difficile 検出の基礎的検討 Toxigenic cultureを用いた毒素産生Clostridium

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原著 Toxigenic culture を用いた毒素産生 Clostridium difficile 検出の基礎的検討 谷野 洋子 1) 木村 武史 1) 牛山 正二 1) 倉橋 智子 1) 京谷 憲子 1) 山田 幸司 1) 安本 都和 1) 中西 雅樹 2) 1) 京都府立医科大学附属病院臨床検査部(〒 602-8566 京都府京都市上京区河原町広小路上る梶井町 465)  2) 京都府立医科大学感染制御・検査医学教室 Clostridium difficile 感染症診断の際には,迅速検査として便検体から直接 EIA 法を行う検査方法が一般的に用いられて いるが,毒素検出感度が低いことが問題となっている。そのため,毒素検出を行うため C. difficile の培養を行い(toxigenic culture; TC),発育コロニーから毒素蛋白を EIA 法で検出する方法を用いて毒素産生株の検出感度を上げるための手順書を 作成した。その中で,TC に使用する培地や EIA 法を行う際の菌液濃度によって毒素反応に影響が出ることが判明した。 検討の結果,純培養時の培地にチョコレート寒天培地を使用し,菌液濃度を McFarlandMcF3.0 に調整したところ, PCR 法陽性であった 24 件中 5 件が陰性となり感度 79%であったが,CCMA-EX 培地を使用し,菌液濃度を McF 4.0 以上 にすると PCR 法と結果が完全に一致し 24 件全てが陽性となった。このことから,TC を日常業務として実施する際には, 手技による偽陰性をなくすためにも,使用培地や菌液濃度をマニュアルで決めておくなど,統一した作業手順の確立が重 要である。 キーワード Clostridium difficiletoxin A/Btoxigenic cultureCCMA-EX 培地,菌液濃度 I Clostridium difficile は偏性嫌気性のグラム陽性桿 菌であり抗菌薬関連下痢症/腸炎の主な原因菌であ る。 C. difficile の病原性には toxin A toxin B 2 類の毒素が大きく関係しており,Clostridium difficile 感染症(CDI)診断にはこの毒素産生の有無が重要 になる。さらに近年では toxin A toxin B の毒素産 生亢進,第三の毒素(binary toxin)の産生,フルオ ロキノロン系薬剤に耐性を示すなど,強毒性の C. difficile の存在も明らかとなり,欧州,北米を中心に これらが拡がっていることが報告されている 1) 本菌は芽胞を形成して病院環境中に長期にわたり 生存することから,院内感染対策において重要な菌 である。日本国内においても,毒素産生 Clostridium difficile による入院患者のアウトブレイクが報告され ていることから,それらを早期に発見,対応するこ とが重要である 2), 3) 現在,CDI 診断の際,迅速検査として便検体から 直接 EIA 法を行う検査方法が一般的に用いられてい る。しかし,EIA 法は毒素検出感度が十分でないこ とが指摘されており 4 ) Society for Healthcare Epidemiology of America SHEAand the Infectious Diseases Society of AmericaIDSA)による「Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults 5) では,便検体から glutamate dehydrogenase GDH)の有無を EIA 法で確認を行い,陽性検体に ついては C. difficile 分離培養を実施し(toxigenic culture; TC),発育した菌株から細胞毒性試験などの 毒素検出のための検査を行うことを推奨している(2- step method)。 (平成 27 6 30 日受付・平成 27 9 12 日受理) 680 医学検査 Vol.64 No.6 2015

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原 著

Toxigenic culture を用いた毒素産生 Clostridiumdifficile検出の基礎的検討

谷野 洋子 1) 木村 武史 1) 牛山 正二 1) 倉橋 智子 1)

京谷 憲子 1) 山田 幸司 1) 安本 都和 1) 中西 雅樹 2)

