KRAS観察研究 癌治2010 final.ppt...
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本邦における大腸がんKRAS遺伝子変異率
:大腸がんKRAS観察研究結果報告
吉野 孝之1, 渡邉 聡明2, 石黒 めぐみ3,植竹 宏之4, 山崎 健太郎5, 杉原 健一3, 大橋 靖雄6,
大腸がんKRAS観察研究会1,2,3,4,5,6
1国立がん研究センター東病院消化管内科, 2帝京大学医学部外科, 3東京医科歯科大学大学院腫瘍外科学, 4東京医科歯科大学大学院応用腫瘍,
5静岡県立静岡がんセンター消化器内科, 6 財団法人パブリックヘルスリサーチセンター
背 景
大腸がんに於いて、KRAS遺伝子変異は主にコドン12、13領
域で認められる。
KRAS遺伝子変異は、大腸がん患者の30-40%に認められる1-3)。
KRAS遺伝子変異が認められる場合 切除不能大腸がん患KRAS遺伝子変異が認められる場合、切除不能大腸がん患
者に対する抗EGFR抗体薬の効果が得られない可能性が示
唆されている。
大腸がんにおける、背景因子とKRAS遺伝子変異の頻度に
関する詳細な報告はない。
1) Karapetis CS, et al. N Engl J Med. 20082) Amado RG, et al. J Clin Oncol. 20083) Van Cutsem E, et al. N Engl J Med. 2009
本観察研究が実施された時期は、大腸癌KRAS遺伝子検査
は保険未承認であった。
患者利益追求及び医療費削減の観点から極めて有益な研究
と考えた。
背 景
Cetuximab投与対象患者(5,000人)
KRAS検査未実施 実施
(2万円/人)
KRAS野生型:60%(3,000人)
KRAS遺伝子検査費用: 1億円
Cetuximabの薬剤費: 57億円(64万円/人×3ヶ月)
合計: 58億円
Cetuximabの薬剤費: 95億円(64万円/人×3ヶ月)
合計: 95億円約40億円
目 的
本邦の大腸がんにおけるKRAS遺伝子の変異率を検討する。
• 主要評価項目
KRAS遺伝子検査によるKRAS遺伝子変異率
• 副次評価項目
背景因子とKRAS遺伝子変異率の相関背景因子とKRAS遺伝子変異率の相関
研究方法
目標試料数 5,000検体
収集する試料
• KRAS遺伝子変異検査用の検体
適格規準
• 組織学的に腺癌と確認された大腸がん(粘膜内癌は除く)
• KRAS遺伝子検査のための十分量の検体が提供可能
• KRAS遺伝子変異検査用の検体– 原発巣または転移巣の手術標本あるいは生検標本
– ホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックまたは薄切切片
• 臨床情報、検体情報– 性別、検体採取時年齢
– 原発部位
– 検体の種類(手術検体/生検検体)
– 採取時期
– 採取部位(原発巣/転移巣)
– 採取時の臨床病期(Ⅰ期/Ⅱ期/Ⅲ期/Ⅳ期/異時性再発/不明)
– ホルマリン固定期間(24時間未満/24~48時間未満/48時間以上/不明)
– ホルマリン濃度(10%/20%/不明)
研究の手順
資料提供施設
• ホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックまたは薄切切片(10µm 5枚以上、HE染色
用3µm 1枚)を検査センターに送付する。
• 検査センターは各自の実施
検査センターデータセンター(登録窓口)
2’.登録内容の連絡
5. 測定データの提出
4. KRAS遺伝子検査
検査センタ は各自の実施手順書に従いコドン12、13領域の KRAS遺伝子検査を行う。
登録票
登録状況 登録期間:2009/10~2010/3Cut-off: 2010/4
登録, n=5,887 (389 施設)
回収不能, n=97施設依頼によるキャンセル 14不適格症例 1未回収 82
KRAS測定, n=5,790
KRAS測定不能, n=58ダイレクトシークエンス法 56ルミネックス法 2
KRAS測定可能, n=5,732 (解析対象)
ダイレクトシークエンス法 5,423ルミネックス法 309
測定, ,ダイレクトシークエンス法 5,479ルミネックス法 311
登録推移
5887
背景因子n
性別 男 3,475 (60.6%)
女 2,257 (39.4%)
年齢 50歳未満 560 ( 9.8%)
50-59歳 1,258 (21.9%)
60-69歳 2,081 (36.3%)
