Evaluation of Delamination Life of 8mass%Y2O3 ... - J-STAGE

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「材 料 」(J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol. 52, No. 12, pp. 1450-1457, Dec. 2003

論 文

熱 サ イ クル を 受 け る8mass%Y203・ZrO2/CoNiCrAlY

遮 熱 コ ー テ ィ ン グ の は く離 寿 命 評 価 †

中 佐 啓治郎*高 琳*

加 藤 昌 彦*西 田 秀 高**

Evaluation of Delamination Life of 8mass%Y2O3.ZrO2/CoNiCrAlY

Thermal Barrier Coating under Heat Cycles

by

Keijiro NAKASA*, Lin GAO*, Masahiko KATO* and Hidetaka NISIDA**

Thermal barrier coating (TBC) was applied to Co based superalloy specimens, where bond coat was CoNiCrAlY deposited by high velocity oxygen fuel (HVOF) spraying and top coat was 8mass% yttria stabilized zirconia (YSZ) by

atmospheric plasma spraying. After heat cycles with different holding temperature, holding time at the maximum temperature and heat cycle numbers, edge indent tests of the specimens were carried out to measure the delamina-tion energy of the coating. The results showed that the delamination energy Ed once increased and then decreased with increase in heat cycle numbers. The Ed was lower than those obtained from holding tests at high temperature. The delamination life of TBC was calculated by combining the effects of heat cycles (thermal fatigue) and holding time (oxide growth) on the damage of interface using the strain parallel to the substrate. The predicted delamination life coincided relatively well with experimental one.

Key words: Thermal barrier coating (TBC), Heat cycles, Delamination energy, Oxide layer thickness, Interfacial thermal strain energy release rate

1 緒 言

現 在,エ ネル ギ ー資 源 の枯 渇,炭 酸 ガ スの 排 出 に よ る

地 球 温 暖 化 の問 題 の 重 要 性 は,世 界 的規 模 で認 識 され て

お り,火 力 発 電 にお い て も,発 電 効 率 の い っ そ うの 向上

が求 め られ て い る.こ のた め,最 近 で は,発 電 用 ガス ター

ビ ンの 入 口温 度 を1700℃ に まで 高 め る努 力 が ざれ て お

り,セ ラ ミック ス溶 射 に よ る動 静 翼,燃 焼 器 な どの高 温

部 材 の遮 熱 コ ー テ ィ ング(Thermal Barrier Coating:

TBC)技 術 は不 可 欠 とな って い る.1)~6)しか し,ガ ス ター

ビ ンが長 時 間 使 用 され る と,基 材 とTBCの 界 面 に酸 化

層(Thermally Grown Oxide, TGO)が 形 成 され,は く離

強 度 が低 下 す る.さ らに,ガ ス タ ー ビ ンの起 動 ・停 止 に

と もな って界 面 に繰 返 し熱応 力 が作 用 し,TBCの は く離

が生 じる.し たが って,電 力 の安 定供 給 には,タ ー ビンブ

レー ドの 損 傷 状 況 を定期 的 に点 検 す る とと もに,TBCの

寿 命 を正確 に予 測 す る必 要 が あ る.著 者 らは,前 報7)~9)

にわいて,高 温酸化による界面損傷効果(時 間効果)を

引張 り試験およびエ ッジインデ ン ト試験により調べ,

TGOの 成長が,界 面強度の低下に密接に関係することを

確かめた.本 研究の第1の 目的は,こ れに引続 き,熱 サ

イクルの温度,保 持時間およびサイクル数を変化させ,

エ ッジインデント法により界面強度の低下を調べること

である.

第2の 目的は,熱 サイクルを受けるTBCの はく離寿命

予測を行 うことである.こ れについての系統的な研究は,

1984年 にNASAのMillerら によって始められた.Chang

ら10)は,ト ップコー トとボンドコー ト界面の凹凸近傍の

応力とひずみを有限要素法により計算 し,界 面の凸部近

傍の先在微小 き裂は,加 熱時にはTBCに 垂直方向の応

力が引張 りになるため,基 材に平行方向に成長できるが,

冷却時には凹部に向かって成長できない こと,界 面 に

TGOが 形成 されると,冷 却時に凹部に引張応力が発生

するため,き 裂が進展できることを示 した.こ れに基づ

き,Miller11)は,ZrO2ト ップコー ト/ボ ンドコー ト界面

の熱膨張係数の不一致によるTBCに 垂直方向の熱ひず

み と,ボ ン ドコ ー トの酸 化物 成 長 に よ るTBCに 垂 直 方

向 の熱 ひず み を加 算 した有 効 ひ ず み εeを酸 化 重 量 増 の 関

数 と して 表 し,こ れ をParis流 の き裂 進 展 則(da/dN=

Aεebad,a:き 裂 長 ざ,N:熱 サ微イ クル 数,A,b,d:材

料 定数)に 代 入 して積 分 し,き 裂伝 ぱ寿 命(は く離 寿 命)

を求 め た.

