フェライト・ステンレス鋼の遷移温度と475℃ 脆性におよぼす不 …

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フ ェラ イ ト ・ステ ン レ ス鋼 の遷 移 温 度 と475℃ 脆性におよぼす不純物元素の影響 1353 UDC 669.14.018.8:620.192.49:539.53 フ ェ ラ イ ト・ス テ ン レ ス鋼 の 遷 移 温 度 と475℃ 脆 性 に お よ ぼ す 不 純 物 元 素 の 影 響* 長 谷 川 正 義**・ 武田 克 彦***・ 竹下 一 彦*** The Effect of Impurity Elements on Transition Temperatures and 475•Ž Embrittlement of Ferritic Stainless Steels Masayoshi HASEGAWA, Katsuhiko TAKEDA, and Kazuhiko TAKESHITA Synopsis: The brittle-to-ductile transition curves of a series of ferritic stainless steels containing carbon, nitrogen, silicon or manganese, respectively, were determined, and also the effect of aging at 475 •Ž on the transi- tion curves of high purity ferritic stainless steels was discussed. The main results obtained were as follows: (1) In 18% chromium steels, at the 0.002% carbon and 0.004% nitrogen levels, the indicated transi- tion temperature is found to be 85•Ž. However, there is a remarkable increase in transition temper- ature and a decrease in upper shelf energy, as carbon or nitrogen content increases. The effect on tran- sition temperature and upper shelf energy is attributed to the exsistence of solute carbon or nitrogen atoms and the dispersed carbide or nitride precipitates. (2) Addition of aluminium as stabilizer is effective in lowering transition temperature. (3) Silicon and manganese additions tend to raise transition temperature. (4) In high purity 18% chromium steel aged at 475•Ž, the upper shelf energy decreases, but the tran- sition temperature has little change. (5) In 0.05% nitrogen-18% chromium steel aged at 475•Ž, the upper shelf energy decreases, and the transition temperature is shifted toward higher temperatures. (6) The hardness increase with the aging time for high purity 18% chromium steel is less than for 0.05% nitrogen-18% chromium steel. (7) These phenomena caused by aging at 475•Ž must be depended on the precipitation of chromium rich bcc phase and chromium nitrides. (Received Nov. 17, 1973) 1. 周 知 の ご とく フ ェ ライ ト ・ス テ ン レス鋼 の 特 長 は,オ ー ス テナ イ ト ・ス テ ン レス鋼 と比 較 して耐 応 力 腐 食 割れ 性に優れているほかに,ニ ッケル を 含有 しない の で 資源 的 に 有利 で ある.さ らに耐 食 性,耐 酸 化 性,耐 硫 化性, 機 械加 工 性 な ど も良 好で あ るた め,あ る条件下では有用 な構 造材 料 とい え るが,一 面常温における靱性が低く, また切 欠 感 受 性 も大 きい た め に,そ の溶接性が著 しく劣 り,適 用 範 囲 が制 限 され て い る. この フェライ ト・ステ ンレス鋼の 靱性に 関す る 研究 は,古 くBINDERとSPENDELOW1)の 研究,あ るい は HOCHMANN2)の 研究があ り,侵 入 型 元 素の 炭 素,お よび 窒 素 が 常温 にお け る 衝 撃値 に 著 しい 影 響 の あ る こ と を示 した.し か しこれ ら従来 の 研 究 の ほ とん どが実 用 上 の 観 点 か ら常温 で の 衝 撃 値 につ い て行 な われ た も ので,延 性 一 脆性遷移温度の挙動に関する研究は少なかつたが,最 SEMCHYSHENら3)は17%Cr鋼 の遷移曲線におよぼす炭 素,お よび窒 素 の 影 響 につ い て 詳細 に報 告 して い る. 本研究は固溶元素の靱性におよぼす影響が大であるこ とに 着 目 し,主 と して微 量 の 侵 入 型 固溶 元 素C,Nが *昭 和47年10月 本 会 講演 大 会 に て 発表 昭 和48年11月17日 受付 **早 稲 田大 学 理工 学 部 工博 ***早 稲田大学理工学部 ―95―

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フ ェライ ト・ステ ンレス鋼の遷移温度 と475℃ 脆性におよぼす不純物元素の影響 1353

論 文

UDC 669.14.018.8:620.192.49:539.537

フ ェライ ト・ステ ン レス鋼 の遷移温 度 と475℃

脆性 にお よぼす 不純物 元素 の影 響*

長 谷 川 正 義**・ 武 田 克 彦***・ 竹 下 一 彦***

The Effect of Impurity Elements on Transition Temperatures and

475•Ž Embrittlement of Ferritic Stainless Steels

Masayoshi HASEGAWA, Katsuhiko TAKEDA, and Kazuhiko TAKESHITA

Synopsis:

The brittle-to-ductile transition curves of a series of ferritic stainless steels containing carbon, nitrogen,

silicon or manganese, respectively, were determined, and also the effect of aging at 475 •Ž on the transi-

tion curves of high purity ferritic stainless steels was discussed.

