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i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS改訂 6 国際連合 ニューヨーク ジュネーブ、2015

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ST/SG/AC.10/30/Rev.6

化学品の分類および表示に関する

世界調和システム(GHS)

改訂 6 版

国際連合

ニューヨーク ジュネーブ、2015

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注 記

この出版物において使用している呼称および文章の表現は、国家、領土、市もしくは地域、またはその

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も意味するものではない。

ST/SG/AC.10/30 Rev.6

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国際連合

販売番号 E.15.II.E.5

ISBN 978-92-1-117087-0 eISBN 978-92-1-057320-7

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序文 1. 本文書に記述される化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally

Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)(GHS)は、10 年以上にわたる作業の成果である。多数の国々、国際機関および関係団体の多くの人々が関与してきた。このシステムを完成させるための作業は毒物学から消防まで広範囲の専門分野にわたり、また、その調整には多大な努力がはらわれた。

2. この作業は、化学品の分類、表示および安全データシートの統一的な世界調和システムを開発する

ためには、既存のシステムを調和させるべきであるということから始まった。国際連合経済社会理事会の危険物輸送専門家委員会(UNCETDG)の作業に基づいて輸送部門における物理化学的危険性と急性毒性の分類と表示の調和は既に広く実施されていたので、このシステムは全く新しい概念というわけではなかった。しかし、作業場や消費部門における調和はまだなされておらず、また各国の輸送に係る要求事項も、他の部門における要求事項と調和していないことも多かった。

3. 国際的な取り決めである、1992 年の国際連合環境開発会議(UNCED)において採択されたアジェ

ンダ 21、第 19 章、第 27 項が、この作業を完成させるための推進力となった。 「安全データシートおよび容易に理解できるシンボルも含めた、世界的に調和された危険有害性に関する分類および表示システムを、可能であれば西暦 2000 年までに利用できるようにするべきである。」

4. 作業の調整および管理は、化学品の適正管理のための国際機関間プログラム(IOMC)の化学品分

類システムの調和のための調整グループ(CG/HCCS)が行った。作業を完成させるための技術的な活動の中心は、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、国際連合経済社会理事会の危険物輸送に関する専門家小委員会(UNSCETDG)であった。

5. 作業は 2001 年にいったん終了した後、IOMC から国際連合経済社会理事会の新しい委員会である

化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家小委員会(GHS 小委員会)に引き継がれた。この小委員会は、1999 年 10 月 26 日の理事会決議 1999/65 に基づき設立されたもので、「危険物輸送ならびに化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家委員会」(以後「委員会」と呼ぶ)と改組・改名された旧危険物輸送に関する専門家委員会の下部組織である。委員会およびこの小委員会は 2 年間単位で作業を行う。事務局作業は国際連合欧州経済委員会(UNECE)により行われる。

6. GHS 小委員会は、GHS の維持、その実施の促進および必要に応じて追加的なガイダンスを提供す

る一方、その導入を促進するためにシステムの安定を確保する責任がある。この組織の下で、本文書は、国、地域および国際法へ適用する際に得られた、それぞれの経験ならびに分類および表示を行っている者の経験を反映させるために、改訂および更新がなされる予定である。

7. GHS小委員会が 初に取り組んだ課題は、GHSの世界的な利用と適用を可能にすることであった。

GHS の初版は、このシステムの 初の実施に供されることを目的として、委員会の 初の会合(2002年 12 月 11-13 日)で承認され、ST/SG/AC.10/30 として 2003 年に出版された。これ以降、GHS は必要に応じまたその実施に伴った経験を得ながら 2 年ごとに更新されてきた。

8. 第 7 回会議(2014 年 12 月 12 日)で、委員会は GHS 改訂第 5 版に対する以下の修正を採択した、

特に、鈍感化爆発物に関する新しい危険性クラスおよび自然発火性ガスに関する新しい危険性区分;いくつかの危険有害性クラス(爆発物、単回ばく露による特定標的臓器毒性、吸引性呼吸器有害性および水生環境有害性)に関して判断基準を明確にするためのさまざまな規定;安全データシート(9節)に含まれる追加情報;改訂され、さらに合理化された注意書きおよび小さな包装のラベルに対応した附属書 7 の新しい例など。GHS 改訂 6 版は、ST/SG/AC.10/42/Add.3 文書として出されたこれらの修正を反映させたものである。

9. 本文書は、主要な対象者を、各国政府あるいは地域政府とするが、各国で採用されている国内の要

求事項を 終的に実行する産業界の関係者のための十分な内容およびガイダンスも含んでいる。化学品とその危険有害性および人々を保護する方法に関する情報が利用可能になれば、化学品の安全管理に係る国家プログラムの基礎ができるであろう。世界中の国々における化学品管理の拡大は、化学品

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の利用による便益を得ながら、世界の人々と環境をより安全な状態に導くであろう。化学品の分類および表示に関する世界調和は、貿易を行う企業が守らなければならない化学品の危険有害性に関する分類および情報の伝達に関する各国の要求事項がより一貫性をもつことから、国際貿易の促進にも役に立つであろう。

10. 持続可能な開発に関する世界首脳サミットは 2002 年 9 月 4 日にヨハネスブルグで採択した行動計

画 23(c)において、2008 年までに GHS という新しいシステムを完全に実施することを目指して、各国ができる限り早期に GHS を実施するよう奨励した。後に 2003 年 7 月 25 日の 2003/64、2005 年 7 月27 日の 2005/53、2007 年 7 月 23 日の 2007/6、2009 年 7 月 29 日の 2009/19、2011 年 7 月 27 日の2011/25 さらに 2013 年 7 月 25 日の 2013/25 の決議において、国際連合経済社会理事会はまだ実施していない政府に対し、WSSD の実施計画にあるように GHS を実施するために、行政手続きや法令を整備すること等により、必要な手段を講じるよう促した。国連経済社会理事会はまた、地域共同体、国連計画、特定の官庁や GHS を推進するその他の関係組織に対し、GHS を効果的にするために輸送安全、労働安全、消費者保護や環境保護に関する国際関連法令を修正することを求めた。実施状況に関する情報は UNECE 輸送部門のウェブサイト 1で見ることができる。

11. この文書は、UNECE 事務局により作成された。 12. この文書が発行された後の訂正を含め、委員会や小委員会の作業に関する追加情報は、UNECE 輸

送部門のウェブサイト 2で見ることができる。

―――――――――――― 1 www.unece.org/trans/danger/publi/ghs/implementation_e.html. 2 www.unece.org/trans/danger/danger.htm および www.unece.org/trans/danger/publi/ghs/ghs_welcome_e.html.

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目 次

第 1 部 序

1.1 章 GHS の目的、範囲および適用 …………………………………………………… 3

1.2 章 定義および略語 …………………………………………………………………….. 11

1.3 章 危険有害性のある物質と混合物の分類 ………………………………………….. 17

1.4 章 危険有害性に関する情報の伝達:表示 ………………………………………….. 23

1.5 章 危険有害性に関する情報の伝達:安全データシート(SDS)………………… 35

第 2 部 物理化学的危険性

2.1 章 爆発物 ……………………………………………………………………………….. 43

2.2 章 可燃性/引火性ガス ………………………….……………………………………… 51

2.3 章 エアゾール …………………………………………………………………………. 57

2.4 章 支燃性/酸化性ガス …………………………………………………………………. 61

2.5 章 高圧ガス …………………………………………………………………………….. 65

2.6 章 引火性液体 ………………………………………………………………………….. 69

2.7 章 可燃性固体 ………………………………………………………………………….. 73

2.8 章 自己反応性物質および混合物 ……………………………………………………….. 75

2.9 章 自然発火性液体 …………………………………………………………………….. 81

2.10 章 自然発火性固体 …………………………………………………………………… 83

2.11 章 自己発熱性物質および混合物 …………………………………………………… 85

2.12 章 水反応可燃性物質および混合物 ………………………………………………… 89

2.13 章 酸化性液体 ………………………………………………………………………… 91

2.14 章 酸化性固体 ………………………………………………………………………… 95

2.15 章 有機過酸化物 ……………………………………………………………………… 99

2.16 章 金属腐食性物質 …………………………………………………………………… 105

2.17 章 鈍感化爆発物 …………………………………………………………………… 107

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目次(つづき)

第 3 部 健康に対する有害性

3.1 章 急性毒性 …………………………………………………………………………….. 113

3.2 章 皮膚腐食性/刺激性 …………………………………………………………………. 125

3.3 章 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 ………………………………………………. 137

3.4 章 呼吸器感作性または皮膚感作性 ………………………………………………….. 149

3.5 章 生殖細胞変異原性 ………………………………………………………………….. 159

3.6 章 発がん性 …………………………………………………………………………….. 167

3.7 章 生殖毒性 …………………………………………………………………………….. 177

3.8 章 特定標的臓器毒性(単回ばく露)………………………………………………… 189

3.9 章 特定標的臓器毒性(反復ばく露)………………………………………………… 199

3.10 章 吸引性呼吸器有害性 .…………………………………………………………….. … 209

第4部 環境に対する有害性

4.1 章 水生環境有害性 …………………………………………………………………….. 217

4.2 章 オゾン層への有害性 ………………………………………………………………… 241

附属書

附属書 1 分類および表示のまとめ ……………………………………………………… 247

附属書 2 (削除)…………………….………………………………………………. …… 263

附属書 3 危険有害性情報のコード、注意書きのコードと使用法

絵表示のコードおよび注意絵表示の例 ………………………………………. 265

附属書 4 安全データシート(SDS)作成指針 …………………………………………. 375

附属書 5 危害の可能性に基づく消費者製品の表示 ……………………………………. 399

附属書 6 理解度に関する試験方法 ………………………………………………………. 405

附属書 7 GHS ラベル要素の配置例 ……………………………………………………… 419

附属書 8 世界調和システムにおける分類例 ……………………………………………. 431

附属書 9 水生環境有害性に関する手引き ………………………………………………. 439

附属書 10 水性媒体中の金属および金属化合物の変化/溶解に関する手引き ……….. 511

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第1部

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第 1.1 章

化学品の分類および表示に関する

世界調和システム(GHS)の目的、範囲および適用

1.1.1 目的

1.1.1.1 化学品は、生活を向上させ改善するため、全世界で広く利用されている。しかし、こうした製品

はその利点に加え、人や環境に対して悪影響をもたらす可能性がある。その結果、数多くの国々または機

関は、近年、ラベルや安全データシート(SDS)を通じて化学品を使用する側に向けた情報の作成と伝達

を求める法律や規則を定めるにいたっている。利用可能な化学製品の膨大さを考えれば、そのすべてにつ

いて個々に規制することはいずれの機関にとっても不可能である。情報提供により、化学品の利用者は

個々の化学品を特定してその危険有害性を知り、各地域の状況に応じた適正な防護対策を実施することが

できる。 1.1.1.2 こうした既存の法律または規則は多くの点で相互に似ているものの、その相異もまた大きいため、

結果として同一化学品に対するラベルまたは SDS が国ごとに異なっている。危険有害性の定義が様々な

ために、ある化学品がある国では引火性物質とみなされ、他の国ではそうならないことがある。また、あ

る国では発がん物質とみなされても、他の国ではそうでないかもしれない。ラベルまたは SDS について

どの段階で、どのように情報提供を行うかに関する決定は世界中で異なり、国際貿易を行おうとする企業

は、そうした法律および規則に関する相異に対応し、様々なラベルおよび SDS を作成できる大規模な専

門家集団を抱えなければならない。さらに、化学品の分類と表示のための包括的なシステムを開発し、維

持することは面倒であるために、多くの国々にそのようなシステムはない。 1.1.1.3 化学品の国際貿易が広く行われているという現実、およびその安全な使用、輸送、廃棄を確実に

行うための国内計画策定の必要性を考慮すると、国際的に調和された分類および表示方法がそうした計画

の基礎となるであろうとの認識がなされた。国内に輸入されたり、または国内で生産される化学品に関し

て、各国が一貫性のある適切な情報を得られれば、化学品へのばく露を管理し、人々と環境を保護するた

めの基盤を包括的に確立することができる。 1.1.1.4 このように、世界調和を目標に定める理由は数多くある。GHS の実施により以下の点が期待さ

れる。 (a)危険有害性の情報伝達に関する国際的に理解されやすいシステムの導入によって、人の健康と環

境の保護が強化される。 (b)既存のシステムを持たない国々に対し国際的に承認された枠組みが提供される。 (c)化学品の試験および評価の必要性が減少する。さらに、 (d)危険有害性が国際的に適正に評価され確認された化学品の国際取引が促進される。 1.1.1.5 作業は、既存システムの検討と、作業の範囲を定めることから始められた。多くの国々が一定の

要求事項を設けていたが、中でも以下のシステムが既存の「主要」システムであるとみなされ、GHS 策

定の基礎となった。 (a) 米国における作業場、消費者および駆除剤に関する制度の要件 (b) カナダにおける作業場、消費者および駆除剤に関する制度の要件 (c)物質および混合物の分類および表示のための EU 指令 (d) 危険物輸送に関する国連勧告

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1.1.1.6 こうした作業を続ける中、この他の国々における要求事項についても検討が行われたが、第一の

課題は、こうした既存システムの も良い点を取り入れ、調和のとれる手法を見出すことであった。この

作業は、その初期に採択し合意した以下の調和原則に基づいて行われた。

(a) 分類および表示システムを調和させることにより、労働者、消費者、一般市民および環境に対する保護レベルを低下させるべきでない。

(b) 危険有害性分類は、原則として、天然、人工の別を問わず、物質および混合物に固有な性質に由

来する危険有害性について行う1。

(c) 調和とは、化学品の危険有害性の分類および情報の伝達を目的とした共通の一貫した基盤を確立することを意味し、この中から輸送手段、消費者、労働者および環境の保護の点から該当する要素を選択できるようにする。

(d) 調和の対象範囲は、危険有害性の分類の基準と危険有害性に関する情報の伝達手段(表示および

安全データシート等)の双方を含んでおり、特に ILO の報告書 において認められた 4 つの既存システムを考慮にいれる2。

(e) 世界的に調和のとれた単一のシステムを導入するには、すべての既存システムで変更の必要が生

じるであろう。したがって、新システムへの移行過程には暫定措置を設けるべきである。

(f) 調和の過程においては、雇用者、労働者および消費者に関係する国際機関、ならびにその他関係機関の参加を確保するべきである。

(g) 化学品の危険有害性に関する情報は、対象となる労働者、消費者および一般市民等に理解されや

すいものとなるよう配慮するべきである。

(h) 調和された新たなシステムの下で再分類を行う場合には、既存のシステムの下で化学品の分類のために既に得られた有効なデータを受け入れるべきである。

(i) 調和された新たな分類システムは、化学品の試験のために既存の方法の採用を求めても良い。

(j) 化学品の危険有害性に関する情報の伝達にあたっては、労働者、消費者および一般市民の健康と

安全ならびに環境保護を図ると同様に、所管官庁の定めに従って、企業の営業秘密情報の保護を保証するべきである。

1.1.2 範囲

1.1.2.1 GHS は以下の項目を含む。 (a) 物質および混合物を、健康、環境、および物理化学的危険有害性に応じて分類するために調和さ

れた判定基準、および (b) 表示および安全データシートの要求事項を含む、調和された危険有害性に関する情報の伝達に関

する事項 1.1.2.2 本文書は、危険有害性の種類(例えば急性毒性や引火性)別に分類基準および危険有害性に関す

る情報の伝達に関する事項を記載している。また、各危険有害性についての判定の手順を策定した。判定

基準の適用方法を説明する目的で、化学品の分類例を本文および附属書8に示した。さらに、GHS の策

定段階で、その実施のために追加の指針が必要と考えられる部分について提起された問題もある。 1.1.2.3 GHS の対象とする範囲は、次に示す 1992 年の国連環境開発会議(UNCED)のアジェンダ 21第 19 章プログラム分野Bの第 26、27 項に記されている、当該システムの開発に向けた指示事項に基づく

ものである。

1 物質あるいは混合物の物理的状態(例えば圧力や温度)またはある種の化学反応(例えば、水との接触により可燃性/引火性ガスを発生する)により生じる物質の性質に起因する危険性を考慮する必要がある場合もある。 2 1992 年の「危険有害化学品の分類および表示の既存システム間における調和作業の規模に関する ILO 報告書

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「26 項 現在のところ、化学品の安全な利用を促すための世界的に調和された危険有害性に関する分類および表示システムは、特に作業場および家庭においては依然として利用できない状況にある。化学品の分類は様々な目的で行われるが、表示システムの確立にあたっては特に重要なものである。したがって、現在構築中の調和された危険有害性に関する分類および表示システムを確立する必要がある。

27 項 安全データシートおよび容易に理解できるシンボルも含めた、世界的に調和された危険有害性に関する分類および表示システムを、可能であれば西暦 2000 年までに利用できるようにするべきである。」

1.1.2.4 この指示事項は調和作業の過程で検討され、さらに熟考されて、GHS に含めるべき要素が特定

された。その結果、関係者がその範囲について確実に認識できるように、次のような説明が化学品の適正

管理のための機関間プログラム(IOMC)調整グループ(Coordinating Group)によって採択された。

「危険有害性の分類および表示の調和に関する作業は、すべての化学品およびその混合物に対して調和されたシステムという点に主眼を置く。GHS の構成要素の適用は、製品の種類またはライフサイクルの段階によって異なってもよい。一旦ある化学品を分類すれば、起こりうる影響を考慮して特定の製品または利用状況において必要な情報やその他の対策を決定する事が可能になる。医薬品、食品添加物、化粧品、あるいは食物中の残留駆除剤は、意図的な摂取という理由からラベルの範囲とはしない。しかし、このような種類の化学品に労働者がばく露される可能性のある場所、およびばく露の可能性がある輸送の際には GHS が適用されるであろう。化学品分類システムの調和のための調整グループ(CG/HCCS)は、専門知識を必要とする一部の製品への用に関する個別の問題については、さらなる議論が必要になることを認めている。」3

1.1.2.5 この内容を具体化するにあたり、CG/HCCS は GHS の適用可能性に関係する数多くの様々な問

題について慎重に検討を行った。例えば、特定の部門や製品を除外すべきかどうか、あるいは GHS を化

学品のライフサイクルの全段階に適用するどうか、などが関心事項となった。検討の中で 3 つの要素につ

いて合意されたが、これらの要素は各国または各地域での GHS の適用に際して非常に重要なものである。

これらを以下に示す。

(i) 既存の危険有害性分類および表示システムは、生産、貯蔵、輸送、作業場での利用、消費者の

利用、環境中での存在等あらゆる利用状況下において、潜在的に危険有害性を有する化学品す

べてに対するばく露の可能性を想定している。これらは、人、施設、環境を保護するためのも

のである。化学品について も広く適用されている要求事項は、作業場や輸送段階で適用され

ている既存のシステムの中に見られる。UNCED 合意およびそれに続く文書においては、化学

品という語が、既存システムにおいて物質、製品、混合物、調剤、またはその他の適用範囲を

示すあらゆる語を含む形で広く用いられている点に注意するべきである。

(ii) 取引されるすべての化学品は(消費者製品を含めて)作業場で製造され、労働者の手により出

荷、輸送され、また労働者によってよく利用されるため、特定の化学品や製品が GHS の適用

範囲から完全に除外されることはありえない。例えばある国では、医薬品は、そのライフサイ

クルにおける製造、貯蔵、輸送段階で作業場と輸送に関する要件の適用を受けている。作業場

における要件を、一部薬品の投与や汚染の浄化など潜在的にばく露の可能性がある医療現場に

おける職員に適用してもよい。そうした職員に対して SDS および訓練を利用できるようにす

ることを義務付けているシステムもある。GHS も同じように、医薬品に適用されることが期

待される。(訳者注:医薬品については、国により製造過程、医療現場などでの労働者対策が

大きく異なる) 3 IOMC による世界調和システム(GHS)の予想される適用範囲とその明確化 IFCS/ISG3/98.32B

(a) 要素 1:GHS はすべての危険有害な化学品に適用される。GHS の危険有害性に関する情報の

伝達要素(例えばラベルや安全データシート)の適用方法は、製品の種類やライフサイクルに

おける段階によって異なってもよい。GHS の対象者には、消費者、労働者、輸送担当者、緊急

時対応職員が含まれる。

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(iii) 同じ化学品のライフサイクルにおいても、段階によっては、GHS がまったく適用されない場合もある。例えば、一般に既存システムでは、ヒトまたは動物用の医薬品のような製品には、ヒトが意図的に摂取する、または動物に対して意図的に投与する時点において、危険有害性に関する表示義務はない。通常これらの製品に GHS のための表示の要件が適用されることはないであろう。(ヒトまたは動物用医薬品を医療において使用する者に対する危険性については、一般に包装内の説明書きによる対応がなされており、これは調和とは関係ないということに注意するべきである。)同様に、微量の食品添加物や駆除剤を含む可能性のある食品等の製品は、現在そうした物質の存在または危険有害性を示す表示がなされていない。これらの製品に GHSの適用による表示を義務付けることにはならないであろう。

(i) 危険有害性を特定するための、国際的に認められた科学的原則に従って実施される試験は、健康および環境に対する有害性の特定に利用できる。健康および環境に対する有害性を特定するための GHS の判定基準は、中立的な評価方法である。すなわち、既存システムで既に参照されている国際的な手順および判定基準に従って有効性が確認され、相互に受け入れ可能なデータが得られている限り、それらの方法も受け入れる。調和された健康有害性の判定基準に関しては OECD が主導的な組織となっているが、GHS は OECD のテストガイドラインプログラムに連動するものではない。例えば、医薬品は世界保健機関(WHO)の支援により策定され、合意された判定基準に従って試験されている。こうした試験によって作成されたデータは、GHS の下でも受け入れられるものである。UNSCETDG の物理化学的な危険性の判定基準は、引火性や爆発性といった危険性の種類により決められた方法に連動するものである。

(ii) GHS は現時点で利用可能なデータに基づく。調和された分類基準は既存データに基づいて策定されており、既に認められた試験データがある化学品については、この基準を満足させるための再試験は必要ない。

(i) 現在のシステムの大半は、倫理的に問題なく得られたヒトのデータまたは利用可能なヒトによる経験を認め、利用している。GHS の適用に際してもこうしたデータの利用を妨げるべきでなく、また GHS は、危険有害性または有害な影響の可能性(すなわちリスク)に関係した、すべての該当する適切な情報の存在とこれの利用を認める。

1.1.2.6 適用範囲に関するその他の制約

1.1.2.6.1 GHS は、一般に危険有害性分類に加えて一定のリスク評価を要するような、リスク評価手続またはリスクマネジメントに係る決定(作業者に対するばく露許容限度の設定等)の調和を図ることを意図するものではない。さらに各国の化学品インベントリーに係る要求事項も GHS に関係するものではない 3。 1.1.2.6.2 危険有害性とリスク 1.1.2.6.2.1 各危険有害性の分類および情報の伝達システム(作業場、消費者、輸送)では、まず関連する化学品がもたらす危険有害性の評価を行う。危害を与える能力の程度は、固有の性質、すなわち正常な生物学的活動を妨げる能力および燃焼、爆発、腐食などの能力に依存する。これらの能力は、主として利用可能な科学的研究結果についての文献調査に基づく。ばく露が潜在的危険有害性に関するデータと関連づけられた時、リスクの概念すなわち危害が生じる可能性およびこれらの情報伝達が導入される。リスク評価の基本的アプローチは、以下の公式で定義される。

危険有害性×ばく露=リスク

――――――――――――――― 3 IOMC の記述および世界調和システム(GHS)の予想される適用範囲とその明確化、IFCS/ISG3/98.32B

(c) 要素 3:GHS の適用にあたっては、動物試験データおよび有効な in vitro 試験(訳者注:生体外

試験)に加え、重要な情報を提供する人による経験、疫学データ、臨床試験も考慮するべきである。

(b) 要素 2:GHS の指示事項には、健康に対する悪影響に対応するための統一的な試験方法の確立

または追加試験を促す項目は含まれていない。

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1.1.2.6.2.2 したがって、危険有害性またはばく露を 小にすることができれば、リスクすなわち危害の可能性は 小となる。適切な危険有害性に関する情報の伝達により、使用者は危険有害性の存在およびばく露とその結果生じるリスクを 小にする必要性に対して、注意を喚起される。 1.1.2.6.2.3 すべての情報伝達のためのシステム(作業場、消費者、輸送)には、何らかの形式での危険有害性とリスクの双方が含まれる。これらは情報提供を行うべき場所と方法、そしてばく露可能性の程度によって異なる。例えば、医薬品に対する消費者のばく露の程度は、ある状況に対処するために医師が処方する投与量によって決まる。ばく露は意図的である。したがって医薬品管理機関は、消費者にとって受容可能なレベルのリスクで医薬品の投与量を定めている。医薬品の投与を受ける人に提供される情報は、医薬品やその成分に固有の有害性ではなく、そうした医薬品管理機関が評価したリスクを伝える。 1.1.3 GHS の適用

1.1.3.1 GHS 適用方法の調和

1.1.3.1.1 GHS の目的は、物質および混合物に固有な危険有害性を特定し、そうした危険有害性に関する情報を伝えることである。危険有害性の分類に関する判定基準が調和され、危険有害性情報、シンボルや注意喚起語が標準化・調和されて、危険有害性に関して統合された情報伝達の仕組みとなった。GHS は既存システムの危険有害性に関する情報の項目をまとめることになるであろう。所管官庁は、各関連所管官庁と対象者のニーズに基づいて GHS の様々な要素を適用する方法を決定するであろう。(1.4 章 危険有害性に関する情報の伝達:表示(1.4.10.5.4.2)および附属書 5 危害の可能性に基づく消費者製品の表示を参照。) 1.1.3.1.2 輸送については、GHS の適用は現行の輸送に係る要求事項と同様になると予想される。危険物の容器には急性毒性、物理化学的危険性、環境有害性を示した絵表示が記載されるであろう。他の部門の労働者と同様、輸送部門の労働者も訓練が必要であろう。注意喚起語や危険有害性情報などの GHS の要素は、輸送部門には採用されないと予想される。 1.1.3.1.3 作業場においては、GHS で調和された必須な情報についての表示および安全データシートを含むすべての GHS の要素が採用されるものと期待される。また、有効な情報伝達を確実に行うために従業員の訓練を行うことが期待される。 1.1.3.1.4 消費者部門については、表示が GHS の中心となるであろう。これらのラベルでは、部門に特異な点も考慮した上で GHS に必須な要素を含むことになるであろう。(1.4 章 危険有害性に関する情報の伝達:表示(1.4.10.5.4.2)および附属書 5 危害の可能性に基づく消費者製品の表示を参照。)

1.1.3.1.5 選択可能方式

1.1.3.1.5.1 選択可能方式(訳者注:Building block approach の訳)によって、各国はそれぞれのシステムにどのような部分を当てはめるかを自由に決めることができる。しかし、あるシステムが GHS の一部を含み、かつそのシステムにより GHS を実施する場合には、その適用範囲には一貫性を持たせるべきである。例えば、あるシステムが化学品の発がん性を対象にするならば、調和された分類体系と表示項目に従うべきである。 1.1.3.1.5.2 既存のシステムの要求事項について調査したところ、危険有害性の範囲が、対象者の情報に対するニーズによって異なることが指摘された。特に、輸送部門では急性の健康影響と物理化学的危険性に重点を置いているが、輸送で起こりうるばく露の形態を考慮し、まだ慢性影響については扱っていない。また、GHS が扱う影響のすべてには対応しないという選択を行った国々においては、それぞれの部門でこの他にも相違は存在するであろう。 1.1.3.1.5.3 このように、GHS において調和された要素群は、規制方法を形成する単位の集合体と見なすことができる。誰でも GHS 全体を利用することが可能であるが、GHS を導入する国や組織がある影響のみに対処する目的でこれを利用する場合には、その全体を採り入れる必要はない。物理化学的危険性は作業場や輸送部門において重要であるが、消費者はその製品の使い方によっては物理化学的危険性について知る必要はないであろう。ある部門またはシステムが対象とする危険有害性について、GHS の判定基準および要求事項と矛盾することがない限り、それは GHS の適切な実施とみなされる。輸出者が輸入国のGHS 実施のための要求事項を遵守する必要があるという事実があったとしても、 終的には世界的なGHS の適用により、完全に調和された状況になることが望まれる。

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1.1.3.1.5.4 選択可能方式の解釈ガイダンス

(a) 危険有害性クラスは選択可能:

国際的な協約と同様に、完全に調和することを念頭に、所管官庁はそれぞれの法規のなかで、

どの危険有害性クラスを適用するかを決めることができる

(b) ある危険有害性クラスのなかで、それぞれの区分は選択可能としてもよい:

ある危険有害性クラスに対して、所管官庁が必ずしも全ての区分を適用しないこともあろう。

しかしながら一貫性を維持するためには以下のようないくつかの制限が必要である:

(i) 適用する危険有害性区分のカットオフ値や濃度限界のような分類基準をかえるべきではない。しかし隣同士の細区分(例、発がん性の区分1A と1B)は1つの区分にすることも可能であろう。しかしながら、残りの危険有害性区分の番号を変更せざるを得ないような区分の統合はすべきではない。さらに、細区分を統一した場合、危険有害性情報の伝達を容易にするために、もとの GHS 細区分の名前や番号は保持するべきである(例、発がん性区分1あるいは1A/B)。

(ii) 所管官庁がある危険有害性の区分を適用する場合、その危険有害性クラスにおける他のすべてのより危険性の高い区分も採用しなければならない。したがって所管官庁がある危険有害性を採用するときは、常に少なくとも も危険有害性の高い(区分1)区分を採用することになり、さらに1つ以上の危険有害性区分を採用する場合には、これらの区分は分断のない一続きのものとなろう。

注記1: いくつかの危険有害性クラスは、独立したものと考えてもよい付加的な区分、例えば、「特定標的臓器毒性」(3.8 章)における区分3「一過性の標的臓器への影響」、および「生殖毒性」(3.7章)における区分「授乳に対する、または授乳を介した影響」を含んでいる。

注記2: GHS の 終目標は世界的な調和を成し遂げるということである(1.1.2.3 参照)。したがって分野間での相違が続くとしても、それぞれの分野で世界的に同一の区分の使用が促進されるべきである。

1.1.3.2 GHS の実施と維持

1.1.3.2.1 GHS の実施を目的として、国連経済社会理事会(ECOSOC)は 1999 年 10 月 26 日付の決議1999/65 に基づき、危険物輸送に関する専門家委員会を再編した。これにより、「危険物輸送ならびに化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家委員会(UNCETDG/GHS)」が新設され、従来からの「危険物輸送に関する専門家小委員会(UNSCETDG)」と新たに設けられた「化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家小委員会(UNSCEGHS)」は、その下部組織となった。UNSCEGHS の役割は以下のとおりである。

(a) GHS の管理機関として活動し、調和の手続に関する管理を行い、方向性を与える。

(b) 変更を行う必要性を考慮し、GHS の継続性と実践での有用性を確保し、技術基準の更新に対

する必要性およびその時期を決定し、担当する機関と協力しながら GHS システムを 新のも

のにする。

(c) GHS の理解と利用を促進し、フィードバックを促す。

(d) GHS を世界的に利用、適用できるようにする。

(e) GHS の適用に関する指針および適用における一貫性を確保するための技術基準の解釈と利用

に関する指針を策定する。

(f) 作業計画を準備し、委員会に勧告書を提出する。

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1.1.3.2.2 UNSCEGHS と UNSCETDG の2つの小委員会は、ともに親委員会の下で 2 部門について責

任をもって活動を行う。親委員会は、技術的な問題よりも戦略的な問題について責任を有する。親委員会

は、小委員会の技術面での勧告について検討し、変更または再審査を行うことは目的としていない。した

がって、その主たる機能は以下のとおりである。

(a) 利用可能な資源に照らして、小委員会の作業計画を承認する。

(b)利害が共通する分野および重複する分野において戦略および政策方針を調整する。 (c) 小委員会の勧告に正式な承認を与え、それらを ECOSOC に伝える役割を果たす。 (d)各小委員会の円滑な運営を促進し、調整を行う。

1.1.4 GHS 文書

1.1.4.1 本文書は GHS について解説している。ここには調和のとれた分類基準と危険有害性に関する情

報の伝達の要素が含まれる。加えて、指針には、GHS を実施するためのツールを開発する国や機関を支

援する文書が含まれている。GHS は、自主的な分類ができるように策定されている。GHS 実施のための

規定は、個々の国の国家政策の統一的な発展を可能にする一方で、遵守を求められるいかなる要求事項に

も適応できるよう十分な柔軟性も保持している。さらに、GHS は、利用者にとって使いやすいものであ

ると同時に、行政機関の活動を円滑化し、かつ行政上の負担を軽減することを目指している。 1.1.4.2 本文書は GHS についての基本的な事項を規定しているが、技術的な支援ツールとして利用され、

実施を支援、促進することも期待されている。

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第 1.2 章

定義および略語

GHS の目的のため:

ADR とは、道路での危険物の国際輸送に関する欧州協定(European Agreement concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Road)(訳者注:国連刊行物 ECE/TRANS/140(第 I、II号)[ECE/TRANS/160(第 I、II 号)])をいう。

合金(Alloy)とは、機械的手段で容易に分離できないように結合した 2 つ以上の元素から成る巨視的にみて均質な金属体をいう。合金は、GHS による分類では混合物とみなされる。

誤嚥(aspiration)とは、液体または固体の化学品が口または鼻腔から直接、または嘔吐によって間接的に、気管および下気道へ侵入することをいう。(訳者注:Aspiration Hazard は「吸引性呼吸器有害性」と訳している)

ASTM とは、「米国材料試験協会」(American Society of Testing and Material)をいう。

BCF とは、「生物濃縮係数」(bioconcentration factor)をいう。

BOD/COD とは、「生物化学的酸素要求量/化学的酸素要求量」(biochemical oxygen demand/chemical oxygen demand)をいう。

CA とは、所管官庁(Competent authority)をいう。(訳者注:「所管官庁」参照)

発がん性物質 (Carcinogen) とは、がんを誘発し、またはその発生頻度を増大させる物質または混合物をいう。

CAS とは、「ケミカル・アブストラクツ・サービス」(Chemical Abstract Service)をいう。

CBI とは、「営業秘密情報」(confidential business information)をいう。

化学的特定名(Chemical identity)とは、化学品を一義的に識別する名称をいう。これは、国際純正応用化学連合(IUPAC)またはケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)の命名法に従う名称、あるいは専門名を用いることができる。

化学的に不安定なガス(Chemically unstable gas)とは、空気や酸素が無い状態でも爆発的に反応しうる可燃性/引火性ガスをいう。

所管官庁 (Competent authority)とは、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)に関連して、所管機関として指定または認定された国家機関、またはその他の機関をいう。

圧縮ガス(Compressed gas)とは、加圧充填によって-50℃で完全にガス状であるガスをいう。これには、臨界温度が-50℃以下のすべてのガスも含まれる。

金属腐食性(Corrosive to metal)とは、化学反応によって金属を実質的に損傷、または破壊する物質または混合物をいう。

臨界温度(Critical temperature)とは、その温度を超えると圧縮の程度に関係なく、純粋なガスを液化できない温度をいう。

皮膚腐食性(Dermal Corrosion):皮膚腐食性(Skin corrosion) を参照。

皮膚刺激性(Dermal irritation):皮膚刺激性(Skin irritation)を参照。

鈍感化爆発物(Desensitized explosives)とは、大量爆発や非常に急速な燃焼をしないように、爆発性を抑制するために鈍感化され、したがって危険性クラス「爆発物」から除外されている、固体または液体の

爆発性物質あるいは混合物をいう(2.1 章を参照;パラグラフ 2.1.2.2 の注記 2 も参照)。

溶解ガス(Dissolved gas)とは、加圧充填によって液相溶媒中に溶解しているガスをいう。

粉塵 (Dust)とは、ガス(通常空気)の中に浮遊する物質または混合物の固体の粒子をいう。

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EC50とは、ある反応を 大時の 50%に減少させる物質の濃度をいう。

EC 番号または(ECN)とは、特に、EINECS に登録された危険有害物質を特定するために、欧州委員会

により用いられる参照番号をいう。

ECOSOC とは、国連経済社会理事会(Economic and Social Council of the United Nations)をいう。

ECx とは、x%の反応を示す濃度をいう。

EINECS とは、「欧州既存商業化学物質インベントリー」(European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances) をいう。

ErC50 とは、生長阻害の観点から見た EC50をいう。

EU とは、「欧州連合」(European Union) をいう。

爆発性物品(Explosive article)とは、単一または複数の爆発性物質を含む物品をいう。

爆発性物質(Explosive substance)とは、それ自体が化学反応によって周囲に被害を与えるような温度、

圧力、速度を伴うガスを発生しうる固体または液体の物質(もしくは混合物)をいう。火工物質は、ガス

を発生しない場合であってもこれに含まれる。

眼刺激性(Eye irritation)とは、眼の表面に試験物質をばく露した後に生じた眼の変化で、ばく露から

21 日以内に完全に回復するものをいう。

可燃性/引火性ガス(Flammable gas)とは、20℃、標準気圧 101.3kPa において空気との混合気が燃焼範

囲(爆発範囲)を有するガスをいう。

引火性液体(Flammable liquid)とは、引火点が 93℃以下の液体をいう。

可燃性固体(Flammable solid)とは、容易に燃焼するかまたは摩擦によって発火もしくは発火を誘発す

る固体をいう。

引火点(Flash point)とは、一定の試験条件の下で任意の液体の蒸気が発火源により発火する 低温度を

いう(標準気圧 101.3kPa での温度に換算)。

FAO とは、国連食糧農業機関 (Food and Agriculture Organization of the United Nations) をいう。

ガス(Gas)とは、(i)50℃で 300kPa(絶対圧)を超える蒸気圧を有する物質、または(ii)101.3kPa の

標準気圧、20℃において完全にガス状である物質をいう。

GESAMP とは、IMO/FAO/UNESCO/WMO/WHO/IAEA/UN/UNEP の「海洋環境保護の科学的事項に関

する専門家合同グループ」(Joint Group of Experts on the Scientific Aspects of Marine Environmental Protection of IMO/FAO/UNESCO/WMO/WHO/IAEA/UN/UNEP) をいう。

GHS とは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals) をいう。

危険有害性区分(Hazard category)とは、各危険有害性クラス内の判定基準の区分をいう。例えば、経

口急性毒性には 5 つの有害性区分があり、引火性液体には 4 つの危険性区分がある。これらの区分は危険

有害性クラス内で危険有害性の強度により相対的に区分されるもので、より一般的な危険有害性区分の比

較とみなすべきでない。

危険有害性クラス(Hazard class)とは、可燃性固体、発がん性物質、経口急性毒性のような、物理化学

的危険性、健康または環境有害性の種類をいう。

危険有害性情報(Hazard statement)とは、危険有害性クラスおよび危険有害性区分に割り当てられた文

言であって、危険有害な製品の危険有害性の性質を、該当する程度も含めて記述する文言をいう。

IAEA とは、「国際原子力機関」(International Atomic Energy Agency) をいう。

IARC とは、「国際がん研究機関」(International Agency for the Research on Cancer) をいう。

ILO とは、「国際労働機関」(International Labour Organization) をいう。

IMO とは、「国際海事機関」(International Maritime Organization) をいう。

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初留点(Initial boiling point)とは、ある液体の蒸気圧が標準気圧(101.3kPa)に等しくなる、すなわち

初にガスの泡が発生する時点での液体の温度をいう。

IOMC とは、「化学品の適正な管理に関する国際機関間プログラム」(Inter-organization Programme on the Sound Management of Chemicals)をいう。

IPCS とは、「国際化学品安全性計画」(International Programme on Chemical Safety)をいう。

ISO とは、「国際標準化機構」(International Organization for Standardization)をいう。

IUPAC とは、「国際純正応用化学連合」(International Union of Pure and Applied Chemistry) をいう。

ラベル(Label)とは、危険有害な製品に関する書面、印刷またはグラフィックによる情報要素のまとま

りであって、目的とする部門に対して関連するものが選択されており、危険有害性のある物質の容器に直

接、あるいはその外部梱包に貼付、印刷または添付されるものをいう。

ラベル要素(Label element)とは、ラベル中で使用するために国際的に調和されている情報、たとえば、

絵表示や注意喚起語をいう。

LC50(50% 致死濃度)とは、試験動物の 50%を死亡させる大気中または水中における試験物質濃度をい

う。

LD50とは、一度に投与した場合、試験動物の 50%を死亡させる化学品の量をいう。

L(E)C50とは、LC50または EC50をいう。

液化ガス(Liquefied gas) とは、加圧充填された場合に温度-50℃以上において一部が液状であるような

ガスをいう。以下の両者については区別をする。

(i) 高圧液化ガス:-50℃以上+65℃以下の臨界温度を有するガス

(ii)低圧液化ガス:+65℃を超える臨界温度を有するガス

液体 (Liquid)とは、50℃において 300kPa(3bar)以下の蒸気圧を有し、20℃、標準気圧 101.3kPa では完

全にガス状ではなく、かつ、標準気圧 101.3kPa において融点または融解が始まる温度が 20℃以下の物質

をいう。固有の融点が特定できない粘性の大きい物質または混合物は、ASTM の D4359-90 試験を行う

か、または危険物の国際道路輸送に関する欧州協定(ADR)の附属文書 A の 2.3.4 節に定められている流

動性特定のための(針入度計)試験を行わなければならない。

MARPOL とは、「船舶による汚染の防止のための国際条約」(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships)をいう。

ミスト (Mist)とは、ガス(通常空気)の中に浮遊する物質または混合物の液滴をいう。

混合物 (Mixture) とは、複数の物質で構成される反応を起こさない混合物または溶液をいう。

モントリオール議定書(Montreal Protocol)とは、議定書の締約国によって調整または修正された、オゾ

ン層破壊物質に関するモントリオール議定書をいう。

変異原性物質(Mutagen)とは、細胞の集団または生物体に突然変異を発生する頻度を増大させる物質を

いう。

突然変異(Mutation)とは、細胞内の遺伝物質の量または構造における恒久的な変化をいう。

NGO とは、「非政府組織」(non-governmental organization) をいう。

NOEC「無影響濃度」(no observed effect concentration) とは、統計的に有意な悪影響を示す 低の試験

濃度直下の試験濃度をいう。NOEC ではコントロール群と比べて有意な悪影響は見られない。

OECD とは、「経済協力開発機構」(Organization for Economic Cooperation and Development) をいう。

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有機過酸化物 (Organic peroxide) とは、二価の-O-O-構造をもち、1個または2個の水素原子が有

機ラジカルによって置換された過酸化水素の誘導体とみなすことができる液体または固体の有機物質を

いう。また、有機過酸化物組成物(混合物)も含む。

支燃性/酸化性ガス (Oxidizing gas) とは、一般に酸素を供給することによって、空気以上に他の物質の

燃焼を引き起こし、またはその一因となるガスをいう。

注記:「空気以上に他の物質の燃焼を引き起こし、またはその一因となるガス」とは、ISO 10156: 2010により定められる方法によって決定された 23.5%以上の酸化能力を持つ純粋ガスあるいは混合ガスをいう。

