「工場の経営戦略と工場経営変革€Œ工場の経営戦略と...ESD21 「イノベーション経営講座」 「工場の経営戦略と工場経営変革」 (株)戦略情報センター
GATE Modern Warfare · Gate:ModernきWarfar e < < き伊丹耀司戦場ジ斯ィ戦んホき 68...
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GATE:Modern Warfare
ゼミル
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【注意事項】
このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
【あらすじ】
男は兵士だった。
男はオタクだった。
男は厄介者だった。
男は選ばれてしまった。
男は戦い続けた。
男は生き残ってしまった。
──異世界への『扉』が男を戦場へ呼び戻す。
-
※誤字指摘は感想欄ではなく誤字指摘欄にお願いします。
※ゲート 自衛隊彼の地にて斯く戦えりと某作品のクロスオーバーです。
※短編から連載カテゴリに移動しました。
※9話更新に伴いアンチ・ヘイトタグを追加しました。
※4/28:炎龍編開始
※100万UA記念小ネタ投稿
※炎龍編完結しました。
※8/5:小ネタ追加しました。
※最終章開始しました。
-
目 次
100万UA記念予告:■ATE:■■
────
■■■ Warfare
1
■■■■、■してなお斯く■えり(上)
───────────────
11
■■■■、■してなお斯く■えり(下)
───────────────
27
妄想以外の何物でもないステータス
─────────────
諸々
47
年末特別編:同人誌即売会にて斯く戦
─────────────
えり
56
Gate:Modern Warfar
e
──
伊丹耀司戦場で斯く戦えり
68
1:Call of Duty/デイ
─────
ビス特派員の取材記録
91
2:Enemy at the Ga
──
tes/皇居前攻防戦(上)
109
3:All or Nothing/
──────
皇居前攻防戦(中)
130
4:Ash to Ash/皇居前攻
──────────
防戦(下)
153
5:A Hero Never Di
───
es/皇居前攻防戦(終)
182
5.5:Countermeasur
-
────────
e/今後の方針
203
6: Modern Warfare
─────────
/事情と対応
221
6.5:Topic of Goss
───
ip/伊丹という男(1)
246
6.75:The Alamo/伊丹
────────
という男(2)
267
7:Apocalypse Now/
────────
イタリカ防衛戦
288
7.5:The Reason/伊丹
────────
という男(3)
313
0:Unforgiven/終結に至
────────────
る死闘
339
8:Thousand Yard S
───
tare/戦場でワルツを
384
8.5:The Things Th
──
ey Carried/帰路
407
─0.5/8.75:Tactica
l Logistic/転ばぬ先の…
──────────────────────
429 9: Paper Bomb/謀略質
──────────────
疑
453
9.5:Fragmentary R
──
eport/情報的包囲網
469
9.75:Sleepless Ni
─────────
ght/迫撃
489
-
10:Counter Strike
──────────
/容赦なく
515
10.5:The Love Pu
───
nch/彼と彼女の第2章
540
10.75:True Grit/告
──────────────
白
558
10.9:Clear and Pr
esent Danger/パンドラの
──────────────
箱
577
10.99:Concourse/伊
───────
丹耀司と嘉納太郎
597
10.999:Scientia e
st Potentia/ピニャ・コ・
─────────
ラーダの憂鬱
615
11:BRIEFING/罪と嘘
──────────────────────
639 11.5:THERMAE ROMA
────
E/温泉より愛を込めて
656
12:1st Wave/前哨戦
──────────────────────
687 13:2nd Wave/本格攻勢
──────────────────────
713 14:Final Wave/狂乱の
──────────
嵐、来たる
738
15:Under Siege/亜神
────────────
と兵士
760
-
16:Break Through/
───────────
敵中突破
783
17:Good Night, and
Good Luck/天空の蜂
──────────────────────────────────────────
811 18:Run All Night/
───────
ミッドナイトラン
832
18.5:The Dogs of
─────────
War/集結
870
19:The Raid/暁の出撃
──────────────────────────────────────────
893 20:Hound in the S
──────
ky/大島沖空中戦
915
20.5:Public Broad
─
casting/テロ、ライブ
942
21:Crash Landing/
──────
エアポート2017
960
22:Guess Who's Co
──
ming to…/決定事項
994
22.5:Plan─B/陰謀のセオ
─────────────
リー
1026
23:Nonstop/大脱出
──────────────────────
1048 24:Game Set/決着
──────────────────────
1079 Last(上):Executive
-
Decision/権力者のゲーム
──────────────────────────────────────────
1108 Last(中):There and
Back Again/ゆきて帰りし物
──────────────
語
1128
Last(下):When Soldi
er Comes Marching
────
Home/兵士達の行進
1153
エピローグ:Welcome Bac
─────
k,Mr Hero.
1180
番外編
こちらコンビニDMZ特地駐屯地支店
────────
異常なし(上)
1204
こちらコンビニDMZ特地駐屯地支店
────────
異常なし(下)
1223
Gate:Modern Warfar
e2 ─Dragon Killers
─ 0:Final Stand/プロ
────────────
ローグ
1252
1:Brand New Day/新
──────────
たなる日々
1263
2:Armory & Boot C
─────
amp/兵士達の日常
1288
3:Thing of the Pa
st/ソルジャー・ストレンジャー・オー
-
───────────
ルドマン
1315
3.5:Red Sparrow/女
───────────
達の暗闘
1336
4:Hunting Party/華
───────
麗なるギャツビー
1351
5:Night Moves/予期せ
───────────
ぬ延長戦
1367
6:Trespass/真夜中のアウ
────────────
トロー
1388
6.5:A Jewel in a
──
Dunghill/事後処理
1421
7:Zero Tolerance/
─────────────
起爆
1444
7.5:After Effect/
─────────
最後方の戦場
1471
8:Ignition/ハートに火を
────────────
つけて
1493
9:Man on Fire/英雄の
─────────────
条件
1512
10:Resolution/個人的
────────────
な問題
1534
11:Comrades/地獄の7人
─────────────
+1
1554
11.5:Change About
───────
/残された者たち
