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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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更新日:2009/01/22
調査部: 坂本茂樹
アジア太平洋地域の 2009 年上流投資動向: 実質投資増加、深海域探鉱を推進
(Platts、Energy Intelligence、IHS、コンサルタント資料)
2008年の石油ガス価格下落、世界経済危機の影響を受けて、世界の2009年石油ガス上流投資額は
前年比減少が予想される。しかし投資額が大きく減少するのは北米であり、その他地域の減少は比較的
小幅に止まる。 アジア太平洋地域では上流投資削減は報じられていない。むしろ企業によっては、投資を増額して、
既発見油ガス田の開発、企業買収を積極的に推進する動きがある。 探鉱投資では、深海域の試掘が注目される。アジア太平洋地域の深海は、米国メキシコ湾沖合、西ア
フリカ、ブラジルの深海域に比べて探鉱が進んでおらず、なお高い探鉱ポテンシャルがあると考えられ
る。2009 年にマレーシア、中国では、既発見の深海油ガス田と同じトレンドを狙って、未探鉱深海鉱区
での掘削が計画されている。インドネシア、フィリピンでも、有力石油企業が 2008 年までに保有深海鉱
区内の地震探鉱作業を終了させ、2009 年から試掘作業を開始する。世界的に深海のポテンシャルへの
注目が高まっているが、アジア太平洋深海域で新たな炭化水素発見があれば、同地域の深海探鉱は新
たな局面を迎えると考えられる。 一方西豪州沖合では、LNG 事業向けの原料ガス追加発見を目的にした探鉱が進められている。近
年、探鉱対象は徐々に深海に移行しており、2009~10 年には有望な深海鉱区での試掘が計画されて
いる。2008年末に、Kimberley海岸液化基地ハブサイト、およびChevronのWheatstoneガス田の液
化基地サイトが定まったことも、探鉱の追い風になると考えられる。 アジア太平洋地域は日本の上流事業者にとって主要な事業対象地域であり、また東アジア市場向け
LNG の主要供給地でもある。日本企業の今後の事業対象・戦略を考え、日本の LNG 調達可能性を見
る上でも、2009 年から実施される深海等探鉱の行方が注目される。
1. 世界の 2009 年上流分野の投資動向
(1) 世界の投資動向
投資銀行のBarclays Capital(旧Lehman Brothers系)は2009年の世界石油ガス上流投資動向に
係わる聞き取り調査を実施し、世界の 2009 年上流投資額が 2008 年比で 12%減少すると想定している。
投資額を北米およびその他地域に分けると、次の通りとなる。 地域 2009 年上流投資想定(億ドル) 前年比(%) 北米 1,000 ▲25
その他 3,000 ▲ 6 合計 4,000 ▲12
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北米地域の投資額は前年比▲25%と大きく減少する。事業者別に見ると、北米で投資を大きく削減す
るのは独立系企業であり、メジャーズは従来の投資計画をさほど変更していない。一般に北米の掘削活
動は、他地域と比べて、市場動向(石油ガス価格)に敏感に反応して極めて短期間に大きく変動する傾
向がある。
一方、北米以外の上流投資額は前年比▲6%に留まっている。2008 年 9 月来の世界経済低迷に伴う
資機材価格下落を勘案すると、実質的な探鉱活動は横ばいないしは増加すると考えられる。また有力な
IOC の投資計画変更幅は小さい。例えば ExxonMobil 社 CEO の Rex Tillerson 氏は 2009 年 1 月
初旬の講演にて、同社の投資計画は原油価格変動や市場動向によって何ら影響を受けるものではなく、
1,250 億ドルの 5 カ年計画を予定どおりに実施すると明言した。
(2) アジア太平洋地域事業者の投資動向
アジア太平洋地域に特定した 2009 年投資動向調査は実施されていないが、主要事業者(NOC、
IOC)には、同地域内投資額を削減する動きはない。鉱区権益付与に際して探鉱期間内に投資義務お
よび作業が設定されるため、既定の作業内容・時期を変更しにくい事情もある。また既発見油ガス田開
発案件を有する事業者(NOC)の中には、世界不況に伴う資機材価格下落を利用し、投資を増額して積
極的に開発作業を進めようとする動きもある。
インドネシア政府によると、同国の 2009 年上流投資額は原油価格下落にも拘わらず、前年比 28%増