酸化性液体 (Oxidizing liquid) とは、それ自体は必ずしも燃焼性はないが、一般に酸素を供給することに

よって他の物質の燃焼を引き起こし、またはその一因となる液体をいう。

酸化性固体 (Oxidizing solid) とは、それ自体は必ずしも燃焼性はないが、一般に酸素を供給することに

よって他の物質の燃焼を引き起こし、またはその一因となる固体をいう。

オゾン層破壊係数 (ODP)とは、ハロカーボンによって見込まれる成層圏オゾンの破壊の程度を、CFC-11

に対して質量ベースで相対的に表した積算量であり、ハロカーボンの種類ごとに異なるものである。ODP

の正式な定義は、等量の CFC-11 排出量を基準にした、特定の化合物の排出に伴う総オゾンの擾乱量の積

算値の比の値である。

QSAR とは、「定量的構造活性相関」(quantitative structure-activity relationship) を意味する。

絵表示 (Pictogram) とは、特定の情報を伝達することを意図したシンボルと境界線、背景のパターンま

たは色のような図的要素から構成されるものをいう。

注意書き(Precautionary statement)とは、危険有害性のある製品へのばく露あるいは危険有害性のあ

る製品の不適切な貯蔵または取扱いから生じる有害影響を 小にするため、または予防するために取るべ

き推奨措置を記述した文言(または絵表示)をいう。

製品特定名(Product identifier)とは、ラベルまたは SDS において危険有害性のある製品に使用される

名称または番号をいう。これは、製品使用者が特定の使用状況、例えば輸送、消費者、あるいは作業場の

中で物質または混合物を確認することができる一義的な手段となる。

自然発火性ガス (Pyrophoric gas) とは、54℃以下の空気中で自然発火しやすいような可燃性/引火性ガス

をいう。

自然発火性液体 (Pyrophoric liquid) とは、少量であっても、空気との接触後 5 分以内に発火する液体を

いう。

自然発火性固体 (Pyrophoric solid)とは、少量であっても、空気との接触後 5 分以内に発火する固体をいう。

火工品(Pyrotechnic article)とは、単一または複数の火工物質を内蔵する物品をいう。

火工物質(Pyrotechnic substance)とは、非爆轟性で、自己持続性の発熱反応により生じる熱、光、音、

気体、煙またはそれらの組み合わせによって一定の効果を生み出せるようにつくられた物質または物質の

混合物をいう。

易燃性固体(Readily combustible solid)とは、燃えているマッチなどのような点火源との短時間の接触

によって容易に発火したり、急速に火勢が拡大するような危険性のある粉末、顆粒、またはペースト状の

物質をいう。

危険物輸送に関する勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル (Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Manual of Test and Criteria)とは、この表題の国連刊行物として出版された 新版お

よびそれに対するすべての改訂出版物をいう。

危険物輸送に関する勧告・モデル規則 (Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Model Regulations)とは、この表題で出版された国連刊行物の 新版およびそれに対するすべての改訂出版物をいう。

深冷液化ガス(Refrigerated liquefied gas)とは、低温によって充填時に一部液状となるガスをいう。

呼吸器感作性物質(Respiratory sensitizer)とは、物質の吸入により気道に過敏反応を誘発する物質をいう。

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RID とは、鉄道による危険物の国際輸送に関する規則(The Regulations concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Rail) をいう。[COTIF(鉄道による国際輸送に関する条約)の付録 B 附

属書1(鉄道による貨物の国際輸送に関する統一規則)(CIM)]

SAR とは、「構造活性相関」(Structure Activity Relationship) をいう。

SDS とは、「安全データシート」(Safety Data Sheet) をいう。

自己加速分解温度(SADT ;Self-Accelerating Decomposition Temperature)とは、密封状態において

物質に自己加速分解が起こる 低温度をいう。

自己発熱性物質(Self-heating substance)とは、自然発火性物質以外で、空気との反応によってエネル

ギーの供給なしに自己発熱する固体または液体をいう。この物質は、大量(キログラム単位)に存在し、

かつ長時間(数時間から数日間)経過した後にのみ発火する点で自然発火物質とは異なる。

自己反応性物質(Self-reactive substance)とは、酸素(空気)なしでも非常に強力な発熱性分解をする

熱的に不安定な液体または固体をいう。この定義には、GHS において爆発性物質、有機過酸化物または

酸化剤として分類される物質または混合物は含まれない。

眼に対する重篤な損傷性 (Serious eye damage) とは、眼の前表面に対する試験物質の投与にともなう眼

の組織損傷の発生、または視力の重篤な低下で、投与から 21 日以内に完全に回復しないものをいう。

注意喚起語 (Signal Word) とは、ラベル上で危険有害性の重大さの相対レベルを示し、利用者に潜在的

な危険有害性を警告するために用いられる言葉をいう。GHS では、「危険 (Danger)」や「警告 (Warning)」を注意喚起語として用いている。

皮膚腐食性 (Skin corrosion) とは、試験物質の 4 時間以内の適用で、皮膚に対して不可逆的な損傷が発

生することをいう。

皮膚刺激性 (Skin irritation)とは、試験物質の 4 時間以内の適用で、皮膚に対する可逆的な損傷が発生す

ることをいう。

皮膚感作性物質(Skin sensitizer)とは、皮膚への接触によりアレルギー反応を誘発する物質をいう。

固体 (Solid) とは、液体または気体の定義に当てはまらない物質または混合物をいう。

物質 (Substance) とは、自然状態にあるか、または任意の製造過程において得られる化学元素およびそ

の化合物をいう。製品の安定性を保つ上で必要な添加物や用いられる工程に由来する不純物も含むが、当

該物質の安定性に影響せず、またその組成を変化させることなく分離することが可能な溶媒は除く。

水反応可燃性物質(Substance which, in contact with water, emits flammable gases)とは、水との相互

作用によって自然発火性となり、または危険な量の可燃性/引火性ガスを放出する固体、液体または混合物

をいう。

補助的ラベル要素(Supplemental label element)とは、危険有害性のある製品の容器に付される情報で

あって、GHS において要求または指定されていない追加情報をいう。こうした情報は、他の所管官庁に

よる要求事項であることもあれば、製造業者/流通業者の自由裁量で提供される追加情報のこともある。

シンボル (Symbol) とは、情報を簡潔に伝達するように意図された画像要素をいう。

専門名 (Technical name) とは、IUPAC または CAS 名以外の名称であって、物質または混合物を特定す

るために商業、法規制、規格等で一般に使用され科学者・専門家に認められた名称をいう。専門名の例に

は、複雑な混合物(例:石油留分や天然産物)、農薬(例:ISO や ANSI システム)、染料(カラーインデ

ックスシステム)、鉱物などに使用されるものがある。

UNCED とは、「国連環境開発会議」(United Nations Conference on Environment and Development) をいう。

UNCETDG/GHS とは、「国連危険物輸送ならびに化学品の分類および表示に関する世界調和システムに

関する専門家委員会」(United Nations Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods and on the Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals) をいう。

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UN とは、「国際連合」(United Nations) をいう。

UNEP とは、「国連環境計画」(United Nations Environment Programme) をいう。

UNESCO とは、「国連教育科学文化機構」(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization) をいう。

UNITAR とは、「国連訓練調査研究所」(United Nations Institute for Training and Research) をいう。

UNSCEGHS とは、「国連化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家小委員会」

(United Nations Sub-Committee of Experts on the Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals) をいう。

UNSCETDG とは、「国連危険物輸送に関する専門家小委員会」(United Nations Sub-Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods) をいう。

蒸気(Vapour)とは、液体または固体の状態から放出されたガス状の物質または混合物をいう。

WHO とは、「世界保健機関」(World Health Organization) をいう。

WMO とは、「世界気象機関」(World Meteorological Organization) をいう。

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第 1.3 章

危険有害性のある物質および混合物の分類

1.3.1 序文

GHS の策定は、分類および表示の調和に関する OECD タスクフォース(HCL に関するタスクフォース)

による健康と環境有害性に対する分類基準および UNCETDG/ILO の作業グループによる物理化学的危険

性に関する分類基準の作業から開始された。 1.3.1.1 健康と環境に対する危険有害性クラス:分類および表示の調和に関する OECD タスクフォース

(HCL に関する OECD タスクフォース)

1.3.1.1.1 OECD の HCL タスクフォースの作業は、相互に関連する以下の 3 種類であった。 (a)主要な分類システムの比較検討、類似または同一の要素の特定、ならびに異なる要素に関する妥

協案についての合意形成。 (b)懸念される危険有害性クラス(例えば急性毒性や発がん性)を定義する判定基準についての科学

的根拠の調査、試験方法、データの解釈、ならびに有害性の程度に関する専門家の合意、その上で

の基準に関する合意形成。一部の危険有害性クラスについては、既存の判定基準がなく、同タスク

フォースが判定基準を策定した。 (c)枝分かれ図による手法を用いたもの(例えば刺激性)または分類において依拠する判定基準があっ

たもの(急性水生環境毒性)については、その手順または判定基準の用い方に関する合意の形成。 1.3.1.1.2 HCL に関する OECD タスクフォースは、段階的にその調和分類基準の策定を行った。危険有

害性クラスごとに、以下の手順がとられた。 (a)第1段階:システムとその判定基準の科学的根拠、その理論的解釈および使用方法の説明等、既

存の分類システムの徹底的な分析。第1段階の文書は、以下の危険有害性クラスについて HCL に

関する OECD のタスクフォースの検討を経て作成され、必要に応じて修正された。有害性クラス:

眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性、皮膚腐食性/刺激性、感作性物質、生殖細胞変異原性、生殖毒

性、特定標的臓器毒性。 (b)第2段階:各危険有害性クラスと区分に対して、調和分類システムおよび判定基準の案が策定さ

れた。第2段階の文書は、HCL に関する OECD タスクフォースの検討を経て作成され、必要に応

じて修正された。 (c)第3段階:

(i) HCL に関する OECD タスクフォースは、修正された第2段階の案について合意した。または (ii) 合意に至らなかった場合、HCL に関する OECD タスクフォースが合意していない項目を確認

し、更なる検討と決定を行うため、第2段階への提案課題とした。 (d)第4段階: 終提案への承認を求めるため、OECD の化学品委員会と化学品、駆除剤、ならびに

バイオテクノロジーに関する作業部会による合同会議に同案を提出し、その後、GHS で使用する

ために IOMC CG‐HCCS に提出した。

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1.3.1.2 UNCETDG/ILO の物理化学的危険性に関する作業グループ

UNCETDG/ILO の物理化学的危険性に関する作業グループは、HCL に関する OECD タスクフォース

と同様の手順を用いた。作業は主要分類システムの比較検討、類似または同一要素の特定および異なる要

素に関する妥協案をめぐる合意の形成についてなされた。物理化学的危険性に関しては、既に輸送部門に

おいて定義、試験方法、分類基準が実質的に調和されていたので、これを作業の基礎として用いることが

できた。作業は科学的根拠に関する調査を通じ、試験方法、データの解釈、判定基準に関する合意につい

て進められた。大半の危険有害性クラスに関しては、輸送部門において既に体系が整えられ、用いられて

いた。これを基礎として、作業場、環境、消費者の安全に関する問題について適正に対処することに重点

を置いた。

1.3.2 GHS について考慮すべき事柄

1.3.2.1 システムの範囲

1.3.2.1.1 GHS は、純粋な物質とその希釈溶液および混合物に適用する。米国労働安全衛生局

(Occupational Safety and Health Administration)の危険有害性周知基準(29CFR1910.1200)および

同様の定義項目に定められている「物品(Article)」は、本システムの範囲から除外される。

1.3.2.1.2 GHS の1つの目標は、可能な限り「自主的な分類」ができるよう、本システムを簡潔にし、か

つ透明性を持たせ、危険有害性クラスや区分間に明確な区別を設けるようにすることである。多くの危険

有害性クラスについて判定基準は半定量的または定性的であり、分類目的でデータの解釈を行うためには

専門家の判断が必要である。さらに、一部の危険有害性クラス(例えば眼刺激性、爆発性物質、自己反応

性物質)については、枝分かれ図による手法を取り入れ、簡単に使えるようにした。 1.3.2.2 「分類」の概念

1.3.2.2.1 GHS では、物質または混合物の固有な危険有害性のみに着目していることを示すために「危険

有害性の分類」という語を用いている。

1.3.2.2.2 危険有害性の分類は 3 つの手順から成る。 (a)物質または混合物についての関連するデータの特定 (b)物質または混合物のもつ危険有害性を確認する目的での上記データの検討 (c)合意された危険有害性の分類基準とデータとの比較検討に基づく、物質または混合物の該当する危

険有害性クラスおよび区分についての決定 1.3.2.2.3 効果、範囲および適用(第 1.1 章 1.1.2.4)にある、GHS に関する指示事項の IOMC による説

明文書で確認されているように、いったんある化学品を分類すれば、起こりうる影響を考慮して特定の製

品または利用状況において必要な情報やその他の対策を決定することが可能になる。 1.3.2.3 分類基準

1.3.2.3.1 物質および混合物の分類基準は本文書の第 2、第 3 および第 4 部に示すが、そこでは特定の危

険有害性クラスまたは密接に関連しあった危険有害性クラスについて記載してある。ほとんどの危険有害

性クラスに関して、混合物の分類について推奨する手順は次のとおりである: (a) 混合物そのものの試験データが利用できる場合、混合物の分類は常にそのデータに基づいて

行う。 (b) 混合物そのものの試験データが利用できない場合には、混合物の分類が可能かどうかについ

て、それぞれの章で説明されているつなぎの原則(bridging principle)を考慮するべきである。

さらに、健康および環境に対する危険有害性クラスに関しては、

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(c) もし(ⅰ) 混合物そのものの試験データが利用できず、(ⅱ) 利用可能な情報が不十分でつなぎ

の原則が適用できなければ、既知の情報に基づいて危険有害性を推定するためにそれぞれの

章に記述されている承認された方法を適用して、混合物を分類する。

1.3.2.3.2 多くの場合、生殖細胞変異原性、発がん性そして生殖毒性の有害性クラスに関して混合物全体

としての信頼すべきデータは期待できない。そこで混合物は、これらの有害性クラスに関してそれぞれの

章にあるカットオフ値/濃度限界を用いて、個々の成分に関して入手できる情報に基づいて分類される。混

合物全体としてのデータが各章で記述されているように決定的である場合には、混合物の分類はそのデー

タに基づいてケースバイケースで修正されてもよい。

1.3.2.4 利用可能なデータ、試験方法および試験データの質

1.3.2.4.1 GHS 自体では、物質や混合物の試験は要求されていない。つまりどの危険有害性クラスについ

ても GHS のために試験データを取る必要はない。既存の規制システムの中にもデータの取得を要求する

ものがある(例えば駆除剤)ことはよく知られているが、この要求は GHS とは直接関係はない。混合物

の分類のための判定基準では、混合物そのもの/または類似の混合物/または混合物の成分のデータを利用

することが可能である。 1.3.2.4.2 物質や混合物の分類は、判定基準および判定基準の基礎となる試験の信頼性の両方に依存して

いる。分類が特定の試験の合否によって決定される例(例えば、易生分解性試験)もあり、また、量-反応

曲線および試験中の所見から解釈を行う例もある。いずれの場合も、試験条件を標準化して、所定の物質

について再現性のある結果が得られ、標準化された試験から、懸念される危険有害性クラスを決定するた

めの「有効な」データが得られるようにする必要がある。この意味では、有効性の検証は、特定の目的を

達成するための信頼性および妥当性を確立する過程である。 1.3.2.4.3 危険有害性を特定するための、国際的に認められた科学的原則に従って実施される試験は、健康お

よび環境に対する有害性の特定に利用できる。健康および環境に対する有害性を特定するための GHS 判定基

準は、中立的な評価方法であり、既存システムで既に参照されている国際的手順および判定基準に従って有効

性が確認され、相互に受け入れ可能なデータが得られている限り、そのような方法も受け入れる。物理化学的

危険性を決定する試験方法は、一般的により明確であり、GHS においても具体的に記述されている。 1.3.2.4.4 既に分類されている化学品 IOMC-CG-HCCS により策定された一般原則の1つによれば、化学品を調和されたシステムに従って分類

する際には、試験の重複および試験動物の不必要な使用を避けるために、化学品分類のための既存システム

により得られている試験データを受け入れるべきであるとしている。この原則には、GHS における判定基

準が既存システムの判定基準と異なっているような状況では重要な意味がある。ずっと以前の試験で得た既

存データの質を決定することが困難な状況もある。そのような場合には専門家の判断が必要となる。 1.3.2.4.5 特殊な問題のある物質/混合物 1.3.2.4.5.1 生物系および環境系への物質または混合物の影響は、とりわけ物質または混合物および/または

混合物中の成分の物理化学的性質と、成分が生物学的にどのように利用されるかに左右される。一部の物質、

例えばある種のポリマーや金属では、この点に関して特殊な問題が生じる。国際的に認められている試験方

法による決定的な実験データによって、物質または混合物が生物学的に利用されないことが示されるならば、

それらを分類する必要はない。同様に、混合物の成分に関するこのような生物学的利用性についてのデータ

は、これらの混合物を分類するときに、該当する調和された分類基準と共に使用するべきである。 1.3.2.4.5.2 ある種の物理的危険性(例えば爆発性や酸化性)は、鈍感化爆発物の例に見られるように、

混合物や物品に含まれたり包装されたりあるいは他の要因によって、希釈され変化するであろう。特定の

分野(例えば貯蔵)に対する分類手順では経験や専門性を考慮しなければならない。 1.3.2.4.6 動物愛護 実験動物の愛護は懸案事項である。この倫理的問題には、ストレスや痛みの緩和だけでなく、国によっ

ては試験動物の使用および消費も含まれる。可能で適切であるならば、生きた動物を必要としない試験お

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よび実験が、生きて感覚を持つ実験動物を用いる試験よりも望ましい。そのために、ある有害性について

は、動物を用いない観察/測定が分類システムの中に含まれている。さらに、動物数を少なくした、または

痛みを軽減させた動物試験代替法が国際的に受け入れられており、それらが優先されるべきである。 1.3.2.4.7 ヒトより得られた証拠 分類を目的として化学品のヒトの健康に対する有害性評価を行う際は、ヒトに対する化学品の作用に関

する信頼できる疫学的データおよび経験(例:職業に関するデータ、事故のデータベースからのデータ)

を考慮するべきである。有害性の特定のためだけにヒトで試験することは、一般に認められない。 1.3.2.4.8 専門家の判断 混合物の分類にあたっては、ヒトの健康と環境を保護するためにできるだけ多くの混合物について既存

の情報を確実に使用できるように、多くの領域で専門家の判断の活用も必要であろう。また、特に証拠の

重み付けが必要な場合には、物質の有害性分類でのデータの解釈に専門家の判断を要するであろう。

1.3.2.4.9 証拠の重み付け 1.3.2.4.9.1 危険有害性クラスによっては、データが判定基準を満たした場合に直ちに分類されるものも

ある。また、証拠の総合的な重み付けにより物質または混合物が分類される場合もある。これは、有効な

in vitro 試験の結果や、関連する動物データ、疫学的調査や臨床研究、記録の確かな症例報告および所見

等のヒトでの経験など、毒性の決定に関するあらゆる利用可能な情報をすべて考慮するということである。 1.3.2.4.9.2 データの質および一貫性は重要である。作用部位および作用機序や作用形態についての研究

結果と同様に、調査物質に関連した物質または混合物の評価も加えるべきである。陽性結果と陰性結果の

両方を組み合わせて証拠の重み付けを実施する。 1.3.2.4.9.3 ヒトのデータでも、動物のデータでも、各章に示されている判定基準と一致する陽性の作用

は、分類を裏付けるものであろう。2つの情報源から証拠が得られ、その知見が矛盾している場合には、

分類の問題を解決するために、それらの情報源から得られる証拠の質および信頼性を評価しなければなら

ない。一般的に、質および信頼性に優れたヒトのデータは、他のデータより優先される。ただし、適切に

計画され実施された疫学的調査であっても、対象数が少ないために、比較的まれなしかし重要な影響を検

出できないとか、あるいは潜在的交絡要因を推定できないということもありうる。適切に実施された動物

試験から陽性の結果が得られたならば、ヒトで陽性の経験が得られていなくとも、その結果を否定しなく

ともよいが、むしろ予測される影響の発生率および潜在的交絡要因の影響に関する、ヒトおよび動物にお

ける両方のデータの頑健性および質についての評価が求められる。 1.3.2.4.9.4 ばく露経路、作用機序に関する情報および代謝に関する研究は、ある影響がヒトに現れるか

どうかを決定する際に有用である。そのような情報からヒトへの適用について疑問が生じたときは、低い

方の分類が適当な場合もある。作用形態または作用機序がヒトに該当しないことが明らかであるならば、

その物質または混合物はその影響について有害であると分類をするべきでない。 1.3.2.4.9.5 陽性結果と陰性結果の両方を組み合わせて証拠の重み付けを実施する。しかし、優れた科学

的原則に従って行われており、統計学的および生物学的に有意な結果が得られているならば、1つの陽性

結果を示す研究からでも危険有害性の分類は可能であろう。

1.3.3 混合物の分類のための特別に考慮すべき事項

1.3.3.1 定義

1.3.3.1.1 混合物を分類する規定の理解を確実にするためには、用語の定義が必要である。これらの定義

は、分類と表示に向けて製品の危険有害性を評価または決定する目的のためのものであり、インベントリ

ー報告などの他の状況で適用するためのものではない。定義の意図は、次のことを確実にすることである。

(a) GHS の対象範囲内のすべての製品がそれらの危険有害性を決定するために評価され、そして該当する GHS 判定基準に従って分類されること。および

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(b) 評価は、実際の製品、すなわち安定した製品に基づくこと。もし製造中に反応が起こり、新

しい生成物が生ずる場合には、GHS を適用するため、その生成物に対して新たに危険有害性

についての評価および分類を行わなければならない。

1.3.3.1.2 物質、混合物、合金について、次の定義(working definitions)が採用された(GHS で用いられ

る他の定義および略語については第 1.2 章参照)。

物質:自然状態にあるか、または任意の製造過程において得られる化学元素およびその化合物を

いう。製品の安定性を保つ上で必要な添加物や用いられる工程に由来する不純物を含むが、当該

物質の安定性に影響せず、またその組成を変化させることなく分離することが可能な溶媒は除く。

混合物:複数の物質で構成される反応を起こさない混合物または溶液をいう。

合金:機械的手段で容易に分離できないように結合した 2 つ以上の元素から成る巨視的にみて均

質な金属体をいう。合金は、GHS による分類では混合物とみなされる。 1.3.3.1.3 GHS で物質および混合物の分類を一貫して行うためは、これらの定義を用いるべきである。ま

た、不純物、添加物、または物質もしくは混合物の成分が特定されてその各々が分類され、ある危険有害

性クラスについてカットオフ値/濃度限界を超える場合は、これらも分類の際に考慮に入れるべきである。

1.3.3.1.4 実際には、物質によっては、大気中の気体、例えば、酸素、二酸化炭素、水蒸気などとゆっく

り反応して、異なる物質を形成するものがあるかもしれず、また、混合物の他の成分と極めてゆっくり反

応して、異なる物質を形成するものがあるかもしれないし、あるいは自己重合して、オリゴマーやポリマ

ーを形成するものがあるかもしれない。しかし、このような反応によって生成する物質の濃度は、一般的

に十分低いと考えられるので、混合物の危険有害性分類に影響しない。

1.3.3.2 カットオフ値/濃度限界の使用

1.3.3.2.1 未試験の混合物を成分の危険有害性に基づいて分類する場合、GHS1 では、ある危険有害性ク

ラスについて、混合物の分類された成分に対して統一的なカットオフ値または濃度限界が使用される。採

用されたカットオフ値/濃度限界でほとんどの混合物について危険有害性が適切に特定されるが、カットオ

フ値/濃度限界以下の濃度でもその成分が特定可能な危険有害性を呈する場合がある。また、カットオフ値

/濃度限界が、その成分が危険有害性を示さないと予想される濃度よりも、かなり低い場合もある。

1.3.3.2.2 通常、GHS で採用されたカットオフ値/濃度限界は、どの管轄分野、部門でも一様に適用するべき

である。しかし、分類する者が、ある成分が統一的なカットオフ値/濃度限界以下でも危険有害性を有するこ

とが明白であるという情報を持つ場合には、その成分を含む混合物はその情報に従って分類するべきである。

1.3.3.2.3 ある成分が統一的な GHS のカットオフ値/濃度限界以上の濃度で存在していても、危険有害性が顕

在化しないという明確なデータが示される場合がある。この場合、混合物は、そのデータに従って分類できる。

データにより、ある成分が単独で存在する場合よりも、混合物中でより危険有害性が増すという可能性が除外

されるべきである。さらに、混合物は、その決定に影響を与える他の成分を含んでいるべきではない。

1.3.3.2.4 統一的な GHS のカットオフ値/濃度限界以外の値を利用する理由を示した書類は保管し、後で

要求があった場合に審理に利用できるようにするべきである。

1.3.3.3 相乗または拮抗作用

GHS の要求事項に従って評価を行う場合、評価者は、混合物成分間の潜在的相乗作用についてのあら

ゆる情報を考慮に入れなければならない。拮抗作用に基づいて混合物の分類をより低位の区分に下げるこ

とは、その決定が十分なデータによって裏付けされる場合に限る。

1 GHS では、「カットオフ値」および「濃度限界」は同意義であり、どちらを使用してもよい。所管官庁は分類を行う境界を定義するために、どちらかの用語を使用するかどうか選択してもよい。

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第 1.4 章

危険有害性に関する情報の伝達:表示

1.4.1 目的、範囲および適用

1.4.1.1 世界調和システム(GHS)の作業における目的のひとつは、GHS のために策定された分類の判定基準に基づいた表示、安全データシート、容易に理解できるシンボルを含む、調和された危険有害性に関する情報の伝達のシステムを確立することにあった。この作業は、ILO の支援の下、危険有害性に関する情報の伝達に関する ILO 作業グループによって、危険有害性物質および混合物の分類(第 1.3 章1.3.1.1.2)における分類の調和で示したものと同じ 3 段階の手続で行われた。

1.4.1.2 危険有害性に関する情報の伝達に関する調和システムは、GHS での各危険有害性クラスおよび

区分に関する情報を伝達するためにそれぞれに該当する表示要素を含む。GHS の各危険有害性クラスお

よび区分に割り当てられたシンボル、注意喚起語、危険有害性情報以外のものを使用することは、調和の

取り組みに反するものである。

1.4.1.3 ILO 作業グループは、危険有害性に関する情報の伝達についても IOMC CG/HCCS の委任事項 1

に記載されている一般原則の適用を考慮し、また、特定の危険有害性クラスおよび区分を特定の対象者に

当てはめるか否かに関して、システムの要求事項および原則にある程度柔軟性が必要となる状況があるこ

とを認めた。

1.4.1.4 例えば、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則は、急性毒性でも も有害性の程度の高い区分のみを対象としている。このシステムでは、有害性の程度が比較的低い範囲内(例えば、経口摂取量が300mg/kg より多い範囲内)にある物質または混合物については表示を行わない。しかし、同システムの適用範囲が変更され、こうした比較的低い危険有害性区分に収まる物質および混合物も組み入れることになれば、これらは該当する GHS の表示要素により表示を行うべきである。製品の危険有害性に関する表示を決定するために、異なるカットオフ値を用いることは調和に反する。

1.4.1.5 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、その対象者のニーズから、主として図形で表示

情報を提示することが認められている。したがって国連の危険物輸送に関する専門家小委員会は、モデル

規則の下で、表示に注意喚起語と危険有害性情報を含めないという選択が可能である。

1.4.2 専門用語

1.4.2.1 危険有害性に関する情報の伝達に関する共通の用語および定義は、第 1.2 章定義および略語 に含

まれる。 1.4.3 対象者

1.4.3.1. 調和された危険有害性に関する情報の伝達システムの主な末端利用者となる対象者のニーズが

確認された。特に、これらの対象者が危険有害性のある化学品についての情報を受け取り、利用する方法

について集中的に議論が行われた。製品の予想される用途、ラベル以外の情報の利用可能性および訓練の

利用可能性等について議論された。 1.4.3.2. 異なる対象者のニーズを完全に分離することは困難であることがわかった。例えば、作業者と緊

急時対応者の両方が貯蔵施設でラベルを利用するし、塗料や溶剤などの製品は、消費者と作業場の両方で

使用される。さらに、駆除剤は、消費者部門でも(例えば芝や園芸品など)作業場でも(例えば種子の処

理施設において使用される駆除剤)使用される。これは、対象者によってはそれぞれの特徴があるという

ことである。この節の以下の段落では、対象者と彼らが必要とする情報の種類を検討する。

―――――――――――――― 1 IOMC、化学品の分類システムの調和のための調整グループ、委任事項および作業プログラム改訂版(IOMC/HCS/95- 1996 年 1 月 14 日)

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1.4.3.3 作業場:事業主と作業者は、作業場で使用または取り扱われる化学品に特有の危険有害性とそれによる悪影響を避けるために必要な防護対策に関する情報を知っている必要がある。化学品の貯蔵においては、潜在的な危険有害性は化学品の容器(包装)により 小限に抑えられているが、事故が起きた場合には、作業者と緊急時対応者は災害を小さくする適切な方法を知る必要がある。事故の場合、ある程度離れていても読むことができる情報が必要であろう。しかし、ラベルは唯一の情報源ではなく、SDS や作業場のリスク管理システムを通しても情報は入手できる。リスク管理システムは危険有害性の特定および防止に関する訓練についても規定するべきである。行われる訓練の内容および SDS で提供される情報の正確さ、分かりやすさ、完成度は様々であろう。とはいっても、例えば消費者と比較して、作業者はシンボルや他の種類の情報をより深く理解することができる。 1.4.3.4 消費者:大抵の場合、ラベルは消費者にとって容易に入手できる唯一の情報源である。そのため、ラベルはその製品の使用について、十分詳細かつ適切であることが必要となる。消費者への情報提供に関して、大きな基本的考え方の相異があった。障害の可能性に基づいた表示(すなわちリスクコミュニケーション)は、ある消費者表示システムにおいては有効な手法と考えられるが、一方で、「知る権利」の原則を考慮し製品の危険有害性だけに基づいた消費者への情報提供を行うシステムもある。消費者教育は他の対象者教育より困難で効率が悪い。消費者に も簡単で も容易に理解できる用語で十分な情報を提供するのは、かなりの難題である。消費者はラベル情報だけに頼るであろうから、分かりやすさの問題は特に重要である。 1.4.3.5. 緊急時対応者:緊急時対応者は、広範囲なレベルについて情報を必要とする。また、緊急対応を容易にするために、正確かつ詳細で十分に明確な情報を必要とする。これは、輸送中、貯蔵施設、または作業場の事故の場合に当てはまる。例えば、消防士や 初に事故現場にいる者は、ある程度離れていてもはっきりしていて意味のわかる情報を必要とする。このような作業者は、図および記号化された情報の使用について高度に訓練されている。さらに、緊急時対応者は危険有害性と対応策についてより詳細な情報を必要とし、彼らはこれを広範囲な情報源から入手している。事故または緊急時の被害者を治療する医療従事者が必要とする情報は、消防士のものとは異なるであろう。 1.4.3.6 輸送:危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則は、輸送従事者と緊急時対応者が主対象であるが、より広範囲の対象者に使用されている。事業主、輸送委託者もしくは受託者、または車両もしくは貨物コンテナでの輸送物の荷役従事者なども関係する。これらの全員が、あらゆる輸送状況に対応した一般安全慣行に関する情報を必要とする。例えば、運転者は輸送する物質にかかわらず、事故の場合に何をすべきかを知らなければならない(例えば事故を所管官庁に報告する、船積み書類を所定場所に保管するなど)。運転者が包装品の積み卸しやタンクへの充填などを行わない場合は、彼らは特定の危険有害性に関する限られた情報だけを必要とするであろう。乗船する作業者等、危険物に直接接触する可能性がある作業者は、より詳細な情報を必要とする。 1.4.4 理解度

1.4.4.1 提供される情報の分かりやすさは、危険有害性に関する情報の伝達システムを策定する際の も重要な課題のひとつであった(附属書 6 理解度に関する試験方法 を参照)。調和されたシステムの目的は、対象者が容易に理解できるように情報を提示することである。GHS では、この理解の促進のため、以下の原則を確認した。

(a) 情報は複数の方法で伝達するべきである。

(b) システムの構成要素の分かりやすさは、試験から得られた証拠だけでなく、既存の研究と文 献を考慮するべきである。

(c) 危険有害性の程度(重大さ)を示すために用いられる用語は、異なる危険有害性の種類にわ

たって一貫しているべきである。 1.4.4.2. 後の点に関しては、発がん性などの長期的影響と引火性などの物理化学的危険性との間の重大さの比較に関して議論がなされた。物理化学的危険性をヒトの健康に対する有害性と直接比較することは可能ではないかも知れないが、危険有害性の程度を対象者に示すことで、危険有害性について同程度の懸念を伝達することは可能であろう。

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1.4.4.3 理解度に関する試験方法

メリーランド大学が行った予備的な文献調査により、理解度に関係した一般原則は、調和された危険有

害性に関する情報の伝達システムの策定に適用できることが示された。ケープタウン大学はこれを発展さ

せ、危険有害性に関する情報の伝達システムの理解度を評価する試験方法にした(附属書 6 参照)。個々の

ラベル構成要素の試験に加え、この方法では、ラベル構成要素を組み合わせた時の理解度も考慮している。

これは、理解力を高める訓練にそれほど頼れない消費者に対する警告メッセージの理解度を評価する際に

特に重要と考えられた。この試験方法は、SDS の理解度を評価する手段も含んでいる。この方法の概説は、

附属書 6 に示した。

1.4.5 翻訳

文言の使い方で理解度が異なる。翻訳する際に分かりやすさを保ちつつ、同じ意味を伝達しなければな

らない。例えば、IPCS 化学品安全カードプログラム(Chemical Card Programme)は、標準的な文言

の多種多様な言語への翻訳でこの種の経験を積んでいる。欧州連合も例えば、危険有害性やリスクなど、

同じメッセージを多数の言語で伝達するという翻訳経験を持っている。キーフレーズを用いている北米の

緊急時対応ガイドブック(North American Emergency Response Guidebook)でも同様の試みがなされ

ており、多くの言語に翻訳したものを利用することができる。

1.4.6 標準化

1.4.6.1. できるだけ多くの国にシステムを導入させるために、GHS は、企業がシステムを遵守しやすく、

また国がシステムを実行しやすいように、システムの大部分を標準化した手順に基づいたものにした。標

準化は、特定のラベル要素 ― シンボル、注意喚起語、危険有害性情報、注意書き ― およびラベルの書

式と色、そして SDS の書式に適応される。

1.4.6.2 調和システムにおける標準化の適用

ラベルでは、危険有害性シンボル、注意喚起語および危険有害性情報はすべて標準化され、各危険有害

性区分に割り当てられている。これらの標準化された要素は変更されるべきでなく、本文書の危険有害性

クラスに関する各章に示されたとおり、GHS ラベル上に記載されるべきである。安全データシートにつ

いては、危険有害性に関する情報の伝達:安全データシート(第 1.5 章)に、情報提示の方法について標

準化した様式を示した。注意書きは、現行の GHS では完全に調和されていないが、本文書の附属書3は、 適切な文言を選択する際の助けとなるよう手引を示している。国々が、このシステムに経験を積めば、こ

の分野において、さらに標準化を達成するための追加作業が将来着手されるかも知れない。 1.4.6.3 標準化されていない情報または補足情報の使用 1.4.6.3.1 調和されたシステムで標準化されていないラベルに記載される他の多くの要素がある。これら

の一部は明らかに、注意書き等としてラベルに含める必要がある。追加情報は所管官庁が要求する場合も

あるであろうし、また供給者が自主的に補足情報を加えることもできる。標準化されていない情報を使用

することにより、不必要な情報が増加したり、GHS 情報が軽視されることにつながらないようにするた

めに、補足情報の使用は次のような場合に限定するべきである。

(a) 補足情報はより詳細な情報を提供するものであり、標準化された危険有害性に関する情報の妥

当性に矛盾したり、疑いを生じさせたりしないこと。または、 (b) 補足情報により、GHS にまだ取り入れられていない危険有害性に関する情報が提供されるこ

と。 いずれの場合でも、補足情報により保護されるレベルを低下させるべきではない。

1.4.6.3.2 表示を行う者は、物理的状態やばく露経路など、危険有害性に関する補足情報については、ラ

ベル上の補足情報の部分に示すのではなく、危険有害性情報と共に示すべきである。1.4.10.5.4.1 も参照

のこと。

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1.4.7 情報の更新

1.4.7.1 すべてのシステムは、新しい情報に適切かつ適時に対応し、それに応じたラベルと SDS 情報を

更新する手段を定めるべきである。例を以下に示す。 1.4.7.2 情報更新の全般的指針

1.4.7.2.1 供給者は、化学品の危険有害性について入手した「新しくかつ重要な」情報に対応し、その物

質に関する表示および安全データシートを更新するべきである。新しくかつ重要な情報とは、物質または

混合物に関する GHS の分類の変更と、ラベルに表示すべき情報またはその化学品に関するあらゆる情報

および SDS に影響する適切な予防対策の変更につながるものをさす。例えば、分類の変更にはすぐに至

らないが、 近公表された文書または試験の結果から、ばく露による潜在的な慢性的健康影響に関する新

たな情報が明らかになったような場合がこれにあたる。

1.4.7.2.2 情報の更新は、変更を必要とする情報を入手し次第、迅速に行うべきである。所管官庁は情報を

改訂するまでの時間的期限を定めてもよい。これは、駆除剤で行われるような認可手続を伴わない製品の表

示や SDS にのみ適用される。表示が製品認可手続の一部であるような駆除剤の表示システムでは、供給者

が供給品の表示を自発的に更新することはできない。しかし、製品が危険物の輸送に関する要求事項の適用

を受ける場合は、輸送に用いられる表示については、上記のとおり新情報の入手時に更新するべきである。

1.4.7.2.3 また供給者は、たとえ新しく重要な情報がなかったとしても、物質または混合物の表示および

安全データシートの基礎となる情報について定期的に見直しを行うべきである。これには例えば、化学品

の危険有害性のデータベースにおける新情報の検索が必要となろう。所管官庁は、当初の作成期日から起

算した期限(通常 3~5 年)を定め、その期間内に供給者が関連の表示および SDS 情報の見直しを行うよ

うにしてもよい。 1.4.8 営業秘密情報 1.4.8.1 GHS を採用しているシステムでは、どのような規定が営業秘密情報(CBI)の保護に適切かを考

慮するべきである。このような規定によって、作業者や消費者の健康と安全、または環境保護を危うくす

るべきではない。GHS の他の部分と同様、輸入される物質または混合物の営業秘密情報の申請について

は、輸入国の規則を適用するべきである。 1.4.8.2 システムで営業秘密情報の保護を規定することに決めた場合、所管官庁は国家の法律と慣行に従

い、適切なメカニズムを確立し、以下を考慮するべきである。

(a) ある特定の化学品または化学品の危険有害性クラスを含めることが、システムの要求事項に合

っているどうか、

(b) 競合相手が情報を入手してしまう可能性や、知的所有権などの要因、潜在的危険有害性の開示

が事業主または供給者の事業に与える要因を考慮して、どのような「営業秘密情報」の定義を

適用するべきか、および

(c) 作業者や消費者の健康と安全を保護するあるいは環境を保護する必要がある場合、営業秘密情

報の開示の適切な手順、および追加の開示を防止する措置。 1.4.8.3 営業秘密情報の保護に関する規定は、国家の法律と慣行により、システム間で異なる場合がある。

しかし、これらは次の一般原則と一致させるべきである。

(a) ラベルまたは安全データシートで要求される情報については、CBI の申請は物質の名前と混合

物中の濃度に制限するべきである。他のすべての情報は、要求どおり、ラベルまたは安全デー

タシートで開示するべきである。

(b) CBI がある場合は、ラベルまたは安全データシートでその事実を示すべきである。

(c) CBI は要請に応じて、所管官庁に開示するべきである。所管官庁は適用される法律と慣行に従

い、情報の機密性を保護するべきである。

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(d) 危険有害性のある物質または混合物へのばく露による緊急事態であると医療関係者が決定し

た場合、供給者または事業主あるいは所管官庁が治療に必要な特定の機密情報を適時に開示す

る手段を確保するべきである。医療関係者は情報の機密性を保持するべきである。

(e) 緊急事態でない場合には、供給者または事業主は、ばく露した作業者または消費者に医療や他

の安全衛生サービスを提供する安全衛生の専門家、および作業者または作業者の代表者への機

密情報の開示を保証すべきである。情報を要求する者は、開示の理由を示し、消費者または作

業者保護の目的でのみ情報を使用し、他の目的に使用しないことに同意するべきである。

(f) CBI の非開示が要求された場合、所管官庁はこのような要求に対応するか、あるいは要求に対

する代替の方法を規定するべきである。供給者または事業主は、保留された情報が営業秘密情

報保護の対象になるという主張に対して責任を持つべきである。

1.4.9 訓練 危険有害性に関する情報の使用者に対する訓練は、情報伝達の重要な部分である。システムでは、GHS対象者はラベルまたは SDS 情報を解釈し、化学品の危険有害性に対応して適切な措置を採ることが要求

されるので、GHS の対象者に対する適切な教育と訓練の内容が明らかにされるべきである。訓練規定は、

作業またはばく露の内容に見合った適切なものとすべきである。訓練の主な対象者は、作業者、緊急時対

応者、ならびにリスクマネージメントシステムの一環としてラベル、SDS および危険有害性に関する情報

の伝達方策の立案に関係する者を含む。危険有害性のある化学品の輸送と供給に関係する他の者も、様々

なレベルで訓練を必要とする。加えて、システムでは、使用する製品のラベル情報の解釈に関する消費者

の教育に必要な方策も考慮するべきである。 1.4.10 表示手順 1.4.10.1 範囲 以降の節では、GHS における表示の準備のための手順を説明する。その手順は以下の項目からなる。

(a) ラベル要素の割り当て

(b) シンボルの記載

(c) 危険有害性の絵表示の記載

(d) 注意喚起語

(e) 危険有害性情報

(f) 注意書きおよび絵表示

(g) 製品および供給者の特定

(h) 複数の危険有害性および危険有害性に関する情報の優先順位

(i) GHS ラベル要素の配置方法

(j) ラベルに関する特別な取決め 1.4.10.2 ラベル要素 各章の表には、GHS のそれぞれの危険有害性クラスに割り当てられたラベル要素(シンボル、注意喚

起語、危険有害性情報)が列挙されており、これらは、GHS の危険有害性判定基準を反映している。ラ

ベル要素の割り当てに関しては、附属書 1 にまとめられている。対象者別に必要な情報について考慮した

特別の取決めについては、1.4.10.5.5 で詳述する。

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1.4.10.3 危険有害性シンボルの記載 次の危険有害性シンボルは、GHS で使用すべき標準シンボルである。健康有害性に使用される新しい

シンボル、感嘆符を除き、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則で使用される標準シンボルが用いら

れている。 1.4.10.4 危険有害性を表す絵表示の記載 1.4.10.4.1 絵表示とは、ある情報を伝達することを意図した、シンボルと境界線、背景のパターンまたは

色などの図的要素から構成されるものをいう。 1.4.10.4.2 形と色 1.4.10.4.2.1 GHS で使用されるすべての危険有害性を示す絵表示は、1つの頂点で正立させた正方形の

