study

Period が承認された.

・ Request for a new study period on Layering

Ontologies Upon Data Exchange Agreements.

・ Request for a new study period on integration

and harmonization of 11179 and 19763 series

of standards.

・ Extend Registry of Registries (ROR) study

period one year.

・ Extend New Metadata Standards study period

one year.

(4) プロジェクトの進展は,CD 投票 2 件,PDTR 投票

2件,FCD 投票 2件,DCOR 投票 1件,FDIS 投票 3件を

行うことが承認された.

4.3 WG 3(Database Languages)関連

(1)今回の会議は,CD 9075-1 SQL/Framework,CD

9075-2 SQL/Foundation , CD 9075-4 SQL/PSM , CD

9075-11 SQL/Schemata,CD 9075-14 SQL/XML の CD 投

票 結 果 の 編 集 会 議 で あ っ た . 特 に , 9075-2

SQL/Foundation においては,日本から JIS SQL の全

翻訳の作業から摘出されたコメント200件を含む302

件のコメントがあった.会議の結果,すべてのコメン

トを解決することができなかったので,継続して編集

会議を行うことが承認された.

(2) 次のプロジェクトの PTDR 投票を行うことが承認

された. PDTR 19075-01 SQL TR XQuery regular

expression support in SQL/Foundation

(3) 9075-04,9075-09,9075-10,9075-11,9075-13,

9075-14 のプロジェクトの Database languages - SQL

-1st Technical Corrigendum for SQL:2008 の DCOR

投票を行うことが承認された.

4.4 WG 4(SQL Multimedia & Application Packages)

関連

(1) 今回の会議は,CD 13249-3 SQL/MM Part 3:

Spatial の CD 投票結果の編集会議と,日本提案のプ

ロジェクトである FCD 13249-7 SQL/MM Part 7:

History の FCD 投票結果の編集会議であった.これら

のプロジェクトのすべてのコメントを解決すること

はできなかったので,継続して編集会議を行うことが

承認された.

(2) 前回の会議で認められた韓国提案のプロジェク

トである SQL/MM Part 8: MDR(Metadata Registry)

については,WD を登録することと,名称を MDR から

Metadata Query Language に変更することを WG 内で

勧告したが,SC32 総会で米国から MQL の名前を変え

たほうがよいという意見があり,次回中間会議でより

適切な名前を検討することになった.

5.次回開催予定

2010-05-24 中国

6. 所感

出席者の意見を含め,以下に所感を述べる.

(1) 前回のシドニー会議と同様に,WG 1 と WG 2 にお

いては,中国と韓国からの出席が多くなり,新たなサ

ブプロジェクトが承認されており,前回報告したよう

に,これらの行動は必ずしも技術的な活動というよう

には感じられないので,その意図を知ることが必要で

ある.WG 1 については,国内組織を廃止し,SC 32 専

門委員会で対応しているが,対応の仕方を再検討する

必要がある.

(2) 産業界のニーズに対応している WG 3 の SQL 及び

WG 4 の SQL/MM では,参加者が大きく減少し,特に,

WG 3 での 初の週の編集会議では 5 名程度と参加者

の減少が目立つだけではなく,US 国内での SQL ビジ

ネスの寡占化,成熟化によって,企業のサポートも少

なくなり,セキュリティなどの社会的ニーズの高い項

目に関しても,NIUS(Not Invented in US)シンドロー

ムが強く,US の開発力が低下していることから,主

導権を維持するために,新規開発を減らす傾向にある.

また,WG 3 及び WG 4 での開発では DBMS 及び 4000 ペ

ージに及ぶ SQL の理解が必須なことから,中韓などの

新興国やヨーロッパ各国には参加障壁が高く,新規開

発が難しい状況となっている.

国内,国際を問わず,JTC 1 での標準化に関して,

従来の SC の枠組みではなく,新しい産業界のリーダ

企業に魅力的な課題へと標準化課題を変更すること

が必要であろう.昨年のシドニー会議では,Google

の GFS(Google File System)及び Google BigTable な

どのクラウド技術への取り組みをプレゼンテーショ

ンしたが,SC 32 内では,こうした新規取り組みはほ

ぼ不可能であると考える.

こうしたことからクラウドコンピューティングに

取り組む新 SC を JTC 1 レベルで提案することを前提

に Google BigTable 及び Amazon SimpleDB などクラウ

ドコンピューティング基盤であるデータベースイン

タフェースの新規提案を“Cloud Table”提案として,

具体的に考えることが必要だと考える.

■SC 34( Document Description and Processing

Languages/文書の記述と処理の言語)総会報告

SC 34 専門委員会

委員長 小町 祐史(大阪工業大学)

委員 村田 真(国際大学)

1. 開催場所: プラハ(チェコ)

2. 開催期間: 2009-03-23/27

3. 参加国数/出席者数:11 カ国/36 名

議長(S. Oh,韓),セクレタリ(木村敏子,日),ブ

ラジル,加,チェコ,中,フィンランド,仏,独,日

(3:,鈴木俊哉[広島大],小町祐史,村田真),韓,ノ

ルウェイ,南ア,英,米,XML Guild,Ecma

4. 特記事項

4.1 プレナリでの決定事項

次の内容について審議し,決定した.その背景とな

った WG での審議の概要は 4.2 に示す.

