Naked DNA...

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日皮会誌:109 (7), 997―1003, 1999 (平11) 生涯教育講座 Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用 Naked DNA 法は,単純にDNAを皮下注するだけ で生体表皮細胞に外来遺伝子を導入できる簡単な方法 である.我々は,本法を用いて挿入された遺伝子を生 体表皮細胞で強力に発現するプロモーター/エンハン サーカセットを見出した.そのカセットを用いてin- terleukin(IL) - 6の発現ベクターを作成し, naked DNA法を用いてラット表皮細胞に導入し, IL-6の過 剰発現により表皮細胞の増殖とリンパ球の浸潤がおこ ることを明らかにした.さらに,同じ方法でIL-10発現 遺伝子を導入し,遺伝子導入細胞から放出された循環 中のIL-10が遠隔皮膚に起こる接触過敏反応を抑制す ることを示している.本法を用いて種々の遺伝子を表 皮細胞に導入することにより,その導入遺伝子から産 生される蛋白の皮膚や全身での機能を調べることがで きる.また,発現させた蛋白に対する免疫を誘導する DNAワクチンも可能にする.さらに,皮膚の細胞を標 的とする遺伝子治療が可能になり,難治性の炎症・腫 瘍・遺伝性皮膚疾患に対する治療の選択がさらに拡が ると思われた. 生体皮膚細胞への遺伝子導入の意義 現在,皮膚に存在する細胞のほとんどが培養可能に なり,培養皮膚細胞に遺伝子を導入することも比較的 簡単に行われている.しかし,培養した状態と生体で の状態は異なるし,また生体では周囲の種々の細胞と 影響しあっているので,実際に生体皮膚細胞へ遺伝子 を導入し発現された蛋白質(遺伝子産物)が皮膚にど のような変化をおこすのかを見てみたいというのは, 当然の欲求である.遺伝子を生体皮膚細胞に自由に導 入する方法が確立されれば,その遺伝子産物の生体皮 膚に対する新しい作用を検索することが可能になる. また,我々臨床家にとって待望の新しい治療法,皮膚 の細胞を標的とする遺伝子治療が可能になり,難治性 弘前大学医学部皮膚科(主任 橋本 功教授) 平成11年1月27日受理 別刷請求先:(〒036-8562)弘前市在府町5 弘前大学 医学部皮膚科 滓村 大輔 の炎症・腫瘍・遺伝性皮膚疾患の治療が可能になる. 遺伝子治療の標的としての表皮細胞 表皮は体の最外層にあり,主な構成細胞は表皮細胞 である.この表皮細胞は遺伝子治療の標的細胞として 有用であろうか.表皮細胞は種々の機能を有すること が明らかにされてきているが,さらに最近ではサイト カインを産生する免疫担当細胞としての性格も持つこ とが知られてきている.このような多機能を持つ細胞 は,多種多様の蛋白質を発現する潜在能力があり,多 種多様の遺伝子を導入・発現することが可能になる. また,我々皮膚科医は熱傷や皮膚潰瘍を治療すること が多いが,表皮細胞は非常に高い増殖能を有すること を知っている.遺伝子を導入された表皮細胞を簡単に 増すことが出来れば,遺伝子治療には有利に働く.さ らに表皮細胞の場合,その到達性の良さが上げられる. 遺伝子導入の操作が行い易いし,導入した部位を簡単 に観察できるし,問題があればその部を取り除くこと が可能である.このように表皮細胞は遺伝子治療の標 的細胞として最適であると我々は考えている. Naked DNA 法とは 細胞への遺伝子導入法は,大きく2種類ある. Ex vivo法は細胞を生体から取り出し,培養細胞に遺伝子 を導入し生体に戻す間接的方法であり, in vivo 法は生 体の細胞に遺伝子を導入する直接的方法である.現在 までに,生体表皮細胞に遺伝子を直接導入する方法と して,遺伝子銃法1),アデノウイルス法2),naked DNA 法3),HVJ-1iposome法4),ヘルベスウイルス法5)などが 報告されているが,この中で簡便で,高価な機械を用 いず,比較的導入効率の高い方法が, naked DNA 法で ある. Naked DNA 法では, DNAを直接組織に局注するの みで遺伝子DNAが細胞中に取り込まれ発現される. 始めに筋組織6)で報告され,皮膚でもDNAを直接,キ シロカインや抗生剤の皮内反応のように局注するだけ で,表皮細胞に遺伝子が取り込まれる現象が確認され た3づ図1).筋肉と表皮では少し話か違い,筋肉では DNAが直接筋組織に局注されるわけであるが,表皮 では真皮組織に局注されたDNAが表皮に移行し表皮

