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1 欧州委員会コミュニケーション(指針) 2019 3 30 日の英国の欧州連合離脱に備えて :欧州委員会による緊急時対応行動計画の実施」 20181219日付 COM(2018) 890 final(仮訳) 2019 年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部 欧州ロシア CIS

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欧州委員会コミュニケーション(指針)

「2019 年 3 月 30 日の英国の欧州連合離脱に備えて

:欧州委員会による緊急時対応行動計画の実施」

2018年12月19日付 COM(2018) 890 final(仮訳)

2019 年3月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部 欧州ロシア CIS 課

2

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COM(2018) 890 final "Preparing for the withdrawal of the United Kingdom from the

European Union on 30 March 2019: Implementing the Commission’s Contingency Action

Plan”

http://eur-lex.europa.eu, © European Union, 1998-2018

3

欧州委員会から欧州議会、欧州理事会、EU 理事会、欧州中央銀行、

欧州経済社会評議会、地域委員会及び欧州投資銀行への指針

2019 年 3 月 30 日の英国の欧州連合離脱に備えて:

欧州委員会による緊急時対応行動計画の実施

欧州理事会は、英国の(EU)離脱により起こり得るあらゆる結果を考慮しつつ、全レ

ベルでの準備作業を強化するよう要請する。

欧州理事会(第 50 条)、2018 年 12 月 13 日1

1. はじめに

英国は、EU からの離脱を決定し、欧州連合(EU)条約第 50 条の下での手続き

を発動した。当該決定が撤回されない限り2、又は離脱時期が満場一致で延期さ

れない限り、離脱は残りわずか 100 日強で有効となる。欧州委員会はこの決定

について遺憾とするものの、尊重する。欧州委員会による 2018 年 7 月 19 日の

最初のブレグジット(英国の EU 離脱)準備コミュニケーション(指針)におい

て強調されている3ように、英国の選択は想定されたシナリオにかかわらず、

深刻な混乱を引き起こすであろう。このため、欧州委員会では、欧州市民、企業、

加盟国に対し、起こり得るあらゆるシナリオに備え、関連するリスクを評価し、

それらを緩和するための対応を計画するよう、一貫して要請してきた。

欧州委員会は 2018 年 11 月 13 日、2 度目のブレグジット準備指針において緊急

時対応行動計画を公表した4。対応行動計画において発表された緊急措置は、

1 https://www.consilium.europa.eu/media/37508/13-euco-art-50-conclusions-en.pdf 2 英国は、EU から離脱する意思の通知を一方的かつ無条件に取り消すことができる。事案

C-621/18 Wightman and Others v Secretary of State for Exiting the European Union。 3 https://ec.europa.eu/info/publications/preparing-withdrawal-united-kingdom-european-union-30-

march2019_en 4 https://ec.europa.eu/info/publications/communication-preparing-withdrawal-united-kingdom-

europeanunion-30-march-2019-contingency-action-plan-13-11-2018_en

4

損害を限定するための一方的な措置であり、合意なき離脱による最も深刻な

結果を緩和することしかできない。欧州委員会及び英国の交渉担当者は 2018 年

11 月 14 日、離脱協定の条件について合意した5。欧州委員会は 2018 年 11 月

22 日、妥結した離脱協定を承認した6。ブレグジットに関する欧州理事会は 2018年 11 月 25 日に離脱協定を承認し、欧州委員会、欧州議会及び EU 理事会に