1) 京都府立医科大学附属病院臨床検査部(〒 602-8566 京都府京都市上京区河原町広小路上る梶井町 465) 2) 京都府立医科大学感染制御・検査医学教室

要 旨

Clostridium difficile 感染症診断の際には,迅速検査として便検体から直接 EIA 法を行う検査方法が一般的に用いられているが,毒素検出感度が低いことが問題となっている。そのため,毒素検出を行うため C. difficile の培養を行い(toxigenicculture; TC),発育コロニーから毒素蛋白を EIA 法で検出する方法を用いて毒素産生株の検出感度を上げるための手順書を作成した。その中で,TC に使用する培地や EIA 法を行う際の菌液濃度によって毒素反応に影響が出ることが判明した。検討の結果,純培養時の培地にチョコレート寒天培地を使用し,菌液濃度を McFarland(McF)3.0 に調整したところ,PCR 法陽性であった 24 件中 5 件が陰性となり感度 79%であったが,CCMA-EX 培地を使用し,菌液濃度を McF 4.0 以上にすると PCR 法と結果が完全に一致し 24 件全てが陽性となった。このことから,TC を日常業務として実施する際には,手技による偽陰性をなくすためにも,使用培地や菌液濃度をマニュアルで決めておくなど,統一した作業手順の確立が重要である。

キーワードClostridium difficile,toxin A/B,toxigenic culture,CCMA-EX 培地,菌液濃度

I 序 文

Clostridium difficile は偏性嫌気性のグラム陽性桿菌であり抗菌薬関連下痢症/腸炎の主な原因菌である。C. difficile の病原性には toxin A と toxin B の 2 種類の毒素が大きく関係しており,Clostridium difficile感染症(CDI)診断にはこの毒素産生の有無が重要になる。さらに近年では toxin A と toxin B の毒素産生亢進,第三の毒素(binary toxin)の産生,フルオロキノロン系薬剤に耐性を示すなど,強毒性の C.difficile の存在も明らかとなり,欧州,北米を中心にこれらが拡がっていることが報告されている 1 )。

本菌は芽胞を形成して病院環境中に長期にわたり生存することから,院内感染対策において重要な菌である。日本国内においても,毒素産生 Clostridium

difficile による入院患者のアウトブレイクが報告されていることから,それらを早期に発見,対応することが重要である 2 ), 3 )。

現在,CDI 診断の際,迅速検査として便検体から直接 EIA 法を行う検査方法が一般的に用いられている。しかし,EIA 法は毒素検出感度が十分でないこと が 指 摘 さ れ て お り 4 ) , Society for HealthcareEpidemiology of America(SHEA)and the InfectiousDiseases Society of America(IDSA)による「ClinicalPractice Guidelines for Clostridium difficile Infection inAdults」 5 )では,便検体から glutamate dehydrogenase

(GDH)の有無を EIA 法で確認を行い,陽性検体については C. difficile 分離培養を実施し( toxigenicculture; TC),発育した菌株から細胞毒性試験などの毒素検出のための検査を行うことを推奨している(2-step method)。

(平成 27 年 6 月 30 日受付・平成 27 年 9 月 12 日受理)

680 医学検査 Vol.64 No.6 2015

また,European Society of Clinical Microbiology andInfectious Diseases(ESCMID)の「Data review andrecommendations for diagnosing Clostridium difficile-infection(CDI)」 6 )によると,CDI 診断の際の毒素産生試験の標準法として細胞毒性試験が位置づけられているが,この検査を実施するには培養細胞を維持管理するための設備や環境が必要であり,通常の検査室では実施困難である。2-step method を実施するには,便検体からの迅速検査に加え TC の費用が追加で発生するため,検査の感度,特異度に加え費用の点からも検査方法を考える必要があり 7 ),さらに日常業務の一環として実施するための検査手順の簡便性などを考慮した結果,当検査室では発育コロニーからの毒素産生試験として EIA 法を用いるのが妥当であると判断した。そこで今回,PCR 法による毒素遺伝子(toxin B 遺伝子)検索の結果をもとに TC の基礎的検討を行い,日常業務として統一した手技を確立するための操作手順書を作成した。