1576
12:Good Samaritan
-
──────
/荒野の7人(上)
1597
13:God of War/荒野の
──────────
7人(中)
1621
14:Night Raid/荒野の
──────────
7人(下)
1638
14.5:Crossing/再会
──────────────────────────────────────────
1665 14.75:Informer/知識
───────────
は力なり
1688
15:The Master Sni
──────
per/魔弾の射手
1705
15.5:Sin of their
─────────
/功罪の行方
1734
16:Tracer/効果判定
──────────────────────
1750 17:May God have N
─
o Mercy/慈悲無き場所
1774
18:High Roller/一か
─────────────
八か
1796
19:Final Round/殺さ
───────────
れざる者
1816
20:Obsession/神を縛る
─────────────
は…
1855
エピローグ:Legend Is B
────────────
orn
1876
GATE:Modern Warfar
-
e3 ─Fallen Empire─
0:The Longest Day
─────────
/プロローグ
1903
1:Black &amp; Whit
────────
e/旅の始まり
1912
2:A Nightmare on
Sandstorm/砂塵の記憶
──────────────────────────────────────────
1927 3:No Pain,No Gain/
──────────
挑む者たち
1945
4: Labyrinth of t
he Dead/死の迷宮を突破せよ
─────────────
(上)
1967
5: Labyrinth of t
he Greed/死の迷宮を突破せよ
─────────────
(下)
1991
6:True Love/砂塵の夜に
─────────────
(上)
2017
7:Flesh/砂塵の夜に(下)
──────────────────────
2035 7.5:Backstage/もう1
───────────
つの舞台
2055
8:Into the Academ
──
ia/ロンデル滞在記(1)
2072
9:Sisters/ロンデル滞在記
─────────────
(2)
2091
-
10:Washout/ロンデル滞在
───────────
記(3)
2116
11: Assassination
────
/ロンデル滞在記(4)
2133
11.5:SOG/過去と兵士
──────────────────────────────────────────
2153 11.6:Shadow Soldi
──────
ers/過去の汚点
2174
11.7:The Enemy of
─
my Enemy/呉越同舟
2194
11.8:Back to Back
────────────
/戦友
2213
12:The Holy Land/
────────────
巡礼者
2238
13:God only knows
──────────
/神と人と
2254
14:Going Dark/狩られ
────────────
しもの
2276
15:Love Story/ある愛
─────────────
の詩
2301
15.5:Proof of Lov
──────
e/そして母になる
2327
15.6:Espionnage/蠢
────────────
くもの
2345
15.7:Confidential
Agreement/異郷の旧友
-
──────────────────────────────────────────
2363 15.8:False Estate
────────
/堕ちたもの達
2385
TOKYO/ALNUS WAR
16:GINZA Breakdow
─────────
n/天空の蜂
2413
17:Pale Horse Com
ing/レイド・オン・トーキョー
──────────────────────────────────────────
2436 18:The Sins of th
───
e Father/父と子
2457
18.5:Damage Repor
─────────
t/状況報告
2483
18.75: Informatio
n Control/思わぬ一報
──────────────────────
2509 18.9:Line of Duty
─────────
/英雄の残像
2527
19:Evacuation Ord
────────
er/退却準備
2550
20: Rebellion Pla
───────
n/反抗への階梯
2571
21:The Line/翡翠宮防衛
───────────
戦(上)
2594
22:Trial by Fire/
──────
翡翠宮防衛戦(下)
2613
-
23:Shock and Awe/
─────────────
救出
2642
23.5:Into the Sto
───────
rm/役者が集う
2663
24:Airborne/英雄と翔べ
───────────────
2680
25:Brotherhood/嵐の
──────────────
街
2696
25.5:Battle Ready
─────────
/作戦開始前
2713
26:Underground/作戦
─────────────
開始
2731
27:The Beast/鋼鉄の咆
──────────────
哮
2752
28:Wildcard/未知の切り
──────────────
札
2782
-
100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warf
are
〈2017年/????〉
藤丸立香
南極大陸/人理継続保障機関フィニス・カルデア
ゲーティアによる人理焼却は多大な被害を出しながらも人類最後のマスター、藤丸立
香と彼が率いる太古の英雄の現身たる英霊らの奮闘によって阻止された。
──その筈だったのだ。
1 100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warfare
-
「これは……一体何が起きているというんだ!?」
「世界中で戦争が起きている……そんな、何で急に!」
世界中が燃えていた。
北米で、中東で、ヨーロッパで、アフリカで、アジアで。
第3次世界大戦
・・・・・・・
「これは最早国同士の全面戦争──
だ!
軍隊同士
・・・・
幾らなんでも異常だ。世界全土でこうも同時に、しかもここまで大規模な
の
戦闘が勃発するなんてありえない。
一切観測できない
・・・・・・・・
だがどうしてだ、ここまでの異常事態なのに魔術的な要素も痕跡も
だって!?」
2
-
英霊でもない。魔獣でもない。魔神でもない。魔術師も死徒も関係ない。
国を、世界の大半を占める普通の人間達が、一欠けらも人外の技が使われていない科
学の産物によって殺し合いを繰り広げていた。
「どうにか傍受できた外部の通信やデータベースを分析した結果、現在カルデアの外の
世界がどうなっているのか僅かながら把握する事が出来た」
中東某国ならびにワシントン上空で2度の核爆発。
ヨーロッパの複数の大都市で化学兵器テロが発生。魔術協会の本拠地たる時計塔が
存在するロンドンも広範囲が汚染され連絡不能に。
北米大陸の東海岸とヨーロッパの大部分がロシア軍によって占領され、米軍とNAT
Oの残存勢力が共同戦線を張って対抗するも、奪還の目途は立っていない。
猛禽類
戦
闘
機
鋼鉄の蜂
軍
用
ヘ
リ
アメリカとヨーロッパの空を赤い星の
と
が我が物顔で飛び回り、完全
鋼鉄の獣
装
甲
車
両
武装の兵士を腹に抱えた
が陸を蹂躙する。
中東では反欧米主義者による軍事クーデターを発端に独裁国家が誕生。核武装すら
達成した独裁者は周辺の国々を侵略しつつあった。
様々な民族と国々が入り乱れるアフリカでは武装勢力の活動が過激化し民族浄化
3 100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warfare
-
