DISKREVIEW - 驚OVERSEAS - Tom Vek · diskreview - 驚overseas - diskreview - overseas -...

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DISK REVIEW - OVERSEAS - DISK REVIEW - OVERSEAS - 穏やかなピアノとギターの音色、土に染み込んでいく 水のように清いコーラス・ワーク。なのに何故こんな にも、無性に胸を掻き毟るのだろう。米ハード・ロック・ バンド QUEENS OF THE STONE AGE のベーシスト、 Michael Shuman が中心となって結成されたスリー・ ピース・バンドのデビュー・アルバム。美しく繊細な 不協和音は懐かしくもあり、まだ見ぬ森の奥を感じさ せるような絶妙な不穏感も持ち合わせている。何とも シュールなサイケデリアは非常に高い中毒性があり、 ぼんやりしていると飲みこまれそうになってくる。バ ロックやゴシックを感じさせるオルガンも、純粋なの にどことなく悲しげだ。黄金色に光る西日の中にぽつ りとひとり残されたような、ぬくもりと切なさを醸し 出す。 ( 沖 さやこ ) MINI MANSIONS Mini Mansions ROCK [ Hostess Entertainment] 2011.6.22 ON SALE 文化は国境を越えるとはよく言ったものだ。物理的な距 離からいえば、日本から遥か遠く離れたヨーロッパの空 気に触れるのは生易しいことではない。しかし音楽を媒 介とすれば、たちどころにその空気の匂いや温度を感じ ることができる。ポルトガルのバンド・Norton もまた、 はっきりとした粒でサウンドを形作り、遠くの地にお いてもその感触を擬似体験させてくれる。Two Door Cinema Club よりも色香を滲ませ、Death Cab for Cutie よりも無邪気で口当たりがよい。局所的に沸点を上げ急 激に麻痺させる対照的に、ほろ酔いのようなじんわりと した心地よさで満たす。ダンサブルなサウンドに傾倒す ることのない、バランスの良さが程よく力の抜けた空間 を創り出す。彼ら自身、ワンダーランドな「Japan」を 創り出し、足を踏み入れている。それは、現実非現実 の境をさまよう白昼夢なのかもしれない。(山田 美央) NORTON Layers Of Love United ROCK [ Thistime records] 2011. 6 .15 ON SALE ポーランド、ワルシャワ発のポップ・バンド THE CAR IS ON FIRE の中心人物だった Borys Dejnarowicz が、脱 退後ソロ活動を経て結成したのがこの NEWEST ZEALAND。今作はバンドにとって初のフル・アルバム となる。ポスト・ロックやニュー・ウェイブが、ボサ ノヴァやジャズに姿を変えたとでも言うべきか。お洒 落なストリート・カフェが良く似合うモダンな空気感。 呟くようなヴォーカルは、軽やかな小鳥の囀りのよう に穏やかだ。と思えば、不協和音や緊張感のあるウォー ル・オブ・サウンド色の強いギターはこちらに襲い掛 かるように耳に入り込んでくる。心地良さの中にそこ はかとなく狂気を感じたのも事実だ。心をざわめかせ る、ちょっと不思議なポップ・サウンド。(沖 さやこ) NEWEST ZEALAND Newest Zealand POP [ THISTIME RECORDS] NOW ON SALE 天才メロディメーカーと称される Parker Sprout を 中心とする6人組バンドが今作で日本デビュー。フ ロントマンの Parker Sprout は ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI に類まれなメロディセンスを見 出された。そんな経緯もあって Ariel Pink のような 心地良いローファイサウンドをしっかり受け継いで いる。60 年代サイケデリックポップの香りを色濃 く残したゆるゆるな音の断片が脳内を駆け巡り、絶 妙なストレンジさが病みつきに。じわりじわりと体 を蝕んでいくように時間をかけて脳内を侵食されて いく感覚は愛おしい過去の記憶を画質の荒い映像で 見ているみたいだ。力を抜いて気の合う仲間とビー ルでもどう? って気分になるこの1枚。白昼夢のよ うな至福な時間に酔いしれたい。(花塚 寿美礼) VELVET DAVENPORT Warmy Girls POP [ MOORWORKS] NOW ON SALE スペイン・ヴァルセロナを拠点に活動する注目ユニッ ト。ギターとドラムの構成だけれど時にはギターの彼 がドラムを叩いたり、トランペットを吹いたり !? とに かく自由すぎる。ギターカッティングがキレキレ、声 もひとつの楽器のように扱い、奇想天外な音を作り出 していく。ノイズまじりのごりごりなロックが来た! と思ったら次なる曲ではムーディにと思ったら急な展開 があったり、ラジオ番組風なトラックもあったり……。 なんじゃコレ !? と思っているうちに気付くと虜になっ ている、なんともいえない中毒性。ポスト BATTLES と 呼び声の高い彼ら。とんでもない人達、出てきちゃっ た、そんな雰囲気がムンムン。ライヴはもっとカオス ティック!! この人達、面白すぎるやろ!