簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

7
未来を拓く栄養経営士のためのスキルアツプマガジン 未養経営エキスバ 201912月 No 16 NttTR:TI口 N MANAEEMENT EXPERT 特別企画 ξ 誂蝙鰊凸藪晰冬輻蝋踪黎聰 2018年 4月 の診療報酬改定にて抗菌薬適正使用支援加算が新設された。 これは抗菌薬適正使用支援チームによる不要な抗菌薬の使用を低減する 取 り組み(薬 剤耐性〈 AMR〉 対策)を 評価するものであり、 MRSAな どの耐性菌の発生を低減するなどのアウトカムにつなげることが求められている。 この取 り組みのなかで注 目されているのが乳酸菌を使って免疫抵抗性を上げ、 易感染状態からの離脱をめざすものである。 具体 的に手し酸菌をどのように活用 し、どのようなアウトカムにつなげているのか? 最新の知見と事例 をもとに考察 していく。

Transcript of 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

Page 1: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

未来を拓く栄養経営士のためのスキルアツプマガジン

未養経営エキスバート 201912月 号No 16NttTR:TI口 N MANAEEMENT EXPERT

特別企画

ξ

誂蝙鰊凸藪晰冬輻蝋踪黎聰

2018年 4月の診療報酬改定にて抗菌薬適正使用支援加算が新設された。

これは抗菌薬適正使用支援チームによる不要な抗菌薬の使用を低減する

取り組み(薬剤耐性〈AMR〉対策)を評価するものであり、

MRSAなどの耐性菌の発生を低減するなどのアウトカムにつなげることが求められている。

この取り組みのなかで注目されているのが乳酸菌を使って免疫抵抗性を上げ、

易感染状態からの離脱をめざすものである。

具体的に手し酸菌をどのように活用し、どのようなアウトカムにつなげているのか?