対し、秩序ある離脱を実現させるために、離脱協定が 2019 年 3 月 30 日に発効

することを確実にするために必要な措置を講じるよう要請した7。

欧州委員会は 2018 年 12 月 5 日、EU 側でその後数週間内に締結、批准できる

よう、離脱協定の署名及び締結に関する二つの理事会決定案を採択した。2018年 12 月 13 日のブレグジットに関する欧州理事会では、離脱協定の承認とその

批准を進める意向が確認された。離脱協定は、英国により、同国の憲法上の要件

に従って批准される必要がある。両当事者による離脱協定の批准を実現するこ

とが引き続き欧州委員会の目標であり、優先課題である。

また、2018 年 12 月 13 日のブレグジットに関する欧州理事会でも、英国離脱に

より起こり得るあらゆる結果に対する準備作業を全レベルで強化するよう要請

した。本指針では、欧州理事会の要請に応えるために欧州委員会が 2018 年 12月 19 日に採択した措置と、緊急時対応行動計画の実施におけるその他の重要な

手順を説明している。

2. 欧州委員会の緊急時対応行動計画

英国側の批准手続きを巡る継続的な不確実性を考慮し、また、ブレグジットに関

する欧州理事会の 12 月 13 日の結論に沿って、欧州委員会は、ブレグジットに

よる緊急時対応行動計画の実施を急いでいる。欧州委員会は本日、その行動計画

で発表した全ての法案及び委任法令を採択した8。欧州委員会が発表した残りの

実施法令案についても、関係委員会における投票が適時に可能となるよう、遅く

とも 2019 年 2 月 15 日までに準備する。

並行して、欧州委員会はまた、EU レベル及び各国レベルでの計画を調整する

ために加盟国と緊密な作業を継続してきた。欧州委員会が採択し、本指針で詳述

5 https://ec.europa.eu/commission/sites/beta-political/files/joint_report_0.pdf;

https://ec.europa.eu/commission/sites/beta-political/files/draft_withdrawal_agreement_0.pdf 6 2018 年 11 月 22 日に承認された欧州委員会への通達、C(2018)9001。 7 https://www.consilium.europa.eu/media/37508/13-euco-art-50-conclusions-en.pdf 8 2 度目の英国離脱準備に関する指針の附属書 I 及び II を参照。

