CONTENTS · インジェクションプラスチックキット...

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目次

Act 0“スター・デストロイヤー/Dock Yard”

Act 1“ミレニアム・ファルコン/起動”

Act 2“AT-ATマーケット/ニーマ・アウトポストⅡ”

Act 3“Rey’s home”

Act 4“洞窟の天使たち/Cavern Angels”

Act 5“ジェダ陥落”

Act 6“最期のジェダ”

WildRiver荒川直人、成田昌隆特別座談会

[column]WildなSW視点

Act 7“デューバック/砂漠狩人”

Act 8“サンドトルーパー/密告者”

Act 9“嘶き/ロント”

Act 10“ランディングポイント/出撃”

Act 11“雪上対峙/AT-AT”

Act 12“惑星ダゴバ/The Force power of Yoda”

Act 13“衛星エンドア/チェイサー”

Act 14“イウォーク/TreeTrap”

Act 15“PodRacer Carrier”

profile about WildRiver荒川直人 efv

C O N T E N T S

はじめに……Wi l d R i v e r荒川直人 私の「スター・ウォーズ」との出会いは、ちょうど大学1年の時に公開された『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でした。 有楽町の日劇で見た後、感動を胸にしまい、銀座のとある洋書書籍専門のお店の映画コーナーで、ふと手にしたのが、「Art Of Star Wars」という1冊の本でした。 まだ、当時では珍しいSF映画が製作されるまでのアート本はかなりのインパクト。劇中の元になる色々なコンセプトデザイン、ボツになったデザイン、実際のプロップ模型画像、衣装案など、夢のような原石が盛りだくさん詰められていたこの本は、私の「スター・ウォーズ」ダイオラマモデラー人生としての原点でもあります。 大学時代には『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を見て、劇中のホス雪上戦のなかで、2カットだけ登場した「AT-ST」に目が釘付けになり、これは作るしかないと決意! 当時、機械工学科だった私は、大学の図面室でいちから図面を引いて、プラ板からチキンウォーカーをフルスクラッチで作成し、模型店のコンテストに出品したりしていました。 このあと20年間は模型を製作することはやめてしまいましたが、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が公開された途端、久しぶりの「スター・ウォーズ」フリークモデラー魂が復活し、モデラーに復帰しました。それからは、20年間のうっぷんを晴らすべく、陸海空、キャラクター、ロボット系など、いろいろなジャンルの作品を円形劇場(*1)というコンセプトで作り続け、ついにモデラー復帰20年の節目で、この作品集を出すことができました。私のモデラー人生の岐路には必ず「スター・ウォーズ」が20年ごとにきっかけになっているのかもしれません。 この作品集収録の作品は、モデラーに出戻ってから2020年までの20年間に製作した「スター・ウォーズ」円形劇場の40作品以上のなかからピックアップしており、劇中シーンの再現だけでなく「Art Of Star Wars」のなかのコンセプトデザインからインスパイアされた作品も盛り込んだものになっています。 ジョージ・ルーカスが思い描き、数多くのデザイナー達のアイデア、インスピレーションで具現化してきた「スター・ウォーズ」。その凄さが少しでも伝えられる1冊になっていれは幸いです。*1: 円形劇場とは、一方向からの鑑賞でなく、全方位から見ても色々なところにストーリーがあるように

作成された荒川のジオラマコンセプト

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The Corellia Imperial Star Destroyer Ship Building Yard

An ancient world in the galactic Core, Corellia is known for its people’s wanderlust and its massive shipyards. Corellia played a key role in the expansion of galactic civilization, but that was thousands of years ago. It’s now a faded

industrial planet exploited by the Empire to build TIE fighters and Star Destroyers.

C DB

コ レ リ ア 帝 国 宇 宙 艦 隊 造 船 所

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The Corellia Imperial Star Destroyer Ship Building Yard

C DB

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“スター・デストロイヤー/ Dock Yard”スクラッチビルド 1/5000

BANDAI SPIRITS 1/5000 「スター・デストロイヤー」使用インジェクションプラスチックキット

出典/『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』問 BANDAI SPIRITS お客様相談センター ☎ 0570-078-001

製作・文/ WildRiver荒川直人

W i l d R i v e r 荒川直人氏は「電飾の演出師」としても知られている。

本作では「スター・ウォーズ」のコンセプトアートブックからのインスパイアで、惑星コレリアにある

帝国軍のスター・デストロイヤー造船所のダイオラマを製作。

LEDを使って発光させるだけでなく、それによって生み出される影をもコントロールすることで

ダイオラマならではの、豊かな表現を産んでいるところに注目していただきたい。絶品のダイオラマだ。

©&™ Lucasfilm Ltd.