The main results obtained were as follows:

(1) In 18% chromium steels, at the 0.002% carbon and 0.004% nitrogen levels, the indicated transi-

tion temperature is found to be 85•Ž. However, there is a remarkable increase in transition temper-

ature and a decrease in upper shelf energy, as carbon or nitrogen content increases. The effect on tran-

sition temperature and upper shelf energy is attributed to the exsistence of solute carbon or nitrogen atoms

and the dispersed carbide or nitride precipitates.

(2) Addition of aluminium as stabilizer is effective in lowering transition temperature.

(3) Silicon and manganese additions tend to raise transition temperature.

(4) In high purity 18% chromium steel aged at 475•Ž, the upper shelf energy decreases, but the tran-

sition temperature has little change.

(5) In 0.05% nitrogen-18% chromium steel aged at 475•Ž, the upper shelf energy decreases, and the

transition temperature is shifted toward higher temperatures.

(6) The hardness increase with the aging time for high purity 18% chromium steel is less than for

0.05% nitrogen-18% chromium steel.

(7) These phenomena caused by aging at 475•Ž must be depended on the precipitation of chromium

rich bcc phase and chromium nitrides.

(Received Nov. 17, 1973)

1.  緒 言

周知の ごとくフェライ ト・ステンレス鋼の特長は,オ

ーステナイ ト・ステン レス鋼 と比較 して耐応力腐食割れ

性に優れているほかに,ニ ッケルを含有 しないので資源

的に有利で ある.さ らに耐食性,耐 酸化性,耐 硫化性,

機械加工性な ども良好で あるため,あ る条件下では有用

な構造材料 といえるが,一 面常温における靱性が低 く,

また切欠感受性も大 きいために,そ の溶接性が著 しく劣

り,適 用範囲が制 限されている.

この フェライ ト・ステ ンレス鋼の 靱性に 関す る 研究

は,古 くBINDERとSPENDELOW1)の 研究,あ るいは

HOCHMANN2)の 研究があ り,侵 入型元素の炭素,お よび

窒素が常温 における衝撃値に著 しい影響のあることを示

した.し か しこれ ら従来の研究のほ とん どが実用上の観

点か ら常温での衝撃値について行 なわれたもので,延 性一

脆性遷移温度の挙動に関す る研究は少なかつたが,最 近

SEMCHYSHENら3)は17%Cr鋼 の遷移曲線におよぼす炭

素,お よび窒素の影響について詳細 に報告 している.

本研究は固溶元素の靱性にお よぼす影響が大である こ

とに着 目し,主 として微量の侵入型固溶元素C,Nが 延

*昭 和47年10月 本会講演大会にて発表

昭和48年11月17日 受付**早 稲田大学理工 学部 工博

***早 稲田大学理工学部

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1354 鉄 と 鋼  第 60 年 (1974) 第 9 号

性一脆性遷移温度におよぼす影響を検討す るとともに,実

用 フェライ ト・ステン レス鋼の主要添加元素で あるSi,

Mnの 遷移温度におよぼす影響について も検討 した.

また フェライ ト・ステン レス鋼を450~550℃ の温度

範囲で時効す ると,か たさが増 し,伸 び,あ るいは靱性

が低下す る,い わゆる475℃ 脆性が現われる.475℃

脆性は,そ の脆化温度域が温間加 工温度,耐 熱鋼 と して

の使用温度,あ るいは溶接熱影響部温度な ど実用温度域

に重なるために,こ の脆 化現象の機構が明 らかにな るこ

とが望 まれてい るが,475℃ 時 効 した フェライ ト・ステ

ンレス鋼 の諸性質についても現在まだ明確でない点が多

い.と くに従来475℃ 時効による性質の変化 を調べ る

場合,か たさの測定によるものが最 も多かつたが,こ の

研究では遷移温度の変化に注 目し,主 にシ ャル ピー衝撃

試験 によ り,高 純12%Cr,お よび高純18%Crス テン

レス鋼,な らびに0.05%Nを 含有する18%Crス テン

レス鋼について,そ れ らの475℃ 時効 にともな う変 化

を調べ,あ わせて脆 化現 象の機構 との関連性についても

検討 した.

2.  実 験 方 法

2.1  供 試 材

小 型 高 周 波 真空 溶 解 炉 を用 い,真 空 中,お よび 一部 は

低 圧 窒 素 ガ ス雰 囲 気 中 に て2kgの 鋼塊 を溶 製 した.こ

れ ら鋼 塊 を1000℃ で10hr均 質 化焼 な ま しを行 な い,

10mm角 に熱 間 鍛 伸 した 後,最 終的 な標 準 熱処 理(焼

な ま し,800℃ で30min保 持 後 水 冷)を 行 な い試 験 に

供 した.

