20210517 専門職調査 公開研究会

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「職業に抱くイメージに関する意 識調査」のデザインと特徴 中尾 Ran NAKAO 広島⼤学⼤学院教育学研究科・⽇本学術振興会特別研究員(DC2) [email protected] 樊 怡⾈ Yizhou FAN 広島⼤学⼤学院教育学研究科 [email protected]

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「職業に抱くイメージに関する意識調査」のデザインと特徴

中尾 ⾛ Ran NAKAO広島⼤学⼤学院教育学研究科・⽇本学術振興会特別研究員(DC2)[email protected]

樊 怡⾈ Yizhou FAN広島⼤学⼤学院教育学研究科[email protected]

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• 「専⾨職とは何か︖」という問いに対して様々な定義が⽣み出されており,専⾨職概念の揺らぎが⽣じている

• 専⾨職の社会学はこれまでの専⾨職概念が規範的な押し付けであると認め,⼈々が専⾨職であると認識するものが専⾨職であり,多様な視点からの再認識が始まっている(Whitty 訳書2004)

• けれども,実際に「どのような⼈が専⾨職であると認識されているのか」といった点は調査されておらず,今後の課題として残されたままであった

• そこで,この調査では⼈々の認識からどのような職業を専⾨職であると認識するのかといった点を明らかにするための設計を⾏なった

調査の⽬的

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• 職業を総務省の⽇本標準職業分類のB専⾨的・技術的職業従事者から満遍なく職業を抽出し,先⾏研究等で専⾨職として扱われているもの等を加え,微修正を⾏った

• A票︓⼤学教員,聖職者(お坊さん・神⽗・牧師など),介護福祉⼠,医師,⾳楽家,弁護⼠,システムエンジニア,税理⼠,看護師,理学療法⼠,管理栄養⼠,⼩学校教員,スポーツ選⼿

• B票︓弁護⼠,獣医師,建築⼠,⼤学教員,経営コンサルタント,⼩学校教員,デザイナー,カウンセラー,保育⼠,記者,医師,薬剤師,プロスポーツ選⼿

• A票,B票に共通の職業として,⼤学教員・医師・弁護⼠・⼩学校教員の4つの職業を尋ねた

• これらの職業に対して,質問項⽬を尋ね,回答者の評価を分析する(職業の順番は,A票・B票でランダム化した)

調査の内容:職業

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①専⾨職か否か職業の項⽬について,専⾨職と呼ばれる職業か否かを5件法で尋ねた

②職業の実態把握度合いそれぞれの職業の実態がどの程度認知されているか否かについて,受け取っていると思われる年収と実際に働いていると思われている労働時間をマトリクス形式で尋ねた

③職業への評価それぞれの職業に対する評価について,受け取るべき年収と職業威信をマトリクス形式で尋ねた

調査の内容:質問項⽬

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④職業のイメージそれぞれの職業に対してどのようなイメージが持たれているかを調査するための項⽬を作成したSSM調査や林(2019)を参考に,学歴が⾼いか,技能の必要性は⾼いか,仕事の⾃律性,⽂化的教養の必要性,社会の中で優遇されているか否か,社会にとって重要な役割を果たしているか否か,政治的・政策的な決定への関与,倫理観の⾼さ,⼥性⽐率,国家資格として認定されるべきか否か,⼈数が⾜りているか,専⾨知識の必要性を尋ねた。

⑤職業距離林(2019)を参考に,それぞれの職業について⾃分から⾒て遠い集団か近い集団かを尋ねた

調査の内容:質問項⽬

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⑥ジェンダーそれぞれの職業について,男の⼦であれば就いてほしいか,⼥の⼦であれば就いてほしいかを尋ねた。

⑦⾼等教育の需要それぞれのが職業について,⾼等教育の需要がどの程度あるかを明らかにするため,どの程度の学歴が必要かを尋ねた。

⑧専⾨職⼀般のイメージ専⾨職⼀般についてのイメージを明らかにするため,⑥の職業イメージの質問項⽬から,12項⽬を選択し,専⾨職⼀般に対するイメージをマトリクス形式で尋ねた。

