2016年度3年後期 素粒子物理学 1 第3回 2016年10月21日 ...makoto.nagoya/...2016/10/21...
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戸本 誠高エネルギー物理学研究室(N研)
2016年度3年後期 素粒子物理学 1
第3回 2016年10月21日
前回の復習(1) Klein-Gordon方程式
相対論的なエネルギー・運動量の関係
微分演算子
確率密度と流れ
平面波解から負のエネルギー
負の確率密度
2
前回の復習(2) Dirac方程式1階の微分方程式とすることで負のエネルギーと負の確率密度から逃れようとDiracが導く
平面波解から
Fermi 粒子の方程式を表す正の確率密度
負のエネルギー
ψ、uは4成分スピノール
3
前回の復習(3) 負エネルギーの解釈• Diracの解釈:空孔理論「真空」は無ではなく、負のエネルギーが詰まった状態負エネルギー電子の欠如 =正エネルギー陽電子の出現陽電子(電子の反粒子)の予言
• Feynman-Stuckelbergの解釈時間に逆行して伝搬する負エネルギー粒子の解=時間に順行して伝搬する正エネルギー反粒子の解
p1
p2
p1
p2
q1
q2 -q2
-q1
e- e+
e- e-
e- e-
e-e+
e-(p1)+e+(q1)→e-(p2)+e+(q2)
e-(p1)+e-(-q2)→e-(p2)+e-(-q1)t相互作用 相互作用
ーの空孔=+の出現
真空=占有
ーの出現
4
「時間に逆行」に伴う新しい考え方 5
t
x
これまでの常識 新しい考え方
t=t1
t=t2
今日の内容
• Dirac 方程式の解に関して、もうちょっと詳しく• γ行列• スピンとヘリシティー• カイラリティー
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Diracのγ行列Dirac方程式
に左からβをかける
を定義し、
とアインシュタインの縮約 を思い出すと
→確率密度と流れ :
電流密度と考えると Feynman-Stuckelbergの解釈との関連
7
とすると と書ける。
γ行列の性質
後の為に、
, →
各自で計算して確認して見て下さい
ディラック表示:非相対論的(m>>p,E)に便利
γ行列にはいろいろな表示が存在するならばなんでも良い
8
Dirac方程式の解ψの4成分に関して詳しく調べるエネルギー固有値が分かり易い標識平面波を考えるp=0, E=mの時 (非相対論的) の解を考える
E=m>0解の固有関数(粒子) E=-m<0解の固有関数 (反粒子)
ψ:4成分スピノール
9
Dirac方程式の解
ψ、u : 4成分、uA,uB : 2成分
p>0 の時の解
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E
uA
uB
�=
m � · p
� · p �m
� uA
uB
�=
muA + (� · p)uB
(� · p)uA �muB
�
Dirac方程式の平面波解(1) >0の解
E>0の2つの解の上の2成分を
とする。(独立な固有関数ならなんでも良い。)
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Dirac方程式の平面波解(2) <0の解
E>0の2つの解の上の2成分を
とする。(独立な固有関数ならなんでも良い。)
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4つの解は直交
スピンとヘリシティ2次元のスピン行列 の4次元的拡張を考える
の
を固有関数としてもち、固有値は±1/2であるスピン+1/2 スピン-1/2 スピン+1/2 スピン-1/2E=m>0解の固有関数(粒子) E=-m<0解の固有関数 (反粒子)
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スピンとヘリシティ
非相対論的扱い(p=0, E=m)では、固定したz軸の定義可能
相対論的扱いでは、運動方向をz軸に取った時のスピンのz成分を用いる。
ヘリシティー: (2成分) (4成分)
固有値は±1
運動方向
運動方向
固有値 + : 正のヘリシティー(右巻き)
固有値 - : 負のヘリシティー(左巻き)
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スピンとヘリシティ
HとL、sとの交換関係を考える
Lは保存しない。sも単独では保存しない。
sの他の性質
1/2の角運動量と同じ性質
→
が保存する
Dirac方程式は、内部自由度 (スピン)1/2の粒子を記述
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磁気能率電磁場中のDirac粒子 (Dirac方程式に従う粒子)を考えるシュレディンガー方程式と同じく
→
E>0の解で、非相対論近似(E=m+T, T<<m, eφ<<m)
磁気能率 とBとの相互作用Dirac粒子:g=2
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磁気能率
e-γ
B Dirac粒子 : g=2
実際は2からずれる高次の輻射の足し合わせ
実験的には、
B
e-
γ
仮想光子を測定
a=aQED+aQCD+aEW
高次の効果を入れると、
QCD, 弱い相互作用も入れると
QCDW/ZHiggs
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などの効果を考えると2からズレる
磁気能率
実験値
100万分の1の精度!
5桁まで理論と良い一致B
e-
γ
新粒子??
Dirac方程式の大成功を示す実験
更に奥に僅かに見える新物理をも捉える段階に突入
理論予想値
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Dirac 方程式の解をまとめると
E>0解の固有関数(粒子) E<0解の固有関数 (反粒子)
p=(E、p) の自由電子の解
p=(E、p) の自由陽電子の解 (p=(-E、-p) の自由電子の解)...電子が満たすDirac方程式
...陽電子が満たすDirac方程式
スピン↑負エネルギー解=スピン↓の正エネルギー解
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スピノールの規格化 20
s=1,2
単位体積あたり2E個の規格化を用いる
直行関係
→u†u = N2
"1 +
✓� · pE +m
◆2#= N2 2E
E +m
に対する(共役な)Dirac方程式 21
→右からγ0掛けて
(uの共役)に対するDirac方程式
u, v
完全性関係 22
同様にして
双1次共変形 23
記号 双1次形式 成分の数 パリティ変換後 パリティ
スカラー S 1 +
擬スカラー P 1 -
ベクトル V 4 -
軸性ベクトル A 4 +
テンソル T 6 +
O 双1次共変形 (Oは任意の4x4行列)ローレンツ変換に対してある決まった変換性を持つ
�µ
�µ⌫
i �5
�5�µ
�i �5
�µ
� �5�µ �µ⌫
カイラリティー
ψL、ψRは、γ5演算子の固有関数(固有値は±1)カイラリティー演算子
カイラル (ワイル)表示:相対論的(m<<p, E)に便利
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,,
Dirac表示とワイル表示は、以下の関係で結ばれている
カイラリティー
←...①
...②①+②
①-②
m=0ならば、ψLとψRは独立 (別の粒子)として振る舞う
質量mが、カイラリティー+(ψR) カイラリティー- (ψL)を混ぜている。
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カイラリティーとヘリシティー
粒子・反粒子の違いも考慮したヘリシティー演算子の相対論的拡張
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今日のまとめ• Klein-Gordon 方程式は相対論的な方程式
• スピンが記述できない → ボゾンを記述
• 新たな相対論的なDirac方程式を導入
• 方程式の中にスピン内部自由度が入っている →フェルミオンを記述• γ行列などにも慣れて下さい
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