最新の知見と事例をもとに考察していく。

ジ蒙

Page 2: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

解 説

薬剤耐性菌が増加する

抗菌薬の不適切な使用

2018年 4月 の診療報酬改定で抗菌薬適正使用支援加

算が新設されました。これは感染症防止対策地域連携

加算を算定 している医療機関が抗菌薬適正使用支援

チームを組織し、抗菌薬の適正な使用の推進を行って

いる場合に入院初 日に100点 算定可能なものです。本

加算の新設は、薬剤耐性菌による感染症の低減につな

げるための施策の一環であると考えています。

薬剤耐性菌とは、抗菌薬の不適切な使用などによっ

て薬剤耐性を有した細菌であり、薬剤耐性黄色ブドウ

球菌 (MRSA)、 薬剤耐性肺炎球菌 (PRSP)、 多剤耐

性の緑膿菌 (MDRP)や アシネ トバクター(MDRA)、

基質特異性拡張型βラクタマーゼ (ESBL)産生菌など

が主な薬剤耐性菌です。世界的に薬剤耐性菌や多剤耐

性菌は増加 してお り、それらの感染症による死者も増

えています。さらに国際的に日本は薬剤耐性菌の出現

頻度が高いとされています。超高齢社会に突入した日

本では高齢患者が多 く、そうした方々は栄養状態や免

疫能が低いため、他国と比較 して薬剤耐性菌の出現頻

度が高 く、治療が困難になるのは当然であると言えま

す。また、日本は国民皆保険制度であるため、治療や

処方された薬剤に対するヘルスリテラシーが低 く、ウ

イルス風邪などに対 して安易に抗菌薬が処方された

り、患者側も簡単に抗菌薬の服用を中断したりしがち

です。結果 として、そうしたヘルスリテラシーの低さ

が薬剤耐性菌の高い出現頻度につながっているのでは

ないかと思います。

細菌の攻撃から身を守る抗菌作用は、抗菌薬の使用

と生体の防御反応 (免疫)の バランスから成 り立って

います。しかし、現実には薬剤に頼 り切っている状況

です。抗菌薬適正使用支援加算が新設された今、薬剤

2 栄養経営エキスパート2019 No 16

抗剤耐性菌と乳酸菌による感染作用の可能性

山崎 正利氏帝京大学薬学部名誉教授

に頼 り切るのではなく、免疫能を高めることを改めて

考える必要があるのではないかと思います。

腸管免疫に着目

腸内フローラを介さず免疫能を高める

食品成分バイオジェニックス

ーロに免疫 と言っても、自然免疫と獲得免疫に大別

されます。自然免疫 とはもともと身体に備わっている

もので、マクロファージなどの食細胞が身体内に侵入

した病原体や身体内の異物、障害や老化によって不要

となった身体内の細胞などを捕食、除去するシステム

です。免疫細胞上のレセプターに結合 し、免疫反応を

引き起こさせる物質を抗原と言います。一般に免疫細

胞は、侵入 してきた病原体の抗原を認識することで攻

撃を開始するのですが、マクロファージはこの抗原だ

けでなく、それ以外の病原体関連分子群を認識する特

性を有しています。つまり、抗菌作用が非特異的で幅

広 く、さらに病原体の侵入から数時間後 という早い免

疫反応が特徴です。

一方、獲得免疫は予防接種などによって獲得できま

すが、感染した病原体をリンパ球などが特異的に見分

け、それを記憶することで、同じ病原体が侵入してき

た時にピンポイントで攻撃するシステムです。自然免

疫に比べると応答までにかかる時間が長 く、数日かか

ります。

いずれの免疫もそれ単独で働 くわけではなく、自然

免疫はサイ トカインを産生してリンパ球を刺激します

し、獲得免疫もマクロファージを刺激するなど、互い

に依存 し合った関係にあります。

こうした免疫を司る細胞の7~ 8割 は、腸管に存在

しています。 したがって現在、腸内環境を整えること

が免疫能の向上につながると周知されつつあり、プロ

バイオティクスやプレバイオティクス、さらにバイオ

Page 3: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

ジェニ ックスと位置づけられる食品が普及 していま

す。

プロバイオティクスは、乳酸菌の生菌摂取などに

よって、腸内フローラ改善などの生体調整を行 うこと

です。プレバイオティクスは、食物繊維やオリゴ糖な

ど、腸内細菌の栄養物を摂取することで腸内フローラ

の環境改善を行います。なお、両者を合わせて行うこ

とをシンバイオティクスといいます。そして、バイオ

ジェニックスは、腸内フローラを介することなく、生

体調節・生体防御・疾病予防回復・老化制御などの生

体に働 く食品成分のことです。

免疫を高め細胞の代謝回転を促進する

乳酸菌 (加熱殺菌菌体 :死菌・サイレント菌)

バイオジェニックスとして活用されている物質の 1

蔦:喰百院内愛墜套壺理路殴菌――続 菌薬適正使用の取り組み一―

するだけではありません。マクロファージなどの食細

胞は、身体内の異物、障害や老化によって不要となっ

た身体内の細胞などを捕食、除去しますので体内の細

胞の代謝回転も促進され、抗アレルギー、抗炎症、抗

がん、抗疲労などの作用も期待されています。さらに

生菌よりも安定性が高 く、飲料やゼリー、タブレット

などさまざまな方法で摂取が可能です。

身体の中で異物や変性・死細胞を除去できるのは、

マクロファージなどの食細胞だけです。この食細胞を

効率よく活性化できるE.フ ェカリスなどの「サイレン

ト菌」(加熱殺菌菌体)は、さまざまな体調改善やその

維持に有効 と考えられます。細胞の代謝回転促進を図

る点から考えて、これら「サイレント菌」(加熱殺菌菌

体)を継続的に摂取することが望ましいと思います。

Eフェカリスによる腸管の自然免疫および獲得免疫の賦活 |

Eフ ェカリス

ぬ。

パイエル板 ́ イラスト:萱 登祥

① バイエル板のM細胞がE.フ ェカリスを取り込む

② 活性化マクロフアージが記憶リンパ球を刺激

③ 活性化マクロファージやNK細胞が全身へ移動、攻撃 (自然免疫)

④ マク回フアージや樹状細胞が抗原提示

⑤抗体や丁細胞が全身へ移動、攻撃 (獲得免疫)

図l E.フ ェカリスによる腸管の自然免疫および獲得免疫の賦活

表1 乳酸菌死菌原料 (取扱いメーカー別 )

つに乳酸菌の加熱殺菌菌体がありま

す。代表的な例 としてEnterOcoccus

faecalis(以下、E.フ ェカリス)の 加

熱殺菌菌体があります。これは乳酸

菌の生菌を加熱殺菌 した死菌なので

すが、私はこれを「サイレント菌」(加

熱殺菌菌体)と 呼んでいます。

通常の乳酸菌の生菌は生きて腸管

に到達 し、腸管内を浮遊 しながら有

用物質を産生し、そのまま排泄され

ます。一方、E.フ ェカリスなどはほ

かの乳酸菌 よりも分子が小 さいた

め、腸管関連 リンパ組織 (GALT)