調査の内容:質問項⽬

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⑨類語専⾨職と類似の⾔葉に対するイメージと専⾨職とのイメージがどの程度異なるかを明らかにするため,専⾨家,プロフェッション,プロフェッショナル,エキスパートという類語のどれに当てはまるかを全て選択で尋ねたまた,どれにも当てはまらない,もしくは分からない場合を勘案して,該当しない,分からないという選択肢も⼊れた

調査の内容:質問項⽬

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• 調査は,A票・B票からなる• 理由は,全ての職業項⽬を同時にマトリクス形式で尋ねると,⼀つの質問項⽬の回答画⾯が⾮常に⻑くなり,回答者の努⼒の最⼩限化(Satisfice)(三浦・⼩林2015)が⽣じやすくなると考えたため

• 共通項⽬として,⼤学教員・医師・弁護⼠・⼩学校教員を⽤いた

• 計画サンプルサイズは,A票,B票ともに1500であり,都道府県を8つのエリアに分け,平成27年国勢調査⼈⼝等基本集計を参考に,各エリアへの割り付け確率を計算

• A票限定で冒頭に真⾯⽬に答えて頂けるか否か(冒頭宣誓)を尋ねており,いいえを選択した場合,その時点で回答終了

• 実際には計画サンプルサイズに3%の上乗せをしたデータの収集時点まで回収

• 最終的には,冒頭宣誓の時点で回答終了の者を含めA票,B票の合計で3104名の回答結果が得られた

調査設計

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• 標本誤差(約2.58%)調査デザイン

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• 調査会社• 複数の調査会社からのお⾒積もりの⽐較と,職業項⽬の順番

ランダム化が可能な調査会社として株式会社マクロミルに調査を委託することとした

• 倫理審査委員会(2021年2⽉承認)• この調査は,広島⼤学⾼等教育研究開発センター・研究倫理審査委員会の審査を経てセンター⻑の承認を得た

• 実査• 広島⼤学⾼等教育研究開発センター・研究倫理審査委員会の審査を経て,2021年3⽉に調査を開始した

調査の⼿続き

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• 社会調査で明らかにされてきた問いとは,記述的な問いと説明的な問い(盛⼭2004︔平沢2021)

• 記述的な問いとは,「事実がどうなっているか」という「how(どうなっているか)」であり,説明的な問いとは,「なぜそのような事実が⽣じているか」という「why(なぜ)」の問い

• 記述的な問いに対しては,⽐較や現状把握などを⽬的とした記述統計が⾏われてきた

• 説明的な問いに対しては,説明を⽬的とした多変量解析(回帰系を⽤いた規定要因分析,SEMなど)が⾏われてきた

• この⼆つの問いだけではなく,EBPMの要請+社会学における因果推論の興隆(筒井2019)で,因果推論も⼀つの選択肢

• 前向き推論(Xをすれば何が⽣じるか),後ろ向き推論(何がYを⽣じさせたか)(Goldthorp 2016)とも呼ばれる

• しかしながら,本調査では,記述的な問い+説明的な問いを明らかにすることを⽬的とした(因果推論を第⼀に⽬的としなかった)

⽅法

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• 本調査において因果推論を第⼀の⽬的としなかった理由① 先⾏研究が鵜沢(2016)を除いて少なく,探索的に分析す

ることの⽅が多いだろうと想定したため② 階層→従属変数(専⾨職か否か)という問いなどの検証をす

ることが想定されたが,以下のようにモニター登録者(回答者)という合流点バイアス(collider bias)が考えられたため

• そのため,SESの効果が真値ではないことが考えられる(ただし,全ての問題設定に⾔えることではない)

• 実験であれば,Web調査を⽤いた因果推論は適切な選択肢かもしれないが,観察データとして取得するのであれば限界があることを考慮した

⽅法

SES S Y

U

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• 説明的な問いを明らかにする時に,考慮すべき誤差(本多・本川2005)

