Chromogenic Substrate(色原性基質) の臨床化学への応用 ...1 (女子医大誌...

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1 (女子医大誌 第34巻 第6号頁 237一一一一r249 日博引039年6月) 〔綜 説〕 Chromogenic Substrate(色原性基 の臨床化学への応用 東京女子医科大学生化学教室(主任 助教授 降 プリ 松村義寛教授) ケイ (受付 昭和39年5月!3日) はじめに 病的状態で血中に増量を示す酵素の多くは,主 として細胞の壊死によるか,または別の何らかの 機序により細胞内成分が流血中に放出されること による,したがって血中の酵素活性度が疾病の消 長と何らかの関係があり,かつその測定が此較的 容易であるならば血中酵素活性度測定が診断や治 療効果の判定の一助として利用できることにな る. たとえば,骨疾患や閉塞性黄疸の場合の血清ア ルカリホスファターゼの増加,前立腺癌における 血清酸ホスファターゼの増加,心筋梗塞発作時の 血清トランスアミナーゼの増加,急性膵炎のばあ いに血清リパーゼやアミラーゼが増加し,疾患の 改善とともにこれら諸酵素の活性度が平常に戻る ことは周知のことである. これら血中酵素活性度を臨床化学的に測定する には,一定量の基質液に一定量の被検液を作用さ せて一一一i定時間に分解された基質量または反応生成 物を滴定法,比色分析法などにより測定する.前 老は後者に比べて精密ではあるが操作が複雑で長 時間の測定時間を要し多:量の検査材料を要する. 一般に比色分析法では操作がより簡単であり測定 時間も短縮され検査材料もより少量ですみ,いわ ゆる微量定量が可能である. Chromogenic substrateすなわち色原性基質 は比色分析法による酵素活性度測定を,より迅速 に,より微量化するために合成的につくられた基 質である.大森(1937年)1)がはじめてp一ニト mフェノールリン酸を合成しホスファターゼの 基質として用いたのがChromogenic subs のはじまりで,以後Huggins&Talalay るアルカリホスファターゼの基質としてフェノー ルフタレインニリン酸2),Seligman らによる リパーゼ基質としてのβ一ナフトールラウリン酸 3)など数多くの報告があり,最近著者らも血清リ パーゼの基質としてp一石トロフェノールラウリ ン酸や,酸ホスファターゼの基質としてプロムフ =ノール青一ニリン酸(以下,BPB一ニリン酸と省 略する)を合成して酵素的水解の特異性を検し, 更に数十例の患者1血清に応用し,少しく知見を得 たので,現在臨床化学的に応用されている諸種 Chromogenic substrateの紹介とと の実験結果を4)報告しよう. Chromogenic substrateとは: 酵素的水解により直接,色素を遊離し,あるい は簡単な操作で容易に色素を作る物質を遊離する 基質をいう.前者を一次的色原性基質,後者を二 次的色原性基質と名付けよう. これらはいずれも芳香族化合物とのエステル, グリコシド,ペプチドであり,無色ないし極く淡 Kei FURIYA(Department of Biochemistry, Tokyo Woinen’s Medical Co mogenic substrates in clinical chemistry. 一 237 一

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    (女子医大誌 第34巻 第6号頁 237一一一一r249 日博引039年6月)

    〔綜 説〕

    Chromogenic Substrate(色原性基質)

    の臨床化学への応用

    東京女子医科大学生化学教室(主任

    助教授 降 矢 プリ ヤ

    松村義寛教授)

    榮 ケイ

    (受付 昭和39年5月!3日)

    はじめに

    病的状態で血中に増量を示す酵素の多くは,主

    として細胞の壊死によるか,または別の何らかの

    機序により細胞内成分が流血中に放出されること

    による,したがって血中の酵素活性度が疾病の消

    長と何らかの関係があり,かつその測定が此較的

    容易であるならば血中酵素活性度測定が診断や治

    療効果の判定の一助として利用できることになる.

    たとえば,骨疾患や閉塞性黄疸の場合の血清ア

    ルカリホスファターゼの増加,前立腺癌における

    血清酸ホスファターゼの増加,心筋梗塞発作時の

    血清トランスアミナーゼの増加,急性膵炎のばあ

    いに血清リパーゼやアミラーゼが増加し,疾患の

    改善とともにこれら諸酵素の活性度が平常に戻る

    ことは周知のことである.

    これら血中酵素活性度を臨床化学的に測定する

    には,一定量の基質液に一定量の被検液を作用さ

    せて一一一i定時間に分解された基質量または反応生成

    物を滴定法,比色分析法などにより測定する.前

    老は後者に比べて精密ではあるが操作が複雑で長

    時間の測定時間を要し多:量の検査材料を要する.

    一般に比色分析法では操作がより簡単であり測定

    時間も短縮され検査材料もより少量ですみ,いわ

    ゆる微量定量が可能である.

    Chromogenic substrateすなわち色原性基質

    は比色分析法による酵素活性度測定を,より迅速

    に,より微量化するために合成的につくられた基

    質である.大森(1937年)1)がはじめてp一ニト

    mフェノールリン酸を合成しホスファターゼの

    基質として用いたのがChromogenic substrate

    のはじまりで,以後Huggins&Talalayによるアルカリホスファターゼの基質としてフェノー

    ルフタレインニリン酸2),Seligman らによる

    リパーゼ基質としてのβ一ナフトールラウリン酸

    3)など数多くの報告があり,最近著者らも血清リ

    パーゼの基質としてp一石トロフェノールラウリ

    ン酸や,酸ホスファターゼの基質としてプロムフ

    =ノール青一ニリン酸(以下,BPB一ニリン酸と省

    略する)を合成して酵素的水解の特異性を検し,

    更に数十例の患者1血清に応用し,少しく知見を得

    たので,現在臨床化学的に応用されている諸種

    Chromogenic substrateの紹介とともに著者ら

    の実験結果を4)報告しよう.

