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Instructions for use Title 光スイッチングネットワーク構成技術の研究 Author(s) 三澤, 明 Citation 北海道大学. 博士(工学) 甲第12196号 Issue Date 2016-03-24 DOI 10.14943/doctoral.k12196 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/61836 Type theses (doctoral) File Information Akira_Misawa.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Title 光スイッチングネットワーク構成技術の研究

Author(s) 三澤, 明

Citation 北海道大学. 博士(工学) 甲第12196号

Issue Date 2016-03-24

DOI 10.14943/doctoral.k12196

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/61836

Type theses (doctoral)

File Information Akira_Misawa.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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博士学位論文

光スイッチングネットワーク構成技術の研究

Studies on Photonic Switching Network Architectures

北海道大学大学院 情報科学研究科

メディアネットワーク専攻 ユビキタスネットワーク学講座

2016 年 3 月

三澤 明

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1

学位論文 光スイッチングネットワーク構成技術の研究

(Studies on Photonic Switching Network Architectures)

目次

概要 3

第1章 研究の背景 5

1. 1 キャリアネットワークの大容量化の進展と課題.........5

1.2 スイッチング技術と光伝送技術................6

1.3 光スイッチングシステムを構成するための基礎技術.......9

1.4 光スイッチング方式の研究意義................10

第2章 コア網向け光固定パケット長スイッチの構成技術 13

2.1 集中型パケットスイッチの論理モデル............ 13

2.2 波長多重を用いた光パケットスイッチ.............13

第3章 光パケットスイッチの構成法................... 16

3.1 ネットワーク型パケットスイッチHiPower.......... 21

3.1.1 スイッチ内部のトラヒック解析........... 21

3.1.2 入力光バッファの構成............... 21

3.1.3 入力光バッファでのパケット廃棄率 ........28

3.1.4 入力光バッファの制御実験............. 33

3.1.5 まとめ...................... 36

3.2 波長分配選択型パケットスイッチ...............37

3.2.1 波長多重Traveling型バッファのトラヒックモデル... 38

3.2.2 レベル変動と位相ジッタに対するレベル等化と位相設計 41

3.2.3 プロトタイプの構成................ 42

3.2.4 ダミーセル.................... 45

3.2.5 システム実験結果................. 47

3.2.6 まとめ...................... 53

3.3 波長多重を用いたノックアウトスイッチ 54

3.3.1 スイッチの構成.................. 54

3.3.2 マルチポート出力波長チャネルセレクタ....... 56

3.3.3 Manchester符号のよる光パケット伝送........ 62

3.3.4 コヒーレントクロストーク耐性........... 63

3.3.5 まとめ...................... 65

3.4 入出力バッファ型波長多重パケットスイッチ..........66

3.4.1 スイッチの構成................... 66

3.4.2 損失等化した波長チャネルセレクタの構成....... 67

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2

3.4.3 ACKによるフィードバック制御........... 72

3.4.4 まとめ....................... 74

3.5 波長多重パケットスイッチ構成の課題 75

第4章 メトロ網向け仮想エッジアーキテクチャと光スイッチング方式 78

4.1 メトロ網の課題...................... 78

4.2 仮想エッジアーキテクチャと光バーストスイッチング方式... 80

4.3 光 L2SW-NW 技術..................... 82

4.3.1 仮想エッジアーキテクチャのコンセプト........ 82

4.3.2 資源再割当制御................... 84

4.3.3 VNF の移動..................... 86

4.3.4 資源の削減効果................... 88

4.3.5 帯域割当制御計算時間の評価............. 90

4.4 分配選択型バースト型TDM/WDMスイッチ.......... 90

4.4.1 分配選択型の構成.................. 90

4.4.2 Make-before-breakを用いたライブマイグレーション.. 94

4.4.3 複数ポートを持つADD/DROP装置の構成....... 94

4.5 まとめ.......................... 97

第5章 総括 99

謝辞 101

研究業績リスト 102

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3

概要

近年,インターネット上での多様なサービス普及によりトラヒックは急激に増えてい

る.新しいサービスや事業者の登場のたびに,トラヒック増加だけでなく,そのトラヒッ

ク需要の分布が大きく変わる.そのため,キャリアネットワークの通信設備には,加入者

増による長期的なトラヒック需要に対応する大容量化だけでなく,トラヒック需要分布の

変動へも即応できるネットワークの柔軟性が求められている.これを実現するため,その

時点で使用可能な通信設備を最大限利用して,通信需要トラヒックのパターンに合わせた

ネットワークを再構築できれば,新サービスによるトラヒック需要分布の変動や大規模災

害罹災時にもネットワークの可用性を高めることができる.本研究は,低消費電力化・高

速大容量化に加え,需要に応じて帯域や方路を変更できるネットワークを提供するため,

光パケット多重,光バースト多重技術と波長多重を用いたスイッチ技術をベースとした光

スイッチングネットワーク構成技術を示した.

以下に本論文の構成を示す.

第 1章では,研究の背景となるキャリアネットワークへの大容量化と可塑性という要求条

件を概説し,コアバックボーンやメトロ網での光スイッチング技術への期待を示した.

第 2章では,パケットスイッチの論理的構成モデルとトラヒック特性を明らかにし,波長

多重技術など光技術の特徴を生かした光パケットスイッチ構成法を示した.パケットスイ

ッチの構成としては,一つの大規模スイッチにバッファを組み合わせた集中型構成とサブ

スイッチシステムをネットワーク的に組み合わせたネットワーク型構成がある.集中型構

成システムを組み合わせて,更に大規模なネットワーク型システムを構成できるため,基

本構成となる波長多重を利用する集中型構成に着目した. システムの要素であるバッフ

ァの位置により,入力バッファ型,出力バッファ型,ノックアウト型,入出力バッファ型

などの論理構成とそのトラヒック特性を示し,バッファや波長チャネルセレクタなど構成

要素の組み合わせにより,様々な波長多重パケットスイッチが構成できることを示した.

第 3章では,波長多重を用いたパケットスイッチングの実装構成を示した.波長分配選択

型パケットスイッチは,光ファイバ遅延線バッファを用いることを特徴とし,制御が簡単

でスループットも高いが,スイッチ規模が大きくなるほど,光ファイバ遅延線のハード量

が大きくなる.この遅延線型バッファはタイムアウトによりパケット損失が起こるため,

従来のメモリ型によるオーバーフローのよるパケット廃棄率と比較し,トラヒックモデル

解析により必要なバッファサイズを示した.波長多重ノックアウトスイッチは,出力部に

複数出力ポートを持つ可変波長フィルタを用いることが特徴である.この可変波長フィル

タで用いる光ゲートのハード量を削減する構成方法を示した.入出力型波長多重パケット

スイッチは,入力バッファへの ACKのフィードバック制御に波長ルータを用いる構成を示

した.

このような波長多重パケットスイッチの光通話路実装においては,構成デバイスに波長や

偏波依存性による損失利得の差があるため,通過する経路により損失の等化が必要であ

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る.また,経路の差や環境温度の変化などにより伝播時間にも差があるため,光通話路の

等長化も必要である.スイッチの大規模化や転送信号高速化に従い,完全な利得・損失の

等化や等長化することが難しい.これを解決するため,パケット毎に時間同期を行うとと

もに,マンチェスタ符号受光器を用いることで,光の強度レベルが異なる光パケットを安

定的に受信し,復号することが可能なことを示した.

また,波長チャネルセレクタの構成では,様々な波長多重光から任意の一波を選択する回

路が必要であるが,波長ルータと光ゲートの組み合わせで,波長多重光のままゲートする

ことでアクティブデバイスである光ゲート数を削減できることを示した.この構成におい

て,損失レベルを等化するため,中心ポートから遠くなるほど損失が大きくなる波長ルー

タの特性を用いて損失を均一化する手法を示した.このとき同じ光信号を分岐するため

に,光ゲートの漏れ光がコヒーレントクロストークとして作用する光ゲートの消光比を大

きくし,マンチェスタ符号受光器により,この影響のペナルティを軽減した.

このように,光バッファ,波長チャネルセレクタの実装構成方法ならびに損失,利得を等

化するための手法に加え,マンチェスタ符号受光器での変動耐性に強い要素技術を組み合

わせることで,波長多重パケットスイッチが安定したシステムとしての動作ができること

をプロトタイプシステム実験により示した.

第 4章では,メトロ集線網での加入者トラヒック集線処理を効率化するため,プロトコル

処理を行う高位レイヤ資源再分配に仮想エッジのライブマイグレーションを用い,物理的

接続に用いる共有リングでの帯域の資源再分配に光バースト転送を適用する高速帯域割当

制御方式の構成を示した.双方向に光バースト信号を用いる光スイッチング方式では,資

源割当の計算時間を高速にするため,ライブマイグレーションする仮想マシンを一部に制

限し,事前の切替先パスも制限することで資源の有効利用と高速帯域割当を実現できるこ

とを示した.波長分配選択と光バーストを組み合わせた方式では,複数の波長パスを同時

に選択できる光スイッチング構成により,ライブマイグレーション前に事前にパスを準備

することによりインサービスでマイグレーションできることを示した.

第 5章では,本研究を総括し,結論及びコンボの展望を述べた.光パケットスイッチに

よりバックボーンでのより光レイヤでの柔軟なネットワークの構築が可能であること,

又,メトロ網において,エッジの仮想化と光バースト転送による動的帯域割当が高速に制

御可能であることを明らかにした.今後は,これらのスイッチング技術と既存ネットワー

ク装置との連携によるネットワーク方式の検討が必要である.

本学位論文は,トラヒック需要の変動に即応するため,光転送レイヤでの可変帯域を提供

するため光パケットや光バースト転送を利用した光スイッチングシステムの実現に貢献し

ようとするものであり,波長多重技術を用いた光スイッチングシステムが有効な手段とな

りうることを結論するものである.

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1. 研究の背景

1.1 キャリアネットワークの大容量化の進展と課題

現在の光回線加入者 FTTH(Fiber To The Home)や DSL(Digital Subscriber Line)など

ブロードバンドユーザ数は,3600 万加入を超えている[1].大手の ISP で数百万単位の加入

者を収容している.加えて,第 3 世代携帯電話の拡張である LTE(Long Term Evolution)な

どモバイルでのブロードバンド加入者数が急激に伸びている.携帯の普及や WiFi アクセス

ポイントの増加により,自宅や職場,学校という固定的な場所だけでなく,ショッピングサ

イトや空港,駅などあらゆる場所からインターネットへアクセスできる時代となっている.

インターネット上では,メールや FTP(File Transfer Protocol)などのメッセージ通信か

ら VoIP(Voice over IP)などのリアルタイムコミュニケーション,動画配信や IP TV など

次々に新しいサービスが登場し,アプリケーションによりトラヒック特性は大きく変わる.

映像コンテンツの普及により大容量データは数十 Mbit/s の帯域を必要とするため,このよ

うなアプリケーションの利用頻度も高まり,ユーザあたりの利用帯域は年々増え,毎年 1.4

倍増加するスピードとなっている.また,エンドユーザのブロードバンドアクセス手段は多

様化しており,固定/移動など複数のアクセス事業者サービスを使い分けたり,乗り換える

などキャリア加入者の加入,退会,メニュー変更など頻繁に変更が起こる

近年,SNS(Social Networking Service)などクラウドサービス普及に伴い,データセンタ

と交換するデータが膨大になっている.このような大手のサービス事業者Hyper Giantsは,

クラウドサービスの高度な運用を行い,世界中の拠点のデータセンタで,“Follow the Sun”

のように数時間単位でデータ処理拠点を変えることも行っている.インターネット上での

サービスが Web 閲覧中心の時代は,キャリアネットワークで集約されたユーザトラヒック

は,他のキャリアやインターネットプロバイダ(ISP; Internet Service Provider),プロバ

イダ間を相互接続する IX(Internet eXchange Point)を経てインターネットへ送られたが,

現在は,ISP,モバイルキャリア,CDN(Contents Delivery Network),SNS 事業者,デ

ータセンタ事業者など多様な事業者間インターフェイスでトラヒックを交換しており,そ

の交流トラヒックのデータ量とトラヒックパターンは常に変化している[2].

キャリアネットワークは,個人ユーザ向けのインターネット接続だけでなく,法人ユーザ

に IP 専用線,VPN サービス(Virtual Private Network),広域 Ether 専用線,高速デジタ

ル専用線な様々な通信需要にあわせたサービスを提供している.法人ユーザは,これらを組

み合わせて用いるため,複合したネットサービスや,サービスメニューや拠点の変更への即

応が求められる.キャリアとしても,サービス別のネットワークを構築・運用すると設備利

用が非効率となる.

このように,新しいサービスや事業者の登場のたびに大きくトラヒック交換点とトラヒ

ック量が変動する.そのため,キャリアネットワークは,ネットワークの設備更新,大容量

広帯域化を進めるともに,トラヒックの需要変動に合わせてネットワーク設備を常に増減

設や新設,移設を繰り返している.ネットワークのトポロジーやノードやリンクの容量は常

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に変化している.オリンピックやワールドカップなどのイベントがあると,イベントに集ま

った利用者の通信利用やイベントの中継などの局所的,一時的トラヒックが発生し,ネット

ワーク設備が逼迫することがある.また,大規模災害罹災が起こると通信需要が増大するだ

けでなく,通信設備そのものの罹災によりネットワーク設備資源が不足する場合もある.

従って,さまざまなサービス需要を取り込める基盤となる通信設備を構築し,大容量化や

長期的なトラヒック需要や加入者増に対応するだけでなく,より短期の需要変動へも対応

するネットワークの柔軟性が求められている.ある時点で使用可能な通信設備というハー

ド資源を最大限利用して,通信需要トラヒックのパターンに合わせたネットワークを再構

築できることが求められている.

1. 2 スイッチング技術と光伝送技術

図 1.1 に示すように大規模 IP 網は,コアバックボーン(基幹系),メトロネットワーク

(幹線系),アクセスネットワーク(加入者系)からなる.アクセスネットワークからメトロ

ネットワークでは,地理的に分散している加入者トラヒックを受け付け,様々な NW サー

ビスを提供するための処理を行う.メトロネットワークで集約された大容量のトラヒック

は,コアバックボーンにより,異なる地域のメトロネットワークや他網と接続し,大容量の

トラヒック交換を行う.

図1.1 ネットワークの概略図

IP ルータや Ehter スイッチなどのパケットスイッチと OXC(Optical Cross Connect)

[3-4]や OADM(Optical Add Drop Multiplexer)や PON(Passive Optical Network)な

ど L1 光伝送装置から構成され,ユーザのアプリケーションなどのサービスフローを処理す

る高位レイヤの処理と,アグリゲートされたトラヒックを転送する低位レイヤの処理があ

る.光伝送装置は,1 Gbit/s,10 Gbit/s といった固定帯域のパスを提供し,トラヒックの集

OX

C

OAD

M PO

N

L3 スイッ

チ IP ルー

IP/MPLS ルー

コアバックボー

メトロ

アクセス

網 端

末 無線アクセス

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約や振り分けなどは,パケットスイッチレイヤで行っている.

IP ルータで構成する L3 ネットワークは,10Gbit/sEther など物理 IF で結合されたネッ

トワークとしてトポロジーを構成する.パケットの経路はそのトポロジー内で Shortest

Path を転送するように制御されている.MPLS(Multi Protocol Label Switch)ルータ間で

は,LSP(Label Switched Path)という論理的パスを設定することができる[5].MPLS 内

では,最終宛先ルータへ接続する LSP を設定することで途中のルータの IP 処理をカット

スルーしたり,LSP 毎に物理的トポロジーの別経路を設定するなどすることで,ネットワ

ーク全体のトラヒック交流を管理するトラヒックエンジニアリングを行うことができる.

光伝送レイヤにおいても,ファイバ内の波長を論理的なパスとみなし,光伝送装置間で自

由にパスを設定する光波ネットワークが提唱されている.これは L1 ネットワークにおける

トラヒックエンジニアリングを実現することができる.

図1.2のように8つのノードから構成されるネットワークを考える.どのノードからも

対称となるリング,ハイパーキューブ,メッシュでは,リンク数は,それぞれ N-1,N log

N,N (N -1)/2 となるが,最遠ノードまでのホップ数は,それぞれ N /2,log N,1 となる.

リンクコストで比較すると,リングやスターのトポロジーが最小となるが,リングではルー

ティングするホップ数が多くなり,スターでは冗長経路が取れない.フルメッシュでは,常

にワンホップでルーティングでき,冗長経路も多数取れるためロバストなネットワークを

構築できるが,リンクコストはノードの 2 乗のオーダーとなり,ネットワーク規模が大き

いと急速にコストが大きくなる.そのため,物理トポロジーでは,リングやダブルスターな

どのリンクコストをできるだけ小さくするネットワークトポロジーを採用することが多い.

論理ネットワークトポロジーは,物理ネットワークトポロジーとは独立にネットワーク

トポロジーを構成することができる.論理パスは,物理パスに比べて設定解除が行いやすい

ため,ネットワークトポロジーを簡単に再設定できる.

GMPLS(Genelarized MPLS)[6]は,IP レイヤの論理パスである LSP と光の物理パスで

あるファイバや波長といった各レイヤパス設定を統一的なプロトコルで扱うものであり,

L3 と L1にまたがりパス設定や解除を行うことで自由にネットワークトポロジーを変更す

る技術である[7].IP ルータは,パケット毎にフォワーディングするだけでなく,ルーティ

ングやサービスフロー制御などアプリケーションフローに対して,さまざまなプロトコル

の処理を行っているため,光伝送装置に比べて高価であり,論理処理が多いため消費電力も

大きい.最新のコアルータでは 10kW を超えるものもあり,このような高位レイヤ処理を

減らして,低消費電力化と経済化が求められている.このようなマルチレイヤでのパスを利

用することで,高位レイヤの装置を低レイヤの装置でカットスルーし,ネットワークの経済

化を図ることができる.伝送レイヤのパス設定に MPLS を流用した MPLS-TP(Multi

Protocol Label Switching-Transport Profile)も標準化・実装が進み,マルチレイヤでの制

御の実現も近い[8].L3 と L1 の論理ネットワークを自由に組み合わせ,階層毎にオーバー

レイすることも可能で,ファイバパスでリングを構成し,波長パスでフルメッシュ,LSP で

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ダブルスターを構成するなどネットワーク設定の自由度を高めることができる.

トポロジー リンク数 最遠ノードへのホップ数

リング N-1 N /2

ハイパーキューブ N log2 N log2 N

フルメッシュ N (N -1)/2 1

図1.2 8 ノードのネットワーク例

これまで論理パスのトポロジーリアレンジについては,多くの研究がなされてきたが,パ

スの帯域についての検討は少ない.MPLS の LSP は,接続性は担保されているが,その帯

域を保障することは難しい.波長パスは,ファイバ内に自由に設定解除できる点では論理的

なパスであるが,帯域という観点では,トランスポンダの固定的な帯域のパスであるため,

多重度に物理的な上限があり,帯域の粒度も 1 Gbit/s,10 Gbit/s という単位でしか設定で

きない.図1.3に示すようにファイバセクション内に,帯域固定のパスを設定は,アプリ

ケーションサービスフローが必要としている帯域を下回らないようにパス帯域設定を行う

必要があり,常に余剰のある状態で運用する必要がある.パケットトランスポート

PTS(Packet Transport System)では,あるパス区間においてパケット多重を用いて,帯域

固定の“硬い“パスや帯域不定の”柔らかい"パスを構成することができる[9].このような

パケット多重を行うことで,中間速度の伝送パスが提供できる.しかし,このような帯域可

変技術は point-to-point 区間に限られている.

(a) リング (b) スター (c) ダブルスター

(e) フルメッシュ (d) ハイパーキューブ

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図1.3 物理パスと論理パス

1. 3 光スイッチングシステムを構成するための基礎技術

長距離伝送から始まった Point-to-point の光通信技術は,光機器の低廉化によって,光イ

ンターコネクションなどの近距離通信にも適用領域が広がっている.光通信システムは,増

大するトラヒックを支える大容量な物理層を構成する上で重要な要素技術である.光通信

技術は,単なる伝送技術に留まらず,ネットワークを構成する通信技術として発展している.

第一世代の光通信は,光ファイバと半導体レーザ,半導体受光器(PD:Photodiode,

APD:Abalanche photodiode)を用いた伝送装置として生まれた.光技術は,Point-to-point

という点と点を結ぶ線を実現する手段としての転送する広帯域のアナログ伝送媒体として

積極的に利用され,伝送距離を伸ばすため,損失を少なくし,分散の影響を低減することが

主要なテーマであった.第二世代では,実用的な光ファイバアンプの登場によって,光通信

技術は次の段階へと発展した.光アンプの登場は,伝播損失の限界を大きく,光伝送距離を

大きく飛躍させた.それに加えて,光信号を分配するための分配選択損失を補償することに

も利用できる.光信号を分配は,高度の分配であるため,高周波技術のようなインピーダン

ス整合などを気にせず,分配損失が保障できる限り分岐などが簡単にできる.ここから,

Point-to-point から Point-to-multipoint などの構成が現実化してきた.第三世代の技術は

波長多重技術である.波長多重技術は,Point-to-point の伝送容量拡大のための技術として

発展してきた.平板基板上にガラス導波路を作成する光平板回路技術の登場により,ファイ

バ部品やフィルタのコンポーネント部品では実現できなかった,数十から数百チャネルの

大規模な合分波器が実現された.波長多重伝送容量の拡大に寄与した.

物理セクション

物理セクション

固定論理パス

可変論理パス

サービストラヒックフロー

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10

このような要素技術の発展に伴い,光スイッチング技術の適用分野が広がっている.ADM

(Add Drop Multiplexer)や光クロスコネクトは,Point-to-point の光パスを組み合わせて,

任意の地点間の伝送パスを提供するものである.波長多重は,時分割多重(TDM: Time

Division Multiplexing)に加え,波長という多重軸を与えるものであり,この組み合わせに

より多様な帯域のパスが提供可能となる.波長を一種にタグとして用い,ルーティングに用

いることが可能となり,これまでもっぱら電子技術により提供されてきたルーティングが

光技術を用いてできるようになってきたことを意味する.光技術の電気に対する優位性の

一つとして,分岐が容易である.passive star のような構成を用いれば,簡単に1対 N,N

対 N などの Fabirc が機能として提供できる.PON はこの利点を利用しており,アクセス

で高価な光伝送装置を複数のユーザで共用することで経済的なアクセスネットワークを提

供している.

1. 4 光スイッチング方式の研究意義

これまで述べてきたように,通信需要の変化に高速に追随するためには,L1 ネットワー

クレイヤで,論理トポロジーと帯域を自由にリアレンジすることができる可塑性のあるネ

ットワーク技術が求められている.さらに,高レイヤ装置と光伝送装置では,一度電気信号

に変換して,伝送フォーマットやプロトコル変換などの多くの処理を経て,中継再生してか

ら次のノードへ転送を行うが,さらにこの処理を減らすことで,低消費電力,経済化が期待

される.これを実現する要素技術として,波長多重技術と光スイッチング技術は,有望であ

る.しかしながら,ファイバ内の波長多重数は,光伝送技術でも 100 波程度であり,ネット

ワーク設定の自由度を確保する観点では多重数が十分ではない.そこで,固定長のタイムス

ロット長での多重度を組み合わせた固定長の光パケット多重[10]や光バースト多重[11,12]

を用いることで帯域可変の自由度を高める.光の回線交換と光パケットを組み合わせて自

由度を高める方式が提案されている[13, 14].光パケットスイッチングは,プロトコルやサ

ービス処理などの論理的処理は不得意であるが,単純なパケット振り分け転送に特化した

固定長のパケットスイッチを実現しようとするものである.バックボーンでの大容量トラ

ヒックの転送に特化し,IP コアルータに比べ,低消費電力で,経済的なノードの実現を目

指すものである.L3ネットワークでの MPLS のようなトラヒックエンジニアリングと組

み合わせることで大容量で柔軟なバックボーンを構成できる.更に,メトロネットワークで

は,非常に多数のアクセス拠点からトラヒックを集約することが必要であるため,トラヒッ

ク需要に応じて帯域を割当てる光バースト転送が有用である.本稿では,帯域可変パスでネ

ットワークトポロジーを可変にできるフォトニックネットワークを実現するため,ネット

ワークスイッチングシステムを実現する要素技術である光パケットスイッチ構成と光バー

ストを使ったメトロ集線ネットワーク構成技術について述べる.

第 2 章では,パケットスイッチの論理的構成とトラヒック特性について述べ,波長多重

技術など光技術の特徴を生かした光パケット構成法について述べる.第 3 章では,具体的

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な光パケットスイッチ構成を提案し,光遅延線バッファや波長セレクタの構成でハード量

を節減できることを示した.このスイッチを構成する上での課題として,光通話路内のデバ

イスが持つ,利得や損失の波長や偏波による依存性に起因する光パケット信号レベルの変

動や,光経路の誤差や環境温度による位相ジッタ,多数の経路から漏れ光に起因するコヒー

レントクロストークを低減するための通話路構成法と,レベル変動への耐性が強い

Manchester 符号受信器の利用により,安定的なシステム動作が可能であることを,実験に

より示した.第 4 章では,メトロ集線網に用いる光スイッチング技術で,PON で培われた

光バースト転送技術と Passive Star および波長多重技術を用いて,帯域可変パスの実現す

るネットワーク構成法を示す.ここではネットワークエッジ機能の仮想化について考察し,

仮想化による計算機資源のリアレンジと同調した光ネットワーク制御方法について述べて

いる.これらにより経済的な集線網の構築が実現可能であることを示す.

第 1 章の参考文献

[1] http://www.soumu.go.jp/main_content/000364681.pdf

[2] C. Labovitz, “Internet traffic 2007-2011,” Global Peering Forum, Santi Monica, USA,

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[3] Anthony S. Kewitsch, "Large Scale, All-Fiber Optical Cross-ConnectSwitches for

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[4] M. Murakami and K. Oda, "Power Consumption Analysis of Optical Cross-Connect

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[5] IETF RFC 3031, "Multiprotocol label switching architecture", 2001

[6] IETF RFC3945, “Generalized Multi-Protocol Lael Switching (GMPLS) Architecture,”

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13

2 コア網向け光固定パケット長スイッチの構成技術

本章では,パケットスイッチを分類し,その特徴を述べる.パケットスイッチの構成とし

ては,比較的小さなサブスイッチシステムをネットワーク的に組み合わせたネットワーク

型構成と一つの大規模スイッチにバッファを組み合わせた集中型構成がある.前者の例と

して,スイッチシステム構成内部にハイパーキューブ網を適用した光パケットスイッチ

HiPower を提案した.後者の集中型構成としては,波長多重を利用することで光デバイス

ハード量を削減した波長多重を用いたパケットスイッチについても提案してきた.この構

成について,2.1でその論理モデルを示し,パケット廃棄のトラヒック特性について述べ,

2.2で波長を用いたスイッチと光バッファの組み合わせによる様々な波長多重を用いた

パケットスイッチの構成できることを示す.

