February 25, 2005 ·...

27
繊維輸入割当撤廃の影響と展望 ~米国有識者インタビュー~ 20054日本貿易振興機構 市場開拓部 1

Transcript of February 25, 2005 ·...

Page 1: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

繊維輸入割当撤廃の影響と展望 ~米国有識者インタビュー~

2005年4月

日本貿易振興機構 市場開拓部

1

Page 2: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

本報告書に関する問い合わせ先:

日本貿易振興機構(ジェトロ)

市場開拓部 輸出促進課

〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32

TEL:03-3582-5313

FAX:03-5572-7044

©JETRO 2005

本報告書の無断転載を禁ずる 【免責条項】

ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、ある

いは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるいはその

他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえ、ジェト

ロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。

2

Page 3: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

はじめに 2005年 1月に繊維製品の輸入割当制度が撤廃されました。WTOで、米国市場における中国製テキスタイルのシェアが 11%から 18%に上昇すると推計されるなど、米国市場における中国製繊維製品のシェアは大きくなると見られています。こうした動向は、米国輸出を試みる日本

の繊維関連企業および中国に生産拠点を持つ日本の繊維関連企業の今後の輸出戦略に少なから

ず影響を与えると見られます。 本調査では、米国のアパレル企業、小売企業、その他有識者に対し、各社の中国製テキスタイ

ルの使用、製品の中国生産の状況、および撤廃の影響と今後の展望についてヒヤリング調査を

行いました。ヒヤリングのポイントは以下のとおりです。 1. 現在中国製テキスタイルは米国でどれくらい使われているのか。どういった素材・価格帯のものが使われているのか。 (アパレル企業の場合:各社が使用しているテキスタイルの原産国別割合。中国製テキス

タイルを使用しているアイテムとその価格帯、素材の種類) 2. 中国製テキスタイルの品質レベル、コスト対パフォーマンスをどうみているか。他国と比べた中国製テキスタイルの強み、素材別のポテンシャルについて。

3. 2005年からの割当撤廃は、米国市場にどのようなインパクトを与えるか。 (アパレル企業の場合:割当撤廃後は、中国製テキスタイルの使用を増やしていくか。ど

ういった素材を増やしていくか。使用率は全製品中どれくらいになるのか。) 4. 撤廃により、中国に縫製工場をシフトする動きが加速するのか。そうだとすると、中国の縫製工場が中国産テキスタイルを使って製品輸出するイメージになるのか。

5. 中国地場企業により生産される「Made in China」のテキスタイルと日本企業など外国企業により中国で生産されるものとの違いをどうみているのか?日本企業の在中国工場で

生産されたテキスタイルが米国企業に売り込む余地は広がっていくのか? インタビューを受けた者の意向により、インタビュー者の部署、実名は伏せてあります。

また、内容はインタビュー者の回答をそのまま掲載したものであり、発言に対する事実の

整合性については各自で判断願います。 インタビュー先の選定、インタビュー実施はShin‐tex & Co.,の伊藤 真 氏に委託しました。

日本貿易振興機構(ジェトロ) 市場開拓部 2005年4月

3

Page 4: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

Shin‐tex & Co.,より 本調査は、JETROからの依頼により、米国の中国に対する繊維輸入割当制限の撤廃による中国のアパレル業界との関連における日本繊維業界の将来に関して、実施されたものです。 多数の業界専門家ならびに私どもの同業者は、私どもに対し、中国をあらゆる方面におけ

るスーパーパワーとして論じています。本調査では、アパレル企業、卸売製造業者、大手

小売チェーン、さらにはデザイン専門家など、様々な業界関係者から多数の報告を受けま

した。こうした多方面からの意見が最も有用となるであろうと考えたからです。 主題の性質上、エグゼクティブの多くは、自社との間に締結された守秘契約に拘束されて

います。したがいまして、本報告書の多くは半公式的な表明であり、それ以外もいわゆる

「オフレコ」(非公式)のインタビューです。本人の身元を明かせない個人に関しましては、

彼らの考えや意見を報告書の中に織り込みましたことを、ご了解ください。 さらに、実績の数字や会社の特定的な予算あるいは計画は、企業の秘密情報であることか

ら、本調査報告書には包含されていません。このことにもご留意ください。

Shin‐tex & Co.,

伊藤 真

4

Page 5: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

目次

Ⅰ. 米国大手ブランド ........................................................................................... 6

ダンヒルUSA(Dunhill USA) .......................................................................... 6

ポロ・ラルフローレン(Polo Ralph Lauren) ......................................................... 9

マガショーニ・アパレル・グループ(Magashoni Apparel Group) ........................ 11

セオリー・インク(Theory Inc.) ........................................................................ 14

リズ・クレイボーン・インク(Liz Claiborne Inc) ................................................ 17

Ⅱ. 米国大手デパートメントストア(プライベートブランドを所有) .............. 19

メイ・デパートメント・ストアーズ(May Company) ......................................... 19

フェデレーテッド・デパートメント・ストアーズ(Federated Department Stores)22

Ⅲ. 米国テキスタイルエージェント .................................................................... 25

テックス・タイム・インク(Tex-time Inc.) ....................................................... 25

5

Page 6: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

Ⅰ. 米国大手ブランド

ダンヒル USA(Dunhill USA)

インタビュー実施日:2005年2月18日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

私の過去30年間にわたる経歴は、紳士服市場におけるものです。私は現在、幾つかのブランドを経営していますが、その一つがダンヒルUSAです。当社は、英国はロンドンのダンヒル本社とのライセンス契約の下に運営される会社です。 当社の製品の大半は、現在、ヨーロッパ諸国で生産されています。中国での生産と日本の

繊維について私が意見を求められたことは、皮肉なことです。ちょうど、これまでのヨー

ロッパの供給業者から離れ、日本製の生地の使用と中国製の衣料の生産に着手したところ

なのです。現在までのところ、衣類は主としてイタリア、英国、ならびにトルコで製造さ

れてきました。2、3シーズン前に、初めて一部のニットウェアを中国で製造し始めましたが、これは当社にとって非常に成功したプログラムとなりました。当社の顧客はその品質

を非常に気に入り、これらの製品のエンドユーザ顧客への小売の売上げも上々でした。最

も重要なことは、当社が例外的に高い利益率を計上することができたということです。こ

れによって、私はアジアでの生産をいっそう深く探求しようと思いました。 当社の成功は、概ね、極めて高度にデザインされた布地によるものです。特に紳士のシャ

ツ、ネクタイ、スポーツコート、服地の分野ではその傾向が強いです。当社は、ヨーロッ

パの生地製造工場の生み出す色、パターン、布地デザインを求め、それに依存してきまし

た。当社はヨーロッパで衣類を製造するのが伝統でしたから、布地もヨーロッパ製のもの

を使用するのが妥当だったわけです。製品は評判が良く、大手小売店で良く売れています。

では次の段階として、同じ成功をはるかに大きな規模で収められるか、という問いが引き

起こされます。明らかにこれはより大衆的なプライスゾーンに踏み込むことを必要としま

すが、ヨーロッパの供給源には決してできることではありません。それと同時に過去2、3ヶ月間、米ドルに対するユーロ高が、非常な難問を呈しています。 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ

アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

べて極東で調達するようになる、という強い予感がします。また、高級なウーステッドの

服地も、中国での購入を開始しました。この中国の生地は、日本の紳士服地会社による監

督の元、生産されているものです。これらのビジネスは両方とも、財務諸表上、非常に高

い利益率をもたらしてくれました。当社がヨーロッパの製造業者によって毎日のように直

面させられるような数多の妨害が、アジアの生産では起こらないことを願っています。 極東での製造の利点は、明らかに価格、そして品質と納品における高い信頼性であるよう

6

Page 7: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

に私には見受けられます。ヨーロッパの明白な弱点は価格です。これは解決不可能な点に

達しようとしています。別の難しさは、ヨーロッパの多数の製造工場が過少生産している

中で、ヨーロッパの製造業者から協力を得ることです。このような状況下では、彼らにと

って融通性を持つことは非常に困難なのです。一方で、アジアの一部の地域では、まさし

く逆の経験が得られます。当社では、日本のSurchargeに何とか対処する方法を見出そうとしていますが、その間はイタリアでサンプリングを行い日本で生産を行っていきます。し