「スター・ウォーズ」円形劇場 Act 0;

“スター・デストロイヤー/Dock Yard”

T h e C o r e l l i a I m p e r i a l S t a r D e s t r o y e r S h i p B u i l d i n g Y a r d

Imperial Star Destroyer I S D

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Imperial Star Destroyer I S D

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惑星コレリアの

宇宙船造船所を再現

●スター・デストロイヤーの造船ドックを再現したこの作品は、施設から漏れる灯、スター・デストロイヤー各部から漏れる灯、そして各所で点滅する赤色灯が造船現場のただならぬ雰囲気を醸し出している。WildRiver荒川氏の円形劇場演出師の面目躍如といえる

●作品のみどころのひとつに、海面に写り込む各構造体というのががある。このアングルからは、建造中のスター・デストロイヤーが海面に写り込み幻影的な姿を現す。海面の誘導灯は点滅する

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▲側部のトレンチもキットのモールドや光源用穴を活かしつつ、大々的に電飾が施されている

●下面からのぞき込んだスター・デストロイヤー。各工事中の部位の光源が間接照明になっており、それぞれに多層の影をなして超巨大構造体を作り上げている姿がわかる。各所で光る色が違うのもポイントだ

▲プラ板を多用して再現された溶鉱炉。オレンジと青の色のコントラストは『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を彷彿させる

▲側部のトレンチもキットのモールドや光源用穴を活かしつつ、大々的に電飾が施されている

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惑 星 コ レ リ ア の     宇 宙 船 造 船 所 を 電 飾 に て       再 現

T h e C o r e l l i a I m p e r i a l S t a r D e s t r o y e r S h i p B u i l d i n g Y a r d

造船所

 

ずっと、帝国軍の象徴であったスター・

デストロイヤーがどのように建造されるの

かを疑問に思っていたのですが、そのひと

つの解を提示してくれたのが映画『ハン・

ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でし

た。冒頭の建造中の分割されたスター・デ

ストロイヤーが、スーパー・ハウラー(輸

送機)にワイヤーで吊られて、闇夜のなか

に美しく光る内部の建造中の構造体が下

から見られるシーンを観たときに、「うわ、

これは絶対に作るしかない」と。それ以来、

各種の「スター・ウォーズ」アート資料集

などを検討して、今回の造船軍港を設計

して作ったというわけです。

製作

 

すばらしいディテールをもつB

AN

DA

I S

PIR

ITS

のキットですが、いちばん勇気が

必要だったのが、スター・デストロイヤーを

半分にノコギリで切るときでした。建造中

といういままでのスター・デストロイヤーに

はないシーンなので、ボディ各所に超音波

カッターで穴を開け、断面部に基本フレー

ム構造体を作り、その隙間に建造中の内

部構造物が見えるように作っていきます。

 

また、軍港の基本デザインは、アートブ

ック『Art of Solo: A Star W

ars Story

』を

参考に、そのなかのコンセプトデザインのク

レーンウォーカー、スーパー・ハウラーなど

を3D化。軍港の特徴的ウォール、アイラ

ンドなども3D化しプリントしました。

 

海面は、透明レジンではなく透明アク

リル板を使いました。これは海上の構造物

が鏡面の海面にシンメトリーに写り込むの

がメリットです。今回は、見づらいスター・

デストロイヤーの下面部の姿が海面上に浮

かび上がるようにしました。

テーマは透かせる

 

今回の電飾のポイントは、電飾しつつ「透

かせる」です。スター・デストロイヤーの

内部構造の積層状態を作るために、プラ

板を短冊状にカットした、積層プラスチッ

クブロックを作り、それを何枚も積層し

てLEDの光の段差が見えるようにしてみ

1 島の内部の構造物は3D出力したものと、ジャンク部品の組み合わせで作成 2 各アイテムのデザインは、『アート・オブ・スター・ウォーズ』の資料本を参考に3D ソフト「Fusion360」で作成。3Dデザインしたものは、FORM2 の3D プリンタで出力。出力はミニチュア模型製作工房「モデルバベット」に依頼。3 海の表現は透明アクリル板を使用する方法。ベースの台に数種類の缶スプレーで海の深さを表現するように吹き、透明アクリル板の裏側にクリアブルーの缶スプレーを薄くランダムに吹きかけ、板と重ねることで、海面上が鏡面のようになり建造物が写り込みシンメトリー効果が出る4 スター・デストロイヤーを移送する

スーパー・ハウラーにはエンジングリッドに青のチップ LED を仕込み、配線はスター・デストロイヤーを持ち上げるワイヤーを表現している透明プラ板に隠しこんでいる。5 島の床部分は、プラ板による積層処理で製作。下からの LED 光を透過させ溶鉱炉的な電飾イメージを演出している 6 造船島をガードする特徴的な壁も3D デザイン。モデリングする際に、LED の仕込みがやりやすい構造にしている。

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●全体は 50㎝×40㎝ほどの海上を表現した作品。ベースに数種類の缶スプレーで海の深さを表現するように吹き、透明アクリル板の裏側にクリアブルーの缶スプレーを薄くランダムに吹きかけ、板と重ねることで、海面上が鏡面のようになり建造物が写り込む