Table 1に 試 料 の 化 学組 成 を 示す.本 実 験 の 基 本 とな

る鋼 の 組 成 は,Cr; 18%, C; 0.002%, N; 0.004%で

あ り,No 1~3の 試料で フェライ ト・ステン レス鋼の靱

性にお よぼすCrの 影響を調べ,No4~14の 試料でそ

れぞれC, N, Si,お よびMnの 影響について検討 し

た.ま たNを 安定化す るためAlを 添加 した試料がNo

15~17で,No18(実 用 フェライ ト・ステン レス鋼JIS

SUS430)は 比較試料 と して用いた ものである.な お,

No 1, 3,お よび9は475℃ 時効に よる靱 性の変 化を検

討す る場合にも使用 した.

2.2  試験の 方法

Vノ ッチ・シャル ピー衝撃試験の試験片 と しては,5×

5× 55mm, 1mm Vノ ッチの サブサイズ試験片を 採用

し,こ の場合試験機には10kgmシ ャル ピー衝撃試験機

を使用 した.ま た衝撃試験は同 一条件で1本 の試験片に

ついて行 なつた.エ ネルギ遷移温度は吸収エ ネルギの最

大値 と最小 値の算術平均 となる温度 を採用 した.

顕微鏡組織の検査は,(ピ ンリン酸+塩 酸+エ ーテル)

液で腐食 した後,光 学顕微鏡観察,2段 レプ リカ法 によ

る電 子顕微鏡観察 を行なつた.ま た破壊 形態 を調べ るた

め,衝 撃破面を走査型電 子顕微鏡によ り観察 した.

なお475℃ 時 効の影響を検討するためには衝撃試験

のほかに引張試験(試 験 片は標点距離25mm,平 行部幅

5mm,厚 さ2mm),ビ ッカースかた さ試験(荷 重10kg),

65%沸 騰硝酸腐食試験(ヒ ジ ーイ試 験)あ るいは電解抽

出分離残査のX線 回折に よる析出物の同定な どを併わせ

行なつた.な お電解液は10%ク エン酸 ソーダ+1%KBr

を用い,電 流密度は5mA/cm2と した.ま たpH≒7を

保持 するためH2SO4溶 液を適時 滴下 した.

標準熱処理を施 した低C,低Nの 試料 は単一 フ ェライ

ト組織で,結 晶粒度はASTMNo3~1で あ る.こ れに

対 して,C, N含 有量の高い試 料で は,炭 化物 あるいは

Table 1. Chemical composition of specimens (wt %).

•\ 96•\

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ブ ェ ライ ト ・ステ ン レ ス鋼 の遷 移 温 度 と4×5℃ 脆 性 にお よぼ す 不純 物 元 素 の影 響 1355

窒化物の析出物が微細 に分散 している.ま たSi,Mnあ

るいはAlな どの添加元素に よる組織への影響は全 くな

い.

3.  実 験 結 果 お よ び考 察

3.1 遷移曲線

Cr量 を12~18%に 変化させた ときの遷移 曲線をFig.

1に示す,3試 料 ともC<30ppm, N<40ppmの 範囲の

高純度鋼であるため,エ ネルギ遷移温度は12%Cr鋼 が

-62℃,15%Cr鋼 が-68℃, 18%Cr鋼 が-85℃

とかな り低温にある.す なわち12~18%Crの 範囲では

Cr量 の増加に より遷移温度は低温側へ移行 し,上 部だ

なエネルギが増加する.こ の ことか ら実用高Cr鋼 の靱

性劣化はCr量 増加に より生ず るのではな く,主 に他の

不純物元素の存在に よるもので あることがわか る.

なお3試 料 とも光学顕微 鏡観察ではCr炭 化物あるい

はCr窒 化物な どの析出物は粒 内,粒 界 ともに認め られ

なかつた.実 用 の12%Cr鋼 で は しば しばフ ェライ トと

マルテンサ イ トの2相 組織 と なるが,本 実験に 供 した

12%Cr鋼 では,C, N量 が ともに微量なため マルテン

サイ トは全 く認 め られなかつた.

ついで 侵入型固溶元 素で あるCお よびNの18%Cr鋼

におよぼす影響について検討 した.す なわち,Fig.2は

Cの 影響について示 した ものである.こ の場合試料はす

べてN量60ppm以 下 であるが,JIS SUS 430タ イプの実

用鋼を併せて示 してある.C量 が20ppmの 微量の場合

には,遷 移温度は約-85℃ であるが,C量 の増加に伴

い遷移温度は上昇 し,0.10%Cで は約60℃ 高温側に移

行す る.上 部だなエネルギもC量 とともに減 少 し,試 料

No5の 上部だな エネルギは試料No3の 約1/2と なる.