II 対象と方法

1.対象京都府立医科大学附属病院において 2012 年 5 月

以降,抗菌薬関連下痢症疑いで提出された便検体から分離された C. difficile 42 株を対象とした。

陽性コントロールとして国立感染症研究所より分与された toxin A,toxin B,binary toxin が陽性である臨床分離株を使用した。2.方法1)分離株からの毒素遺伝子の検出(PCR 法)

分離されたコロニーから精製水で McFarland(McF)1.0 の菌液を作成し,100℃で 10 分のインキュベーションを行った後,15,000 rpm で 2 分遠心し,上清を DNA テンプレートとした。

toxin B 遺伝子の非反復塩基配列(NK104-NK105:tcdB) 8 ), 9 )のプライマーを最終濃度 0.2 μM になるように調整し,Multiplex PCR Assey kit(タカラバイオ)を用いて PCR 法を実施した。94℃30 秒,57℃90 秒,72℃90 秒を 35 サイクル後,72℃10 分のインキュベーションを PCR の反応条件として増幅を行い,電気泳動にて 203 bp に増幅産物が認められたものを toxinB 産生株とした(Figure 1)。

2)TC の使用培地の検討TC 実施の際,CCMA-EX 培地などの選択培地で便

検体からの分離培養を行った後,純培養を実施する場合の培地として非選択培地を利用することは可能か検討を行った。PCR 法にて毒素産生が確認されたC. difficile を,選択培地である CCMA-EX 培地(日水製薬),嫌気性菌用非選択培地であるバイタルブルセラ HK 寒天培地 RS(極東製薬),費用が安価な非選択培地であるチョコレート寒天培地(日水製薬)にそれぞれ嫌気条件下 48 時間培養した。菌液濃度による結果への影響を避けるため,McF 3.5 に調整した菌液を作成し,その菌液を検体として C. DIFFQUIK CHEK コンプリート(アリーアメディカル)で EIA 法を実施した。作業手順はキット添付文書の手順に従った。3)EIA 法実施時の菌液濃度の検討

TC 実施後,毒素検出のための EIA 法を行う際に,検体として用いる菌液濃度によって毒素の反応に差がみられるかを検討した。PCR 法にて毒素産生が確認された C. difficile を CCMA-EX 培地にて培養を行い,発育したコロニーより McF 4.0 以上,3.0,1.0の 3 種類の菌液を作成しその菌液を検体として上記同キットにて EIA 法を実施した。

1 2 3 4 5

PCR 法による toxin B 遺伝子検出Lanes 1:100 bp DNA LadderLanes 2:陽性コントロールLanes 3:toxin B 遺伝子陰性株Lanes 4:toxin B 遺伝子陽性株Lanes 5:陰性コントロール

Figure 1 

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III 結 果

1.Toxigenic culture による EIA 法と PCR 法による毒素検出

全 42 株中,PCR 法にて toxin B 遺伝子が検出されたのは 24 件であった。C. difficile を CCMA-EX 培地で嫌気条件下 48 時間純培養し,McF 4.0 以上の濃度の菌液を使用して EIA 法を実施したところ,毒素産生,毒素非産生ともに PCR 法と結果が一致し,感度,特異度は 100%となった(Table 1)。

しかし,上記とは異なった TC の条件(チョコレート寒天培地での培養後 McF 3.0 の菌液を作成)で実施した EIA 法では,PCR 法にて toxin B 遺伝子陽性であった菌株 24 件中,5 件が陰性となり,感度が79%となった(Table 2)。2.TC 時の使用培地

RS 培地やチョコレート寒天培地で発育した菌株を用いて実施した EIA 法では CCMA-EX 培地に発育したそれと比べて毒素の反応が弱まる傾向が認められた。特にチョコレート寒天培地を利用した場合 24 件

