JAHISデータ互換性実証実験2019hokoku/01...JAHIS 2019 3 I. 実施要項5. 今年度の主なトピックス I. 患者情報 - 適用ガイドラインVer.3.0にもとづく実験
実験計画法とは -...
Transcript of 実験計画法とは -...
-1-
第1章 実験計画法とは
実験計画法は,イギリスの R.A.Fisherが農事試験に統計的解析を適用したことに始まっ
たとされ,最近に至るまで種々の分野の問題に応じた方法が考案され活用されている.特性
要因図に示される無数にある要因(原因)系の中から特性(結果)に大きな影響を及ぼす要因を
見つけ出したり,それらの要因の影響の大きさを把握したり,それらの要因が全体の結果に
どの程度影響しているかを効率よく知るための統計学を応用した方法である.
1.1 因子と水準
工程内の多くの要因(原因)の中から,特性(結果)への影響度を知る目的で取り上げら
れる要因を因子と呼び,具体的に実験を行うための因子の設定値は水準と呼ばれている.
例えば,特性として収率向上を目的に要因として温度を取り上げ 100℃,200℃,300℃
で実験を実施することを考えると,因子は温度,水準は 100℃,200℃,300℃となる.すな
わち,記号で示すならば,通常,取り上げた因子をアルファベット( ,C,B,A )で表し,
水準は添字を用いて( ,C,C,,B,B,,A,A,A 2121321 300200100 )と表される.こ
の場合の実験は「1因子 A,3水準の実験」となる.
また,取り上げる因子は,
計量因子…水準が連続量で表せる因子(温度,圧力,…等)
計数因子…水準が連続量で表せない因子(原料購入先,ライン別,…等)
母数因子…指定水準に再現性のある因子(水準を指定することに意味のある因子)
変量因子…因子効果としてバラツキを評価する因子(原料ロット,日付,…等)
などとも呼ばれる.
さらには,実験を実施する目的から,
制御因子…最適水準を求めることを目的に取り上げられる因子で,工業の場における
実験では少なくとも1つの母数因子が含まれる.
ブロック因子…実験の場全体をいくつかの層に区分し,層内での誤差の平均値の差が
小さく,層間での誤差の平均値の差は大きくなるように区分する因子
であり,原料ロットや実験日などに相当する.ブロック因子は,実験の
誤差変動を小さくして要因効果を高めることができ,変量因子として
利用される.
などがある.他に表示因子や集団因子と呼ばれるものもある.
1.2 実験の配置の種類
実験計画法では,実験の方法による層化の有無や,実験のランダム(無作為)化のやり方
によって完全ランダムによる実験,乱塊法による実験,分割法による実験などに分けられる.
(1)完全ランダムによる実験とは
取り上げた因子の水準または組合せ水準(因子が複数の場合)について,実験順序も併
せて実験全体をランダムに実験することである.例えば,1因子 l水準,繰返し r 回の実
験の計画では,繰返し数を含めた lr回の実験をランダム化する実験を言う.2因子 l水準,
m水準,繰返し r回の実験の計画では,全実験 lmr回が実験順序を含めてランダム化し実施する実験である.
(2)乱塊法による実験とは
原料ロットや実験日などブロック因子を取り上げて,実験の場の変動を小さくして再
現性のある因子の水準や組合せ水準等について実験順序を含めてランダム化し実施する
実験である.
(3)分割法による実験とは
実験の計画全体のランダム化が,何段階かに分けて行われる実験であり,ランダム化を
2段階に分けて実施する実験を単一分割法,3段階に分けて実施する実験を2段分割法,
……と呼ばれる実験である.
-2-
実験計画法では,実験に取り上げる因子の数で分類される場合もあり,特に因子数が1因
子の場合の実験を「一元配置実験」,2因子の場合の実験を「二元配置実験」,3因子の場合
の実験を「三元配置実験」,……といい,3因子以上の場合の実験を総称して「多元配置実
験」という.乱塊法では,ブロック因子を除いて取り上げる因子の数で「1因子実験(一元
配置法による実験)」,「2因子実験(二元配置法による実験)」,……と呼ばれる場合がある.
上記の実験は,取り上げた因子の水準の全ての組合せについて実施される実験であり「要
因配置法」と呼ばれ,取り上げた因子の水準組合せの一部について実施される実験は「一部
実施法」と呼ばれ分類される.
(4)一部実施法による実験とは
実験に取り上げる因子の数が多くなると実験回数も多くなる.例えば,6つの因子を取
り上げて因子の影響度をおおまかに把握(因子の組合せの効果は無視)したいとする.最
小水準各2水準は必要となるので 6422222226 回のランダム実験が必要
になる.一部実施法として「直交配列表による実験」を考え直交配列表を用いて計画すれ
ば8回の実験の実施で解析が容易となる.
など実験の計画と実施について考慮し品質特性の改善や向上に役立てることができる.
1.3 実験計画法の解析としての分散分析
実験計画法での解析では,第 1.2節に述べた実験の計画すべてのデータ解析に分散分析が
用いられる.詳細については各章で述べることにして,第 2 章の分散分析について簡単に
ふれてみる.因子 A ( l水準),繰返し r 回の完全ランダム実験を考え,特性値 xが得られたとする.
水準 1Aにおける母平均を 1 ,水準 2A における母平均を 2 ,…,水準 iA における母平均
を i ,…,水準 lA における母平均を l とすると,この実験における帰無仮説 0H と対立仮
説 1H は
0H : li 21
1H : li 21 でない
となる.この実験における iA 水準の第 j番目のデータ ijx の構造は,
ijiij ax r,,,jl,,,i 21 21
ただし, 01
l
i
ia 20 ,Nij~
と表す.ここで, は一般平均, ia は因子 Aの効果, ij は誤差, 2 は誤差分散である.
因子 Aの効果 ia および誤差 ij は式(1.2)より,
iia
iijij x
と表される.式(1.3)の i は因子 Aの iA 水準における母平均であり,一般平均 は,
l
l
i
i 1
で求められる.また,誤差に関しては以下の4つの条件を仮定している.
(1)独立性:各水準での実験における誤差は,互いに独立である.
(2)等分散性:各水準での実験における誤差は,一定である.
(3)不偏性:各水準での実験における誤差の期待値は,ゼロである.
(4)正規性:各水準での実験における誤差は,正規分布に従う.
この場合,因子 A ( l水準),繰返し r回の完全ランダム実験で特性値 ijx が得られているの
( 1.1 )
( 1.2 )
( 1.3 )
( 1.4 )
( 1.5 )
-3-
で,データの構造を式(1.2)とすると,水準 iA における母平均 i の推定値は平均値 ix ,実験
全体の母平均 の推定値は総平均値x となり,実験における総平方和(総変動)
TS は,
l
i
r
j
iij
l
i
i
l
i
r
j
iij
l
i
r
j
i
l
i
r
j
ijT
xxxxr
xxxxxxS
1 1
2
1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
EA SS
が成り立つ.データから総平方和TS が因子 Aの平方和
AS と誤差の平方和ES に分けられる
ことを平方和の分解と呼んでいる.
特性値への因子 Aの影響度(効果)は,因子 Aの平方和AS の自由度
A と誤差の平方和ES
の自由度E から
AAA SV ,EEE SV を求め,式(1.1)の仮説を検定することができる.
検定統計量:E
A
V
VF 0 有意水準における棄却域R: ;,FF EA0
検定の結果, ;,FF EA0 ならば有意水準で式(1.1)の帰無仮説 0H は棄却され,因子
Aの効果はあると判断される.また ;,FF EA0 ならば有意水準で帰無仮説 0H は棄
却されず,因子 Aの効果はあるとは言えないと結論する.このように実験計画法の解析で
は分散分析が利用される.
1.4 実験計画法の要点
実験の実施の結果,各手法に基づき解析するためには得られたデータが解析しうる実験
の配置になっていることが重要である.
例えば,計量的 1 因子 A ( 4水準)を取り上げて実験を実施し,計 12 個の特性データが表
1.1として得られたとする.一元配置法における実験の解析で因子 Aの効果を判断するのは
妥当であるだろうか?
表 1.1 実験結果
因子 1A 2A 3A 4A
11x 21x 31x 41x
特性値 12x 22x 32x 42x
13x 23x 33x 43x
実験結果である表 1.1 の解析では,実験の配置は一元配置型であり問題なさそうである
が,第 1.2節のランダム化に注意が必要である.
(要点1)実験全体の計画で計 12回の実験がランダムに実施されデータが得られるとすれ
ば,完全ランダム化による実験と考えてよい.データの構造式は
ijiij ax
となり,因子 Aの主効果が検出できる.
(要点2)因子 Aの水準を 1 水準ずつ 4 日間連続で各日ランダムに 3 実験のデータを得た
と考えると,データの構造式は
ijwibiij ax ib :日間変動 ijw :日内変動
となり,日間変動 ib が因子 Aの主効果と交絡して真の主効果を検出できない.
また同様に,因子 Aの 4 水準ずつ 3 日間各日ランダムに 4 実験のデータを得たと考
えると,各日にブロック因子を導入し,データの構造式は
ikikij ax k :ブロック間変動
となり, k をブロック間変動として因子 Aの主効果が検出できる.
( 1.6 )
( 1.7 )
-4-
(要点 3)因子 Aの水準をランダム化し 1 個ずつ生産し,それぞれに 3 回の測定が繰り返
されたと考えれば,データの構造式は
ijMiEiij ax iE :実験誤差 ijM :測定誤差
となり,実験誤差 iE が因子 Aの主効果と交絡して真の主効果を検出できない.
また同様に,因子 Aの水準をランダムに 1 水準固定し,さらにその水準でランダム
に 3回の実験が繰り返されたと考えれば,データの構造式は
ijiiij ax 21 i1 :1次誤差 ij2 :2次誤差
となり,同様に 1次誤差 i1 が因子 Aの主効果と交絡して真の主効果を検出できない.
などの捉え方があり,実験の実施に伴い目的を明確にして実験の計画を立案し,実験順序な
ど確実な実験を行う必要性がある.データ収集の結果である表 1.1データのみを参考にして
解析法を決定するのは大きなリスクを伴うので注意が必要である.
現場での品質特性の改善や向上に向けて実験計画法を利用するにあたっては,実験の計
画でランダム化等に注意して立案し実施することはもちろんであるが, 実験実施の場にお
ける記録情報等の収集も望まれる.
- - 5
第2章 分散分析とは
ある薬物処理の方法が 3 種類あるとする.今,この 3 種類の処理方法について,どの処
理方法が最も効率的であるかを検討するために,3種類の処理方法について数回の実験を実
施して処理後の特性値であるデータを収集し解析を行い比較することにした.特性値は小
さい程望ましいとする.まず考え方として,収集された特性値のデータの一連の解析から
① 3種類の処理方法に違いがあるのだろうか?
② 最も効率の良い処理方法はどの処理方法で平均的にどの位の値になるだろうか?
③ また最も効率の良い処理方法で処理した場合,信頼率 %95 でその平均値の上限およ
び下限はどの位の値として推測されるだろうか?
などの結論を導き出したい.このような結論を導き出すには分散分析による統計的データ
解析は有効な手法である.
2.1 平方和の分解
分散分析とは「データのばらつきを平方和で表し,そのばらつきを生じさせている要因
ごとの成分に分解して,誤差に対して影響を与えているのはどの要因であるかを探し出す
方法」である.
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,データ ijx が
得られたとき,それぞれの平方和は
総平方和(総変動) TS :
l
i
r
j
ijT xxS1 1
2
A間平方和( A間変動) AS :
l
i
r
j
iA xxS1 1
2
誤差平方和(誤差変動) ES :
l
i
r
j
iijE xxS1 1
2
関係式: EAT SSS
と表すことができる.
例えば,3 種類の処理方法( 3,2,1: iAi )があり繰返し 4 回計 12 回の実験をランダム
に実施して表 2.1の特性値 Qのデータを得たとする.データの総平均値( x )は,
0.712
321834
12
1068109
x
となる.ここで,3種類の処理方法の平均値と総平均値との差を考えると,
処理方法 5.10.75.8:1 A 処理方法 5.20.75.4:2 A
処理方法 0.10.70.8:3 A
表 2.1 特性値 Qのデータ ijx
要因 1A 2A 3A
1 9 5 8
2 10 3 8
3 8 2 6
4 7 8 10
計( iT ) 34 18 32
平均値( ix ) 8.5 4.5 8.0
となり 3 種類の処理方法で, 1A の処理方法は処理全体から考えると平均的に 1.5 の効果が
期待でき, 2A の処理方法は-2.5, 3A の処理方法は 1.0 の効果が期待できそうである.し
( 2.1 )
( 2.2 )
( 2.3 )
( 2.4 )
- - 6
かし,各処理方法の中では特性値は一定とならずばらついていることもわかる.
すなわち,表 2.1のデータは,各処理方法の特有の効果とその処理方法内でのばらつきか
らなるデータと解釈することができる.例えば,表 2.1の測定データは,
1A の処理方法の繰返し第 1回目のデータは 5.890.75.80.79
1A の処理方法の繰返し第 2回目のデータは 5.8100.75.80.710
3A の処理方法の繰返し第 4回目のデータは 0.8100.70.80.710
と考えられ,
各処理の平均値各処理の平均値 ijij xxxx
より,
各処理の平均値各処理の平均値 ijij xxxx
となる.以上の結果から表 2.1のデータを処理方法の効果とばらつき(誤差)に分解した結
果を表 2.2に,またそのグラフを図 2.1に示す.
表 2.2 測定データの処理方法の効果とばらつき
データ ijx xxij = xxi + iij xx
1A 2A 3A 1A 2A 3A 1A 2A 3A 1A 2A 3A
9 5 8 2 -2 1 1.5 -2.5 1.0 0.5 0.5 0.0
10 3 8 3 -4 1 = 1.5 -2.5 1.0 + 1.5 -1.5 0.0
8 2 6 1 -5 -1 1.5 -2.5 1.0 -0.5 -2.5 -2.0
7 8 10 0 1 3 1.5 -2.5 1.0 -1.5 3.5 2.0
図 2.1 測定データを処理方法の効果とばらつきに分解するグラフ
得られた表 2.1 のデータから平方和をそれぞれ考えると,総平方和 TS (総変動とも呼ば
れる)は,
3
1
4
1
23
1
4
1
3
1
4
1
2
3
1
4
1
2
3
1
4
1
2
2
i j
iij
i j
iiji
i j
i
i j
iiji
i j
ijT
xxxxxxxx
xxxx
xxS
( 2.6 )
( 2.5 )
- - 7
EA
i j
iij
i j
i
i
i
iiiii
i
i
j
iij
i
i
i j
iiji
SS
xxxx
xx
xxxxxxx
xxxxxxxx
00
4
2
3
1
4
1
23
1
4
1
2
3
1
4321
3
1
4
1
3
1
3
1
4
1
となる.式(2.7)の第 1 項は 3 種類の処理方法の違いによる変動を表しており,第 2 項は各
処理方法内の変動を表している.ここで前者を A 間変動または処理方法間変動と呼び,後
者を誤差変動と呼んでいる.すなわち,この実験による総変動は因子 Aによる A 間変動と
誤差変動に分解されていることになる.もし,A間変動が誤差変動に比較して統計的に大き
ければ 3 種類の処理方法について違いが認められることとなる.これらの比較は分散によ
る有意差検定を行うことにより把握できる.表 2.2より,それぞれの平方和は,
723
1
4
1
2
i j
ijT xxS
383
1
4
1
2
i j
iA xxS
343
1
4
1
2
i j
iijE xxS
と求められる.
2.2 データの構造
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,データ ijx が
得られたとき,データの内容は を総平均,aを因子 Aの主効果,を誤差として,
ijiij ax ただし, 01
l
i
ia 2,0 Nij~
li ,,2,1 rj ,,2,1
iii ax rNi
2,0 ~
x lrN 2,0 ~
で表され,式(2.8)を測定データの構造式と呼び,式(2.9)は因子 Aの各水準における平均値
のデータの構造式,式(2.10)は総平均値のデータの構造式を表している.
例えば,実験の結果,表 2.1で得られたデータを記号化して表すとすると,各処理方法が
特有にそれぞれ 321 ,, の母平均からなり,全 12 回の実験がランダムに実施されてデー
タは誤差の範囲でばらついており,その誤差を jjj 321 ,, とおくと,これら全て同一分布
に従う誤差の程度と仮定できる.すなわち,データ ijx は,
ijiijx 3,2,1i 4,3,2,1j 2,0 Nij~
と書くことができる.また,各処理方法の特有の母平均 i は,実験全体の総平均を とす
れば,その差 iia は各処理方法の総平均からのズレを表しており処理方法の効果
と考えることができる.よって,表 2.2から 1A は 5.1ˆ1 a , 2A は 5.2ˆ
2 a , 3A は 0.1ˆ3 a
となり ia は処理方法間の効果として表現することができ,各処理方法の特有の母平均 i は
( 2.7 )
( 2.11 )
( 2.8 )
( 2.9 )
( 2.10 )
- - 8
ii a と書けるから式(2.11)は,
ijiij ax 3,2,1i 4,3,2,1j
ただし, 0321
3
1
aaaai
i 2,0 Nij~
となる.式(2.12)を表 2.1のような実験が行われたときのデータの構造式と呼び,これは平
方和を要因ごとに分解するときの式(2.5)に相当する.式(2.12)から次式が導かれる.
iii ax 4,0 2 Ni ~
x 12,0 2 N~
2.3 要因の自由度
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,データ ijx が
得られたとき,それぞれの平方和の自由度は
総平方和(総変動) T : 1 lrT
A間平方和( A間変動) A : 1 lA
誤差平方和(誤差変動) E : 1 rlE
関係式: EAT
と表すことができる.
例えば,表 2.2 より総平方和については, xxij 項の全 12 個のデータを合計すると 0
となる制約条件
03
1
4
1
i j
ij xx
があり,独立な xxij 項のデータは 11 個となる.したがって 11143 T である.
また,A間平方和に対する自由度は,表 2.2より xxi 項の全 12個のデータから各水準
の 4回の繰り返しデータは同一であり,
03
1
i
i xx
となる制約条件があり,独立な xxi 項のデータは 2個で 213 A となる.さらに,
誤差平方和に対する自由度は,表 2.2より iij xx 項の全 12個のデータから因子の各水準
ごとに 4回の繰り返しデータから,
04
1
j
iij xx
の制約条件があり,独立な iij xx 項のデータは,各水準ごとに 14 個づつ存在するこ
とになる.したがって 9143 E となる.各平方和の自由度については, T は「全
データ数から 1 個減じた数」, A は「因子数から 1 個減じた数」, E は式(2.16)を用いて
「 ATE と求める」と便利である.
2.4 平均平方
平均平方は,一般に「分散」とも呼ばれ記号V が用いられる.それぞれの平均平方は各
要因の平方和を自由度で除した値である.
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,データ ijx が
( 2.12 )
( 2.13 )
( 2.14 )
( 2.15 )
( 2.16 )
( 2.17 )
( 2.18 )
( 2.19 )
- - 9
得られたとき,それぞれの平均平方は,式(2.14)(2.15)より
要因 Aの平均平方 AV :1
l
SSV A
A
AA
誤差要因の平均平方 EV : 1
rl
SSV E
E
EE
と求められる.表 2.1のデータの場合,
要因 Aの平均平方 AV : 00.192
38AV
誤差要因の平均平方 EV : 78.39
34EV
となる.
2.5 分散分析表の作成と検定
目的とする実験が終了し各統計量が計算できると分散分析表に整理する.一般に,因子 A
を l水準指定し,繰り返し r 計 lr 回の実験をランダムに行い,データ ijx が得られた後,各
統計量の計算後,整理された分散分析表を表 2.3に示す.
表 2.3 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AAA SV EA VV 22
Ar
E ES 1 rlE EEE SV 2
T TS 1 lrT
分散分析表より指定した因子 Aの水準間の違いを知るためには,各水準の平均値から総
平均までの差を ia として考えた A間変動の大きさが,誤差変動と比較して大きいかどうか
を統計的に検討する.この方法は,要因 Aの平均平方の値を要因 E の平均平方の値で除し
た値がF 分布に従うことを利用する.すなわち,
仮説 0: 0: 2
1
2
0 AA HH
に対して検定統計量 EA VVF 0 が自由度 EA , のF 分布に従う
ことから,有意水準を %5 とすると
05.0;,0 EAEA FVVF
を満足したとき要因 Aは有意であるとし,各水準間に差が認められると判断する.このよ
うな判断で指定した因子 Aの水準間の違いを統計的に検討する方法は「分散分析による要
因 Aの F 検定」または単に「分散分析による検定」と呼ばれている.式(2.25)は要因 Aを
判断するための棄却域である.表 2.1に示したデータの分散分析表を表 2.4に示す.
表 2.4 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 38 2 19.00 5.03 22 4 A
E 34 9 3.78 2
T 72 11
計算結果から要因 Aは,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 AA HH
検定統計量: 03.578.3
00.190
E
A
V
VF
( 2.20 )
( 2.21 )
( 2.22 )
( 2.23 )
( 2.25 )
( 2.24 )
- - 10
判断: 26.405.0;9,205.0;,03.50 FFF EA
となり有意である.したがって「3種類の薬物処理方法には違いが認められる」と判断する.
2.6 最適条件の決定と母平均の推定
分散分析による検定結果から要因 Aに有意差が認められると,指定した因子 Aのどの水
準が最も特性値を高く(または低く)する水準であるかを知りたくなる.この水準を決め
ることを最適条件の決定と呼び,またその条件で特性値の平均はどのくらいの値と推測さ
れるか?を知りたくなる.最適条件下で特性値の平均を推測する方法を点推定と呼ぶ.さ
らに最適条件下で特性値の平均はどのくらいばらつくのだろうか?も知りたい場合,特性
値の平均がばらつく係数(これを信頼率という)を導入して,特性値の平均の信頼上限と
信頼下限を定めることができる.このような信頼上限と信頼下限を定める方法を区間推定
と呼んでいる.
すなわち,目的とする実験が終了したならば,分散分析表により指定した因子の効果を
検定という立場で検討し,さらに特性値の最適条件を決定して,その特性値の最適条件下
で推定が行われる.分散分析後の特性値に対する推定の考え方は必須と言っても過言では
ない.
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,データ ijx を
得て分散分析表を作成して検定した結果,要因 Aが有意であったとする.ただし,特性値
は小さいほど良いものとする.
(1)最適条件の決定
最適条件は,因子 Aの各水準の平均値の最小となる水準 p を選択すれば良い.表 2.1 よ
り 3種類の処理方法のうち特性値を最小とする水準は第 2水準である.
(2)最適条件における母平均の点推定
最適条件 pA における母平均の点推定値を pA とすれば,式(2.9)より,
ppp xaA
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.表 2.1より最適条件第 2水準
の母平均の点推定値は,
5.4ˆ222 xaA
となる.このことは 5.45.20.7ˆˆˆ22 aA となることからも明らかである.
(3)最適条件における母平均の区間推定
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とし,最適条件 pA における母平均の信頼上
限および信頼下限を UpA ,
LpA とすれば次式で与えられる.
E
e
EppEp
Lp
Up
Vn
txAV a rtAA
A 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
式(2.27)の根号内の係数 en1 は有効反復数と呼ばれ,有効反復数は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
例えば,式(2.27)における有効反復数は
rlr
l
lrn
A
e
11111
( 2.26 )
( 2.27 )
( 2.28 )
( 2.29 )
- - 11
となる.
表 2.1より最適条件第 2水準の母平均の区間推定における信頼上限および信頼下限は,
3.2
7.6 9 7 2.02 6 2.25.478.3
4
105.0,95.4
105.0,2
2
2
t
Vn
txA
AE
e
E
L
U
となる.また,式(2.26)の点推定値の分散 pAVar は,式(2.9)より,
21ˆ
rV a raV a rxV a rAV a r ppppp
であり EV2 となる.
2.7 平均平方の期待値
平均平方の期待値( smE .. )とは,分散分析表における検定や因子のばらつきを推定する
のによく利用される.要因の smE .. を求めるとは AVE や EVE を求めることである.
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行ったとき,デー
タ ijx の構造は,式(2.8)(2.9)(2.10)で与えられる.ここで AVE. を求めるとすると,
A
AA
AA SE
SEVE
1.
AAA VESE
となることから A間平方和( A間変動)の期待値を求めればよいことがわかる.式(2.2)に
データの構造式を代入して期待値を求めると,
l
i
i
l
i
i
l
i
ii
l
i
ii
l
i
i
l
i
i
l
i
ii
l
i
ii
l
i
r
j
iA
rEar
EaaE
arEarE
arExxESE
1
2
1
2
11
1
2
1
2
1
2
1
2
1 1
2
022
.
となり,ここで要因 Aの主効果 ia に対する変動を
A
l
i
i
l
i
i
A
a
l
a
1
2
1
2
2
1 22
1
2 1 AAA
l
i
i la
と定義する.よって式(2.32)は
2222 111
11. llrr
lrlrSE AAA
となる.ゆえに式(2.31)より要因 Aの smE .. は
221.
AA
A
A rSEVE
となる.同様に,総平方和に対する平均平方の smE .. は式(2.8)(2.9)(2.10)より,
( 2.30 )
( 2.31 )
( 2.32 )
( 2.33 )
( 2.34 )
- - 12
l
i
r
j
iji
l
i
r
j
ijT aExxESE1 1
2
1 1
2.
22
1 1
2
1 1
2
1 11 1
1 1
2
1 1
2
1 1
2
11
022
lrlr
Ea
aa
aEaE
A
l
i
r
j
ij
l
i
r
j
i
l
i
r
j
iji
l
i
r
j
iji
l
i
r
j
ij
l
i
r
j
i
l
i
r
j
iji
となり,ゆえに,
22
1
1
1
11.
ATT
T
Tlr
lrSE
lrSEVE
となる.さらに誤差平方和に対する平均平方の smE .. は,同様に,
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
.
rl
E
aaExxESE
l
i
r
j
iij
l
i
r
j
iiiji
l
i
r
j
iijE
2
1
11.
EE
E
E SErl
SEVE
となる.よって式(2.24)に示した検定は,帰無仮説 0: 2
0 AH ,対立仮説 0: 2
1 AH のも
とで,検定統計量2
2
0
E
A
V
VF は同一の分散 2 を持つ母集団からの独立な不偏分散の比が
自由度 EA , のF 分布に従うことに基づいている.
( 2.35 )
( 2.36 )
- - 13
第2章 Excel演習問題
【問題 2-1】
薬物処理法 Aを 4水準取り上げ繰返し 4回の計 16回の実験をランダムに行ったところ次
表のデータを得た.次の設問に答えよ.ただし,データは数値変換してあり特性値は小さ
いほど望ましい.したがって,この実験のデータの構造式は式(2.8)(2.9)(2.10)で表される.
表 2-1.1 データ ijx
要因 1A 2A 3A 4A
1 0.57 0.75 0.73 0.48
2 0.80 0.73 0.70 0.63
3 0.76 0.69 0.77 0.49
4 0.71 0.58 0.68 0.56
(1)薬物処理法 Aの各水準の平均 ix およびデータの総平均 x を求めよ.
(2)このデータの総平方和は式(2.1)より
4
1
4
1
2
i j
ijT xxS と表され,個々のデータか
ら総平均までの差は iijiij xxxxxx となることから,データを各々の項
目に表形式にして分解せよ.
(3)(2)から表形式に整理したデータより各平方和および自由度を求めよ.
4
1
4
1
2
i j
ijT xxS ,
4
1
4
1
2
i j
iijE xxS ,
4
1
4
1
2
i j
iA xxS
(4)データ表 2-1.1より各平方和を求めよ.
【問題 2-2】
確率分布表である t分布表および F 分布表から 05.0 のとき,次の分布表から上側%
点を求めよ.
Excell関数 TINV( )は ,2 TINVtPr なる t値は上側 2100 %点を表す.
Excell関数 FINV( )は ;, 21FINVFPr なるF 値は上側 100 %点を表す.
(1)自由度 7 の t分布における上側確率 2.5%点は?
(2)自由度 9 の t分布における上側確率 5%点は?
(3)自由度 51 , 82 のF 分布における上側確率 5%点は?
(4)自由度 51 , 82 のF 分布における下側確率 5%点は?
(5)自由度 31 , 152 のF 分布における上側確率 10%点は?
-14-
第3章 一元配置法による実験
一元配置法による実験とは,第 2 章で述べたようにある薬物処理の方法(これを因子 A
とする)を検討するとき数種類の水準を取上げ数回の繰返し実験をランダムに行う実験計
画をいう.すなわち一つの因子について解析する方法である.
3.1 実験データ表とデータの構造式
一般に,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行い,特性値の測
定データ ijx が得られたときデータ表は表 3.1となる.
表 3.1 一元配置法による実験データ表
因子 A 1A 2A lA
繰
返
し
1 11x 21x 1lx
2 12x 22x 2lx
ijx
r rx1
rx2 lrx
合計 1T 2T lT
平均値 1x 2x lx
一元配置法による実験では lr 回の実験をランダムな順序で行うことが重要であり,例え
ば,1A 水準で r回の実験を実施し,次に
2A 水準で r回の実験を,次に 3A 水準で r回の実験
を,以下同様に実施していく方法ではないことに注意が必要である.
一元配置法による実験のデータの構造式は,
ijiij ax ただし, 01
l
i
ia 2,0 Nij~
li ,,2,1 rj ,,2,1
で表され,
iii ax rNi
2,0 ~
x lrN 2,0 ~
が導ける.表 3.1および式(3.1)(3.2)(3.3)で使用されている添字の「・(ドット)」の記号は合
計を表し「1T 」は因子 Aの第 1水準の繰返し r回の実験データの合計である.また x の「-
(バー)」は平均を表し「1x 」は因子 Aの第 1水準の実験データの平均値である.
3.2 平方和と自由度
一元配置法による実験データの平方和と自由度は,実験データの総平均値を,
総平均値
l
i
i
l
i
r
j
ij TN
xN
x11 1
11 ただし, lrN
とおいて,
総平方和(総変動)
l
i
r
j
ijT xxS1 1
2 1 NT
A間平方和( A間変動)
l
i
r
j
iA xxS1 1
2 1 lA
誤差平方和(誤差変動)
l
i
r
j
iijE xxS1 1
2 1 rlE
( 3.5 )
( 3.6 )
( 3.7 )
( 3.1 )
( 3.2 )
( 3.3 )
( 3.4 )
-15-
関係式:EAT SSS
で求められる.また,平方和の計算には,
修正項
2
1
1
l
i
iTN
CT
総平方和(総変動) CTxSl
i
r
j
ijT 1 1
2
A間平方和( A間変動) CTr
TS
l
i
i
A
1
2
誤差平方和(誤差変動)ATE SSS
と求めることもできる.
