ICU · 2011. 11. 17. · 『uro-sepsis』は心臓外科では稀....
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心臓血管外科手術は本質的に体外循環・心停止等の過大な侵襲を伴い、術後集中治療室での管理を必須とする.
重篤な患者であるほど『磁石のように』耐性菌を吸い寄せ、院内環境に重大な インパクトをもたらす.
心臓血管外科周術期の感染対策はICUのみならず院内環境において重要な責務.
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①術後感染症
②スタンダードプリコーション
③手洗い
④消毒薬の基礎
⑤耐性菌
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1.術野感染:手術操作の及んだ部位
1)手術部位感染(Surgical Site Infection)
2)ドレーンからの逆行性感染
2.術野外感染:手術操作に関連しない部位
1)呼吸器感染
2)尿路感染
3)カテーテル感染
4)腸炎、胆のう炎、胆管炎
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CRBSI VAP SSI UTI 消化管感染
A chain is no stronger than
its weakest link.
SSI:
CRBSI:
VAP:
UTI:
手術部位感染 カテーテル血流感染 人工呼吸器関連肺炎 尿路感染
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脂肪まで
骨まで
縦隔炎
皮膚
皮下組織(脂肪)
筋膜・筋肉・骨
臓器・体腔
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①清潔手術.
②縦隔は感染に対して脆弱な空間.
③全身状態不良(心不全・腎不全・糖尿病…)
④手技が長時間に及び、過大な侵襲が起こる.
⑤人工心肺、低体温による免疫能低下.
⑥多量の人工物を補填⇒『再建手術』(cf.『切除手術』)
⑦一度感染を合併すると致死的.
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目的1『排液』
①心嚢・胸骨下 ②胸腔
排液不良⇒心タンポナーデ、血胸、気胸
目的2『情報』
出血量が3mL/kg/hを超えたら止血術.
ドレーンの色が薄くなり、量が徐々に減ると、
外科医は安心して寝当直できる.
ドレーン:『開放式』『閉鎖式』があるが、
現在は感染予防のため閉鎖式が主流
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CDCは全てのドレーンは48時間以内の抜去を推奨している.
現在は、基本的にペンローズなどの開放式ドレーンは感染リスクを上げるため、使用されなくなりつつある。
不要なドレーンは早期に抜去することが重要.
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閉鎖回路で、清潔を維持.
清潔性は静脈注射と同等で、看護師がラク
直接計量できるため、排液量が正確
Needle-less
valve
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最も手がかりになることは『痰の性状』
ICU-Nsの記載をたよりに方針を決めている.
ハイリスク
①術前からの心不全、胸水貯留
②COPD合併症例
③胸部大動脈操作⇒反回神経麻痺⇒誤嚥
④喫煙者の緊急手術
⑤側開胸(肺の圧排・ポートアクセスも?)
⑥長時間の体外循環
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集中治療科専従医が主導する呼吸管理
日中に気管支鏡などで評価
NPPVの積極的な使用
再挿管の減少 呼吸トラブルのストレス激減
日中に方針が立てられ、夜間のcallが激減
人工呼吸器のモードが複雑化し、外科医が扱えなくなった(?)
『肺炎として治療する基準』
:集中治療医、ICU-Nsの意見を重視.
痰の性状、グラム染色
⇒感染が複雑化する前に『Meet the expert (ICD)!』
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カテ抜去し、無理やり(?)早めに歩かせたい
『uro-sepsis』は心臓外科では稀.
グラム陰性菌による『endotoxin shock』
重篤化することも.
尿路感染自体は女性が多いが、高齢男性の前立腺肥大合併例のフォーレ抜去後尿閉には注意が必要.
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絶対的原則 『1分1秒でも早く抜く』
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①重症患者に(心臓術後)
②体内にそれも血管内に(中心静脈内に)
③大量の異物を(長いカテーテルを)
④長期間留置する.
超深刻な事態 この事実に我々は『慣れ』過ぎている.
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カテーテルなど体内に埋め込まれた全ての異物は、細菌が定着したら取り除くのは困難、というよりほぼ不可能.
異物には免疫が届かない.
バイオフィルム ⇒細菌が作るゼリー状の空間
言わば「細菌の要塞」
異物上にこれが形成されると極めて深刻.
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挿入時は
『マキシマル・プリコーション』 :手袋、ガウン、マスク、帽子、清潔野.
※大腿静脈は感染率が高いが、テクニックが容易であること、鎖骨下穿刺時の気胸などを危惧し選択されることが多い.
※挿入部は、基本的に透明ドレッシング.
※定期交換は不要だが、はやく抜くのが原則.
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術後問題となる開心術後
『無石性胆のう炎』:大手術、外傷、熱傷などに合併する胆石の無い胆のう炎
(胆管のイレウス?)
その他、心臓の手術の後(なぜか)、腸管・胆管の動きが悪くなり虚血性腸炎・胆管炎を合併することがある.