5

する施策パッケージは、加盟国との協議内容を踏まえたものである9。今回の行

動(計画)は、2 度目の準備指針で計画され、既に講じられている準備措置に

追加される。

欧州委員会は欧州議会及び EU 理事会に対し、本提案を緊急案件として採択す

るよう要請する。加盟国は英国の EU 離脱のあらゆるシナリオに対する準備作

業を加速するべきである。

欧州委員会はまた、加盟国に対し、英国との間で二国間の協定や取決め、協議に

入ることを控えるよう要請する。こうした動きは、批准プロセスを害し、また、

多くの場合 EU 法に適合せず、加盟国間に対等でない競争条件を創出する危険

性がある。また、こうした行動は、英国との新たな関係に関する EU 側の将来交

渉を複雑にする可能性がある。離脱協定の場合と同様に、統一的なアプローチで

準備作業と緊急時対応作業を継続することが不可欠である。

3. 行動を起こす

2 度目のブレグジット準備指針で述べたように、あらゆるレベルで採択された

緊急措置10では、次の原則に従うべきである。

• 緊急措置は、離脱協定案で提供されたような EU 加盟国の便益やいかな

る移行期間の条件を再現すべきではない。

• 本来は一時的なものである。本日採択された措置について、欧州委員会

は、関連する場合には、当該分野における特定の状況に応じた期限を

提案した。

• 緊急措置は EU が自身の利益を追求して一方的に講じるものであり、

いつでも取り消しできるべきである。

• 条約により規定された権限区分を尊重すべき。

• 国レベルの緊急措置は EU 法に適合すべき。

• 当該利害関係者の準備措置と時宜を得た行動で回避され得たかもしれ

ない遅れを救済すべきではない。

9 セクター別準備セミナーを加盟国(EU27 カ国)とともに複数回開催した。これらは 2 度

目の英国離脱準備に関する指針の附属書 6 に挙げている。 10 対策リストは、後の段階でその必要性が判明した措置を追加することを妨げない。

6

欧州連合の機能に関する条約(TFEU)第 355 条(3)により、また欧州共同体へ

の英国の加盟に関する 1972 年法で定められた範囲内において、ジブラルタルに

対して、その対外関係に加盟国が責任を負う欧州の領域として EU 法が適用さ

れている。英国が加盟国ではなくなると、ジブラルタルには TFEU 第 355 条(3)は適用されなくなる。その結果、ジブラルタルには緊急措置は適用されない。

4. 市民

離脱協定が批准されない場合、英国に居住する EU 市民は、もはや自由移動に関

する EU のルールでは保護されなくなる。EU 域内に居住する英国国民には、離

脱日時点から、EU 域内の第三国国民に適用される一般的なルールが適用される。

これにより、現在生活する場所での滞在および就労の権利、並びに恩恵を受ける

社会保障に影響が生じる可能性がある。

欧州委員会では、英国の EU 市民と同様に、EU 域内の英国国民の保護も優先事

項とする姿勢を一貫して明確にしてきた。加盟国に対しては、自国の領域内に既

に居住している英国国民に対して寛大な対応を講じるよう要請している11。欧州

委員会は 11 月 13 日の指針で、合意なき離脱に至った場合でも、英国国内の EU市民の権利が同様の方法で保護されることを改めて保証したメイ首相による表

明12を歓迎した。欧州委員会は、市民が信頼できるよう、この約束が間もなく正

式なものとなることを期待している。

滞在する権利

EU 域内に居住する英国国民に対しては、EU 加盟国に入国し、居住し、就労す

る権利に関し、第三国の国民に関する EU のルール及び当該国の国内法が適用

される。短期滞在(180 日の期間中最大 90 日)に関して、欧州委員会は、英国

国民のビザ発給要件を免除する規則13に関する提案を、同様に全ての EU 市民に

ついて英国のビザ発給要件が免除されることを条件として、採択した。何らかの

目的で EU 加盟国内に 90 日以上居住することを希望する第三国国民は、国内の

出入国管理当局から在留許可又は長期在留ビザを取得する必要がある。一つの

加盟国に 5 年間適法に在留していた第三国国民は、EU のルールに従い、一定の

条件の下で、その加盟国における長期在留資格が認められるべきである。欧州委

員会は、2 度目の英国離脱準備に関する指針において、英国国民の離脱日前の加

11 指針において使われる『英国国民』という用語には、離脱時に既にそれぞれの受入国に居

住している、第三国の国民である家族も含まれるものと理解すべきである。 12 https://www.gov.uk/government/news/pm-brexit-negotiations-statement-21-september-2018 13 COM(2018) 745 final.