……少数民族や異教徒の虐殺が続発。豊かな自然と資源に恵まれた大地は屍山血河と
化した。
アジアの地でもロシアの突然の暴挙に触発されたのか、2015年の人理焼却以前か
ら急速に軍事力を強化していた中国とその支援を受けた北朝鮮も大規模な軍事行動を
起こし、朝鮮半島と日本列島もまた数十年ぶりの戦火に襲われている。
どの土地も後に残るは完膚なきまでに破壊されたかつての都と名も罪も無き人々の
躯の山のみ──
「隠していてもしょうがないから正直に教えよう。この事態に対応可能な組織力を持つ
国連や各国の関係組織、魔術教会や聖堂教会といった魔術関連の組織のいずれとも連絡
が取れない。
──そう、またなんだ。このカルデアは現在この世界のあらゆる組織から孤立した状
態にあるといっていい」
「そうですか──でも、だからといって」
でも・・
「そう、
だ」
4
-
それがどうした
・・・・・・・・
。
カルデアが孤立するのは初めてではない。世界崩壊規模の変異も何度となく遭遇し
──そして解決してきた。
第3次世界大戦? 世界中が戦場に? 外部の支援は何1つなし?
だからといって惨状を前に何もせずに黙って見ている理由になりはしない。
この程度で諦め、絶望し、立ち止まってたまるものか。でなければ世界を人理焼却か
ら救えはしなかっただろう。
「この所長代行であるダ・ヴィンチちゃんの権限と独断で地下炉心を再稼働させたから
レイシフトする為の魔力はとっくに確保済みさ! 協会との連絡も繋がらないんだか
ら勝手にやらせてもらったよ!」
「今回の場合はセイレムの時と同じ、同時代へのレイシフトという事になるのでしょう
か」
「そうなるね。だけど今回はセイレムの時以上に大規模かつ危険な事態だ。誰が敵で誰
が味方なのかもさっぱり見当がつかないし、相対する被害者の数も桁違いになるだろ
う。
5 100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warfare
-
……気を付けてくれよ立香くん。今回も念の為サポートとしてマシュにも同行して
もらう。2人とも無事に帰ってきて欲しい」
「分かっていますよ。絶対にこの異変を解決してみせます!」
「頑張りましょう、先輩!」
そして人類最後のマスターとかつて彼のサーヴァントだった少女は再びレイシフト
へ挑む。
──だが。
彼らは知らなかった。
科学の炎に覆われた世界は、魔の理を受け入れないという現実を。
「システム・フェイト発動不能……!?」
「先輩、これではサーヴァントの皆さんを召喚する事が出来ません!」
6
-
聖杯探索
グランドオーダー
此の戦いは
の為の聖杯戦争に非ず。
現
代
戦
モダンウォーフェア
一切の魔道が介在しない
也。
現代い
ま
英霊
過去の死者
英雄無き
の戦場に、
の存在は決して許されない。
──故に。
現代い
ま
世界を救おうと足掻く少年と少女の助けとなるのは、
を生きる人々に他ならな
い。
「エミヤ!? でもカルデアに居るエミヤとは少し違う気が……」
「ふむ。私の記憶が正しければ君とは初対面の筈なのだが、何処かで会ったかね?」
例えば。
故郷を奪われた人々の命をも狙う武装勢力から彼らを守るべく孤軍奮闘する、未来の
守護者の生前たる黒弓の弓兵。
7 100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warfare
-
「大変です先輩、あのキアラさんが普通の格好をしています!」
「あのう、初対面の方にいきなりそのような事を言われる記憶も筋合いもないと思うの
ですが」
例えば。
戦火によって大切な存在を失った人々へ無償の愛と癒しを注ぐ、人類悪の獣としての
素質を秘めた聖女。
「こんな戦場のど真ん中で日本人の団体さん、しかも子供まで一緒ってのは珍しいねぇ」
「貴方もエミヤさんと同じ義勇軍の方でしょうか?」
「そんな大層なもんでもないさ……俺はたまたま生き残ってしまっただけの、ただの死
に損ないだよ」
そして。
殺す事も出来ず
・・・・・・・
世界の裏側で暗闘を繰り広げながら、たった1人の標的を
、散った戦
友らの後を追って死ぬ事も出来ぬまま、戦場をさ迷い歩くタスクフォース141
最後の生き残り
・・・・・・・
。
8
-
「ローチ、ゴースト、ソープ、ユーリ、プライス、ニコライ──皆死んじまった」
「あの日、ホテル・オアシスでマカロフを殺す最後のチャンスだったのに俺達が失敗した
結果がご覧の有様だ」
「マカロフは元の力を取り戻したどころか、より一層権力を拡大し、第3次大戦をやり直
して──今度は成功させやがった。今こうして世界中が戦場になっちまったのは、俺が
やり遂げる事が
・・・・・・・
出来なかったせい
・・・・・・・・
なんだ」
「……それでも」
「……」
「生きてる限り、まだチャンスは残っていると俺は信じています」
「──っ、ああ、そうだな」
「生きてる限り戦い続ける。爺さん達もきっとそうしただろうさ」
9 100万UA記念予告:■ATE:■■■■■ Warfare
-
FATE:Grand Warfare
亜種特異点X/人理定礎値:EX
A.D.2017 現代無限戦火 ワールドウォー3
──戦士たちの挽歌──
10
-
■■■■、■してなお斯く■えり(上)
伊丹耀司3等陸尉(32歳)はオタクであると同時に自衛官である。
立派な国家公務員の端くれである以上、出向や配置転換、極稀に海外派遣というとい
う名目の転勤または単身赴任も、一般企業同様に当然ながら存在していた。
国連関連機関への出向
・・・・・・・・・・
伊丹に
が下されたのは、採血やレントゲン撮影その他諸々を含
む隊内の健康診断を終えてしばらくしてからの事である。
「そんなわけで俺しばらく海外に単身赴任する事になったから」
「はぁ!? いや単身赴任は分かりましたけど海外って。海外の何処? 場所は?」
「そこらへんはスマンが一応守秘義務って事で」
11 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
妻の梨紗にはぐらかす伊丹自身も腑に落ちない態度を覗かせていた。
人理継続保障機関フィニス・カルデア──上官が告げた出向先である。
初めて聞く名前であった。国連の機関や部署に明るいとは口が裂けても言えない伊
丹であっても違和感を抱いてしまう程度には怪しさが漂う。『人理継続保障機関』とい
う機関名も何ともご大層だ。
ネットの検索でもカルデアの名前は引っかからず、辞令を告げた上官本人もカルデア
の具体的な活動内容を知らされていない様子だった。
しかし上層部からの正式な辞令としての通達であるのもまた事実である。曲がりな
りにも現役の特殊作戦群隊員である伊丹を一本釣りを実現する、それが許されるレベル
の権力を持つ機関であると示していた。
あまりの不審さに、普段伊丹がしでかす問題に頭を悩ませ苦虫を噛み潰してばかりの
上官ですら『何が待ち受けているか分からんから気をつけろよ』と心配の言葉を送って
きた程である。
怪し過ぎるが正式な手続きを踏まれた辞令である以上、宮仕えの伊丹は従わなければ
ならない。今の伊丹に出来るのは、
(せめてネット完備でアニメやマンガを見てても御咎めのない部署でありますように。
12
-
あと夏と冬の同人誌即売会シーズンには帰国出来る部署でありますように。それから
──)
と祈る事ぐらいだ。
「海外出張分の手当てはキッチリ出してくれるそうだが、俺が居ない間にまたフィギュ
アの即売会で散在しすぎるんじゃねーぞ」
「ギクッ。こ、ここ今度は失敗しませんよーだ!」
自身の欲望に正直過ぎるせいでイマイチ信用出来ない妻に溜息を漏らしつつ、必要な
荷物をトランクケースに押し込んでいく伊丹。うち4分の1近くはお気に入りの薄い
本やアニメのDVDである。
そんな夫の背中を、背を向ける伊丹からは見えないが思いつめた陰のある表情で見つ
めていた梨紗は、おもむろに足音荒く自分の部屋に駆け戻ると数分後、息を荒くして行
き以上の勢いで戻ってきたかと思うと、
「先輩。これ!」
13 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
「何だよ梨紗、って」
黄金色に輝く文様が
・・・・・・・・・
刻まれた符
・・・・・
彼女が突き出した手に握られていたのは、
。
「サークル仲間から貰ったんだけど、未来の道しるべ? に導いてくれる効果があるら
しいから、外国に行っちゃう先輩のお守りにちょうど良いかもって思って……少しは先
輩の奥さんらしい事してあげたいし」
後半は顔を赤くし、目を逸らしながらだったが、伊丹の耳に届くには十分だった。
