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─ 206 ─ A Draft of an Annotated Edition of“Wu Zhen Pian with Commentaries and Subcommentaries,” Part VI NOMURA, Hideto This paper is an draft about “Wu Zhen Pian with Commentaries and Subcommentaries 悟 真 篇 註 疏 ”(WZP-CS) , which is one of the most popular Daoist canon about Internal Alchemy. We do not only translate to old and modern Japanese, but also annotate WZPCS for understanding its esoteric metaphor. This part translate “the poem of seven-characters and four-rhym 七言四韻” in WZP-CS Volume Ⅰ.

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─ 206 ─

A Draft of an Annotated Edition of“Wu Zhen Pian with Commentaries and Subcommentaries,” Part VI

NOMURA, Hideto

 This paper is an draft about “Wu Zhen Pian with Commentaries and Subcommentaries

悟 真 篇 註 疏”(WZP-CS), which is one of the most popular Daoist canon about Internal

Alchemy. We do not only translate to old and modern Japanese, but also annotate WZPCS

for understanding its esoteric metaphor.

 This part translate “the poem of seven-characters and four-rhym 七言四韻” in WZP-CS

Volume Ⅰ.

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 207 ─

窟鳳巢也。黍粒之珠。旣懸。天地之金可掬。昔邵剛中精於黃白之術。

世號爲小淮南王。後遇仙翁韓子陶法師於水上。北面事之。出汞金百

鎰獻陶以爲質。陶笑而不顧。邵歃血書盟。陶遂授道焉。旣竟陶取汞

一掬入口潄之。吐於水盆中。水爲之湧沸沸定成紫金一垜此示其内丹

大藥有如此之神妙。豈待窮年卒歲弄草燒茅之輩。可得而見之乎。經

文不曰。地藏發泄。金玉露形。又其證也。

疏曰。吕純陽以泥土瓦石爲金。南唐耿仙姑捏雪成銀。陳泥丸合汞立

乾。傳道集云。口中可以乾汞。皆丹熟之驗。

①誤りて「黃」の下に「芽」字を欠く。これを補う。

②「丹」を「而」に誤まる。これを改める。

③道蔵本は「輩」に作る。これに従う。

『紫陽真人悟真篇三註』(DZ一四二)に「不」字なし。これに従

う。下句「地藏發泄。金玉露形。」は『度人経』の引用であるた

め、否定しては意味が通らない。

⑤道蔵本は「泥」字を欠く。

⑥道蔵本は末尾に「右外薬」の割注あり。

【訓読】

人人本より長生の藥有るも、自ら是れ迷途に相擺抛す。甘露降る時

天地合し、黃芽生ずる處坎離交はる。井蛙應に龍窟無きを謂ひ、籬

鷃争か鳳巢有るを知らん。丹熟せば自然と金屋に滿ち、何ぞ湏く草

を尋ね燒茅を學ばん。

註に曰く。甘露黃茅、皆金丹の異名なり。天地坎離、皆龍虎の象な

り。天地の氣氤氲し甘露自ら降る。坎離の氣交併し黃茅自ら生ず。

龍虎二弦の道交接し、真一の氣自ら結ぶ。此般の至寳家家自ら有す。

其の太近を以て、故に輕じて之を棄つ。殊に知らず此れ乃ち升天の

靈梯なり。近世の學者、多く傍門非類、孤隂寡陽、有中に有を生ず、

遇ひ易く成し難き等の法に執らはれ、自ら其の身を誤る。知らず斯

の道簡にして成し易き者、井底の蛙籬間の雀安ぞ知龍窟鳳巢有るを

知るが如き有るなりを。黍粒の珠旣に懸れば、天地の金掬ふ可し。

昔邵剛中黃白の術に精なり。世號して小淮南王と爲す。後に仙翁韓

子陶法師と水上に於いて遇ふ。北面して之に事ふ。汞金百鎰を出し

て陶に獻じ以て質と爲す。陶笑ひて顧ず。邵歃血書盟し、陶遂に道

を授く。旣にして竟に陶汞一掬を取り口に入れ之を潄ぎ、水盆中に

吐く。水之が爲に湧沸し、沸定り紫金一垜を成す。此れ其の内丹大

藥此の如きの神妙有るを示す。豈に窮年卒歲を待ち弄草燒茅するの

輩、得て之を見るべきか。經文、地藏發泄され、金玉形を露わにす

るを曰ふは、又た其の證なり。

疏に曰く。吕純陽泥土瓦石を以て金と爲す。南唐耿仙姑雪を捏ねて

銀と成す。陳泥丸汞を合せて立ち乾す。傳道集に云ふ。口中以て汞

を乾すと。皆丹熟するの驗なり。

(続稿)

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─ 208 ─

単で成功させやすいことを知らないのは、井戸の底の蛙や鳥籠の中

の雀が龍の住む洞窟や鳳凰の巣が存在することを知らないようなも

のだ。黍粒大の宝珠が虚空に懸れば、天地にある黄金は手にできる

のだ。その昔邵剛中は黄白の術(外丹法)に詳しく、世間では小淮

南王と呼ばれていた。後に仙翁韓子陶法師に水上に出会い、北面し

て仕え、水銀と黄金を金丹の材料としてたくさん陶に獻じた。陶は

笑って顧みなかった。邵が血をすすり契約をすると、陶は道を授けた。

そこでとうとう陶は水銀をひとすくいして口に入れて漱ぎ、水盆の

中に吐いた。水がそのことで沸騰し、おさまると紫金一山ができた。

これは内丹大薬がそのような神妙な働きがあることを示したものだ。

どうして長い年月をかけて外界の自然物で丹薬をなそうとする者が、

到達できるものだろうか。地中に隠されたものが産出されて、黄金

や玉がその形を現すと経典で言っているのも、その証拠である。

 