Fig.1. Effect of chromium content on transition

curve of ferritic stainless steel

Fig.2. Effect of carbon content on transitioncurve of 18% chromium steel (N<0.004%).

Fig. 3. Effect of nitrogen content on transitioncurve of 18% chromium steel (C<0.002%).

光学顕微鏡組織は,0.01%C以 下の試 料では単一フ ェラ

イ ト相で あるが,0.10%C以 上ではやや粗大化 した粒状

のCr炭 化物が フェライ ト粒内および粒 界に析出 してい

る.

さてNの 遷移曲線への影響について も同様 の傾向を示

す ことが推察 されるが,Fig.3に その結 果を示 した.こ

の場合にもN量 の影響 をみ るため,C量 をなるべ く低

く,約20ppmに 一定 とした.N量 の増加に伴い遷 移温

度の上昇お よび 上部だな エネルギの 減少の 傾向を示 し

ているが,Cに く らべ るとその効果は小 さい.組 織 は試

料No3と7を 除 きフェライ ト粒 内および粒界にCr窒

化物の非常に微細 な析出が認め られ,こ れが遷移曲線の

変化に影響をお よぼ した ことは明 らかである.そ こで試

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1356 鉄 と 鋼  第 60 年 (1974) 第9号

(a)h igh purity 1816Cr steel, No.3 (tested at 80•Ž) (b) 0.05%N-18%Cr steel, No.9 (tested at—39•Ž)

Photo.1. Scanning electron microfractographs of Charpy specimens.

料No3 (40 ppmN)お よびNo 9 (0.05%N)の 衝撃

延 性 破 面 を 比較 した.双 方 ともPhoto.1に 示 す ご とく

典 型 的 なdimplepatternを 示 してい るが,No3の 場合

dimpleは 相 当大 き く,か つ 引 き 伸 ば され てい るの に対

し,No 9の 場 合dimpleは 小 さ くな り,dimpleの 先 端

部 に 微細 なdimpleも 共 存 して い る.こ の こ とはCr窒

化 物 の析 出 に よ る延性 の低 下 と対 応 してい る.ま たN量

の 非 常 に低 い 試 料No 3お よび7を 比較 す る と,わ ず か

で は あ るが遷 移 温 度,上 部 だな エ ネル ギ に変 化 が あ る こ

とか ら,固 溶Nも 遷 移 曲線 に影 響 を 与 え る こ とが わ か る.

そ こでN安 定 化元 素 で あ るAlの 添 加 に よ る効 果 を検

討 した.そ の 結 果 をFig.4に 示 す.試 料No 15 (0.002

%N, 0.005%Al)の 場 合 は 顕 著 な効 果は 認 め られ な い

が,試 料No16お よび17の 場 合 に は,Al無 添 加 と

Fig.4. Effect of aluminium content on transition

curve of 18% chromium steel.

くらべて明 らかに遷 移温度は低温側へずれ ている.

一般 に純金属においては,固 溶元素の脆性にお よぼす

影響が詳細に 報告 されてお り4)5),マ トリックス の塑性

的性質すなわ ち転位に対す る摩擦 力,交 差すべ りの難易

として説明 されてい る.し たがつて実用鋼におけ る添加

元素 としてのSiあ るいはMnな どの置換型固溶元素は

純Fe-18%Cr合 金に対 しても何 らかの 作用 がある こと

を示唆 しているので,本 研究では実用鋼に含まれ る程度

のSiあ るいはMn量 につい て検討 した.

Fig.5に 遷移曲線におよぼすSi量 の影響を示 した.

す なわち0.50%Siで 一旦遷移温度は 低温側 へ移行す る

が,0.70%Siで は逆 に約15℃ 高温側へ移行す る.ま た

上部だなエネル ギは若干減少す るが,0.5%程 度 以下の

Si量 であれば 遷移曲線 にはほ とん ど 影響が ない ことが

Fig. 5. Effect of silicon content on transition curve

of 18% chromium steel.

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フ ェ ライ ト ・ステ ン レス鋼 の 遷 移 温 度 と475℃ 脆性 に お よぼす 不 純 物 元 素の 影 響 1357

Fig. 6. Effect of manganese content on transition

curve of 18% chromium steel.

わ か る.

Fig. 6にMn量 の遷 移 曲線 に お よぼ す 影響 を示 した.

これ に よる と0.02~0.45%Mnの 範 囲で,す で に遷 移

温度 は著 しく上 昇す る.一 般 にMnやNiは フ ェ ライ

ト鋼 の遷 移 温 度 を下 げ る元 素 と して知 られ てい る.こ の

場合Mnは 粒 界 の炭 化 物 を 減 少 させ る た め と 考 え られ

る.し か し本 実験 の ス テ ン レス鋼 試 料 は炭 化 物 は ほ とん

ど析 出 してお らず,む しろ固 溶Mnに よ る 遷 移 温度 の

上 昇 と して現 わ れ てい る.