かしこれを無限に続けていくことは不可能です。イタリアとは彼らのデザイン・ワークを利

用し続けるために微少量プログラムを継続しなければならず、大量バルクの生産は日本に

持っていくことになります。 日本の布地を使用することにおける当社の主な問題は、品質や価格とはまったく関係あり

ません。誰もが周知のとおり、品質は素晴らしいです。問題は、日本の製造工場の構造で

す。まず、サンプリングが非常に困難なことがあります。私のデザインを使用して日本で

サンプリングを行うことは、高額の追加料金を支払わないことには、ほぼ不可能です。ヨ

ーロッパの製造工場は、通常、はるかに安い支払金額でサンプルを作ってくれます。また、

私が時々直面する日本との別の難しさは、ミニマム購入量です。日本は時折、こういった

方針において非常に厳重です。最後に、支払い条件に関しては、日本の製造工場よりもヨ

ーロッパの製造工場に優位性があります。日本の製造工場は布地が工場から出荷される時

点で100%の支払いを要求します。ヨーロッパの工場はこれを必要としません。 過去2、3シーズンの間、当社は、数社のアジアの通商会社から、当社製品を中国で流通させたいとの連絡を受けました。残念ながら当社は、ライセンシーであるため、当社製品を

中国市場で販売する権利を有していません。当社のライセンサーである英国のダンヒル本

社は、中国における小売業の急成長を痛いほど認識しています。例えば、ジョルジオ・アル

マーニだけをとっても、非常に短期間に中国に新しく14店舗ほどを開店する予定です。中国人が高級ブランドを受け容れる用意があることには、疑いの余地はありません。プラダ

の小売店舗が既に3店、上海市内に存在する、と聞いた時、私は驚きませんでした。ここで描写されているのは、上海はニューヨーク市と同じ数のプラダやアルマーニのショップを

支えることができる、ということです。結局のところ、私たちはこういうことに驚かされ

るべきではないのです。中国の人口は世界の全人口の約10分の1を占めるわけですから、大量の高級品が中国人によって購入され得ることは、容易に想像されるのです。 当業界におけるアジアおよび当社のビジネスの将来に関しては、私は、二つの構図を見て

います。一つは明らかなことですが、原材料供給、ニットウェア、あるいは完成品衣類の

何れであれ、とにかく製造分野です。中国は、一部の日本製布地の重要な供給パートナー

にもなります。時にはニットウェアに日本製の高級紡績糸を使用することにもなるでしょ

う。いかなる場合においても、集中労力のかかる衣類があれば、それらはすべて中国で製

造されなければならなくなると見られます。またもう一つの側面は、当社のマーケティン

グのターゲットとしての中国です。つまり、当社は当社製品を中国人消費者に販売するこ

とになる、という意味です。多くのヨーロッパ人は、中国が彼らに大いなる脅威を呈する

ことを鋭く認識しており、中国に対して大きな恐れを抱いています。イタリア人はフラン

ス人と組んで、不当に過剰に低く価格設定されていると彼らが考える中国産の製品の阻止

7

Page 8: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

を試み始めています。私に言わせれば、「不当に過剰に低い価格設定」など、存在しないの

ですが。誰かがある製品を製造し、特定の価格で販売し、利益を稼得できるのであれば、

その人物には確かにそれを実行する権利があります。ヨーロッパ人が、単に競争できない

からといって、自国に入り込む物資の量に対して自国に障壁を設けようと試みる、これは

保護貿易主義でしょう。 この戦術は、低価格で高品質の製品を生産することのできる中国人にとって、極端な妨害

であると思います。この点については、誰が本当に公平なプレイヤーなのでしょう?同時

にその一方で、イタリア隋一の著名デザイナーであるジョルジオ・アルマーニ氏は、中国を

彼の商品の巨大市場であると強く確信しています。 これと同一の概念は、日本の繊維工場にも当てはめることができます。明らかなことに、

日本の製造工場は、労働費に非常に大きな差があるため、金額および量の点で中国と競争

できないことは認識しています。しかし、日本人は、文句を言わないようです。日本人は

歯ぎしりしながらも、パートナーとして、投資家として、あるいは消費者として、中国と

何ができるかを、周到に検討しています。それが日本人です。当社は目下、超高級なウー

ステッドの紳士服地を中国の日系合弁事業から購入しています。この服地はさらに、また

別の日系合弁事業によって中国のスーツ製造工場でスーツに仕立てられます。これこそ、

私が言うところの日本の強みです。日本人は、彼らの利益に還元できる彼らに利用可能な

資源を既に利用し始めたように、私には見てとれるのです。競争に敗れた他の国々は、失

ったものに気をとられて後退するだけに見受けられることが頻繁にあります。日本は、損

失を機会として捉え、それを教訓とし、将来へのエネルギーとして活かしていると私は思

います。

以上

8

Page 9: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

ポロ・ラルフローレン(Polo Ralph Lauren) インタビュー実施日:2005年2月3日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

注:本インタビューは、ニューヨーク・シティ・ファッション・ウィーク中に実施しました。 私たちはデザイナーとして、月ベースで大量のファブリケーション(素材計画)を行わな

ければなりません。スーツやスポーツウェアなどの部門とは異なり、当社のポロのシャツ

のビジネスは、はるかに大量のファブリケーションを必要とします。シャツはジャケット

の10倍売れるからです。ですから自然に、継続ベースで素晴らしいデザインを大量に用意しなければなりません。 綿のシャツ地は、伝統的にも歴史的に見ても、割当問題による影響をそれほど受けていま

せん。私がポロ・ラルフローレンに入社した当時である20年以上前は、当社は米国製の生地と日本製の生地を使用していました。さらにイタリア製の生地と、英国製の生地も使用し

ました。しかし今日、現存するシャツ地分野に米国製の生地はまったくありません。当社

の主だった生地は今日、中国本土、台湾、日本を含む極東から供給されています。当社は、

ヨーロッパ製の生地も一部利用していますが、これが当社のビジネスに占める割合は非常

に小さいものです。ヨーロッパ製の生地とヨーロッパでの縫製を用いたものは、特別コレ

クションのものです。 デザインの観点から、そして当社特定のニーズという点では、当社にとっては日本が最も

重要な国である、と言わざるを得ません。しかし過去2、3年のうちに、中国本土は、当社の生地を非常に大量に生産するようになっています。かつて、当社の綿のシャツ地の分野

においては、中国性のクォリティは、単糸にほぼ限られていました。このクォリティは、

主に40/1と50/1から構成されていました。時には60/1も使用しました。現在のトレンドを受けて、当社は、中国製の80/2と100/2、ならびに他国製の50/1から80/2までのコンパクトヤーンを利用するようになりました。中国の細い綿糸の紡績技術は、彼らの製造工場が今やデ

ジタル・テクノロジーを利用するようになり、紡績設備を「最新式の」テクノロジーにアッ

プグレードしたという事実によって勢いを得たのだと、私は思います。このテクノロジー

は日本ならびに一部のヨーロッパ諸国から提供されたものです。中国は既に洗練されたコ

ンピュータ・ベースの織機を備えていたことから、100/2の細い構造糸染のシャツ生地の導入にタイミングのズレはありませんでした。 このような技術的進歩の最中、中国の製造工場の多数は、見事なコンピュータ作動のデザ

イン装置も備えています。CAD技術自体も洗練されたので、生地のシュミレーションもできるようになっています。私たちは、かつてはパイロット試織を何週間も待ちに待ったも