中に書かれるべきである。 1.4.10.4.2.2 輸送に対しては、危険物輸送の国連モデル規則で指定された絵表示(一般に、輸送の規則に

おけるラベルと呼ばれる)を用いるべきである。国連モデル規則は、色、シンボル、サイズ、背景の濃淡、

および追加的な安全情報(例:危険有害性クラス)および様式を含む輸送の絵表示を規定している。輸送

の絵表示は、 小でも 100mm 角の大きさが要求されているが、非常に小さい包装の場合、またはガスシ

リンダーに対しては、より小さな絵表示を例外として認めている。また、輸送の絵表示ではラベルの上半

分にシンボルを置く。国連モデル規則では、輸送の絵表示は、コントラストのある色を背景として、包装

の上に、印刷するか、または貼付する。引火性液体について国連モデル規則で使用する絵表示の例を下に

示す。

UN RTDG モデル規則の 引火性液体の絵表示 (シンボル:炎:黒または白、 背景:赤、下部の隅に数字の 3、 小寸法 100mm×100mm)

炎 円上の炎 爆弾の爆発

腐食性 ガスボンベ どくろ

感嘆符 環境 健康有害性

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1.4.10.4.2.3 GHS で規定されているが、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では規定されていな

い絵表示は、白い背景の上に黒いシンボルを置き、はっきり見えるように十分に幅広い赤い枠で囲むべき

である。しかし、輸出されない包装品のラベルにこのような絵表示を用いるときは、所管官庁は、供給者

および事業主に黒い境界線を使用する許可を与えることができる。さらに、所管官庁は、包装品が危険物

輸送に関する国連勧告・モデル規則の対象とならない他の部門でも、国連モデル規則の絵表示の使用を許

可することができる。皮膚刺激性物質に使用される GHS 絵表示の例を下に示す。

皮膚刺激性の絵表示

1.4.10.4.3 コード化

輸送以外の分野に対する GHS で規定されている絵表示およびそれぞれを一意的に認識できるコードは

附属書 3 の第 4 節に記載した。絵表示コードは参照のためだけに使用されるものである。これは絵表示の

一部ではなく、ラベルや安全データシート第 2 節に記載するべきではない。 1.4.10.4.4 輸送における GHS 絵表示の使用

輸送においては、危険物輸送に関する国連勧告、モデル規則で要求されていない GHS の絵表示は

完全な GHS ラベルの一部としてのみ表示しなければならない(1.4.10.5.4.1 を参照)し、また単独で

用いるべきではない。 1.4.10.5 ラベル要素の配置 1.4.10.5.1 危険物輸送の国連モデル規則による包装に必要な情報

危険物輸送の国連モデル規則の絵表示をラベルに使用する場合には、同じ危険有害性に関する GHS の

絵表示を使用すべきでない。また、危険物輸送に要求されない GHS 絵表示は、貨物輸送用コンテナ、道

路車両または鉄道貨車/タンクに付けるべきでない。 1.4.10.5.2 GHS ラベルに必要な情報

(a) 注意喚起語

注意喚起語とは、危険有害性の重大性の相対的レベルを示し、利用者に対して潜在的な危険有害

性について警告するための語句を意味する。GHS で用いられる注意喚起語は、「危険(Danger)」と「警告(Warning)」である。「危険」は多くの場合より重大な危険有害性区分に用いられ(主

として危険有害性の区分 1 と 2)、「警告」は多くの場合より重大性の低い区分に用いられる。

GHS の各危険有害性の区分に割り当てられた注意喚起語は、各章のそれぞれの危険有害性クラ

スに関する表に示されている。

(b) 危険有害性情報

(i) 危険有害性情報とは、各危険有害性クラスおよび区分に割り当てられた文言で、該当製品

の危険有害性の性質と該当する場合はその程度を示すものである。GHS の各危険有害性区

分に割り当てられた危険有害性情報は、各章のそれぞれの危険有害性クラスに関する表に

示されている。

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(ii) 危険有害性情報およびそれらを特定するコードは付属書3の第 1 節に記載されている。危

険有害性情報のコードは参照するためのものである。コードは危険有害性情報の文言の一

部ではないので、文言の代わりに用いることはできない。

(c) 注意書きおよび絵表示

(i) 注意書きは、危険有害性をもつ製品へのばく露、または、その不適切な貯蔵や取扱いから生じる被害を防止し、または 小にするために取るべき推奨措置について記述した文言(または絵表示)を意味する。GHS ラベルは適切な注意書きを含むべきであるが、その選択は表示者または所管官庁が行う。附属書 3 では使用できる注意書きの例、および所管官庁が許可した場合に使用できる予防策を表す絵表示の例を示す。

(ii) 注意書きおよびそれらを特定するコードは附属書3の第2節に記載されている。注意書きのコードは参照するためのものである。コードは注意書きの文言の一部ではないので、文言の代わりに用いることはできない。

(d) 製品特定名

(i) 製品特定名は、GHS ラベルに使用されるべきであるが、これは SDS で使用した製品特定

名と一致させるべきである。当該物質または混合物に危険物輸送の国連モデル規則が適応

される場合は、包装品に国連品名も記載するべきである。 (ii) 物質用のラベルは、物質の化学的特定名を含むべきである。混合物または合金であって、

急性毒性、皮膚腐食性または眼に対する重篤な損傷性、生殖細胞変異原性、発がん性、生

殖毒性、皮膚感作性または呼吸器感作性、あるいは特定標的臓器毒性(STOT)の有害性が

ラベルに示される場合、これらに関与するすべての成分または合金元素の物質の化学的特

定名をラベルに示すべきである。また、所管官庁は、混合物または合金の上記以外の健康

有害性(訳者注:皮膚刺激性/眼刺激性)に関与するすべての成分または合金元素について

もラベルに記すよう要求することができる。

(iii) 物質または混合物が作業場での使用のためだけに供給される場合には、所管官庁は、物質

の化学的特定名をラベルではなく SDS に記載する裁量を供給者に与えることができる。 (iv) 営業秘密情報に関する所管官庁の規則は製品の特定名の規則よりも優先される。つまり、

通常であれば成分がラベルに記載される場合でも、その成分が営業秘密情報に関する所管

官庁の判断基準を満たす場合は、その特定名をラベルに記載しなくてもよい。

(e) 供給者の特定

物質または混合物の製造業者、または供給者の名前、住所および電話番号をラベルに示すべき

である。 1.4.10.5.3 複数の危険有害性および危険有害性に関する情報の優先順位 物質または混合物が複数の GHS 危険有害性を示す場合には以下のように取り扱う。これは、目的、範囲、適用(第 1.1 章)に記述されている選択可能方式の原則を侵すものではない。したがって、このシス

テムで、ある危険有害性に関する情報をラベルに記載しない場合には(訳者注:例えば危険物輸送におけ

る慢性影響に関する情報)、以下の取決めはそれに応じて変更するべきである。 1.4.10.5.3.1 シンボルの割当てに関する優先順位 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則が適用される物質および混合物については、物理化学的危険

性のシンボルの優先順位は国連モデル規則に従うべきである。作業場については、所管官庁は物理化学的

危険性のすべてのシンボルの使用を要求してもよい。健康に対する有害性については、次の優先順位の原

則が適用される。

(a) どくろを適用する場合、感嘆符を使用するべきでない。

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(b) 腐食性シンボルを適用する場合、皮膚または眼刺激性を表す感嘆符を使用するべきではない。 (c) 呼吸器感作性に関する健康有害性シンボルを使用する場合、皮膚感作性または皮膚/眼刺激性を表す

感嘆符を使用するべきではない。 1.4.10.5.3.2 注意喚起語の割り当てに関する優先順位 注意喚起語「危険」を適用する場合、注意喚起語「警告」を使用するべきでない。 1.4.10.5.3.3 危険有害性情報の割当てに関する優先順位 ラベルには、本節で定められた他の方法を除いて、割り当てられたすべての危険有害性情報を記載する

べきである。所管官庁は、それらを示す順序を指定してもよい。 しかし、危険有害性情報における明らかな重複や冗長を避けるために、次のような優先に関する決まり

を適用してもよい:

(a) H410「長期的影響により水生生物に非常に強い毒性」が割り当てられた場合、H400「水生生物に

強い毒性」は省略される。

(b) H411「長期的影響により水生生物に毒性」が割り当てられた場合、H401「水生生物に毒性」は省

略される。

(c) H412「長期的影響により水生生物に有害」が割り当てられた場合、H402「水生生物に有害」は省

略される。

(d) H314「重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷」が割り当てられた場合、H318「重篤な眼の損傷」は省略さ

れる。

所管官庁は上記の優先に関する決まりを要求するか、あるいはその選択を製造者/供給者に委ねるか決め

ることができる。 付属書 3 の表 A3.1.2 には危険有害性情報の特別な組み合わせが示してある。組み合わせられた危険有

害性情報が示されたところに関しては、所管官庁は組み合わせられた危険有害性情報かまたはそれぞれ

個々の危険有害性情報のどちらをラベルに記載するか、あるいはその選択を製造者/供給者に委ねるか決め

ることができる 1.4.10.5.4 GHS ラベル要素を提示する際の取決め 1.4.10.5.4.1 ラベル上の GHS 情報の配置 GHS の危険有害性を表す絵表示、注意喚起語および危険有害性情報はラベル上に一緒に配置するべき

である。所管官庁は、これらの記載および注意書きの記載について配置を指定するか、または供給者の自

由裁量に任せることができる。各章の危険有害性クラスのところにガイダンスと例が示されている(訳者

注:配置についての例は記載されていない)。

ラベル要素を種々の包装にどのように表示すべきかについての関心が示されてきた。例を附属書 7 に示

した。 1.4.10.5.4.2 補足情報

所管官庁は、1.4.6.3 で概説された事項に従った補足情報の使用を許可する裁量を有する。所管官庁は、

この情報のラベルの記載すべき場所を指定しても、または選択に任せてもよい。いずれの場合においても、

補足情報の配置が GHS で定められている情報を妨げるべきでない。 1.4.10.5.4.3 絵表示外での色の使用

色は、絵表示で使用するほか、特別なラベルの要件を満たすためにラベルの他の領域で使用することが

できる。例えば、FAO 表示ガイドにおける駆除剤標識への使用、注意喚起語や危険有害性情報、またはそ

れらの背景、あるいは所管官庁による他の規定での使用などがある。

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1.4.10.5.4.4 小さな包装のラベル 小さな包装のラベルについて勘案されなければならない原則は以下のとおりである:

(a) 可能であれば、すべての適用される GHS ラベル要素は危険有害な物質あるいは混合物が直接入っ

ている容器に記載されていなければならない;

(b) すべての適用されるラベル要素が直接の容器に記載できない場合には、GHS の「ラベル」の定義

にしたがって、すべての危険有害性情報を与える他の方法が用いられなければならない。これに影

響する要素には特に次のようなものがある:

(i) 直接容器の形やサイズ;

(ii) 含まれるべきラベル要素の数、特に物質や混合物が多くの危険有害性クラスに対して判定基

準が当てはまる場合;

(iii) 1つの公用語以上でラベルに記載する必要がある場合。

(c) 物質あるいは混合物の容量が非常に少なくて、供給者がヒトの健康や環境への害がなさそうである

ことを示し、所管官庁が決定した場合には、ラベル要素は直接容器から省略することができる:

(d) 所管官庁は、物質や混合物の容量がある量よりも少ない場合には決められた危険有害性のクラスや

区分を直接容器から省略することを認めてもよい:

(e) 直接容器上のラベル表示要素のいくつかは、製品のライフサイクルを通じて利用可能とする必要が あろう、例えば労働者や消費者によって続けて使用されるものなど。

1.4.10.5.5 ラベルに関する特別な取決め 所管官庁は、発がん性物質、生殖毒性および特定標的臓器毒性反復ばく露に関する特定の危険有害性に

関する情報については、ラベルおよび SDS、または SDS のみにより、情報伝達を行う場合がある(これ

らの危険有害性クラスに関連したカットオフの詳細については各章を参照すること)。

同様に、金属と合金が大量かつ散逸しない状態で供給されるときには、所管官庁は SDS だけで危険有

害性に関する情報の伝達を行うことを許可することもある。 所管官庁は、物質または混合物が金属に対して腐食性であるが皮膚および/または眼に対しては腐食性で

ない場合には、消費者製品として包装され完成しているそのような物質または混合物のラベルから「金属

腐食性」に関連した絵表示の削除を許可することを選択しても良い。 1.4.10.5.5.1 作業場用の表示

GHSの対象となる製品には、作業場に供給される時点でGHSのラベルが付けられるが、そのラベルは、

作業場においてもその供給された容器にずっと付けておくべきである。また、GHS のラベルあるいはラ

ベル要素は作業場の容器にも使用されるべきである。所管官庁は同じ情報を作業者に伝える代替手段とし

て、事業主が、異なる記述あるいは表示様式を用いることを許可することができる。ただし、このような

様式は作業場において、より適切で、必要な情報が GHS ラベルと同様に有効に伝達される場合に限る。

例えば、ラベル情報を個々の容器上に付すのではなく、作業区域内に表示することもできる。 労働者に対して GHS ラベルに含まれる情報を示すための代替手段は、通常、危険有害性を有する化学

品が供給者の容器から作業場の容器もしくはシステムに移し替えられる場合や、化学品が作業場で製造さ

れ、販売もしくは供給用の容器に収納されない場合に必要となる。作業場で製造される化学品は、様々な

方法で容器に投入あるいは貯蔵される。例えば試験もしくは分析用に集められた少量の試料や、弁、処理

工程もしくは反応容器を含む配管、鉱石運搬車、コンベアシステム、ばら積などがあげられる。バッチ式

製造工程においては、様々な混合物を入れるのに1つの混合容器が用いられる場合もある。 多くの状況において、完全な GHS のラベルを作成し、それを容器に添付することは、容器のサイズに

よる制約や工程用の容器に近づけないなどの理由から現実的ではない。化学品が供給用容器から移し替え

られるような作業場としては、例えば、研究所での試験または分析用容器、貯蔵容器、パイプまたは反応

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システム、1 人の作業者が化学品を短時間だけ利用するための一時的な容器などがある。すぐ利用するた

めに分取した化学品には主要成分についてラベルで示し、使用者に供給者のラベル情報と SDS を直接参

照させることが必要となろう。 このすべてのシステムにおいて、危険有害性に関する明確な情報の伝達が保証されるべきである。労働

者には作業場で用いられる情報伝達の方法について理解できるような訓練をするべきである。代替手段の

例としては、GHS シンボルおよびその他の予防対策を表した絵表示とともに製品の特定名を用いる、パ

イプや容器に含まれる化学品の識別を行うために SDS とともに複雑なシステムの工程にはフローチャー

トを用いる、配管および工程の設備に GHS のシンボル、色、注意喚起語を使った表示を行う、固定配管

には恒久的な掲示を行う、バッチ式混合容器の表示にバッチ表示や配合表を用いる、危険有害性シンボル

および製品の特定名を示す配管標識を用いる、などがある。 1.4.10.5.5.2 危害の可能性に基づく消費者製品の表示

すべてのシステムは、GHS 分類基準を使用するべきである。しかし、所管官庁は、障害の可能性に基

づいて情報を提供する消費者表示システムを認可することができる(リスクに基づくラベル)。その場合、

所管官庁は製品使用に対する潜在的ばく露およびリスクを決定する手順を確立することとなる。この方法

に基づくラベルでは、特定されたリスクに関して目的とされる情報を提供するが、有害性だけに基づくラ

ベルで示される慢性健康影響(例えば、反復ばく露による特定標的臓器毒性(STOT)、生殖毒性、発がん

性)に関する情報を含まない場合がある。リスクに基づくラベル表示に関する大まかな原則の説明を、附

属書 5 に示す。 1.4.10.5.5.3 触覚による警告

触覚による警告(訳者注:視覚障害者用)が使用される場合、技術仕様は「触覚による危険の警告:要

求事項」に関する ISO 規格 11683(1997 年版)に従うべきである。

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第 1.5 章

危険有害性に関する情報の伝達:安全データシート

1.5.1 調和システムにおける 安全データシート(SDS)の役割 1.5.1.1 SDS は、作業場の化学品管理規制の枠組みの中で使用するために、物質または混合物に関する包

括的な情報を提供するべきである。事業主と作業者の両者は、環境に対する危険有害性も含めた危険有害

性に関する情報源として、また、安全対策に関する助言を得るために、これを使用する。この情報は、作

業場で使用する危険有害性のある化学品を管理するための情報源としての役割を果たす。製品に特殊な

終用途がある場合には、SDS 情報はより作業場に特化したものとなることがあるが、通常は、SDS は製

品に関連したものであり、製品が 終的に使用される特定の作業場に関連した特殊な情報を提供すること

はできない。したがって、その情報によって、事業主は、(a) 個々の作業場に特化した訓練などの、作業

者保護対策の活動プログラムを開発し、(b) 環境の保護に必要な対策を考慮することができる。 1.5.1.2 また、SDS は GHS の他の対象者にとって重要な情報源となる。したがって、情報の一部分が、

危険物輸送従事者、緊急時対応者(毒物管理センターを含む)、駆除剤の専門的使用者、および消費者に

よって使用されることもある。これらの対象者は、一方で危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則や消

費者向けの包装内の説明書き等様々な他の情報源から追加情報を受けており、また引き続きこれらの情報

を受けることになろう。調和した表示システムの導入が、作業場の使用者に向けた SDS の基本的な使用

に影響を与えることはない。 1.5.2 SDS を作成するべきかどうかの判断基準 SDS は、GHS に基づく物理化学的な危険性や、ヒトの健康または環境に対する有害性に関する調和さ

れた判定基準を満たすすべての物質および混合物について作成されるべきである。また、混合物に対する

判定基準で指定されたカットオフ限界(1.5.3.1 参照)を超える濃度の発がん性、生殖毒性、特定標的臓器

毒性のある成分を含むすべての混合物についても作成されるべきである。所管官庁は、危険有害性として

分類される判定基準に合致しなくても、危険有害な成分を一定濃度以上含む混合物に対して SDS を要求

することができる(1.5.3.1 参照)。 1.5.3 安全データシート作成のための全般的指針

1.5.3.1 カットオフ値/濃度限界

1.5.3.1.1 SDS は、次の表 1.5.1 に示した統一的なカットオフ値/濃度限界に基づいて作成されるべきであ

る。

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表 1.5.1 健康および環境の各危険有害性クラスに対するカットオフ値/濃度限界 危険有害性クラス カットオフ値/濃度限界

急性毒性 1.0%以上 皮膚腐食性/刺激性 1.0%以上 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 1.0%以上 呼吸器感作性または皮膚感作性 0.1%以上 生殖細胞変異原性:区分 1 0.1%以上 生殖細胞変異原性:区分 2 1.0%以上 発がん性 0.1%以上 生殖毒性 0.1%以上 特定標的臓器毒性(単回ばく露) 1.0%以上 特定標的臓器毒性(反復ばく露) 1.0%以上 吸引性呼吸器有害性(区分 1) 10%以上の区分 1 の物質かつ 40oC での動粘

性率が 20.5mm2/s 以下 吸引性呼吸器有害性(区分 2) 10%以上の区分 2 の物質かつ 40oC での動粘

性率が 14mm2/s 以下 水生環境有害性 1.0%以上

1.5.3.1.2 危険有害性物質および混合物の分類(第 1.3 章参照)で述べたように、利用可能な有害性デー

タがある場合には、ヒトの健康および環境に対する危険有害性クラスについての章(第 3.2 章~第 3.10 章

および第 4.1 章)で指定されている統一的なカットオフ値/濃度限界以外の値に基づく分類が妥当なことも

ある。このような特別のカットオフ値を分類に用いる場合、それらは SDS を作成する場合にも適用する

べきである。

1.5.3.1.3 所管官庁は、加算式を適用した結果として急性毒性または水生環境有害性とは分類されないが、

急性毒性物質または水生生物への有害性を有する物質を 1%以上の濃度で含む混合物について、SDS を作

成するよう求めてもよい 1。

1.5.3.1.4 所管官庁は、選択可能方式の原則に従い、ある危険有害性クラスにおける区分に関して規制を

しなくてもよい。この場合、SDS にこの区分について記載する義務はないであろう。(訳者注:例えば急

性毒性の区分 5)

1.5.3.1.5 ある物質または混合物に関して SDS が必要となることが明らかになった場合、SDS に含める

べき情報は、GHS の要求事項に従って提供するべきである。

1 混合物の分類のためのカットオフ値は、通常、成分物質の%濃度で定められる。急性毒性(人の健康)等一部の事例

では、上限値が急性毒性推定値(ATE)として表される。混合物の分類は、急性毒性値と成分物質の濃度に基づく加算的な

計算によって決定される(第 3.1 章参照)。同様に、急性水生環境有害性の分類も急性水生毒性値(第 4.1 章参照)に基づい

て、また、腐食性/刺激性も該当する場合は個々の物質の濃度を加算して算定することができる(第 3.2 章、第 3.3 章を参照)。

成分物質の濃度が 1%以上になった場合に算定式の適用が考慮される。所管官庁は、このカットオフ値に基づき SDS への

記載を求めてもよい

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1.5.3.2 SDS の様式 1.5.3.2.1 SDS の情報は、次の 16 項目を使用し、下に示す順序で記載するべきである。

1. 物質または混合物および会社情報

2. 危険有害性の要約

3. 組成および成分情報

4. 応急措置

5. 火災時の措置

6. 漏出時の措置

7. 取扱いおよび保管上の注意

8. ばく露防止および保護措置

9. 物理的および化学的性質

10. 安定性および反応性

11. 有害性情報

12. 環境影響情報

13. 廃棄上の注意

14. 輸送上の注意

15. 適用法令

16. その他の情報

1.5.3.3 SDS の内容 1.5.3.3.1 SDS は、関係する危険有害性を特定するのに用いられたデータを明確に記載するべきである。

表 1.5.2 に示した 低限の情報は、該当する場合であってかつ入手可能な場合において、SDS の関連する

項目に含めるべきである 2。小項目に該当する特定の情報がない、または入手不能である場合は、SDS に

その事実を明示するべきである。所管官庁は追加情報を要求してもよい。 1.5.3.3.2 一部の小項目は、例えば「EC 番号」や「職業ばく露限界」などの国内または地域的な情報に

関係するものである。供給者または事業者は、これらの SDS 小項目に、その SDS が用いられ、その製品

が供給される国または地域に該当し関連する情報を盛り込むべきである。 1.5.3.3.3 GHS の要求に基づいた SDS を作成するための指針は附属書4にある。ILO177 号勧告「作業

場での化学品の利用における安全性」、国際標準化機構(ISO)の国際規格 11014、欧州連合安全性データ

シート指令 EEC/91/155、米国規格協会(ANSI)の規格 Z400.1 などを勘案して GHS 小委員会が作成し

たものである。 1.5.3.3.4 IMO あるいは国の規制をうける航海や内陸航行のばら積み船あるいはタンク船での危険物の

ばら積み輸送における船員や他の輸送労働者の要求に応えるために、追加的な安全および環境情報が必要

とされている。該当する荷が MARPOL 附属書 II および IBC コードにしたがって液体ばら積みで輸送さ

れるときは、基本的な分類情報を含めるように附属書4のパラグラフ A4.3.14.7 で推奨している。さらに

油や燃料油を、MARPOL 附属書 I で定義されている、ばら積みあるいはバンカー燃料油で運んでいる船

舶は、IMO 海上安全委員会(MSC)決議「MARPOL 附属書 I 油及び燃料油に対する物質安全データシー

ト(MSDS)についての勧告」(MSC.286(86) にしたがって、積込みの前に「安全データシート」を備え

ることが要求されている。それゆえ、海上および非海上の使用で1つの調和された SDS にするために、

可能であれば、MARPOL附属書 I油及び燃料油の海上輸送に関してMSC.286(86) 決議の追加規定をGHS SDS に含めても良い。 2 「該当する」場合とは、関係の情報が SDS の対象とする個々の製品に適用される場合をいう。「利用可能」な場合とは、情報が供給者またはその他 SDS の作成を行う組織にとって入手可能なものである場合をいう。

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表 1.5.2 SDS の必要 少情報

1. 物質または混合物および会社情報

(a) GHS の製品特定手段 (b) 他の特定手段 (c) 化学品の推奨用途と使用上の制限 (d) 供給者の詳細(社名、住所、電話番号など) (e) 緊急時の電話番号

2. 危険有害性の要約

(a) 物質/混合物の GHS 分類と国/地域情報 (b) 注意書きも含む GHS ラベル要素。(危険有害性シンボルは、黒と白を用い

たシンボルの図による記載またはシンボルの名前、例えば、「炎」、「どくろ」などとして示される場合がある)

(c) 分類に関係しない(例「粉塵爆発危険性」)または GHS で扱われない他の危険有害性

3. 組成および成分情報

物質 (a) 化学的特定名 (b) 慣用名、別名など (c) CAS 番号およびその他の特定名 (d) それ自体が分類され、物質の分類に寄与する不純物および安定化添加物 混合物 GHS 対象の危険有害性があり、カットオフ値以上で存在するすべての成分の化学名と濃度または濃度範囲 注記:成分に関する情報については、製品の特定規則より CBI に関する所管官庁の規則が優先される。

4. 応急措置 (a) 異なるばく露経路、すなわち吸入、皮膚や眼との接触、および経口摂取に従って細分された必要な措置の記述

(b) 急性および遅延性の も重要な症状/影響 (c) 必要な場合、応急処置および必要とされる特別な処置の指示

5. 火災時の措置 (a) 適切な(および不適切な)消火剤 (b) 化学品から生じる特定の危険有害性(例えば、「有害燃焼生成物の性質」)(c) 消火作業者用の特別な保護具と予防措置

6. 漏出時の措置

(a) 人体に対する予防措置、保護具および緊急時措置 (b) 環境に対する予防措置 (c) 封じ込めおよび浄化方法と機材

7. 取扱いおよび保管上の注意

(a) 安全な取扱いのための予防措置 (b) 混触危険性等、安全な保管条件

8. ばく露防止および人に対する保護措置

(a) 職業ばく露限界値、生物学的限界値等の管理指標 (b) 適切な工学的管理

(c) 個人用保護具などの個人保護措置

9. 物理的および化学的性質

物理状態; 色; 臭い; 融点/凝固点; 沸点または初留点および沸点範囲; 燃焼性; 爆発下限および上限/引火限界; 引火点; 自然発火温度; 分解温度; pH;

(次頁に続く)

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表 1.5.2 SDS の必要 少情報(続き)

9. 物理的および化

学的性質(続き)

動粘性率; 溶解度; n-オクタノール/水分配係数(log 値); 蒸気圧; 密度および/または比重; 蒸気比重; 粒子特性;

10. 安定性および反

応性

(a) 反応性 (b) 化学的安定性 (c) 危険有害反応性の可能性

(d) 避けるべき条件(静電放電、衝撃、振動等)

(e) 混触危険物質 (f) 危険有害性のある分解生成物

11. 有害性情報

種々の毒性学的(健康)影響の簡潔かつ完全で分かりやすい記述および次の

ような影響の特定に使用される利用可能なデータ: (a) 可能性の高いばく露経路(吸入、経口摂取、皮膚および眼接触)に関す

る情報 (b) 物理的、化学的および毒性学的特性に関係した症状

(c) 短期および長期ばく露による遅延および即時影響、ならびに慢性影響

(d) 毒性の数値的尺度(急性毒性推定値など)

12. 環境影響情報 (a) 生態毒性(利用可能な場合、水生および陸生) (b) 残留性と分解性

(c) 生物蓄積性

(d) 土壌中の移動度

(e) 他の有害影響

13. 廃棄上の注意 廃棄残留物の記述とその安全な取扱いに関する情報、汚染容器包装の廃棄方

法を含む

14. 輸送上の注意 (a) 国連番号 (b) 国連品名 (c) 輸送における危険有害性クラス (d) 容器等級(該当する場合)

(e) 海洋汚染物質(該当/非該当) (f) 大量輸送(MARPOL 73/78 付属書 II および IBC コードによる) (g) 使用者が構内もしくは構外の輸送または輸送手段に関連して知る必要が

ある、または従う必要がある特別の安全対策

15. 適用法令 当該製品に特有の安全、健康および環境に関する規則

16. SDS の作成と改

訂に関する情報

を含むその他の

情報

注記:9 節に示されている物理的および化学的性質の SDS における順番は、本表にしたがって良いが、強

制ではない。所管官庁は SDS の 9 節における順番について規定してもよいし、適当であれば、並べ替え

を SDS の作成者にゆだねてもよい。

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第 2 部

物理化学的危険性

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第 2.1 章

爆発物

2.1.1 定義および通則 2.1.1.1 爆発性物質(または混合物)とは、それ自体の化学反応により、周囲環境に損害を及ぼすよう

な温度および圧力ならびに速度でガスを発生する能力のある固体物質または液体物質(または物質の混

合物)をいう。火工品に使用される物質はたとえガスを発生しない場合でも爆発性物質とされる。 火工品に使用される物質(または混合物)とは、非爆発性で持続性の発熱化学反応により、熱、光、音、

ガスまたは煙若しくはこれらの組み合わせの効果を生じるよう作られた物質または物質の混合物をいう。 爆発性物品とは、爆発性物質または爆発性混合物を一種類以上含む物品をいう。 火工品とは、火工品に使用される物質または混合物を一種類以上含む物品をいう。

2.1.1.2 次のものが爆発物に分類される。

(a) 爆発性物質および爆発性混合物、

(b) 爆発性物品、ただし不注意または偶発的な発火もしくは起爆によって、飛散、火炎、発煙、

発熱または大音響のいずれかによって装置の外側に対し何ら影響を及ぼさない程度の量ま

たはそのような特性の爆発性物質または混合物を含む装置を除く、および

(c) 上記(a)および(b)以外の物質、混合物および物品であって、爆発効果または火工効果を実

用目的として製造されたもの。 2.1.2 分類基準 2.1.2.1 このクラスに分類される物質、混合物および物品(不安定爆発物に分類されるものを除く)は、

それぞれが有する危険性の度合により、次の六等級のいずれかに割り当てられる。

(a) 等級 1.1 大量爆発の危険性を持つ物質、混合物および物品(大量爆発とは、ほとんど全

量がほぼ瞬時に影響が及ぶような爆発をいう)。

(b) 等級 1.2 大量爆発の危険性はないが、飛散の危険性を有する物質、混合物および物品。

(c) 等級 1.3 大量爆発の危険性はないが、火災の危険性を有し、かつ、弱い爆風の危険性ま

たは僅かな飛散の危険性のいずれか、若しくはその両方を持っている物質、混

合物および物品。

(i) その燃焼により大量の輻射熱を放出するもの、または (ii) 弱い爆風または飛散のいずれか若しくは両方の効果を発生しながら次々

に燃焼するもの。

(d) 等級 1.4 高い危険性の認められない物質、混合物および物品、すなわち、発火または起

爆した場合にも僅かな危険性しか示さない物質、混合物および物品。その影響

はほとんどが包装内に限られ、ある程度以上の大きさと飛散距離を持つ破片の

飛散は想定されないというものである。外部火災により包装物のほとんどすべ

ての内容物がほぼ瞬時に爆発を起こさないものでなければならない。

(e) 等級 1.5 大量爆発の危険性を有するが、非常に鈍感な物質。すなわち、大量爆発の危険

性を持っているが、非常に鈍感で、通常の条件では、発火・起爆の確率あるい

は燃焼から爆轟に転移する確率が極めて小さい物質および混合物。

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(f) 等級 1.6 大量爆発の危険性を有しない極めて鈍感な物品。すなわち、主としてきわめて

鈍感な物質または混合物を含む物品で、偶発的な起爆または伝播の確率をほと

んど無視できるようなものである。

2.1.2.2 爆発物(不安定爆発物に分類されるものを除く)は、次表に従い危険物輸送に関する国連勧告、

試験方法及び判定基準のマニュアルの第Ⅰ部にある試験シリーズ 2~8 にもとづいて、上記の六種類の等

級のいずれかに分類される。

表 2.1.1 爆発物の判定基準

区分 判定基準

不安定 a爆発物ま

たは等級 1.1~

等級 1.6 の爆発

等級 1.1~等級 1.6 の爆発物について、以下の試験は実施が必要とされる核と

なる試験シリーズである。 爆発性: 国連 試験シリーズ 2(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び

判定基準のマニュアルの第 12 項)による。 意図的な爆発物 bは国連 試験シリーズ 2 の対象でない。

感 度: 国連 試験シリーズ 3(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び

判定基準のマニュアルの第 13 項)による。 熱安定性:国連 試験 3 (c)(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定

基準のマニュアルの第 13.6.1 項)による。 正しい等級の決定にはさらに試験が必要である。

a 不安定爆発物とは、熱的に不安定である、または通常の取扱または使用に対して鋭敏すぎる爆発

物をいう。特別の注意が必要である。 b これには、爆発または火工品的効果を実質的に発生させる目的で製造された物質、混合物および

物品が含まれる。 注記 1:包装物とされた爆発性物質または混合物および物品は、等級 1.1 から等級 1.6 に分類すること

ができるが、規制の目的によっては、さらに隔離区分 A から隔離区分 S に細分類して技術要件を区別す

る(危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則第 2.1 章参照)。 注記 2:ある種の爆発性物質および混合物は、水もしくはアルコールで湿性とするか、その他の物質で

希釈するかまたは水もしくは他の液体に溶解または懸濁して、その爆発性を抑制あるいは減じている。

これらは、鈍感化爆発物として分類する候補としてよいし(2.17 章参照)、または規制の目的(例:輸

送)によっては、爆発性物質および混合物とは別のもの(鈍感化爆発物)として扱うことができる、

1.3.2.4.5.2 参照。 注記 3:固体物質または混合物の分類試験では、当該物質または混合物は提供された形態で試験を実施

するべきである。たとえば、供給または輸送が目的で、同じ物質が、試験したときとは異なった物理的

形態で、かつ、分類試験の実施を著しく変える可能性が高いと考えられる形態で提供される場合には、

その物質もまたその新たな形態で試験しなければならない。

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2.1.3 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示 (第 1.4 章)に定める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.1.2 爆発物に関するラベル要素

不安定 爆発物

等級 1.1 等級 1.2 等級 1.3 等級 1.4 等級 1.5 等級 1.6

シンボル 爆弾の爆発 爆弾の爆発 爆弾の爆発 爆弾の爆発 爆弾の爆発または

オレンジ色の地に 1.4の数字 a

オレンジ色の地に 1.5の数字 a

オレンジ色の地に 1.6の数字 a

注意喚起語

危険 危険 危険 危険 警告 危険 注意喚起語なし

危険有害性情報

不安定 爆発物

爆発物;大量爆発危険

爆発物;激しい飛散危

険性

爆発物;火災、爆風、または飛散危険性

火災または飛散危険性

火災時に大量爆発のお

それ

危険有害性情報なし

a規制目的(輸送など)に応じて、物質、混合物および物品に適用する。 注記1:包装されていないあるいは元のような包装以外の包装で梱包されなおした爆発物が、表 2.1.2に示されたシンボル、注意喚起語あるいは危険有害性情報に一致する区分の危険有害性情報が記載されていない場合には、以下のようなラベル要素をつけなければならない: (a) シンボル:爆弾の爆発 (b) 注意喚起語:「危険」 (c) 危険有害性情報:「大量爆発危険性」、 注記2:危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 I 部、第 12 節の試験シリーズ2において陽性結果を示し、爆発物としての分類から除外されている(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 I 部、第 16 節の試験シリーズ6における陰性結果に基づく)、供給された物質および混合物はなお爆発性を有する。使用者には、取扱い-特に物質または混合物が梱包から取り出されるあるいは再梱包される場合―および貯蔵の際に考慮されなければならないので、これらの潜在的爆発性について知らせるべきである。このような理由から、物質または混合物の爆発性は表 1.5.2 にしたがって安全データシートの第 2 節(危険有害性の要約)および第 9 節(物理的および化学的性質)、および安全データシートの他の節に適当に記載されるべきである。 2.1.4 判定論理および手引き 次の判定論理および手引きは、この調和分類システムには含まれないが、ここでは追加手引きとして定めている。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解することを強く勧める。 2.1.4.1 判定論理 物質、混合物および物品を爆発物に分類し、さらに等級を割り当てるには、三段階の極めて複雑な手順がある。危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第Ⅰ部を参照する必要がある。第一段階は、その物質または混合物に爆発性効果があるかどうかを確かめることである(試験シリーズ1)。第二段階は、判定手順(試験シリーズ 2~4)であり、第三段階は危険性等級の割当(試験シリーズ 5~7)である。“硝酸アンモニウム エマルジョンまたは サスペンジョン若しくはゲル、含水爆薬中間体(ANE)”が酸化性液体(第 2.13 章)または酸化性固体(2.14 章)に分類するだけ十分に鈍感であるかどうかを評価するには試験シリーズ 8 の試験により解答が得られる。分類手順は次の判定論理に従う(図 2.1.1~2.1.4 参照)。

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図 2.1.1 爆発物(輸送におけるクラス1)の物質、混合物または物品の分類手順の全体的なスキーム

隔離区分の割当

分類すべき物質、混合物または物品

不安定爆発物に

分類 除外

爆発物ではない

等 級 の 割 当

隔離区分 A, B, C, D, E, F

G, H, J, K, L, N または S

分類コード

判定手順

爆発物に分類

等 級 1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5

または 1.6

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図 2.1.2 物質、混合物または物品を暫定的に爆発物と判定する際の手順 Yes Yes No

Yes Ye No Yes No No No Yes Yes Yes Yes

Yes No

No Yes Yes _________________________ * 分類のためには試験シリーズ 2 から開始する。

分類すべき物質/混合物

物質/混合物を封入

または包装する

爆発物でない

不安定爆発物に分類

不安定爆発物に分類

暫定的に爆発物と判定

(図 2.1.3 に進む)

試験シリーズ 8

図 2.1.4 へ

物質/混合物は実用的な爆薬または火工品としての効果を生じるよう製造されているか?

物質/混合物は爆破用爆薬中間体としての硝酸アンモニウムエマルジョン、サスペンジョンまたはゲルであるか?

物質/混合物は

爆発物と判定するには

鈍感すぎるか?

物品、包装された物品

または物質/混合物は

危険すぎるか?

試験シリーズ 4

物質/混合物は

爆発物であると考えられる

試験シリーズ 3

物質/混合物は

熱的に安定か?

物質/混合物は

試験した形態では

危険すぎるか?

分類すべき物品

試験シリーズ 1 *

爆発性物質/混合物?

試験シリーズ 2

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図 2.1.3 爆発物(輸送におけるクラス1)の等級決定手順 _________________________ 1 詳細は危険物輸送に関する国連勧告モデル規則の第 3.3 章を参照のこと。

暫定的に爆発物と判定した物品または物質/混合物

(図 2.1.2 から)

物品は 等級1.6の

候補物品か?

Yes

試験シリーズ 7

物質/混合物 は等級1.5の 候補か?

Yes

試験シリーズ 5

極めて鈍感な

爆発物か?

Yes

大量爆発危険性の ある非常に鈍感な物質

/混合物であるか?

試験シリーズ 6

No

主な危険性 は危険を伴う飛散 によるものか?

No

主要な 危険性は輻射熱

または激しい燃焼であるが 危険を伴う爆風または飛散 の危険性は伴わないか?

No

その危険性

は周辺の消火活動 を妨害するか?

輸送物外に

危険性が及ぶか?

Yes

爆発または火工品的

効果を実質的に発生させる

目的で製造された物質/混合物または製品で

あるか?

その製品は 定義により除外さ

れる製品か? (2.1.1.2 (b)

参照)

No

No

Yes

Yes

等級 1.4 隔離区分グループ

S

等級 1.5

等級 1.6

爆発物

でない

No

Yes

等級 1.4 隔離区分グループ

は S 以外

等級 1.2

等級 1.3

等級1.1

Yes

Yes

Yes

No

Yes No

No

No 物質/混合

物を包装

する

No Yes

大量爆発するか?

特別規則 347 が

適用されるか?1

Yes

No

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図 2.1.4 硝酸アンモニウムエマルジョン、サスペンジョンまたはゲルの分類手順(ANE) No Yes

Yes Yes No Yes No

2.1.4.2 手引き 2.1.4.2.1 爆発性状は、反応によって温度または圧力の極めて急激な上昇を生じる可能性のある特定の

原子団が分子内に存在することと関係している。スクリーニング手順は、そのような反応原子団の有無

および急激なエネルギー放出の可能性を識別することを目的としている。スクリーニング手順でその物

質または混合物が潜在的爆発物であると識別された場合には、判定手順(危険物輸送に関する国連勧告、

試験方法及び判定基準のマニュアルの第 10.3 項参照)によらなければならない。 注記:有機物質の発熱分解エネルギーが 800J/g 未満である場合には、シリーズ 1 の類の爆轟伝播試験

もシリーズ 2 の類の爆轟衝撃感度試験も必要ではない。分解エネルギーが 800J/g 以上の有機物質及び

混合物については、標準 No.8 起爆薬による ballistic mortar MK.IIID 試験 (F.1) あるいは ballistic mortar 試験 (F.2) あるいは BAM Trauzal 試験(F.3) による結果が「否」である場合、シリーズ1の類

の試験もシリーズ 2 の類の試験も行う必要はない。この場合、試験 1(a)および試験 2(a)の結果は「-」

とされる。

不安定爆発物と分類する

物質/混合物は不安定爆発物以外の爆発

物に分類されると考える。

図 2.1.3 における質問「大量爆発危険性

のある極めて鈍感な物質/混合物である

か?」への答えが「いいえ」の場合、物

質/混合物は等級 1.1 に分類される。

物質/混合物は等級1.5の爆発物として分

類されると考え、試験シリーズ 5 に進む。

図 2.1.3 における質問「大量爆発危険性

のある極めて鈍感な物質/混合物である

か?」への答えが「はい」の場合、物質

/混合物は等級 1.5 に分類される。

答えが「いいえ」の場合、物質/混合物は

等級 1.1 に分類される。

試験シリーズ 8

試験 8(a) 熱安定性試験

物質/混合物は熱的に 安定か?

試験 8(b) ANE 大型ギャップ試験

物質/混合物を酸化性液体又は酸化性固体に分類するには衝撃に対して鋭敏過ぎるか?

試験 8(c) ケーネン試験 物質は密封下では高熱に対し

て鋭敏過ぎるか?

物質/混合物は、硝酸アンモニウムエマルジョン、サスペンジ

ョンまたはゲル 、含水爆薬中間体(ANE)として酸化性液体区

分 2 または酸化性固体区分 2 に分類する

(2.13 章あるいは 2.14 章)

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2.1.4.2.2 以下の場合には、危険性クラス「爆発物」の容認された分類手順を適用する必要はない。

(a) 分子内に爆発性に関わる原子団がない。爆発性を示唆すると思われる原子団の例は危険物

輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル の付録 6 の表 A6.1 に示す; または

(b) 物質が酸素を含む爆発性の性質に関連した原子団を含んでいる、および酸素収支の計算値

が‐200 より低い。

酸素収支は化学反応に対して次式により算出される。

CxHyOz + [x + (y/4) – (z/2)] O2 → x CO2 + (y/2) H2O.