3.2  475℃ 時効

475℃ 時効 に よ る フ ェ ライ ト ・ス テン レス鋼 の 遷移 曲

線,あ るい は引 張 性 質 の変 化 を検 討 す るた め,高 純12%

Cr鋼(No1),高 純18%Cr鋼(No 3)お よび0.05%

Nを 含 む18%Cr鋼(No 9)を 試 料 と して採 用 した.

Fig.7は 試 料No 1の 遷 移 曲線 を 示 した もの で あ る.

Fig.7. Effect of aging time at 475•Žon transition

curve of high purity 12% chromium steel

(No 1).

475℃, 1000hr時 効に よつて遷移温度は約7℃ 上昇

し,ま た 上部だな エネルギは約0.6kgm低 下 してい

る.

Fig.8に は試料No3の 遷移曲線を示 した.こ の図か

らわか るように475℃, 1000hr時 効では,遷 移温度は

ほとん ど変化 しないが,上 部だなエネルギが時効前 と比

較 し約1/2と 顕著な低下が認め られた.

試料No9はNo1お よびNo 3と 著 しく異なつた遷

移 曲線を示 した.そ の結果をFig.9に 示す.他 の2試

料では1000hr時 効後で も遷移温度にさほど大 きな変化

がなかつたのに対 し,本 試料では30hr時 効ですでに大

幅な遷移温度の上昇 を示 し,ま た上部 だなエ ネルギも約

0.8kgm減 少 してい る.こ の傾向は よ り長時間の時効

に より一層顕著 にな るが,500hr以 上 の時効ではそれ ら

の傾向は小さ くなる.

つぎに475℃ 時効時間 とビッカースかた さの関係 を

Fig.10に 示す.試 料No9の 時効時間によるかたさの変

Fig. 8. Effect of aging time at 475•Žon transition

curve of high purity 18% chromium steel

(No 3).

Fig. 9. Effect of aging time at 475•Žon transition

curve of 0.05% nitrogen-18% chromium

steel (No 9).

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1358鉄 と 鋼  第 60 年 (1974) 第 9 号

Fig.10. Effect of aging time at 475•Žon Vickers

hardness of ferritic stainless steels.

化 は大 き く,30hr程 度 で は時 効 前 と大 きな 差は な い が,

500hrの 時 効 に よ りHv 158か らHv 263へ と増 大す

る.し か しそ の後1000hr時 効 して もか た さの 変 化 は 非

常 に少 ない.一 方 高純Cr鋼 で あ る試 料No1お よび3

で は,1000hr時 効 後 もか た さの 変 化 が な い こ とが 大 き

な特 徴 で あ る.

各 試 料 の 引張 試 験 結 果をFig.11に 示す.各 試 料 とも

引 張 強 さは475℃ 時 効時 間 に よつ て ほ とん ど変 化 が 認

め られ な い.ま た伸 び の 減 少は 試 料No 3お よび9と も

に100hr時 効 後 に 生 じて お り,1000hr時 効 後 で は約1/2

に まで 減 少す る.し か しNo 1の 伸 び の変 化 は ほ とん ど

認 め られ な い.

周 知 の ご と くFe-Cr系 合金 は475℃ 時 効 に ともな

い著 しいかた さの増加 を示す.し か し本研究 において,

0.05%Nを 含有す る18%Cr鋼 だけが著 しい かた さの

増加 を示 したのみで,高 純18%Cr鋼 お よび高純12%Cr

鋼にはほ とんど変化が認め られなかつ た.

低Cr鋼 では かた さの増加 に対す る潜伏期間の存在が

認め られた としてい る報告 もあるが,WILMAMSら6)に よ

れば,そ の潜伏期間も15%Cr鋼 では200h程 度 である

とい う.し たが つて本研究に使用 した2種 の高純Cr鋼

の場合,1000hr時 効 してい るので,か たさの変化が認

め られな かつた ことは,潜 伏期間中である とは考 え られ

ない.

またTISINAIら7)に よれば,時 効前の熱処理 によ り炭

化 物を析出 させ た試料の方が,高 温 か ら水冷 して炭化物

の析 出を阻止 した試料 よ りも475℃ 時効 中のか たさの

増加率が大 きい としてい る.す なわち この ことは475℃

時効中におけ る炭化物の析出が硬化現 象の主因 とはな り

えないことを示唆 している.

以上の ことか ら,と くに0.05%Nを 含む18%Cr鋼

における場合には,1000hrま での475℃ 時 効硬化 は

主 にNの 存在 によるもの と考 えられ る.Fig.10か ら明

らかなように,時 効時間が500hrを 越え るとかたさの

増加 はほ とん どみ られず,窒 化物の析出が完了 した こと

を示 している.ま たPhoto.2に 試料No9の 時効前 お

よび500hr時 効後 の レプ リカ写真を示 した.時 効前で

はPhoto.2 (a)に 示す よ うに粒内,粒 界 ともにほとん

ど析 出物は存在 していないが,500hr時 効後で はPhoto.