基本のトラスに多層構造になるように積層プラスチックのブロック、プラスチック製パイプ、丸棒プラスチックパイプなどをはめていくが、製作にはかなりの時間がかかった。奥行き感があるようにすることで、内部で発光させた LED の光によって、スター・デストロイヤーが積層構造で作られているカンジを演出することができる

今回スター・デストロイヤーは、BANDAI SPIRITS 製のキットを前後2ブロックにカットし、前半部分だけを使用した。切断面の内部構造は、一旦スキャナーで断面画像をとり、その画像に合わせた基本トラスををプラ板で作成し組み込んでいった

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惑 星 コ レ リ ア の     宇 宙 船 造 船 所 を 電 飾 に て       再 現

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A c t 0 ; / ス タ ー ・ デ ス ト ロ イ ヤ ー / D o c k Y a r d

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1 パーツの裏側からリューターで薄く削り込んで表面のディテールを残して電飾の効果をアップさせている 2 スター・デストロイヤーの内部構造物や、造船島の溶鉱炉の積層表現には、0.3㎜厚のプラ板をカッティングプロッターで短冊状に切ったものを使用 3 カットしたプラ板を隙間が開くように重ねた積層プラスチックブロックを作成。積層と空き空間により、LED の光の透け具合が変わるようにしている。4 キットに建造時状態の穴を開け、その部分に、作成した積層パネルを重ねて貼っていき、内部構造物の表現としている 5 積層のプラスチックブロックを裏側から光をあてて具合をチェックしながら、さらに重ねて貼っていく

6 モデルカステン製の『遮光ブラック PRO』を筆で塗り、LED をあらかじめ決めた配線で固定する。スター・デストロイヤーの内部だけで 23 個のLEDを使用している。配線と発光確認は各部の固定が終わるごとに必ずやることがミスを減らすポイント7 ダイオラマの電飾で難しいのが各部の光量の決定だ。これはその設定に携わるCRD や抵抗を簡単に差し替えられるような構造にしてある基板。極小コネクタを使用して、最終配線の確認が簡単に抜き差しでできるようになっている 8 電飾ダイオラマのキーとなるのが、PIC16F1938 用に開発した LEDWarrior システムプログラム。短時間で PIC を使用した光の演出が可能だ。

ました。光の透過具合は、モデルカステン

の「遮光ブラックPRO」を筆で塗り、エ

ッジ部分の透過を調整しています。

 

LED光の各種処理は、PICを使用

し、自動光減、点滅、フラッシィングな

どの各種発光パターン、間隔などを制御

しています。

最後に

 

じつはこのスター・デストロイヤーの軍港

は、もとは広大な構想でふたつのブロック

からなるような設計でした。今回はその

うちの1ブロック部。2ブロック目は、いつ

公開か……。

電飾ダイオラマのキモ! 電飾演出専用の基板を特注で作成! 今回のダイオラマのキーとなるのが、PIC16F1938用に自作でプログラムを開発した「LEDWarrior」システムです。PICを使用した色々な光の演出が短時間で簡単にできるようになっています。しかしこのシステムを使うには毎回専用の基板を作る必要があり、その部分では毎度手間と時間がかかっていました。そこで今回は専用の基板の量産を業者に発注し、そのテスト品を作品に使ってみました。これによって今回はかなり楽になりました。 ダイオラマの電飾で難しいところは、

実際にLEDを作品に組み入れて全体を見ながら光量などを調節しなければいけない点です。この基板を使ったシステムではCRDや抵抗を組み入れる箇所を一箇所に集中させていますので、LEDが明る過ぎる/暗すぎるといった場合、あとから簡単に交換し、調整が可能なのです。これは大掛かりな作品を作る際に非常に重要です。また配線の接続には極小コネクタを使用することで、作品製作のどのタイミングでも基板上で抜き挿しでき配線の確認を行なうことができます (荒川)

▲WildRiver円形劇場「LEDWarrior」システムをを支えるのが、この基板、通称「WildRiver MoonLight V2.0」。中央がPIC16F1938だ

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Re Boot of MillenniumFalcon

「スター・ウォーズ」円形劇場 Act 1;

“ミレニアム・ファルコン/起動”

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Re Boot of MillenniumFalcon

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● 使 用されている「ミレニアム・ファルコン」 はBANDAI SPIRITS 製 1/144 スケールのもので「フォースの覚醒」版のため、アンテナの形状やディテールはそのまま劇中のものと同じ。そこに WildRiver荒川氏の手によって劇中同様の塗装や焼け表現、船体の傷などが巧みに描き込まれている。本体は電飾工作がなされており、エンジンが点灯し瞬くほか、コクピットや銃座がLEDと光ファイバーによって発光させられている