    Chromogenic substrateとは:

    酵素的水解により直接,色素を遊離し,あるい

    は簡単な操作で容易に色素を作る物質を遊離する

    基質をいう.前者を一次的色原性基質,後者を二

    次的色原性基質と名付けよう.

    これらはいずれも芳香族化合物とのエステル,

    グリコシド,ペプチドであり,無色ないし極く淡

    Kei FURIYA(Department of Biochemistry, Tokyo Woinen’s Medical College): Applications of chro-

    mogenic substrates in clinical chemistry.

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    一次喜色原性基虞

    e2,0粛。H.H2。塾歌詠〉・H・H・匙・・

    OHP一二卜[]フェノー)レリン酸

    (無色)

    OHP一ニトロフェノーリレ無罪リン酸

    (組目劉

    二次的色原性基屓 0 ア1レカリ 0 (}・一苧一・H・・、。塾て〉。H・H・十・H

    OH OH フェノールリン酸 フェノール 無ネKリフ酸 (無創 欝・・ン}一…

    図 1

    色の物質である,例を図1に示す.

    一次的色原性基質には。一,m一, p一ニトロフェ

    ノールやフェノールフタレインやBPBのごとき

    pH指示薬の脂酸エステルおよび無機酸のエステル

    およびグリコシドがあり,フルオレスセインのよ

    うな螢光物質の脂酸エステルと無機酸エステルお

    よびグリコシドなどもこれに属し,アミノ酸の

    。一,m一, P一ニトロアニリドなどもそうである.

    二次的色原性基質にはフェノールやα一,βナフ

    トールなどの脂酸エステルおよび無機酸エステル

    およびグリコシド,アミノ酸のナフチールアミ

    ド,アミノ酸のひ,m一, p一アミノ安息香酸アミ

    ドなどがある.

    臨床化学的に応用されるChromogenic sub-

    strateについて=

    Chromogenic substrateを用いて酵素活性度

    を測定できる酵素は主に水解酵素に限られる.こ

    れらの基質は血清中酵素の活性度測定に広く用い

    られるものであるが,検査材料の取扱いに注意を

    すればバイオプシーにより得られた組織材料や穿

    刺液,尿にも応用できる.

    1) アルカリホスファターゼの基質

    この酵素はRobison(1923年)により‘‘Bone

    enzyme”として骨の化骨と重要な関係がある

    ことが発見されて以来今日に至るまで最も広く研

    究されている酵素の一つであり,骨および肝疾患

    の消長の一指標となることは周知のことである.

    ①フェノールフタレインニリン酸

    King5)はホスファターゼの水解作用により

    Chromogen(色素原)を遊離する数種のリン酸

    エステルを合成した.それらのうちにフェノー

    ルフタレインリン酸のCa塩, Pb塩, Ba塩な

    どがあったが,これらは水に難溶性であり酵素に

    よる水解速度が非常に小であるから短時間のうち

    に正確な結果を得るためには多量の血清を要する

    ことを述べている.Huggins&Talalay2)により

    水溶性のフェノールフタレインニリン酸のNa塩

    (C20Hユ30i1P2Na5)が合成され,少量:の1血清に

    よるアルカリホスファターゼ活性度の測定が可能

    になった.現在ホスファタァブとして市販せられ

    ているアルカリホスファターゼの半定量に用いら

    れているものも,この基質を使用している.

    フェノールフタレインニ、リン酸ナトリウムは一・

    次的色原性基質に属し,無色の物質であり,アル

    カリホスファターゼにより水解されてフェノール

    讐1∴罵漁 図 2

    フタレインを遊離する(図2).

    実際に血清について測定するには,PH 9.7に調

    製した基質液に血清を加え,370Cで1時間反応さ

    せる.次いでPH 11.2のグリシン緩衝液を加えてpH

    を10.6にすると,フェノールフタレインによる紅

    色の呈色は安定となるので,所定の時間内に540

    エnμ部における吸光度を測定する.

    この基質を用いると除蛋白操作なしに,また最

    小限の操作過程によりアルカリホスファターゼ活

    性度を測定し得る特長がある.一方短所として紅

    色の吸光度は必ずしも常に酵素量に比例しない.

    この点につきRzhekhilla6)はフェノールフタレ

    インニリン酸の酵素的水解は2段階で行なわれ,・

    2個のリン酸エステル結合のうち,最初のエステ

    ル結合の水解速度は2番目のリン酸エステル結合

    の水解速度よりも大であり,また最初の酵素的水

    解の段階で生じたフェノールフタレインーリン酸

    がフェノールフタレインニリン酸の水解を阻害し,後者が水解により消失してくれば前者の水解

    速度がより大になることを述べている.

    (2}:P一二〉ロフェノールリン酸 1

    一 238 一

  • 3

    :16

    i4

    12

    10竃』8

    益6

    4 2

    P一ニト[】フェノ「ル

    P一ニト甲弱漱

    /X, ノ 、 ・痛

    i XN. i ノ 、 ・ / ’、P一:’FDフ.ノ→レ

    ノ ’N (酸性)

    1 / 一XN Nノ! @ \

    〈N 260 280 320 360 400 4t-fO det 波長 mμ

    :図3P一=トロフェノールおよびP一ニトロフェノー

    ルリン酸の吸光度曲線

    大森1)により合成されBessey, Lowry, Bro-

    lck7)により広く紹介された一次的色原性基質であ

    る.pH10.3グリシン緩衝液に血清を加えて38。C,

    30分野反応させてから0.02N NaOHを加えて強

    アルカリ性となし,生じた黄色色調を400~420

    mμ部で吸光度を測定し活性度を求める.図1に

    示すようにアルカリホスファターゼにより本基質

    は水解されてp一ニトロフェノールを生じ,これ

    はpk 7.2の酸アルカリ指示薬であるから強アル

    カリ性にすれば黄色を呈する.基質および遊離し

    た色素の吸光単曲線を図3に示す.この基質はア

    ルカリホスファターゼによりBodanskyによる

    .β一グリセmリン酸8)の2~3倍の速度で水解さ

    .れ,フェノールフタレインニリン酸の25~30倍の

    .速度で水解され,また少量の血清(0.05m1)で

    測定可能であり,操作も簡単であり,更に遊離さ

    .れたp一ニトmフェノールのアルカリ性のもとで

    の分子吸光係数が大であるため,少量の検査材料

    で正確,迅速に酵素活性度を測定し得る.