の リンパ小節 (パ イエル板)か ら取

り込まれやすく、マクロファージや

樹状細胞を刺激 して免疫細胞を活性

化します (図 1)。 これにより、マク

ロファージなどの食細胞の攻撃力が

高まり、抗菌作用が強 く働 くとされ

ています。

この作用は乳酸菌の菌数に依存す

ることも知 られてお り、用量依存性

があります。したがつて多 くの菌数

を摂取することは、それだけ免疫系

統をより確実に刺激すると考えられ

ます (表 1)。

「サイレント菌」(加熱殺菌菌体)は

マクロファージなどの食細胞を活性

化して、免疫賦活作用に効果を発揮

鰤切igA」

腸管壁(繊毛)

ン‐l

蟻  繭  犠

削一¨一秘

プラズマ乳酸薗

EF‐ 2001

1073R‐ 1

LaCt00000us h“ iS subsp.Lac,お JCM 5805 2兆個以上

エンテロコッカス・フェカリス 7.5兆個以上

ラクトパチルス・デルブルッキー ー

※各社公表データより作成

2019 No 16 栄養経営エキスパート 3

Page 4: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

ydue S

SaC

救命救急の現場から

日本赤十字社医療センター 鰊京都渋谷区)

乳酸菌「Eロ フェカリス」(加熱殺菌菌体)を活用し急性期重症患者の感染症予防を図る

経腸栄養プロトコルに組み込んだ

乳酸菌 (加熱殺菌菌体)の投与

東京都渋谷区の住宅街に位置する日本赤十字社医療

センター。708病床を擁する同センターは、渋谷区を

中心 とする二次医療圏区西南部の中核病院として地域

住民の疾病治療や健康増進に寄与している。

近年は渋谷区周辺においても高齢化が進行 してお

り、同センターには脳血管疾患や肺炎などをはじめと

する急性イベントで日々多 くの高齢患者が救急搬送さ

れている。

「当センターの救命救急センターは、ICU(集中治療

室)と HCU(高度治療室)を合併 した形で機能 してい

ます。両方を合わせて患者さんの受け入れ件数は、年

間8000前後となっています」と、救急科の官城隆志医

師は言吾る。

「救命救急センターに救急搬送されてくる患者さんの

多 くは重症者であり、経口摂取が難 しいことが少なく

あ りませ ん。急性期 の経腸栄養管理 において は、

救急科の富城隆志医師(右 )と栄養課長の山邊志都子さん

4 栄養経営エキスパート2019 No 16

overfeedingお よび感染症合併に留意する必要があ り

ます」と同センター栄養課長の山邊志都子さん。その

ような患者においては、日本集中治療医学会が作成 し

た「日本版重症患者の栄養療法ガイ ドライン」に則っ

て、24時間以内に経腸栄養を開始しているという。

「このガイドラインに則って、目標たんぱく質投与量

は1.2~ 2g/kg/日 、目標エネルギー投与量は栄養投与

開始直後にfun feedingと ならないよう、初期 1週間に

おいてはエネルギー消費量よりも少なく投与 していま

す」(山邊さん)

経腸栄養開始 1日 目は10mL/時の速度で24時 間持

続投与。2日 目は20mL/時、3日 目は30mL/時 と段階

的に投与速度を上げていき、40mL/時 まで24時間持

続投与を継続。7日 目に50mL/時 まで上げた段階で、

流動食の切 り替え時に 1、 2時間間隔を空け、以降は

この間隔を徐々に延ばしていき、間欠投与へと移行さ

せていく(図 1)。

「さらに濃厚流動食に加えてルーチンで毎日追加して

いるものがあります。それは栄養補助食品のブイ・ク

レスBIO(ニ ュー トリー)です」(山邊さん)

ブイ・ ク レスBIOは 、12種類のビタ ミンと亜鉛、

セ レンなどを配合 した1本 125mLの 栄養補助食品。

さらに乳酸菌「E.フ ェカリスJを加熱殺菌菌体で6,000

億個配合 していることが大きな特長だ。

「ICUや HCUの入室患者さんの多 くは低栄養状態に

あり、特にビタミンや微量元素の欠乏が著明なことが

少なくありません。そのため、それらの栄養成分を多

く含有したブイ・クレスBIOを 経腸栄養チューブのフ

ラッシュ時に投与することにしています。また、数あ

るブイ・クレスシリーズの中からブイ・クレスB10を

選んだ理由は、薬剤耐性菌による感染症予防のためで

すJ(宮城医師)