疏ではこう述べている。呂純陽が泥土瓦石を金に変えた。南唐の

耿仙姑は雪をこねて銀に変えた。陳泥丸は水銀をすぐに乾かした。

『傳道集』では、口中以て汞を乾すと言っている。どれも金丹が熟成

した証拠である。

①未詳。

②未詳。

『純陽帝君神化妙通紀』(DZ三〇五)巻五の齋大雲僧第五十一化

に「道成瓦石化黄銀。」(道成れば瓦石黄銀に化す。)とある。

④『江淮異人録』(DZ五九五)耿先生の条にあり。

原文「傳道集云。口中可以乾汞。」は本来注釈であったと思われる。

陳泥丸に師事した白玉蟾「修仙辨惑論」(修眞十書雜著指玄篇巻

四、DZ二六三)に引用された陳の言葉の中に「身如火熱。行步

如飛。口中可以乾水。吹氣可以煑肉。」(身火の如く熱し、行步飛

ぶが如し。口中以て水を乾すべく、吹氣して以て肉を煑るべし。)

とあり、これが出典であろう。ただし前後の文脈からしても本来

は水銀ではなくたんに水を差すものであった。ただし外丹の文脈

では水銀を乾かして白銀に変えることが言われるので、そのよう

に読み替えられたのであろう。例えば『金丹正理大全群仙珠玉集

成』(道書全集本)巻一収録の「修仙辨惑論」は「汞」に作る。

【原文】

人人本有長生藥。自是迷途相擺抛。甘露降時天地合。黃芽生處坎離

交。井蛙應謂無龍窟。籬鷃争知有鳳巢。丹熟自然金滿屋。何湏尋草

學燒茅。

註曰甘露黃茅。皆金丹異名也。天地坎離。皆龍虎之象也。天地之氣

氤氲甘露自降。坎離之氣交併。黃茅自生龍虎二弦之道交接真一之氣

自結。此般至寳家家自有。以其太近。故輕而棄之。殊不知此乃升天

之靈梯也近世學者。多執傍門非類孤隂寡陽。有中生有易遇難成等法

而自誤其身。不知斯道簡而易成者。有如井底之蛙籬間之雀安知有龍

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 209 ─

いさ黍米の如し。古詩に曰く、掌上に將に来たりて霞光燦たり。腹

中に吞入して宫殿新たなりと。又た曰く、大道朝市に隱るるは、山

中知るや知らざるやと。

疏に曰く。金丹先天の氣に因りて結成し、人身後天の氣に因りて變

化を成す。風浪の湧は、一身の氣と金丹際會するを言ふなり。玄珠

の産は、一身の氣と金丹交結するを言ふなり。日の子午、日の歷す

る所に因る。斗の子午、初の指す所に因る。其の子午とは、地の正

方なり。窮めて之を用ゐ、日斗と同じく運らす。此れ乃ち真師の口

傳なり。日の會する所は、則ち神聚る。世之を月將と謂ふ。斗の指

す所は、則ち氣動く。世之を月建と謂ふ。天度に暗合するは、日の

子午を用ゐ、斗建の運用に依る。斗の子午は、日に晝夜の數有り、

子晝午夜を分かつ。月は時に應じて加减し、子生午虧を分かつ。南

北とは子午を以て言ふ。晨昏とは亦た子午を以て言ふ。子自り巳に

至るを晨と爲し、午自り亥に至るを昏と爲す。此れ仙道の晨昏。世

間の日の出沒するの晨昏に非ざるなり。天罡又た法あり。節氣と交

はれば月建を以て亥を加へ、中氣と交はれば戌を加ふ。以て各時指

す所を推る。彭真人旣にして叅同契分章通真義を爲して畢る。因り

て五行顛倒して順行せずの四句を讀み、以て天地互用の機を泄らす

と爲す。隂陽返復の道を分け、遂に黒鉛水虎論、紅鉛火龍訣を述ぶ。

名づけて曰く還丹内象金鑰匙。其の虎の體龍の用を言ふは皆大丹造

化を論ず。今無名子借りて以て内外二丹に分言す。但だ其の題を取

り其の文を取らず。真一子の本旨を述作するに非ずと雖も、然るに

其の理も亦た通ず。

   六(道蔵本では第八首)

【現代語訳】

人々は本来長生の薬をもっているが、自分で道に迷って投げ捨てて

いる。

甘露が降る時天と地は合わさり、黄芽が生ずる所に坎と離が交わる。

井戸の中の蛙は龍の住む洞窟など無いと言うだろうし、籠の中の小

鳥は鳳凰の巣があることを知っているだろうか。

金丹が熟すと自然に金が家に満ちるのだから、どうして材料を探し

て作ることを学ぶだろう。

 