この場合には次式を用いる。

酸素収支= –1600[2.x + (y/2) –z]/分子量

(c) 爆発性に関連する原子団を含む、有機物質または有機物質の均一な混合物:

- 発熱分解エネルギーが 500 J/g 未満である、または

- 発熱分解開始が 500 ºC 以上

表 2.1.3 に示すとおりである。

表 2.1.3:有機物質または有機物質の均一な混合物に関する危険性クラス「爆発

物」の容認された判定手順の適用の可否

分解エネルギー (J/g)

分解開始温度 (°C)

容認された判定手順

適用の可否? (Yes/No)

< 500 < 500 No

< 500 ≥ 500 No

≥ 500 < 500 Yes

≥ 500 ≥ 500 No

発熱分解エネルギーは適切な熱量測定法により決定することができる(危険物輸送に関する

国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル 20.3.3.3 を参照)。;または

(d) 無機酸化性物質と有機物質との混合物では、その無機酸化性物質の濃度が;

重量で 15%未満、但し酸化性物質が区分 1 または 2 に分類される場合。 重量で 30%未満、但し酸化性物質が区分 3 に分類される場合。

2.1.4.2.3 混合物が既知の爆発物のいずれかを含む場合には、爆発物の判定手順を実施しなければなら

ない。

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第 2.2 章

可燃性/引火性ガス

2.2.1 定義

2.2.1.1 可燃性/引火性ガスとは、標準気圧 101.3kPa で 20℃において、空気との混合気が燃焼範囲を

有するガスをいう。

2.2.1.2 自然発火性ガスとは、54 ºC 以下の空気中で自然発火しやすいような可燃性/引火性ガスをいう。 2.2.1.3 化学的に不安定なガスとは、空気や酸素が無い状態でも爆発的に反応しうる可燃性/引火性ガス

をいう。 2.2.2 分類基準

2.2.2.1 可燃性/引火性ガスは、次表に従ってこのクラスにおける2つの区分のいずれかに分類される。

表 2.2.1 可燃性/引火性ガスの判定基準

区分 判定基準 1 標準気圧 101.3kPa で 20℃において以下の性状を有するガス;

(a) 濃度が 13%(容積分率)以下の空気との混合気が可燃性/引火性であるもの、または (b) 爆発(燃焼)下限界に関係なく空気との混合気の爆発範囲(燃焼範囲)が 12%以上のもの。

2 区分 1 以外のガスで、標準気圧 101.3kPa で 20℃においてガスであり、空気との混合気が爆発範囲(燃焼範囲)を有するもの。

注記 1:アンモニアおよび臭化メチルは、規制目的によっては特殊例と見なされる。 注記 2:エアゾールは可燃性/引火性ガスと分類すべきではない、第 2.3 章参照。 2.2.2.2 下記の表の判定基準を満足すれば、可燃性/引火性ガスは追加的に自然発火性ガスと分類される:

表 2.2.2 自然発火性ガスの判定基準

区分 判定基準

自然発火性ガス 54 ºC 以下の空気中で自然発火する可燃性/引火性ガス

注記 1:自然発火性ガスの自然発火は常に直ちに起こるとは限らず、遅れることもある。

注記 2:可燃性/引火性ガスの混合物で、自然発火性に関するデータがなく、1%を超える(容量)自然

発火性成分を含む場合には自然発火性ガスに分類するべきである。 2.2.2.3 化学的に不安定でもある可燃性/引火性ガスは、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 III 部に記載されている方法を用いて、以下の表に従って化学的に不安定なガスの2つの中の1つに追加的に

分類される。

表 2.2.3 化学的に不安定なガスの判定基準

区分 判定基準 A 標準気圧 101.3kPa で 20℃において化学的に不安定である可燃性/引

火性ガス B 気圧 101.3kPa 超および/または 20℃超において化学的に不安定であ

る可燃性/引火性ガス

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2.2.3 危険有害性情報の伝達

2.2.3.1 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可し

た場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.2.4 可燃性/引火性ガスのラベル要素 可燃性/引火性ガス 追加的細区分

自然発火性ガス 化学的に不安定なガス 区分 1 区分 2 自然発火性ガス 区分 A 区分 B

シンボル 炎 シンボルなし 炎 追加的シンボルなし

追加的シンボルなし

注意喚起語 危険 警告 危険 追加的注意喚起語なし

追加的注意喚起語なし

危険有害性 情報

極めて可燃性/引火性の高い

ガス

可燃性/引火性の高いガス

空気に触れると自然発火するお

それ

空気が無くても爆発的に反応す

るおそれ

圧力および/または温度が上昇した場合、空気が無くても爆発的に反応するおそれ

2.2.3.2 可燃性/引火性ガスやガスの混合物が追加的に 1 つ以上の細区分に分類された場合、すべての関

連する分類は附属書 4 で定められているように安全データシートにおいて伝達されるべきで、関連する

危険有性情報の要素はラベルに含まれるべきである。 2.2.4 判定論理および手引き 次の判定論理および手引きは、この調和分類システムには含まれないが、ここでは追加手引きとして

定めている。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく

調べ理解することを強く勧める。 2.2.4.1 可燃性/引火性ガスの判定論理

可燃性/引火性ガスの分類には、その可燃性/引火性に関するデータが求められる。分類は次の判定論

理 2.2 (a) に従う。 判定論理 2.2 (a)

標準気圧 101.3kPa および 20℃において

空気との混合気に爆発範囲(燃焼範囲)があるか?

標準気圧 101.3kPa および 20℃において 以下が該当する。 (a) 濃度が 13%(容積分率)以下の空気と

の混合気が可燃性/引火性であるか?または

(b) 爆発(燃焼)下限界に関係なく空気と の混合気の爆発範囲(燃焼範囲)が 12%以上

であるか?

区分外

区分 1

危険

Yes

Yes

No

ガス状物質またはガスの混合物

判定論理 2.2(b) お よ び

2.2(c)へ

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2.2.4.2 自然発火性ガスの判定論理

可燃性/引火性ガスを自然発火性ガスと分類するためには、空気中で発火する性質に関するデータが必

要である。分類は判定論理 2.2 (b)にしたがう。

判定論理 2.2 (b)

2.2.4.3 化学的に不安定なガスの判定論理

化学的に不安定なガスの分類には、その化学的な不安定性に関するデータが求められる。分類は次の

判定論理 2.2 (c) に従う。 判定論理 2.2 (c) _________________________ 1 可燃性/引火性ガスの混合物で、自然発火性に関するデータがなく、1%を超える(容量)自然発火性

成分を含む場合には自然発火性ガスに分類するべきである。

区分 2 シンボルなし 警告

No

標準気圧 101.3kPa および 20℃において 化学的に不安定か?

気圧 101.3kPa 超および/または 20℃超において化

学的に不安定か?

化学的に不安定とは

分類されない

区分B(化学的に不安定なガス)

追加的シンボルなし

追加的注意喚起語なし Yes

No

Yes

No

可燃性/引火性ガスまたはガス混合物

区分A(化学的に不安定なガス)

追加的シンボルなし

追加的注意喚起語なし

判定論理2.2(b) お よ び2.2(c)へ

可燃性/引火性ガス

可燃性/引火性ガスが 54℃以下の空気中で自然発火するか?1

Yes

自然発火性ガス

危険

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2.2.4.4 手引き

2.2.4.4.1 可燃性/引火性は ISO の採択する方法に従って、試験または計算により決定すべきである(ISO 10156:2010「ガスおよびガス混合物-シリンダー放出弁の選択のための着火および酸化能力の決定」参照)。これらの方法を利用するための十分なデータがない場合には、所管官庁が認める類似の方法による試験を用いることができる。 2.2.4.4.2 自然発火性は、54°C において IEC 60079-20-1 ed1.0 (2010-01) 「爆発雰囲気 – Part 20-1:ガスおよび蒸気の分類に関する材料の特性– 試験方法及びデータ」または DIN 51794「石油製品の発火温度の測定」のいずれかの方法により測定する。

2.2.4.4.3 生産または取扱いにおける経験で物質が 54 ºC 以下で空気に接触しても自然に発火しないこ

とがわかっている場合には、自然発火性ガスの分類手順を適用する必要はない。自然発火性が試験され

ておらずしかも 1%を超える自然発火性成分を含む可燃性/引火性ガスの混合物は自然発火性ガスと分類

されるべきである。自然発火性ガスおよびその混合物の性質や物理的危険性に関する専門家の判断は、

1%以下の自然発火性成分を含む可燃性/引火性ガスの混合物の分類が必要な場合に行われるべきである。

この場合、専門家の判断が分類をおこなうために追加的なデータを必要としているとした場合のみ、試

験が検討される必要がある。

2.2.4.4.4 化学的不安定性は試験方法及び判定基準のマニュアルの第 III 部に記載されている方法にし

たがって決定される。ISO 10156:2010 にしたがった計算でガス混合物が可燃性/引火性とならなかった

場合には、分類のための化学的不安定性を見る試験を行う必要はない。 2.2.5 例:ISO 10156: 2010 に従った計算による可燃性/引火性ガス混合物の分類 公式

ここで:

Vi% 相当する可燃性/引火性ガスの含量 Tci 混合物が空気中ではまだ可燃性/引火性とならない窒素中の可燃性/引火性ガス最大濃度 i 混合物の i 番目のガス n 混合物中の n 番目のガス

Ki 不活性ガス対窒素に関する等価係数 ガス混合物に窒素以外の不活性希釈ガスが含まれる場合、この希釈ガスの体積はその不活性ガスの等

価係数(Ki)を用いて補正し窒素の等価体積とする。 判定基準

ガス混合物 この例においては、次式のガス混合物を用いる。

2% (H2) + 6% (CH4) + 27% (Ar) + 65% (He) 計算 1. 窒素に対するこれら不活性ガスの各等価係数(Ki)を確認する。

Ki (Ar) = 0.5 Ki (He) = 0.5

2. 不活性ガスの Ki 値を用いて窒素をバランスガスとして等価の混合物を計算する。 2% (H2) + 6% (CH4) + [27%×0.5 + 65%×0.5] (N2) = 2% (H2) + 6% (CH4) + 46% (N2) = 54%

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3. 含量合計を補正して 100%とする。

× [2% (H2) + 6% (CH4) + 46% (N2) ] = 3.7% (H2) + 11.1% (CH4) + 85.2% (N2)

4. これらの可燃性/引火性ガスの Tci 係数を確かめる。 Tci H2 = 5.7% Tci CH4 = 14.3%

5. 次式を用いて等価の混合物の可燃性/引火性を計算する。

= 3.7

5.7 +

11.1

14.3 = 1.42

1.42>1 であり、したがってこの混合物は可燃性/引火性である。

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第 2.3 章

エアゾール

2.3.1 定義

エアゾール、すなわちエアゾール噴霧器とは、圧縮ガス、液化ガスまたは溶解ガス(液状、ペースト

状または粉末を含む場合もある)を内蔵する金属製、ガラス製またはプラスチック製の再充填不能な容

器に、内容物をガス中に浮遊する固体もしくは液体の粒子として、または液体中またはガス中に泡状、

ペースト状もしくは粉状として噴霧する噴射装置を取り付けたものをいう。 2.3.2 分類基準

2.3.2.1 エアゾールはその可燃性および燃焼熱量によって 3 つの区分のうちの1つに分類される。次の

GHS 判定基準にしたがった可燃性/引火性に分類される成分(質量)を 1%を超えて含むエアゾールの

分類は、区分1あるいは 2 とするべきである。 GHS 判定基準:

- 可燃性/引火性ガス(第 2.2 章参照)

- 引火性液体(第 2.6 章参照)

- 可燃性固体(第 2.7 章参照)

または燃焼熱量が少なくとも 20kJ/g であるエアゾール。 注記 1:可燃性/引火性成分には自然発火性物質、自己発熱性物質または水反応性物質は含まない。なぜ

ならば、これらの物質はエアゾール内容物として用いられることはないためである。 注記 2:エアゾールを、追加的に第 2.2 章(可燃性/引火性ガス)、第 2.5 章(高圧ガス)、第 2.6 章(可

燃性/引火性液体)あるいは第 2.7 章(可燃性固体)とすることはない。しかしエアゾールはその中身に

よって他の危険有害性クラスになり、それらのラベル要素が必要になるであろう。 2.3.2.2 エアゾールは、それを構成する物質、その化学燃焼熱、および該当する場合には泡試験(泡エ

アゾールの場合)ならびに火炎長(着火距離)試験と密閉空間試験(噴射式エアゾールの場合)にもと

づいて、可燃性/引火性エアゾールのクラスにおける2つの区分のいずれかに分類される。第 2.3.4.1 項

の判定論理参照。区分 1 または区分 2(極めて引火性の高いまたは引火性の高いエアゾール)の判定基

準に一致しないエアゾールは区分 3(非引火性エアゾール)と分類するべきである。 注記:本章で可燃性/引火性の分類の手順を踏まない、1%超の可燃性/引火性成分を含むまたは燃焼熱が

少なくとも 20kJ/g のエアゾールは、区分 1 に分類するべきである。 2.3.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

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表 2.3.1 エアゾールのラベル要素

区分 1 区分 2 区分 3 シンボル 炎 炎 シンボルなし 注意喚起語 危険 警告 警告 危険有害性情報 極めて可燃性/引火性の

高いエアゾール 高圧容器:

熱すると破裂のおそれ

可燃性/引火性の高いエア

ゾール 高圧容器:

熱すると破裂のおそれ

高圧容器: 熱すると破裂のおそれ

2.3.4 判定論理および手引き

次の判定論理および手引きは、この調和分類システムには含まれないが、ここでは追加手引きとして

定めている。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく

調べ理解することを強く勧める。 2.3.4.1 判定論理 エアゾールを分類するには、その可燃性/引火性成分、その化学燃焼熱、および該当する場合には泡試

験(泡エアゾールの場合)ならびに火炎長(着火距離)試験および密閉空間試験(噴射式エアゾールの

場合)に関するデータが求められる。分類は 2.3(a)から 2.3(c)の判定論理に従うべきである。 判定論理 2.3(a) エアゾール 噴射式エアゾールの場合は判定論理 2.3(b)に進む 泡エアゾールの場合は判定論理 2.3(c)に進む

可燃性/引火性成分の含有率(質量)が 1%以下 かつ

燃焼熱が 20kJ/g 未満か?

可燃性/引火性成分の含有率(質量)が 85%以上

かつ 燃焼熱が 30kJ/g 以上か?

エアゾール

区分 1

危険

Yes

No

Yes

No

区分 3 シンボルなし

警告

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判定論理 2.3(b) 噴射式エアゾール

燃焼熱量が 20kJ/g 未満であるか?

火炎長(着火距離)試験で 75cm 以上の距離で着

火するか?

噴 射 式 エ ア ゾ ー ル

区分 1

危険

Yes

区分 2

警告

火炎長(着火距離)試験で、15cm 以上の距離で

着火するか?

密閉空間着火試験で以下の結果となるか? (a) 着火時間換算 300 秒/m3以下、または (b) 爆発限界(燃焼限界)300g/m3以下

Yes

Yes

区分 2

警告

No

No

No

Yes

区分 2

警告

No

区分 3 シンボルなし

警告

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判定論理 2.3(c) 泡エアゾール

2.3.4.2 手引き

2.3.4.2.1 化学燃焼熱(ΔHc)(単位はグラムあたりのキロジュール kJ/g)は、理論燃焼熱(ΔHcomb)と燃焼効率(一般的に 1.0 未満であり、代表的な効率は 0.95 または 95%である)の積である。 混合物を調合したエアゾールに対しては、化学燃焼熱は、次式に示す各成分の重み付け燃焼熱の合計

である。

Hc (product) = n

i

[ wi% x Hc(i)]

ここで ΔHc = 化学燃焼熱(kJ/g) wi% = 当該製品を構成する成分 i の重量百分率 ΔHc(i) = 当該製品を構成する成分 i の燃焼熱(kJ/g)

化学燃焼熱は、文献報告値、計算値または試験(ASTM D 240, ISO/FDIS 13943:1999(E/F) 86.1~86.3および NFPA 30B)による測定値でもよい。 2.3.4.2.2 着火距離試験、密閉空間着火試験および泡エアゾール可燃性/引火性試験については、危険物

輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 31.4 項、第 31.5 項および第 31.6 項を

参照。

泡試験で、以下の結果となるか? (a) 火炎の高さ 20cm以上および火炎持続時間 2秒以上、

または (b) 火炎の高さ 4cm 以上および火炎持続時間 7 秒以上

泡エアゾール

区分 1

危険 Yes

区分 2

警告

泡試験で火炎の高さが 4cm 以上および火炎持続時間 2 秒以上であるか?

No

Yes

No 区分 3

シンボルなし 警告

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第 2.4 章

支燃性/酸化性ガス

2.4.1 定義

支燃性/酸化性ガスとは、一般的には酸素を供給することにより、空気以上に他の物質の燃焼を引き起

こす、または燃焼を助けるガスをいう。 注記:「空気以上に他の物質の燃焼を引き起こすガス」とは、ISO 10156:2010 により定められる方法に

よって測定された 23.5%以上の酸化能力を持つ純粋ガスあるいは混合ガスをいう。 2.4.2 分類基準

支燃性/酸化性ガスは、次表に従ってこのクラスにおける単一の区分に分類される。

表 2.4.1 支燃性/酸化性ガスの判定基準

区分 判定基準 1 一般的には酸素を供給することにより、空気以上に他の物質の燃焼

を引き起こす、または燃焼を助けるガス 2.4.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.4.2 支燃性/酸化性ガスのラベル要素

区分 1 シンボル 円上の炎 注意喚起語 危険 危険有害性情報 発火または火災助長のおそれ;酸化性物質

2.4.4 判定論理および手引き

次の判定論理および手引きは、この調和分類システムには含まれないが、ここでは追加手引きとして

定めている。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく

調べ理解することを強く勧める。

2.4.4.1 判定論理

支燃性/酸化性ガスの分類には、ISO 10156:2010「ガスおよびガス混合物-シリンダー放出弁の選択の

ための着火および酸化能力の決定」に記載された試験または計算方法を実施するべきである。

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判定論理 2.4 支燃性/酸化性ガス 2.4.4.2 手引き

ISO-10156:2010 に従った計算による支燃性/酸化性ガス混合物分類の例 ISO-10156 に記載されている分類方法では、ガス混合物の酸化力が 0.235(23.5%)を超える場合に

ガス混合物は空気よりもより酸化力が高いとみなされるべきである、という判定基準を採用している。 酸化力(oxidizing power: OP)は以下のように計算される:

ここで、

Xi = 混合物中 i 番目の支燃性/酸化性ガスのモル分率 Ci = 混合物中 i 番目の支燃性/酸化性ガス酸素等量係数 Kk = 窒素と比較した非活性ガス k の当量係数 Bk = 混合物中 k 番目の非活性ガスのモル分率 n = 混合物中の支燃性/酸化性ガスの総数 p = 混合物中の非活性ガスの総数

混合物例:9% (O2) + 16% (N2O) + 75% (He)

計算手順 ステップ 1: 当該混合物中の支燃性/酸化性ガスの酸素当量(Ci)係数および非可燃性/引火性、非酸化性ガスの窒素

当量係数(Kk)を確認する。

Ci (N2O) = 0.6 (亜酸化窒素) Ci (O2) = 1(酸素) Kk(He) = 0.9(ヘリウム)

当該ガスは空気以上に他の物質の燃焼に寄

与するか?

ガス状物質またはガス混合物

Yes

No

区分外

区分 1

危険

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ステップ 2: ガス混合物の酸化力を計算する

したがって混合物は支燃性/酸化性ガスとはみなされない。

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第 2.5 章

高圧ガス

2.5.1 定義

高圧ガスとは、20℃、200kPa(ゲージ圧)以上の圧力の下で容器に充填されているガスまたは液化

または深冷液化されているガスをいう。 高圧ガスには、圧縮ガス;液化ガス;溶解ガス;深冷液化ガスが含まれる。

2.5.2 分類基準

2.5.2.1 高圧ガスは、充填された時の物理的状態によって、次表の 4 つのグループのいずれかに分類さ

れる。

表 2.5.1 高圧ガスの判定基準

グループ 判定基準 圧縮ガス

加圧して容器に充填した時に、-50℃で完全にガス状であるガス;

臨界温度-50℃以下のすべてのガスを含む。

液化ガス

加圧して容器に充填した時に-50℃を超える温度において部分的に

液体であるガス。次の 2 つに分けられる。 (a) 高圧液化ガス:臨界温度が-50℃と+65℃の間にあるガス; および (b) 低圧液化ガス:臨界温度が+65℃を超えるガス

深冷液化ガス

容器に充填したガスが低温のために部分的に液体であるガス。

溶解ガス

加圧して容器に充填したガスが液相溶媒に溶解しているガス。

臨界温度とは、その温度を超えると圧縮の程度に関係なく純粋ガスが液化されない温度をいう。 注記:エアゾールは高圧ガスとして分類するべきではない。第 2.3 章参照。 2.5.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.5.2 高圧ガスのラベル要素 圧縮ガス 液化ガス 深冷液化ガス 溶解ガス

シンボル ガスボンベ ガスボンベ ガスボンベ ガスボンベ 注意喚起語 警告 警告 警告 警告 危険有害性

情報 高圧ガス;熱す

ると爆発する

おそれ

高圧ガス;熱す

ると爆発する

おそれ

深冷液化ガス;凍

傷または傷害の

おそれ

高圧ガス;熱する

と爆発するおそ

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2.5.4 判定論理および手引き

次の判定論理および手引きは、この調和分類システムには含まれないが、ここでは追加手引きとして

定めている。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく

調べ理解することを強く勧める。

2.5.4.1 判定論理

分類は判定論理 2.5 にしたがって行う事ができる。 判定論理 2.5 高圧ガス

高圧ガスとは分類されない

溶解ガス

警告

Yes

No

Yes

No

臨界温度は+65℃より高いか?

Yes

当該ガスは-50℃より高い温度で部分的に液体か?

No

当該ガスは-50℃で完全にガス状であるか?

No

深冷液化ガス

警告

Yes

(低圧)

液化ガス

警告 Yes

(高圧)

液化ガス

警告

圧縮ガス

警告

Yes

臨界温度は-50℃と+65℃の間であるか?

当該ガスは液体溶媒に溶解しているか?

当該ガスは 20℃における圧力が 200kPa(ゲージ圧)以

上で容器に入っているか、または当該ガスは液化あるい

は液化冷却されているか?

物質または混合物はガスである

Yes

当該ガスは低温のため部分的に液化しているか

No

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2.5.4.2 手引き

このグループのガスには次の既知情報が必要である。

(a) 50℃における蒸気圧

(b) 20℃および標準気圧における物理的性状

(c) 臨界温度

ガスの分類には、上記のデータが必要である。データは文献、計算または試験測定で得られる。ほと

んどの純粋ガスは危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則ですでに分類されている。ほとんどの混合

物は非常に複雑な追加計算が必要となる。

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第 2.6 章

引火性液体

2.6.1 定義

引火性液体とは、引火点が 93℃以下の液体をいう。

2.6.2 分類基準

引火性液体は、次表に従ってこのクラスにおける 4 つの区分のいずれかに分類される。

表 2.6.1 引火性液体の判定基準

区分 判定基準 1 引火点< 23℃および初留点≦35℃ 2 引火点< 23℃および初留点>35℃ 3 引火点≧23℃および≦60℃ 4 引火点> 60℃および≦93℃

注記 1:引火点が 55℃から 75℃の範囲内にある軽油類、ディーゼル油および軽加熱油は、規制目的に

よっては1つの特殊グループとされることがある。 注記 2:引火点が 35℃を超え 60℃を超えない液体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判

定基準のマニュアルの燃焼持続試験 L.2 において否の結果が得られている場合は、規制目的(輸送など)

によっては引火性液体とされないことがある。 注記 3:ペイント、エナメル、ラッカー、ワニス、接着剤、つや出し剤等の粘性の引火性液体は、規制

目的(輸送など)によっては1つの特殊グループとされることがある。この分類またはこれらの液体を

非引火性とすることは、関連法規または所管官庁により決定することができる。 注記 4:エアゾールは引火性液体と分類すべきではない、第 2.3 章参照。 2.6.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.6.2 引火性液体のラベル要素

区分 1 区分 2 区分 3 区分 4 シンボル 炎 炎 炎 シンボルなし 注意喚起語 危険 危険 警告 警告

危険有害性情報 極めて引火性の

高い液体および

蒸気

引火性の高い

液体および蒸気

引火性液体

および蒸気 可燃性液体

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2.6.4 判定論理および手引き

次の判定論理および手引きは、調和分類システムに含まれないが、ここでは追加手引きとして定めて

いる。分類責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理

解することを強く勧める。 2.6.4.1 判定論理

引火点および初留点が既知の場合は、その物質または混合物の分類および調和された関連表示情報は

次の枝分かれ図から得られる。

判定論理 2.6 引火性液体

────────────────

1 引火点が 55℃から 75℃の範囲内にある軽油類、ディーゼル油および軽加熱油は、規制目的によっては1つの特殊グ

ループと見なされる。なぜならば、これらの炭化水素類の混合物はこの範囲で引火点が変わるためである。従って、これ

らの製品を区分 3 または区分 4 への分類は、関連法規または所管官庁が判断することができる。 2 引火点が 35℃より高く 60℃を超えない液体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュ

アルの燃焼持続性試験 L.2 において否の結果が得られている場合には、規制目的(輸送など)によっては引火性液体と

されないことがある。

区分 3

警告

区分4

シンボル なし 警告 Yes1,2

Yes

No

初留点は 35℃より高いか?

区分外

引火点は 23℃以上か?

引火点は 60℃より高いか?

引火点は 93℃以下か?

物質/混合物は液体である

Yes1,2

No

区分 2

危険

Yes

No

区分 1

危険

No

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2.6.4.2 手引き

2.6.4.2.1 引火性液体を分類するには、その引火点および初留点に関するデータが必要である。データ

は試験結果、文献報告値または計算により決定できる。

2.6.4.2.2 混合物 3 を構成している既知の引火性液体の濃度がわかっている場合、その混合物がたとえ

ば高分子や添加剤などの非揮発性成分を含んでいたとしても、もし下記 2.6.4.2.3 に示す方法で当該混合

物の引火点計算値が、関連する分類基準(それぞれ 23℃および 60℃)より 5℃以上 4 高い場合には、次

の各項を満たすことを条件にその引火点を実験で測定する必要はない。

(a) 混合物を構成する成分が正確にわかっている(その材料の組成範囲が特定されているならば、

引火点計算値が最も低くなる組成を選択して評価すべきである);

(b) 混合物の爆発下限界の計算方法と各成分の爆発下限界がわかっている(こうしたデータを試

験条件以外の別の温度に換算する場合には、該当する補正を行わなければならない);

(c) 混合物中に存在する状態での各成分の飽和蒸気圧および活量係数の温度依存性がわかっている;

(d) 液相が均一である。

2.6.4.2.3 これに適する方法は Gmehling and Rasmussen (Ind. Eng. Chem. Fundament, 21, 186, 1982) に報告されている。たとえば高分子または添加剤等の非揮発性成分を含む混合物では、引火点は

揮発性成分から算出する。非揮発性成分は、その溶媒の分圧を僅か低下させるだけであり、引火点計算

値は測定値より僅かに低いだけであると考えられている。

2.6.4.2.4 データが利用できない場合には、引火点および初留点は試験をして決定しなければならない。

引火点は密閉式試験法で測定しなければならない。開放式試験法は特殊な場合に限って適用される。

2.6.4.2.5 以下の引火性液体の引火点測定方法を使用すべきである。 国際標準:

ISO 1516 ISO 1523 ISO 2719 ISO 13736 ISO 3679 ISO 3680

各国標準:

米国材料試験協会、100 Barr Harbor Drive, P.O.Box C700, West Conshohocken, Pennsylvania, USA 19428-2959:

ASTM D 3828-07a、小規模密閉式試験器による引火点標準試験法 ASTM D 56-05、タグ密閉式試験器による引火点標準試験法 ASTM D 3278-96(2004)、小規模密閉式試験装置による液体の引火点標準試験法 ASTM D 93-08、Pensky-Martens 密閉式試験器による引火点標準試験法

──────────────── 3 これまでのところ計算方法は 6 つの揮発性成分を含む混合物まで有効であると確認されている。これらの成分とし

ては炭化水素、エーテル、アルコール、エステル(アクリレートを除く)のような引火性液体および水である。しかし

反応性に富むアクリレートと同様にハロゲン、硫黄、リン等の化合物を含む混合物に対しては有効性が確認されていな

い。 4 計算した引火点が相当する判定基準よりは大きいもののその差が 5℃未満である場合には、計算結果は使用せず、

引火点は実験的に求めるべきであろう。

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フランス標準化協会、AFNOR, 11, rue de Pressense. 93571 La Plaine Saint-Denis Cedex:

フランス標準 NF M 07-019 フランス標準 NF M 07-011/NF T 30-050/NF T 66-009 フランス標準 NF M 07-036

ドイツ規格協会、Burggrafenstr. 6,D-10787 Berlin: 標準規格 DIN 51755 (引火点 65℃以下)

ロシア連邦閣僚会議国家標準委員会、113813, GSP, Moscow, M-49 Leninsky Prospect, 9

GOST 12.1.044-84 2.6.4.2.6 以下の引火性液体の初留点測定方法を使用すべきである。 国際標準:

ISO 3924 ISO 4626 ISO 3405

各国標準:

米国材料試験協会、100 Barr Harbor Drive, P.O.Box C700, West Conshohocken, Pennsylvania, USA 19428-2959

ASTM D86-07a 大気圧下での石油製品蒸留標準試験法 ASTM D1078-05 揮発性有機液体の蒸留範囲に関する標準試験法

他の好ましい方法: 委員会規則(EC)No440/2008 5の付属書 A に記載されている方法 A.2 ──────────────── 5 欧州議会および理事会規則(EC)No1907/2006 にしたがって試験方法を定めた、登録、評価、認可および制限(REACH)

に関する 2008 年 5 月 30 日の委員会規則(EC)No440/2008 (欧州連合広報 No.L142. 31.05.2008, p1-739 およびL143、

03.06.2008, p.55)

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第 2.7 章

可燃性固体

2.7.1 定義

可燃性固体とは、易燃性を有する、または摩擦により発火あるいは発火を助長する恐れのある固体を

いう。 易燃性固体とは、粉末状、顆粒状、またはペースト状の物質で、燃えているマッチ等の発火源と短時

間の接触で容易に発火しうる、また、炎が急速に拡散する危険なものをいう。

2.7.2 分類基準

2.7.2.1 粉末状、顆粒状またはペースト状の物質あるいは混合物は、危険物輸送に関する国連勧告、試

験方法および判定基準のマニュアルの第 III 部、33.2.1 項に従って 1 種以上の試験を実施し、その燃焼

時間が 45 秒未満か、または燃焼速度が 2.2mm/秒より速い場合には、易燃性固体として分類される。

2.7.2.2 金属または金属合金の粉末は、発火し、その反応がサンプルの全長にわたって 10 分間以内に

拡散する場合、可燃性固体として分類される。

2.7.2.3 摩擦によって火が出る固体は、確定的な判定基準が確立されるまでは、既存のもの(マッチな

ど)との類推によって、このクラスに分類される。

2.7.2.4 可燃性固体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 III部、33.2.1 項に示すように、試験方法 N.1 を用いて、下記の表に従ってこのクラスにおける2つの区分

のいずれかに分類される。

表 2.7.1 可燃性固体の判定基準

区分 判定基準 1 燃焼速度試験:

金属粉末以外の物質または混合物 (a) 火が湿潤部分を越える、および (b) 燃焼時間<45 秒、または燃焼速度>2.2mm/秒

金属粉末:燃焼時間≦5 分 2 燃焼速度試験:

金属粉末以外の物質または混合物 (a) 火が湿潤部分で少なくとも 4 分間以上止まる、および (b) 燃焼時間<45 秒、または燃焼速度>2.2mm/秒

金属粉末:燃焼時間>5 分 および 燃焼時間≦10 分 注記 1:固体物質または混合物の分類試験では、当該物質または混合物は提供された形態で試験を実施

すること。たとえば、供給または輸送が目的で、同じ物質が、試験したときとは異なった物理的形態で、

しかも評価試験を著しく変える可能性が高いと考えられる形態で提供されるとすると、そうした物質も

またその新たな形態で試験されなければならない。 注記 2:エアゾールは可燃性固体と分類すべきではない、2.3 章参照。

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2.7.3 危険有害性情報の伝達

ラベル表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。付属書 1 に分類とラベル表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が

許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.7.2 可燃性固体のラベル表示要素

区分 1 区分 2 シンボル 炎 炎 注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 可燃性固体 可燃性固体 2.7.4 判定論理

以下の判定論理および手引きは、この調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとし

て定めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推

奨される。

可燃性固体の分類には、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 III部、33.2.1 項に従って試験方法 N.1 を実施すること。この手順は、予備スクリーニング試験および燃焼

速度試験の2つの試験から構成されている。分類は判定論理 2.7 に従う。

判定論理 2.7 可燃性固体

スクリーニング試験

燃焼速度試験 (a) 金属粉末以外の物質または混合物:

燃焼時間< 45 秒 または燃焼速度> 2.2 mm/秒? (b) 金属粉末:燃焼時間10 分?

区分外

区分 1

危険

区分 2

警告

肯定的結果

否定的結果

物質/混合物は固体である

(a) 金属粉末以外の物質または混合物: 火炎の伝播が湿潤部分でとまるか?

(b) 金属粉末:燃焼時間>5 分?

Yes

No 区分外

No

Yes

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第 2.8 章

自己反応性物質および混合物

2.8.1 定義

2.8.1.1 自己反応性物質または混合物は、熱的に不安定で、酸素(空気)がなくとも強い発熱分解を起

し易い液体または固体の物質あるいは混合物である。GHS のもとで、爆発物、有機過酸化物または酸化

性物質として分類されている物質および混合物は、この定義から除外される。

2.8.1.2 自己反応性物質または混合物は、実験室の試験において処方剤が密封下の加熱で爆轟、急速な

爆燃または激しい反応を起こす場合には、爆発性の性状を有すると見なされる。

2.8.2 分類基準

2.8.2.1 自己反応性物質または混合物は、このクラスでの分類を検討すること。ただし下記の場合を除く。

(a) 第 2.1 章の GHS 判定基準に従い、爆発物である

(b) 第 2.13 章または第 2.14 章の判定基準に基づく酸化性液体または酸化性固体、ただし、5%以

上有機可燃性物質を含有する酸化性物質の混合物は注記に規定する手順により自己反応性

物質に分類しなければならない

(c) 第 2.15 章の GHS 判定基準に従い、有機過酸化物である

(d) 分解熱が 300J/g より低い、または

(e) 50kg の輸送物の自己加速分解温度(SADT)が 75℃を超えるもの

注記:酸化性物質の分類の判定基準に適合し、かつ 5%以上有機可燃性物質を含有する酸化性物質の混合

物であって、上記(a)、(c)、(d)又は(e)の基準に適合しないものは自己反応性物質の分類手順に拠らなけ

ればならない;

自己反応性物質タイプ B から F の性状(2.8.2.2 参照)を有する混合物は、自己反応性物質に分類しな

ければならない。

2.8.2.2 自己反応性物質および混合物は、下記の原則に従って、このクラスにおける「タイプ A から G」

の 7 種類の区分のいずれかに分類される。

(a) 包装された状態で爆轟しまたは急速に爆燃し得る自己反応性物質または混合物は自己反応

性物質タイプ A と定義される。

(b) 爆発性を有するが、包装された状態で、爆轟も急速な爆燃もしないが、その包装物内で熱

爆発を起こす傾向を有する自己反応性物質または混合物は自己反応性物質タイプ B として

定義される。

(c) 爆発性を有するが、包装された状態で、爆轟も急速な爆燃も熱爆発も起こすことのない自己

反応性物質または混合物は自己反応性物質タイプ C として定義される。

(d) 実験室の試験で以下のような性状の自己反応性物質または混合物は自己反応性物質タイプ

D として定義される。

(i) 爆轟は部分的であり、急速に爆燃することなく、密封下の加熱で激しい反応を起こさ

ない。

(ii) 全く爆轟せず、緩やかに爆燃し、密封下の加熱で激しい反応を起こさない。または

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(iii) 全く爆轟も爆燃もせず、密封下の加熱では中程度の反応を起こす。

(e) 実験室の試験で、全く爆轟も爆燃もせず、かつ密封下の加熱で反応が弱いかまたは無いと判

断される自己反応性物質または混合物は、自己反応性物質タイプ E として定義される。

(f) 実験室の試験で、空気泡の存在下で全く爆轟せず、また全く爆燃もすることなくかつ、密封

下の加熱でも爆発力の試験でも、反応が弱いかまたは無いと判断される自己反応性物質ま

たは混合物は、自己反応性物質タイプ F として定義される。

(g) 実験室の試験で、空気泡の存在下で全く爆轟せず、また全く爆燃もすることなく、かつ、

密封下の加熱でも爆発力の試験でも反応を起こさない自己反応性物質または混合物は、自

己反応性物質タイプ G として定義される。ただし、熱的に安定である(SADT が 50kg の

輸送物では 60℃から 75℃)、および液体混合物の場合には沸点が 150℃以上の希釈剤で鈍

感化されていることを前提とする。混合物が熱的に安定でない、または沸点が 150℃未満

の希釈剤で鈍感化されている場合、その混合物は自己反応性物質タイプ F として定義する

こと。

注記 1:タイプ G には危険有害性情報の伝達要素の指定はないが、別の危険性クラスに該当する特性が

あるかどうか考慮する必要がある。 注記 2:タイプ A からタイプ G はすべてのシステムに必要というわけではない。 2.8.2.3 温度管理基準 自己加速分解温度(SADT)が 55℃以下の自己反応性物質は、温度管理が必要である。SADT 決定のた

めの試験法並びに管理温度及び緊急対応温度の判定は危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判

定基準のマニュアルの第Ⅱ部、28 節に規定されている。選択された試験は、包装物の寸法及び材質のそ

れぞれに対する方法ついて実施しなければならない。

2.8.3 危険有害性情報の伝達

ラベル表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可し

た場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.8.1 自己反応性物質および混合物のラベル表示要素

タイプ A タイプ B タイプC&D タイプ E&F タイプ Ga シンボル 爆弾の爆破 爆弾の爆破

と災 炎 炎 この危険性

区分にはラ

ベル表示要

素の指定は

ない

注意喚起語 危険 危険 危険 警告 危険有害性情報 熱すると爆

発のおそれ 熱すると火

災または爆

発のおそれ

熱すると火

災のおそれ

熱すると火

災のおそれ

a タイプ G には危険有害性情報の伝達要素は指定されてはいないが、別の危険性クラスに該当する特性

があるかどうか考慮する必要がある。

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2.8.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。

2.8.4.1 判定論理

自己反応性物質または混合物を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基

準のマニュアルの第 II 部に記載された試験シリーズ A から H を実施すること。分類は下記の判定論理

に従う。 自己反応性物質または混合物の分類に決定的な特性は、実験によって判定すること。試験法および関

連する評価判定基準は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 II 部(試験シリーズ A~H)に記載されている。

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3.2 ゆっくり伝播

3.3 No

2.2 No

4.1 速く伝播

4.2 ゆっくり伝播 4.3 No

5.1 速く伝播

5.3 No

5.2 ゆっくり伝播

7.1 激しい

9.3 小さい

9.4 No

10.2 No

10.1 Yes

11.2 No

11.1 Yes

12.3 None

12.1 小さくない

12.2 小さい

13.1 小さい

8.2 中程度 8.3 小さい 8.4 No

8.1 激しい

7.2 中程度 7.3 小さい 7.4 No

1.3 No

3.1 速く伝播

1.1 Yes

1.2 部分伝播

13.2 None

9.1 激しい

2.1 Yes

6.2 No

9.2 中程度

6.1 Yes

14.2 No

15.2 No

16.2 No

14.1 Yes

16.1 Yes

15.1 Yes

判定論理 2.8 自己反応性物質および混合物

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

物質/混合物

包装物の状態 で爆轟するか

爆燃を伝播 するか?

爆燃を伝播

するか?

爆燃を伝播

するか?

包装物の状態 で急速に爆燃

するか?

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

包装物の状態で 爆発するか?

400kg/450l 以上の包装物か? または適用除外

とするか?

爆発力はどの

程度か?

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

爆轟を伝播 するか?

Box 2 Test B

Box 1 Test A

Box 3 Test C

Box 4 Test C

Box 5 Test C

Box 6 Test D

Box 7 Test E

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

Box 9 Test E

Box 11

Box 12 Test F

Box 13 Test E

Box 10 Test G

50kg 包装で SADT<60℃か?

物質は固体か?

希釈液の沸点が

<150℃か?

Box 14 Test H

Box 16

Box 15

タイプ A タイプ B タイプ C タイプ D タイプ E タイプ F タイプ G

Box 8 Test E

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2.8.4.2 手引き

以下の場合、自己反応性物質および混合物の分類手順を適用する必要はない。

(a) その分子内に爆発性または自己反応性に関連する官能基が存在しない。そのような官能基

の例は危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの付属書 6、表

A6.1 および表 A6.2 に示されている。または

(b) 単一有機物質または有機物質の均一な混合物では、SADT 推定値が 75℃より高いか、また

は発熱分解エネルギーが 300J/g 未満である。分解開始温度および分解エネルギーは、適切

な熱量測定法により推定してもよい(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基

準のマニュアルの第Ⅱ部、20.3.3.3 項参照)。

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第 2.9 章

自然発火性液体

2.9.1 定義

自然発火性液体とは、たとえ少量であっても、空気と接触すると 5 分以内に発火しやすい液体をいう。

2.9.2 分類基準

自然発火性液体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、

33.3.1.5 項の試験 N.3 により、下記の表に従ってこのクラスの単一の区分に分類される。

表 2.9.1 自然発火性液体の判定基準

区分 判定基準

1 液体を不活性担体に漬けて空気に接触させると 5 分以内に発火する、または

液体を空気に接触させると 5 分以内にろ紙を発火させるか、ろ紙を焦がす。

2.9.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.9.2 自然発火性液体のラベル表示要素

区分 1 シンボル 炎

注意喚起語 危険 危険有害性情報 空気に触れると自然発火

2.9.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。 2.9.4.1 判定論理

自然発火性液体を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュア

ルの第Ⅲ部、33.3.1.5 項の試験 N.3 を実施すること。分類手順は二段階となっている。分類は、以下の

判定論理に従う。

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判定論理 2.9 自然発火性液体

2.9.4.2 手引き

製造または取扱時の経験から、当該物質または混合物が、常温で空気と接触しても自然発火しないこ

とが認められている(すなわち、当該物質が室温で長期間(日単位)にわたり安定であることが既知で

ある)ならば、自然発火性液体の分類手順を適用する必要はない。

珪藻土またはシリカゲルを満たした磁製カップに注ぐと 5 分

以内に発火するか?

物質/混合物は液体である

区分 1

危険

Yes

区分 1

危険

ろ紙を 5 分以内に発火または焦がすか? Yes

No

区分外

No

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第 2.10 章

自然発火性固体

2.10.1 定義

自然発火性固体とは、たとえ少量であっても、空気と接触すると 5 分以内に発火しやすい固体をいう。 2.10.2 分類基準

自然発火性固体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、

33.3.1.4 項の試験 N.2 により、以下の表に従って、このクラスの単一の区分に分類される。

表 2.10.1 自然発火性固体の判定基準

注記:固体物質または混合物の分類試験では、当該物質または混合物は実際に提供される形態で試験を

実施すること。たとえば、供給または輸送が目的で、同じ物質が、試験したときとは異なった物理的形

態で、しかも評価試験結果を著しく変える可能性が高いと考えられる形態で提供されるとすると、そう

した物質もまたその新たな形態で試験されなければならない。 2.10.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.10.2 自然発火性固体のラベル表示要素

2.10.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。 2.10.4.1 判定論理

自然発火性固体を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュア

ルの第Ⅲ部、33.3.1.4 項の試験 N.2 を実施すること。分類は、以下の判定論理に従う。

区分 判定基準 1 固体が空気と接触すると 5 分以内に発火する。

区分 1 シンボル 炎

注意喚起語 危険 危険有害性情報 空気に触れると自然発火

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判定論理 2.10 自然発火性固体

2.10.4.2 手引き

製造または取扱時の経験から、当該物質または混合物が、常温で空気と接触しても自然発火しないこ

とが認められている(すなわち、当該物質または混合物は室温で長期間(日単位)にわたり安定である

ことが既知である)ならば、自然発火性固体の分類手順を適用する必要はない。

空気と接触すると 5 分以内に発火するか?