3.3 分散分析表と検定
一元配置法による実験の分散分析表を表 3.2に示す.
表 3.2 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AAA SV EA VV 22
Ar
E ES 1 rlE EEE SV 2
T TS 1 NT
要因 Aの効果について検定を実施するためには,要因 Aの平均平方 AAA SV と誤差
要因の平均平方 EEE SV を求め,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 AA HH (有意水準を %5 )
検定統計量:E
A
V
VF 0
棄却域: 05.0;,0 EAEA FVVF
による判断を行えばよい.
3.4 最適条件の決定と母平均の推定
最適条件の決定および母平均の推定方法については,第 2 章 2.6 節に述べたとおりであ
る.
(1)最適条件の決定
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p を選択
すれば良い.
(2)最適条件における母平均の点推定
最適条件 pA における母平均の点推定値を pA とすれば,式(3.2)より,
ppp xaA
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
(3)最適条件における母平均の区間推定
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 pA における母平均の信
頼上限および信頼下限を UpA ,
LpA は次式で与えられる.
( 3.8 )
( 3.16 )
( 3.10 )
( 3.11 )
( 3.12 )
( 3.9 )
( 3.15 )
( 3.13 )
( 3.14 )
-16-
E
e
EppEp
Lp
Up
Vn
txAV a rtAA
A 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
式(3.17)の根号内の有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
3.5 繰返し数が異なる場合
一元配置法による実験で各水準で繰返し数が異なる場合,例えば,1A 水準で
1n 回の実験,
2A 水準で2n 回の実験と,以下同様に l水準で合計
l
i
inN1
回の実験がランダムに実施さ
れている場合,一元配置法による実験のデータの構造式は,
ijiij ax ただし, 01
l
i
ia 2,0 Nij~
li ,,2,1 inj ,,2,1
l
i
inN1
で表され,
iii ax ii nN 2,0 ~
x NN 2,0 ~
が導ける.このときの平方和および自由度は,
総平方和(総変動)
l
i
n
j
ijT
i
xxS1 1
2 1
1
l
i
iT n
1 N
A間平方和( A間変動)
l
i
n
j
iA
i
xxS1 1
2 1 lA
誤差平方和(誤差変動)
l
i
n
j
iijE
i
xxS1 1
2 ln
l
i
iE 1
lN
関係式: EAT SSS EAT
で求められる.また,平方和の計算には,
修正項
2
1
1
l
i
iTN
CT
総平方和(総変動) CTxSl
i
n
j
ijT
i
1 1
2
A間平方和( A間変動) CTn
TS
l
i i
iA
1
2
誤差平方和(誤差変動) ATE SSS
と求めることもできる.計算結果を表 3.2と同様に分散分析表に整理して,要因効果の検定
には 0F 値を検討すればよい.繰返し数が異なる場合の要因 Aの smE .. は式(2.32)より,
( 3.17 )
( 3.18 )
( 3.19 )
( 3.20 )
( 3.21 )
( 3.22 )
( 3.23 )
( 3.24 )
( 3.25 )
( 3.27 )
( 3.28 )
( 3.29 )
( 3.26 )
-17-
l
i
ii
l
i
ii
l
i
iii
l
i
iii
l
i
ii
l
i
ii
l
i
iii
l
i
iii
l
i
n
j
iA
nEan
EananE
nanEanE
anExxESEi
1
2
1
2
11
1
2
1
2
1
2
1
2
1 1
2
022
.
となり,
2
1
2 1.
lanSEl
i
iiA
となる.ゆえに要因 Aの smE .. は
21
2
11
1.
l
an
SEl
VE
l
i
ii
AA
となる.分散分析表を表 3.3に示す.
表 3.3 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AV EA VV
1
1
2
2
l
anl
i
ii
E ES lnl
i
iE 1
EV 2
T TS 11
l
i
iT n
繰返し数が異なる場合の表 3.3 における要因 Aの検定および判断は,繰返し数が一定の
場合に準じて行えばよい.
要因 Aの水準における推定では,例えば, pA における母平均の点推定値を pA とすれ
ば式(3.16)となる.
また, 母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば, pA における母平均の信
頼上限および信頼下限を UpA ,
LpA は,
21ˆ
p
pppppn
V a raV a rxV a rAV a r
より次式で与えられる.
E
p
EppEp
Lp
Up
Vn
txAV a rtAA
A 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
式(3.33)の根号内の pn は,要因 Aの p 水準におけるデータ数である.
( 3.30 )
( 3.31 )
( 3.32 )
( 3.33 )
-18-
3.6 例題
ある製薬(株)では,鎮痛薬である錠剤の固形化を促進する薬用成分の添加量(因子 A)を
微調整して操業条件を確定したいと考えている.そこで,現在の操業条件の添加量 3A に対
して上下に 2 水準を指定し実験を行うことにした.実験は一元配置法とし繰り返し 5 回計
25 回の実験をランダムに実施し表 3.3 の測定データを得た.ただし,データは数値変換し
てあり特性値は小さいほど望ましい.次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で添加量の効果を検定せよ.
(2)特性値を最小とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
(3)現行条件( 3A )と最適条件との母平均の差の点推定値および信頼率 95%信頼
限界を求めよ.
表 3.3 一元配置法による実験データ表(単位省略)
因子 A 1A 2A 3A (現行)
4A 5A
繰
返
し
1 5.7 7.3 7.5 6.9 4.8
2 8.0 7.0 7.3 5.2 6.3
3 7.6 7.7 6.9 4.3 4.9
4 7.1 6.8 5.8 4.0 5.6
5 8.4 4.8 8.6 4.1 7.1
合計 36.8 33.6 36.1 24.5 28.7
平均値 7.36 5.72 7.22 4.90 5.74
この例題では,一つの因子 Aを 5水準繰返し 5回計 25回の実験をランダムに実施した測
定データについて分散分析による解析を行い最適な条件を決定し母平均を推定する解析が
適用される.特に上記設問(3)の現行条件と最適条件の母平均の差の推定については言及し
ていないが本例題で説明する.
(1)分散分析による要因 Aの検定
手順 1.データの構造
ijiij ax ただし, 05
1
i
ia 2,0 Nij~
5,4,3,2,1i 5,4,3,2,1j
手順2.平方和と自由度の計算
データの総合計 7.1597.285.241.366.338.365
1
i
iTT
総平均 388.67.15925
11 5
1
i
iTN
x
修正項 1636.10207.15955
11 2
25
1
i
iTN
CT
総平方和 CTxSi j
ijT
5
1
5
1
2
1264.451636.102029.1065
1636.10201.74.81.76.70.87.5 222222
241551 NT
-19-
A間平方和 CTr
TS
i
i
A
5
1
2
9064.211636.102035.52105
1
1636.10205
7.28
5
5.24
5
1.36
5
6.33
5
8.36
22222
4151 lA
誤差平方和 2200.239064.211264.45 ATE SSS
201551 rlE
手順3.分散分析表の作成
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から分散分析表を作成し,平均平方および
検定のための統計量 0F を求める.
表 3.4 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 21.9064 4 5.4766 4.72 22 5 A
E 23.2200 20 1.1610 2
T 45.1264 25
手順4.要因 Aの効果の判定
F 分布表から 87.205.0;20,4 F であることから,
87.205.0;20,472.40 FF
を満足し,要因 Aは有意である.したがって「錠剤の固形化を促進する薬用成分の添
加量は水準の違いにより特性値の母平均は異なると言える」と判断する.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
手順5.最適条件の決定
特性値は小さいほど望ましいことから表 3.3データ表より 4A 水準となる.
手順6.最適条件における母平均の点推定
式(3.16)より最適条件4A における母平均の点推定値を 4
ˆ A は,
90.4ˆ444 xaA
となる.
手順7.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件4A における母平均の信頼上限および信頼下限
UA4 ,
LA4 は式(3.17)
および式(3.18)を用いて, t分布表から 086.205.0,2005.0, tt E より
8 9.3
9 1.5 0 1.19 0.44 8 1 9.00 8 6.29 0.4
1610.15
1086.290.4
105.0,4
4
4
E
e
E
L
UV
ntx
A
A
となる.
(3)現行条件( 3A )と最適条件との母平均の差の推定
-20-
この例題では,最適条件は4A となった.そこで,現行条件( 3A )と最適条件との母平均
の差を推定することは 43ˆ AA の推定を行うことである.一般に pA と qA 水準で
の母平均の差を推定すると,点推定値は,
qpqpqp xxAAAA ˆˆˆ
となる.この点推定値は式(3.2)より,
qpqpqp aaaaAA ˆˆˆ
となり第 2 章 2.3 節で述べた因子 Aの水準の効果の差となっていることがわかる.また,
式(3.8)の信頼率 95%区間推定では,母平均の差の分散の推定値が必要であり式(3.2)より,
qpqpqp
qqpp
qpqp
arVaaarV
aaarV
xxarVAAarV
ˆˆ
ˆ
ˆˆ
EVrrrr
12ˆ
12ˆ
1ˆ
1 222
となる.よって,母平均の差の信頼率 95%信頼限界は,
E
e
Eqp
Lqp
Uqp
Vn
txxAA
AA 1205.0,
ˆˆ
ˆˆ
と求められる.ここで信頼限界の区間にゼロ(0)が含まれていないとき, pA と qA 水準の母
平均の差は有意水準 100×(1-信頼率)%,すなわち 5%で有意であると判断できる.
手順 8.現行条件と最適条件との母平均の差の推定
3A :現行条件, 4A :最適条件
式(3.18)より
32.290.422.7
ˆˆˆ
43
4343
xx
AAAA
となる.
手順 9.現行条件と最適条件との母平均の差の信頼率 95%区間推定
式(3.21)より
90.0
74.3 42.132.2
6815.0086.232.2
1610.15
1205.0,2090.422.7
1205.0,
ˆˆ
ˆˆ43
43
43
t
Vn
txxAA
AAE
e
E
L
U
ここで信頼限界はゼロを含まないので,現行条件と最適条件での母平均の差は有意
水準 5%で有意であり,両条件での母平均は異なると言える.
( 3.34 )
( 3.35 )
( 3.37 )
( 3.36 )
-21-
【参考 1】分散分析表における平均平方の期待値 E.m.sについて
正規分布の基本性質
(1) nx,,x,x 21 が互いに独立に 20 ,N に従うとき,平均値 x は n,N 20 に従う.
(2) nx,,x,x 21 が互いに独立に 20 ,N に従うとき統計量を,
平方和:
n
i
i xxS1
2 ,分散:1
n
SSV
とすると
2
1
21
nxxESEn
i
i , 2211
1
1
1
1
n
nSE
nn
SEVE
が成り立つ.
(1)一元配置法繰返し数が一定の場合
一元配置法の実験でデータの構造から誤差に関して, lrN とすると,
lrll
r
,,,
,N
,,,
21
2
11211
0 ~ ⇒
N,N
2
0
~ より,
lrll
r
,,,
,N
,,,
21
2
11211
0 ~ ⇒ 2
1 1
21
NEl
i
r
j
ij
221 0 ,N,,, irii ~ ⇒
r,Ni
2
0
~ より,
221 0 ,N,,, irii ~ ⇒ 2
1
21
rEr
j
iij
r,N,,, iii
2
0
~ ⇒
N,N
2
0
~ より,
r,N,,, iii
2
0
~ ⇒ r
lEl
i
i
2
1
21
が成り立つ.そこで級間変動 AS の期待値は,
ijiij ax 20 ,Nij~ ただし, 01
l
i
ia , r,,,jl,,,i 21 21
iii ax r,Ni20 ~
x N,N 20 ~
222
2
2
1
2
11
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1 1
2
1111
1 022
llrr
lrlr
la,EararE
rEarrEarE
arExxrExxESE
AA
A
l
i
i
l
i
ii
l
i
ii
l
i
i
l
i
i
l
i
i
l
i
i
l
i
ii
l
i
i
l
i
r
j
iA
-22-
22
1
1
AA
A
AA rSE
l
SEVE 1 lA
22
1 1
2
1 1
21 lNrlExxESE
l
i
r
j
iij
l
i
r
j
iijE
21
E
E
EE SE
lN
SEVE lNllrrlE 1
表 1.分散分析表(繰返し数が一定の場合)
要因 s.s. d.f. m.s E.m.s
A AS 1 lA AV 22Ar
E ES llrE EV 2
T TS 1 lrT
(2)一元配置法繰返し数が異なる場合
一元配置法の実験でデータの構造から誤差に関して,
l
i
inN1
とすると,
llnll
n
,,,
,N
,,,
21
2
11211
0
1
~ ⇒
N,N
2
0
~ より,
llnll
n
,,,
,N
,,,
21
2
11211
0
1
~ ⇒ 22
11 1
211
NnEl
i
i
l
i
n
j
ij
i
221 0 ,N,,,
iinii ~ ⇒
i
in
,N2
0
~ より,
221 0 ,N,,,
iinii ~ ⇒ 2
1
21
i
n
j
iij nEi
i
iiin
,N,,,2
0
~ ⇒
N,N
2
0
~ より,
i
iiin
,N,,,2
0
~ ⇒ i
l
i
in
lE2
1
21
が成り立つ.そこで級間変動 AS の期待値は,
ijiij ax 20 ,Nij~ ただし, in,,,jl,,,i 21 21
iii ax ii n,N 20 ~
x N,N 20 ~
l
i
ii
l
i
iii
l
i
ii
l
i
iiiiiii
l
i
iiiii
l
i
iii
l
i
ii
l
i
n
j
iA
nEanEanE
nananEaanE
anExxnExxESEi
1
2
11
2
1
22
1
22
1
2
1
2
1 1
2
2
22
-23-
l
i
iii
l
i
iii
l
i
ii nEanEanE1
22
11
2 22
2
1
2
222
1
2
222
1
2
1
2
21
2
1
2
1
2
2
1
2
11
22
11
22
2
1
22
2
1
22
1
2
12
1 11
2
11
2
1
2
12
1
2
11
2
1
2
2
12
0 2
2
0
12
0 2
12
2
lan
lan
NN
lan
NnN
nNn
nan
Nn
'kkEEnnEn
nnnEnE
kiEn
nEnnE
nE
nEnN
nEnN
En
EEananE
nnN
nnN
nE
anEanE
l
i
ii
l
i
ii
l
i
ii
l
i
i
l
i
i
l
i i
i
l
i
ii
l
k
k
'kk
l
'kkk
'kk'kk
l
k
kk
l
'kkk
'kk'kk
l
k
kk
l
k
kk
ki
i
iii
l
k
kki
i
i
l
i
l
k
kki
l
i
l
k
kkii
l
i
ii
i
l
i
iii
l
i
ii
l
i
l
k
kki
l
k
kkiiii
l
i
iii
l
i
ii
21
2
11
1
l
an
SEl
SEVE
l
i
ii
A
A
AA 1 lA
022
1
11
22
11
2
1
2
1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
l
i
iii
l
i
iii
l
i
i
l
i
l
i
i
l
i
i
l
i
n
j
iij
l
i
n
j
iij
l
i
n
j
iijE
EananE
lNlnnn
EExxESEiii
-24-
21
E
E
EE SE
lN
SEVE lNln
l
i
iE
表 2.分散分析表(繰返し数が異なる場合)
要因 s.s. d.f. m.s E.m.s
A AS 1 lA AV
1
1
2
2
l
anl
i
ii
E ES lnl
i
iE
EV 2
T TS 1
l
i
iT n
-25-
第3章 Excel演習問題
【問題 3-1】
ある電気工業(株)では,電子部品の特性値を向上させる目的で材料の配合方法 Aを 4種類
取り上げて実験を実施することにした.実験は因子 Aに対する一元配置法による実験とし,
繰り返し 5回計 25回の実験をランダムに実施し,電子部品を製造したときの特性値を測定
して表 3-1.1のデータを得た.ただし,データは数値変換してあり特性値は大きいほど望ま
しい.
表 3-1.1 実験データ表(単位省略)
因子 A 1A 2A 3A
4A
繰
返
し
1 8.9 10.7 5.8 13.2
2 6.7 9.0 9.1 12.0
3 3.5 7.8 4.5 10.7
4 7.2 8.1 5.8 11.0
5 8.5 11.0 6.4 7.5
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因効果の有無を検討せよ.
(2)特性値を最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と信頼率
95%信頼限界を求めよ.
(3)1A 条件と最適条件との母平均の差の点推定値および信頼率 95%信頼限界を求めよ.
【問題 3-2】
ある塗料技研では,通電性の高いインクの開発を行っており,このたび原料の混合比であ
る樹脂と銀粉の割合 Aを 3 水準取り上げ繰返し 5 回計 15 回の実験をランダムに実施した
ところ1A 水準で 2 回, 3A 水準で 1 回の実験に失敗し,12 回の通電性に関する表 3-2.1 の
データを得た.ただし,データは数値変換してあり特性値は大きいほど望ましい.
表 3-2.1 通電性データ表(単位省略)
因子 A 1A 2A 3A
繰
返
し
1 75 75 72
2 77 76 70
3 72 79 71
4 81 74
5 74
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因効果の有無を検討せよ.
(2)特性値を最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と信頼率
95%信頼限界を求めよ.
-26-
第4章 繰返しのない二元配置法による実験
二元配置法による実験とは,第 3 章で述べた一つの因子について解析を行う一元配置法
による実験と違い二つの因子を指定して行われる実験である.例えば,二つの因子 A と B
を数水準ずつを取上げ,その水準の組合せ回数の実験をランダムに行う実験の計画をいう.
特に二元配置法による実験では,二つの因子の水準の組合せで 1 回の実験のみが行われる
とき繰返しのない二元配置法による実験といい,二つの因子の水準の組合せで数回の実験
が行われるとき繰返しのある二元配置法による実験という.本章では繰返しのない二元配
置法による実験について解析する方法を述べる.
4.1 実験データ表とデータの構造式
一般に,因子 Aを l水準,因子 Bをm水準指定し,水準の組合せ lm回の実験をランダム
に行い,特性値の測定データ ijx が得られたときデータ表は表 4.1となる.
表 4.1 繰返しのない二元配置法による実験データ表
因子 1A 2A lA 合計 平均値
1B 11x
21x 1lx 1T
1x
2B 12x
22x 2lx 2T
2x
ijx
mB mx1 mx2 lmx mT mx
合計 1T 2T lT
T
平均値 1x 2x lx x
この実験でも一元配置法による実験と同様に水準の組合せ数 lm回の実験をランダムな
順序で行うことが重要である.
繰返しのない二元配置法による実験のデータの構造式は,
ijjiij bax ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 2,0 Nij~
li ,,2,1 mj ,,2,1
で表され,
iii ax mNi
2,0 ~
jjj bx lNj
2,0 ~
x lmN 2,0 ~
が導ける.式(4.1)の ia は因子 Aの i水準の特有の効果を表し, jb は因子 Bの j水準の特有
の効果を表している.一般に,複数の因子を取り上げ実験が行われると因子の組合せによる
効果,すなわち ijab なる組合せによる効果(これを交互作用と呼ぶ)が存在するが,繰返
しのない二元配置法による実験ではこの効果を把握することはできない.したがって組合
せによる効果を把握するためには繰返しのある二元配置法による実験を行うことにより検
討することができる.繰返しのある二元配置法による実験については第 5章で述べる.
4.2 平方和と自由度
繰返しのない二元配置法による実験データの平方和と自由度は,実験データの総平均値
を,
総平均値
TN
xN
xl
i
m
j
ij
11
1 1
ただし, lmN
( 4.1 )
( 4.2 )
( 4.4 )
( 4.5 )
( 4.3 )
-27-
とおいて,
総平方和(総変動)
l
i
m
j
ijT xxS1 1
2 1 NT
A間平方和( A間変動)
l
i
m
j
iA xxS1 1
2 1 lA
B間平方和(B間変動)
l
i
m
j
jB xxS1 1
2 1mB
誤差平方和(誤差変動)
l
i
m
j
jiijE xxxxS1 1
2
11 mlE
関係式:EBAT SSSS
で求められる.また,平方和の計算には,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
m
j
ijT 1 1
2
A間平方和( A間変動) CTm
TS
l
i
i
A
1
2
B間平方和(B間変動) CTl
TS
m
j
j
B
1
2
誤差平方和(誤差変動)BATE SSSS
BATE
と求めることもできる.一般に,繰返しのない二元配置法による実験で式(4.6)の総平方和の
分解は,
EBA
l
i
m
j
jiijj
l
i
iii
l
i
m
j
jiii
m
j
jiij
l
i
i
l
i
m
j
jiiji
m
j
j
l
i
i
l
i
m
j
ji
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
jiijji
l
i
m
j
ijT
SSS
xxxxxx
lm
Tm
l
TTTxx
xml
T
m
TmTxx
xxxxxxxxxxxx
xxxxxxxx
xxxxxxxx
xxxxxxxxxxS
0
0
0
1 1
1
1 1
111 1
111 1
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
同様に
となり式(4.7)(4.8)(4.9)を得る.
( 4.6 )
( 4.7 )
( 4.9 )
( 4.10 )
( 4.12 )
( 4.13 )
( 4.15 )
( 4.11 )
( 4.8 )
( 4.14 )
( 4.16 )
-28-
4.3 分散分析表と検定
繰返しのない二元配置法による実験の分散分析表を表 4.2に示す.
表 4.2 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AAA SV EA VV 22
Am
B BS 1 mB BBB SV EB VV 22
Bl
E ES 11 mlE EEE SV 2
T TS 1 NT
要因 Aの効果について検定を実施するためには,要因 Aの平均平方 AAA SV と誤差
要因の平均平方 EEE SV を求め,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 AA HH (有意水準を %5 )
検定統計量:E
A
V
VF 0
棄却域: 05.0;,0 EAEA FVVF
による判断を行えばよい.また,要因 Bの効果について検定は,同様に,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 BB HH (有意水準を %5 )
検定統計量:E
B
V
VF 0
棄却域: 05.0;,0 EBEB FVVF
による判断を行えばよい.
4.4 最適条件の決定と母平均の推定
因子数が複数個指定されて実験された場合,最適条件の決定は分散分析表で検定された
要因の有意性から分散分析後,推定に用いるデータの構造式を考え決定し,その条件下にお
ける母平均を推定する.一般に,二元配置法は因子 A, B の水準変更に伴い特性値は大き
く変動することを積極的に把握するために指定し実験が実施されており,ともに有意にな
ることが多く,要因 A, B の一つが有意でなくてもその要因の効果を誤差とみなさず推定を行うのが通常である.
(1)最適条件の決定
推定に用いるデータの構造式を式(4.1)と考える.
a) 因子 Aの最適条件
データの構造式: ijiij ax
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p を
選択すれば良い.
b) 因子 Bの最適条件
データの構造式: ijjij bx
最適条件は,特性値である実験データより因子 B の各水準の平均値の最適水準 qを
選択すれば良い.
c) 因子 Aと因子 Bの組合せによる最適条件
データの構造式: ijjiij bax
( 4.19 )
( 4.17 )
( 4.18 )
( 4.22 )
( 4.20 )
( 4.21 )
-29-
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p と
因子 Bの各水準の平均値の最適水準qを選択すれば良い.
(2)最適条件における母平均の点推定
a) 因子 Aの最適条件
最適条件 pA における母平均の点推定値を pA とすれば,式(4.2)より,
ppp xaA
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
b) 因子 Bの最適条件
最適条件 qB における母平均の点推定値を qB とすれば,式(4.3)より,
qqq xbB
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
c) 因子 Aと因子 Bの組合せによる最適条件
最適条件 pA qB における母平均の点推定値を qp BA とすれば,式(4.1)より,
xxxbabaBA qpqpqpqp ˆˆ
となる.すなわち,点推定値は,各因子の最適条件の平均値の和から総平均を減じた
値に等しい.
(3)最適条件における母平均の区間推定
a) 因子 Aの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 pA における母平均
の信頼上限および信頼下限を UpA ,
LpA は次式で与えられる.
E
e
EppEp
Lp
Up
Vn
txAV a rtAA
A 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
mlmn
A
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
b) 因子 Bの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qB における母平均
の信頼上限および信頼下限を UqB ,
LqB は次式で与えられる.
E
e
EqqEq
Lq
Uq
Vn
txBV a rtBB
B 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
llmn
B
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
c) 因子 Aと因子 Bの組合せによる最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qp BA における母
平均の信頼上限および信頼下限を Uqp BA ,
Lqp BA は次式で与えられる.
( 4.23 )
( 4.26 )
( 4.27 )
( 4.24 )
( 4.25 )
( 4.28 )
( 4.29 )
-30-
E
e
EpqqpEqp
Lqp
Uqp
Vn
txBAVartBA
BA
BA
105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmlmlm
ml
lm
BA 11111
また式(4.31)の有効反復数最終項は,点推定値式(4.25)で xxx qp ,, を求めるときの係
数の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
伊奈の式:lmlmne
1111
を伊奈の式と呼んでいる.
4.5 推定値の分散と期待値
母平均の推定値の分散は,因子 Aおよび因子 Bの単独水準のみを指定したときは第 2 章
2.6節に準ずる方法で式(4.26)(4.28)を導くことができる.また因子の組合せ水準 qp BA にお
ける母平均の推定値の分散 qp BAVar は,式(4.25)(4.2)(4.3)(4.4)より,
2111
ˆ
lmlmVar
baVar
baVar
xxxVarBAVar
qp
qpqp
qqpp
qpqp
となり式(4.30)を得る参考).また,要因Bの平均平方の smE .. は,
B
BB
BB SE
SEVE
1.
BBB VESE
となることから B間平方和( B間変動)の期待値を求めると,
m
j
j
m
j
j
m
j
jj
m
j
jj
m
j
j
m
j
j
m
j
jj
m
j
jj
l
i
m
j
jB
lEbl
EbbE
blEblE
blExxESE
1
2
1
2
11
1
2
1
2
1
2
1
2
1 1
2
022
.
となり,ここで要因 Bの主効果 jb に対する変動を
( 4.30 )
( 4.31 )
( 4.32 )
( 4.33 )
( 4.34 )
( 4.35 )
-31-
B
m
j
j
m
j
j
B
b
m
b
1
2
1
2
2
1 22
1
2 1 BBB
m
j
j mb
と定義する.よって式(4.35)は
2222 111
11. mmll
mlmlSE BBB
となる.ゆえに式(4.34)より要因Bの smE .. は
221.
BB
B
B lSEVE
となる.
4.6 例題
ある金属加工(株)では,特殊金属のスポット溶接の強度向上が問題となった.そこで溶接
時の電流値 Aと接着溶媒の種類 B を因子として取上げ実験を行うことにした.実験では電
流値 Aを 4 水準,溶媒の種類 Bを 4 水準指定し計 16 回の繰返しのない二元配置法による
実験をランダムな順序で行い,試験片を作成し破壊検査後特性値として強度を測定し表 4.3
のデータを得た.ただし,データは数値変換してあり特性値は大きいほど望ましい.次の設
問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で電流値と溶媒の種類について効果を検定せよ.
(2)特性値を最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
表 4.3 繰返しのない二元配置法による実験データ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
4A 合計 平均値
1B 42 40 36 41 159 39.75
2B 40 46 37 44 167 41.75
3B 46 49 44 44 183 45.75
4B 38 43 37 45 163 40.75
合計 166 178 154 174 672
平均値 41.5 44.5 38.5 43.5 42.0
この例題では,二つの因子 A,Bを各 4水準計 16回の実験をランダムに実施した測定デ
ータについて分散分析による解析を行い最適な条件を決定し母平均を推定する解析が適用
される.
(1)分散分析による要因の検定
手順 1.データの構造
ijjiij bax ただし, 04
1
i
ia 04
1
j
jb 2,0 Nij~
4,3,2,1i 4,3,2,1j 1644 lmN
手順2.平方和と自由度の計算
データの総合計 6724544384640424
1
4
1
i j
ijxT
総平均 0.4267216
11 T
Nx
( 4.36 )
( 4.38 )
( 4.37 )
-32-
修正項 0.2822467216
11 22 TN
CT
総平方和 CTxSi j
ijT
4
1
4
1
2
0.2140.282240.28438
0.28224454438464042 222222
151161 NT
A間平方和 CTm
TS
i
i
A
4
1
2
0.840.282240.1132324
1
0.282241741541781664
1 2222
3141 lA
B間平方和 CTl
TS
j
j
B
4
1
2
0.830.282240.1132284
1
0.282241631831671594
1 2222
3141 mB
誤差平方和 0.470.830.840.214 BATE SSSS
93311 mlE
または, 93315 BATE
手順3.分散分析表の作成
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から分散分析表を作成し,平均平方および
検定のための統計量 0F を求める.
表 3.4 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 84.0 3 28.0 5.36 22 4 A
B 83.0 3 27.667 5.30 22 4 B
E 47.0 9 5.222 2
T 214.0 15
手順4.要因効果の判定
F 分布表から 86.305.0;9,3 F であることから,
要因 Aについては 86.305.0;9,336.50 FF を満足し有意である.
要因 Bについては 86.305.0;9,330.50 FF を満足し有意である.
したがって「電流値および接着溶媒の種類について,それぞれ各水準の違いにより特
性値の母平均は異なると言える」と判断する.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
-33-
手順5.最適条件の決定
要因 A, Bはともに有意となった.そこで分散分析後,母平均を推定するためのデ
ータの構造式を,
ijjiij bax
とすれば,特性値は大きいほど望ましいことから表 4.3データ表より 32 BA 水準となる.
手順6.最適条件における母平均の点推定
式(4.25)より最適条件 32 BA における母平均の点推定値を 32ˆ BA は,
25.480.4275.455.44
ˆˆ
32
323232
xxx
babaBA
となる.
手順7.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件 32 BA における母平均の信頼上限および信頼下限 U
BA 32 , L
BA 32 は,
式(4.30)および式(4.31)を用いて, t分布表から 262.205.0,905.0, tt E より
4 4 . 8 3
5 1 . 6 7 42.325.485115.1262.225.48
222.516
7262.225.48
105.0,ˆ
32
32
32
E
e
E
L
UV
ntBA
BA
BA
となる.
