Marianna 201809 2P

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心臓・大動脈疾患のカテーテ

ル治療を受ける患者さんは急増

しています。当院のTAVI

(経カテーテル的大動脈弁置換

術)実施数は年間100件を超

え、すでに200件を実施しま

した(2016月1月〜2018年9月)。

 

TAVIは低侵襲の治療とし

て知られていますが、適応判断

が非常に重要で、術前の診断が

成功の鍵を握るといっても過言

ではありません。ハートチーム

には、心臓血管外科のほかに、

心臓の弁や大動脈の画像検査に

習熟した放射線科技師や、日本

医学放射線学会放射線診断専門

医が参加。チームリーダーは日

本心エコー図学会SHD心エコ

ー図認証医が務め、中立性の高

い判断が行える体制をつくって

います。

 

経皮的僧帽弁クリップ術にも

取り組んでいますが、心エコー

の高い技術が必要であり、そこ

にもチームの力が生きています。

強い一体感も私たちのチームの

特色です。

 

循環器疾患は、薬物療法やカ

テーテル治療といった内科的治

療と、外科的治療が拮抗してお

り、1つの診療科だけで適切な

診療を行うことは難しくなって

います。循環器内科と心臓血管

外科、そして関連する診療科や

コメディカルが高い専門性を生

かしながら、ハートチームとし

て連携することで治療成績も向

上します。

 

低侵襲のカテーテル治療は、

冠動脈疾患に始まって大動脈疾

患、そして弁膜症や不整脈にも

対応できるようになりました。

高齢者にも積極的な治療が可能

となった一方で、冠動脈と弁の

両方に問題のある方や透析中の

方、感染性心筋膜炎などは外科

手術でないと対応できません。

つまり、心臓血管外科ではより

高度な判断と手術技術、術後管

理が求められる患者さんが増え

ているのです。

 

手術の安全確保はいっそう重

要性を増し、術後管理に循環器

内科の知恵を借りるなど、ハー

トチームの協力と日頃の連携に

支えられています。

 

がん治療は日進月歩ですが、

同時に複雑化もしています。複

数の診療科が連携し、専門性を

発揮することで質の高い治療が

可能になっているのです。

 

消化器がんはかつて開腹手術

がメインでしたが、腹腔鏡手術

が増え、早期なら内視鏡手術が

第一選択肢です。また、抗がん

薬など薬物療法も進化しており、

当院では消化器外科医、消化器

内科医、そして腫瘍内科医など

が話し合って総合的に判断し、

患者さんに最も適切な治療法を

提案しています。患者さんが最

初に受診した科がどこであって

もこの流れは変わらず、必ず多

角的に検討します。こうしたチ

ームの存在は心強く、外科医は

自分の仕事により集中できます。

 

手術においては、安全性と透

明性を確保するための取り組み

を重視。出血量や手術時間など

手術の精度に関わるものを術後

にチェックし、合併症の予防や

早期発見、再発防止に結びつけ

ています。まず患者さんの状態、

病気の状態を知り、自分たちが

できることを精一杯行う。それ

が私たちのモットーです。

 

腫瘍内科(腫瘍センター)は、

がん薬物療法を行うすべての診

療科と連携しています。当セン

ター運営委員会の各部会には各

科の担当者が参加し、がん薬物

療法の最新情報のほか、制吐剤

の変更など重要な情報を共有。

密接な関係を築いています。

 

消化器外科・内科からは全患

者さんの薬物療法をまかされ、

オンタイムで相談に応じる体制

を整えています。放射線科や病

理科も含むチームでシームレス

な診療を行い、患者さんに、最

適な治療を最短で届けることが

チームの方針です。

 

がん治療ではゲノム医療の重

要度が増し、国はがんゲノム医

療中核拠点病院を全国に11カ所

整備しました。そのうちの国立

がん研究センター東病院、慶應

義塾大学病院のがんゲノム医療

連携病院に、当院が認定されて

います。現在は、がん遺伝子検

査の保険適用に向け準備中です。

免疫チェックポイント阻害薬に

治験から関わった経験も生かし、

よりよいがん治療を提供したい

と考えています。

  