NASAと 契 約 した 民 間 の3社 の研 究 者 が この考 え を発

展 させ た.DeMasiら12)(Pratt&Whitney Aircraft社)

は,熱 サ イ クル にお け る非 弾 性 ひず み 範 囲 を考 慮 した 寿

命 評価 式 を提 案 した.Strangmanら13)(Garrett Turbine

Engine社)は,高 温 に お け るボ ン ドコー トの酸 化,トッ

† 原 稿 受 理 平 成14年11月21日Received Nov. 21, 2002

*正 会 員 広 島 大 学 工 学 部 第 山 類(機 械 シス テ ム 工 学 系)〒739-8527東 広 島 市 鏡 山,Dept. of Mech. Eng., Hiroshima Univ., Kagamiyarha

Higashi-Hiroshima, 739-8527

**中 国 電 力(株)技術 研 究 セ ン ター 〒739-0046東 広 島 市 鏡 山,Technical Res. Center , The Chugoku Electric Power Co. Inc., Kagamiyama, Higashi-

Hiroshima, 739-0046

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熱サ イクル を受 ける8mass%Y2O3・ZrO2/CoNiCrAlY遮 熱 コーティングの はく離寿命評価 1451

プコー トのじん性低下および溶融塩堆積による損傷 を考

慮 した寿命予測式を提案した.Hilleryら(General Electdc

社)14)は,エ ッジ部からの トップコー トのはく離を考え,

TBCに 発生するせん断ひずみと垂直ひずみを,時 間依存

型非線型有限要素法によって計算 し,破 損寿命と関係づ

けた.

最近,Vaβenら15)は,円 板試験片について,界 面の凹

凸 とエッジ部の曲率半径の効果 を考慮 してTBCの はく

離を解析 している.彼 らは,ボ ンドコー ト表面の凹凸の

形状を,正 弦曲線として取扱い,Millerら と同様,熱 サ

イクル数の増加およびTGOの 成長にともなうTBCと ボ

ンドコー トの界面付近の応力(界 面の凹凸パラメータの

関数)を 有限要素法により計算 し,応 力拡大係数範囲か

ら,Parisの き裂進展速度式 を用いて,寿 命予測を行っ

ている,は く離は円板試験片の縁のR部 か らSpalling

(座屈)に よって起こり,界 面の凹凸と縁の半径の両方が

はく離に影響するとしている.

荒井ら16)は,円 柱形の基材について解析 し,ト ップコー

トの非弾性変形により発生するTBCに 垂直方向の熱応力

範囲 Δσrと,は く離寿命Ndと の間には,Mansor-Coffin

の関係式が成立するとし,熱 疲労による応力範囲にTGO

成長による応力範囲を加味 した有効応力範囲 Δσを考え,

Paris則 を積分 して,寿 命予測式を導いている.Millerら

のモデルと異なる主な点は,ひ ずみの代わりに応力を用い

ていることと,界 面の凹凸を考慮 していないことである.

以上の予測式は,い ずれもMillerら の考えの発展形で

あり,TBCと 基材界面に存在する凹凸,基 材の形状,

TGOの 成長に注目し,TBCに 垂直方向の引張ひずみま

たは応力が先在微小 き裂を伝ぱさせてはく離をひきおこ

すとして,き 裂伝ぱ寿命を求めている.一方 ,ク リープ変形および高温疲労による基材の損傷

評価は,基 材に平行方向(力 が加わる方向)の ひずみま

たは応力で表現されている.実 機では,TBCの 損傷 と基

材の損傷が同時に起こり,基 材のひずみがTBCの はく

離に関係する.し たがって,TBCま たは基材に平行な方

向に生 じるひずみに基づいて,TBCの はく離寿命予測を

行 うことが望 ましいと思われる.ま た,実 機 における

TBCの はく離挙動は,静 翼や動翼の形状,温 度分布,応

力分布などによって異なり,マ クロ的には中央部から座

屈(ス ポーリング)に よって起こる場合だけでなく端部

から起 こる場合,TBCに 割れが生 じた後にはく離が起こ

る場合17)など,さ まざまである.し たがって,こ れらを

統一的に取扱えるパラメータが必要である.

このような観点から,本 研究では,熱 サイクルによる

界面損傷効果(サ イクル効果)と 高温酸化による界面損

傷効果(時 間効果)を 組み合わせ,基 材に平行方向に作

用するひずみ(熱 ひずみ界面エネルギー解放率に対応す

る)を 用いて,TBC部 材のはく離寿命推定式 を導 くこと

を試みる.ま た,エ ッジインデン ト法を用いたはく離強

度評価の結果は,TBCの 精密な余寿命予測に役立つこと

を示す.

2 試 験 方 法

基 材 は ガ ス タ ー ビ ン静 翼 に よ く用 い られ るCo基 超 合

金FSX-414で あ り,長 さ100mm,幅22mm,厚 さ3.5

mmの 板 状 試 験 片 に加 工 した.表 面 に シ ョッ トブ ラ ス ト

を施 した の ち,ま ず,ボ ン ドコ ー トと して0.1mm厚 さ

のCoNiCr細Y合 金 を 高 速 フ レー ム溶 射(High Velocity

Oxygen Fuel:HVOF)に よ り形 成 させ,そ の 上 に トップ

コ ー トと して0.2mm厚 さの8mass%Y2O3・ZrO2皮 膜 を

大 気 プ ラ ズ マ 溶 射(Atmospheric Plasma Spraying:

APS)に よ っ て形 成 させ た.こ れ を ダ イヤ モ ン ド砥 石 で

切 断 して33×11×3.5mmの 小 型 試験 片 を作 製 した.実

験 で用 い た赤外 線 イ メー ジ炉(真 空理 工(株)製)は,前 報8)