【参考】有効反復数について
式(4.31)(4.32)(4.33)による有効反復数
(伊奈の式)
(田口の式)
111
111
11
11
11111
1111
11
1
11111111
111111
111
2
2
2
2
22
22
22
2
22
22
22
2
22
22
22
2
1 111
1 111
1 111
lmlm
lm
ml
mllm
lmmlml
mlmlmlml
ml
ml
ml
mll
ml
mm
ml
l
lmlmlmlmllmmVar
lmlmlmlmVar
lmlmVar
VarBAˆVar
pq
l
pi,i
m
qj,j
ij
l
pi,i
iq
m
qj,j
pj
pq
l
i
m
q,pj,i,j
ij
l
pi,i
iq
m
qj,j
pj
l
i
m
j
ij
l
i
iq
m
j
pj
qpqp
と考えることができる.
-34-
例えば,繰返しなし二元配置法による実験において,因子 Aを 3 水準,因子Bを 4 水準
とし 32ˆ BA の分散は,
23
34333231
242221
14131211
3313242221
23
3
1
4
321
3
21
3
4
31
2
3
1
4
1
3
1
3
4
1
2
3232
43
1
3
1
4
1
43
1
3
1
4
1
43
1
3
1
4
1
43
1
3
1
4
1
43
1
3
1
4
1
Var
Var
Var
VarBAˆVar
i ,j,i,j
ij
i,i
i
j,j
j
i j
ij
i
i
j
j
2
2
2
222
22
22
22
2
22
22
22
2
22
22
22
2
23
343231
141211
3313242221
43
1
3
1
4
1
43
11413
14343
1
4314343
1
143143141343
1
43
143
43
141313
43
1414
43
13
43
1
3
1
4
1
43
1
43
1
3
1
43
1
4
1
Var
となる.
-35-
第4章 Excel演習問題
【問題 4-1】
ある金属加工(株)の品質保証部では,製品化している特殊合金の伸び率向上が急務な課題
となった.そこで伸び率に影響を与えていると思われる要因として押出し温度 Aを4水準,
材料の成分比 Bを 5 水準指定し計 20 回の繰返しのない二元配置法による実験をランダム
な順序で行い,特殊合金の試験片を製造し伸び率を測定した.測定結果のデータを表 4-1.1
に示す.ただし,データは数値変換してあり特性値は大きいほど望ましい.
表 4-1.1 伸び率のデータ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
4A
1B 19.0 19.5 17.5 17.0
2B 21.0 20.5 19.0 20.0
3B 22.5 22.0 19.5 22.0
4B 19.0 18.5 17.0 18.5
5B 19.5 21.5 19.5 22.0
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因の効果について検討せよ.
(2)特性値を最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
-36-
第5章 繰返しのある二元配置法による実験
第 4 章で述べた繰返しのない二元配置法による実験とは別に,繰返しがある場合の解析
法を述べる.繰返しのある二元配置法による実験とは,二つの因子を指定してその水準組合
せで複数回の実験が行われる実験である.
5.1 実験データ表とデータの構造式
一般に,因子 Aを l水準,因子 Bをm水準,繰返し数 r回を指定し,総実験回数 lmr回の
実験をランダムに行い,特性値の測定データ ijkx が得られたときデータ表は表 5.1 となる.
表 5.1 繰返しのある二元配置法による実験データ表
因子 1A 2A lA 合計 平均値
1B
111x
112x
rx11
211x
212x
rx21
11lx
12lx
rlx 1
1T 1x
2B
121x
122x
rx12
221x
222x
rx22
21lx
22lx
rlx 2
2T 2x
ijkx
mB
11mx
21mx
mrx1
12mx
22mx
mrx2
1lmx
2lmx
lmrx
mT mx
合計 1T 2T lT
T
平均値 1x 2x lx x
繰返しのある一元配置法による実験でも,実験の実施は総実験数 lmr回の実験をランダムな順序で行うことが重要である.
繰返しのある二元配置法による実験のデータの構造式は,
ijkijjiijk abbax
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb
01
l
i
ijab 01
m
j
ijab 2,0 Nijk~
li ,,2,1 mj ,,2,1 rk ,,2,1
で表され,
ijijjiij abbax rNij
2,0 ~
iii ax mrNi
2,0 ~
jjj bx lrNj
2,0 ~
x lmrN 2,0 ~
が導ける.繰返しのない二元配置法による実験と比較して,データの構造式(5.1)に繰返し実
( 5.1 )
( 5.2 )
( 5.5 )
( 5.4 )
( 5.3 )
-37-
験が行われると ijab が加味される.一般に,この ijab を因子の組合せによる効果,すな
わち, Aと Bの交互作用と呼び要因名として BA で表す.
繰返しのない二元配置法による実験ではこの効果を把握することができなかった.これ
は繰返しがない場合 ijab は,誤差 ij と添え字が同じで分離できないことを意味している.
実験計画法では分離できないことの表現を「交互作用と誤差が交絡している」という.例え
ば,二つの因子を取上げて因子間の交互作用を知りたいためには,繰返しのある実験が必要
となってくる.
5.2 平方和と自由度
繰返しのある二元配置法による実験データの平方和と自由度は,実験データの総平均値
を,
総平均値
TN
xN
xl
i
m
j
r
k
ijk
11
1 1 1
ただし, lmrN
とおいて,
総平方和(総変動)
l
i
m
j
r
k
ijkT xxS1 1 1
2 1 NT
AB間平方和( AB間変動)
l
i
m
j
r
k
ijAB xxS1 1 1
2 1 lmAB
誤差平方和(誤差変動)
l
i
m
j
r
k
ijijkE xxS1 1 1
2 1 rlmE
A間平方和( A間変動)
l
i
m
j
r
k
iA xxS1 1 1
2 1 lA
B間平方和( B間変動)
l
i
m
j
r
k
jB xxS1 1 1
2 1mB
BA 交互作用
l
i
m
j
r
k
jiijBA xxxxS1 1 1
2
11 mlBA
関係式:EABT SSS
EBABA SSSS
で求められる.また,平方和の計算には,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
m
j
r
k
ijkT 1 1 1
2
AB間平方和( AB間変動) CTr
TS
l
i
m
j
ij
AB
1 1
2
誤差平方和(誤差変動)ABTE SSS
ABTE
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
l
i
i
A
1
2
B間平方和( B間変動) CTlr
TS
m
j
j
B
1
2
( 5.7 )
( 5.10 )
( 5.13 )
( 5.6 )
( 5.15 )
( 5.18 )
( 5.14 )
( 5.11 )
( 5.19 )
( 5.12 )
( 5.8 )
( 5.9 )
( 5.16 )
( 5.17 )
-38-
BA 交互作用 BAABBA SSSS
BABAABBA
と求めることもできる.一般に,繰返しのある二元配置法による実験で式(5.7)の総平方和の
分解は,
l
i
m
j
r
k
ijijkij
l
i
m
j
r
k
ijkT xxxxxxS1 1 1
2
1 1 1
2
EAB
ij
ij
l
i
m
j
ij
r
k
ijijk
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
r
k
ijijkij
l
i
m
j
r
k
ijijk
l
i
m
j
r
k
ij
SS
r
TrTxx
xxxx
xxxx
xxxx
0
1 1
11 1
1 1 1
1 1 1
2
1 1 1
2
となり総平方和は AB間平方和と誤差平方和に分解できる.また AB間平方和は
BABA
l
i
m
j
r
k
jiijj
l
i
ijiji
l
i
m
j
jij
iji
m
j
jiij
l
i
i
l
i
m
j
r
k
jiiji
m
j
j
l
i
i
l
i
m
j
r
k
ji
l
i
m
j
r
k
jiij
l
i
m
j
r
k
j
l
i
m
j
r
k
i
l
i
m
j
r
k
jiijji
l
i
m
j
r
k
ijAB
SSS
xxxxxx
lmr
Tm
l
TTTxx
xmlr
T
m
TmTxx
xxxxxxr
xxxxxx
xxxxrxxxx
xxxxxxxx
xxxxxxxxxxS
0
0
0
1 1 1
1
1 1
11
1 1 1
111 1 1
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
同様に
となり式(5.7)(5.8)(5.9)(5.10)(5.11)(5.12)を得る.例えば,数値例として表 5.2を得たとする.
平方和の分解による項について測定データを分解すると, AB間効果と誤差については表
5.3(1),要因 BA, の効果と交互作用効果 BA については表 5.3(2)となる.
( 5.22 )
( 5.20 )
( 5.21 )
-39-
表 5.2 特性値 Qのデータ ijkx
要因 A1 A2 A3 計 平均値
B1 9 6 6
42 7.00 10 4 7
B2 9 7 10
51 8.50 8 8 9
計 36 25 32 93
平均値 9.00 6.25 8.00 7.75
表 5.3(1) 測定データの効果とばらつき
式(5.21) xxijk = xxij + ijijk xx
A1 A2 A3 A1 A2 A3 A1 A2 A3
B1 1.25 -1.75 -1.75
B1 1.75 -2.75 -1.25
B1 -0.50 1.00 -0.50
2.25 -3.75 -0.75 = 1.75 -2.75 -1.25 + 0.50 -1.00 0.50
B2 1.25 -0.75 2.25
B2 0.75 -0.25 1.75
B2 0.50 -0.50 0.50
0.25 0.25 1.25 0.75 -0.25 1.75 -0.50 0.50 -0.50
表 5.3(2) 測定データの効果とばらつき
式(5.22) xxij = xxi + xx j
A1 A2 A3 A1 A2 A3 A1 A2 A3
B1 1.75 -2.75 -1.25
B1 1.25 -1.50 0.25
B1 -0.75 -0.75 -0.75
1.75 -2.75 -1.25 = 1.25 -1.50 0.25 + -0.75 -0.75 -0.75
B2 0.75 -0.25 1.75
B2 1.25 -1.50 0.25
B2 0.75 0.75 0.75
0.75 -0.25 1.75 1.25 -1.50 0.25 0.75 0.75 0.75
+ xxxx jiij
A1 A2 A3
B1 1.25 -0.50 -0.75
+ 1.25 -0.50 -0.75
B2 -1.25 0.50 0.75
-1.25 0.50 0.75
すなわち,データの構造式である式(5.2)(5.3)(5.4)(5.5)より
AB間効果: ijijjiij abbaxx
誤差: ijijkijijk xx
Aの効果: iii axx
Bの効果: jjj bxx
BA 交互作用効果: jiijijjiij abxxxx
と表される.自由度については,表 5.3(1)より総平方和では xxijk 項の合計が 0 である
という制約条件から 1lmr 個が独立であり 111 lmrT , AB間平方和では同様に
xxij 項の合計が 0 であるという制約条件がから,さらに ABの各組合せ水準内のデー
タは同一で 1lm 個が独立であり 51 lmAB ,また誤差平方和は ijijk xx 項の合
計が 0 であるという制約条件があり, ABの各組合せ水準の繰返し内で 1r 個が独立で
あり 61 rlmE となる.また表 5.3(2)より要因 Aの平方和は xxi 項の合計が 0
であるという制約条件から 1l 個が独立であり 21 lA ,同様に要因 B の平方和は
( 5.23 )
-40-
xx j 項の合計が 0 であるという制約条件から 1m 個が独立であり 11 mB と
なる.また交互作用 BA の平方和は xxxx jiij 項の合計が 0であるという制約
条件から, ABの各組合せ水準内のデータは同一で, Aの各水準内で 1m 個が独立であ
り, B の各水準内では 1l 個が独立である.したがって 211 mlBA となる.
さらに,表 5.3(2)より式(5.1)の
01
l
i
ia 01
m
j
jb 01
l
i
ijab 01
m
j
ijab
も容易に解釈できる.
5.3 分散分析表と検定
繰返しのある二元配置法による実験の分散分析表を表 5.4に示す.
表 5.4 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AAA SV EA VV 22
Amr
B BS 1 mB BBB SV EB VV 22
Blr
BA BAS 11 mlBA BBABA SV EBA VV 22
BAr
E ES 1 rlmE EEE SV 2
T TS 1 NT
要因 Aおよび Bの効果についての検定は,繰返しのない二元配置法の実験と同様であり
繰返しがある場合の実験では新たに交互作用 BA が存在する.要因 BA の検定を実施す
るためには,要因 BA の平均平方 BABABA SV と誤差要因の平均平方 EEE SV
を求め,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 BABA HH (有意水準を %5 )
検定統計量:E
BA
V
VF 0
棄却域: 05.0;,0 EBAEBA FVVF
による判断を行えばよい.
5.4 プーリング
因子の効果を把握するために取上げた繰返しのある実験でのデータ解析後,要因の効果
が認められない場合その要因を無視することがある.
プーリングとは「要因効果が無視できて,その要因効果は誤差の範囲内と考えられるとき,
その要因効果を誤差と併合する」ことをいう.また無視することと誤差と考えることは必ず
しも同一ではなく,プーリングは要因効果を誤差と判断できることが重要である.
例えば,上記の実験で交互作用 BA の効果を誤差とすることが可能であるならば,プー
リング後の誤差の平均平方は,
プーリング後の誤差の平方和:EBAE SSS '
プーリング後の誤差の自由度: EBAE '
プーリング後の誤差の平均平方:EBA
EBAE
SSV
'
として求められる.交互作用 BA をプーリングしたときのデータの構造式(5.1)は,
ijkjiijk bax '
( 5.26 )
( 5.24 )
( 5.25 )
( 5.30 )
( 5.29 )
( 5.28 )
( 5.27 )
-41-
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 2,0 Nijk~
li ,,2,1 mj ,,2,1 rk ,,2,1
と考えることになる.交互作用 BA プーリング後の分散分析表を表 5.5に示す.
表 5.5 交互作用 BA プーリング後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS 1 lA AAA SV 'EA VV 22
Amr
B BS 1 mB BBB SV 'EB VV 22
Blr
'E 'ES 1' mllmrE ''' EEE SV 2
T TS 1 NT
一般に,プーリングの条件としては平均平方値が 2 以下の要因がプーリングされ,二元
配置法の実験では要因 Aおよび Bの主効果については技術的情報がない限りプーリングし
ないのが通常である.
5.5 最適条件の決定と母平均の推定
最適条件の決定および母平均の推定についての考え方は,繰返しのない二元配置法によ
る実験と同じである.繰返しのある実験では交互作用 BA の取り扱いでその方法は異なる.
5.5.1 交互作用 BA をプーリングしない場合
推定に用いるデータの構造式を式(5.1)より
データの構造式: ijkijjiijk abbax
と考えると,データ解析後の分散分析表は表 5.4となる.
(1)最適条件の決定
a) 因子 Aの最適条件
データの構造式: ijkiijk ax
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p を
選択すれば良い.
b) 因子 Bの最適条件
データの構造式: ijkjijk bx
最適条件は,特性値である実験データより因子 B の各水準の平均値の最適水準 qを
選択すれば良い.
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
データの構造式: ijkijjiijk abbax
交互作用 BA が無視できないため,最適条件は特性値である実験データより因子
Aと Bの水準組合せで二元表(繰返しデータの水準組合せ内での平均値の表)を作成
し,平均値の最適水準 p と q( qp BA )を選択すれば良い.
(2)最適条件における母平均の点推定
a) 因子 Aの最適条件
最適条件 pA における母平均の点推定値を pA とすれば,式(5.3)より,
ppp xaA
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
b) 因子 Bの最適条件
( 5.31 )
-42-
最適条件 qB における母平均の点推定値を qB とすれば,式(5.4)より,
qqq xbB
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
最適条件 pA qB における母平均の点推定値を qp BA とすれば,式(5.2)より,
pqpqqpqp xabbaBA
となる.すなわち,点推定値は,二元表の最適条件の平均値に等しい.
(3)最適条件における母平均の区間推定
a) 因子 Aの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 pA における母平均
の信頼上限および信頼下限を UpA ,
LpA は次式で与えられる.
E
e
EppEp
Lp
Up
Vn
txAV a rtAA
A 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
mrlmrn
A
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
b) 因子 Bの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qB における母平均
の信頼上限および信頼下限を UqB ,
LqB は次式で与えられる.
E
e
EqqEq
Lq
Uq
Vn
txBV a rtBB
B 105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
lrlmrn
B
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qp BA における母
平均の信頼上限および信頼下限を Uqp BA ,
Lqp BA は次式で与えられる.
E
e
EpqqpEqp
Lqp
Uqp
Vn
txBAVartBA
BA
BA
105.0,ˆ05.0,ˆ
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
( 5.34 )
( 5.35 )
( 5.32 )
( 5.33 )
( 5.36 )
( 5.37 )
( 5.38 )
-43-
rlmr
lm
lm
BABA 11
5.5.2 交互作用 BA をプーリングする場合
推定に用いるデータの構造式を式(5.30)より
データの構造式: ijkjiijk bax '
と考えると,データ解析後の分散分析表は表 5.5となり繰返しのない二元配置法の実験の形
式となる.また誤差の平均平方についてはプーリングした平均平方である式(5.29)を用いる.
(1)最適条件の決定
a) 因子 Aの最適条件
データの構造式: ijkiijk ax '
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p を
選択すれば良い.
b) 因子 Bの最適条件
データの構造式: ijkjijk bx '
最適条件は,特性値である実験データより因子 B の各水準の平均値の最適水準 qを
選択すれば良い.
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
データの構造式: ijkjiijk bax '
交互作用 BA が無視できるので,繰返しのない二元配置法と同様,最適条件は特性
値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準 p と因子B の各水準の平
均値の最適水準qを選択すれば良い.
(2)最適条件における母平均の点推定
a) 因子 Aの最適条件
最適条件 pA における母平均の点推定値を pA とすれば,式(5.3)より,
ppp xaA
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
b) 因子 Bの最適条件
最適条件 qB における母平均の点推定値を qB とすれば,式(5.4)より,
qqq xbB
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
最適条件 pA qB における母平均の点推定値を qp BA とすれば,式(5.30)より,
xxxbabaBA qpqpqpqp ˆˆ
となる.すなわち,点推定値は,各因子の最適条件の平均値の和から総平均を減じた
値に等しい.
(3)最適条件における母平均の区間推定
a) 因子 Aの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 pA における母平均
の信頼上限および信頼下限を UpA ,
LpA は次式で与えられる.
( 5.39 )
( 5.40 )
( 5.41 )
( 5.41 )
-44-
''
105.0,ˆ05.0,ˆ
E
e
EppEp
Lp
Up
Vn
txAVartAA
A
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
mrlmrn
A
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
b) 因子 Bの最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qB における母平均
の信頼上限および信頼下限を UqB ,
LqB は次式で与えられる.
''
105.0,ˆ05.0,ˆ
E
e
EqqEq
Lq
Uq
Vn
txBVartBB
B
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
lrlmrn
B
e
1111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
c) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
母平均の区間推定を行うための信頼率を %95 とすれば,最適条件 qp BA における母
平均の信頼上限および信頼下限を Uqp BA ,
Lqp BA は次式で与えられる.
''
105.0,ˆ05.0,ˆ E
e
EpqqpEqp
Lqp
Uqp
Vn
txBAVartBA
BA
BA
ただし, 05.0,Et は自由度E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmrlrmrlmr
ml
lmr
BA 11111
また式(4.31)の有効反復数最終項は,点推定値式(4.25)で xxx qp ,, を求めるときの係数
の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
伊奈の式:lmrlrmrne
1111
を用いることもできる.
5.6 推定値の分散と期待値
母平均の推定値の分散および平均平方の smE .. は第 4 章 4.5 節に準ずる方法で導くこと
ができる.繰返しのある二元配置法による実験では,交互作用 BA を把握することができ
た.その交互作用効果の検定は式(5.24)(5.25)(5.26)を用いて判断される.そこで要因 BA
の平均平方の smE .. は,
( 5.42 )
( 5.43 )
( 5.44 )
( 5.45 )
( 5.46 )
( 5.47 )
( 5.48 )
-45-
BA
BABA
BABA SE
SEVE
1. BABABA VESE
となることから交互作用 BA の平方和の期待値を求めると,
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
ij
jiij
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiijij
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiijij
l
i
m
j
jjiiijijji
l
i
m
j
r
k
jiijBA
rEabr
Eab
abE
abrE
abrE
baabbarE
xxxxESE
1 1
2
1 1
2
1 1
1 1
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1 1
2
02
2
.
となり,式(5.50)の右辺第 1項は,要因 BA の交互作用効果 ijab に対する変動を
BA
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
ij
BA
ab
ml
ab
1 1
2
1 1
2
2
11
22
1 1
211 BABABA
l
i
m
j
ij mlab
と定義する.右辺第 2項は
22
1 1
211 BA
l
i
m
j
jiij mlrE
となり,よって式(5.50)は
22 1111. mlmlrSE BABA
となる.ゆえに式(5.49)より要因 BA の smE .. は
221.
BABA
BA
BA rSEVE
となる.
5.7 例題
ある機械工業(株)では,熱処理後の機械部品の強度を高めるために,熱処理温度 Aを 3水
準,機械部品の表面の前処理方法Bを 4水準取上げ繰返し 2回計 24回の繰返しのある二元
配置法による実験をランダムな順序で行い特性値として強度を測定し表 5.6 のデータを得
( 5.49 )
( 5.50 )
( 5.51 )
( 5.54 )
( 5.52 )
( 5.53 )
-46-
た.ただし,データは数値変換してあり特性値は大きいほど望ましい.次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で熱処理温度と表面の前処理方法について効果を
検定せよ.
(2)特性値を最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
表 5.6 繰返しのない二元配置法による実験データ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A 合計 平均値
1B 4
3
5
7
6
3 28 4.67
2B 6
8
10
13
10
7 54 9.00
3B 3
5
10
6
9
8 41 6.83
4B 6
4
8
5
3
6 32 5.33
合計 39 64 52 155
平均値 4.875 8.000 6.50 6.458
表 5.7 A,B二元表(上段: ji BA 水準のデータの和 下段:平均値)
2r 1A 2A 3A 合計
1B 7
(3.5)
12
(6.0)
9
(4.5) 28
2B 14
(7.0)
23
(11.5)
17
(8.5) 54
3B 8
(4.0)
16
(8.0)
17
(8.5) 41
4B 10
(5.0)
13
(6.5)
9
(4.5) 32
合計 39 64 52 155
この例題では,二つの因子 Aを 3 水準, Bを 4 水準繰返し 2 回計 24 回の実験をランダ
ムに実施した測定データについて分散分析による解析を行い最適な条件を決定し母平均を
推定する解析が適用される.
(1)分散分析による要因の検定
手順 1.データの構造
ijkijjiijk abbax
ただし, 03
1
i
ia 04
1
j
jb
03
1
i
ijab 04
1
j
ijab 2,0 Nijk~
3,2,1i 4,3,2,1j 2,1k 24243 lmrN
手順2.平方和と自由度の計算
修正項 04.100115524
11 22 TN
CT
総平方和(総変動) CTxSi j k
ijkT
3
1
4
1
2
1
2
-47-
96.16104.10011163
04.100168634 22222
231241 NT
AB間平方和( AB間変動) CTr
TS
i j
ij
AB
3
1
4
1
2
46.12204.100122472
1
04.100191081472
1 22222
111431 lmAB
誤差平方和(誤差変動) 50.3946.12296.161 ABTE SSS
121123 ABTE
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
i
i
A
3
1
2
09.3904.100183218
1
04.100152643924
1 222
2131 lA
B間平方和( B間変動) CTlr
TS
j
j
B
4
1
2
46.6604.100164056
1
04.10013241542823
1 2222
3141 mB
BA 交互作用 BAABBA SSSS
91.1646.6609.3946.122
BABAABBA
6323211
手順3.分散分析表の作成
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から分散分析表を作成し,平均平方および
検定のための統計量 0F を求める.
表 5.8 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 39.09 2 19.545 5.94 22 8 A
B 66.46 3 22.153 6.73 22 6 B
BA 16.91 6 2.818 0.86 22 2 BA
E 39.50 12 3.292 2
T 161.96 23
-48-
手順4.要因効果の判定
F 分布表から
89.305.0;12,2 F , 49.305.0;12,3 F , 00.305.0;12,6 F
であることから,
要因 Aについては, 05.0;12,294.50 FF を満足し有意である.
要因 Bについては, 05.0;12,373.60 FF を満足し有意である.
要因 BA については有意でない.
したがって交互作用 BA の効果は小さく無視できるので誤差とプーリングした後の
分散分析表を表 5.9に示す.
表 5.9 プーリングした後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 39.09 2 19.545 6.24 22 8 A
B 66.46 3 22.153 7.07 22 6 B
'E 56.41 18 3.134 2
T 161.96 23
プーリング後の誤差の平均平方: 134.3126
50.3991.16'
EBA
EBAE
SSV
プーリング後の誤差の自由度: 18126' EBAE
F 分布表から 55.305.0;18,2 F , 16.305.0;18,3 F であることから,
要因 Aについては, 05.0;18,224.60 FF を満足し有意である.
要因 Bについては, 05.0;18,307.70 FF を満足し有意である.
したがって,「熱処理温度および機械部品の表面の前処理方法については,それぞれ各
水準の違いにより特性値の母平均は異なると言える.また,二つの因子の交互作用に
ついては無視できる」と判断する.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
手順5.最適条件の決定
要因 A, Bはともに有意となった.そこでプーリングした後の分散分析より,母平
均を推定するためのデータの構造式を,
ijkjiijk bax '
と考え,特性値は大きいほど望ましいことから表 5.6より 22BA 水準となる.
手順6.最適条件における母平均の点推定
式(5.41)より最適条件 22BA における母平均の点推定値を 22ˆ BA は,
54.10458.60.90.8
ˆˆ
22
222222
xxx
babaBA
となる.
手順7.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件22BA における母平均の信頼上限および信頼下限
UBA 22 ,
LBA 22 は,
式(5.46)および式(5.47)を用いて,
t分布表から 101.205.0,1805.0,' tt E
田口の式:4
1
24
32111
lmrn
BA
e
より
-49-
8 . 6 8
1 2 . 4 0 86.154.10885.0101.254.10
134.34
1101.254.10
105.0,ˆ
''22
22
22
E
e
E
L
UV
ntBA
BA
BA
となる.
【参考:式(5.52)の展開】
22
2
2222
1 1
1 1
1 1
111 1
21
21
1
111 1
2121
1
111 1
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
11
111
111
11
1
0
0
0
0
0
0
BA
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
ij
m
j
j
l
i
i
l
i
m
j
ji
ljjj
ljjj
m
j
j
l
i
ij
m
j
j
l
i
m
j
jij
imiiimii
l
i
i
m
j
ij
l
i
i
l
i
m
j
iij
l
i
m
j
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
jiij
ml
mllm
lmrlmr
lrmlr
mrlmr
rlmr
E
E
E
EE
llE
EE
mmE
EE
rE
rE
rE
-50-
第5章 Excel演習問題
【問題 5-1】
ある化学工業(株)では,液晶用の精密部品である素材を製造している.最近,この部品の
電気特性 Qの向上について納入先より指示があり検討することとなった.
そこで電気特性 Q に影響を与えていると思われる素材の要因として,充填剤の種類 Aと
充填剤の量 Bが問題として浮上したので A, B 2 因子を取上げ実験を実施した.実験は因
子 Aを 4 水準,因子Bを 3 水準取上げ繰返し 2 回計 24 回の繰返しのある二元配置法によ
る実験をランダムな順序で行い特性値 Q を測定し表 5-1.1 のデータを得た.ただし,デー
タは数値変換してあり特性値は大きいほど望ましい.
表 5-1.1 特性値 Qの実験データ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
4A
1B 73
70
75
74
76
73
79
78
2B 72
69
73
77
79
80
78
80
3B 74
73
70
67
83
79
75
73
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因効果の有無について検討せよ.
(2)特性値 Qを最大とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
―51-
第6章 三元配置法による実験
三元配置法による実験とは,二元配置法による実験が二つの因子を取り上げて実験した
のと同様に三つの因子を指定してその水準組合せで行われる実験である.一般に多くの因
子を取り上げて水準の組合せで行われる実験は,多元配置法による実験と呼ばれている.本
章では三元配置による場合の解析法を述べる.
6.1 実験データ表とデータの構造式
三つの因子を取り上げて,因子 Aを l水準,因子Bをm水準,因子Cをn水準指定し,総
実験回数 lmn回の実験をランダムに行い,特性値の測定データ ijkx が得られたときデータ表
は表 6.1となる.
表 6.1 三元配置法による実験データ表
因子 1A 2A lA
1B
1C 111x 211x 11lx
2C 112x 212x 12lx
nC nx11 nx21 nlx 1
2B
1C 121x
221x 21lx
2C 122x 222x 22lx
nC nx12 nx22 nlx 2
ijkx
mB
1C 11mx 12mx 1lmx
2C 21mx 22mx 2lmx
nC mnx1 mnx2 lmnx
三元配置法による実験でも,実験の実施は総実験数 lmn回の実験をランダムな順序で行う
ことが重要である.
三元配置法による実験のデータの構造式は,
ijkjkikijkjiijk bcacabcbax
li ,,2,1 mj ,,2,1 n,,,k 21
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 01
n
k
kc
01
l
i
ijab 01
m
j
ijab 01
l
i
ikac 01
n
k
ikac
01
m
j
jkbc 01
n
k
jkbc 2,0 Nijk~
で表され,
ijijjiij abbax n,Nij
20 ~
kiikkiki accax m,Nki
20 ~
jkjkkjjk bccbx l,Njk
20 ~
( 6.1 )
( 6.2 )
( 6.3 )
( 6.4 )
―52-
iii ax mn,Ni
20 ~
jjj bx ln,Nj
20 ~
kkk cx lm,Nk
20 ~
x lmrN 2,0 ~
が導ける.三元配置法による実験では,データの構造式(6.1)から,それぞれ因子 A, B,
Cの効果と二つの因子の組合せによる交互作用 ijab , ikac , jkbc の効果 BA , CA ,
CB を検討することができる.
また,三つの因子の交互作用 ijkabc は,誤差 ijk と添え字が同じで分離できないため「交
互作用 CBA は誤差と交絡している」という.繰返しのある二元配置法による実験と同
様,三つの因子間の交互作用を知りたいためには,繰返しのある実験が必要となってくる.