TC 実施後の EIA 法と PCR 法の毒素検出の結果(n = 42)

PCR

+ −

EIA+ 24 0− 0 18

感度 100%  特異度 100%使用培地:CCMA-EX 培地/菌液濃度:McF 4.0 以上

Table 1 

中 5 件は判定ラインを認めず,偽陰性の原因となることが判明した(Figure 2)。3.EIA 法実施時の菌液濃度

McF 4.0 以上の濃度から薄くなるにしたがって毒素の反応が弱まる傾向が認められた。特に McF 1.0の菌液濃度で実施した場合,24 件中 2 件は判定ラインを認めず,偽陰性の原因となることが判明した

(Figure 3)。

IV 考 察

今回の検討で,TC の手法について留意すべき点がいくつかあることが確認できた。

第一に,TC 時に使用する培地の種類である。便検体より C. difficile を培養する際の使用培地について IDSA の ガ イ ド ラ イ ン 5 ) で は CCFA medium ,ESCMID 6 )のガイドラインでは CCFA ager が推奨されているが,純培養が必要となった場合の使用培地については明記されていない。チョコレート寒天培地

(定価 180 円/枚)は CCMA-EX 培地,RS 培地(共に定価 450 円/枚)に比べ安価であり,TC 実施の

チョコレート寒天培地による純培養後,菌液濃度 McF 3.0 で EIA 法を行った場合のPCR 法との毒素検出結果の比較(n = 42)

PCR

+ −

EIA+ 19 0− 5 18

感度 79%  特異度 100%

Table 2 

0

CCMA-EX培地

4

RS 培地 チョコレート寒天培地

5toxin A/B 検出ラインが認められなかった株数(n = 24)

使用培地による毒素反応の比較(菌液濃度:McF 3.5)Ag: glutamate dehydrogenase(GDH)検出ラインTox: toxin A/B 検出ライン写真は各培地で発育した菌株で実施した EIA 法結果の 1 例である。CCMA-EX 培地に比べ,RS 培地の毒素反応がかなり薄く,チョコレート寒天培地はラインが認められない。

Figure 2 

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際の費用削減につながるため,今回の検討では,当検査室で日常的に使用している上記 3 種類の平板培地を用いて比較を行った。しかし,それぞれ同じ条件で TC を行ったにも関わらず,毒素産生判定ラインに濃淡の差が明確に表れた。

使用培地による反応の違いの原因の一つとして考えられるのが,培地自体の組成である。毒素の産生と芽胞形成には関連があるとされており,芽胞形成を促進させる培地の組成に関しては,Wilson ら 10 )がCCFA 培地に taurocholate を加えることによって芽胞の回収率が上がるという報告をしている。また,Merrigan ら 11 )は強毒株である hypervirulent(HV)株を用いて芽胞形成能の検討を行い,強力な毒素を産生する株ほど芽胞形成能が高いという結果を示している。これらの報告を合わせて考えると,C. diffidcileの毒素産生量を増加させ,TC によってより確実に毒素産生 C. difficile を捉えるためには,芽胞形成を促進させる環境で培養を行う必要があり,芽胞形成能が向上する taurocholate のような成分が含まれている培地を純培養に使用することが最良の選択であると言える。またそれとは逆に,システインを含む培地を用いると毒素産生量が低下するという報告もある 12 )。RS 培地やチョコレート寒天培地のような非選択培地にはシステインなどのアミノ酸は含まれているが,芽胞形成を促進させるような成分が含まれている可能性は低い。そのため毒素産生能および TCの毒素検出感度が低下したと考えられる。今回,検討に使用した CCMA-EX 培地は芽胞選択のための糞便のアルコール処理を必要とせず,C. difficile を検出できるという培地であり,サイクロセリン,セフォ

