JSA - Êw E ¯ðÄT ^ t úT ÌQ b{ · 2017-05-17 · C Ý ýhs, j _ ZbzqMO ýp s^ÀU Apb{ü & yz\w...

2
多様で高度、複雑な問題を共に 考える場を創りましょう 代表幹事 朴木佳緒留(神戸大学名誉教授) 今日、さまざまな局面でジェンダーバランスが配 慮されるようになり、喜ばしい限りですが、考え 込まざるを得ない場面に遭遇することもあります。 フェミニズムだけでなく、新自由主義やリベラリズ ム、さらに伝統的な保守主義においてさえジェン ダー平等が云々されています。その中身をここで展開することはできませんが、問題は相当に複雑で、 適/不適、正/誤、敵/味方などの「あれか・これか」の二者択一の発想でとらえることはできません。 ジェンダー問題解決のためには矛盾したことがらの中に新しい発想や新たな基準を見出す、という厄介 な作業が必要です。 振り返れば、このようなことはジェンダー問題のみならず、現実の諸課題すべてに通底すると思われ 占領軍アメリカは、当初日本を二度と再び戦争の 出来ない、軍隊を持たない平和国家にする方針で あった。しかし、1949 年、中国で毛沢東の社会主 義政権が成立し、朝鮮では満州(当時)でゲリラ活動をしていた金日成が、祖国を開放し社会主義国家 を打ち立てようとした。こうした一連の流れのなかで、日本を占領していた米軍は、日本の反共防波堤 としての役割に気付き、方針をそのように変えはじめた。それを踏襲する形で、自民党は平和憲法の解 釈改憲を執拗に繰り返してきた。 今日、それも行き着くところまで来て、安倍首相は、現行憲法下でも自身の判断で、米国を奇襲しよ うとしている第三国があれば、日本が先制して攻撃を仕掛けることができるといい、憲法改正もちらつ かせている。 こうした事態は、多くの若者にとって無関心ではいられない大変大きなことであるでしょう。 日本科学者会議は、日本の科学の発展とそれを取り巻く環境のことを真剣に議論しています。このこ とは、月刊誌『日本の科学者』に掲載されています。今、日本が大事な岐路にあるときに、日本の進む べき道、日本の科学の未来について、日本科学者会議で皆と一緒に考えてみませんか。 若者へ。 今、日本は岐路にある! 代表幹事 益川 敏英(名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構機構長) (2008 年ノーベル物理学賞受賞) 3名の代表幹事から皆さんに心から訴えます。

Transcript of JSA - Êw E ¯ðÄT ^ t úT ÌQ b{ · 2017-05-17 · C Ý ýhs, j _ ZbzqMO ýp s^ÀU Apb{ü & yz\w...

Page 1: JSA - Êw E ¯ðÄT ^ t úT ÌQ b{ · 2017-05-17 · C Ý ýhs, j _ ZbzqMO ýp s^ÀU Apb{ü & yz\w Os\qx´£ï¼ ð Jw s czqîw ~] Jb ot è b q¥ Ýæ§xz p s Ô Ë Sq6| êw Z RsMz

多様で高度、複雑な問題を共に� 考える場を創りましょう

代表幹事

朴木佳緒留(神戸大学名誉教授)

今日、さまざまな局面でジェンダーバランスが配慮されるようになり、喜ばしい限りですが、考え込まざるを得ない場面に遭遇することもあります。フェミニズムだけでなく、新自由主義やリベラリズム、さらに伝統的な保守主義においてさえジェンダー平等が云々されています。その中身をここで展開することはできませんが、問題は相当に複雑で、適/不適、正/誤、敵/味方などの「あれか・これか」の二者択一の発想でとらえることはできません。ジェンダー問題解決のためには矛盾したことがらの中に新しい発想や新たな基準を見出す、という厄介な作業が必要です。振り返れば、このようなことはジェンダー問題のみならず、現実の諸課題すべてに通底すると思われ

