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Pharmaceuticals & Medical Devices Agency 5回応用トキシコロジーリカレント講座 ICH M3(R2) -QA– (独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA毒性領域 篠田和俊 5回応用トキシコロジーリカレント講座

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第5回応用トキシコロジーリカレント講座

ICH M3(R2)- Q&A –

(独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA)毒性領域

篠田和俊

第5回応用トキシコロジーリカレント講座

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資料の内容

1. M3(R2)ガイダンスの主な改訂点

2. Q&A作成の経緯

3. Q&Aの概要 毒性試験のための限界量

代謝物

毒性の回復性

配合剤の毒性試験

早期探索的臨床試験

幼若動物試験

生殖毒性

安全性薬理第5回応用トキシコロジーリカレント講座

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M3(R2)ガイダンスの主な改訂点

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<M3及びM3(R1)>「医薬品の臨床試験のための非臨床安全性試験の 実施時期についてのガイドライン」(医薬審第1019号)

<M3(R2)>「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」 (薬食審査発0219第6号)

GUIDANCE ON NONCLINICAL SAFETY STUDIES FORTHE CONDUCT OF HUMAN CLINICAL TRIALS ANDMARKETING AUTHORIZATION FOR PHARMACEUTICALS

ICH M3(R2):主な改訂点

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一般に、

ガイドライン:法律を守るべき基本的な規範(ルールや縛り)を示している(実施基準)

ガイダンス: 考え方や進め方についてその具体例を挙げて対処方法を指南している

M3(R2)ガイダンス⇒旧版よりも、自由度が高く、

フレキシブルな運用を目指す

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ICH M3(R2):主な改訂点

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新規追加項目(下線項目はQ&Aの対象項目)

一般毒性試験のための高用量選択

ヒト初回臨床投与量の算出

早期探索的臨床試験

免疫毒性

光安全性試験

薬物乱用に関する非臨床試験

配合剤のための非臨床試験

ICH M3(R2):主な改訂点

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ICH M3(R2):主な改訂点

従来項目の主な追加・変更点(1/2)全体を通して3Rsの原則の明確化

薬理試験

PD試験

薬物動態試験

vitro薬物代謝・血漿タンパク結合/Ⅰ相前

PK試験・vitro薬物相互作用/Ⅲ相前

ヒト代謝物の非臨床安全性評価/Ⅲ相前

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ICH M3(R2):主な改訂点

従来項目の主な追加・変更点(2/2)急性毒性の評価

原則としてⅢ相前、致死性を評価指標としない

遺伝毒性

遺伝子突然変異/単回前、染色体異常/反復前

生殖発生毒性試験

WOCBP:Ⅰ試験/Ⅲ相前、Ⅲ試験/避妊の徹底

小児における臨床試験

幼若動物での毒性試験

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Q&A作成の経緯

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【Q&Aの必要性】

M3(R1)のほぼ全ての内容について改訂/新規追加

総頁数は M3(R1):7頁→M3(R2):28頁

ガイダンス案への多数のパブコメ国内:約150件欧米:約150件

ガイダンス検討段階からQ&A作成の必要性について議論あり

Q&A作成の経緯

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【検討経過・予定】

2009年 6月 :ICH M3(R2)合意

12月 :ICH(St. Louis)会合/IWGトピックとして採択

2010年 2月 :ICH websiteに意見聴取用のmailbox設置

4月 :「Q」について8テーマを選択

:各パーティーが分担して「回答案」の作成/検討

10月 :E-mail及びウェブカンによる議論を開始

2011年 6月 :ICH(Cincinnati)会合/3テーマについて合意

11月 :ICH(Seville)会合/1テーマについて合意

2012年 2月 :4テーマについて合意

4月~:国内通知発出予定(step 5)第5回応用トキシコロジーリカレント講座

Q&A作成の経緯

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Q&A の概要

毒性試験ための限界量 代謝物 毒性の回復性 配合剤の毒性試験 早期探索的臨床試験 幼若動物試験 生殖毒性 安全性薬理

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毒性試験のための限界量(Limit Dose for Toxicity Studies)

に関するQ&A

限界量に関するQ&A

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限界量に関するQ&A

MTDと同等に適切な限界量としては、十分に高倍

数の全身暴露量が得られる用量、暴露の飽和が起こる量、又は投与可能な最大用量(MFD)がある

一般的に、臨床における暴露量に対して50倍の暴

露量に達する投与量は、いかなる動物種を用いた急性及び反復投与毒性試験においても、最高用量として認められる

M3(R2)の記述

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【質問概要】

Q1 50倍の定義と算出方法は?