大学病院の役割は、一般の病

院では難しい高度な医療を、安

全性を保ちながら実施すること

です。例えば、最近はがんの薬

物療法が進歩し、それを専門に

行う腫瘍内科医が、腫瘍センタ

ーで最新の情報に基づいた治療

を行っています。他の診療科と

の強固な連携は当院の大きな特

色です。がん関連遺伝子を調べ

て治療に生かす遺伝子検査や、

家族歴を有する乳がん患者さん

に対しては「乳がん遺伝相談外

来」を設けました。小児や若い

女性の患者さ

んにおいては、

将来子どもを

持つために卵

巣組織を凍結

保存し、病気

が治ってから

妊娠成立を目

指す「がん・生殖医療」にも取

り組まれています。

 

神奈川県唯一のてんかんセン

ターでは、てんかんの外科治療

など、より良質なてんかん医療

を神奈川県民に提供できるよう

にしています。

 

救急医療に

ついては、大

学病院だから

といって重症

者だけを診る

のではなく、

併設する夜間

急患センター

と併せた統合

ERにおける

プライマリーケアも行っていま

す。救急外来の患者さんはすべ

て診療するというのが当院のポ

リシーです。救命救急センター

では、ナース・プラクティショ

ナー(NP)等、簡単な医師の

仕事をする資格をもつ登録看護

師を育てています。

 

2024年には新病院が完成

する予定で、ハイケアユニット

(ICU・HCU)、がん治療病

床、手術室の拡充を図るなど診

療環境は大きく向上します。

 

私が目指すのは、患者さんや

地域の方に、ナンバー1

と評価してもらえる病院

になることです。診療内

容はもちろん、笑顔やあ

たたかな対応など接遇で

もここは最高だねと言わ

れるように、連携する3

病院1クリニックととも

に、当院の理念である

〝愛ある医療〞を実践し

ていきます。

 

病気の治療法を見つけ出

すためには、まず病因や病

態を解明しなければなりま

せん。病気に結びつく鍵を

発見し、それをターゲット

に薬などを開発するわけですが、

難病や希少疾患は患者さんの数

が少なく、その分情報も乏しい

ため困難を極めます。早期解明

には、全国にいる患者さんの情

報を一箇所に集め、データベー

スとして蓄積して集中的に研究

することが重要です。

 

私たちがメインテーマにして

いる「ヒトT細胞白血病ウイル

ス(HTLV‒

1)関連脊髄症

(HAM)」の患者さんは、国内

に約3600人しかいませんが、

神経難病で進行すると寝たきり

になってしまうこともあります。

そこで全国の大学病院や研究機

関と協力し、患者さんの登録シ

ステムを構築しました。そして

HTLV‒

1感染細胞を減少さ

せる物質を発見し、医師主導治

験で薬を開発。現在、治験は製

薬会社による第3段階まで進み、

2020年には新薬として承認

される見通しです。この研究成

果は今年、国際医学雑誌に掲載

されました。診療ガイドライン

の作成も日本で進められており、

その研究班にも参加しています。

 

いまはゲノム医療が急速に進

み、難病・希少疾患の研究にお

いても大きな役割を果たしてい

ますが、重要なのは、ゲノム情

報を集め、治療法の開発に結び

つけるプラットフォーム(基盤)

の構築です。オールジャパンの

体制で難病・希少疾患に立ち向

かい、質の高いエビデンスを積

み上げて患者さんに治療法を提

供していきたいと思っています。

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St. Marianna University School of Medicine Hospital