で用いたものと同じである.試 験片を15~20分 で設定

温度(1273K,1373Kお よび1473K)に なるように一定

の昇温速度(約1K/s)で 加熱 し,30分 間(あ るいは

120分 間)保 持 した後,15分 間自然冷却する(15分 で約

70℃ まで温度が低下する).そ の後,再 び加熱するとい

う操作 を繰返 して,熱 サイクル試験 を行った.な お,試

験片は4枚 を同時に炉中に入れ,1つ の試験片の トップ

コー トに熱電対を接触させて,試 験片の温度を測定する

とともに,熱 サイクル温度を制御 した.試 験片基材の厚

さは3.5mmで あり,試 験片の両面から赤外線加熱を行っ

ているので,加 熱 ・冷却過程での試験片内部と表面の温

度差は小 さいと思われる.

熱 サ イクル に よる界 面 損傷 の評 価 は,Fig.1に 示 す エ ッ

ジイ ンデ ン ト試 験 に よ り行 った.エ ッジ イ ンデ ン ト試験

お よ び は く離 エ ネル ギ ーの 計 算 は,前 報7)と 同 じで あ る

の で詳 細 は省 略 す る.

3 実 験 結 果

3・1 熱 サ イ クル 回 数 とは く離 エ ネル ギ ーの関 係

TBC試 験 片 をT=1273Kま た は1373Kま で加 熱 し,

th=1.8ks(30min)保 持 したの ち冷 却 す る とい う熱 サ イ ク

ル試 験 を所 定 回数 繰 返 した.Fig.2(a)お よび(b)は,

1273Kで 熱 サ イ クル を加 えた 試 験 片 につ い て,エ ッジか

らの 距 離xを 変 化 させ て エ ッ ジ イ ン デ ン ト試 験 を行 い,

それ ぞ れ は く離 時 の荷 重P0お よび は く離 面 積Sを 測 定 し

Fig. 1. Edge-indent method.

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1452 中佐啓治郎,高 琳,加 藤昌彦,西 田秀高

Fig. 2. Relationship between distance from edge and

load at delamination or delamination area.

た 結 果 で あ る.Fig.2(a)に よる と,ば らつ きは あ るが,

エ ッジか らの 距 離xの 増 加 にほぼ 比例 してR0が 増 加 して

い る.ま た,は く離 領 域 の面 積Sは,は く離 領 域 の形 が

二 等 辺 三 角 形 で あれ ば,エ ッジ か らの 距 離xの2乗 に比

例 して 増 加 す る はず で あ る.Fig.2(b)に よ る と,実 験

点 はほ ぼ その よ うに な って い る よ うで あ る.

Fig.3は,1273Kま た は1373Kの 熱 サ イ クル を加 えた

Fig. 3. Relationship between distance from edge and

delamination energy.

試験片について,エ ッジからの距離xと はく離エネルギー

Edの 関係を求めたものである.こ こでEdは 次式から計

算した.7)

Pは ロー ドセル に よ り測 定 した押 込 み荷 重 で,P0は は く

離 荷 重 で あ る.ま た,δ は レーザ ー変位 計 に よ り測 定 した

圧 子 押 込 み変 位 で,δ0は は く離 時 の変 位 で あ る.Fig.3

に よ る と,Edの ば らつ きは大 きい が,サ イ クル数 ご とに

平 均 値 を とって 比 較 した.

Fig.4は,Fig.3を も とに,熱 サ イ クル 回数Nと は く

離 エ ネ ル ギ ーEdの 平 均 値 との 関 係 を求 め た グ ラ フで あ

り,図 中の縦 線 は,デ ー タの ば らつ きが正 規 分 布 に した

が うと した と きの 標 準 偏 差 を表 す.ま た100回 と して示

す 実 験 値 は,加 熱 前 の 常温 で 測 定 した 値 で あ る.Fig.4

に よ る と,1273Kま た は1373Kの 熱 サ イ クル を加 えた試

験 片 の は く離 エ ネル ギ ー は,熱 サ イ クル 回数 の増 加 と と

もに一度大 きくなった後,急 激に小 さくなる.ま た,

1373Kの 熱サイクルを加えた場合の方が1273Kの 場合よ

りも長寿命側で減少の程度が大 きい.な お,1373Kの 熱

サイクルを加えた試験片は,633回 の熱サイクル試験の

後,ト ップコー トが端部から一部分はく離 して浮 き上が

ったので,こ のときのはく離エネルギーは零 としてある.

はく離エネルギーEdが 一度上昇する理由は,前 報9)の加

熱保持試験の場合にも述べたように,加 熱による トップ

コー トとボンドコー ト間の残留応力の減少 と相互拡散に

よると思われる.

3・2 は く離 面 の観 察

1373Kで633回 熱 サ イクル を加 えた後,Fig.5の よ う

に トッ プ コ ー トが エ ッ ジ か ら一 部 は く離 し た.ま た,

1473Kで111回 熱 サ イ クル を加 え た と こ ろ,ト ップ コ ー

トが 試験 片 の エ ッジ か ら完 全 には く離 した.両 者 につ い

て,ボ ン ドコ ー ト表 面 お よび は く離 した トップ コ ー トの

裏 側(ボ ン ドコ ー ト側)面 を走 査 型 電 子顕 微 鏡 で観 察 し

(た.い ず れ も,ほ ぼ 同 じ様 相 で あ るの で,後 者 の場 合 の

Fig. 4. Relationship between numbers of heat cycles

and delamination energy.