7

盟国での適法な在留期間を、こうした目的において考慮に入れるべきであると

の考えを明確にした。

このような背景から、欧州委員会は加盟国に次の点を要請する。

EU 法に従い、2019 年 3 月 29 日時点で加盟国に適法に居住する全ての

英国国民を引き続き当該加盟国の適法な居住者とみなすための対策を

講じること。

関係する英国国民に対し、その適法な滞在及び就労の権利を証明するも

のとして、居住許可の発行を用意すること。特に多数の英国国民を受け

入れている加盟国に対して、EU 法に従い、確定的な居住許可が発行で

きるまでの間、暫定的な居住許可書を発行するための現実的なアプロー

チを採ることを要請する14。国内法の立法措置、暫定的な文書の発行又

は既存の文書の承認など、各加盟国特有の状況を考慮するための複数の

技術的な選択肢が存在する。

暫定的な居住許可証を離脱日までに発行し、統一された様式15による確

定的な居住許可申請を 2019 年末までに処理するために必要なあらゆる

立法上及び行政上の措置を講じること。

欧州委員会は、結束したアプローチを確保する観点から、2018 年 12 月 20 日に

加盟国(EU27 カ国)とさらなる具体策について議論する予定である。

英国に居住する EU 市民については、在英の加盟国代表部による取組に加え、

駐英欧州委員会代表部が、英国内の EU 市民の継続的な居住に関する英国の

状況を引き続き注意深く監視する。この観点から、関係する市民には情報と専門

的な知識を提供する。

社会保障面の調整

EU 法は、他の加盟国へ移動する基本的権利を行使する EU 市民の社会保障権を

保護するため、社会保障面の調整に関する共通のルールを定めている。社会保障

面の調整に関する EU のルールでは、疾病、出産及び育児、年金、障害、失業、

14 離脱時に EU 加盟国に居住している英国国民が、当該加盟国に居住し就労し続けるため

には、その国の出入国管理当局により発行される第三国国民向けの居住許可を所持する必

要がある。 15 第三国国民の居住許可の統一された様式を定める 2002 年 6 月 13 日の理事会規則(EC)

1030/2002 で予見されているとおりである(OJ L 157, 15.6.2002, p.1)。

8

家族給付、労災並びに職業病に関連する国内法に由来する権利を扱っている16。

社会保障の調整に関するルールの根拠となる原則により、EU 市民に対しては、

1 加盟国のみの法律が適用され(単一性(unicity))、その加盟国の国民に課され

るものと同様の権利及び義務を有する(無差別性(equal treatment))ことが確

保される。また、この原則により、当局がその者の受給資格について決定する際

には、他の加盟国におけるそれまでの保険加入期間、就労期間又は居住期間が

考慮される(通算性(aggregation))。さらに、市民が資格を有する現金給付に

ついては、別の加盟国に居住しているとしても、原則としてそれを受け取ること

が保証される(可搬性(exportability))。

離脱協定が批准されない場合、英国にはもはや社会保障面の調整に関する EU の

ルールは適用されない。この点は、現在英国で就労又は居住している、もしくは

過去に就労又は居住していた EU 市民にとって、自己の社会保障受給資格を

めぐる懸念材料になっている。現在別の加盟国で就労又は在留している英国

国民にも、同様のことが当てはまる。

欧州委員会は加盟国に対し、これらの懸念に対応し、法的確実性及び、2019 年

3 月 30 日以前に自由な移動の権利を行使していた市民が取得した社会保障資格

の保護が確保されるよう、あらゆる対策を講じることを要請する。

特に欧州委員会は、加盟国に対し次の点を要請する。

EU27 カ国の市民及び英国国民について、離脱前に英国で発生した就労

期間/保険加入期間を考慮に入れること。

市民に対し、これらの期間の証拠となる適切な文書を保管すべきである

旨を通知すること。

英国に居住し続ける人々も、離脱までに満了した期間の「通算性」を確

保すること。

英国が第三国になるという事実に関わらず、老齢年金を英国に送金する

こと。これは、離脱日以降も英国に居住し続ける市民だけでなく、離脱

16 社会保障制度の調整に関する 2004 年 4 月 29 日の欧州議会及び理事会規則(EC)883/2004(OJ L 166, 30.4.2004, p.1)並びに社会保障制度の調整に関する規則(EC)No 883/2004 を

実施するための手続きを定める 2009 年 9 月 16 日の欧州議会及び理事会規則(EC)987/2009(OJ L 284, 30.10.2009, p. 1)。