• カバレッジ誤差(coverage error)︓対象⺟集団と枠⺟集団の誤差

• 標本誤差(sampling error)︓枠⺟集団から標本抽出の際の誤差

• 無回答誤差(nonresponse error)︓回答が得られなかった事による誤差

• 測定誤差(measurement error)︓真値と測定値の誤差

• カバレッジ誤差は,補正が困難であるため課題が残されている

• 時間とお⾦+先⾏研究の少なさなどを総合的に判断して,説明的な問いを明らかにすることを⽬的とした調査設計をした

• Kohler(2019)を参考に⾃分なりに改変した

⽅法

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• ビネット調査,リスト実験など,⼀⼈の回答者が複数の項⽬を評価するというネストされた構造の先⾏研究と同じ⼿法が応⽤できる

• ⼀⼈の回答者が複数の職業を評価しているため,それぞれの評価結果は相関している(=独⽴ではない)可能性

• 因果推論が⽬的ではないから,マルチレベルや⼀般化線形モデル(GLMM)などのレベル2の分散に関⼼の⾼い⼿法を⽤いることが可能

• その代わり,得られたレベル1の係数はそこまで参考にならない(アバウトな係数)

• 同様に相関しているデータに⽤いることが可能な,OLSのクラスター標準誤差や⼀般化推定⽅程式(GEE)などはレベル1の係数の⼀致推定量であるため,因果推論を⽬的としないので選択肢としては低い

• ⾼等教育研究や教育社会学などで慣れ親しんだ⼿法を⽤いることが可能

分析⼿法

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:性別

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:年齢

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:地域

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:結婚しているか否か

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:⼦どもの有無

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:収⼊

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:職業

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• A票,B票の個⼈属性の違い基礎的な分析:学歴

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• A票,B票で共通の職業に対する質問項⽬の回答の違い• Halpern-Manners et al. (2017) と⼤久保(2020)のパネ

ル条件付けバイアス(panel conditioning bias)を応⽤して,⼆つの調査票で差があるか否かを検討

• 以下の⼆つの仮定を満たせば,⼆つの票ではバイアスがないとみなせる

• 仮定1︓同⼀⺟集団よりサンプリング• 仮定2︓交換可能性(exchangeability)• ⼆つの群の共通職業の項⽬でt検定を⾏い,平均値の差,効果量を検討

• 交換可能性が満たされていれば,平均値の差,効果量は0を中⼼とした正規分布になる

基礎的な分析:質問項⽬

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• 平均値の差• 正規分布に近い︖

基礎的な分析:質問項⽬

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• 効果量• 正規分布に近い︖

基礎的な分析:質問項⽬

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• A票,B票を⽐べた結果,個⼈属性では⼤きな違いはなさそう• ただし,結婚しているか否か,⼦どもの有無では少し差が⾒

られる• 共通職業から考えても,最も⼤きな差で±0.15なので,差が

ないとみなしても良いのではないか︖• 効果量から判断すると,この⼆つの分布の重なっていない部

分が⼤きければ⼆つの群で差がある• 効果量±0.15というのは,重なっていない⾯積が約10%程度

基礎的な分析

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• A票,B票を統合して,⽋損値補完をしたら,⼀つのデータセットとして分析可能か︖

• という挑戦的な⽋損値補完を⾏ってみよう• 考えられる⽅法は,以下の⼆つ① 以下の⾚のセルの回答したであろう値を⽋損値補完② そうではなく,主成分を抽出してその主成分を全職業に対し

て得る

基礎的な分析

Q8割り付け 共通項⽬ A票 B票

職業1 職業2 職業3 職業4 職業5 ・・・ 職業13 職業14 ・・・ 職業22A票 X 5 1 5 3 3 1 4B票 Y 3 1 2 3 2 3 3A票 Z 4 5 1 5 3 3 2

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• A票,B票を統合して,⽋損値補完をしたら,⼀つのデータセットとして分析可能か︖