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熱 サ イクル を受 け る8mass%Y2O3・ZrO2/CoNiCrAlY遮 熱 コ ーテ ィ ングの は く離 寿 命 評 価 1453

Fig. 5. Delamination of top coat after 633 heat cycles

(total holding time of 2279ks) at 1373K.

SEM像 お よび 組 成 像 をFig.6に 示 す.前 報8),9)で 示 し

た よ うに,高 温 長 時 間 保 持 に よ り,ボ ン ドコ ー トCoNi

CrAlYと トップ コ ー トY2O3・ZrO2の 界 面 で ア ル ミナ

(Al2O3)層 と複合 酸 化物((Ni,Co)(Cr,Al)2O4)層 が形 成

され,1473Kで481時 間 加 熱 保 持 後 トップ コ ー トが 自然

は く離 した場 合8)に は,ボ ン ドコ ー ト未 溶 融 粒 子 とア ル

ミナ層 の 界 面(未 溶 融 粒 子 側)で は く離 が生 じて い たフ

ー 方,Fig.6に よ る と,熱 サ イ クル を加 えた 場 合 の は く

離 は,異 な っ た経 路 で起 こ る.す な わ ち,Fig.7に 模 式

的 に示 す よ うに,未 溶 融粒 子 近 傍 の は く離 は,ア ル ミナ

層 と複 合 酸 化 物 層 の界 面 の,主 と して複 合 酸 化物 側(灰

色 の 部 分)で 起 こ り,Al2O3内(黒 色)で 生 じ るは く離

は,ご く一 部 で あ る.ま た,は く離 き裂 は トッ プ コ ー

ト ・複 合 酸 化 物 界 面 に沿 っ て あ ま り大 き く進 展 せ ず,主

と して トッ プ コ ー ト内(白 色 部)を 進 展 す る.後 出 の

Table Iに 示 す よ うに,熱 膨 張 係 数 の 差 は,ア ル ミナ 層

と トップ コ ー ト層 よ り もア ル ミナ層 とボ ン ドコ ー ト層 の

方 が大 きい.高 温 で 長 時 間 保 持 した場 合 には,ア ル ミナ

層 が成 長 す る こと に よ り発 生 す る応 力 が,ボ ン ドコ ー ト

の未 溶 融 粒 子 とア ル ミナ界 面 に集 中 しや す い た め,そ こ

Fig. 6. SEM and composition view of specimen after

111 cycles at 1473K. (a) and (b) surface of bond

coat, (c) and (d) surface of top coat observed from

bond coat side.

Fig. 7. Schematic delaminatiion path after heat cycles.

にき裂が発生 し,ト ップコー トに拡大 したものと思われ

る.一 方,熱 サイクルを加えた場合に,ア ルミナ層と複

合アル ミナ層の界面ではく離が生 じている理由は,複 合

アル ミナ層の形状は帯状ではなく不連続で多孔質であり,

熱サイクルによりトップコー トと複合アル ミナ層の熱膨

張係数の差に起因 して,複 合アル ミナ層に大 きな繰返 し

せん断応力が加わったためと思われる.し たがって,本

実験で用いた熱サイクル条件では,き 裂の発生は,ア ル

ミナ成長応力よりも熱サイクルによる加熱 ・冷却時の熱

応力によって生じていると思われる.

4 考 察

4・1 相当保持時間の計算

前報9)によると,高 温保持 したTBC試 験片のはく離強

度は,高 温で成長 したアル ミナ層の厚 さと関係がある.

前述のように,は く離き裂の伝ぱ経路は,高 温で長時間

保持 した場合と熱サイクルを加 えた場合では異なるが,

TBCの はく離挙動はアル ミナ層の存在 と密接な関係にあ

る.前 報18)によると,ア ル ミナ層の厚 さBAlは,次 式で

表 される.

BAl=A・exp(-Q/RT)・tn (2)

こ こで,Aお よびnは 材 料 定 数,Qは アル ミナ層 形 成

の見 か けの 活 性 化 エ ネル ギ ー,Rは ガ ス定 数 で あ り,A=

340μm・s-0.24,Q=84.5kJ・mol-1,n=0.24で あ る.ま

た,複 合 酸 化 物 層 の 厚 さは,薄 くて 不 均 一 なの で,数 式

化 す る こ とは 困難 で あ るが,そ の 平 均 値 はア ル ミナ層 の

厚 さBAlに 比例 す る もの と思 われ る.

と ころ で,本 研 究 で は,Fig.8(a)に 示 す よ うな加 熱

冷 却 サ イ クル を用 い たの で,一 サ イ クル(加 熱-保 持-

冷 却)の 全 期 間 中 の アル ミナ層 の 成 長 量 を計算 す る必 要

が あ る.そ の 場 合,ア ル ミナの 成 長 速 度 は,式(2)の よ

うに時 間 や温 度 と と もに非 線 形 に変 化 す るの で,積 分 計

算 は 困難 で あ る.以 下,昇 温 区 間 を例 と して アル ミナ層

成 長 量 の数値 計 算 法 を説 明 す る.