「ありがとな、梨紗」
伊丹も面映そうに笑いながら、感謝の言葉を述べて黄金の符を荷物の中へと滑り込ま
せる。
──これが分水嶺になると知る由もなく。
14
-
2015年のある日の事だ。
人理継続保障機関フィニス・カルデア。
存在目的は疑似地球環境モデル・カルデアスの観測による未来での人類社会存続の保
証。
しかし2016年に人類が滅亡する未来がカルデアスにより観測。
人類滅亡を阻止すべくカルデアは魔術教会・聖堂協会他各地より派遣・スカウトした
49名
・・・
魔術師ならびに血液検査を経て一般公募から集めたレイシフト適性者
を滅亡の
原因と推測される西暦2004年の日本に発生した観測不能領域へと派遣し、原因を排
除するプランを実行。
だが──作戦当日。レイシフト実行直前、管制室とレイシフトルーム内で謎の爆発が
発生。
責任者オルガマリー・アムニスフィアを含むカルデア職員、マスターと呼称されるレ
イシフト適性者の大部分が死亡または重傷、安否不明という甚大な被害がもたらされ
15 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
た。
活動可能なマスターは2名。
直前のシミュレーションによる負荷で体調を崩し当時医務室へ一般公募枠の少女、藤
丸立香。
彼女に付き添う形で同じくその場を離れていた一般公募枠の自衛官、伊丹耀司。
爆発現場に駆けつけた両名は発見した重傷の少女、マシュ・キリエライトの救助を試
みる最中、誤作動を起こしたレイシフトシステムに巻き込まれ。
そして……
〈2004年〉
伊丹耀司
炎上汚染都市・冬木
16
-
一般人がまずお目にかかれないような光景や経験は何度も直面してきたつもりだっ
た。
人が目の前で自殺を図る瞬間を見た事があるし、自衛隊の訓練で様々な兵器を扱った
り、飛んでいる飛行機から飛び降りたり、災害派遣で廃墟になった街から市民を救助し
たり、遺体を回収した事も経験済みだし、今回のカルデア出向ではるばる南極大陸に上
陸まで果たした。
だが。
「魔術だの何だのもそうだけどさ、まさか本物のファンタジーな存在と戦う羽目になる
なんてなぁ!」
燃え盛る街。
蠢く怪異。押し寄せる、肉を持たぬ動く骸骨の群れ。
ホラー映画かファンタジー映画に出てくるような存在がカタカタと耳障りに体を鳴
らし、オレンジ色に照らされた剣や槍を手に伊丹へと襲いかかる。
伊丹は建物の残骸の一部らしき捻じ切れた鉄パイプを拾い上げて何とか抵抗を試み
17 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
る。
長さとしては一般的なライフルに近い。捻じ切れた部分は鋭利に尖り、突き刺すのに
も使えそうだ。バットや剣のように一端を両手で握るのではなく中央付近で間隔を空
けて構える──自衛隊おなじみの銃剣格闘の構え。
武骨を通り越して粗雑な、しかし肉を切り骨を断つには十分に鋭い刃を備えた刃を、
銃剣に見立てた先端で外へと受け流すと鉄パイプを反転。顔面めがけ直突きを打ち込
む。
頭部に衝撃を受けた骸骨兵はあっさりと後ろに転がる。頬骨の一部を欠けさせた動
く髑髏はやはりカクカクとぎこちなく、すぐに武器を手に立ち上がる動きを見せた。
剣持ちを相手している間にも他の骸骨兵が伊丹を半包囲する形で距離を詰めつつあ
る。
武器は鉄パイプ1本、孤立して敵は多数。しかも飛び道具持ちもいる。まさに多勢に
無勢。
おまけに周囲で炎上する建物のあちこちからも、サバイバル演習で隠れ場所に追っ手
役が忍び寄って来ていた時に似た嫌な気配がした。
「よし、こういう時は──逃げるが勝ち!」
18
-
一転、回れ右して全力ダッシュでその場から逃げ出す伊丹。
幸いにも骸骨兵の足は遅く、弓持ちが逃げ出す伊丹の背中に矢を射かけたものの、的
を絞らせない為のセオリー通り右へ左へランダムに曲がる伊丹を捉える事は出来な
かった。
建物の残骸の陰からの奇襲と包囲を警戒するぐらいならと。また炎に包囲され、熱波
と煙から逃れるという意味でも、見晴らしがよく火の気が少ない河原を目指して逃げ
て。
逃げて。
逃げて。
途中、人の形をした石像が幾つも立ち並んでいるのに気付いた直後、立香とオルガマ
リー、デミ・サーヴァントに目覚めたという可憐な少女に似つかわしくない巨大な盾(と
何故か露出の多いレオタード姿になった)を軽々と振り回すマシュと再会し。
そこへ新たな敵が襲いかかる。
禍々しいほどに美しく、怖気が走るほどの色気を湛えた狂ったサーヴァント。鎖の結
界に閉じ込めてきたコイツを斃さなければ伊丹達の命はない。
19 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
「ハアアアアァaaaaaaaaaaaa──ッ!!」
マシュが矢面に立って襲ってきたサーヴァント──ランサーの攻撃を盾で防ぐ。護
る。背後の伊丹を、立香を、オルガマリーを殺らせまいと立ち向かう。
成り行きでマシュのマスターとなったが魔術師としてはド素人の立香には苦戦する
マシュを見守る事しか出来ない。オルガマリーは何度かガンド、呪いを発射する魔術で
援護しようと試みるも、ランサーの迫力と身軽さに翻弄されて実行に移せずにいた。
伊丹も立香と似たようなもの。自衛官で立香よりも先にカルデア入りした分だけ専
門的な訓練はひとしきり経験済みとはいえ、魔術回路の存在とレイシフト適性を除けば
一般人の範疇でしかない。オルガマリーみたいにガンドすらまともに使えないのだ。
せめて手元に鉄パイプではなく銃があれば、と伊丹は思う。
伊丹耀司という人間は決して逃げるしか能のない臆病者ではない。人外の存在であ
るサーヴァントに通用するかはともかく、転移直前まで死にかけていたマシュだけを戦
わせて何も感じずにいられるほど恥知らずでもない。
民を守る自衛隊員として、敵と戦う兵士として、伊丹耀司という1人の男としての意
地があった。
せめてこれぐらいはと、もしランサーの矛先がマシュから立香達へ向いた場合に備え
20
-
て警戒する。
サーヴァント同士の戦いに意識が奪われている2人と違い、サーヴァント以外にも骸
骨兵という敵の存在を伊丹は覚えていた。そいつらも襲ってきたらいっそ3人を川に
引きずり込んで──
「────っ!!!」
それは伊丹が最初から第3者の奇襲を警戒していたからか。
あるいは選び抜かれた特殊部隊の隊員ですら翻弄する危機察知能力の賜物か。
足音や気配、空気の震えを明確に認識して察知した自覚もなく、気が付くと伊丹は鉄
パイプをせめてもの盾代わりに、更に両腕で頭部や心臓といった致命的な急所をガード
しながら、立香とオルガマリーの前に飛び出した。
銃で撃たれたかのような衝撃。肉が穿たれる感覚。灼熱の痛み。
黒塗りの短剣
・・・・・・
が数本、伊丹の両腕や防御から外れた肩に、切っ先が反対側から飛び出
すぐらいに深々と突き立っていた。
傷口から噴き出した血が服を汚す。腕の筋腱を傷つけられたせいで握力が失われた
手から鉄パイプが滑り落ちた。鉄パイプの一部は楔型に抉られていた。短剣の投擲に
21 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
よって大きく削られたのだ。
本来投げナイフという武器は、誇張された創作の表現とは違ってこうも深く肉に刺さ
りはしないし、鉄を大きく削るほどの威力もありはしない。
常人の範疇を超えた
・・・・・・・・・
力と術理が働かぬ限り
・・・・・・・・・・
。
「痛ってぇつかそういうレベルじゃねぇぞこれぇ!」
「伊丹さん!?」
「ちょっと何よ急に、ってこれはナイフ!? 一体どこから!?」
「──ホウ。曲ガリナリニモ、アサシンデアル我ガ奇襲ヲ、察知スルカ」
新たな声が、ずるりと虚空から現れる。
「な、アサシンですって!?」
「ランサーだけでも手一杯なのにもう1体サーヴァントが……!」
川沿いの街灯の上に短剣を構えた黒衣に仮面のサーヴァント──アサシンが両腕か
ら血を流して蹲る伊丹達を見下ろしていた。
22
-
これでサーヴァントの戦力比は2対1。歯噛みしたマシュが漏らしたように、ラン
サー単体だけでも不利だった状況が更に悪化した事になる。
「ダガ、幸運モソコマデダ」
黒塗りの短剣を構えてアサシンが告げる。アサシンの言う通りであるのは伊丹自身
も理解していた。
両腕を短剣に貫かれ、傷口からは動脈もやられたのか鮮血が噴き出し足元に赤黒い水
たまりが生じつつある状態。全身を脱力感と寒気が支配しつつある。大量出血による
ショック症状の前触れだ。
自分達を庇ったせいで伊丹に命に関わる重傷を負わせてしまったのだと理解した立