腫瘍内科・消化器外科・内科の連携でがん治療の質向上

大坪 毅人 教授

副院長消化器一般外科診療部長中島 貴子 教授

腫瘍内科 診療部長腫瘍センター センター長

聖マリアンナ医科大学病院

神奈川県川崎市宮前区菅生2・16・1

電話

044・977・8111㈹

http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/

高度専門医療と救急医療を愛の精神で

提供する地域密着型大学病院

川崎市立多摩病院

神奈川県川崎市中原区小杉町3-435 http://marianna-toyoko.jp/

聖マリアンナ医科大学東横病院

神奈川県横浜市旭区矢指町1197-1 http://marianna-yokohama.jp/

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院

神奈川県川崎市多摩区宿河原1-30-37 http://marianna-tama.jp/

指定管理者 学校法人聖マリアンナ医科大学

ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック神奈川県川崎市麻生区万福寺6-7-2 http://www.marianna-u.ac.jp/breast/

大学病院、特定機能病院というだけではなく、いつでも安心してかかれる地域の病院としても

信頼を得ている聖マリアンナ医科大学病院。診療に加え、難病治療研究でも注目が集まる。

地域でナンバー1の

病院を目指す

きたがわ・ひろあき/1980年聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業。米国カリフォルニア州ロサンゼルス小児病院、ニュージーランドオタゴ大学附属ウエリントン病院などで勤務。聖マリアンナ医科大学附属病院小児外科診療部長、副院長を経て、2017年4月より現職。

北川 博昭病院長

やまの・よしひさ/1993年鹿児島大学医学部卒業。米国立衛生研究所等を経て2007年より現職。

あかし・よしひろ/1996年聖マリアンナ医科大学卒業。ハートセンター副センター長。日本循環器学会認定専門医。

みやいり・たけし/1983年東京大学医学部卒業。ハイブリッド心臓大動脈治療センター長。日本心臓血管外科専門医。

おおつぼ・たけひと/1986年聖マリアンナ医科大学医学部卒業。2014年より同附属病院副院長。2017年より医療安全責任者兼務。

なかじま・たかこ/1998年横浜市立大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)等を経て2010年聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講師、2016年より現職。

大学院 先端医療開発教授難病治療研究センター病因・病態解析部門 部門長

山野 嘉久 教授

愛ある医療と

〝良医〞の育成

あかし・かつや/1982年聖マリアンナ医科大学医学部卒業。米国留学を経て98年同大救急医学教授。2005年より現職。

明石 勝也

学校法人聖マリアンナ医科大学

理事長

 

現在、バイオ医薬品の開発、ゲノ

ムによるオーダーメイド医療、再生

医療など新しい医療がめざましい

発展を見せていますが、これらはす

べて長い基礎研究を経て生まれた

ものです。研究と臨床の距離が近づ

いたこの時代に、その両方が使命の

大学病院だからこそ、できることが

あるという意識で取り組んでいる

のが、難病治療研究センターの運営

です。山野大学院教授らの地道な研

究により、HAMの治療薬開発で世

界的な成果を上げました。

 

本学には、変化することを躊躇し

ない、イノベーションに前向きな気

質があります。大学、附属病院、ク

リニックの叡智を結集し、新しい何

かを作り出す。その強い気持ちを持

ち、発信することが私達の仕事です。

 

新大学病院建設により、職員に思

う存分力を発揮してもらう環境が

整います。これからも愛とともに確

かな医療を提供したいと思います。

Topics難病・希少疾患の病態、治療法を研究

チームの力があるから、一人ひとりの患者さんに最適な治療を提供できる

腹腔鏡手術など低侵襲化が進む消化器外科の治療。腫瘍内科(腫瘍センター)の支援も大きい

ハートチームが一体となり治療の難しい患者さんにも対応

明石 嘉浩 教授

循環器内科診療部長

宮入 剛 教授

心臓血管外科 診療部長

難易度が高く、慎重な術後管理が必要な手術が増えている心臓血管外科

毎週水曜日のTAVI・弁膜症のカンファレンスには、宮入教授とともに参加

新病院完成予定図。入院病棟は2023年、外来などを含め全体は24年完成する予定