Q2 50倍ルールを使った時の第I相試験用量は?

Q3 用量制限毒性が求まらないケースでは?

Q4 低分子化合物以外への50倍ルールの適用は?

Q5 適切な最大投与可能用量(MFD)とは?

Q6 第III相臨床試験に必要な毒性試験の要件とは?

Q7 経口投与以外への50倍ルールの適用は?

Q8 一般毒性試験以外への50倍ルールの適用は?

限界量に関するQ&A

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【Q1】50倍の定義と算出方法は?「臨床における暴露量に対して50倍の暴露量」はどのように算出するのか、推定治療用量での暴露量又は第Ⅰ相試験での最大暴露量のどちらと比較するのか?

【A1】 通常は以下のように算出する

Cmax値に基づく比較が適切な場合もある(例:痙攣等)

一般に、第Ⅰ相試験では治療用量よりも高い暴露とするためより小さいマージン(<50×)となる(Q2及び3参照)

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限界量に関するQ&A

暴露比(50×)=臨床試験の推定用量※でのヒトAUC値(群平均)

毒性試験の最高用量群でのAUC値(群平均)

(※臨床第Ⅱ及びⅢ相試験で設定しようとする最高用量)

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限界量に関するQ&A

【Q2】50倍ルールを使った時の第Ⅰ相試験用量は?暴露量の50倍ルールを用いて、げっ歯類及び非げっ歯類のいずれの毒性

試験でも毒性がみられない場合に、臨床用量を上限(動物試験の最高用量での暴露の1/50)まで増加させても、ヒトで副作用が認められないのであれば、臨床用量をさらに増量できるか?

【A2】短期(例、14日間)の臨床試験における用量は、動物試験での最大暴露の1/10に達する用量、あるいはヒトで副作用

を起こす用量の、いずれか低い方の用量まで、慎重に増量することができる

早期探索的臨床試験のアプローチ4の考えと一致する

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限界量に関するQ&A

【Q3】用量制限毒性が求まらないケースでは?暴露量の50倍アプローチにより毒性試験での投与量を選択し、少なくとも1

つの毒性試験で毒性所見はみられたものの、その所見が用量制限毒性でなかった場合、臨床における暴露量の上限はどのようになるか?

【A3】臨床試験の投与量は、毒性試験で認められた毒性所見の無毒性量に基づいて増量することになる

50倍のマージンを必ずしも確保する必要はない。

一般的なリスク評価の観点(例えば、毒性所見の可逆性、臨床でのモニターの可否、適応症の重篤度、臨床試験での副作用など)から臨床用量を決定できる

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限界量に関するQ&A

【Q4】低分子化合物以外への50倍ルールの適用は?限界量として50倍の暴露量が適用されるのは低分子化合物のみか?

【A4】 50倍ルールは低分子化合物のみに適用される

バイオ医薬品の非臨床試験における高用量選択は低分子化合物に対する考え方とは異なる(S6(R1)参照)

バイオ医薬品については、 M3(R2)は臨床開発に関連する非臨床試験の実施時期に関してのみの指針となる

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限界量に関するQ&A

【Q5】適切な最大投与可能用量(MFD)とは?適切なMFDはどのような検討に基づいて設定すべきか?

【A5】MFDは投与用量ではなく、暴露量を最大化するように設定

投与可能な容量は、動物種の解剖学的及び生理学的特徴並びに調製検体の特性によって規定

調製検体の物理化学的安定性も重要

溶解性に限界がある場合、静脈内投与などの投与経路では用量が制限される(吸入や経口投与のような投与経路の場合には、溶解性の限界を理由にMFDを設定することは不可)

(つづく)

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限界量に関するQ&A

【A5】複数の媒体(例、水系の媒体、非水系の媒体、さまざまな粘性の媒体)を用いた検討

適切と考えられる調製物(通常、3種類)を動物に投与して、いずれで最大の暴露が得られるか検討

使用される媒体は、科学論文、試験実施者の経験あるいは規制当局の情報によって、その使用条件下で重大な毒性を生じないことが裏づけられたものとする

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限界量に関するQ&A

【Q6】第III相臨床試験に必要な毒性試験の要件とは?用量制限毒性がいずれの動物種においても明らかでなく、第Ⅲ相試験前に各動物種について1つの毒性試験しか実施していない場合、どのような対応が必要か?(米国における第Ⅲ相試験のための推奨に関してのQ)

【A6】米国における第Ⅲ相試験を実施するための推奨に従って、毒性を明らかにするために、MTD、MFD、あるいは限界量までの投与量で評価を行う必要がある

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限界量に関するQ&A

【Q7】経口投与以外への50倍ルールの適用は?高用量選択、並びに臨床暴露量(AUC)の50倍のマージンに関する指針は経口以外の投与経路(例、経皮や吸入)にも適用されるか?