香とオルガマリーの顔から一気に血の気が引いた。
「クソッたれめ……!」
逃げる体力どころか立ち上がるだけの力すら急速に失われつつあっても、伊丹はそれ
でも立香とオルガマリーを背に、歯を食いしばって顔を上げた。
23 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
それこそが伊丹耀司という人間の本質。
立ち向かわなくても解決可能な物事であれば、どれだけ罵声や非難を浴びようとも逃
亡を辞さない。
だが伊丹も履修済みのとあるむせるロボアニメ曰く『逃げた先がパラダイスとは限ら
ない』。全ての物事がそれで解決出来る筈もないのが現実だ。
逃げられないなら立ち向かう。
どこまでも易きに流されたがる矮小な精神であったならばなりふり構わず土下座し
て命乞いでもしていただろう。
伊丹はしなかった。それが答えだ。
男としての意地か。成人すらしていない少女達への危害を与えまいという自衛隊員
としての気概か。意識すら不鮮明になりつつあった伊丹としては具体的な理由など今
更どうでもよかった。
立て。戦え。足掻き続けろ。
24
-
誰かの叱咤の声が聞こえる。立香とオルガマリーの声、マシュの盾とランサーの得物
がぶつかり合う激しい金属音が遠のきつつあるのに、叱りつける声だけは不思議とハッ
キリと胸の奥へと響き渡る。
まともに動かない筈の血まみれの手が勝手に胸元へと伸び、伊丹は無意識に懐に収め
ていた物を握りしめていた。
そこにあるのは梨紗から渡され持ち歩いていたお守り。
黄金色に輝く文様が
・・・・・・・・・
刻まれた符
・・・・・
。
「呼符!? どうして魔術師じゃない貴方がそんなものを!」
伊丹の血を吸った呼符が次の瞬間金色の閃光を放ち、膨大な魔力が渦を巻きながら集
束していく。
25 ■■■■、■してなお斯く■えり(上)
-
マズい。直感的に判断したランサーが地面が砕ける程に強く踏み込んで伊丹へ吶喊
獲物伊
丹
する。マシュの反応すら間に合わぬ速度で光の向こう側にいる
を串刺しにせんば
かりの突きを放つ。
果たして。
ランサーの両腕に伝わった感触は──
26
-
■■■■、■してなお斯く■えり(下)
ランサーの両腕に伝わったのは肉を貫く感触ではなく、マシュの盾と同等かそれ以上
に強靭な分厚い鋼の硬さであった。
「こういうのはキッチリ演出が終わるまで待つのがお約束なんじゃないの?」
「ッ!!!」
未だ治まらぬ光芒の向こう側から聞こえた男の声にランサーの本能が警告を発した。
本能に従い今度は大きく後方へと跳躍した直後、距離を開けたランサーと大盾を構え
直したマシュの間にいくつかの鉄の筒が投げ込まれる。
呼符が放った光よりも更に眩く、同時にサーヴァント同士の激突音よりも凄まじい轟
音が河原を震わせた。同時に白煙が爆発的に広がり、マシュや立香達を覆い隠す。
ランサー ──ギリシャ神話の登場人物の1人、メドゥーサには鉄の筒の正体が
閃光弾
フラッシュバン
発煙弾
ス
モー
ク
と
、2種の手榴弾の同時投擲による産物と理解出来ても警戒を強めたが為
27 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
にその場から動けない。
彼女の代わりにアサシン──呪腕のハサンが動く。閃光と白煙、二重の目潰しを受け
ても暗殺者のクラス故に気配の知覚に長けた彼は躊躇いなく気配の出所めがけ短剣を
投じた。
手応え──無し。煙の中から金属音。何らかの武器で弾いたか。
煙の中から反撃が飛んできた。ハサンの投擲には及ばない速度で飛んできたそれを
街灯を蹴って悠々と回避する。
その筈だった。
跳躍したハサンの足元へ到達したまさにその瞬間、砲弾が爆発しなければ。
「何ダト!」
何かに当たらずとも設定された目標位置に到達次第自ら起爆する空中炸裂弾。
ハサン個人が保有する風除けの加護によって衝撃波や飛散した破片は彼の肉体には
及ばなくとも、精神的な衝撃を与えるには十分だった。
動揺から復帰するまでの数瞬もまた──ハサンの運命を決定づけるには十分過ぎた。
28
-
「隙ありよぉ♪」
童のように無邪気な少女の声。
2つ・・
これまで存在しなかった筈の気配が
、地上と空中に居る己よりも更に上空に察知
した時には手遅れだった。
生前より暗殺教団の頭目として鍛え上げ、サーヴァントとなり人外の身のこなしを手
に入れたハサンよりも更に高く、疾く。
業火の紅と煙の黒に覆われた空をバックに、人形じみた美貌とゴスロリチックなドレ
スに全く不釣り合いな巨大なハルバードを手にした少女が今まさに、空中で逃げ場のな
いハサンめがけ巨大な刃を振り下ろす。
それはまさに死神の──
ラ・
「貴様
ハ一体──」
ハサンが末期の言葉を言い終えるよりも速く、ハルバードが暗殺者の肉体を両断し
た。
29 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
「おのれぇっ!」
ランサーが殺意を露わに槍を振るうと、周囲に張り巡らされた鎖がひとりでに動き出
し、空中のゴスロリ少女へと獲物を前にした毒蛇よろしく襲いかかる。
少女は悠然と、黒く彩られた唇で笑みすら形作りながらハルバードを振るい、いとも
容易く鎖の大蛇を空から落ちたまま打ち払った。
地上の白煙の中から破裂音が聞こえ、煙幕を切り裂いて砲弾がメドゥーサめがけ飛ん
できた。
ハサンと違い風除けの加護を持たぬ彼女は空中炸裂する砲弾の影響をダイレクトに
受けてしまうと自覚していた。舌打ちしながら大きな跳躍を繰り返し、マシュ単騎と相
手していた時とは一転して空中炸裂の影響範囲から逃げ回る。
黒衣の暗殺者を一刀両断した黒ゴス少女は、鋼の重量物を手にしている事を感じさせ
ない軽やかさでマシュの隣へと着地。
片目を隠すほど伸びた前髪の奥で驚きと困惑に目を見開きながら、マシュはゴスロリ
少女を見つめた。
30
-
外見年齢はもしかするとマシュよりも年下に見えるが、ゴスロリ衣装よりも深い黒色
の瞳からは見た目の若さに反比例した老獪な光を帯びている。
「あ、貴女は一体?」
「説明は後回しよぉ。今は堕ちた神のなりそこないを討つのが先決。そうでしょぉ」
「その、助けて頂けるという事は味方? でよろしいのでしょうか?」
私達・・
「そう考えてくれて構わないわぁ。
はぁその為にわざわざ呼び出されてあげたんだ
からぁ」
「じゃあやはり貴女は──!」
「いっくわよぉ、合わせなさぁい!」
疑問の声を置き去りに黒ゴス少女がランサーへと突っ込んだ。慌ててマシュも後を
追いかける。
「貴女の相手はこっちよぉ!」
ハルバードの薙ぎ払いを忌々しげに顔を歪めたメデューサは受け止める。
31 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
一見した体格差はメドゥーサが上。にもかかわらず一瞬の拮抗に勝利したのは少女
の方だ。
元来の高い筋力に加え、『怪力』という読んで字の如くのスキルにまで昇華された膂力
を持つメドゥーサすらも上回る腕力など、ドレスから伸びる少女の細腕の何処に秘めら
れていたというのか。
弾き飛ばされたメドゥーサを追って少女も跳躍。連続して振るわれるハルバードの
軌道は洗練されていて切れ間がない。
少女に比べればメドゥーサの槍の扱いは直線的過ぎ、無駄が多い。一歩下がった位置
で機会を窺っていたマシュにはそれが理解出来た。
「得物は普通じゃないようだけどぉ、槍の扱いは二流みたいねぇ!」
「戯言をっ……!」
人間離れした美貌が憎悪に歪む。
ランサークラスで現界したメデューサが持つ武器はハルペー……生前、文字通りの
怪物
ゴルゴーン
と化したメデューサを殺した不死殺しの刃。己を殺した武器という因果から逆説
的に与えられた神代の武器である。
32
-
死後初めて手にした生
・・・・・・・・・・
言い換えれば、メドゥーサにとってハルペーという武器は、
前馴染みのない武器
・・・・・・・・・
であり。
「神から賜ったのか、奪った物かは知らないけどぉ……だったら振るうに相応しいだけ
の修練を積んでから扱うことねぇ!」
1000年近く
・・・・・・・
何物よりも頑丈なだけに過ぎないが──肉の身体を持つ神として
修
練と実践を重ね続けた少女に、槍の扱いに未熟なメドゥーサが振るう不死殺しの刃は届
かない。
少女が上方向へ跳躍した。メドゥーサの得物ごと叩ききらんとばかりに大きくハル
バードを振りかぶる。
威力と引き換えの大振りな一撃を前にメドゥーサの唇が笑みの形に吊り上がった。
わざわざ身動きが取れない宙に飛び上がるとは!
