Cavity Ring-Down 分光法による 大気中のNO ラジカ...

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Cavity Ring-Down 分光法による 大気中のNO 3 ラジカルの反応 に関する研究 東京学芸大学教育学部 自然科学系広域自然科学講座 環境科学分野 准教授 中野幸夫

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Cavity Ring-Down 分光法による大気中のNO3ラジカルの反応

に関する研究

東京学芸大学教育学部自然科学系広域自然科学講座環境科学分野准教授

中野幸夫

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レーザー閃光光分解法 Cavity Ring-Down 分光法

従来までの過渡吸収法と同様に用いることができる。しかしながら、その感度は過渡吸収法の数千倍近くなるため、これまで測定が困難だった低濃度でのラジカル反応などの測定を行うことができる 。

時間分解型 Cavity Ring-Down分光法測定装置

本研究は…

大気化学

研究対象はまずは、この説明

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大気化学研究

気球、飛行機、船舶、衛星

大気計測

Box、1D

2D、GCM

CTM

モデル計算

化学反応過程速度、生成物

実験室での基礎研究

本研究

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Temperature (K)

200 220 240 260 280 300

Alt

itu

de (

km

)

0

10

20

30

40

50対流圏の大気化学

大気に放出されたものは、酸化過程を受けることにより、水溶性物質、もしくは蒸気圧の低い化合物に変換さ

れて、大気中より取り除かれる。

大気は酸化的

1ヶ月

5-10年

成層圏

対流圏

対流圏界面

Washed Out

よく対流する

対流が少ない

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・OHラジカルとの反応による開始過程

・太陽光による光分解とその後のO2やO3 などとの反応による開始過程

・NO3ラジカルとの反応による開始過程

大気中で最も重要な3つの酸化過程

昼間の反応

夜間の反応

本研究

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NO NO3NO2N2O5

大気中におけるNO3の生成と役割

O2O3

O2O3

hnAldehydes,

Ketones,Organic acids

CH4,NMHC

(VOCs)

DMS H2SO4, MSA

Aerosols

hn

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レーザー閃光光分解法 Cavity Ring-Down 分光法

従来までの過渡吸収法と同様に用いることができる。しかしながら、その感度は過渡吸収法の数千倍近くなるため、これまで測定が困難だった低濃度でのラジカル反応などの測定を行うことができる 。

時間分解型 Cavity Ring-Down分光法測定装置

本研究は…

大気化学

研究対象は

次に、この説明

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吸収法とは

吸収法:被検出分子による光の吸収による光の強度の減少の測定

ランベルト・ベールの法則:

光の減少量は吸収物質の濃度と光路長に以下の関係がある。

log(I0/I) = eCL

e:モル吸光係数(定数)

光路長: 0.01 - 10 m 光路長:1,000 - 10,000 m

入射光:I0 透過光:I

光路長;L

試料(濃度:C )

キャビティーリングダウン分光法従来の吸収法

光路長を伸ばすことができれば感度上昇

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I(t) = I0 exp(-t/t)

時間 (s)

0 20 40 60 80 100 120 140

光強度

ミラー間の長さ;L

高反射率ミラー反射率;R > 99.9%

キャビティーリングダウン分光法の原理

高反射率ミラーで構成された光学キャビティー間を検出光が往復することにより、数~数十kmの有効光路長を得ることができる。それ故、従来の吸収法の数千倍感度が高い。

図 実測されたリングダウンシグナル。このキャビティー内の光パルス滞在時間は33sであり、実効光路長として10 kmになっていることがわかる。

I(t) = I0 exp(-t/t) = I0 exp(-t/t0 – snct)

t0 : 真空でのリングダウンレイトs: 吸収断面積

n: 吸収物質の濃度c: 光速

時間 (s)

0 20 40 60 80 100 120 140

光強度

吸収物質あり

吸収物質なし

吸収物質

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利点 具体例

高感度 吸光度が 10-8 / pathまで測定可能

高定量性検出用レーザーの光強度の変動に影響されない

高選択性目的の被検出物質のみの測定が可能である

広い圧力範囲 分子線から常圧まで使用可能

高い波長分解能 検出用レーザーの線幅により決定

キャビティーリングダウン分光法の利点

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キャビティーリング

ダウン分光法

レーザー誘起

蛍光法

絶対濃度算出 可能 不可

常圧条件下 可能 不可

非発光ラジカル 可能 不可

位置分解能 低い 高い

屈折率変化ある時 不可 可能

波長範囲 狭い 広い

キャビティーリングダウン分光法とレーザー誘起蛍光法の比較

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レーザー閃光光分解法 Cavity Ring-Down 分光法

従来までの過渡吸収法と同様に用いることができる。しかしながら、その感度は過渡吸収法の数千倍近くなるため、これまで測定が困難だった低濃度でのラジカル反応などの測定を行うことができる 。

時間分解型 Cavity Ring-Down分光法測定装置

本研究は…

大気化学

研究対象は

最後に、この説明

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流量制御器

排気系

オシロスコープ反応相手 / N2

温度計

圧力計

高反射率ミラー

N2

ラジカル源 / N2

光電子増倍管

N2

ディレイジェネレータ

PC

色素レーザー

温度計

Nd3+: YAG レーザー

冷媒

冷媒

N2

Nd3+: YAG レーザー

Inte

nsit

y

50403020100

Time (s)

光分解光

プローブ光

ラジカル源→ ラジカル

反応測定用の時間分解型キャビティーリングダウン分光法(TR-CRDS法)の実験装置

ラジカル + 反応相手遅延時間でのラジカル濃度

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Time (ms)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

[NO

3]

(10

12 m

ole

cule

s cm

-3)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

TR-CRDS法を用いて実際に測定された

NO3ラジカルの濃度の時間変化

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TR-CRDS法の実験装置の写真

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Cloud Condensation Nuclei and

Aerosol

(H2SO4 and MSA)

OH

NO3

CH3SCH2

Sea

OH, O2

NO, NO2

O2

CH3SCH3

(DMS)

reflected back to the spacehn

hn

HNO3

NO2

NO

CH3SOCH2

This work

nighttimedaytime

CH3SOCH3

(DMSO)

or

実際に測定を行った反応の例 その1

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夜間

宇宙へと反射

海洋

IO

I

太陽光分解

O3

O2O2, etc.

NO3

IO, etc.

ヨウ素エアロゾル 昼間

HNO3

CH3I

C2H5I

CH2I2

CH2ClI

CH2BrI

本研究で測定する反応

人為活動起源物質

本研究が提案する新たなIO生成過程

R’I

実際に測定を行った反応の例 その2