9

Page 10: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

のでしたが、この新技術によってプレゼンテーション資料がほぼ即時に入手できるように

なりました。 綿糸染のシャツ地の分野においては、極細の「シルキー」で柔らかい仕上がりの手触り感

があるものを生産できることが非常に重要です。中国は、この仕上げの技術を難なくマス

ターしたように見受けられます。この仕上げの技法のために彼らが用いている技術は、元々、

日本人が開発したものです。しかし日本のコスト構造のため、日本製は高額で手が出ませ

ん。これこそ、当社の中国とのビジネスが成長している理由であり、これは今後も増大し

続ける一方であると感じられます。中国は今や、当社の現時点での生地のニーズのほぼ4分の3を占めており、これは急速に拡大しつつあります。 当社のデザインスタッフは、シャツ地プログラムを安心して業者に渡しているにちがいあ

りません。私たちは、デザインと色の仕上がりにポロ・ラルフローレンのルックを反映しな

ければならないので、この安心感を必要としています。日本の製造工場と中国の製造工場

は、両方とも、私たちからの指示が明確で正確である限り、私たちがポロ・ラルフローレン

のビジネスに必要とする非常に素晴らしい仕上げを間違いなく実行してくれます。当社は、

当社の日本の供給業者には絶大な信頼を抱いています。彼らは精密で、正確で、タイムリ

ーです。日本からシャツ地を購入する際には、いかなる「不意打ち」も決してないように

思われます。当社はさらに、重要なプログラムの相当量を今でも日本国内に維持していま

す。中国は、当社が過去に日本に発注してきたビジネスの一部を「少しずつ削り取って」

います。 当社は、数社の大手中国企業と非常に堅強な関係を築いています。この中には、当社の製

造担当代理人として始め、年月を経てシャツ工場の事業主になったような企業もあります。

過去5、6年、こうした中国企業は、中国内の織物施設に投資しています。彼らの目標は、100%バーティカルな組織となることです。こうした中国の衣料工場は今や、自社の織物や仕上げ加工などの繊維品製造施設を中国内に確保しつつあります。彼らには、出かけてい

って日本などの外部の供給源から素材を購入する必要はもはやないのです。 とどのつまり、中国は当社にとって非常に重要な生地の供給源となっていると言わざるを

得ません。しかし、当社ではヨーロッパ製ならびに日本製の生地を購入し続けていきます。

当社の大規模なプログラム・ビジネスは、中国から購入する生地の範疇に該当します。当社

の非常に特別な「最高級」プログラムの場合には、引き続き、これらのプログラムのため

にヨーロッパ製と日本製の生地購入していきます。お分かりのように、こうした「最高級」

プログラムが当社のビジネス全体に占める割合は、ごくわずかです。

以上

10

Page 11: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

マガショーニ・アパレル・グループ(Magaschoni Apparel Group)

インタビュー実施日:2005年2月1日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

注:同企業は、カシミア製ニットウェアを主要デパートに供給する大手の1社であるとともに自社の小売店舗も数多く構えている。 割当制限があるのとないのとでは、何か大きな違いが感じられますか? もちろん、ものすごい違いを感じています。当社は割当料金を支払っていました。時には

割当料金が衣類の原価の半分を占めたこともありました。ご存知のとおり、ニットウェア

は、割当が最も高くついた分類の一つでしたから、当社は、新しい割当制限撤廃時代の到

来を非常に喜んでいます。しかし、今年の年末にかけて中国からの流入が過剰となった場

合には米国政府が介入し、需要の非常に高い分類に貿易制裁を課すことは確かですから、

これについては私としては強い疑念を抱いています。 卸売衣類製造業者としての中国は御社にとってどの程度重要ですか? 明らかな答えですが、非常に重要です。当社は世界中の実質上あらゆるところで製造を試

みました。多数のヨーロッパ諸国ならびにトルコを試しました。アジア諸国も数多く試し

ました。各国とも製造の利点を多く備えているように見受けられました。しかし、中国は、

どの分野をとってみてもはるかに高い得点を挙げました。当社のような企業は、製造パー

トナーに多数の要件を要求します。要件は次のとおりです。 1) デザイナー・レベルに至るまであらゆる高級カテゴリーの製品を製造する能力がある

こと。 2) 当社の営業が高い収益性を生み出せるよう、製品のコストの点で非常に優位性がある

こと。 3) 生産が非常に首尾一貫していると同時に、品質管理が卓越していること。 4) 新製品を開発する技能および良質のサンプルを作成する能力があること。 5) 原材料ならびに付属品の入手が可能であること。 6) 納品のスピードと生産のリードタイムが妥当であること。 7) マーチャンダイジングの変化に対応できる融通性があること。 中国は、取引がしやすく、非常に友好的で感じがよいと思います。彼らは良く組織されて

いて、驚くべきことにこれら非常に良く組織されている施設の中には非常に新しいものも

あります。当社では今のところこれらの施設は非常に信頼が置けると認めています。

11

Page 12: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

日本の原材料供給業者は中国にとってどの程度重要であると思われますか? 残念ながら、原材料供給源としての日本の利用は、毎年、需要が少なくなる一方だと思い

ます。何年も前、私が中国で衣類のマーケティングを始めた頃、当社は、原材料の多くを

日本から来るものに依存しなければなりませんでした。そういった素材には高級ウールの

スーツ地、高級綿のファブリケーション、ニットウェアなどが含まれました。今日、当社

は、中国北方で生産された高級ウーステッド・スーパー100’sを、日本の半額、ヨーロッパの3分の1のコストで購入しています。私は、日本から高級綿ギャバジン80’s 2プライを購入したものでした。その当時、それを模倣できるところは他にありませんでしたが、今は、中

国にこの品目を再生できる製造工場が3、4ヶ所あります。もちろん、日本には今なお非常に必要とされているカテゴリーが数多くあります。例えば、トリアセテート製品、特製の

ポリエステル・フィラメントを使用した製品、または登山や激しいスポーツ専用ウェア用な

ど、特別ニーズの生地のための極端に複雑な仕上げ技術などです。中国は、自ら持続可能

で完全に独立し、中国製のものだけで何でもできるようになるため、毎年、カテゴリーを

一つ一つ、生地を一つ一つ、マスターしています。私は、技術的成長が短期間のうちに中

国をスーパーパワーにするのはこの分野である、と強く信じています。例えば、10年前、デジタル制御が設置された織機は多くありませんでしたが、今日では、デジタル装置のな

い織機はほとんど見当たりません。これは典型例であり、このような例なら他にもたくさ

ん挙げることができます。 あなたのご意見では、何が中国をそのようなスーパーパワーにするのですか? 私の会社が成長した過去10年の間、私は面白い有能な人々に多く出会いました。何が中国を今日の中国にしているかを定義づけなければならないとすれば、それは中国のナンバー

ワンを、最高であることを目指す粘り強さと願望、でしょう。中国人の心の広さは彼らの

最大の資産の一つであると私は思います。当社がしばしば新製品を開発する必要のある時、

中国の工場は、ネガティブになったり躊躇したりする代わりに、非常にポジティブで積極

的なアプローチをとります。私は、論理、理論、過去のデータに基づくと、必要なことが

達成できるわけがない、という状況に何度も直面したことがあります。日本やイタリアで

も散々起こることです。私が思うに、中国は、最高級アパレル製造分野には経験と歴史は

ほとんどないので、将来に向けた前進を時折妨げる何世紀もの歴史を抱えているヨーロッ

パ人とは異なります。 日本の繊維(紡績糸)供給業者の中国への将来的関与という点で、彼らに何を提案されま

すか? 明らかに、日本は中国に反抗していきたくはありません。日本の成功は、中国といかに上

手く協力していけるかに依存しています。繊維製造は、二つの分野にますます依存するよ

うになっています。一つは原材料自体で、もう一つは、要請される製品の適時な生産です。

中国がスーパーパワーであることは、彼らが必要なものを全部取り揃えていることを必ず

しにも意味するわけではありません。日本の繊維会社は、今なお中国に対して多くの優位

性を保持していますが、中国が日本を圧倒する可能性があるのはもっともなことです。

12

Page 13: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

日本人は中国でどのように長期にわたり仕事がしていけると思いますか? 大きな構図は何ですか? 数種の異なる構図が想定できます。しかし、中国が国外から何を必要とするか、中国が国