註ではこう述べている。甘露と黄茅は、どちらも金丹の異名であ

る。天地と坎離は、どちらも龍虎の象徴である。天地の気が混ざり

合うと甘露が自然と降ってくる。坎離の気が交じり合うと黄茅が自

然と生まれてくる。龍虎二弦の道が接して交われば、真一の気とし

て自然と結ばれる。この至宝はどの家にも最初からある。それがあ

まりに身近なので、軽く見て捨ててしまう。これが昇天への霊梯で

あるということをまったく知らないのだ。近頃の修行者は、しばし

ば本来の道から外れたものや、陰だけや陽だけを練るものや、有か

ら有を生もうとするものや、出会いやすく成功させがたいものなど

の方法にこだわって、自分から道を踏み外している。本当の道が簡

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─ 210 ─

丹田中の金胎神室なり。乃ち丹結聚の處なり。玄珠とは、運火の際、

真精自然と運轉し、尾閭に沿って夾春を直透し、泥丸宫に上衝す。

顆顆として口中に降下す。狀雀卵の若く、甘香比ぶる無し。號して

玄珠と曰ふ。丹田に咽下す、名づけて嬰兒と曰ふ。又た曰く、金液

還丹なりと。夫れ黍珠の丹、是れ天地に先だつるの氣即ち真一の精

なり。結成して母と爲り、君と爲り、鉛と爲る。故に金鑰匙、之を

黒鉛と謂ふなり。又た之を水虎と謂ふなり。己の真氣は、天地に後

れて生じ、子と爲り、臣と爲り、汞と爲る。故に金鑰匙、之を紅鉛

と謂ふなり。又た之を火龍と謂ふなり。金丹外自り来たりて腹中に

吞入すれば、則ち己の真氣下元氣海自より上り、湧くこと風浪の如

く、翕然として丹に湊まる。臣の君に於けるが、子の母に於けるが

若く、其の相與にするの意知る可きなり。龍虎相交りて、神室土釜

の中に在り、火符の運育を受け、聖胎を結成す。果の必ず熟し、兒

の必ず生ずるが若し。十月功圓かなれば、脫胎して神化無方なり。

南北とは、子午の時なり。宗源とは、起首の初なり。晨昏とは、晝

夜の首なり。子は六陽の首を爲す。故に晨と爲す。屯卦を用ゐて事

に直たる。進火の候なり。午は六隂の元を爲す。故に昏と爲す。蒙

卦を用ゐて事に直たる。進水の候なり。一日兩卦事に直たり、三十

日に至り終に旣濟未濟の二卦と爲す。終はりて復た始まり、循環し

て已まず。故に卦象を翻すと曰ふなり。叅同契に云ふ。朔旦に屯事

に直たり、至暮に蒙當に受くる。晝夜各一卦、之を用ゐるは次序に

依る。旣未晦に至りて爽と終われば、則ち復た更に始まる、と。是

れなり。一日に兩卦事を主り、牝牡四卦を并はす。一月に六十四卦

を計へ、三百六十四爻を計ふ。應に一年に閏餘を并はするの數。乾

の初九は、坤の初六に起る。乾の策三十有六爻。二百一十六を計ふ。

坤の初六。乾の初九に起る。坤の策、二十有四爻。一百四十有四を

計ふ。緫じて之を計ふれば、三百六十、周天の數に應ず。日月行度、

交合升降、卦爻の内を出でず。月行速く、一月に一周天す。日行遅

く、一年一周天す。天樞とは、斗建の極なり。一晝一夜、一周天、

一月に一移するなり。正月建寅、二月建卯の如きは、是なり。且に

正月建寅の如きは、太陽未だ宫を過ぎざるが如ければ、分けて寅を

以て亥を加へ、酉に至りて子を建つ。正月斗建子に臨むは、正に酉

時なり。太陽已に宫を過ぐるが如し。分けて寅を以て戌を加へ、寅

に至り午を建つる。正月斗建午に臨むは、正に寅時なり。上士は隂

陽上下を明らかにし、日月盈虧を知り、子午火符を行ふに至る。日

に晝夜の數有り。月は時に應じて加减す。然る後に天度に暗合す。

一一斗建に依りて之を運らす。故に曰く天樞に合するなりと。天樞

即ち斗極なり。夷門歌に曰く、十二門中に月建移す。刻漏時に依り

逐ひて旋布す。此れ其の旨なり。至道の妙、妙は斯に於て在り。坎

離升降し、靈藥を生産し黃芽を結成するなり。且に正月建寅の如し。

立春の戌時は艮を指す。雨水の戌時は寅を指す。故に曰く、月日常

に戌の如く、時時破軍を見る。金丹大藥は、家家自ら有し、市朝に

拘らず。柰何に龍を見て龍と識らざるや。虎を見て虎と識らざるや。

逆ひて之を修めるは幾何の人かな。片餉の間に、一寳珠を結ぶ。大

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 211 ─

成黃芽也。且如正月建寅立春戌時指艮。雨水戌時指寅。故曰。月月

常如戌。時時見破軍。金丹大藥。家家自有。不拘市朝。柰何見龍不

識龍。見虎不識虎。逆而修之幾何人哉。片餉之間。結一寳珠。大如

黍米。古詩曰。將来掌上霞光燦。吞入腹中宫殿新。又曰。大道隱朝

市。山中知不知。

疏曰。金丹因先天之氣結成。因人身後天之氣而成變化。風浪之湧。

言一身之氣與金丹際會也。玄珠之産。言一身之氣與金丹交結也。日

之子午。因日所歷。斗之子午。因初所指。其子午者。地之正方也。

窮而用之與日斗同運。此乃真師口傳。日之所會。則神聚世謂之月將。

斗之所指。則氣動。世謂之月建。暗合天度。用日之子午。依斗建運

用。斗之子午。日有晝夜數。分子晝午夜。月應時加减。分子生午虧。

南北者以子午言。晨昏者亦以子午言。自子至巳爲晨。自午至亥爲昏。

此仙道之晨昏。非世間日出沒之晨昏也。天罡又法。交節氣以月建加

亥。交中氣加戌。以推各時所指。彭真人旣爲叅同契分章通真義畢。

因讀五行顛倒不順行四句。以爲泄天地互用之機。分隂陽返復之道。

遂述黒鉛水虎論。紅鉛火龍訣。名曰還丹内象金鑰匙。其言虎之體龍

之用。皆論大丹造化。今無名子借以分言内外二丹。但取其題不取其

文。雖非真一子述作本旨。然其理亦通。