Transcript of Naked DNA...

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日皮会誌:109 (7), 997―1003, 1999 (平11)

生涯教育講座

Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用

洋  村

          要  旨

 Naked DNA 法は,単純にDNAを皮下注するだけ

で生体表皮細胞に外来遺伝子を導入できる簡単な方法

である.我々は,本法を用いて挿入された遺伝子を生

体表皮細胞で強力に発現するプロモーター/エンハン

サーカセットを見出した.そのカセットを用いてin-

terleukin(IL) - 6の発現ベクターを作成し, naked

DNA法を用いてラット表皮細胞に導入し, IL-6の過

剰発現により表皮細胞の増殖とリンパ球の浸潤がおこ

ることを明らかにした.さらに,同じ方法でIL-10発現

遺伝子を導入し,遺伝子導入細胞から放出された循環

中のIL-10が遠隔皮膚に起こる接触過敏反応を抑制す

ることを示している.本法を用いて種々の遺伝子を表

皮細胞に導入することにより,その導入遺伝子から産

生される蛋白の皮膚や全身での機能を調べることがで

きる.また,発現させた蛋白に対する免疫を誘導する

DNAワクチンも可能にする.さらに,皮膚の細胞を標

的とする遺伝子治療が可能になり,難治性の炎症・腫

瘍・遺伝性皮膚疾患に対する治療の選択がさらに拡が

ると思われた.

    生体皮膚細胞への遺伝子導入の意義

 現在,皮膚に存在する細胞のほとんどが培養可能に

なり,培養皮膚細胞に遺伝子を導入することも比較的

簡単に行われている.しかし,培養した状態と生体で

の状態は異なるし,また生体では周囲の種々の細胞と

影響しあっているので,実際に生体皮膚細胞へ遺伝子

を導入し発現された蛋白質(遺伝子産物)が皮膚にど

のような変化をおこすのかを見てみたいというのは,

当然の欲求である.遺伝子を生体皮膚細胞に自由に導

入する方法が確立されれば,その遺伝子産物の生体皮

膚に対する新しい作用を検索することが可能になる.

また,我々臨床家にとって待望の新しい治療法,皮膚

の細胞を標的とする遺伝子治療が可能になり,難治性

弘前大学医学部皮膚科(主任 橋本 功教授)

平成11年1月27日受理

別刷請求先:(〒036-8562)弘前市在府町5 弘前大学

 医学部皮膚科 滓村 大輔

大 輔

の炎症・腫瘍・遺伝性皮膚疾患の治療が可能になる.

    遺伝子治療の標的としての表皮細胞

 表皮は体の最外層にあり,主な構成細胞は表皮細胞

である.この表皮細胞は遺伝子治療の標的細胞として

有用であろうか.表皮細胞は種々の機能を有すること

が明らかにされてきているが,さらに最近ではサイト

カインを産生する免疫担当細胞としての性格も持つこ

とが知られてきている.このような多機能を持つ細胞

は,多種多様の蛋白質を発現する潜在能力があり,多

種多様の遺伝子を導入・発現することが可能になる.

また,我々皮膚科医は熱傷や皮膚潰瘍を治療すること

が多いが,表皮細胞は非常に高い増殖能を有すること

を知っている.遺伝子を導入された表皮細胞を簡単に

増すことが出来れば,遺伝子治療には有利に働く.さ

らに表皮細胞の場合,その到達性の良さが上げられる.