内で何をするのがベストであるか、ということに尽きるでしょう。一つの例はこうです。

ヨーロッパの大手繊維アパレル企業の1社であり、過去100年間、イタリア国内に完全なバーティカル組織を備えてきた会社が、中国でバーティカル組織を共同運営するために、中

国に巨額の投資を行います。この設定は、糸を紡ぐことに始まり、織工から、衣類製造ま

で、ひいては自社製品を自社小売店舗で販売することまでに至るものです。中国は、合弁

事業プロジェクトから、自分たちだけでは決してできないであろうこと、すなわち「権威

と名声のある」ブランド製品のマーケティング力を得ます。真のマスターから非常に高度

な技能を必要とする衣類の構造を、そして高度な技術装置を購入する力を修得できます。

この合弁事業は、両当事者にお互いが探しているものをそっくり提供することになります。

当社では、ある大手米国企業が、米国スタイルの小売マーケティングを展開するために中

国に大規模な融資を投下するのを見てきました。この米国企業とは、ギャップとバナナ・

リパブリックのグループです。このグループは、中国からの力強い補助がなければ今日の

ような組織にはなれなかったはずです。今日、ギャップかバナナ・リパブリックに行けば、

販売されている衣類の半分は「中国製」ラベルです。

以上

13

Page 14: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

セオリー・インク(Theory Inc.)

インタビュー実施日:2005年2月26日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

輸入割当制限の撤廃は、米国、中国、ならびにその他の諸国に、大いなる経済成長をもた

らすでしょう。これが起こる理由は数多くあります。その一つは、割当における明らかな

コスト節減です。 当社は設立当時、文字どおり毎シーズン、最良のビジネス条件を求めて工場から工場へ、

国から国へと移動しなければなりませんでした。このような不安定なやり方では、長期的

な製造基盤を構築できませんでした。この基盤を確立することができなかった理由の多く

は、単に割当制限のため、その時々で割当のある会社としか仕事をすることが許されなか

ったためでした。ここで明言しておきますが、大きな割当を受けている工場が必ずしも品

質の良い工場とは限りません。小規模ながらクリエイティブで融通性のある工場があった

のですが、彼らに割当がなかったために、一緒に仕事をするのに苦労したものでした。割

当制限の撤廃以来、当社はこれまでに既に、中国の工場との間にはるかに堅実な関係を経

験しており、こうして長期的に将来のビジネスを進展させていけることになりました。長

期的関係はより良い計画立案を生み出し、より良い計画立案はより良いコスト設定をもた

らします。 割当制限の適用期間中、当社は、当社の割当利用権を保護するために相当なエネルギーと

財源を費やさなければなりませんでした。毎年、ウール製のジャケットの割当は夏頃に切

れてしまいますが、夏季こそちょうどウール製の衣類の出荷が必要な時期であり、大変な

問題を引き起こしています。そこでブラックマーケットの割当が法外な価格で売買される

ことになります。それでも、完成した衣料製品が出荷できなくなる危険を回避するために

は、その時点での相場の最高価格でその衣類の割当を確保する必要があるのです。健全な

マージンに基づくビジネスを営むには、これは非常に不安定なやり方でした。 毎年、そして毎月、ファッションは変わり、トレンドは移り行きます。したがって、衣類

のスタイルのニーズも変化します。成功している米国のファッション会社は、「ラピッド・

レスポンス(迅速対応)」を備える企業を起用する傾向にあります。その時々で利用できる

割当に左右されてスタイルと生地を変更することが不可能では、この「ラピッド・レスポン

ス」はできません。この良い一例が、何がよく売れるかは天才的小売業者でなくても分か

るという事実です。つまり、ある小売業者があるものを欲しければ別の小売業者もそれが

必要となるのです。時々「ヒートアップ」カテゴリーと呼ばれているものです。また別の

大きな問題は、99%の場合、割当の価格は原価を設定した後に上昇することです。ですから、割当の変化を常に予測することはできず、最終結果として過剰な支払いをしてしまう

こともあり、総売上利益率の減少を招くはめになります。

14

Page 15: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

中国のアパレル製造業者の将来を判断することは、米国抜きにしては不可能です。米国の

アパレルのマーケティング力と購買力のことです。あらゆる製造業のグローバル規模での

成長は、強力なマーケティング・販売業と直接のつながりがあるように、私には見受けら

れます。端的に述べると、中国のアパレル業界の将来は、米国の小売業者の力に大いに関

係します。これは相関関係です。すなわち両者とも、互いにもう一方を必要としているの

です。 割当に関する状況は、中国の将来という点から見ればごく小さな一部分のことにすぎませ

ん-説明しましょう。 2003年、中国の労働費は、1時間当り約95セントでした。それより時給の低い唯一の国はインドで、1時間当り約70セントでした。この点についてより客観的見解を示すと、1時間当りの賃金は、メキシコでは約2.00ドル、タイでは約1.50ドルでした。さて米国についていえば、労働費は1時間当り15.00ドルから18.00ドルといったところです。中国にとっては幸いな数字ですが米国にとっては最も悲惨な時給です。そして製品についていえば、消費者は、

時給18.00ドルの労働力で製造された製品よりも時給95セントでの労働力で製造された製品の方を好みます。 中国の労働者は、世界で最も質の高いパフォーマーであることは、私たち業界人の間では

周知のことです。したがって、過去10年の間に、一般市民も含めより多くの消費者が、中国人労働者は何て高い品質を生み出せるんだろう、と認識し始めました。過去2、3年に自社の製品のために中国で仕事をした多数の米国企業は、衣料の原価の中でもCMT(裁断・縫製・仕上げ)の大幅削減を達成しています。これらの米国企業はさらに、衣料の原価を安

定させることにも成功し、その結果として収益性の上昇を実現したことにも触れておきた

いと思います。 中国の力強さは一夜にして生まれたものではなく、長年にわたる努力の賜物であることは

明らかです。長年の苦難です。特に堅強な共産主義体制下、中国の製造業者にとって自ら

のアイディアや長期目標を表明することは非常に困難でした。共産主義または社会主義は、

個人の進歩を非常に困難なものにしました。しかし、過去10年ほどの間に、「新しい」中国はますます資本主義的な性質を持った国になってきています。したがって、世界市場を相

手にする準備の整った独立したビジネスマンが大勢出てきています。 これまでの説明で明らかなとおり、我々の業界においては、中国は今やスーパースター・

パワーであり、将来もその地位を維持します。過去には多くの国々がこの業界に参入し、

ごく短い間、輝かしいスターとなったことがしばしばありました。持ち堪えることができ

た国もあれば、ただ単に消え失せていった国もありました。そもそもこれら国々の一部が

当初参入できた主な理由が、中国に課された割当制限または通商規制のおかげであったこ

ともありました。何年も前には、米国の顧客は、時にはモルジブ、グアム、スリランカ、

モーリシャス等の地域以外には、他に製造場所がなかったこともありました。一部の大手

製造会社はこうした国々に非常に大規模な施設を建設しましたが、成功し続けているもの

もあれば、閉鎖したものもあります。私もこれら遠隔国の一部での製造を経験しましたが、

15

Page 16: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

諸々の理由から非常にストレスのたまるものです。 理由の一部には、これら遠隔国の大半は、ボタン工場、ラベルの供給業者、糸の供給業者、

裏地の供給業者、 その他などのサポート業界が存在していないという事実にあります。完成衣類製品の生産に必要とされる他の品目はすべて、調整し適時に合わせて出荷されなけ