加の157億ドルが見込まれている。内訳は、生産・開発に関わる投資が130億ドル、探鉱投資が27億ド
ルである。インドネシア政府は、世界経済危機がインドネシア上流事業に影響を及ぼすことは無いと見
ている。主要な生産、開発投資案件には、ExxonMobil/Pertamina のジャワ島Cepu 鉱区油田開発、
Total/ INPEX のカリマンタン島東沖合マハカム沖鉱区のガス生産体制整備、Chevron のカリマンタン
島東沖合深海ガス田群開発等がある。探鉱投資計画には変更はないと伝えられる。
タイ国営石油会社PTT の上流部門小会社PTTEP は、2009~13 年の 5 カ年投資額を 4,180 億バー
ツ(約110 億ドル)として、前年(2008~12 年)投資計画2,870 億バーツから大幅に増額した。前年計画
に含まれていなかったベトナム、アルジェリア、ミャンマーの上流投資が増加要因である(2010~12 年
にかけて順次生産開始する予定)。PTTEP は自国海域のシャム湾でのガス田開発と並行して、海外で
の資源開発を積極的に推進しようとしている。特に PTTEP が権益100%を保有するミャンマーM9鉱区
ガス田開発には20億ドルの投資を予定している。またPTTEPは2008年末に豪州独立系企業Coogee
社を買収して、豪州の石油ガス資産を拡充しようとしている。
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探鉱の観点から 2009 年のアジア太平洋地域における上流投資を見ると、深海域の新たな試掘計画に
大きな特徴がある。
2. アジアの 2009 年上流投資(深海域探鉱を中心に)
Energy Intelligence 社は、石油会社が上流部門予算削減圧力を受けているにも拘らず、アジア太平
洋地域の有望な深海域探鉱作業(試掘井掘削等)に対しては2009年に大型予算を確保済みと報じてい
る(2009/1/5 付 Petroleum Intelligence Weekly)。アジア太平洋地域の深海域は、西アフリカ、米国メ
キシコ湾、ブラジル等世界の主要な深海域に比べるとまだ探鉱が十分になされていない。2009 年には
マレーシア、インドネシア、中国、オーストラリア沖合など、既存の炭化水素発見によってかねてから有望
視されている深海域の試掘が計画されている。アジア太平洋地域の深海域探鉱は、2009 年に新たな局
面を迎える可能性がある。下表に、深海を中心にして、試掘が計画される主要地域を記す。
国 地域(/堆積盆地) 鉱区名 オペレーター
サバ州沖合深海 SB-N、Q 鉱区 BHP Billiton マレーシア サラワク州沖合深海 2C 鉱区 Newfield インドネシア
マカッサル海峡 (深海)
Surmana Passangkayu Kuma、 等
ExxonMobil Marathon ConocoPhillips、 等
フィリピン
Sulu 海深海 (Sandakin 堆積盆地)
SC56 ExxonMobil
中国
南シナ海深海
29/26 43/11 64/11、53/16
Husky Anadarko BG グループ
西豪州沖合; Carnarvon 堆積盆地
Gorgon 、 Wheatstone 、
Pluto ガス田周辺各鉱区 Chevron 、 Woodside 、
Hess 豪州 Browse 堆積盆地 WA-371-P(浅海) Shell
(1) マレーシア:サバ州、サラワク州沖合
東マレーシア・サバ州沖合深海では、Murphy による Kikeh 油田等(Kikeh Complex、SB-K 鉱区、
2002~05 年発見、2007 年生産開始)、Shell による Gumusut 油田(SB J 鉱区、2003 年発見、2011
年生産開始予定)が発見されている。同深海域は、東南アジアでインドネシアのカリマンタン島東沖合と
並ぶ有望な深海域と見なされている。MurphyのKikeh油田は、マレーシア初の深海油田として、2007
年 8 月に原油生産を開始した。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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Murphy は SB-K 鉱区探鉱期間が終了した 2006 年に鉱区面積の一部を放棄した。放棄された地域
は新たに SB-N、Q 鉱区として再公開され、2007 年3 月に豪州BHP Billiton が同2 鉱区権益の付与
を受けた(権益 60%、パートナーは Petronas Carigali)。SB-N、Q 鉱区には試掘実績があるが、まだ