Fig.11 Effect of aging time at 475•Žon tensile properties of ferritic stainless steels.

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フ ェ ライ ト ・ステ ン レス鋼 の遷 移 温 度 と475℃ 脆 性 にお よぼ す 不純 物 元 素 の影 響 1359

(a) unaged (b) aged for 500hr at 475•Ž

Photo.2. Electron micrographs of 0.05% nitrogen-18% chromium steel (No 9).

2(b)の ごとく粒内,粒 界 ともに微細 な析出物が観察 さ

れる.

また2種 の高純Cr鋼 が475℃ 時効に よる硬化現象

を示 さなかつたことは,不 純物元素 とくにNが 微量であ

つたことに起因す る.そ こでPhoto.3お よびPhoto.4

に試料No1お よび3の1000hr時 効後 の レプ リカ写真

を示 した.Cr量 が12%の 場合 にはPhoto.3に み られ

るように,非 常 に微細 な窒化物がわず かに観察され る程

度で,硬 化への寄与は さほど大 きくないと推察できる.

また試料No3の 場合 に1000hrの 時効に よつて組織的

にはほとん ど変化が認め られず,析 出物もきわめて少量

である.し たがつてこの場合 も硬化への寄与は考え られ

ず,か たさ試験 の結果 とよく一致す る.な お試料No1

および3の2試 料 とも時効前 の組織はPhoto.2 (a)と

同様で,析 出物は全 く検出されなかつた.ち なみに光学

顕微鏡による時効前後の組織観察では,3試 料 ともほ と

んど差が なかつた.

Photo.3. Electron micrograph of high purity

12% chromium steel (No 1) aged

for 1000 hr at 475•Ž.

Photo.4. Electron micrograph of high purity

18% chromium steel (No 3) aged

for 1000 hr at 475•Ž.

か たさ試験では変化 が認め られ なかつた高純12%Cr

鋼および高純18%Cr鋼 も,シ ャル ピー衝撃試験 によ り

遷移 曲線を求 めた ところ,明 らかに475℃ 時効 による

変化が現われ た.

Fig.7に 示 した高純12%Cr鋼 の場合,475℃, 1000hr

時効処理によ り,上 部だなエネルギの低下 と遷移温度の

上昇がわず かに 現われる.一 方高純18%Cr鋼 では,

Fig.8の ように上部だな エネルギ の著 しい 低下があ る

が,遷 移温度の移行はほ とん ど認め られない.ま た高純

12%Cr鋼 の475℃,1000hr時 効後の組織は,Photo.

3に 示 した ように非常に微細 な析出物がわずかに認 めら

れている.こ れ らの ことから判断す ると,高 純12%Cr

鋼における1000hr時 効後 の上部だなエネルギの低下 と

遷移温度の 若干の上昇は,粒 内お よび 粒界 に 析出 した

Cr窒 化物 によるもの と考え られ る.し か し高純18%Cr

鋼の場合,Photo.4に 見 られ るよ うに析出物は粒 内,粒

界 ともにほ とんど存在 していない.に もかかわ らず上部

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1360 鉄 と 銅  第 60 年 (1974) 第 9 号

だ なエ ネ ル ギの 著 しい 低下 が あ り,ま たそ の 上 部 だ な エ

ネル ギ の 低下 の 割 合 は,高 純12%Cr鋼 の 場合 よ りもは

るか に 大 きい.こ の こ とは475℃ 時 効 に伴 う脆化 現 象

が 炭 化 物 や 窒化 物 の 析 出 に よ る もの だ けで は な い こ とを

推 論 させ る.

そ こで475℃,1000hr時 効 した0.05%N-18%Cr鋼,

お よび 高 純18%Cr鋼 の 電解 抽 出残 査 をX線 回折 に よ り

同 定 した.0.05%N-18%Cr鋼 の 場合,同 定 相 の ほ とん

どがCr2Nで あつ た の に 対 し,高 純18%Cr鋼 の 場合 に

はCr2N相 は検 出 され ず,Fe-α 相 に非 常 に類 似 した相

(4-2.039A)が 認め られ た.こ の 相 はFISHERら8}や

GROBNER9)が 報 告 して い る微 細 な高Cr含 有 の 体 心 立 方

構造をもつ析出物(Cr-richbcc相)と よく一致す る.