• という挑戦的な⽋損値補完を⾏ってみよう• 考えられる⽅法は,以下の⼆つ① 以下の⾚のセルの回答したであろう値を⽋損値補完② そうではなく,主成分を抽出してその主成分を全職業に対し

て得る

基礎的な分析

Q8割り付け 共通項⽬ A票 B票

職業1 職業2 職業3 職業4 職業5 ・・・ 職業13 職業14 ・・・ 職業22A票 X 5 1 5 3 3 1 4B票 Y 3 1 2 3 2 3 3A票 Z 4 5 1 5 3 3 2

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主成分抽出

Q8割り付け 共通項⽬ A票 B票

職業1 職業2 職業3 職業4 職業5 ・・・ 職業13 職業14 ・・・ 職業22A票 X 5 1 5 3 3 1 4B票 Y 3 1 2 3 2 3 3A票 Z 4 5 1 5 3 3 2

主成分1得点

主成分2得点

主成分3得点

X

Y

Z

・分析する際に、抽出した主成分を⽤いることで全データをフル活⽤することなる→⽋損問題を回避

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・例えば、A票B票の情報を合わせて、専⾨職の「受け取るべき年収」(Q9)に関する各個⼈の解答を独⽴変数として使⽤したい場合→従来では、せいぜい共通の4職業を代表として投⼊→Q9から各個⼈の主成分得点を推定できれば、その得点を代わりに投⼊すると良い。→それらの主成分は、専⾨職⼀般の「受け取るべき年収」に関する観念と解釈できる。

Q9割り付け 共通項⽬ A票 B票

職業1 職業2 職業3 職業4 職業5 ・・・ 職業13 職業14 ・・・ 職業22A票 X 5 1 5 3 3 1 4B票 Y 3 1 2 3 2 3 3A票 Z 4 5 1 5 3 3 2

主成分抽出及びその解釈

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① 個⼈固定効果モデル︓各職業に対する評価の内、不変なものを各個体の切⽚として扱うモデル

𝐸!" = 𝛽# + 𝛽$𝑥!" + 𝛽%𝑧! + 𝑢&"

② 職業固定効果モデル︓職業ダミーの固定効果

𝐸!" = 𝛽# + 𝛽$𝑥!" + 𝛽'𝑆" + 𝑢&"

• ①どの職業をも⾼く評価する各個⼈の固有観念,そして②どの個⼈にも⾼く評価されやすい職業の属性が考慮されている

• ⼆つのモデルを合わせると,個⼈固定効果と職業固定効果を同時に推計できる双⽅向モデルとなる

③双⽅向固定効果モデル𝐸!" = 𝛽# + 𝛽$𝑥!" + 𝛽%𝑧! + 𝛽'𝑆" + 𝑢!"

主成分抽出及びその解釈

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• 好き嫌い︓両⽅向の固定効果の交互作⽤として考えないといけない。

• Iの個体に,⼀律にJの職業を評価する。個体iの職業jに対する評価を𝐸!"とする。

• 各職業の特徴がK次元のベクトルからなる

��" =$ 𝐹" ,

% 𝐹" ,' 𝐹" , … ,

( 𝐹" , … ,) 𝐹"

*

• 各個⼈もK次元のベクトルからなる評価ウェートを持つ

��! =$ 𝐵! ,

% 𝐵! ,' 𝐵! , … ,

( 𝐵! , … ,) 𝐵!

*

④ 交互固定効果モデル

𝐸!" = ��!��"* + 𝑢!" =.

+

(()𝐵! /(()𝐹" + 𝑢!"

主成分抽出及びその解釈

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⽋損ありのデータからいかに主成分抽出するか

Q9割り付け 共通項⽬ A票 B票

職業1 職業2 職業3 職業4 職業5 ・・・ 職業13 職業14 ・・・ 職業22A票 X EX1 EX2 EX3 EX4 ⽋損 ⽋損 ⽋損 EX14 … EX22B票 Y EY1 EY2 EY3 EY4 EY5 … EY13 ⽋損 ⽋損 ⽋損A票 Z EZ1 EZ2 EZ3 EZ4 ⽋損 ⽋損 ⽋損 EZ14 … EZ22

𝐸!" =.(

𝛽!(() / 𝑓"

(() + 𝑒!"