Page 5: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

院内感染対策と乳酸菌― 額 動 正観 の取り組み―

※E:エネフレコ■ (kcal)、 PIたんぱく質(g)※ブイ・クレスB101本 (E:90kcaL P:038)毎 日付カロ(1日目より)

図1 経腸栄養プロトコル概要

バイオジェニックスによる

1抗菌薬適正使用効果に期待

2018年 4月 の診療報酬改定で抗菌薬適正使用支援加

算が新設された。これは薬剤耐性菌による感染症低減

を目的に抗菌薬の適正使用の推進を図ってお り、現在、

多 くの医療機関では感染症対策チームが中心となって

抗菌薬の使用状況を確認するなど、抗菌薬適正使用に

ついての取 り組みが進められている。同センターも例

外ではない。救命救急センターでも使用した抗菌薬に

ついては電子カルテに入力 し、感染症対策チームが

チェック。さらに週1回、感染症専門医と抗菌薬の使

用についてのカンファレンスを行 う体制 となってい

る。

「救命救急センターに入室されたご高齢患者さんにつ

いては、すべて薬剤耐性菌保有の有無の検査を行って

います。MRSAに ついては毎年約 500人、ESBL産生

菌は約 15人、アシネ トバクターは3~ 7人、緑膿菌は

16~ 19人の保菌者が認められています。 これらの保

菌者の中で発症に至る方は少数なのですが、もし発症

された場合は入院期間が長 くなり、骨格筋やADLの

低下につながりかねません。そこで、18年 3月 から従

来のブイ・クレスに代わってE.フ ェカ リスを含有 し

ているブイ・クレスBIOを 導入 し、バイオジェニック

スによる薬剤耐性菌発症予防を図ることにしたので

す」(官城医師)

バイオジェニックスは、細菌や酵母を生菌として摂

取し、腸内フローラの改善を図ることで腸内代謝改善

につなぐプロバイオティクスとは異なり、腸内フローラ

を介することなく、生体調節や生体防御、疾病予防回復、

老化制御などの生体に働 く食品成分とされている。

ブイ・ クレスBIOに 含まれているE.フ ェカリスは、

乳酸菌を加熱殺菌 した菌体であり、腸内フローラを介

することなく、消化管内の腸管関連 リンパ組織(GALT)

のリンパ小節 (パ イエル板)か ら取 り込 まれ、細胞免

疫を活性化 して腸管免疫賦活に寄与している可能性が

報告されている※1。

この報告は、MRSAを 接種 したマ

ウスに対し、E.フ ェカリスを投与 (18日 の全期間投与、

MRSA接種後 11日 間投与、MRSA接種前 7日 間投与)

したマウス群 と、E.フ ェカリス非投与のマウス群の生

存率を比較 したもので、全期間投与マウス群は生存率

100%だ ったのに対 して、非投与マウス群は40%、 感

染前のみ投与マウス群は60%、 感染後のみ投与マウ

ス群は80%と いう結果になったとしている。

「実際、今まで年に数例経験 していたCD腸炎も当救

命救急センターではブイ・クレス BIOを 導入 した18

年 3月 以降、CDト キシン陽性 の方 は皆無 です し、

MRSAの 当救命救急センター内発症 も16年 4例、17

年 1例 ありましたが、ブイ・ クレスBIO導入後はほと

んどない状態です。ブイ・クレスBIOの活用は、薬剤

耐性菌による発症 リスク低減につながる可能性が示唆

されます。それは抗菌薬の適正使用の実現をとおして

病院経営へ貢献することにもつながるのではないで

しょうか」(宮城医師)

※1:原 浩祐 ,中 尾光治 ,川 口晋 :メ チシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)感 染マウスに対する加

熱殺菌した学L酸菌 Enterococcus faecJも の投与効果に関する検討 ,新薬と臨淋 ,67巻 ,

35‐ 44(2018年 )

2019 No.16栄 養経営エキスパート 5

Page 6: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

加熱殺菌した事L酸菌Enteroooocus

faecalbの投与効果に関する検討――メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染マウスに対する試験一一