2.1 集中型パケットスイッチの論理モデル

図2.1にパケットスイッチの論理モデルの分類を示す.固定長のパケットを扱う N x N

パケットスイッチを考える.パケットスイッチは,Non Block スイッチ(NB スイッチ)と

パケットを待ち合わせるためのバッファからなる.そのバッファの配置により,入力バッフ

ァ型,出力バッファ型,入出力バッファ型に分類され,それぞれのトラヒック特性は論理的

に記述される.もし同じタイミングで同一方路へ出力するパケット競合が起こる場合,出力

できないパケットはバッファで出力を待つことになる.この待ち合わせのバッファサイズ

を超えるとパケット廃棄される.トラヒック特性と実装において,NB スイッチの多重度 n

が重要なパラメータとなる.

図2.1 パケットスイッチの分類

(a) 入力バッファ型

N

入力バッファ

NB SW

n=1

(b) 出力バッファ型

N

出力バッファ

NB SW

n=N

・・・ ・・・ ・・・ ・・・

(c) Knockout 型

N

出力バッファ

NB SW

1<n<N

・・・ ・・・

(d) 入出力バッファ型

出力バッファ

NB SW

1<n<N

・・・ N

入力バッファ

・・・

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14

スイッチの入力部にバッファを配置した構成が入力バッファ型である.このスイッチは,

入力バッファに FIFO(First-in, first-out)を用いると,Head of line blocking(HoL)により

スイッチスループットが制限され,均一トラヒックモデルで N が十分大きいとき,スルー

プットは 0.586 に飽和することがよく知られている[1].図2.2に HoL の原理を示す.あ

るタイムスロットで,FIFO バッファの先頭パケットが同じ宛先に向かうとする場合,出線

(n=1)では,1つのパケットしか出力できないという出線競合が発生する.競合制御によ

り,複数のパケットから出力可能なパケットが一つ選択され,残りは入力バッファで待機す

る.図のように入線1が優先されると,入線2と4のパケットは待機させられる.次のタイ

ムスロットで競合制御が入線2からの出力を優先すると,入線4のパケットは待機しつづ

ける.入力バッファ 4 では,先頭パケットの出力を待つ間,それ以降のパケットの出力でき

ないこととなり,これを HoL と呼ぶ.図2.2の例のように HoL で待機されるパケット

は,先頭パケットのブロックがなければ,出線競合がなく出力可能なパケットも存在するた

め,効率が悪化しスイッチスループットが低下する.HoL は,FIFO バッファの利用が原因

であるので,ランダムアクセス型のバッファを用いることで解決できるが,競合制御とバッ

ファの順序制御が複雑になり,大規模な高速スイッチングを実現するには制御が困難とな

る.

図2.2 出線競合と HoL ブロッキング

図2.3 内部高速化による出力バッファ型スイッチ

1

1

3

1 2 4 3 3 2

出線競

HoL による待機パケッ

出線

1 出線

2 出線

3 出線

4

入線

1 入線

2 入線

3 入線

4

1

3

X

X

競合制

1 1

3

1

スイッチ内部の高速化による

出線競合回避

出線 1

出線 2

出線 3

出線 4

入線 1

入線 2

入線 3

入線 4

3

1

1

1

時多重度

n

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出力バッファ型スイッチは,スイッチでの出線競合を回避するために出線側へ同時に出

力できる数を n とした構成である.n=N の出力バッファ型では理想的なスイッチスループ

ットが得られる[2].電気スイッチを使った高速パケットスイッチでは,図2・3に示すよう

なスイッチの動作を n 倍の高速化した出力バッファ型スイッチが提案されるているが,高

速信号を入力するパケットスイッチの内部を更に高速化することは実装上非常に困難であ

る.

ノックアウトスイッチ[3]は,出力バッファ型の一種であるが,n<N である.図2.4に

ノックアウトスイッチの構成を示す.パケットは,バスによりアドレスフィルタまで配信さ

れ,宛先の一致したパケットをコンセントレータに出力する.コンセントレータは,競合制

御を行う N x n のスイッチで,共通バッファの最大パケット入力数に絞る機能を持つ.こ

のようにスイッチ内部高速化せず,空間的に同時到着多重数 n を実現している.均一分布

を仮定したトラヒック解析では,図2.5に示すように入力負荷 90%のときでも,N=∞で,

n=8 であればパケット廃棄率は 10-6 以下となる[3].しかしながら,出力へトラヒックが集

中したとき(Hot spot)には,パケット廃棄率が非常に大きくなる.

入出力バッファ型[4]は,最大 n 個のパケット競合を解決する出力バッファと n を越えた

出線競合パケットを待ち合わせる入力バッファの両方を持つパケットスイッチである.小

さな n のときもパケット廃棄率を小さく出来,Hot spot でのパケット廃棄率増大も抑えら

れる.入力 FIFO バッファでの HoL も抑えられ,出力バッファ型並みのスループットが得

られる.図2.6に示すように出力側の多重度 n=4 で,入力バッファのスループットは,

0.99341 となる[5].

図2.4 ノックアウトスイッチの構成

・・・

・・・

バス

アドレスフィルタ

コンセントレータ

バッファ

1

N

N 1 2

2

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図2.5.ノックアウト switch のパケット廃棄率特性

図2.6.入力バッファのスループット

2.2 波長多重を用いた光パケットスイッチ

入力バッファ型以外のパケットスイッチでは,N x nN のスイッチが必要となる.スイッ

チは,空間分割型スイッチでも多重スイッチを用いてもトラヒックモデル上は等価である.

多くの電子パケットスイッチでは,NB SW の出力の n 多重を空間分割あるいは時多重分割

で行う.多重技術を用いると,N x N の空間分割型スイッチを用いて,N x nN スイッチが

構成でき,ハード量が少なくすむが,時多重スイッチでは,n 倍の内部高速化が必要となる.

光技術では,内部高速化に相当する,短パルスを時間多重した OTDM(Optical Time

Division Multiplexing)を用いた構成も提案されているが [6],波長多重(Wavelength

パケット廃棄率

同時到着可能数 n

スループット

入力バッファ型 n

出力バッファ型

n=N n=1

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division multiplexing: WDM)を使った多重スイッチが構成できる光技術の波長多重技術

を用いると,内部を n 倍に高速化することなく多重型の n x nN のスイッチが構成できる.

図2.7に波長を利用した波長体重スイッチの構成を示す.(a)は,パッシブスターと呼

ばれ,入力毎に異なる波長を割り当て,スターカプラでその波長を合流分配するものである

[7].スイッチングは,出力側の可変波長フィルタでの波長選択で行う.出力側へのすべて

の信号が波長多重によりブロードキャストされるので,マルチキャストなどの対応が可能

となるが,スイッチサイズが大きくなるに従って,分岐損が大きくなる.(b)は,波長ルー

ティングスイッチと呼ばれ,各入力の波長可変光源と合分波器である波長ルータ[7]からな

る波長ルーティングスイッチである[8-10].N x N の波長ルータの入力 aiから出力 bjへは,

波長 fi+j mod Nがルーティングされる.入力で宛先に応じた波長で出力すると,その波長がタ

グとなり,波長ルータでルーティングされる.このスイッチの特徴は,異なる入力から届い

た光はすべて異なる波長で出力される.従って,出力パートで同時到着したパケットがある

場合も必ず波長多重されて伝達される.波長ルーティングスイッチは,高速に可変できる波

長光源が必要であるが,波長ルータ損は,スイッチサイズ N に比例しない点で Passive Star

よりも有利な点である.

図2.7.波長多重スイッチの構成

バッファは,パケットスイッチでは,重要なキーコンポーネントである.一般に,電子的

メモリが使われているが,光の固定長パケットの転送時間τを単位とした遅延線で構成さ

れている光バッファ提案されている.図2.8に示すような光ファイバループを周回させる

circulating 型[11, 12]と複数の遅延線を配置する Traveling 型[13, 14]に分類することがで

きる.光バッファでは,そのトランスペアレンシを利用して波長多重光をそのまま扱うこと

ができる.光バッファは,波長多重パケットを任意のタイムスロットで,任意の数だけコピ

ーして出力することができる.最終的に出力競合している波長多重パケットを 1 パケット

ずつ出力する.したがって,光バッファは,可変波長フィルタと組み合わせて用いられる.

この出力競合を解決する波長多重出力バッファとしては,図2.9(a)のような光バッフ

波長ルー

スターカプ

RXN

波長可変フィル

TXN

TX1

波長可変光

固定波長光

λ1

TXN

TX1

λN

A A

A B B

B A A B

B

ai b

j

ai→ b

jへは f

i+j mod N(0≦i,j ≦N-

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ァを用いる構成,(b)電子バッファのみを用いる構成,(c)光バッファと電子バッファを複合

して用いる構成が考えられる.光バッファは電子バッファに比較して,波長多重信号を扱え

る半面,実装上の容積が大きい,波形劣化を考慮する必要があり,大きな遅延量の実現が難

しいとう欠点がある.

図2.8 光バッファの構成

図2.9 波長多重出力バッファの構成

以上のような波長多重スイッチと電子バッファ,波長多重バッファを組み合わせること

により,第二章で述べたような,様々な波長多重パケットスイッチが構成できる.パケッ

トを配信するスイッチやバッファを光化することで,10Gbit/s の高速な信号を扱うことが

でき,高速大容量なパケットスイッチを実現することが可能となる.

これまで提案してきたパケットスイッチの構成を表2.1に示す.FRONTIER[8-10]と

Broadcast and select は,光バッファを用いた出力バッファ型スイッチである.しかしな

B

A

B

A

B

A

B

A

B

A

B

A

カプラ 光スイッチ

光遅延線

カプラ 光スイッチ

光遅延線

(a) circulating 型 (b) traveling 型

B

A

C B A C 光バッファ

可変波長フィルタ

パケット

(a) 光バッファリング

可変波長フィルタ 可変波長フィルタ 電気バッファ 電気バッファ

(b) 電気バッファリング (c) 光電気複合バッファリング

光バッファ

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がら,パケット廃棄率を下げるのに大きなバッファサイズが必要であり,前述したように

光バッファのみでのサイズ拡大には限界がある.Composite buffer[15]は,出力バッファ

に図2.6(c)を用いて,光バッファの必要なバッファサイズが小さくすむ.すべての波長

を分波して電子バッファでバッファリングを行うと,波長多重数分の光電変換と電子スイ

ッチが必要となり,波長多重の利点を損なってしまう.ノックアウト型のスイッチとして

光電変換の数を減らした構成が考えられる.第3章で,これらの波長多重パケットスイッ

チの詳細な構成方法を述べる.

表2.1 波長多重パケットスイッチの分類

多重技

パケットスイッチ スイッチアーキ

テクチャ

スイッチ構成 バッファ構成出

力バッファ型

WDM 波長分配選択型パケット

スイッチ

出力バッファ型 Passive Star Traveling 型

FRONTIERNET 出力バッファ型 λ routing Traveling 型/

circulating 型

複合バッファ型スイッチ 出力バッファ型 Passive Star Traveling 型

波長多重 Knochout スイッ

ノックアウト型 Passive Star 電気バッファ

入出力バッファ型波長多

重パケットスイッチ

入出力バッファ

λ routing 電気バッファ

OTDM ULPHA 出力バッファ型 Passive Star Traveling 型

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[9]Y. Yamada, K. Sasayama, K. Habara, A. Misawa, M. Tsukada, T. Matsunaga, and K.

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3. 光パケットスイッチの構成法

本章では,それぞれの光パケットスイッチの構成法について,トラヒック性能を解析

し,光スイッチ通話路の構成上の課題の解決方法について述べる.3.1では,ハイパー

キューブ網を適用した光パケットスイッチHiPowerにおいて,入力バッファに光遅延線バ

ッファを採用した方法について述べる.遅延線バッファのパケット廃棄は,メモリ型バッ

ファでのオーバーフローではなく,タイムアウトでパケット廃棄が起こることから,その

トラヒック特性を解析し,光遅延線バッファの利用で十分なトラヒック特性を得ることを

示す.3.2から3.4章では,波長多重を使った集中型光パケットスイッチの構成方法

を示す.それぞれにおいて,光デバイスの利得,損失差などに起因する光パケットレベル

の変動など課題とその解決方法を実験により有効性を確認した結果について述べる.

3.1 ネットワーク型パケットスイッチHiPower

本節では,学位論文の主著である主著文献(1)で記載しているハイパーキューブの構成を

持つ光スイッチ HiPower[1]の入力バッファのパケット廃棄率解析とバッファ制御実験につ

いて述べる.光バッファは,高速信号を扱いやすく,光電気変換が不要であるため,光遅延

線による Traveling 型光バッファをもちいた.この Traveling 型光バッファのパケット廃棄

は,ループ型でのオーバーフローによる廃棄ではなく,最大バッファリング時間の上限を超

えるとタイムアウトにより廃棄される.しかし,HiPower は内部リンクが多数あるため,

内部リンクのブロック率が低く,入力バッファに必要とされるバッファサイズは小さい.本

節では,Traveling 型光バッファと電気型バッファでの入力バッファの廃棄率を解析し,

Traveling 型光バッファを用いても十分に小さなパケット廃棄率が得られることを示す.ま

た,入力バッファの制御実験した結果についても示す.

(1) A. Misawa and T. Matsunaga, “Optical Input Buffers for the HiPower Photonic

ATM Switch-Analysis and Experiments,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.

14, no.10, pp. 2173–2183, Oct. 1996.

3.1.1 スイッチ内部のトラヒック解析

HiPower はネットワーク型パケットスイッチである.比較的小さなスイッチをネットワ

ークに組み,マルチホップすることで,大規模なスイッチングシステムを構成できる.図3.

1.1に論理構成図を示す.d 次元のハイパーキューブネットワークでは,スイッチ規模

N=2dであり,N 個のノードが内部リンクで接続される.それぞれのノードは,2 進数 d 桁

のアドレスを持ち,それぞれハミング距離1のアドレスを持つノードと接続される.ハイパ

ーキューブでは,あるノードからは,そのアドレスと宛先アドレスとのハミング距離と同じ

数だけホップすれば宛先に到着し,距離が遠いほど,多数の最短経路を持つ.入力リンクと

出力リンクは同数あるため,パケットをノードでバッファせずに次のノードへ転送する

(Hot potato routing)[2].もし,最短経路が複数のパケットで競合する場合は,一方のパ

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ケットは,遠回りになるが空いているリンクへ出力され,迂回して宛先ノードへルーティン

グされる(Detour).図3.1.1の例では,3 次元で,8 ノードで構成される.図3.1.

2に示すノードは 010 のアドレスのノードであり,000,011,110 の隣接ノードと内部リ

ンクで接続される.各ノードは入力,出力バッファを経て,入出力ポートへ接続される.ノ

ードから出力する内部リンクが埋まっている場合,入力回線からのパケットはスイッチ内

部の入ることができず,内部リンクが空くまで入力バッファで待たされる.入力バッファサ

イズは比較的小さなサイズですむ.これは,内部リンクを多数持ち,内部リンクが塞がる確

率が低いことに起因する.

図3.1.1 光パケットスイッチ HiPower の論理構成.

スイッチサイズ 8x8 で、ハイパーキューブの次元は 3.

図3.1.2 HiPower のノード構成

HiPower の入力バッファでのパケット廃棄率によりについて考察する.図3.1.3に

示すようなノードを持つ d 次元のハイパーキューブを考える.各ノードには,サブスイッ

チと入力バッファ,出力バッファからなる.サブスイッチは,入出力回線と d 個の入力リン

node

001 000

111 110

101 100

011 010 Link(bi-direction)

Line(bi-direction)

optical path electrical path

入力バッファ

000 011

110 000 011

110

出力バッファ

光スイッチ 出力リンク 入力リンク

ノード 010

入力ライン 出力ライン

光レイヤ

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ク,d 個の出力リンクと接続される.入出力回線は他のスイッチと接続される.内部リンク

は,他のサブスイッチと接続される.出力バッファは,多入力 1 出力の構成を持つ.

図3.1.3 HiPower ノードでのトラヒックフロー

N個のノードについて,すべての入力負荷とトラヒックあて先の分布は均一と仮定する.

このスイッチネットワークは均一かつ対称であり,ひとつのノードについて考える.ホット

ポテトルーティングと Shortest path ルーティングを組み合わせるため,入力リンクからの

パケットは必ず出力リンクか出力回線に転送される.パケット転送はスロット毎に同期し

ているとする.パケットのあて先がノードのアドレスに一致した場合,パケットは出力バッ

ファへ転送されるとし,出力回線の輻輳による Deflection は考えない.

各ノードの入力負荷をρとする.入力パケットは,あて先ノードへ達するまで次のノード

に転送される.平均ホップ数を h とすると,全トラヒックは Nρh と記述できる.全内部リ

ンクは Nd である.トラヒックが均一と仮定しているため,内部リンクの平均負荷率は次の

式のようなにある.

d

h

Nd

hNlink

(3.1)

各ノードでのパケット廃棄率を無視できるとすると,出力回線の負荷はρである.

入力回線および入力リンクにおいて,本ノードアドレスに対応するあて先を持つパケッ

トトラヒック率は,それぞれρline-line,ρlink-line と記す.またあて先アドレスが一致しない

パケットフローのトラヒック率をρline-link,ρlink-link と記載する.入出力回線,入出力リン

クにおけるトラヒックフローの平衡式は以下のようになる.

linklinelineline (3.2)

linklinklinelinklink (3.3)

linelinklineline d (3.4)

出力バッファ

光スイッチ d 出力ライン

出力ライン

ρ

ρlink

ρlink

ρlink

ρ

バックプレッシャ δ 入力ラインバッファ

d 入力ライン

ρlink-link

ρlink-line

ρline-link

ρline-line

ブロック β

自宛パケット

非自宛パケット

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linklinklinklinkline

dd

d

(3.5)

ρline-line は N ノードの中のあるノードへルーティングされる確率とみなすことができる.

N 宛先に対し,トラヒック分布が一様とすると次の式が成り立つ.

N

lineline

(3.6)

式(3.1)~(3.6)より

Nh

dlinkline

11

. (3.7)

これは入力リンクから出力リンクへ向かうパケットの確率である.

入力リンクからのパケットは,入力回線から入ってくるパケットよりも優先させるルー

ティングアルゴリズムを考える.入力リンクからのパケットは,宛先に近づくノードへ転送

される.同一宛先のパケットが複数あった場合,いくつかのパケットは,適切なノードへの

転送ができない場合がある.それらのパケットは迂回ルートを通ることとなり,最終宛先に

到達するまでバッファされずに転送され続ける.

出力リンクが塞がっている場合は,ノード内部の転送が優先されるため入力回線からの

パケットが,ノード内部へ転送できない.出力リンクが塞がっている場合は,入力バッファ

へバックプレッシャが転送され,入力回線からのパケットがノード内部へ転送できないこ

とを通知する.出力リンクが全て塞がるのは,全入力リンクからのパケットがあり,かつ全

てのパケットが他のノードへ転送される場合である.式(3.7)からバックプレッシャの

確率δは,以下のようになる.

d

d

d

linkline

hd

2

11

(3.8)

バックプレッシャ信号が送られると,入力回線からのパケットは,バックプレッシャがな

くなるまで入力バッファで待ち合わせをする.そのため,入力回線での Head of blocking

が起こる.このノード宛のパケットが到着した場合は,到着パケットはそのまま出力回線へ

出力される.従って,入力回線からのパケットは,バックプレッシャ信号があり,かつその

宛先が異なるノードの場合である.式(3.2),(3.6),(3.8)から,入力パケット

ブロック率βは,以下となる.

d

dd

linkline

hd

2

11

2

11

(3.9)

HiPower では,すべての到着パケットの平均ホップ数は d/2 である.しかし,パケット

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25

競合のためいくつかのパケットでは,ホップ数は長くなる.この増分αとすると,

2

dh (3.10)

となる.αは,次元 d,入力負荷,ルーティングアルゴリズムに相関する.文献[8]の結果か

ら,ρ=0.9,d=7 の場合,αは,約 0.3 となる.

ρ=0.9 のときの入力ブロック率βとハイパーキューブの次元 d の関係は,式(9),(1

0)から,α=0,0.3,1 となる.結果を図3.1.4 に示す.d が増えるほど,入力パケッ

トブロック率βは小さくなる.

図3.1.4 入力パケットブロック率(負荷ρ=0.9)

3.1.2 入力光バッファの構成

図3.1.5に入力バッファの構成を示す.入力バッファは,バックプレッシャ信号と入

力パケットに従い,パケットスループットを制御する.入力バッファは,光と電気制御のレ

イヤからなる.電気制御レイヤは,アドレス抽出,入力検知,シフトレジスタとゲート制御

からなる.バックプレッシャ信号 BP はサブスイッチから送られ,内部光スイッチネットワ

ークでのパケットの振る舞いを示している.

電気制御レイヤは,アドレス抽出,入力検知,シフトレジスタとゲート制御からなる.バ

ックプレッシャ信号 BP はサブスイッチから送られ,内部光スイッチネットワークでのパケ

ット入力状態を示している.入力光パケットの強度の一部を抜き出し,光信号を電気信号に

変換し,アドレス抽出と入力検知に送られる.入力検知は,パケット入力の有無を判定し,

入力信号 D としてゲート制御器へ送られる.アドレス抽出では,入力パケットの宛先を判

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26

定する.宛先アドレスは,光バッファと同じサイズのシフトレジスタに送られる.光バッフ

ァのもっとも古いパケットの宛先アドレスは,制御回路へ送られる.光バッファの光ゲート

は,塞がり信号 BL と入力信号 D により制御される.ゲート制御は,各タイムスロットで

どの光ゲートを開閉するかを判断する.信号 Q と L は,パケットの出力とバッファでの廃

棄率を示す.

図3.1.5 光遅延線バッファの構成

光レイヤでは,バッファは,カプラと光遅延線,光ゲートからなる.入力パケットは,カ

プラにより m+1 個のコピーに分割され,0 から mT の遅延を与えられる.ここで T はタイ

ムスロット長を,m は最大バッファサイズを示す.図3.1.5では,バッファサイズは 7

である.各パケットスロットでは,それらのコピーされた信号のひとつのみが光ゲートを通

じて遅延を与えられる.

図3.1.6にこのバッファでの光パケットの動作例を示す.パケットサイズは 3 であ

る.光信号のコピー,遅延,選択を行っている.光パケット A,B,C,D が順次送られてくる

とする.入力パケットは 4 つにコピーされ,それぞれ,0 から 3T の遅延がファイバ遅延線

により与えられる.それぞれにパケットは,BL 信号を受けなければ,それらのコピーの中

からひとつだけ光ゲートにより選択される.個の実験では,図3.1.6の太枠で囲まれた

パケットが選択される.BL 信号を受け取ったときには,パケットは選択されず,BL 信号

が来ないときまで待ち合わせる.このように FIFO の順でパケットが出力される.

ファイバ遅延線の数は,この光バッファの重要が因子であり,光デバイスのハード量を決

める要素になる.バッファサイズ 7 の例を図3.1.7 に示す.図3.1.7(b)に示す例で

は,図3.1.7(a)の順次並べる方法に比べ2つのメリットがある.ひとつは,ファイバ遅

延線の量を減らすことができる.28T の遅延線が必要なものが,12T だけで済む.もうひと

つのメリットは,同じ構成が2つあることであり,ハードをモジュール化して作りやすくで

きる.

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27

図3.1.6 FIFO 入力バッファ

図3.1.7 光ファイバ遅延線の配置法

(a) Succesive allocation

(b) Repeating allocation

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28

3.1.3 入力光バッファでのパケット廃棄率

電気バッファと比較し,光バッファとパケット廃棄率を評価する.それらのバッファの論

理的構成を図3.1.8(a)と(b)に示す.光バッファは,シフトレジスタタイプとして,電

気場ふぁはメモリタイプのバッファとみなすことができる.光バッファの場合,パケット廃

棄は,タイムアウトにより発生するが,電気バッファの場合は,入力パケットが多く,オー

バーフローにより発生する.

図3.1.8 光バッファと電気バッファの論路構成

入力負荷ρ,入力パケット廃棄率βは一定であり,均一トラヒックを仮定する.一般的な

パケットスイッチでは,この仮定は過小評価となり,バーストトラヒックについても評価が

必要である.しかし,HiPower では,10Gbit/s を超える高速信号を扱うことができ,多く

のトラヒックが集まるコア網で利用するため,統計多重効果が期待できる.

光バッファでの状態を,もっとも古いパケットの順位 i,Qi で表す.状態 Qi の確率を qi

としるす.状態 Qiから Qjへの遷移確率 Pr[Qj|Qi]は,

jm

m

mj QQ

)1(

)1(Pr

mj

j

1

0 (3.11)

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29

0

)1()1(

)1()1(Pr

ji

i

ij QQ

mji

ij

ij

j

1

1

1

0

(3.12)

0

1Pr 0

QQ j

mj

j

j

2

1

0

(3.13)

状態遷移図を図3.1.9(a)に示す.

図3.1.9 入力バッファの状態遷移図

(a) シフトレジスタ型バッファ(光バッファ)

(b) メモリ型バッファ(電気バッファ)

パケット廃棄率 Loptは以下のとおりになる.

1

)1)(1(

)1(11

1

m

Lmm

m

opt

1

1

(3.14)

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30

電気バッファでは,パケットは必要な時間だけ保持でき,パケット廃棄はオーバーフロー

で発生する.上記と同様に,状態確率を,Q~iの確率を q~iとしるす.状態 Q~iから Q~jへの

遷移確率 Pr[Q~j|Q~~i]は,

0

)1()1(

)1()1(1Pr~~

mj QQ

10

1

mj

mj

mj

(3.15)

0

)1()1(

)1()1(

Pr~~

ij QQ

otherwise

ij

ij

ij

1

1

(3.16)

0

1

Pr~

0

~

QQ j

otherwise

j

j

1

0

(3.17)

状態遷移図を図3.1.9(b)に示す.

パケット廃棄率 Lelecは以下のとおりになる.