①道蔵本は「室」に作る。

②道蔵本は「六」を「八」に作る。これに従う。

③道蔵本は「天樞」を「樞天」に作る。

④道蔵本は「一」を欠く。

⑤道蔵本は「至」を「至人」に作る。

⑥道蔵本は「二」を「日」に作る。

⑦道蔵本は「暗」を「時」に作る。

⑧道蔵本は「不」を「極」に作る。これに従う。

⑨道蔵本は「十二門中月建移」を「十二門中天一作月建移」に作る。

⑩道蔵本は「且」字の上に「別本云」とあり。

⑪道蔵本は「日」を「月」に作る。これに従う。

⑫道蔵本は「暗」を「時」に作る。

⑬道蔵本は末尾に「右内薬」の割注あり。

【訓読】

虎躍龍騰して風浪麄く、中央正位に玄珠を産む。菓の枝上に生じ終

に期熟す。子の胞中に在るは豈に殊なる有らん。南北の宗源卦象を

翻し、晨昏の火候天樞に合す。須らく知るべし大隱は廛市に居する

を。自ずと必ず深山は静孤を守らん。

註に曰く。此の詩内象の法象を言ふなり。夫れ真一の精は、造化し

て外に在らば、金丹と曰ひ、又た真土と曰ふ。己が腹中に吞入すれ

ば、即ち真鉛と名づけ、又た陽丹と名づく。此に虎と言ふは即ち丹

なり。龍とは、我の真氣なり。我の真氣は、氣海自り上り、其の湧

くこと浪の如く、其の動くこと風の如きなり。中央正位とは。即ち

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─ 212 ─

① 『 還丹内象金鑰匙』、『雲笈七籤』巻七十(道蔵DZ一〇三二)に

収録。蜀の彭曉の撰とされる。後段の疏文を参照。

②例えば、『参同契分章通真義』(DZ一〇〇二)巻上参照。

周易』繫辭伝上に、「乾之策二百一十有六、坤之策百四十有四、

凡三百有六十、當期之日。」とある。

④未詳。

⑤『大丹直指』(DZ二四四)巻下「妙旨」。

⑥『性命圭旨』には石泰の作として引用するが出典未詳。

⑦未詳。

【原文】

虎躍龍騰風浪麄。中央正位産玄珠。菓生枝上終期熟。子在胞中豈有

殊。南北宗源翻卦象。晨昏火候合天樞須知大隱居廛市。自必深山守

静孤。

註曰。此詩言内象之法象也。夫真一之精。造化在外。曰金丹。又曰

真土吞入己腹中。即名真鉛。又名陽丹。此言虎即丹也。龍者。我之

真氣也。我之真氣。自氣海而上。其湧如浪。其動如風也。中央正位

者。即丹田中金胎神室也。乃丹結聚之處。玄珠者。運火之際。真精

自然。運轉沿尾閭直透夾脊。上衝泥丸宫。顆顆降下口。中狀若雀卵。

甘香無比號曰玄珠。咽下丹田。名曰嬰兒。又曰。金液還丹也。夫黍

珠之丹。是先天地之氣即真一之精。結成爲母。爲君。爲鉛。故金鑰

匙謂之黒鉛也。又謂之水虎也己之真氣。後天地生。爲子。爲臣爲汞。

故金鑰匙。謂之紅鉛也。又謂之火龍也。金丹自外来吞入腹中。則己

之真氣自下元氣海而上。湧如風浪。翕然而湊丹。若臣之於君。子之

於母。其相與之意。可知也。龍虎相交。在神室土釜之中。受火符運

育。結成聖胎。若果之必熟。兒之必生。十月功圓。脫胎神化無方也。

南北者。子午時也宗源者。起首之初也。晨昏者。晝夜之首也。子爲

六陽之首故爲晨。用屯卦直事。進火之候也。午爲六隂之元故爲昏。

用蒙卦直事。進水之候也。一日兩卦直事。至三十日終爲旣濟。未濟

二卦。終而復始。循環不已。故曰翻卦象也。叅同契云。朔旦屯直事。

至暮蒙當受。晝夜各一卦。用之依次序。旣未至晦爽。終則復更始。

是也。一日兩卦主事。并牝牡四卦。一月計六十四卦。計三百八十四

爻。應一年并閏餘之數。乾之初九。起於坤之初六乾之策。三十有六

爻。計二百一十六坤之初六。起於乾之初九。坤之策。二十有四爻計

一百四十有四緫而計之。三百六十。應周天之數。日月行度。交合升

降。不出於卦爻之内。月行速。一月一周天。日行遅。一年一周天。

天樞者。斗建之極也。一晝一夜。一周天。一月一移也。如正月建寅。

二月建卯。是也。且如正月建寅。如太陽未過宫。分以寅加亥。至酉

建子。正月斗建臨子。正酉時也如太陽已過宫。分以寅加戌至寅建午。

正月斗建臨午。正寅時也。上士至明隂陽上下。知日月盈虧。行子午

火符。二有晝夜數。月應時加减。然後暗合天度。一一依斗建而運之。

故曰合天樞也。天樞即斗極也。夷門歌曰。十二門中月建移。刻漏依

時逐旋布。此其旨也。至道之妙。妙在於斯。坎離升降。生産靈藥結

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 213 ─

言っているのだ。天枢とは北斗七星全体である。「夷門歌」ではこ

う述べている。十二門の中で月建は移っていき、刻漏が時間にした

がってまわっていく、と。ここで述べたのはその意味である。至道

のすぐれたところは、ここにこそある。坎と離が昇降し、霊薬を生

み出して黄芽を結ぶようになる。それは例えば正月建寅のときであ

れば、二十四節気の立春の季節では戌の時刻は艮を指す。同じく雨

水の季節では戌の時刻は寅を指す。だからこう言われている。月々

にいつも戌の時刻を設定するには、その時々に破軍を見る、と。金

丹大薬は、家という家に最初からあるもので、宮中市中と関係ない。

どうして龍を見ておいて龍と認識しないのか。虎を見ておいて虎と

認識しないのか。常識に逆らって修行する人はどれだけいることだ

ろう。わずかな時間の間に、宝珠が結ばれる。その大きさは黍米ぐ

らい。古詩ではこう言っている。「掌上に霞んだ光が燦々として、

腹中に吞めば宮殿は新しくなる。」と。また次のようにも言っている。

「大いなる道は宮中や市中に隠れており、山中にあるかどうかは分

からない、と。

 