物質/混合物は固体である

区分 1

危険

Yes

No

区分外

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第 2.11 章

自己発熱性物質および混合物

2.11.1 定義

自己発熱性物質または混合物とは、自然発火性液体または自然発火性固体以外の固体物質または混合物で、空気との接触によりエネルギー供給がなくとも、自己発熱しやすいものをいう。この物質または混合物が自然発火性液体または自然発火性固体と異なるのは、それが大量(キログラム単位)にあると、かつ長期間(数時間または数日間)経過後に限って発火する点にある。

注記:物質あるいは混合物の自己発熱は、それらが酸素(空気中)と徐々に反応し発熱する過程である。発熱の速度が熱損失の速度を超えると物質あるいは混合物の温度は上昇し、ある誘導時間を経て、自己発火や燃焼となる。 2.11.2 分類基準

2.11.2.1 危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 III 部の 33.3.1.6 項に示される試験法に従って試験し、以下の結果となった場合、物質または混合物はこのクラスの自己発熱性物質に分類される。

(a) 25mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られる

(b) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および 100mm 立方体サンプルを用いて 120℃で否定的結果が得られ、かつ、当該物質または混合物が 3m3より大きい容積のパッケージとして包装される

(c) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および 100mm 立方体サンプルを用いて 100℃で否定的結果が得られ、かつ、当該物質または混合物が 450 リットルより大きい容積のパッケージとして包装される

(d) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および 100mm 立方体サンプルを用いて 100℃で肯定的結果が得られる

2.11.2.2 自己発熱性物質または混合物は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 III 部の 33.3.1.6 項に示される試験 N.4 に従って実施された試験で得られた結果が表2.11.1 の判定基準に適合するならば、このクラスにおける2つの区分のいずれかに分類される。

表 2.11.1 自己発熱性物質および混合物の判定基準

区分 判定基準 1 25mm 立方体サンプルを用いて 140℃における試験で肯定的結果が得られる

2 (a) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および

25mm 立方体サンプルを用いて 140℃で否定的結果が得られ、かつ、当

該物質または混合物が 3m3 より大きい容積パッケージとして包装され

る、または (b) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および

25mm 立方体サンプルを用いて 140℃で否定的結果が得られ、100mm立方体のサンプルを用いて 120℃で肯定的結果が得られ、かつ、当該物

質または混合物が 450リットルより大きい容積のパッケージとして包装

される、または (c) 100mm 立方体のサンプルを用いて 140℃で肯定的結果が得られ、および

25mm 立方体サンプルを用いて 140℃で否定的結果が得られ、かつ

100mm 立方体のサンプルを用いて 100℃で肯定的結果が得られる。

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注記 1:固体物質または混合物の分類試験では、当該物質または混合物は提供された形態で試験を実施

すること。たとえば、供給または輸送が目的で、同じ物質が、試験したときとは異なった物理的形態で、

しかも評価試験結果を著しく変える可能性が高いと考えられる形態で提供されるとすると、そうした物

質もまたその新たな形態で試験されなければならない。

注記 2:この判断基準は、27m3 の立方体サンプルの自己発火温度が 50℃である木炭の例をもとにして

いる。27m3の容積の自然燃焼温度が 50℃より高い物質および混合物はこの危険性クラスに指定される

べきでない。容積 450 リットルの自己発火温度が 50℃より高い物質および混合物は、この危険性クラ

スの区分 1 に指定すべきでない。 2.11.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を記載する。

表 2.11.2 自己発熱性物質および混合物のラベル表示要素

区分 1 区分 2 シンボル 炎 炎 注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 自己発熱;火災のおそれ 大量の場合自己発熱;火災のおそれ

2.11.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。 2.11.4.1 判定論理

自己発熱性物質を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュア

ルの第Ⅲ部、33.3.1.6 項の試験 N.4 を実施すること。分類は、判定論理 2.11 に従う。

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判定論理 2.11 自己発熱性物質および混合物

区分外

区分 1

危険

Yes

No

Yes

No

輸送物内容は 3m3を超える量であるか?

No

輸送物内容は 450 リットルを超える量であるか?

Yes

100mm 立方体サンプルを 100℃で試験すると危険な自

己発熱反応が起こるか?

No

区分 2

警告

Yes

No

区分 2

警告

Yes

区分 2

警告

Yes

100mm 立方体サンプルを 120℃で試験すると危険な自己

発熱反応が起こるか?

25mm 立方体サンプルを 140℃で試験すると危険な自己

発熱反応が起こるか?

100mm 立方体サンプルを 140℃で試験すると危険な自

己発熱反応が起こるか?

物質/混合物

区分外

区分外

No

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2.11.4.2 手引き

スクリーニング試験の結果と分類試験の結果にある程度の相関が認められ、かつ適切な安全範囲が適

用されるならば、自己発熱性物質の分類手順を適用する必要はない。スクリーニング試験には以下のよ

うな例がある。

(a) Grewer Oven 試験(VDI ガイドライン 2263, Part 1, 1990, 粉塵の安全特性判定試験法)

で、容積 1 リットルにつき開始温度が標準温度より 80K 高い (b) Bulk Powder Screening 試験(Gibson, N. Harper, D.J. Rogers, Evaluation of fire and

explosion risks in drying powders, Plant Operation Progress, 4(3), 181-189, 1985)で、

容積 1 リットルにつき開始温度が標準温度より 60K 高い

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第 2.12 章

水反応可燃性物質および混合物

2.12.1 定義

水と接触して可燃性/引火性ガスを発生する物質または混合物とは、水との相互作用により、自然発火性と

なるか、または可燃性/引火性ガスを危険となる量発生する固体または液体の物質あるいは混合物をいう。 2.12.2 分類基準

水と接触して可燃性/引火性ガスを発生する物質または混合物は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、33.4.1.4 項の試験 N.5 により、下記の表に従って、このクラスにおける3つの区分のいずれかに分類される。

表 2.12.1 水と接触して可燃性/引火性ガスを発生する物質または混合物の判定基準

区分 判定基準 1 大気温度で水と激しく反応し、自然発火性のガスを生じる傾向が全般的に

認められる物質または混合物、または大気温度で水と激しく反応し、その際の可燃性/引火性ガスの発生速度は、どの 1 分間をとっても物質 1kg につき 10 リットル以上であるような物質または混合物。

2 大気温度で水と急速に反応し、可燃性/引火性ガスの最大発生速度が 1 時間あたり物質 1kg につき 20 リットル以上であり、かつ区分 1 に適合しない物質または混合物。

3 大気温度では水と穏やかに反応し、可燃性/引火性ガスの最大発生速度が 1時間あたり物質 1kg につき 1 リットルを超えて、かつ区分 1 や区分 2 に適合しない物質または混合物。

注記 1:試験手順のどの段階であっても自然発火する物質または混合物は、水と接触して可燃性/引火性ガスを発生する物質として分類される。

注記 2:固体物質または固体混合物を分類する試験では、その物質または混合物が提示されている形態で試験を実施する必要がある。たとえば同一化学品でも、供給または輸送のために、試験が実施された形態とは異なる、および分類試験におけるその試験結果を著しく変更する可能性が高いと思われる物理的形態として提示されるような場合、その物質または混合物はその新たな形態でも試験されなければならない。 2.12.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.12.2 水反応可燃性物質および混合物のラベル表示要素

区分 1 区分 2 区分 3 シンボル 炎 炎 炎 注意喚起語 危険 危険 警告 危険有害性

情報 水に触れると自然発火するおそれのある可燃性/引火性ガス

を発生

水に触れると可燃性/引火性ガスを発生

水に触れると可燃性/引火性ガスを発生

2.12.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定めて

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いる。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨される。 2.12.4.1 判定論理

水と接触して可燃性/引火性ガスを発生する物質および混合物を分類するには、危険物輸送に関する国

連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、33.4.1.4 項の試験 N.5 を実施すること。分類

は以下の判定論理 2.12 に従う。 判定論理 2.12 水反応可燃性物質および混合物 2.12.4.2 手引き

以下の場合、このクラスへの分類手順を適用する必要はない。

(a) 当該物質または混合物の化学構造に金属または亜金属(metalloids)が含まれていない

(b) 製造または取扱の経験上、当該物質または混合物は水と反応しないことが認められている、たとえば当該物質は水を用いて製造されたか、または水で洗浄しているなど、

または

(c) 当該物質または混合物は水に溶解して安定な混合物となることがわかっている

区分 2

危険

大気温度で水と接すると緩やかに反応し、発生する可燃性/引火性ガスの最大発生速度が 1 時間当たり物質 1kg につき 1 リットルを超えるか?

大気温度で水と接すると激しく反応し、一般に発生ガスが自然発火する傾向を示すか?または、大気温度で水と容易に反応し、その際の可燃性/引火性ガスの発生速度がどの 1 分間をとっても物質1kg につき 10 リットル以上であるか?

区分外

区分 1

危険

区分 3

警告

No

物質/混合物

大気温度で水と接すると容易に反応し、可燃性/引火性ガスの最大発生速度が 1時間当たり物質 1kgにつき 20リットル以上であるか?

Yes

No

Yes

No

Yes

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第 2.13 章

酸化性液体

2.13.1 定義

酸化性液体とは、それ自体は必ずしも可燃性を有しないが、一般的には酸素の発生により、他の物質

を燃焼させまたは助長する恐れのある液体をいう。 2.13.2 分類基準

酸化性液体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、34.4.2項の試験 O.2 により、下記の表に従って、このクラスにおける3つの区分のいずれかに分類される。

表 2.13.1 酸化性液体の判定基準

区分 判定基準 1 物質(または混合物)をセルロースとの重量比 1:1 の混合物として試験した場合に自然発

火する、または物質とセルロースの重量比 1:1 の混合物の平均昇圧時間が、50%過塩素酸

とセルロースの重量比 1:1 の混合物より短い物質または混合物。 2 物質(または混合物)をセルロースとの重量比 1:1 の混合物として試験した場合の平均昇

圧時間が、塩素酸ナトリウム 40%水溶液とセルロースの重量比 1:1 の混合物の平均昇圧時

間以下である、および区分 1 の判定基準が適合しない物質または混合物。 3 物質(または混合物)をセルロースとの重量比 1:1 の混合物として試験した場合の平均昇

圧時間が、硝酸 65%水溶液とセルロースの重量比 1:1 の混合物の平均昇圧時間以下である、

および区分 1 および 2 の判定基準が適合しない物質または混合物。 2.13.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を記載する。

表 2.13.2 酸化性液体のラベル表示要素

区分 1 区分 2 区分 3 シンボル 円上の炎 円上の炎 円上の炎 注意喚起語 危険 危険 警告

危険有害性情報 火災または爆発のお

それ;強酸化性物質

火災助長のおそれ;

酸化性物質 火災助長のおそれ;

酸化性物質 2.13.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

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2.13.4.1 判定論理

酸化性液体を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの

第Ⅲ部、34.4.2 項の試験 O.2 を実施すること。分類は以下の判定論理 2.13 に従う。 判定論理 2.13 酸化性液体

物質(または混合物)とセルロースとの重量比 1:1 の混

合物として試験した場合、圧力上昇は 2070kPa ゲージ

以上であるか?

物質(または混合物)とセルロースとの重量比 1:1 の混

合物として試験した場合の平均昇圧時間が、硝酸 65%水溶液とセルロースの重量比 1:1 の混合物の平均昇圧

時間以下であるか?

区分 1

危険

区分 3

警告

No

物質/混合物は液体である

物質(または混合物)とセルロースとの重量比 1:1 の混

合物として試験した場合、自然発火するか、または平均

昇圧時間が、50%過塩素酸とセルロースの重量比 1:1 の

混合物のそれより短いか?

No

Yes

Yes

区分 2

危険

No

区分外

物質(または混合物)とセルロースとの重量比 1:1 の混

合物として試験した場合の平均昇圧時間が、塩素酸ナト

リウム 40%水溶液とセルロースの重量比 1:1 の混合物

の平均昇圧時間以下であるか?

No

Yes

Yes

区分外

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2.13.4.2 手引き

2.13.4.2.1 物質または混合物の取扱および使用の経験からこれらが酸化性であることが認められるよ

うな場合、このことはこのクラスへの分類を検討する上で重要な追加要因となる。試験結果と既知の経

験に相違が見られるようであったならば、既知の経験を試験結果より優先させること。

2.13.4.2.2 物質または混合物が、その物質または混合物の酸化性を特徴づけていない化学反応によって

圧力上昇(高すぎる、または低すぎる)を生じることもある。そのような場合には、その反応の性質を

明らかにするために、セルロースの代わりに不活性物質、たとえば珪藻土などを用いて危険物輸送に関

する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、34.4.2 項の試験を繰返して実施する必

要があることもある。

2.13.4.2.3 有機物質または混合物は、以下の場合にはこのクラスへの分類手順を適用する必要はない。

(a) 物質または混合物は、酸素、フッ素または塩素を含まない、または

(b) 物質または混合物は、酸素、フッ素または塩素を含み、これらの元素が炭素または水

素にだけ化学結合している。 2.13.4.2.4 無機物質または混合物は、酸素原子またはハロゲン原子を含まないならば、このクラスへの

分類手順を適用する必要はない。

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第 2.14 章

酸化性固体

2.14.1 定義

酸化性固体とは、それ自体は必ずしも可燃性を有しないが、一般的には酸素の発生により、他の物質を燃焼させまたは助長する恐れのある固体をいう。

2.14.2 分類基準

酸化性固体は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第 III 部、34.4.1項の試験 O.1 または第 III 部、34.4.3 項の試験 O.3 を用いて、下記の表にしたがってこのクラスにおける3つの区分のいずれかに分類される。

表 2.14.1 酸化性固体の判定基準

区分 O.1 による判定基準 O.3 による判定基準 1 サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1

の混合物として試験した場合、その平均燃焼時

間が臭素酸カリウムとセルロースの重量比 3:2の混合物の平均燃焼時間より短い物質または混

合物。

サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1の混合物として試験した場合、その平均燃焼

速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量

比 3:1 の混合物の平均燃焼速度より大きい物

質または混合物。

2 サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1の混合物として試験した場合、その平均燃焼時

間が臭素酸カリウムとセルロースの重量比 2:3の混合物の平均燃焼時間以下であり、かつ区分

1 の判断基準が適合しない物質または混合物。

サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1の混合物として試験した場合、その平均燃焼

速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量

比 1:1 の混合物の平均燃焼速度以上であり、か

つ区分 1 の判定基準に適合しない物質または

混合物。

3 サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1の混合物として試験した場合、その平均燃焼時

間が臭素酸カリウムとセルロースの重量比 3:7の混合物の平均燃焼時間以下であり、かつ区分

1 および 2 の判断基準に適合しない物質または

混合物。

サンプルとセルロースの重量比 4:1 または 1:1の混合物として試験した場合、その平均燃焼

速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量

比 1:2 の混合物の平均燃焼速度以上であり、か

つ区分 1 および 2 の判断基準に適合しない物

質または混合物。 注記 1: 一部の酸化性固体はある条件下で爆発危険性を持つことがある(大量に貯蔵しているような場合)。例えば、一部の硝酸アンモニウムは厳しい条件下で爆発する可能性があり、この危険性の評価には「爆発抵抗試験」(IMSBC コード 1、附属書 2、第 5 節)が使用できるであろう。適切なコメントを安全データシートに記載すべきである。 注記2: 固体物質または混合物の分類試験では、当該物質または混合物は提供された形態で試験を実施すること。たとえば、供給または輸送が目的で、同じ物質が、試験したときとは異なった物理的形態で、しかも評価試験を著しく変える可能性が高いと考えられる形態で提供されるとすると、そうした物質もまたその新たな形態で試験されなければならない。 2.14.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

1 International Maritime Solid Bulk Cargoes Code, IMO.

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表 2.14.2 酸化性固体のラベル表示要素

区分 1 区分 2 区分 3 シンボル 円上の炎 円上の炎 円上の炎 注意喚起語 危険 危険 警告 危険有害性

情報 火災または爆発のお

それ;強酸化性物質

火災助長のおそれ;

酸化性物質 火災助長のおそれ;

酸化性物質 2.14.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。 2.14.4.1 判定論理

酸化性固体を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの

第 III 部、34.4.1 項の試験 O.1 または第 III 部、34.4.3 項の試験 O.3 を実施すること。分類は以下の判

定論理 2.14 に従う。

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判定論理 2.14 酸化性固体

サンプルとセルロースとの重量比 4:1 または 1:1 の混合物として試験した場合、発火または燃焼するか

サンプルとセルロースとの重量比 4:1 または 1:1 の混合物として試験した場合の平均燃焼時間が、臭素酸カリウムとセルロースの重量比 3:7 の混合物の平均燃焼時間以下であるか、またはその平均燃焼速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量比 1:2 の混合物の平均燃焼速度以上の物質または混合物であるか

区分 1

危険

区分 3

警告

No

物質/混合物は固体である

サンプルとセルロースとの重量比 4:1 または 1:1 の混合物として試験した場合、自然発火するか、または平均昇圧時間が、臭素酸カリウムとセルロースの重量比3:2 の混合物の平均燃焼時間より短いか、またはその平均燃焼速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量比 3:1 の混合物の平均燃焼速度より大きい物質または混合物であるか

No

Yes

Yes

区分 2

危険

No

区分外

サンプルとセルロースとの重量比 4:1 または 1:1 の混合物として試験した場合の平均燃焼時間が、臭素酸カリウムとセルロースの重量比 2:3 の混合物の平均燃焼時間以下であるか、またはその平均燃焼速度が過酸化カルシウムとセルロースの重量比 1:1 の混合物の平均燃焼速度以上の物質または混合物であるか

No

Yes

Yes

区分外

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2.14.4.2 手引き

2.14.4.2.1 物質または混合物の取扱いおよび使用の経験から、これら物質が酸化性があることが認めら

れるような場合、このことはこのクラスへの分類を検討する上で重要な追加要因となる。試験結果と既

知の経験に相違が見られるようであったならば、既知の経験を試験結果より優先させること。 2.14.4.2.2 有機物質または混合物は、以下の場合にはこのクラスへの分類手順を適用する必要はない。

(a) 物質または混合物は、酸素、フッ素または塩素を含まない、または

(b) 物質または混合物は、酸素、フッ素または塩素を含み、これらの元素が炭素または水

素にだけ化学結合している。

2.14.4.2.3 無機物質または混合物は、酸素原子またはハロゲン原子を含まないならば、このクラスへの

分類手順を適用する必要はない。

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第 2.15 章

有機過酸化物

2.15.1 定義

2.15.1.1 有機過酸化物とは、2価の-O-O-構造を有し、1あるいは2個の水素原子が有機ラジカルによ

って置換されている過酸化水素の誘導体と考えられる、液体または固体有機物質をいう。この用語はま

た、有機過酸化物組成物(混合物)も含む。有機過酸化物は熱的に不安定な物質または混合物であり、

自己発熱分解を起こす恐れがある。さらに、以下のような特性を1つ以上有する。

(a) 爆発的な分解をしやすい (b) 急速に燃焼する (c) 衝撃または摩擦に敏感である (d) 他の物質と危険な反応をする

2.15.1.2 有機過酸化物は、実験室の試験でその組成物が爆轟したり、急速に爆燃したり、または密封

下の加熱で激しい反応を起こす傾向があるときは、爆発性を有するものと見なされる。 2.15.2 分類基準

2.15.2.1 いかなる有機過酸化物でも、以下を除いて、このクラスへの分類を検討すること。

(a) 過酸化水素の含有量が 1.0%以下の場合において、有機過酸化物に基づく活性酸素量が

1.0%以下のもの。 (b) 過酸化水素の含有量が 1.0%を超え 7.0%以下である場合において、有機過酸化物に基づく

活性酸素量が 0.5%以下のもの。

注記:有機過酸化物混合物の活性酸素量(%)は以下の式で求められる。

ここで

ni = 有機過酸化物 i の一分子あたりの過酸基(ペルオキソ基)の数

ci = 有機過酸化物 i の濃度(重量%)

mi = 有機過酸化物 i の分子量 2.15.2.2 有機過酸化物は、下記の原則に従ってこのクラスにおける7つの区分「TYPE A~TYPE G」

のいずれかに分類される。

(a) 包装された状態で、爆轟しまたは急速に爆燃し得る有機化酸化物は、有機過酸化物タイプ A として定義される。

(b) 爆発性を有するが、包装された状態で爆轟も急速な爆燃もしないが、その包装物内で熱爆

発を起こす傾向を有する有機過酸化物は、有機過酸化物タイプ B として定義される。 (c) 爆発性を有するが、包装された状態で爆轟も急速な爆燃も熱爆発も起こすことのない有機

過酸化物は、有機過酸化物タイプ C として定義される。

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(d) 実験室の試験で以下のような性状の有機過酸化物は有機過酸化物タイプ D として定義さ

れる。

(i) 爆轟は部分的であり、急速に爆燃することなく、密閉下の加熱で激しい反応を起こさ

ない。 (ii) 全く爆轟せず、緩やかに爆燃し、密閉下の加熱で激しい反応を起こさない (iii) 全く爆轟も爆燃もせず、密閉下の加熱で中程度の反応を起こす。

(e) 実験室の試験で、全く爆轟も爆燃もせず、かつ密閉下の加熱で反応が弱いか、または無い

と判断される有機過酸化物は、有機過酸化物タイプ E として定義される。

(f) 実験室の試験で、空気泡の存在下で全く爆轟せず、また全く爆燃もすることなく、また、

密閉下の加熱でも、爆発力の試験でも、反応が弱いかまたは無いと判断される有機過酸化

物は、有機過酸化物タイプ F として定義される。

(g) 実験室の試験で、空気泡の存在下で全く爆轟せず、また全く爆燃することなく、密閉下の

加熱でも、爆発力の試験でも、反応を起こさない有機過酸化物は、有機過酸化物タイプ Gとして定義される。ただし熱的に安定である(自己促進分解温度(SADT)が 50kg のパ

ッケージでは 60℃以上)、また液体混合物の場合には沸点が 150℃以上の希釈剤で鈍感化

されていることを前提とする。有機過酸化物が熱的に安定でない、または沸点が 150℃未

満の希釈剤で鈍感化されている場合、その有機過酸化物は有機過酸化物タイプ F として

定義される。

注記 1:タイプ G には危険有害性情報の伝達要素は指定されていないが、他の危険性クラスに該当する

特性があるかどうか検討する必要がある。 注記 2:タイプ A から G はすべてのシステムに必要というわけではない。 2.15.2.3 温度管理基準 次に掲げる有機過酸化物は、温度管理が必要である。

(a) SADT が 50℃以下のタイプ B および C の有機過酸化物; (b) SADT が 50℃以下であり密閉加熱における試験結果 1が中程度または SADT が 45℃以下で

あり密閉加熱における試験結果が低いか若しくは反応なしのタイプ D の有機過酸化物; および

(c) SADT が 45℃以下のタイプ E および F の有機過酸化物 SADT 決定のための試験法並びに管理温度及び緊急対応温度の判定は、危険物輸送に関する国連勧告、

試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅱ部、28 節に規定されている。選択された試験は、包装物の

寸法及び材質のそれぞれに対する方法について実施しなければならない。 ──────────────── 1 試験および判定基準の第Ⅱ部に規定する試験シリーズ E により決定される。

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2.15.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.15.1 有機過酸化物のラベル表示要素

タイプ A タイプ B タイプ C&D タイプ E&F タイプ G a シンボル 爆弾の爆破 爆弾の爆破

と炎 炎 炎 この危険性

区分にはラ

ベル表示要

素の指定は

ない

注意喚起語 危険 危険 危険 警告 危険有害性情報 熱すると爆

発のおそれ 熱すると火

災または爆

発のおそれ

熱すると火

災のおそれ

熱すると火

災のおそれ

a TYPE G には危険有害性情報の伝達要素は指定されていないが、他の危険性クラスに該当する特性

があるかどうか考慮する必要がある。

2.15.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。 2.15.4.1 判定論理

有機過酸化物を分類するには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアル

の第 II 部に規定されている試験シリーズ A~H を実施すること。分類は下記の判定論理 2.15 に従う。

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3.2 ゆっくり伝播

3.3 No

2.2 No

4.1 速く伝播

4.2 ゆっくり伝播 4.3 No

5.1 速く伝播

5.3 No

5.2 ゆっくり伝播

7.1 激しい

9.3 小さい

9.4 No

10.2 No

10.1 Yes

11.2 No

11.1 Yes

12.3 None

12.1 小さくない

12.2 小さい

13.1 小さい

8.2 中程度 8.3 小さい 8.4 No

8.1 激しい

7.2 中程度 7.3 小さい 7.4 No

1.3 No

3.1 速く伝播

1.1 Yes

1.2 部分伝播

13.2 None

9.1 激しい

2.1 Yes

6.2 No

9.2 中程度

6.1 Yes

14.2 No

15.2 No

16.2 No

14.1 Yes

16.1 Yes

15.1 Yes

判定論理 2.15 有機過酸化物

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

物質/混合物

包装物の状態 で爆轟するか

爆燃を伝播 するか?

爆燃を伝播

するか?

爆燃を伝播

するか?

包装物の状態 で急速に爆燃

するか?

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

包装物の状態で 爆発するか?

400kg/450l 以上の包装物か? または適用除外

とするか?

爆発力はどの

程度か?

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

爆轟を伝播 するか?

Box 2 Test B

Box 1 Test A

Box 3 Test C

Box 4 Test C

Box 5 Test C

Box 6 Test D

Box 7 Test E

密封状態で 加熱すると影響

はどうか

Box 9 Test E

Box 11

Box 12 Test F

Box 13 Test E

Box 10 Test G

50kg 包装で SADT<60℃か?

物質は固体か?

希釈液の沸点が

<150℃か?

Box 14 Test H

Box 16

Box 15

タイプ A タイプ B タイプ C タイプ D タイプ E タイプ F タイプ G

Box 8 Test E

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2.15.4.2 手引き

2.15.4.2.1 有機過酸化物は、その化学構造に従って、および当該混合物の活性酸素および過酸化水素の

含量に従って分類される(第 2.15.2.1 項参照)。

2.15.4.2.2 有機過酸化物はその分類に決定的な特性については実験的に判定すること。試験方法はこれ

に関連する評価判断基準と共に危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの

第 II 部(試験シリーズ A~H)に定められている。

2.15.4.2.3 有機過酸化物の混合物は、これを構成する最も危険な成分の有機過酸化物と同じタイプとし

て分類されることもある。ただし 2 種類の安定な成分でも混合物が熱的に安定でなくなる可能性もある

ため、当該混合物の自己加速分解温度(SADT)を測定しておくこと。

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第 2.16 章

金属腐食性物質

2.16.1 定義

金属に対して腐食性である物質または混合物とは、化学反応によって金属を著しく損傷し、または破

壊する物質または混合物をいう。 2.16.2 分類基準

金属に対して腐食性である物質または混合物は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定

基準のマニュアルの第 III 部、37.4 項を用いて、下記の表に従ってこのクラスにおける単一の区分に分

類される。

表 2.16.1 金属に対して腐食性である物質または混合物の判定基準

区分 判定基準 1 55℃の試験温度で、鋼片およびアルミニウム片の両方で試験さ

れたとき、侵食度がいずれかの金属において年間 6.25mm を超

える。 注記:鋼片またはアルミニウムにおける最初の試験で物質あるいは混合物が腐食性を示したならば、他

方の金属による追試をする必要はない。 2.16.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.16.2 金属に対して腐食性である物質または混合物のラベル表示要素

区分 1 シンボル 腐食性

注意喚起語 警告 危険有害性情報 金属腐食のおそれ

注記:物質または混合物が、金属腐食性があり、皮膚および/または眼には腐食性がないと分類される場

合には、所管官庁は 1.4.10.5.5 に記載されているラベルに関する規定を許可してもよい。 2.16.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。

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2.16.4.1 判定論理

判定論理 2.16 金属に対して腐食性である物質または混合物

2.16.4.2 手引き

侵食度は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法および判定基準のマニュアルの第Ⅲ部、37.4 節の

試験法で測定可能である。試験で用いられる物質は、下記のものでなされなければならない。

(a) 鋼を用いる試験に対する鋼のタイプ: S235JR+CR(1.0037 resp.St37-2) S275J2G3+CR(1.0144 resp.St 44-3)、ISO 3574,米国ナンバリングシステム

(UNS)G10200 または、SAE 1020

(b) アルミニウム試験:クラッド加工していない 7075-T6 または AZ5GU-T6 のようなタイプ

区分外

No鋼またはアルミニウム片の両方について試験

されたとき、侵食度がいずれかの金属において

年間 6.25mm(55oC)を超えるか?

物質/混合物

区分 1

警告

Yes

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第 2.17 章

鈍感化爆発物

2.17.1 定義および通則

2.17.1.1 鈍感化爆発物とは、大量爆発や非常に急速な燃焼をしないように、爆発性を抑制するために鈍

感化され、したがって危険性クラス「爆発物」から除外されている、固体または液体の爆発性物質また

は混合物をいう(第 2.1 章;パラグラフ 2.1.2.2 の注記も参照)。1

2.17.1.2 鈍感化爆発物のクラスには以下のものを含む:

(a) 固体鈍感化爆発物:水もしくはアルコールで湿性とされるかあるいはその他の物質で希釈され

て、均一な固体混合物となり爆発性を抑制されている爆発性物質または混合物

注記: これには物質を水和物とすることによる鈍感化も含まれる。

(b) 液体鈍感化爆発物:水もしくは他の液体に溶解または懸濁されて、均一な液体混合物となり爆

発性を抑制されている爆発性物質または混合物

2.17.2 分類基準

2.17.2.1 鈍感化されたすべての爆発物はこのクラスで検討されなければならない、ただし以下のものを

除く:

(a) 実質的に爆発物または火工品をつくる目的で製造されたもの;または

(b) 試験シリーズ 6 (a) または 6 (b)にしたがった大量爆発の危険性があるものあるいは危険物輸送

に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 V 部 51.4 小節に記載される燃焼速

度試験にしたがった補正燃焼速度が 1200 kg/min を超えるもの;または

(c) 発熱分解エネルギーが 300 J/g 未満のもの。

注記 1: (a)または (b)の判定基準に合致する物質または混合物は爆発物(第 2.1 章参照)とし

て分類しなければならない。(c) の判定基準に合致する物質または混合物は他の物理的危険性ク

ラスの範囲になるであろう。

注記 2:発熱分解エネルギーは、適当な熱量測定法をもちいて推定してもよい(危険物輸送に

関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 II 部 20 節 20.3.3.3 を参照)。

2.17.2.2 鈍感化爆発物は、供給と使用のため包装状態で、このクラスの 4 つの区分に分類されなければ

ならない。分類は危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 V 部 51.4 小節

に記載されている「燃焼速度試験(外炎)」を用いた補正燃焼速度(Ac)に基づいて、表 2.17.1 にした

がって行う:

1 第 2.1 章で定義されている不安定爆発物は鈍感化によって安定化されることができ、したがって第 2.17章のすべての判定基準を満たせば、鈍感化爆発物として分類ができるであろう。この場合、機械的な刺激に対する感度に関する情報が安全な取扱いや使用の条件を決定するために重要と思われるので、鈍感化爆発物はテストシリーズ 3(危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第I 部)にしたがって試験をされるべきである。この結果は安全データシートで情報提供されるべきである。

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表 2.17.1:鈍感化爆発物の判定基準

区分 判定基準

1 補正燃焼速度(Ac)が 300 kg/min 以上、1200 kg/min を超えない鈍感化爆発物

2 補正燃焼速度(Ac)が 140 kg/min 以上、300 kg/min 未満の鈍感化爆発物

3 補正燃焼速度(Ac)が 60 kg/min 以上、140 kg/min 未満の鈍感化爆発物

4 補正燃焼速度(Ac)が 60 kg/min 未満の鈍感化爆発物

注記 1: 鈍感化爆発物は、特に湿性で鈍感化されている場合には、均一性を保ち通常の貯蔵や取扱い

で分離しないようにつくられているべきである。製造者・供給者は、鈍感化を確認するための貯蔵期間

や手順について安全データシートに情報を提供すべきである。ある状況下では、供給や使用の間に鈍感

化剤(例えば、鈍感剤、湿性剤または処理)が減少し、したがって鈍感化爆発物の危険性が増加する可

能性がある。さらに、安全データシートには、物質または混合物が十分に鈍感化されていない時に増大

する火災、爆風または飛散危険性を避けるための情報を含めるべきである。

注記 2: 鈍感化爆発物は規制の目的(例えば輸送)によって異なる扱いになるであろう。輸送目的の

固体の鈍感化爆発物の分類は危険物輸送に関する国連勧告、モデル規則の第 2.4 章 2.4.2.4 節で扱われて

いる。液体の鈍感化爆発物の分類はモデル規則第 2.3 章 2.3.1.4 節で扱われている。

注記 3: 鈍感化爆発物の爆発性は、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュア

ルのテストシリーズ 2 によって決定されるべきであり、安全データシートに記載されるべきである。輸

送目的での液体鈍感化爆発物の試験は試験方法及び判定基準のマニュアル 32 節、32.3.2 を参照する。輸

送目的での固体鈍感化爆発物の試験は、試験方法及び判定基準のマニュアル 33 節 33.2.3 で扱われてい

る。

注記 4: 貯蔵、供給および使用の目的では、鈍感化爆発物が追加的に第 2.1 章(爆発物)、第 2.6 章(可

燃性/引火性液体)および第 2.7 章(可燃性固体)になることはない。

2.17.3 危険有害性情報の伝達

表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書 3 には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 2.17.2: 鈍感化爆発物のラベル要素

区分 1 区分 2 区分 3 区分 4

シンボル 炎 炎 炎 炎

注意喚起語 危険 危険 警告 警告

危険有害性情

報 火災、爆風または飛

散危険性;鈍感化剤

が減少した場合には

爆発の危険性の増加

火災または飛散危険

性;鈍感化剤が減少し

た場合には爆発の危険

性の増加

火災または飛散危

険性; 鈍感化剤が

減少した場合には

爆発の危険性の増

火災危険性;鈍感化

剤が減少した場合

には爆発の危険性

の増加

2.17.4 判定論理および手引き

以下の判定論理および手引きは、調和分類システムの一部ではないが、ここでは追加手引きとして定

めている。分類担当者は、判定論理を使う前と使う時に、その判定基準をよく調べることが強く推奨さ

れる。

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2.17.4.1 判定論理

鈍感化爆発物を分類するためには、危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュア

ルの第 V 部に記載されているように、爆発可能性および補正燃焼速度のデータを測定するべきである。

分類は判定論理 2.17.1 に従う。 判定論理 2.17.1 鈍感化爆発物

試験 6 (a), 6 (b)

No

爆発性を抑制するために鈍感化された爆発性の物質あるい

は混合物を含んでいるか?

発熱分解エネルギーが 300 J/g 未満か?

Yes

No

鈍感化爆発物とは分類され

ない

他の物理的危険性クラスに

なる可能性 Yes

物質/混合物は固体または液体か?

結果は大量爆発か?

燃焼速度試験 (第 V 部, 51.4)

危険性クラス「爆発物」 (第 2.1 章判定基準参照)

結果は大量爆発か?

AC > 1200 kg/min?

No

Yes

爆発物

等級 1.1

危険

Yes

No

Yes

No

爆発物

等級 1.1

危険

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2.17.4.2 手引き

2.17.4.2.1 以下の場合には鈍感化爆発物の分類手順を適用しない:

(a) 物質または混合物が、第 2.1 章の判定基準に従った爆発物を含まない;または

(b) 発熱分解エネルギーが 300 J/g.未満である。

2.17.4.2.2 発熱分解エネルギーはすでに鈍感化された爆発物を用いて測定されるべきである(すなわ

ち:爆発物および爆発性を抑制するために用いられる物質により構成される均一な固体または液体混合

物)。発熱分解エネルギーは、適当な熱量測定法をもちいて推定してもよい(危険物輸送に関する国連

勧告、試験方法及び判定基準のマニュアルの第 II 部 20 節 20.3.3.3 を参照)。

区分 2

危険

No

AC ≥ 300 kg/min 、 ≤ 1200 kg/min?

AC ≥ 140 kg/min 、 < 300 kg/min?

AC ≥ 60 kg/min 、 < 140 kg/min?

AC < 60 kg/min?