475℃ 時効に伴 うこの析 出物 は透過電子顕微鏡を用 いた

多 くの研究者 によ り認め られ てお り,本 研究で もその存

在 が確認 されたわけである,ず

また高純18%Cr鋼,お よび0'05%N-18%Cr鋼 の衝

撃破面 を走査型電子顕微鏡で観察 した.Photo.5は 高純

18%Cr鋼 の時効前 と1000hr時 効後の延性域での衝撃

破面を比較 した ものである.双 方 とも析出物はほ とんど

認め られないが,1000hr時 効後の破面では時効 前に く

らべてdimpleは 浅 く,か つ小 さくなつてお り,ま た若

干細長 く引 き伸ばされている.こ の ような変化が上 部だ

な エネルギの異常な低下 の原 因と考 えられ るが,本 研究

(a) unaged (tested at-80•Ž) (b) aged for 1 000 hr at 475•Ž(tested at-83•Ž)

Photo.5. Scanning electron microfractographs of Charpy specimens of high purity 18%chromium steel (No 3).

(a) unaged (tested at-39•Ž) (b) aged for 500hr at 475•Ž(tested at 96•Ž)

Photo.6.Scanning electron microfractographs of Charpy specimens of 0.05% nitrogen-18%chromium steel (No 9)

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フ ェ ラ イ ト ・ステ ン レ ス鋼 の遷 移 温 度 と475℃ 脆 性 に お よ ぼす 不 純物 元 素の 影 響 1361

では破面形態 とCr-rich bcc相 との相関性を明確 にす る

まで には至 らなかつ た.

またPhoto.6に0.05%N-18%Cr鋼 の時効前 と500hr

時効後の延性域での衝撃破面 を示 した.時 効前の破面に

も一部窒化物によるもの と考 え られる微小なdimpleが

存在 してい るが,500hr時 効 によ りその数 は相当増加 し

,か っ全体的にdimpleも 小さくなっている.し たがっ

て遷移温度の上昇,お よび吸収 エネルギの減少は この よ

うな破面形態の変化 と密接な関係があ り,ま た窒化物が

脆化に大 きく寄与 している ことが破面観察 によつても実

証された ことにな る.

以上の ことか ら判断す ると,高 純18%Cr鋼 の上部 だ

なエネルギの異常な低下 は,Cr-rich bcc相 の析出が主

要な原因 と考 え られ,ま た0.05%N-18%Cr鋼 の時効 に

よる遷移曲線の変化 に示 され たごとく,遷 移温度の上昇

は主にCr2Nの 粒内,粒 界への析出によるもので,上 部

だなエネルギの低下は,Cr2N,お よびCr-rich bcc相

の析出が 重量的 に 寄与 したものでは ないか と考 え られ

る.従 来 よりCr-rich bcc相 の析出は,475℃ 付近の

温度で α相が2相 に分 離す るため とされ てお り,ま た析

出物はマ トリックス と整合関係 にあ りなが ら,そ の格子

定数が マ トリックスの格子定数 よりも0.2%程 度大 きい

ため,析 出物の まわ りに整合歪 を生 じ,そ れが転位の運

動 を阻止 し,硬 化あ るいは脆化の原因になつているとさ

れている.

さきに示 した引張試験結 果か ら,475℃ 時効処理 によ

り高純18%Cr鋼 では 伸 びの 減少が み られ るのに 対 し

て,高 純12%Cr鋼 では伸 びの変化がなかつた とい う事

実も,前 記 の理論 によつて矛盾な く説明され る.す なわ

ち高純12%Cr鋼 の場合,WILLIAMSIO)に よるFe-Cr系

状態 図において,475℃ 付近ではmiscibility gapぎ り

ぎりの内側 であ り,そ のため2相 分離 したCrrich bcc

相の析出量が高純18%Cr鋼 にくらべ て少ない.し たが

つて転位の運動 を阻止す る作用が小さ くな り,伸 びに変

化が現われなかつた と推察 される.

3試 料の耐食性におよぼす4750C時 効時間の影響 を

60%沸 騰硝酸 による 腐 食試験 により検討 した.そ の結

果をFig.12に 示す.

0.05%N-18%Cr鋼,お よび高純18%Cr鋼 では粒界

腐食の形態 を呈 し,高 純12%Cr鋼 では全面腐食の形態

を呈 した.高 純18%Cr鋼 では時効時間 にともなつ て腐

食減量 は わずかに 増加す る程度 であ り,こ れに 対 して

0の05%N-18%Cr鋼 の腐食減量は若干変動 している.ま

た高純12%Cr鋼 の場合,全 面腐食 を呈 しているため腐

食減量は他の2試 料 に比較 して大き く,100hr時 効 まで

Fig.12. Effect of aging time at 475•Žon corrosion

resistance of ferritic stainless steels im-

mersed in 60% boiling nitric acid.

著 しい増加 を示 してお り,そ の後時効時 間が長 くなるに

したがつて減少する傾向 にある.