(花塚 寿美礼) ZA Megaflow ROCK [ MOORWORKS] NOW ON SALE ロンドン出身の奇才 Tom Vek より、デビュー・アルバ ム『We Have Sound』から実に 6 年ぶりとなるニュー・ アルバムが到着!当時は Beck がツアーの SE で使用した り、The Rapture や LCD Soundsystem と比較されるなど、 業界内での注目度が高かった彼。当時の映像を見直して みたのだが、全て独学で学んだマルチ・プレイヤーとい うだけあり、引きこもって一人遊びばかりしていた少年 が、成長し青年となり、そのまま世間に出てきてしまっ たような、ちぐはぐな世界観は今尚新鮮であった。そこ らへんも、デビュー時はローファイを通り越してへっぽ こだった Beck とかぶるのだが、最新作は、その完全独 自主義を貫いた一人遊びの延長戦上のような世界はその ままに、きちんと 2011 年版に整理されスタイリッシュ になっていることに驚くばかり。ちゃんと時代にフィッ トしてます。( 島根 希実 ) Tom Vek Leisure Seizure ROCK [ Pachinko Records] 2011.6.7 ON SALE 本国ニュージーランドの Music Awards では Top New Act を受賞したバンド BETCHADUPA のフロントマン Liam Finn のソロ最新作がこちら。冒頭曲「Neurotic World」の静かで流麗な始まり、続く「Don't Even Know Your Name」で徐々にグルーヴィに波打ち、はじ け飛んでいく展開は思わず体を揺らしてしまったが、そ のまま少しずつ呼吸を整えるように更にテンポを落と し、物憂げな表情へと転じていくのがとてもセクシー。 そして、囁きが幾重にも重なり合ったような、全てがコー ラス・ラインのごとく耳に優しいヴォーカルが、そのま まふわりと抱き上げ、ベッドルームへと運んでいく。そ れはもう、メロディは勿論のこと、全ての音の主軸にも なる、音響的にも作用するヴォーカルの美しさ故の甘い 展開であること言うまでもない。( 島根 希実 ) Liam Finn Fomo ROCK [ Pachinko Records] 2011.6.20 ON SALE THE VICKERS ROCK イタリア発、06 年結成の 4 人組 THE VICKERS の、2nd アルバムにして日本デ ビュー作。GIRLS を聴いた時のような瑞々しいときめきを思い起こさせるの は、きっと全ての音がセンチメンタルを帯びた輝きに満ちているからだ。そ して、その輝きの正体とは、VAMPIRE WEEKEND のようなトロピカルな音が 寄せては返す波のごとく心地良く主張したりと、ちょっぴりサーフ・ロック 寄りな穏やかさと爽やかさの中に、90 年代のロックの衝撃を再び蘇らせたよ うな “やんちゃさ” が全面に迸っているという点にある。膝小僧には絆創膏 をした悪戯坊主が、兄ちゃんの部屋から勝手に持ち 出した THE STROES の CD を聴きながら走り回ってい るような、好奇心旺盛な少年の画が広がってきて、 どうにもむずむずしてくるのだ。( 島根 希実 ) THE VICKERS / Fine For Now [ FLAKE RECORDS] 2011.7.20 ON SALE Alex Turner ROCK Alex Turner / Submarine - OST [ Hostess Entertainment ] 2011.6.1 ON SALE ALBUM 自分の吸っている空気や重力が変わってしまうような出会いは確かに存在す る。映画「Submarine」でも、ひとりの少女との出会いで 15 歳の少年の全て が変わる。同作のサントラである Alex Turner のソロアルバムを耳にし、ま るで恋に落ちるような心の震えを体験した。それは燃え上がるような激しさ ではなく、自分の奥深い部分に身を沈めたような根源的なものだ。くすんだ ウェールズの情景の中、Alex の存在は自然にそこにあるものとして感じられ る。目には見えないほどにささやかな雨のように、心地よく濡らし包み込む。 時に、弾むように無邪気に跳ねて魅せる。わずか20分 という時間の中、とても深い部分で傷を慰撫し、柔ら かくほぐれた心を優しく連れ出してくれるのだ。繊細 な暖かさに泣きたくなってしまう。(山田 美央) いわずと知れた UK の超 人気バンド ARCTIC MONKEYS のフロントマ ン。バンド本隊の活動と 並行して、アークティッ クのライヴDVD『At The Apollo』の監督も務めた Richard Ayoade の初監 督映画『Submarine』の サウンド・トラックを制 作。アークティックの新 作『Suck It And See』 と同日に、初のソロ作品 としてリリース! エッヂの効いたロックで、ヘヴィなビートが炸裂する エレクトロニカ。スリリングな HIPHOP で、哀愁のあ る R&B。それでいてポップ! 近年では JAY-Z のリミッ クスを手掛け、THE PRODIGY の復帰作や RIHANNA の 『R 指定』に共同プロデューサーとして関わり、注目度 が高まるロンドン出身のドラムン・ベース / ダブ・ス テップ・デュオ CHASE & STATUS。