ればなりませんでした。この問題に加え、これら遠隔地の構造基盤は非常に弱いものです。

さらに、貨物船は、荷の揚げ降ろしが頻繁でない地域には便を出さず、出荷する貨物が小

さすぎるような場合は希望の目的地に寄港してくれない貨物船もあることも、理由の一つ

です。このため、航空貨物での出荷の必要性が生まれます。これによって、製造費を抑え

ることができますが、発送費がかさむことになります。このような状況は、中国にとって

は問題を呈することではないことは、明らかです。 中国には「ソックス・シティ」、「パジャマ・シティ」、「ネクタイ・シティ」などと呼ばれる「シ

ティ」があることを耳にされたことがあると思います。特定の一品目をすべて、一つのシ

ティで製造する現象から生まれた名称です。特定分野が支配的存在となることにより、こ

れらの「シティ」には多数のサポート業界も繁栄しています。例えば、大唐(Datang)という町は、1年間に90億足の靴下を生産しました。靴下という一品目だけでの話です。ですから、ジーンズ、紳士物スーツ、下着、ネクタイ、その他数多くの品目も、同様のやり方

で次々に出現する「シティ」で製造されていることが想像できます。2003年末、中国のアパレル輸出高は780億ドルを記録し、一目瞭然、世界最大の衣料輸出国ぶりを発揮しましたが、実は中国は連続9年間、このタイトルを保持しています。これは将来変わるものではなく、ただ伸び続けるだけです。

16

Page 17: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

リズ・クレイボーン・インク(Liz Claiborne Inc)

インタビュー実施日:2005年1月20日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

以下は、リズクレイボーン・インクとの短い電話インタビューです。 御社にとって中国での生産はどの程度重要ですか? 中国は当社にとって非常に重要です。中国は、圧倒的に第一の製造地です。生地や紡績糸

などの原料はもちろんのことですが、彼らの衣料製造における資産は、彼らの柔軟かつ高

度で豊かな技能です。 中国の布地の費用設定と収益性、ならびに製造された衣類の費用設定については、どのよ

うにお考えですか? 中国製品の価格設定は現在、非常に良いと言うべきです。リズ・クレイボーンのような会社

では、あらゆる製造に関与する経費と費用をすべて明確にしなければなりません。中国に

は、隠された経費は実質的に存在しません。中国に不意打ちの出費は存在しないのです。

FOB価格としてある金額を支払えば、それはその価格なのです。残念なことに、他の国々では、見積り労働費となると「不意打ち」があまりに多くありすぎ、他の料金も最終段階

になって増額されることが非常に頻繁にあります。当社ではさらに、他の国々では輸送費

が中国ほど一定していないことが判明しています。 御社では中国での製造を計画されていますか?計画のある場合、その主な理由は何です

か? 中国は、リズ・クレイボーンの複数の要件を常に満たすこと、またはそれを上回ることがで

きます。残念ながら、他の国々は、当社のニーズを満たすことに苦労しています。彼らは、

製造のリードタイムに対するスピードなどといった問題に苦労しているのです。中国は、

当社の商品の変更により柔軟な対応ができるように見受けられます。そして、最も重要な

ことに、中国の品質管理は他国よりはるかに卓越したものとなってきています。ですから

この質問に対する私の回答は「イエス」です。また、当社は中国と共に大幅成長を達成す

る計画にあります。 今後5年間の中国の将来をどのようにご覧になりますか? 他の企業の立場で語ることはできませんが、当社では、今後3、4年のうちに当社の衣類生

17

Page 18: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

産の過半数を中国で実施する計画です。私個人としては、中国が米国アパレル市場に占め

るシェアは、5年以内に50%に達することを強く確信しています。 割当の撤廃が御社にいかなる影響を及ぼすとお考えですか? 私の結論から先に言いますと、割当の撤廃によって、当社が中国から製品をいっそう購入

できるようになることは、確実です。当社では、かなり前に中国を当社の主要製造国とし

て明確化することを決定しました。割当の有無に関わらず、中国は、当社の最も重要な生

産供給源となっています。まず、品質基準の観点から見ると、現在、金額ベースで比較し

た場合に中国に匹敵するような国は他にまったく存在しません。当社にとって、信頼のお

ける製造業者と仕事をすることは必要不可欠です。中国の信頼性は何度も証明済みです。

今日、業界のいかなる生産担当マネージャーに対し、中国に留まり中国と共に成長する理

由を尋ねてみても、私が今言及した点と異ならないでしょう。当社が現在仕事を共にして

いる中国内のほぼ誰もが、当社のデザイナーならびに開発チームを満足させていることは、

言うまでもありません。 日本人はどうすれば長期的に中国で仕事をしていけると思われますか? 大きな構図は何でしょう? 当社が原材料供給業者を起用する主要要素は、三つあります。当社にとっては、一にも二

にも三にも、価格です。サービスはその次であり、3番目がスピードでしょう。もし日本がこのような規準についていけるのであれば、日本の繊維業も中国と共に成長できることに

疑いはありません。高賃金で知られる日本の労働構造を鑑みるに、当社のニーズが日本に

よりすべて満たされることは不可能でしょう。しかしそれと同時に、当社にとっては、日

本の卓越した製品開発能力が日本の最高の資産です。この卓越した製品開発能力は強みで

はありますが、この強みがどれだけ功を奏するかは疑問です。現時点でこれに回答するこ

とは不可能だと思います。

ロス氏は、以下の考察をもってインタビューを締めくくられました。 世界全体、これ以上の繊維工場もこれ以上のアパレル企業も、まったく必要としていませ

ん。今日、市場は、供給が需要を大幅に超過しています。しかるに価格が低下し続けるの

です。価格は、紡績工場と衣料生産業者の過剰崩壊が起こるまで、低下を続けるでしょう。

その時点で、私たちは淘汰された強力で、能力豊かで、設備が充分に整ったグループと仕

事をするようになります。私には、中国はこの最終段階に既に入ったように見受けられま

す。当社は、このように生き残った力強い相手と当社の将来の製造を話し合える幸運な立

場にあります。残念ながら、他の製造国については同じことは言えません。

18

Page 19: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

Ⅱ. 米国大手デパートメントストア(プライベートブランドを所有) メイ・デパートメント・ストアーズ(May Company)

インタビュー実施日:2005年1月27日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

繊維/衣料の供給業者に関しては、メイ・カンパニーは、9ヶ所に構えた海外オフィスを通じて、当社の調達と生産を行っています。当社の香港オフィスは、最高の人員配備を整え

ており、当社の海外本部である「集中マーチャンダイジング組織(Centralized Merchandising Organization)」にも支援されています。これが結果的に当社に、中国でいっそう調達機会を活用し、同国内で効果的に運営するためにコミュニケーション・チャネルを確立する動機

を与えています。その立地条件も調達を容易にすることになりますが、さらに当社の香港

オフィスには品質管理、技術、生地の専門家、およびマーチャンダイジング要員が一同揃

っていて本社のそれぞれの担当とやりとりできるため、新たな選択肢やビジネス機会を検

討することが可能なのです。 測定される「コスト」は、必ずしもCMT/生地の原価設定のみに関係するわけではなく、ビジネスを行う上での合理的なプロセスにも関係します。その意味で、中国は抜群の供給

国です。一般的に、生地の価格は競争力があり、カジュアルから仕立物まで、並/低価格

のプライスポイント(基準小売価格)からより高いプライスポイントまで、様々なレベル

の製品のありかをつきとめることができます。そして衣料の価格は、こうした機会を反映

しています。私たちにとって特に価値のあることは、複数の選択肢が利用できるため、当

社の専門家やサポート要員は、1回の出張で複数のプログラムをカバーできることです。 中国での生産の品質、スピード、信頼性、クレーム状況、その他を考慮すると、主な有利