2種 の18%Cr鋼 の場合,時 効時間によつて腐食減量

に多少のば らつ きが生 じているが,時 効時間に ともなつ

て腐食減量は 増加す る傾向に あると いえよう.0.05%

N-18%Cr鋼 の方が高純18%Cr鋼 よ り耐粒界腐食性に

おいてやや劣 るようで あるが,そ の理 由としては窒化物

の粒界への析出に よる粒界付近のCr欠 乏のため と考 え

られる.高 純18%Cr鋼 を1000hr時 効 しても 粒 内,

粒界 ともに 析出物が ほとん ど認め られなかつた ことは

Photo.4に 示す とお りである.こ の ように粒界析出物が

観察 されない場合の粒界腐食は,時 効に ともない粒界へ

の不純物の集合 による結 晶配列の不整,あ るいはCr濃

度 の不均一によるGalvanic Couplesが 形成 されるため

などの原因が推察され る.

4.  結 言

真空溶解 したフェライ ト・ステン レス鋼の延性-脆性遷

移温度 にお よぼすC,Nお よびSi,Mnの 影響につい

て衝撃試験 によ り検討 し,次 の結果 を得た.

(1)  固溶C,N量 の増加 お よび炭化物,窒 化物の析

出は上部だなエネルギの減少,遷 移温度の上昇 に顕著な

影響をお よぼすが,Al添 加の場合N安 定化 によ り上記

の現象 を抑制す ることが認め られる.

(2)  実用鋼 に含まれ る程度のSi, Mnで も遷移温度

の上昇に作用す る.し たがつて一般の フェライ ト鋼 と同

様,フ ェライ ト・ス テン レス鋼において も固溶元素が遷

移 曲線 に著 しく影響 している.

また475℃ 時効に よるフェライ ト・ステンレス鋼 の

諸性質の変化 を検討す るため,高 純12%Cr鋼,高 純

18%Cr鋼 および0.05%N-18%Cr鋼 の3試 料を用い以

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1362 鉄 と 鋼  第 60 年 (1974) 第 9 号

下 の 結 果 を得 た.

(3) 475℃, 1000hr時 効 に よ り,40ppmN含 有 の

12%Crお よび18%Cr鋼 の遷 移 温 度 は ほ とん ど変化 せ

ず,上 部 だ な エ ネル ギ が著 しく低下 す る.一 方0.05%N

含有 の18%Cr鋼 の 場 合 は上 部 だ な エ ネ ル ギが 著 しく減

少 す る と同時 に遷 移 温度 も高 温側 へ 移行 す る.

(4) 475℃ 時 効 時 間 に よ るか た さの 変 化 は0.05%N

-18%Cr鋼 が最 も著 しく,高 純12%Cr鋼,高 純18%Cr

鋼 と もに 大 きな 変 化 は ない.

(5) 475℃ 時 効 時 間 に よる引 張 強 さの 変化 は3試 料

と も小 さ く,伸 び の 減少 が0.05%N-18%Cr鋼,お よび

高純18%Cr鋼 に認 め られ る.

(6)  時 効 後 電解 抽 出残 査 のX線 回 折 に よ り,高 純

18%Cr鋼 で はCr-richbcc相 が,0.05%N-18%Cr鋼 で

はCr2Nが 同 定 され る こ とか ら,上 記 の 変化 は これ ら析

出 物が 相 加 的 に寄 与 す る と考 え られ る.

(7) 60%沸 騰 硝 酸 に よる 腐 食 試 験 に よ る と,0.05

%N-18%Cr鋼,お よ び高 純18%Cr鋼 で は 粒 界腐 食,

高純12%Cr鋼 で は 全 面腐 食 の 形 態 を呈 し,時 効 に 伴 う

腐 食 減 量 の 変化 は高 純12%Cr鋼 が 最 も著 しい.

終わ りに,本 研 究の遂行 にあた り終始熱心に協力 され

た高 田糺君お よび増井忠男君に感謝いた します.

文 献

1) W. O. BINDER and H. R. SPENDELOW, Jr: Trans.ASM, 43 (1951), p.759

2) J. HOCHMANN : Rev. Met., 48 (1951), p.7343) M. SEMCHYSHEN, A. P. BOND, and H. J. DUNDAS:

Toward Improved Ductility and Toughness,Kyoto (1971), p.235

4) Y. NAKADA and A. S. KEN: Acta Met., 16(1968),

p.9035) W. C. LESLIE, R. J. SOBER, S. G. BABCOCK, and

S. J. GREEN: Trans. ASM, 62 (1969), p.6906) R. O. WILLIAMS and H. W. PAXTON: JISI, 185

(1957), p.3587) G. F. TISINAI and C. H. SAMANS: Trans. AIME,

201 (1957), p.12218) R. M. FISHER, E. J. Duus, and K. G. CARROLL:

Trans. AIME, 197 (1953), p.6909) P. J. GROBNER: Met. Trans., 4 (1973), p.25110) R. 0. WILLIAMS: Trans. AIME, 212 (1958),

p.497

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