9

日前にEU27カ国国内で老齢年金受給資格を取得した英国国民にも 適

用される。

欧州委員会は加盟国(EU27 カ国)に対し、離脱日時点から適用すべき社会保障

の調整に関する結束した緊急アプローチの方法について、2018 年 12 月 20 日に

具体的かつ詳細な助言を提供する。

欧州委員会は、満了した期間並びに離脱日前に生じた事実及び出来事に関連す

る社会保障の調整については、EU が排他的権限を有する点を念押しする。

5. セクター別の規則

金融サービス

離脱協定が批准されない場合、英国で設立された金融事業者は、離脱日をもって、

EU の金融サービスパスポート制度の下 EU27 カ国国内でサービスを提供する

権利を失う。したがって、欧州委員会がこの分野に関して公表した利害関係者向

けの指針で述べたとおり、英国の事業者及びその EU27 カ国国内に存在する契

約の相手方は、あらゆるシナリオにおいて、かつ英国の離脱に間に合うように、

EU 法を遵守するための措置を講じなければならない17。

金融部門において合意なき離脱のシナリオに関連するリスクを分析し、欧州中

央銀行及び欧州監督当局の見解を考慮した上で、欧州委員会は、EU27 カ国にお

ける金融の安定性を保護するために必要な緊急措置は限定的であるという結論

に達した。これらの措置が金融の安定性に関するリスクを緩和するのは、市場活

動を行う者からの準備行動のみでは離脱日までにこれらのリスクに十分に対処

できないことが明らかな分野に限られる。したがって、欧州委員会は本日、離脱

協定が批准されない場合に離脱日から適用される次の措置を採択した。

デリバティブの集中清算に支障が生じないことを確保するための、12 カ

月間の暫定的かつ条件付きの同等性に関する決定 i。これにより、欧州証

券市場監督庁(ESMA)が、現在英国に本部を置く中央清算機関を暫定

的に承認し、それらの機関が引き続き EU 域内でサービスを提供する

ことを暫定的に認めることが可能になる。欧州委員会は、EU27 カ国の

企業が英国の事業者に代わる完全に実行可能な代案を用意するために、

これだけの時間が必要だという結論に達した。

17 https://ec.europa.eu/info/brexit/brexit-preparedness/preparedness-notices_en#fisma

10

英国の中央証券預託期間(central securities depository)が提供するサ

ービスに支障が生じないことを確保するための、24 カ月間の暫定的かつ

条件付きの同等性に関する決定 ii。この決定により、これらの機関が引

き続きEU域内の事業者に対し公証サービス及び中央管理サービスを提

供することが暫定的に認められる。これにより、EU27 カ国国内に直ち

に実行可能な代案を持たない EU27 カ国の事業者が、EU 法の下で義務

を果たすことが可能になる。

英国で設立された機関を相手方とする特定の店頭デリバティブ契約に

ついて、定められた期間にわたり、相手方を英国で設立された機関から

EU 域内で設立された機関へと変更することを促進する二つの委任規則

iii iv。これにより、適用除外資格を維持し、したがって欧州市場インフラ

規制(EMIR)に基づく清算及び預託義務の対象となることを回避しつ

つ、かかる契約を EU27 カ国の機関に移転することができる。かかる

契約のうち、EMIR 制定前に結ばれたものについては、EMIR の要件の

適用対象から除外される。この措置により、相手方を変更した場合でも

免除資格に変更が生じないことが確保される。

全ての金融サービス分野において、企業は、リスクを緩和し、顧客への継続的な

サービス提供を確保するために必要なあらゆる措置を講じ続けるべきである。

また、自社が講じた措置とその実行方法について、積極的に顧客に周知すべきで

ある。このため、EU 域内の英国企業の顧客は、自社へのサービス提供事業者が

EU 法の適用を受けられなくなるケースに備える必要がある。

航空輸送

離脱協定が批准されない場合、EU および英国間の航空交通は離脱日をもって

中断されてしまうだろう。欧州委員会は本日、EU および英国間の航空交通の

全面的な中断を回避し、基本的な接続性を確保するために次の二つの暫定措置

を採択した。

英国と EU 加盟 27 カ国との間の一定の航空サービスの提供を 12 カ月

間暫定的に確保し、英国から乗り入れる航空会社が着陸することなく

EU 領域上を飛行すること、非交通目的で EU 領域内に着陸すること、

定期及び不定期の旅客及び貨物の国際航空輸送サービスを提供するこ

とを可能にするための規則案 v。英国が、EU から乗り入れる航空会社に

対して同等の権利を付与すること、及び公正な競争条件を確保すること

が、その条件となる。

11

英国は「設計国(State of Design)」としての地位を回復する離脱日時点

でなければライセンスを発行できない一方、欧州航空安全機関(EASA)