まず,昇 温 期 間trに お け るアル ミナ 層 の成 長 量(BAl)1

を,式(2)を 用 いて,以 下 の よ うに計 算 した.Fig.8(b)

に示 す よ うに,昇 温 区 間trをn個 の微 小 区 間 Δtに分 け,

0~tiの 問 に,ア ル ミナ層 が成 長 した厚 さ を(BAl)iと す

る.次 の Δt経過 す る問 に,温 度 はTi+1=Ti+ΔTに 上 昇

す る.こ の温 度 で,ア ル ミナ層 が(BAl)i+1に 成 長 した と

すれ ば,そ の(BAl)i+1を 式(2)に 代 入 して,ti+1を 計 算 す

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1454 中佐啓治郎,高 琳,加 藤昌彦,西 田秀高

Fig. 8. Pattern of heat cycle (a) and calculation of

equivalent holding time during temperature-rising

period (b).

る.さ らに,ti+1+Δt時 間 で は,温 度Ti+2=Ti+1+ΔTで,

アル ミナ層 の厚 さは(BAl)i+2に 達 す る.こ れ を式(2)に

代 入 してti+2を 求 め る.こ の よ うな計 算 をt=0~trま で

繰 返 して,保 持 温 度Tkに 達 す るまで に成 長 した アル ミナ

層 の厚 さ(BAl)nを 求 め,こ れ を式(2)に 代 入 して計 算 し

たtnが 昇温 区 間 の相 当保 持 時 間 で あ る.こ の よ うに して

コ ン ピ ュ ー タ ー に よ り計 算 した 各 サ イ クル の 昇温 区 間 ,

一 定温 度保 持 区 間 お よび 降温 区 間 を合 計 した相 当 保 持 時

間theqの 例 を示 す と,た と えば,1273Kで の0.9k(15min)

昇温,1.8ks(30min)保 持,0.9ks(15min)降 温 の熱 サ イ

クル で は,3区 間 の 相 当保 持 時 間 は そ れ ぞ れ,34.6s,

1800s,19.5sで,合 わせ てtheq=1.854ks(30.9min)で あ

る.1373Kで はtgeq=36.9+1800+20.1=1857s=1.857ks

(31min)で あ る.ま た,1473Kで の1.2ks(20min)昇 温,

1.8ks(30min)保 持,0.9ks(15min)の 熱 サ イ クル に対 して

は,theq=51.1+1800+19.9=1871s=1.871ks(31.2min)

で あ る.こ れ ら のtheqは,熱 サ イ ク ル 数Nを104回 ま で

増 加 させ て も,3け た ま で は 同 じ で あ る.

し た が っ て,式(2)を 熱 サ イ ク ル 負 荷 時 に も適 用 で き

る よ う に 補 正 す る と,t=N・theqと し て,次 の よ う に な る.

BAl=A・exp(-Q/RT)・(N・theq)n (3)

4・2 相当保持時間とはく離エネルギEdの 関係

Fig.9は,Fig.4の 結果をもとに,熱 サイクルを加え

た試験片 について,上 記のようにして計算 した累積相当

保持時間 Σtheq=M・theqと はく離エネルギーEdと の関係

を示 したものである.こ の図には,各 温度で一定時間加

熱保持した試験片について前報9)で求めた,一 定温度保

持時間とEdの 関係も示 してある.こ の図によると,単 純

に加熱保持した場合より,熱 サイクルを加えた場合の方

が,Edが はるかに低いことが分かる.単 純に加熱保持 し

Fig. 9. Relationship between cumulative equivalent

holding time and delamination energy.

た場合のはく離は,界 面酸化による損傷が主原因である

が,熱 サイクルを加えた場合には,こ れにさらにTBCと

基材の熱膨張係数の差に起因する繰返 し熱応力による界

面疲労損傷が加わり,は く離を促進すると思われる.

4・3 多層 コーティングの熱ひずみ界面エネルギー解

放率および熱ひずみ界面破壊 じん性値

前報18)で,エ ッジインデント法における皮膜のはく離

過程を破壊力学的に検討 し,界 面破壊 じん性GcとEdの

間に対応関係があるごとを示 した.熱 サイクルによる

TBCの 寿命評価を行う場合,物 理的にできるだけ意味の

あるパラメータを用いることが望ましい.そ こで本研究

では,コ ーティング材において,T0か ら一定温度Tま で

繰返 し加熱 ・保持 されることによって発生する熱ひずみ

に注 目するが,こ れは以下に示すように,皮 膜が一部は

く離 したのちには,は く離き裂の界面エネルギー解放率

(熱ひずみ界面エネルギー解放率と呼ぶ)に 対応する.

Fig.10に 示 す よ うに,n-1層 の 皮 膜 とn番 目の 基 材

の組 み 合 わ せ を考 える.皮 膜 の 厚 さが基 材 の厚 さに比 べ

て非 常 に薄 く,加 熱 ま た は冷 却 に よっ て コ ーテ ィ ング材

に 曲 が りが生 じ直ない とす る.は く離 して い な い部 分 に発

生 す るひず み は,皮 膜 と基 材 で 等 し く,こ れ を ε1~nとす

ると,ε1~nは,

Fig. 10. Multi-layer coating specimen with partially

delaminated film.