疏ではこう述べている。金丹は先天の気によって結成し、人身は

後天の気によって変化する。波風が荒いとは、一身の気と金丹が出

合うことを言っている。玄珠が産まれるとは、一身の気と金丹が交

わり結ばれることを言っている。太陽の子と午の位置は、太陽の通

るところにもとづく。北斗の子と午の位置は、先端の指すところに

もとづく。その子と午とは、地の正しい方角である。それを突き詰

めて使い、太陽や北斗といっしょに運行させる。これが本当の師の

口伝である。太陽が子午の位置にぶつかるところは、神が集まるの

だ。一般に月将と言っている。北斗が子と午の位置を指すところは、

気が動くのだ。一般に月建と言っている。天の度数と一致するは、

太陽の子と午の位置を使うのは、斗建の運用にもとづく。北斗の指

す子と午の位置は、日によって昼夜を数え、子昼と午夜を分ける。

月は時間に合わせて加減し、子生と午虧を分ける。本文中の南北と

は子午のことを言っている。晨昏も子午のことを言っている。子か

ら巳の刻までを晨とし、午から亥の刻までを昏とする。これが仙道

の晨昏であり、世間一般の日の出沒による晨昏ではないのである。

北斗の柄である天罡にも法則がある。月の初めの節気と交わるとき

は月建に亥の方角を加え、月の中旬の中気と交わるときは戌の方角

に加え、それでそれぞれの時間に指すところを推測するのだ。彭真

人が『参同契分章通真義』を完成させた後、五行を逆転させて順序

通りに変化しない四句を読んでしまい、天地を合わせて使う機微を

漏らしてしまった。さらに陰陽返復の道を二つに分けて、黒鉛水虎

論、紅鉛火龍訣を述べ、『還丹内象金鑰匙』と名付けた。その虎の

体や龍の用について述べているはどちらも大丹の錬成を論じたもの

だ。今、注文において無名子翁葆光がその言葉を借りて内外二丹に

分けて述べた。しかしその題名を使っただけで文章内容を取り上げ

ていない。翁葆光は同書の本来の意味を述べたわけではないが、そ

の論理もまた通ずるものがある。

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─ 214 ─

に先だって存在する気、つまり真一の精である。結集して母となり、

君となり、鉛となる。だから『金鑰匙』では、黒鉛と言い、また水

虎と言っているのだ。自己の真気は、天地に後れて生じ、子となり、

臣となり、汞(水銀)となる。だから『金鑰匙』では、紅鉛と言い、

火龍と言っているのだ。金丹を体外から自己の腹中に飲み込むと、

自己の真気が下元の気海から上昇して、波風のように沸き立ち、い

っせいに金丹に寄り集まる。臣が君に相対するように、子が母に相

対するように、二者がともにあるという意味が分かるだろう。龍虎

が交じりあって、神室土釜の中にあって、火符による養育を受けて、

聖なる胎を結ぶ。果実が必ず熟し、子供が必ず生まれるようなもの

だ。十ヶ月の修養が完成すれば、胎から脱け出して神妙な変化をお

こす。本文中の南北とは、子午の時を意味する。宗源とは初めの初

めのこと、晨昏とは昼夜の初めのことである。子は六陽の初めなの

で、晨として、屯卦(☵☳)を使って事にあたる。進火の時である。

午は六陰の元なので、昏として、蒙卦(☶☵)を使って事にあたる。

進水の時である。一日に二つの卦で事にあたり、三十日たつと終に

既濟(☵☲)と未濟(☲☵)の二卦になる。終わるとまた最初から

始まり、循環して止まらない。だから本文中で卦象をひっくり返す

と言ったのである。『参同契』ではこう述べている。「月の始まりの

朝は屯卦が事にあたり、夜になると蒙卦がちょうど引き受ける。昼

夜各一卦、それを使うのは順序に従う。既濟と未濟の卦で月の終わ

りにきちんと終われば、また最初から始まる」、と。その通りである。

一日のうちに二つの卦で事を主り、乾坤坎離の牝牡四卦をあわせて

いく。一ヶ月に六十四卦を数え、三百八十四爻を数える。ちょうど

一年に閏月を合わせた数である。乾卦の最初の爻である初九は、坤

卦の最初の爻である初六から立ち上がる。乾を示す蓍は一爻あたり

三十六本で、卦全体で合計二百十六本になる。逆に坤卦の初六は、

乾卦の初九から立ち上がる。坤を示す蓍は一爻あたり二十四本で、

卦全体で合計百四十四本になる。総計すると三百六十、周天の数に

対応する。日月の運行、その交合や昇降は、卦爻の範囲を出ない。

月の運行は速く、一ヶ月に天を一周する。日の運行は遅く、一年に

天を一周する。天枢とは、北斗の柄が指す方角によって区分される

斗建の頂点である。一昼夜、一周天、一ヶ月に一つずつ移っていく。

正月建寅、二月建卯といったものがそうである。まさに正月建寅な

どは、太陽がまだその宮を過ぎていなければ、区別して寅の方角を

亥の方角までずらし、酉の方角に子の方角をたてる。正月の斗建に

おいて子の方角に臨むのは、まさしく酉の時においてなのである。

太陽がすでにその宮を過ぎていれば、区別して寅の方角を戌の方角

までずらし、寅の方角に午の方角をたてる。正月の斗建において午

の方角に臨むのは、まさしく寅の時においてなのである。上士は陰

陽の昇降を明らかにし、日月の満ち欠けを知り、子と午の時に火符

の修養を行うようになる。日は昼と夜の別がある。月は時に応じて

増減する。その上で周天の区分にぴったり合っている。一つ一つ斗

建にもとづいて気をめぐらせる。だから本文中で天枢に符合すると

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 215 ─

道中に二弦の氣を取る。顛倒の主賔は、常道の主賔を取らず。故に

主賔を定むると曰ふなり。金鼎とは、金は隂物を爲し、鼎中に火の

氣有り。是れ隂中に陽有るの象。白虎是れなり。玉池とは、玉は陽

物を爲し、池中に水の氣有り。是れ陽中隂有るの象。靑龍是れなり。

砂中の汞とは、龍の弦氣なり。水中の銀とは、虎の弦氣なり。修丹

の士、若し虎を以て戀龍の氣を留めんと欲すれば、必ず先ず龍を驅

して虎に就き、然る後に二物氤氲し、兩情交合す。施功煆錬すれば、

自然と真一の精を凝結するなり。火は即ち二弦の氣なり。旦とは、

一晝の首、子は六陽の元を爲す。故に旦と曰ふなり。聖人丹火を運

り動かし、神妙の功有れば、時中を半ばせず、立ちに真一の精を得。

一粒黍の如く、北海の中に於て現はる。赫然たる光簾幃を透すこと、

深潭に現出す一輪の紅日の若きなり。旦に終わるに非ずとは、一時

辰に金丹の成るを明らかにするなり。此れ外藥の法象なり。

疏に曰く。坎男離女。日烏月兎。天玄地黃。金隂の鼎に火有るなり。

玉陽の池に水有るなり。主反りて賔と爲り、賔反りて主と爲る。皆

是れ隂中に陽を取り、陽中に隂を取るなり。五行を顛倒し、逆修し

て以て太極に於て至る。太極とは、先天未だ判れざるの氣なり。金

丹乃ち隂火の結成なり。火は世間の凢火に非ざるなり。二弦の氣は、

皆火なり。二弦なる者、其の初や、氣有りて質無し。其の源や、淸

に至りて濁無し。年に在りては二八の月を爲す。隂陽の平なり。月

に在りては上下の弦を爲す。金水の半なり。

   五(道蔵本では第九首)