Yes

区分 1

危険

区分 3

警告

区分 4

警告

No

No

No

Yes

Yes

Yes

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第 3 部

健康に対する有害性

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第 3.1 章

急性毒性

3.1.1 定義

急性毒性は、物質の経口または経皮からの単回投与、あるいは 24 時間以内に与えられる複数回投与

ないしは4時間の吸入ばく露によっておこる有害な影響をいう。 3.1.2 物質の分類基準 3.1.2.1 物質は、経口、経皮および吸入経路による急性毒性に基づいて表に示されるようなカットオフ値の判定基準によって 5 つの有害性区分の1つに割当てることができる。急性毒性の値は LD50(経口、経皮)または LC50(吸入)値または、急性毒性推定値(ATE)で表わされる。注記は表の次に示した。

表 3.1.1 急性毒性区分および それぞれの区分を定義する急性毒性推定値(ATE)

ばく露経路 区分 1 区分 2 区分 3 区分 4 区分 5

経口(mg/kg 体重) 注記(a),(b)参照

≦5 ≦50 ≦300 ≦2000

≦5000 注記(g)詳細な

判定基準参照経皮(mg/kg 体重)

注記(a),(b) 参照 ≦50 ≦200 ≦1000 ≦2000

気体(ppmV) 注記(a), (b) ,(c)参照

≦100 ≦500 ≦2500 ≦20000 注記(g)詳細な

判定基準参照

蒸気(mg/l) 注記(a), (b) ,(c),(d), (e)参照

≦0.5 ≦2.0 ≦10 ≦20

粉塵およびミスト

(mg/l) 注記(a), (b), (c), (f)参照

≦0.05 ≦0.5 ≦1.0 ≦5

注記:気体濃度は容積での百万分の1(ppmV)を単位として表されている。

表 3.1.1 への注記

(a) 物質の分類のための急性毒性推定値(ATE)は、利用可能な LD50/LC50から得られる。

(b) 混合物成分の分類のための急性毒性推定値(ATE)は、次を用いて得られる:

(i) 利用可能な LD50 / LC50 (ii) 範囲試験の結果に関連した表 3.1.2 からの適切な変換値、または (iii) 分類区分に関連した表 3.1.2 からの適切な変換値

(c) 表中の吸入試験のカットオフ値は 4 時間試験ばく露に基づく。1 時間ばく露で求めた、既存

の吸入毒性データを換算するには、気体および蒸気の場合は 2、粉塵およびミストの場合 4 はで割る。

(d) ある規制システムでは、飽和蒸気濃度を追加要素として使用し、特別な健康および安全保護規定を設けている。(例:危険物輸送に関する国連勧告)

(e) 物質によっては、試験対象となる物質の状態が蒸気だけでなく、液体相と蒸気相で混成される。また他の化学品では、試験雰囲気が、ほぼ気体相に近い蒸気であることもある。この後者の例では、区分1(100ppmV)、区分2(500ppmV)、区分3(2500ppmV)、区分4(20000ppmV)のように、ppmV 濃度により分類すべきである。

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「粉塵」、「ミスト」および「蒸気」という用語は以下のとおり定義される:

(i) 粉塵: ガス(通常空気)の中に浮遊する物質または混合物の固体の粒子;

(ii) ミスト: ガス(通常空気)の中に浮遊する物質または混合物の液滴;

(iii) 蒸気: 液体または固体の状態から放出されたガス状の物質または混合物。

一般に粉塵は、機械的な工程で形成される。一般にミストは、過飽和蒸気の凝縮または液体の物理的な剪断で形成される。粉塵およびミストの大きさは、一般に 1µm 未満からおよそ100µm までである。

(f) 粉塵およびミストの数値については、今後 OECD テストガイドラインが、吸入可能な形態での粉塵およびミストの発生、維持および濃度測定の技術的限界のために変更された場合、これらに適合できるよう見直すべきである。

(g) 区分 5 の判定基準は、急性毒性の有害性は比較的低いが、ある状況下では高感受性集団に対して危険を及ぼすような物質を識別できるようにすることを目的としている。こうした物質は、経口または経皮 LD50値が 2000-5000mg / kg、また吸入で同程度の投与量であると推定されている。区分 5 に対する特定の判定基準は:

(i) LD50(または LC50)が区分 5 の範囲内にあることを示す信頼できる証拠がすでに得られている場合、またはその他の動物試験あるいはヒトにおける毒性作用から、ヒトの健康に対する急性的な懸念が示唆される場合、その物質は区分 5 に分類される。

(ii) より危険性の高い区分へ分類されないことが確かな場合、データの外挿、推定または測定

により、および下記の場合に、その物質は区分 5 に分類される。

- ヒトにおける有意の毒性作用を示唆する信頼できる情報が得られている、または

- 経口、吸入または経皮により区分 4 の数値に至るまで試験した場合に1匹でも死亡が認められた場合、または

- 区分 4 の数値に至るまで試験した場合に、専門家の判断により意味のある毒性の臨床

症状(下痢、立毛、不十分な毛繕いは除く)が確認された場合、または

- 専門家の判断により、その他の動物試験から意味のある急性作用の可能性を示す信頼できる情報があると確認された場合。

動物愛護の必要性を認識した上で、区分 5 の範囲での動物の試験は必要ないと考えられ、動物試験結果からヒトの健康保護に関する直接的関連性が得られる可能性が高い場合にのみ検討されるべきである。

3.1.2.2 急性毒性に関する調和分類システムは、既存システムの要求と合致するように策定されている。IOMC CG/HCCS(Coordinating Group/Harmonization of Chemical Classification Systems)の定めた基本原則では「調和とは、化学品の有害性の分類および情報伝達のための共通かつ首尾一貫した基盤を確立することを意味する。これより輸送手段、消費者、労働者および環境保護に関連する適切な条項の選択が可能である」としている。このために、急性毒性の体系には 5 つの分類区分が含まれている。

3.1.2.3 経口および吸入経路による急性毒性評価のために望ましい試験動物種はラットであり、急性経皮毒性評価にはラットおよびウサギが望ましい。既存システムのもとで化学品の分類のためにすでに得られた試験データは、これらの化学品を調和システムに従って再分類する際に受け入れられるべきである。複数種の動物での急性毒性実験データが利用可能である場合には、有効であり、適切に実施された試験の中から、 もふさわしい LD50値を選択する際に科学的判断を行うべきである。

3.1.2.4 区分 1 は、 も有害性が強い区分であり、そのカットオフ値(表 3.1.1 参照)は、主として輸送分野で容器等級の分類に採用されている。

3.1.2.5 区分 5 は、急性毒性は比較的低いが、特定条件下で特に高感受性の集団に有害性の可能性がある物質である。区分 5 に分類される物質を特定するための判定基準を表の追加部分に示す。これらの物質の経口または経皮 LD50値は 2000-5000mg/kg の範囲内、また吸入経路でもこれに相当する数値であると想

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定される 1。動物愛護の観点から、区分 5 の範囲での動物の試験は必要ないと考えられ、動物試験結果からヒトの健康保護に関する直接的関連性が得られる可能性が高い場合にのみ検討されるべきである。

3.1.2.6 吸入毒性に関して特別に留意すべき事項 3.1.2.6.1 吸入毒性 に関する数値は、4 時間の動物試験に基づいている。1 時間のばく露試験からの実

験値を採用する場合には、1 時間での数値を、気体および蒸気の場合は 2 で、粉塵およびミストの場合

は 4 で割ることで、4 時間に相当する数値に換算できる。

3.1.2.6.2 吸入毒性の単位は吸入された物質の形態によって決定される。粉塵およびミストの場合の数

値は mg/lとして表示される。気体の場合の数値は ppmV として表示される。液体相および蒸気相で混

成されるような蒸気を試験する困難さを認め、表中では単位を mg/lとして数値の表示をしている。た

だし、気相に近いような蒸気の場合には、分類は ppmV 濃度に基づくべきである。吸入試験方法を更新

する場合には、OECD およびその他のテストガイドライン(試験指針)プログラムは、蒸気について、

ミストとの関係をより明確にして定義することが必要となろう。

3.1.2.6.3 蒸気吸入の数値は、あらゆる分野での急性毒性分類に採用されることを目的としている。ま

た、化学品の飽和蒸気濃度は輸送分野で、化学品を容器等級で分類する際に追加要素として採用されて

いる。

3.1.2.6.4 特に重要なのは、粉塵およびミストの も有害性が強い区分において明確な数値を用いるこ

とである。空気力学的質量中央径(MMAD)が 1~4 ミクロンの吸入された粒子は、ラットの呼吸器のす

べての部分に沈着する。この粒子サイズ範囲で約2mg/l の 大用量に対応する。動物実験の結果をヒト

のばく露に外挿することができるためには、粉塵およびミストはラットにおいてこのサイズで試験する

ことが理想的である。粉塵およびミストの表におけるカットオフ値は、様々な試験条件下で測定された

広範囲の毒性をもつ物質に対して明確な区別ができるようになっている。粉塵およびミストに関する値

については、将来的に見直しを行い、吸入可能な形態での粉塵とミストの生成、維持、測定の技術的制

約に関する OECD や他のテストガイドライン(試験指針)の将来的な変更に対応していくべきである。 3.1.2.6.5 吸入毒性の分類に加えて、物質または混合物の毒性のメカニズムが腐食性であることを示す

データがあれば、所管官庁は気道に対する腐食性を表示する選択をしてもよい。 気道の腐食 は、皮膚

の腐食に類似した、一回の限られた時間でのばく露後の気道組織の破壊(粘膜の破壊を含む)として定

義される。ヒトおよび動物での経験、既存の(in vitro)データ、pH の値、類似の物質からの情報、他の

適切なデータなどの証拠を使用し、専門家の判断に基づいて、腐食性の評価をすることができる。 3.1.3 混合物の分類基準 3.1.3.1 物質に対する判定基準では、致死量データ(試験または予測による)を使用して急性毒性を分

類する。混合物については、分類の目的で判定基準を適用するための情報を入手または予測する必要が

ある。急性毒性の分類方法は、段階的で、混合物そのものとその成分について利用できる情報の量に依

存する。図 3.1.1 のフローチャートに、従うべき手順の概要を示す:

1 区分5の吸入値についての指針:分類と表示の調和に関する OECD タスクフォース(HCL)は区分5の急性吸入毒性について上記の 3.1.1 に数値を示さず、かわりに経口あるいは経皮での 2000-5000mg/kg 体重に相当する投与量を指定した(表 3.1.1 の(g)参照)。システムによっては、所管官庁が値を規定してもよい

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図 3.1.1 混合物の急性毒性に関する分類 段階的なアプローチ

混合物そのものの実験データ なし あり 十分な類似の あり 3.1.3.5 のつなぎの原則 混合物のデータ の適用 分類する なし あり

全成分のデータ 3.1.3.6.1 の加算式の適用 分類する なし あり 分類予測のために 3.1.3.6.1 の加算式の適用 分類する

利用できる他のデータ なし 毒性既知の成分の 毒性未知の成分合計≦10% 情報を利用 3.1.3.6.1 の加算式適用 分類する 毒性未知の成分合計>10% 3.1.3.6.2.3 の加算式適用

3.1.3.2 急性毒性に関する混合物の分類は、各ばく露経路について行うことができるが、1 つのばく露

経路だけが全成分について検討(推定または試験)され、複数の経路による急性毒性を示唆する適当な

証拠はないとされる場合には、その経路だけが分類される。複数のばく露経路による毒性に関して適当

な証拠がある場合には、全経路からのばく露に対しての区分を決める。利用できるすべての情報を考慮

すべきである。用いる絵表示や注意喚起語はもっとも重篤な有害性区分を反映させるべきであり、すべ

ての危険有害性情報を記載すべきである。 3.1.3.3 混合物の有害性を分類する目的で利用できるあらゆるデータを使用するために、ある条件が

与えられており、該当する段階的方法が適用される:

(a) 混合物の「考慮すべき成分」とは、1%以上の濃度(固体、液体、粉塵、ミストおよび蒸 気については重量/重量、気体については体積/体積)で存在するものである。ただし 1%よ

り低い濃度で存在する成分が、なお急性毒性についての分類に関係する可能性はないとい

う 条件が必要である。これは特に、区分 1 や区分 2 に分類される成分を含む未試験の混

合物を分類する場合に関係する。

(b) 分類された混合物が別の混合物の成分として使用される場合は、3.1.3.6.1 および

3.1.3.6.2.3 の式を用いて新しい混合物の分類を計算する際に、分類された混合物の実際

のあるいは予測される急性毒性推定値(ATE)を使用してもよい。

(c) 混合物のすべての成分に対する変換した急性毒性点推定値が同じ区分にあれば、混合物

は同じ区分とするべきである。

(d) 3.1.3.6.1 および 3.1.3.6.2.3 における式を利用して新しい混合物の区分を計算する際に、

混合物の成分に関して範囲を示すデータ(または急性毒性の区分に関する情報)のみが利

用できるときは、それらを表 3.1.2 にしたがって点推定値に変換する。

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表 3.1.2 実験的に得られた急性毒性範囲推定値(または急性毒性区分)から式を利用して混合物

を分類するための急性毒性点推定値への変換

ばく露経路

分類または実験で得られた急性毒性範囲推定値

(注記1参照)

変換値 (Conversion Value)

(注記2参照)

経口 (mg/kg 体重)

0< 区分1 ≦55< 区分2 ≦50

50< 区分3 ≦300 300< 区分4 ≦2000

2000< 区分5 ≦5000

0.5 5

100 500

2500

経皮 (mg/kg 体重)

0< 区分1 ≦5050< 区分2 ≦200

200< 区分3 ≦1000 1000< 区分4 ≦2000 2000< 区分5 ≦5000

5 50

300 1100 2500

気体 (ppmV)

0< 区分1 ≦100100< 区分2 ≦500 500< 区分3 ≦2500

2500< 区分4 ≦20000 区分5 3.1.2.5 脚注参照

10 100 700

4500

蒸気 (mg/l)

0< 区分1 ≦0.50.5< 区分2 ≦2.0 2.0< 区分3 ≦10.0 10.0< 区分4 ≦20.0

区分5 3.1.2.5 脚注参照

0.05 0.5 3

11

粉塵/ミスト (mg/l)

0< 区分1 ≦0.050.05< 区分2 ≦0.5

0.5< 区分3 ≦1.0 1.0< 区分4 ≦5.0

区分5 3.1.2.5 脚注参照

0.005 0.05 0.5 1.5

注記:気体濃度は容積当りの ppm (ppmV)で表される。

注記1:区分 5 は、急性毒性は比較的低いが、ある特定の状況で影響を受けやすい集団に有害性を示す可能性がある混合物に対するものである。これらの混合物は、2000~5000mg/kg の範囲の経口または経皮 LD50 値か、または他のばく露経路で同等の急性毒性値をもつものと予想される。動物愛護の観点から、区分 5 の範囲での動物の試験は必要ないと考えられ、動物試験結果からヒトの健康保護に関する直接的関連性が得られる可能性が高い場合にのみ検討されるべきである。 注記2:変換値は、混合物の各成分の情報に基づき混合物の分類のための ATE 値を計算する目的のためのものであり、試験結果を示すものではない。変換値は、区分1と2では範囲の下限を、区分 3 から5 では、範囲の幅の 1/10 程度下限から上にずらした値で設定されている。 3.1.3.4 混合物そのものの急性毒性試験データが利用できる場合の混合物の分類 混合物は、その急性毒性を決定するためにそのものが試験されている場合、表 3.1.1 に示した物質に

ついての判定基準に従って分類される。混合物に関するこのような試験データが利用できない状況にある場合には、以下に示した手順に従うべきである。 3.1.3.5 混合物そのものの急性毒性試験データが利用できない場合の混合物の分類:つなぎの原則

(Bridging principles) 3.1.3.5.1 混合物そのものは急性毒性を決定する試験がなされていないが、当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデータがある場合、これらのデータは以下の承認されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、分類手順において動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性の判定に利用可能なデータを可能な限り 大限に用いることができる。

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3.1.3.5.2 希釈 試験された混合物が毒性の も低い成分に比べて同等以下の毒性分類に属する物質で希釈され、その

物質が他の成分の毒性に影響を与えないことが予想されれば、新しい希釈された混合物は、試験された

元の混合物と同等として分類してもよい。あるいは 3.1.3.6.1 で説明した式も適用できる。 3.1.3.5.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの毒性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産された同

じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と本質的に同等とみなすことができる。ただし、試験され

ていないバッチの毒性が変化するような有意の変動があると考えられる理由がある場合はこの限りでは

ない。このような場合には、新しい分類が必要である。 3.1.3.5.4 毒性の高い混合物の濃縮 試験された混合物が区分 1 に分類され、区分 1 にある試験された混合物の成分の濃度が増加する場合、

試験されていない新しい混合物は、追加試験なしで区分 1 に分類すべきである。 3.1.3.5.5 ひとつの有害性区分内での内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ有害性区分にある。試験

されていない混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成

分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は A および B と同じ有害性区分にあるとする。

3.1.3.5.6 本質的に類似した混合物

次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。 (d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等であり、すなわち A と C は同じ有害

性区分に属し、かつ、B の毒性には影響を与えることは予想されない。 混合物(i)または(ii)が既に試験データによって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性

区分に分類することができる。 3.1.3.5.7 エアゾール

エアゾール形態の混合物は、添加された噴霧剤が噴霧時に混合物の毒性に影響しないという条件下で

は、経口および経皮毒性について試験された非エアゾール形態の混合物と同じ有害性区分に分類してよ

い。エアゾール化された混合物の吸入毒性に関する分類は、個別に考慮するべきである。

3.1.3.6 混合物の成分に基づく混合物の分類(加算式)

3.1.3.6.1 全成分についてデータが利用できる場合

混合物の分類を正確にし、すべてのシステム、部門および区分について計算を一度だけで済むように

するために、成分の急性毒性推定値(ATE)は次のように考えるべきである:

(a) 急性毒性が知られており、GHS 急性毒性有害性区分のいずれかに分類される成分を含め

る。

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100ATEmix = ∑

CiATEi n

(b) 急性毒性ではないと考えられる成分を無視する(例えば、水、砂糖)。

(c) 限界用量試験(表 3.1.1 における適当なばく露経路に対して区分 4 に相当する上限値)の データが利用でき、急性毒性を示していない成分を無視する。

これらの範囲内に入る成分を急性毒性推定値(ATE)が既知の成分であると考える。利用できるデー

タを下記および 3.1.3.6.2.3 の式に適当に当てはめるためには表 3.1.1 注記(b)および 3.1.3.3 を参照。 混合物の ATE 値は、経口、経皮、吸入毒性について、以下の式に従い、すべての関連成分の ATE 値

から計算によって決定される:

ここで: Ci = 成分 i の濃度 成分数nのとき、i は 1 からn ATEi= 成分 i の急性毒性推定値

3.1.3.6.2 混合物の 1 つまたは複数の成分についてデータが利用できない場合 3.1.3.6.2.1 混合物の個々の成分については ATE 値が利用できないが、以下に挙げたような利用でき

る情報から、予測された変換値が提供される場合には、3.1.3.6.1 の加算式が適用される。

これには次の評価を用いてもよい:

(a) 経口、経皮、および吸入急性毒性推定値間の外挿 2。このような評価には、適切なファ

ーマコダイナミクスおよびファーマコキネティクスのデータが必要となることがある;

(b) 毒性影響はあるが致死量データのない、ヒトへのばく露からの証拠;

(c) 急性毒性影響はあるが、必ずしも致死量データはない物質に関して利用できる他の毒性

試験/分析からの証拠;または (d) 構造活性相関を用いた極めて類似した物質からのデータ。

この方法は一般に、急性毒性を信頼できる程度に推定するために、多くの補足技術情報と高度に訓練

され経験豊かな専門家の能力を必要とする。このような情報が利用できない場合には、3.1.3.6.2.3 の規定に進むこと。 3.1.3.6.2.2 分類のための利用できる情報の全くない成分が混合物中に 1%以上の濃度で使用されてい

る場合には、混合物は明確な急性毒性推定値を割当てることはできないと結論される。この場合には、

混合物の x パーセントは急性(経口/経皮/吸入)毒性が未知の成分から成るという追加の記述と共に混

合物は既知の成分だけに基づいて分類するべきである。所管官庁はその追加的な記述をラベルまたは

SDS あるいはその両方で伝達することを明記するかどうか、またその記述をどこにするかの選択を製

造者/供給者に委ねるかどうかを決めることができる。 2 混合物が、それぞれのばく露経路について急性毒性のデータがない成分を含む場合には、急性毒性推定値は利用できるデータから外挿して適当な経路に適用する(3.1.3.2 参照)。所管官庁は特定の経路に対して試験を要求してもよい。この場合、分類は所管官庁の要求に基づいた経路に対して行うべきである。

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3.1.3.6.2.3 急性毒性が未知の当該成分の全濃度が≦10%の場合には、3.1.3.6.1 に示した式を用いるべ

きである。毒性が未知の当該成分の全濃度が>10%の場合には、3.1.3.6.1に示した加算式は、次のよう

に式(未知成分補正)により未知の成分の%について調整するように補正するべきである: 3.1.4 危険有害性情報の伝達 3.1.4.1 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に、分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可

した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。下の表には、本章で述べられた判定基準に基づき急性毒

性有害性区分1から5に分類された物質および混合物について、そのラベル要素を示す。

表 3.1.3 急性毒性のラベル要素

区分

1

区分

2

区分

3

区分

4

区分

5

シンボル

どくろ

どくろ

どくろ 感嘆符

シンボル なし

注意喚起語 危険 危険 危険 警告

警告

危険有害性情報 --経口

飲み込むと 生命に危険

飲み込むと 生命に危険

飲み込むと 有毒

飲み込むと 有害

飲み込むと 有害のおそれ

--経皮

皮膚に接触 すると生命 に危険

皮膚に接触 すると生命 に危険

皮膚に接触 すると有毒

皮膚に接触 すると有害

皮膚に接触 すると有害 のおそれ

--吸入

注記参照

吸入すると 生命に危険

吸入すると 生命に危険

吸入すると 有毒

吸入すると 有害

吸入すると 有害のおそれ

注記:物質/混合物が(皮膚または眼に関するデータに基づき)腐食物であると決定される場合、所管

官庁は、腐食性をシンボルまたは危険有害性情報として伝達してもよい。すなわち、適切な急性毒性の

シンボルに加えて、「腐食性」あるいは「気道に腐食性」などの腐食性の危険有害性情報とともに腐食性

のシンボル(皮膚と眼の腐食性のために用いられる)を追加してもよい。 3.1.4.2 急性毒性の危険有害性情報はばく露経路による危険有害性を区別している。急性毒性分類の伝達

もまたこの区別を反映させるべきである。例えば、急性経口毒性区分 1、急性経皮毒性区分 1 そして急性

吸入毒性区分 1 である。物質あるいは混合物が 1 つ以上のばく露経路に対して分類される場合は、全ての

関連した分類は附属書 4 に明記されているように SDS で伝達されなければならないし、関連した危険有

害性に関する要素は 3.1.3.2 で規定されているようにラベルに含まれなければならない。3.1.3.6.2.2 で規

定されているように、「混合物の x%は急性(経口/経皮/吸入)毒性が未知の成分からなる」という記述が

伝達される場合、ばく露の経路による区別もまた可能であろう。例えば、「混合物の x%は急性経口毒性が

未知の成分からなる」また「混合物の x%は急性経皮毒性が未知の成分からなる」など。

100‐(∑C unknown if > 10%)ATEmix = ∑

CiATEi n

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3.1.5 判定論理 以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。 3.1.5.1 判定論理 3.1.1 急性毒性

(次ページに続く)

物質: 急性毒性を評価するデータまたは情報があるか?

Yes

No

No

Yes

区分 1

危険

混合物: 混合物そのもの、あるいは成分について、

急性毒性を評価するデータまたは情報があるか?

Yes

No 分類できない

判定論理 3.1.2 からの ATE

3.1.2 から 3.1.3.4 の判定基準で以下に該当するか?

(a) 経口 LD50 >かつ< mg/kg 体重、または(b) 経皮 LD50 >50 かつ ≦ 200 mg/kg 体重、または (c) 吸入(気体) LC50 >100 かつ ≦ 500 ppm、または (d) 吸入(蒸気) LC50 > 0.5 かつ ≦ 2.0 mg/l、または (e) 吸入(粉塵/ミスト) LC50 >0.05 かつ ≦ 0.5 mg/l

Yes

区分 2

危険

分類できない

3.1.2 から 3.1.3.4 の判定基準で以下に該当するか? (a) 経口 LD50 ≦ 5 mg/kg 体重、または (b) 経皮 LD50 ≦ 50 mg/kg 体重、または (c) 吸入(気体) LC50 ≦ 100 ppm、または (d) 吸入(蒸気) LC50 ≦ 0.5 mg/l、または (e) 吸入(粉塵/ミスト) LC50 ≦ 0.05 mg/l

成分から ATE を計算す

る判定論理 3.1.2 を参

照せよ

混合物: 混合物そのものについて、急性毒性を

評価するデータまたは情報があるか? No

Yes

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区分 3

危険

3.1.2 から 3.1.3.4 の判定基準で以下に該当するか?

(a) 経口 LD50 >300 かつ ≦ 2000 mg/kg 体重、または (b) 経皮 LD50 >1000 かつ ≦ 2000 mg/kg 体重、または (c) 吸入(気体) LC50 >2500 かつ ≦ 20000 ppm、または (d) 吸入(蒸気) LC50 >10 かつ ≦ 20 mg/l、または (e) 吸入(粉塵/ミスト) LC50 >1 かつ ≦ 5 mg/l

Yes

区分 4

警告

3.1.2 から 3.1.3.4 の判定基準で以下に該当するか?(a) 経口 LD50 > 50 かつ ≦ 300 mg/kg 体重、または (b) 経皮 LD50 > 200 かつ ≦ 1000 mg/kg 体重、または (c) 吸入(気体) LC50 > 500 かつ ≦ 2500 ppm、または (d) 吸入(蒸気) LC50 > 2 かつ ≦ 10.0 mg/l、または (e) 吸入(粉塵/ミスト) LC50 > 0.5 かつ ≦ 1.0 mg/l

No

3.1.2 から 3.1.3.4 の判定基準で以下に該当するか?

(a) 経口 LD50 >2000かつ ≦ 5000 mg/kg 体重、または(b) 経皮 LD50 >2000かつ ≦ 5000 mg/kg 体重、または(c) 吸入(気体、蒸気または粉塵ミスト) LC50 が経口および

経皮 LD50 に相当する範囲(すなわち、20005000 mg/kg 体重)にある

区分 5

シンボルなし

警告

No

No

No

Yes

Yes

区分外 No

(a) 人への有意な毒性影響を示す信頼できる情報があるか?

または (b) 経口、吸入または皮膚での区分4の値までの試験で致死し

た動物がいたか? または (c) 区分4の値までの試験で、下痢、立毛、不十分な毛繕い以

外の毒性の有意な徴候が専門家により判定されたか? または

(d) 他の動物試験で、有意な急性影響の可能性を示す信頼でき

る情報を専門家が確認したか?

Yes

区分5 に分類 (警告)

シンボルなし

より危険度の高い区分に分類する根拠がない場合

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3.1.5.2 判定論理 3.1.2 急性毒性(3.1.3.5 および 3.1.3.6 分類基準参照)

――――――――――

3 利用できる情報がない成分が混合物中に≧1%の濃度で使用されている場合、分類は急性毒性が既知の成分のみに

基づいて行われるべきであり、追加の記述で混合物中のx%は急性(経口/経皮/吸入)毒性が未知の成分からなるという

事実を明記するべきである。所管官庁はその追加的な記述をラベルまたは SDS あるいはその両方で伝達することを明記

するかどうか、またその記述をどこにするかの選択を製造者/供給者に委ねるかどうかを決めることができる。

混合物のすべての成分につ

いて急性毒性データがある

か? Yes

成分の不足の ATE を推定で

きる。即ち、換算値を導くこ

とができるか?

急性毒性値のわからない成

分の合計濃度が 10%以上

か?

No

No

混合物の ATE を決定する急性毒性

評価計算を適用する

n i

i

mix ATE

C

ATE

100

ここで

Ci= i 成分の濃度

n 成分数、i は1から n まで

変化させる

ATEi = i 成分の急性毒性推定値。

Yes

No3

Yes3 急性毒性評価計算を適用する (即ち、

急性毒性値未知の成分の合計濃度が

10%以上の場合)

ATEi

Ci

ATE

) 10% if C(100

nmix

unknown

ATE mix 判定論理

3.1.1

つなぎの原則を適用できるか?

No

Yes

ATE mix 判定論理

3.1.1

適切な区分に

分類する

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第 3.2 章

皮膚腐食性/刺激性

3.2.1 定義および一般事項 3.2.1.1 皮膚腐食性とは皮膚に対する不可逆的な損傷を生じさせることである。即ち、試験物質の 4 時

間以内の適用で、表皮を貫通して真皮に至る明らかに認められる壊死である 1。腐食反応は潰瘍、出血、

出血性痂皮により、また 14 日間の観察での、皮膚脱色による変色、付着全域の脱毛、および瘢痕によ

って特徴づけられる。疑いのある病変部の評価には組織病理学的検査を検討すべきである。

皮膚刺激性とは、試験物質の 4 時間以内の適用で、皮膚に対する可逆的な損傷を生じさせるこ

とである1。 3.2.1.2 段階的アプローチにおいては、既存のヒトのデータ、既存の動物のデータ、in vitro のデータ

そしてその他の情報の順に、重きが置かれるべきである。データが判定基準を満足した時には直接に分

類がされる。物質または混合物の分類は、各段階の中で、証拠の重みづけに基づいてなされる場合もあ

る。総合的に証拠の重みづけによるアプローチを行う場合には、適切に評価された in vitro 試験で得ら

れた結果、関連する動物データおよび疫学や臨床研究さらに詳しく記載された症例報告や所見などヒト

のデータを含んだ皮膚腐食性/刺激性の決定に関係のあるすべての入手可能な情報は同時に全部を合わ

せて検討される(第 1.3 章 1.3.2.4.9 参照)。 3.2.2 物質の分類基準 この有害性クラスでは、物質は以下の 3 つの区分の内の1つに割り当てられる:

(a) 区分 1 (皮膚腐食性)

本区分はさらに、腐食性を複数に分けることを要求する所管官庁が使用することができるよ

うに、3 つの細区分(1A、1B および 1C)に分けてもよい(表 3.2.1 参照)。

(b) 区分 2 (皮膚刺激性)(表 3.2.2 参照)

(c) 区分 3 (軽度の皮膚刺激性)

本区分は 2 つ以上の皮膚刺激性区分(表 3.2.2 参照)を望む所管官庁(例えば農薬)が利用

できる。 3.2.2.1 標準的動物試験データに基づいた分類

3.2.2.1.1 皮膚腐食性 3.2.2.1.1.1 物質が皮膚の組織を破壊、すなわち表皮を通して真皮に達する目に見える壊死が、4 時間

までのばく露後に少なくとも 1 匹の試験動物で見られた場合に、皮膚腐食性とする。 3.2.2.1.1.2 所管官庁が細区分を必要としていない場合あるいはデータが細区分には十分でない場合

には、腐食性物質は区分 1 とするべきである。 3.2.2.1.1.3 データが十分で、かつ所管官庁により要求されている場合には、物質は表 3.2.1 の判定基

準にしたがって 3 つの細区分 1A、1B または 1C に分類されるであろう。 3.2.2.1.1.4 皮膚腐食性について1つ以上の区分を望む所管官庁のために、腐食性区分(区分1、表

3.2.1 参照)の中に 3 つの細区分を与えた。細区分 1A は 3 分間以内のばく露後、1 時間以内の観察期間

で腐食性反応が認められる場合、細区分 1B は 3 分間を超え 1 時間までのばく露期間後、14 日以内の観

察期間に腐食性反応が認められる場合、細区分 1C は 1 時間を超え 4 時間までのばく露後、14 日以内の

観察期間に腐食性反応が認められる場合である。 1 これは本文書における定義である。

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表 3.2.1 皮膚腐食性の区分および細区分 a

判定基準

区分 1 4 時間以内のばく露で、少なくとも 1 匹の試験動物で、皮膚の組織を破壊、

すなわち表皮を通して真皮に達する目に見える壊死

細区分 1A 3 分以下のばく露の後で、少なくとも 1 匹の動物で、1 時間以内の観察に

より腐食反応

細区分 1B 3 分を超え 1 時間以内のばく露で、少なくとも 1 匹の動物で、14 日以内の

観察により腐食反応

細区分 1C 1 時間を超え 4 時間以内のばく露で、少なくとも 1 匹の動物で、14 日以内

の観察により腐食反応

a ヒトのデータを使用する場合については 3.2.2.2 および第 1.1 章(1.1.2.5(c))、さらに 1.3 章

(1.3.2.4.7) で論じている。 3.2.2.1.2 皮膚刺激性 3.2.2.1.2.1 物質が 4 時間までのばく露後に皮膚に可逆的な損傷を与えた場合に皮膚刺激性とする。 3.2.2.1.2.2 刺激性区分(区分 2)は以下のようになる:

(a) 試験期間全体にわたって継続する作用のある被験物質も認められている、および

(b) 試験中の動物の反応は多様性があることが認められている。

皮膚刺激性物質の区分を1つ以上設けることを望む所管官庁は、さらにもう1つの軽度刺激性

物質の区分(区分 3)を利用できる。 3.2.2.1.2.3 皮膚病変の可逆性は、刺激性反応評価において考慮すべきもう1つの事項である。試験動

物 2 匹以上で炎症が試験期間終了時まで継続する場合には、脱毛(限定領域)、過角化症、過形成およ

び落屑を考慮に入れて、試料を刺激性物質であると考えるべきである。

3.2.2.1.2.4 試験中の動物の刺激性反応は、腐食性の場合と同様に多様である。有意な刺激性反応はあ

るが、陽性試験の平均スコア基準値よりも低いような例も加えられるようにするために、別の刺激性の

判定基準も加えるべきである。例えば、試験動物 3 匹中 1 匹で、通常 14 日間の観察期間終了時におい

てもまだ病変が認められるなど、試験期間中を通じて平均スコアがきわめて上昇しているのが認められ

たならば、被験試料は刺激性物質としてよいかもしれない。他の反応でもこの判定基準が充足されるこ

とがある。ただし、その反応は化学品へのばく露によるものであることを確認すべきである。この判定

基準を加えれば、本分類システムの精度は高くなる。 3.2.2.1.2.5 動物試験結果から刺激性区分(区分2)が表 3.2.2 に示されている。所管官庁(例:駆除剤)

によっては、軽度の刺激性区分(区分3)も利用できる。数種類の判定基準によって、この2種類の区分

が区別されている(表 3.2.2)。これらの区分は主として皮膚反応の重篤度に違いがある。刺激性区分の

主な分類基準は、試験動物のうち少なくとも 3 匹のうち 2 匹で平均スコアが≧2.3-≦4.0 となることで

ある。軽度刺激性の区分では、少なくとも動物3匹のうち2匹で平均スコア・カットオフ値が≧1.5-<

2.3 となることである。刺激性区分に分類されている試験試料は軽度刺激性区分への分類からは除外さ

れる。

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表 3.2.2 皮膚刺激性の区分 a, b, c 区分 判定基準

刺激性 (区分 2)

(すべての所管

官庁に適用)

(1) 試験動物 3 匹のうち少なくとも 2 匹で、パッチ除去後 24、48 および 72 時

間における評価で、または反応が遅発性の場合には皮膚反応発生後 3 日間

連続しての評価結果で、紅斑/痂皮または浮腫の平均スコアが≧2.3 かつ

≦4.0 である、または (2) 少なくとも 2 匹の動物で、通常 14 日間の観察期間終了時まで炎症が残る、

特に脱毛(限定領域内)、過角化症、過形成および落屑を考慮する、または

(3) 動物間にかなりの反応の差があり、動物 1 匹で化学品ばく露に関してきわ

めて決定的な陽性作用が見られるが、上述の判定基準ほどではないような例

もある。 軽度刺激性 (区分 3)

(限られた所管官

庁のみに適用)

試験動物 3 匹のうち少なくとも 2 匹で、パッチ除去後 24、48 および 72 時間に

おける評価で、または反応が遅発性の場合には皮膚反応発生後 3 日間連続して

の評価結果で、紅斑/痂皮または浮腫の平均スコアが≧1.5 かつ<2.3 である(上

述の刺激性区分には分類されない場合) a ヒトのデータを使用する場合については 3.2.2.2 および第 1.1 章(1.1.2.5 (c))さらに第 1.3 章

(1.3.2.4.7) で論じている。 b 評価基準は OECD テストガイドライン 404 に記載されている。 c 4, 5 または 6 匹の動物実験の評価は 3.2.5.3 にある判定基準にしたがうべきである。

3.2.2.2 段階的アプローチにおける分類 3.2.2.2.1 該当する場合には、初期情報を評価する段階的アプローチ(図 3.2.1)が検討されるべきであ

るが、場合によっては、すべての要素が当てはまるとは限らない。 3.2.2.2.2 既存の単回または反復ばく露による人および動物のデータは、皮膚に対する作用に直接関係

し得るような情報を与えるので、評価において第一に考慮すべきである。 3.2.2.2.3 急性皮膚毒性データは分類に使えるかもしれない。もし物質が経皮で毒性が高いならば、皮

膚腐食性/刺激性試験で塗布される被験物質の量が毒性用量を著しく超過して、動物が死亡する原因と

なるので、このような試験は実施すべきでないであろう。急性毒性試験で皮膚腐食性/刺激性について

の知見が得られ、またそれが限界用量までも観察される場合は、希釈法および試験動物種が同等である

ならば、このようなデータは分類に使用される。固体の物質(粉)は、湿らせるか若しくは湿った皮膚ま

たは粘膜に接触すると、腐食性物質または刺激性物質になることがある。 3.2.2.2.4 有効性が確認され承認されている in vitro の代替試験法も分類決定のために用いられる。 3.2.2.2.5 同様に、≦2 または≧11.5 のような極端な pH 値の場合、特に相当量の酸/アルカリ予備(緩

衝能力)がある場合には、皮膚作用があると考えてよい。一般的にそのような物質は、皮膚に有意な作

用を生じると予測される。他に情報が無く、物質の pH が 2 以下あるいは 11.5 以上の場合には、その物

質は腐食性(皮膚区分1)と考える。しかし低あるいは高 pH にもかかわらず、酸/アルカリ予備の検討

により、物質が腐食性でないかもしれない場合には、これは他のデータ、できれば適当な検証された vitro試験によるデータ、によって確認される必要がある。 3.2.2.2.6 構造的に関連した物質から、分類決定のための十分な情報が得られるような場合もある。 3.2.2.2.7 この段階的アプローチは、物質に関する既存の情報を系統立て、危険有害性評価と危険有害

性分類に関して証拠の重みづけによる判定をどのように行うか(理想的には新たな動物試験を行うこと

なしに)についてのガイダンスを提供する。1つの段階においては、情報は単一のパラメーターの評価

からも得られるであろうが(3.2.2.2.1 参照)、全ての既存の情報および総合的な証拠の重みづけを検討

するべきである。これは特にいくつかのパラメーターに関する情報に矛盾があるときにあてはまる。

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図 3.2.1 皮膚腐食性および刺激性の段階的評価

段階 パラメーター 知見 結論

1a: ヒトまたは動物での既存の皮膚腐食性/刺激性データ a

皮膚腐食性 皮膚腐食性と分類 bする

腐食性でない/データなし 1b: ヒトまたは動物での既存の皮膚

腐食性/刺激性データ a 皮膚刺激性 皮膚刺激性と分類 bする

刺激性でない/データなし 1c: ヒトまたは動物での既存の皮膚

腐食性/刺激性データ a 皮膚腐食性でも皮膚刺激

性でもない 区分外とする

データなし/データ不十分 2: 他の動物による既存のデータ c はい;物質が皮膚腐食性ま

たは皮膚刺激性を起こす可能性を示す他の既存のデータ

皮膚腐食性 b または皮膚刺激性 b と分類してもよい

データなし/データ不十分 3: 既存の ex vivo/in vitro データ d 陽性:皮膚腐食性 皮膚腐食性 bと分類する 陽性:皮膚刺激性 皮膚刺激性 bと分類する データなし/データ不十分/陰性反

4: pH に基づいた評価(化学品の酸

/アルカリ予備を検討) e pH2 以下または 11.5 以

上、高い酸/アルカリ予備または酸/アルカリ予備に関するデータなし

皮膚腐食性と分類する

極端な pH ではない、pH データ

なしまたは酸/アルカリ予備の低/無を示すデータなし

5: 検証された構造活性相関(SAR)

による方法 皮膚腐食性 皮膚腐食性 b と分類して

もよい 皮膚刺激性 皮膚刺激性 b と分類して

もよい データなし/データ不十分

6: 全体的な証拠の重みづけ fを検討 皮膚腐食性 皮膚腐食性 b と分類して

もよい 皮膚刺激性 皮膚刺激性 b と分類して

もよい 7: 区分外

a ヒトまたは動物の既存のデータは、単回あるいは反復ばく露から得られるであろう;例えば職業、消費者、輸送あるいは緊急時対応場面など;または実証され国際的に容認された試験方法にしたがった動物研究による目的を持って得られたデータ。事故あるいは中毒センターデータベースからのヒトデータは分類の証拠となるが、ばく露が一般には未知であるあるいは不確かなので、事例がないということがそれ自体で分類しなくてもよいという証拠にはならない;

b 適当な区分/細区分に分類する、適用する場合;

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c 十分な皮膚腐食性/刺激性に関する証拠が入手可能であるならば、全ての既存の動物データを注意深く検討し決定するべきである。しかしデータの評価において、検討する者は、皮膚の損傷に関する報告は不完全かもしれず、試験および観察はウサギ以外の種で行われているかもしれず、さらに種によって反応の感受性が異なるかもしれないことを心に留めておくべきである;

d 分離されたヒト/動物の組織を用いた検証されたプロトコールあるいは他の検証されてはいるが組織は用いないプロトコールを使った試験からの証拠が評価されるべきである。国際的に容認され、検証された皮膚腐食性に関する試験方法の例として、OECD テストガイドライン 430(Transcutaneous Electrical Resistance Test (TER))、431(Human Skin Model Test)および 435(Membrane Barrier Test Method)がある。検証され国際的に容認された皮膚刺激性に関する in vitro 試験方法の例として OECD テストガイドライン 439(Reconstructed Human Epidermis Test Method)がある;

e pH だけの測定で十分であろうが、酸またはアルカリ予備(緩衝能力)の評価が望ましい。現在、このパラメーターを評価するための検証された国際的に容認されている方法はない;

f 入手可能な全ての情報は検討されるべきであり、総合的な証拠の重みづけがなされるべきである。これは特にいくつかのパラメーターに関する情報に矛盾があるときにあてはまる。このような決定をする前に専門家の判断が行われるべきである。検証された皮膚腐食性/刺激性 in vitro 試験からの陰性結果は総合的な証拠の重みづけ評価により検討される。

3.2.3 混合物の分類基準 3.2.3.1 混合物そのもののデータが利用できる場合の混合物の分類

3.2.3.1.1 混合物は、本有害性クラスに関するデータを評価するための段階的アプローチ(図 3.2.1に示す)を考慮に入れて、物質に関する判定基準を用いて分類するべきである。 3.2.3.1.2 混合物の試験実施について検討する際には、正確に分類しかつ不必要な動物試験を回避する

ため、皮膚腐食性および刺激性に関する物質の分類基準に記載されているとおり、証拠の重み付けのた

めの段階的なアプローチをとることが推奨される。他の情報が無い場合、混合物の pH が 2 以下もしく

は 11.5 以上の場合には腐食性物質(皮膚区分1)に分類する。しかしながらもし、pH がこれより低い

あるいは高いにもかかわらず、アルカリ/酸予備により、混合物が腐食性でないと考えられる場合には、

他のデータ、出来れば適切な in vitro の試験のデータを用いて、これを確認する必要がある。

3.2.3.2 混合物そのものについてデータが利用できない場合の混合物の分類:つなぎの原則(Bridging principle)

3.2.3.2.1 混合物そのものは皮膚の腐食性/刺激性があるかどうかを決定する試験がなされていないが、

当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関し

て十分なデータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って利用される。こ

れによって分類手順において、動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に利用可能なデー

タを可能な限り 大限に用いられるようになる。 3.2.3.2.2 希釈 試験された混合物が皮膚腐食性/刺激性の も低い元の成分に比べて同等以下の皮膚腐食性/刺激性分

類に属する物質で希釈され、その物質が他の成分の皮膚腐食性/刺激性に影響を与えないことが予想さ

れれば、新しい希釈された混合物は試験された元の混合物と同等として分類してもよい。あるいは、

3.2.3.3 節で説明する方法も適用できる。 3.2.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチに皮膚の腐食性/刺激性があるかどうかは、同じ製造業者によって、

またはその管理下で生産された同じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と本質的に同等とみなす

ことができる。ただし、試験されていないバッチの毒性が変化するような有意の変動があると考えられ

る理由がある場合はこの限りではない。このような場合には、新しい分類が必要である。

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3.2.3.2.4 も高い腐食性/刺激性区分の混合物の濃縮 皮膚腐食性について も高い細区分に分類された試験混合物が濃縮された場合には、より濃度が高い

試験されていない混合物は追加試験なしで も高い腐食性の細区分に分類するべきである。皮膚刺激性

に分類された試験混合物が濃縮され、皮膚腐食性成分を含まなければ、より濃度が高い試験されていな

い混合物は追加試験なしで刺激性区分(区分 2)に分類するべきである。

3.2.3.2.5 1つの有害性区分の中での内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ皮膚腐食性/刺激性の区分

にある。試験されていない混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学

的に活性な成分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は、A および B と同じ皮膚腐食性/刺激性の区分であると推定される。 3.2.3.2.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。

(c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

(d) AとCの皮膚腐食性/刺激性に関するデータは利用でき、実質的に同等であり、すなわちAと

C は同じ有害性区分に属し、かつ、B の皮膚腐食性/刺激性かどうかには影響を与えることは予想されない。

混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。

3.2.3.2.7 エアゾール

エアゾール形態の混合物は、添加された噴射剤が噴霧時に混合物の皮膚腐食性/刺激性の性質に影響しないという条件下では、試験された非エアゾール形態の混合物と同じ有害性区分に分類してよい。 3.2.3.3 混合物の全成分についてまたは一部の成分だけについてデータが利用できる場合の混合物の

分類 3.2.3.3.1 混合物の皮膚の皮膚腐食性/刺激性を分類する目的のため利用可能なすべてのデータを使用

するために、以下の前提が必要で、その際には、段階的な方法が適用される。

混合物の「考慮すべき成分」とは、1%以上の濃度(固体、液体、粉塵、ミストおよび蒸気については重量/重量、気体については体積/体積)で存在するものである。ただし、(特に腐食性の成分の場合に)1%より低い濃度で存在する成分が、なお皮膚腐食性/刺激性についての分類に関係する可能性はないという条件が必要である。

3.2.3.3.2 一般的に、各成分のデータは利用可能であるが、混合物そのもののデータがない場合、皮膚への腐食性あるいは刺激性として混合物を分類する方法は加成性の理論に基づいている。すなわち、皮膚への腐食性あるいは刺激性の各成分は、その程度および濃度に応じて、混合物そのものの皮膚への腐食性あるいは刺激性に寄与していると考える。腐食性成分が区分 1 と分類できる濃度以下で、しかし混合物を刺激性に分類するのに寄与する濃度で含まれる場合には、加重係数として 10 を用いる。各成分の濃度の合計が分類基準となるカットオフ値/限界濃度を超えた場合、その混合物は腐食性ないし刺激性として分類される。

3.2.3.3.3 表 3.2.3 に混合物が皮膚の皮膚への腐食性あるいは刺激性に分類されると考えるべきかどう

かを決定するためのカットオフ値/濃度限界値を示した。

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3.2.3.3.4 酸、塩基、無機塩、アルデヒド類、フェノール類および界面活性剤のような特定の種類の化学品を分類する場合には特別の注意を払わなければならない。これらの化合物の多くは1%未満の濃度であっても腐食性ないし刺激性を示す場合があるので、3.2.3.3.1 および 3.2.3.3.2 に記述した方法は機能しないであろう。強酸または強塩基を含む混合物に関して、pH は表 3.2.3 における濃度限界値よりも、腐食性のよりよい指標であるから、分類基準として使用すべきである(3.2.3.1.2 参照)。また、刺激性あるいは腐食性成分を含む混合物は、化学品の特性により、表 3.2.3 に示された相加的方法で分類できない場合で 1%以上の腐食性成分を含む場合には、皮膚腐食性区分1に、また 3%以上の刺激性成分を含む場合は皮膚刺激性区分 2 または区分 3 に分類する。表 3.2.3 における方法が適用できない混合物の分類は表 3.2.4 にまとめられている。 3.2.3.3.5 時には、表 3.2.3 から 3.2.4 に示されている一般的な濃度限界/カットオフ値レベル以上の濃度であっても、成分の皮膚の刺激性/腐食性の影響を否定する信頼できるデータがある場合がある。この場合には、混合物はそのデータに基づき分類を行う(有害な物質および混合物の分類-カットオフ値/濃度限界の活用(1.3.3.2)参照)。また表 3.2.3 から 3.2.4 に示されている一般的なカットオフ濃度レベル以上の濃度であっても、成分の皮膚刺激性/腐食性がないと予想される場合は、混合物そのものでの試験実施を検討してもよい。これらの場合、3.2.3 および図 3.2.1 に示した証拠の重み付けのための段階的なアプローチを適用すべきである。 3.2.3.3.6 ある成分に関して腐食性の場合 1%、刺激性の場合 3%未満の濃度で皮膚に対して刺激性/腐食性であることを示すデータがある場合には、その混合物はそれに従って分類されるべきである(危険有害性物質および混合物の分類-カットオフ値/濃度限界値の活用(1.3.3.2)参照)。 表 3.2.3 皮膚区分1、2または3として分類される成分の濃度、

これで混合物の分類が皮膚に有害性とされる(区分1、2または3)

各成分の合計による分類

混合物を分類するための成分濃度 皮膚腐食性 皮膚刺激性

区分1 (下記注参照)

区分2 区分3

皮膚区分1 ≧5% <5%、 ≧1% 皮膚区分2 ≧10% <10%、 ≧1% 皮膚区分3 ≧10% (10×皮膚区分1)+ 皮膚区分2

≧10% <10%、 ≧1%

(10×皮膚区分1)+ 皮膚区分2+ 皮膚区分3

≧10%

注記:皮膚区分1(腐食性)の細区分が用いられる場合、混合物を1A、1B、1Cに分類するためには、皮膚区分1A、1B、1Cと分類されている混合物の成分の合計が、各々5%以上であるべきである。1Aの対象成分となる濃度が5%未満の場合で1A+1Bの濃度が 5%以上の場合には、1Bと分類すべきである。 同様に1A+1Bの対象成分となる濃度が 5%未満の場合でも1A+1B+1Cの合計が5%以上であれば1Cに分類する。混合物の少なくとも1つの成分が細区分なしに区分 1 に分類されている場合には、皮膚に対して腐食性である成分の合計が 5%以上である場合、混合物は細区分なしに区分1 と分類されるべきである。

表 3.2.4 加成方式が適用しない場合の混合物の成分の濃度 これで混合物の分類が皮膚に有害とされる

成分 濃度 混合物の分類:皮膚

酸 pH≦2 ≧1% 区分 1 塩基 pH≧11.5 ≧1% 区分 1 その他の腐食性(区分 1)成分 ≧1% 区分 1 その他の刺激性(区分 2/3)成分 酸、塩基を含む

≧3% 区分 2/3

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3.2.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。下の表には、本章で述べられた判定基準に基づいて、皮膚に腐食

性ないし刺激性と分類された物質および混合物について、ラベル要素を示す。

表 3.2.5 皮膚腐食性/刺激性のラベル要素

区分 1 区分 2 区分 3

1 A 1 B 1 C

シンボル 腐食性 腐食性 腐食性 感嘆符 シンボル

なし

注意喚起語 危険 危険 危険 警告 警告

危険有害性

情報

重篤な皮膚の薬

傷・眼の損傷 重篤な皮膚の薬

傷・眼の損傷 重篤な皮膚の薬

傷・眼の損傷 皮膚刺激 軽度の皮膚

刺激

3.2.5 判定論理および手引き 以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。

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3.2.5.1 判定論理 3.2.1 皮膚腐食性/刺激性 _________________ 2 必要に応じて総合的な証拠の重みづけを考慮する; 3 pH および酸/アルカリ予備の検討により、物質あるいは混合物が腐食性でないかもしれないことが示され、他のデ

ータ、できれば適当な検証された vitro 試験によるデータ、によって確認された場合には、適用しない。

混合物:混合物そのものについて皮膚の腐食性/刺激性

を評価するデータ/情報があるか?