遺伝子導入の操作が行い易いし,導入した部位を簡単

に観察できるし,問題があればその部を取り除くこと

が可能である.このように表皮細胞は遺伝子治療の標

的細胞として最適であると我々は考えている.

        Naked DNA 法とは

 細胞への遺伝子導入法は,大きく2種類ある. Ex

vivo法は細胞を生体から取り出し,培養細胞に遺伝子

を導入し生体に戻す間接的方法であり, in vivo 法は生

体の細胞に遺伝子を導入する直接的方法である.現在

までに,生体表皮細胞に遺伝子を直接導入する方法と

して,遺伝子銃法1),アデノウイルス法2),naked DNA

法3),HVJ-1iposome法4),ヘルベスウイルス法5)などが

報告されているが,この中で簡便で,高価な機械を用

いず,比較的導入効率の高い方法が, naked DNA 法で

ある.

 Naked DNA 法では, DNAを直接組織に局注するの

みで遺伝子DNAが細胞中に取り込まれ発現される.

始めに筋組織6)で報告され,皮膚でもDNAを直接,キ

シロカインや抗生剤の皮内反応のように局注するだけ

で,表皮細胞に遺伝子が取り込まれる現象が確認され

た3づ図1).筋肉と表皮では少し話か違い,筋肉では

DNAが直接筋組織に局注されるわけであるが,表皮

では真皮組織に局注されたDNAが表皮に移行し表皮

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998

コロ①Uじ] □

 ○

注射針

図】Naked DNA法.皮膚にM注されたDNAは、八

 皮から八皮に移動し、衣皮細胞に収り込まれ、核に

 移行し発現される.

洋村 人輔

細胞に導入される.我々も弘前ヘアレスラットを川い

て,八皮細胞へβ一郎レtO sidase (β一節Dやgreen nuO-

rcsccnce protein(GFP)遺伝子が導入されることを小

し導入効率もIlVJ-liposome法より高いことを明ら

かにしている1て㈲2).局注されたDNΛがなぜ輿皮

から衣皮へ移動するのか,また衣皮細胞がどのように

DNΛを取り込むのかといった詳細な機序は不明であ

る. また,naked DNA 法でもHVJ-lipc s皿le法でも導

入される細胞は,どちらかというと衣皮の上川の細胞

で,なぜより角化した細胞がよくDNAを取り込むか

についての機序も不明である.ll述のin vivO導入法で

は,すべて導人DNΛが表皮細胞の染色体に組み込ま

れることはなく,遺伝fの発現が一過性であり,遺伝

fが長期細胞内に維持されるような工夫も今後必要で

ある.