6.2 平方和と自由度
三元配置法による実験データの平方和と自由度は,実験データの総平均値を,
総平均値
TN
xN
xl
i
m
j
n
k
ijk
11
1 1 1
ただし, lmnN
とおいて,
総平方和(総変動)
l
i
m
j
n
k
ijkT xxS1 1 1
2 1 NT
AB間平方和( AB間変動)
l
i
m
j
n
k
ijAB xxS1 1 1
2 1 lmAB
A間平方和( A間変動)
l
i
m
j
n
k
iA xxS1 1 1
2 1 lA
B間平方和( B間変動)
l
i
m
j
n
k
jB xxS1 1 1
2 1mB
BA 交互作用
l
i
m
j
n
k
jiijBA xxxxS1 1 1
2
11 mlBA
関係式: BABAAB SSSS
AC間平方和( AC間変動)
l
i
m
j
n
k
kiAC xxS1 1 1
2 1 lnAC
C間平方和(C間変動)
l
i
m
j
n
k
kC xxS1 1 1
2 1 nC
CA 交互作用
l
i
m
j
n
k
kikiCA xxxxS1 1 1
2
11 nlCA
関係式: CACAAC SSSS
BC間平方和(BC間変動)
l
i
m
j
n
k
jkBC xxS1 1 1
2 1 mnBC
CB 交互作用
l
i
m
j
n
k
kjjkCB xxxxS1 1 1
2
( 6.10 )
( 6.12 )
( 6.9 )
( 6.6 )
( 6.13 )
( 6.14 )
( 6.5 )
( 6.11 )
( 6.8 )
( 6.7 )
( 6.15 )
( 6.16 )
( 6.18 )
( 6.17 )
( 6.19 )
―53-
11 nmCB
関係式: CBCBBC SSSS
誤差平方和(誤差変動)
CBCABACBATCBAE SSSSSSSSS
CBCABACBATCBAE
で求められる.
また,上記の平方和の計算には,次に示す計算補助表である表 6.2,表 6.3 および表 6.4
を作成すると容易である.
表 6.2 平方和計算のための AB二元表 表 6.3 平方和計算のための AC二元表
因子 1A 2A
lA 合計 因子 1A
2A
lA 合計
1B 11T 21T
1lT 1T 1C
11T 12T
1lT 1T
2B 12T
22T
2lT 2T 2C
21T 22T
2lT
2T
ijT kiT
mB mT1 mT2
lmT mT nC nT 1 nT 2
nlT nT
合計 1T 2T
lT T 合計 1T 2T
lT
T
表 6.4 平方和計算のためのBC二元表
因子 1B 2B
mB 合計
1C 11T 21T
1mT 1T
2C 12T 22T
2mT 2T
jkT
nC nT 1 nT 2
mnT nT
合計 1T 2T
mT T
表 6.2,表 6.3および表 6.4を用いた平方和の計算では,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
m
j
n
k
ijkT 1 1 1
2 1 NT
AB間平方和( AB間変動) CTn
TS
l
i
m
j
ij
AB
1 1
2
1 lmAB
A間平方和( A間変動) CTmn
TS
l
i
iA
1
2
1 lA
B間平方和( B間変動) CTln
TS
m
j
j
B
1
2
1mB
BA 交互作用 BAABBA SSSS
BABAABBA
( 6.22 )
(6.24 )
( 6.21 )
( 6.25 )
( 6.26 )
( 6.23 )
( 6.20 )
―54-
AC間平方和( AC間変動) CTm
TS
l
i
n
k
kiAC
1 1
2
1 lnAC
C間平方和(C間変動) CTlm
TS
n
k
kC
1
2
1 nC
CA 交互作用 CAACCA SSSS
CACAACCA
BC間平方和(BC間変動) CTl
TS
m
j
n
k
jk
BC
1 1
2
1 mnBC
CB 交互作用 CBBCCB SSSS
CBCBBCCB
誤差平方和(誤差変動)
CBCABACBATCBAE SSSSSSSSS
CBCABACBATCBAE
と求めることもできる.
6.3 分散分析表と検定
三元配置法による実験の分散分析表を表 6.5に示す.
表 6.5 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS A AV EA VV 22
Amr
B BS B BV EB VV 22
Bln
C CS C CV EC VV 22
Clm
BA BAS BA BAV EBA VV 22
BAn
CA CAS CA CAV ECA VV 22
CAm
CB CBS CB CBV ECB VV 22
CBl
E ES E EV 2
T TS T
要因 A,BおよびCの効果についての検定,交互作用の要因 BA , CA および CBの検定については,繰返しのある二元配置法の実験と同様に考えることができる.
例えば,要因 Aの検定を実施するためには,要因 Aの平均平方 AAA SV と誤差要因
の平均平方 EEE SV より,
仮説: 0 0 2
1
2
0 AA :H:H (有意水準を %5 )
検定統計量:E
A
V
VF 0
棄却域: 0500 .;,FVVF EAEA
による判断を行えばよい.
また,要因 BA の検定を実施するためには,要因 BA の平均平方 BABABA SV
と誤差要因の平均平方 EEE SV より,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 BABA HH (有意水準を %5 ) ( 6.36 )
( 6.27 )
( 6.28 )
( 6.29 )
( 6.30 )
( 6.31 )
( 6.32 )
( 6.35 )
( 6.33 )
( 6.34 )
―55-
検定統計量:E
BA
V
VF 0
棄却域: 05.0;,0 EBAEBA FVVF
による判断を行えばよい.
6.4 プーリング
繰返しのある二元配置法による実験と同様,データ解析後,要因の効果が認められない場
合その要因を無視することがある.
前章でも述べたようにプーリングとは「要因効果が無視できて,その要因効果は誤差の範
囲内と考えられるとき,その要因効果を誤差と併合する」ことをいう.また無視することと
誤差と考えることは必ずしも同一ではなく,プーリングは要因効果を誤差と判断できるこ
とが重要である.
例えば,上記の実験で交互作用 BA および CA の効果を誤差とすることが可能である
ならば,プーリング後の誤差の平均平方は,
プーリング後の誤差の平方和: ECABA'E SSSS
プーリング後の誤差の自由度: ECABA'E
プーリング後の誤差の平均平方:'E
'E
ECABA
ECABA'E
SSSSV
として求める.交互作用 BA , CA をプーリングしたときのデータの構造式(6.1)は,
ijkjkkjiijk 'bccbax
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 01
n
k
kc
01
m
j
jkbc 01
n
k
jkbc 20 ,N'ijk~
li ,,2,1 mj ,,2,1 n,,,k 21
と考えることになる.交互作用 BA , CA プーリング後の分散分析表を表 6.6 に示す.
表 6.6 交互作用 BA および CA プーリング後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS A AV 'EA VV 22
Amn
B BS B BV 'EB VV 22
Bln
C CS C CV EC VV 22
Clm
CB CBS CB CBV ECB VV 22
CBl
'E 'ES 'E 'EV 2
T TS T
一般に,プーリングの条件としては,検定における 0F 値が 2 以下の要因がプーリングさ
れるのが通常である.
6.5 最適条件の決定と推定
最適条件の決定および母平均の推定についての考え方は,二元配置法による実験と同様
に考えて行う.一般に,二因子の交互作用が有意の場合,それらの二因子の主効果が有意で
なくともプーリングしないのが通常である.
( 6.37 )
( 6.42 )
( 6.41 )
( 6.40 )
( 6.39 )
( 6.38 )
―56-
6.5.1 交互作用が無視できる場合の最適条件
最適条件は,推定するためにデータの構造式をどのように考えるかで決定することがで
きる.三元配置法による実験の場合,最適条件の決定法を以下に示す.
a) 因子 Aの最適条件
データの構造式: ijkiijk ax
最適条件は,特性値である実験データより因子 Aの各水準の平均値の最適水準oを選択すれば良い.
点推定値は,
ooo xaAˆ
となる.すなわち,点推定値は,最適条件の平均値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEooEo
Lo
UoV
mn.,txAˆVar.,tAˆ
A
A 1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
と求められる.
b) 因子 Bの最適条件
データの構造式: ijkjijk bx
最適条件は,特性値である実験データより因子 B の各水準の平均値の最適水準 p を
選択すれば良い.
点推定値は,
ppp xbBˆ
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEppEp
Lp
Up
Vln
.,txBˆVar.,tBˆB
B 1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
と求められる.
c) 因子Cの最適条件
データの構造式: ijkkijk cx
最適条件は,特性値である実験データより因子Cの各水準の平均値の最適水準 qを
選択すれば良い.
点推定値は,
qqq xcCˆ
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEqqEq
Lq
Uq
Vlm
.,txCˆVar.,tCˆC
C 1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
と求められる.
d) 因子 Aと因子 Bの最適条件
データの構造式: ijkjiijk bax
最適条件は,特性値である実験データより各水準の平均値を用いて因子 Aについて
( 6.43 )
( 6.46 )
( 6.49 )
( 6.52 )
( 6.44 )
( 6.45 )
( 6.47 )
( 6.48 )
( 6.50 )
( 6.51 )
―57-
は式(6.43),因子 Bについては式(6.46)を用いて最適水準を poBA とすれば良い.
点推定値は,
xxxˆbabaBAˆpopopopo
となる.すなわち,点推定値は,各因子の最適条件の平均値の和から総平均を減じた
値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Epo
poEpo
Lpo
Upo
Vn
.,txxx
BAˆV a r.,tBAˆBA
BA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmnlnmnlmn
ml
lmn
BA 11111
また式(6.49)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.47)で x,x,x po を求めるときの係
数の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
伊奈の式:lmnlnmnne
1111
を用いることもできる.
e) 因子 Aと因子Cの最適条件
データの構造式: ijkkiijk cax
最適条件は,特性値である実験データより各水準の平均値を用いて因子 Aについて
は式(6.43),因子Cについては式(6.49)を用いて最適水準を qoCA とすれば良い.
点推定値は,
xxxˆcacaCAˆqoqoqoqo
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eqo
qoEqo
Lqo
Uqo
Vn
.,txxx
CAˆV a r.,tCAˆCA
CA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数は,
田口の式:
lmnn
CA
e
111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
伊奈の式:lmnlmmnne
1111
である.
( 6.57 )
( 6.53 )
( 6.54 )
( 6.55 )
( 6.56 )
( 6.58 )
( 6.59 )
( 6.60 )
( 6.61 )
―58-
f) 因子 Bと因子Cの最適条件
データの構造式: ijkkjijk cbx
最適条件は,特性値である実験データより各水準の平均値を用いて因子 B について
は式(6.46),因子Cについては式(6.49)を用いて最適水準を qpCB とすれば良い.
点推定値は,
xxxˆcbcbCBˆqpqpqpqp
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eqp
qpEqp
Lqp
Uqp
Vn
.,txxx
CBˆV a r.,tCBˆCB
CB
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数は,
田口の式:
lmnn
CB
e
111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
伊奈の式:lmnlmlnne
1111
である.
g) 因子 Aと因子 Bと因子Cの最適条件
データの構造式: ijkkjiijk cbax
最適条件は,特性値である実験データより各水準の平均値を用いて因子 Aについて
は式(6.43),因子 Bについては式(6.46),因子Cについては式(6.49)を用いて最適水準を
qpo CBA とすれば良い.
点推定値は,
xxxx
ˆcbacbaCBAˆ
qpo
qpoqpoqpo
2
2
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eqpo
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxxx
CBAˆV a r.,tCBAˆCBA
CBA
10502
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数は,
田口の式:
lmnn
CBA
e
111
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
伊奈の式:lmnlmlnmnne
21111
である.
( 6.62 )
( 6.67 )
( 6.63 )
( 6.64 )
( 6.65 )
( 6.66 )
( 6.68 )
( 6.69 )
( 6.70 )
( 6.71 )
―59-
6.5.2 交互作用が無視できない場合の最適条件
交互作用が無視できない場合の最適条件は,その交互作用の因子の組合せ水準で決定す
る.交互作用が無視できる場合と同様に,推定するためにデータの構造式をどのように考え
るかで決定することができる.最適条件の決定法を以下に示す.
a) 因子 Aと因子Bの組合せによる最適条件
データの構造式: ijkijjiijk abbax
交互作用 BA が無視できないため,最適条件は特性値である実験データより因子
Aと Bの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最
適水準oと pすなわち poBA を選択すれば良い.
点推定値は,
opoppopo xabbaBAˆ
となる.すなわち,点推定値は,二元表の最適条件の平均値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEoppoEpo
Lpo
Upo
Vn
.,txBAˆVar.,tBAˆ
BA
BA
1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
となる.
b) 因子 Aと因子Bの組合せと因子Cによる最適条件
データの構造式: ijkijkjiijk abcbax
交互作用 BA が無視できないため,最適条件は特性値である実験データより因子
Aと Bの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最
適水準oと pを求め因子Cについては式(6.49)の方法で最適水準qを決定する.すなわ
ち qpo CBA を選択すれば良い.
点推定値は,
xxxˆcabbaBAˆqopqoppopo
となる.すなわち,点推定値は,二因子 A,Bの組合せと因子Cの最適条件の平均値
の和から総平均を減じた値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eqop
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxx
CBAˆVar.,tCBAˆCBA
CBA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmnlmnlmn
nlm
lmn
CBABA 11111
また式(6.78)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.76)で x,x,x qop を求めるときの係
( 6.72 )
( 6.75 )
( 6.73 )
( 6.74 )
( 6.76 )
( 6.77 )
( 6.78 )
―60-
数の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
伊奈の式:lmnlmnne
1111
を用いることもできる.
c) 因子 Aと因子Cの組合せによる最適条件
データの構造式: ijkikkiijk accax
交互作用 CA が無視できないため,同様に,データより因子 AとCの水準組合せで
二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最適水準oと qすなわち
qoCA を選択すれば良い.
点推定値は,
qooqqoqo xaccaCAˆ
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEqoqoEqo
Lqo
Uqo
Vm
.,txCAˆV a r.,tCAˆ
CA
CA
1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
となる.
d) 因子 Aと因子Cの組合せと因子 Bによる最適条件
データの構造式: ijkikkjiijk accbax
交互作用 CA が無視できないため,最適条件は特性値である実験データより因子
AとCの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最
適水準oとqを求め因子Bについては式(6.46)の方法で最適水準 p を決定する.すなわ
ち qpo CBA を選択すれば良い.
点推定値は,
xxxˆbaccaCBAˆpqopoqqoqpo
となる.すなわち,点推定値は,二因子 A,Cの組合せと因子Bの最適条件の平均値
の和から総平均を減じた値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Epqo
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxx
CBAˆV a r.,tCBAˆCBA
CBA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmnlnmlmn
mln
lmn
BCACA 11111
また式(6.86)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.84)で x,x,x pqo を求めるときの係
数の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
( 6.80 )
( 6.83 )
( 6.79 )
( 6.81 )
( 6.82 )
( 6.84 )
( 6.85 )
( 6.86 )
―61-
伊奈の式:lmnlnmne
1111
を用いることもできる.
e) 因子 Bと因子Cの組合せによる最適条件
データの構造式: ijkjkkjijk bccbx
交互作用 CB が無視できないため,同様に,データより因子BとCの水準組合せで
二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最適水準 p と qすなわち
qpCB を選択すれば良い.
点推定値は,
pqpqqpqp xbccbCBˆ
となる.
信頼率を %95 区間推定値は,
EEpqqpEqp
Lqp
Uqp
Vl
.,txCBˆVar.,tCBˆ
CB
CB
1050050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
となる.
f) 因子 Bと因子Cの組合せと因子 Aによる最適条件
データの構造式: ijkjkkjiijk bccbax
交互作用 CB が無視できないため,最適条件は特性値である実験データより因子
BとCの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作成し,平均値の最
適水準 p とqを求め因子 Aについては式(6.43)の方法で最適水準oを決定する.すなわ
ち qpo CBA を選択すれば良い.
点推定値は,
xxxˆabccbCBAˆopqopqqpqpo
となる.すなわち,点推定値は,二因子B,Cの組合せと因子 Aの最適条件の平均値
の和から総平均を減じた値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eopq
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxx
CBAˆVar.,tCBAˆCBA
CBA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmnmnllmn
lmn
lmn
ACBCB 11111
また式(6.94)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.92)で x,x,x opq を求めるときの係
数の和に等しく,このように点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
( 6.88 )
( 6.91 )
( 6.87 )
( 6.89 )
( 6.90 )
( 6.92 )
( 6.93 )
( 6.94 )
―62-
伊奈の式:lmnmnlne
1111
を用いることもできる.
g) 因子 Aと因子 Bと因子Cの二因子組合せによる最適条件
繰返しのない三元配置法による実験では,三因子交互作用 ijkabc は誤差と交絡して
いるため検出できない.よって,三因子 A,B,Cにおいて二因子の組合せを 2個以
上もつ場合の最適条件は,
データの構造式: ijkikijkjiijk acabcbax
データの構造式: ijkjkijkjiijk bcabcbax
データの構造式: ijkjkikkjiijk bcaccbax
データの構造式: ijkjkikijkjiijk bcacabcbax
が考えられる.例えば,式(6.85)では交互作用 BA , CA が無視できないため,同
様に,データより因子のそれぞれの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)
を作成し,平均値の最適水準o, p ,q( qpo CBA )を選択すれば良い.二元表で最適
水準opqが定まらない場合は 3 因子全ての組合せの平均値で最適水準を求めることに
なる.
同様に式(6.88)では交互作用 BA , CA , CB が無視できないため,前述同様,
データより因子のそれぞれの水準組合せで二元表(水準組合せ内での平均値の表)を作
成し,平均値の最適水準o, p ,q( qpo CBA )を選択すれば良い.二元表で最適水準
opqが定まらない場合は 3因子全ての組合せの平均値で最適水準を求めることになる.
式(6.85)における点推定値は,
oqoop
ooqqooppoqpo
xxx
aaccaabbaCBAˆ
となる.すなわち,点推定値は,二因子 A,B の組合せと二因子 A,Cの組合せの平
均値の和から因子 Aの最適条件の平均値を減じた値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eoqoop
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxx
CBAˆVar.,tCBAˆCBA
CBA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
mnmnlmn
llnlm
lmn
CABACBA 1111
また式(6.102)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.100)で oqoop x,x,x を求めるとき
の係数を用いて,点推定値を求める係数の和で有効反復数を求める式
伊奈の式:mnmnne
1111
を用いることもできる.
さらに,式(6.88)における点推定値は,
( 6.99 )
( 6.95 )
( 6.96 )
( 6.97 )
( 6.98 )
( 6.100 )
( 6.101 )
( 6.102 )
( 6.103 )
―63-
xxxxxxx
ˆcbabccb
accaabbaCBAˆ
qpopqqoop
qpopqqp
oqqooppoqpo
となる.すなわち,点推定値は,二因子 A,B の組合せと二因子 A,Cの組合せおよ
び二因子 B,Cの組合せの平均値の和から因子 A,B,Cの最適条件の平均値を減じ,
総平均を加算した値に等しい.
信頼率を %95 区間推定値は,
E
e
Eqpopqqoop
qpoEqpo
Lqpo
Uqpo
Vn
.,txxxxxxx
CBAˆVar.,tCBAˆCBA
CBA
1050
050
ただし, 05.0,Et は自由度 E の t分布の %5 点の値である.
有効反復数 en1 は田口の式で求められる.
田口の式:
全実験回数
度の和無視しない要因の自由
11
en
lmnlmlnmnlmnlmn
nmlmnlnlm
lmn
CBCABACBA
11111111
1
また式(6.105)の有効反復数最終項は,点推定値式(6.104)で ,x,x,x,x,x popqqoop
x,x q を求めるときの係数を用いて,点推定値を求める係数の和で有効反復数を求め
る式
伊奈の式:lmnlmlnmnlmnne
11111111
を用いることもできる.
6.6 推定値の分散と期待値
母平均の推定値の分散および平均平方の smE .. は第 4 章 4.5 節に準ずる方法で導くこと
ができる.三元配置法による実験における要因の検定は表 6.5および表 6.6の分散分析表に
基づいて行われるが,平均平方の smE .. を考慮することで理解できる.例えば表 6.4におけ
る交互作用 BA の検定における背景は,式(6.36)(6.37)(6.38)を用いて判断される.そこで
要因 BA の平均平方の smE .. は,
BA
BABA
BABA SE
SEVE
1 BABABA VESE
となることから交互作用 BA の平方和の期待値は式(6.14)より,
l
i
m
j
jjiiijijji
l
i
m
j
n
k
jiijBA
baabbanE
xxxxESE
1 1
2
1 1 1
2
( 6.108 )
( 6.104 )
( 6.105 )
( 6.106 )
( 6.107 )
―64-
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiijij
abnE
abnE
1 1
2
1 1
2
1 1
2
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
ij
jiij
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiijij
nEabn
Eab
abE
1 1
2
1 1
2
1 1
1 1
02
2
となり,式(6.109)の右辺第 1項は,要因 BA の交互作用効果 ijab に対する変動を
BA
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
ij
BA
ab
ml
ab
1 1
2
1 1
2
2
11
22
1 1
211 BABABA
l
i
m
j
ij mlab
と定義する.右辺第 2項は
22
1 1
211 BA
l
i
m
j
jiij mlnE
となり,よって式(6.109)は
22 1111 mlmlnS.E BABA
となる.ゆえに式(6.108)より要因 BA の平均平方の smE .. は
221
BABA
BA
BA nSEV.E
となる.
6.7 例題
ある樹脂工業(株)では,新製品の製造工程における収率を向上させ,製造条件を確立する
ために,原料 Aを 3 水準,原料Bを 2 水準および反応温度Cを 3 水準取上げ計 18 回の実
験をランダムな順序で行い表 6.7のデータを得た.ただし,データは数値変換してあり値は
大きいほど望ましい.次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因 A, B,C等について効果を検定せよ.
(2)特性値を最大とする最適製造条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
この例題では,三つの因子 Aを 3 水準,Bを 2 水準,Cを 3 水準取り上げ計 18 回の実験
をランダムに実施した測定データについて分散分析による解析を行い最適な条件を決定し
母平均を推定する解析が適用される.
(1)分散分析による要因の検定
( 6.109 )
( 6.110 )
( 6.113 )
( 6.111 )
( 6.112 )
―65-
表 6.7 三元配置法による実験データ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
1B
1C 7 10 1
2C 14 14 2
3C 13 8 9
2B
1C 8 15 7
2C 15 13 10
3C 13 15 14
表 6.8 平方和計算のための AB二元表 表 6.9 平方和計算のための AC二元表
因子 1A 2A 3A 合計 因子 1A
2A 3A 合計
1B 34 32 12 78 1C 15 25 8 48
2B 36 43 31 110 2C 29 27 12 68
合計 70 75 43 188 3C 26 23 23 72
合計 70 75 43 188
表 6.10 平方和計算のためのBC二元表
因子 1B 2B 合計
1C 18 30 48
2C 30 38 68
nC 30 42 72
合計 78 110 188
手順 1.データの構造
ijkjkikijkjiijk bcacabcbax
ただし, 03
1
i
ia 02
1
j
jb 03
1
k
kc
03
1
i
ijab 02
1
j
ijab 03
1
i
ikac 03
1
k
ikac
02
1
j
jkbc 03
1
k
ikbc 2,0 Nijk~
3,2,1i 21,j 321 ,,k 18323 lmnN
手順2.平方和と自由度の計算
修正項 6196318818
11 22 .TN
CT
総平方和(総変動) CTxSi j k
ijkT
3
1
2
1
3
1
2
4318619632282
6196314813147 22222
..
.
171181 NT
AB間平方和( AB間変動) CTn
TS
i j
ij
AB
3
1
2
1
2
―66-
71796196347503
1
61963313236343
1 2222
..
.
51231 lmAB
A間平方和( A間変動) CTmn
TS
i
iA
3
1
2
79861963123746
1
6196343757032
1 222
..
.
2131 lA
B間平方和(B間変動) CTln
TS
j
j
B
2
1
2
85661963181849
1
619631107833
1 22
..
.
1121 mB
BA 交互作用 BAABBA SSSS
2248567987179 ....
BABAABBA
212125
AC間平方和( AC間変動) CTm
TS
i k
kiAC
3
1
3
1
2
42176196343622
1
61963232629152
1 2222
..
.
81331 lnAC
C間平方和(C間変動) CTlm
TS
k
kC
3
1
2
15561963121126
1
6196372684823
1 222
..
.
2131 nC
CA 交互作用 CAACCA SSSS
6631557984217 ....
CACAACCA
422228
―67-
BC間平方和(BC間変動) CTl
TS
j k
jk
BC
2
1
3
1
2
71136196362323
1
61963423030183
1 2222
..
.
51321 mnBC
CB 交互作用 CBBCCB SSSS
811558567113 ....
CBCBBCCB
221215
誤差平方和(誤差変動) CBCABACBATE SSSSSSSS
21823004318
816632241558567984318
...
.......
424221217
CBCABACBATE
手順3.分散分析表の作成
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から分散分析表を作成し,平均平方および
検定のための統計量 0F を求め,表 6.11に分散分析表を示す.
手順4.要因効果の判定
F 分布表から
94605042 ..;,F , 71705041 ..;,F , 39605044 ..;,F ,
であることから,有意な要因については A,Bであるが,要因C, BA , CA に
ついては 0F 値が2以上であるため誤差にプーリングしないこととする.また要因 CB
については有意でなく誤差と見なすこととする.
表 6.11 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 98.7 2 79.35 17.440* 22 6 A
B 56.8 1 56.80 12.484* 22 9 B
C 55.1 2 27.55 6.055 22 6 C
BA 24.2 2 12.10 2.659 22 3 BA
CA 63.6 4 15.90 3.495 22 2 CA
CB 1.8 2 0.90 - 22 3 CB
E 18.2 4 4.55 2
T 318.4 17
したがって,交互作用 CB の効果は小さく無視できるので誤差とプーリングした後の
分散分析表を表 6.12に示す.
プーリング後の誤差の平均平方: 3342
21881.
..SSV
ECB
ECB'E
プーリング後の誤差の自由度: 642 ECB'E
―68-
F 分布表から
14505062 ..;,F , 99505061 ..;,F , 53405064 ..;,F ,
表 6.12 プーリングした後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A 98.7 2 79.35 23.829* 22 6 A
B 56.8 1 56.80 17.057* 22 9 B
C 55.1 2 27.55 8.273* 22 6 C
BA 24.2 2 12.10 3.634 22 3 BA
CA 63.6 4 15.90 4.775* 22 2 CA
'E 20.0 6 3.33 2
T 318.4 17
であることから,
要因 A,C, BA については, 050620 .;,FF を満足し有意である.
要因 Bについては, 050610 .;,FF を満足し有意である.
また,要因 CA については, 050640 .;,FF を満足し有意である.
交互作用要因 BA については有意ではない.
したがって,「原料 A,Bおよび反応温度Cについては,それぞれ各水準の違いにより
特性値の母平均は異なると言える.また,二つの因子の交互作用 BA , CA につい
ては無視しないものとし交互作用を認める」と判断する.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
手順5.最適条件の決定
表 6.12 のプーリングした後の分散分析の結果より,母平均を推定するためのデータ
の構造式を,
ijkikijkjiijk 'acabcbax
と考え,収率を大きくする条件は表 6.8 より 22BA 水準,表 6.9 より 21CA 水準となり,
Aの水準と B,Cの組合せで水準が異なる結果となった.そこで 221 CBA 水準での収率
と 222 CBA 水準での収率の母平均の推定値が高い方を最適水準とする.
手順6.最適条件における母平均の点推定
手順5の結果より 221 CBA 水準の母平均の点推定値 221 CBA は式(6.89)から,
814711514012 12112
112211221221
....xxx
aaccaabbaCBAˆ
222 CBA 水準の母平均の点推定値 222 CBA は,
315512513314 22222
222222222222
....xxx
aaccaabbaCBAˆ
となり,最適条件は 222 CBA 水準とする.
手順7.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件 222 CBA における母平均の信頼上限 U
CBA 222 ,信頼下限 L
CBA 222 は,
式(6.90),式(6.91)および式(6.92)を用いて,
―69-
t分布表から 44720506050 ..,t.,t 'E
田口の式:3
2
18
42212111
lmnn
CABACBA
e
伊奈の式:3
2
6
132
6
1
2
1
3
11111
mnmnne
より
1 1 . 6 5
1 8 . 9 5 8613154914472315
3333
24472315
1050222
222
222
.....
...Vn
.,tCBAˆCBA
CBA'E
e
'E
L
U
となる.
【参考1】式(6.10)の展開および式(6.22)~式(6.32)の計算式
三元配置法による実験で式(6.10)の総平方和の分解は,
l
i
m
j
n
k
ijkT xxS
1 1 1
2
l
i
m
j
n
kjkkiijkjiijk
kjjkkikijiij
kji
xxxxxxxx
xxxxxxxxxxxx
xxxxxx
1 1 1
2
2項の積和の合計
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijk
l
i
m
j
n
k
kjjk
l
i
m
j
n
k
kiki
l
i
m
j
n
k
jiij
l
i
m
j
n
k
k
l
i
m
j
n
k
j
l
i
m
j
n
k
i
xxxxxxxxxxxx
xxxxxxxx
xxxxxx
主効果 Aについて
lmn
TCTCT
mn
Txlmnxmn
xlxmnxlxxxmnxxmnxxS
l
i
il
i
i
l
i
i
l
i
l
i
ii
l
i
i
l
i
m
j
n
k
iA
2
1
22
1
2
2
1
22
1 1
2
1
2
1 1 1
2
2
ただし,
主効果 Bについて
CTln
TxlmnxlnxmxlnxxS
m
j
jm
j
j
m
j
j
l
i
m
j
n
k
jB
1
22
1
22
1
2
1 1 1
2
主効果C について
CTlm
TxlmnxlmxnxlmxxS
n
k
kn
k
k
n
k
k
l
i
m
j
n
k
kB
1
22
1
22
1
2
1 1 1
2
交互作用 BA について
BAAB
l
i
m
j
n
k
j
l
i
m
j
n
k
i
l
i
m
j
n
k
ij
l
i
m
j
n
k
jiij
l
i
m
j
n
k
jiijBA
SSSxxxxxx
xxxxxxxxxxS
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
( 6.114 )
( 6.115 )
―70-
BABAAB SSSS または,
CTn
Txlmnxn
xlmxnxnxxxnxxS
l
i
m
j
ijl
i
m
j
ij
l
i
m
j
ij
l
i
l
i
m
j
ij
m
j
ij
l
i
m
j
n
k
ijAB
1 1
22
1 1
2
2
1 1
22
1 1 11
2
1 1 1
2
2
交互作用 CA について
CACAAC
CAAC
l
i
m
j
n
k
k
l
i
m
j
n
k
i
l
i
m
j
n
k
ki
l
i
m
j
n
k
kiki
l
i
m
j
n
k
kikiCA
SSSS
SSSxxxxxx
xxxxxxxxxxS
または,
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
CTm
Txlmnxm
xlnxmxlnxxxmxxS
l
i
n
k
kil
i
n
k
ki
l
i
n
k
ki
l
i
l
i
n
k
ki
n
k
ki
l
i
m
j
n
k
kiAC
1 1
22
1 1
2
2
1 1
22
1 1 11
2
1 1 1
2
2
交互作用 CB について
CBCBBC
CBBC
l
i
m
j
n
k
k
l
i
m
j
n
k
j
l
i
m
j
n
k
jk
l
i
m
j
n
k
kjjk
l
i
m
j
n
k
kjjkCB
SSSS
SSSxxxxxx
xxxxxxxxxxS
または,
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
CTl
Txlmnxl
xmnxlxmnxxxlxxS
m
j
n
k
jkm
j
n
k
jk
m
j
n
k
jk
m
j
m
j
n
k
jk
n
k
jk
l
i
m
j
n
k
jkAC
1 1
22
1 1
2
2
1 1
22
1 1 11
2
1 1 1
2
2
誤差 Eについて
2項の積和の合計
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkE xxxxxxxxS
1 1 1
2
BCACABCBAT
BCACABBCACABCBAT
l
i
m
j
n
k
jk
l
i
m
j
n
k
ki
l
i
m
j
n
k
ij
l
i
m
j
n
k
k
l
i
m
j
n
k
j
l
i
m
j
n
k
i
l
i
m
j
n
k
ijk
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijk
SSSSSSS
SSSSSSSSSS
xxxxxx
xxxxxxxx
xxxxxxxxxxxxxx
222
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
1 1 1
2
2項の積和の合計
2項の積和の合計
となる上記2項の積和はゼロ
CBCABACBAT
CBCBCACABABACBAT
SSSSSSS
SSSSSSSSSSSSS
となる.