    ③フェノールリン酸

    この色原性基質を用いるアルカリホスファター

    ゼ活性度測定法はKing&Armstrong9)により

    報告され,後にKing&Kindlo)により改良さ

    .れた.この基質は二次的色原性基質に属し,アル

    カリホスファターゼにより水解されて図2のよう

    ・にフェノールを遊離する.フェノールはそのまま

    では呈色しないが,アルカリ性にした酸化剤の存

    在のもとで4一アミノアンチピリンと縮合して赤

    ::ワ・窃譜 繍争

    4=アミノアンチピリン フェノール 赤色のキノノ鼠戸

    図 4

    色のキノン物質を生ずる(図4)ので,これを

    500mμ部で吸光度を測定して酵素活性度を求め

    る.実際にはPH 10.0重炭酸緩衝液に血清を加え,

    37℃で15分間反応させ,次いでアルカリを加え,

    4一アミノアンチピリン液,フェリシアンカリウ

    ム液を加えて発色させる.操作は①,②に比しや

    や煩雑ではあるが,除蛋白操作なしに少:量の血清

    で短時間に酵素活性度を測定し得る利点がある.

    2)酸フォスファターゼの基質

    血中のこの酵素と前立腺癌との関係は古くから

    知られている.酵素の活性度測定にはアルカリフ

    ォスファターゼの活性度測定に用いられる基質を

    pH 5~6の酸性域の緩衝液に溶解させ,これに被

    検血清を加えて370Cで反応させる.反応後,アル

    カリを過剰に加えて発色させればよい.たとえば

    Hugginsら2)はフェノールニリン酸をPH 5.4酢酸

    緩衝液に溶解して使用している.この方法では,

    特に尿の酸ホスファターゼ活性度を測定するばあ

    い透析により尿中の色素を除去する必要がないの

    で尿をそのまま検査に使用できる.Hudsonら12)

    はp一ニトロフェノールリン酸をpH 5.4酢酸緩衝

    液に溶解して使用し,Kind&King11)はフェ

    ノールリン酸をpH 4.9クエン酸緩衝液に溶解して

    用いている.

    著者らのはBPB一八リン酸を合成し,組織の酸

    ホスファターゼの検出を試みた.

    腎組織の新鮮凍結切片をpH 4.7にしたBPB一ニ

    リン酸基質液に入れて20℃,工5~60分間反応さ

    せ,昇乗を飽和した1%酢酸に10分間浸し,次で

    1%酢酸で洗瀞後,酢酸グリセリンに封入して検

    鏡すると糸球体は染色せず細尿管のある部分に青

    染する顯粒が見られる.これは腎の酸ホスファタ

    ーゼにより水解されて生じたBPBが,酸性のも

    とで蛋白に吸着され青斑されるのであり,この部

    分は酸ホスファターゼの存在を示すものと考えら

    一 239 一

  • 4

    れる.

    この一次的色原性基質を法医学に応用してみる

    と,BPB一ニリン酸基質液を精液のついた布地に

    つけると,精液中の酸ホスファターゼにより水解

    され,1分後には精液の付着した部分が青議す

    る,従来,p一ニトロフェノール法が精液の酵素的

    検出法として使用されているが,その黄色が見難

    いことと,アルカリ性にしなければ発色しない点

    などから,このBPB一ニリン酸を使用すればより

    簡便であろう.

    3) コリンエステラーゼの基質

    コリンエステラーゼはアセチルコリンを水解す

    る酵素をいうが,1血清中のコリンエステラーゼは

    コリン酪酸エステルをアセチルコリンよりも大な

    る速度で水解し,更に他のコリンエステルを水解

    する非特異的酵素(Pseudo-cholinesterase)で

    ある.肝臓で生成され血清に供給されていること

    はほぼ確実であり,肝疾患に際して鋭敏に活性度

    が減弱するので最近,肝機能検査法として臨床的

    に応用されるようになってきている.この活性度

    の減弱が血清アルブミンの減少とほぼ同一の意義

    を有しているので,肝疾患のみに特異的とはいえ

    ないが,活性度の増加は,ほとんどネフローゼの

    ばあいに限られ,診断的意義が大きいといわれて

    いる.

    ①O一ニトロフェノール酪酸 Mainユ2)は。一, m一, p・ニトロフェノールの脂

    酸エステルを用いて血清コリンエステラーゼ活性

    度を測定するばあい,同時にA一エステラーゼに

    よっても水解されることを認め,これらのうち

    A一エステラーゼによる。位のエステルの水解速

    度はm一,p一位のエステルにくらべ遅いことが判

    明した.Aldridg13)は,ヒト血清中には水解酵素

    としてコリンエステラーゼとA一エステラーゼが

    主として含まれ,後者は酢酸エステルを酪酸エス

    テルよりも速やかに水解することを述べ,Adams

    ら1のは,ヒト血清コリンエステラーゼが酪酸エ

    ステルを酢酸エステルに優先して水解することを

    認めている.それゆえMainら15)は。一ニトロア

    ェノール酪酸を合成し,ヒト血清コリンエステ

    ラーゼの基質として充分使用可能なことを述べ

    た.表1はMainら15)の実験結果で。一ニトロフ1

    エノール酪酸がコリンエステラーゼに高度の特

    異性を示すことがわかる.この基質は一次的色原

    性基質であり,pH 7.6リン酸緩衝液に基質を溶解・

    し,これに少量の血清(O.004~0。1m1)を加

    えて25℃,10分間反応させ出現する黄色,すなわ・

    ち。一ニトロフェノールのイオン化したものの色

    をそのまま400mμ部で吸光度を測定し酵素活性

    度を求める.基質およびニトロフェノールの吸光

    度曲線を図5に示す.なお,同一1血清をジイソブ’

    ロピルフルオロリン酸(DFP)で処理してから

    同様に操作すればA一エステラーゼの酵素活性度

    が求められるから,この値を補正すれば正確なコ

    リンエステラーゼ活性度が得られる.