【A7】全身暴露を目的とした薬物(経皮投与を含む)については、

50倍ルールは適切

局所での効果を目的とした局所投与薬物については、通常、投与可能最大用量(MFD)又は最大耐量(MTD)に基づいて

毒性試験における高用量が設定されるが、この用量では臨床における局所濃度や全身暴露量に達しない場合があり、50倍ルールの考えは適用できない

(つづく)

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限界量に関するQ&A

【A7】全身での作用を目的とした吸入薬の吸入毒性試験における高用量は、臨床暴露量(AUC)の50倍以上で、ヒトにおける推定肺沈着量の10倍以上となる用量を設定できる

肺で局所的に作用するようデザインされた吸入薬の高用量は、ヒトにおける推定肺沈着量の50倍以上であり、臨床暴露量(AUC)の10倍以上となる用量を設定できる

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限界量に関するQ&A

【Q8】一般毒性試験以外への50倍ルールの適用は?幼若動物を用いた毒性試験や生殖発生毒性試験の最高用量の設定にも、50倍のマージンは適用できるか?

【A8】幼若動物を用いる毒性試験で予め毒性が想定されない場合など、その他の毒性試験においても、臨床暴露量とのマージンに基づいて最高用量を設定する考えを適用できる

生殖発生毒性試験については、S5(R2)ガイダンスにおいて

「高用量群では母動物に何らかのごく軽度の毒性が発現することが望ましい」とされている

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限界量に関するQ&A

【Q9】限界量やMFDで毒性が認められない場合の臨床における暴露限界は?最高用量が限界量(1000 又は2000 mg/kg)又はMFDであって、その用量

では毒性が認められない場合に、臨床試験での暴露限界はどのようにすべきか?

【A9】臨床用量は、限界量又はMFDで最小の暴露を示す動物種における血漿AUCの1/2の暴露量に達する用量まで増量することができる

この臨床暴露量においてヒトで副作用が認められないのであれば、リスク/ベネフィットを考慮した上で、さらに増量することできる

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限界量に関するQ&A【Q&Aのまとめ】

50倍ルールは低分子化合物のみに適用する

50倍ルールは全身暴露を目的とした薬物に適用する

50倍の定義と算出方法は

毒性が認められなかった場合、臨床試験での暴露限界は、50倍ルールでは1/10、限界量(1000又は2000 mg/kg)及びMFDでは1/2が目安となる

MFDの検討要件には、最大暴露量、投与可能容量、物理化学的安定性、溶解性、複数媒体での検討等が含まれる

暴露比(50×)=臨床試験の推定用量※でのヒトAUC値(群平均)

毒性試験の最高用量群でのAUC値(群平均)

(※臨床第Ⅱ及びⅢ相試験で設定しようとする最高用量)

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代謝物(Metabolites)に関するQ&A

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代謝物に関するQ&A

ヒトでみられた代謝物を非臨床試験で特徴づける必要があるのは、その代謝物の臨床での暴露量が、投与薬物に関連する総ての物質の暴露量の10%を超え、かつ、ヒトにおける暴露量が毒性試験での最大暴露量よりも明らかに高い場合のみである

M3(R2)の記述

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【質問概要】

Q1 「明らかに高い」の定義は?

Q2 10% の定義と計算方法は?

Q3 必要な非臨床安全性試験の種類は?

Q4 遺伝毒性試験の必要性は?

Q5 10% の算出に用いる臨床データは?

Q6 10% の算出に用いる非臨床データは?

Q7 非臨床代謝データを取得する時期は?

代謝物に関するQ&A

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【質問概要】

Q8 毒性学的に懸念がない代謝物とは?

反応性代謝物の評価は?

Q9 安全性薬理試験の必要性は?

Q10 「インビトロでの生化学的な情報」とは?