総平方和 TS の式(6.114)のそれぞれの 2項の積和は,
―71-
xxi 項に関連する積和について
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
ji xxxx , 02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
ki xxxx
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
jiiji xxxxxx , 02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kikii xxxxxx
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kjjki xxxxxx
A
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijki Sxxxxxxxxxx 22
1 1 1
xx j 項に関連する積和について
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kj xxxx , 02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
jiijj xxxxxx
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kikij xxxxxx , 02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kjjkj xxxxxx
B
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkj Sxxxxxxxxxx 22
1 1 1
xx k 項に関連する積和について
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
jiijk xxxxxx , 02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kikik xxxxxx
02
1 1 1
l
i
m
j
n
k
kjjkk xxxxxx
C
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkk Sxxxxxxxxxx 22
1 1 1
xxxx jiij 項に関連する積和について
Akiki
l
i
m
j
n
k
jiij Sxxxxxxxx 22
1 1 1
B
l
i
m
j
n
k
kjjkjiij Sxxxxxxxx 22
1 1 1
BAAB
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkjiij
SSS
xxxxxxxxxxxx
222
2
1 1 1
xxxx kiki 項に関連する積和について
C
l
i
m
j
n
k
kjjkkiki Sxxxxxxxx 22
1 1 1
CAAC
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkkiki
SSS
xxxxxxxxxxxx
222
2
1 1 1
xxxx kjjk 項に関連する積和について
l
i
m
j
n
k
jkkiijkjiijkkjjk xxxxxxxxxxxx1 1 1
2
―72-
CBBC SSS 222
より,積和を合計すると,
BCACAB
CBBC
CAACCBAABBACBA
SSS
SSS
SSSSSSSSSSSS
222
222
222222222222
2項の積和の合計
【参考2】式(6.111)の展開
0
0 0
0
0
0
1 1
1 11 1
111 1
2121
1
111 1
2121
1
111 1
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
1 1
2
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
ij
m
j
j
l
i
i
l
i
m
j
ji
ljjjljjj
m
j
j
l
i
ij
m
j
j
l
i
m
j
jij
imiiimii
l
i
i
m
j
ij
l
i
i
l
i
m
j
iij
l
i
m
j
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
jiij
l
i
m
j
jiij
E
EE
EE
llE
EE
mmE
EE
nE
nE
nE
22
22222
11
11111
11
11
BAml
mllmlmn
lmnln
mlnmn
lmnn
lmn
―73-
第6章 Excel演習問題
【問題 6-1】
某工業(株)では,自動車用のある特殊ベルトを開発中であるが耐水性の改良が重要課題と
して浮上した.技術課で検討した結果,耐水性の改良のためにはゴムの配合について検討す
ることが必要との意見であり,実験を実施して影響度を把握することになった.
実験は,原料組成に関する因子 A (4水準),充填剤B (3水準)および架橋剤C (2水準)を取
り上げ計 24回の実験をランダムに実施し,耐水性に関する特性 Qのデータを得た.測定デ
ータを表 6-1.1に示す.ただし,データは数値変換してあり特性値は小さいほど望ましく単
位は省略してある.
表 6-1.1 特性値 Qの実験データ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
4A
1B 1C 29 25 32 23
2C 23 24 28 20
2B 1C 29 23 29 22
2C 30 27 31 20
3B 1C 33 20 26 24
2C 29 17 23 23
次の設問に答えよ.
(1)データをグラフ化し考察せよ.
(2)分散分析を行い有意水準 5%で要因効果の有無について検討せよ.
(3)特性値 Qを最小とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
-74-
第7章 乱塊法(一元配置法による実験)
一般に,実験の場の不均一性を無視して,全実験回数のランダム化を適用すると実験誤差
が大きくなり,取り上げた因子の効果の精度を低下させる場合がある.このような場合には
実験の場を均一にした実験の計画と解析が必要となる.乱塊法とは,因子として実験の計画
にブロック(区画)の考え方を導入し実験の場を均一に保つ方法ともいえる.
本章では,一元配置法による実験の計画および解析法について述べる.
7.1 乱塊法による実験とは
第 3章の一元配置法は,因子 Aを l水準指定し,繰り返し r計 lr回の実験をランダムに行
い,特性値の測定データが得られたときの解析法を述べた.例えば, 4l , 3r の一元配
置法を考えると総数 12lr 回のランダマイズ実験の計画となり一例として表 7.1 に実験順
を示した.ここで,実験は 1 日 4 回しか実施できないとすれば,各日どのような実験順に
なっているか 3日間の実験の実施法を表 7.2に示した.このように 12回の実験を 3日間で
実施した場合,1日目は4A ,2日目は
1A ,3日目は 3A が実施されていないことになる.も
し,日間変動が存在した場合,因子 Aの水準間で実験の均一性が保持できなくなる.日間変
動が無視できれば通常の一元配置法で因子 Aの効果は把握できるが,どのように考えて実験の計画を立案すればよいのだろうか?
表 7.1 一元配置法による実験 表 7.2 3日間の実験順
因子 1A
2A 3A 4A 実験順
繰
返
し
1 ○2 ○4 ○1 ○6 1日目 3A 1A
1A 2A
2 ○3 ○10 ○5 ○8 2日目 3A 4A 3A
4A
3 ○9 ○12 ○7 ○11 3日目 1A 2A
4A 2A
乱塊法では,ランダム化で誤差の均一性を保持するために,ブロック(区画)因子R を導
入することになる.各ブロック内で因子 Aの水準のすべてをランダム化し実験を実施する.この実験を 3 日間実施する.このような実験計画法は乱塊法による実験の計画と呼ばれて
いる.乱塊法で取り上げられるブロック因子 R は,反復とも呼ばれ最適条件の設定はでき
ず再現性を持たない.よって,ブロック因子Rは,変動を把握するために導入され,誤差と切り離して解析される.一元配置法による乱塊法の実験の計画を表 7.3に示す.ランダム化
は各ブロックまたは反復ごとに行うよう注意する必要がある.
表 7.3 乱塊法によるランダム化
因子 1A 2A 3A
4A
1R 1日目 ○2 ○3 ○4 ○1
2R 2日目 ○4 ○3 ○1 ○4
3R 3日目 ○1 ○4 ○2 ○3
乱塊法の目的は,ブロック内で因子の水準間の比較をできるだけ精度よく行おうとする
ことにあるので,
(1)ブロック内で取り上げた因子の組合せ全てが,ランダムに実施されていること.
(2)取り上げた因子とブロックRとの交互作用は,例えば RA は考えない.
(3)ブロック因子には再現性がないので最適条件の決定には用いないこと.
(4)ブロック Rは 20 R,N に従う変量と考え,2
R をブロック間変動と呼ぶ.
に注意して実験の計画を立案する.
-75-
7.2 実験データとデータの構造式
一般に,ブロック(または反復)因子Rを r水準,因子 Aを l水準指定し,全実験回数 lr
回の実験を,各ブロック因子Rの水準毎にランダムに行い,特性値の測定データ ikx が得ら
れたときデータ表は表 7.4となる.
表 7.4 乱塊法を利用した一元配置法による実験データ表
因子
ブロック 1A 2A lA 合計 平均値
1R 11x
21x 1lx 1T
1x
2R 12x
22x 2lx 2T
2x
ikx
rR rx1
rx2 lrx
rT rx
合計 1T 2T lT
T
平均値 1x 2x lx x
一元配置法による乱塊法の実験では,各ブロック内で因子 Aの水準 l回の実験がランダムな順序で実施されていることが重要である.
乱塊法による一元配置実験のデータの構造式は,
ikikik ax li ,,2,1 r,,,k 21
ただし, 01
l
i
ia 20 Rk ,N ~ 20 ,Nik~
で表され,
iii ax
r,N R
2
0
~
r,Ni
2
0
~
kkx
r,N R
2
0
~
l,Nk
2
0
~
x
r,N R
2
0
~
lr,N
2
0
~
が導ける.これらの平均に関する式から,因子 Aについて推定を行うこととなるが,ブロッ
ク間変動を無視できるとすれば,式(7.1)は ikiik ax となり第 3章に述べた一元配置
法に一致し容易に推測が可能となる.
乱塊法では,ブロック間変動が無視できないとき因子 Aの効果を精度よく把握するのが
特徴であるので式(7.2)よりブロック間変動および誤差変動を加味して推測することになる.
よって,両変動を考える場合には,分散の加成性より自由度が問題となり,自由度について
はサタースウェイト(Satterthwate)の等価自由度 * を利用することになる.等価自由度に
ついては推定の節で述べる.
7.3 平方和と自由度
乱塊法の一元配置法による実験データの平方和と自由度は,第 4 章に述べた繰返しなし
の二元配置法を基本として,実験データの総平均値を,
総平均値
TN
xN
xl
i
r
k
ik
11
1 1
ただし, lrN
とおいて,
( 7.1 )
( 7.2 )
( 7.4 )
( 7.3 )
( 7.5 )
-76-
総平方和(総変動)
l
i
r
k
ikT xxS1 1
2 1 NT
ブロック間平方和( R間変動)
l
i
r
k
kR xxS1 1
2 1 rR
A間平方和( A間変動)
l
i
r
k
iA xxS1 1
2 1 lA
誤差平方和(誤差変動)
l
i
r
k
kiikE xxxxS1 1
2
11 rlE
関係式:EART SSSS
で求められる.また,平方和の計算には,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
r
k
ikT 1 1
2
ブロック間平方和( R間変動) CTl
TS
r
k
kR
1
2
A間平方和( A間変動) CTr
TS
l
i
iA
1
2
誤差平方和(誤差変動)ARTE SSSS
ARTE
と求めることもできる.
7.4 分散分析表と検定
乱塊法の一元配置法による実験の分散分析表を表 7.5に示す.
表 7.5 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
R RS 1 rR RRR SV ER VV 22
Rl
A AS 1 lA AAA SV EA VV 22
Ar
E ES 11 rlE EEE SV 2
T TS 1 NT
ブロック間変動の有無については,要因Rの平均平方 RV と誤差要因の平均平方 EV より,
仮説: 0 0 2
1
2
0 RR :H:H (有意水準を %5 )
検定統計量: ER VVF 0 棄却域: 0500 .;,FF ER
の検定を実施し有意性を判断する.同様に,要因 Aの効果についても,要因 Aの平均平方
AV と誤差要因の平均平方 EV から,
仮説: 0: 0: 2
1
2
0 AA HH (有意水準を %5 )
検定統計量: EA VVF 0 棄却域: 0500 .;,FF EA
による検定を実施し判断すればよい.検定の結果,ブロック間変動が有意と認められず無視
できると判断されれば,ブロック間変動を誤差とみなしプーリングを行い,プーリング後の
分散分析表を作成する.
( 7.6 )
( 7.9 )
( 7.10 )
( 7.12 )
( 7.15 )
( 7.11 )
( 7.7 )
( 7.13 )
( 7.8 )
( 7.14 )
( 7.16 )
( 7.19 )
( 7.18 )
( 7.17 )
-77-
表 7.6 プーリング後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS A AV EA VV 22
Ar
'E ER'E SSS ER'E 'EV 2
T TS T
プーリング後の分散分析表より要因 Aの効果について検定を行う.ブロック間変動が無
視できる場合は第 3章で述べた一元配置法に一致する.
7.5 最適条件の決定と母平均の推定
乱塊法で取り上げたブロック因子(または反復)は,再現性がなく変動する因子で変量因
子とも呼ばれ,対して操業条件など水準を指定し特性の母平均などを推定できる因子は再
現性があり母数因子とも呼ばれている.したがってブロック因子(または反復)については
特性を向上させるための水準の指定は行わない.一般的に,ブロック因子については日間変
動,入荷する原料の袋間変動などが用いられるのが通常である.
また,推定法については(a)ブロック因子を無視できない場合(b)ブロック因子を無視でき
る場合において異なるので注意が必要である.
(1)最適条件の決定と母平均の推定
ブロック因子は再現性がなく指定できないので取り上げた因子 Aで最適化を図ることに
なる.ここで,最適水準を pA とすれば,データの構造式は式(7.1)から pA 水準での特性値の
母平均のデータの構造式は式(7.2)から
(a)ブロック因子が無視できない場合 pip ax
ppp AxaAˆ
rr
VarVarVarAˆVar Rppp
22
(b)ブロック因子が無視できる場合 ppp ax
ppp AxaAˆ
r
VarVarAˆVar ppp
2
となる.
(2)最適条件における母平均の区間推定
最適水準を pA での信頼率95%信頼限界は,点推定値はいずれも式(7.20)(7.22)で表され,
ブロック因子が無視できない場合には表 7.5の分散分析表,無視できる場合には表 7.6の分
散分析表を用いて信頼限界を求めることができる.
(a)ブロック因子が無視できない場合
信頼限界は,Satterthwaiteの等価自由度 * の t分布 050.*,t を用いて,
pp
Lp
Up
AˆVar.*,tAˆAˆ
Aˆ
050
と計算される.
ここで pAVar の推定値は,ブロック間変動
2
R の推定値を表 7.5の分散分析表 s.m.E
から次式となる.
( 7.20 )
( 7.21 )
( 7.22 )
( 7.23 )
( 7.24 )
-78-
l
VVˆ ER
R
2
22221RR
ER lll
VVE
よって, pAVar の推定値は式(7.21)より,
EREER
EERRp
Vlr
lV
lrV
rV
lrV
lr
r
V
l
VV
rr
ˆ
r
ˆAˆarV
11111
122
となり,右辺第 2項の係数は因子 Aの自由度であり lrN から,
EAREARp VVN
VVlr
AˆarV 11
EARp
Lp
Up
VVN
.*,tAxAˆ
Aˆ
1
050
t分布 050.*,t における Satterthwaiteの等価自由度 * は,
E
EA
R
REAR VV
*
VV
222
より
E
EA
R
R
EAR
VV
VV*
22
2
となる.または,式(7.20)で点推定に用いた有効反復数を考えると,式(7.26)の右辺第 2 項
の係数は田口の有効反復数となる.したがって,乱塊法における有効反復数を,
総データ数
の自由度の和は除く点推定に用いた要因 R
ne
1
として考えれば,式(7.24)は,
E
e
Rp
Lp
Up
Vn
VN
.*,tAxAˆ
Aˆ 11050
ただし, lrN
となる.また, t分布 050.*,t における Satterthwaiteの等価自由度 * は,
E
E
e
R
RE
e
R Vn
VN
*
Vn
VN
22
2
1111
より
E
E
e
R
R
E
e
R
Vn
VN
Vn
VN
*
2
2
2
11
11
で求められる.一般に式(7.29)(7.32)で求められる等価自由度 * は整数値になることは少な
く t分布表を用いて線型補間法による場合が多い.具体的な計算については数値表 1)を参考
にすればよい.
(b)ブロック因子が無視できる場合
ブロック因子が無視できる場合には,第 3章に述べた一元配置法に一致し,表 7.6プーリ
ング後の分散分析表から最適水準 pA の推定は容易にできる.よって,
推定のためのデータの構造式 ppp ax
( 7.25 )
( 7.26 )
( 7.27 )
( 7.28 )
( 7.29 )
( 7.30 )
( 7.31 )
( 7.32 )
-79-
点推定値 ppp AxaAˆ
信頼率 95%信頼限界は次式となる.
rn
Vr
.,tAˆ
AˆVar.,tAˆAˆ
Aˆ
e
'E'Ep
p'Ep
Lp
Up
11
1050
050
(3)因子 Aの水準間の母平均の差の推定
因子 Aの iA 水準と 'iA 水準の母平均の差の推定は,式(7.2)より,
点推定値は 'ii AA とおいて,
'ii'ii'ii AxAxAˆAˆaaˆ
信頼率 95%信頼限界は
EE
E
L
U
Vr
.,tˆ
ˆVar.,tˆˆ
ˆ
2050
050
22
rVarVarVarˆVar 'ii'ii
EVr
ˆarV2
となる.
(4)ブロック間変動 Rの推定
ブロック間変動2
R の推定値を表 7.5の分散分析表 s.m.E から式(7.25)となる.
l
VVˆ ER
R
2
22221RR
ER lll
VVE
ブロック間変動2
R の信頼率 %1100 信頼限界 2)は,Anderson-Bancroft の方法,森口
の方法,Satterthwaiteの方法等があるが,いずれも近似法であり計算はかなりやっかいと
される.以下に Anderson-Bancroftの方法を紹介しておく.
2
R の信頼上限:
R
E
ER
R
V
V
;,Fl
V
21
1
2
R の信頼下限:
R
E
ER
R
V
V
;,Fl
V
2
1
7.6 例題
ある樹脂加工(株)では,入荷する樹脂紛と精錬因子 Aとの影響を把握するために,要因 A
を 4水準取り上げ特性 Qとの影響度を調査する実験を行った.
そこで,実験では入荷する樹脂紛をランダムに 4 袋抽出し,各袋の樹脂紛を利用して因
子 Aの 4 水準でランダムに処理を行い特性 Q のデータを測定した.表 7.7 にデータ表を示
す.データは数値変換してあり特性 Qは小さいほど望ましい.
次の設問に答えよ.
( 7.33 )
( 7.34 )
( 7.36 )
( 7.37 )
( 7.35 )
-80-
(1)分散分析を行い有意水準 5%で樹脂紛の袋間と因子 Aについて効果を検定せよ.
(2)特性 Qを最小とする最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と
信頼率 95%信頼限界を求めよ.
本実験は,樹脂紛の袋は再現性がなくブロック因子となり,各袋で因子 Aの水準すべて
で実験が行われているので乱塊法による実験となる.
表 7.7 乱塊法による一元配置実験データ表(単位省略)
因子
ブロック 1A 2A 3A
4A 合計 平均値
1R 5.2 4.9 5.4 4.9 20.4 5.10
2R 5.4 5.0 5.7 5.1 21.2 5.30
3R 5.8 5.2 5.5 5.5 22.0 5.50
4R 5.4 5.1 5.4 5.3 21.2 5.30
合計 21.8 20.2 22.0 20.8 84.8
平均値 5.45 5.05 5.50 5.20 5.30
(1)分散分析による要因の検定
手順 1.データの構造
ikikik ax ただし, 04
1
i
ia 20 Rk ,N ~ 2,0 Nij~
4,3,2,1i 4321 ,,,k 1644 lrN
手順2.平方和と自由度の計算
データの総合計 88435944594254
1
4
1
......xTi k
ik
総平均 30588416
11..T
Nx
修正項 4444988416
11 22 ..TN
CT
総平方和(総変動) CTxSi k
ikT
4
1
4
1
2
0414444948450
444493594459425 22222
...
......
151161 NT
ブロック間平方和( R間変動) CTl
TS
k
kR
4
1
2
444492210222214204
1 2222 .....
320444490417994
1 ...
3141 rR
A間平方和( A間変動) CTr
TS
i
iA
4
1
2
444498200222208214
1 2222 .....
-81-
540444499217994
1 ...
3141 lA
誤差平方和(誤差変動) 180540320041 ....SSSS ARTE
93311 rlE
または, 93315 ARTE
手順3.分散分析表の作成と要因効果の判定
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から分散分析表を作成し,平均平方および
検定のための統計量 0F を求める.
表 7.8 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
R 0.32 3 0.107 5.35* 22 4 R
A 0.54 3 0.180 9.00** 22 4 A
E 0.18 9 0.020 2
T 1.04 15
F 分布表から 86.305.0;9,3 F , 99601093 ..;,F である.
ブロック(袋)間変動 Rは 86.305.0;9,3 F より大きく有意水準5%で有意であり,
要因 Aについては 99601093 ..;,F より大きいことから高度に有意であることがわ
かった.
したがって「入荷する樹脂紛の袋間にバラツキがあり,精錬要因 Aの水準間については,特性 Qが水準間で違いがあり母平均は異なると言える」と判断する.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
手順 4.最適条件の決定
乱塊法では再現性のないブロック(または反復)因子については,最適条件を指定する
ことはしないので要因 Aの水準のみで考えればよいので特性 Q を小さくする条件は
2A となる.またブロック因子 Rは有意であり表 7.8 を利用して母平均を推定する.よ
って最適条件での母平均を推定するためのデータの構造式を,
ikikik ax ただし, 04
1
i
ia 20 Rk ,N ~ 20 ,Nik~
222 ax
として考えればよい.
手順 5.最適条件における母平均の点推定
最適条件2A における母平均の点推定値 2A は表 7.7より,
0552222 .xAxaAˆ
となる.
手順 6.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件2A における母平均の信頼限界は,ブロック因子が無視できない場合であり
Satterthwaiteの等価自由度 * を利用した式(7.28)または式(7.31)を用いて求める.等
価自由度 * は式(7.29)より,
-82-
6260042160
0278890
9
02003
3
1070
020031070 22
2
22
2
..
.
..
..
VV
VV*
E
EA
R
R
EAR
または,式(7.32)より有効反復数は 1631 en となり,
616000016470
000108940
9
020016
3
3
107016
1
020016
31070
16
1
11
11
22
2
22
2
..
.
..
..
Vn
VN
Vn
VN
*
E
E
e
R
R
E
e
R
等価自由度 626.* をもつ t分布の 050626 .,.t は,線型補間により 44720506 ..,t ,
36520507 ..,t より,
396236526204472380
050762005066201050626050
.....
.,t..,t..,.t.*,t
と求められる.したがって信頼限界は,
814
295240055
02003107016
13962055
10502
2
2
.
...
....
VVN
.*,tAxAˆ
AˆEAR
L
U
となる.
(3)因子 Aの水準の差の推定
表 7.7 の分散分析表において,最適水準2A と 2 番目に特性 Q が小さい
4A 水準との
差の母平均を推定すると式(7.35)より,
点推定値は 42 AA とおいて,
15020505542 ...AxAxˆ
信頼率 95%信頼限界は式(7.36)より
380
0802301501002622150
02004
20509150
2050
.
......
..,t.Vr
.,tˆˆ
ˆEE
L
U
となる.差の区間推定においてゼロを含み有意水準 5%で因子 Aの水準 2 と 4 におい
て有意差は認められないことがわかる.上記,区間推定の幅 42050 EE V.,t を最
小有意差( least significance difference: l,s,d, )といい d.s.l が成り立つとき因子 A
の水準 2と 4の母平均は有意であると判断しても良い.
(4)ブロック間変動2
R の推定
式(7.25)より,
( 7.38 )
-83-
22 147500217504
02001070..
..
l
VVˆ ER
R
信頼率 95%信頼限界は Anderson-Bancroftの方法を利用すると式(7.37)より,
2
R の信頼上限:
1070
0200
975093
1
4
1070
21
1
.
.
.;,F
.
V
V
;,Fl
V
R
E
ER
R
261880382901070
0200514026750 ..
.
...
2
R の信頼下限:
1070
0200
025093
1
4
1070
2
1
.
.
.;,F
.
V
V
;,Fl
V
R
E
ER
R
2016300000265701070
0200
085
1026750 ..
.
.
..
となる.
【参考1】データの構造式による平均値の期待値と分散について
iii ax
r,N R
2
0
~
r,Ni
2
0
~
ii
k
k
iki
k
k
k
k
k
ik
k
k
i
k
k
k
k
k
r
k
iki
ararEr
aEr
xr
ExE
11
11111
1
11
rrr
rr
r
Varr
Varr
rarVarr
aVarr
xr
VarxVar
RR
k
k
ik
k
k
k
k
k
iki
k
k
k
k
k
ik
k
k
i
k
k
k
k
k
r
k
iki
222
2
2
2
12
12
112
11112
1
11
111
11
kkx
r,N R
2
0
~
l,Nk
2
0
~
ik
l
i
ik
l
i
ik
l
i
ik
l
i
i
l
i
k
l
i
l
i
ikk
allEl
aEl
xl
ExE
11
11111
1
11
l
i
ikk
l
i
ik
l
i
ik
l
i
ik
l
i
i
l
i
k
l
i
l
i
ikk
Varl
Varll
allVarl
aVarl
xl
VarxVar
12
2
211
2
11112
1
111
11
l
ll
ll
RR
222
2
22
2
11
( 7.39 )
( 7.40 )
( 7.42 )
( 7.41 )
-84-
x
r,N R
2
0
~
lr,N
2
0
~
l
i
k
k
ik
l
i
i
k
k
k
l
i
k
k
ik
l
i
k
k
i
l
i
k
k
k
l
i
k
k
l
i
r
k
ik
arllrElr
aElr
xlr
ExE
1 111
1 11 11 11 11 1
1
11
lrrlr
rlrl
rlVar
rlVarl
rl
arllrVarrl
aVarrl
xlr
VarxVar
RR
l
i
k
k
ik
k
k
k
l
i
k
k
ik
l
i
i
k
k
k
l
i
k
k
ik
l
i
k
k
i
l
i
k
k
k
l
i
k
k
l
i
r
k
ik
222
22
22
221 1
221
2
22
1 11122
1 11 11 11 122
1 1
1111
1
11
【参考2】Satterthwaiteの方法とは
一般に自由度が m,,, 21 ,期待値が22
221 m,,, であるようなm 個の独立な不偏分散を
mV,,V,V 21 とすると,その線型結合
m
i
iimm VaVaVaVa1
2211 ( ia は定数)の自由度 *
は,近似的に
m
i i
ii
m
mm
m
i
iiaaaa
*
a
1
2222
2
2222
1
2211
2
1
2
すなわち,
m
i i
ii
m
i
ii
a
a
*
1
22
2
1
2
で与えられる.(いいかえると 2iiii aVa は近似的に自由度の 2 分布に従う).
2i が未知の場合には,式(7.45)の
2i の代わりに iV を用いて * を推定することが行われ,こ
れを Satterthwaiteの方法と呼んでいる.Satterthwaiteの方法で求められる自由度(これ
を iiVa の等価自由度という)を * とすると,
m
i i
ii
m
i
ii
Va
Va
*
1
2
2
1
となる.式(7.29)では 11 a , Aa 2 , R 1 , E 2 と置き換えている.また式(7.32)では
Na 11 , ena 12 , R 1 , E 2 と置き換えていることになる.
( 7.45 )
( 7.46 )
( 7.43 )
( 7.44 )
-85-
【参考3】Satterthwaiteの等価自由度 * の t分布値 *,t を求める(直線補間法)
下図において ABC において, AXY と YZB は相似であり, ZB:YZXY:AX が成り立
つ.
よって,
*
,t*,t
*
*,t,t
2
2
1
1
から,
121
221
*,t**,t
**,t*,t
1221
12
*,t*,t
*,t
となり,
,t
*,t
**,t 2
12
11
12
2
と求められる.例題の場合,等価自由度 626.* をもつ t分布の 050.*,t は,直線補間法に
より式(7.47)を用いて 61 , 44720501 ..,t , 72 , 36520502 ..,t より,
396236526204472380
365267
66264472
67
6267
050050050 2
12
11
12
2
.....
..
..
.,t*
.,t*
.*,t
となる.
( 7.47 )
-86-
第7章 Excel演習問題
【問題 7-1】
あるソーラー電気(株)の技術部では,太陽電池の充電変換効率を比較するための実験を行
った.気象条件の影響を考慮し,ランダムに 5日間(1R ,
2R , 3R ,4R , 5R )を選び各日毎
に 4種類(1A ,
2A , 3A ,4A )の変換機の効率を測定し表 7-1.1のデータを得た.データは数
値変換し単位は省略してある.
表 7-1.1 効率のデータ表(単位省略)
因子 1A 2A 3A
4A
1R 24.1 24.7 23.7 23.9
2R 25.2 25.6 24.9 25.1
3R 25.9 26.1 26.0 26.0
4R 25.7 26.5 25.3 25.5
5R 24.5 24.1 24.1 24.3
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因の効果について検討せよ.
(2)4種類の変換機における母平均の点推定値と信頼率 95%信頼限界を求めよ.
(3)効率が最大となる変換機と最小となる変換器の母平均の差の点推定値と信頼率 95%
信頼限界を求めよ.
(4)日間変動を点推定せよ.
-87-
第8章 乱塊法(二元配置法による実験)
乱塊法とは,第 7章で述べた再現性のないブロック(または反復)因子を取り上げ,実験
の場の均一性を保持した因子 Aの水準間の影響度を把握する実験であった.同様に,本章では 2因子を取り上げた二元配置法による実験の計画および解析法について述べる.
8.1 乱塊法による二元配置実験とは
因子 Aを l水準,因子 Bをm水準取り上げ,ブロック因子Rを r水準導入することになる.
