変容を続けるARCTIC MONKEYS...

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ARCTIC MONKEYS ふと気がつけば、2011 年も上半期が終わろうとしている。今年は RADIOHEAD に始まり、THE STROKES、FRIENDRLY FIRES と注目ア イテムのリリース・ラッシュが続くなか、ようやく ARCTIC MONKEYS の 4th アルバム『Suck It And See』がリリースされる。 これまで通り淡々としたペースではあるが、彼らの生み出す音楽は アルバムごとの振れ幅が大きすぎるため、どうにも時間が引き伸ば されてしまうような感覚に陥る。実際の時間以上に、ずいぶんと待 たされたような気がしてしまう。それだけ期待が大きいということ も要因ではあるのだろうが。 メイン・ソングライティングを手がける Alex Turner は、シニカル な視点と文学的なリリックで世界を切り出してきた。1st アルバム 『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』では、若さゆえの 攻撃性と早熟した音楽性が混ざり合っていた。続く 2 nd アルバム 『Favourite Worst Nightmare』は前作を推し進め、爆発するような 焦燥と皮肉に満ちていた。 その ARCTIC MONKEYS の根底には、聴く者の深い部分を揺さぶる、 どこまでも知的で繊細な脆さが存在する。そして、彼らはその影響 力をいかんなく発揮できる魅せ方を、アルバムごとに探り当てるこ とに成功している。自分の内側にある力に振り回されるか、自分自 身で制御できるか、これは非常に重要だ。前2作品の危険なストリー トからさらに奥へと進み、3rd アルバム『Humbug』では、澱んだ 妖艶な空気が漂う裏路地へと進んでいった。 では、ニュー・アルバム『Suck It and See』で、4 人の若者はどこ へ向かったのだろうか。裏の裏をかいたような極限状態まで突き 詰めるのかと思いきや、本作から感じられるのは、もったりと気 だるい幸福感だ。レコーディングを行なったロサンゼルスの日差 しで暖められた独特な空気のおかげか、充実した日々の賜物か、 純粋に心地よく包み込むような楽曲の制作に専念できたようだ。 親密に広がる言葉と力のほぐれたサウンドから、その様子はこぼ れるように伝わってくる。 しかし、一筋縄でいかないのも彼らなワケで ……。お馴染み SIMIAN MOBILE DISCO の James Ford がプロデュースを手がけて いるだけあり、ロック・ビートにニヤッとしてしまうような世界 観も時折顔を覗かせる。「Don't Sit Down 'Cause I've Moved Your Chair」は、BLACK REBEL MORTORCYCLE CLUBのようにブルージー でへヴィでうねる。12 曲の中で日常のやわらかさと荒さという 相反する要素を融合させ、恍惚感へと導く。わずか 4 作品 のリ リースでこれほどまでに変容を遂げる彼らこそ、 真の意味での “エンターテイナー” と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。 (山田 美央) 変容を続ける 新世代 ンター 全世界待望の 4th アルバム完成! 変容を続ける 新世代のエンターテイナー、 全世界待望の 4th アルバム完成! NEW ALBUM ! ! ARCTIC MONKEYS 『 Suck It And See』 [Hostess Entertainment] HSE-10111 2,490 円 ( 税込 ) 2011.6. 1 ON SALE

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Page 1: 変容を続けるARCTIC MONKEYS ふと気がつけば、2011年も上半期が終わろうとしている。今年は RADIOHEADに始まり、THE STROKES、FRIENDRLY FIRESと注目ア

ARCTIC MONKEYS

ふと気がつけば、2011 年も上半期が終わろうとしている。今年は

RADIOHEADに始まり、THE STROKES、FRIENDRLY FIRES と注目ア

イテムのリリース・ラッシュが続くなか、ようやく ARCTIC

MONKEYS の 4th アルバム『Suck It And See』がリリースされる。

これまで通り淡々としたペースではあるが、彼らの生み出す音楽は

アルバムごとの振れ幅が大きすぎるため、どうにも時間が引き伸ば

されてしまうような感覚に陥る。実際の時間以上に、ずいぶんと待

たされたような気がしてしまう。それだけ期待が大きいということ

も要因ではあるのだろうが。

メイン・ソングライティングを手がける Alex Turner は、シニカル

な視点と文学的なリリックで世界を切り出してきた。1st アルバム

『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』では、若さゆえの

攻撃性と早熟した音楽性が混ざり合っていた。続く 2 nd アルバム

『Favourite Worst Nightmare』は前作を推し進め、爆発するような

焦燥と皮肉に満ちていた。

その ARCTIC MONKEYS の根底には、聴く者の深い部分を揺さぶる、

どこまでも知的で繊細な脆さが存在する。そして、彼らはその影響

力をいかんなく発揮できる魅せ方を、アルバムごとに探り当てるこ

とに成功している。自分の内側にある力に振り回されるか、自分自

身で制御できるか、これは非常に重要だ。前2作品の危険なストリー

トからさらに奥へと進み、3rd アルバム『Humbug』では、澱んだ

妖艶な空気が漂う裏路地へと進んでいった。

では、ニュー・アルバム『Suck It and See』で、4人の若者はどこ

へ向かったのだろうか。裏の裏をかいたような極限状態まで突き

詰めるのかと思いきや、本作から感じられるのは、もったりと気

だるい幸福感だ。レコーディングを行なったロサンゼルスの日差

しで暖められた独特な空気のおかげか、充実した日々の賜物か、

純粋に心地よく包み込むような楽曲の制作に専念できたようだ。

親密に広がる言葉と力のほぐれたサウンドから、その様子はこぼ

れるように伝わってくる。

しかし、一筋縄でいかないのも彼らなワケで……。お馴染み

SIMIAN MOBILE DISCOのJames Ford がプロデュースを手がけて

いるだけあり、ロック・ビートにニヤッとしてしまうような世界

観も時折顔を覗かせる。「Don't Sit Down 'Cause I've Moved Your

Chair」は、BLACK REBEL MORTORCYCLE CLUB のようにブルージー

でへヴィでうねる。12 曲の中で日常のやわらかさと荒さという

相反する要素を融合させ、恍惚感へと導く。わずか 4 作品のリ

リースでこれほどまでに変容を遂げる彼らこそ、真の意味での

“エンターテイナー” と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。

(山田 美央)

変容を続ける新世代のエンターテイナー、全世界待望の4th アルバム完成!

変容を続ける新世代のエンターテイナー、全世界待望の4th アルバム完成!

NEW ALBUM ! !

ARCTIC MONKEYS『 Suck It And See』

[Hostess Entertainment]HSE-10111 2,490 円 ( 税込 )

2011.6. 1 ON SALE