職業j𝑓!(#)𝑓!

(%)𝑓!(&) … 𝑓%

(')

個⼈i𝛽((#)𝛽(

(%)𝛽((&)

… 𝛽((')

真の規定要因

元のデータには⽋損を除くと、J*13個のデータがある。

真の規定式の⾃由度は(I+J)*Kとなる

→情報集約の可能性=主成分抽出

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⽋損ありのデータからいかに主成分抽出するか

𝐸!" =.(

𝛽!(() / 𝑓"

(() + 𝑒!"

・交互最⼩⼆乗法(Alternating Least Sqares,以下ALS)(森ほか2017、⾜⽴2015、柴⼭1992)に基づいた複数回単回帰により推定できる。

𝐵) = 𝐹)𝐹 *#𝐹)𝐸)𝐹) = 𝐵𝐵) *#B)𝐸

𝐹!をあらかじめランダムに⽣成して、それに基づいて𝐵"を推定し、そして𝐵"に基づいて𝐹"を推定し、さらに𝐹"に基づいて𝐵#を推定し、…FとBが安定するまで上記のプロセスを繰り返していく…残った残差にもう⼀回反復法を適⽤

・推定値は、表の主成分の定数倍に収斂することが証明される。→ALSで推定することで、ある程度の⽋損値にも対応できると期待される。

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抽出結果R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 R8 R9

Q8 0.575199 0.674756 0.73845 0.79177 0.832226 0.869181 0.902312 0.931767 0.95325Q9 0.669573 0.735747 0.783102 0.822556 0.855535 0.881987 0.905845 0.928868 0.946738Q10 0.654799 0.738042 0.787456 0.825887 0.85436 0.879004 0.902516 0.923515 0.942131Q11 0.571472 0.651897 0.706066 0.756045 0.796327 0.83166 0.863816 0.892512 0.919259Q12 0.483822 0.600848 0.674412 0.725707 0.767847 0.807749 0.841791 0.873496 0.901882Q13 0.609251 0.708452 0.759343 0.795838 0.828569 0.858626 0.886161 0.911744 0.934536Q14 0.482705 0.589998 0.668435 0.727378 0.774664 0.813813 0.849181 0.881748 0.909355Q15 0.421385 0.551475 0.622038 0.680217 0.728836 0.775904 0.817719 0.853987 0.888961Q16 0.460769 0.586548 0.673659 0.729424 0.774372 0.815368 0.850188 0.879431 0.906453Q17 0.468176 0.569996 0.643319 0.70582 0.753155 0.798726 0.833475 0.866754 0.898208Q18 0.507962 0.623148 0.683263 0.733694 0.775853 0.814526 0.852453 0.88442 0.913851Q19 0.540846 0.630603 0.711048 0.755372 0.795244 0.82815 0.859091 0.887832 0.914838Q20 0.521623 0.636032 0.699833 0.748928 0.789454 0.826564 0.859603 0.890111 0.917837Q21 0.574225 0.697323 0.737901 0.774298 0.808567 0.840028 0.870574 0.897372 0.920733Q22 0.614116 0.72435 0.77396 0.816057 0.853178 0.883723 0.908518 0.932454 0.950304Q23 0.404427 0.567163 0.622508 0.676351 0.721124 0.765107 0.804662 0.842791 0.878196Q24 0.474592 0.60424 0.68648 0.742933 0.79048 0.829911 0.865655 0.898123 0.925303Q25 0.414355 0.544869 0.630135 0.685546 0.738028 0.784189 0.824597 0.860384 0.891739Q26 0.403735 0.518551 0.597758 0.659662 0.71599 0.763282 0.805536 0.84449 0.879946Q27 0.413856 0.516624 0.601344 0.664261 0.720963 0.766285 0.807289 0.84498 0.880148Q28 0.617946 0.702866 0.749146 0.787917 0.823103 0.855533 0.883346 0.907864 0.929195