は第三国で発行された許可に基づき特定のライセンスを発行すること

しかできないという、航空安全セクター特有の事情に対処するため、

特定の既存ライセンスの有効性を暫定的に 9カ月間延長するための航空

安全に関する規則案 vi。

航空輸送分野における活動の突然の中断を防ぐために必要な法的枠組みを確保

でき、かつ必要なのは EU レベルの緊急時対応行動のみである18。国単位の追加

的な措置は不要である。

道路運送

離脱協定が批准されない場合には、EU 及び英国間の道路運送が厳しく制限され、

限られた枠の国際的な制度に限定される。欧州委員会は本日、基本的な接続性を

確保するための措置を採択した。これにより、英国が EU の運送事業者に同等

の権利を付与することを条件として、また、公正な競争を確保する条件に従うこ

とで、英国の運送事業者が EU 域内に貨物を運送することが暫定的に可能にな

る。

英国で認可された道路運送事業者が、英国の領土と EU 加盟 27 カ国と

を結ぶ道路を経由して貨物を運送することを 9カ月間暫定的に認めるた

めの規則案 vii。

道路運送分野における適切な法的枠組みを確保するためには、EU レベルの緊急

時対応行動が必要である。EU 法は道路運送権に関する古い二国間協定に取って

代わっており、道路運送権を復活させることはできない。新しい二国間協定はい

かなるものであれ、管轄権の問題を生じ、別の加盟国の事業者による英国への道

路運送(クロス取引)を認めるものとはならない。したがって、こうした協定は

解決策として現実的ではない。

18 利害関係者に関して、欧州委員会では、航空会社、製造及び保守機関並びに認可された要

員が、必要な免許、証書及び承認を可能な限り早期に申請する必要がある点を強調してき

た。また、欧州委員会は、EU の航空会社として認定されることを希望する企業は、2019年 3 月 30 日時点でその要件を確実に満たすために必要なあらゆる措置を講じる必要があ