実験では因子 A,Bの lm数の組合せを各ブロック内でランダム化し特性値のデータを得て
解析する方法である.すなわち,三元配置法による実験など多元配置実験を反復することに
より同様な実験が考えられる.
例えば,乱塊法による二元配置実験のランダム化のタイプを表 8.1 および表 8.2 に示す.
表 8.1 実験のランダム化のタイプ 1 表 8.2 実験のランダム化のタイプ 2
因子 1A 2A 3A 因子 1A 2A 3A 4A
日
間
1R 1B ○5 ○3 ○1
反
復
1R
1B ○6 ○3 ○12 ○8
2B ○2 ○4 ○6 2B ○5 ○11 ○1 ○10
2R 1B ○2 ○1 ○4
3B ○2 ○9 ○7 ○4
2B ○5 ○3 ○6
2R
1B ○10 ○1 ○5 ○12
3R 1B ○2 ○5 ○1 2B ○4 ○6 ○8 ○2
2B ○4 ○3 ○6 3B ○7 ○11 ○3 ○9
乱塊法の実験では,日間変動や反復変動が無視できれば,通常の二元配置実験の型となるが
効率よく実験の場の均一性に着目しておくことが重要である.
8.2 実験データとデータの構造式
乱塊法による二元配置実験で,ブロック(または反復)因子R を r水準,因子 Aを l水準,
因子 B をm水準指定し,各ブロック因子 R の水準毎にランダムに lm回行い,総実験回数
lmr回の実験が実施され,特性値の測定データ ijkx が得られたときデータ表は表8.3となる.
表 8.3 乱塊法を利用した二元配置法による実験データ表
1A 2A lA 合計 平均値
1B 111x 211x 11lx
1R 2B 121x 221x 21lx 1T 1x
ijkx
mB 11mx 12mx 1lmx
1B rx11 rx21 rlx 1
rR 2B rx12 rx22 rlx 2 rT rx
ijkx
mB mrx1 mrx2 lmrx
合計 1T 2T lT T
平均値 1x 2x lx x
また,因子 と因子 Bのデータの二元表を作成しておくと,それぞれの平方和を計算する
ときには便利である.データの二元表を表 8.4に示す.
A
-88-
表 8.4 因子 と因子 Bの実験データの二元表
1A 2A lA 合計 平均値
1B 11T 21T 1lT 1T 1x
2B 12T 22T 2lT 2T 2x
ijT
mB mT1 mT2 lmT mT mx
合計 1T 2T lT
平均値 1x 2x lx
乱塊法による一元配置実験のデータの構造式は,
ikijjikik abbax li ,,2,1 mj ,,2,1 r,,,k 21
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 011
m
j
ij
l
i
ij abab
20 Rk ,N ~ 20 ,Nik~
で表され,
ijijjiij abbax
rN R
2
,0
~
rNij
2
,0
~
iii ax
rN R
2
,0
~
mrNi
2
,0
~
jjj bx
rN R
2
,0
~
lrNj
2
,0
~
kkkx 20 Rk ,N ~
lmNk
2
,0
~
x
r,N R
2
0
~
l m rN
2
,0
~
が導ける.
8.3 平方和と自由度
乱塊法の二元配置法による実験データの平方和と自由度は,分散分析の平方和計算の基
本式を利用して,実験データの総平均値を,
総平均値
TN
xN
xl
i
m
j
r
k
ijk
11
1 1 1
ただし, lmrN
とおいて,
総平方和(総変動)
l
i
m
j
r
k
ijkT xxS1 1 1
2 1 NT
ブロック間平方和( R間変動)
l
i
m
j
r
k
kR xxS1 1 1
2 1 rR
A間平方和( A間変動)
l
i
m
j
r
k
iA xxS1 1 1
2 1 lA
A
T
x
( 8.2 )
( 8.1 )
( 8.3 )
( 8.6 )
( 8.5 )
( 8.8 )
( 8.7 )
( 8.9 )
( 8.10 )
( 8.4 )
-89-
B間平方和( B間変動)
l
i
m
j
r
k
jB xxS1 1 1
2 1mB
AB間平方和( AB間変動)
l
i
m
j
r
k
ijAB xxS1 1 1
2 1 lmAB
交互作用 BA の平方和 BATBA SSSS
11 mlBABA
誤差平方和(誤差変動)
l
i
m
j
r
k
ijijkE xxxS1 1 1
2
11 rlmE
関係式: EBABART SSSSSS
で求められる.また,具体的な平方和の計算には,表 8.3および表 8.4を利用して,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
m
j
r
k
ijkT 1 1 1
2
ブロック間平方和( R間変動) CTlm
TS
r
k
kR
1
2
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
l
i
iA
1
2
B間平方和( B間変動) CTlr
TS
m
j
j
B
1
2
AB間平方和( AB間変動) CTr
TS
l
i
m
j
ij
AB
1 1
2
交互作用 BA の平方和 BAABBA SSSS
誤差平方和(誤差変動) BABARTE SSSSSS
BABARTE
と求めることができる.
8.4 分散分析表と検定
乱塊法による二元配置法実験の分散分析表を表 8.5に示す.
表 8.5 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
R RS R RV ER VV 22
Rlm
A AS A AV EA VV 22
Amr
B BS B BV EB VV 22
Blr
BA BAS BA BAV EBA VV 22
BAr
E ES E EV 2
T TS T
乱塊法による一元配置法と同様に,ブロック間変動の有無については,要因 R の平均平
方 RV と誤差要因の平均平方 EV より,
( 8.14 )
( 8.15 )
( 8.17 )
( 8.23 )
( 8.16 )
( 8.18 )
( 8.19 )
( 8.11 )
( 8.12 )
( 8.13 )
( 8.20 )
( 8.21 )
( 8.22 )
-90-
仮説: 0 0 2
1
2
0 RR :H:H (有意水準を %5 )
検定統計量: ER VVF 0 棄却域: 0500 .;,FF ER
の検定を実施し有意性を判断する.要因 A,Bおよび交互作用 BA の効果についても,同
様に検定を実施し判断すればよい.
例えば,検定の結果ブロック間変動および交互作用が有意と認められず無視できると判
断されれば,ブロック間変動を誤差とみなしプーリングを行い,プーリング後の分散分析表
を作成する.
表 8.6 プーリング後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS A AV 'EA VV 22
Amr
B BS B BV 'EB VV 22
Blr
'E 'ES 'E 'EV 2
T TS T
プーリング後の分散分析表よりそれぞれ要因について検定を行う.ブロック間変動が無
視できる場合は第 5章で述べた二元配置法に一致する.
8.5 最適条件の決定と母平均の推定
乱塊法ではブロック因子(または反復)は,再現性がなく変動する因子で水準の指定は行
わない.また,推定法については(a)ブロック因子を無視できない場合(b)ブロック因子を無
視できる場合において異なる.
(1)最適条件の決定と母平均の推定
因子 Aの最適水準を oA ,因子 B最適水準を pB としたときの母平均を推定する.
(a)ブロック因子が無視できない場合
(a-1)交互作用が無視できない場合
データの構造式 ijijjiij abbax から,
pooppopo BAxabbaBA
rr
VarVarVarBAVar Ropoppo
22
ˆ
(a-2)交互作用が無視できる場合
データの構造式 iii ax , jjj bx から,
xBxAxbabaBA pooopopo ˆˆ
lmr
ml
r
VarVar
VarxxxVarBAˆVar
R
po
popopo
22 1
となる.
(b)ブロック因子が無視できる場合
(b-1)交互作用が無視できない場合
データの構造式 ijijjiij abbax から,
pooppopo BAxabbaBA
( 8.24 )
( 8.25 )
( 8.28 )
( 8.26 )
( 8.27 )
-91-
r
VarVarBAVar opoppo
2
ˆ
(b-2)交互作用が無視できる場合
データの構造式 ijjiij bax から,
xBxAxbabaBA pooopopo ˆˆ
lmr
ml
lmrlrmr
Var
xxxVarBAVar
po
popo
2222 1
ˆ
となる.
(2)最適条件における母平均の区間推定
最適水準 poBA での信頼率 95%信頼限界は,上記(1)で求められ,ブロック因子につい
ては無視できない場合,無視できる場合の分散分析表を用いて信頼限界を求めることがで
きる.
(a)ブロック因子が無視できない場合
(a-1)交互作用が無視できない場合
信頼限界は,Satterthwaiteの等価自由度 * の t分布 050.*,t を用いて,
popo
Lpo
Upo
BAVartBABA
BA
ˆ05.0*,ˆ
ˆ
ˆ
と計算される.
ここで poBAVar の推定値は,ブロック間変動2
R の推定値を分散分析表 s.m.E
から求めると次式となる.
lm
VV ERR
2
22221RR
ER lmlmlm
VVE
よって, poBAVar の推定値は式(8.25)より,
EREER
EERRpo
Vlmr
lmV
lmrV
rV
lmrV
lmr
r
V
lm
VV
rrrBAarV
11111
1ˆˆˆˆ
22
となり,右辺第 2項の係数は lmrN から,
EBABAR
ER
ERpo
VVN
VmlmlVlmr
VlmVlmr
BAarV
1
11111
11
ˆˆ
EBABARpo
Lpo
Upo
VVN
tBAxBA
BA
105.0*,
ˆ
ˆ
となる.よって t分布 050.*,t における Satterthwaiteの等価自由度 * は,
( 8.29 )
( 8.32 )
( 8.33 )
( 8.34 )
( 8.35 )
( 8.36 )
( 8.30 )
( 8.31 )
-92-
E
EBABA
R
REBABAR VVVV
222
*
より
E
EBABA
R
R
EBABAR
VV
VV
22
2
*
となる.または,式(8.24)で点推定に用いた有効反復数を考えると,式(8.34)の右辺第 2
項の係数は田口の有効反復数となる.したがって,式(7.30)の有効反復数は,
総データ数
の自由度の和は除く点推定に用いた要因 R
ne
1
より求め Nn BABAe 1 となり式(8.35)に一致する.したがって式(8.36)は,
E
e
Rpo
Lpo
Upo
Vn
VN
tBAxBA
BA 1105.0*,
ˆ
ˆ
ただし, lmrN
となる.また, t分布 050.*,t における Satterthwaiteの等価自由度 * は,
E
E
e
R
RE
e
R Vn
VN
*
Vn
VN
22
2
1111
より
E
E
e
R
R
E
e
R
Vn
VN
Vn
VN
*
2
2
2
11
11
で求められる.等価自由度 * については数値表 1)を参考にすればよい.
(a-2)交互作用が無視できる場合
点推定値は式(8.26),分散は式(8.27)で求められ,信頼限界は式(8.32)で計算される.
また分散の推定値 poBAarV は式(8.33)を利用して,
'EBAR
'ER
'E'ERR
po
VVNlmr
Vml
lmr
V
Vlmr
ml
lm
VV
rlmr
ˆml
r
ˆBAˆarV
12
111 22
となる.よって,
'EBARpo
Lpo
Upo
VVN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ
1
050
と求めればよい. t分布 050.*,t における Satterthwaiteの等価自由度 * は,
'E
'EBA
R
R'EBAR VV
*
VV
222
より
'E
'EBA
R
R
'EBAR
VV
VV*
22
2
となる.また式(8.38)より有効反復数
( 8.37 )
( 8.39 )
( 8.40 )
( 8.41 )
( 8.42 )
( 8.43 )
( 8.38 )
-93-
Nn
BA
e
1
を求め,式(8.39)と同様に,
'E
e
Rpo
Lpo
Upo
Vn
VN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ 11050
ただし, lmrN
としてもよい.さらに, t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は,
式(8.40)を利用すればよい.
(b)ブロック因子が無視できる場合
(b-1)交互作用が無視できない場合
信頼限界は,式(8.28)および式(8.29)を用いて,
'E'Epo
po'Epo
Lpo
Upo
Vr
.,tBAˆ
BAˆarV.,tBAˆBAˆ
BAˆ
1050
050
と計算される.
(b-2)交互作用が無視できる場合
同様に,信頼限界は式(8.30)および式(8.31)を用いて,
poEpo
Lpo
Upo
BAarVtBABA
BA
ˆˆ05.0,ˆ
ˆ
ˆ
'
''
105.0,ˆ E
BAEpo V
NtBA
ただし, lmrN
と計算される.
(3)因子の水準間の母平均の差の推定
(a)因子 Aの水準間の母平均の差の推定
因子 Aの iA 水準と 'iA 水準の母平均の差の推定は,式(8.3)より,
点推定値は 'ii AA とおいて,
'ii'ii'ii AxAxAˆAˆaaˆ
信頼率 95%信頼限界は
EE
E
L
U
Vmr
.,tˆ
ˆarV.,tˆˆ
ˆ
2050
050
22
mrVarVarVarˆVar 'ii'ii
EVmr
ˆarV2
となる.
( 8.49 )
( 8.48 )
( 8.44 )
( 8.46 )
( 8.47 )
( 8.45 )
-94-
(b)因子 Bの水準間の母平均の差の推定
因子 Bの jB 水準と 'jB 水準の母平均の差の推定は,式(8.4)より,
点推定値は 'jj BB とおいて,
'jj'jj'jj BxBxBˆBˆbbˆ
信頼率 95%信頼限界は
EE
E
L
U
Vlr
.,tˆ
ˆarV.,tˆˆ
ˆ
2050
050
22
lrVarVarVarˆVar 'jj'jj
EVlr
ˆarV2
となる.
(c)因子 ABの水準間の組合せによる母平均の差の推定
(c-1)交互作用 BA が無視できない場合
因子 Aと Bの jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,式(8.2)より,
点推定値は 'j'iji BABA とおいて,
'j'iji'j'iji
'j'i'j'iijji
BAxBAxBAˆBAˆ
abbaabbaˆ
信頼率 95%信頼限界は
EE
E
L
U
Vr
.,tˆ
ˆarV.,tˆˆ
ˆ
2050
050
22
rVarVarVarˆVar 'j'iij'j'iij
EVr
ˆarV2
となる.
(c-2)交互作用 BA が無視できる場合
因子 Aと Bの jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,式(8.4) (8.5) (8.6)より,
点推定値は 'j'iji BABA とおいて,
xBxAx
ˆBˆAˆˆbabaBAˆ
ji
jijijiji
xBxAx
ˆBˆAˆˆbabaBAˆ
'j'i
'j'i'j'i'j'i'j'i
より,
( 8.51 )
( 8.50 )
( 8.53 )
( 8.52 )
( 8.54 )
( 8.55 )
-95-
xBxAxxBxAxBAˆBAˆˆ'j'iji'j'iji
信頼率 95%信頼限界は,点推定値 の分散 Var の有効反復数参考 3)を dn1 とす
ると,式(8.53)および式(8.54)の共通項を除いた有効反復数を
lrmrn
111
1
, lrmrn
111
2
を求め 21
111
nnnd
として,
E
d
E
E
L
U
Vn
.,tˆ
ˆarV.,tˆˆ
ˆ
1050
050
となる.
(4)ブロック間変動 Rの推定
ブロック間変動2
R の推定値はそれぞれ分散分析表 s.m.E から式(8.33)となる.
lm
VVˆ ER
R
2
22221RR
ER lmlmlm
VVE
ブロック間変動2
R の信頼率 %1100 信頼限界 2)は,Anderson-Bancroft の方法,森口
の方法,Satterthwaiteの方法等があるが,いずれも近似法であり計算はかなりやっかいと
される.以下に Anderson-Bancroftの方法を紹介しておく.
2
R の信頼上限:
R
E
ER
R
V
V
;,Flm
V
21
1
2
R の信頼下限:
R
E
ER
R
V
V
;,Flm
V
2
1
8.6 例題
ある堆肥改良(株)では,微生物による発酵生成物の収率による培養条件を決めるために,
収率に影響が大きいと思われる培養液の pH と培養時間を因子に選び,pH( A:4 水準),
時間( B:2水準)として実験を行うことにした.
実験は,1区画から土壌をランダムに収集し 3ブロックに分け,1ブロック 1日かけて因
子 A,Bの組合せ 8回,計 24回の実験をランダムに行い特性値である収率を測定した.表
8.7にデータ表を示す.データは数値変換してあり収率は高いほど望ましい.
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%でブロック間と因子 A, Bについて効果を検定せよ.
(2)特性値が最大となる最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と信頼率
95%信頼限界を求めよ.
(3)ブロック間(または日間)変動を推定せよ.
本実験は,土壌改良に伴う実験であり収集した土壌をブロックに分け,1ブロック 1日で
実験を行っており,ブロック間変動は日間変動と交絡している.ブロック間変動を日間変動
と捉え再現性はない.よって各ブロックで因子 A, Bの水準すべてで実験が行われている
ので乱塊法による二元配置実験となる.
(1)分散分析による要因の検定
( 8.60 )
( 8.58 )
( 8.56 )
( 8.57 )
( 8.59 )
-96-
表 8.7 乱塊法による二元配置実験データ表(単位省略)
ブロック 因子 1A 2A 3A 4A 合計 平均値
1R 1B 71.7 80.6 87.5 74.3
670.7 83.84 2B 83.8 90.8 92.2 89.8
2R 1B 64.4 72.6 79.6 63.9
604.8 75.60 2B 75.5 84.5 87.5 76.8
3R 1B 75.8 82.7 91.4 81.2
640.0 80.00 2B 68.8 78.2 88.5 73.4
合計 440.0 489.4 526.7 459.4 1915.5
平均値 73.33 81.57 87.78 76.57 79.81
表 8.8 AB二元表(上段: ijT ,下段: ijx )
因子 1A 2A 3A 4A 合計 平均値
1B 211.9
70.63
235.9
78.63
258.5
86.17
219.4
73.13 925.7 77.14
2B 228.1
76.03
253.5
84.50
268.2
89.40
240.0
80.00 989.8 82.48
合計 440.0 489.4 526.7 459.4 1915.5
平均値 73.33 81.57 87.78 76.57 79.81
手順 1.データの構造
ikijjikijk abbax
ただし, 04
1
i
ia 02
1
j
jb 02
1
4
1
j
ij
i
ij abab
20 Rk ,N ~ 2,0 Nij~
4,3,2,1i 21,j 321 ,,k 24324 lmrN
手順2.平方和と自由度の計算
データの総合計
4
1
2
1
3
1i j k
ijkxT
51915473374587680771 ......
総平均 81795191524
11..T
Nx
修正項 84381528805191524
11 22 ..TN
CT
総平方和(総変動) CTxSi j k
ijkT
4
1
2
1
3
1
2
4061598843815288025154479
8438152880473374587680771 22222
...
......
231241 NT
ブロック間平方和( R間変動) CTlm
TS
k
kR
3
1
2
-97-
84381528800640860476708
1 222 ....
84727184381528805312252218
1 ...
2131 rR
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
i
iA
4
1
2
758.7148438.15288061.9215736
1
8438.1528804.4597.5264.4890.4406
1 2222
3141 lA
B間平方和( B間変動) CTlr
TS
j
j
B
2
1
2
200171843815288053183662412
1
84381528808989792512
1 22
...
...
1121 mB
AB間平方和( AB間変動) CTr
TS
i j
ij
AB
4
1
2
1
2
5338968438152880134613323
1
843815288002405258923592113
1 2222
...
.....
7181 lmAB
交互作用 BA の平方和 BAABBA SSSS
575.10200.171758.714533.896
313 BABAABBA
誤差平方和(誤差変動) BABARTE SSSSSS
026.430
575.10200.171758.714847.271406.1598
14313223 BABARTE
手順3.分散分析表の作成と要因効果の判定
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から表 8.9の分散分析表を作成する.
F 分布表から 743050142 ..;,F , 343050143 ..;,F , 604050141 ..;,F で
ある.検定の結果,ブロック間変動R,要因 AおよびBについては有意水準 5%で
有意であり,交互作用 BA については有意水準 5%で有意でないことがわかった.
そこで,交互作用 BA については誤差とみなしてプーリングすることにした.プ
ーリング後の分散分析表を表 8.10に示す.
プーリングの検定の結果F 分布表から 593050172 ..;,F , 593050173 ..;,F ,
454050171 ..;,F であり,同様に,ブロック間変動R,要因 AおよびB について
-98-
表 8.9 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F s.m.E
R 271.547 2 135.774 4.42* 22 8 R
A 714.758 3 238.253 7.76* 22 6 A
B 171.200 1 171.200 5.57* 22 12 B
BA 10.575 3 3.525 0.11 22 3 BA
E 430.026 14 30.716 2
T 1598.406 23
表 8.10 プーリング後の分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F s.m.E
R 271.547 2 135.774 5.24* 22 8 R
A 714.758 3 238.253 9.19* 22 6 A
B 171.200 1 171.200 6.61* 22 12 B
E 440.601 17 25.918 2
T 1598.406 23
有意水準5%で有意差が認められた.推定については表8.10を利用することにした.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
手順 4.最適条件の決定
乱塊法では再現性のないブロック因子については,最適条件を指定しないので要因
Aおよび B の水準のみで考えればよい.交互作用 BA は無視できたので収率を高く
する条件は,要因 AおよびBで単独に決定できるので表 8.8より 23BA 水準となる.ま
たブロック因子 Rは有意であり表 8.10を利用して母平均を推定する.よって最適条件
での母平均を推定するためのデータの構造式を,
i j kjiki j k bax
ただし, 04
1
i
ia 02
1
j
jb 20 Rk ,N ~ 20 ,Nijk~
322332 bax
として考えればよい.
手順 5.最適条件における母平均の点推定
最適条件 23BA における母平均の点推定値 2A は表 8.8より,
459024
51915
12
8989
6
7526 23
23232323
....
xxx
xBxAxˆbabaBAˆ
となる.
手順 6.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件 23BA における母平均の信頼限界は,ブロック因子が無視できない場合であ
り Satterthwaiteの等価自由度 * を利用した式(8.42)または(8.45)を用いて求める.等
価自由度 * は式(8.43)より,
82551809849
386957334
17
918254
2
774135
918254774135 22
2
22
2
..
.
..
..
VV
VV*
E
'EBA
R
R
'EBAR
-99-
または,式(8.38)より有効反復数は 612441 en となり,
825099857617
538866299
17
918256
1
2
77413524
1
918256
1774135
24
1
11
11
22
2
22
2
..
.
..
..
Vn
VN
Vn
VN
*
'E
'E
e
R
R
'E
e
R
等価自由度 825.* をもつ t分布の 050825 .,.t は,線型補間により 57120505 ..,t ,
44720506 ..,t より,
469244728205712180
050682005058201050825050
.....
.,t..,t..,.t.*,t
と求められる.したがって信頼限界は式(8.42)より,
6582
25988074590
918251377413524
146924590
105023
23
23
.
...
....
VVN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ'EBAR
L
U
または式(8.45)より,
6582
25988074590
918256
1774135
24
146924590
1105023
23
23
.
...
....
Vn
VN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ'E
e
R
L
U
となる.
(3)ブロック間(日間)変動2
R の推定
式(8.59)より,
22 70573732138
91825774135..
..
lm
VVˆ 'ER
R
信頼率 95%信頼限界は Anderson-Bancroftの方法を利用すると式(8.60)より,
2
R の信頼上限:
774135
91825
9750172
1
8
774135
21
1
.
.
.;,F
.
V
V
;,Flm
V
R
'E
'ER
R
27963254472665774135
918254399717516 ..
.
...
2
R の信頼下限:
774135
91825
0250172
1
8
774135
2
1
.
.
.;,F
.
V
V
;,Flm
V
R
'E
'ER
R
-100-
2658904340774135
91825
624
19717516 ..
.
.
..
となる.
注)第 7章【参考 3】に述べた方法によりF 分布においても線型補間法によって求める.
F 分布値 0250217 .;,F は, 4390250215 ..;,F , 4390250220 ..;,F であり補間
法で求めるまでもなく 4390250217 ..;,F となる.
(4)水準組合せの差の推定
表 8.8より最適条件は 23BA であった.収率を 2番目に高める条件は 13BA である.こ
の組合せ条件下での母平均の差を推定すると式(8.56)より,
459023232323 .xBxAxˆbabaBAˆ
118513131313 .xBxAxˆbabaBAˆ
点推定値: 3451323 .BAˆBAˆˆ
信頼率 95%信頼限界は式(8.57)(8.58)より
12
111
1
lrn
, 12
111
2
lrn
より 6
1
12
2111
21
nnnd
950
739394345
918256
11102345
1050
.
...
...Vn
.,tˆˆ
ˆ'E
d
'E
L
U
となる.
【参考1】データの構造式による平均値の期待値と分散について
ijijjiij abbax
r,N R
2
0
~
r,Nij
2
0
~
iji
k
k
ijki
k
k
k
k
k
ijk
k
k
i
k
k
k
k
k
r
k
ijkij
ararEr
aEr
xr
ExE
11
1111
1
1
1
1
rr
rr
rr
Varr
Varr
aVarr
xr
VarxVar
R
R
k
k
ijk
k
k
k
k
k
ijk
k
k
i
k
k
k
k
k
r
k
ijkij
22
2
2
2
21
21
2
11112
1
1111
1
1
( 8.61 )
( 8.62 )
-101-
iii ax
r,N R
2
0
~
mr,Ni
2
0
~
ii
m
j
r
k
ijk
m
j
ij
m
j
ji
r
k
k
m
j
r
k
ijk
m
j
r
k
ij
m
j
r
k
j
m
j
r
k
i
m
j
r
k
k
m
j
r
k
m
j
r
k
ijki
a
abrbrmrammrEmr
abbaEmr
xmr
ExE
1
1
1
1 1111
1 11 11 11 11 11 1
1 1
mrrVar
rmVarm
rm
abrbrmrammrVarrm
abbaVarrm
xmr
ExVar
Rm
j
r
k
ijk
r
k
k
m
j
r
k
ijk
m
j
ij
m
j
ji
r
k
k
m
j
r
k
ijk
m
j
r
k
ij
m
j
r
k
j
m
j
r
k
i
m
j
r
k
k
m
j
r
k
m
j
r
k
ijki
22
1 122
1
2
22
1 111122
1 11 11 11 11 11 122
1 1
11
1
1
1
jjj bx
r,N R
2
0
~
lr,Nj
2
0
~
jj
l
i
r
k
ijk
l
i
ijj
l
i
i
r
k
k
l
i
r
k
ijk
l
i
r
k
ij
l
i
r
k
j
l
i
r
k
i
l
i
r
k
k
l
i
r
k
l
i
r
k
ijkj
b
abrlrbarllrElr
abbaElr
xlr
ExE
1
1
1
1 1111
1 11 11 11 11 11 1
1 1
lrrVar
rlVarl
rl
abbaVarrl
xlr
VarxVar
Rl
i
r
k
ijk
r
k
k
l
i
r
k
ijk
l
i
r
k
ij
l
i
r
k
j
l
i
r
k
i
l
i
r
k
k
l
i
r
k
l
i
r
k
ijkj
22
1 122
1
2
22
1 11 11 11 11 11 122
1 1
11
1
1
kkkx 20 Rk ,N ~
lm,Nk
2
0
~
l
i
m
j
ijkk xlm
ExE1 1
1
( 8.63 )
( 8.64 )
( 8.65 )
( 8.66 )
-102-
kk
l
i
m
j
ijk
l
i
m
j
ij
m
j
j
l
i
ik
l
i
m
j
ijk
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
k
l
i
m
j
abblamlmlmElm
abbaElm
1
1
1 11 111
1 11 11 11 11 11 1
lm
Varml
Varmlml
abbaVarml
xlm
VarxVar
R
l
i
m
j
ijkk
l
i
m
j
ijk
l
i
m
j
ij
l
i
m
j
j
l
i
m
j
i
l
i
m
j
k
l
i
m
j
l
i
m
j
ijkk
22
1 122
22
22
1 11 11 11 11 11 122
1 1
11
1
1
x
r,N R
2
0
~
l m r,N
2
0
~
k
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
m
j
ij
m
j
j
l
i
i
r
k
k
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
m
j
r
k
ij
l
i
m
j
r
k
j
l
i
m
j
r
k
i
l
i
m
j
r
k
k
l
i
m
j
r
k
l
i
m
j
r
k
ijk
abrblramrlmlmrElmr
abb
a
Elmr
xlmr
ExE
1
1
1
1 1 11 1111
1 1 11 1 11 1 1
1 1 11 1 11 1 1
1 1 1
lmrrlmr
rmlrml
rml
Varrml
lmVarrml
abb
a
Varrml
xlmr
VarxVar
RR
l
i
m
j
r
k
ijk
r
k
k
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
m
j
r
k
ij
l
i
m
j
r
k
j
l
i
m
j
r
k
i
l
i
m
j
r
k
k
l
i
m
j
r
k
l
i
m
j
r
k
ijk
222
222
222
222
1 1 1222
1222
1 1 11 1 11 1 1
1 1 11 1 11 1 1
222
1 1 1
11
11
1
1
【参考2】式(8.27)および式(8.42)の展開
ブロック因子が有意で交互作用が無視できる場合の分散の式
データの構造式
iii ax jjj bx x
から,
( 8.67 )
( 8.68 )
( 8.69 )
( 8.70 )
-103-
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
r
k
ipk
m
j
r
k
ojk
r
k
k
po
popopo
lmrlrmrVar
rVar
VarVar
VarxxxVarBAˆVar
1 1 11 11 11
1111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojkr
k
k
lmrlrmrlmr
lmrlrlmrmrVar
rVar
11 1 1
1 11 1
1 1111
1111
1
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
k
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
k
Varrml
mlVar
rml
Varrml
mVar
rml
lVar
r
lmr
mlVar
lmrVar
lmr
mVar
lmr
lVar
rVar
1222
2
1 1 1222
1 1222
2
1 1222
2
12
11 1 1
1 11 11
11
111
11
111
22
2
22
2
2
22
22
22
2
2
22
22
22
2
2
222
22
222
2
222
22
222
22
2
1
1
11
1
11
11
111
1
11
111
lmr
ml
r
rml
mllm
r
rml
mlml
rml
mllm
r
rml
mlml
rml
ml
r
rrml
mlmlr
rml
lrrml
mmr
rml
lr
rBAˆVar
R
R
R
R
Rpo
よって, 22 1
ˆlmr
ml
r
ˆBAˆarV R
po
となる. 2
R は式(8.33)より
EBA
REBAR
EREER
po
VN
VN
VVlmn
Vlmr
mlV
lmnV
lmr
ml
lm
VV
rBAˆarV
11
2111
となる.