70歳以上 1,833 (32.0%)
採取の種類 手術検体 5 364 (93 6%)
n
採取部位1 原発巣 5,258 (91.7%)
転移巣 474 ( 8.2%)
肝 216 (45.6%)
肺 74 (15.6%)
リンパ節 37 ( 7.8%)
局所 45 ( 9.5%)
播種 70 (14 8%)採取の種類 手術検体 5,364 (93.6%)
生検検体 368 ( 6.4%)
採取時期 手術 < 2006 748 (13.0%)
2006 445 ( 7.8%)
2007 761 (13.3%)
2008 1,255 (21.9%)
2009 1,843 (32.2%)
2010 312 ( 5.4%)
生検 < 2009 110 ( 1.9%)
2009 =< 258 ( 4.5%)
播種 70 (14.8%)
その他 32 ( 6.8%)
背景因子n
原発部位 1 虫垂 25 ( 0.4%)
盲腸 420 ( 7.3%)
上行結腸 877 (15.3%)
横行結腸 416 ( 7.3%)
下行結腸 270 ( 4.7%)
S状結腸 1,433 (25.0%)
虫垂
盲腸
上行結腸
横行結腸
下行結腸直腸S状部
直腸
その他、不明
肛門、肛門管
原発部位別
直腸S状部 457 ( 8.0%)
直腸 1,817 (31.7%)
肛門、肛門管* 5 ( 0.1%)
その他、不明* 12 ( 0.2%)
原発部位 2 右側結腸 1,738 (30.3%)
左側結腸 1,703 (29.7%)
直腸 2,274 (39.7%)
その他* 17 ( 0.3%)
S状結腸
直腸S状部
右側結腸
左側結腸
直腸
その他
*ロジスティック回帰分析に含まず
背景因子n
臨床病期 Ⅰ期 166 ( 2.9%)
Ⅱ期 814 (14.2%)
Ⅲ期 1,765 (30.8%)
Ⅳ期 2,805 (48.9%)
異時性再発 152 ( 2.7%)
不明 30 ( 0.5%)
臨床病期別
Ⅰ期
Ⅱ期
異時性再発
Ⅲ期
Ⅳ期
結 果
KRAS WT62.4%(n=3,577)
KRAS MT37.6%
(n=2,155)Codon12(n=1,714)
Codon13(n=441)
KRAS変異率 37.6%
n KRAS野生型 KRAS変異型
全体 5,732 3,577 (62.4%) 2,155 (37.6%)
変異部位
コドン 12コドン 13
1,714 (79.5%)441 (20.5%)
62.4%(n 3,577)
結 果 (性別・年齢)
n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
性別 男 3,475 (60.6%) 2,243 (64.6%) 1,232 (35.5%)<0.0001
女 2,257 (39.4%) 1,334 (59.1%) 923 (40.9%)
年齢 50歳未満 560 ( 9.8%) 389 (69.5%) 171 (30.5%)
0.000750-59歳 1,258 (21.9%) 798 (63.4%) 460 (36.6%)
60-69歳 2,081 (36.3%) 1,289 (61.9%) 792 (38.1%)Median:65(12-92)
70歳以上 1,833 (32.0%) 1,101 (60.1%) 732 (39.9%)
性 別P 値=<0.0001KRAS野生型 KRAS変異型 変異率
2,243 1,334
60%
70%
80%
90%
100%率
n=3,475 n=2,257
1,232 923
35.5% 40.9%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
男 女
変異
率
年 齢P 値=0.0007
389798 1,289 1,101
60%
70%
80%
90%
100%率
KRAS野生型 KRAS変異型 変異率
n=560 n=1,258 n=2,081 n=1,833
460 792 732171
38.1%36.6%30.5%
39.9%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
50歳未満 50-59歳 60-69歳 70歳以上
変異
率
結 果 (採取時期)n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
検体 手術検体 5,364 (93.6%) 3,340 (62.3%) 2,024 (37.7%)0.4133
生検検体 368 ( 6.4%) 237 (64.4%) 131 (35.6%)