な点は、中国は取引の実行に熱心であり、多数の機会が生まれ広がっていることでしょう。

彼らが品質、仕上げ、ディテール、装飾、あるいは衣料全体の構造や洗浄などの新開発に

関して正しい方向づけを与えられれば、莫大な潜在的可能性が存在する、と私は確信して

います。当社が機会に特定対象を見極めれば、当社はその進歩を密接にモニタリング、評

価することができ、さらに当社特定のニーズのために製造工場の開発に関与することもで

きます。 当社の製品の大半が綿ベースまたは合繊であることから、中国は一国で当社の製品ニーズ

の大半に対応することができます。中国の多様性は計り知れません。また、品質は発注に

先立って検査される必要があります。当社では全工場に対し、生産を開始する前にコンプ

ライアンスに合格することを要求します。また、進行中のプロジェクトの中で何か新しい

ことを開始できるように、製造工場に査定を要求します。明らかに陣頭に立って指揮して

いかなければならないわけですが、何もこれは他のあらゆる海外状況と何ら変わりのある

ことではありません。この点でも香港オフィスの立地条件から、中国での状況は同オフィ

19

Page 20: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

スのスタッフによってより統率可能であると考えています。 残念ながら、中国での生産には、品質、スピード、信頼性、クレーム状況、その他に関し、

不利な点も存在します。より小規模のプロジェクトを行おうとする場合、取扱い最低量が

問題となる可能性もあります。また、開発にかかる時間は一般的にやや長く、製造工場は

外部からの主任によって開発、管理されていない限り、それほど信頼できません。製造工

場側による開発はまったく、あるいはほとんどありません。彼らが率先するものは何もな

く、全部こちらから与えなくてはなりません。クリエイティブな人なら醜いプリントやパ

ターンの向こうを見通せます。しかし多数の商人には無理な話で、物事が見過ごされるこ

とになります。リードタイムもやや長めです。新しい開発には相当の忍耐力と耐久力が必

要とされます。ビジョンを持たない人々には、中国ビジネスは大それた不可能なことに思

えるかもしれません。中国でのビジネスの鍵は、私たちが達成しようとする目標を理解で

きる優れたパートナーが製造工場に存在することです。 現時点で中国産の繊維の潜在可能性において重要なのは、遠大な多様性があるということ

です。これは当社にとって素晴らしいことです。プリントの品質は、シーズンごとに改善

されてきています。編物や織物といった分野も、同様に改善されています。当社の22のカテゴリーにはそれぞれ中国産の製品が含まれています。もし時間があれば、全ての製品に

ついて中国から適切な品質レベルを見つけることは多分可能でしょう。しかし現在のとこ

ろ、他の国からも確立された品質を確保できていると思われます。また、生産拠点の均衡

をとっていきたいとも考えています。 当社では、様々なオフィス全部を満足させる必要があるため、中国から全品質レベルを調

達する計画を立てることはありません。しかし、絹製品分野は当社が中国のみに留めてお

く一つの分野であることを指摘しておきます。 中国に対する割当制限撤廃による影響ですが、当社では他にも支援したい生産オフィスを

抱えているため、戦略の大幅変更は計画していません。しかし、いっそうのラピッド・レス

ポンス(迅速対応)と製品管理を可能にするために、上海オフィスの開設を検討していま

す。当社としては、他の全オフィスをできるだけ生産力減少のないかたちで維持していく

意図にありますが、中国に特定的な製造工場をさらに見極められれば、中国産の反物をよ

り多く輸入する可能性もあります。当社の優先目標は、最も便益性の高い方向づけを目指

して常にモニタリングできるよう、衣服の生産拠点に近い拠点から反物を調達することで

す。 中国への外国投資の要点は、コミュニケーション、製造工場の管理、そしてプライスポイ

ントです。これらの分野の全部または大半に最終的な便益が見出せれば、成功を収められ

る状況といえます。顧客が皆、日本の関与には付加価値的な側面が存在することを知る必

要があります。今では大手顧客の多くは直接調達を行っていますから、何らかの便益がな

い限りは彼らが自動的に中途から別のレベルに移行するようなことはありません。効率性

が改善され、開発が迅速化し、プロセスが合理化されるであれば、投資する理由が存在す

るというわけです。私の経験では、日本からの投資がからむと、しばしば、価格の上昇、

開発費の増加、リードタイムの長期化につながっています。これでは便益をもたらしたこ

20

Page 21: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

とにはなりません。 中国にビジネスを奪われている国または企業に対しては、自らの最高の製品、または自分

の優位性が何であるかを見出してください、と助言したいと思います。ポリエステルとビ

スコースの仕上げにかけてはトルコに匹敵する国はありませんが、彼らの対象はより高級

志向の顧客です。あらゆる顧客を対象としたあらゆる製品を目指さずに、消費者のために

なるユニークな能力をマーケティングし、生産チャネルを見つけることです。生産拠点ま

たは梱包拠点は、特に便益性が高い可能性があります。

以上

21

Page 22: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

フェデレーテッド・デパートメント・ストアーズ(Federated Department Stores)

インタビュー実施日:2005年1月28日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

フェデレーテッド・マーチャンダイジング・コーポレーション(Federated Merchandising Corporation)は最大にして最も成功しているデパートメントストアのプライベート・ラベル・ブランドである。 ガイシンジャー氏の意見: 当社の主な商品アイテムはレディースのスーツですが、他にも多数の上下単品アイテムを

製造しています。当社が製造する単品アイテムには、パンツ、織物のトップ、ニットウェ

アなど、さらにその他大量のカジュアルウェアが含まれます。当社では、製造施設として

多数の国々を利用しています。現在は、インドネシア、グアテマラ、コスタリカ、台湾、

フィリピン、ならびに東欧で衣料の製造を行っています。しかし、圧倒的な主要製造パー

トナーは韓国です。私は、ずいぶん前にこの仕事を始めた時、日本企業、三陽商会が製造

したレディースのスーツとコートを大量購入しました。それから何年も経った後、三陽商

会とはもはや仕事が出来なくなったことを悟りました。価格のためです。それと同時期、

私は、三陽商会と同レベルのスーツの製造をマスターし始めたと私が考えた他の国々で、

三陽商会と行っていたプログラムの多数を実施しました。それらの国は、三陽商会の日本

製のスーツに匹敵するほどの卓越した品質のスーツを生産することができたのです。その

時点で当社はスーツ生産拠点を韓国にスイッチすることを決定したのです。当社は韓国の2、3の衣料供給業者と素晴らしいパートナーシップを締結し、この関係は今日も続いています。私は、ビジネスの実務慣行という点で、日本と韓国の間にある大きな相違点を指摘しなけ

ればなりません。先に述べたとおり、日本での製造はコスト面から高すぎて手が出なくな

ったので、韓国にスイッチしたわけですが、現在、韓国でもそれと同じことが起こりつつ

あります。当社は長年の間、韓国での製造を継続してきましたが、韓国は今や高すぎるよ

うになってきました。韓国の衣料供給業者も、非常に頭の良いことに他の国にアウトソー

シングしています。彼らは、請負契約をアウトソーシングするだけでなく、それらの国に

投資も行っており、中国、フィリピン、カリブ海諸国などに投資しています。韓国のアパ

レル企業は、主として二つの資産を有しています。すなわち、一つには顧客であり、顧客

を有することによって米国とのビジネスを成功させるノウハウを有しています。もう一つ

の重要な資産は、実際の技能です。これの意味するところは、例えば、レディースのスー

ツは、エンドユーザである消費者を満足させることが最も難しい製品の一つですが、これ

を製造する技能を備えているのです。 そしてまさしくこのことこそ、三陽商会が米国から大規模なビジネスの獲得に成功してい

た当時、日本に備わっていたことでした。多数の顧客が三陽商会と同様のビジネス関係の

22

Page 23: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

継続を依頼または提案したこと、しかし労働力がはるかに安い他の国での製造を要請した

こと、すなわち主に中国の利用を示唆したことは、確かです。安心できる製造関係を築く

ことは非常に困難なことですから。私としては2、3%の利益率のために現在の設定を変更するつもりはありません。換言すると、インフラ構築は、海外での製造において必ず最も