2nd アルバムとな る今作では PLAN B、TINIE TEMPAH、WHITE LIES など 多種多様なゲスト・ミュージシャンを招へい、彩り鮮 やかな作品に仕上がった。起用アーティストによって 楽曲アプローチを変え、そのアーティストの持つ個性 は勿論、新たな魅力を引き出す。様々な音色を巧妙に 操るその手腕は、マジシャンさながら。( 沖 さやこ ) CHASE & STATUS No More Idols ELECTRO [ UNIVERSAL INTERNATIONAL] 2011.7.20 ON SALE 2009 年に 1st アルバム『Keep Clear』をリリースした、イタリアを拠点 に活動する 4 人組。John Power (THE LA’S )やJOY FORMIDABLE などのツアーのサポートも務めた注目株。U2 などを手がけた Steven Orchard、STEREOPHONICS などを手がけた Jon Astley がミックスを 担当した 2nd アルバム『Fine For Now』をついにリリース! デビュー・アルバム『GLASVEGAS』から約 3 年振りの リリースとなる 2nd アルバム。デモ録音から完成まで に 1 年を費やしたという意欲作だ。分厚い轟音は今作 も健在。そして以前よりも、より James Allan という 表現者の深層心理に近付く作品でもある。非常に叙情 的かつ官能的なヴォーカルが耳に入るたび、ここまで 踏み込んで良いものかこちらが躊躇してしまう。ダイ レクトに迫り来る情熱が、聴き手の感情をかき乱すほ ど奮い立たせるのは必然だろう。シューゲイズ・ノイ ズは耳に心地良く反響し、極上の眠りも誘うようであ る。彼らの作り出した GLASVEGAS という世界は、グ ラスゴーの青い世界やラスベガスの眠らないパー ティーの空間を逸する、まったくの別次元。だがそこ には揺るぎ無いリアルが存在する。( 沖 さやこ ) GLASVEGAS Euphoric /// Heartbreak\\\ ROCK [ SONY MUSIC JAPAN] 2011. 6 . 8 ON SALE SONIC YOUTH のフロント・マンである Thurston Moore の 3枚目のスタジオ・ソロ・アルバムが到着。 なんと今作は、あの BECK がプロデュース。BECK のプロデュースといえば 09 年の Charlotte Gainsbourg の『Irm』や Jamie Lidell の作品などが 思い浮かぶが、今作はその 2 作にある先鋭的でクー ルな音像とは違い、Thurston Moore が紡ぎ出す歌 をシンプルに暖かく描き出す様なプロダクション。 前作同様に、SONIC YOUTH の轟音サウンドとは違 い、パーソナルで、とても繊細な歌声とメロディ が心地よく響く。大胆に取り入れられたストリン グスも、あの BECK の傑作『Sea Change』を彷彿 とさせるようだ。(遠藤 孝行) Thurston Moore Demolished Thoughts ROCK [ HOSTESS ENTERTAINMENT] NOW ON SALE 一日が終わりを迎え、始まりに切り替わる瞬間はいつだ ろう。夜明けは終わりでもあり、始まりでもある。Miles Kane は、そんな時間や空間の連続性の中に自分自身を見 出している。血が湧き踊るビートとタイトで熟成された サウンドは、密度が濃い。時間軸を思わせる楽曲は、圧 倒的な完成度を誇る一日を記した日記、大きくは Miles Kane 個人の歴史のようでもある。最終的には「Morning Comes」と歌い、終わりから始まりのシフトを予感させる。 歴史の最後に終わりが訪れない、それこそが Miles Kane が仕掛ける “罠” なのだ。オールディーズを踏襲した正 統さの中に見え隠れする、狡猾さと貪欲ささえも心地よ い。THE LAST SHADOW PUPPETS、THE RASCALES、THE LITTLE FLAMES ―― 彼がこれまでに刻んだキャリアは、 みんな忘れてしまえ。純粋培養の美意識の前では、冠言 葉ほど無用なものはない。(山田 美央) Miles Kane Colour Of The Trap ROCK [ SONY MUSIC JAPAN] NOW ON SALE 驚くべきことに、冒頭曲「Dinosaur Sex」は原子力発電所 から漏れ出した放射能の影響で荒れ果てた未来を描い ている。当然、時期的にこの楽曲が福島の原発事故を モチーフにしたものではないが、このリアリティはあ まりにも重く響くだろう。UK 新世代フォーク・シーン の歌姫、EMMY THE GREAT の 2nd アルバム。やはり今 作も純粋に作りたいものを作るという彼女ならでは DIY 精神があり、アルバム制作はファンから制作費を募る ファンド形式で行われた。サウンドはシンプルに、前 作のままフォーキーなトーンで構築し、神話やおとぎ 話を現代に織り交ぜた詩世界が歌われているというが、 上記のエピソードが物語るように、これはぜひとも対 訳を読みながら反芻するように味わってほしい。そし て、あなたの “virtue(美徳) ” を考えてほしい。(伊藤 洋輔) EMMY THE GREAT Virtue ALBUM [ YOSHIMOTO R&C] NOW ON SALE