【参考3】式(8.31)および式(8.47)の展開
ブロック因子,交互作用が無視できる場合の分散の式
データの構造式
iii ax jjj bx x
から,式(8.71)を参考に,
( 8.72 )
( 8.71 )
-104-
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
r
k
ipk
m
j
r
k
ojk
popopo
lmrlrmrVar
VarxxxVarBAˆVar
1 1 11 11 1
111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
lmrlrmr
lmrlmrlrlmrmrVar
1
1 1 11 11 1
111
11111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
Varrml
mlVar
rml
Varrml
mVar
rml
l
lmr
mlVar
lmrVar
lmr
mVar
lmr
lVar
1222
2
1 1 1222
1 1222
2
1 1222
2
1
1 1 11 11 1
11
11
1
111
2
2
22
2
22
22
22
2
22
22
22
2
222
22
222
2
222
22
222
2
1
1
11
1
11
11
111
1
11
11
lmr
ml
rml
mllm
rml
mlml
rml
mllm
rml
mlml
rml
ml
rrml
mlmlr
rml
lrrml
mmr
rml
lBAˆVar po
よって, 21 ˆ
lmr
mlBAˆarV po
となる.
'E
BA'E
BA
'E'Epo
VN
Vlmn
Vlmr
mlV
lmr
mlBAˆarV
11
1111
となる.
( 8.73 )
( 8.74 )
-105-
第8章 Excel演習問題
【問題 8-1】
ある樹脂工業気(株)では,プラスチック製品の成形を行っているが,このほどプラスチッ
クの添加剤が開発され,これを用いると成形品の強度が著しく向上することがわかった.成
形品の強度は,成形時の加熱温度とこの添加剤の添加量に影響を受けることがわかってい
るので,工場での操業条件を設定するために多数の原料ロット( R )をランダムに 4ロット抽
出し,加熱温度( A )を 4水準,添加剤の添加量( B )を 2水準取り上げ,組合せ 8回のランダ
ム実験をロットごとに総数 32回の実験を実施した.
実験後,成形品の破壊強度を測定した結果,表 8.1.1のデータを得た.ただし,データは
数値変換し単位は省略してある.特性値は大きいほど望ましい.
表 8-1.1 強度のデータ表(単位省略)
ブロック因子 因子 1A 2A 3A 4A
1R 1B 3 11 18 7
2B 9 17 30 13
2R 1B 5 14 21 11
2B 15 21 28 17
3R 1B 9 20 25 16
2B 16 28 29 19
4R 1B 7 19 24 21
2B 10 27 28 22
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因の効果について検討せよ.
(2)最適と思われる条件の母平均の点推定値と信頼率 95%信頼限界を求めよ.
(3)最適条件と 11BA 条件との母平均の差の点推定値と信頼率 95%信頼限界を求めよ.
(4)ロット間変動を点推定せよ.
-106-
第9章 分割法(A1次,B2次による実験)
実験の方法には,取り上げた因子(繰返しも含めて)の全組合せを完全にランダマイズす
る方法や,乱塊法のようにブロック因子(または反復,変量:再現性がない)を考え効率よ
く取り上げた因子の効果を把握するランダマイズの方法を述べた.
分割法とは,ある因子の水準の設定に大幅な時間が費やされ水準変更に困難性が伴う場
合がある.このような場合にランダマイズを分割して計画される方法である.本章では 2 因
子を取り上げた二元配置法による実験の計画および解析法について述べる.
9.1 分割法による実験の計画とは
因子 A (3 水準),B (4 水準)を取り上げ特性への影響を向上させる操業条件を求めたいと
き,通常は,二元配置法による実験の計画が企画され全実験回数 12 回のランダム化を行い
実験が行われる.ここで次のような実験法を考える.
1)因子 A, B の全組合せの実験のランダム化が可能で計画ができる場合
一般には,繰返しのない二元配置法による実験として計画され,データの構造式は,
ijjiij bax
となり第 4 章による解析が適用される.全実験回数 12 回の実験となる.
2)因子 A, B の交互作用 BA の影響も検出できるランダム化が可能な実験の場合
a)交互作用の検出には,式(9.1)では交互作用が誤差と交絡しているため,通常は繰返し 2
回以上を持つ二元配置法による実験として計画される.データの構造式は,
ijkijjiijk abbax
となり第 5 章による解析が適用される.最小実験回数 24 回の実験となる.
b)または,ブロック因子 R を導入し1)の実験を 2 回以上反復する場合および入荷する
原料等のロット間変動の把握や,日間変動等も無視できない場合には再現性のない変
量因子 R を利用した実験として計画される.データの構造式は,
ijkijjikijk abbax
となり第 8 章による解析が適用される.最小実験回数 24 回の実験となる.
3)因子 A,B の全組合せの実験のランダム化とは,実験の設定自体も初期化し,やり直
すことを意味しているので,例えば,因子 Aの水準変更が困難であるとする.まず因子
Aの水準をランダムに決め,次にその水準で因子B の全水準をランダムに行う実験を1)
に基づき全 12回の実験を行い交互作用 BA の影響も検出したいときどのように考える
べきであろうか?上記1)2)の因子 A,B の全組合せの実験のランダム化の方法とは
大きく異なる.この実験の方法が分割法と呼ばれている.
分割法による二元配置実験とは,表 9.1 に示すようにまず因子 Aについてランダムに
設定(例えば 2A ),その水準で因子 B についてランダム化(例えば 2413 BBBB )
を実施し実験する方法である.分割法では取り上げた因子 A,B についてランダム化が
この場合 2 段階行われているのが特徴であり,また,実験による誤差は,1 段階目の因子
Aのランダム化により発生する誤差を 1 次誤差( 1 ),因子 Aを 1 次要因,2 段階目の
表 9.1 分割法実験のランダム化(1) 表 9.2 分割法実験のランダム化(2)
因子 1A 2A 3A 因
子
1R 2R
1B ○4 ○2 ○1 1A 2A 3A
1A 2A 3A
2B ○2 ○4 ○3 1B ○2 ○3 ○3 ○1 ○4 ○1
3B ○1 ○1 ○2 2B ○1 ○4 ○2 ○3 ○2 ○2
4B ○3 ○3 ○4
3B ○4 ○1 ○4 ○2 ○3 ○4
4B ○3 ○2 ○1 ○4 ○1 ○3
( 9.1 )
( 9.2 )
( 9.3 )
-107-
因子 B のランダム化により発生する誤差を 2 次誤差( 2 ),因子B を 2 次要因と呼び,
この場合,二つの誤差を考慮した解析が行われるのが特徴である.
データの構造式は表 9.1 の場合,
ijjiiij bax 21
および表 9.2 の場合,
ijkijjikikijk abbax 21
と考える.
9.2 実験データとデータの構造式
因子 A( l水準)を 1 次因子,因子B (m水準)を 2 次因子とする実験の計画で,これ
を反復因子(ブロック因子)R( r 回)総実験回数 lmr 回の実験が実施され,特性値の測定
データ ijkx が得られたときデータ表は表 9.3 となる.
表 9.3 分割法( A 1 次,B 2 次,反復 r 回)を利用した
二元配置法による実験データ表
1R rR
1A 2A lA 1A 2A lA 合計 平均値
1B 111x 211x 11lx rx11 rx21 rlx 1 1T 1x
2B 121x 221x 21lx rx12 rx22 rlx 2 2T 2x
ijkx ijkx
mB 11mx 12mx 1lmx mrx1 mrx2 lmrx mT mx
合計 1T rT T
平均値 1x rx x
また,因子 R と因子 Aおよび因子 と因子 B のデータの二元表を作成しておくと,それぞ
れの平方和を計算するときには便利である.データの二元表を表 9.4 および表 9.5 に示す.
表 9.4 因子R と因子 Aの実験データの二元表
1R 2R rR 合計 平均値
1A 11T 21T rT 1 1T 1x
2A 12T 22T rT 2 2T 2x
kiT
lA 1lT 2lT rlT lT lx
合計 1T 2T rT T
平均値 1x 1x rx x
表 9.5 因子 と因子B の実験データの二元表
1A 2A lA 合計 平均値
1B 11T 21T 1lT 1T 1x
2B 12T 22T 2lT 2T 2x
ijT
mB mT1 mT2 lmT mT mx
合計 1T 2T lT T
平均値 1x 2x lx x
表 9.3 の実験において反復を行わない実験では,データの構造式が式(9.4)となり因子 Aの
効果は添字からわかるように 1 次誤差と交絡しており検出することができない.交互作用
A
A
( 9.4 )
( 9.5 )
-108-
を検出するためには反復実験および繰返し実験が必要となる.
反復を利用した分割法( A 1 次,B 2 次)による二元配置実験のデータの構造式は,
ijkijjikikijk abbax 21
li ,,2,1 mj ,,2,1 r,,,k 21
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 011
m
j
ij
l
i
ij abab
20 Rk ,N ~ 2
11 0 ,Nik~ 2
22 0 ,Nijk~
で表され,
ijijjiiij abbax 21
rN R
2
,0
~
r,Ni
2
1
1 0
~
r,Nij
2
2
2 0
~
iiii ax 21
rN R
2
,0
~
r,Ni
2
1
1 0
~
mr,Ni
2
2
2 0
~
jjj bx 21
rN R
2
,0
~
lr,N
2
1
1 0
~
lr,Nj
2
2
2 0
~
kkkkx 21
20 Rk ,N ~
l,Nk
2
1
1 0
~
lm,Nk
2
2
2 0
~
21 x
r,N R
2
0
~
lr,N
2
1
1 0
~
lmr,N
2
2
2 0
~
が導ける.
9.3 平方和と自由度
分割法( A 1 次,B 2 次)による二元配置法による実験データの平方和と自由度は,分散分
析の平方和計算の基本式を利用して,実験データの総平均値を,
総平均値
TN
xN
xl
i
m
j
r
k
ijk
11
1 1 1
ただし, lmrN
とおいて,総平方和(総変動)
l
i
m
j
r
k
ijkT xxS1 1 1
2 1 NT
反復間平方和( R 間変動)
l
i
m
j
r
k
kR xxS1 1 1
2 1 rR
A間平方和( A間変動)
l
i
m
j
r
k
iA xxS1 1 1
2 1 lA
RA 間平方和(RA 間変動)
l
i
m
j
r
k
kiRA xxS1 1 1
2 1 lrRA
( 9.7 )
( 9.6 )
( 9.8 )
( 9.10 )
( 9.9 )
( 9.11 )
( 9.12 )
( 9.13 )
( 9.14 )
( 9.15 )
( 9.16 )
-109-
1次誤差 1E の平方和 ARRAE SSSS 1
111 lrARE
B 間平方和( B 間変動)
l
i
m
j
r
k
jB xxS1 1 1
2 1mB
AB 間平方和( AB 間変動)
l
i
m
j
r
k
ijAB xxS1 1 1
2 1 lmAB
交互作用 BA の平方和 BAABBA SSSS
11 mlBABA
2 次誤差 2E の平方和 BABEARTE SSSSSSS
12
BABEARTE 12
で求められる.また,具体的な平方和の計算には,表 9.3,表 9.4 よび表 9.5 を利用して,
修正項 21 T
NCT
総平方和(総変動) CTxSl
i
m
j
r
k
ijkT 1 1 1
2
反復間平方和( R 間変動) CTlm
TS
r
k
kR
1
2
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
l
i
iA
1
2
RA 間平方和(RA 間変動) CTm
TS
l
i
r
k
kiRA
1 1
2
1次誤差 1E の平方和 ARRAE SSSS 1
B 間平方和( B 間変動) CTlr
TS
m
j
j
B
1
2
AB 間平方和( AB 間変動) CTr
TS
l
i
m
j
ij
AB
1 1
2
交互作用 BA の平方和 BAABBA SSSS
2 次誤差 2E の平方和 BABEARTE SSSSSSS 12
と求めることができる.
9.4 分散分析表と検定
分割法( A 1 次, B 2 次)による二元配置法実験の分散分析表を表 9.6 に示す.
要因 R , A, B , BA および 1 次誤差 1E を検定するために分散分析表では,
(1)反復因子を 0 次として
(2)同一次数の交互作用は,その次数の要因となる.
(3)異なった次数の因子間の交互作用は,次数が高い方の因子と同じ次数の要因となる.
の方法を遵守して次数ごとにまとめて作成すればよい.
各要因の検定は,有意水準を %5 とすると,
0 次要因:反復 R の検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 RR :H:H
検定統計量: 10 ER VVF 棄却域: 05010 .;,FF ER
( 9.23 )
( 9.22 )
( 9.24 )
( 9.25 )
( 9.18 )
( 9.19 )
( 9.20 )
( 9.28 )
( 9.29 )
( 9.30 )
( 9.17 )
( 9.21 )
( 9.27 )
( 9.31 )
( 9.26 )
-110-
表 9.6 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
R RS R RV 1ER VV 22
1
2
2 Rlmm
A AS A AV 1EA VV 22
1
2
2 Amrm
1E 1ES 1E 1EV 21 EE VV 2
1
2
2 m
B BS B BV 2EB VV 22
2 Blr
BA BAS BA BAV 2EBA VV 22
2 BAr
2E 2ES 2E 2EV 2
2
T TS T
1 次要因:要因 Aの検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 AA :H:H
検定統計量: 10 EA VVF 棄却域: 05010 .;,FF EA
1 次誤差 1E の検定 仮説: 0 0 2
11
2
10 :H:H
検定統計量: 210 EE VVF 棄却域: 050210 .;,FF EE
2 次要因:要因 B の検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 BB :H:H
検定統計量: 20 EB VVF 棄却域: 05020 .;,FF EB
交互作用 BA の検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 BABA :H:H
検定統計量: 20 EBA VVF 棄却域: 05020 .;,FF EBA
として実施し有意性を判断する.検定の結果,要因が無視できる場合プーリングを実施し分
散分析表を再作成する.プーリングの方法として
(3)まず,1 次誤差 1E が無視できる場合,推定における解析法は第 8 章乱塊法に一致す
る.
(4)要因 R および 1 次誤差 1E が無視できる場合,推定における解析法は第 5 章繰返し
のある二元配置法に一致する.
(5)要因 R および 1 次誤差 1E が無視できない場合について,分割法の特徴でもあり以下
推定法について述べる.
9.5 最適条件の決定と母平均の推定
反復因子は,乱塊法と同様に再現性がなく変動する因子で水準の指定は行わない.表 9.6
に基づき要因 R または 1 次誤差 1E が無視できない場合について推定を行うこととする.
(1)最適条件の決定と母平均の推定
因子 Aの最適水準を oA ,因子 B 最適水準を pB としたときの母平均を推定する.
(a)反復因子 R と 1 次誤差 1E が共に無視できない場合の点推定
(a-1)交互作用が無視できない場合
データの構造式 ijkijjikikijk abbax 21 から,
pooppopo BAxabbaBAˆ ( 9.32 )
-111-
ijijjiiij abbax 21
opopo VarBAˆVar 21
rrrVarVarVar R
opo
2
2
2
12
21
(a-2)交互作用が無視できる場合
データの構造式 ijkjikikijk bax 21 から,
xBxAxˆbabaBAˆpopopopo
ijjiiij bax 21
21
2121
poo
po VarBAˆVar
lmr
ml
rr
VarVarVar
R
poo
2
2
2
12
1
1
(b)反復因子 R は無視できるが,1 次誤差 1E が無視できない場合の点推定
(b-1)交互作用が無視できない場合
データの構造式 ijkijjikiijk abbax 21 から,
pooppopo BAxabbaBAˆ
ijijjiiij abbax 21
opopo VarBAˆVar 21
rrVarVar opo
2
2
2
1
21
(b-2)交互作用が無視できる場合
データの構造式 ijkjikiijk bax 21 から,
xBxAxˆbabaBAˆpopopopo
ijjiiij bax 21
21
2121
poo
po VarBAˆVar
lmr
ml
r
VarVar poo
2
2
2
1
1
1
(2)最適条件における母平均の区間推定
最適水準 poBA での信頼率 95%信頼限界は,上記(1)項で求められた母平均の点推定
値に対して求める.
(a)反復因子 R と 1 次誤差 1E が共に無視できない場合の区間推定
(a-1)交互作用が無視できない場合
信頼限界は,Satterthwaite の等価自由度 * の t分布 050.*,t を用いて,
( 9.33 )
( 9.34 )
( 9.35 )
( 9.36 )
( 9.37 )
( 9.38 )
( 9.39 )
-112-
popo
Lpo
Upo
BAVartBABA
BA
ˆ05.0*,ˆ
ˆ
ˆ
と計算される.
ここで poBAVar の推定値は,反復間変動
2
R ,および 1 次誤差 1E の推定値を分
散分析表 s.m.E から求めると次式となる.
lm
VV ER
R
12ˆ
22
1
22
1
1 1RR
ERlm
lmlm
VVE
m
VVˆ EE 212
1
2
1
2
2
2
1
2
2
21 1 m
mm
VVE
EE
よって, poBAˆVar の推定値は式(9.33)より,
21
2
211
2211
2
2
2
12
111
1
11
EER
E
EEER
EEEER
Rpo
Vlmr
mlV
lmr
lV
lmr
Vm
V
m
V
lm
V
lm
V
r
r
V
m
VV
rlm
VV
r
r
ˆ
r
ˆ
r
ˆBAˆarV
21
1 E
BABE
AR V
NV
NV
N
となる.
または,式(9.32)で点推定に用いる有効反復数を考えると,式(9.43)の右辺第 2 項お
よび第 3 項の係数は田口の有効反復数となる.式(9.43)の有効反復数は,
Nn
A
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1
1
Nn
BAA
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
と求めればよく式(9.43)に一致する.
したがって信頼限界は,
2
2
1
1
111050 E
e
E
e
Rpo
Lpo
Upo
Vn
Vn
VN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ
ただし, lmrN
となる.
また, t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は,
2
2
2
2
1
2
1
1
22
2
2
1
1
111111
E
E
e
E
E
e
R
RE
e
E
e
R Vn
Vn
VN
*
Vn
Vn
VN
より
( 9.40 )
( 9.41 )
( 9.43 )
( 9.42 )
( 9.44 )
( 9.45 )
( 9.46 )
-113-
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
2
1
1
111
111
E
E
e
E
E
e
R
R
E
e
E
e
R
Vn
Vn
VN
Vn
Vn
VN
*
で求められる.等価自由度 * については数値表 1)を参考にすればよい.
(a-2)交互作用が無視できる場合
交互作用 BA を 2 次誤差とプーリングして,信頼限界は,Satterthwaite の等価自由
度 * の t分布 050.*,t を用いて,
popo
Lpo
Upo
BAVartBABA
BA
ˆ05.0*,ˆ
ˆ
ˆ
と計算される.
ここで poBAVar の推定値は,反復間変動
2
R および 1 次誤差 1E の推定値を分
散分析表 s.m.E から式(9.41)および式(9.42)で求めると,
よって, poBAˆVar の推定値は式(9.35)より,
21
222211
2211
2
2
2
12
111
1
111
1
EER
'E'E'E'EEER
'E'EEER
Rpo
Vlmr
mV
lmr
lV
lmr
VmVlVlVlVVVlmr
lmr
Vml
m
VV
rlm
VV
r
lmr
ˆml
r
ˆ
r
ˆBAˆarV
21
1 'E
BE
AR V
NV
NV
N
ただし,
2
2
2
EBA
EBA
'E
SSV
となる.
または,式(9.34)で点推定に用いる有効反復数を考えると,式(9.49)の右辺第 2 項お
よび第 3 項の係数は田口の有効反復数となる.式(9.49)の有効反復数は,
Nn
A
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1
1
Nn
B
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
と求めればよく式(9.49)に一致する.
したがって信頼限界は,
2
2
1
1
111050 'E
e
E
e
Rpo
Lpo
Upo
Vn
Vn
VN
.*,tBAxBAˆ
BAˆ
ただし, lmrN
となる.
( 9.47 )
( 9.48 )
( 9.49 )
( 9.52 )
( 9.50 )
( 9.51 )
-114-
また, t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
2
1
2
1
1
22
2
2
1
1
111111
E
'E
e
E
E
e
R
R'E
e
E
e
R Vn
Vn
VN
*
Vn
Vn
VN
より式(9.47)に基づいて求めればよい.
(b)反復因子 R は無視できるが,1 次誤差 1E が無視できない場合の区間推定
反復因子 R が無視できる場合には,1 次誤差 1E にプーリングする.
(b-1)交互作用が無視できない場合
信頼限界は,Satterthwaite の等価自由度 * の t分布 050.*,t を利用し式(9.36)お
よび式(9.37)を用いて,
popo
Lpo
Upo
BAVartBABA
BA
ˆ05.0*,ˆ
ˆ
ˆ
と計算される.
ここで poBAVar の推定値は,1 次誤差 1E の推定値を分散分析表 s.m.E から求
めると次式となる.
m
VVˆ E'E 212
1
2
1
2
2
2
1
2
2
21 1 m
mm
VVE
E'E
よって, poBAˆVar の推定値は式(9.33)より,
21
21221
2
21221
2
2
2
1
1
111
1
1
E'E
E'EEE'E
E
E'EEE'E
po
Vlmr
mlV
lmr
l
Vmr
mV
mrmVVV
mr
Vm
V
m
V
rr
V
m
VV
r
r
ˆ
r
ˆBAˆarV
21
1 E
BAB'E
A VN
VN
ただし,
1
1
1
ER
ER
'E
SSV
となる.
または,式(9.36)で点推定に用いる有効反復数を考えると,式(9.55)の右辺第 1 項お
よび第 2 項の係数は田口の有効反復数となる.式(9.55)の有効反復数は,
Nn
A
e
11 1 1
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた
Nn
BAB
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
と求めればよく式(9.55)に一致する.したがって信頼限界は,
2
2
1
1
11050 E
e
'E
e
po
Lpo
Upo
Vn
Vn
.*,tBAxBAˆ
BAˆ
( 9.53 )
( 9.55 )
( 9.54 )
( 9.56 )
( 9.57 )
( 9.58 )
-115-
となる.
また, t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は,
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
1
1
1111
E
E
e
'E
'E
e
E
e
'E
e
Vn
Vn
*
Vn
Vn
より
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
1
1
11
11
E
E
e
'E
'E
e
E
e
'E
e
Vn
Vn
Vn
Vn
*
で求められる.等価自由度 * については数値表 1)を参考にすればよい.
(b-2)交互作用が無視できる場合
交互作用 BA を 2 次誤差 2E とプーリングして,信頼限界は,Satterthwaite の等価
自由度 * の t分布 050.*,t を用いて,
popo
Lpo
Upo
BAVartBABA
BA
ˆ05.0*,ˆ
ˆ
ˆ
と計算される.
ここで poBAVar の推定値は,1 次誤差 1E の推定値を分散分析表 s.m.E から求
めると式(9.54)となる.よって, poBAˆVar の推定値は式(9.39)より,
21
22221
221
2
2
2
1
1
1
11
1
'E'E
'E'E'E'E'E
'E'E'E
po
Vlmr
mV
lmr
l
VmVlVlVlVlmr
lmr
Vml
m
VV
r
lmr
ˆml
r
ˆBAˆarV
21
1 'E
B'E
A VN
VN
ただし,
1
1
1
ER
ER
'E
SSV
2
2
2
EBA
EBA
'E
SSV
となる.
または,式(9.38)で点推定に用いる有効反復数を考えると,田口の有効反復数式(9.56)
および式(9.57)を利用する.式(9.61)の有効反復数は,
Nn
A
e
11 1 1
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた
Nn
B
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
( 9.59 )
( 9.61 )
( 9.62 )
( 9.63 )
( 9.60 )
-116-
となり一致する.
したがって信頼限界は,
2
2
1
1
11050 'E
e
'E
e
po
Lpo
Upo
Vn
Vn
.*,tBAxBAˆ
BAˆ
となる.
また, t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
1
1
1111
E
'E
e
'E
'E
e
'E
e
'E
e
Vn
Vn
*
Vn
Vn
より式(9.59)に基づいて求めればよい.
(c)反復因子 R は無視できないが,1 次誤差 1E が無視できる場合
1 次誤差 1E のみが無視できる場合には,分散分析表は表 9.7 となり特性の母平均に
関する方法は第 8 章乱塊法による二元配置実験の 8.5 節に準じて解析すればよい.
表 9.7 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
R RS R RV 2ER VV 22
2 Rlm
A AS A AV 2EA VV 22
2 Amr
B BS B BV 2EB VV 22
2 Blr
BA BAS BA BAV 2EBA VV 22
2 BAr
2E 2ES 2E 2EV 2
2
T TS T
(d)反復因子 R と 1 次誤差 1E が共に無視できる場合
反復因子 R および 1次誤差 1E が無視できる場合には表 9.6の分散分析表は表 9.8と
なり特性の母平均に関する方法は第 5 章繰返しのある二元配置実験の 5.5 節に準じて
解析すればよい.
表 9.8 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F smE ..
A AS A AV 2EA VV 22
2 Amr
B BS B BV 2EB VV 22
2 Blr
BA BAS BA BAV 2EBA VV 22
2 BAr
2E 2ES 2E 2EV 2
2
T TS T
9.6 因子 ABの水準間の組合せによる母平均の差の推定
因子の水準間の母平均の差の推定は,第 8 章 8.5 節(3)項で述べた方法を利用して,1
次誤差が無視できないとき点推定値 のそれぞれの推定量から共通項を除いた有効反
( 9.64 )
-117-
復数を
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1 1
1
ein
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
ein
とおいて,分散 Var の推定は,
1 次誤差に対して 12111
111
eed nnn
2 次誤差に対して 22212
111
eed nnn から
2
2
1
1
11E
d
E
d
Vn
Vn
ˆarV
と考えて求めることができる.
(a)反復因子 R と 1 次誤差 1E が共に無視できない場合の区間推定
(a-1)交互作用 BA が無視できない場合
因子 Aと B の jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,データの構造式式(9.32)よ
り,
ijkijjikikijk abbax 21 から
点推定値を 'j'iji BABA とおいて,共通項はないので式(9.65),式(6.66)より,
jiijjiji BAxabbaBAˆ より
Nn
A
e
11
11
, Nn
BAB
e
21
1
'j'i'j'i'j'i'j'i BAxabbaBAˆ より
Nn
A
e
11
12
, Nn
BAB
e
22
1
よって, Nnnn
A
eed
12
111
12111
Nnnn
BAB
eed
2
111
22212
212
2
1
1
12
11E
BABE
AE
d
E
d
VN
VN
Vn
Vn
ˆarV
となる.よって信頼限界は,
21
12050 E
BABE
A
L
UV
NV
N.*,tˆ
ˆ
ˆ
t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
1
2
1
2
21
11
E
EBAB
E
EA
EBAB
EA V
NV
N
*
VN
VN
( 9.65 )
( 9.66 )
( 9.68 )
)
( 9.69 )
( 9.67 )
-118-
より式(9.59)に基づいて求めればよい.
(a-2)交互作用 BA が無視できる場合
因子 Aと B の jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,データの構造式(9.34)より,
ijkjikikijk bax 21 から
点推定値を 'j'iji BABA とおいて,共通項 x を除いた有効反復数を式(9.65),
式(6.66)より求めると,
xBxAxˆbabaBAˆjijijiji より
Nn
A
e
11
11
, Nn
B
e
21
1
xBxAxˆbabaBAˆ'j'i'j'i'j'i'j'i より
Nn
A
e
11
12
, Nn
B
e
22
1
よって, Nnnn
A
eed
12
111
12111
Nnnn
B
eed
2
111
22212
212
2
1
1
12
11'E
BE
A'E
d
E
d
VN
VN
Vn
Vn
ˆarV
となる.よって信頼限界は,
21
12050 'E
BE
A
L
UV
NV
N.*,tˆ
ˆ
ˆ
t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
1
2
1
2
21
11
'E
'EB
E
EA
'EB
EA V
NV
N
*
VN
VN
より式(9.59)に基づいて求めればよい.
(b)反復因子 R は無視できるが,1 次誤差 1E が無視できない場合の区間推定
(b-1)交互作用 BA が無視できない場合
最適条件 ''ˆˆ
jiji BABA の母平均の差の推定はデータの構造式式(9.36)より
ijkijjikiijk abbax 21 から
点推定値を ''ˆˆ
jiji BABA とおいて,共通項はないので式(9.65),式(6.66)より,
jiijjiji BAxabbaBA より
Nn
A
e
11
11
, Nn
BAB
e
21
1
''''''''
ˆjijijiji BAxabbaBA より
Nn
A
e
11
12
, Nn
BAB
e
22
1
( 9.70 )
)
( 9.71 )
-119-
よって, Nnnn
A
eed
12
111
12111
Nnnn
BAB
eed
2
111
22212
212
2
1
1
12
11E
BABE
AE
d
E
d
VN
VN
Vn
Vn
ˆarV
となる.よって信頼限界は式(9.69)に基づいて求めればよい.
(b-2)交互作用 BA が無視できる場合
最適条件 ''ˆˆ
jiji BABA の母平均の差の推定はデータの構造式式(9.38)より,
ijkjikiijk bax 21 から
点推定値を 'j'iji BABA とおいて,共通項 x を除いた有効反復数を式(9.65),
式(6.66)より求めると,
xBxAxˆbabaBAˆjijijiji
Nn
A
e
11
11
, Nn
B
e
21
1
xBxAxˆbabaBAˆ'j'i'j'i'j'i'j'i
Nn
A
e
11
12
, Nn
B
e
22
1
Nnnn
A
eed
12
111
12111
, Nnnn
B
eed
2
111
22212
212
2
1
1
12
11'E
B'E
A'E
d
'E
d
VN
VN
Vn
Vn
ˆarV
となる.よって信頼限界は式(9.71)に基づいて求めればよい.
(c)反復因子 R は無視できないが,1 次誤差 1E が無視できる場合の区間推定
第 9.5 節(2)(c)項に準じて解析すればよい.
(d)反復因子と 1 次誤差 1E が共に無視できる場合の区間推定
第 9.5 節(2)(d)項に準じて解析すればよい.
9.7 例題
ある製鋼(株)では,磁石鋼の磁性を高めるため溶解温度と配合成分量について検討するこ
とになった.因子と水準については,溶解温度 Aを 3 水準,配合成分量B を 3 水準とした
実験は,溶解温度については温度の均一性を保つため因子 Aをランダムに順序で設定し,
配合成分量の異なる 3 種類の試料をランダムにつくり一定の熱処理後磁性を測定した.こ
の一連の実験を 2 回反復(因子R )した.表 9.9 にデータ表を示す.データは数値変換してあ
り磁性は高いほど望ましい.