「油断しましたね!」
宙を見上げ、姿勢を建て直し刺突の構えで迎撃態勢を取る。
33 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
そこへ。
「──今です、ここっ!」
「なっ!?」
横薙ぎのシールドバッシュ。
ゴスロリ少女の攻勢を印象付け、視線を上に誘導させてから息を潜めて機会を窺って
いたマシュによる本命がメドゥーサの頭部めがけ襲いかかる。
咄嗟に軌道上へ石突を滑り込ませるのが間に合ったのはまがりなりにも英霊として
登録されてはいないというわけか。
それでも完全に受けきる事は出来ず、メドゥーサの身体は地面と平行にすっ飛んだ。
何度か地面でバウンドしつつもハルペーを突き立てる事で急減速し、体勢を立て直し
たメドゥーサの表情はより禍々しく、忌々しげに凶悪な顔つきへと今や変貌している。
マシュ1人を相手にしていた時の余裕は何処へやらだ。
対照的に悠然と微笑んだままのゴスロリ少女は軽やかに残心をきめるマシュの隣へ
また降り立った。
34
-
「まだまだぎこちない所はあるけどぉイイ筋してるじゃなぁい。その調子で鍛錬を重ね
れば良い戦士になれるわよぉ」
「はい! ありがとうございます!」
各々の得物を構え直して2人の少女が並び立つ。
立香、オルガマリー、そして伊丹は先程までとは一転、メドゥーサ相手に有利に戦う
マシュと謎の黒ゴス少女の姿を呆然と見守るばかりだ。
「マシュはともかくあの英霊は何なのよ! 伊丹耀司、貴方は一体どんな英霊を召喚し
たというの!?」
「さ、さぁ。俺にも何が何だかさっぱり」
「それよりも所長、マシュとゴスロリちゃんが相手してくれてる今のうちに伊丹さんの
血を止めないと!」
「くっ、確かに今はリツカの言う通りね……!」
不明な点や疑問は多々あるが伊丹が黒ゴスサーヴァントを召喚したのならばマス
ターとなった伊丹とサーヴァントは一心同体。
35 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
サーヴァントが万全に戦うにはマスターからの魔力供給が不可欠だ。車に例えるな
らばサーヴァントが車両でマスターはドライバー兼燃料タンクであり、マスターからの
燃料供給が無くなれば魔力によって肉体を
構築しているサーヴァントは現界を維持できず消滅してしまうのだ。
「怪我を見せなさい。私の治癒魔術で傷を塞ぎます」
ただし既に流れ出た血までは戻せない。
出血量が致死レベルを超えていたら……口走りそうになった言葉をオルガマリーは
カルデア制服
魔
術
礼
装
必死になって飲み込む。血染めの
を脱がせて─この場合患部周辺の服を
直接切り開くのが正しいやり方なのだが─伊丹の傷を観察する。
「あのぉ所長、それがですねぇ」
「えっ?」
拭い取られた血の下か
・・・・・・・・・・
ら現れた伊丹の肌には
・・・・・・・・・・
傷一つなかった
・・・・・・・
。
36
-
「おのれオノレおのれオノレおのれぇ!」
「貴女の相手は飽きてきたしぃ、そろそろ御仕舞いにしましょうかぁ」
サーヴァント同士の戦いはマシュを援護役に黒ゴス少女が怨嗟の声を上げるメ
ドゥーサ相手に優勢を保ち続けていた。
地面に足跡状の亀裂が刻まれる程の踏み込みで少女が防戦一方のメドゥーサの懐へ
突っ込んだ刹那、追い詰められていた筈の堕ちた女神の口元が嗜虐的な笑みを描いた。
「かかりましたね!」
ギリシャ神話の女神メドゥーサ。
見た物を石化させる目
・・・・・・・・・・
彼女を語る中で最も有名な逸話は毒蛇と化した頭髪に
の存在
である。
メデューサが眼を大きく見開く。
次の瞬間、黒ゴス少女の動きがハルバードを振り抜こうとした姿勢のまま、ビデオの
停止ボタンを押されたかのように突如として止まってしまった。
神話の伝説にまで刻まれた石化の魔眼をランサー当人が持っていない筈が無いのだ。
37 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
「あらぁ?」
石化の魔眼を浴びた少女は不思議そうに目をパチクリと瞬かせた。
「完全に石化はしませんでしたか。ですが鬱陶しいのもここまで。このまま首を落とし
てあげますよ!」
「駄目です、やらせは──」
「貴女はそこで見ていなさい!」
マシュが助けに入ろうと試みるも、四方から飛んできた鎖に行く手を阻まれる。
「我がハルペーは不死をも殺す魔の刃。何処の英霊かは知りませんが──何が可笑し
い」
勝利を確信した筈のメドゥーサの笑みが消える。
黒ゴス少女が滑稽な格好で動けぬままハルペーを首に添えられたにもかかわらず、目
38
-
には余裕の光を灯したまま泰然自若とした笑顔を崩さなかったからだ。
「─────フフッ」
前のめりに大きく片足を踏み出しハルバードを振り抜く直前の姿勢のままで硬直し
ていたロゥリィは、唯一動く首から上をおもむろに大きく振った。
元々不安定な姿勢だったマネキン状態の少女の体が遠心力に引っ張られ、完全にバラ
ンスを崩し横へと倒れていく。
少女の体とハルバードが無くなって開けた視界が捕らえたのは、薄れた煙幕の向こう
側で虫けら同然のマスター達が固まっている姿と。
そして
・・・
。
ヨウジィ
・・・・
「
、後はよろしくぅ」
39 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
「ッッッッ!!!」
そもそも。
召喚直後に攻撃を受け止められた時に聞こえた声は誰だった?
閃光弾や発煙弾、空中で炸裂する砲弾を放ったのは誰だった?
目の前の生意気な黒ゴス少女ではない。
断じて違う!
最初から分かっていた筈なのだ。
2人・・
アサシンに傷つけられた男のマスターが召喚したサーヴァントは独りではなく
──
「きさ」
おやすみ
Good Night
「
」
男の声
・・・
が最後に聞こえた。
それが彼女が聞いた最後の音だった。
40
-
……自分を撃ち抜いた弾の音は聞こえなかった。
彼・
は何時の間にかそこに立っていた。
きっと伊丹が偶然召喚に成功して光が生まれたあの時からずっと彼はそこに居たの
だ。負傷や不意の召喚、目くらましの煙や閃光弾に伊丹達が気を取られている間、彼は
ずっと煙幕の中で気配を殺し機会を窺っていたに違いない。
それはサーヴァント……人類史に名を刻んだ英雄の写し身と呼ぶには違和感があっ
た。
ブッシュハットに緑の迷彩服、タクティカルベストに手にしているのは大振りな
対物ライフル
G
M
6・リ
ン
ク
ス
。
歴史に名を馳せた昔の人物ではなく、現代の兵士そのものの身なりをしている。彼と
比べると身の丈よりも大きなハルバードを振り回していた少女の方はゴシック調の
ファッションな分まだ納得し易かった。
射撃姿勢を解くと対物ライフルは光の粒子となって消えた事で、オルガマリー達は目
の前の兵士もまた本当に英霊であるとの認識にようやく至ると同時、我を取り戻す。
41 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
「サーヴァントを同時に2人も召喚したというの?」
「ちょぉっと違うわねぇ。私はぁ本当は呼ばれてなかったんだけどぉ、何だか面白そう
な気配がしたからぁちょちょっと割り込んで付いて来ただ・け・♪」
オルガマリーの呆然とした呟きにランサー撃破によって石化から解けた黒ゴス少女
が答えを返してくれた。
「そこの貴女ぁ、面白い事になってるわねぇ。偽りの時代だからぁそのままで居られる
のかしらぁ」
続けて意味深な言葉を漏らしてから次いで黒ゴス少女の視線が立香、最後に年下の少
女に抱き抱えられるような体勢で尻餅を突いてポカンとした顔の伊丹へと向く。
途端、少女の顔がそれはそれは愉快なものを見つけたと言わんばかりにSっ気溢れる
満面の笑顔と化した。小悪魔っぽいようで妙に迫力を覚えるその妖艶な笑みに、向けら
れた伊丹の方は見惚れる以前にズリズリと後退してしまった位である。
42
-
「へぇっ! ふぅんそうなのそういう事ぉ。それなら納得だわぁむしろ納得するしかな
いわぁ」
「は? あの何の話でしょうか? 助けて貰っておきながら失礼で申し訳ありませんけ
ど、俺と貴女って面識がございましたっけ」
この世界の
・・・・・
「いいえぇその通りよぉ。
ヨウジィとはこれが初めてよぉ」
「んん? ……『この世界』の俺?」
黒ゴス少女が笑顔のまま兵士の方へと顔を向けた。それを合図に伊丹達へ背を向け
ていた兵士が振り返る。
彼は頭にブッシュハットだけでなく目から下を髑髏柄のスカーフで隠していた。そ
の際、髑髏面のアサシンに危うく殺されかけた記憶がフラッシュバックした伊丹が一瞬
たじろいだり、オルガマリーが内心ヒエッとなってチョロッとしそうになったのは完全
な余談である。
ブッシュハットを外し、スカーフを首下へ引き下げる。
隠されていた兵士の素顔が露わになる。
「へ?」
43 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
「あれ?」
「はぁっ!?」
伊丹、立香、オルガマリーの口から三者三様に素っ頓狂な感嘆符が飛び出した。
激戦の疲労に一息ついていたマシュも遅ればせながら兵士の素顔を目の当たりにし、
やはり3人と同じく目を丸くした。
2人・・
「伊丹さんが
……!?」
「お、俺がもう1人いる……だと……」
もう1人の伊丹耀司がそこにいた。
「まぁ驚くよなそりゃ。俺が逆の立場なら同じように驚いてたと思うよ」
血染めのカルデア制服を着てへたり込んでいる方と比べると、微妙に顔立ちが男前
だったり雰囲気に男臭さが滲んでいたりするが。
苦笑したその表情と、軽く薄っぺらいようで不思議と安心感を抱かせる声色は、間違
44
-
いなく伊丹耀司その人だった。
「とと、その前にまずは御約束を守らないとな」
黒ゴス少女と並んだ英霊の方の伊丹はマスターとなったもう1人の自分に向き直り、
伊丹マスター
同じ色で同じ輪郭をした
の瞳をまっすぐ見つめて問う。
アヴェンジャー
・・・・・・・
「
、伊丹耀司」
「問おう、お前がオレのマスターか?」
45 ■■■■、■してなお斯く■えり(下)
-
Fate/Grand Order
─伊丹耀司、死してなお斯く戦えり─
46
-
妄想以外の何物でもないステータス諸々
【クラス】アヴェンジャー
【レアリティ】★4
【真名】伊丹耀司
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C・耐久B・敏捷B・魔力D・幸運A+・宝具???