キシチン,マンニトールが含まれていることは明記されているが,それ以外の組成については不明であり,芽胞形成促進成分の確認はできなかった。

次に,発育コロニーから EIA 法を行う際の菌液の濃度について検討した。過去にも菌液濃度 McF 3.0以下では毒素反応に影響するという報告がされていた 4 )。今回当検査室で行った検討でも,分離菌によって差はあるものの確実に毒素陽性反応を確認するには菌液濃度が McF 4.0 以上必要であることが判明した。この結果は,便から直接行う迅速検査の際にも便中に十分な量の菌量が存在しないと偽陰性と判定される可能性があることが示唆されるため,迅速検査で GDH 陽性,toxin 陰性であった場合は積極的に培養を行い,十分な菌量を用いて毒素産生 C.difficile の検査を行うべきである。

以上の結果により,当検査室では,迅速検査にてGDH 陽性 toxin A/B 陰性であった検体については,上記の適切な培地と菌量条件を基にして,TC と EIA法を行うというプロトコールを作成した(Figure 4)。これにより,2014 年 5 月~12 月の 8 ヶ月間で提出された検体の中で,迅速検査で toxin A/B 陰性にも関わらず TC で陽性となった検体が 40 件中 14 件あり一定の効果を上げていると考えられる。この 14 件に関して,PCR 法を実施したところ,全ての株で toxin B遺伝子が確認された。一方で,GDH 陽性であったが,菌の発育が認められず毒素産生の確認ができなかった検体が 3 件あった。原因としては,薬剤投与の影響や,検査室へ提出するまでの検体の保存状態により,菌の生存率が低下した可能性が考えられる。一方,経口腸管洗浄剤などの主成分であるポリエチ

0

McF 4.0 以上

1

McF 3.0 McF 1.0

2toxin A/B 検出ラインが認められなかった株数(n = 24)

菌液濃度による毒素反応の比較(使用培地:CCMA-EX 培地)Ag: glutamate dehydrogenase(GDH)検出ラインTox: toxin A/B 検出ライン写真は各菌液濃度で実施した EIA 法結果の 1 例である。McF 4.0 以上に比べ,McF 3.0 と McF 1.0 の毒素反応がかなり薄くなっている。

Figure 3 

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レングリコール 4000 が EIA 法に影響を与え,偽陽性となる場合があるとの報告がされている 13 )。このことから,今後,GDH 陽性 toxin A/B 陽性であるにも関わらず菌の発育が認められない場合は偽陽性である可能性も考え,便の採取方法(浣腸便,自然便等)の確認も必要となってくるかもしれない。

今後の課題としてあげられるのが,培養後に実施する毒素検査の費用と,TC を行った際の結果報告の遅れである。

検査費用の問題に関しては,現在,培養後に実施される毒素検査には診療報酬が認められておらず,C. difficile の検査としては「クロストリジウム ディフィシル抗原検査」の 80 点のみである。2-step methodを実施するためには,迅速検査後の培養検査が必要であり,さらにコロニーからの毒素検査を行うために追加の検査費用が必要となる。毒素産生確認試験を実施するためには EIA 法は約 1,000 円以上,PCR法は約 2,000 円以上の費用がかかるため 7 ),検査室の費用負担が増大するという問題が生じる。今回の検討の結果,毒素産生確認に EIA 法を用いる場合,適切な培地を使用しなければ正しい検査結果が得られない可能性があることが示唆された。負担を少しでも抑えるためには TC 実施時に安価な培地を使用するなどの工夫が必要となるが,費用の問題だけで安

易に使用培地を決定することは避けるべきである。今後,毒素検出の感度を高めるためにも培養後の毒素検査のための診療報酬が追加されることが望まれる。

また,2-step method は毒素産生 C. difficile 検出の感度を上げるためには有用であるが,培養に時間がかかるため最終的な報告まで 2~7 日ほどの時間を要する。CDI 診断のために迅速性が求められる検査であるため,今後即日報告できる検査方法(便検体からの PCR 等の遺伝子検査法)を確立する必要がある。

■文献

 1) He M et al.: “Emergence and global spread of epidemichealthcare-associated Clostridium difficile,” Net Genet, 2013; 45:109–113.