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DISK REVIEW - OVERSEAS -

DISK REVIEW - OVERSEAS -

穏やかなピアノとギターの音色、土に染み込んでいく水のように清いコーラス・ワーク。なのに何故こんなにも、無性に胸を掻き毟るのだろう。米ハード・ロック・バンド QUEENS OF THE STONE AGE のベーシスト、Michael Shuman が中心となって結成されたスリー・ピース・バンドのデビュー・アルバム。美しく繊細な不協和音は懐かしくもあり、まだ見ぬ森の奥を感じさせるような絶妙な不穏感も持ち合わせている。何ともシュールなサイケデリアは非常に高い中毒性があり、ぼんやりしていると飲みこまれそうになってくる。バロックやゴシックを感じさせるオルガンも、純粋なのにどことなく悲しげだ。黄金色に光る西日の中にぽつりとひとり残されたような、ぬくもりと切なさを醸し出す。 ( 沖 さやこ )

MINI MANSIONS Mini Mansions

ROCK

[Hostess Entertainment]2011.6.22 ON SALE 文化は国境を越えるとはよく言ったものだ。物理的な距

離からいえば、日本から遥か遠く離れたヨーロッパの空気に触れるのは生易しいことではない。しかし音楽を媒介とすれば、たちどころにその空気の匂いや温度を感じることができる。ポルトガルのバンド・Norton もまた、はっきりとした粒でサウンドを形作り、遠くの地においてもその感触を擬似体験させてくれる。Two Door Cinema Club よりも色香を滲ませ、Death Cab for Cutieよりも無邪気で口当たりがよい。局所的に沸点を上げ急激に麻痺させる対照的に、ほろ酔いのようなじんわりとした心地よさで満たす。ダンサブルなサウンドに傾倒することのない、バランスの良さが程よく力の抜けた空間を創り出す。彼ら自身、ワンダーランドな「Japan」を創り出し、足を踏み入れている。それは、現実非現実の境をさまよう白昼夢なのかもしれない。(山田 美央)