(1) ISO/IEC 26300 に関する OASIS との共同メンテナ

ンス手続き

ODF (Open Document Format for Office

Applications)のメンテナンスに関するOASISとJTC 1

との原則メモ(N1148)を JTC 1 が採用することを勧告

し,それを JTC 1 に送付する.ODF のメンテナンスに

関する OASIS と JTC 1 との詳細手続き(N1149)を承認

し,それを JTC 1 に送付して追認を求める.

(2) ISO/IEC 26300 のメンテナンスに関する Adhoc グ

ループ 3の設立

次の作業のために,ISO/IEC 26300 のメンテナンス

に関する Adhoc グループ 3を設立し,F. Cave をコン

ビーナに指名する.

① OASIS と共同して ISO/IEC 26300 のメンテナンス

の長期計画を立て,その計画案等を SC 34 総会に提案

する.

② ISO/IEC 26300 のメンテナンスに関連するすべて

の活動を調整する.

(3) ODF メンテナンスへの SC 34 メンバの参加

Adhoc グループのコンビーナに対して,SC 34 メン

バがISO/IEC 26300のメンテナンスに参加するオプシ

ョンを示すステートメントを用意することを要求す

る.

(4) ISO/IEC 19757-1(DSDL の概要)の進捗

ISO/IEC 19757-1 を Type3 の TR に変更し,テキス

トが提示されたら PDTR 投票を開始する.

(5) ISO/IEC 19757-11(スキーマの関連)

細分割によって ISO/IEC 19757-11 のプロジェクト

を生成し,JTC 1 にその追認を求める.

(6) ISO/IEC 19757-2(RELAX NG)の Amd.1

細分割によって ISO/IEC 19757-2の Amd.1のプロジ

ェクトを生成し,JTC 1 にその追認を求める.

(7) ISO/IEC 19757-4(NVDL)の Amd.1

細分割によって ISO/IEC 19757-4の Amd.1のプロジ

ェクトを生成し,JTC 1 にその追認を求める.

(8) ISO/IEC 9541-1,2,3(フォント情報交換)の第 2

細分割によって ISO/IEC 9541-1,2,3 の第 2 版の

プロジェクトを生成し,JTC 1 にその追認を求める.

(9) ISO/IEC 9541-4(OFF との整合)の Amd.1

細分割によって ISO/IEC 9541-4 の Amd.1 のプロジ

ェクトを生成し,JTC 1 にその追認を求める.

(10) ISO/IEC 18048(TMQL)の進捗

エディタからテキストを受領した後,2nd FCD 投票

を開始する.

(11) ISO/IEC 19756(TMCL)の進捗

エディタからテキストを受領した後,2nd FCD 投票

を開始する.

(12) ISO/IEC TR 29111(TM 利用の DC メタデータ表現)

の進捗

エディタからテキストを受領した後,2nd PDTR 投

票を開始する.

(13) ISO/IEC 29500-1, 2, 4(OOXML)の Amd.

細分割によって ISO/IEC 29500-1,2,4 の Amd.の

プロジェクトを生成し,JTC 1 にその追認を求める.

エディタからテキストを受領した後,FPDAM 投票を開

始する.

(14) TR 29166 の表題と適用範囲の変更

TR 29166 の表題と適用範囲の変更(表題は

ODF/OOXML Translation から ODF/OOXML Translation

Guidelines)し,JTC 1 にその追認を求める.

4.2 プレナリでの議論の背景となった WG での審議

4.2.1 WG 2

(1) ISO/IEC 9541-1, 2, 3 の第 2版

ISO/IEC 9541-1,2,3 の Amd.の出版過程で ISO 中

央事務局から Amd.と Cor.の数が多いので,それらを

反映した第 2 版の出版を勧められていたため,WG2

N339 によって第 2 版の必要性を確認した後,既存の

プロジェクトの細分割によってプロジェクトを作り,

ISO/IEC 9541-1,2,3 の第 2 版の開発を開始するこ

とにした.

第 2 版では交換様式を RELAX NG (Document Schema

Definition Languages - Regular-grammar-based

validation)によって記述することとし,エディタに

は小町祐史,鈴木俊哉,Soon-Bum Lim を指名した.

(2) ISO/IEC 9541-4 の Cor.1 および Amd.1

WG2N340 に示された ISO/IEC 9541-4 の Cor.の必要

性を確認し,Cor.1 の原案 WG2N341 をレビューして,

WG2N341rev を作成し,それを投票にかけることにし

た.

WG2N351 に示された ISO/IEC 9541-4 の拡張の必要

性(OFF リソースのネットワーク上での交換のための

メディア型の登録の必要性)を確認し,既存のプロジ

ェクトの細分割によってプロジェクトを作り,

ISO/IEC 9541-4 の Amd.1 を開発することにした.

メディア型 font の提案に関して,WG 4 コンビーナ

からコメントが出され,WG 4 が進めている OOXML の

処理についてはメディア型 font を使わないことを確

認すると共に,用意した Amd.1 テキストは直ちに配布

せず,さらに検討を行うことにした.

(3) SC 29/WG 1 へのリエゾン 1

ISO/IEC 14496-5/FDAM14 (Open Font Format

reference software)に関するコメントをまとめてリ

エゾン文書 WG2N353rev とし,これを SC 29/WG 11 に

送付することにした.

(4) WG 2 PoW

これまでの進捗と,新たに作成したプロジェクトを

記載した WG2 PoW (Program of Work)の改訂版 WG2N348

を作成し,レビューした.