       生体表皮とプロモーター

 プロモーターは遺伝f・翻訳領域のll流に存在しその

発現を調節するが,プロモーターの強喇により発現さ

れるmlくNΛや蛋|午にが変わってくる.遺伝子治療を

ぢ・えた場合で,できるだけ強力なプロモーターを使用

した万がイ呻」な場合が多いと思われる.生体長皮細胞

でどのブロモーターがどのくらい強いかを詳しく検討

した論丈がなかったので,β一節1翻訳領域のjl流に種々

のプロモーターを繋ぎ, naked DNA 法で生体衣皮細

胞に導人してみた.最ド流にはすべて同様にsimian vi-

1-us(SV) 40のp0 1yΛ付加領域を使用している.その

結牝 ウイルス性のプロモーターではサイトメガロウ

イルスのプロモーターが最強で,非ウイルス性のプロ

モーターでは[3アクチンとケラチンK tOのプロモー

ターが比轍的強力であった巾にD.勿論,それぞれの

プロモーターのすべての領城を取り出してきているの

ではないので,巾純に比較することはできない.ウイ

図2 Nakcc目.)NΛ法による遺伝r・の導人. (Ircrn fluo-

 rt'scencc 1)10はヽin(G川))発現ベクターをnaked DNΛ

 法にて衣皮郵尨に導入しか.2川か問後、その導入部

 を蛍光顕微鏡にて観察すると、緑の蛍光を発する衣

 皮細胞が認められた.Λ)(ぶ匹凱z汀蝉入紙卜)対

 照遺伝r西人よ

ルス性のプロモーターは細胞内で小活化されることも

搬にされているのでへ 将来の遺伝r脂療には、非ウイ

ルス性のプロモーターを簾本すべきであるという考え

もある.そこで、牛体衣皮で強力であった「3アクチン

とサイトメガロウイルスのプロモーターに注目し、β

アクチンのプロモーターにサイトメガロウイルスの

H{エンハンサーを加えたもの、さらにmlびΛの安定

性にヤ丿寸るβグロビンの3'領域を加えたものを検討

した≒その結牝βアクチンのプロモーターにサイト

メガロウイルスの11{エンハンサーとβグロビンの3'

領域を加えたものは、13アクチンのプロモーターより

約50倍強力であることが明らかとなった≒ もし、将

水入皮細胞を標的とする遺伝r・治療で、導人遺レド)

最強の発現を期待する場合、このようなプロモーター

あるいは発現カセットが最適であると・考えられる.

     サイトカイン遺伝子治療の可能性

 衣皮細胞は、近年種々のサイトカインを仔牛するこ

とが明らかとなり、種々のサイトカインが衣皮細胞や

皮膚の機能に関連していることが知られるようになっ

てきた.当教室では、前述したβアクチンのブロモー

タードサイトメガロウイルスのIIレ乙ンハンサーとβ

グロビンの3孤域を加えた強力な発視力七ットに

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Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用

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図3 生体表皮での各種プロモーターの活性.各種プ

 ロモーターの下流にβ-galactosidase翻訳領域を繋

 ぎ,生体表皮に導入し,24時間後導入部の表皮細胞

 におけるβ-galactosidase活性を測定した.pG(-):

 プロモーターなし, pSV-G : sv 40, pRS-G : Rous

 sarcoma virus. pCM-G : cytomegalovirus, pA-G : p-

 actin, pMT-G : metallothionein, pBPA-G : buUous

 pemphigoid antigen 1,pK 10-G : K 10 keratin, pK 5-

 G : K 5 keratin. 最下流にはすべて同様にsv 40 の

 poly A 付加領域を使用している.

種々のサイトカイン遺伝子を挿入し, naked DNA 法

でラットの生体表皮細胞に導入し,皮膚の変化を観察

している.

 Interleukin(IL) -6は表皮細胞で産生されるサイト

カインであり,培養系で表皮細胞の増殖を完進するこ

とが知られていた10)また, IL-6はリンパ球に働き,B

リンパ球の増殖やTリンパ球の分化や活性化を尤進

することが明らかにされてきた11)そのような観点か

らIL-6が生体表皮で過剰発現されれば,表皮の肥厚や

皮膚へのリンパ球の浸潤が起こると予想されていた.

しかしながら,ケラチンK14のプロモーターを使い

IL-6を表皮のみに発現させたトランスジェニックマウ

ス(TGマウス)では,そのような変化は観察されな

かった12)臨床に目を戻してみると,乾癖や扁平苔癖

患者の表皮細胞ではIL-6の産生か高まっているのが

報告されている10)13)14)そこで我々はIL-6遺伝子を上

記した強力なカセットに組み込み, naked DNA 法で

ラット表皮細胞に導入した.その結果,表皮の肥厚と

リンパ球の真皮上層への浸潤が確認され, IL-6により

皮膚炎がおこることを明らかにした15)我々はIL-6の

TGマウスでは誘導されず, naked DNA 法で成功した

理由を,我々が使用した発現カセットが強力であった

こと,またそのTGマウスではプロモーターとして使

用されたケラチンK14が発現してくる胎児期からIL-

999

6が発現されているが, naked DNA 法では導入後急速

にIL-6が発現され,サイトカインの通常の発現パター

ンに類似していたことなどを考えている.さて,この

ようにIL-6が種々の炎症性皮膚疾患の病態に直接関

連していることが推測されたので,次に我々はIL-6

antagonist遺伝子によるIL-6皮膚炎の抑制を試みた.