物質: 皮膚の腐食性/刺激性を評価するデータ/情報があるか?

分類できない 混合物: 混合物そのもの、あるいは成分について皮膚の

腐食性/刺激性を評価するデータ/情報があるか?

試験された同様の混合

物及び成分について、

使用される判定論理 3.2.2 参照

分類できない No

Yes

Yes

No

No

Yes

Yes

物質あるいは混合物は 以下を考慮して腐食性か?(3.2.1.1, 3.2.2.1.1, 3.2.2.2 あるいは 3.2.3.1 参照)2: (a) 人の皮膚に不可逆的損傷を与えた経験がある、 (b) 1匹以上の試験動物で皮膚の破壊(判定基準および細区分に

ついては 3.2.2.1.1, 表 3.2.1 を参照) (c) 単回または反復ばく露後に皮膚腐食性をしめす他の既存の動

物データ、 (d) 既存の ex vivo/in vitro データ、 (e) pH が 2 または 11.5 である 3、 (f) 検証された構造活性相関(SAR)方法による情報

区分 1

危険

物質あるいは混合物は 3.2.2.1.2.5 、表 3.2.2 の区

分を考慮して、軽度刺激性であるか?

区分外

Yes

物質あるいは混合物は以下を考慮して刺激性であるか 2?(3.2.1.1, 3.2.2.1.2, 3.2.2.2 および 3.2.3.1 参照) (a) 人についての経験または単回あるいは反復ばく露のデー

タがある、 (b) 動物試験による皮膚刺激性データ(判定基準 3.2.2.1.2、

表 3.2.2 参照) (c) 単回または反復ばく露を含む他の既存の動物データ (d) In vitro データがある、 (e) 検証された構造活性相関(SAR)方法による情報

No

No

No Yes

区分 2

警告

区分 3 シンボル

なし

警告

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3.2.5.2 判定論理 3.2.2 皮膚腐食性/刺激性

試験された同様な混合物および/または成分に基づいた情報/データによる混合物の分類

適当な区分に

分類

混合物は腐食性成分(3.2.1.1, 3.2.2.1.1 および 3.2.2.2 参照)

を≥ 1%4,5 含むか?加成方式が適用できない場合(3.2.3.3.4 参

照)

混合物は刺激性成分(3.2.1.1, 3.2.2.1.2 および 3.2.2.2 参照)

を 3%4,5 含むか?加成方式が適用できない場合(3.2.3.3.4参照)

つなぎの原則が適用できるか(3.2.3.2 参照)? Yes

No

区分 1

危険

区分 2

警告

Yes

混合物は腐食性成分 4 を 1 つ以上含むか?加成方式が適用でき

(3.2.3.3.2 および表 3.2.3 参照)、かつ皮膚区分 1 と分類され

る成分の合計が 5%5 Yes

区分 1 6

危険

No

No

No

Yes

皮膚腐食性/刺激性を評価するための同様な試験をされた混合物

に関するデータがあるか?

No

Yes

4 考慮すべき成分 < 1%、 3.2.3.3.1 参照 5 特定の濃度限界については 3.2.3.3.6 参照、「カットオフ値/濃度限界値の活用」については第 1.3 章 1.3.3.2 も参照 6 区分-細区分の使用の詳細については表 3.2.3 の注記を参照

(次ページに続く)

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3.2.5.3 背景文書 3.2.5.3.1 皮膚および眼の有害性クラスに対する判定基準は 3 匹動物試験として GHS に詳述されている。

動物を 6 匹まで使用してもよいとする古い試験方法も知られている。しかし、GHS の判定基準では 3 匹を超

える動物の試験による既存のデータに基づいた分類について明記していない。4 匹以上の動物を用いた試験

による既存データに基づいてどのように分類を行うかに関するガイダンスを以下のパラグラフに示す。

3.2.5.3.2 3 匹の動物試験に基づいた分類判定基準は 3.2.2.1 に詳述されている。4、5 または 6 匹の動物試験の評価は、試験動物の数により、以下のパラグラフによる判定基準にしたがうべきである。紅斑/痂皮および浮腫のスコアは、ばく露後 24、48 および 72 時間後、または反応が遅延している場合、皮膚反応の開始後 3 連続日の進行度から、とるべきである。 3.2.5.3.3 6 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する:

(a) 皮膚の組織の破壊(すなわち表皮を通して真皮に達する目に見える壊死)が、4 時間以内のばく露後に少なくとも 1 匹の動物で起きた場合に、物質または混合物は皮膚腐食性区分 1 と分類する;

(b) 6 匹中少なくとも 4 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 2.3 および ≤ 4.0 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 2 と分類される;

(c) 6 匹中少なくとも 4 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 1.5 および < 2.3 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 3 と分類される。

4 考慮すべき成分 < 1%、 3.2.3.3.1 参照 5 特定の濃度限界については 3.2.3.3.6 参照、「カットオフ値/濃度限界値の活用」については第 1.3 章 1.3.3.2 も参照

区分外

混合物は腐食性または刺激性成分 4を 1 つ以上含むか?加成方式が適用で

き(3.2.3.3.2 および表 3.2.3 参照)、かつ分類された成分の濃度合計が以

下のようである 5:

(a) 皮膚区分 2 ≥ 1% 、 < 10%、または

(b) 皮膚区分 3 ≥ 10%、または

(c) (10 × 皮膚区分 1) +皮膚区分 2 ≥ 1%、 < 10%、または

(d) (10 × 皮膚区分 1) +皮膚区分 2 +皮膚区分 3 ≥ 10%?

Yes

区分 3

シンボルなし

警告

No

No

混合物は腐食性または刺激性成分 4を 1 つ以上含むか?加成方式が適用で

き(3.2.3.3.2 および表 3.2.3 参照)、かつ分類された成分の濃度合計が以

下のようである 5:

(a) 皮膚区分 1 ≥ 1% 、< 5%、または

(b) 皮膚区分 2 ≥ 10%、または

(c) (10 ×皮膚区分 1) + 皮膚区分 2 ≥ 10%?

Yes

No

区分 2

警告

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3.2.5.3.4 5 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する: (a) 皮膚の組織の破壊(すなわち表皮を通して真皮に達する目に見える壊死)が、4 時間以内の

ばく露後に少なくとも 1 匹の動物で起きた場合に、物質または混合物は皮膚腐食性区分 1 と

分類する;

(b) 5 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 2.3 およ

び ≤ 4.0 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 2 と分類される;

(c) 5 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 1.5 および < 2.3 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 3 と分類される。

3.2.5.3.5 4 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する:

(a) 皮膚の組織の破壊(すなわち表皮を通して真皮に達する目に見える壊死)が、4 時間以内の

ばく露後に少なくとも 1 匹の動物で起きた場合に、物質または混合物は皮膚腐食性区分 1 と

分類する;

(b) 4 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 2.3 およ

び ≤ 4.0 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 2 と分類される;

(c) 4 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの紅斑/痂皮または浮腫に関する平均スコアが≥ 1.5 および < 2.3 の場合、物質または混合物は皮膚刺激区分 3 と分類される。

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第 3.3 章

眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

3.3.1 定義および一般事項 3.3.1.1 眼に対する重篤な損傷性とは、眼の表面に試験物質を付着させることによる、眼の組織損傷の

生成、あるいは重篤な視力低下で、付着後 21 日以内に完全には治癒しないものをいう 1。 眼刺激性とは、眼の表面に試験物質を付着させることにより眼に生じた変化で、付着後 21 日以内に完

全に治癒するものをいう 1。 3.3.1.2 段階的アプローチにおいては、既存のヒトのデータ、既存の動物のデータ、in vitro のデータ

そしてその他の情報の順に、重きが置かれるべきである。データが判定基準を満足した時には直接に分

類がされる。物質または混合物の分類は、段階の中で、証拠の重みづけに基づいてなされる場合もある。

証拠の重みづけによるアプローチでは、適切に評価された in vitro 試験の結果、関連する動物データお

よび疫学や臨床研究さらに記録の確かな症例報告や所見などヒトのデータを含んだ眼に対する重篤な損

傷性/眼刺激性の決定に関係のあるすべての入手可能な情報は同時に検討される(第 1.3 章 1.3.2.4.9 参

照)。 3.3.2 物質の分類基準 物質はこの有害性クラスでは、以下のように区分 1(眼に対する重篤な損傷性)または区分 2(眼刺

激)のうちの1つに割り当てられる:

(a) 区分 1 (眼に対する重篤な損傷性/眼に対する不可逆的作用):

眼に対して重篤な損傷を与える可能性のある物質(表 3.3.1 参照)。

(b) 区分 2 (眼刺激性/眼に対する可逆的影響):

可逆的な眼刺激作用を起こす可能性のある物質(表 3.3.2 参照)。

「眼刺激」の分類に関して1つの区分としたい所管官庁は総合的な区分 2 を使用すればよ

い;区分 2A および区分 2B を区別したいところもあろう(表 3.3.2 参照)。 3.3.2.1 標準的動物試験データによる分類

3.3.2.1.1 眼に対する重篤な損傷(区分1)/眼への不可逆的作用 眼を重篤に損傷する可能性を有する物質には、単一の区分 1 の有害性区分が適用される。この有害性

区分には、表 3.3.1 にある判定基準としての観察が含まれている。これらの所見には、試験中のどこか

の時点で観察された第 4 段階の角膜病変およびその他の重篤な反応(例:角膜破壊)、持続性の角膜白

濁、色素物質による角膜の着色、癒着、角膜の血管増殖、および虹彩機能の妨害、または視力を傷害す

るその他の作用を伴った動物が含まれる。ここで持続性の病変とは、通常 21 日間の観察期間内で完全

に可逆的ではない病変をいう。有害性分類区分1にはまた、3 匹の試験動物の内少なくとも 2 匹で、角

膜白濁≧3、または虹彩炎>1.5 が観察されるとする判定基準を充足する物質も含まれる。なぜなら、

これらのような重篤な病変は、21 日間の観察期間内には通常回復しないからである。

1 これは本文書における定義である。

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表 3.3.1 眼に対する重篤な損傷性/眼への不可逆的作用区分 a, b, c

判定基準

区分 1: 以下の作用を示す物質:

眼に対する重篤な損傷性/眼に対する不可逆的作用

(a) 少なくとも 1 匹の動物で、角膜、虹彩または結膜に対する、可逆的であると予測されない作用が認められる、または通常 21 日間の観察期間中に完全には回復しない作用が認められる、および/または

(b) 試験動物 3 匹中少なくとも 2 匹で、試験物質滴下後 24、48 および 72時間における評価の平均スコア計算値が

(i) 角膜混濁 3;および/または

(ii) 虹彩 > 1.5;

で陽性反応がえられる。

a ヒトのデータの使用については、3.3.2.2 および第 1.1 章(1.1.2.5(c))ならびに第 1.3 章(1.3.2.4.7)で述べている。

b 評価基準は OECD テストガイドライン 405 に記載されている。 c 4, 5 または 6 匹の動物実験の評価は 3.3.5.3 にある判定基準にしたがうべきである。

3.3.2.1.2 眼刺激性(区分 2)/眼に関する可逆的作用 3.3.2.1.2.1 所管官庁によりさらに区分 2A および 2B に分類する必要がない、あるいはさらに分類す

るためのデータが十分でない場合には、可逆的な眼刺激を起こす可能性のある物質は区分 2 に分類する

べきである。化学品が区分 2 と分類され、さらなる分類がない場合、分類の判定基準は区分 2A とおな

じである。

3.3.2.1.2.2 可逆的な眼刺激に対して2つ以上の割り当てを望む所管官庁には、2A および 2B がある。

(a) データが十分で、所管官庁により要求されている場合には、物質を表 3.3.2 の判定基準に

したがって区分 2A または 2B と分類してもよい;

(b) 通常 21 日間の観察期間内に回復する眼刺激作用を起こす物質は区分 2A とする。7日間

の観察期間内に回復する目刺激作用を起こす物質は 2B とする。 3.3.2.1.2.3 動物間で反応にきわめて多様性が認められる化学品に対しては、分類の決定において、そ

の情報を考慮してもよい。 表 3.3.2 可逆的な眼への作用に関する区分 a, b, c

判定基準

可逆的な眼刺激作用の可能性を持つ物質

区分 2/2A 試験動物 3 匹中少なくとも 2 匹で以下の陽性反応がえられる。 試験物質滴下後 24、48 および 72 時間における評価の平均スコア計算値が:

(a) 角膜混濁 ≥ 1;および/または (b) 虹彩 ≥ 1;および/または (c) 結膜発赤 ≥ 2;および/または (d) 結膜浮腫 ≥ 2 かつ通常 21 間の観察期間内で完全に回復する。

区分 2B 区分 2A において、上述の作用が 7 日間の観察期間内に完全に可逆的である場合には、眼刺激性は軽度の眼刺激(区分 2B)であるとみなされる。

a ヒトのデータの使用については第 1.1 章 3.3.2.2 (1.1.2.5(c))および第 1.3 章( 1.3.2.4.7)で述べている。

b 評価基準は OECD テストガイドライン 405 に記載されている。 c 4, 5 または 6 匹の動物実験の評価は 3.3.5.3 にある判定基準にしたがうべきである。

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3.3.2.2 段階的アプローチにおける分類 3.3.2.2.1 ある場合にはすべての条項が該当するとは限らないことを理解して、初期情報を評価するた

めに、適用可能であるならば(図 3.3.1)、段階的アプローチを考慮するべきである。

3.3.2.2.2 既存のヒトおよび動物でのデータから、眼に対する作用に直接関連する情報が得られるので、

それらによる評価の第一段階に置かれるべきである。皮膚腐食性物質について、局所的な作用である眼

への試験を行うことを回避するために、眼に対する重篤な損傷性/刺激性に関する試験を考えるに先立

って、皮膚腐食性の可能性について評価しておかなければならない。

3.3.2.2.3 有効性が確認され、承認されている in vitro代替試験を用いて分類決定をおこなうべきである。

3.3.2.2.4 同様に、pH≦2 および≧11.5 など極端な pH は、特に相当な酸/アルカリ予備(緩衝能力)を

ともなっている場合は、眼に対する重篤な損傷作用を示すことがある。一般にそのような物質は眼に有

意な作用を生じると予測される。他に情報が無く、物質が pH<2 あるいは>11.5 であれば、その物質

は眼に対する重篤な損傷性がある(区分 1)と考える。しかし、酸/アルカリ予備の検討により物質が、

高あるいは低 pH にもかかわらず、眼に対して重篤な損傷を起さないと考えられる場合には、他のデー

タ、できれば適切な in vitro の試験のデータを用いて、これを確認する必要がある。

3.3.2.2.5 また、構造的に関連している物質から有害性決定に十分な情報が得られる例もある。

3.3.2.2.6 そのような試験戦略に必要なデータが要求されない場合、本提案の段階的な試験方法は、理

想的には新たな動物試験を行わずに、既存情報をどのようにまとめるか、および有害性の評価および有

害性の分類に証拠の重みの決定をどのようにするかについての、優れた手引きを示している。腐食性物

質についての動物試験は、できる限り回避すべきである。ある段階の1つの因子を評価して情報が得ら

れることもある(3.3.2.1.1 参照)が、既存情報の全体および証拠の重みづけによる決定を検討するべき

である。これは特に因子のいくつかに対して情報が矛盾していた場合にあてはまる。

図 3.3.1: 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の段階的評価 (図 3.2.1 も参照のこと)

段階 パラメーター 知見 結論

1a: ヒトまたは動物での既存の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性データ a

眼に対する重篤な損傷性

眼に対する重篤な損傷性と分類する

眼刺激性 眼刺激性 bと分類する 陰性データ/不十分なデータ/

データなし

1b: ヒトまたは動物での既存のデ

ータ、皮膚腐食性 皮膚腐食性 眼に対する重篤な損傷性として

もよい 陰性データ/不十分なデータ/

データなし

1c: ヒトまたは動物での既存の眼

に対する重篤な損傷性/眼刺激性データ a

既存のデータでは物質は眼に対する重篤な損傷性または眼刺激性ではない

区分外とする

データなし/不十分なデータ 2: 他の、動物による皮膚/眼に対

する既存のデータ c はい;物質が眼に対す

る重篤な損傷性または眼刺激性を起こす可能性を示す他の既存のデータ

眼に対する重篤な損傷性または眼刺激性 bと分類してもよい

データなし/不十分なデータ

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段階 パラメーター 知見 結論

3: 既存の ex vivo/in vitro 眼データ d

陽性:眼に対する重篤な損傷性

眼に対する重篤な損傷性と分類する

陽性:眼刺激性 眼刺激性 bと分類する データなし/不十分なデータ/

陰性反応

4: pH に基づいた評価(化学品

の酸/アルカリ予備を検討) e pH2 以下または 11.5

以上、高い酸/アルカリ予備または酸/アルカリ予備に関するデータなし

眼に対する重篤な損傷性と分類する

極端な pH ではない、pH データなしまたは極端な pH であるが酸/アルカリ予備の低/無を示すデータなし

眼に対する重篤な損

傷性眼に対する重篤な損傷性と分類してもよい

5: 検証された構造活性相関(SAR)による方法

眼刺激性 眼刺激性 bと分類してもよい

皮膚腐食性 眼に対する重篤な損傷性と分類

してもよい データなし/不十分なデータ

6: 全体的な証拠の重みづけ f を

検討 眼に対する重篤な損

傷性 眼に対する重篤な損傷性と分類してもよい

眼刺激性 眼刺激性 bと分類してもよい7: 区分外

a ヒトまたは動物の既存のデータは、単回あるいは反復ばく露から得られるであろう;例えば職業、消費者、輸送あるいは緊急時対応場面など;または実証され国際的に容認された試験方法にしたがった動物研究による目的を持って得られたデータ。事故あるいは中毒センターデータベースからのヒトデータは分類の証拠となるが、ばく露が一般には未知であるあるいは不確かなので、事例がないということがそれ自体で分類しなくてもよいという証拠にはならない;

b 適当な区分に分類する、適用する場合; c 十分な眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性に関する証拠が入手可能かどうかをみるために、他の同様な

情報を通して、既存の動物データを注意深く検討するべきである。全ての皮膚刺激物質が眼刺激物質とは限らないことが知られている。このような決定をする前に専門家の判断が行われるべきである。

d 分離されたヒト/動物の組織を用いた検証されたプロトコールあるいは他の検証されてはいるが組織は用いないプロトコールを使った試験からの証拠が評価されるべきである。国際的に容認され、検証された眼腐食性および重篤な刺激性(すなわち眼に対する重篤な損傷性)を同定する試験方法の例として、OECD TG 437 (Bovine Corneal Opacity and Permeability (BCOP)) 、438 (Isolated Chicken Eye (ICE))および 460 (Fluorescein leakage(FL))がある。現在、眼刺激性に関して、検証され国際的に容認されている in vitro 試験方法はない。皮膚腐食性に関して検証された in vitro 試験による陽性の試験結果が、眼に対する重篤な損傷を起こすとした分類に結びついている;

e pH だけの測定で十分であろうが、酸またはアルカリ予備(緩衝能力)の評価が望ましい。現在、このパラメーターを評価するための検証された国際的に容認されている方法はない;

f 入手可能な全ての情報は検討されるべきであり、総合的な証拠の重みづけがなされるべきである。これは特にいくつかのパラメーターに関する情報に矛盾があるときにあてはまる。皮膚刺激に関する情報を含んだ証拠の重みづけが眼刺激性の分類につながるであろう。検証された in vitro 試験による陰性結果は総合的な証拠の重みづけにおいて考慮される。

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3.3.3 混合物の分類基準

3.3.3.1 混合物そのもののデータが利用できる場合の混合物の分類 3.3.3.1.1 混合物は、物質に関する判定基準を用い、これらの有害性クラスについてデータを評価するために段階的アプローチを考慮に入れて分類されるべきである(図 3.3.1 に示されているように)。 3.3.3.1.2 分類者が混合物の試験実施について検討する際には、正確に分類しかつ不必要な動物試験を回避するため、皮膚腐食性、眼に対する重篤な損傷性および眼刺激性に関する物質の分類基準に記載されているとおり、証拠の重み付けのための段階的アプローチをとることが推奨される。他の情報が無い場合には、混合物の pH が 2 以下もしくは 11.5 以上の場合には、重篤な眼損傷を起こす(眼区分1)と推定する。しかし、酸/アルカリ予備の検討により混合物が、高あるいは低 pH にもかかわらず、眼に対して重篤な損傷を起さないと考えられる場合には、他のデータ、できれば適切な in vitro の試験のデータを用いて、これを確認する必要がある。

3.3.3.2 混合物そのものについてデータが利用できない場合の混合物の分類:つなぎの原則(Bridging principle)

3.3.3.2.1 混合物そのものは皮膚腐食性、眼に対する重篤な損傷性ないし眼刺激性を決定する試験がなされていないが、当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って利用される。これによって分類手順において、動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に利用可能なデータを可能な限り 大限に用いることができるようになる。

3.3.3.2.2 希釈 試験された混合物が眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の も低い元の成分に比べて同等以下の眼に

対する重篤な損傷性/眼刺激性分類に属する物質で希釈され、その物質が他の成分の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性に影響を与えないことが予想されれば、新しい希釈された混合物は、試験された元の混合物と同等として分類してもよい。あるいは、3.3.3.3 節で説明する方法も適用できる。 3.3.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性は、同じ製造業者によって、ま

たはその管理下で生産された同じ商品の試験されていない別のバッチの眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性と本質的に同等とみなすことができる。ただし、試験されていないバッチの眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の可能性が変化するような有意の変動があると考えられる理由がある場合はこの限りではない。このような場合には、新しい分類が必要である。 3.3.3.2.4 も高い眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分の混合物の濃縮 眼に対する重篤な損傷について、眼に対する重篤な損傷性(区分 1)に分類された試験混合物が濃縮

された場合には、より濃度が高い試験されていない混合物は追加試験なしで眼に対する重篤な損傷性(区分 1)に分類すべきである。皮膚/眼刺激性について眼刺激性(区分 2 または 2A)分類された試験混合物が濃縮され、眼に対して重篤な損傷を起こす成分を含まなければ、より濃度が高い試験されていない混合物は追加試験なしで眼刺激性(区分 2 または 2A)に分類すべきである。 3.3.3.2.5 1つの有害性区分の中での内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の有害性区分にある。混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は、A および B と同じ眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の区分であると推定される。 3.3.3.2.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B

(ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。

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(c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

(d) A と C の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性に関するデータが利用でき、実質的に同等であ り、すなわち A と C は同じ有害性区分に属し、かつ B の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の可能性には影響を与えることは予想されない。

混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。 3.3.3.2.7 エアゾール

エアゾール形態の混合物は、添加された噴射剤が噴霧時に混合物の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性に影響しないという条件下では、試験された非エアゾール形態の混合物と同じ有害性区分に分類してよい 3。 3.3.3.3 混合物の全成分についてまたは一部の成分だけについてデータが入手された場合の混合物の

分類 3.3.3.3.1 混合物の眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を分類する目的のため利用可能なすべてのデータを使用するために、以下の前提が必要で、その際には、段階的な方法が適用される。

混合物の「考慮すべき成分」とは、1%以上の濃度(固体、液体、粉塵、ミストおよび蒸気については

重量/重量、気体については体積/体積)で存在するものである。ただし、(特に腐食性の成分の場合に)1%より低い濃度で存在する成分が、なお眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性についての分類に関係する可能性はないという条件が必要である。 3.3.3.3.2 一般的に、各成分のデータは入手されたが、混合物そのもののデータがない場合、眼の重篤な損傷性または眼刺激性として混合物を分類する方法は加成法の理論に基づく。すなわち、腐食性ないし重篤な損傷性/刺激性の各成分がその程度と濃度に応じて、混合物そのものの眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性に寄与しているという理論である。腐食性および眼に対する重篤な損傷性の成分が区分 1と分類できる濃度以下であるが、混合物を眼に対する重篤な損傷性/刺激性に分類するのに寄与する濃度で含まれる場合には、加重係数として 10 を用いる。各成分の濃度の合計がカットオフ値/限界濃度を超えた場合、その混合物は眼に対する重篤な損傷性または眼刺激性として分類される。 3.3.3.3.3 表 3.3.3 に混合物を眼に対する重篤な損傷性あるいは眼刺激性に分類すべきかを決定するためのカットオフ値/濃度限界を示した。 3.3.3.3.4 酸、塩基、無機塩、アルデヒド、フェノールおよび界面活性剤のようなある特定の種類の化学品を分類する場合には特別の注意を払わなければならない。これらの化合物の多くは1%未満の濃度であっても眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を示す場合があるので、3.3.3.3.1 および 3.3.3.3.2 に記述した方法は機能しないであろう。強酸または強塩基を含む混合物に関して、pH は表 3.3.3 にある濃度限界値よりも眼に対する重篤な損傷性(酸/アルカリ予備の検討が必要)のよりよい指標であるから、分類基準として使用すべきである(3.3.3.1.2 参照)。眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性の成分を含む混合物で、化学品の特性により、表 3.3.3 に示された加算法に基づいて分類できない場合、1%以上の腐食性および眼に対する重篤な損傷性の成分を含む場合には、眼区分1に分類する。また、3%以上の眼刺激性成分を含む場合は眼区分2に分類する。表 3.3.3 の方法が適用できない混合物の分類は表 3.3.4 にまとめられている。 3.3.3.3.5 時には、表 3.3.3 および 3.3.4 に示されている一般的なカットオフ値/濃度限界を超えるレベルで存在するのに、眼の不可逆的/可逆的な影響を否定する信頼できるデータがある場合がある。この場合には、混合物はそのデータに基づき分類できる(1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」参照)。また、ある成分が表 3.3.3 および 3.3.4 に述べる一般的な濃度/カットオフレベル以上であっても、皮膚の腐食性/刺激性、あるいは眼への不可逆的/可逆的影響がないと予想される場合は、混合物そのものでの試験実施を検討してもよい。これらの場合、3.3.3 および図 3.3.1 で述べ、本章で詳細に説明したように、証拠の重み付けのための段階的アプローチを適用すべきである。

3 つなぎの原則はエアゾールの本質的な有害性分類に適用されるが、スプレーの物理的な力による「機械的な」眼損傷の可能性も評価する必要があることが理解されている。

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3.3.3.3.6 ある成分について、皮膚腐食性ないし眼に対する重篤な損傷性の場合 1%未満、眼刺激性の場合 3%未満の濃度でも、皮膚腐食性ないし眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性であることを示すデータがある場合は、混合物はそれに従って分類されるべきである(1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」参照)。 表 3.3.3 皮膚区分1または眼区分1、2として分類される成分の濃度、これで混合物の分類が眼に有

害とされる(区分1または2)

各成分の合計による分類 混合物を分類するための成分濃度

眼に対する重篤な

損傷性 眼刺激性

区分 1 区分 2/2A

皮膚区分 1 + 眼区分 1 a 3% 1% 、< 3%

眼区分 2 10% b

10 (皮膚区分 1 + 眼区分 1) a + 眼区分 2

10%

a 1つの成分が皮膚区分 1 および眼区分 1 の両方に分類されていた場合、その濃度は計算に

一度だけ入れる; b すべての関連する成分が眼区分 2B と分類されている場合、混合物は眼区分 2B と分類して

も良い。 表 3.3.4 加成方式を適用しない場合の混合物の成分の濃度、これで混合物の分類が眼に有害とされる

成分 濃度 混合物の分類

眼 酸 pH≦2 ≧1% 区分1 塩基 pH≧11.5 ≧1% 区分1 その他の腐食性(眼区分1)成分 ≧1% 区分1 その他の眼刺激性(眼区分2)成分

(酸、塩基を含む) ≧3% 区分2

3.3.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 3.3.5 眼に対する重篤な損傷/眼刺激性のラベル要素 a

区分 1 区分 2A 区分 2B

シンボル 腐食性 感嘆符 シンボルなし

注意喚起語 危険 警告 警告

危険有害性情報 重篤な眼の損傷 強い眼刺激 眼刺激

a 化学品が皮膚区分 1 と分類されている場合、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激の表示は省略

しても良い。この情報はすでに皮膚区分 1 に対する有害性情報の中に含まれている(重篤な皮

膚の薬傷・眼の損傷)(第 1.4 章 1.4.10.5.3.3 参照)。

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3.3.5 判定論理

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。 3.3.5.1 判定論理 3.3.1 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

(次ページに続く)

3 必要に応じて総合的な証拠の重みづけを検討する。 4 pH および酸/アルカリ予備の検討により、物質や混合物が眼に対する重篤な損傷を起さないかもしれないことが示さ

れ、さらに他のデータ、できれば適当な検証された in vitro 試験によるデータ、によって確認された場合には、適用しない。

No

物質: 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を評価するデータ/情報があるか?

混合物: 混合物そのもの、あるいは成分について眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を評価するデータ/情報があるか?

混合物: 混合物そのものについて眼に対す

る重篤な/眼刺激性を評価するデータ/情報

があるか?

物質あるいは混合物は 以下を考慮して眼に不可逆的損傷(眼に

対する重篤な眼損傷性 3.3.1、3.3.2.1.1、3.3.2.2 および 3.3.3.1参照)を起こす可能性があるか 3?:

(a) ヒト眼に関する既存データ;

(b) 1匹以上の試験動物による不可逆的眼の損傷;

(c) 皮膚腐食性を示すヒトまたは動物の既存データ;

(d) 他の単回または反復ばく露での動物の眼の既存データ;

(e) 既存の ex vivo/in vitro 眼データ

(f) pH が 2 または 11.54;

(g) 検証された構造活性相関(SAR)方法からの情報

Yes

Yes

Yes

No

No

No

Yes

分類できない

区分1

危険

分類できない

試験された同様の混合物および成分について、使用される判定論理 3.3.2 参照

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3 必要に応じて総合的な証拠の重みづけを検討する。

区分外

Yes

No

No

No

Yes

区分2A

警告

区分2B

シンボルなし

警告

物質あるいは混合物は以下を考慮して眼刺激性(3.3.1、3.3.2.1.2、3.3.2.2 および 3.3.3.1 参照)であるか 3? (a) 単回または反復ばく露でヒトの既存データ;

(b) 動物試験での眼刺激性データ(3.3.2.1.2、表 3.3.2 区

分 2/2A の判定基準):

(c) 他の単回または反復ばく露での動物の眼の既存デー

タ;

(d) 既存 ex vivo/in vitro データ;

(e) 検証された構造活性相関(SAR)方法からの情報

物質あるいは混合物は眼刺激・区分 2B である

か? (3.3.2.1.2 、表 3.3.2 参照)

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3.3.5.2 判定論理 3.3.2 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 試験された同様な混合物および成分の情報/データに基づいた混合物の分類

__________________________________________________

5 考慮すべき成分 < 1%、 3.3.3.3.1 参照 6 特定の濃度限界については 3.3.3.3.5 および 3.3.3.3.6 参照、「カットオフ値/濃度限界値の活用」については第1.3 章 1.3.3.2 も参照。 7 すべての関連する成分が眼区分 2B と分類されている場合、混合物は眼区分 2B と分類しても良い。 8 1つの成分が皮膚区分 1 および眼区分 1 の両方に分類されていた場合、その濃度は計算に一度だけ入れる。

混合物は眼に対する重篤な損傷性成分を ≥ 1%5,6 含むか(3.3.1.1, 3.3.2.1.1 および 3.3.2.2 参照)?加成方式が適用できない場合(3.3.3.3.4 参照)

つなぎの原則が適用できるか?(3.3.3.2 参照)

混合物は眼刺激性成分を 3%5,6 含むか(3.3.1.1, 3.3.2.1.2 および 3.3.2.2 参照)?加成方式が適用できない場合(3.3.3.3.4 参照)

Yes 適当な区分に

分類

No

Yes 区分 1

危険

Yes

区分 2/2A7

警告

混合物は腐食性または眼に対する重篤な損傷性成分を1つ以上5含むか?加成方式が適用でき(3.3.3.3.2 および表 3.3.3 参照)、かつ皮膚区分 1と眼区分 1と分類される成分の合計が 3%の場合 6

Yes

No

No

No

物質: 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を評価するための同様な

試験をされた混合物に関するデータがあるか?

Yes

区分 1

危険

No

混合物は腐食性または眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性成分を1つ以上 5含むか?加成方式が適用でき(3.3.3.3.2 および表 3.3.3 参照)、かつ成分の合計が以下の場合 6: (a) 眼区分 1 + 皮膚区分 1 1% 、< 3%、または (b) 眼区分 2 10%、または (c) 10 ×(皮膚区分 1 + 眼区分 18)+ 眼区分 2 10%

区分 2/2A7

警告

Yes

区分外

No

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3.3.5.3 背景文書

3.3.5.3.1 皮膚および眼の有害性クラスに対する判定基準は 3 匹動物試験として GHS に詳述されている。動物を 6 匹まで使用してもよいとする古い試験方法も知られている。しかし、GHS の判定基準では 3 匹を超える動物の試験による既存のデータに基づいた分類について明記していない。4 匹以上の動物を用いた試験による既存データに基づいてどのように分類を行うかに関するガイダンスを以下のパラグラフに示す。

3.3.5.3.2 3 匹の動物試験に基づいた分類判定基準は 3.3.2.1 に詳述されている。4、5 または 6 匹の動

物試験の評価は、試験動物の数により、以下のパラグラフによる判定基準にしたがうべきである。 スコアは試験物質の滴下後、24、48 および 72 時間に行うべきである。

3.3.5.3.3 6 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する:

(a) 以下のような場合、物質または混合物を眼に対する重篤な損傷性と分類する:

(i) 少なくとも 1 匹の動物で、角膜、虹彩または結膜に対する作用の回復が期待できない、または通常 21 日間の観察期間中に完全には回復しない、および/または

(ii) 動物 6 匹中少なくとも 4 匹で、動物ごとの平均スコアが角膜混濁 ≥ 3 、および/または虹彩炎 > 1.5。

(b) 6 匹の中少なくとも 4 匹で、動物ごとの平均スコアが以下のような場合、物質または混合物を眼刺激区分 2/2A と分類する:

(i) 角膜混濁 ≥ 1 および/または

(ii) 虹彩炎 ≥ 1 および/または

(iii) 結膜発赤 ≥ 2 および/または

(iv) 結膜浮腫 ≥ 2

かつ、通常 21 日間の観察期間に完全に回復する。

(c) 上記(b)に記載された作用が 7 日間の観察で完全に回復した場合には、物質または混合物は眼刺激(区分 2B)と分類する。

3.3.5.3.4 5 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する:

(a) 以下のような場合、物質または混合物を眼に対する重篤な損傷性と分類する:

(i) 少なくとも 1 匹の動物で、角膜、虹彩または結膜に対する作用の回復が期待できない、または通常 21 日間の観察期間中に完全には回復しない、および/または

(ii) 動物 5 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの平均スコアが角膜混濁 ≥ 3 、および/または虹彩炎 > 1.5。

(b) 5 匹の中少なくとも 3 匹で、動物ごとの平均スコアが以下のような場合、物質または混合物を眼刺激区分 2/2A と分類する:

(i) 角膜混濁 ≥ 1 および/または

(ii) 虹彩炎 ≥ 1 および/または

(iii) 結膜発赤 ≥ 2 および/または

(iv) 結膜浮腫 ≥ 2

かつ、通常 21 日間の観察期間に完全に回復する。

(c) 上記(b)に記載された作用が 7 日間の観察で完全に回復した場合には、物質または混合物は眼刺激(区分 2B)と分類する。

3.3.5.3.5 4 匹の動物試験の場合、次の原則を適用する:

(a) 以下のような場合、物質または混合物を眼に対する重篤な損傷性区分 1 と分類する:

(i) 少なくとも 1 匹の動物で、角膜、虹彩または結膜に対する作用の回復が期待できない、ま

たは通常 21 日間の観察期間中に完全には回復しない、および/または

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(ii) 動物 4 匹中少なくとも 3 匹で、動物ごとの平均スコアが角膜混濁 ≥ 3 、および/または虹

彩炎 > 1.5。

(b) 4 匹の中少なくとも 3 匹で、動物ごとの平均スコアが以下のような場合、物質または混合物を

眼刺激区分 2/2A と分類する:

(i) 角膜混濁 ≥ 1 および/または

(ii) 虹彩炎 ≥ 1 および/または

(iii) 結膜発赤 ≥ 2 および/または

(iv) 結膜浮腫 ≥ 2

かつ、通常 21 日間の観察期間に完全に回復する。

(c) 上記(b)に記載された作用が 7 日間の観察で完全に回復した場合には、物質または混合物は眼

刺激(区分 2B)と分類する。

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第 3.4 章

呼吸器感作性または皮膚感作性

3.4.1 定義および一般事項

3.4.1.1 呼吸器感作性物質とは、物質の吸入の後で気道過敏症を引き起こす物質である 1。

皮膚感作性物質とは、物質との皮膚接触の後でアレルギー反応を引き起こす物質である 1。 3.4.1.2 本章では感作性に2つの段階を含んでいる。 初の段階はアレルゲンへのばく露による個人

の特異的な免疫学的記憶の誘導(訳者注:induction)である。次の段階は惹起(訳者注:elicitation)、すなわち、感作された個人がアレルゲンにばく露することにより起こる細胞性あるいは抗体性のアレル

ギー反応である。 3.4.1.3 呼吸器感作性で、誘導から惹起段階へと続くパターンは一般に皮膚感作性でも同じである。

皮膚感作性では、免疫システムが反応を学ぶ誘導段階を必要とする。続いて起こるばく露が視認できる

ような皮膚反応を惹起するのに十分であれば臨床症状となって現れる(惹起段階)。したがって、予見

的試験は、まず誘導期があり、さらにそれへの反応が通常はパッチテストを含んだ標準化された惹起期

によって測定されるパターンに従う。誘導反応を直接的に測定する局所のリンパ節試験は例外的である。

ヒトでの皮膚感作性の証拠は普通診断学的パッチテストで評価される。 3.4.1.4 通常皮膚および呼吸器感作性では、惹起に必要なレベルは誘導に必要なレベルよりも低い。

感作された人に混合物中の感作物質の存在を知らせるための対策を 3.4.4.2 に示した。 3.4.1.5 「呼吸器感作性または皮膚感作性」の有害性区分は次のように分かれる。

(a) 呼吸器感作性、および (b) 皮膚感作性

3.4.2 物質の分類基準 3.4.2.1 呼吸器感作性物質 3.4.2.1.1 有害性区分 3.4.2.1.1.1 呼吸器感作性物質は、所管官庁によって細区分が要求されていない場合または細区分のた

めのデータが十分でない場合には、区分 1 に分類しなければならない。 3.4.2.1.1.2 データが十分にありまた所管官庁が要求している場合には、3.4.2.1.1.3 にしたがって細区

分 1A(強い感作性物質)または細区分 1B(他の呼吸器感作性物質)に細かく評価する。 3.4.2.1.1.3 呼吸器感作性物質については、通常ヒトまたは動物で見られた影響は証拠の重みづけによ

り分類の根拠となる。表 3.4.1 における判定基準にしたがいヒトの症例または疫学的研究および/または

実験動物における適切な研究結果による信頼できる質の良い証拠に基づいて、証拠の重みづけにより、

物質は2つの細区分 1A または 1B のどちらかに分類される。 1 これは本文書における定義である。

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表 3.4.1 呼吸器感作性物質の有害性区分および細区分 区分 1: 呼吸器感作性物質 物質は呼吸器感作性物質として分類される

(a) ヒトに対し当該物質が特異的な呼吸器過敏症を引き起こす証拠がある場合、または (b) 適切な動物試験により陽性結果が得られている場合 2。

細区分 1A: ヒトで高頻度に症例が見られる;または動物や他の試験 2に基づいたヒトでの高い感作率

の可能性がある。反応の重篤性についても考慮する。 細区分 1B: ヒトで低~中頻度に症例が見られる;または動物や他の試験 2に基づいたヒトでの低~中

の感作率の可能性がある。反応の重篤性についても考慮する。 3.4.2.1.2 ヒトでの証拠 3.4.2.1.2.1 物質が特異的な呼吸器過敏症を起こす可能性があるとする証拠は、通常はヒトでの経験を