4.2.2 WG4

(1) 欠陥報告

欠陥報告に対応してISO/IEC 29500を変更する必要

がある.必要な変更の幾つかは Cor.の範囲を越えて

いる可能性があり,むしろ Amd.によって扱われるこ

とが望ましい.そこで,Cor.と Amd.とを区別するた

めの評価基準を作成した.

英国からの 新の欠陥報告は,小さいが重要な変更

を提案している.それはある属性の許容値を

true/false/0/1 から on/off に変更するもので,この

変更は,Ballot Resolution Meeting での決定を覆す

ことになるため,詳細検討することを各国に要請した.

ISO/IEC 29500 の重要な欠陥は,Ecma の初版の OOXML

と ISO/IEC 29500 OOXML とを簡単に区別する機構がな

いことである.何らかの機構を提供しなければならな

いことは合意されているが,既存の実装と文書に深刻

な影響を及ぼすことが確実なので,慎重に検討する必

要がある.議論の結果,二つの機構とその得失をまと

めた文書を作成した.

現在ある欠陥報告に対応するため,次回の WG 4 会

議後に DCOR 投票と FPDAM 投票を開始することを決め

た.PDAM ではなく FPDAM から開始するのは,欠陥報

告に起因する小規模な拡張しか行っていないことに

よる.

(2) 拡張提案

今回の会議では,日本からの拡張提案が紹介された.

WG 4 は,各国とリエゾン組織に拡張を提案するよう

呼びかけている.

Ecma には,マイクロソフトオフィスの次の版に必

要な拡張のすべてを開示する計画がある.開示は,WG

4 のシアトル会議で行われる予定である.

(3) 適合性試験

適合性試験についての情報交換を行った.FOKUS

(Fraunhofer-Institut für Offene

Kommunikationssysteme)とマイクロソフトは,OOXML

の実装と文書をテストする体制を作ることを計画し

ている.WG 4 においても適合性試験用テストデータ

と適合性試験方法に取り組むことは可能であるが,何

の決定もなされていない.

5. 今後の開催予定

2009-09-13/17 シアトル(米)

2010-03-22/26 ストックホルム(スウェーデン)

<声のページ>

2 つの委員会

原田 敬((株)日立製作所)

現在は SC 27/WG 1(情報セキュリティマネジメン

トシステム)の標準化活動に従事していますが,国際

標準化作業に最初に従事したのは,1987 年に SC 24

(当時はコンピュータ・グラフィクス)及び SC 24/WG

4(言語結合)の委員に任命された時点です.もう 20年

以上前になりますので,伝統的な感覚ならふた昔,IT

業界のドッグ・イヤー感覚だと何世代前になるのでし

ょうか.当時は OSI(Open Systems Interconnection)

の標準化華やかなりし頃ですが,コンピュータ・グラ

フィクス関連でも二次元のAPIであるGKS(Graphical

Kernel System)が策定され,その API を各社が実装

して製品として販売し,ビジネスとしても成功してい

ました.ソースコードの可搬性を保証する API の策定

が標準化活動の目的であった時代です.

1988 年に生まれてはじめての海外出張で,アムス

テルダムを訪問したのですが,その準備が大変でした.

当時は電子メールの黎明期で,所属する工場には

JUNET は導入されておらず,資料は紙ベースでその重

たいこと.また,海外出張というのも稀にしかなかっ

たため,工場長の決裁印が必要でした.

会社の業務の関係で,暫く標準化から離れていまし

たが,2003 年から SC 27/WG 1 に参加するようになり

ました.海外出張はごく普通になっていますし,ネッ

トとノート PC のおかげで会議の準備や会議自体が非

常に効率的になったことは言うまでもありません.

また,標準化活動が大いに活発になっていたことに

も驚きました.SC 27/WG 1 で作成した ISO/IEC

27001(ISMS要求事項)をベースにした認証件数では,

日本が半分強を占めていることもあり,SC 27 の国際

会議には,各 WG に日本から十人以上の参加があり,

全世界からは数百人の参加があります.

多数の日本委員が国際会議に参加しているにもか

かわらず,2003 年時点では SC 27/WG 1 でエディタを

務める日本委員はいなかったのですが,最近は少しず

つ増えてきました.技術標準ではなく,マネジメント

標準であるせいか,年配の日本の委員の活躍が目に付

きます.私もプロジェクトの共同エディタをやらせて

もらいましたが,文書作成はきちんとやっても会議運

営はネイティブに依存しがちでした.このような経験

はグローバル時代には貴重な財産ですので,今後は若

い方々にもっと積極的にエディタを務めてもらって

標準作成に貢献していただければと思います.

バイオメトリクス用語の標準化に参加して

溝口 正典(日本電気(株))

ISO/IEC JTC 1/SC 37 ではバイオメトリクスの標準

化を行っています.年 2 回開催される WG 1 では

Standing Document として用語集を開発しており,WG

開催ごとに改訂されて最新版は第 12 版となっていま

す.本稿では WG 1 での議論について,英語が苦手な

私なりに興味深かったところをいくつかご紹介する

ことにしたいと思います.