 2) 佐藤 洋子,他:「がんセンターにおける toxinA 陰性 toxinB 陽性 Clostridium difficile による下痢症の院内集団発生」,感染症誌,2004; 78: 312–319.

 3) 安藤 隆,他:「整形外科患者を中心にアウトブレイクを認めた toxinA 陰性 toxinB 陽性 Clostridium difficile 株の分子疫学的解析」,日臨微誌,2013; 23: 186–192.

 4) 澤辺 悦子,他:「Clostridium difficile 感染症の迅速診断における糞便中 C. difficile 抗原およびトキシン A/B 同時検出キット:C. DIFF QUIK CHEK COMPLETE の有用性に関する検討」,日臨微誌,2011; 21: 253–259.

 5) Cohen SH et al.: “Clinical practice guidelines for Clostridiumdifficile infection in adults: 2010 update by the Society forHealthcare Epidemiology of America (SHEA) and the Infectious

当院における CD トキシン迅速検査手順Figure 4 

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Diseases Society of America (IDSA),” Infec Control HospEpidemiol, 2010; 31: 431–455.

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 9) Kato H et al.: “Deletions in the repeating sequences of the toxin A

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10) Wilson KH et al.: “Use of sodium taurocholate to enhance sporerecovery on a medium selective for Clostridium difficile,” J ClinMicrobiol, 1982; 15: 443–446.

11) Merrigan M et al.: “Human hypervirulent Clostridium difficilestrains exhibit increased sporulation as well as robust toxinproduction,” J Bacteriol, 2010; 192: 4904–4911.

12) Karlsson S et al.: “Induction of toxins in Clostridium difficile isassociated with dramatic changes of its metabolism,”Microbiology, 2008; 154: 3430–3436.

13) 和泉 彬彦,他:「経口腸管洗浄剤が Clostridium difficile Toxin検出キットに与える影響」,医学検査,2014; 63: 288–293.

Original Article

Detecting Clostridium difficile toxins by toxigenic culture

Yoko TANINO 1) Takeshi KIMURA 1) Masaji USHIYAMA 1) Satoko KURAHASHI 1) Noriko KYOTANI 1) Yukiji YAMADA 1) Towa YASUMOTO 1) Masaki NAKANISHI 2)

1) Department of Clinical Laboratory, University Hospital, Kyoto Prefectural University of Medicine (465, Kajii-cho,Kamigyo-ku, Kyoto 602-8566, Japan)

2) Department of Infection Control and Laboratory Medicine, Kyoto Prefectural University of Medicine

SummaryMost clinical laboratories often use enzyme immunoassay (EIA) as a rapid test for the diagnosis of Clostridium

difficile infection (CDI). However, its sensitivity of detecting C. difficile toxins is insufficient for diagnosis. Therefore,toxigenic culture (TC) can play an important role in diagnosing cases of CDI. We evaluated the usefulness of TCcompared with the detection of the toxin B gene by polymerase chain reaction (PCR), and then designed an algorithmthat uses TC for the laboratory testing of CDI to improve the sensitivity of detecting toxins. We found that some of themedia used for culture and bacterial concentration affected the results of TC. Compared with the results by PCR, thesensitivity of TC was 100% when CCMA-EX culture medium and a bacterial concentration of 4.0 McF were used. Onthe other hand, the sensitivity decreased to 79% when chocolate agar and a bacterial concentration of 3.0 McF wereused for TC. The specificity of both groups was 100%. These experimental results indicate that it is important todetermine which medium and how much concentration of bacterial suspension should be used to reduce the numberof false negative results. Standardized procedures are needed for the performance of TC by laboratories.

Key words: Clostridium difficile, toxin A/B, toxigenic culture, CCMA-EX medium, bacterial concentration(Received: June 30, 2015; Accepted: September 12, 2015)

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