Q11 非臨床試験のデザインは?

Q12 プロドラッグへの適用は?

代謝物に関するQ&A

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【Q1】 「明らかに高い」の定義は?“ヒトでみられた代謝物を非臨床試験で特徴づける必要があるのは、・・・・10%を超え、かつ、ヒトにおける暴露量が毒性試験での最大暴露量よりも明らかに高い場合のみである”の「明らかに高い」とは?

【A1】 “明らかに高い”は統計学的に有意に高いことを意味するものではない

トキシコキネティクスの評価において、一般的に、平均AUC で2倍以上の差は意味があると考えられ、通常、その代謝物のヒトでの暴露量が動物の暴露量の2倍以上である場合に「明らかに高い」と考える

(つづく)第5回応用トキシコロジーリカレント講座

代謝物に関するQ&A

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【A1】通常、動物での暴露量がヒトの暴露量の少なくとも50%を

示す場合には、その代謝物の毒性は十分に評価されていると考える

ただし、ある代謝物がヒトの総暴露量の大部分を占めるような場合には、動物における当該代謝物の暴露量がヒトの暴露量を超えていることが必要となる(Q12参照)

代謝物に関するQ&A

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【Q2】 10%の定義と計算方法は?“ヒトでみられた代謝物を非臨床試験で特徴づける必要があるのは、その

代謝物の臨床での暴露量が、投与薬物に関連する総ての物質の暴露量の10%を超え、・・・・”の10%とは?

【A2】 10%の閾値とは、通常、群の平均AUC (例えば、0時間から無限大までのAUC)に基づき、薬物及び代謝物について測定された総暴露量に対して、ヒトの代謝物が10%を超えることを示す

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代謝物に関するQ&A

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【Q3】 必要な非臨床安全性試験の種類は?“代謝物の毒性の特徴づけが必要である場合、どのような in vivo 非臨床試験において、代謝物の十分な全身暴露が達成されることが重要か?

【A3】一般毒性の評価に用いる1種の動物、がん原性試験に用いる1種の動物(がん原性の評価が必要でない場合は in vivoの小核試験で用いる1種)、胚胎児発生試験に用いる1種の動物で、代謝物に十分に暴露されていることが重要となる

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代謝物に関するQ&A

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【Q4】 遺伝毒性試験の必要性は?代謝物についてin vitro の遺伝毒性試験は推奨されるか?代謝物について遺伝毒性評価を実施するときは、定量的構造活性相関(QSAR)の評価で十分か?あるいは遺伝毒性試験を実施すべきか?

【A4】本ガイダンスの適用範囲外である

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代謝物に関するQ&A

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【Q5】 10%の算出に用いる臨床データは?臨床では放射性標識体を用いた定常状態での暴露評価が困難であることから、動物の毒性試験で観察された代謝物の暴露量との比較には放射性標識体を単回投与したヒトの薬物動態試験のデータを用いてよいか?

【A5】単回投与データを用いることでよい

ヒト反復投与試験において定常状態での代謝物のレベルが10% を超えることが示唆された場合、その代謝物に関する追加の非臨床評価を考慮する必要がある

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代謝物に関するQ&A

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【A5】放射性同位体で標識しない方法を用いた場合、代謝物が親薬物あるいは投与薬物に関連するいずれの物質の10%未満であればその代謝物が投与薬物に関連する物質総量の10%を超えない

例えば、P+M1+M2+…+Mn = 総量のとき、M1がPの10%未満であるか、あるいは他のMの10%未満であればM1は総量の10%未満となり、M1について安全性評価は必要とされない

代謝物に関するQ&A

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【Q6】 10%の算出に用いる非臨床データは?ヒト暴露量との比較に用いる動物の暴露量は毒性試験での最大暴露量、NOAEL、NOEL、又はMTDでの暴露量のいずれを用いることが適切か?

【A6】懸念となる毒性について、ヒトで適切にモニターでき、かつそのリスクが容認できるのであれば、動物の MTDでの暴露量を用いる

MTDでの毒性がヒトでモニターできない、あるいはリスクが

容認できないのであれば、懸念される毒性についてのNOAELでの暴露量を用いる

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代謝物に関するQ&A

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【Q7】 非臨床代謝データを取得する時期は?開発段階のどのタイミングで非臨床での代謝物に関するデータを取得すればよいか?