【現代語訳】

虎が躍り龍が馳せて波風荒く、中央の正位に玄珠が産まれる。

果実が枝の上に生じて熟れ頃になるのと、子供が胎内にいることが

どうして異なるだろうか。

南北のはじまるところで卦象をひっくり返し、昼夜の火加減は天枢

に符合する。

大いなる隠者は雑然とした街に住んでいると知るべきで、自然と深

山は静かで誰もいないままとなるだろう。

 

註ではこう述べている。この詩は体内現象の象徴を言っている。

さて真一の精は、変化して体外にあったら、金丹と言い、また真土

と言う。自身の腹中に吞み込めば、真鉛と呼び、また陽丹と呼ぶ。

ここで虎と言っているのは丹のことである。龍とは、自己の真気で

ある。自己の真気は、気海から上昇して、その湧きたつこと波のよ

うで、その動くこと風のようである。中央の正位とは、つまり丹田

の中の金胎神室である。つまり金丹が結集するところである。玄珠

とは、火を運用することで、真精が自然と体内を廻り、尾閭に沿っ

て夾春をまっすぐ通り、泥丸宮に突き当たり、粒状となって口中に

降りててきたとき、その状態は雀の卵のようで、甘い香は比べるも

のがない、それを玄珠と呼んでいるのだ。丹田に飲み下せば、嬰兒

と名付ける。また金液還丹と言う。黍大の宝珠である金丹は、天地

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─ 216 ─

此を喻へ、却て紫陽翁の意に合するは何すれぞや。自己の精氣血

液に縁る者は、朱裏の汞なり。其れ走逸せしむるべからず。故に

云ふ。彼此の華を留めんと欲するなりと。靈池丹井丹泉とは、水

中の銀なり。即ち先天一點の眞氣。故に云ふ。先ず下し又た留め

んと欲する者は、但だ其れ住はしめて其れ去らしむべからずと。

要ず人に取りて己に於いて失はず。先ず下すは彼到り我之を待つ。

鉛至りて汞之を迎ふ。坎動けば則ち離之を受く。金丹の道先ず此

を得る要む。欲留先下四字の㫖なり。運火は旦に非ざるとは、必

ず其の温和を得て之を運らす。故に參同契に云ふ。發火初め温微

たり。亦た爻の動く時の如しと。純陽翁云ふ。中宵は漏永するこ

と温温。鉛鼎は光簾幃を透すと。蓋し萬物生化の初、其の陰陽の

氣を受くるは、只だ霎時の中なり。況や此の上仙の道、其れ先天

の氣を鍊ずるも又た迅速と爲す。故に佛云ふ。露の如き亦た電の

如き者と。其れ至精至微にして甚功疾く久しくすべからざると爲

すを謂ふなり。久しければ則ち損ふ有りて神功を虧く。若し此の

先天眞鉛を得て歸して胎室の内に懸げれば、豈に深潭の紅日を現

すに非ざるや。)