1

)1()1(

)1(1111

1

m

Lmmmm

mm

elec

1

1

(3.18)

光バッファと電気バッファのパケット廃棄率をバッファサイズ m とブロック率β,入力負

荷ρに関してしての関係を図3.1.10に示す.パケット廃棄率は,βとρが増えるに従

い,急速に増加する.ブロック率が大きいほど,同じパケット廃棄率を得るためにはより大

きなバッファサイズが必要となり,二つのバッファの差は大きくなる.前の節で,d≧7 の

とき,10-3 いかにするためのβを示した.入力負荷 0.8 で 10-12 のパケット廃棄率を得るた

めには,バッファサイズは 10 以上である必要がある.

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31

図3.1.10 入力バッファでのパケット廃棄率 . (a) ρ=0.7 (b) ρ=0.8.

同じパケット廃棄率を得るのに必要な光バッファと電気バッファのサイズm,m~を比較

する.Lopt=Lelectとおくと,式(3.14)および(3.18)から

(3.19)

1-β>ρで,(1-ρ)/β>1 であるため,m/m~>1 となり,ρが 1-βに漸近すると

(3.20)

本式より,同じパケット廃棄率を得るには,光バッファのほうが電気バッファより大きなバ

ッファサイズが必要となる.図3.1.11にβに対する,バッファサイズの比を示す.入

力負荷が小さいほど,その差は大きくなる.これは,光バッファでは,パケット入力列の順

11~

m

m

1log

1log

1~

m

m

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32

番を圧縮することがないからである.したがって,電気バッファに比較して,相対的に大き

なバッファサイズが必要となる.さらに,パケット廃棄率が大きいほど,その差も大きくな

る.ブロック率が高い場合,パケットは長くバッファ内で貯められる.光バッファは,タイ

ムアウトによりパケット廃棄が起こるため,電気バッファよりも光バッファのほうが大き

いバッファサイズが必要となる.しかし,入力負荷が小さい場合は,バッファサイズの絶対

値,m,m~は,図3.1.10に示すように小さな値となる.したがって,実用の観点か

らは高い入力負荷での差が問題となる.言い換えれば,光バッファの効率性は,高い入力負

荷での,光バッファの効率が高くなる.入力負荷が 0.8 を超える場合,同じパケット廃棄率

を得るために,光バッファのバッファサイズは,30%ほど,電気バッファよりも大きくな

る.このように,入力負荷が大きい場合に,mとm~が近い値となる.

セクションIIで用いたβを使い,入力バッファとして光バッファを用いた場合のバッ

ファサイズを評価した.結果を図3.1.12(a)に示す d=7,10(N=128,1024)のとき,10-

12,10-15以下のパケット廃棄率を得るためには,バッファサイズは,6,8 および 4,5 となる.

図3.1.12(b)には,α=1 の場合のバッファサイズを示している.同様に,10-12,10-15

以下のパケット廃棄率を得るためには,バッファサイズは,9,12 および 5,6 となる.このよ

うに,このスイッチの入力バッファとしては,小さなバッファサイズですむ.したがって,

入力バッファとして光バッファを用いることが可能である.

図3.1.11 メモリ型バッファと同じパケット廃棄率を得るためのシフトレジスタ型

バッファの増分比

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33

図3.1.12 パケット廃棄率に対するバッファサイズ

ρ=0.9 (a) α=0.3 (b) α=1

3.1.4 入力光バッファの制御実験

このバッファの動作を,10Gbit/の光パケットをゲートで制御する実験を行った.実験系

を図3.1.13に示す.10Gbit/s のパルス発生器(PPG)で,64Byte(T=51.2ns)のパ

ケット列を送出した.パケットは,ガードバンドとプリアンブル,データフィールドからな

る.ガードバンドは,6 byte(4.8ns)である.プリアンブルは固定パターン”10101010”の

通いて,シリアル番号を負荷している.DFB-LD の波長は,1550.2 nm である.送信器は,

LiNbO3の強度変調器とドライバからなる.マルチパターン発生器からDとBL信号を19.53

Mbit/s で発生させる.フレームクロックは,19.53 MHz であり,パケット長 51.2 nm と同

じ周期である.バッファの出力光信号は,ファイバアンプ EDFA(Erbium-doped fiber

amplifier)で増幅され,電気信号に変換される.この信号をオシロスコープで観測し,ビッ

ト誤り率測定器によりビット誤りを測定した.

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図3.1.13 入力光バッファの実験系

図3.1.14は,ゲート制御装置回路を示しており,SCFL の LogicIC で構成される.

3つの“D”タイプフリップフロップは,光バッファサイズと同じサイズのシフトレジスタ

を構成している.信号 D は,出力ゲートのひとつに転送され,出力されるまで,シフトレ

ジスタ内をシフトする.右側の4つの D-FF は,D と BL の計算結果を格納するものであ

り,各フレームで光ゲート開閉を保持している.

図3.1.14 光ゲート制御回路の構成

図3.1.15に,ゲート制御の入力,出力信号を示す.D と BL 信号は,ゲート制御に

入力される(図中は反転した信号).いくつかのパケット(A から G)は,このゲート制御

が BL 信号を4つ受け取るとパケットが出力される.光出力パケット信号は,この回路遅延

のため,約 40ns 遅延させられる.

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図3.1.15 光ゲート制御回路の入出力波形

パケット A がバッファに入力されたとき,制御回路は,PS 信号を受け取っているので,

Gate0 を通して,出力される.一方で,パケット B が入力されたときは,BL 信号を受信し

ているので,PS信号を受信するまで待ち合わせる.パケットは1フレーム分遅延させられ,

Gate1 から出力される.同様に,パケット C と D は,遅延が2,3フレーム後で出力され

る.パケット出力されると,Q が ON となり,パケット廃棄が起こると L が ON となる

オシロスコープで観測した光パケット信号列を,図3.1.16に示す.光パケット A か

ら D は,0 から3T の遅延が与えられ出力される.パケット E は,最大バッファ遅延が 4

であるため廃棄されている.光パケット出力列は,制御回路の出力 Q と同様な形となって

いる.このように,電気回路が正しく制御を示していることを示している.入出力光パケッ

ト信号のアイパターンを図3.1.17(a),(b)に示す.出力パケットのアイパターンにはノ

イズが観測されているが,出力強度-18.27 dB で 10-12以下のビット誤り率を達成している.

また時間軸方向では完全な信号同期が得られている.パケットあたりの入力と出力強度は,

-6.12 dBm,-17.02 dBm であった.したがって,回路損失は,10.9 dB となる.

図3.1.16 光パケットシーケンス

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図3.1.17 入出力信号のアイダイアグラム

(a) 入力信号 (b) 出力信号

3.1.5 まとめ

サブノード結線を遅延線として用いた内部バッファ型スイッチである HiPower において,

光入力バッファについて述べた.このバッファは,ブロック率によりパケットを制御する.

1024 ポート(d=10)を持つ HiPower において,この光入力バッファのパケット廃棄率を解

析し,10-15 以下のパケット廃棄率を得るために必要なバッファサイズが5程度で済むこと

を示した.

さらに,ファイバ遅延線で構築した光入力バッファを,10Gbit/s のビットレートでの実

験を示した.この光バッファは,ブロック信号に基づいて,電気制御されるものである.こ

のバッファでの転送実験でビット誤り率 10-12以下を得た.

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37

3.2 波長分配選択型パケットスイッチ

本節では,学位論文の主著である主著文献 (2)~(8)で記載している波長分配型パケットス

イッチについて述べる.図3.2.1に本パケットスイッチの構成を示す.このスイッチは,

電気制御系と光通話路の 2 重構成となっている.電気制御系は,ルーティングを決定し,高

速信号転送網である光通話路を制御する.光通話路は,分配選択型スイッチで構成される.

分配選択型では,本質的に,マルチキャストに対応が容易である.光通話路は,送信器,ス

ターカプラ,波長多重出力バッファ,受信器からなる.波長多重出力バッファは,パケット

宛先とアドレスが一致するパケットを選択し,出力競合処理を行うバッファ機能を有する

Time slot セレクタと高速波長フィルタの機能を持つ WDM チャネルセレクタからなる.ま

た,出力バッファ型スイッチとなるため,入力バッファ型に比して,高スループットが期待

できる .本スイッチの特徴は,バッファ機能の実現に,光ファイバ遅延線を用いた

Traveling 型光バッファを用いることである.コンテンションを回避する信号分配に内部高

速による時多重技術を用いず,波長多重技術を用いる.光パケットの分配までは,波長多重

伝送であるので,高速信号の扱いが容易である.このような波長多重 Traveling 型光バッフ

ァを用いた場合のパケット廃棄率を解析し,必要なバッファサイズの導出について述べる.

加えて,この光パケットスイッチを 4x4 のプロトタイプとして架実装してシステム動作を

確認している.光通話路設計で課題となるデバイスの波長依存性や偏波依存性のある損失

利得差に起因するレベルの変動に対して,ダミー方式で光アンプの入力強度によるレベル

変動を抑制し,レベル耐性のある受光器の採用などの対策を用いることで,システムマージ

ンを持ったシステム運用できることを示す.

(2) A. Misawa, K. Sasayama, and T. Matsunaga, “Fast wavelength selection for four-

channel wavelength-division-multiplexed 10-Gbit/s optical cells,” IEE Electron

Lett., vol. 31, no. 20, pp. 1762–1763, Sept. 1995.

(3) A. Misawa, Y. Yamada, M. Tsukada, K. Habara, and T. Matsunaga, “20 Gbit/s

photonic ATM switching with differential packet receiver, “ IEE Electron Lett,

vol. 32, no. 19, pp. 1798-1799, Sep 1996.

(4) A. Misawa and M. Tsukada, “Broadcast-and-Select Photonic ATM Switch with

Frequency Division Multiplexed Output Buffers,” IEEE J. Lightwave Technol.,

vol. 15, no.10, pp. 1769–1777, Oct. 1997.

(5) A. Misawa, Y. Yamada, M. Tsukada, K. Sasayama, K. Habara, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, “A Prototype Broadcast-and-Select Photonic ATM Switch

with a WDM Output Buffer,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.16, no.12,

pp.2202-2211, Dec. 1998.

(6) A. Misawa, K. Sasayama, and T. Matsunaga, “Fast frequency selector for four-

channel frequency-division-multiplexed 10 Gbit/s optical packets,” in Proc.

ECOC’95 , pp. 957–960, Th.L.2.5. , Sep. 1995.

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38

(7) A. Misawa, "Broadcast-and-select photonic ATM Switch with differential

receiver" , Proc. of PS96, PThC2, pp. 16., April 1996.

(8) A. Misawa, M. Tsukada, Y. Yamada, K. Sasayama, K. Habara, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, "40 Gbit/s broadcast-and-select photonic ATM switch

prototype with FDM output buffers," Proc. ECOC '96, ThD.1.2.pp.107-110, Sept.

1996.

図3.2.1.波長分配選択型パケットスイッチの構成

3.2.1 波長多重 Traveling 型バッファのトラヒックモデル

Traveling 型光バッファは,光ループ型と同様に保持時間に制限があるため,保持時間が

無限である電気バッファに比べて,トラヒック特性が劣化する.その特性を解析的に評価す

る.Traveling 型光バッファは,あるタイムスロットで複数多重された(同時到着した)パ

ケットを,タイムスロット毎に高々1つずつパケットを出力するバッファである最も早く

入力されたパケットがそれまでにバッファリングされた回数とそのときの波長多重数での

状態遷移を考える.

入力されるパケットの波長多重数(スイッチサイズに等しい)を n,FIFO にパケットが

入力される確率すなわち入力負荷をρとする.自ノード宛のパケット同時到着確率を 2 項

分布とする.視縄地,波長多重されたパケットのうち,自ノード宛のパケットが i 個到着す

る確率 piは,

(3.21)

となる.

このバッファは,BP を受け取ったときは,パケットを出力せず,ACK(出力可能を示す.

BP の論理反転信号)の場合は,もっとも古いタイムスロットのパケットを出力する.もし,

ini

ininn

Cp

1

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39

そのタイムスロットのパケットが波長多重されているときには,同一タイムスロットの中

の任意のパケットを主注力し,その全てのパケットが出力されると,次のタイムスロットの

パケットの処理に移る.このバッファは,最大待ち数が制限される.その待ち数を m(カ

プラの分岐数は,m+1)とする.パケットが最大待ち数を超えると,同一タイムスロット内

のパケットが廃棄される.

バッファ内にある,もっとも古く入力されたパケットの着目し,そのパケットがバッファ

リングされた回数 j とそのときの波長多重数 i で状態確率 Sj,iを考える.ACK は,一様確率

で出現するとし,その確率をrとする.ρが常に一定であるとすると,各状態間の遷移確率

は,図3.2.2にような状態遷移図として表すことができる(m=4,n=2).ACK の場合

(確率 r),k 個のパケットが多重され,同時到着すると,k 回のタイムスロットを使って,

全てのパケットが出力される.多重数が1になると,次のタイムススロットで,過去の履歴

に従って,次に古いパケットの状態に遷移する.このとき,各状態のパケットが i 個存在す

る確率が pi と考えることができる.たとえば,状態 S4,1 から状態 S1,2 への遷移確率は,先

頭パケットの広報に2つの秋があり,3 つ目に 2 多重されたパケットが存在する確率であ

り,p02p2となる.また,BP の場合(確率 r-1),パケットは出力されないのでバッファリン

グされたパケット数は変わらず,そのバッファリングされた回数が増える.この系で平衡状

態を計算すると,

nimj 0,1

(3.22)

となる.ここで

(3.23)

(3.24)

とする.

BpArpSrppm

000,010 )1(1

BppArpSrpprpSm

iiiiii

1

00,01,1 )1(

BppArpSprSm

nnnn

1

00,0,1 )1(1

BppjArpSrrSSjm

iiijijij

0,11,1, )(1

BppjArpSrSjm

nnnjnj

0,1, )(1

BpSrrSS iimimim ,11,1, 1

BpSrS nnmnm ,1, 1

1

1,)(m

lk

kSlA

n

k

kmSB1

,1

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40

図3.2.2.波長 Traveling 型光バッファの状態遷移図

バッファサイズ m=4、波長多重数 n=2

Sm,iはパケットが最大待ち数に達している状態であるので,このときにパケットが複数多重

されていると,出力される1つを除いて,全てのパケットが廃棄される.しなわち,パケッ

ト廃棄率 Lm,nは,

(3.25)

となる.

式(ii)より,n=2,r=1 の場合は,解が解析的にも泊まり,以下のようになる.

[3.26]

n>2 の場合については,式(3.22)を漸化式として用い,解が収束するまで反復計算を行

い,数値的に解を求めた.

図3.2.3に波長多重バッファのパケット廃棄率特性の計算結果を示す.負荷を一定と

し,波長多重数をパラメータとした場合のパケット廃棄率である.次ノードなどからのバッ

クプレッシャはなく,出力バッファは必ず出力できるものとする(r=1).

波長多重数が大きいほど,必要なパケット廃棄率を満たすのに必要なバッファサイズが

大きくなる.しかし,波長多重数が大きくなると,必要なバッファサイズは飽和してくる.

多重数が n=32 でも,負荷ρ=0.7,0.8 の場合,それぞれ,m=30,44 程度で,10-9 の廃棄

率となる.これは,波長多重数が多くなるほど,二項分布がポワソン分布に収束するため,

同時到着するパケットの確率プロファイルの変化が小さくなることによる.

n

k

km

n

k

kmnm Skr

Skr

L1

,

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41

図3.2.3.波長多重 Traveling 型出力バッファのパケット廃棄率

3.2.2 レベル変動と位相ジッタに対するレベル等化と位相設計

スイッチサイズは,波長多重スイッチ内の光ゲートや光アップの波長帯域幅に依存する.

波長多重トランスポートネットワークでは,広帯域の光アクティブデバイスが開発されて

いる.たとえば,50 nm にわたりフラットな利得を持つ EDFA や 100 nm をこげる半導体

レーザ型光アンプ,光ゲートも報告されている.このような広帯域な波長帯域を持つ光デバ

イスを利用して,大きなスイッチサイズを実現することができる.

スイッチは,Mulitpoint-to-multipoint のシステムであるため,多くの TX から RX への

光パスが存在する.そのため,光伝送装置では問題にならないが,光パケットスイッチでは,

タイムスロット毎にスイッチングされるたびに,図3.2.4に示すような光強度レベルの

変動や位相ジッタが起こる.光パケットの信号速度が Gbit/s オーダーであり,タイムスロ

ット周期も数十 MHzオーダーであるため,ns オーダーで,レベル変動や位相変動が起こ

り,RX での信号識別を困難にしている.従って,光通話路は,これらの変動を小さくする

ように設計する必要がある.本節では,レベルの等化とビット同期の方法について述べる.

レベルの変動は,分岐や合流損失の差,デバイスの偏波や波長依存性のある損失差によっ

て生じる.光通話路を構成するデバイスには,偏波無依存,波長フラットなデバイスを用い

ることが理想的であるが,実務的にこれれを完全になくすることは非常に難しい.特に光ゲ

ートや EDFA はこれらの損失,利得差が大きい.さらに,EDFA では,入力強度と入力波

長によって利得が変わるため,波長依存性をフィルタなどで等化することは困難である.

レベル変動に対しては,2つの対策がある.一つは,光通話路内に全光型のレベルイコ

ライザーを挿入し,レベルのリシェイプを行うことである.もう一つは,レベル変動耐性の

強い受光器を用いることである.Differential 検知を用い,高速な光ピーク強度検出と識別

閾値トラッキングを持つ光受信が報告されており,10Gbit/s の高速信号受信で 10dB のパ

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42

ケットレベル変動の受信が可能である[3].

図3.2.4.光通話路におけるレベル変動と位相ジッタ

他方,光ファイバパスの等長化誤差,ファイバの分散や環境温度の変化による伝播速度さ

いよって,位相ジッタが生じる.波長多重バッファ内のファイバ遅延線や波長選択器での誤

差が支配的である.1 mm の等長化誤差は 5 ps の位相ジッタの原因となるので,ファイバ

長の等長化は必須である.ファイバの分散は,光通話路の伝播距離が短いためあまり問題に

はならない.さらに,ファイバ遅延線での環境温度の違いがあると,遅延時間が変わりパケ

ット毎の位相ジッタの原因となる.ファイバの拡張係数は 0.6 x 10-6 K-1,屈折率変化係数は

1.0 x 10-5 K-1,伝播遅延変化は 5.2 x 10-2 ps/m/K ある.従って,ファイバ遅延線の遅延時

間が長くなるほど,温度変化が位相ジッタへの影響度が大きくなる.

高速な光信号を扱える実用的なメモリやバッファはまだないため,2つの対策を考える

必要がある.光受光器の位相耐性に合わせて光通話路の位相ジッタ量を抑制する設計をす

るか,位相ジッタへの耐性のあるバーストモード受信器[4-8]を用いるかである.ビット位相

非同期とする場合は,位相ジッタ分を吸収するガードタイムが必要である.光パケットのデ

ータ部の前のプリアンブルでクロック抽出を行う方式では,複数の位相の違うクロックを

持つクロック Diversity を用いる[7, 8].また,プリアンブルからクロック情報を抽出し,

デジタルタンクでクロック再生を図る方式もある[4].どちらにせよ,バースト受信を用い

る場合は,プリアンブル長が長くなるほど,クロック再生が容易になるが,データ領域が相

対的に短くなるため,転送効率は悪くなる.

3.2.3 プロトタイプの構成

高速波長多重光通話路を架実装した試作機を図3.2.5に示す.図3.2.6に示すよ

うに架内にラック搭載実装している.電気制御系は,パターン発生器(Pulse-pattern

generator; PPG)により転送信号および制御信号を送出する.1 出力回線に波長多重出力バ

ッファを備えた4x4のスイッチである.光通話路は,固定波長光源(Fixed wavelength

transmitter module; WTM),タイムスロットセレクタ(time slot selector module; TSM),

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波長セレクタ(wavelength-channel selector module; WSM),光受信機(Optical receiver

module; ORM)と光アンプ(Fiber amplifier; FA1,2,3)からなる.本プロトタイプでは,

ORM として,図3.2.7(a)に示す NRZ 符号用の ORM-NRZ と,図3.2.7(b) )に示

す Manchester 符号用の ORM-Manchester の2つのタイプを用いた.偏波依存性を測定す

るため,WTM と FA1 の間に偏波コントローラを挿入している.

図3.2.5.波長分配選択型パケットスイッチプロトタイプの構成

図3.2.6.架実装したプロトタイプ

図3.2.7.光受光器の構成 (a) NRZ 符号受信器 (b) Manchester 符号受光器

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WTM での固定波長光源の波長は,f1=1555.2 nm,f2=1554.4 nm,f3=1553.6 nm,f4=1552.8

nm であり,波長間隔は 0.8 nm(100 GHz)としているおり,4 x 4 スターカプラにより多重

される.波長信号は 4 台の PPG により 10Gbit/s で変調され,特定フォーマットの光パケ

ット列を繰り返し送出する.タイムスロット長 T は 51.2 nm とした.TSM と WDM の光

ゲートは,このタイムスロット周期に対応する 19.53 Mbit/s で動作させた多チャンネル

PPG により制御される.パケットは,ガードタイムと信号転送領域であるペイロードから

なる.光半導体増幅器(SOA)を光ゲートとして使用しており,ns オーダーの切替時間が

必要である.この切替時間を補償するガードタイム方式を採用した.光ゲートのスイッチン

グ時間を補償するため,3.2 ns のガードタイムを用い,ガードタイムでの信号はすべて

“Space”とした.システム実験では,ORM-NRZ のコーディングとしては,10 Gbit/s の 60

byte 長のパケットを,ORM-Manchester では,5 Gbit/s の 30 byte 長のパケットを用いた.

ペイロードは,先頭識別用に 1byte のプリアンブルとデータ領域からなり,データ領域に

は,マーク率 1/2 の 27-1 疑似ランダムパターンを挿入した.

TSM では,波長多重された光パケットは,分流器により 4 つにコピーされ,それぞれ 0

から T, 2T, 3T まで遅延を与える.光ゲートは,それらのコピーされた波長多重パケット列

の中から一番古いパケットを選択し,出力する.ファイバ遅延線部分には,反射型の構成を

とることで,ファイバの往復量を遅延に用いており,ファイバ長を短くすることができる

[9].光ファイバ遅延線は,ボビンに巻かれ恒温層の中で温度制御されている.これにより

周囲の温度環境が変わっても絶対的な遅延時間を一定にすることができるとともに,温度

の変化により ps オーダーの高い遅延精度を実現している.温度調節は,ヒータにより制御

される.ペルチェを用いるよりも低消費電力であり,温度制御も容易である.

信号同期については,送信器から受信器までの間に同期回路は持たず,光通話路内で信号

が通過するファイバの等長化により,信号同期させた.温度管理に必要な精度は,遅延線の

長さとビットレートに依存する.このプロトタイプでは,最大遅延が 3T であり,ビット同

期のためには 1 K 以内の精度で同期が可能である.トラヒック評価から,負荷 0.8 でパケ

ット廃棄率を 10-9 以内とするためには,42T のファイバ遅延線が必要である.1 K の温度

変化で,42T のファイバ遅延線では 23 ps の遅延差が生じる.これは ORM-NRZ と ORM-

Manchester 受信器でのパルスマージンよりも小さいため,ファイバ遅延線の温度管理は,

±0.5 K の精度で行えばよい.

光ゲートは,電気光吸収効果(Electro-absorption gate; EAG)を用いた[10].この EAG

は,波長帯域 1545 nm から 1560 nm で,偏波依存性損失変動が 0.3 dB であり,波長依存

性の損失差は 1.1 dB であった.OFF して光ゲートからの漏れ光は,干渉ノイズ源となるた

め,消光比も重要なパラメータである.EAG の消光比は,26 dB であり,4つの光ゲート

からの漏れ光全体でも-21.0 dB となり,コヒーレントクロストーク[11]がビット誤り率へ与

える影響を十分回避できる値である.

WSM では,波長多重された信号から必要な波長のパケットを選択するものである.波長

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チャネル数対応した分波器で分波されたあと,半導体レーザ型光ゲート(semiconductor-

laser-type optical gate; SLG)[12]の利得を変化させることで波長を選択し,合波器へ転送

される.この合分波器には,Planner lightwave circuit(PLC)技術を用いた 16 チャネルの

アレイ型光グレーティングフィルタ(arrayed-waveguide grating filter; AWGF)[13]を用

いている.

このプロトタイプでは,図3.2.7に示すような NRZ 符号と Manchester 符号の2つ

の信号符号方式を用い,それぞれに対応する受信機を用いて測定を行った(ORM-NRZ と

ORM-Manchester).NRZ 符号は,Mark と Space が光信号強度の高低に対応させている

ため,信号パターンにより光パケットの信号強度が変化する.ORM-NRZ は,伝送装置で

用いるような PD と電気アンプを組み合わせた受光器であり,Auto Gain Control(AGC)回

路が内蔵されているが,数十 ns オーダーのレベル変動にしか追随できないため,パケット

毎のレベルの変動耐性は小さい.Manchester 符号では,すべてのビットに,立ち上がり,

立下りの変化店を持っており,それが,ビット符号”Mark” と”Space”に対応する.従って,

NRZ 信号に比べ,Manchester 符号では,2倍の帯域が必要であるが,NRZ 符号で問題と

なる同一符号連続による DC 連続がなく,信号のマーク率は常に 1/2 となる.Manchester

符号用受光器[5]は,ビット立ち上がり,立下りをビット識別に用いることで,パケット毎

にレベル変動を持つ信号を簡単に識別することができ,レベル変動耐性は大きい.

3.2.4 ダミーセル方式

EDFA の波長に対する利得プロファイルは入力強度により変化し,これが光受光器での

レベル変動の原因の一つとなる.EDFA への入力強度は,信号のデータパターンや入力負荷

率に依存する.このパワー変動を緩和するためのダミーセル方式について述べる.

このプロトタイプでは,二つの符号方式を用いた.NRZ 符号は,”Mark”と”Space”がそれ

ぞれ信号レベルの高低に対応する.従って,光強度は,信号パターンに依存する.光強度の

変動を抑圧し,同符号連是億による信号強度の連続を防ぐため,伝送信号に mB/nB[14]の

ような不当方式が必要となる.mB/nB 符号では,m bit の信号を,n bit を用いてあらわす

ため,n/m 内部高速化が必要となる.Manchester 符号は,1B2B 符号とみなす事ができ,

Manchester 符号は NRZ 符号の倍の帯域が必要となるが,信号のデータパターンに関わら

ず,信号強度は常に一定となる.mB/nB 符号化には,4B5B や 8B10B などのように m を

大きく撮ると,内部高速化率が低く抑えられるが,複雑なロジックゲートが必要となる.

NRZ 符号から Mancheter 符号への変換は,信号とクロックの排他的論理和を取ればよく,

簡単なゲートで符号化が可能である.以下の議論では,以上のような符号を用いて,すべて

のパケット強度は一定であり,モジュールから出力される光強度は出力される平均パケッ

ト数に比例すると,仮定する.