    この基質を用いると微量の血清で,しかも最少

    限の操作過程により短時間に正確なコリンエステ

    ラーゼ活性度が求められるので,優秀な基質と思

    われる.ただ合成方法の条件がやや難しく,結晶

    化し難いという短所がある.

    ② フェノール安息香酸

    Gomori16)により供試された二次的色原性基:質

    である.pH 7。6に調製した基質液に血清を加えて

    反応させると酵素的に水解されフェノールを遊離

    表1 =トロフェノールエステルに対するヒト血清コリンエステラーゼ

    活性度とAエステラーゼ活性度の比較15)

    活性度

    基 質

    0一=トロフェノール酪酸

    0・ニトロフェノール酢酸

    P一ニ トロラェノール酪酸

    p一ニトロフェノール酉乍酸

    (遊離したニトロフェノール μmoletml血清1分)

    一v一一一一一ptコリンエステラーゼ Aエステラーゼ

    2. 59 O.068 L50 O. 78 0. 66 O. 27 0. 32 1. 04

    一 240 一

    コリンエステラーゼ

    Aエステラーゼ

    42

    1.9

    2. 41

    0. 31

  • 5

    ・r,o

    O.8 1

    o.6fr VYA

    t O・4

    0,2

    02tht 250

    N

    N

    N

    一 〇一ニトロフェノー)レ(pH 9)

    一←←榊+@O一ニトロフェノール(pH4.5)

    一一一一 Z一二ニトロ7エノール酉各酸

    Nxs N

    300 3so 400 4 so soo-gstbo

    一波長 mμ

    図5Q一ニトロフェノールおよび。一=トロフェノー

    ル酪酸の吸光度曲線15)

    する.これにジアゾ5一ニトロー2一アミノアニ

    ソールを加え,終濃度が4~6%アルコールにな

    るようにアルコールを加えると全く安定な栓赤色

    の色素を生ずる17).490mμ部で吸光度を測定す

    れば酵素活性度が求められる.

    .③ β一カルボナフトオキシコリン

    Seligmanら18)により合成供試された二次的色

    原性基質である.この基質は血清コリンエステラ

    ・一 ュにより水解されてβ一ナフトールカルボン酸

    を遊離する.これは自然に脱炭酸されてβ一ナフ

    下一ルを生ずる.生じたβ一ナフトールにジァゾ

    ー=ウム塩を反応させて紫色のアゾ色素となし,こ

    れを酢酸エチルで抽出して540mitL部で吸光度を

    測定し酵素活性度を求める.彼らは主に融点134

    ~136℃のβ一カルボナフトオキシコリンのヨウ

    f(ヴσ一環・高田.、①OC。。H・CH、C・、N+…、・、エ・

    ミ :↓ co・(目然に脱炭酉鋤

    蝶蝶蹄→継短謄 ヲオルトアニシジノ (紫色)

    す.

    4)

    5

    4

    ロ。r,,3

    2

    図 6

    化物を用いたが.6一プロム化合物もコリンエス

    テラーゼの基質になり得ることを報告している.

    以上の反応機構を図6に示す.

    アゾ色素を酢酸エチルで抽出した液の吸光度曲

    線,は図7⑳如く550皿風部付近に極大吸収を示

    1 tz6Tt

    図7

    500 600 700波長 辺μ

    DME==;.一i’:一’

    E…分子吸光係数

    G…濃度9/1

    CL D…吸光度 L・一ヲ己日長C皿

    ロイシンアミノペプチダーゼの基質.

    ロイシンアミノペプチダーゼは腎,肝,小腸粘

    膜,脳,血液に広く分布し最近,血清のロイシン

    アミノペプチダーゼ活性度測定が肝胆道疾患の鑑

    別に役立ち,Kowlessarらによると,この酵素

    のアイソザイムを測定することにより急性流行性

    肝炎と細面磁性肝炎の鑑別を容易にし,Schδn

    ら19)は閉塞性黄疸のばあいに血清ロイシンアミノ

    ペプチダーゼ活性度測定が,アルカリホスファタ

    ーゼ活性度測定よりもより診断的価値があること

    を述べ,近時世人の注目を喚起しつつある.

    ①L一ロイシルーP一網トロアニリド

    E

    1.2

    O.9

    i o.6

    O.3

    L一日イシン

    P一ニトロアニリド

    P一ニトロ

    アニリノ

    一 241 一

    一250 300 350 400 450

    →波長mN図8L,UイシソP一ニトロア=リドおよびP‘ニトロ

    ァ=リソの吸光度曲線

  • 6

    O,02

    .E

    耳αOl

    tpH 830 ec

    丁 2 3 一一 γnU/n泥 (酉孝素量)

    図9 ロイシンアミノペプチダーゼによるL一ロイシ

    ンP一ニトロアニリドの水解

    f50

    120’ミ

    導・・

    差6。

    / 30

    」’51・・溺,、)孫6’0

    図10ロイシソァ’t〆ノペプチダーゼによるL一ロイシ

    ンp.ニトロァニリドの水解速度

    最近Tuppyら20)により合成された一次的色

    原性基質であり,酵素的水解により黄色の色素で

    あるp一ニトロアニリンを遊離する.基質および

    p一ニトnアニリンの吸光度曲線は図8の如く,

    基質の極大吸収は紫外部にあり可視部ではほとん

    ど示さないので無色である.p一ニトロアニリンの

    極大吸収は380 mlt部にあるので380~400mμ

    部で吸光度を測定して酵素の活性度を求める,

    なお400mμでの分子吸光係数は10,800である.