【クラススキル】
復讐者:C+
復讐者として人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
伊丹の場合は濡れ衣による全世界重要指名手配犯としての汚名と敵対した各国関係
47 妄想以外の何物でもないステータス諸々
-
者、仕事からすぐ逃げる伊丹に振り回される同僚からの怨嗟と怨念が主体となる。
忘却補正:B
人は多くを忘れる生き物だが復讐者は決して忘れない。
一見温和で怠惰でも、世界中を彷徨い仲間達を陥れた裏切者と世界を戦火で染めた狂
犬を討ち果たした彼もまたまぎれもない復讐者なのである。
自己回復(魔力):D++
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
彼は本来魔力も魔術回路も持たない人間だったが死神ロゥリィの加護により後天的
に魔力を獲得した。
単独行動:A+
元々神秘がほとんど消え去った時代の出身であり、兵士としてサバイバル技術を習得
し大国から指名手配されながら報復を果たすまで活動し続けたが故にこのスキルを獲
得した。
戦闘以外のシチュエーションにおいて魔力消費を極限まで抑制可能。
48
-
気配遮断:A+
復讐者と化す以前から現役の特殊部隊を動員しても尻尾を掴ませぬ程に逃走術に長
けていた。
実戦で磨き上げられた結果、アサシンクラスに匹敵する隠密性へ昇華されている。
神性(偽):D
伊丹耀司は亜神時代の死神ロゥリィと契約した事により彼女の眷属と化した。
後天的な付与という点と伊丹自身が神の眷属である自覚が薄い為に低いランクに留
まっている。
異界の寵愛::A
精霊種
ハイエルフ
人でありながら異世界の
や女神からの寵愛を手にした身故に与えられたスキ
ル。
精霊種
テュ
カ
女神ロゥリィ
戦闘時、彼と深い縁で繋がった
や
が顕現し能力を行使する。
女神ロゥリィ
また
の眷属と化した事で肉体の傷を肩代わりしてもらう……不死身に近い驚異
的な再生能力を伊丹は有している。
49 妄想以外の何物でもないステータス諸々
-
騎乗:B
世界の壁を越え様々な乗り物で様々な戦場に赴いた経験からこのランクの騎乗スキ
ルを保有している。
ただし空を駆ける生物との相性は悪い。
【保有スキル】
逃げるが勝ち:A(自身に1ターン回避状態を付与&敵のクリティカル発生率ダウン)
↓幕間クリアで『英雄は死なず:EX』に強化(自身に無敵状態3回付与&自身にター
ゲット集中状態2ターン付与&防御力アップ3ターン付与&ガッツ付与&敵のクリ
ティカル発生率ダウン)
伊丹は危機察知と回避と逃走能力に極めて優れ、世界中を転戦していた時期にもその
才能は存分に発揮され、戦友達が次々と命を落としていく中でも彼の命を生き永らえさ
せた。
しかし許されざる者への応報の為、戦火に巻き込まれた無辜の人々を護る為に異世界
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の軍勢や神の遣いと対峙し、そして生き永らえた事で彼は英雄と成ったのだ。
部隊指揮:B(味方全体の攻撃力アップを3ターン付与)
↓幕間クリアで『不屈の神兵』に強化(味方全体の攻撃力アップ&毎ターンスター獲
得状態&通常攻撃時、敵に火傷状態付与を味方全体に3ターン付与)
カリスマとは似て非なるスキル。カリスマほど規模は広くないが士官教育を受けた
伊丹は小規模の部隊を的確に指揮する能力を有する。
『銀座事件』にて本来の指揮系統から外れた警官隊を見事に指揮し、火計を駆使して万の
軍勢を極少数で迎撃した逸話が具現化したスキル。
特殊戦:C(自身に人型特攻&自身のNP獲得量をアップを1ターン付与)
↓幕間クリアで『殺されざる者』に強化(自身に人型特攻&魔性特攻&王特攻&竜特
攻&神性特攻&クリティカル威力アップ&自身のNP獲得量をアップ&弱体化解除&
毎ターンHP獲得状態を3ターン付与)
特殊部隊で学んだ対人戦の技術でもって効率的に敵へ被害を与える。
万の軍勢も『彼』を殺せなかった。
世界すら炎に包む一大勢力の長でも『彼』を殺せなかった。
51 妄想以外の何物でもないステータス諸々
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異界の人ならざる怪異でも『彼』を殺せなかった。
災害そのものだった炎龍ですら『彼』を殺せなかった。
神の使徒ですら『彼』を殺せなかった。
……そして敵と定めた相手を『彼』は悉く打ち倒し続けた。
【宝具】
兵は徒手にて死せず
コ
ン
バッ
ト・
ス
キ
ル
ランク:C 対人宝具
兵士は銃や刃物、重火器に戦闘車両のみならず時には素手や周囲に存在するあらゆる
物を活用し、敵を仕留める技術が求められる。
彼の場合は『銀座事件』において即席の武器や敵から奪った武器を使って戦い抜いた
逸話から、彼が武器として認識して手にした物体を低ランクの疑似宝具として使用出来
る。
ただし生前扱った武器が神秘を含まない現代兵器かそれに準ずる代物であった為、あ
る狂戦士のように強い神秘を内包した敵の宝具を支配下に置くといった事は不可能。
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降り注げ、戦場の神よ
モ
ダ
ン・
ウォー
フェ
ア
ランク:C 対人・対軍・対城宝具
過去に経験した戦場において要請した砲撃支援・航空支援を再現し指定された地点に
攻撃が降り注ぐ。
兵は徒手にて死せず同様、神秘を含まない現代兵器が原形である事から敵宝具の産物
といった一定以上の神秘や魔力を含む陣地や砦には通用しない。
だが強固な建造物や敵部隊の撃破に特化して生み出された兵器群は、通用する存在に
対して覿面に効果を発揮する。
その破壊力が生み出す光景はまさに『戦場の神』と形容されるに相応しい被害を敵へ
ともたらす。
戦友達よ
コー
ル
、・戦場にて今再び
オ
ブ・
デュー
ティ
(自身のスター発生率アップ&敵全体に高レア特攻の強力
な攻撃)
ランク:E〜??? 対人・対軍宝具
幾多の戦場で肩を並べ、強い絆で結ばれた戦友らを召喚し一斉攻撃を行う。
部下
第3偵察隊
モヒカン
ソー
プ
全力で宝具の真名を行った場合、異世界で率いた
、核着弾を阻止した
、狂
盟友ユーリ
老兵プライス
犬のかつての
、炎龍を魔弾の一撃で墜とした
、
53 妄想以外の何物でもないステータス諸々
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魔導師
レ
レ
イ
ハイエルフ
テュ
カ
ダークエルフ
ヤ
オ
神すら認めた
、森の守護者の
、自ら従者となった
、断
死神ロゥリィ
罪の
が召喚され、銃弾と精霊魔法と死神の刃が敵を蹂躙する。
異界の精霊種や神すら加わっての一斉攻撃は強い神秘を秘めた存在ですら大打撃を
受けるであろう。
同時に、国と組織から見捨てられた一兵士でありながら権力者・怪異・古代龍・亜神
──
地位どころか生命の種としてすら彼を超越する存在を幾度となく打倒した逸話から、
『格上相手に下剋上を果たす』という結果を実現させる宝具でもある。
大軍勢を率いる英傑だろうが神話の英雄だろうが関係ない。
──応報を果たす為ならば、神様だって倒してみせる。
【ゲームキャラ的コンセプト】
HP・ATKは同レアリティ内で中の下。素の性能は低く完全に成長するまでの道の
りも遠いが代わりに成長後のスキルでぶん殴るスタイル。
特攻が重複する相手ならクラス有利以外の格上鯖相手でも殴り殺せる大物食い特化
型。
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でも強化解除は勘弁な!