困難な点なのです。 当社は、小売業であることから、消費者の反応を直接知ることができます。ここで、「○○

製」という課題について指摘しておくべきでしょう。当社では、同一の衣類、またはほぼ

同一の衣類を、非常に異なる二つの国で製造させたことが何度かあります。その結果の売

上高からは、消費者は、衣類を製造国で選んで購入していないことが明らかなりました。

消費者は、見た目、色、スタイル、そして価格によって選んでいました。なかでも価格は、

米国の消費者マインド中、最も重要な理由です。購入決定に際して、衣類がどこで製造さ

れたかなど、消費者は少しも気にしていないように見受けられます。何年も前、私がある

米国小売業協会の若い見習いだった頃、「メイド・イン・USA」というスローガンに基づいた大規模なキャンペーンを実施したことを覚えています。今日、このようなキャンペーンは

実質上存在しません。当社のメンズ部門は、メンズの下着とドレスシャツの相当量をベト

ナムで製造しています。彼らの主要ターゲット層は、40歳未満の男性ですが、この世代は、ベトナム戦争をほとんど覚えてもいなければ、気にもしていません。これと同様の現象が、

「中国製」ラベルに関しても起きています。中国は品質の劣悪な衣類を生産しているとい

う想定は、消費者の間にもはや存在しません。「中国製」を購入することに対する反感はも

はや存在しないのです。これは、特に若者世代の間では真実であり、彼らのワードローブ

の95%は米国産でない衣類で構成されています。コンピュータ、エレクトロニクス製品、自動車に夢中な今日の若者に関して最も重要なことは、彼らが夢中になるこうした商品は

何一つとして米国製でないことを、認識することです。このことは、彼らが外国製の商品

に対して自然な尊敬と称賛を持つことにつながります。 当社のより高級なスーツを取り扱う部門は、日本の洗練された単繊維生地の利用を基盤と

して大成功を収めています。これは日本特有の分野であり、当社には現時点でこれを変更

する意図はまったくありません。ウール製のスーツはイタリアの十八番でしたが、近年、

中国の数社の布地製造工場がこの分野に台頭し始めました。私自身は日本製の生地を好ん

でおり、日本製の生地を「より高級な」分野に使用し続けていきます。その一方で、中程

度の価格帯の部門は、中国産の布地に非常に深く関わっています。 中国がスーツ製造地として確立されて以来、構造基盤が整っていないのではないか、製造

に必要な全要素を調整する能力が備わっていないのではないかという、私の昔の恐れがよ

みがえりました。中国は、この問題を非常にゆっくりと解決しようと試みています。私は、

この問題はまもなく解決されるような気がしています。 割当の撤廃に対する私の主な懸念は、「未知の部分」に対する恐れから来るものです。何が

起こるかが分からないことから来る恐れです。私は、2005年の第1四半期と第2四半期に関してはさほど心配していませんが、2005年の第3四半期と第4四半期の「未知の部分」については懸念しています。それまでに何らかの類の制裁措置が発動されることは確かでしょ

23

Page 24: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

う。小売業者である当社は、売り場の計画を1年ほど前倒しに立てます。ですから2005年の第1四半期と第2四半期の出荷は昨年中に既に計画済みです。2005年度上期は大丈夫なはずですが、2005年度下期はこの「未知の部分」に該当します。もう一つ指摘されるべきことは、割当に課せられる料金を織り込むことは、当社の高級品の部門にとっては困難ではあ

りませんが、当社の中程度の価格帯の分野では大きな問題となるでしょう。したがって、

割当撤廃は、当社の低価格部門における利益構造を大幅に改善するでしょう。 当社は大規模な小売業として、「組織」としての思考が必要とされます。第3、第4四半期に問題が生じた場合のために、非常用対策を備えることは必要不可欠です。そのため、貿易

制裁が実際に差し迫った場合には、代替製造計画を準備する必要があるでしょう。これは、

当社が中国に対して感じているマイナスの懸念の一つです。また、中国との取引における

もう一つの非常に大きな問題は、中国の新年です。新年が毎年同じ日でないことから、小

売業者にとってはあらかじめ計画を立てることが困難です。外国での製造における困難は

すべて、彼らに我々のビジネスの仕方を理解させることにあります。 他方、中国と米国との取引量は膨大であることから、先ほども述べましたが、彼らの技能

が向上し、品質が改善されていきます。彼らが米国企業のニーズをよりよく理解すればす

るほど、彼らとビジネスを行うことがより容易になっていきます。中国が米国との取引量

を続けるために必要なことは、山ほどあります。機械、技術、ならびに資金調達の追加も

必要とされます。この点は、日本企業が関与、貢献できる部分です。日本が支援できる別

の分野は、新設の衣料工場の援助です。中国の新設工場を輸出事業について教育するには、

援助が必要とされます。この援助はコンピュータ・テクノロジー分野においても必要とされ

ますが、最も重要なのは、布地の供給の点で必要とされる援助です。 私は、中国が今から5年後、そして今から10年後にどうなっているかを知ることに非常に興味があります。10年後、特に一部の中国人が自分たちのライフスタイルをいかに向上させているかを鑑みると、中国が10年後も当社の製造パートナーとして競争力を保ち続けているだろうか、と私は自問しています。例えば上海のような都会を見てみましょう。上海は

今日、世界で最もアップデートされた都市の一つです。例えば非常な田舎出身の中国の一

般民が、上海住人の贅沢なライフスタイルの「味」を知った時、何が起こるでしょう?中

国の地方における新設雇用施設の増大によって、より幅広い層の中国人に雇用と機会が生

み出されます。するとこのより幅広い層の中国人も、新しいライフスタイルの「味」を覚

え始めることになります。この味を求める欲求がより大きくなった時、このことは、他の

国に対する価格設定の点で、中国にどのような影響を及ぼすでしょう? 過去10年間にわたり、中国でのCMT(裁断・縫製・仕上げ)の年間成長率は、常に5%未満に抑えられてきました。中国は今や、労働費上昇の困難を経験するに至り、したがって、CMTの前年度比での上昇率は、過去の平均の5%をはるかに上回っています。単純な話、中国の超大国としてのステータス人気は、主としてその異常に低い労働費によって勝ち得たものなのです。こ

れこそ中国の成長の基盤であるように見受けられます。もし中国の労働費が急速に上昇し始め

たら何が起こるでしょう?我々は次にどこに行くのでしょう?私の考えでは、この質問に対す

る回答は、自明です。今度こそ行くところはどこにもないのです。 以上

24

Page 25: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

Ⅲ. 米国テキスタイルエージェント テックス・タイム・インク(Tex-time Inc.) インタビュー実施日:2005年2月2日

インタビュー者:Shin‐tex & Co., 伊藤 真

私は、ニューヨークでテキスタイル営業オフィスを運営しています。当社は、日本の商社

ならびに韓国とイタリアの貿易会社を通じて、多数の製造工場を代表しています。日本の

商社を通じた場合の多くは日本の製造工場ですが、中国、タイ、台湾、インドネシアとも

これら日本の商社を通じて仕事をしています。 今日、布地の販売の鍵は、布地自体だけではなく、顧客がどこで製造された衣類を望むか

にも、大いに影響されています。製造地はさらに、価格設定も支配します。例えば、多数

の製造会社は今でも「イタリア製」ラベルの付いた衣類を取り扱いたいと思っています。

これは、レディースよりもメンズのビジネスの方でより普遍的です。男性用シャツの分野

では、日本と中国ははるかに優れたシャツ地製品を供給する、と当社では考えています。

価格の点、納品の点、そして最も重要なことに品質の点で、より優れています。総合的に、

アジアの反物はヨーロッパの はるかに優れています。顧客は、このことを認識するよう

になってからしばらく経っており、今では日本と中国での生産のためにイタリア製のスワ

ッチ/デザインをさらに多く持ってくるようになっています。ここでも、レディースの分

野では、中国製の表示があるラベルの付いた衣類を製造することにはまったく問題があり

ません。 中国の品質は、非常に短期のうちに劇的に改善されました。中国が大量バルク生産操業の

みを志向していたために小さなロットのサンプルを拒否していたのは、わずか5年前のことでした。最近では、彼らは、もう少し融通性を持てば大きなビジネスにつながることを認