ることを繰り返し述べる。

12

関税及び物品の輸出

離脱協定が批准されない場合、輸入品及び輸出品に関する EU のあらゆる関連

法が離脱日時点で適用される。これには、公平な競争環境を確保するために、

関税及び租税の徴収、並びに現在の法的枠組みのもとで要求される手続き及び

管理の尊重が含まれる。

加盟国による行動が引き続き不可欠である。離脱協定が批准されない場合、加盟

国は英国との間で輸入及び輸出する全ての物品に対し、欧州連合関税法典及び

間接税に関する関連規則を離脱日から適用するために必要なあらゆる措置を講

じなければならない。加盟国は、欧州連合関税法典で規定される、円滑化措置の

ために認可を発行することができる既存の手段を活用すべきである。欧州委員

会は加盟国との会合において、欧州連合関税法典の下で各国が取り得る選択肢

に関する詳細な情報を提供した。

また、欧州委員会は本日、次の技術的措置も採択した。

EU の関税領域に到着又は同領域から出発する前に申し立てなければな

らない搬入略式申告(entry summary declaration : ENS)及び出発前

申告(pre-departure declaration)の提出期限に関する規定に、英国を

取り巻く海域を含めるための委任規則 viii。

離脱協定が批准されない場合には、離脱日から、EU から英国への二重用途物品

の輸出には個別の許可が求められる。二重用途物品とは、民生および軍事目的

双方に使用可能な物品、ソフトウェア及びテクノロジーである。EU では、国際

平和及び安全保障に寄与し、大量破壊兵器(WMD)の拡散を防ぐため、二重用

途物品の輸出、中継及び仲介を規制している。EU 一般輸出認可(EUGEA)は、

特定の仕向地への二重用途物品の輸出を特定の条件の下で許可している19。離脱

協定が批准されない場合に、離脱日時点の英国への二重用途物品の輸出管理を

容易にするため、また、全 EU 加盟 27 カ国の輸出認可制度を適切に機能させる

ことを確保するため、欧州委員会は次の措置を採択した。

二重用途物品の輸出のための一般認可がEU全域において有効とされる

国のリストに、英国を追加するための規則案 ix。

19 オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシ

ュタイン及び米国向けの輸出は、EU 一般輸出認可の恩恵を受けることができる。

13

EU の気候政策

EU の気候政策は、様々な制度、特に排出量取引制度及びハイドロフルオロカー

ボン(代替フロン)の上市に対する割当制度により構成されている。排出量取引

制度は、排出割当量を供給するための市場メカニズムに基づいて機能する。離脱

協定が批准されない場合、英国はもはやこの制度に参加しないため、同国が排出

した割当量が、過剰供給の状況を生み出す可能性がある。これにより生ずる市場

の歪曲を防ぎ、排出量取引制度の円滑な機能及び環境十全性を確保するため、

欧州委員会は以下の措置を採択した。

2019 年 1 月 1 日から効力を及ぼすものとして、英国に関して、排出

割当量の無償配分、競売及び国際クレジットの交換を暫定的に停止する

欧州委員会決定 x。

さらに、離脱協定が批准されない場合、英国は、もはやハイドロフルオロカーボ

ンを上市するための割当制度に参加しない。このため、欧州委員会は以下の対策

を採択した。

英国企業に対し、EU27 カ国の市場にアクセスするための適切な年間枠

を配分することを可能にする実施決定 xi。

将来的に正しい枠の配分を可能にすることを目的として、企業による

報告がEU市場と英国市場とで区別されることを確保するための実施規

則 xii。

その他のセクター

欧州委員会は、アイルランドと北アイルランドの国境沿いにある州(Counties)の間で現在実施されている各種プログラムがあらゆるシナリオにおいて継続す

ることの確保に取り組むことを繰り返し述べる。当該地域での地域間協力は特

に重要である。そのため、欧州委員会は本日、次の措置を採択した。

PEACE IV(アイルランド-英国)及び英国‐アイルランド(アイルラ

ンド-北アイルランド、アイルランド-スコットランド)プログラムの

2020 年末までの継続を確保するための規則案 xiii。

14

欧州委員会は、アイルランドと北アイルランドの国境沿いにある州の平和と

和解に向け、次期多年度財政枠組みにおいて、国境を越えた支援を継続し、強化

することを提案している事実を強調する20。

最後に、また、英国の離脱の結果として、統計に関するルールへの一定の適合が

必要になる。この点に関し、欧州委員会は本日、次の措置を採択した。

国際収支、国際サービス貿易及び海外直接投資に関する統計に英国を

掲載することに関する欧州委員会委任規則 xiv。

6. 緊急対応に向けた次のステップ

欧州委員会は、今後数週間をかけ、その緊急時対応行動計画を引き続き実施する。

また、追加措置の必要性についても監視を継続する。

ブレグジットに関する EU 理事会作業部会における分野別セミナーを含め、

加盟国との緊密な協調を継続する。欧州委員会は、欧州議会及び理事会の準備及

び緊急問題に関する会議に、必要な限り頻繁に参加する。

欧州委員会は共同立法者に対し、提案している立法措置が英国の離脱日までに

効力を生ずるよう、これらの確実な採択を要請する。また、欧州委員会は欧州議

会及び理事会に対し、委任規則を可及的速やかに発効させることの重要性を

強調する。

最後に、欧州委員会は加盟国に対し、緊急時対応行動に関して引き続き足並みを

そろえ、EU 法と非整合的かつ EU レベルでの対応と同じ結果を達成することの

できない二国間の取決めの締結を控えるよう、繰り返し要請する。こうした 取