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で反復間と因子 A, B について効果を検定せよ.
(2)特性値が最大となる最適条件を定め,その条件における母平均の点推定値と信頼率
95%信頼限界を求めよ.
( 9.73 )
)
( 9.72 )
)
-120-
(3)反復間変動を推定せよ.
本実験は,まず,温度の均一性を保持するためにランダムに因子 Aの水準を定め,その中
で配合成分量因子 B の水準をランダムにしており,2 段階のランダム化による分割実験で
ある.この場合データの構造式は式(9.4)となり因子 Aの効果は 1 次誤差と交絡し,交互作
用 BA の効果は 2 次誤差と交絡し検出できない.一連の実験を再度実施(反復計 2 回)す
ることにより全ての要因の効果が把握できるようにした因子 Aを 1 次要因,因子B を 2 次
要因とした二元配置法による分割実験(分割法)である.
また,解析に当たっては,因子 R と因子 Aおよび因子 と因子B のデータの二元表を作
成しておくと,それぞれの平方和を計算するときには便利である.データの二元表を表 9.10
および表 9.11 に示す.
(1)分散分析による要因の検定
手順 1.データの構造
ijkijjikikijk abbax 21 ( 321 ,,i 321 ,,j 21,k )
ただし, 03
1
i
ia 03
1
j
jb 03
1
3
1
j
ij
i
ij abab
20 Rk ,N ~ 2
11 0 ,Nik~ 2
22 0 ,Nik~
表 9.9 分割法( A 1 次, B 2 次,反復 2 回)を利用した
二元配置法による実験データ表
1R 2R
1A 2A 3A 1A 2A 3A 合計 平均値
1B 7.6 8.6 9.2 7.5 8.2 8.4 49.5 8.25
2B 7.4 8.3 8.3 7.8 7.9 7.7 47.4 7.90
3B 7.2 8.1 8.8 7.6 7.6 8.5 47.8 7.97
合計 73.5 71.2 144.7
平均値 8.17 7.91 8.04
表 9.10 因子R ,Aの実験データの二元表 表 9.11 因子 ,B の実験データの二元表
1R 2R 合計 平均値 1A 2A 3A 合計 平均値
1A 22.2 22.9 45.1 7.52 1B 15.1 16.8 17.6 49.5 8.25
2A 25.0 23.7 48.7 8.12 2B 15.2 16.2 16.0 47.4 7.90
3A 26.3 24.6 50.9 8.48 3B 14.8 15.7 17.3 47.8 7.97
合計 73.5 71.2 144.7 合計 45.1 48.7 50.9 144.7
平均値 8.17 7.91 8.04 平均値 7.52 8.12 8.48 8.04
手順2.平方和と自由度の計算
データの総合計
3
1
3
1
2
1i j k
ijkxT
71445887296867 ......
総平均 048714418
11..T
Nx
修正項 22721163714418
11 22 ..TN
CT
総平方和(総変動) CTxSi j k
ijkT
3
1
3
1
2
1
2
A
A
-121-
9 2 2 842 2 7 2 2 21 1 6 3151168
227211635867296867 22222
...
......
171181 NT
反復間平方和( R 間変動) CTlm
TS
k
kR
2
1
2
227211632715739
1 22 ...
293902272116369104719
1 ...
1121 rR
A間平方和( A間変動) CTmr
TS
i
iA
3
1
2
85782227211635169966
1
227211639507481456
1 222
...
....
2131 lA
RA 間平方和(RA 間変動) CTm
TS
i k
kiRA
3
1
2
1
2
70283227211637935003
1
227211636243260252223
1 2222
...
.....
5161 lrRA
1 次誤差 1E の平方和 ARRAE SSSS 1
5 5 1 108 5 7 822 9 3 907 0 2 83 ....
2211 ARARRAE
B 間平方和( B 間変動) CTlr
TS
j
j
B
3
1
2
41450227211638569816
1
227211638474475496
1 222
...
....
2131 mB
AB 間平方和( AB 間変動) CTr
TS
i j
ij
AB
3
1
3
1
2
227211633178142151152
1 2222 .....
92783227211633123342
1 ...
8191 lmAB
-122-
交互作用 BA の平方和 BAABBA SSSS
65550414508578292783 ....
422 BABAABBA
2 次誤差 2E の平方和 BABEARTE SSSSSSS 12
15000
655504145055110857822939092284
.
......
6422211712 BABEARTE
手順3.分散分析表の作成と要因効果の判定
それぞれ計算した要因の平方和と自由度から表 9.12 の分散分析表を作成する.
表 9.12 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F s.m.E
R 0.2939 1 0.2939 1.07 22
122 93 R
A 2.8578 2 1.4289 5.18 22
122 63 A
1E 0.5511 2 0.2756 11.02 21
22 3
B 0.4145 2 0.2073 8.29 22
2 6 B
BA 0.6555 4 0.1639 6.56 22
2 2 BA
2E 0.1500 6 0.0250 22
T 4.9228 17
51805021 ..;,F , 01905022 ..;,F , 14505062 ..;,F , 53405064 ..;,F
検定の結果は,
0 次要因:反復R の検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 RR :H:H
07127560293900 ...F 050210 .;,FF 有意でない
1 次要因:1 次誤差 1E の検定 仮説: 0 0 2
11
2
10 :H:H
021102500275600 ...F 050620 .;,FF 有意である
2 次要因:交互作用 BA の検定 仮説: 0 0 2
1
2
0 BABA :H:H
56602500163900 ...F 050640 .;,FF 有意である
よって,反復 R を 1 次誤差にプーリングして表 9.13 の分散分析表を作成する.
表 9.13 分散分析表
要因 平方和 自由度 平均平方 0F s.m.E
A 2.8578 2 1.4289 5.07 22
122 63 A
1E 0.8450 3 0.2817 11.27* 21
22 3
B 0.4145 2 0.2073 8.29* 22
2 6 B
BA 0.6555 4 0.1639 6.59* 22
2 2 BA
2E 0.1500 6 0.0250 22
T 4.9228 17
55905032 ..;,F , 26405063 ..;,F , 14505062 ..;,F , 53405064 ..;,F
プーリングの検定の結果から要因 Aは有意とならず,他要因については有意水準
5%で有意と判定された.要因 Aは無視せず,推定については表 9.13 を利用するこ
とにした.
(2)最適条件の決定と母平均の推定
-123-
手順 4.最適条件の決定
プーリング後の表 9.13 に基づく特性値を高める最適条件については,交互作用
BA は無視できないので表 9.11 より平均値の高い水準を設定することになる.最適
水準は 13BA となる.よって最適条件での母平均を推定するためのデータの構造式を,
ijkijjikiijk abbax 21 ( 321 ,,i 321 ,,j 21,k )
ただし, 01
l
i
ia 01
m
j
jb 011
m
j
ij
l
i
ij abab
2
11 0 ,Nik~ 2
22 0 ,Nik~
として考えればよい.
手順 5.最適条件における母平均の点推定
最適条件 13BA における母平均の点推定値 13BA は表 9.11 より,
8082
6173113311313 .
.xBAxabbaBAˆ
となる.
手順 6.最適条件における母平均の信頼率 95%区間推定
最適条件 13BA における母平均の信頼限界は,第 9.5 節(2)(b)(b-1)項を利用すると信
頼限界は式(9.53)より
2113
13
13 1050 E'E
L
UV
N
mlV
N
l.*,tBAˆ
BAˆ
BAˆ
となる.また,田口の有効反復数を式(9.56)および式(9.57)より求めて,
6
1
18
311 1 1
1
Nn
A
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた
3
1
18
6 2 1
2
Nn
BAB
e
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた
2
2
1
1
13
13
13 11050 E
e
'E
eL
UV
nV
n.*,tBAx
BAˆ
BAˆ
としてもよい.式(9.74)および式(9.75)における Satterthwaite の等価自由度 * は,
0942418150
9902240
6
0250023
3
281703
0250023281703
1
12
2
2
2
2
1
2
1
2
21
..
.
..
..
VmllV
VmllV*
E
E
'E
'E
E'E
6
025003
1
3
281706
1
025003
128170
6
1
11
11
22
2
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
1
1
..
..
Vn
Vn
Vn
Vn
*
E
E
e
'E
'E
e
E
e
'E
e
094000746340
003056250 .
.
.
( 9.75 )
( 9.74 )
-124-
と一致して,等価自由度 094.* をもつ t分布の 050094 .,.t は,線型補間により
77620504 ..,t , 57120505 ..,t より,
758257120907762910
050509005040901050094050
.....
.,t..,t..,.t.*,t
と求められる.
したがって信頼限界は式(9.74)より,
158
459650808
025002328170318
17582808
1050 2113
13
13
.
...
....
VN
mlV
N
l.*,tBAx
BAˆ
BAˆE'E
L
U
または式(9.75)より,
158
459650808
025003
128170
6
17582808
11050 2
2
1
1
13
13
13
.
...
....
Vn
Vn
.*,tBAxBAˆ
BAˆE
e
'E
eL
U
となる.
(3)反復間変動2
R の推定
結果的に表 9.13 の分散分析表により無視しているが,表 9.12 の分散分析表を利用する
と式(9.41)より,
212 04509000203309
2756029390..
..
lm
VVˆ 'ER
R
信頼率 95%信頼限界は Anderson-Bancroft の方法は第 8 章式(8.60)より,
2
R の信頼上限:
29390
27560
975021
1
9
29390
21
1 1
1 .
.
.;,F
.
V
V
;,Flm
V
R
'E
'ER
R
21086509742629390
275600800032660 ..
.
...
2
R の信頼下限:
29390
27560
025021
1
9
29390
2
1 1
1 .
.
.;,F
.
V
V
;,Flm
V
R
'E
'ER
R
-
29390
27560
538
1032660
.
.
.. (考えない)
となる.
-125-
(4)母平均の差の推定【蛇足】
例えば,最適条件 13BA と2番目に特性値を高くする条件 33BA との母平均の差の推定は,
点推定値は 3313 BABA とおいて,
13311313 BAxabbaBAˆ より
6
1
18
311
1
Nn
A
e
3
1
18
61
2
Nn
BAB
e
0 5 5 2 800 2 5 003
12 8 1 70
6
1112
2
1
1
13 ...Vn
Vn
BAˆarV E
e
'E
e
33333333 BAxabbaBAˆ より
6
1
18
311
1
Nn
A
e
3
1
18
61
2
Nn
BAB
e
0 5 5 2 800 2 5 003
12 8 1 70
6
1112
2
1
1
33 ...Vn
Vn
BAˆarV E
e
'E
e
1 1 0 5 600 2 5 003
12 8 1 70
6
12
112 2
2
1
1
...
Vn
Vn
ˆa rV E
e
'E
e
となる. t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
094
6
025003
1
3
281706
1
025003
128170
6
1
11
11
22
2
2
2
2
2
1
2
1
1
2
2
2
1
1.
..
..
Vn
Vn
Vn
Vn
*
E
E
e
'E
'E
e
E
e
'E
e
より 7582050 ..*,t を用いて信頼限界は,
1502
317
2
61733133313 .
..BAxBAxBAˆBAˆˆ
2
2
1'
1
11205.0*,ˆ
ˆ
ˆE
e
E
eL
UV
nV
nt
50.0
80.0 65.015.00250.0
3
12817.0
6
12758.215.0
となり 13BA , 33BA 間の母平均に違いは認められない.
9.8 分割法の要点の整理
実験の計画
取り上げた因子の水準変更が困難である場合に,まずその因子の水準をランダムに
決め,次に別の因子の全水準でランダムに行う実験など,因子の組み合わせでランダ
ム化が段階的に行われる実験の計画である.
-126-
分散分析と検定
分散分析表の作成では,ランダム化の段階ごとに 0 次要因,1 次要因,2 次要因,
…と実験で付随する 1 次誤差,2 次誤差,…も含めて分散分析表を作成する.
(1)反復は「0 次要因」と考える.
(2)1 次因子の主効果は「1 次要因」,2 次因子の主効果は「2 次要因」,…と考える.
(3)2 因子交互作用の現れ方
0 次因子×1 次因子=「1 次要因」
1 次因子×1 次因子=「1 次要因」
1 次因子×2 次因子=「2 次要因」
2 次因子×2 次因子=「2 次要因」
1 次因子×3 次因子=「3 次要因」,…
一般的に
低次因子×高次因子=「高次要因」
と考える.
検定では,1 次要因,2 次要因,…をそれぞれ 1 次誤差,2 次誤差,…で検定する.
各次の誤差の検定は,1 次誤差を 2 次誤差,2 次誤差を 3 次誤差,…で検定し無視で
きる場合高次の誤差にプーリングする.
母平均に関する推定
(1)反復 R が無視できない場合
ijkijjikikijk abbax 21
jijiL,Uji BAˆarV.*,tBAˆBA 050
22
11
111E
eE
eRji V
nV
nV
NBAˆarV
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1
1
en
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
等価自由度 * は Satterthwaite の方法で求め, t分布の 050.*,t 値は必要に応じ
て線型補間法を利用する.
(2)反復 R が無視できる場合
ijkijjikiijk abbax 21
jijiL,Uji BAˆarV.*,tBAˆBA 050
22
11
11E
e'E
eji V
nV
nBAˆarV
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1 1
1
en
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
等価自由度 * は Satterthwaite の方法で求め, t分布の 050.*,t 値は必要に応じ
て線型補間法を利用する.
(3)反復 R は無視できないが,1 次誤差が無視できる場合
ijkijjikijk abbax 2
母平均に関する方法は第 8 章乱塊法による二元配置実験に準じて解析する.
(4)反復 R と 1 次誤差が無視できる場合
ijkijjiijk abbax 2
母平均に関する方法は第 5 章繰返しのある二元配置実験に準じて解析する.
-127-
母平均の差に関する推定
(1)取り上げた因子が二つの場合
因子の水準間の母平均の差の推定は,1 次誤差が無視できないとき点推定値
のそれぞれの推定量から共通項を除いた有効反復数を
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1 1
1
ein
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
ein
とおいて,分散 Var の推定は,
1 次誤差に対して 12111
111
eed nnn
2 次誤差に対して 22212
111
eed nnn から
22
11
11ˆˆ
Ed
Ed
Vn
Vn
arV
jiLU BAarVt ˆˆ05.0*,ˆˆ,
等価自由度 * は Satterthwaite の方法で求め, t分布の 050.*,t 値は必要に応じ
て線型補間法を利用する.
(2)反復 R は無視できないが,1 次誤差が無視できる場合
ijkijjikijk abbax 2
母平均に関する方法は第 8 章乱塊法による二元配置実験に準じて解析する.
(3)反復 R と 1 次誤差が無視できる場合
ijkijjiijk abbax 2
母平均に関する方法は第 5 章繰返しのある二元配置実験に準じて解析する.
【参考1】式(9.33)および式(9.43)の展開
反復因子,1 次誤差が無視できない場合
交互作用が無視できない場合の分散の式
データの構造式
ijkijjikikijk abbax 21
ijijjiiij abbax 21
から,
opo
opooppo
VarVarVar
VarxVarBAˆVar
21
21
r
k
opk
r
k
ok
r
k
kr
Varr
Varr
Var1
2
1
1
1
111
222
212
2
2
111 r
rr
rr
rR
22
21
21 R
r
よって,
lm
VVˆ ER
R
12
,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
2
2111E
EEERpo V
m
VV
lm
VV
rBAˆarV
-128-
21
21
2211
1
111
1
EB
EA
R
EER
EEEER
Vmr
VN
VN
Vlmr
mlV
lmr
lV
lmr
lm
lmVlVlVVV
r
または,
21
21
21
21
1
11111
11111
111
EBAA
EA
R
EER
EER
EERpo
VN
VN
VN
Vlmr
mlmV
lmr
lV
lmr
Vlmr
lmV
lmr
lV
lmr
Vlmr
mlV
lmr
lV
lmrBAˆarV
となる.田口の有効反復数より
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1
1
en
Nn
A
e
1
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
Nn
BAB
e
2
1
である.また,データの構造式から ijpo xBA となることから,式(9.7)を用いて,
rrr,abbaNBAˆ R
oppopo
22
21
2 ~
となり,
lm
VVˆ ER
R
12
,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
21
21
2211
2
211
1
111
1
1
EBAB
EA
R
EER
EEEER
E
EEER
po
VN
VN
VN
Vlmr
mlV
lmr
lV
lmr
lm
lmVlVlVVV
r
Vm
VV
lm
VV
rBAˆarV
と考えてもよい.
【参考2】式(9.35)および式(9.49)の展開
反復因子,1 次誤差が無視できない場合
交互作用が無視できる場合の分散の式
データの構造式
iiii ax 21 jjj bx 21
21 x
から,
212121
poo
popo
Var
xxxVarBAˆVar
-129-
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
r
k
ipk
m
j
r
k
ojk
r
k
ok
r
k
k
poo
lmrlrmrVar
rVar
rVar
VarVarVar
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
1
1
2221
111
11
r
k
ok
r
k
kr
Varr
Var1
1
1
11
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
lmrlrmrlmr
lmrlrlmrmrVar
1
2
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1111
1111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
ok
r
k
k
lmr
mlVar
lmrVar
lmr
mVar
lmr
lVar
rVar
rVar
1
2
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
1
1
1
11
111
m
pjj
r
k
ojk
r
k
ok
r
k
k Varrml
lVar
rVar
r 1 1
2222
2
1
121
2
111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
Varrml
ml
Varrml
Varrml
m
1
2222
2
1 1 1
22221 1
2222
2
1
11
2222
22222
21
2
22222
22222
22222
222222
2212
2
2
11
11
111
1
11
1111
rml
mlml
rml
ml
rr
rrml
mlmlr
rml
lrrml
mmr
rml
lr
rr
rBAˆVar
R
Rpo
2222
22222
21
2 11
1
rml
mlml
rml
mllm
rr
R
22
21
2
2222
21
2
1
1
lmr
ml
rr
rml
mllm
rr
R
R
よって,
lm
VVˆ ER
R
12
,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
2
211 111E
EEERpo V
lmr
ml
m
VV
rlm
VV
rBAˆarV
-130-
21
21
2211
222211
1
111
1
1
EB
EA
R
EER
EEEER
EEEEEER
VN
VN
VN
VmVlVlmr
VmVlVVVlmr
VmVlVlVlVVVlmr
となる.田口の有効反復数より
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1
1
en
Nn
A
e
1
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
Nn
B
e
2
1
である.また,データの構造式から xxxBAˆpopo となることから,式(9.8) (9.9)
(9.11)を用いて,
mrrr,aNx R
oo
22
21
2 ~
lrlrr,bNx R
pp
22
21
2 ~
lmrlrr,Nx R
22
21
2 ~
22
21
2 111
lmr
ml
rr,baNxxx Rpopo ~
となり,
lm
VVˆ ER
R
12
,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
2
211 111E
EEER
po Vlmr
ml
m
VV
rlm
VV
rBAˆarV
21
21
222211
1
111
1
EB
EA
R
EER
EEEEEER
VN
VN
VN
VmVlVlmn
VmVlVlVlVVVlmn
と考えてもよい.
【参考3】式(9.37)および式(9.55)の展開
反復因子が無視できるが,1 次誤差は無視できない場合
交互作用が無視できない場合の分散の式
データの構造式
ijkijjikiijk abbax 21
ijijjiiij abbax 21
から,
r
k
opk
r
k
oj
opo
opooppo
rVar
rVar
VarVar
VarxVarBAˆVar
1
2
1
1
21
21
11
-131-
22
21
222
212
111
rr
rr
r
よって,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
21
221
2
21
11
11
EE
EEE
E
EE
po
Vmr
mV
mr
m
mVlVV
rV
m
VV
rBAˆarV
21 EBAB
EA V
NV
N
または,
21
11EEpo V
mr
mV
mrBAˆarV
21
111 EE V
lmr
mlV
lmr
l
21
11111 EE V
lmr
lmV
lmr
l
21
21
1
11111
EBAB
EA
EE
VN
VN
Vlmr
mlmV
lmr
l
となる.田口の有効反復数より
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1 1
1
en
Nn
A
e
11
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
Nn
B
e
2
1
である. また,データの構造式から ijpo xBA となることから, 02 R および式(9.7)を
用いて,
rr,abbaNBAˆ
oppopo
22
21
~
となり,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
21
21
21
221
2
21
1
11111
1
1
1
EBAB
EA
EE
EE
EEE
E
EE
po
Vmr
VN
Vlmr
mlmV
lmr
l
Vlmr
mlV
lmr
l
lm
lmVlVlV
r
Vm
VV
rBAˆarV
と考えてもよい.
-132-
【参考4】式(9.39)および式(9.61)の展開
反復因子が無視できるが,1 次誤差は無視できない場合
交互作用が無視できる場合の分散の式
データの構造式
iiii ax 21 jjj bx 21
21 x
から,
212121
poo
popo
Var
xxxVarBAˆVar
l
i
m
j
r
k
ijk
l
i
r
k
ipk
m
j
r
k
ojk
r
k
ok
poo
lmrlrmrVar
rVar
VarVar
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
1
2221
1111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
ok
lmrlrmrlmr
lmrlrlmrmrVar
rVar
1
2
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
1
1111
1111
1
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
ok
lmr
mlVar
lmrVar
lmr
mVar
lmr
lVar
rVar
1
2
1 1 1
2
1 1
2
1 1
2
1
1
11
111
l
oii
r
k
ipk
m
pjj
r
k
ojk
r
k
ok Varrml
mVar
rml
lVar
r 1 1
2222
2
1 1
2222
2
1
12
111
r
k
opk
l
oii
m
pjj
r
k
ijk Varrml
mlVar
rml 1
2222
2
1 1 1
2222
11
22222
22222
22222
222222
2212
111
1
11
111
rrml
mlmlr
rml
lrrml
mmr
rml
lr
rBAˆVar po
2222
22222
21 1
111
rml
mlml
rml
ml
r
22
21
2222
21
2222
22222
21
1
1
11
1
lmr
ml
r
rml
mllm
r
rml
mlml
rml
mllm
r
よって,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
-133-
221
22221
2
21
1
1
11
EEE
EEEEE
E
EE
po
VmVlVlmr
VmVlVlVlVlmr
Vlmr
ml
m
VV
rBAˆarV
2121
11
1 E
BE
AEBEA V
NV
NVV
lmr
となる.田口の有効反復数より
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 1 1 1
1
en
Nn
A
e
11
1
総データ数
次要因の自由度の和点推定に用いた 2 1
2
en
Nn
B
e
2
1
である.また,データの構造式から xxxBAˆpopo となることから, 02 R および
式(9.8) (9.9) (9.11)を用いて,
mrr,aNx oo
22
21
~
lrlr,bNx pp
22
21
~
lmrlr,Nx
22
21
~
22
21
11
lmr
ml
r,baNxxx popo ~
となり,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
2
21 11E
EE
po Vlmr
ml
m
VV
rBAˆarV
21
21
21
22221
1
1111
11
1
EB
EA
EE
EE
EEEEE
VN
VN
VmVllmr
VmlVlmr
VmVlVlVlVlmr
と考えてもよい.
【参考5】式(9.68)の展開
反復因子,1 次誤差が無視できない場合
交互作用 BA が無視できない場合
因子 Aと B の jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,式(9.32)および式(9.36)より,
点推定値は 'j'iji BABA とおいて,
'j'iji'j'iji
'j'i'j'iijji
BAxBAxBAˆBAˆ
abbaabbaˆ
信頼率 95%信頼限界は
-134-
ˆarV.*,tˆ
ˆ
ˆ
L
U050
式(9.33)より 'j'i'iijiVarˆVar 2121
'j'iij'ii VarVar 2211
'j'iij'ii VarVarVarVar 2211
22
21
22
rr
式(9.37)より 'j'i'iijiVarˆVar 2121
22
21
2211
2211
22
rr
VarVarVarVar
VarVar
'j'iij'ii
'j'iij'ii
よって, Var の推定値は式(9.42)より,
2212
21
22
21
222
22
EEEE
EEmVVV
mrV
rm
VV
r
ˆr
ˆr
ˆarV
21
112 EE V
mr
mV
mr
または,
21
21
21
111112
12
112
EE
EE
EE
Vlmr
lmV
lmr
l
Vlmr
mlV
lmr
l
Vmr
mV
mrˆarV
21
12 E
BABE
A VN
VN
となる.よって信頼限界は,
21
12050 E
BABE
A
L
UV
NV
N.*,tˆ
ˆ
ˆ
t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
1
2
1
2
21
11
E
EBAB
E
EA
EBAB
EA V
NV
N
*
VN
VN
となる.また jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の点推定値を 'j'iji BAˆBAˆ とおい
て,
rrr,abbaNBAˆ R
ijjiji
22
21
2 ~
'j'i'iijiVarˆVar 2121
'j'i'iijiVar 2121
'j'i'iiji VarVar 2121
-135-
2
221
22
21
1111 ˆ
rˆ
rˆ
rˆ
rˆarV
よって,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
21
21
2121
221221
11111
11111
1111
EE
EE
EEEE
EEEEEE
Vlmr
mlmV
lmr
l
Vlmr
mlmV
lmr
l
Vmr
mV
mrV
mr
mV
mr
r
V
mr
VV
r
V
mr
VVˆarV
となる.田口の有効反復数式(9.65)(9.66)より
jiBA 水準について Nn
A
e
11
11
Nn
BAB
e
21
1
'j'i BA 水準について Nn
A
e
11
12
Nn
BAB
e
22
1
1 次誤差について
Nnnn
A
eed
12111
12111
2 次誤差について
Nnnn
BAB
eed
2111
22212
を求めて,
2
2
1
1
11050 E
d
E
dL
UV
nV
n.*,tˆ
ˆ
ˆ
と考えてもよい.
【参考6】式(9.70)の展開
反復因子,1 次誤差が無視できない場合
交互作用 BA が無視できる場合
因子 Aと B の jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の推定は,式(9.34)および式(9.38)より,
点推定値は 'j'iji BABA とおいて,
xBxAxˆbabaBAˆjijijiji
xBxAxˆbabaBAˆ'j'i'j'i'j'i'j'i
より
xBxAxxBxAx
BAˆBAˆbabaˆ
'j'iji
'j'iji'j'iji
信頼率 95%信頼限界は
ˆarV.*,tˆ
ˆ
ˆ
L
U050
式(9.35)より 'j'i'iijiVarˆVar 2121
'j'iij'ii VarVar 2211
'j'iij'ii VarVarVarVar 2211
-136-
22
21
122
lmr
ml
r
式(9.39)より 'j'i'iijiVarˆVar 2121
22
21
2211
2211
122
lmr
ml
r
VarVarVarVar
VarVar
'j'iij'ii
'j'iij'ii
よって, Var の推定値は,
22
21
122 ˆ
lmr
mlˆ
rˆarV
22221
221
12
112
'E'E'E'EE
'E'EE
VmVlVlVlVlmr
lmr
Vml
m
VV
r
21
12 'EE V
lmr
mV
lmr
l
または,
21
21
1112
12
EE
EE
Vlmr
mV
lmr
l
Vlmr
mV
lmr
lˆarV
21
12 'E
BE
A VN
VN
となる.よって信頼限界は,
21
12050 E
BE
A
L
UV
NV
N.*,tˆ
ˆ
ˆ
t分布 050.*,t における Satterthwaite の等価自由度 * は
2
2
2
1
2
1
2
21
11
E
EB
E
EA
EB
EA V
NV
N
*
VN
VN
となる.また jiBA 水準と 'j'i BA 水準の母平均の差の点推定値を 'j'iji BAˆBAˆ とおい
て,
xBxAxBAˆjiji
xBxAxBAˆ'j'i'j'i
lmr
ml
rr,baNBAˆ R
jiji
22
21
2 1 ~
'j'i'iijiVarˆVar 2121
'j'i'iijiVar 2121
'j'i'iiji VarVar 2121
2
221
22
21
1111 ˆ
lmr
mlˆ
rˆ
lmr
mlˆ
rˆarV
-137-
よって,
m
VVˆ EE 212
1
, 2
22 EVˆ より
2121
2121
221221
111111
1111
11
EEEE
EEEE
EEEEEE
Vlmr
mV
lmr
lV
lmr
mV
lmr
l
Vlmr
mV
mrV
lmr
mV
mr
lmr
Vml
mr
VV
lmr
Vml
mr
VVˆarV
となる.田口の有効反復数式(9.65)(9.66)より
jiBA 水準について Nn
A
e
11
11
Nn
B
e
21
1
'j'i BA 水準について Nn
A
e
11
12
Nn
B
e
22
1
1 次誤差について
Nnnn
A
eed
12111
12111
2 次誤差について
Nnnn
BAB
eed
2111
22212
を求めて,
2
2
1
1
11050 E
d
E
dL
UV
nV
n.*,tˆ
ˆ
ˆ
と考えてもよい.
-138-
第9章 Excel演習問題
【問題 9-1】
ある精工(株)では,新型の加工機の操業条件を確立するために,製造条件 A (4水準)と仕
上げ加工条件 B (4水準)を取り上げ,実験を行うことになった.技術課によるとそれぞれの
因子の水準は従来機の操業条件である 11BA より高めに設定すれば良いこともわかった.
実験は,まず製造条件 4321 A,A,A,A をランダムに設定し半製品ロットを作成し,これをそ
れぞれ 4 等分して仕上げ加工条件 4321 B,B,B,B をランダムに仕上げ加工を実施した.製造条
件と仕上げ加工条件の交互作用 BA も未知であるため一連の 16 回の実験を反復した.総
実験数 32 回の特性を測定し表 9-1.1 のデータを得た.ただし,データは数値変換し単位は
省略してある.特性値は大きいほど望ましい.
表 9-1.1 特性のデータ表(単位省略)
1R 2R
因子 1A 2A 3A 4A 1A 2A 3A
4A
1B 36 40 36 35 34 40 35 32
2B 39 43 37 36 36 43 38 35
3B 42 45 39 39 38 44 38 36
4B 36 42 38 37 36 42 36 33
次の設問に答えよ.
(1)分散分析を行い有意水準 5%で要因の効果について検討せよ.
(2)最適と思われる操業条件の母平均の点推定値と信頼率 95%信頼限界を求めよ.
(3)最適な操業条件と従来機での操業条件 11BA との母平均の差の点推定値と信頼率 95%
信頼限界を求めよ.