図3.2.8において,TSM と WSM でのパケット選択例を示す.すべてのタイムスロ

ットにおいて,波長多重出力バッファは,アドレスが一致したパケットと不一致のパケット

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と合わせて N 多重されたパケットが入力される.アドレス不一致のパケットとは,別の宛

先に向けられたパケットあるいは,宛先のない空のパケットである.トラヒック負荷をρと

する.TSM でパケット廃棄が起こらないとすると,波長あたりρの確率でパケットが出力

されるので,平均 Nρだけ波長多重されたパケットがスロット毎に転送される.WSM で

は,アドレス一致し,かつまだ出力されていないパケットがある場合,タイムスロット毎に

最大 N 多重信号からひとつが出力される.TSM と WSM の出力パワーは,入力負荷ρに比

例するので,FA”と FA3 の入力パワーはρに従い変化する.

EDFA への入力強度の変化を補償するため,“ダミーパケット”を用いる.ダミーパケッ

トは,空きすっとに挿入されるが,上記のようなパケット出力制御を行うときに選択されず,

論理的に削除される.ダミーパケットが ORM で受信あれた場合も,削除する.図3.2.

7(d)と(c)に示すように,ダミーパケットは,宛先アドレスが不一致なパケットがある場合

は,転送される.これにより,TSM と WSM から出力されるパケット巣は常にそれぞれ N

と 1 となる.TSM と WSM の出力強度は,トラヒック分布に依存せず,一定となる.ダミ

ーパケットにより EDFA への入力が変わらないが,利得の波長依存性が若干生じる.ダミ

ーパケットは,障害検知に用いることができる.通常は TSM と WSM の出力強度が一定で

あるので,出力強度がある光強度を下回った場合は,障害が起こったと想定できる.

図3.2.8.波長パケットの選択例

(a) 波長多重バッファの入力パケット列,(b)通常の TSM 出力,(c)通常の WSM 出力,

(b) (d)ダミーパケット方式での TSM 出力,(c)ダミーパケット方式での WSM 出力

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3.2.5 システム実験結果

実験に用いた入力パケット列を図3.2.9に示す.パケット A と X は,アドレスが一致

したパケット,一致しないパケットを示す.添付番号は,入力ポート(すなわち波長チャネ

ル)と Time slot 番号を示す.光パケットは,64 timeslot 長の光パケットパターンを繰り

返す. 波長多重出力バッファは,A とラベルされたパケットのみを選択する.図3.2.

9に示すように,Time Slot1 では,アドレスが一致したパケットが4つ同時に到着する(A1-

01, A2-01, A3-01, A4-01).光ゲート GT0 と GF1 を通り,A1-01が出力される.次に GT1 と GF2

を通り,1パケット分遅れて,A2-01 が出力される.このように同時に到着したパケットは

順番に出力され,A3-01 と A4-01 も,それぞれ遅延され,別の TimeSlot で出力される.タイ

ムスロット 2 で A2-02が到着するが,このパケットは,前に入力されたパケットがすべて出

力されたあと,3パケット分遅延されてタイムスロット5で出力される.このように光ゲー

トを制御しパケットが選択されるが,X のパケットは対応ゲートをクローズすることで廃

棄される.

図3.2.9.パケット入出力ストリームと光ゲートの制御波形

このプロットタイプでは,波長チャネルが 4 であり,波長多重出力バッファに 4 種類の

遅延があるので,16 の光パスが存在する.この 16 パスの特性をすべて調べるため 16Time

slot 長のシナリオの光ゲート駆動パターンを繰り返す.ひとつの光パス経路では,4種のパ

ケットが存在する.たとえば,A4-16,A4-32,A4-48,A4-64 は GT0 と GF4 を通過する同じバ

スであるが,パケット内のデータパターンはそれぞれ異なる.出力信号は,誤り率測定器

(ERD)で測定した.

この光パスには,偏波依存性が存在する.ある光ゲートのみを常に ON として,静的な伝

送パスを設定し,偏波コントローラを使って入力光の偏波状態を変え,出力強度の変化を測

定した結果を図3.2.10に示す.測定した偏波依存性の損失(PDL)は,部品の偏波依

存性の和であり,光ゲートと EDFA が主要因となる.偏波依存性の最大値と最小値は,1.9

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dB(GT0 と GF1 のパス),0.3 dB(GT3 と GF4 のパス)であった.偏波による損失差に

は,波長依存性もあり,f4では小さく,f1では大きかった.16 パスの絶対的な出力強度の最

大値と最小値は,-17.1 dBm(GT2 と GF3 のパス),-21.0 dBm(GT0 と GF1 のパス)で

あった.系全体の損失差は 3.9 dB である.本実験では,f1の損失分布が他の波長チャネル

よりも大きいので,マッチングフィルタで波長間の調整をすれば損失差は,1.9 dB まで小

さくすることが可能である.

図3.2.10.光パスの偏波依存性

図3.2.11は,図3.2.9で示したシナリオ動作しているときのパケット列を用い

て,パケットスイッチング実験を行ったときのレベルダイアグラムである.EDFA の自然放

出光の光信号に対する影響を抑圧するため,-20dBm を下回らないように光通話路の設計を

行った.FA4 の入力光強度は,-18.1dBm であった.

図3.2.11.レベルダイアグラム(平均強度)

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ORM-NRZ による NRZ 符号化パケット受信実験を行った.ことのときの受信信号アイパ

ターンを図3.2.12に示す.10Gbit/s の高速信号で,振幅方向のレベル等化,いそう位

相方向の同期がどもによくとられていることがわかる.TX と RX のみを用いてビット誤り

率 10-12以下を得る位相マージンは,57 ps であった.一方,環境温度が 10℃から 45℃の変

化したときに,TSM の f4で測定した4つのパスの遅延変動量は 5 ps 以内であった.WSM

での遅延差も 5 ps 以下であった.従って,パケット位相ジッタは 10 ps 以内にすることが

できた.

図3.2.12.波形モニタで観測したアイダイアグラム

FA3 の前においた光減衰器により,入力光強度を変えて,受信したときのビット誤り率

を測定した.TX,FA3,ORM-NRZ のみを用いた Back-to-back 測定から,ビット誤り率 10-

12 を得る最低受光レベルは,f1 で-30.1 dBm であった.Back-to-back 測定と静的なパス測

定ではわずかにパワーペナルティがあるが,動的にパケットスイッチングしたときの測定

では,大きなパワーペナルティであることがわかる.ある偏波状態での測定結果を図3.2.

13に示す.このパワーペナルティは,主にパケット間にレベル差が生じているためだと考

えられる.このパケットレベルの差は偏波状態によって変化するので,入力光側の偏波コン

トローラを変えると,このビット誤り特性も変動する.しかしながら,この測定系から受信

器が得られる最大パワー時(可変減衰器の減衰が 0 dB),偏波状態に関係なく少なくとも

10-12を満足していることを確認した.前述したように,この 16 パス中,偏波依存性は,最

大 1.9 dB であり,パス間の絶対的レベルを調整することで,系全体の偏波依存性を小さく

することが可能である.レベルの等化を行うことで,パワーペナルティは小さくなると考え

られる.

次に,偏波に依存するレベル変動の影響を回避するために,Manchester 符号受光器 ORM

を用いて実験を行った.10 Gbit/sNRZ 信号入力を,5 Gbit/s Manchester 信号入力に変え

た以外に動作条件は同じであり,同じ偏波依存性のある通話路での実験となる.図3.2.

14に,FA3 出力を波形モニタで観測したパケット波形列を示す.信号レベルがパケット

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毎に異なっていることが観測できる.ORM-Manchester 出力のアイパターンを図3.2.

15に示す.ビット長 200 ps の中心に変化点があるのがわかる.この波形は,Manchester

符号とその半ビット遅延させた信号との差信号である.ビットの識別はビットの後半で行

う.良好なアイ開口が観測されている.信号振幅の変動に関係なく,この領域での信号レベ

ルの高低が,”mark”と”space”に対応する.図3.2.16は,識別出力である.5 Gbit/s の

NRZ 信号そして識別される.

図3.2.13.ORM-NRZ でのビット誤り率特性

図3.2.14.波形モニタで観測したパケットシーケンス

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図3.2. 15.ORM-Manchester で受信した信号のアイパターン

図3.2.16. ORM-Manchester の識別波形

FA3 の光減衰器で光入力強度を変化させたときにビット誤り率を測定した.ガードタイ

ムは,マスク用 PPG により電気的にマスクし,プリアンブルとパケットデータ領域のみを

ビット誤り率を測定した.パケットと同じ周期のクロックでオシロスコープを同期させ,複

数のパケットを重ね合わせている.ガードタイム,プリアンブル,ペイロードからなるパケ

ット形式が明らかである.常にローレベルとなっている.8 bit のフラグ“10101010”は常

に正確に識別されている.ペイロード部は,パケットにより信号パターンが異なるため,ア

イパターンとなって観測される.図3.2.17は,ビット誤り率特性を示したものである.

Back-to-back 測定は,f3の送信器と FA4,RX のみを用いた.GT0 と GT3 を通る静的パス

(static)の特性も測定している.パケットスイッチング測定(dynamic)のビット誤り率特性は

偏波状態により変化する.偏波による最良と最悪の場合を比較すると,10-12 のビット誤り

率を得るには-24.6 dBm と-26 dBm であり,1.4 dB の受光強度差があった.このビット誤

り率特性の差は,レベル変動に起因するペナルティと平均受光パワーで評価することによ

る表示上の差異がある.同じ平均受光パワーでも,パケットレベルのばらつきは,最良より

も最悪の場合が大きく,ビット誤り率特性を決める最小レベルのパケットのパワーが異な

ると考えられる.従って,レベル変動に起因するペナルティは,図3.2.14から読み取

れるビット誤り率の差より小さい可能性がある.この受信器が受光できる最大パワーは,-

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18.1 dBm であるから,偏波状態に依存せず,6 dB のパワーマージンが得られていること

がわかる.

図3.2.17 ORM-Manchester のビット誤り率特性

この実験結果から 10 Gbit/s NRZ符号化信号と 5 Gbit/s Manchester符号化信号で 3.2nm

のガードタイムでの 16 光パススイッチングが可能であることがわかる.ファイバ遅延線の

温度調整は位相同期を得るために有効である.位相ジッタは,10ps 以内に抑えられ,完全

な位相同期が得られた.しかしながら,パケットレベル変動に対する特性は異なる.偏波と

波長依存性によるパケットレベルの変動に対して,Differential 受光器が安定的な動作が得

られたが,固定式閾値の受光器では十分なシステムマージンが得られなかった.

この 16 波長チャネル用の波長多重出力バッファは,セクション2.1で示したような別

のスイッチアーキテクチャ FRONITER でも用いることもできる.16 波長チャネルへスイ

ッチサイズを拡張すると,波長依存性が大きくなる可能性がある.バッファサイズを大きく

する必要もある.したがって,ORM での光レベルの変動と位相の変動は大きくなる.

このように,NRZ 信号での通常の受信器を用いた場合と比べ,転送信号のビットレートは

半減するが,安定した特性が得られた.この実験結果は,光伝送と異なり高速なスイッチン

グに起因する光レベルの変動などの光交換固有の課題を示している.今後,波長数の増加や

光バッファモジュールの増設など,変動要因が増えるので,信号帯域を犠牲にするか,より

偏波依存性の小さなデバイスを選択し,レベルの差を精密に等化するというアプローチを

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53

取り,光通話路の設計と適切な機能モジュールを選択することで,高速なパケットスイッチ

ング通話路が実現できることがわかる.

3.2.6 まとめ

提案する波長多重分配選択型パケットスイッチにおいて,入力バッファに Traveling 型光バ

ッファを用いた構成で,パケット廃棄率を解析した.数値解析から,10-9のパケット廃棄率

を得るためには,32波長多重で負荷 0.7 の場合,30 程度のバッファサイズが必要となる.

本システム動作を確認するため架実装プロトタイプスイッチを試作した.プロトタイプは,

4x4 のスイッチ構成である.光通話路を構成するデバイスの利得や損失の波長や偏波依存性

に起因し,また通話路内経路の等長化誤差や環境温度変化により,受信器では光強度レベル

や位相の変動が生じる.光レベル変動を緩和するダミーセル方式などにより 10 Gbit/s NRZ

と 5 Gbit/s Manchester の光パケットの交換が安定に出来ることを確認した.Manchester

符号を用いた受信器は,信号帯域が倍必要であるが,ビット識別を微分係数の正負で判定す

るためレベル変動に耐性が大きいことを示した.波長多重高速光通話路として,基本的な機

能を確認し,高速大容量スイッチングの可能性を示した.

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54

3.3 波長多重を用いたノックアウトスイッチ

本節では,学位論文の主著である主著文献(9),(10)で記載している波長多重を用いたノッ

クアウトスイッチについて述べる.ノックアウトスイッチは,構成がシンプルで高速性が期

待できるパケットスイッチである.これまで電子スイッチの高速配線の難しさ,ピンネック,

放熱などによる制限条件を緩和するため,波長多重を用いたノックアウトスイッチ[15]が提

案されている.本稿では,ノックアウトスイッチで,規模拡大時にボトルネックとなるコン

セントレータの端子数拡大を,波長スイッチを用いることで解決できることを示す.この波

長スイッチとして,複数出力ポートを持つ可変波長フィルタ(10)を利用した波長多重ノック

アウトスイッチの構成を提案する.また,波長多重ノックアウトスイッチの設計上で考慮す

べき項目のうち,クロストークと符号方式の関係について述べる.

(9) A. Misawa, K. Sasayama and Y. Yamada, “WDM Knockout Switch with Multi-

Output-Port Wavelength-Channel Selectors,” IEEE J. Lightwave Technol.,

vol.16, no.12, pp.2212-2219, Dec. 1998.

(10) A. Misawa, K. Habara, and T. Matsunaga, “Frequency-channel selector with

multi-output ports for photonic ATM switches,” in Proc. IOOC/ECOC ’97, WE1A,

Sep. 1997.

3.3.1 スイッチの構成

第 2 章で示したノックアウトスイッチでは,各出力へのパケットの配信にバスを用いて,

コンセントレータを介してバッファに接続されているが,N x nN のスイッチを用いている

と解釈することができる.ノックアウトスイッチは,構成がシンプルで高速性が期待できる

パケットスイッチである.これまで電子スイッチの高速配線の難しさ,ピンネック,放熱な

どの制限条件を緩和するため,波長多重を利用したノックアウトスイッチが提案されてい

る.ノックアウトスイッチでの規模拡大時にボトルネックとなるコンセントレータの端子

数拡大のため,波長スイッチを用いて実現する.この波長スイッチとして,複数出力ポート

を持つ可変波長フィルタを用いている.

図3.3.1に提案する光パケットスイッチの概要を示す.本スイッチは,固定長のパケ

ットを切り替える N x N のスイッチである.ノックアウトスイッチのバス,到着パケット

を選択するアドレスフィルタ,バッファの最大パケット入力数に絞るコンセントレータを

光化することで,Gbit/s オーダーの高速な信号を扱うことができる.さらに,光技術では波

長多重を使った多重スイッチが構成できる.バス部には,(a)固定波長光源とスターカプラ

からなる broadcast-and-select (B&S) switch を適用すると,バスでの N2の配線が,同時に

到着した光パケットが波長多重されるため,物理的には N の配線ですむ.B&S Switch で

は,可変波長フィルタまですべての光パケットが配信されるのに対して,λ routing switch

では,光パケットはその宛先に応じた波長に変換,送出され,波長ルータ[16,17]で,入力 ai

から出力 bjへは,fi+j mod N の光パケットがルーティングされる.従って,可変波長フィルタ

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へは,宛先の一致した光パケットのみが到着するので,アドレスフィルタまでの機能を有す

る.λ routing switch では,光源でパケット毎に高速な波長変換が必要であるが,波長ル

ータの損失はスイッチサイズ数に依存したいため,分岐損がサイズに比例する B&S

Switch に比較して,より大きなスイッチサイズが実現できる.導波路型光波回路(Plannar

lightwave circuit; PLC)[17]を使った波長ルータでは,16~64 チャネルの広い波長ルータ

が報告されており,損失は 3~6dB 程度である[18].

図3.3.1.波長多重ノックアウトスイッチの構成

(a) 波長多重分配型スイッチ (b) 波長ルーティング型スイッチ

波長チャネルセレクタでは,複数のパケットが同時に到着した場合に,競合制御を行う.

図3.3.2にその構成を示す.光信号強度の一部を抜き出し,そこから各パケットの宛先

を抽出する.競合制御回路は,出力ポート数 n に対して,各波長パケットを割り当て,波長

チャネルセレクタを制御する.競合パケットが n を超えた場合は,n 個の勝ちパケットを選

択し,残りは廃棄する.勝ちパケットは,波長チャネルセレクタを介して,シェアドバッフ

ァへ転送される.

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図3.3.2 波長ルーティングスイッチの競合制御

3.3.2 マルチポート出力波長チャネルセレクタ

波長多重ノックアウトスイッチでは,波長チャネルセレクタがコンセントレータとして

機能する.波長多重されたパケットから任意の波長を高速に選択する重要な機能ブロック

である.その波長チャネルセレクタは,n 出力ポートに任意の波長を独立に選択する必要が

ある.高速スイッチングと広い波長帯域というシステム要求を満足するため,波長ルータと

光ゲートを組み合わせ,複数の出力ポートを持つ波長セレクタを提案している.半導体上の

モノリシックに構成した波長チャネルセレクタ[19]やハイブリット型の波長チャネルセレ

クタ[20]が報告されており,選択する波長チャネル数は,波長ルータのチャネル数により,

切替速度は,光ゲートにより決まる.近年,導波路型光波回路(Plannar Lightwave circuit;

PLC)により,100GHz 間隔 16 チャネル[10],50GHz 間隔 64 チャネルの[18]低損失な波

長ルータが報告されている.また,半導体レーザ型光ゲートや電界吸収型光ゲート[10]によ

り,サブ ns のスイッチングが可能である.

図3.3.3に波長チャネルセレクタの原理を示す.図3.3.3(a)に示すように,入力

された f1~fN の波長多重信号を分流器により n 分岐(N=nm)し,それぞれ subset へ入力す

る.各 subset は,それぞれ n 間隔の m チャネルから任意の1チャネルを選択する波長チ

ャネルセレクタである.入力側の波長ルータ(WR1)は分波器として,出力側の波長ルータ

(WR2)は合波器として機能し,m 個の光ゲート GR0から GRm-1から選択したい波長チャ

ネル対応した光ゲートを ON とすることで,波長チャネルの選択ができる(m=N/n で m≧

n とする).図3.3.3(c)に示すように,subset 毎の m 波チャネルグループは,すべての

subset で WR1 の出力と WR2 の入力位置が同じであるため,subset を重ね合わせること

ができる.各 subset は,WR1 への入力位置,WR2 からの出力位置が1つずつずれている.

この WR2 の出力は,n 個の光ゲート GR0 から GRn-1 で subset を選択する.図3.3.3

(a)は論理構成であり,WR1,WR2 と光ゲート GF はすべてのサブセットで共有できるた

め,図3.3.3(b)のような重ね合わせた構成(これを circuit と呼ぶ)により Subset0 か

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ら subset n-1 の n 個の subset 全体で N 波分のセレクタが構成できる.このとき,選択し

た GF からは連続する n 波長多重信号が出力され WR2 で分波される.その中から GR で1

波長チャネルを選択する.従って,m 個の光ゲート GF と n 個光ゲート GR で N 波から任

意の波長チャネルを選択できる.

図3.3.3.波長チャネルセレクタの動作原理

(a)等価回路 (b)subset を重ね合わせた構成 (c)subset の波長グループ

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上記の circuit では,WR1 の N 個の出力ポート中 m 個を用いたが,この m 個の出力ポ

ートには,n 個の組み合わせがある.つまり,WR1 の N 個の出力ポートから n 波波長多重

信号が mn 本出力されているので,circuit 毎に WR2 を用意すれば,最大 n 個の circuit を

構成できる.ただし,この構成のままでは,各 circuit の WR2 の出力ポートが同じ位置で

あり,このままでは,subset を重ね合わせたように WR2 を共有することはできない.そこ

で,図3.3.4(a)に示すように,ある circuit の WR2 への入力ポートを輪環的にシフト

すると(シフト量をδとする),合波される出力ポートも逆方向に移動する(波長ルータ WR1,

WR2 は,N 個の入出力ポートを持ち,f0~fN-1の波長チャネル信号を合分波するフィルタで

あり,入力ポート ai(0≦i≦N-1)に光を入力すると出力ポート bj(0≦j≦N-1)へは fi+j mod

N の波長チャネルが出力される).このシフトの方法として,ある circuit に対し,WR2へ

の WR2 への入力ポートを n の倍数で輪環的にシフトして接続すれば,元の circuit の結線

が n 間隔のため,circuit として使用する WR2 の入力ポートは変わらないが,WR2 への出

力ポートが全体に-n シフトする.全 cirucuit に対して,WR2 が重ならないように WR2 の

出力ポートをシフトすると,図3.3.4(b)に示すように最大 m 個の circuit で WR2 を共

有することができる.1 対の波長ルータと n(n+m)個の光ゲートで,n 個の出力ポートを持

つ波長チャネルセレクタが構成できる).

図3.3.4.複数出力ポートを持つ波長チャネルセレクタの構成

(a)各 circuit 別の WR2 での構成 (b)circuit を重ね合わせた構成

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4つの出力選択ポートを持つ 16 波長チャネルの波長チャネルセレクタの構成例を図3.

3.5に示す(N=16,m=n=4).光ゲートは,circuit あたり 8 個,総計 32 個である.各

circuit は,標準的な出力ポートに対して,δ=6,2,14,10 とシフトし,circuit 間の入出

力ポートの重なりがないので一つの WR2 を共有できる.図3.3.5の例で示したように

光ゲートを開閉すると,各 circuit から f0, f 3, f 5, f 14がそれぞれ出力され,f 15は出力ポート

が足りないため廃棄されている.表1に,光ゲートと選択される波長チャネルの関係を示し

た.各 circuit で,選択される波長チャネルと光ゲートがずれている.

図3.3.5 出力波長チャネルセレクタの構成例

波長チャネルセレクタの circuit 内において,分岐損,結合損の不均一,波長ルータのチ

ャネルに依存する損失差などにより,波長チャネル間の損失ばらつきが生じる.中でも波長

ルータのチャネルに依存する損失ばらつきが比較的大きい.波長チャネルセレクタはパケ

ットごとに切替られるので,波長チャネルセレクタの損失差がパケットレベルの変動とな

り,受光器ではそのため信号識別が困難になる.従って,波長チャネルセレクタからパケッ

トが常に同一レベルで出力されるように,チャネル間の損失等化が必要となる.

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表3.3.1.光ゲートと選択される波長チャネルの関係

GR0 GR1

0 1 2 3 0 1 2 3

GF0 0 f0 f1 f2 f3 GF1 0 f1 f2 f3 f4

1 f4 f5 f6 f7 1 f5 f6 f7 f8

2 f8 f9 f10 f11 2 f9 f10 f11 f12

3 f12 f13 f14 f15 3 f13 f14 f15 f0

G22 GR3

0 1 2 3 0 1 2 3

GF2 0 f2 f3 f4 f5 GF3 0 f3 f4 f5 f6

1 f6 f7 f8 f9 1 f7 f8 f9 f10

2 f10 f11 f12 f13 2 f11 f12 f13 f14

3 f14 f15 f0 f1 3 f15 f0 f1 f2

波長ルータでは不均一な回折効率に起因する損失差が生じる.aiから入力し,bjから出力

した場合の損失α(i,j)は,入力ポート番号を使って,

(3.27)

とあらわすことができる[21].ここで,α0 は中心ポート a(N-1)/2 から b(N-1)/2 への伝播損失,

βは規格化スポットサイズと N から決まる因子である.波長ルータと光ゲート,分流器,

合流器との結合損などを含めた波長ルータの損失α(i,j)が,入出力ポート i,j を含む項の和

であらわすことができ,クロスタームがない,すなわち,α(i,j)=g(i)+h(j)とあらわすことが

できる場合には,光ゲートの利得あるいは損失を個別に調整することで,波長チャネルによ

り異なる損失の差を等化することができる.

前述のように光セレクタ内の回路は,n個のsubsetの重ねあわせと考えることができる.

各 subset は,分流器と合流器間の2つの波長ルータを結合する構成であり,対抗する波長

ルータを結ぶ入出力ポートの位置により,subset 内の m 個の光パス間で式(1)に従って損失

差が生じる.各 subset は,分流器の出力と合流器の入力が異なるだけであるため,subset

内の絶対的損失量はすべてのパスで異なるが,その損失差は,WR1 の出力と WR2 の入力

ポートで決まるため,subset 内での相対的損失は subset の違いによらない.従って,光ゲ

ート GF で利得あるいは損失に差をつけることで subset 内の損失差が等化できる.さらに

subset 間の損失差は,WR1 の入力と WR2 の出力ポートで決まる.この subset 間の損失

差は,光ゲート GR に損失差を加えることにより等化することが可能である.このようにし

て,circuit を通るすべての波長チャネルの損失を等化することができる.

22

02

1

2

1,

Nj

Niji

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図3.3.6は,α0=0,β=0.041 としたときに,図3.3.5の構成で式(1)を使っ

て波長チャネル間の損失分布を示したものである.Subset 内での損失差が常に同じである

ことがわかる.図3.3.5では,subset 内で一番大きな損失を持つパス f0 に合わせて,

光ゲート GF に等化用損失を付加している.表2は,図3.3.5の構成で損失等化するた

めに各光ゲートに加える損失を示している.また,等化したときの波長チャネルセレクタの

全挿入損を示している.式(1)からわかるように,損失は中心ポートから離れるほど大きく

なるため,波長チャネルセレクタの分流器出力の波長ルータへの入力位置は,図3.3.5

のように中心に対象な位置を選択することが最適な構成となる.このときに,circuit 間の

損失差も最小となり,この例絵は 0.33 dB である.もし,circuit 間の等化が必要な場合に

は,circuit1,2 の合流器のあとに 0.33 dB の損失を加えればよい.ノックアウトスイッチの

コンセントレータとして用いる場合は,波長チャネルセレクタの出力は,それぞれ別の受光

器で受光されるため,circuit 間の損失があってもかまわない.circuit 間の損失差も等化し

なければならない場合には,各 circuit の合流のあとに損失を加えることで等化することが

できる.