NORTON Layers Of Love United

ROCK

[Thistime records]2011.6 .15 ON SALE

ポーランド、ワルシャワ発のポップ・バンド THE CAR IS ON FIRE の中心人物だった Borys Dejnarowicz が、脱退後ソロ活動を経て結成したのがこの NEWEST ZEALAND。今作はバンドにとって初のフル・アルバムとなる。ポスト・ロックやニュー・ウェイブが、ボサノヴァやジャズに姿を変えたとでも言うべきか。お洒落なストリート・カフェが良く似合うモダンな空気感。呟くようなヴォーカルは、軽やかな小鳥の囀りのように穏やかだ。と思えば、不協和音や緊張感のあるウォール・オブ・サウンド色の強いギターはこちらに襲い掛かるように耳に入り込んでくる。心地良さの中にそこはかとなく狂気を感じたのも事実だ。心をざわめかせる、ちょっと不思議なポップ・サウンド。(沖 さやこ)

NEWEST ZEALAND Newest Zealand

POP

[THISTIME RECORDS]NOW ON SALE

天才メロディメーカーと称される Parker Sprout を中心とする6人組バンドが今作で日本デビュー。フロントマンの Parker Sprout は ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI に類まれなメロディセンスを見出された。そんな経緯もあって Ariel Pink のような心地良いローファイサウンドをしっかり受け継いでいる。60 年代サイケデリックポップの香りを色濃く残したゆるゆるな音の断片が脳内を駆け巡り、絶妙なストレンジさが病みつきに。じわりじわりと体を蝕んでいくように時間をかけて脳内を侵食されていく感覚は愛おしい過去の記憶を画質の荒い映像で見ているみたいだ。力を抜いて気の合う仲間とビールでもどう? って気分になるこの1枚。白昼夢のような至福な時間に酔いしれたい。(花塚 寿美礼)

VELVET DAVENPORT Warmy Girls

POP

[MOORWORKS]NOW ON SALE

スペイン・ヴァルセロナを拠点に活動する注目ユニット。ギターとドラムの構成だけれど時にはギターの彼がドラムを叩いたり、トランペットを吹いたり !? とにかく自由すぎる。ギターカッティングがキレキレ、声もひとつの楽器のように扱い、奇想天外な音を作り出していく。ノイズまじりのごりごりなロックが来た! と思ったら次なる曲ではムーディにと思ったら急な展開があったり、ラジオ番組風なトラックもあったり……。なんじゃコレ !? と思っているうちに気付くと虜になっている、なんともいえない中毒性。ポスト BATTLES と呼び声の高い彼ら。とんでもない人達、出てきちゃった、そんな雰囲気がムンムン。ライヴはもっとカオスティック !! この人達、面白すぎるやろ!(花塚 寿美礼)

ZA! Megaflow

ROCK

[MOORWORKS]NOW ON SALE

ロンドン出身の奇才 Tom Vek より、デビュー・アルバム『We Have Sound』から実に 6 年ぶりとなるニュー・アルバムが到着!当時は Beck がツアーの SE で使用したり、The Rapture や LCD Soundsystem と比較されるなど、業界内での注目度が高かった彼。当時の映像を見直してみたのだが、全て独学で学んだマルチ・プレイヤーというだけあり、引きこもって一人遊びばかりしていた少年が、成長し青年となり、そのまま世間に出てきてしまったような、ちぐはぐな世界観は今尚新鮮であった。そこらへんも、デビュー時はローファイを通り越してへっぽこだった Beck とかぶるのだが、最新作は、その完全独自主義を貫いた一人遊びの延長戦上のような世界はそのままに、きちんと 2011 年版に整理されスタイリッシュになっていることに驚くばかり。ちゃんと時代にフィットしてます。( 島根 希実 )