採取時期 1 手術 < 2006 748 (13.0%) 497 (66.4%) 251 (33.6%)
0.0549
2006 445 ( 7.8%) 282 (63.4%) 163 (36.6%)
2007 761 (13.3%) 463 (60.8%) 298 (39.2%)
2008 1,255 (21.9%) 752 (59.9%) 503 (40.1%)
2009 1 843 (32 2%) 1 150 (62 4%) 693 (37 6%)2009 1,843 (32.2%) 1,150 (62.4%) 693 (37.6%)
2010 312 ( 5.4%) 196 (62.8%) 116 (37.2%)
生検 < 2009 110 ( 1.9%) 79 (71.8%) 31 (28.2%)
2009 =< 258 ( 4.5%) 158 (61.2%) 100 (38.8%)
採取時期 2 手術 < 2006 748 (13.0%) 497 (66.4%) 251 (33.6%)
0.02852006 445 ( 7.8%) 282 (63.4%) 163 (36.6%)
2007 =< 4,171 (72.8%) 2,561 (61.4%) 1,610 (38.6%)
生検 < 2009 110 ( 1.9%) 79 (71.8%) 31 (28.2%)0.0524
2009 =< 258 ( 4.5%) 158 (61.2%) 100 (38.8%)
結 果 (採取部位)
n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
採取部位 原発巣
転移巣
5,258 (91.7%)474 ( 8.2%)
3,281 (62.4%)296 (62.4%)
1,977 (37.6%)178 (37.6%)
0.9838
肝
肺
リンパ節
局所
播種
216 (45.6%)74 (15.6%)37 ( 7.8%)45 ( 9.5%)70 (14 8%)
146 (67.6%)48 (64.9%)22 (59.5%)29 (64.4%)34 (48 6%)
70 (32.4%)26 (35.1%)15 (40.5%)16 (35.6%)36 (51 4%)
0.1347
播種
その他
70 (14.8%)32 ( 6.8%)
34 (48.6%)17 (53.1%)
36 (51.4%)15 (46.9%)
採取部位
146 48 29
34
51.4%
223,281 296
60%
70%
80%
90%
100%
率KRAS野生型 KRAS変異型 変異率
70 26 16
32.4% 35.1% 35.6%
肝 肺 局所
36
%
播種
15
40.5%
リンパ節
n=216 n=74 n=37 n=45 n=70
1,977 178
37.6% 37.6%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
原発巣 転移巣
変異
率
n=5,258 n=474
結 果 (原発部位)n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
原発部位 1 虫垂 25 ( 0.4%) 9 (36.0%) 16 (64.0%)
<0.0001
盲腸 420 ( 7.3%) 168 (40.0%) 252 (60.0%)
上行結腸 877 (15.3%) 423 (48.2%) 454 (51.8%)
横行結腸 416 ( 7.3%) 296 (71.2%) 120 (28.8%)
下行結腸 270 ( 4.7%) 180 (66.7%) 90 (33.3%)
S状結腸 1,433 (25.0%) 1,039 (72.5%) 394 (27.5%)
直腸S状部 457 ( 8 0%) 309 (67 6%) 148 (32 4%)直腸S状部 457 ( 8.0%) 309 (67.6%) 148 (32.4%)
直腸 1,817 (31.7%) 1,142 (62.9%) 675 (37.1%)
肛門、肛門管* 5 ( 0.1%) 4 (80.0%) 1 (20.0%)
その他、不明* 12 ( 0.2%) 7 (58.3%) 5 (41.7%)
原発部位 2 右側結腸 1,738 (30.3%) 896 (51.6%) 842 (48.4%)
<0.0001左側結腸 1,703 (29.7%) 1,219 (71.6%) 484 (28.4%)
直腸 2,274 (39.7%) 1,451 (63.8%) 823 (36.2%)