【おまけ:座に至った経緯】
英霊の座「登録してたまに仕事してくれたら現世で作者が死んで未完に終わった名作
も本人直筆で読み放題だよ!(嘘は言ってない)」
伊丹「乗ったぁ!」
ロゥリィ「ち ょ っ と 待 て (おこ)」↑あの世で思う存分2人きりでイチャ
つく予定を邪魔されたので強制乱入
55 妄想以外の何物でもないステータス諸々
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年末特別編:同人誌即売会にて斯く戦えり
──きっかけは1枚の書類からであった。
「……これは何だね伊丹二尉」
檜垣三佐が目の前の部下が差し出した書類を一瞥すると、伊丹は胸を張って堂々と答
えた。
「はっ、休暇届であります! 今度の年末こそは日本に戻って過ごそうと思いまして」
「却下だ。君ねぇ自分の立場を理解しているのかね?」
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今や色んな意味で世界中のマスコミや情報機関やテロリストから注目されている自
衛隊員である部下へ檜垣が思わずそう訊ねると、ピシッと伸びていた伊丹の背筋は一転
へにゃりと砕け、水飲み鳥人形よろしく何度も頭を下げ始めた。
「お願いですよ〜檜垣三佐ぁ。どーしても今回は年末に日本に戻りたいんですよぉ〜。
ウチの隊も休暇に入るんですし頼みますよぉ〜」
当然ながら自衛隊にも民間企業や各役所と同様に年末年始休暇は存在する。
しかし特地派遣部隊の場合は状況があまりに特殊である。異世界での勤務に絡む機
密保持諸々の事情から、日本に戻っての外泊等は従来の駐屯地よりも厳しい管理と申請
手続きが求められているのである。
「猫撫で声を止めたまえ気色悪い! そもそも君、前回までの探査任務の報告書や他の
書類の提出が滞っているじゃないか!」
「あ、そう言われると思って溜まってた書類は全部処理しておきましたんで確認願いま
す」
57 年末特別編:同人誌即売会にて斯く戦えり
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こんなこともあろうかと、と呟きながら休暇届の隣に書類の束を積み上げる伊丹。
檜垣はガックリと肩を落として頭を抱えた。
この伊丹という男、普段は面倒臭がりなサボり魔な上トラブルもしょっちゅう持ち込
んでくる癖に、やろうと思えば書類仕事もきっちり仕上げる程度の実務能力を有してい
るのである。最初から真面目にやってくれればいいものを……と何度思った事か。
伊丹は云わば夏休みの大半は遊んで過ごし、終了間際に溜まった課題をヒィヒィ言い
ながらギリギリで2学期の提出日に間に合わせる学生のようなものだ。追い詰められ
たり逃げられない困難が立ち塞がってようやくエンジンが入るタイプなのだろう。
ともかく、休暇届である。
受け取るべきか、受け取らざるべきか、それが問題であった。伊丹の問題児っぷりに
振り回される上司としてはあっさりと受理する気にはなれなかったのである。
「休暇中日本に戻ってどう過ごすつもりなんだ?」
「同人誌即売会に参加します」
「……何だって?」
「年末に開催される同人誌即売会に参加するんですよ。いやぁ今回こそは参加しようっ
て前々から決めてまして」
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世界を救いドラゴンを倒した英雄が……同人誌即売会?
「つまりアレか伊丹二尉、君は自分の趣味の為に休暇が欲しいと」
「その通りであります。自分のモットーは『喰う寝る遊ぶ、その合間にほんのちょっと人
生』なもんですから」
せめて家族サービスとか、実家に顔を出すとか、もうちょっと取り繕った理由は考え
付かなかったのだろうかコイツは。
伊丹の背後では、自分の机で事務作業中だった他の幹部自衛官らが何とも言えない表
情を浮かべていたり、頭痛を堪えるかのように頭に手を当てて首を横に振ったりしてい
るのが檜垣の視界に入った。きっと自分も彼らと似たり寄ったりな顔になっているに
違いない、と檜垣も思う。
檜垣の顔色の変化から、上官の機嫌が(ついでに室内の空気も)急降下しつつあるの
に気付いた伊丹は先にも増して平身低頭で懇願する。
「頼んます檜垣三佐! もうね、海外に居た頃なんかもう一度同人誌即売会に参加する
59 年末特別編:同人誌即売会にて斯く戦えり
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のを心の頼りに何とかかんとか生き延びてきたのに日本に戻ってからもやれ機密保持
だのやれ銀座事件だのでずーっと御預け食らってもう限界なんですよ俺ぁ!」
「…………」
脱柵脱
走
「あっ、何ですかその顔。言っときますけどね、もし年末の休暇取れなかったら
して
でも俺は行きますよ。それでも良いんですか!?」
言うに事欠いて脱走宣言である。まさか部下から脱走予告を盾に脅迫されるなど檜
垣も初めての経験だ。
宣言した伊丹の表情はそれはそれは情けないものだったが、眼光は表情に反比例した
謎の威圧感を放っていた。今の伊丹なら本当にやりかねない、そんな据わった気配。
重ねて言うが、伊丹耀司という男は今や戦場の伝説、世界規模の英雄である。
たとえ実情が趣味の為に上官相手に駄々を捏ねる三十路のバツイチであったとして
も、伝説と化す以前から特殊作戦群で培ってきたスキルは本物なのだ。
コイツ
伊
丹
なら『門』の厳重な警備を掻い潜ってでも日本に帰還しかねない。
いや絶対する。そして成功させる。何せ情報公開されたTF141時代の記録が確
かなら、この男はロシア軍に占領された戒厳令下の都市ですら潜入を果たし、そして生
還した実績持ちなのだから。
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だが休暇届を受け入れて送り出したら送り出したで今度は箱根事件の再来を招くの
ではないか? そんな心配があった。
休暇を与えて野に放った場合と与えなかった場合のリスクはどちらが上か。
檜垣は悩んだ。悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで
悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで─────
向こう
日
本
「頼むからまた
で騒動を起こさないでくれよ……」
頭痛に襲われ、本当に頭を抱えながらも檜垣は休暇届を受理した。
「いやったー!」
そして伊丹も文字通りその場で飛び