【訓読】

此れ真中の妙の更なる真に法り、都て我獨り人に異なるに縁る。自

ら知る顛倒は離坎に由るを、誰か識る浮沉は主賔を定むるを。金鼎

に朱裏の汞留めんと欲せば、玉池に水中の銀を先ず下す。神功運火

は終旦に非ず、深潭に現出するは日一輪。

註に曰く。此の道は至聖至神。至貴至尊。至蕳至易。玄中の玄。妙

中の妙。舉世罕聞するも、仙翁其の類を出、其の萃を拔き、獨り深

旨を得。故に冲熈翁曰く。金丹大道は、舉世道人、許可する所無し。

惟だ平叔一人のみ。泰山や、河海や、丘垤行潦、何敢て焉に冀はん。

離☲陽を爲して、南に居す。反りて女と爲る所以の者は、外陽にし

て内隂たるや、之を真汞と謂ふ。坎☵隂を爲して、北に居す。反り

て男を爲る所以や、外隂にして内陽たるや、之を真鉛と謂ふ。故に

仙翁曰く、日は離位に居し、反りて女を爲す。坎は蟾宫に配して、

却て是れ男たり。箇中の顛倒の意を會さざれば、管見を將て是れ高

談とするを休めよ。此に坎の男、離の女と言ふは、猶ほ父の精、母

の血のごときなり。日の烏、月の兎のごときなり。砂の汞、鉛の銀

のごときなり。天の玄、地の黃のごときなり。此に数ふる者は、皆

龍虎を指示す。初弦の二氣なり。主賔とは、陽尊高にして左に居せ

ば、主と曰ふ。隂低下にして右に居せば、賔と曰ふ。夫れ離火を爲

す。火炎上すれば、火乃ち木の性と俱に浮き、陽に属するが故に主

と爲すなり。坎水を爲す。氷潤下して、水と金の性、俱に沉み隂に

属す。故に賔と爲すなり。此れ常道なり。今や、離反りて女と爲り。

坎反りて男と爲る。是れ主反りて賔と爲るなり。賔反りて主と爲る

なり。豈に顛倒に非ざらんか。故に曰く。自ら知る顛倒は離坎に由

るを、誰か識る浮沉は主賔を定むるを、と。主賔を定むとは、盖し

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 217 ─

有水焉。主反爲賔。賔反爲主。皆是隂中取陽。陽中取隂也。顛倒五

行。逆修以至於太極。太極者。先天未判之氣也。金丹乃隂火結成也。

火非世間之凢火也二弦之氣。皆火也。二弦者。其初也。有氣而無質。

其源也。至淸而無濁。在年爲二八月。隂陽之平。在月爲上下弦。金

水之半也。

①海王邨古籍叢刊版では「

」に作る。単に版彫の問題であろう。

②海王邨古籍叢刊版では「

」に作る。注①に同じ。

③道蔵本は「水」に作る。これに従う。

④道蔵本は「為」に作る。

⑤道蔵本は以下「金鼎者」までの間に誤って第六首本文の第三連ま

で「人人自有長生藥。自是愚癡枉把抛。甘露降時天地合。黄芽生

處坎離交。井蛙應謂無龍窟。籬鷃争知有鳳巢。」を衍す。

⑥道蔵本は「也」字なし。また以下の陳致虚の注釈が続く。「上陽

子陳致虚曰。妙之一字。夫誰肯信異於人者。世人迷於愛慾之中。

我却於愛慾之中而有分别。何謂分别。聖人以離坎顛倒而用之。謂

之火上水下。以乾坤顛倒而用之。謂之地在天上。以夫婦顛倒而用

之。謂男下女上。浮沉者火炎木浮而在上爲主。水降金沉而在下爲

賓。此乃人之道。此爲世間法也。此爲順五行也。今焉火木雖浮使

之就下而反爲賓。金水須沉使之逆上而反爲主。是之謂仙道也。是

出世間法也。是爲水火既濟也。是爲顛倒五行也。金鼎玉池。道光

所註不出顛倒之機。而反失於欲留先下之義。子野以金鼎喻彼此。

却合紫陽翁之意何哉。縁自己之精氣血液者。朱裏汞也。不可令其

走逸。故云欲留彼此之華也。靈池丹井丹泉者。水中銀也。即先天

一點眞氣。故云先下又欲留者。但令其住而不令其去。要取人而不

失於己。先下者彼到而我待之。鉛至而汞迎之。坎動則離受之。金

丹之道先要得此。欲留先下四字之㫖。運火非旦者必得其温和而運

之。故參同契云。發火初温微亦如爻動時。純陽翁云。中宵漏永温

温。鉛鼎光透簾幃。蓋萬物生化之初。其受陰陽之氣。只霎時中。

況此上仙之道。其鍊先天之氣又爲迅速。故佛云如露亦如電者。謂

其至精至微而甚功疾爲不可久矣。久則有損而虧神功。若得此先天

眞鉛歸于懸胎室内。豈非深潭之現紅日也。」(上陽子陳致虚曰く。

妙の一字、夫れ誰か人に於いて異なる者を肯信せん。世人愛慾の

中に迷ひ、我却て愛慾の中に於ても分别有り。何をか分别と謂ふ。

聖人離坎を以て顛倒して之を用ふ。之を火上水下と謂ふ。乾坤を

以て顛倒して之を用ふ。之を地在天上と謂ふ。夫婦を以て顛倒し

て之を用ふ。男下女上と謂ふ。浮沉とは火木を炎し浮きて上に在

るを主と爲す。水金を降し沉みて下に在るを賓と爲す。此れ乃ち

人の道、此れ世間の法と爲すなり。此れ五行に順ずると爲すなり。

今焉に火木浮くと雖も之をして下に就かしめて反て賓と爲す。金

水須く沉むも之をして上に逆はしめて反て主と爲す。是れを之れ

仙道と謂ふなり。是れ出世間の法なり。是れ水火既濟と爲すなり。

是れ五行を顛倒すると爲すなり。金鼎玉池は、道光註する所は顛

倒の機を出ず。而も反て欲留先下の義を失ふ。子野金鼎を以て彼

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─ 218 ─

らかにしたものだ。これは外薬の象徴である。

 

疏ではこう述べている。坎男と離女、日烏と月兎、天玄と地黄と

いったものは、金陰の鼎に火があるように、玉陽の池に水があるよ

うに、主が逆に客となり、客が逆に主となるということ。すべて陰

の中に陽を取り、陽の中に陰を取るのである。五行をひっくり返し、

逆さまに修行して、太極まで到達する。太極とは、天より先にあっ

たまだ二つに分かれる前の気である。金丹とは陰火が結ばれてでき

たものである。その火は世間にいわれる普通の火ではない。二弦の

気とは、どちらも火である。二弦と呼ばれるものは、その原初が、

気だけがあって性質がない。その根源は、清く一点の濁りもない。

一年においては二月と八月がそうだ。陰と陽の気が拮抗している。

一月においては上弦と下弦がそうだ。金と水の気が半分ずつである。

①宋の道士、王筌。第二首参照(注釈稿五)。引用の典拠は未詳。

②巻中七言絶句第十五首。

【原文】

此法真中妙更真。都縁我獨異於人。自知顛倒由離坎。誰識浮沉定主

賔。金鼎欲留朱裏汞。玉池先下水中銀。神功運火非終旦。現出深潭

日一輪。

註曰。此道至聖至神。至貴至尊。至蕳至易。玄中之玄。妙中之妙。

舉世罕聞。仙翁出乎其類。拔乎其萃。獨得深旨。故冲熈翁曰。金丹

大道。舉世道人。無所許可。惟平叔一人而已。泰山也。河海也。丘

垤行潦。何敢冀焉。離

爲陽。而居南。所以反爲女者。外陽而内隂

也。謂之真汞。坎

爲隂。而居北。所以反爲男也。外隂而内陽也謂

之真鉛。故仙翁曰。日居離位。反爲女。坎配蟾宫却是男。不會箇中

顛倒意。休將管見是高談。此言坎之男。離之女。猶父之精。母之血

也。日之烏。月之兎也。砂之汞。鉛之銀也。天之玄。地之黃也。此

数者。皆指示龍虎。初弦二氣也。主賔者。陽尊高居。左曰主。隂低

下居。右曰賔。夫離爲火。火炎上。火乃與木之性俱浮。属陽故爲主

也。坎爲水。氷潤下。水與金之性。俱沉属隂。故爲賔也此常道也。

今也。離反爲女。坎反爲男。是主反爲賔也。賔反爲主。豈非顛倒乎。

故曰。自知顛倒由離坎。誰識浮沉定主賔定主賔者。盖道中取二弦之

氣顛倒之主賔。不取常道主賔。故曰定主賔也。金鼎者。金爲隂物。

鼎中有火之氣。是隂中有陽之象。白虎是也。玉池者。玉爲陽物。池

中有水之氣。是陽中有隂之象。靑龍是也。砂中汞者。龍之弦氣也水

中銀者虎之弦氣也。修丹之士。若欲以虎留戀龍之氣。必先驅龍就虎。

然後二物氤氲。兩情交合。施功煆錬。自然凝結。真一之精也。火即

二弦之氣也。旦者。一晝之首。子爲六陽之元。故曰旦也。聖人運動

丹火。有神妙之功。不半時中。立得真一之精。一粒如黍。現於北海

之中。赫然光透簾幃。若深潭現出。一輪之紅日也。非終旦者。明一

時辰者。金丹之成也。此外藥法象也。

疏曰。坎男離女。日烏月兎。天玄地黃。金隂之鼎有火焉。玉陽之池。

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『悟眞篇註疏』注釈稿(六)