ニュートリー株式会社 学術部 原 澤劉賄醜

1抗菌薬に依存しない

1感染症制御をめざして

抗菌薬の発達 した現代において、感染症は制御可能

であると受け取られがちである。しかし、医療現場で

の抗菌薬の不適切な使用による多剤耐性菌の出現によ

り、厚生労働省は「適正な抗菌薬の使用」を推奨する

ようになってきた。また、耐性菌感染者が発症 した場

合、隔離措置や消毒作業にかかる経済的負担は少なく

ない。

「当社では、院内の術後の易感染者または高齢化社会

に潜む易感染者に対 し、『抗菌薬』にできるかぎり依

存 しない取 り組みとして『平L酸菌 (死菌 )』 のもってい

る免疫賦活作用に着 目し研究を進めてきました」と

ニュー トリー株式会社学術部の原浩祐氏は語る。

さらに同社は研究に使用する「平L酸菌」について、

その効果を十分に発揮させるために多くの乳酸菌を摂

取することが必要と考え、粒子径の小さい乳酸菌であ

ることを考慮し選定 した。その結果、乳酸菌の中でも

粒子径の小 さい、Enterococcus faecalis(加 熱殺菌菌

体 ;以下、E.faecalis)を 用いることにしたという。

「E.faecalisは、免疫機能向上に関する多 くの研究が

なされていますが、薬剤耐性菌であるメチシリン耐性

黄色ブドウ球菌 (MRSA)に対する作用は報告があり

ません。そこでE.faecalisの MRSA感染モデルマウス

を用いた試験を行って、作用を確認することにしたの

です」

1試験―の概要と結果

1)用 量確認試験

マウス (BALB/c系 )を MRSA菌液接種 7日 前 より

試験終了までの18日 間、E.faec」 isを 1)投与 しない

6 栄養経営エキスパート2019 Nol16

群 (非投与群 )、 2)60億個 /kg/日 投与群、3)120億個

/kg/日 投与群 とする3群 に分け経口投与 した。その結

果、試験終了時における生存率は、非投与群 40%、

60億個 /kg/日 投与群では90%、 120億個 /kg/日 投与

群は100%であり、60億個 /kg/日 投与群および120億

個 /kg/日 投与群 ともに有意な生存率の上昇がみ られ

た。E.faecahsの 投与量 として60億、120億個 /kg/日

においてMRSAに 対する効果が確認できた。

2)投与期間確認試験

マウス(BALB/c系 )に E.faecalis 120億イ固/ky日 を、

1)E.faecalisを 投与しない群 (ブF投与群 )、 2)MRSA

菌液接種前後投与群 (Peri群 )、 3)MRSA菌液接種前

投与群(Pre群 )、 4)MRSA菌液接種後投与群 (Post群 )

の4群 にて生存率を比較検討した (図 1、 表1)。 その

結果、試験終了時における生存率は、非投与群 40%、

Pen群 100%、 Pre群 60%、 Post群 80%で あり、非投

与群と比較しPeri群 において有意な生存率の上昇がみ

られ、Post群においても非投与群と比較し、高い生存

率であった(p=0.089)(図 2)。

■感染後の投与でも

1免疫機能向上が期待できる

「MRSA菌液接種マウスにおけるE.hecalis投与結果

より、E.hecalisの 投与はMRSA感染前からの予防目

的だけでなく、感染後からの治療目的においても効果

的である可能性が示唆されました」と原氏。 この結果

から、乳酸菌 E.faec」 isの 作用は容量依存性があ り、

感染後に投与開始しても効果が期待できる可能性が示

唆されたと語る。

「ビタミン・微量元素を豊富に含有する飲料に配合す

ることで、より免疫機能向上ができるかどうか、臨床

的評価を進めていきたいと思います」

Page 7: 簡単無料ホームページ · 2019-09-18 · Created Date: 9/12/2019 7:22:57 AM

|~~~棄享~~~`

1

図1 投与期間確認試験 試験法概要

‐0

全期間投与群 (pe“ 群)

感染後のみ投与群 (post群 )

感染前のみ投与群(pre群 )

非投与群

菌液接種前期間 菌液接種後期間

♯pく0 05 vs非 投与群(Log rank検 定)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

院内感染対策と乳酸薗―― 抗薗薬適正使Flの 取り組み ―――

表l MRSA感 染マウスの背景

◆使用動物 4週齢のBALB/c系 (BALB/c Cr Sic)雌 マウス※MRSAは免疫低下時に発症するため、免疫低下モデルを作製を目的に

免疫抑制剤であるシクロフォスファミド(CPA)を腹腔内に投与

◆ MRSAの接種 :腹腔内投与

◆被験物質の投与 :経回投与

群 E.フ三‐カリスの投与時期 E.フェカリスの投与量

非投与群 注射用蒸留水

全期間投与群 全期間 120億個/kg/日 :

ヒト換算量(体重 50kg:

6000t意 イ固/日 )

感染前のみ投与群 MRSA接種前のみ投与

感染後0み投与群 MRSA接種後のみ投与

図2 MRSA感 染マウスの生存率推移

2019 No 16 栄養経営エキスパート 7