Tom Vek Leisure Seizure

ROCK

[Pachinko Records]2011.6.7 ON SALE

本国ニュージーランドの Music Awards では Top New Act を受賞したバンド BETCHADUPA のフロントマンLiam Finn のソロ最新作がこちら。冒頭曲「Neurotic World」の静かで流麗な始まり、続く「Don't Even Know Your Name」で徐々にグルーヴィに波打ち、はじけ飛んでいく展開は思わず体を揺らしてしまったが、そのまま少しずつ呼吸を整えるように更にテンポを落とし、物憂げな表情へと転じていくのがとてもセクシー。そして、囁きが幾重にも重なり合ったような、全てがコーラス・ラインのごとく耳に優しいヴォーカルが、そのままふわりと抱き上げ、ベッドルームへと運んでいく。それはもう、メロディは勿論のこと、全ての音の主軸にもなる、音響的にも作用するヴォーカルの美しさ故の甘い展開であること言うまでもない。( 島根 希実 )

Liam Finn Fomo

ROCK

[Pachinko Records]2011.6.20 ON SALE

THE VICKERS

ROCK

イタリア発、06 年結成の 4 人組 THE VICKERS の、2nd アルバムにして日本デビュー作。GIRLS を聴いた時のような瑞々しいときめきを思い起こさせるのは、きっと全ての音がセンチメンタルを帯びた輝きに満ちているからだ。そして、その輝きの正体とは、VAMPIRE WEEKEND のようなトロピカルな音が寄せては返す波のごとく心地良く主張したりと、ちょっぴりサーフ・ロック寄りな穏やかさと爽やかさの中に、90 年代のロックの衝撃を再び蘇らせたような “やんちゃさ” が全面に迸っているという点にある。膝小僧には絆創膏をした悪戯坊主が、兄ちゃんの部屋から勝手に持ち出した THE STROES の CD を聴きながら走り回っているような、好奇心旺盛な少年の画が広がってきて、どうにもむずむずしてくるのだ。( 島根 希実 )

THE VICKERS / Fine For Now[ FLAKE RECORDS] 2011.7.20 ON SALE

Alex Turner

ROCK

Alex Turner / Submarine - OST[Hostess Entertainment ] 2011. 6 .1 ON SALE

ALBUM

自分の吸っている空気や重力が変わってしまうような出会いは確かに存在する。映画「Submarine」でも、ひとりの少女との出会いで 15 歳の少年の全てが変わる。同作のサントラである Alex Turner のソロアルバムを耳にし、まるで恋に落ちるような心の震えを体験した。それは燃え上がるような激しさではなく、自分の奥深い部分に身を沈めたような根源的なものだ。くすんだウェールズの情景の中、Alex の存在は自然にそこにあるものとして感じられる。目には見えないほどにささやかな雨のように、心地よく濡らし包み込む。時に、弾むように無邪気に跳ねて魅せる。わずか20分という時間の中、とても深い部分で傷を慰撫し、柔らかくほぐれた心を優しく連れ出してくれるのだ。繊細な暖かさに泣きたくなってしまう。(山田 美央)

いわずと知れた UK の超

人気バンド ARCTIC

MONKEYS のフロントマ

ン。バンド本隊の活動と

並行して、アークティッ

クのライヴDVD『At The

Apollo』の監督も務めた

Richard Ayoade の初監

督映画『Submarine』の

サウンド・トラックを制

作。アークティックの新

作『Suck It And See』

と同日に、初のソロ作品

としてリリース!

エッヂの効いたロックで、ヘヴィなビートが炸裂するエレクトロニカ。スリリングな HIPHOP で、哀愁のある R&B。それでいてポップ! 近年では JAY-Z のリミックスを手掛け、THE PRODIGY の復帰作や RIHANNA の

『R 指定』に共同プロデューサーとして関わり、注目度が高まるロンドン出身のドラムン・ベース / ダブ・ステップ・デュオ CHASE & STATUS。2nd アルバムとなる今作では PLAN B、TINIE TEMPAH、WHITE LIES など多種多様なゲスト・ミュージシャンを招へい、彩り鮮やかな作品に仕上がった。起用アーティストによって楽曲アプローチを変え、そのアーティストの持つ個性は勿論、新たな魅力を引き出す。様々な音色を巧妙に操るその手腕は、マジシャンさながら。( 沖 さやこ )

CHASE & STATUS No More Idols

ELECTRO

[UNIVERSAL INTERNATIONAL]2011.7.20 ON SALE

2009 年に 1st アルバム『Keep Clear』をリリースした、イタリアを拠点に活動する 4 人組。John Power (THE LA’S ) や JOY FORMIDABLEなどのツアーのサポートも務めた注目株。U2 などを手がけた Steven Orchard、STEREOPHONICS などを手がけた Jon Astley がミックスを担当した 2nd アルバム『Fine For Now』をついにリリース!