図3.3.6.Circuit 間の損失バラツキと等化レベル

表3.3.2.等化のための GF,GR への挿入損と全損失(dB)

GF0 GR0 GF1 GR1 GF2 GR2 GF3 GR3

0 0 0 2.30 0 2.95 0.49 1.31 1.48

1 0.33 0.66 0 0.33 0 0.49 0.33 1.48

2 1.31 1.15 2.95 0.49 2.30 0.33 0 0.66

3 1.64 1.48 3.94 0.49 3.94 0 0 0

total 4.96 4.63 4.63 4.96

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3.3.3 Manchester 符号による光パケット伝送方式

光のデジタル信号転送は,光スイッチ内部では一般に識別再生を繰り返さないため,アナ

ログ処理的な課題が存在する.光伝送システムにおいても損失/利得設計や SN 設計とい

うアナログ量の評価設計が必要であるが,高速な光スイッチにおいては,光伝送にはない課

題も存在する.

光スイッチ内部では識別再生を行わないことから,最終的にルーティングされた光パケ

ットは,図3.3.7に示すようにパケット毎にレベルや位相が変動する可能性がある.そ

こで,図中に示すような光パケットフォーマットを用い,位相誤差は,ガードタイム長の範

囲で共用し,非同期にパケットを受信できるような方式を用いる.

図3.3.7.光パケットスイッチ転送におけるレベル変動と位相ジッタ

信号符号方式の選択によるスイッチへの影響を考える.広く使われる NRZ 符号で

は,”mark”,”space”に”1”,”0”を対応させるのに対し,Manchestr 符号では,”mark”,”space”

に”01”,”10”を用いる.したがって,1 Symbol の伝送に 2 bit 用いることから,変調器や受

光器などのデバイスに要求される帯域が倍必要になる反面,次のような特長がある.

(a)符号”mark”,”space”ともにビットあたりの出力パワーが同じであり,情報によりあ

ずマーク率が一定であること.これを 1B2B と解釈すると NRZ の光伝送に必要なスクラン

ブルが不要である.

(b)ビット内に必ず変化点があること

(c)a,bにより低域成分がない

受信器でのビット識別は,NRZ 符号では,閾値に対する大小で行うためレベルが変動す

る信号に対しては,動的に閾値を変えるために,自動利得制御回路など複雑なフィードバッ

ク回路が必要となり[4],高速なレベル変動への追随が難しい.一方,Manchester 符号では,

図3.3.8に示すように,立ち上がり,立下りを検出すればよく,主信号と半ビット遅延

をかけた信号とを dual pin で受光することでビット内の減算が実現でき,その正負により

ビット識別ができる[5].閾値は常に0でよいため,高速なレベル変動に有効である.NR で

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の連続符号対策が不要であり,受信器を構成するブロックを AC 結合できるなどハードの

作りやすさもメリットとなる.これにより,10 Gbit/s で 10 dB のレベル変動を許容する光

受信器が報告されている[5,7].

図3.3.8.Manchester 符号信号用の Differential 受信器

3.3.4 コヒーレントクロストーク耐性

提案する波長チャネルセレクタでは,コヒーレントクロストーク源となるパスが多いた

め,波長ルータのクロストーク量が性能を決める重要な因子となる.コヒーレントクロスト

ークは,信号成分と同じ波長チャネルのクロストーク成分であり,信号と干渉を起こすため,

信号の劣化を生じる主たる要因となる.

本波長チャネルセレクタでは,WR1,2 の出力ポートで選択される信号と同一成分のクロ

ストークがコヒーレントクロストークとなる.WR1 では,信号を除く n-1 分流したポート

からのクロストークが,さらに WR2 では,n-1 の別の circuit からのクロストークがコヒー

レントクロストークとなる.ただし,後者は,残りの回路も,選択した波長を含むポートの

GR を開けた場合が最悪ケースとなる.

波長チャネルセレクタの性能を評価するため,実験により,最悪の光ゲート制御パターン

におけるコヒーレントクロストークを評価した.実験系を図3.3.9に示す.図3.3.

5の f14を含むパスの光ゲートが ON となっている状態と等価である.光ゲートの ON/OFF

比が十分に高いと仮定する.WR1 では,入力は分流器出力だけがコヒーレントクロストー

クとなる.WR2 では,OFF の光ゲートからのコヒーレントクロストークは,その光ゲート

と WR2 によってほとんど消光されるため,無視できる.表3は,WR1,2 の消光比である.

WR1 では,入力ポート9からのクロストークが最大であり,27 dB であった.残りのクロ

ストークは 30 dB 以下であった.10 Gbit/s, 215-1 の擬似ランダムパターンを用いて,ビッ

ト誤り率を測定した.図3.3.10は,パス1とパス2のビット誤り率特性である.クロ

ストークパスがなく,WR1,2 のみを通した特性と比較して,ビット誤り率特性におけるペ

ナルティは観測されなかった.したがって,この実験では,コヒーレントクロストークの影

響は少ないことがわかる.受光量-30 dBm で,10-13以下のビット誤り率が得られた.本構

成では,波長ルータのクロストークが十分コヒーレントクロストークを抑圧していること

がわかる.

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図3.3.9.波長チャネルセレクタでのコヒーレントクロストーク耐性を評価するため

の実験系

図3.3.10.コヒーレントクロストーク有無によるビット誤り率特性

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表3.3.3.波長ルータのクロストーク量

Path 1 Path 2

FR1 (to 7) from 6 34.3 dB FR1 (to 7) from 7 34.5 dB

from 7 30.6 dB from 8 34.5 dB

from 9 27.7 dB from 9 29.4 dB

FR2 (to 5) from 6 31.0 dB FR2 (to 8) from 9 29.3 dB

from 7 30.4 dB from 12 39.6 dB

from 9 41.6 dB from 15 45.3 dB

3.3.5 まとめ

本章では,波長多重ノックアウトスイッチの構成を述べた.バス部分には,高速転送が可

能である光分波と波長ルーティングを用いている.この光バスは,物理的には N 本のファ

イバ入出力構成であるが,波長多重を用いることで,論理的には N x nN の構成となってい

る.コンセントレータとして,複数出力ポートを持つ波長チャネルセレクタを用いている.

これは,波長ルータと光ゲートで構成され,波長ルータの周回性を利用することと,波長多

重信号のまま光ゲートを用いることで,部品点数の削減を図っている.

この光パケットスイッチの構成では,複数の経路からの漏れ光に起因するコヒーレント

クロストークについて評価した.Manchetser 符号を用いた受光器は,光パケットレベルの

変動とコヒーレントクロストークへの耐性があることを,ビット誤り率特性を評価するこ

とで示した.コヒーレントクロストークによるパワーペナルティは 1 dB 以下であった.

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3.4 入出力バッファ型波長多重パケットスイッチ

本節では,2.1.2で述べた入出力バッファ型波長多重パケットスイッチについて述べ

る.主著文献(11)に示した波長可変フィルタを用いて,波長フィルタの損失および損失差を

小さくすることでスイッチ規模を大きくすることができる.

(11) A. Misawa, K. Sasayama and T. Matsunaga, “Two-output-port fast tunable

filter with low loss and low loss variation for 32 wavelength channels, “ IEE

Electron Lett, vol. 35, no. 8, April 1999.

3.4.1 スイッチの構成

入出力型波長多重パケットスイッチは,出力バッファ型の Knochout スイッチに,入力バ

ッファを付加したものであり,Knochout 型スイッチのコンセントレータの出力ポート数 n

を小さくしても高いトラヒック性能が得られる.

図3.4.1に提案するスイッチの概要を示す.スイッチ部には,波長ルーティングスイ

ッチを用い,入力および出力バッファには,電子バッファを用いる.入力されたパケットは,

その宛先に応じた波長の光に変換され,波長ルータに入力される.同時に到着した光パケッ

トは,波長多重され出力される.同時到着したパケットのうち最大n個は,可変波長フィル

タにより,n 個の出方路に分波され,光電変換後,受信後に競合制御用の出力バッファに入

力される.可変波長フィルタでのパケット競合が n を越える場合は,負けパケットは次以

降のタイムスロットで出力させるため入力バッファで待ち合わせを行う.

図3.4.1.入出力方パケットスイッチの概略図

波長ルーティングスイッチでは,自宛の光パケットのみが配信されるので,波長をモニタ

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することで,アドレスを読むことなく,光バッファの有無が確認でき,高速なルーティング

制御が可能となる.図3.4.2に制御の構成を示す.制御用に,波長ルータ出力の一部を

分岐して用いる.競合制御回路[6]は,到着パケット数が n より大きなときは,その中から

選択する波長(勝ちパケット)を選ぶ.到着数が n 以下の場合は,到着したパケット数のみ

を選択する.それぞれ n 個の出力ポートにどの波長を出力するかを選択し,可変波長フィ

ルタの光ゲートを制御する.この競合制御回路は各出回線間の同期やネゴシエーションは

不要であり,出力回線毎の分散制御が可能となる.

図3.4.2.可変波長フィルタの制御

可変波長フィルタからは,それぞれ n 個の出力ポートに 1 波長ずつ分波されたパケット

が出力されると同時に,出力バッファへの書き込みが成功した波長の光パケットのコピー

を波長多重して出力する.この波長多重光は,帰還用の波長ルータへ入力され,本の入力回

線へ戻される.従って,書き込みに成功したパケットのみが入力側の受光器に転送されるた

め,受光器では光強度の有無により,出力バッファへの転送の成否(ACK/NACK)が判定

できる(光強度がある場合は ACK).入力バッファでは,前タイムスロットで送出したパケ

ットのコピーを保持しており,ACK が受信された場合には,このパケットを消去し,次の

パケットを送出する.ACK が受信されない場合には,同じパケットを次のタイムスロット

で再送する.負けパケットは,書き込みが成功するまで再送される.

3.4.1 損失等化した波長チャネルセレクタの構成

本スイッチでは,可変波長フィルタが重要な機能デバイスとなる.これまでに複数の出力

ポートを持つ可変波長フィルタを提案してきた.図3.4.3に,N=32,n=2 の可変波長フ

光アンプ スプリッタ

勝ちパケット

のコピー

勝ちパケット

出力バッファへ

帰還用波長ルータへ

ルーティング用

波長ルータから

競合制御回路

n n N

f0

fN-1

可変波長フィルタ

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ィルタの構成例を示す.この構成では,光ゲートと波長ルータを組み合わせることで,数 ns

の高速な切替時間と,64 チャネルの広い選択帯域が得られる.波長ルータの合分波の周回

性を利用して,光ゲートを波長多重による共有ができ,デバイス数が少なくすむ(光ゲート

数は N+n2).波長多重光をカプラで分岐し,隣接する2ポート15,16に入力する.波長

ルータ1の出力は,奇数・偶数ポートの2つの組み合わせに分けることができる.偶数出力

ポート 2i(0≦i≦15)からは,隣り合う波長チャネル f 2i+15(mod N)と f 2i+16(mod N)の 2 波が出力さ

れる.このポートは光ゲート GF0,i を経て,波長ルータ 2 の 2i+1 に入力され,出力ポート

14,15からは,それぞれ f2i+15(mod N)と f2i+16(mod N)が出力される.これを GR0,j(0≦j≦15)

を用いて選択する.このように,GR0,jと GR0,jを開くと,波長チャネル f2i+1j+15が選択され

る.また,波長ルータ1の奇数出力ポート 2i+1(0≦i≦15)からは,隣り合う波長チャネル f

2i+16(mod N)と f 2i+17(mod N)の 2 波が出力される.波長ルータ 2 の 2i に接続する.偶数ポートと

同様にして,GR1,jと GR1,jを開くと,波長チャネル f 2i+1j+16が選択される.奇数組・偶数組

から構成される可変波長フィルタをそれぞれ circuit0.1 とする.このように f 0~f 31の波長

多重光から独立に任意の 1 波を選択する2つの回路が構成できる.図中では,f 0, f 4, f 21, f

31の4つの光パケットが同時到着した例を示している.黒くハッチした光ゲート GF,GR を

選択すると,v21, f 4が 2x1 カプラを経て,ACK として返送される.f0,f31 の負けパケット

は,次のタイムスロットで入力バッファから再送される.

図3.4.3.可変波長フィルタの構成例

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図3.4.3の可変波長フィルタの出力ポート数は,n=2 である.文献[13]に示すように,

この出力ポート数は,自由に設定することができる.第 2 章で示したように,n が大きいほ

ど,スループットはよくなるが,n=2 とすることで実装上有利な点がある.n =2 の場合に

は,偶数ポートと奇数ポート間を交代した単純かつ周期的な交差配線を行えばよく,半導体

や Si 上に作りこむ光配線としても,損失を増やさず,かつ,配線の等長化も簡単に行える.

カプラや波長ルータなどの Passive デバイスと Active デバイスである光ゲートをモノリシ

ック実装[19]あるいはハイブリット実装[20]する技術を簡単に適用することが可能となる.

また,電子バッファは,n 個の FIFO と n x1 セレクタで構成されるが,n が大きいほど,

セレクタの構成が難しくなる.また,2つの FIFO に保存されたパケットを順序逆転したい

状態管理するための制御,競合制御回路での勝ちパケットのチャネル間での公正性を保つ

選択制御など,n が少ないほど状態数が少なくなるため制御が容易になる.

図3.4.3のフィルタを使った場合のレベルダイアを図3.4.4に示す.波長ルータ,

光ゲートの損失を,それぞれ 5 dB,0 dB としている.カプラの分岐損は n によって異なる

が,損失の点からも n が小さいほうが有利である.可変波長光源からの出力を 0 dmB とす

ると,パケット受信器では,-21 dBm となり,ACK の受光器では,-26 dBm となる.核デ

バイスでの入力強度は,パケットのルーティングにより,波長多重数が異なる.図3.4.

4中には,1 パケットあたりと最大波長多重数でのレベルダイアを示している.ルーティン

グ用波長ルータの出力では,最大 N パケットが到着するため,-5~-10 dBm と大きくレベ

ルが変わる.光アンプや光ゲートなどのアクティブデバイスでは,入力強度によって利得・

損失が変わるために,できるだけ入力強度の変動が少ないほうがよい.可変波長フィルタの

光ゲート GF に入力される光は,最大で n 波多重光であり,GR では,必ず 1 波以下であ

る.従って,n が小さいほど,光ゲートの入力強度に対するダイナミックレンジは小さい.

n =2 では,GF は-13~-10 dBm,GR は-18 dBm の入力を考えればよい.

波長フィルタには,損失が小さいこととチャネル間の損失さが小さいことが要求される

しかしながら,波長ルータでは,回折効率の不均一性のため入出力ポートに依存して,波長

ルータの損失が異なる.ガウス分布状の強度分布を示し,中心ポートから離れるに従い,周

辺部は2~3dB 損失が増加する.この損失を等化する方法が提案されているが[21],2~

3dB 程度損失が増加する.

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図3.4.4 レベルダイアグラム

合分波器として波長ルータを使う場合には,FSR(Free spectral range)の大きな波長ルー

タを用い,損失の小さな中央部のみを用いる.このように波長ルータの FSR の中央のみを

用いると波長チャネルの周期性を前提として波長フィルタの構成が使えないが,このよう

な波長ルータを用いても光ゲート数のほとんどを波長多重による共有が可能であり,少な

い光ゲート数で複数の出力ポートを持つ可変波長フィルタが構成できる.

図3.4.5に2出力ポート 32 チャネル可変波長フィルタの構成を示す波長多重光をカ

プラで分岐し,隣接する2ポート k,k+1 に入力する.波長ルータ 1 の出力ポート i からは,

隣り合う波長チャネル fiと fi -1の2波が出力される.波長ルータ1の出力は,奇数・偶数ポ

ートの2つの生み合わせに分けることができる.すなわち,1~33 の奇数ポートからの波長

チャネル f 0~f 33 と,2~32 の偶数ポートから f 1~f 32 に分けられる.波長ルータ1の奇数

組を波長ルータ2へ1つ大きなポートへ,偶数組を1つ小さなポートへ接続する.ある奇数

ポートの波長チャネル fiと fi -1は,波長ルータ2の出力ポート k-1,k へ分波される.同様に,

ある偶数ポートの波長チャネル fiと fi-1は,波長ルータ2の出力ポート k+1,k+2 へ分波され

る.したがって,奇数組と偶数組それぞれにおいて,光ゲート GF と GR の開閉を選択する

ことで,独立に任意の 1 波を選択することができる.奇数組・偶数組から構成される可変波

長フィルタをそれぞれ circuit1,2 とするこのように f 1~f 32の波長多重光から任意の1波を

選択する2つの回路が構成できる.circuit1 では,GF1,jと GR1,1を ON すると f2j-1が,GF1,j

と GR1,2を ON すると,f 2j-2が選択される.ciucuit2では,GF2,jと GR2,1を ON すると f 2j-

1が,GF2,jと GR2,2を ON すると,f2jが選択される(GR1,1と GR1,17のみ波長多重光ではな

く,1 波を扱う光ゲートである).

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図3.4.5.FSR の大きな波長ルータを用いた可変波長フィルタの構成

ただし,波長ルータ1の1と 33 からは 1 波からしか分波されないので,GF1 の光ゲート

数は circuit1よりも多い 17 個必要となる.このように f 1~f 32 の波長多重光から任意の 1

波を独立に選択する2つの回路が構成できる.たとえば,図3.4.5の黒くハッチした光

ゲートを選択すると,circuit1,2 からそれぞれ f2,f31が選択される.波長ルータの周期

性を用いた構成と同様に光ゲートは波長多重により共有され,総数は1つ多くなるだけで

ある.

カプラや波長ルータなどのパッシブデバイスとアクティブデバイスである光ゲートをモ

ノリシック実装[8]あるいはハイブリット実装[9.10]する技術を簡単に適用することが可能

となる.偶数ポートと奇数ポート間を交代した単純かつ周期的な交差配線を行えばよく,半

導体や Si 上に作り込む光配線としても,損失を増やさず,かつ,配線の等長化も簡単に行

える.

図3.4.6 に circuit2の透過スペクトルを示す.EDFA の自然放出光を白色光源として

入力し,波長ルータ1と波長ルータ2を光ファイバで接続し,手動で切り替えて波長ルータ

2出力で透過スペクトルを測定した.この波長ルータは,1551.72 nm を中心に FSR が 6400

GHz,波長間隔 100 GHz である.circuit1,2 ともに,選択された波長チャネルの最大,最

小損失は,-12.1dB,-10.1dB であり,波長間の損失偏差が 2dB に抑えられている.以上に

より,本構成により,光ゲートが少なくすみ,選択波長の損失および損失偏差の小さいフィ

ルタが構成できることを示した.

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図3.4.6.32 チャネル可変波長フィルタの透過特性

(a) circuit 1, (b) circuit 2

3.4.3 ACK によるフィードバック制御

トラヒック特性上の入出力バッファ型スイッチは高いスループットを持つが,高速スイ

ッチの場合には制御に要する時間が実際の性能を決める.本提案の構成では,ACK/NACK

の Turn around time(TAT)で,パケットスイッチの処理能力が決まる.本スイッチでは,

パケットを送出してから,制御回路は ACK/NACK が帰ってくるまでの時間が1タイムス

ロットに収まらなければならない.パケットの送出から ACK 返信までの時間の要因分析を

図3.4.7に示す.まず,入力バッファモジュールでは,前タイムソロットでの ACK/NACK

から,今タイムスロットで送出すべきパケットを選択する.NACK の場合には,入力バッ

ファにメモリしていたパケットを再送する.ACK の場合は,メモリパケットを消去し,次

のパケットを送出する.入力部では,送出するパケットの宛先を読み,それい従って発信波

長を決定し,可変波長光源の波長を制御する.アドレス抽出とそれに対応した波長の決定は,

入力バッファに入力するときに,あらかじめ演算子,送出パケットとともにバッファに入力

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しておけば,この時間を短くすることが可能である.可変波長光源のチューニング時間は,

DBF などの多電極レーザを用いた場合,数十 nm 以上必要となり問題となる.再送パケッ

ト用レーザと次にパケット用のレーザを用意し,前のタイムスロットを使ってあらかじめ

発信準備をしておくなどの工夫が必要である.あるいは,DFB アレイとスイッチを組み合

わせた集積型光源などチューニング時間の短い装置を用いることが必要である.

出力部では,競合制御の制御時間などが問題となる.図3.4.7に示したように,可変

波長フィルタの制御は分岐した光強度から到着パケットの有無を判定し,その中から勝ち

パケットと負けパケットとを選択する.優先波長を決定する競合制御回路が高速に動作す

ることが必要となる.高速加算器として running adder や高速なアルゴリズムとして,分

散アービトレーション[22]などを用いてできるだけ制御時間を短くする必要がある.

さらに,入力部と出力部でのパケット,ACK の配信に要する伝播時間が加わる.光パケ

ットの伝播遅延を考える.波長ルータはm,数 cm 角のデバイスであり,波長ルータ自体の

遅延量は非常に小さい.また,波長フィルタは,波長ルータとカプラ,光ゲートからならう

が,半導体デバイスとのハイブリット実装技術や半導体モノリシック集積技術を用いれば,

回路全体を集中的に実装することができ,遅延時間を小さくすることができる.従って,入

出力部を結ぶ光ファイバ結線の遅延がもっとも大きな伝播遅延となる.1 m 長の光ファイ

バで,5 ns となる.ファイバアンプ(EDFA)を用いると,約 50 ns 程度の遅延となり,非

常に大きな遅延となるが,図3.4.7のように制御回路での制御時間が大きい場合は,待

ち合わせ長遅延部分に光ファイバアンプを用いることも可能である.

図3.4.7.制御時間の要因分析

t

t

入力

出力

出力パケット(波

長)の選択制御時間

選択パケット

の制御時間

タイムスロット

伝播遅延時

発信波長チューニング時

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3.4.4 まとめ

入出力バッファ型波長多重パケットスイッチの提案を行った.本スイッチは,パケットの

ルーティングに加え,ACK の返信に波長多重光を用いることを特徴とする.この構成で,

重要な可変波長フィルタの構成を検討し,出力ポート数2とした場合,トラヒック特性上の

スループットに制限があるものの,実装上有利であることを示した.入出力バッファ型スイ

ッチは,フィードバック系を持つために,ACK の返信までの遅延時間がスイッチのスルー

プットを決定する.その要因を分析した.

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3.5 波長多重パケットスイッチの構成の課題

前説まで波長多重を用いることで,内部高速化が不要なパケットスイッチの構成をしめ

した.波長多重技術を高速信号のルーティング制御に用いる.物理的構成が N での論理的

に nN が容易に実現でき,少ないハードでスイッチを構成することができる.

Broadcat&select 型スイッチは,光ファイバ遅延線バッファを用いたことが特徴である.

制御が簡単でスループットも高いが,スイッチ規模が大きくなるほど,光ファイバ遅延線の

ハード量が大きくなることが課題となる.波長多重ノックアウトパケットスイッチは,出力

部に複数出力ポートを持つ可変波長フィルタを用いることが特徴である.バッファに電気

を使うためバッファサイズの大規模化は比較的容易であるが,スループットの向上やトラ

ヒックの偏りたに対処するためには,コンセントレータの出力ポート数 n を大きくする必

要があり,nx1 の電気バッファの実装が課題となる.入出力方波長多重パケットスイッチ

は,この n が小さくすむが,入力バッファへの ACK のフィードバック制御がスループット

を決定する.したがって,ネットワークにおいてどのようなトラヒック条件で用いるか,要

求されるスイッチサイズはどの規模かという点を考慮してパケットスイッチの構成を選択

する必要がある.

このような波長多重光パケットスイッチの光通話路実装の課題としては,構成デバイス

に波長や偏波依存性による損失利得の差があるため,通過する経路により損失の差が生じ

る.方式上の工夫としてダミーセルの挿入がある.また,経路の差や環境温度の変化などに

より伝播時間にも差がでる.ビット同期には光通話路の等長化が必要である.転送信号レー

トにあわせた高い精度が必要となる.従って,パケット受信器においては,通常の光伝送と

違い,パケット毎に時間同期と光の強度レベルが異なる光パケットを受信し,復号する必要

がある.

波長チャネルセレクタの構成では,様々な波長多重光から任意の一波を選択する回路が

必要であるが,波長ルータと光ゲートの組み合わせで,波長多重光のままゲートすることで

Acitve デバイスである光ゲート数を削減し,経済化を図れることを示した.この構成にお

いても,損失レベルを等化するため,中心ポートから遠くなるほど損失が大きくなる波長ル

ータの特性を用いて損失を均一化する手法について述べた.このとき同じ光信号を分岐す

るために,光ゲートの漏れ光がコヒーレントクロストークとして作用する光ゲートの消光

比を大きくし,Machester 受光器により,この影響のペナルティを削減した.

波長多重光遅延線バッファ,波長セレクタ,Manchester 符号受光器などの要素技術を組

み合わせ,損失,利得を等化するための手法を組み合わせることで,波長多重パケットスイ

ッチが構成できることを示した.

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3章の文献

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4 メトロ網向け仮想エッジアーキテクチャと光スイッチング方式

本節では,主著である文献(12)で提案した仮想エッジと光バーストスイッチング方式に

ついて述べる.メトロ網では,多くのアクセス網からのトラヒックを効率的に集線する必要

がある.このユーザのサービスフローの受け付け処理はエッジルータで行われるが,多様な

ネットワークサービスを受け付けるための高位レイヤ処理の負荷が重い.また,メトロ網の

帯域についても需要に応じて動的に割当てることで経済的なメトロ網が期待されている.

これまで高位レイヤ処理に仮想マシンを用い,メトロ網の帯域を有効に使うため帯域可変

パスを利用することで需要に応じたネットワーク資源再分配を行う.資源再分配の方法と

して仮想マシン移動を行うが,光スイッチング技術によりインサービスでの経路切替を実

現する.この高速な資源再分配を行う制御方式を持つ仮想エッジアーキテクチャについて

述べる.

(12) A. Misawa, Konomi Mochizuki, Hideo Tsuchiya, Masahiro Nakagawa, Kyota

Hattori, Masaru Katayama, and Jun-ichi Kani “Proposal on Virtual Edge

Architecture Using Virtual Network Function Live Migration with Wavelength

ADM”, Proc. APCC2015, pp. 331-335, Oct. 2015.