決めは、EU と英国との将来的な関係を確立することも困難にする。

20 COM(2018) 374 final.

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欧州委員会により採択された法的措置のリスト

i グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の相手方中央清算機関に適用される規制

枠組みが、限定された期間において、欧州議会及び理事会規則(EU)No 648/2012 に従っ

て同等である旨を決定する欧州委員会実施決定(EU)(C(2018)9139)。

ii グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の証券保管振替機関に適用される規制枠

組みが、限定された期間において、欧州議会及び理事会規則(EU)No 909/2014 に従って

同等である旨を決定する欧州委員会実施決定(EU)(C(2018)9138)。

iii 特定の種類の契約についてその清算義務が効力を発する日に関する欧州議会及び理事会規

則(EU)No 648/2012 を補完する欧州委員会委任規則(EU)2015/2205、欧州委員会委任

規則(EU)2016/592 及び欧州委員会委任規則(EU)2016/1178 を改正する欧州委員会委

任規則(EU)(C(2018)9122)。

iv 中央清算機関により清算されない特定の店頭デリバティブ契約の相手方がそのリスク管理

手続きの適用を継続できる期限に関する欧州議会及び理事会規則(EU)No 648/2012 を補

完する委任規則(EU)2016/2251 を改正する欧州委員会委任規則(EU)(C(2018)9118)。

v グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の EU からの離脱に関連して航空の基本

的な接続性を確保するための共通ルールに関する欧州議会及び理事会規則にかかる欧州委

員会提案(COM(2018)893 final)。

vi グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の EU からの離脱に関連する航空安全の

特定の側面に関する欧州議会及び理事会規則にかかる欧州委員会提案(COM(2018)894

final)。

vii グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の EU からの離脱に関連して道路貨物の

基本的な接続性を確保するための共通ルールに関する欧州議会及び理事会規則にかかる欧

州委員会提案(COM(2018)895 final)。

viii グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国、チャンネル諸島並びにマン島からの又は

同地域への海上輸送における搬入略式申告及び出発前申告の提出期限に関する委任規則

(EU)2015/2446 を改正する欧州委員会委任規則(C(2018)9094)。

ix EU からグレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国への特定の二重用途物品の輸出に

対し EU 一般輸出認可を付与する理事会規則(EC)No 428/2009 を改正する欧州議会及び

理事会規則にかかる欧州委員会提案(COM(2018)891 final)。

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x 無償配分、競売及び国際クレジットの交換に関する欧州連合の取引記録の関連プロセスへ

の英国の暫定的な受入れ停止を求める中央管理機関への指示に関する 2018 年 12 月 17 日

の欧州委員会決定(C(2018)8707)。

xi フッ素化温室効果ガスに関する欧州議会及び理事会規則(EU)No 517/2014 に基づく報告

をもとに、英国内で設立され、ハイドロフルオロカーボンを 2015 年 1 月 1 日から適法に上

市していた生産者又は輸入者の 2019 年 3 月 30 日から 2020 年 12 月 31 日までの参考価格

に関する参考価格を同規則に従って決定する欧州委員会実施決定(EU)2017/1984 を改正

する 2018 年 12 月 17 日の欧州委員会実施決定(C(2018)8801)。

xii 英国及び EU 加盟 27 カ国で上市されるハイドロフルオロカーボンに関連する規則(EU)

No 517/2014 の第 19 条で規定されるデータの報告に関する実施規則(EU)No 1191/2014

を改正する 2018 年 12 月 14 日の欧州委員会実施規則(C(2018)8575)。

xiii 英国が EU から離脱した場合でも領域的協力プログラムである PEACE IV(アイルランド・

英国)及び英国-アイルランド(アイルランド・北アイルランド・スコットランド)(プログ

ラム)の継続を可能にするための欧州議会及び理事会規則にかかる欧州委員会提案(COM

(2018)892 final)。

xiv 地理的細分類の度合いに関する欧州議会及び理事会規則(EC)184/2005 の附属書 I を改正

する 2018 年 12 月 19 日の欧州委員会委任規則(EU)(C(2018)8872)。

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作成者 日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 欧州ロシア CIS 課

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