WG 1 で最初に議論したのが,SC のタイトルでもあ

る“Biometrics”でした.英国委員を中心に議論しま

すが,言語学者が居るわけではありませんので,

Oxford 辞書を参照しながら進めるという感じになり

ました.まず,名詞の“biometric”をどうするかで

す.Physics や Economics などの学問名の“-s”はそ

もそも複数の意味なのかなどの長い議論の末,単数形

の名詞は使わないこと,形容詞としての“biometric”

だけにすることで合意ができました.その次は,「個々

人」を表す用語で長い議論になり,“individuals”と

いう単語が最後に選ばれました.それ以上分けられな

いという意味があり,名詞として基本的に人間を指す

ことが多く,最も適した選択になりました.参加した

ばかりの頃はこのような議論について行けるのだろ

うかと不安に思ったものです.

規格文書には日本語に訳しにくい単語があります.

複数の訳語からどれを選択すれば良いのかが難しい

場合や,困るのは日本語に適切な概念が無い場合です.

例えば“verification”という「『私は○○です』と

いう申し出を確認する」行為は,英語的には“claim”

を“verify”するのですが,この“claim”に合う言

葉を私はまだ思いつきません.カタカナにすると全く

違った意味になる危険があるし,「請求」はいまひと

つ合わない気がします.おそらく日本語としては,文

脈によって訳語を変えた方が適切なのではないかと

思ったりしています.

語源に遡ることでなるほどと理解できたり,見たこ

とのない単語やその概念に感心したりと,それなりに

興味深い経験もさせて頂いていますが,やはり日本語

で世界に通じれば良いのになぁとつくづく感じるこ

のごろです.

<解説:IT ガバナンスの標準化>

平野 芳行(日本電気(株))

最近 JTC 1 の中で活動が活発になってきた IT のコ

ーポレートガバナンス(以下 IT ガバナンスと称する)

の標準化について説明する.

1. 経緯

JTC 1 の活動で,最初に IT ガバナンスを標準化し

ようという動きが出てきたのは,SC 7(Software

Engineering)で IT サービスマネジメントの英国規格

BS15000のファストトラック提案が出されたときから

である.この規格は,SC 7 のそれまでの業務範囲か

ら見ると異質で,IT サービスの運用面から管理する

ことを目的としたものであった.そして,IT サービ

スには外部委託によるサービスなどが含まれている

などその統制についても議論が及び,ITガバナンスも

審議対象に取り入れられた.そして,BS15000 が

ISO/IEC 20000 として標準化された後,2006 年 5 月の

タイ・バンコク総会で,ニュージーランドから豪州規

格AS8015:2005 Corporate Governance of Information

and Communication Technology を国際標準化したい

との提案があり,ファストトラック提案の承認と共に

SC 7 内に Study Group(SG-ITG)の設置が決まった.筆

者はその次の2006年11月のソウルから国際会議に出

席し,SC 7/WG 25(IT サービスマネジメント)での

ISO/IEC 20000 改訂作業の合間をみて SG-ITG にも参

加した.2006 年 5 月のバンコク総会で AS8015 のファ

ストトラック提案が承認されていたにも関わらず,投

票開始はかなり遅れ,規格番号 DIS 29382 として 2007

年 2 月 1 日に投票開始となった(5 ヶ月投票).投票

結果は,賛成7,コメントつき賛成7,反対 5でぎり

ぎり承認条件をクリアした(日本はコメント付き賛

成).その後,2007 年 11 月末のモントリオール会議

で BRM(Ballot Resolution Meeting)を行い,規格名

称の ICT を IT に変え,内容を一部変更し,規格番号

もきりのよい番号へ変更し,最終的に ISO/IEC

38500:2008 Corporate Governance of Information

Technology として 2008 年 6月 1日に正式に発行され

た.

次に,この規格の概要を説明する.

2. ISO/IEC 38500 について

2.1 概要

この規格は,組織のディレクタ(Director:2.2参照)

が考えるべき IT のコーポレートガバナンスの原則及

びディレクタがその原則に沿ってやるべきことを示

している.特に,後述するが,評価(Evaluate)-指示

(Direct)-モニター(Monitor)という 3 つのステップ

に分けてやるべきことを概説している.

この規格の全体構成は,次の通りである.

1.適用範囲

1.1 適用範囲

1.2 適用

1.3 目的

1.4 この規格を使うことの利点

1.5 参考文書

1.6 定義

2.良質な IT ガバナンスのためのフレームワーク

2.1 原則

2.2 モデル

3.良質な IT ガバナンスのためのガイダンス

3.1 概要

3.2 原則1:責任(Responsibility)

3.3 原則2:戦略(Strategy)

3.4 原則3:取得(Acquisition)

3.5 原則4:パフォーマンス(Performance)

3.6 原則5:適合(Conformance)

3.7 原則6:人間の行動(Human Behaviour)

まず,この規格の適用範囲であるが,「組織のディ

レクタのためにその組織内で IT の効果的,効率的で,

受容可能な使用に関するガイドとなる原則を提供す

ること」としている.対象となる組織としては,あら

ゆる大きさで,公的,私的の区別なく,また,NGO も

含んでいる.

この規格は,ある組織によって使用される情報及び

通信サービスに関連したマネジメントプロセス及び

方針決定のガバナンスに適用される.

この規格を使う目的は,あらゆる組織において以下

の 3 つのことによって IT の効果的,効率的かつ受容

可能な利用を推進することである.

・ この規格に遵守しているのであれば,この組織

のITガバナンスが信用に足るものであることを

利害関係者へ示すこと

・ 組織のIT利用の統制においてディレクタに情報

提供し,ディレクタを導くこと

・ IT ガバナンスの客観的な評価のための基礎を提

供すること

更に,この規格を使うと,この原則に従っている組

織にとって,次のような多くの利点がある.