4.1 メトロ網の課題

コンバージェンス NW により,固定と移動のトラヒックの統合が進み,インターネット

接続や IP 電話,VoD(Video on Demand)やストリーミングなどトリプルプレイをはじめと

して様々なメディアサービスが提供されている.加入者との UNI(User-Network Interface)

や NW 事業者間の NNI(Network -Network Interface)には,キャリア NW が提供するサー

ビス機能が集中的に配備されている. UNI エッジにおいては,サービス毎のセッション受

付,プロトコル変換やユーザの課金処理,セキュリティ,ユーザ間の公平性,サービスメデ

ィア間での帯域など最適な資源配分や優先制御,NW を防御するための機能など様々な機

能がある.たとえば,VoIP での SIP(Session Initiation Protocol),インターネットアクセ

スでは PPPoE,マルチキャスト配信では,PIM(Protocol-Independent Multicast)や

MLD(Multicast Listener Discovery)など制御プロトコル終端点となっている.ユーザやサ

ービス間の公平性や優先制御のため DiffServ(Differentiated Services)が実装さている.課

金も定額課金,パケット数や時間のよる従量課金,コンテンツ課金など多くの課金方式があ

る. DoS(Denial Of Service)攻撃を発見と対処,ペアレンタルコントロールサービスのた

めの URL(Uniform Resource Locator)フィルタ,バンドイータである P2P トラヒックを制

限するための DPI(Deep Packet Inspection)機能などもサポートされる場合もある.近年,

メディアサービス,速度・帯域の多様化に応じて,個々のユーザの要求も細分化しており,

画一的なサービス提供ではなく,きめ細やかなサービス設定が要求されており,エッジ機能

はまずます複雑さを増している[1].

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79

図4.1に示すように,従来のアクセスメトロ NW 構成では,複数の 10G-EPON[2]から

のトラフィックが集約され,L2/L3 処理をするエッジルータへ固定的に接続されている.ア

クセスNW網内およびNWサービス処理を行う拠点を結ぶメトロ網は,スター型NWを階

梯構成に接続した集線網の構成のため,選択可能な経路数は少なく,トラヒック需要が一部

のエリアに偏ったホットスポットが生じた場合,トラヒックが平均的に分布していれば収

容できても,ホットスポットエリアでは,NWリソースが部分的に不足する事態が考えられ

る.地理的に広範囲に多くのアクセスポイントを結ぶために,投資が非常に大きく,単純に

帯域を増やすのではなく,できるだけ全体のNW設備を有効に利用し,トラヒック分布の不

均一性に対応する必要が生じる.そのため,地理的な加入者の分布の不均一性,加入退会に

よる加入者数の変化や昼夜での利用の変化やイベントの発生による要求トラヒックの変化

に対し,網全体では十分な設備があるにも関わらず,局所的に設備が足りない状況が生じう

る.

図4.1.キャリア網におけるメトロ集線網の資源競合

一方,データセンタでの仮想化技術利用の高度化に伴い,アプリケーションサーバの仮想

化にとどまらず,x86 サーバで 10 Gbit/s IF でのワイヤーレート性能を持つ仮想スイッチ,

仮想ルータなども利用されている.このようなサーバ仮想化技術を転送機能に利用する

NFV[3]が注目されている.メトロ網における課題に対応するため,従来のキャリア NW で

ルータ,L3 スイッチなどのハード装置で構成されるエッジ装置に画一的に配備されている

様々な内蔵機能を仮想化し,効率よくハード資源を利用することで事業のコスト削減を実

キャリア NW

PON

OLT

ビジネスエリア

OLT

メトロ集線網

アクセス

サービスエッジ

帯域競合 集線 SW

資源不足

住宅エリア

他キャリア・

ISPNW

コア網

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現ができるようになる.また,ハード資源追加なしに仮想機能の追加によりサービス開始時

間を短縮したり,サービスチェーニングのように,ユーザ毎に自由に機能を組み合わせるこ

とでサービスの多様化を図れると期待されている[4].

このようにサーバ資源の再配置の手法として,ライブマイグレーションが有効であるが,

加入者エッジへのトラヒックフローは,インターネット上のサーバや通信する他のユーザ

とのエンドエンドトラヒックに対して,途中でパケットやフローへの作用するものであり,

最終宛先までのフローを途絶えさたり,滞留させずに,処理することが求められる.パケッ

ト断時間が長くなると,通信サービスに使うプロトコルによっては,サービスシステムを保

護するためにフローを切断してしまうため,ユーザからみると通信サービス自体が停止し

たようにみえてしまう.また,通信サービスの種類に応じて,ユーザが感じるサービス品質

を損なわないのために必要な帯域が異なるため,サービスに必要な帯域をユーザフロー毎

に与えなければならない.

メトロ網やアクセス網における光ネットワークシステムとして,帰属先を波長選択で変更

する WDM/TDM-PON[5, 6]や波長より細かい粒度で ADD/DROP を行う P-OADM[7]など,

PON エリアや携帯無線基地局からサービスノードを収容するビルまでのメトロエリアでの

光ネットワーク方式が議論されている.さらに,波長毎のリンク容量可変にするエラスティ

ックパス[8]など波長資源の広帯域性を帯域の容量変更に利用する技術が提案されてきてい

る.このような可変帯域光パス技術を用いて,共有帯域資源を需要に応じて割り当てること

ができれば,全体の帯域容量を効率的に用いて経済的なネットワークの構成が期待できる.

しかしながら,これらの技術は Point-to-point のパスに対する帯域可変技術であり,資源再

配置による仮想マシンの移動に伴う,インサービスでのライブマイグレーションを実現す

る高速切替と NW資源を効率的に利用とサービス需要を両立するための高速な帯域資源の割

り当てができる光スイッチングネットワークが必要である.本章では,これらの仮想エッジ

アーキテクチャと光スイッチング方式について述べる.

4.2 仮想エッジアーキテクチャと光バーストスイッチング

図4.2に TDM/WDM 共有リングを用いた仮想エッジネットワークの概要を示す.10G-

EPON の光回線終端装置(OLT; Optical Line Terminal)は,加入者を収容する OLT,仮想

エッジ装置 ES,Gateway が Add/DropSW を介して TDM/WDM リングに接続されるシン

プルなトポロジーである.リング状の共有帯域を装置間の論理パスで共有し,仮想エッジリ

ソースの最適化とは独立に NW 帯域の割当が可能となる.

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81

図4.2.エッジ仮想化の概要

提案する仮想エッジ方式では,各 OLT に対応する仮想 NW 機能(VNF; Virtual Network

Function)[9-10]をおくことを特徴としている.すなわち,OLT1 のトラヒックは VNF1 で

のみ処理され,他の VNF へは接続されない.エッジサーバには,複数の VNF が収容され

るが,それぞれの OLT と VNF との接続フローは 1 対 1 のシンプルな接続関係となり,各

エッジサーバは,1 対多のスター構成となる.

VNF が必要とする帯域,計算量資源は,VNF に対応する OLT が収容する加入者数に依

存する.現状の PON では,16~64 分岐して ONU に接続することができるが,実際の加

入者はこの最大分岐数に達しているとは限らず,OLT ごとに加入者数はばらついている.

その加入者が Web ブラウジングやストリーミング視聴,VoIP での通話など NW サービス

を利用しているかどうかで ES での必要な処理資源や帯域がかわるため,資源割当は,NW

サービスの保留時間オーダーでも見直す必要がある.

ある ES では,収容している複数の VNF に対して,加入者やサービス利用によるトラヒ

ックの増減に応じて,ES が物理的に持つ CPU での計算量資源や NIC 帯域を分割し,仮想

的な vCPU や vNIC 帯域を VNF へ割り当てることで設備の利用効率を上げる.あるエッ

ジ装置の資源量が不足する場合には,エッジ装置に収容されている VNF の一部を他のエッ

ジ装置に移動(ライブマイグレーション)する.

TDM/WDM リングでは,全 OLT と ES が接続されており,装置間のフローに必要十分な

帯域割当てを行う.多くの装置間でサービス利用の変化による帯域需要の変化に追随でき

る高速な帯域割当制御が必要である.この帯域割当に光バーストスイッチングを用い NW

の帯域資源を共有する可変波長帯域パスを実現する.4.3.1 節で双方向に光バースト転送方

式を用いた光 L2SW-NW を使った仮想エッジアーキテクチャを,4.3.2 節では,分散的にカ

プラを配して,下りを Broadcast-and-select で,上りをバースト転送する光転送網を使っ

エッジ装置

コア NW、

ISP Gate way

router

OLT OLT OLT OLT

TDM/WDM共用リング

端末

サービスフロ

仮想マシン

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82

た仮想エッジアーキテクチャについて述べる.NWサービス処理資源管理層と帯域管理層

に分け,それぞれ独立に動作させることで高速な帯域制御を実現する.また,ライブマイグ

レーションに応じて,フローのルートを切り替える必要があり,サービスフローを中断させ

ないインサービスのライブマイグレーションを実現するために高速なフロー切替が必要と

なる.あらかじめ切り替え先の光パス設定に資源を割当てるが,帯域資源を効率的に使うた

めの制御方法について述べる.

4.3. 光 L2SW-NW技術

4.3.1 仮想エッジアーキテクチャのコンセプト

光 L2 スイッチ網[11-14]は,TDM/WDM リング状の波長とタイムスロットを周期 T 毎に

パスへ割り当て量を変えることで可変帯域を実現する物理網である.図4.3に,光 L2SW-

NW を用いた仮想エッジネットワークの物理構成を示す.10G-EPON の光回線終端装置

(OLT; Optical Line Terminal)は,加入者からのトラフィックを集約する.トラヒックは,

OLT からエッジサーバ(ES)へ集線され,GW を介してコアバックボーンに転送される.

リングの帯域は,全パスで共有される.ES と OLT は TDM/WDM リングと ADM を介し

て,接続される.

図4.3.光 L2NW を使った仮想エッジアーキテクチャ

各 OLT とエッジ装置間では,OLTV→VNF の上り方向と VNF→OLT の下り方向の要求

帯域はユーザの利用状況で変動する.OLT と VNF 間の通信帯域の制御は,この光 L2スイ

ッチ網のレイヤで実施する.ES と OLT のバースト送受信器は,波長タイムスロット信号

を使った可変帯域パスを送るための波長可変レーザを持つ.波長数 L は,光 L2SW-NW の

Edge server

・・・ OLT OL

T

OLT

Traffic demands

T Burst signal

T

W(t)

Wavelength number: L

Ring bandwidth: Bring

ADM

・・・

λ1

λL BM

BSR

BSR

Tunable LD

GW To core backbone network

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容量を決める.リングの帯域 Bring は,全 OLT と ES で共有され,それぞれ帯域 B の NIC

を持つ.帯域管理(BM)は,それらのパスの帯域割当を行う.OLT,エッジ装置から出力

されるパケットは,対地パス毎に設定される仮想キューにバッファリングし,そのトラヒッ

ク量をある時間間隔毎に帯域管理サーバへ申告する.全 OLT および VNF からの要求帯域

は,帯域管理へ通知され,エッジ装置および OLT 物理帯域および TDM/WDM リングの物

理帯域を制約条件として,要求帯域を満たすよう波長とタイムスロットを,動的帯域割当

(DBA; Dynamic Bandwidth Allocation)制御計算に基づき,TDM/WDM リングで衝突し

ないように波長とタイムスロット位置が指定される.各 OLT,エッジ装置のバースト送信

器からは,指示されたタイムスロットに相当するタイミングで指定された波長のバースト

信号を送信し,ADD/DROP スイッチを介して,TDM/WDM リングに重畳され,宛先の装

置へ転送することで,可変帯域パスが実現される.

図4.4に,VNF と OLT の論理構成を示す.このネットワークでは,10Gbit-NIC を持

つ ES が N 台で OLT が M 台あるとする.提案する仮想エッジ方式では,各 OLT に対応す

る仮想 NW 機能(VNF; Virtual Network Function)をおくことを特徴としている.すなわ

ち,VNF は OLT と同数の M 台ある.OLT1 のトラヒックは VNF1 でのみ処理され,他の

VNF へは接続されない.エッジサーバには,複数の VNF が収容されるが,それぞれの OLT

と VNF との接続フローは 1 対 1 のシンプルな接続関係となり,各エッジサーバは,1 対多

のスター構成となる.10G-EPON の収容加入者数は,0 から最大分岐数の 32~128 となる.

VNF は比較的小さな加入者数しか収容していないため,マイグレーション時間が短く,イ

ンサービスでのライブマイグレーションが実現される.

図4.4.提案エッジアーキテクチャの論理図

OLT からのサービストラヒックは,対応するサーバにのみ伝達される.これを Active

Flow と定義する.ライブマイグレーション用の予約パスや故障回復のためのスタンバイパ

スを Potential Flow と定義する.VNF がライブマイグレーションや障害回復のために移動

Active flows

Reservation flows Standby flows

Larger subscriber OLT: K Smaller subscriber OLT: M-K

Edge server: N

Live migration VNF Non-live migration VNF

・・・ ・・・ ・・・ ・・・

OLT: M

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した場合,Active flow の転送先が変わり,Potential Flow のうち一つが Activate され,元

の Active Flow が Potential Flow となる.VNF と OLT が 1 対 1 に対応するため,これら

の Flow は Point-to-point となり,分岐はないため,インサービスでのライブマイグレーシ

ョンでのシンプルで高速なリルートが可能となる.

重要なポイントはどの VNF を移動させるかである.本提案構成では,収容加入者数の多

い VNF のみをライブマイグレーションの候補とし,その数を K とする.収容数 K 番目ま

での OLT は Active Flow で対応する ES に接続され,ライブマイグレーションに備えて N-

1 の予約フローを他の ES に向ける.残りの M-K の OLT には,収容する ES への Active

flow と一本の予備フローを設定する.ライブマイグレーションできる VNF を制限すること

により,フロー数総数を減らすことができる.

4.3.2 資源再割当制御

図4.5に資源割制御の構成を示す.サービス計算制御(SCC)は,ES 資源を管理し,

VNF の①を結締する.SSC は,K 番までの収容数の大きな VNF を選定し,ES への収容を

決定する.同時に稼動している VNF がライブマイグレーションや障害回復のための移動位

置を決定しておく.光 L2SW-NW の BM には,ES と OLT 間のパスを設定するため,Active

flow と Potential flow の対応を決定する.BM は各 BSR に仮想キューを設定する.ライブ

マイグレーションおよび障害回復のため Active flow と Potential flow に対応する全てのパ

スを,ES と OLT 間に事前に設定しておく.

図4.5.SCC と BM による ES 資源と BSR の制御方式

ライブマイグレーションする VNF 候補は,加入者の新規加入や廃止のよる加入者数が変

化してときに選びなおす.ネットワーク事業者は,深夜帯などのユーザトラヒックが流れ血

・・・

OLT BSR

Edge server

BM

Active VNFs

SCC

Active path

Potential VNFs

OLT OLT

BSR Virtual queue

Path bandwidth

& forwarding

control

ES resource control Live migration notice

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85

内時間に,この作業を行う.

ES 内には複数の VNF が収容されている.サーバの資源は,ES 内部のサーバ資源再分配

を行う.各 VNF は,サービストラヒック処理に必要な計算機資源と帯域資源を SCC へレ

ポートし,それに基づいて,仮想的な vCPU や vNIC 帯域を VNF へ割り当てる.ES で

は,収容している複数の VNF に対して,加入者やサービス利用によるトラヒックの増減に

応じて,エッジ資源が物理的に持つ CPU での計算量資源や NIC 帯域を分割し,ことで設

備の利用効率を上げる.

ある ES の資源量が不足する場合には,SCC によりエッジ装置に収容されている VNF の

一部を他のエッジ装置に移動(ライブマイグレーション)し,BM へ通知する.VNF を収

容している ES と OLT 間のパスのみが Active であり,その他の論理パスは,ライブマイグ

レーションや障害回復のための予約されているのみである.VNF の移動が起こった場合に

は,BM は,それに対応する ES と OLT の BSR へ,仮想キューを新たに Active になった

パスへ変更するように指示をする.パスが 1 対 1 の対応のため,移動先のパスを Activate

して,ある Active パスから切り替えるシンプルな制御により,ライブマイグレーション時

の高速スイッチングを実現する.

VNF からの Active flow は,BSR の対応する仮想キューへ送られる.ユーザの利用に応

じて,上り,下りの必要な帯域は変化する.この帯域の制御は,Active Flow に対してのみ

光 L2SW-NW レイヤでの BM で実施される.

BM は,各 BSR の仮想キューからの要求帯域を集め,TDM/WDM リングネットワークの

物理帯域を,それぞれの Active path への割当帯域量を決定し,TDM/WDM パスへマッピ

ングされる.仮想キュー毎に,TDBA の時間幅でのトラヒック要求を観測する.OLT と ES

からの全ての帯域要求は,光 L2SW-NW の BM の周期的に集められ,TDM/WDM リング

内で衝突が起こらないように,それぞれのパスのタイムスロットと波長を指定する.これを

DBA 制御と呼び,もともとは PON で使われる制御方式である[15].各 BSR は,指定され

たタイムスロットと波長で光のバースト信号を送出する.それらの信号は,ADM を介して

TDM/WDM リングで重畳され,宛先の BSR まで送られる.各 BSR と ADM は,BM から

の制御信号により,タイムスロットの位置を同期させている.図4.6に示すように,フレ

ーム時間 TFR 内で指定された位置のタイムスロット信号は,TDBA の間繰り返す.タイムス

ロット幅をTTSと記す.各パスへのタイムスロットと波長の指定は,TDBA毎に変更される.

このようにして,光 L2SW-NW での可変帯域を実現している.

予約パスおよび予備パスは,移動する前は VNF がないため,潜在的なパスである.それ

らの潜在パスの仮想キューにはトラヒックを発生したに.そのため,DBA 制御は不要であ

る.VNF がライブマイグレーションされた場合に,別の ES に収容されるが,共有バスで

の構成は,予約パスから現用パスへ変更される.DBA 制御は,前の Active パスから現在の

Active パスに対して実施される.

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図 4.6.Active パスへのタイムスロットと波長の割り当て

BSR 制御回路と高速可変波長レーザを用いて,波長とタイムスロットの高速スイッチン

グの実験について報告している[12-14].光 L2SW-NW の BSR は,10GE-PON と同様なも

のでるが,波長制御をサポートしている.図4.7は,10GE-PON の実験評価用の,BSR

用に改造したものであるこの回路では,TDBA =100 ms,TFR=1 ms,TTS=1 μs に設定し

ている.10k-bit のタイムスロットセルが,TDBAの間 100 回転送される.これが最小の伝送

単位である.この制御回路は,もともと PON の実験用のため,16 仮想キューしか持って

いないが,メモリを増設し,250 キューまで拡張することができる.広帯域で高速スイッチ

可能な可変波長送信器が必要となる.本稿では,35 nm の波長レンジを持つ高速波長可変

レーザを用いている[16].波長間隔 50GHz は約 0.4 nm 間隔に相当するが,L=90 チャネル

を得られる.

図4.7.BSRの評価用ボード

4.3.3 VNF の移動

評価する NW モデルとして,10G-EPON が M=2500 台あり,10 Gbit/s の NICを持つエ

ッジ装置 N=100 台で構成される NW を想定する.ライブマイグレーション対象とする VNF

数は K である.10G-EPON は最大 32 の加入者を収容できるが,加入率 1~32 加入のばら

つきがある.10G-EPON に対応する VNFはエリア全体で OLT と同数の 2500VNF あり,そ

TDBA

T

FR

λL

λ1

λ2

λ3

TTS

1

2

3 ・・・

・・・

Paths

Wavelength

Time slot

4 slots 3 slots

7 slots

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の加入者数分布は 10G-EPON と同一である.全エッジ装置 N=100 の入出力 IF からの平均

帯域利用率が 0.5(10 Gbit/s 回線で平均 5 Gbit/s,OLT からは 200Mbit/s)とすると,

TDM/WDM リングの総帯域 Bring は 500G 容量リンクであればよく,波長数 L は 50 波とな

る.

図4.8に OLT あたりの収容加入者とその OLT(VNF)数との対応を示す.10G-EPON

の平均で 16加入(加入率 50%)であったとする.この VNF 加入者数の分布を,平均 16加

入となる一様分布と 2項分布を仮定して評価する.加入者総数 M は 2500である.一様分布

では,約 75VNF づつ 0 から 32 収容の分布が一様となっている.2 項分布の場合は,16 加

入者数の VNF は約 350と最大となる.一様分布と二項分布の両方の分布確率は半分づつ組

み合わせ分布も同時に示している.このような分布のときに,VNF 加入者数の多い順での

累計加入数を図4.9に示す.装置あたり加入数上位 K=500VNF で,2項分布の場合 10,000

加入者,一様分布では 14,000を占め,4分の 1以上の加入者が対象となる.

図4.8.OLT加入者の分布

図4.9.ESでの累積加入者数

光 L2 スイッチ網での波長数は,NW 全体の要求帯域総量に相関し,バースト送信器の可

変波長光源や ADM のスイッチ数が大きくなり,装置コストに相関する.また,変更周期 T

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 4 8 12 16 20 24 28 32

Number of OLTs

Binominal Distribution Combination Distribution Uniform Distribution

Subscriber number in OLT

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000

0 500 1000 1500 2000 2500

Number of VNFs for live migrations K

Accumulation of subscribers

Uniform Distribution

Binominal Distribution Combination Distribution

K = 500

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は,要求帯域の変化周波数に関連し,タイムスロット数は帯域変更の粒度に相関する.さら

に,この帯域管理の制御は,タイムスロット数,波長数と割り当てる論理パス数により,割

り当て計算時間(T 以下が要請される)という相関がある.以下,これらの装置パラメータ

をモデル化し,本提案である OLT 対応の VNF モデルでの動的帯域割当のスケール性を評

価する.

4.3.4 資源の削減効果

加入者の資源利用状況とライブマイグレーションすべき加入者数を評価する.加入者の

資源利用量は,NWサービス利用率と利用帯域に相関する.10 Gbit/s の IFを持ったエッジ

装置で加入者数 400 収容されている装置の収容モデルを想定し,その加入者の利用率ρ,

平均利用帯域 b を一様分布とする.このとき,エッジ装置からの要求トラヒック量は,平均

400bρの 2項分布となる.この平均を 10 Gbit/s とし,ρを変化させたときの累積確率密度

を図4.10に示す.ρ=0.3 で b=83 Mbit/s が示すように,一人当たり利用する帯域が大

きいが利用する頻度が少なくなるほど,要求帯域の分布は広がる.エッジ装置の要求帯域が

10 Gbit/s を超える確率を 1%未満にするために移動すべき加入者数Δn は,ρ=0.3,0.5,

0.7 のとき,それぞれ,65,43,29 加入者となる.エッジ装置 1台あたりでは平均 25VNF

が収容され,上位の 5VNF で 100加入となるので(図4.9参照),5VNF 以下のライブマ

イグレーションで要求帯域と物理帯域のミスマッチを解消することができる.NW 全体で

はエッジ装置が100台であるので,500VNF間のライブマイグレーションを考えればよく,

全 VNF 2500 台を再分配対象とするよりも高速な再分配計算が期待できる.

次に OLT と VNFを接続する論理パスについて考える.加入者数が多くライブマイグレー

ションの対象となる OLT(K 台)からは,VNF が収容されているエッジ装置への現用パス

を設定し,ライブマイグレーションに備え,残りの N-1=99 装置へ予約パスを設定する.ラ

イブマイグレーション対象外の OLT(M-K 台)には,現用装置と障害時の予備装置へ各々

2 本のパスを設定する.図4.11に示すように,現用,予約,予備のパス総数は, KN+2(M

-K)=54,000 本のパス(双方向)の設定が必要となる(全 VNF を対象に設定した場合は

NM=250,000).全エッジ装置へ VNF が一様に分布していると仮定すると 1台あたりでは,

現用パス M /N=25,予約・予備パス K +(M-K)/N=515 の合計 540パスが設定される.

結果を表4.1にまとめる.NW 処理資源管理,帯域管理についても全 VNF を対象にす

る場合に比較し,移動 VNF を限定することで大幅に(本例では 20%程度)削減できる.

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89

図4.10.サービス利用率による要求帯域分布

図4.11.OLTと VNFを接続する論理パス数

表4.1.提案方式での VNFとパスの削減効果

SCC management Bandwidth management

# of VNFs # of logical paths # of queues in ES

All VNF migrations M=2500 NM=250,000 M=2500

Kth VNF migration K=500 2(M-K) +NK=54,000

2(M-K)/N +K=540

Reduction ratio 20% 21.6%

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

7 8 9 10 11 12

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

7 8 9 10 11 12

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

7 8 9 10 11 12

Δn=65

Cumulative probability distribution

Δn=29

Δn=43

(a) ρ=0.3 b=83Mbit/s

(c) ρ=0.7 b=36Mbit/s

(b) ρ=0.5, b=50Mbit/s

Bandwidth (Gbit/s)

1000

10000

100000

1000000

0 500 1000 1500 2000 2500

Total paths

Active paths 2500

54000

Reservation paths

Standby paths

Number of migration VNFs K

Total paths

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90

4.3.5 帯域割当制御計算時間の評価

本モデルにおける帯域変更周期 T は,要求帯域の変化周波数が PON モデルほど大きく

ないことをふまえてT=100 msとし,これを 100分割してタイムスロット長 1 ms(10 Mbit)

を割り当て単位とする(実際の物理転送は,受信処理間隔を短くするために,周期 T につ

き,100 kbit 長=12.5 kByte のセルを 1 ms ごと 100回転送する).

これまで任意の論理トポロジーにおける光 L2 スイッチの DBA 計算時間の短縮アルゴリ

ズムを提案してきた[17-19].今回提案する OLT 対応した仮想化アーキテクチャでは,現

用パスだけを考えると,図4.4に示すような論理モデルとなるため計算時間の大幅な短縮

化が期待出来る.VNF がライブマイグレーションした場合は,OLT が帰属するエッジ装置

が変わるので,予約パスが現用化されるとともに,共有バスへの接続を ADMで切り替える.

予約パス,予備パスのトラヒックを無視できるものとすると,あるエッジ装置の VNF に接

続される OLT 群との現用パスへの帯域割当だけを考えればよく,エッジ装置別の共有バス

が N 個あるとみなす事ができる.このとき,エッジ装置が収容する OLT(平均 M/N 個)

間で,エッジ装置への入出力物理パスの帯域を共有しているため,ここでの帯域競合が起こ

る.また,独立な N 個の共有バスで TDM/WDM リングの帯域を共有しているため,共有

バス間での帯域競合が起こる.

帯域割当処理のスケール性を評価する.OLT と VNF を1対応させた仮想化アーキテク

チャでは,論理的には,エッジ装置の物理帯域を OLT 群で接続する共有バスは独立であり,

それぞれバス帯域内で,帰属する OLT の帯域をエッジ装置毎に独立に帯域割り当てを行う.