商業規模の炭化水素発見はない。しかし Murphy が発見した一連の油田群(Kikeh Complex)と同じト
レンドに乗るプロスペクトが存在すると考えられ、炭化水素発見のポテンシャルが期待される。BHP
Billiton は 2008 年に SB-N 鉱区で 3D 地震探鉱等作業を終了し、2009 年には試掘井掘削を開始する
(義務井 4 坑)。
図 1 東マレーシア、サバおよびサラワク州沖合鉱区 (各種情報・報道)
サバ州沖合からブルネイ領海域を挟んで西側に位置するサラワク州浅海域は、マレーシア LNG の
Bintulu 液化基地向けに原料ガスを供給するガス田群地帯である。浅海ガス田群北側の深海域は、掘
削実績はあるものの総じて未探鉱であり、未だ商業規模の炭化水素発見はない。サラワク州沖合深海に
設定された鉱区の中で、現在米国独立系Newfield Exploration(2C鉱区)と Hess(2A鉱区)が鉱区権
益を保有している。Newfield社は2C鉱区において、2009年に試掘井掘削(Paus)を予定している。同
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社の主要生産地域は米国だが、海外ではマレー半島沖合浅海および中国渤海湾に生産資産を保有し
ている。
マレーシアの石油生産は 2010 年以降、主力のマレー半島東沖合の生産量が急速に減退する。サバ
州沖合 SB-J,K 両鉱区の既発見油田がある程度生産減退を補っていくが、現状のままで新規発見がな
ければ 2015 年以降石油生産が急激に減少すると想定される。もしサバ州、サラワク州沖合深海で新規
油田発見があれば、マレーシアの原油需給改善に大きく貢献する。
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100
200
300
400
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千b/d
2000
2001
2002
2003
2004
2005
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2007
2008
2009
2010
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2012
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2014
2015
2016
2017
2018
マレーシア石油生産見通し
SB J
SB K
サラワク・サバ
マレー半島沖合
図 2 マレーシアの石油生産見通し (オペレーター生産計画等を基に想定)
2007年に生産開始したMurphy社Kikeh油田の随伴ガスは、Petronasとのガス売買契約に基づき
Labuan にあるメタノール工場に供給されている。サバ州のガス需要規模が小さいため、2011 年に生産
開始される Shell の Gumusut 油田随伴ガスは、サラワク州Bintulu のマレーシア LNG 液化基地向け
の供給が検討されている。今後サバ州深海鉱区で新規油田発見があった場合の随伴ガス、またはガス
田が発見された場合の生産ガスは、同様に Bintulu の LNG 基地向けに供給される可能性が高い。
(2) インドネシア
インドネシアの 2006~08 年の探鉱鉱区入札では、カリマンタン島とスラウェシ島に挟まれたマカッサ
ル海峡(Kutei 堆積盆地)、そしてパプア州など未探鉱の東部地域が注目されて、メジャーズを含む
IOC による権益取得が多かった。注目地域の一つ、マカッサル海峡深海の各鉱区では、これまで地震
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探鉱データ取得などの探鉱活動が実施されてきたが、2009 年から試掘井掘削が開始される。
① ExxonMobil 社
ExxonMobil は 2006 年 6 月に PS 契約を締結した Surumana 鉱区において、2007 年に 2D 地震
探鉱データを取得したが、2009 年に最初の試掘井掘削キャンペーンを開始する。Seadrill 社の掘削リ
グ West Aquarius を確保し、Rangkong-1 を皮切りに合計 3 坑を掘削する。
② その他企業の掘削コンソーシアム(Makassar Strait Explorers コンソーシアム)
該当コンソーシアムの構成企業は、マカッサル海峡深海に鉱区権益を保有する Marathon、