Iし6は細胞膜にあるIL-6受容体(zとgp 130 に結合

し. gp 130 から細胞内にシグナルが伝達される.実際

に,IL-6のgp 130 に結合する部位のアミノ酸配列を変

えることにより,受容体(zには結合するが細胞内にシ

グナルを伝達しないIL-6 antagonistが作成可能であ

ることが示されている16)そこで,我々はそのような

変異を導入したIL-6 antagonist遺伝子を作成し,その

IL-6antagonist遺伝子導入では炎症反応が起こらない

ことを確認した.次にIL-6 antagonist遺伝子を導入し

てから,同部位にIL-6遺伝子を導入したところ, an-

tagonist遺伝子は後投与したIL-6遺伝子の炎症を抑

制することが明らかになった.このように炎症性皮膚

疾患をnaked DNA 法にてIL-6 antagonist遺伝子を導

入することにより,治療できる可能性が示された15)

 当教室の孟らは,同様の方法でtumor necrosisfac-

tor (TNF) -a遺伝子の導入を試みている. TNF-a

は表皮細胞で産生されるし,表皮に起こる炎症などに

おいてIL-1と同様に初期に分泌されるサイトカイン

と考えられている.また,種々の細胞でアポトーシス

を起こす作用があることが知られている.しかしなが

ら,最近培養表皮細胞を用いた実験で, TNF-aは表皮

細胞にアポトーシスを誘導しないという報告があっ

た1≒孟らが, naked DNA 法でTNF-a遺伝子を導入

した所,表皮細胞に好酸性の細胞が誘導され, TUNEL

法でアポトーシスであることが確かめられた.我々は,

TNF-aが表皮細胞にアポトーシスを起こすことを直

接的に証明し得たが,種々の皮膚疾患で表皮細胞のア

ポトーシスが観察されるため,この系はその病態を検

討する上でも重要であり,さらに表皮細胞を母地とす

る悪性腫瘍の遺伝子治療の可能性を示していると考え

られた.

 当教室の伊奈らは,DNA結合蛋白であるhigh mo-

bilitygroup (HMG)-1とDNAを結合させてから皮

膚に局注すると,DNAのみ局注する通常のnaked

DNA法よりも3~4倍導入遺伝子の発現が増加する

ことを見出した.この方法を用いてtransforming

growth factor(TGF)-aとpの遺伝子の導入と試みた.

TGF-aは表皮細胞の増殖を完進し,実際にTGマウス

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1000 渾村 大輔

でも表皮の肥厚が起こることが示されていた18)

HMG-1結合TNF-a遺伝子を局注した所,やはり表皮

の肥厚が認められた.一方,TGF串は,真皮に存在す

る線維芽細胞の膠原線維の産生を完進し19)表皮細胞

の増殖を抑制し分化を誘導することが報告されてい

た2o).TGF串のTGマウスでは,表皮のひ薄化か認め

られたが,真皮の肥厚は認められなかった21)しかし

皮膚へのリコンビナントTGF-β局注により真皮の肥

厚が誘導されたという報告もある夙伊奈らが,本法

でTGF-βの遺伝子を導入した所,真皮に肥厚が観察さ

れたが,表皮は予想と反して肥厚していた,我々の方

法で真皮の肥厚が観察し得たのは,やはり,TGマウス

に比較して発現が強かったこととサイトカインの発現

パターンにより類似していたことが考えられた.しか

し,TGF-βの表皮増殖抑制作用に反して表皮の肥厚が

認められたことは,表皮細胞から過剰に放出された

TGF一則こ線維芽細胞や血管内皮細胞などの真皮にあ

る細胞が反応して炎症に類似する状態が作られ,それ

に反応し逆に表皮細胞の増殖が起こったと予想してい

る.我々はこのTGF-βの系が強皮症病態解明のモデル

になると推測しているし,さらにTGF-aやTGF-β遺

伝子導入により,表皮や真皮に萎縮を示すような皮膚

疾患を治療できるのではないかと考えている.