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熱 サイクルを受 ける8mass%Y2O3・ZrO2/CoNiCrAlY遮 熱 コーテ ィングのはく離寿命評価 1455

で 与 え られ る.こ こで,Ei.Bi,αiは,i番 目の 層 の弾 性

係 数,厚 さお よび 熱膨 張係 数 で あ る.つ ぎに,Toyaら19)

は,単 層 皮 膜 を有 す る試 験 片 につ いて,熱 ひ ず み界 面 エ

ネ ル ギ ー解 放 率 を求 め て い る が,別 報20)に 示 す よ うに,

これ を多 層 皮 膜 試 験 片 に 拡 張 す る と,i番 目 とi+1番 目

の層 の界 面 が は く離 す る時 の熱 ひ ず み界 面 エ ネル ギ ー解

放 率GTi/i+1は 次 式 で表 せ る.

熱 サ イ クル に よ り,も し皮 膜 が は く離 す る な ら,そ の と

きのGTci/i+1は,熱 ひ ず み界 面 破 壊 じん性値GTci/i+1で あ る.

式(4)お よび(5)よ り,は く離 が まだ発 生 しない部 分 の

積 層 板 に生 じる熱 ひず み ε1~nとGTi/i+1の間 に は

で表 される一義的な関係があることが分かる.GTi/i+1は,

はく離したき裂長 さαに依存しないから,一 度はく離が

生 じると,界 面全体にはく離が広がる.こ のことは,長

時間の加熱および熱サイクルによって,界 面に一定の損

傷が蓄積 されると皮膜のはく離が開始するが,皮 膜のは

く離(界 面 き裂の伝ぱ)に は,時 間を要 しないことを意

味する.

なお,エ ッジ部または皮膜内に生じた割れから界面き

裂が伝ぱするのではなく,TBC中 来部に界面き裂が発生

し,座 屈(ス ポーリング)に よってき裂が伝ぱする場合

に も,砺i.1を 計 算 す る こ と がで き30)き 裂 長 さが皮 膜 厚

さに比 べ て 非 常 に大 きい と きのGTi/i+1は,式(6)に 一 致

す る.し た が って,本 研 究 で は,式(4)の 熱ひ ず み ε1~n

を,は く離 き裂 の 発 生 を支 配 す るパ ラメ ー タ と して取 り

扱 うが,上 記 の こ とか ら,ε1~nは,は く離 した き裂 の 伝

ぱを支配するパラメータでもある.こ れは,GTi/i+1が,.き

裂長さに依存 しないために成 り立つ特別な関係である.

はく離面の観察によると,実 際の熱サイクル き裂は,

ボンドコー ト未溶融粒子先端の複合酸化物 ・アル ミナ界

面および トップコート内を伝ぱするから,Fig.10に 示 し.

た理想的なはく離モデルは適用できない.ま た,界 面の

凹凸は,「アンカー効果」により,き 裂の発生が生 じても

伝ぱを阻止することが考 えられ,は く離全寿命には,き

裂伝ぱ寿命 も含まれている可能性がある.さ らに,界 面

の凹凸により,ひ ずみは場所ごとに異なる.し かし,き 裂

発生場所の局部ひずみの平均値も,式(4)の ひずみε1~nに

対応 していると思われるので,本 研究では,き 裂の発生

場 所,き 裂 の 伝 ぱ経 路,き 裂 の 発 生 場 所 の 局 部 ひ ず み,

全 寿 命 に対 す る き裂 伝 ぱ 寿 命 の 割 合 な どに か か わ らず,

ε1~nによ りTBCは く離 寿 命 の 定量 評 価 を試 み る.式(5)

を具 体 化 す れ ば,n=5,i=1で 第 一 層 は トップ コ ー ト

8%Y2O3・ZrO2,第 二 層 は複 合 酸 化 物,第 三 層 はAl2O3

層,第 四 層 はボ ン ドコ ー トCoNiCrAlY,第 五 層 はCo基

超 合 金 の 基 材 に な る.し た が って,は く離 が発 生 しな い

時 に,試 験 片 に発 生 した熱 ひ ず み ε1~5は,式(4)に よ

り次 式 の よ うにな る.

な お,式(4)~(7)の 諸 物 性 値3)・21),22)は,Table Iに

示 して あ る.

こ こで,式(6)のGTi/i+1の 臨 界 値,す なわ ち,熱 ひ ず

み 界 面破 壊 じん性 値GTci/i+1に よ り,熱 サ イ クル に とも な

う界 面 損 傷 を評 価 す る とつ ぎの よ うに な る.複 合 酸 化 物

層 の 厚 さを正確 に求 め る こ とは困 難 で あ るが,そ の 厚 さ

は アル ミナ層 の厚 さとほ ぼ 同 じで薄 く,熱 膨 張 係 数 お よ

び 弾性 係 数 が アル ミナ層 の それ に ほぼ 等 しい とす る と,

上 述 の1373Kで633回 の熱 サ イクル を加 えた こ とに よ り

皮 膜 が は く離 した 時 のGTc1/2は,GTc1/2=0.08kJ・m-2で

ある(実 際 に は,酸 化物 層厚 さを無 視 して も,GTc1/2の 値

に は ほ とん ど影 響 しない).一 方,前 報7)に よ ると,熱 サ

イ クル を加 え る前 に,引 張 試 験 によ り求 め た界面 破 壊 じ

ん性値Gc1/2は2.25kJ・m-2で あるから,熱 サイクルによ

り界面破壊 じん性値が大幅に低下したことになる.こ の

ことは,熱 サイクルによって界面に損傷ひずみが蓄積 さ

れるとともに,界 面の酸化物形成による損傷が進行 した

ことに対応する.