識しています。彼らはそれこそ日々、融通性を増しています。これは多くのヨーロッパの

施設の終焉を意味する、と私は思います。 私が見るに、中国に急速に起こっていることは、ポリエステルや安い綿などの廉価品の生

産にはもはや興味を失っている、ということです。彼らは、高級繊維品も素晴らしい価格

で生産しているのです。 中国は、ついに「マージンの高い」ビジネスに目覚めました。ウール、カシミア、スレッ

ドカウントの高い綿などマージンの高い製品を取り扱うと、「大量生産」を必要としないで

製品の金銭的価値を容易に引き上げることができるのです。 先ほど述べたとおり、中国は極めて急速に学習していますが、それと同時に中国は新しい

「イメージ」を獲得し直すために懸命に働いています。彼らは、品質の低さ、ビジネスの

25

Page 26: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

実務慣行の拙さ、信頼の置けなさ、その他の古い悪評判の代わりに、他の国々がいかによ

り首尾良くやってきたのかを常に学習しているのです。しかし、中国での布地については、

多数の顧客の「意見」という点では、この先はまだなお長い道のりです。 私は長年にわたり、完璧な評判を持つ日本の布地を販売してきました。日本の完璧な評判

の理由は、正確な生産、タイムリーな納品、とにかく素晴らしい品質、そして言うまでも

なく尊敬を徹底するハイレベルのビジネス・プラクティスにあります。 一方の日本ですが、中国に勢力を譲っている点は、価格です。これはヨーロッパの生地に

とっても同様で、しかもはるかに大きな問題となっています。日本は中国に対し、今や価

格面によってだけではなく、近代化の欠如によっても、地歩を譲り始めています。これは

私の長年のキャリアにおいて初めて目にすることです。単純に言って、中国の製造工場は、

世界中の他のどこよりも、はるかに「最新式の」設備を備えています。 それと同時に、日本は、ビジネスの欠如のために生産スペースを縮小し、多数の施設を閉

鎖し、価値ある技術者をレイオフしています。ヨーロッパの製造工場でも同じことが言え

ます。中国にとって幸いなことに、こうした新しく設備を整えた知識の豊富な中国の繊維

工場の多くは、そうした新しく失業した人々を雇用することから、いっそう利することが

できます。 既に述べたとおり、中国は、米国市場についてはまだなお自らの評判と闘う必要がありま

す。したがって中国人の多くは、トップクラスのイタリアの製造工場と共に、布地のデザ

インにおいて共同作業をしています。彼らは日本の大手繊維会社とも、融資や技術援助の

点で協力関係にあります。これは中国側にとって実に賢い動きです。彼らは、日本とヨー

ロッパの知識を習得するだけでなく、顧客を極めて安心させることをし始めています。 中国の長所と重要性に関するご意見の中で言及されましたが、日本の繊維会社は、どの分

野で中国に関与するべきであると提案されますか? 非常に良い質問です。繊維業界の誰もが、過去10年間の中国が遂げた成長を認識しています。非常に大きな前進ですが、日本は過去にこれと同じことをするのに50年ほどかかり、イタリアの繊維工場はこれに2世紀かかりました。そうは言ったものの、中国に欠如していることが、今なお中国に著しい害を与えています。最も明らかに、中国が学ぶ必要のある

ことは、布地の創造性です。この創造性がイタリアの生地供給業者を過去100年間も続行させてきたのです。 創造性とは、大きな範囲を網羅する「便利に」使える単語です。この必要とされる創造性

は、実は二つの構成部分に分けられます。最初の構成部分は、デザイン/スタイリングの

創造です。イタリアがこの分野を独占していることには議論の余地がないことは確かです。

二つ目の構成部分は、テクノロジー/エンジニアリングとシステム管理です。これは、日

本が他のどの国よりもはるかに卓越している分野です。 ですから布地のディストリビュータとして、夢の工場は、トップクラスのイタリアの製造

工場によりデザインされたコレクションが、日本企業の哲学により経営、操業、設備され、

26

Page 27: February 25, 2005 · 私は、紳士物シャツの布地を日本のものに移行し始めました。そして衣類の製造をイタリ アと日本で折半する予定です。私は、最終的には衣類の製造については全材料・品目ともす

そして中国の施設で中国のコスト構造にて製造される工場です。ですから、日本は、中国

の製造工場にアプローチするにあたり、イタリアの布地のデザインと積極的に組んでいく

ことが可能です。日本の商社が彼らに加わり経済支援ができるのであれば、完全に双方に

有益な状況が生み出されます。 中国製の布地の重要性は何ですか?米国による割当制限の撤廃後、何か違いがあります

か? 先に説明したとおり、中国製の布地は、ますますより重要になりつつあります。というよ

りは、こう言うべきでしょう。顧客は、ヨーロッパの布地に対してますますアクセスしに

くくなり、日本の布地にもますます手が出なくなりつつあります。これにより、中国製の

布地は自動的にこの構図の前面に押し出されます。当社のすべての顧客は布地を選択し、

さらには布地のデザインを手助けするかもしれませんが、実際の購入は、衣料品製造工場

によって行われることを忘れてはなりません。ですから、最終的な米国の顧客は、衣料品

製造工場から完成品衣類パッケージを購入できるのです。このことはますます重要になっ

ています。誰も、表地、裏地、ボタン、糸などを購入し、中国の工場にそれらを送りつけ

て裁断と縫製の費用も支払うのは、望んでいないからです。当社のビジネスの傾向は、こ

の方向に移行しています。この状況においては、中国の工場が正しい購買を行うことが必

要不可欠です。中国の衣料品製造工場がFOB衣類パッケージを米国のクライアントに提供することから、彼らにとっては適切な繊維工場を選択することがその衣類パッケージの成

功の鍵となります。より多くの企業が自社の衣類を極東で製造することを希望するように

なるにつれ、中国で購入、生産される生地の量は自然に増加していきます。. 米国のアパレル企業による中国の衣料品製造業者と日本の繊維供給業者との将来の関与に

ついては、どのような見解をお持ちですか? この質問への返答は、まず、日本から始めます。日本の布地は、極端に特別な種類の製品

のみが米国市場に関係するようになるでしょう。私は、最高級の合成繊維製品は引き続き

日本の強みとして留まると考えます。W.H.O.(世界保健機関)などの組織は、中国の環境問題に対して強い施行をとる可能性が高いからです。米国のアパレル企業は、中国の衣料

品製造業者の力に依存し続けます。責任の分掌が生まれ、これは米国企業が製造機能にお

いて中国のパートナーに依存し続けることを意味します。当社の顧客の多くは、かつては

相当大規模な製造部門を社内に構えていたものですが、その部分を供給業者側に任せるよ

うになったことからもはや製造部門を構えていません。それと同時に、販売、マーチャン

ダイジング、デザインの部門を拡大しています。この最終結果として、米国企業の責任は、

創造と販売ということになります。生産と製造の責任はすべて、多くの衣類プログラムを

製造する中国の供給業者が担います。日本の繊維工場は、このスペクトルの両端と相互に

やりとりできなければなりません。一方の部分で布地の創造性を検討し、それと同時に中

国の衣料品製造工場に協力し生産をサポートしていくことです。

以上

27