       遺伝性皮膚疾患への応用

 近年,表皮水庖症や魚鱗癖といった遺伝性皮膚疾患

の責任遺伝子が次々と解明され,さらに個々の症例で

の遺伝子変異の蓄積により臨床症状とその変異の関連

が明らかにされつつある.さて,ここで当然期待され

るのが,遺伝子治療である.表皮水庖症や魚鱗癖など

の責任遺伝子から発現される蛋白は表皮細胞でほとん

どが産生されるので,そのような責任遺伝子を患者さ

んの表皮細胞に導入すれば,症状は軽減することが予

想される.

 我々は栄養障害型表皮水庖症の責任遺伝子である

VH型コラーゲンに注目した.VII型コラーゲンは表皮

真皮境界部にあり,その安定性に寄与しているan-

choring fibrilの主要構成成分である.VII型コラーゲ

ンcDNAの全長は9kbと非常に長く,ウイルス性の

導入法で用いられるアデノウイルスやレトロウイルス

の通常のベクターには挿入できない.我々が検討した

結果では, naked DNA 法では遺伝子が長くなると多

少導入効率は低下するが,15 kb ぐらいまで導入可能

である.そこで,ヒト表皮細胞のcDNAからVII型コ

ラーゲンのcDNAクローニングし,VII型コラーゲン

cDNAの全長を構築した.前述した強力な発現カセッ

トにそのcDNAを組み込み,ラット表皮細胞に導入し

た.ヒトVH型コラーゲンの抗体(LH 7.2)で,ヒト

VII型コラーゲンの局在を検討した結果,導入24時間

後には導入部の表皮細胞にVII型コラーゲンの発現が

認められ,さらに1週間後には表皮細胞での発現は消

失していたが,一部の表皮真皮境界部に陽性所見が認

められた.この結果は, cDNA遺伝子が導入された表

皮細胞からヒトVII型コラーゲンが産生・分泌され,

表皮真皮境界部に沈着したと考えられた.以上より,

naked DNA 法により遺伝性皮膚疾患の治療が可能に

なると思われた.

       DNAワクチンの可能性

 ワクチンといえばウイルスや細菌の不活化病原体そ

のものやそれらの成分を接種するのが,従来の考え方

であった.しかし,最近遺伝子銃やnaked DNA 法で皮

膚に遺伝子を導入し,その遺伝子から発現された蛋白

を免疫源とするDNAワクチンの基礎的研究がはじ

まっている.そのDNAワクチンを用いてウイルスに

反応する液性や細胞性免疫を実験動物に誘導できるこ

とが明らかにされている.遺伝子が皮膚に接種された

後,抗原提示細胞であるラングルハンス細胞が直接

DNAを取り込みリンパ節に移動しTリンパ球に情報

を伝えるか,あるいはDNAを取り込んだ表皮細胞か

ら産生された遺伝子産物をラングルハンス細胞が取り

込みリンパ節に移動する2つの経路が推測されてい

る23)さらに,導入遺伝子に免疫増強配列を組み込む

ことにより免疫を増強させうることが報告された

り24)またIL-2やIL-12といった免疫調節物質の遺伝

子と同時に投与することにより免疫反応を調節できる

可能性が示唆されている.本法は,肝炎やAIDSのよ

うな,不活化したにせよウイルスそのものを接種には

危険性の高いウイルス性疾患に今後試されていくと思

われる.さらに,悪性腫瘍などにも腫瘍免疫誘導のた

め応用されていくことも予想されている.