    図9は豚腎から精製したロイシンアミノペプチダ

    ー一一 狽奄ノよるこの基質の水解を示したもので酵素

    量に比例したp一ニトロアニリンの生成が認めら

    れる.なおLineweaver&Burkの式に従い1/vと1/sをプロットすると函10のようになり,

    この基質がロイシンアミノペプチダーゼに対し高

    度の親和性を示すことがわかる.

    この基質は③のし一ロイシルーβ一ナフチルアミド

    よりも優れた基質である。それは,p一ニトロアニ

    リンがβ一ナフトールをジアゾ化して呈色.させた

    アゾ色素の2倍以上の分子吸光係数を示すことに

    よる.

    ②DL一ロイシルーm一アミノ安息香酸

    降矢21)n)はm一アミノ安息香酸のペプチドを多

    種合成してその酵素的水解の特異性を検し23),こ

    れらのうちで DL一門イシルーm一アミノ安息香酸

    が,ロイシンアミノペプチダーゼの基質として適

    しており,少量の1血清を用い短時間に酵素活性度

    を測定し得ることを認めた2D.

    この基質に血清を加えPH 8,37。Cで所定立聞反:

    応させると酵素的に水解されてm一アミノ安息香.

    酸を生じる.このm一アミノ安息香酸をジアゾ化

    してアゾ色素を生成させ,540m/tL部で吸光度を一

    表2. Sch6n ら・による19)

    番号

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    11

    12

    13

    14

    15

    16

    17

    18

    19

    2e

    21

    ’22

    23

    女.

    ロイシンア こ ノヘフ

    チダーーゼ

    250

    144

    103

    102

    101

    78.5

    72

    7e.7

    70

    69

    68.4

    58.8

    56

    54

    53.8

    53.8

    47.8

    46.6

    45

    45

    44.6

    40.7

    39.6

    アルカリホスフアタ 診断一ゼ

    10

    41

    7

    54

    87

    28

    19

    50

    6

    39

    6

    15

    13

    14

    30

    12

    13

    7

    15

    10

    16

    8

    9

    膵癌

    閉塞性黄疸

    急性肝炎

    閉塞性黄疸

    lt

    急性肝炎

    肝へ癌転移

    急性肝炎

    肝への癌転移・

    Zノ

    /t

    ノノ

    11

    11

    胆嚢炎

    tl

    n

    lt

    肝への癌転移2

    胆嚢炎

    慢性肝炎

    一242一

  • 7

    表3 Schδn らによる19)

    番号

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    11

    12

    13

    14

    15

    16

    17

    ロイシンア ミ ノペ

    フチターゼ

    140

    139

    135

    123

    105

    102

    102

    GP田

    325

    72

    304

    164

    275

    49

    38

    99.51 45

    97.21 64

    93.11 254

    GO田

    87

    54

    104

    52

    66

    15

    23

    18

    32

    診断

    急性肝炎

    急性膵炎

    急性肝炎

    閉塞性黄疸

    急性肝炎

    急性膵炎

    閉塞性黄疸

    91 急性肝炎

    82.il 25 i 11・急性膵炎

    721281・7雛醜女 65.51 O 18女 58.6

    男 56.5

    11 9

    17 1 20

    肝への癌転移層

    56.3

    56.1

    ユ8 25 胆嚢炎127 i 152

    18 女・引女

    56.1! 78 1 10

    54,71 124 i 95

    20 男 54.31163 65 i肝への癌転移

    21

    22

    23

    男 47.8, 9 , 1・!. 胆嚢炎

    男 il,,.g・61L:Lq 1-EL,1

    女 36,5i14 18 1肝への癌転移

    測定すれば酵素活性度が求められる.

    ③L-mイシルーβ一ナフチルアミド

    Nachlasら24)により合成され供試された二次

    的色原性基質である.pH 8に調製した基質液に血

    清を加え37。C,30分間反応させると酵素的水解を

    受けβ一ナフトールを遊離する.これにジアゾニ

    ウム塩を加えると図6に見られるような紫色のア

    ゾ色素を生成するから540mμ部で吸光度を測定

    して酵素活性度を求める.

    正常値は男!8-37単位,女16-30単位であり,

    胆嚢炎,肝臓癌などではGOT, GPTよりもロ

    イシンアミノペプチダーゼの方が早期に高い活性

    を示すという19).なお,諸種疾患のばあいの血清中

    の本酵素および二,三の酵素を表2,表3に示す.

    5) P一グルクロニダーゼの基質

    β一グルクロニダーゼは哺乳動物の肝,腎,脾,

    精巣上体など諸組織および体液中に含まれ粘多糖

    類の異化作用を司る.また癌組織に特に高い活性

    度が見られる.実験的に1一メントールを注射して

    肝障害をおこさせたマウスの肝のβ一グルクロニダ

    ーゼの活性度が非常に増加したことも報告されて

    いる26).臨床化学的には尿中に排出される抱合ス

    テロイドを測定するばあいには欠くべからざるも

    のである.