【A7】動物とヒトの in vitro代謝データはヒト臨床試験の開始前に得られるべき

動物とヒトの in vivo代謝データは大規模臨床試験あるいは長期間投与試験(通常は第Ⅲ相試験) の開始前までに入手すべき

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代謝物に関するQ&A

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【Q8】 毒性学的に懸念がない代謝物とは?反応性代謝物の評価は?

毒性学的懸念のない代謝物とは?化学的な転移をする可能性のあるアシルグルクロナイドは懸念される例か?化学的に反応性のある代謝物についての対応は?

【A8】多くのグルクロン酸抱合体は、化学的な転移(例、反応性アシルグルクロナイド)を除いて、懸念はない

化学的に反応性の高い代謝物は、毒性学的懸念があるものの、その消失半減期は短く、血漿中に蓄積せず、また、通常は不安定であるため、個別に試験することは現実的ではない

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代謝物に関するQ&A

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【Q9】 安全性薬理試験の必要性は?非臨床試験での特徴づけが必要な代謝物について、安全性薬理試験を実施すべきか?

【A9】ヒト代謝物のデータが得られる試験(通常、第Ⅰ相試験)にお

いて、すでに安全性薬理に関する評価は実施されており、非臨床安全性薬理試験は、通常、必要ない

親化合物を用いた非臨床試験からは予測が可能でなかった安全性薬理に関わる症状がヒトで認められた場合には、ヒト代謝物について安全性薬理試験の実施を考慮する(S7A及びB参照)。

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代謝物に関するQ&A

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【Q10】 「インビトロでの生化学的な情報」とは?「・・・薬物相互作用の可能性に関するインビトロでの生化学的な情報は・・・」とあるが、インビトロでの生化学的な情報とは?

【A10】 In vitroでの生化学的な情報には標準的な in vitro 代謝評価(例えば、CYP 阻害、PXR 活性化アッセイなど)を含み、

肝ミクロソームや肝細胞を用いた試験や、薬物トランスポータを介する相互作用の検討試験も含まれであろう

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代謝物に関するQ&A

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【Q11】 非臨床試験のデザインは?代謝物に関する非臨床試験(動物種、投与期間、試験の種類など)のデザインはどのようにすべきか?

【A11】試験デザインの詳細については、本ガイダンスの適用範囲外である

試験デザインは科学的判断に基づいてケース・バイ・ケースで考慮すべきである。

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代謝物に関するQ&A

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【Q12】 プロドラッグへの適用は?プロドラッグ(代謝物が薬理活性の大部分を示す)についても代謝物に関する指針が適用されるか?

【A12】使用動物種において、ヒトと同様に、プロドラッグが活性代謝物に変換されるならば、本ガイダンス で推奨される標準的な試験アプローチが使用できる

使用動物種において、活性代謝物が十分に生成しないならば、通常の代謝物で推奨される以上の試験の実施が求められる

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代謝物に関するQ&A

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【A12】使用動物種において、活性代謝物が十分に生成しない場合には、活性代謝物の非臨床試験の実施タイミングは本ガイダンスで概説されている一般的なタイムラインに従うべきである

代謝物に関するQ&A

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代謝物に関するQ&A【Q&Aのまとめ】

「10%」の閾値は、平均AUCに基づき算出する

「有意に高い」とは、平均AUC で2倍以上の差をいう

ヒト暴露量は、放射性標識体の単回投与による薬物動態試験成績から得られるが、定常状態での暴露状況も考慮する

ヒト暴露量との比較は、「ヒトでのモニターの可否」&「リスクの容認の可否」によって、MTD又はNOAELの暴露量とする

必要となる試験は、一般毒性・がん原性・胚胎児試験(1種)

非臨床安全性薬理試験は必要ない

反応性代謝物について個別の試験は現実的でない

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毒性の回復性(Reversibility of Toxicity )

に関するQ&A

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回復性に関するQ&A

(一般原則)非臨床安全性評価の主たる目的は、標的臓器、用量依存性、暴露との関係、及び適切な場合には回復性についての毒性の特徴を明らかにすることである

8. 回復性試験

毒性変化の可逆性を検討するため,いずれかの試験で回復群を設けることを考慮する

反復投与毒性試験に係るガイドラインの一部改正について(平成11年4月5日医薬審第655)

これまでは・・・・

M3(R2)の記述

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【質問概要】

Q1 回復性の評価が適切と考えられる場合とは?