・ 不十分なITシステムによって生じる法令に準拠

していないリスクがディレクタに明らかになる.

・ IT を扱っている手続きによって,適切に対処さ

れなければならない特定のリスクに関連付けら

れる.

・ 適切な IT ガバナンスによって,組織の活動状況

にITの利用が積極的に貢献することをディレク

タが確認できるようになる.

しかし,この規格では,3.に示す 6つの一般的な原

則を記載しているだけなので,漫然としている.実際

に組織で運用するとなると,より詳細なレベルで管理

策を決めている Cobit(Control Objectives for

Information and related Technology)や COSO(the

Committee of Sponsoring Organization of the

Treadway Commission)といったものを組織内で適用

することが必要となる.

2.2 用語定義

この規格では,18個の関連用語を定義しているが,

主要なものとして,以下のものを取り上げる.

① コーポレートガバナンス: 組織によって指示され,

管理されるシステム(Adrian Cadbury 1992 and OECD

Principles of Corporate Governance 1999 から)

②IT ガバナンス: IT の現在及び未来の利用によって

指図され,管理されるシステム

③ディレクタ: 組織の多くの上層統制グループのメ

ンバ

2.3 良質な IT ガバナンスのためのフレームワーク

ここでは,コーポレートガバナンスの 6つの原則及

びモデルについて説明されている.

まず,良質な IT ガバナンスのための 6 つの原則と

は表 1 の通りである.

これら原則は,意思決定をガイドする好ましい行動

を示している.

次に,この規格で提示しているコーポレートガバナ

ンスのモデルは以下の通りである.

このモデルでは,ディレクタは次の 3つの主要任務

を通じて IT を統制することが望ましいとしている.

(a) IT の現状及び将来の利用を評価する(Evaluate)

(b) IT の利用を業務目的に確実に合うように計画と

方針の準備及び導入を指示する(Direct)

(c) 計画に対するパフォーマンス及び方針に対する

適合をモニターする(Monitor)

このモデルを示したのが図 1 である.

特に,この図 1 で,IT ガバナンスのモデルで評価

(Evaluate)-指示(Direct)-モニター(Monitor)の 3 つ

のアクションのサイクルが示された.

ここでは詳説しないが,「3.良質な IT ガバナンス

のためのガイダンス」において,ディレクタが,6つ

の原則に対して,評価‐指示‐モニターのレベルでど

のように行動すべきかが示されている.これをいかに

方針決定して,企業の事業運営や IT の運用に結びつ

けるかについてのガイドを示している.

以上のような原則論を決めた規格が ISO/IEC 38500

である.この規格には,より詳細な管理策によって肉

付けされ,運用されることが期待されており,その議

論が行われているところである.

表 1 良質な IT ガバナンスのための 6 つの原則

原則 タイトル

原則1 責 任

(Responsibility)

組織内の個人及びグループが IT のための供給及び需要の両方の点で彼らの責

任を理解し受け入れる.

原則2 戦略 (Strategy) 組織の事業戦略は IT の現在及び将来の能力を考慮する.

原則3 調 達

(Acquisition)

IT の調達は,明らかで透明性のある意志決定をもって,適切な現状分析に基づ

いて正当な理由で進められるべき.

原則4 パフォーマンス

(Performance)

IT は,現状及び将来のビジネス要件に必要とされるサービス,サービスレベル

及びサービスの質を提供する組織を支援する目的にあっている.

原則5 適 合

(Conformance)

IT はすべての対応すべき法制度に適合している.

原則6 人間行動

(Human Behaviour)

IT の方針,実施及び決定は人間行動を尊重している.

図 1 IT ガバナンスのモデル

3. 今後の動き

これまで,SC 7/WG 1A で ISO/IEC 38500 の保守を

行うことになっていた.しかし,2008 年の JTC 1 奈

良総会の決議の結果,JTC 1 の直下に WG 6 を設置し

て ISO/IEC 38500 の保守を含めた IT ガバナンスの規

格開発をすることが決まった.その後の JTC 1/WG 6

会合の中で,ISO/IEC 38500 及び実施のための関連ガ

イド文書を SC 7 から JTC 1/WG 6 に移管することも決

まった.今後の動きとしては,JTC 1/WG 6 のほか,

前述のITガバナンスの運用レベルの規格化を行うSC

7/WG 1A,更に情報セキュリティガバナンスの枠組み

の規格化を進めている SC 27/WG 1 という 3 つのグル

ープで IT に関係するガバナンスを並行して進めるこ

とになった.特に,SC 27/WG 1 では,経済産業省内

の情報セキュリティガバナンス研究会で検討されて

きた「情報セキュリティガバナンス導入ガイダンス」

の成果を日本から提案していくことになっている.

国内でも,JTC 1/WG 6 に対応する小委員会を設置

することになったので,より適切な対応がなされてい

くだろうと考えている.