このリング帯域 Bring=500 Gbit/s がエッジ装置の物理帯域 B=10 Gbit/s の総和よりも小さ

い場合のみ, リング帯域での競合が起こるため,共有バス間の調停が必要になる.従って,

DBA 制御方法としては,まず TDM/WDM リングの総帯域 Bringを共有バス毎の要求帯域に

対するタイムスロット数を割り当て,次に共有バス毎に波長とタイムスロット位置を決定

していけば,比較的シンプルに DBA 制御をすることができる.First-fit time slot 割り当て

法により,ランダムトラヒック発生のシミュレーション(Xeon E5335 2GHz CPU 搭載の

汎用サーバを使用)を行い,DBA 計算時間は 16 ms となった.変更周期 T=100 ms に対し

て,帯域要求の受信からタイムスロット通知までの時間を考慮しても,十分短時間での計算

ができることがわかる.

一方,Potential フローに対しては,光 L2SW-NW 内でのパスを維持するため,最小の固

定帯域を割当てる制御を BM で行う.51,500 本の Potential パスに対して,最小タイムス

ロットをラウンドロビンの順番で,特定の一波に割当てたとすると,各フローでのタイムス

ロット到着間隔は,5.15秒となる.これは,パスのキープアライブには十分な値となる.

4.4 分配選択バースト型 TDM/WDM スイッチ

4.4.1 分配選択バースト型の構成

光 L2SW-NW では,VNF から OLT の双方向でバースト送受信を行うため,全ての VNF

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91

と OLT の BSR および ADM でのタイムスロット位置を同期させる必要がある.この同期

問題を回避する構成として,下りに分配選択型,上りにバースト転送を行う光スイッチング

NW の構成を示す.本構成は,ES と OLT 間には渡りはなく,Point-to-multipoint の接続

になっていることを利用し,この Point-to-multipoint 内での DBA 制御を行うことを特徴

としている.そのため,各 ES には特定の波長を割り当て,VNF の移動には,ADM で波長

を切り替えることで対応する.ADM での切替は,VNF 移動のときのみであり,タイムス

ロット毎の切替が不要であるため,光スイッチング素子への要求条件も緩和される.

ある ES と収容する OLT 間の通信の DBA に関する基本原理は, 10G-EPON と同様で

ある.図4.12(a)に示すように,10G-EPON では,OLT から下り信号は,スターカプラ

で broadcast し,各 ONU で必要な情報を取り出す.上り信号は,OLT から指定されたタ

イミングで,バースト信号を送出し,他の OLT からの信号との衝突を回避する.本提案(図

4.12(b))では,スターカプラの代わりに,カプラを分散的に配置する以外,送受信方法

は 10G-EPON と同様である.

図4.12. 10G-EPON と提案構成の原理比較

PON では,複数の OLT へ帰属させるため波長多重を組み合わせた WDM/TDM-PON[8]

が提案されている.WDM/TDM-PON では OLT 毎に波長を割当て,ONU 側で波長を選択

することで帰属する OLT を選択する. WDM/TDM-PON においてはスターカプラで通信

の必要のない宛先にも全波長信号が broadcast されるため,最大分岐数が制限される.

本提案では,分散配置したカプラの分岐状態を変え,通信しない OLT へは光信号を分岐

しないことで,スケール性を持たせることを特徴としている. 図4.13に本提案の構成

を示す.エッジサーバが N 台で OLT が M 台あるとする.各エッジサーバへの送受信に異

なる波長を割り当て,共有バスですべてのエッジサーバと OLT が ADM を介して接続され

ている.ADM は,任意の波長を ADD/DROP でき,エッジサーバとの接続に必要な波長の

みを ADD/DROP する.ADM は,波長ごとに,信号パワーをすべて通す(Pass)か,一部

のパワーを分流する(Drop)の 2 状態を選択できるとし,接続する OLT に対応する VNF

と接続する波長のみを Drop 状態とする.DROP する場合には,全パワーを DROP するの

ではなく,信号送受信に必要なパワーを分流し,残りを後段の ADM へ送る.これにより,

あるエッジサーバからの波長パスにおいて,論理的に図4.12(b)のような 1 対多のスタ

OLT

ONU1 ONU2 ONU3 ONU4

starcoupler P

P/4

OLT1 OLT2 OLT3 OLT4

Edge server coupler P

P/4

(a) PON (b) Proposed architecture

λi

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92

ー状の構成で複数の OLT が接続されることになる.

図4.13.エッジサーバと OLT を接続する ADM

ここで,各 ADM での分流比について考察する.一つの波長から ADM を介して,D 個の

OLT へ分流する場合を考える.各段の分流比は制御の簡易性を考え,一定の分流比ηで分

流し,1-ηが後段の ADM に送られるとする.ES から P0 で入力され,OLT の最小受光感

度を Pmin と表す.光回路の損失は光アンプで補償するものとし,原理損である分岐損のみ

を評価する.等比で分岐していくとすると,段数を経ることに分岐される強度が小さくなる.

この強度が最低受光感度を下回らないことが必要である.このとき最終段 D で出力される

光強度 PDは,

(4.1)

が成立しなければならない.図4.14に D をパラメータとし,分流比ηと Pmin/P0の関係

を示す.PDを極大にするには,η=1/D とすればよく,図4.15に示すように,最大分岐

数 D=30 のとき,分岐比η=0.035 で,各 ADM 段での受光強度を P0 の比で示す.最低受

光感度比が最小の-19.1dB となる.パワーバジェットが 20dB で 30 分岐が可能である.

エッジサーバには複数の VNF が収容され,仮想 NIC,仮想スイッチを経て,それぞれ対

応する OLT と論理的なパス(たとえば VLAN のような L2 パス)を持つとする.この論理

パス群は,Burst 10G-NIC を通じて物理的波長パスを共有している(下りをλ,上りをλ’

と表記する).この波長パス内で,各 VNF,OLT の要求帯域に応じた帯域を割り当てる DBA

(Dynamic Bandwidth Allocation)制御を行うことで,各仮想的パスの可変帯域を実現し

ている.エッジサーバはそれぞれ独立に OLT 群と DBA 制御を行う.

d

Edge server1

・・・

・・・

Shared bus 1

Shared bus N

OLT1 OLT2 OLTM

Traffic demands T

Burst signal

T

W(t)

VNF1

ADM

d d

d

VNFM

VNF2

Edge serverN

Drop

Pass

min

1

0 )1( PPP D

D

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93

図4.14.分流比 η と最終段の受光強度

図4.15.各 ADM 段での光強度

この DBA 制御では,エッジサーバに接続される物理 burst 10G-NIC の帯域が,VNF,

OLT 群で共有できる最大帯域であり,総要求トラヒック量が大きくなると必要な帯域の割

り当てができなくなる.このような場合には,他のすいているエッジサーバへ VNF を移動

することで,帯域ボトルネックを解消する.他のエッジサーバにライブマイグレーションし

た場合には,VNF と OLT 間の論理パスが他の波長パスに収容替えが必要となる.すなわち

移動先のエッジサーバに対応する波長を Drop し,移動元のエッジサーバの波長を Pass 状

態にすることで,光波長信号を切り替え,論理パスを設定する.

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

0 0.05 0.1 0.15 0.2

D=5

D=10

D=15

D=20

D=25 D=30 D=35

Divide ratio η

Pmin

/P0

-20

-19

-18

-17

-16

-15

-14

-13

-12

-11

-10

0 5 10 15 20 25 30

PI/P0

The order number of

Divide ratio

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94

4.4.2 Make-before-break を用いたライブマイグレーション

ライブマイグレーション時に,ADM で光波長信号を切り替えるが,その切り替えの間

VNF と OLT 間のパケット転送ができない.利用中のユーザからみると,TCP やサービス

保持の Keep/Alive 時間を越えるとサービス断が発生してしまう.そのため,この時間をで

きるだけ短くすることが必要である.通信断をできるだけ短くするため,ライブマイグレー

ションする予定のエッジ装置に対して,OLT とエッジ装置間に論理的な予約パスを事前に

設定し,パス設定が終了してからパスを切り替える make-before-break[20]を用いる.

OLT が現用と予約パスと同時に接続するため ADM を 2 台用意用いる方法もあるが,1

つの ADM から複数の波長信号を取りだすことで,設備量の増大を防ぐことができる.エッ

ジサーバには,それぞれ 1 から N の固有の波長を割り当てられているが,波長番号の偶数

と奇数により 2 群に分ける.サーバ内の VNF は,ライブマイグレーションすることができ

るが,偶数,奇数のグループ間でしかライブマイグレーションしないという制限を設ける.

すなわり,偶数(奇数)波長番号を持つサーバに収容されている VNF は,奇数(偶数)波

長番号を持つサーバ群(N/2)の任意のサーバへは移動できるが,偶数(奇数)番号を持つ

他のサーバ群(N/2-1)には移動できないものとする.ライブマイグレーション先の候補と

なるエッジサーバが半減するが,N が十分に大きければ,十分な効果が得られる.図4.1

6に仮想エッジにおける VNF と OLT 論理構成を示す.ライブマイグレーション時には,

現用パスと予約パスを,冗長用には現用パスと予備パスを偶数,奇数波長のサーバ群で設定

するものとする.

図4.16.VNF と OLT の論理構成

4.4.3 複数ポートを持つ ADD/DROP 装置の構成

ライブマイグレーションにより収容エッジサーバが変わるため,そのたびにトラヒックの

転送先の設定変更が必要となる.以下,この切り替えに用いる ADM の構成を示す.図4.

Active Path

Reservation path Standby path

OLT: M

Edge server: N

VNF

Odd Group Edge server: N/2 Even Gropu Edge server: N/2

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17に複数出力ポートを持つ ADD/DROP 装置(ADM)の構成を示す.各エッジサーバか

らの信号は,それぞれ異なる波長であり,共有バス上で波長多重されて伝送される.ADM

では,波長多重された信号を,波長フィルタ WR1 で一度分波し,それぞれの波長が可変分

流器(tunable directional coupler; TC)を経て,再度 WR2 で合波され,次の ADM へ転送

される.この可変分流器は,信号パワーをすべて通す(Pass)か,一部のパワーを分流する

(Drop)の 2 状態を選択できるとする.

図4.17.ADM の構成例

バースト受信器が同期を取る時間をできるだけ短くするため,OLT 側のバースト送受信

機を 2 台持ち,VNF 移動する前に,光パス設定を事前に行い,光レベルの同期確立を行っ

てから,信号を切り替える.前述したようにライブマイグレーションは,偶数と奇数波長間

で行うことを前提とするので,偶数,奇数波長群それぞれから任意の光波長信号を分岐する.

アレイ導波路グレーティング型波長フィルタ(Arrayed Waveguide Grating Filter; AWGF)

は,最大ポート数 N の AWGF の入力ポート i と出力ポート j での波長チャネルにはサイク

リックな関係があり,λi+j-1 mod N の関係がある(表2参照).この特性を利用して,偶数波

長と奇数波長を異なるポートに独立に出力することができる.波長多重信号は,光 ADM の

分波器で N 個のポートに分波され,ADD/DROP 側の合分波器 WR3 で合波される.この

WR3 に上述の AWGF 型の波長ルータを用い,VC の出力ポートと WR3 の入力ポートの結

線において,偶数波長チャネルを出力するポート群に対して,奇数波長チャネルを出力する

ポート群を,k だけシフトすると,WR3 の出力ポートが-k だけずれた異なるポートに出力

することができる.波長 i を出力する VC 出力ポートを,偶数波長の場合は,WR3 の入力

ポート i に接続すると,WR3 の出力ポート 1 に合波され,奇数波長の場合は,WR3 の入力

λ1ーλ12

λ’1ーλ’12

(from other

ADMs)

WR1 WR2

WR3 λodd prot λeven port

burst sender receiver

selector

burst λ’3 burst

λ’10 OLT BSR

λ1 λ12

λ3 λ10

λ9 λ2

λ5 λ4

λ7 λ8

λ11 λ6

λ3 λ10

λ1 λ2 λ3

λ12 λ11

λ4 λ5 λ6 λ7

λ9 λ10

λ8

odd TCs even TCs

ADM

λ1ーλ12

λ’1ーλ’12

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ポート i+k mod N に接続すると,WR3 の出力ポート 1-k mod N に合波される.図4.1

7の例は,N=12 の構成で,奇数番号の波長に対して,偶数番号の波長と合分波器のポート

が k=6 だけ接続関係をずらしている.奇数波長はポート 1 へ,偶数番号波長はポート 7 へ

出力される.表4.2の四角で囲んだところが波長と出力ポートとの関係を示している.

表4.2.合分波器のポートと波長の関係

エッジサーバからの下り信号は,波長 3 と波長 10 の VC が Drop 状態となっているので

偶数ポートに波長 3 が,奇数ポートに波長 10 が出力される.下り波長λと上り波長λ’は,

同一波長で構成することもできるが,双方向光アンプを用いるような場合,異なる波長を用

いた方が発振などの問題を回避できる.この AWGF は, Free Spectrum Range[21]毎に表

1に示すような周期的な入出力ポートと波長の関係が成立するので,上りと下りの波長帯

を変えても図4.17の ADM 構成を用いることができる.

ライブマイグレーション時のパスの切り替えを図4.18に示す. OLT に対応している

VNF が,エッジサーバ 3 に収容されているとし,波長 3 パスを使って必要なトラヒックを

送受信しているとする.この VNF をエッジサーバ 10 にライブマイグレーションしようと

する場合に,偶数ポートサーバ群からサーバ 10 が選択された場合,波長 10 を選択して,

送受信に必要な同期を確立する.その後,ライブマイグレーションのタイミングで波長 3 パ

ス内の論理パス(エッジサーバ 3 へ接続)から波長 10 のパス内の論理パス(エッジサーバ

10 へ接続)へ,トラヒックを流すパスを切り替えることでライブマイグレーションにおけ

る切替の高速化を図る.また,冗長パス設定の場合は,あらかじめエッジサーバ 3 の冗長切

替先がエッジサーバ 10 だとすると,波長 3 と波長 10 で波長パス設定をしておき,障害発

生時に OLT のセレクタで予備に切り替える.

λ1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10 λ11 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10

λ11 λ12 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10 λ11 λ12 λ1 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10

λ11 λ2 λ1 λ2 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10 λ11 λ12 λ1 λ2 λ3 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10

λ11 λ12 λ1 λ3 λ4 λ2 λ7 λ8 λ9 λ10 λ11 λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ8 λ9 λ10

λ11 λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ9 λ10 λ11 λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ10

1 2 3 4 5 6 7 8 9

10

output port

input port

11 12

λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8

λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7 λ8 λ9 λ10 λ11

λ11 λ12 λ1

λ11 λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ12 λ1 λ2 λ3 λ4 λ5 λ6 λ7

λ7 λ8

λ8 λ9

λ9 λ10

11 12

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図4.18.波長と論理パスの切替シーケンス

4.5 まとめ

仮想エッジと光バースト転送による高速帯域割当制御方式を提案した.双方向に光バー

スト信号を用いる光 L2SW-NW では,制御時間を高速にするため,ライブマイグレーショ

ンする VNF を一部に制限し,事前の切替先パスも制限することで資源の有効利用と高速帯

域割当を実現できることを示した.分配選択型方式では,ADM で複数の波長パスをドロッ

プできる構成により,ライブマイグレーション切替前の Make-before-break によりインサ

ービスでの移動を可能とできることを示した.

4章の参考文献

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and implementation,” IEEE Com. Mag., vol. 43, pp. 49-50, Oct. 2005.K. Hattori, M. Nakagawa,

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Live-migration OLT L2

From #3

OLT L2

From #10

λ3

λ10

L2 switching

Coupler switching “Pass”

Coupler switching “Drop”

& receiver synch

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98

[8] M. Jinno、H. Takara, B. Kozicki, Y. Tsukishima, Y. Sone, and S. Matsuoka, “Spectrum-

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[9] 望月このみ,山崎史裕,三澤明,“エッジクラウド実現に向けた仮想マシン再配置方

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[11] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, A. Misawa, and A.

Hiramatsu, “Proposal of optical L2 switch network to achieve dynamic bandwidth

allocation based on 10G-EPON,” Proc. PS2012, pp. 1-3. Sept. 2012.

[12] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, A. Misawa, and A.

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wavelength switching,” Proc. 38th ECOC2012, We.3.D.5, Sept. 2012.

[13] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Dynamic path bandwidth allocation for 1000×10-scale optical layer-2 switch

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Proc. 39th ECOC2013, Th.2.E.2, Sept. 2013.

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July 2014.

[18] M. Nakagawa, K. Hattori, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Hierarchical timeslot allocation for optical layer-2 switch network,” Proc. 18th

OECC/PS2013, TuQ4-6, July 2013.

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99

第 5章 総括

近年,インターネット上での多様なサービス普及によるトラヒック増加やトラヒック需

要の分布の変動へも即応できるネットワークの柔軟性が求められている.本研究は,低消費

電力化・高速大容量化に加え,需要に応じて帯域や方路を変更できるネットワークを提供す

るため,光パケット多重,光バースト多重技術と波長多重を用いたスイッチ技術をベースと

した光スイッチングネットワーク構成技術を示した.第 1章では,研究の背景となるキャリ

アネットワークへの大容量化と可塑性という要求条件を概説し,コアバックボーンやメト

ロ網での光スイッチング技術への期待を示した.第 2章では,入力バッファ型,出力バッフ

ァ型,ノックアウト型,入出力バッファ型などのパケットスイッチの論理的構成モデルとト

ラヒック特性を明らかにし,光バッファや波長チャネルセレクタなどを用いて波長多重技

術など光技術の特徴を生かした光パケットスイッチ構成法を示した.

第 3章では,波長多重を用いた光パケットスイッチングの実装構成を示した.波長分配選択

型パケットスイッチは,光ファイバ遅延線バッファを用いることを特徴であるが,スイッチ

規模が大きくなるほど,光ファイバ遅延線のハード量が大きくなる.この遅延線型バッファ

はタイムアウトによりパケット損失が起こるため,トラヒックモデル解析により必要なバ

ッファサイズを示した.波長多重ノックアウトスイッチは,出力部に複数出力ポートを持つ

可変波長フィルタを用いることが特徴である.この可変波長フィルタで用いる光ゲートの

ハード量を削減する構成方法を示した.入出力型波長多重パケットスイッチは,入力バッフ

ァへの ACK のフィードバック制御に波長ルータを用いる構成を示した.このような波長多

重パケットスイッチの光通話路実装においては,構成デバイスに波長や偏波依存性による

損失利得の差の等化,経路の差や環境温度の変化などにより伝播時間にも差の等長化が必

要である.これを解決するため,パケット毎に時間同期を行うとともに,マンチェスタ符号

受光器を用いることで,光の強度レベルが異なる光パケットを安定的に受信し,復号するこ

とが可能なことを示した.また,波長チャネルセレクタの構成では,波長ルータと光ゲート

の組み合わせで,波長多重光のままゲートすることでアクティブデバイスである光ゲート

数を削減できることを示した.この構成において,損失レベルを等化するため,中心ポート

から遠くなるほど損失が大きくなる波長ルータの特性を用いて損失を均一化する手法を示

した.このように,光バッファ,波長チャネルセレクタの実装構成方法ならびに損失,利得

を等化するための手法に加え,マンチェスタ符号受光器での変動耐性に強い要素技術を組

み合わせることで,波長多重パケットスイッチが安定したシステムとしての動作ができる

ことをプロトタイプシステム実験により示した.第 4章では,メトロ集線網での加入者トラ

ヒック集線処理を効率化するため,プロトコル処理を行う高位レイヤ資源再分配に仮想エ

ッジのライブマイグレーションを用い,物理的接続に用いる共有リングでの帯域の資源再

分配に光バースト転送を適用する高速帯域割当制御方式の構成を示した.双方向に光バー

スト信号を用いる光スイッチング方式と波長分配選択と光バーストを組み合わせた方式を

用いて,帯域割当計算の高速化と,インサービスで仮想マシンをマイグレーションできるこ

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100

とを示した.第 5章では,本研究を総括し,結論及びコンボの展望を述べた.光パケットス

イッチによりバックボーンでのより光レイヤでの柔軟なネットワークの構築が可能である

こと,又,メトロ網において,エッジの仮想化と光バースト転送による動的帯域割当が高速

に制御可能であることを明らかにした.

第 3 章で述べた光パケットスイッチの構成法は,ネットワークエレメントとしての光パ

ケットスイッチであり,バックボーンに適用する場合には,ネットワークの物理トポロジー

やトラヒック変動要求に合った構成法を選択する必要がある.より大容量スイッチを構成

するためには,パケットスイッチを多段に組み合わせて,ネットワーク型の構成をとる必要

がある.波長分配選択型スイッチは,光バッファを用いるため,光パケットのまま次段の光

パケットスイッチへ転送できるが,ネットワークレベルでのレベル変動や経路長変動に対

して対処する方式を考える必要がある.入出力バッファに電気バッファを用いると,多段化

は容易であるが,光化している部分がスイッチ部に限られるため,消費電力の低減には限界

がある.集中的に大規模なスイッチが必要な場合は,この電気バッファを用いた光パケット

を使うなどネットワークの要求条件にあった使い分けが必要となる.これらのスイッチン

グ技術と既存ネットワーク装置との連携によるネットワーク方式の検討が必要である.本

スイッチを使い,対地間のパスで帯域保障する硬いパス,需要に応じて帯域を可変にできる

帯域可変パスを設定するネットワーク制御方式についての研究が今後の課題である.第 4章

では,メトロ集線網における仮想エッジ光バースト転送方式では,メトロ網への適用範囲を

広げるため,数万オーダーへの大容量化や冗長構成のとり方が今後の研究課題である.また,

アクセス網のさらなる高速化を目指した WDM/TDM-PON との連携方式やコアバックボー

ンとの連携方式についての検討が今後の課題である.

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101

謝辞

本論分は,筆者が北海道大学大学院情報科学メディアネットワーク専攻にて,光スイッ

チング構成技術に関する研究をまとめたものである.

本研究を進めるにあたり,可児淳一客員教授,山本強教授から常に親身の御指導,御教

授を賜りまして心より感謝を申し上げます.またご多忙の中,本論文の副査を引き受けて

頂きました齊藤晋聖教授,大鐘武雄教授に深く感謝申し上げます.

北海道大学工学部在学中から学位取得までご指導いただいた小柴正則教授をはじめ,光

通信研究に携わる契機となった導波路解析の研究で,研究スタイルを確立することがで

き,電波応用工学講座の方々に感謝いたします.

本研究は,日本電信電話株式会社交換システム研究所,未来ねっと研究所,ネットワー

クサービスシステム研究所にて,行った研究成果がベースになっている.第2章の光パケ

ットスイッチングの研究は,1990年から1997年まで光交換研究グループで行ったものであ

り,行松健一グループリーダ(前秋田大学教授),松永亨グループリーダ(現NEL)に

は,入社当時から多大なご指導いただき,感謝しております.同じシステム研究を進行し

てきた光交換研究グループの笹山浩一さん,塚田雅人さん,山田義朗さん,をはじめ光交

換研究グループの方々により,論文や国際会議など多くの学術的研究成果を共同で執筆で

きたことを心より感謝申し上げます.第3章のメトロ網の光スイッチング研究は,2010年

にブロードバンドネットワークシステムプロジェクト・サービスエッジグループで開始し

たものであり,本研究のコンセプトを提案と推進していただいた平松淳プロジェクトマネ

ージャ(現NTT-AT),共同で研究をしてくれた片山勝さんをはじめ,ともに研究を進めて

きた研究グループの方々に感謝いたします.

本論文では記載できなかったが,ネットワーク研究として携ったGMPLSマルチレイヤネ

ットワークの研究およびプロトコルの標準化,実装普及のための国際的コンソーシアム活

動を推進してくださった山中直明グループリーダ(現慶応義塾大学教授)および共同で研

究をすすめた岡本聡さん(現慶応大教授),塩本公平さん,大木英司さん(現電気通信大

学教授),学術ネットワークSINETなどの光MPLS/IPネットワーキング研究のご指導をいた

だいた漆谷重雄グループリーダ(現国立情報学研究所教授)に感謝いたします.

商用ネットワーク開発でIPネットワーキングおよび大規模ルータ開発について,ご指

導,ご議論いただいた錦戸淳ディレクタ(現NTTソフト),茶木慎一郎ディレクタ(現

NTT-AT)には,実用ネットワークを高度化するための技術課題への気づき,ネットワーク

研究の視点と研究モチベーションになり,大変深謝します.また,現職での商用ネットワ

ーク開発業務に当りながら,著者の研究活動にご理解いただき,ご支援いただいた岡本司

プロジェクトマネージャに深く感謝いたします.

最後に,ここに至るまでの間,見守り,支え続けてくれたかぞく妻と,遠く北海道より応

援してくれた両親に,心より感謝します.ありがとうございました.

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102

研究業績リスト

論文

[1] A. Misawa and T. Matsunaga, “Optical Input Buffers for the HiPower Photonic

ATM Switch-Analysis and Experiments,” IEEE J. Lightwave Technol., vol. 14,

no.10, pp. 2173–2183, Oct. 1996.

[2] A. Misawa and M. Tsukada, “Broadcast-and-Select Photonic ATM Switch with

Frequency Division Multiplexed Output Buffers,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.

15, no.10, pp. 1769–1777, Oct. 1997.

[3] A. Misawa, Y. Yamada, M. Tsukada, K. Sasayama, K. Habara, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, “A Prototype Broadcast-and-Select Photonic ATM Switch with

a WDM Output Buffer,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.16, no.12, pp.2202-2211,

Dec. 1998.

[4] A. Misawa, K. Sasayama and Y. Yamada, “WDM Knockout Switch with Multi-

Output-Port Wavelength-Channel Selectors,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.16,

no.12, pp.2212-2219, Dec. 1998.

連名論文

[1]Y. Yamada, K. Sasayama, K. Habara, A. Misawa, M. Tsukada, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, “Optical Output Buffered ATM Switch Prototype Based on

FRONTIERNET Architecture,” IEEE J. Lightwave Technol., vol.16, no.12,

pp.1298-1308, Dec. 1998.

[2] Y. Yamada, K. Sasayama, K. Habara, A. Misawa, M. Tsukada, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, “Optical Output Buffered ATM Switch Prototype Based on

FRONTIERNET Architecture,” IEEE J. Select. Area on Commun. vol. 16, no. 7, pp.

1298-1308, 1998.

[3] S. Mino, T. Matsunaga, Y. Shibata, A. Misawa, Y. Yamada, K. Habara, “Q-Factor-

Based Level Design for Photonic ATM Switches,” IEICE Trans. Commun., vol. E82-

B, No. 2, Feb. 1999, pp. 288-297.

[4] M. Nakagawa, K. Hattori, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Hierarchical Time-Slot Allocation for Dynamic Bandwidth Control in Optical

Layer-2 Switch Network,” IEICE Trans. Commun., vol. E97-B, No. 7, July 2014, pp.