完全な回復性を示すことが重要か?あるいは、

完全な回復性の可能性を示すことで十分か?

回復性に関するQ&A

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回復性に関するQ&A

① 回復性の評価はどのような場合に必要か?

② 回復性の評価はどのように実施すればよいか?

③ 回復性の科学的評価とはどのようなものか?

④ 回復性試験が必要な場合とは?

⑤ 回復性試験を実施するタイミングは?

⑥ 回復性試験を複数の試験で実施する必要はあるか?

⑦ 回復性試験はどの試験で実施すればよいか?

⑧ 回復性試験が必要でない場合とは?

⑨ 完全な回復性を示すことが必要か?あるいは完全な回復性の可能性を示すことで十分か?

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【Q①】 回復性の評価はどのような場合に必要か?

非臨床試験において重篤な毒性が認められ、臨床においても副作用につながる可能性がある場合には、毒性の回復性(本来の、又は正常な状態に戻ること)について評価を行うべきである

【Q②】 回復性の評価はどのように実施すればよいか?

科学的評価あるいは回復性試験に基づいて実施する

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回復性に関するQ&A

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【Q③】 回復性の科学的評価はどのようなものか?

科学的評価においては、病変の範囲と重篤度、作用がみられた器官系の再生能、並びにその作用を示す既存薬の知見を含めて評価する

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回復性に関するQ&A

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【Q④】 回復性試験が必要な場合とは?

【A④】

科学的評価では毒性の回復性が予測できず、

さらに、

その毒性が臨床における暴露量に比較的近い暴露量

(例:臨床における暴露量の10倍以下)でみられた場合

その毒性が臨床において病態生理学的に進行した段階にならないと検出できず、さらにその時点ではすでに臓器機能の明らかな低下が予測される場合(※)

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回復性に関するQ&A

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【Q⑤】 回復性試験を実施するタイミングは?

【A⑤】

非臨床でその毒性が認められない試験期間と同等の期間の臨床試験を実施するためには、原則として、回復性試験は必要ない

回復性試験の成績は、非臨床でその毒性が認められた試験期間と同等の期間の臨床試験の実施に必要となる

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回復性に関するQ&A

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【Q⑥】 回復性試験を複数の試験で実施する必要があるか?

【A⑥】

特定の病変の回復性が、短期間(例えば2週、又は1ヵ月)

の毒性試験において示されており、その病変がより長期の試験において重篤化しないのであれば、長期毒性試験においてその回復性を繰り返し評価する必要はない

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回復性に関するQ&A

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【Q⑦】 回復性試験はどの試験で実施すればよいか?

【A⑦】

臨床試験をサポートするために、より早期に回復性を確認する必要がない場合には、慢性毒性試験において回復性を確認することが効率的であろう。この試験においてすべての懸念のある毒性が評価できる

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回復性に関するQ&A

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【Q⑧】 回復性試験が必要でない場合とは?

【A⑧】

その毒性が、重篤になる前の初期段階でヒトにおいて容易にモニターできる場合

その毒性が、ヒトには無関係であることが知られている場合(例えば、げっ歯類のハーダー腺の毒性)

その毒性が、臨床的に意味のない高用量でのみ観察される場合(ただし、※の場合を除く)

その毒性が、(化学的あるいは薬理学的な)類薬で認められる毒性と同質であり、また、類薬の先行する臨床試験において管理可能と考えられる場合

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回復性に関するQ&A

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【Q⑨】完全な回復性を示すことが必要か?あるいは完全な回復性の可能性を示すことで十分か?

【A⑨】

完全な回復性を示すことは必須ではなく、完全に回復する可能性を示すことで十分である

完全な回復が期待されない場合には、臨床的なリスク評価の際にその点を考慮すべきである

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回復性に関するQ&A

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回復性に関するQ&A【Q&Aのまとめ】

回復性は、重篤な毒性が認められ、副作用につながる可能性がある場合に、科学的評価又は回復性試験の実施によって評価する

回復性試験は、科学的評価では回復性を予測できず、毒性が臨床に近い暴露量(≦×10)で発現、又は臨床において進行した状態でしか検出できない場合に実施を考慮する

回復性試験の成績は、その毒性が認められた投与期間と同等の期間の臨床試験の実施に必要となる

毒性変化が長期投与によって重篤化しないのであれば、長期試験において回復性を繰り返し評価する必要はない

完全に回復する可能性を示すことでよい