    バイオリアクターとしての表皮細胞

 表皮細胞に導入された遺伝子から産生される遺伝子

産物は,皮膚において作用するのは当然であるが,そ

の遺伝子産物の作用を皮膚のみに留めず,あたかもホ

ルモンのように,遺伝子産物が循環中に入り遠隔臓器

に至り生物活性を発揮すれば,全身性疾患の治療も可

能になる(図4).実際に,豚島のB細胞で産生される

インスリンが欠乏する糖尿病ではインスリンの皮下投

与が行われているし,ある種の小人症では成長ホルモ

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Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用

 ゝ1

匹匹

回司回回`“

 X 匹]

。--、 J皮膚

 遺伝子産物          [Ξ§]      脳

図4 遺伝子産物の全身への供給。表皮細胞をbiore-

 actorとして用い,表皮細胞に導入された遺伝子か

 ら産生される遺伝子産物が循環中に入り遠隔臓器に

 至り生物活性を発揮する。

ン製剤の皮下注が行われている.当教室孟らはサイト

カイン遺伝子を用いて,表皮細胞をbioreactorとする

遺伝子治療の可能性を検討した.IL-10は,表皮細胞で

も産生されることが知られ,炎症を抑制する作用があ

る抗炎症性のサイトカインである.IL-10投与により接

触過敏反応の誘発を抑制できるという報告があっ

た25)そこで,孟らはラットの腹部にDNCBを感作

し, DNCBにて耳部に接触皮膚炎を誘発する実験系を

利用し,DNCBで誘発する直前にnaked DNA 法でIL-

10遺伝子をラット背部の表皮に導入した.その耳部の

炎症による浮腫を指標としてIL-10遺伝子導入による

接触過敏反応の抑制の有無を検討したところ, IL-10

遺伝子導入により耳部の浮腫が抑制された26)その時

のIL-10然血中濃度を測定したところ,生物活性を示

すに十分なまでにIL-10の濃度上昇が認められてい

た.臨床の場で,リコンビナントIL-2やinterferon

などのサイトカインが患者に投与され,有効であるこ

とが示されてるので,将来表皮細胞をbioreactorと

し,サイトカインやホルモンを全身に供給する遺伝子

治療がnaked DNA 法を用いて可能になるかもしれな

い.

     Naked DNA 法のヒトでの実現

 我々は近い将来,ヒトの表皮にnaked DNA 法を用

い種々の遺伝子DNAを導入し皮膚疾患を治療しよう

と考えている.実際にヌードラットにヒト皮膚を植皮

し, P-gal遺伝子の導入を行っているが,ラット皮膚と

同様にβ-galは発現される.また,当教室佐藤らは,

ラットに植皮したヒト皮膚にIL-6遺伝子を導入し,表

皮の肥厚がおこることを確認し,はじめて導入遺伝子

1001

からの遺伝子産物の生物活性をヒト皮膚で観察してい

る27)現在までにヒト皮膚に直接DNAを局注したこ

とは勿論ないが, DNAをヒト皮膚に局注することに

よる副作用はあるだろうか. Naked DNA 法では,導入

遺伝子の発現が長期に維持されることはない,言い換

えれば宿主細胞の染色体DNAへの組み込みはな

く3)28)遺伝的変化をもたらすことはない.また,一番

心配されるDNAそのものに対する抗体の産生も,ア

ジュバンドとともに投与していないので,起こりにく

いという結果が示されている29)実際,細菌やウイル

スがワクチンとして使用されているが,これらには当

然DNAは含まれる.また,臨床の場で毎日のように使

用されている非特異的減感作療法の皮下注射剤には,

明らかにDNAを含むものもある.当教室でもすでに

300匹以上の弘前ヘアレスラットにDNAを導入して

いるが,問題のあったラットはいない.以上のことは

本法が安全であることを示しているが,勿論,今後ヒ

トに近いサルなどを用いた基礎的実験を繰り返し行

い,副作用がないことを確かめなければならないと考

えている.