    ①Talalayら26)はフェノールフタレインリン

    酸ナトリウムの水溶液をウサギに注射しウサギの

    尿中に排出されるフェノールフタレインモノーβ一

    グルクロニドを単離して精製し結晶を得た.これ

    は一次鼠色原性基質であり,pH 4.5に調製した基

    質液に血清を加え38。C,1時間反応させるとフェ

    どrmJExrm3σ,0σ0

    25,蜘

    へ\2α伽

    細,卿

    5,,ご1θ

    フ■ノールtt.タレインモノーβ一クンレクロニド

    N .一NN !’ ’X 一’ XN. t v’ N x x x x N N x N s h...r N 7エ1・一ルフタレイ1! N

    ’i ’; ;i ’=

    1評}25認

    ,、誌

    ,5ミ

    ・峨

    ・・ミ

    ,L_=ここ==ご二_一____」.こ量レ 3ぎ。 ごコ‘ 4一二[〕 4θo 面 560

    ミ ト ・反工て 自、μ

    図11 フェノー /vフタレイソモノー,3 一グルクiコニド

    およひフェノールフタレインの吸光度曲線

    COOH

    響ゆ〆升μ『蹴

    聯 の珊 フェノールフタレイン (アルカリ性で 紅e)

    図 12

    ノールフタレインを遊離し,これにアルカリを加

    えてpH 10.0~10.4とすれば安定した紅色の色調2)

    が得られる.フェノールフタレインのアルカリ性

    での色の極大吸収は図11に示すように550~555

    mμ部に存し,分子吸光係数は26,600であり,フ

    ェノールフタレインモノーβ一グルクロニドは415

    ~420mμ部に極大吸収部を有しこの部における

    一 243 一

  • 8

    分子吸光係数ははるかに小さく130を示すにす

    ぎない.従って遊離したフェノールフタレイン量

    を,アルカリ性にして550mμ附近での吸光度を

    測定することにより求めれば酵素活性度がわか

    る.基質の構造式および酵素的水解は,図12に示

    すとおりである.

    ②フェノールβ一グルクロニド

    Kerrらにより報告された基質であり27),二次

    的色原性基:質であり,pH 5.2クエン酸緩衝液に血

    清や肝ホモジネートを加え,38℃で一定時間反応

    させると基:質が酵素的に1水解されてフェノールを

    遊離する.このフェノールをFolin-Ciocalteuの

    試薬2S)を加えて発色(青色)させ,赤色ブイルタ

    ーにより吸光度を測定し酵素活性を求める.

    6)・カルボキシペプチダーゼの基質

    カルボキシペプチダーゼの活性度測定は膵液,

    胃液などに応用される.Dunn&Smith29)によ

    り二次的色原性基質であるカルボベンゾキシグリ

    シルーβ一1・一ナフチルアラニン,またはカルボベン

    ゾキシグリシルーβ一2一ナフチルアラニンが酵素活

    性度測定のために用いられている.後者は前者

    の4倍の速度で水解される.PH 7.4にした基質液

    に消化液を加え所定時間反応させ,遊離するβサ

    フトールにジアゾニウム塩を反応させると紫色の

    アゾ色素(図6,図7)を生ずる.540miZ部で

    吸光度を測定し酵素活性度を求める.

    Ravinら30)は,カルボナフトキシーDL一フェニ

    ルアラニンがカルボキシペプチダーゼの優秀なる

    基質であるこ.とを述べ,生物体液に応用し好結

    果を得ている.この基質は酵素により水解され

    β一ナフトールカルボン酸を生じる.これは自然に

    脱炭酸されβ一ナフトールとなるからジアゾニウ

    ム塩を加えると図6の如き工作により紫色のアゾ

    色素を生じる.これを酢酸エチルで抽出し540mμ

    部での吸光度を測定し酵素活性度を求める.

    7) トリプシンの基質

    Tuppyら20)によりNα一ベンゾイルーDL一アルギ

    ニンーP一ニトロアニリドが合成され供試された.

    pH 8に調整した基:血液に酵素液を加え37。C,60

    分反応させると酵素的水解により遊離したp一=

    トロアニリンのために黄色を呈してくる.これを

    除蛋白せずそのまま400m双部で吸光度を測定し

    て酵素活性を求める.水解速度は酵素量に此弄す

    る.

    3) オキシトチナ・一一 tfの基質

    オキシトチナーゼは脳下垂体後葉から分泌され

    る一種のホルモンであるオキシトチンを水解する

    酵素である.この酵素の基質としてL一シスチン

    ビスーP一ニトロアニリドがTuppy ら20)により報

    告されている.これは一次的野原性基質であり,

    妊婦血清に応用するばあいはpH 7.4にした基質液

    に血清を加え30℃で5分反応させれば充分であ

    り,基質が酵素により水解されp一ニトロアニリ

    ンを遊離し黄色は呈する.これを4eOmμ部で吸

    光度を測定し酵素活性度を求める.

    一次的色原性基質であるグリシンーp一ニトmア

    ニリド,L一ロイシンーp一ニトロアニリドも血清オ

    1500

    〔1200§

    ミ900歪

    〕 600

    300

    グリンンーP一ニトロアニリド

    .調つ)や

    一vナ轟輪 30 60 . 90 120 i50 1σ3倣s」Wm。の

    図131血清オキヅトチナーゼによる色原性基質の水解

    キシトチナーゼにより水解されるが,L一シチシ

    ンービスーP一ニトロアニリドの方が厭なるKmを示

    し,すなわち酵素に対する親和性が大であるた

    め,これが適当な基質と思われる(図13).

    9) リパーゼの基質

    リパーゼ測定は急性膵疾患の診断の一助として

    血清アミラーゼ測定と同様に重要である.

    血清中にある脂酸エステルを分解する酵素を

    2群にわけ,短鎖の脂酸エステルを水解するもの

    をエステラーゼと称し,肝,腎,膵,血清中にあ

    り,タウロコール酸により部分的に阻害される.

    一方,長鎖の脂酸エステルを水解するものをリバ

    ー 244 一

  • 9

    一ゼと称しタウロコール酸により促進され31),主

    として膵,血清中に存在する.