参考文献

1) ISO/IEC38500:2008 Corporate governance of

information technology

2) Adrian Cadbury The Committee on the Financial

Aspects of Corporate Governance 1992

3) OECD コーポレート・ガバナンス原則 1999 年

4) OECD コーポレート・ガバナンス原則改訂版

http://www.oecdtokyo.org/theme/corp-g/2004/2004

0422revised.html

5) OECD コーポレート・ガバナンス-改定 OECD 原則

の分析と評価- 日本コーポレート・ガバナンス・フ

ォーラム編

6) ITGI Enables ISO/IEC 38500:2008 Adoption

ISACA/ITGI

http://www.isaca.org/

7) Cobit4.1 ISACA http://www.isaca.org/

8) 情報セキュリティガバナンス導入ガバナンス (経

済産業省 2009 年 6 月)

http://www.meti.go.jp/press/20090630007/2009063

0007.html

評価

指示 モニター

ITガバナンスビジネス上の圧力 ビジネス上のニーズ

提案 パ

フーォマンス

コンプライアンス

方針

計画

ITプロジェクト IT運用

ビジネスプロセス

評価

指示 モニター

ITガバナンスビジネス上の圧力 ビジネス上のニーズ

提案 パ

フーォマンス

コンプライアンス

方針

計画

ITプロジェクト IT運用

ビジネスプロセス

<第 24 回規格総会の報告>

三田 真弓((社)情報処理学会 情報規格調査会)

第 24 回規格総会が 2009 年 7 月 13 日に開催されま

した.2008 年度の決算,2009 年度の予算,2008 年度

の活動報告,2009 年度の重点活動項目,当調査会規

程の一部改正,当調査会の 6号委員の改選が承認され

ました.また,2009 年 4 月から 5 月にかけて賛助会

員や情報技術標準化関連機関の率直な考えや希望に

耳を傾け,今後の情報規格調査会の重点領域の検討,

運営,活動改善の参考にする目的で,当調査会の活動

に関して行ったアンケート結果について報告が行わ

れました.

規格総会で配布された資料はすでに当調査会のホ

ームページで閲覧できるようになっておりますので,

ここでは紙面の都合で,規程の一部改正に絞って報告

します.

規程の一部改正について

現在,情報処理学会は,新法人(一般社団法人)に

移行すべく準備を進めておりますが,当調査会の規程

(正確には,情報規格調査会規程)を内閣府公益認定

等委員会が発行したガイド「移行認定又は移行認可の

申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特

に留意すべき事項について」に照らして検討した結果,

幾つかの用語を別の用語で置換することが必要とな

りました.すなわち,会長,副会長,理事,という用

語は学会本部の定款や規程で使用されているもので,

これと類似した,規格会長,規格副会長,規格理事と

いう用語が規程で使用されているのは第三者に混乱

を与えるということで,これらを別の用語に置き換え

ることにしました.具体的には,規格会長を情報規格

調査会委員長,規格副会長を情報規格調査会副委員長,

規格理事を規格役員に変更することにしました.この

変更で最も大きな影響を受けるのは規程の第 5 条で

すが,これらの用語はその他の条文でも使用されてお

り,それらの全てを変更する改正になっております.

今まで,情報処理学会の活動の焦点は「学術」と「実

務」の 2つとし,標準化活動は「実務」の焦点に含ま

れるとしてきました.しかしながら今年度からは「学

術」と「実務」と「標準」と 3 つの焦点があるとし,

標準化活動に対する期待は今まで以上に高くなりま

した.このような状況に鑑み,情報処理学会が新法人

に移行することが認められますと,情報規格調査会か

らも理事候補を推薦できることになる予定です.

<2009 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール>

JTC 1 2009-10-18/22 Tel Aviv,Israel

JTC 1 SWG-Directives

2009-10-22/23 Tel Aviv,Israel

SC 2 2009-10-30 東京,日本

SC 6 2010-01-18/22 Barcelona,Spain

SC 7 2010-05-24/28 新潟,日本

SC 17 2009-09 北京,中国

SC 22 2009-08-31/09-02 Delft,Netherlands

SC 23 2009 未定

SC 24 2010-06-28/07-02 Busan,韓国

SC 25 2009-09-11 北京,中国

SC 27 2010-04-26/27 Malacca,Malaysia

SC 28 2010-06-03/11 Rochester,NY,USA

SC 29 2010-04-07 未定

SC 31 2010-05-24 北京,中国

SC 34 2009-09-17 Seattle,USA

SC 35 2010-02-22/25 Madrid,Spain

SC 36 2009-09-20/26 Umea,Sweden

SC 37 2010-07-13/20 Malacca,Malaysia

<2009 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰>

標準化功績賞は,長年にわたり情報規格調査会委員および所属委員会委員として,多大な功績があった方々

の中から選ばれます.また,標準化貢献賞は,最近の数年間において,所属委員会委員として,顕著な貢献の

あった方々の中から選ばれます.

なお,本学会情報規格調査会規程により,2009 年度は 2009 年 7 月 13 日に開催された第 24 回規格総会で,受

賞者に表彰状および副賞として賞牌または賞金が授与されました.

標準化功績賞

黒川 利明 氏((株)CSK ホールディングス)

黒川氏は,1988年から現在までの21年の長きにわたり10を超える委員会に参加され,

国内および国際標準化活動に貢献してこられました.特にプログラム言語関係では,

LISP,Prolog,Java,C++,Ecma Script,C#,CLI 等の数多くの言語の国際および国内

標準化を手がけられました.また,黒川氏の活動はプログラム言語の分野にとどまらず

ソフトウェア全般の標準化活動および標準化の教育の分野でも多大な功績を残されま

した.