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• この調査を多くの⼈が分析すること• 先⾏研究がそこまで多くないこと• 時間とお⾦• 説明的な問いの検証がメインであること• これらを総合的に判断して,Web調査を実施し,そのための

設計を⾏なった• A票,B票では偏りがなさそうで,割り付けバイアスは⼩さい

ことが想定される• 主成分得点を⽤いることで,A票,B票を総合して⽤いること

が可能

• 課題として,Web調査の偏りがあるが,適切にサンプリングされた最新年度の社会調査データ(JGSS2018︖,SSM2015︖)を⽤いて,傾向スコア分析によってなんとかしたい。ただ,共通の共変量が少なそう・・・

• ⽅法については,星野・前⽥(2006),星野(2009)参照

終わりに

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• Abbott, A. D.,1981,”Status and status strain in the professions.” American Journal of Sociology, 86(4), 819–835.

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⽂化社︓47-60.• 本多則惠,2006,「インターネット調査・モニター調査の特質」『⽇本労働研究雑誌』No.551︓32-41.• 星野崇宏,2009,『調査観察データの統計科学』岩波書店.• 星野崇宏・前⽥忠彦,2006,「傾向スコアを⽤いた補正法の有意抽出による標本調査への応⽤と共変量

の選択法の提案」『統計数理』59(1)︓191-206.• ⽯村善助,1969,『現代のプロフェッション』⾄誠堂.• 河上婦志⼦,1980,「教職専⾨職論の意義と限界」『⽇本教育経営学会紀要』22︓91-99.• Keele, L., Stevenson, R T and Elwert, F(2020) “The Causal Interpretation of Estimated

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参考⽂献

Page 38: 20210517 専門職調査 公開研究会

• 松⽥茂樹,2018,「ヴィネット調査を⽤いた⼦育て⽀援策が出⽣⾏動に与える効果の研究」『⼈⼝学研究』早期公開.

• 丸⼭和昭,2017,「再専⾨職化の時代における 教員養成の⽅向性」『⽇本教育⾏政学会年報』No.43︓44-62.

• 松井博,2005,『標本調査法』財団法⼈ ⽇本統計協会.• 三浦⿇⼦・⼩林哲郎, 2015, 「オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究」『社会⼼理学研

究』31(1)︓1-12.• 三輪哲・⽯⽥賢⽰・下瀬川陽,2020,「社会科学におけるインターネット調査の可能性と課題」『社会

学評論』71(1)︓29-49.• 森裕⼀・⿊⽥正博・⾜⽴浩平,2017,最⼩⼆乗法・交互最⼩⼆乗法,共⽴出版.• ⼤久保将貴,2020,「パネル条件付けバイアスの新たな識別⽅法」『東京⼤学社会科学研究所パネル調

査プロジェクト・ディスカッション・ペーパーシリーズ』No.119︓1-12.• 盛⼭和夫(2004)『社会調査法⼊⾨』有斐閣ブックス.• 柴⼭直,1992,⽋測値を含む多変量データのための主成分分析的⽅法. 教育⼼理学研究, 40︓257-265.• 塩⾕芳也・⾦澤悠介・浜⽥宏,2012,「ビネット調査による階層帰属メカニズムの検討」『理論と⽅

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137.• 脇⽥彩,2012,「職業威信スコアのジェンダー中⽴性」『ソシオロゴス』57(2)︓3-18.• Whitty, G.,2002, Making Sense of Education Policy: A SAGE Publication(=2004,堀尾輝久・久富善之監訳『教育改⾰の社会学︓市場、公教育,シティズンシップ』東京⼤学出版会.)

• Zhou, X, 2005, “The Institutional Logic of Occupational Prestige Ranking- Reconceptualization and Reanalyses,” American Journal of Sociology, 111(1)︓90-140.

参考⽂献