4・4 熱ひずみエネルギー解放率または熱ひずみによ

るTBCの はく離寿命評価

TBC試 験片に加熱 ・冷却サイクルが加わると,コ ーティ

ング層 と基材の熱膨張係数の差によって,界 面に繰返し

熱ひずみ(熱 応力)が 発生 し,ト ップコートのはく離が

起こる.ま た,加 熱 ・冷却の途中および一定保持温度で

保持 している間に,ト ップコー トのクリープ変形,焼 結,

変質などが起こると同時に,ト ップコー トとボンドコー

トの界面に酸化物層が形成 されて成長する.酸 化物層の

うち,ア ル ミナ層は,ボ ンドコー トとトップコー トの界

面の凹凸に沿って比較的平坦に成長するが,複 合微酸化物

は多孔質であり,し かも不連続に成長する.し たがって,

複合酸化物が成長すると,界 面の損傷が大 きくなり,は

く離が起 こりやす くなる.こ のことは,Fig.9に 示 した

ように,高 温での長時間保持により,エ ッジインデン ト

法により求めたはく離エネルギーが低下することからも

推定できる.Table Iに 示す各物性値の平均値 を用い,

式(7)か ら計算 した熱ひずみ ε1~5は,酸 化物の成長に

より減少する.ま た,ト ップコー トのクリープ変形が生

じると,熱 ひずみは増加 し,焼 結が起 こると熱ひずみは

減少する.こ れらは界面のアル ミナおよび複合酸化物を

Page 7: Evaluation of Delamination Life of 8mass%Y2O3 ... - J-STAGE

1456 中佐啓 治郎,高 琳,加 藤 昌彦,西 田秀高

Table I. Coefficient of thermal expansion and Young's modulus of each layer.

変形 させ,損 傷 を促進すると思われる.

そこで,簡 単のため,ボ ンドコー トの酸化物成長によ

る損傷ひずみ εg(時間依存型損傷)と 熱膨張係数の不一

致による繰返 し累積損傷ひずみ εe(繰返 し依存型損傷)

を加算 したものが,限 界はく離ひずみεf(限界損傷)に

達したときに,微 視 き裂が界面に沿って発生 ・進展 し,

TBCの 巨視的なはく離を起 こすと仮定 し,は く離き裂発

生のクライテリオンを次式で表す.

εg+εe=εf (8)

まず,酸 化物成長による損傷ひずみ εgを次式で表す.

εg-k1|ε1~5-ε01~5|m (9)

こ こで,ε1~5お よび ε10~5は,Σtheq時 間経 過(ア ル ミナ

層 成 長)後 の熱 ひず み お よび Σtheq=0(ア ル ミナ層 な し)

で の熱 ひ ず み で あ る(こ れ らは,式(2)か らアル ミナ層

厚 さを求 め,式(4)ま た は(7)に 代 入 して計 算 で き る).

k1は 定 数,mは トップ コー トの ク リー プや 焼 結 な どの非

線 型 なひ ずみ を補 正 す る指 数 で あ る.

つ ぎに,皮 膜 と基 材 の熱 膨 張 係 数 の不 一 致 に よ る熱 サ

イ クル累 積 損 傷 ひ ず み εeは,加 熱 冷 却 に よ って生 じる熱

ひ ず み ε1~5と熱 サ イ クル 数Nの 対 数 に比 例 す る と仮 定

して,次 式 で表 す.

εe=k2・ ε1~5・log(N+1) (10)

ここで,k2は 定 数 で あ る.な お,熱 サ イ クル に よ る累 積

損 傷 ひず み εeは,温 度差 に起 因 して1サ イクル ご とに生

じる熱 ひ ずみ ε1~5その もの に関 係 し,式(9)で 時 間 の 効

果 と して 考 えた ε1~5と ε10~5の差 には 関係 しない.

また,限 界 は く離 ひず みεfは,次 式 で表 され る とす る.

εf=k3・ ε0f1~5=C (11)

こ こで,ε0f1~5は,一 定温 度(>1473K)ま で急 速 加 熱 ・

急 速 冷 却 す る こ とに よ って(N>=1),ト ップ コ ー トが は

く離 す る と きの ひ ず み で あ り,そ の と きの 式(10)の 値

k2ε10~5log2に 等 しい.し か しなが ら,そ の値 を実 験 に よ

りあ らか じめ求 め て お くこ と は難 しい の で,そ の値 を未

知 定 数Cと して 扱 う.式(9),(10)お よび(11)を 式(8)

に代 入 し,k1/C=k',k2/C=k"と お くと,

k'|ε1~5-ε01~5|m+k"ε1~5log(N+1)=1 (12)

に な る.式(12)の 未 知 数 は,k',k"お よ びmで あ る.

前 報9)に よ る と1473Kで 保 持 した場 合 に は,481時 間加

熱 後 冷 却 す ると,ト ップコー トがは く離 した.ま た,Fig.5

に よ る と,1373Kで はN=633回 で皮 膜 が は く離 す る.

さ らに,1273Kで はN=2.2×103回 程 度 で は く離 エ ネル

ギ ー が零 に な る.こ れ らの 条件 を用 い る と,k'=1.24×

1011,k"=20.4,m=2.56と な る.