デビュー・アルバム『GLASVEGAS』から約 3 年振りのリリースとなる 2nd アルバム。デモ録音から完成までに 1 年を費やしたという意欲作だ。分厚い轟音は今作も健在。そして以前よりも、より James Allan という表現者の深層心理に近付く作品でもある。非常に叙情的かつ官能的なヴォーカルが耳に入るたび、ここまで踏み込んで良いものかこちらが躊躇してしまう。ダイレクトに迫り来る情熱が、聴き手の感情をかき乱すほど奮い立たせるのは必然だろう。シューゲイズ・ノイズは耳に心地良く反響し、極上の眠りも誘うようである。彼らの作り出した GLASVEGAS という世界は、グラスゴーの青い世界やラスベガスの眠らないパーティーの空間を逸する、まったくの別次元。だがそこには揺るぎ無いリアルが存在する。( 沖 さやこ )

GLASVEGAS Euphoric ///Heartbreak\\\

ROCK

[SONY MUSIC JAPAN]2011. 6 .8 ON SALE

SONIC YOUTH のフロント・マンである Thurston Moore の 3 枚目のスタジオ・ソロ・アルバムが到着。なんと今作は、あの BECK がプロデュース。BECKのプロデュースといえば 09 年の Charlotte Gainsbourg の『Irm』や Jamie Lidell の作品などが思い浮かぶが、今作はその 2 作にある先鋭的でクールな音像とは違い、Thurston Moore が紡ぎ出す歌をシンプルに暖かく描き出す様なプロダクション。前作同様に、SONIC YOUTH の轟音サウンドとは違い、パーソナルで、とても繊細な歌声とメロディが心地よく響く。大胆に取り入れられたストリングスも、あの BECK の傑作『Sea Change』を彷彿とさせるようだ。(遠藤 孝行)

Thurston Moore Demolished Thoughts

ROCK

[HOSTESS ENTERTAINMENT]NOW ON SALE

一日が終わりを迎え、始まりに切り替わる瞬間はいつだろう。夜明けは終わりでもあり、始まりでもある。Miles Kane は、そんな時間や空間の連続性の中に自分自身を見出している。血が湧き踊るビートとタイトで熟成されたサウンドは、密度が濃い。時間軸を思わせる楽曲は、圧倒的な完成度を誇る一日を記した日記、大きくは Miles Kane 個人の歴史のようでもある。最終的には「Morning Comes」と歌い、終わりから始まりのシフトを予感させる。歴史の最後に終わりが訪れない、それこそが Miles Kaneが仕掛ける “罠” なのだ。オールディーズを踏襲した正統さの中に見え隠れする、狡猾さと貪欲ささえも心地よい。THE LAST SHADOW PUPPETS、THE RASCALES、THE LITTLE FLAMES――彼がこれまでに刻んだキャリアは、みんな忘れてしまえ。純粋培養の美意識の前では、冠言葉ほど無用なものはない。(山田 美央)

Miles Kane Colour Of The Trap

ROCK

[SONY MUSIC JAPAN]NOW ON SALE

驚くべきことに、冒頭曲「Dinosaur Sex」は原子力発電所から漏れ出した放射能の影響で荒れ果てた未来を描いている。当然、時期的にこの楽曲が福島の原発事故をモチーフにしたものではないが、このリアリティはあまりにも重く響くだろう。UK 新世代フォーク・シーンの歌姫、EMMY THE GREAT の 2nd アルバム。やはり今作も純粋に作りたいものを作るという彼女ならでは DIY精神があり、アルバム制作はファンから制作費を募るファンド形式で行われた。サウンドはシンプルに、前作のままフォーキーなトーンで構築し、神話やおとぎ話を現代に織り交ぜた詩世界が歌われているというが、上記のエピソードが物語るように、これはぜひとも対訳を読みながら反芻するように味わってほしい。そして、あなたの“virtue(美徳)”を考えてほしい。(伊藤 洋輔)

EMMY THE GREAT Virtue

ALBUM

[YOSHIMOTO R&C]NOW ON SALE