ConocoPhillips、StatoilHydro、Talisman の 4 社、Anadarko、そしてカリマンタン島北東部 Bukat
鉱区でガス田開発を計画する伊 ENI である。コンソーシアムは Transocean 社との契約により、今後 2
年間、超深海用掘削船 GSF Explorer を用いて試掘井掘削を行う。同掘削船は、Anadarko の Popodi
鉱区、Marathon のマカッサル海峡Pasangkayu 鉱区、ENI の Bukat 鉱区の順に掘削作業を実施す
る予定である。
図 3 マカッサル海峡深海鉱区(Kutei 堆積盆地) (各種情報・報道)
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インドネシアには、ExxonMobil/Pertamina が油田開発中のジャワ島 Cepu 鉱区開発に続く大規模
油田開発案件が無いため、現状のままでは 2014 年以降に石油生産減退が顕著となる。生産減退を食
い止めるため、探鉱ポテンシャルが高いと言われるマカッサル深海鉱区での油田発見が期待される。
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1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016
インドネシア原油生産見通し
Cepu
既存油田
図 4 インドネシア石油生産量見通し (オペレーター生産計画等を基に想定)
(3) フィリピン:南東部 Sulu 海沖合
フィリピンで唯一の大規模炭化水素資源は、2002 年に生産を開始した Malampaya-Camago ガス田
である(北西Palawan堆積盆地深海域、オペレーター:Shell)。生産ガス(325MMcfd)は発電用燃料と
して、海底ガスパイプラインを通じてケソン島南部のマニラ都市圏に供給されている。
フィリピンの 2009 年探鉱活動で注目されるのは、Palawan 島南方のマレーシア・サバ州北東沖合
Sulu 海に位置する深海鉱区SC56 (Sandakin 堆積盆地)での試掘井2 坑掘削である。同鉱区は地元
独立系 Mitra Energy が 2003 年に権益付与を受け、2007 年末に ExxonMobil が 50%の権益でファ
ームインした。コンソーシアムは2008年に3D地震探鉱等の作業を完了し、2009年に試掘を実施する。
炭化水素発見があれば、Shellの Malampaya-Camago ガス田に次いで、フィリピン深海域で第2の炭
化水素発見となる。
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図 5 フィリピンの深海ガス田、鉱区 (各種情報・報道)
(4) 中国:南シナ海沖合
カナダ Husky Energy は、2006 年 4 月に南シナ海沖合深海 29/26 鉱区で、中国初の深海ガス田を
発見した(茘湾3-1-1、水深1,480m)。同社は北米の独立系企業として、全社的には2009年の投資額を
削減したにも拘わらず、中国とインドネシアに保有する上流資産に係わる 2009 年予算を 16%増加して
4.16 億ドルとした。2008 年末から同上鉱区での評価井掘削(茘湾 3-1-2)を含む評価作業を実施してい
る(茘湾ガス田埋蔵量は 5 Tcf と推定される)。
Husky の茘湾ガス田発見を契機として、南シナ海沖合深海鉱区で、探鉱活動が活発化している。米
独立系Anadarko は、茘湾ガス田が位置する Husky 社29/26 鉱区の南方に隣接する 43/11 鉱区にお
いて、2009 年に試掘井 1 坑掘削を計画している。茘湾ガス田と同じトレンドを狙って、掘削計画全体で
は最大5 坑を掘削する計画という。また英国BG グループも南シナ海の探鉱ポテンシャルに注目してお
り、権益を保有する64/11および53/16鉱区において(海南島東方、琼東南(Qiondongnan)堆積盆地)、
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2009~10 年に最初の試掘井掘削を計画している。
図 6 南シナ海:発見ガス田と深海鉱区 (各種情報・報道)
(5) 西豪州沖合
2008 年12 月下旬、西豪州政府は同年2 月から実施してきた Kimberleyスタディー(Kimberley海岸
に液化基地サイトを 1 カ所にみ選定する)の最終決定として、北西Kimberley 地域James Price Point
を液化基地ハブに選定した。州政府の決定を受けて、同海岸沖合 Browse 地域にガス田を保有する