原田 節雄 氏(ソニー(株))

原田氏は,2004 年から 3年にわたり規格役員を務められ,広報委員会,技術委員会 表

彰委員会などの活動に貢献すると共に 2005 年に ISO/IEC JTC 1 の上層委員会でもある

SMB(標準管理評議会)委員に就任し,日本の情報技術産業界全体の地位向上のために

多大なる尽力をされました.また,欧米などに対して積極的および緻密な交渉技術等を

駆使することによって,NFC(近接型通信技術)などの優れた日本発の技術の国際規格

化に貢献をされました.

三田 真弓 氏

三田氏は,1997 年から 11 年の長きにわたり情報規格調査会の事務局責任者を務めら

れ,日本の情報技術関連の国際標準化体制の強化に大きな功績がありました.また,人

材育成にも尽力し同調査会を 4 つの SC の幹事国業務を担当する組織に成長させる等,

ISO/IEC JTC 1 における日本の地位向上に多大な貢献をされました.

標準化貢献賞

親泊 肇 氏(日本電気(株))

親泊氏は,1998 年から現在までの 11 年の長きにわ

たり SC 25/WG 4/SG 3 の委員および主査,SC 25 専門

委員会委員として SAN(ストレージエリアネットワー

ク)の通信手段として広く使用されている FC,その

関連規格である FC 機器用およびストレージ装置管理

のアプリケーションインタフェースである FAIS

SMI-S 等の標準化活動に尽力されてきました.また,

国内委員会だけでなく FC の標準化団体である

ANSI/INCITS T11 の会合の審議に参加し国際的にも積

極的に取り組みコンピュータ間通信の発展に貢献し

てきました.

小寺 孝 氏((株)日立製作所)

小寺氏は,1998 年から現在までの 10 年の長きにわ

たりデータベースの国際規格の開発において,SC

32/WG 3 小委員会の幹事および SC 32/WG 4 小委員会

の委員として標準化活動に尽力されてきました.SC

32/WG 3 においては,データベース言語 SQL の規格開

発に貢献されるとともに JIS 原案作成において摘出

された国際規格の多くの問題点を修正し規格の品質

の向上に貢献されてきました SC 32/WG 4 では,SQL

仕様とマルチメディアアプリケーションの両方に精

通した専門家として多大な貢献を果してきました.

関 喜一 氏(独立行政法人 産業技術総合研究所)

関氏は,2005 年から現在までの 4年にわたり SC 35

専門委員会委員として参加され,情報機器におけるア

クセシブルなユーザインタフェースの専門家として

標準化活動に尽力されてきました.また,PC のアク

セシビリティ設定に関する国際規格ISO/IEC 24786を

日本から NP 提案するとともにプロジェクトエディタ

に就任され国際の場でも大いに活躍されました.

田中 稔 氏(富士通(株))

田中氏は,1996 年から現在までの 13 年の長きにわ

たり SC 22/Fortran WG 小委員会の主査としてプログ

ラム言語 Fortran の標準化活動を率いてこられまし

た.言語仕様に関する日本からの意見を国際の場で発

信し続け,Fortran の仕様の方向性に影響を与えた功

績は大きなものがあります.また,これと並行して

Fortranに関する合計 5件の JIS原案作成を委員長と

して推進され巨大な言語規格の翻訳作業に尽力され

ました.

田邉 正雄 氏(日本電信電話(株))

田邉氏は,2000 年から現在までの 9 年の長きにわ

たり SC 27/WG 3 小委員会委員,幹事を経て,主査と

してセキュリティ評価技術の標準化活動に尽力され

ました.また,多くの国際標準化会議に出席され国際

規格の制定に寄与されるとともに ISO/IEC 15408(情

報技術セキュリティの評価基準)の JIS 化に参加され

我が国における普及に関しても大きく貢献されまし

た.

仲林 清 氏(放送大学)

仲林氏は,2000 年の SC 36 発足当初から現在まで

の 9年の長きにわたり SC 36専門委員会委員長として,

eラーニング分野での標準化活動に携わり,国内での

意見の集約のみならず JTC 1/SC 36 の国際の場におい

ても標準化の方向付けに大きく貢献されました.また,

ISO/IEC TR 29163 SCORM 2004 をはじめとするeラー

ニング関連規格の国内での業界団体と協力した.普及

活動にも尽力されました.

中村 敏男 氏(沖ソフトウェア(株))

中村氏は,2003 年から現在までの 6 年の長きにわ

たり,SC 37/WG 2 小委員会の幹事および主査として

バイオメトリックテクニカルインタフェース分野に

おける国内調整および国際標準への展開にリーダシ

ップをとり,国際での日本の地位向上のための働きか

けおよび責任ある立場で委員会の適正運営に貢献さ

れました特に ISO/IEC 19784-1に関しては GUI機能の

追補を提案しプロジェクトエディタに就任され国際

の場でも大いに活躍されました.

原田 敬 氏((株)日立製作所)

原田氏は,1987 年から 1991 年まで SC 24/WG 4 小

委員会委員ならびに主査,さらに 2003 年から現在ま

で SC 27/WG 1 小委員会主査として情報技術の標準化

活動に尽力されました.特に情報セキュリティマネジ

メント ISMS 27000 シリーズの国際会議に多く出席さ

れ ISO/IEC 27000(ISMS Overview and vocabulary)の

プロジェクトエディタなど重要な貢献をされました.