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『正常細菌叢』『正常粘膜』の保護
『bacterial translocation回避』『消化管運動促進』
絶食期間の短縮化、経腸栄養の積極的導入
長期人工呼吸管理が予想される患者
誤嚥が予想される患者
術後48時間以内にED tubeより経腸栄養開始.
集中治療科医師と協議し、100mL/h×3/dayで開始
『間欠投与』間に呼吸リハビリ、気管吸引を確保
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『患者の全ての湿性分泌物は感染性がある!
と考えて直接接触してはいけない。』
『これらとの接触が予想される場合には手袋』
これが基本。
※吸引などで分泌物が飛び散る危険性がある
場合、ガウン着用する。
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手洗いは『大事』というのは分かる.
医療従事者は、一般人に
『手洗い』『手指衛生』が
①なぜ必要で(目的・必要性)
②どのように行うか(方法)
③どんな薬剤を用いるか(手段)
④行わない場合どんなことが起こるか(危機管理)
説明できなければならない.
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19世紀 産科医による出産で産褥熱が、産婆による出産の10倍であることに気付く。
産科医の死体を触った手が目に見えない汚染を帯び、これで産褥熱が発生していると報告。
ゼンメルワイスの論文でショックを受け自殺をした医師もいた。
手洗いの重要性は定期的に認知されるべき。 特に偉い人ほど手を洗わなくなる。
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Q)赤痢患者の診察中、患者の粘血便が自分の指に付着してしまった.この事故は、自分の昼食前の出来事であり、昼食はサンドイッチを準備していた。以下より正しいものを選びなさい。
①石鹸と流水で手を洗ってからサンドイッチを食べる。
②そのまま手を洗わずにサンドイッチを食べて、赤痢を発症した後に抗菌薬を服用する。
(ねころんで読めるCDCガイドラインより抜粋)
これと同様のことが起こっていないか?
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日常業務において、診察の後に手を洗わず、他の患者を触診して、とりあえずMRSAを感染させた後バンコマイシンを投与して治癒させる…???
なんか変だなーと思ったら、
手洗いを『科学』しよう!!
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『流水石鹸』のほうが時間もかかるし
一生懸命やるから、より衛生なのではないか⇒間違い
手指消毒の基本はアルコール擦式 『3mL』
肉眼的汚染がある場合のみ石鹸手洗い。
上から下までしっかりプッシュすると『3mL』
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菌数 1/10(1min)
肉眼的に汚れが
ある場合のみ
一般病棟Nsの 手には4000個の 黄色ブドウ球菌
菌数 1/3000(15sec)
それ以外の
すべての場合
泥・垢など汚染があると 他の消毒薬が失活するから
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2002年、CDCはガイドラインで手指衛生の第一選択を 『流水石鹸法』から『アルコール擦式消毒』へ変更した。
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①ロタウイルス(乳児下痢症)
②芽胞形成菌(クロストリジウム属)
③寄生虫の虫卵などなど
これらの場合、流水手洗い。
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アルコール
消費量
MRSA 保菌率
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あ指輪は細菌(特にグラム陰性菌)
が定着する⇒40%の指輪が汚染!
看護師の指輪から数カ月に渡って同じ細菌が検出された例.
基本的に指輪・マニキュアはダメ.
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『定着(colonization)』:微生物が宿主に存在しているが病的状態をもたらさない状態⇒原則治療は不要
『感染(infection)』:微生物が宿主に存在し、かつ病的状態の原因となっている状態⇒治療を要する
『消毒(disinfection)』:対象中の微生物を、感染を起こさないレベルまで減少させる。
『滅菌(sterilization)』:対象中の微生物を、完全に殺滅しゼロにする。(オートクレーブ、ガス滅菌など)
『選択毒性(selective toxicity)』:ヒトに障害を与えず、
微生物に対してのみ毒性を有する薬剤しか、抗生剤・消毒薬に適さない。
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心臓血管外科は、基本的に無菌手術.
したがって、手術部位感染を起こすのは体表のグラム陽性球菌なかでも『MRSA』
除菌『ヒビテン浴+ムピロシン 5day』
近日gentian violetの嗽水、鼻腔塗布も導入
⇒ムピロシンの乱用による耐性化を懸念
術後の新規保菌者も放置せず積極的に除菌.
『目的とすることは、MRSAのいない病棟、ICU』
『search and destroy policy』 c.f)MRSAがいない国 オランダのW.I.P
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重篤な患者は『磁石のように』耐性菌を吸い寄せ院内衛生に重大なインパクトをもたらす
感染対策は『ゲリラ戦』
⇒明確な勝利がなくストレスフル.
SSI outbreakを経験した際には個々の些末な因果関係に固執せず、包括的対策を展開する必要がある
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臨床ですぐ使える感染対策エビデンス集 (矢野邦夫・森兼啓太編)
ねころんで読めるCDCガイドライン(矢野邦夫著)
オランダには何故MRSAがいないのか?(岩田健太郎著)
感染対策にすぐ使える臨床微生物の基礎知識(奥住捷子編)
県西部浜松医療センター感染対策総合マニュアル(矢野邦夫著)