その他* 17 ( 0.3%) 11 (64.7%) 6 (35.3%)
*ロジスティック回帰分析に含まず
原発部位P 値=<0.0001
896
1,2191,451
48 4%60%
70%
80%
90%
100%率
KRAS野生型 KRAS変異型 変異率
n=1,738 n=2,274n=1,703
484823
842
28.4% 36.2%48.4%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
右側結腸 左側結腸 直腸
変異
率
結 果 (臨床病期)
n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
臨床病期 Ⅰ期 166 ( 2.9%) 111 (66.9%) 55 (33.1%)
0.7823
Ⅱ期 814 (14.2%) 510 (62.7%) 304 (37.3%)
Ⅲ期 1,765 (30.8%) 1,092 (61.9%) 673 (38.1%)
Ⅳ期 2,805 (48.9%) 1,752 (62.5%) 1,053 (37.5%)
異時性再発 152 ( 2.7%) 93 (61.2%) 59 (38.8%)
不明* 30 ( 0 5%) 19 (63 3%) 11 (36 7%)不明 30 ( 0.5%) 19 (63.3%) 11 (36.7%)
*ロジスティック回帰分析に含まず
結 果 (保存状況)n KRAS野生型 KRAS変異型 P値
ホルマリン
固定時間
<24h 1,042 (18.2%) 642 (61.6%) 400 (38.4%)
0.913124 – 48h 2,554 (44.6%) 1,590 (62.3%) 964 (37.7%)
48 h< 1,495 (26.1%) 933 (62.4%) 562 (37.6%)
不明* 641 (11.2%) 412 (64.3%) 229 (35.7%)
ホルマリン濃度 10% 2,835 (49.5%) 1,751 (61.8%) 1,084 (38.2%)
0.369220% 2,457 (42.9%) 1,547 (63.0%) 910 (37.0%)
不明 * 440 ( 7 8%) 279 (63 4%) 161 (36 6 %)不明 * 440 ( 7.8%) 279 (63.4%) 161 (36.6.%)
*ロジスティック回帰分析に含まず
ロジスティック回帰KRAS変異率高 KRAS変異率低 オッズ比 95% 信頼区間
性別 女 VS 男 1.210 1.082 - 1.354
年齢
(歳)
50 – 59 VS < 50 1.308 1.053 - 1.624
60 – 69 VS < 50 1.365 1.113 - 1.674
70 =< VS < 50 1.399 1.137 - 1.720
採取時期
(年)
手術 (2006) VS 手術 (<2006) 1.150 0.896 - 1.474
手術 (2007=<) VS 手術 (<2006) 1.188 1.005 - 1.403
生検(<2009) VS 手術 (<2006) 1 003 0 751 - 1 341生検(<2009) VS 手術 (<2006) 1.003 0.751 - 1.341
生検(2009 =<) VS 生検 (<2009) 1.482 0.907 - 2.423
原発部位 右側結腸 VS 左側結腸 2.272 1.972 - 2.625
右側結腸 VS 直腸 1.570 1.379 - 1.789
手術検体(<2006)に対する生検(2009=<) のオッズ比は、
(1.003×1.482)=1.486と推定される。
まとめ
本研究は、大腸がんKRAS遺伝子変異に関する国内最大規模の観察研究である。
下記の背景因子により、KRAS遺伝子変異率に統計学的に有意差が認められた。
・ 性別:女(40.9%) 男(35.5%)
・ 年齢:高齢になるに従いKRAS遺伝子変異率が高くなる傾向
・ 採取時期: 2007年以降(38.6%) 2006年(36.6%) 2005年以前(33.6%)
・ 原発部位:右側結腸(48.2%) 左側結腸(29.3%)
採取部位(原発巣・転移巣)、保存状況(ホルマリン固定時間、ホルマリン濃度)によるKRAS遺伝子変異率の違いは認められなかった。
結 論
本邦の大腸がんにおけるKRAS遺伝子変異率は欧米の報告と同等(37.6%)であった。
KRAS遺伝子変異に影響を与える独立因子は、性別、年齢、採取時期、原発部位であった。