1303-1312.

[5] M. Nakagawa, K. Hattori, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Proposal of Rip-up & Re-allocate Algorithm for Optical Layer-2 Switch Network,”

ATCA Photnica Sinica, vol. 43, No. 7, July 2014, pp. 1-8.

[6] K. Hattori, T. Homemoto, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, and A.

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103

Misawa, “Optical layer-2 Switch Network with Bufferless Optical TDM and

Dynamic Bandwidth Allocation”, IEICE vol.E99-C,No.2,pp.-,Feb. 2016 (to be

published).

レター

[1] A. Misawa, H. Nakano and T. Matsunaga, “Signal self-thresholding using

wavelength-division multiplexed differential transmission for photonic ATM

switches,“ IEE Electron Lett, vol. 29, no. 15, pp. 1337-1338, July 1993.

[2] A. Misawa, K. Sasayama, and T. Matsunaga, “Fast wavelength selection for

four-channel wavelength-division-multiplexed 10-Gbit/s optical cells,” IEE Electron

Lett., vol. 31, no. 20, pp. 1762–1763, Sept. 1995.

[3] A. Misawa and T. Matsunaga, “Q factor measurements of photonic ATM switch

with four-channel FDM output buffer at 2.5 and 10 Gbit/s,“ IEE Electron Lett, vol.

32, no. 17, April 1996.

[4] A. Misawa, Y. Yamada, M. Tsukada, K. Habara, and T. Matsunaga, “20 Gbit/s

photonic ATM switching with differential packet receiver, “ IEE Electron Lett, vol.

32, no. 19, pp. 1798-1799, Sep 1996.

[5] A. Misawa, K. Sasayama and T. Matsunaga, “Two-output-port fast tunable

filter with low loss and low loss variation for 32 wavelength channels,“ IEE

Electron Lett, vol. 35, no. 8, April 1999.

連名レター

[1] M. Tsukada, A. Misawa, J. Nishikido, Y. Shimazu, H. Nakano, “Experiments on

photonic cell switching with an optical input buffer,” IEE Electron Lett, vol. 30, no.

13, April 1994.

研究報告

[1] 三澤明,塚田雅人,錦戸淳,島津佳宏," 光ATM交換用タップ型光FIFOバッファ

の構成と特性" ,信学技報,SSE93-148, OSC93-78, pp. 19-24(1994年3月)

[2] 三澤明,塚田雅人,松永亨,“10Gbit/s級周波数分配型光ATMスイッチ” ,信学

技報,SSE94-201, OSC94-82, pp. 37-42(1995年2月)

[3] 三澤明,笹山浩二,松永亨,“光ATMスイッチにおける波長多重セル選択の実

験” ,電気学会研究会資料CMN, 通信研究会 1995(18), pp. 7-12(1995年5月)

[4] 三澤明,葉原敬士,松永亨,“光ATMスイッチに用いる複数出力ポートを持つ光

周波数チャネル選択器の提案” ,信学技報SSE-96-535, pp. 43-48 (1997年2月)

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[5] 三澤明,山田義朗,笹山浩二,”波長多重を用いた光ノックアウトスイッ

チ” ,信学技報SSE97-201, IN97-200, pp. 49-54 (1998年3月)

[6] 三澤明,“入出力バッファ型波長多重パケットスイッチ”,信学技報SSE98-159,

PS98-49, pp. 61-66 (1998年12月)

[7] 三澤明,塩本公平,大木英司,島崎大作,片山 勝,山中直明,“波長割り当

て・ルーティング問題に対応したGMPLSフォトニックネットワークについて” ,信学

技報CS2002-20, OCS2002-29, pp. 59-64 (2002年5月)

[8] 三澤明,山中直明,“波長群を用いたフォトニックスイッチとネットワークの構

成について” ,信学技報PS2002-20, pp. 37-42 (2002年5月)

[9] 三澤明,岡本聡,片山勝,山中直明,“サービス指定シグナリングを適用した

Optical VPN方式の提案“,信学技報PS 2003-7 (2003年4月)

[10] 三澤明,片山 勝,服部恭太,中川雅弘,伊達拓紀,望月このみ,河野伸也,

西山聡史,“仮想エッジアーキテクチャとトラヒックフロー制御技術”,信学技報

NS2014-4, pp. 17-22 (2014年4月)

[11] 三澤明,中川雅弘,望月このみ,土屋英雄,服部恭太,片山 勝,“仮想エッ

ジアーキテクチャと帯域制御技術”,信学技報NS2014-212, pp. 203-208 (2015年3

月)

[12] 三澤明,土屋英雄,望月このみ,中川雅弘,服部恭太,片山 勝,可児淳一,

“仮想エッジのための光波長ADD/DROP装置の提案”,信学技報PN2015-8, pp. 39-44

(2015年6月)

[13] 三澤明,望月このみ,土屋英雄,中川雅弘,服部恭太,片山 勝,可児淳一,

“インサービスライブマイグレーション仮想エッジ方式の提案”,信学技報PN2015-

22, pp. 69-74 (2015年8月)

[14] 三澤明,望月このみ,土屋英雄,中川雅弘,服部恭太,片山 勝,可児淳一,

“リンクアグリゲーションを用いた仮想エッジサーバの提案”,信学技報PN2015-32,

pp. 49-54 (2015年11月)

連名研究報告

[1] 山田義朗, 三澤明, 笹山浩二, "高速光バケット通信におけるレベル変動対策

の検討", 信学技報 CS95-46, pp. 33-38(1995年6月)

[2] 山田義朗, 三澤明, 笹山浩二, 葉原敬士, 塚田雅人, 松永亨, 行松健一,光周

波数多重技術を用いた光ATMスイッチプロトタイプ“,信学会技報SSE215, pp.37

(1996年8月)

[3] 岡本聡,三澤明,塩本公平,山中直明,“フォトニックインターネットアー

キテクチャの提案“,信学技報PS 2003-6 (2003年4月)

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105

[3] 林理恵, 宮村崇, 栗本崇, 三澤明, “マルチレイヤネットワークにおけるスケ

ーラブルなトラヒック情報の収集及び作成方法の性能評価“,信学技報 CS2004-32

(2004年 7月)

[4] 宮村崇,三澤 明,“光VPNサービスにおける公平性を考慮したリソース管理

法の検討“,信学技報CQ2004-68,pp.47-51 (2004年7月)

[5] 宮村崇,栗本崇,三澤明,漆谷重雄,“マルチリライアビリティサービスを

実現する経路選択方法” ,信学技報IN2004-198,pp.77-82 (2005年2月)

[6] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,“周回性アレイ導波路回

折格子を用いた波長スイッチにおける出力光均一化のための波長決定法” ,信学技

報PN2010-73,pp.85-88 (2011年3月)

[7] 伊達拓紀,栗本崇,三澤明,“複数サービス処理部へのトラヒック振分にお

けるオフロード方式の提案” ,信学技報NS2010-289,pp.717-722 (2011年3月)

[8] 小川賢太郎, 三澤明, "IP転送装置のモジュール間標準通信プロトコルForCES

の概要", 信学技報 CS2010-78, pp. 37-42, (2011年3月)

[9] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,“トラヒック変動に適応

した光パケットスケジューリング方式Dynamic-iSLIPの提案”,信学技報PN2011-9,

pp.43-48 (2011年6月)

[10] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“光L2スイッチ

ネットワークの提案” ,信学技報PN2012-3,pp.13-18 (2012年6月)

[11] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワ

ークにおける階層化スケジューリング方式の提案,信学技報PN2012-77,pp.141-146

(2012年9月)

[12] 望月このみ,山崎裕史,三澤明,“将来ネットワークにおけるエッジ機能動

的配置のための仮想マシン高速移動方式の提案”,信学技報NS2012-99,pp.107-

112(2012年10月)

[13] 君島直樹,中川雅弘,服部恭太,片山勝,三澤明,“光L2SW-NWにおけるト

ラヒック変動に対する動的帯域制御方式の特性評価”,信学技報PN2012-72,pp.289-

294 (2013年1月)

[14] 望月このみ,山崎史裕,三澤明,“エッジクラウド実現に向けた仮想マシン再

配置方式の提案”,信学技報 NS2013-6, pp. 25-30, (2013年 4月)

[15] 山崎裕史,望月このみ,三澤明,“エッジクラウドにおける予備装置の共用

による装置数削減の検討”,信学技報IN2013-57,pp.125-130, (2013年7月)

[16] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワ

ークにおける時刻配信型のタイムスロット同期方式の評価” ,信学技報PN2013-8,

pp.1-6 (2013年8月)

[17] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワ

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106

ークにおける高速帯域再割当を実現するパス帯域割当アルゴリズムの提案,信学技報

PN2013-16,pp.47-52 (2013年8月)

[18] 望月このみ,三澤明,“光L2スイッチネットワークにおける高速帯域再割当

を実現するパス帯域割当アルゴリズムの提案,信学技報PN2013-16,pp.47-52 (2015

年11月)

国際会議(査読付)

[1] A. Misawa, “Experimenta on photonic ATM switches with WDM output buffers,”

Proc. PS'95, March, 1995.

[2] A. Misawa, K. Sasayama, and T. Matsunaga, “Fast frequency selector for four-

channel frequency-division-multiplexed 10 Gbit/s optical packets,” in Proc.

ECOC’95 , pp. 957–960, Th.L.2.5. , Sep. 1995.

[3] A. Misawa, "Broadcast-and-select photonic ATM Switch with differential

receiver" , Proc. Of PS96, PThC2, pp. 16., April 1996.

[4] A. Misawa, M. Tsukada, Y. Yamada, K. Sasayama, K. Habara, T. Matsunaga,

and K. Yukimatsu, "40 Gbit/s broadcast-and-select photonic ATM switch prototype

with FDM output buffers," Proc. ECOC '96, ThD.1.2.pp.107-110, Sept. 1996.

[5] A. Misawa, K. Habara, and T. Matsunaga, “Frequency-channel selector with

multi-output ports for photonic ATM switches,” in Proc. IOOC/ECOC ’97, WE1A,

Sep. 1997.

[6] A. Misawa, S. Okamoto, M. Katayama, and N. Yamanaka, “Optical VPN service

using OUNI/GMPLS signaling for service assignment with HIKRAl router,” Proc.

ECOC-IOOC 2003 Proceedings We4.Fu38, Sep. 2003.

[7] A. Misawa, Konomi Mochizuki, Hideo Tsuchiya, Masahiro Nakagawa, Kyota

Hattori, Masaru Katayama, and Jun-ichi Kani, “Proposal on Virtual Edge

Architecture Using Virtual Network Function Live Migration with Wavelength

ADM”, Proc. APCC2015, pp. 331-335, Oct. 2015.

国際会議(査読付) 連名

[1] Y. Yamada, A. Misawa, and K. Sasayama, “A new optical packet receiver for

power-fluctuated high-bit-rate NRZ signals,” in Proc. Photon. Switching ’95, PD2-

1, 1995.

[2] T. Okugawa, T. Matsunaga, A. Misawa, K. Habara, and Y. Yamada, “Composit

optical/electrical buffer configuration for photonic ATM switching systems,” Proc.

OECC'96, 18B1-4, pp.316--317, 1996.

[3] K. Habara, Y. Yamada, A. Misawa, K. Sasayama, M. Tsukada, T. Matsunaga,

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107

and K. Yukimatsu, “Demonstration of frequency-routing type photonic ATM switch

(FRONTIERNET) prototype,” Proc. 22nd ECOC ’96, Sept. 1996, ThC.3.4.

[4] T. Matsunaga, K. Habara, A. Misawa, Y. Yamada, T. Okugawa, M. Tsukada, S.

Hino, K. Sasayama, and K. Yukimatsu, “Design of Photonic ATM Switch and a

Rack-Mounted Prototype”, Proc. ICC 97. vol.3, pp. 1292 – 1297, 1997.

[5] S. Mino, T. Matsunaga, Y. Shibata, A. Misawa, Y. Yamada, K. Habara, I.

Ogawa, N. Yoshimoto,” Feasibility of Q-factor-based level design for photonic

packet-switching systems,” Proc. ECOC ’98, pp. 583-584, Sep. 1998.

[6] N. Yamanaka and A. Misawa, “Photonic-GMPLS Leading Edge Code Research

Consortium: Photonic Internet Lab.(PIL) ,'’ China Communications , March 2004.

[7] N.Yamanaka and A. Misawa, , “Photonic Internet Lab.: New challenges for

archiving Gmpls de facto standard.,'’ IEICE Global News Letters, Vol. 8, pp. 16-18,

June 2004.

[8] T. Miyamura and A. Misawa, “A stochastic-based fair allocation scheme for

adaptive OVPN services, ” Proc. Communications, Internet, and Information

Technology, pp. 531-536, 2004.

[9] T. Miyamura, T. Kurimoto, A. Misawa, and S. Urushidani “A disjoint path

selection scheme based on enhanced shared risk link group management for multi-

reliability service,” IEEE – Proc. GLOBECOM , Oct. 2005.

[10] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Dynamic Path Bandwidth Allocation for 1000x10-Scale Optical Layer-2 Switch

Network based on Hierarchical Timeslot Allocation Algorithm and Timeslot

Converter,” Proc. 37th ECOC2011, Th.2.E.2, Sep. 2011.

[11] H. Date, T. Kurimoto, A. Misawa ,”An offload method for traffic distribution

based on service identification,” Proc. ICON , pp. 316-321, 2011.

[12] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, A. Misawa, and A.

Hiramatsu, “Proposed Optical Multicasting Method Using Tunable Lasers and

Cyclic AWGs,” Proc. 17th OECC2012, 3A2-3. July 2012.

[13] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, A. Misawa, and A.

Hiramatsu, “Proposal of optical L2 switch network to achieve dynamic bandwidth

allocation based on 10G-EPON,” Proc. PS2012, pp.1-3. Sep. 2012.

[14] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, A. Misawa, and A.

Hiramatsu, “Optical layer-2 switch network based on WDM/TDM nano-sec

wavelength switching,” Proc. 38th ECOC2012, We.3.D.5, Sep. 2012.

[15] M. Nakagawa, K. Hattori, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Hierarchical timeslot allocation for optical layer-2 switch network,” Proc. 18th

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108

OECC/PS2013, TuQ4-6, July 2013.

[16] H. Date, K. Higuchi, M. Katayama, and A. Misawa, “Proposal of Scale-out

Control Architecture of Virtual Wide Area Layer-2 Switch on Metro Network,”

Proc. 19th APCC2013, pp. 29-31, Aug. 2013.

[17] K. Mochizuki, H. Yamazaki, A. Misawa, “Bandwidth guaranteed method to

relocate virtual machines for edge cloud architecture”, Proc. APNOMS, TS8-3, Sep.

2013.

[18] K. Hattori, M. Nakagawa, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Dynamic path bandwidth allocation for 1000×10-scale optical layer-2 switch

network based on hierarchical timeslot allocation algorithm and timeslot

converter,” Proc. 39th ECOC2013, Th.2.E.2 Sep. 2013.

[19] M. Nakagawa, K. Hattori, N. Kimishima, M. Katayama, and A. Misawa,

“Proposal of Rip-up & Re-allocate Algorithm for Optical Layer-2 Switch Network,”

Proc. COIN2013, II-2, Oct. 2013.

国内講演

[1] 三澤 明,中野秀俊,”タップ遅延回路を組み合わせた光ATM 交換用ループメモ

リ”,1993 秋季信学全大,B −915 (1993年9月)

[2] 三澤明, 塚田雅人, 渡部直也,“波長多重出力バッファ型光ATMスイッチの提

案 ”,信学秋季大, p.6 (1994年9月)

[3] 三澤明, 塚田雅人, 松永亨, “10Gbit/s周波数多重出力バッファ型2×2光ATMス

イッチの実験”,信学会総大,p.21 (1995年3月)

[4] 三澤明, 笹山浩二, 松永亨, “4チャネル波長多重10Gbit/s光セルの高速波長選

択”,信学ソ大,p.376 (1995年9月)

[5] 三澤明, 松永亨, “4チャネル2.5Gbit/s周波数分配選択型光ATMスイッチの実

験”,信学総大, pp.25 (1996年3月)

[6] 三澤明,山田義朗,塚田雅人,笹山浩二,葉原敬士,松永 亨,行松健一,“周

波数分配選択型4 ×4光ATMスイッチプロトタイプ“,PS96-19(1996年6月)

[7] 三澤明, 山田義朗, 塚田雅人, 笹山浩二, 葉原敬士, 松永亨, 行松健一, “40

Gbit/s周波数分配選択型4×4光ATMスイッチプロトタイプ“ ,信学ソ大, p.39(1996

年9月)

[8] 三澤明,葉原敬士,松永亨,“マルチポート出力型光周波数チャネルセレクタ

“,PS97-13(1997年9月)

[9] 三澤明, 葉原敬士, 松永亨,”複数出力ポートを持つ光周波数チャネル選択器と

クロストーク”,信学ソ大会, p.402 (1997年9月)

[10] 三澤明, 笹山浩二,“波長多重を用いた光ノックアウトスイッチ” ,信学総大

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109

B-12-9(1998年3月)

[11] 三澤明, 笹山浩二,“入出力バッファ型波長多重パケットスイッチ” ,信学ソ

大(1998年9月)

[12] 三澤明, 笹山浩二,“損失およびチャネル間損失偏差の少ない2出力ポート32波

長用可変フィルタ”,信学総大 B-12-9(1999年3月)

[13] 三澤明,岡本聡,山中直明,“Optical VPN の制御網構成法の提案”,信学総

大 B-6-6(2003年3月)

[14] 三澤明,望月このみ,山崎裕史,“波長可変バースト転送技術を用いた仮想エ

ッジアーキテクチャ”,信学ソ大B-12-14 (2014年9月)

[15] 三澤明,望月このみ,土屋英雄,中川雅弘,服部恭太,片山 勝,可児淳一,

“PON対応仮想エッジと可変帯域リングの資源再分配方式”,信学総大BS-2-1 (2015

年3月)

[16] 三澤明,望月このみ,土屋英雄,中川雅弘,服部恭太,片山 勝,可児淳一,

“PON対応仮想エッジでの複数光バスを持つ物理構成の提案”,信学ソ大B-12-18

(2015年9月)

国内講演 連名

[1] 山田義朗, 笹山浩二, 三澤明,“Gbit/s級光パケットスイッチングにおける送受

信方式”,信学総大, p.563 (1995年3月)

[2] 山田義朗,三澤明, 笹山浩二, “Differential Receiverを用いた2.48Gbit/s光

ループバッファの30周回実験”,信学会ソ大, p.26 (1995年9月)

[3] 葉原敬士,日野滋樹,三澤明,山田義朗,奥川徹,松永亨,“大容量光周波数

ATMスイッチ構成法の検討“,PS96-29(1996年10月)

[4] 行松健一,錦戸 淳,三澤明,“通信ネットワーク、光スイッチングシステム技

術の今後の動向“,PS96-31(1996年12月)

[5] 山田義朗, 笹山浩二, 葉原敬士, 三澤明, 塚田雅人, 松永亨, 行松健一,

“40Gbit/s周波数ルーチング型光ATMスイッチプロトタイプ : FRONTIERNET

2.5Gbit/s16×16光スイッチの通話路系評価 ”,信学ソ大(1996年9月)

[6] 美野真司, 松永亨, 柴田泰夫, 三澤明, 山田義朗, “半導体光ゲートを用いた光

ATMスイッチにおけるQ値からの設計指針”, 信学総大p.25 (1998年3月)

[7] 山田義朗, 渡辺賢一, 三澤明, 笹山浩二, 葉原敬士,”光フレームクロックを用

いた光ATMハイウェイ/制御レイヤ間同期方式”, 信学総大(1998年3月)

[8] 笹山浩二, 西沢秀樹, 日野滋樹, 三澤明, 葉原敬士, 松永亨,“波長ルーティン

グ型大容量光パケットスイッチシステム(FRONTIER)の開発(1) ” ,信学会総大p.724

(2000年3月)

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[9] 岡本聡,三澤明,片山勝,山中直明,“OVPN における Network-to-Network イ

ンタフェイスの考察”,信学総大B-6-1(2003年3月)

[10] 宮村崇, 栗本崇, 青木道宏, 三澤明,“GMPLSにおけるInter-area LSP設定方式

の検討”,信学総大B-6-155(2004年3月)

[11] 宮村崇, 栗本崇, 三澤明, 漆谷重雄,“マルチリライアビリティを実現するパス

選択方式の検討”,信学総大B-6-137(2005年3月)

[12] 林理恵, 宮村崇, 栗本崇, 三澤明,“動的マルチレイヤ経路最適化アルゴリズム

の有効性と適用領域検討”,信学総大B-6-138(2005年3月)

[13] 伊達拓紀, 栗本崇, 三澤明,“大規模ネットワークにおけるサービス振分方法の

一評価”,信学総大B-6-6(2011年3月)

[14] 服部恭太,片山勝,三澤明,“帯域保証ネットワークにおける遅延変動対応型

のTCPウィンドウ制御方式の評価”,信学総大B-6-27(2011年3月)

[15] 望月このみ, 山崎裕史, 岩田英明, 三澤明,“パケット通信におけるサービス機

能無中断切替方式の検討”,信学総大 B-6-43(2011年3月)

[16] 樋口健一, 小川賢太郎, 岩田英明, 三澤明, “機能分散型トランスポートネッ

トアーキテクチャへのForCES利用の可能性” ,信学総大B-6-150(2011年3月)

[17] 宮澤功, 樋口健一, 杉園幸司, 伊達拓紀, 三澤明,“機能分離型構成のソフトウ

ェアルータへの適用性評価”,信学ソ大B-6-15(2011年9月)

[18] 伊達拓紀, 栗本崇, 三澤明,“サービス識別に基づくトラヒック振分のオフロー

ド方式の制御”,信学ソ大B-6-17 (2011年9月)

[19] 望月このみ, 山崎裕史, 岩田英明, 三澤明,“パケット通信におけるサービス

機能切替方式の評価” ,信学ソ大B-6-18 (2011年9月)

[20] 山崎裕史, 杉園幸司, 望月このみ, 三澤明,“経路計算アルゴリズムの計算量削

減の一検討”,B-6-49(2011年9月)

[21] 小川賢太郎, 三澤明,“IP転送装置のモジュール間標準通信プロトコルForCESの

相互接続性検証”,信学ソ大B-7-24 (2011年9月)

[22] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“ポート間損失差

最小化のための入出力ポート対応型周回性アレイ導波路回折格子間接続方式の提

案”,B-12-1(2011年9月)

[23] 君島直樹,服部恭太,中川雅弘,片山勝,三澤明,“波長ルーティング型光ス

イッチにおける切替時のクロストーク低減方式の提案”,B-12-2(2011年9月)

[24] 望月このみ,樋口健一,栗本崇,三澤明,“パケット処理装置におけるセッシ

ョン断のない障害切替方式の検討“,信学総大B-6-87 (2012年3月)

[25] 伊達拓紀, 栗本崇, 三澤明,“パケット転送処理の動的な並列数変更法の提案

“,信学総大B-6-91(2012年3月)

[26] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“階層化パケット

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スケジューリング方式HiSLIPの提案“,信学総大B-6-95 (2012年3月)

[27] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“周回性アレイ導

波路回折格子を用いた波長スイッチにおける光マルチキャスト方式の提案“,信学総

大B-12-24 (2012年3月)

[28] 君島直樹,中川雅弘,服部恭太,片山勝,三澤明,“波長スイッチ大規模化に

向けた検討“,信学総大B-12-25 (2012年3月)

[29] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“階層化を用いた

光TDMスケジューリング方式HOTSの提案“,信学ソ大B-6-24 (2012年9月)

[30] 望月このみ,山崎裕史,栗本崇,三澤明,“VM移動高速化を実現するトラフィ

ック制御方式の提案“,信学ソ大B-6-74 (2012年9月)

[31] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,平松淳,“光L2スイッチネ

ットワークにおけるバーストフレーム同期方式の検討“,信学ソ大B-12-10 (2012年9

月)

[32] 望月このみ,山崎裕史,三澤明,“エッジクラウド実現に向けた仮想機能移動

スケジュール決定方式の提案“,信学総大BS-2-5 (2013年3月)

[33] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワー

クにおけるトラヒック変動差分に着目した動的帯域割当方式Rip-up & Re-allocateの

提案“,信学総大B-6-3 (2013年3月)

[34] 伊達拓紀,樋口健一,片山 勝,三澤明,“広域仮想L2SWアーキテクチャの分

散処理構成の提案”,信学総大B-6-87(2013年3月)

[35] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワー

クにおけるマルチリング対応型のタイムスロット同期方式の検討”,信学総大B-12-

10(2013年3月)

[36] 福岡亜希,金子斉,小川猛志,樋口健一,三澤明,“Inlineでのサービス情報

通知によるサービス振分制御法“,信学ソ大B-6-2 (2013年9月)

[37] 望月このみ,山崎裕史,三澤明,“ユーザトラヒック帯域を保証する仮想エッ

ジ機能再配置方式の評価”,信学ソ大B-6-8 (2014年9月)

[38] 伊達拓紀,中川雅弘,服部恭太,君島直樹,樋口健一,片山勝,三澤明,“広

域仮想L2SWにおけるアドレス移動に追従した光パス帯域制御方式の提案“,信学ソ大

B-6-42(2013年9月)

[39] 中川雅弘,服部恭太,君島直樹,片山勝,三澤明,“光 L2スイッチネットワーク

における階層化計算と繰り返し最適化を用いた動的帯域割当方式”,信学ソ大 B-6-45

(2013年 9月)

[40] 山崎裕史,望月このみ,三澤明,“エッジクラウドにおける予備装置共用によ

る高信頼化の検討”,信学ソ大B-6-77 (2014年9月)

[41] 服部恭太,中川雅弘,君島直樹,片山勝,三澤明,“光L2スイッチネットワー

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クにおける時刻配信型タイムスロット同期方式のタイムスロット制御精度の評価”,

信学ソ大B-12-10(2013年9月)

[42] 望月このみ,土屋英雄,三澤明,“仮想エッジにおけるVNF再配置計算の高速化

手法”,信学総大B-6-11(2015年3月)

[43] 土屋英雄,望月このみ,三澤明,“仮想エッジのVNF再配置におけるパス数の削

減手法”,信学総大B-6-12(2015年3月)

[43] 望月このみ,鈴木裕志,土屋英雄,山崎裕史,内田博志,三澤明,“仮想エッ

ジにおけるVNF再配置可否判定方式”,信学ソ大B-6-25(2015年9月)