占領軍アメリカは、当初日本を二度と再び戦争の出来ない、軍隊を持たない平和国家にする方針であった。しかし、1949 年、中国で毛沢東の社会主

義政権が成立し、朝鮮では満州(当時)でゲリラ活動をしていた金日成が、祖国を開放し社会主義国家を打ち立てようとした。こうした一連の流れのなかで、日本を占領していた米軍は、日本の反共防波堤としての役割に気付き、方針をそのように変えはじめた。それを踏襲する形で、自民党は平和憲法の解釈改憲を執拗に繰り返してきた。今日、それも行き着くところまで来て、安倍首相は、現行憲法下でも自身の判断で、米国を奇襲しようとしている第三国があれば、日本が先制して攻撃を仕掛けることができるといい、憲法改正もちらつかせている。こうした事態は、多くの若者にとって無関心ではいられない大変大きなことであるでしょう。日本科学者会議は、日本の科学の発展とそれを取り巻く環境のことを真剣に議論しています。このことは、月刊誌『日本の科学者』に掲載されています。今、日本が大事な岐路にあるときに、日本の進むべき道、日本の科学の未来について、日本科学者会議で皆と一緒に考えてみませんか。

若者へ。今、日本は岐路にある!代表幹事

益川 敏英(名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構機構長)(2008年ノーベル物理学賞受賞)

日本科学者会議への入会をぜひ!3名の代表幹事から皆さんに心から訴えます。

Page 2: JSA - Êw E ¯ðÄT ^ t úT ÌQ b{ · 2017-05-17 · C Ý ýhs, j _ ZbzqMO ýp s^ÀU Apb{ü & yz\w Os\qx´£ï¼ ð Jw s czqîw ~] Jb ot è b q¥ Ýæ§xz p s Ô Ë Sq6| êw Z RsMz

ます。かねてより日本科学者会議が力を入れてきた環境問題はその典型かもしれませんが、今日喫緊に解決すべき課題である原発事故や災害、貧困、紛争や平和などについても同様です。現実には、各種学会の専門領域化が進行し、課題の分析や議論が高度化する他方で、ほんの少し領域が異なるだけで「理解不能」になるかのような状況もあります。このような中で、専門家と非専門家、理系と文系、研究者や技術者、実践家や市民が一堂に会し、細分化された専門学会ではとらえきれない課題について意見交換し、展望を探る活動が必要とされています。日本科学者会議は総合科学を看板に掲げてきましたが、今こそ、老若男女、理系・文系、専門家と非専門家、専門領域の違い等々の「違い」を「力」に変える場として機能することが期待されています。そのような場に参加し、共に「自由にものを言う場」創造の担い手になりましょう。

30 年ほど前、『日本の科学者』に「なぜ、歴史を研究するのか」という文章を書いたことがあります。研究はおもしろい。新事実を発見する喜び、証拠を動員して謎を解くおもしろさ、当然と思われていた学説や「事実」を切り崩す爽快さ(もちろん労苦と失敗はつきもの)。そうした知的な“生産”にこそ「おもしろさ」はある。けれど、それだけでは生きていけない。定職を得たばかりの私にとって、研究は生活のためでもありました。“生産”によって生活の資を得るからこそ、厳しさも要求される。そして、研究には社

会的責任がある、と書きました。おもしろさのためなら、生活のためなら、何を“生産”してもよいのか、と。その思いは今も変わっていません。

「大きな歴史」と「小さな歴史」―時代のなかで、社会のなかで

私たちは、大昔から現在までの歴史の大きな流れのなかで、それぞれが、ただ一回だけの、繰り返し不可能な歴史を生きています。私も、「大きな歴史」と「小さな歴史」がスパークするなかで出会ったさまざまな研究課題と向き合いながら、日々、“悪戦苦闘”しています。核兵器、原発、環境問題、戦争・紛争、格差・貧困・人権抑圧など、「大きな歴史」は、さまざまな新しい問題を私たちに突き付けてきます。これとどう向き合っていくのか。個人の力は小さい。けれど、それぞれの専門を結集し、大きな問題に立ち向かってこそ、科学の力、研究の力は発揮されるに違いありません。

JSAでこえる、つなぐ、ひらく―未来のために

多彩な科学者が人文科学・社会科学・自然科学の枠をこえて結集する日本科学者会議(JSA)。総合学術研究集会(隔年開催)と各種研究委員会、そして、毎月発行の『日本の科学者』。専門をこえ、分野をこえ、地域をこえる。人間の生存と地球の未来、平和の創造と科学の役割、現代社会が求める科学者の社会的責任…。時代と向き合い、科学をつなぎ、市民・社会とつながる JSAのなかで、科学を鍛え、自分をこえ、ともに未来をひらきませんか。平和構築・人権拡大のため、科学が戦争と一体化した時代を繰返させないために。

科学する心―研究は何のため?代表幹事

大日方純夫(早稲田大学教授)

少しでも、日本科学者会議に関心をもたれたら……。ぜひ、日本科学者会議のホームページ(http://www.jsa.gr.jp/)にお越しください。

日本科学者会議