Woodside、Shell は、自社LNG 案件の液化基地サイトとして James Price Point 使用の可否を検討す
ることを表明した。
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図 7 西豪州沖合 Browse 地域ガス田群 (各種情報・報道)
またChevronも2008年12月下旬に、北西大陸棚沖合Wheatstoneガス田の液化基地サイトとして、
かねてから検討していたピルバラ海岸 Onslow 近郊の Ashburton North を選定した。同社は 2015 年
のLNG生産開始を目標に、当面500万トン/年の液化設備2トレーンの建設を目指す。同社は併せて、
Gorgon LNG 案件の投資決定の準備をしている。一方豪州Woodside 社は、2007 年に Pluto 第1 トレ
ーンの投資決定を行ったが、更に第 2 トレーン建設に向けた原料ガス確保を目的にして探鉱活動を推
進している。
西豪州沖合 LNG 案件は、これまで液化基地サイトの決らないことがネックになって事業進展が遅れ
ていたが、ここに来て徐々に進展する様相を見せている。各 LNG 事業者は、併せてガス追加発見を目
的にした探鉱活動、評価作業を進めようとしている。西豪州沖合では浅海域を中心に既に 150 Tcf のガ
スが発見されており、探鉱ポテンシャルの高さは世界でも有数である。またカントリーリスクが低く、国営
石油企業はなく、東アジアガス市場に近いなど、LNG 産業立地の優位性が高い。
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図 8 西豪州北西大陸棚の LNG 案件 (各種情報・報道)
既発見ガス田の多くは浅海域にあるが、深海域で新たな大規模発見が増えており、近年探鉱活動の対
象域は深海に移りつつある。代表的な深海ガス田には、Jansz(Mobil、2002 年発見)、Pluto
(Woodside、2005 年)がある。2009 年に LNG 向け原料ガス発見を目的とする探鉱活動を積極的に推
進するのは、Chevron、Woodside、Shell、Hess である。4 社合計で 2009~10 年の 2 年間に約 40 坑
の試掘井・評価井を掘削する予定であり、その合計コストは10億米ドル以上になるとみられる。対象地域
は Carnarvon および Browse 堆積盆地であり、前者の掘削対象地域には深海鉱区が多い。企業別の
動向を以下に記す。
① Chevron
2008 年末~2010 年にかけて Carnarvon 堆積盆地の Gorgon および Wheatstone ガス田周辺で、
20~25 坑の試掘井・評価井を掘削する。
② Woodside
Woodside の当面の探鉱目的は、Pluto LNG 拡張用(第 2 トレーン以降)のガス田発見であり、
Carnarvon 堆積盆地に権益を保有する各鉱区(WA-370-P、WA-350-P、WA-404-P(Hess と共同保
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有)、すべて深海域)で掘削活動を行う。また北西大陸棚 LNG コンソーシアムとしても、試掘井・評価井
を掘削する。
③ Hess
Hessは2007年に、試掘16坑を含む5億豪ドルを提案して深海WA-390-P鉱区の契約を締結した。
2008 年に試掘4 坑を掘削してガスを発見したが、2010 年までに残る 12 坑を掘削して、LNG 事業立ち
上げを目指す。また WA-404-P 鉱区では Woodside と共同事業を実施し、Pluto LNG 向けガス追加発
見を目指す。
④ Shell
Shell は西豪州沖合で多様なガス資産を持つ。オペレーター事業としては、Browse地域の Prelude、
Echuca Shoals ガス田で LNG 事業化を目的に探鉱・評価作業を実施している。浅海 WA-371-P 鉱区
(Prelude ガス田を含む)における試掘 12 坑掘削キャンペーンは 2009 年に終了する。
他には、Chevron の Gorgon 事業に 25%の権益を持ち、大手 LNG 事業者 Woodside 株式を 34%
保有する同社の最大株主でもある。
西豪州の LNG 案件はほとんどが東アジア市場向け輸出を念頭に置いており、その事業進展は日本
の将来の LNG 調達に深く関わってくる。今後の西豪州ガス探鉱の成果が期待される。
またアジア太平洋地域は、日本の石油ガス上流企業の主要な事業対象地域であり、今後の事業対
象・戦略を検討する観点からも、同地域の深海探鉱の行方が注目される。