    ①β一ナフトールラウリン酸

    Seligmanらにより初めて合成され32),種々

    その酵素的特異性を検討された33)二次的色原性基

    質である.基質液に血清を加えると水解されて

    β一ナフトールを遊離するので,これにジアゾニ

    ウム塩を添加し紫色のアゾ色素となし(図6),型

    の如く540mμ部で吸光度を測定して酵素活性度

    を求める.

    ,7eo

    .600

    吸500光.400

    燦 .300

    ,2CO

    ,100

    贈げ弓ts3

    A

    Bり八。一ゼ

    活li生度

    c 海山テラーゼ

    タウ占}搬活賑添加なし

    .OOI .003 .005 .007

    膵mg

    ’図14 リパーゼ,エステラーゼ活性度の測定

    (ぴ…嚇・Hs・畦犠(◇OH・・H3・嚇C…

    β一ナフトー,レラ7Vン酸 ∫3一アフトール ラウリン酸

    この基:質は:水に難i溶性ゆえ,pH 7.4ベロナール

    緩衝液にコロイド懸濁液として用い,血清は0.2

    mlあればよく37。C,5時間反応させる.オリー

    ブ油を基質とするCherry, Cranda11法鋤では

    血清2ml,反応時聞は24時間を必要としTietzに

    よる変法35)を用いても.血清量21n1,反応時間は

    6時間必要であるのに此べれば優れているといえ

    よう.

    .血清O.2 mlにヒト膵ホモジェネートを加え

    て,タウロコール酸を添加したばあいと添加しな

    iU・ばあいのβ一ナフトールラウリン酸の水解速度

    は図14のようになり,B一曲線がリパーゼ活性度を

    示し添加した膵ホモジェネート量に比例してリパ

    ーゼ活性度も高くなってゆく.

    ② フェノールラウリン酸

    Seiferらss)により合成され供試された二次的

    色原性基質である.pH 7.4ベロナール緩衝液に懸

    濁したフェノールラウリン酸に一血清0.2mlを加

    え37℃で30分反応させ,酵素的水解により遊離し

    たフェノールを,Folin-Ciocarteuのフェノール

    試薬28)を加えて発色させ,遠沈後,赤色フィルタ

    ーを用いて吸光度を測定し酵素活性度を求める.

    この方法は,血清量および反応時闇が短縮され,

    オリーブ油を用いた測定結果と一一一・致した価が得ら

    れる点からみて良い測定法と思われる.

    ②p一ニトロフェノールラウリン酸

    著者ら4)は一次的色原性基質であるp一ニトロ

    フェノールラウリン酸をはじめて合成し,酵素特

    異性を検し,血清リパーゼ測定のための優れた基

    質であることを報告した.pH 8.2ベロナール緩衝

    液にポリビニールアルコールを加えてp一ニトロ

    フェノールラウリン酸のコロイド懸濁液をつく

    り,この基質液に」血清0.2mlを加えて,37。C30

    分反応させると酵素により水解されp一ニトロフ

    ェノールを遊離してくる(図1).これに三三のア

    ルカリを加えてPH 8.8となし,420mμ付近で吸

    光度を測定し活性度を求める.著者らはp一,m一,

    o一ニトロフェノールラウリン酸を合成し供試した

    が,このばあい酵素的水解により生じたp一,m一,

    o一ニトロフェノールのpkはそれぞれ7.2,8.4,

    一 245 一

    k. O.2

    血目

    @ /.0

    くa as.」an」」 〈α一cr〕」αS A」 a. Q一 cL at cL cl Q a一’ aJ’ aP一 a o一’ a. 61

    zzzzzzz zzzzzz2 1 1 1 1 t l l t L i l t l t

    Qaaft.ooE aaaaooE図15膵および血清によるニト・フェノール脂酸

    エステルの水解注=p-NPA……p一 =トロフェノール酢酸

    P-NPP……P一州トロフェノールプロピオソ酸 p-NPB……p一=ト・フェノール酪酸 p.NPL……p.ニト・フェノールラウリソ酸 o-NPB……o一ニトロフ=ノール酪酸 o.NPL……o一ニト・フェノールラウリソ酸 m.NPL……m,ニト・フェノールラウリン酸

  • 10

    7.1であり,pk値が低いほど測定に便利なわけ

    である.更にそれぞれの分子吸光度を求めたとこ

    ろ,m一ニトロフェノールははなはだ低い値であ

    り,かつpK 8という値と相まって基質としては劣

    ることがわかった.o一ニトロフェノールの分子吸

    光度もp一ニトロフェノールの約30%であるから

    p一ニトロフェノールラウリン酸を基質とした.

    ウサギの肝,腎,膵のホモジェネーートおよび1血

    清によるニトロフェノール脂酸エステルの水解を

    測定すると図15の如く,膵ではp一ニトロフェノー

    ルラウリン酸の水解値が非常に高く血清はp一ニ

    トUフェノール酢酸の水解値が最も高く肝,腎で

    は血清とほぼ同様な態度を示した.前者はリパー

    ゼの活性,後者の群はエステラーゼ活性を思わせ

    る.

    ついで,p一ニトロフェノールを水解する酵素活

    性の細胞内分布をしらべるために,比較的に分画

    しやすいウサギの肝ホモジェネートを作りHoge-

    boom法により37)ミトコンドリア,ミクロソーム,

    核,上清とに分画しp一ニトロフェノールラウリン

    酸の水解を測定した.この結果をde Duveの表

    現法により図示すると99)図16の如く,ミクロソー

    ム部にこの基質に対する酵素活性が高いことがわ

    かる.