          最後に

 Naked DNA 法は,局注した部位のすべての表皮細

胞に遺伝子を導入できるわけではなく,また前述した

ように染色体DNAへの組み込みがないので遺伝子発

現は一過性である.さらに,なぜ真皮に局注された遺

伝子DNAが表皮細胞に導入されるのかも不明であ

る.このようなことを解決するさらなる研究が必要で

ある.しかしながら,本法を用いて種々の遺伝子を導

入することにより,その遺伝子から産生される蛋白の

皮膚での機能を調べることができる.また,発現させ

た蛋白に対する免疫を誘導するDNAワクチンも可能

にする.さらに,現在臨床で用いられている種々の治

療法で,表皮細胞のみに治療薬を働かせるのはむずか

しいので,本法において遺伝子が導入されるのが表皮

のみである点からも本法は注目されると言えよう.現

在,ウイルス性や非ウイルス性の表皮細胞へ直接遺伝

子を導入する方法が開発されているが,それぞれの方

法は長所や欠点を有するので, naked DNA 法を含め

種々の導入法を組み合わせる方法が将来の表皮細胞遺

伝子治療では用いられると考える. Naked DNA 法は,

ただの遺伝子DNAを皮膚に局注するだけで,表皮細

胞に取り込まれ発現されるという簡単な方法であり,

このような方法で遺伝子導入が可能な細胞は,筋肉や

表皮など限られた臓器のみである.そのため,我々皮

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1002 洋村 大輔

膚科医は本法を有効に利用すべきであり,将来軟膏な

どの外用療法とならぶ強力な武器となると考えてい

る.

 なお本研究は,当教室の伊奈慎介,佐藤正憲,孟 憲民,

今  淳,玉井克人,花田勝美,橋本 功との共同研究であ

                               文

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 12) Turksen K, Kupper T,Degenstein L,Williams l,

    Fuchs R : Interleukin-6 : insights to its function

    in skin by overexpression in transgenic mouse,

る.種々の発現カセットを供与して頂いた大阪大学医学部

分子防御医学教室,宮崎純一教授,また種々の遺伝子を供与

して頂いた大阪大学医学部遺伝子治療学教室,金田安史教

授に感謝致します.

    Proc Natl Acad Sd USA, 89 : 5068-5072.1992.

 13) Neuner P,Urbanski A, Trautinger F, et a1 : In-

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 15) Sawamura D, Meng X, Ina S, et a1 : Induction of

    keratinocytes proliferation and lymphocytic infil-

    tration by in vivo introduction of the IL-6 gene

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Page 7: Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用drmtl.org/data/109070997.pdf日皮会誌:109 (7), 997―1003, 1999 (平11) 生涯教育講座 Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用

Naked DNA 法による表皮細胞への遺伝子導入とその応用

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Introduction ofa Gene into Keratinocytes by the Naked

       DNA Method : Applications

                        DaisukeSawamura

           Department of Dermatology, Hirosaki University School of Medicine

              (Received and accepted for publication January 27,1999)

  The naked DNA method can introduce exogenous genes into keratinocytes 加z加o simply by subcutane-

ous injection of the DNA. Using this method, we found a promoter/enhancer cassette which strongly eχ-

pressed an inserted gene in keratinocytes 加vivo. We constructed an interleukin (ID-6 expression vector us-

ing this cassette, introduced itinto keratinocytes, and showed that overexpression of the IL-6 gene induced

keratinocyte proliferationand lymphocytic infiltration.Moreover, we also introduced the IL-10 gene into

keratinocytes in the same way, and showed that circulatinginterleukin-10 released from gene-transferred

keratinocytes inhibited contact hypersensitivity in distant areas of the skin.Introduction of genes into kerati-

nocytesm 'uroousing this method can be used to investigate functions of proteins from the transgenes in the

skin. DNA vaccination could also induce the immunity against the expressed protein. Furthermore, this

method may permit gene therapy targeting keratinocytes, resulting in eχpanding the options for treatment in

intractable inflammatory, neoplastic,and genetic skin diseases.

  (Jpn JDermatol 109 : 997~1003,1999)

Key words : keratinocyte gene therapy/naked DNA method/gene transfer/cytokine/