溝口 正典 氏(日本電気(株))

溝口氏は,2002 年の SC 37 専門委員会設立当初か

ら SC 37/WG 1 小委員会委員として参加され,2003 年

11 月からは主査を引継ぎ SC 37 全体で共通理解のも

と使用するバイオメトリクス用語の標準化に国内外

で献身的に努力し その結果 SC で標準文書作成に関

わる委員が参照するStanding Documentとして用語基

準文書が作成されました.そして現在も継続的に改善

を行っております.この活動は SC 37 全体の活動に大

きな影響を与える多大な貢献をされました.

八島 由幸 氏(千葉工業大学)

八島氏は,2002 年から現在までの 7 年の長きにわ

たり,SC 29/WG 11/MPEG-4 および Video 小委員会の

主査として日本における映像サービスの動向や MPEG

関連機器の開発状況を見極めつつ重要な投票案件や

NB コメントの提出などに尽力されました.また,複

数の MPEG ビデオ関連規格の要素技術の共同提案者と

して標準化策定に貢献されるとともに国際会議や学

会誌記事を通じて映像符号化標準化活動の広報と研

究開発の推進に多大な貢献をされました.

オープン分散処理 - 統一モデリング言語 JIS X 4170:2009 公示について

UML JIS 原案作成委員会

委員長 薮田 和夫(富士通(株))

JIS X 4170:2009 は,2005 年 4 月に成立した国際規

格 ISO/IEC 19501:2005(Open Distributed Processing

-- Unified Modeling Language (UML) Version 1.4.2)

との一致規格である.

UML は元々,OMG(Object Management Group:オブ

ジェクト技術標準化団体)が長年に渡りオブジェクト

指向分析・設計の表記法を統一モデリング言語として

共通化してきたものである.日本では UML を広く公の

モデリング言語として普及するには,その JIS 化が必

須であると考えられていた.またそうすることによっ

て,UML の公的試験(情報処理試験等)における利用,

特許文書における利用,学校教育における利用などが

可能となっていく.そこでISO/IEC 19501:2005が2005

年 4 月に成立すると直ぐに JIS 化の準備に入り,同年

10 月には UML JIS 原案作成委員会がスタートした.

UML JIS 原案作成委員会では,2007 年 1 月に第一次

原案を完成させた.その後,日本規格協会での JIS の

様式を中心としたチェック,規格調整分科会での全般

にわたるチェックを受けながら,原案のブラッシュア

ップをはかっていった.完成した UML JIS 原案は 2009

年 1 月に開催された JISC 委員会で承認され,同年 5

月 20 日に官報で公示されるに至った.

ISO/IEC 19501:2005 の JIS 化にあたっては,想定

外の苦労が多々発生した.何れも ISO/IEC 19501:2005

は OMG 標準の UML 1.4.2 を PAS として採用していたた

め,標準規格としての形態を満たしていなかったこと

による.

例えば,IS 原文は規格部分と参考情報が混在して

いる,規定部分が不明確である,OMG での暗黙の了解

事項が規格本文に反映されていない,本来国際規格に

はない著作権及び特許権に関する記述がある,等々.

何れの問題も関係各位のご協力を頂きながら解決し

ていった.詳細は JIS X 4170:2009 規格書に添付して

いる解説をご覧頂きたい.

去る 6 月 15 日,機械振興会館において,特定非営

利活動法人 UML モデリング推進協議会(UMTP)が主催

する「UML/JIS規格成立記念セミナー」が開催された.

ゲストとして経済産業省商務情報政策局情報処理振

興課課長補佐の安田篤様,情報処理学会情報規格調査

会会長の石崎俊様,日本規格協会情報技術標準化研究

センター所長の秋間升様をはじめ各界で UML の普及

に貢献され,UML JIS 化に多大なご支援を頂いた方々

が参集した.皆様には改めて感謝申し上げます.

∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪

<編集後記>

日本規格協会の「国際標準化活動参加にあたっての

基本情報」(http://www.jsa.or.jp/itn/shiryo.asp)

や 情 報 通 信 研 究 機 構 の 「 標 準 化 手 引 き 」

(http://www2.nict.go.jp/r/r314/intro.html)等に

見られるように,国による標準化人材育成や戦略的標

準化活動推進の施策はますます広がりを見せている.

こうした取組みを通して,より多くの方々に標準化に

ついて興味を持ってもらい,理解を深めてもらうこと

が期待される.

ところで,標準化の活動は,たとえば次のように多

様であり,必要とされる人材像も様々である:

1) 自身の技術について,標準化の要否や進め方等の

戦略を立案し遂行する

2) 自身の提案する技術を標準化することを目的に,

技術面を中心とする議論を行う

3) 他者が提案する技術に対し,技術及び制度等の多

方面から標準化の是非や方向・内容等について議論

を行う

4) 標準化の手続き等,ルール面での議論を行う

また,標準化の対象もさまざまである:

・基盤的技術→例:SC6(データ通信手順等)

・応用的技術→例:SC37(バイオメトリクス)

・マネジメント→例:SC7(ライフサイクル管理等)

このような多様性は未だ十分には理解されていな

いかもしれない.しかしながら,どのような標準化活

動であっても,その結果が報われること,すなわち,

策定された規格が広く活用され,多くの人々に恩恵を

もたらすことを願いたい. [HY 記]

発 行 人

社団法人 情 報 処 理 学 会

情報規格調査会

広報委員会

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8

機械振興会館 308-3

Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493

[email protected]

http://www.itscj.ipsj.or.jp/