─ 219 ─

で、何よりも簡単である。もっとも奥深く、もっともすぐれている。

世間ではほとんど知られていないが、張伯端仙翁は似たより寄った

りの中から飛び抜けて、ただ一人深い教えを得た。だから冲熈翁は

言われた。金丹の大道は、世の道人たちに、許された者はおらず、

ただ張伯端一人だけがそうだ。泰山があり、河海があれば、小さな

丘や水流に対し、あえて期待するだろうか、と。離卦である☲は陽

として、南方に位置する。反転して女性となる理由は、三つの爻の

うち外が陽で内が陰だからで、これを真汞という。坎卦である☵は

陰として、北方に位置する。反転して男性となる理由は、三つの爻

のうち外が陰で内が陽だからで、これを真鉛という。だから張伯端

仙翁は言われた。「日は離の位置にあって、反転して女となる。坎

は月に配当し、逆に男である。そこにある逆転の意味を理解しなけ

れば、小賢しく高度な議論をするものではない。」と。ここで坎の中

の男、離の中の女と言っているのは、父の中の精、母の中の血のよ

うなものであり、日の中の烏、月の中の兎のようなものであり、砂

の中の水銀、鉛の中の白銀のようなものであり、天の中の玄、地の

中の黄のようなものである。ここに挙げたものは、すべて龍虎を示

している。初弦の二気である。主客とは、陽は高く尊く左に位置す

るので、主と言う。陰は低く卑しく右に位置するので、客と言う。

さて離は火である。火が炎上すれば、火は木の性とともに浮き上が

り陽に属す。だから主とするのである。坎は水である。氷は滴り落

ちて、水と金の性は、ともに沈んで陰に属す。だから客とするので

ある。これ常道である。今、離は反転して女となり、坎は反転して

男となった。これは主が反転して客となり、客が反転して主となっ

た。どうして逆転してないことがあろう。だから本文で、逆転させ

るのは坎離によって自然と分かるとしても、浮き沈みで主客が定ま

ることを誰か分かっているだろうかと言っているのだ。主客を定め

るとは、道の中より二弦の気を採取することであろう。逆転した主

客は、常道の主客で考えない。だから主客を定めると言うのだ。金

鼎とは、金が陰の存在でありながら、鼎の中には火の気がある。こ

れは陰の中に陽があることを表象している。白虎がそうである。玉

池とは、玉が陽の存在でありながら、池の中に水の気がある。これ

は陽の中に陰があることを表象している。青龍がそうである。砂の

中の水銀とは、龍の弦気である。水中の白銀とは、虎の弦気である。

金丹を修める人は、虎によって龍を恋う気を留めようとするのであ

れば、必ず先に龍を御して虎に寄り添わせ、その後でその二物を混

じり合わせ、二情を交合させる。そのように実践して修練すれば、

自然と真一の精が一点に凝縮する。本文中の火とは二弦の気のこと

である。朝(原文「旦」)とは、昼間の最初、子の刻は六陽の元で

ある。だから朝と言うのだ。聖人は金丹をあたためる火を調整し、

非常にすぐれたやりかたであれば、半時も過ぎずに、すぐさま真一

の精を得る。その一粒は黍のようで、北海の中に現われる。赤々と

した光が御簾を透けて輝くさまは、深い淵に現れた赤い太陽のよう

である。朝の間中行わないとは、一時で金丹が錬成されることを明

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─ 220 ─

 

本注釈稿は、宋代以降の道教錬金術の中心経典の一つである

『悟真篇』に関して、そのもっとも代表的な注釈書である『悟

真篇註疏』(以下註疏)及び『悟真篇直指詳説三乗秘要』(以下

直指詳説)を現代日本語に翻訳しつつ、理解に供する注釈を付

することを目指すもので、「『悟眞篇註疏』注釈稿(一)」(東洋

大学大学院紀要四十一、東洋大学、二〇〇四年)、「『悟眞篇註

疏』注釈稿(二)」(東洋大学大学院紀要四十二、東洋大学、

二〇〇五年)、「『悟眞篇註疏』注釈稿(三)」(東洋大学大学院

紀要四十三、東洋大学、二〇〇六年)、「『悟眞篇註疏』注釈稿

(四)」(東洋大学大学院紀要四十四、東洋大学、二〇〇七年)、

「『悟眞篇註疏』注釈稿(五)」(東洋大学大学院紀要四十五、東

洋大学、二〇〇八年)の続稿である。また本注釈稿は、平成

十七年度井上円了記念研究助成金研究「道教内丹文献の電子翻

刻に関する研究」の成果の一部であり、紙媒体での発表後、イ

ンターネット上(http://w

ww

.naitan.net/

)で公開し、適宜加

筆訂正を加えていく予定である。

七、金丹正理大全悟真篇註疏巻上

七―一、七言四韻十六首

   四(道蔵本では第七首)

【現代語訳】

ここでしたがうのは真理の中でももっともすぐれた真理であり、そ

れは私が他者と異なることに由来する。

逆転させるのは坎離によって自然と分かるとして、浮き沈みで主客

が定まることを誰か分かっているだろうか。

金鼎に朱の中の水銀を留めようとするなら、玉池に水の中の銀を先

に落とすのだ。

すぐれた火の運用を朝の間中行わずとも、日輪は深き淵に現われる。

 

註ではこう述べている。この道は何よりも神聖で、何よりも高貴

文学研究科中国哲学専攻博士後期課程修了 野村 

英登

『悟眞篇註疏』注釈稿(六)