    次に,ウサギ肝を超音波で破壊し100,000g×1

    時間の上清を澱粉を支持体とする電気泳動法によ

    4

    葺2

    N M .P S 蛋白一代目一一一L一一一一 1000/o o 50

    図!6P一ニトロフェノールラウリン酸の酵素的水解

    の家兎肝細胞内分布

    N…核 M:…ミトコンドリア :P…ミクロソーム S…上清

    O.4

    g摯 o・3

    択O.2

    o.t

    7 11

    11

    o一一一〇P一ニトロフエ/「ル

    1.,.o,zトロ騰

    瓶菰 一Scrn, O +5cm

    図17ウサギ肝抽出液の電気泳動pH 7.4]XE/20リソ酸緩衝液60V,1.2mAicm2,40時間

    餐・・

    P一二トロ7エノOレ

    ラウリン酸の水角4

    工1.0電

    二陣

    (+) o

    オリーフつ由の水解

    (ny>

    (+) o (一) 図18膵抽出液の電気泳動 pH 8.2M/20べ・ナール緩衝液80 V,1 mAicm220

    時間

    り酵素を分離し,p一ニトロフェノール酢酸,0一ニ

    トロフェノール酪酸,p一ニトロフェノールラウリ

    ン酸の酵素的水解をしらべると図17の如く,電気

    泳動的に2つの部分が見られ,腎でも同様に2つ

    の部分に分けられる.

    降矢ら39)はウサギの,肝,腎の臓器抽出液を澱粉

    を支持体とする電気泳動法により分画し,その画

    :分にっき数種の脂酸エステルおよびオリーブ油の

    水解を検した結果から,膵ではオリーブ油を水解・

    する三分によりp一ニトロフェノールラウリン酸も

    水解されることを確認した(図18).このことから

    p一ニトロフェノールの長鎖脂酸エステルは,いわ

    ゆるリパーゼにより水解されることが判明した.

    また和田43)はp一ニ トロフェノールラウリン酸を

    一 246 一

  • 11

    ネフローゼ

    腎 炎

    肝硬変黄 疸

    肝 炎

    糖 尿病

    悪性腫瘍

    其 他

    oA/6>1.4 0総蛋白>6%

    ◎L4>妬>i.0δ6%〉総蛋白>4%

    ●1.0>A/6 杢4%〉総蛋白

    蚤・獅蚤・

    ● 己

    1 e @ofp@

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    o o

    o ooo

    r. ’一’ O.4... O,8 0.D (tt20rn!D

    図19諸種患者血清によるp一ニトロフェノールラウリン酸の水解

    用いて血清リパーゼを定量し,この際,コリンエ

    ステラーゼの阻害剤であるエゼリンを添加して

    も,基質の分解速度に関係のないことを認め,コ

    リンエステラーゼはこの基質を分解しないと述べ

    た.p一丁トロフェノールラウリン酸によるリパー

    ゼ測定法を,本学中検・化学部へ提出された58例の

    患者血清について応用した結果を図19に示す40).

    一血清によるp一ニ トロフェノールラウリン酸の水

    解は急性膵炎で増加し,ネフローゼや重篤な腎機

    能障害を伴なう糖尿病未期や肝硬変,悪性腫瘍で

    は低下し,特に重篤な腎機能障害を伴なう糖尿病

    では,急激なNPN上昇に先行してP一ニトロフ

    ェノールラウリン酸の酵素的zk解の低下が見られ

    たのは興味深い.

    ④ プロムフェノール青ラウリン酸(以下BPB一

    ラウリ.ン酸と省略)

    降矢ら39)はBPBとラウリルクロリドをアセト

    ン中でピリジンと反応させBPB一ラウリン酸を合

    成し家兎の肝,腎,膵のホモジェネートを作りHo一

    ・・B<:=濃-BPBラウ,。酸

    (無色) (黄色)

    +ラウ・・酸.坦BPB+ラウ・ソ酸 (青色)

    geboom法37)により核,ミトコンドリア,ミクロ』

    ソーム,上清の露分にわけ,各種脂酸エステル,

    BPB脂酸エステルの水解態度をしらべた.

    BPB一ニラウリン酸は次のように酵素的zk解さ.

    れる.BPBのpkは4であるのでpH 8に調製した基質液を用いて酵素活性をしらべれば,反応後.

    アルカリを加えることなしにそのままBPBの遊.、

    離した量がわかるので便利である.実際にはBPB一.

    ニラウリン酸をアルカリ水解して, BPB一モノラ

    ウリン酸となしてからこれを酵素活性度測定のた:

    めに用いる.

    まとめ

    以上,Chromogenic substrateの紹介と臨床1

    化学への応用を述べた.このChromogenic sub-

    strateは非天然の基質であるから,これを用い

    た成績をただちにその構造上の類似性から,既知』

    の酵素作用に結びつけるのは危険である.

    また,精製純化された酵素と,組織や血清中の.・

    酵素とでは同一基質に対する水解速度が異なって

    くる.Hi11ら41)はChromogenic sqbstrateで・

    あるL一ロイシルーβ一ナフチルアミドは,精製さ

    れたロイシンアミノペプチダーゼにより非常に小.

    なる速度で水解されるが,血清や組織などによる、

    一 247 一

  • 12

    水解速度は大で.あり,これは血清や組織中の他の

    酵素によっても水解されるためであろうと述べ

    ている.Behalらca)も血清中ではChromogenic

    substrateは幾つかの酵素により水解される.可能

    性があるといっている..しかし,これらの点を三

    三し適当な処理を行なったり,酵素特異性を充分

    検討した上で使用するならば,測定操作が簡単で

    測定所要時間が短かく,少量の検査材料で酵素活

    性度を測定しうる.したがって同時に多数の検査

    材料の処理が可.能であり,自動的測定も可能であ

    ろう.今後このようなChromogenic substrate

    の開発は酵素化学的診断の上に大いに貢献するで

    あろう.

    .終りに臨み御指導御校閲を賜わった松村教授に深謝

    いたします.

    (本稿の大要は, 東.京女子医科大学学会第124回例

    ・会(昭和39年2月28日)の席上で講演した.)

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