した が って,条 件 の異 な る熱 サ イ クル負 荷 にお いて も,

T,theqな ど が分 か れ ば,式(12)に よ って,TBCは く離

時 間tfま た は は く離 熱 サ イクル 数Nfが 求 め られ る.こ の

評 価 式 に よ っ て計 算 した は く離 時 間tf(寿 命)と,実 測

したtfの 関 係 をFig.11に 示 す.図 中 の矢 印 は,式(12)

の係 数k',k"お よびmの 決 定 に用 い た デ ー タ を示 す.

これ に よ る と,予 測 寿 命 と実 測 寿 命 は か な り よ く一 致 し

て い る.

なお,緒 言で紹介した従来の寿命評価式では,界 面の

凹凸によって発生す るTBCに 垂直方向の応力またはひ

ずみをFEMで 計算 し,き 裂伝ぱ則 を用いてはく離寿命

を求めている.本 研究では,基 材に平行方向のひずみで

寿命を予測 しているので,界 面の凹凸の形状に関するパ

ラメータは用いていない.し かし,実 際の界面の凹凸の

形状は,Chang10)やVaβen15)の 計算で用いられた2次 元

モデルの形状 と異なってきわめて不規則であり,ボ ンド

コートの溶射法や溶射条件によつても異なる.本 研究の

取扱いでは,こ れらの影響は,k1,k2お よびk3に 含まれ

ているが,未 知定数を実験値から求めているので,界 面

の凹凸の影響は分離 されない.

今後実機の静翼または動翼で生 じるクリープおよび高

Fig. 11. Relationship between experimental and

predicted delaminaton times.

Page 8: Evaluation of Delamination Life of 8mass%Y2O3 ... - J-STAGE

熱サ イクル を受ける8mass%Y2O3・ZrO2/CoNiCrAlY遮 熱 コーティングのは く離寿命評価 1457

温疲労変形によって生 じるTBCに 平行方向のひずみを

式(8)で 考慮すれば,実 機TBCの 寿命評価が可能にな

ると思われる.

また,エ ッジインデン ト法によるはく離強度評価法は,

実機TBCの 寿命予測の補助手段 として用いることがで

きる.す なわち,は く離強度を零として寿命予測 を行 う

ことは危険であるので,溶 射再施行時にエッジインデン

ト試験を行つてはく離強度を求め,そ れらのデータをも

とにして,寿 命予測式の高精度化をはかることができる.

5 結 論

Co基 超 合 金 試 験 片 にTBC(Thermal Barrier Coating)

と して,CoNiCrAlY合 金(ボ ン ドコ ー ト)を 高 速 フ レー

ム溶 射 し,さ らに8%Y2O3・ZrO2(ト ップ コ ー ト)を 大

気 プ ラズ マ溶 射 した.こ の溶 射 試 験 片 に加 熱 保 持 温 度T

=1473K ,1373Kお よび1273Kと して熱 サ イクル を加 え

た の ち,エ ッジ イ ンデ ン ト試 験 を行 っ た.こ れ か ら,熱

サ イ クル温 度 とTBCの は く離 が起 こる まで の時 間 の関 係

を半 理 論 的 に求 め た.得 られ た結 果 はつ ぎの通 りで あ る.

(1) は く離 エ ネ ル ギ ーEdは,熱 サ イ クル 回 数 の 増 加

に伴 い,一 度 増 加 した の ち低 下 す る.熱 サ イ クル 下 で の

は く離 エ ネル ギ ー は,一 定 温 度 加 熱 保 持 の場 合 よ りか な

り低 い.

(2) 高温保持によって生 じた トップコートとボンドコー

ト界面の酸化物層成長に起因する損傷ひずみと,熱 サイ

クルによる累積損傷ひずみの和が一定になったときに

TBCの はく離が生 じるという仮説により,熱 ひずみエネ

ルギー解放率 またはTBCに 平行方向の熱ひずみを用い

て,熱 サイクルが加わるときのTBCの はく離時間を予測

する半理論式を導いた.予 測はく離時間は,実 験 により

得 られたはく離時間とかなりよく一致する.

本研究の一部は,科 学研究費補助金(基 盤研究B:課

題番号13555028)の 援助 を受けて行われたことを付記

し,謝 意を表 します.

参 考 文 献

1) 大 浜 信 一,熱 処 理,33,169(1993).

2) 伊 藤 義 康,機 械 の研 究,47,1150(1995).

3) 伊藤 義 康,機 械 の研 究,47,1244(1995).

4) 新 田 明 人,日 本 機 械 学 会 誌,99,251(1996).

5) 伊 藤 義 康,機 械 の 研 究,47,747(1995).

6) Ed F. Rejda, D. F. Socie and T. Itoh, Surface and Coatings

Technology, 113, 218 (1999).

7) 加 藤 昌 彦,中 佐 啓 治 郎,高 琳,番 匠 映仁,西 田 秀 高,

材 料,50,532(2001).

8) 高 琳,加 藤 昌彦,中 佐 啓 治 郎,番 匠 映 仁,西 田 秀 高,

材 料,51,95(2002).

9) 高 琳,加 藤 昌彦,中 佐 啓 治 郎,番 匠 映 仁,西 田 秀 高,

材 料,51,101(2002).

10) G. C. Chang, W. Phucharoen and R. A. Miller, Surface and

Coatings Technology, 30,13 (1987).

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