もとにして得られる。この場合、過敏症は通常喘息として観察されるが、例えば鼻炎/結膜炎および肺

胞炎のようなその他の過敏症なども考えられる。アレルギー性反応の臨床的特徴を有することが条件と

なる。ただし、免疫学的メカニズムは示す必要はない。 3.4.2.1.2.2 ヒトでの証拠を考える場合、分類の決定には事例から得られる証拠に加えて、さらに下記

のことに考慮する必要がある。

(a) ばく露された集団の大きさ

(b) ばく露の程度

3.4.2.1.2.3 上記に述べた証拠には下記のものが考えられる。

(a) 臨床履歴および当該物質へのばく露に関連する適切な肺機能検査より得られたデータで、下

記の項目、およびその他の裏付け証拠により確認されたもの

(i) in vivo 免疫学的試験(例:皮膚プリック試験)

(ii) in vitro 免疫学的試験(例:血清学的分析)

(iii) 例えば反復低濃度刺激、薬理学的介在作用など、免疫学的作用メカニズムがまだ証明さ

れていないその他の特異的過敏症反応の存在を示す試験

(iv) 呼吸器過敏症の原因となることがわかっている物質に関連性のある化学構造

(b) 特異的過敏症反応測定のために認められた指針に沿って実施された、当該物質についての気

管支負荷試験の陽性結果 3.4.2.1.2.4 臨床履歴には、特定の物質に対するばく露と呼吸器過敏症発生の間の関連性を決定するた

めの、病歴および職歴の両方が記載されるべきである。該当する情報として、家庭および職場の両方で

の悪化要因、疾患の発症および経過、問題となっている患者の家族歴および病歴などが含まれる。この

病歴にはさらに、子供時代からのその他のアレルギー性または気道障害についての記録および喫煙歴に

ついても記載されるべきである。 3.4.2.1.2.5 気管支負荷試験の陽性結果から、分類のための十分な証拠が得られると考えられている。

ただし、実際には上記の実験の多くはすでに実施されていることが望ましい。

2 現時点では、呼吸器過敏症試験用として認められた動物モデルはいない。ある場合には、動物実験によるデータは証拠の重みづけ評価において貴重な情報を提供するであろう。

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3.4.2.1.3 動物試験 ヒトに吸入された場合に過敏症 3 の原因となる可能性を示すような適切な動物試験 2 から得られるデ

ータには、下記のようなものがある。

(a) 例えばマウスを用いた免疫グロブリン E (IgE) およびその他特異的免疫学的項目の測定

(b) モルモットにおける特異的肺反応 3.4.2.2 皮膚感作性物質 3.4.2.2.1 有害性区分 3.4.2.2.1.1 皮膚感作性物質は、所管官庁によって細区分が要求されていない場合または細区分のため

のデータが十分でない場合には、区分 1 に分類しなければならない。 3.4.2.2.1.2 データが十分にありまた所管官庁が要求している場合には、3.4.2.2.1.3 にしたがって細区

分 1A(強い感作性物質)または細区分 1B(他の皮膚感作性物質)に細かく評価する。 3.4.2.2.1.3 皮膚感作性物質については、3.4.2.2.2 に記載されているように、通常ヒトまたは動物で見

られた影響は証拠の重みづけにより分類の根拠となる。表 3.4.2 における判定基準により、細区分 1Aについては 3.4.2.2.2.1 および 3.4.2.2.3.2、細区分 1B については 3.4.2.2.2.2 および 3.4.2.2.3.3 のガイ

ダンスにしたがい、ヒトの症例または疫学的研究および/または実験動物における適切な研究結果によ

る信頼できる質の良い証拠に基づいて、証拠の重みづけにより、物質は2つの細区分 1A または 1B の

どちらかに分類される。

表 3.4.2 皮膚感作性物質の有害性区分および細区分 区分 1: 皮膚感作性物質 物質は皮膚感作性物質として分類される

(a) 物質が相当な数のヒトに皮膚接触により過敏症を引き起こす証拠がある場合、または

(b) 適切な動物試験により陽性結果が得られている場合。 細区分 1A: ヒトで高頻度に症例が見られるおよび/または動物での高い感作能力からヒトに重大な感

作を起こす可能性が考えられる。反応の重篤性についても考慮する。 細区分 1B: ヒトで低~中頻度に症例が見られるおよび/または動物での低~中の感作能力からヒトに

感作を起こす可能性が考えられる。反応の重篤性についても考慮する。 3.4.2.2.2 ヒトでの証拠 3.4.2.2.2.1 細区分 1A となるヒトでの証拠には以下のものがある;

(a) ≦500μg/cm2(HRIPT、HMT-誘導閾値)で陽性反応;

(b) 比較的低レベルのばく露を受けた対象集団において、比較的高い率で相当程度の陽性反応を

示すパッチテストのデータ;

(c) 比較的低レベルのばく露を受けた対象集団において、アレルギー性接触皮膚炎の比較的高い

率で相当程度の陽性反応を示す他の疫学的な証拠。 2 現時点では、呼吸器過敏症試験用として認められた動物モデルはない。一定の環境下では、例えば、タンパク質の相対的アレルギー誘発性判断のためのモルモットを用いた修正maximisation testなどの動物試験を用いることができる。これらの試験は、さらなる検証を必要としている。 3 物質が喘息の症状を誘発するメカニズムはまだ完全に解明されていない。予防のために、このような物質を呼吸器

感作性物質であるとみなす。ただし、証拠をもとに、これらの物質が刺激作用により気管支過敏症の人にだけに喘息症状

を誘発することが実証された場合、これらは呼吸器感作性物質であるとみなされるべきではない。

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3.4.2.2.2.2 細区分 1B となるヒトでの証拠には以下のものがある;

(a) >500μg/cm2(HRIPT、HMT-誘導閾値)で陽性反応;

(b) 比較的高レベルのばく露を受けた対象集団において、比較的低い率ではあるが相当程度の陽性反応を示すパッチテストのデータ;

(c) 比較的高レベルのばく露を受けた対象集団において、アレルギー性接触皮膚炎の比較的低い

率ではあるが相当程度の陽性反応を示す他の疫学的な証拠。 3.4.2.2.3 動物試験 3.4.2.2.3.1 皮膚感作性区分1について、アジュバントを用いる種類の試験方法が用いられる場合、動物の 30%以上で反応があれば陽性であると考えられる。アジュバントを用いないモルモット試験方法では、動物の少なくとも15%以上で反応があれば陽性であると考えられる。区分1に関して、局所リンパ節検査において刺激指標値が 3 以上であれば陽性反応と考えられる。皮膚感作性に関する試験方法は、OECDガイドライン 406(モルモット Maximisation 試験および Buehler モルモット試験)とガイドライン 429(局所リンパ節検定)に定められている。他の方法でも有効性が確認され科学的な根拠が得られているならば使用してもよい。マウス耳介腫脹試験(MEST)は、中程度から強い感作性物質検出に信頼できるスクリーニング法であると思われ、皮膚感作性評価の第一段階として用いることができる。 3.4.2.2.3.2 動物試験結果による細区分 1A は、下記の表 3.4.3 に示されている値による:

表 3.4.3 動物試験結果による細区分 1A 検査 判定基準 局所リンパ節検査 EC3 値 ≦2% モルモット Maximisation 試験 皮内投与量 ≦0.1%で、≧30% の反応 または

皮内投与量 >0.1 %、≦1%で、≧60% の反応 Buehler モルモット試験 局所投与量 ≦0.2%で、≧15% の反応 または

局所投与量 >0.2 %、≦20% で、≧60% の反応 3.4.2.2.3.3 動物試験結果による細区分 1B は、下記の表 3.4.4 に示されている値による:

表 3.4.4 動物試験結果による細区分 1B 検査 判定基準 局所リンパ節検査 EC3 値 >2% モルモット Maximisation 試験 皮内投与量 >0.1 %、≦1%で、≧30%、<60% の反応 または

皮内投与量 >1 % で、≧30% の反応 Buehler モルモット試験 局所投与量 >0.2%、≦20%で、≧15%、<60% の反応 または

局所投与量 >20% で、≧15% の反応 3.4.2.2.4 特別に留意すべき事項 3.4.2.2.4.1 物質の分類では、証拠の重みづけを考慮し下記の項目のいずれか、またはすべてが証拠に含まれているべきである。

(a) 通常、複数の皮膚科診療所でのパッチテストより得られた陽性データ (b) 当該物質によりアレルギー性接触皮膚炎が生じることを示した疫学的調査。症例数が少なく

とも、特徴的な症状を示したばく露例の比率が高かった状況については、特に注意して確認する必要がある

(c) 適切な動物試験より得られた陽性データ (d) ヒトにおける実験的研究より得られた陽性データ。(第 1.3 章 1.3.2.4.7 を参照) (e) 通常、複数の皮膚科診療所で得られたアレルギー性接触皮膚炎についての、十分に記録され

た事例 (f) 反応の重篤性についても考慮する。

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3.4.2.2.4.2 動物試験より得られた証拠は、ヒトのばく露より得られた証拠よりはるかに信頼できることが多い。ただし、両方の情報源より証拠が得られ、そして結果に矛盾があるような場合には、両情報源からの証拠の質および信頼性を評価して、分類上の疑問点をケースバイケースで解決しなければならない。通常は、ヒトのデータは、分類を目的としてボランティアを用いた管理された試験で得られるのでなく、リスク評価の一部として動物試験における無影響を確認するために得る。したがって、皮膚感作性に関してヒトで陽性データが得られるのは、患者-対照研究またはその他の、それほど確定的でない調査によることが多い。このように、ヒトのデータの評価は、症例頻度が当該物質の本来の性質だけでなく、ばく露状況、生物学的利用能、個人素因および講じられている予防策を反映しているので注意して評価しなければならない。ヒトの陰性データを、通常は動物試験の陽性結果の否定に使用すべきではない。動物およびヒトのデータの両方に関して、媒剤の影響について考慮すべきである。 3.4.2.2.4.3 上述の条件が1つも適合しないならば、その物質は皮膚感作性物質として分類される必要はない。ただし、下記に示すような皮膚感作性を示唆する項目が 2 種類あるいはそれ以上あれば判断が変更されることもある。これもケースバイケースで考えるべきである。

(a) アレルギー性接触皮膚炎の単発的事例。

(b) 偶然性、偏りまたは交絡要因などが合理的な確信を持って除外できないケースのような、限定された検出力のもとでの疫学的調査。

(c) 既存の指針に従って実施され、3.4.2.2.3 に示された陽性の判定基準には適合しないが、有意

であると考えられる限界には十分に近い動物試験データ。

(d) 標準的方法以外の方法で得られた陽性データ。

(e) 構造的に近い類似物質より得られた陽性の結果。 3.4.2.2.4.4 免疫性接触じんましん 呼吸器感作性物質に分類するための判定基準に適合する物質は、さらに免疫性接触じんましんを引き

起こすことがある。これらの物質を皮膚感作性物質としても分類することも検討するべきである。免疫性接触じんましんを誘発する物質で、呼吸器感作性物質の判定基準には適合しない物質もまた、皮膚感作性物質として分類することを検討すべきである。 免疫性接触じんましんを生じる物質を識別するのに利用可能な動物モデルは認められていない。した

がって、分類は、通常、皮膚感作性物質と同様にヒトでの証拠に基づいて行われる。 3.4.3 混合物の分類基準 3.4.3.1 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類 混合物について、物質に関する分類判定基準で記述されている通り、ヒトの経験または適切な動物実

験から信頼できる質の良い証拠が利用できる場合には、混合物はこのデータの証拠の重みの評価によって分類できる。混合物に関するデータを評価する際には、使用する用量によって結論に達しないということのないように注意を払うべきである。(一部の所管官庁による特別なラベル表示要件については、本章の表 3.4.5 の注記および 3.4.4.2 を参照) 3.4.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則(Bridging principle) 3.4.3.2.1 混合物そのものは感作性を決定する試験がなされていないが、当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、分類プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な限り 大限に用いられるようになる。 3.4.3.2.2 希釈 試験された混合物が、感作物質ではなく、また他の成分の感作に影響を与えないと予想される希釈剤

で希釈される場合、新しい希釈された混合物は、元の試験された混合物と同等として分類してもよい。

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3.4.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの感作特性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産され

た同じ商品の別の試験されていないバッチの毒性と本質的に同等とみなすことができる。ただし、試験

されていないバッチで感作特性が変化するような有意の変動があると考えられる理由がある場合はこの

限りではない。このような場合にはもし後者が起こるなら、新しい分類が必要である。 3.4.3.2.4 毒性の高い混合物の濃縮 試験された混合物が区分 1 または細区分 1A に分類され、区分 1 および細区分 1A にある試験された

混合物の成分の濃度が増加する場合、試験されていない新しい混合物は、追加試験なしで区分 1 または

細区分 1A に分類するべきである。 3.4.3.2.5 ひとつの毒性区分内での内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ区分/細区分にある。試験

されていない混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成

分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は A および B と同じ区分/細区分にあるとする。 3.4.3.2.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B

(ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。 (d) 成分 B は感作物質であり、成分 A と C は感作物質ではない。 (e) A と C は、B の感作性に影響しないと予想される。

混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。 3.4.3.2.7 エアゾール エアゾール形態の混合物は、添加された噴射剤が噴霧時に混合物の感作性に影響しないという条件下

では、試験された非エアゾール形態の混合物と同じ有害性区分に分類してよい。

3.4.3.3 混合物の全成分について、または一部の成分だけについてデータが入手できた場合の混合物

の分類 混合物は、少なくとも 1 つの成分が呼吸器感作性物質または皮膚感作性物質として分類され、固体/

液体と気体についてそれぞれ表 3.4.5 に示したように、それぞれの生体影響に示されたカットオフ値/濃度限界以上で存在する場合、呼吸器感作性物質または皮膚感作性物質として分類されるべきである。

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表 3.4.5 混合物の分類基準となる呼吸器感作性物質または皮膚感作性物質として分類された 混合物成分のカットオフ値/濃度限界

成分の分類:

混合物の分類基準となるカットオフ値/濃度限界 呼吸器感作性物質

区分1 皮膚感作性物質

区分1 固体/液体 気体 すべての物理的状態

呼吸器感作性物質 区分1

≧0.1%(注記) ≧0.1%(注記) ≧1.0% ≧0.2%

呼吸器感作性物質 細区分 1A

≧0.1% ≧0.1%

呼吸器感作性物質 細区分 1B

≧1.0% ≧0.2%

皮膚感作性物質 区分1

≧0.1%(注記) ≧1.0%

皮膚感作性物質 細区分 1A

≧0.1%

皮膚感作性物質 細区分 1B

≧1.0%

注記: 一部の所管官庁は、3.4.4.2 に記載されているように 0.1%~1.0%(またはガス状の呼吸器感作

性物質については 0.1~0.2%)の間の濃度で感作性成分を含む混合物に対してのみ、SDS および/または

追加のラベル表示を要求してもよい。現行のカットオフ濃度は既存のシステムを反映したものであり、

特別なケースでは、これ以下のレベルでも情報を伝えてもよいことは広く認められている。 3.4.4 危険有害性情報の伝達 3.4.4.1 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可し

た場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。下記の表 3.4.6 には、本章の判定基準に基づいて呼吸器感

作性および皮膚感作性と分類された物質と混合物の個別のラベル要素を示す。

表 3.4.6 呼吸器感作性および皮膚感作性のラベル要素

呼吸器感作性

区分 1 細区分 1A および 1B

皮膚感作性 区分 1

細区分 1A および 1B

シンボル 健康有害性 感嘆符

注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 吸入するとアレルギー、喘息また

は、呼吸困難を起こすおそれ アレルギー性皮膚反応を起こ

すおそれ

3.4.4.2 感作性ありと分類されている一部の化学品は、表 3.4.5 のカットオフ値よりも少ない量で混合

物中に存在しても、すでに感作されている個人に反応を惹起することがあろう。これらの人々を保護す

るために、関係所管官庁は、混合物として感作性物質であるかないかにかかわらずラベルに補足的な情

報として成分名の記載を要求することができる。

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3.4.5 判定論理

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。

3.4.5.1 判定論理 3.4.1 呼吸器感作性

―――――――――――――――――

4 個々の濃度の限度については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限度の使用」を参照のこと。 5 3.4.4.2 参照。 6 区分 1 の細区分の詳細については 3.4.2.1.1 を参照。

物質: 当該物質に呼吸器感作性のデータがあるか?

混合物: 混合物そのもの、あるいはその成分に呼吸器感作性のデータがあるか?

つなぎの原則が適用できるか? (3.4.3.2 参照)

No 分類できない

No

Yes

(a) 当該物質/混合物が人で呼吸器過敏症を引き

起こす証拠があるか? または (b) 適切な動物実験で陽性の結果が得られてい

るか?(3.4.2.1 の判定基準参照)

Yes

区分 16

危険

区分外

Yes

Yes

適切な区分に 分類する

No

混合物は、呼吸器感作性として分類された成分を1つあるいはそれ以上、下記の濃度で含有するか?4, 5 (a) ≧ 0.1% w/w(固体/液体)? (b) ≧ 1.0% w/w (固体/液体)?または (c) ≧ 0.1% v/v(気体)? (d) ≧ 0.2% v/v (気体)? (説明およびガイダンスは 3.4.3.3 および表 3.4.5 を参照)

No

Yes

区分外

区分 1

危険

No

分類できない 混合物そのものとして呼吸器感作性の

データがあるか?(3.4.3.1 の判定基準

参照)

No

Yes

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3.4.5.2 判定論理 3.4.2 皮膚感作性 ――――――――――――― 4 個々の濃度の限度については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限度の使用」を参照のこと。 5 3.4.4.2 参照。 7 区分 1 の細区分の使用に関する詳細は 3.4.2.2.1 を参照。

物質:物質に皮膚感作性データがあるか? No 分類できない

混合物: 混合物そのもの、あるいはその成分

に皮膚感作性のデータがあるか?

No

Yes

(a) 当該物質/混合物が、相当な数の人で皮膚接触に

より感作性を誘発する証拠があるか? または

(b) 適切な動物実験で陽性の結果が得られている

か? (3.4.2.2.1 および 3.4.2.2.4 の判定基準参照)

Yes

区分 17

警告

区分外

Yes

つなぎの原則が適用できる

か? (3.4.3.2 参照) Yes

適切な区分に

分類する

No

混合物は、皮膚感作性として分類された成分を1つある

いはそれ以上、下記の濃度で含有されているか?4, 5 (a) ≧ 0.1%? (b) ≧ 1.0% ? (説明およびガイダンスは 3.4.3.3 および表 3.4.5 を参照)

No

Yes

区分外

区分 1

警告

No

混合物そのものについての皮膚感作性

のデータがあるか?(3.4.3.1 を参照)

Yes

分類できない

No

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第 3.5 章

生殖細胞変異原性

3.5.1 定義および一般事項 3.5.1.1 この有害性クラスは主として、ヒトにおいて次世代に受継がれる可能性のある突然変異を誘発

すると思われる化学品に関するものである。一方、in vitro での変異原性/遺伝毒性試験、および in vivoでの哺乳類体細胞を用いた試験も、この有害性クラスの中で分類する際に考慮される。

3.5.1.2 本文書では、変異原性、変異原性物質、突然変異および遺伝毒性についての一般的な定義が採

用されている。ここで突然変異とは、細胞内遺伝物質の量または構造の恒久的変化として定義されてい

る。

3.5.1.3 突然変異という用語は、表現型レベルで発現されるような経世代的な遺伝的変化と、その根拠

となっている DNA の変化(例えば、特異的塩基対の変化および染色体転座など)の両方に適用される。

変異原性および変異原性物質という用語は、細胞または生物の集団における突然変異の発生を増加させ

る物質について用いられる。 3.5.1.4 より一般的な用語である遺伝毒性物質および遺伝毒性とは、DNAの構造や含まれる遺伝情報、

または DNA の分離を変化させる物質あるいはその作用に適用される。これには、正常な複製過程の妨

害により DNA に損傷を与えるものや、非生理的な状況において(一時的に)DNA 複製を変化させるも

のもある。遺伝毒性試験結果は、一般的に変異原性作用の指標として採用される。 3.5.2 物質の分類基準 3.5.2.1 本分類システムは、利用可能な証拠の重みを取り入れられるように、生殖細胞に対する変異原

性物質に 2 種類の区分を設けている。この 2 種類の区分によるシステムを以下に示す。 3.5.2.2 分類のためには、ばく露動物の生殖細胞または体細胞における変異原性または遺伝毒性作用を

判定する実験より得られた試験結果が考慮される。 In vitro 試験で判定された変異原性または遺伝毒性

作用もまた考慮されて良い。 3.5.2.3 本システムは有害性に基づき、生殖細胞に突然変異を誘発する性質を本来持っている物質を分

類する。したがって本スキームは、物質の(定量的)リスク評価のためのものではない。 3.5.2.4 ヒト生殖細胞に対する経世代的な影響の分類は、適切に実施され、十分に有効性が確認された

試験に基づいて行う。OECD テストガイドラインに定められた方法に従った試験を用いるのが望ましい。

試験結果は専門家の判断により評価され、入手可能な証拠すべてを比較検討して分類すべきである。 3.5.2.5 in vivo 生殖細胞経世代変異原性試験の例

げっ歯類を用いる優性致死試験(OECD478) マウスを用いる相互転座試験(OECD485) マウスを用いる特定座位試験

3.5.2.6 in vivo 体細胞変異原性試験の例

哺乳類骨髄細胞を用いる染色体異常試験(OECD475) 哺乳類赤血球を用いる小核試験(OECD474)

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図 3.5.1 生殖細胞変異原性物質の有害性区分 区分1:ヒト生殖細胞に経世代突然変異を誘発することが知られているかまたは経世代突然変異を誘発

すると見なされている物質 区分1A:ヒト生殖細胞に経世代突然変異を誘発することが知られている物質

ヒトの疫学的調査による陽性の証拠。 区分1B:ヒト生殖細胞に経世代突然変異を誘発すると見なされるべき物質

(a) 哺乳類における in vivo 経世代生殖細胞変異原性試験による陽性結果、または (b) 哺乳類における in vivo 体細胞変異原性試験による陽性結果に加えて、当該物質が生殖細胞に

突然変異を誘発する可能性についての何らかの証拠。この裏付け証拠は、例えば生殖細胞を用

いる in vivo 変異原性/遺伝毒性試験より、あるいは、当該物質またはその代謝物が生殖細胞の

遺伝物質と相互作用する機能があることの実証により導かれる。または (c) 次世代に受継がれる証拠はないがヒト生殖細胞に変異原性を示す陽性結果;例えば、ばく露さ

れたヒトの精子中の異数性発生頻度の増加など。 区分2:ヒト生殖細胞に経世代突然変異を誘発する可能性がある物質

哺乳類を用いる試験、または場合によっては下記に示す in vitro 試験による陽性結果

(a) 哺乳類を用いる in vivo 体細胞変異原性試験、または (b) in vitro 変異原性試験の陽性結果により裏付けられたその他の in vivo 体細胞遺伝毒性試験

注記:哺乳類を用いる in vitro 変異原性試験で陽性となり、さらに既知の生殖細胞変異原性物質と

化学的構造活性相関を示す物質は、区分 2 変異原性物質として分類されるとみなすべきである。

3.5.2.7 生殖細胞を用いる in vivo 変異原性/遺伝毒性試験の例

(a) 変異原性試験 哺乳類精原細胞を用いる染色体異常試験(OECD483) 哺乳類精子細胞を用いる小核試験

(b) 遺伝毒性試験 哺乳類精原細胞を用いる姉妹染色分体交換(SCE)試験 哺乳類精巣細胞を用いる不定期 DNA 合成(UDS)試験

3.5.2.8 体細胞を用いる in vivo 遺伝毒性試験の例

哺乳類肝臓を用いる不定期 DNA 合成(UDS)試験(OECD486) 哺乳類骨髄細胞を用いる姉妹染色分体交換(SCE)試験

3.5.2.9 In vitro 変異原性試験の例

哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験(OECD473) 哺乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験(OECD476) 細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD471)

3.5.2.10 個々の物質の分類は、専門家の判断を取り入れて、入手可能な証拠全体の重みに基づいて行

うべきである。適切に実施された単一の試験を用いて分類する場合には、その試験から明確で疑いよう

のない陽性結果が得られているべきである。十分に有効性が確認された新しい試験法が開発されたなら

ば、それらも考慮すべき総合的な証拠の重み付けのために採用することもできる。ヒトばく露経路と比

較して、当該物質の試験に用いられたばく露経路が妥当であるかも考慮すべきである。

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3.5.3 混合物の分類基準 3.5.3.1 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類 混合物の分類は、当該混合物の個々の成分について入手できる試験データに基づき、生殖細胞変異原

性物質として分類される成分のカットオフ値/濃度限界を使用して行われる。当該混合物そのものの試験

データが入手できる場合には、分類はケースバイケースで修正されることがある。このような場合、混

合物そのものの試験結果は、生殖細胞変異原性試験系の用量や、試験期間、観察、分析(例えば、統計

学的解析、試験感度)などの他の要因を考慮して決定的であることが示されなければならない。分類が

適切であることの証拠書類を保持し、要請に応じて示すことができるようにするべきである。 3.5.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則

(Bridging principle) 3.5.3.2.1 混合物そのものは生殖細胞変異原性を決定する試験がなされていないが、当該混合物の有害

性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデータが

ある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、分類

プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な限り最大

限に用いることができるようになる。 3.5.3.2.2 希釈 試験された混合物が、他の成分の生殖細胞変異原性に影響を与えないと予想される希釈剤で希釈され

る場合、新しい希釈された混合物は、試験された元の混合物と同等として分類してもよい。 3.5.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの生殖細胞変異原性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で

生産された同じ商品の試験されていない別のバッチのものと実質的に同等とみなすことができる。ただ

し、試験されていないバッチの生殖細胞変異原性が変化するような有意な組成の変動があると考えられ

る理由がある場合はこの限りではない。このような場合には、新しい分類を行う必要がある。 3.5.3.2.4 本質的に類似した混合物

次を仮定する。

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 変異原性成分 B の濃度は、両方の混合物で同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

(d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等であり、すなわち、A と C は同じ有

害性区分に属し、かつ、Bの生殖細胞変異原性に影響を与えることは予想されない。 混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。

3.5.3.3 混合物の全成分または一部の成分だけについてデータが入手できる場合の混合物の分類 混合物は、少なくとも 1 つの成分が区分 1 または区分 2 変異原性物質として分類され、区分 1 と 2 そ

れぞれについて表 3.5.1 に示したような適切なカットオフ値/濃度限界以上で存在する場合、変異原性物

質として分類される。

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表 3.5.1 混合物の分類の基準となる混合物の生殖細胞変異原性物質として 分類された成分のカットオフ値/濃度限界

注記:上の表のカットオフ値/濃度限界は、気体(体積/体積単位)および、固体と液体(重量/重量単位)

にも適用される。 3.5.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。下記の表には、本章の判定基準に基づいて生殖細胞変異原性に分

類された物質と混合物の個別のラベル要素を示す。

表 3.5.2 生殖細胞変異原性のラベル要素

区分 1

(区分 1A、1B)

区分 2

シンボル 健康有害性 健康有害性

注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 遺伝性疾患のおそれ

(他の経路からのばく露が有

害でないことが決定的に証明

されている場合、有害なばく露

経路を記載)

遺伝性疾患のおそれの疑い

(他の経路からのばく露が有害で

ないことが決定的に証明されてい

る場合、有害なばく露経路を記載)

成分の分類: 混合物の分類基準となるカットオフ値/濃度限界 区分 1 変異原性物質 区分 2 変異原性物質

区分 1A 区分 1B 区分 1A 変異原性物質 ≧0.1% -- -- 区分 1B 変異原性物質 -- ≧0.1% -- 区分 2 変異原性物質 -- -- ≧1.0%

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3.5.5 判定論理と手引き

3.5.5.1 生殖細胞変異原性の判定論理

以下に示す判定は、GHS には含まれないが、追加の手引きとしてここに示す。分類の責任者に対し、

この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解することを強く勧める。

3.5.5.1.1. 物質の判定論理 3.5.1

物質: 当該物質に変異原性に関するデータがある

か? No 分類できない

Yes

判定基準(3.5.2 参照)に従い、当該物質は (a) ヒトの生殖細胞に経世代突然変異を誘発するこ

とが知られているか、または (b) ヒトの生殖細胞に経世代突然変異を誘発すると

みなすべきか? 本判定基準の適用には、証拠の重み付けにおいて専門

家の判断が必要である。

No

Yes

区分1

危険

Yes

区分2

警告

区分外 No

判定基準(3.5.2 参照)に従い、ヒトの生殖細胞

に経世代突然変異を誘発する可能性がある疑い

があるか? 本判定基準の適用には、証拠の重み付けにおいて

専門家の判断が必要である。

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3.5.5.1.2. 混合物の判定論理 3.5.2

混合物の個々の成分に基づく分類

ケースバケースでの分類の修正 ―――――――――――――― 1 個々の濃度限界については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」および本章の表 3.5.1 を参照。 2 他の混合物のデータをつなぎの原則に用いた場合は、その混合物のデータは 3.5.3.2 に照らして決定的なものでな

ければならない。

混合物: 混合物の分類は、成分のカットオフ値/濃度限界を用いて、当該混合物の個々の成分の入手可能な試

験データに基づいて行われる。混合物そのものについての入手可能な試験データ、あるいはつなぎ

の原則に基づき、分類はケースバイケースで修正できる(下記参照)。詳細は判定基準(3.5.3)を

参照のこと。

Yes

Yes

区分 1

危険

混合物は1つまたはそれ以上の区分2変異原性物質

を下記の濃度で含有するか? ≧ 1.0%1

区分 2

警告

当該混合物は、1つまたはそれ以上の区分1の変異原

性物質を下記の濃度で含有するか? ≧ 0.1%1

No

No

区分外

混合物そのものについての試

験データが入手できるか? Yes

No

つなぎの原則は適用可能か?2 判定基準 3.5.3.2. 参照

用量や試験期間、観察、分析(例えば、

統計処理、試験感度)等の要因を考慮

しても、当該混合物の生殖細胞変異原

性試験系の試験結果が、断定的である

か?

Yes

適切な区分に分類

する

危険 または

警告 または

区分外

上記参照: 混合物の個々の成分に基づく分

No

No

Yes

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3.5.5.2 手引き

ヒトおよび動物において化学的に誘発される腫瘍形成の過程は、がん原遺伝子、または体細胞の腫瘍

抑制遺伝子の遺伝的変化を伴うということはかなり認められるようになってきている。そのため、化学

品が in vivo において哺乳動物の体細胞、または生殖細胞における変異原性を有することの証明は、そ

の化学品は発がん性物質として分類され得るということの可能性を示すものである(第 3.6 章 3.6.2.5.3発がん性、参照)。

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第 3.6 章

発がん性

3.6.1 定義 発がん性物質 とは、がんを誘発するか、またはその発生率を増加させる物質あるいは混合物を意味す

る。動物を用いて適切に実施された実験研究で良性および悪性腫瘍を誘発した物質および混合物もまた、腫瘍形成のメカニズムがヒトには関係しないとする強力な証拠がない限りは、ヒトに対する発がん性物質として推定されるかまたはその疑いがあると考えられる。 物質または混合物の発がん有害性を有するものとしての分類は、それら固有の特性に基づきなされる

ものであり、このように分類されることによって、当該物質または混合物の使用により生ずる可能性のあるヒトのがんリスクの程度に関する情報を提供するものではない。 3.6.2 物質の分類基準 3.6.2.1 発がん性の分類では、物質は証拠の強さおよび追加検討事項(証拠の重み)をもとに 2 種類の区分のいずれかに指定される。特殊な例では、経路に特化した分類を要すると判断される場合もある。

図 3.6.1 発がん性物質の有害性 区分

3.6.2.2 発がん性物質としての分類は、信頼でき、かつ承認されている方法によって得られる証拠に基づいて行われるものである。また、この分類はこうした毒性を生じる固有の性質を有する物質を対象とすることを意図としている。評価は、すべての既存データ、ピアレビューされて発表された調査、および規制所管官庁が承認した追加データに基づき行われるべきである。 3.6.2.3 発がん性物質分類は、一段階の1つの判定基準に基づくプロセスであるが、2 種類の相互に関連した判断が関与する。すなわち、証拠の強さの評価と、他の関連情報の考慮(潜在的なヒトに対する発がん性を有する物質を有害性区分に分類することに関連する情報)である。

区分1:ヒトに対する発がん性が知られているあるいはおそらく発がん性がある

物質の区分 1 への分類は、疫学的データまたは動物データをもとに行う。個々の物質はさら

に次のように区別されることもある: 区分1A:ヒトに対する発がん性が知られている:主としてヒトでの証拠により物質をここに分類する 区分1B:ヒトに対しておそらく発がん性がある:主として動物での証拠により物質をここに分類する

証拠の強さとその他の事項も考慮した上で、ヒトでの調査により物質に対するヒトのばく露と、がん発生の因果関係が確立された場合を、その証拠とする(ヒトに対する発がん性が知られている物質)。あるいは、動物に対する発がん性を実証する十分な証拠がある動物試験を、その証拠とすることもある(ヒトに対する発がん性があると考えられる物質)。さらに、試験からはヒトにおける発がん性の証拠が限られており、また実験動物での発がん性の証拠も限られている場合には、ヒトに対する発がん性があると考えられるかどうかは、ケースバイケースで科学的判定によって決定することもある。 分類:区分1(AおよびB)発がん性物質

区分2:ヒトに対する発がん性が疑われる

物質の区分2への分類は、物質を確実に区分1に分類するには不十分な場合ではあるが、ヒトまたは動物での調査より得られた証拠をもとに行う。証拠の強さとその他の事項も考慮した上で、ヒトでの調査で発がん性の限られた証拠や、または動物試験で発がん性の限られた証拠が証拠とされる場合もある。 分類:区分 2 発がん性物質

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3.6.2.4 証拠の強さには、ヒトおよび動物試験を用いた腫瘍数の計測およびその統計的有意性レベルの

決定がかかわっている。ヒトで十分な証拠が得られたなら、ヒトのばく露とがん発生の間の因果関係が

証明されるのに対し、動物で十分な証拠が得られたなら、その物質と腫瘍発生率の増加の因果関係が示

される。ばく露とがんの間に陽性の関係があれば、ヒトでの限定された証拠が認められることになるが、

因果関係を証明することはできない。データより発がん作用が示唆されれば、動物での限定された証拠

となるが、それで十分とはならない。ここで用いた「十分」および「限定された」という言葉は、国際

がん研究機関(IARC)により定義されていた通りに本書でも使われており、3.6.5.3.1 に概説した。 3.6.2.5 追加検討事項(証拠の重み):発がん性の証拠の強さの決定以外にも、その物質がヒトで発が

ん性を示すことについての全体的な可能性に影響するその他の多くの要因を考慮すべきである。この決

定に影響する要因をすべて列挙すると非常に多くなるため、ここでは重要なものいくつかについて検討

した。 3.6.2.5.1 こうした要因は、ヒトに対する発がん性の懸念レベルを上昇または低下させるものと見なす

ことができる。各要因の相対的な重要度は、それぞれに付随している証拠の量および一貫性によって異

なる。一般的に、懸念レベルを上げるより下げることの方により完全な情報が要求される。追加検討事

項は、腫瘍の知見の評価等において、ケースバイケースで、活用されるべきである。 3.6.2.5.2 総合的な懸念のレベルを評価する際に考慮される重要な要因をいくつか、下記に示した。

(a) 腫瘍の種類およびバックグランド発生率

(b) 複数部位における反応

(c) 病変から悪性腫瘍への進行

(d) 腫瘍発生までの潜伏期間の短縮

その他懸念レベルを上昇あるいは低下させる可能性のある要因には次のものが含まれる。

(e) 反応は雌雄いずれかであるか、または両方で認められるかどうか

(f) 反応は単一種のみであるか、それともいくつかの生物種にも認められるかどうか

(g) 発がん性の明確な証拠がある物質に構造的に類似しているかどうか

(h) ばく露経路

(i) 試験動物とヒトの間の吸収、分布、代謝および排泄の比較

(j) 試験用量での過剰な毒性作用が交絡要因となっている可能性

(k) 変異原性、成長刺激を伴った細胞毒性、有糸分裂誘発性、免疫抑制などの作用機序およびヒト

に対する関連性 発がん性の分類における重要な因子に関する考え方は 3.6.5.3 に含まれている。

3.6.2.5.3 変異原性:遺伝子レベルでの変化はがん発生の全体的な過程で中心的役割を占めることが認

められている。したがって、in vivo での変異原性の証拠があれば、物質が発がん性を有する可能性が示

唆される。 3.6.2.5.4 下記の追加検討事項は、物質を区分 1 または区分 2 へ分類する際に適用する。発がん性につ

いて試験がなされていない物質は、構造的類似体の腫瘍データに加え、例えばベンジジン系の染料のよ

うに共通の重要な代謝物の生成などその他の重要な要因の検討より得られるしっかりした裏付けデータ

をもとに、区分1または区分2に分類される事例がある。 3.6.2.5.5 分類に際しては、当該物質が投与経路で吸収されるかどうか、あるいは、試験経路では投与

部位のみにしか局所腫瘍が認められないかどうか、更に、その他の主要経路による適切な試験から発が

ん性はないことが認められているかどうか等についても考慮すべきである。

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3.6.2.5.6 分類の際には、さらに、化学的構造類似体に関して利用可能な関連情報、すなわち構造活性相関と同様に、当該物質の物理化学的性質、トキシコキネティクス、トキシコダイナミクスがどの程度解明されているかについても、考慮することが重要である。 3.6.2.6 規制所管官庁によっては、有害性分類スキームにおいて策定されているものよりも広い柔軟性を要求する。優れた科学的な原則に則って実施された発がん性試験で、統計的に有意である陽性結果が得られたならば、安全データシートへの記載も考慮される場合がある。 3.6.2.7 化学品の相対的な有害性の強さは、その物質固有の特性である。化学品によって特性は大きく異なっており、こうした特性の違いを考慮することが重要な場合もある。こうした特性の推定方法の検討は残された課題である。ここで述べた発がん性特性は、リスク評価を排除するものではない。WHO/IPCS のワークショップ発がん性と変異原性に関するリスク評価手法の調和――スコーピングのための会合(1995,Carshalton,UK)において、化学品の分類に関して提起されている種々の科学的疑問、例えば、マウス肝腫瘍、ペルオキシソーム増殖、レセプター介在反応、毒性用量では発がん性であるが変異原性は示さない物質などが指摘されている。したがって、これまで一貫せず様々な分類を行う原因となったこれらの科学的課題を解決するために、必要な原則を明確に示す必要性がある。こうした課題が解決されれば、種々の発がん性化学物質の分類は確たるものとなるであろう。 3.6.3 混合物の分類基準 3.6.3.1 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類 混合物の分類は、当該混合物の個々の成分について入手できる試験データに基づき、各成分のカットオフ値/濃度限界を使用して行われる。当該混合物そのものについて試験データが入手できる場合には、分類はケースバイケースで判断されることがある。このような場合、混合物そのものの試験結果は、発がん性試験系の用量や、試験期間、観察、分析などの他の要因(例えば、統計分析、試験感度)を考慮した上で確実であることが示されなければならない。分類が適切であることの証拠書類を保持し、要請に応じて示すことができるようにするべきである。 3.6.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則

(Bridging principle) 3.6.3.2.1 混合物そのものについては発がん性を決定する試験はなされていないが、当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物に関して十分なデータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、分類プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な限り最大限に用いることができるようになる。 3.6.3.2.2 希釈 試験された混合物が、他の成分の発がん性に影響を与えないと予想される希釈剤で希釈される場合、新しい希釈された混合物は、試験された元の混合物と同等として分類してもよいとされる場合がある。 3.6.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの発がん性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産され

た同じ商品の試験されていない別のバッチにおける発がん性と実質的に同等とみなすことができる。ただし、試験されていないバッチの発がん性が変化するような有意の組成の変動があると考えられる理由がある場合はこの限りではない。このような場合には、新しい分類を行う必要がある。 3.6.3.2.4 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B

(ii) C+B

(b) 発がん性物質 B の濃度は、両方の混合物で同じである。

(c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

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(d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等である、すなわち、A と C は同じ有害性区分に属し、かつ、B の発がん性に影響を与えることは予想されない。

混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。 3.6.3.3 混合物の全成分についてまたは一部の成分だけについてデータが入手できる場合の混合物の

分類 少なくとも 1 つの成分が区分 1 または区分 2 発がん性物質として分類され、区分 1 と 2 それぞれにつ

いて表 3.6.1 に示したような適切なカットオフ値/濃度限界以上で存在する場合、混合物は、発がん性物質として分類される。

表 3.6.1 混合物の分類基準となる発がん性成分のカットオフ値/濃度限界 a

成分の分類: 混合物の分類基準となるカットオフ値/濃度限界: 区分 1 発がん性物質

区分 2 発がん性物質 区分 1A 区分 1B

区分 1A 発がん性物質 ≧0.1% -- -- 区分 1B 発がん性物質 -- ≧0.1% --

区分 2 発がん性物質 -- -- ≧0.1%(注記 1) ≧1.0%(注記 2)

a この妥協案的分類体系は、既存システムの有害性に関する情報伝達の実施方法の相違を考慮したものである。影響を受ける混合物の数は少ないであろうし、そのシステム間の相違もラベル警告に限られるであろう。また、こうした状況は、時間と共に、より調和した手法に発展していくことが期待される。 注記 1:区分 2 の発がん性物質成分が 0.1%と 1%の間の濃度で混合物中に存在する場合には、すべての規制所管官庁は、製品の SDS に関する情報を要求する。しかしながら、ラベル警告を求めるかどうかはそれぞれの判断(任意)となる。一部所管官庁は成分が 0.1%と 1%の間で混合物中に存在する場合にラベル表示を選択するであろうが、他の所管官庁は、通常、このような場合にはラベル表示を要求しないであろう。 注記 2:区分 2 発がん性物質成分が≧1%の濃度で混合物中に存在する場合、一般に SDS とラベルの両方が期待される。 3.6.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。表 3.6.2 には、本章の判定基準に基づいて発がん性に分類された物質と混合物の個別のラベル要素を示す。

表 3.6.2 発がん性のラベル要素

区分 1

(区分 1A、1B) 区分 2

シンボル 健康有害性 健康有害性

注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 発がんのおそれ

(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を

記載)

発がんのおそれの疑い

(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されてい

る場合、有害なばく露経路を記載)

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3.6.5 発がん性の判定論理と手引き

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとしてここに示す。分類

の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に、判定基準についてよく調べ理解する

ことを強く勧める。 3.6.5.1 物質の判定論理 3.6.1

判定基準(3.6.2 参照)に従い、当該物質は (a) 人に対して発がん性が知られているか、または (b) 人に対しておそらく発がん性であるといえるか?

本判定基準の適用には、証拠の重み付け手法において

専門家の判断が必要である。

No

区分1

危険

Yes

区分2

警告

区分外 No

判定基準(3.6.2 参照)に従い、当該物質は人に対し発

がん性であると疑われるか?

本判定基準の適用には、証拠の重み付け手法において専

門家の判断が必要である。

物質:物質に発がん性に関するデー

タがあるか?

Yes

No 分類できない

Yes

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混合物: 混合物の分類は、成分のカットオフ値/濃度限界を用いて、当該混合物の個々の成分の入手可能

な試験データに基づいて行われる。混合物そのものについての入手可能な試験データ、あるい

はつなぎの原則に基づき、分類はケースバイケースで修正できる(下記参照)。詳細は判定基準

(3.6.2.7, 3.6.3.1, 3.6.3.2)を参照のこと。

3.6.5.2 混合物の判定論理 3.6.2 混合物の個々の成分に基づく分類

ケースバイケースでの分類の修正 ――――――――――――― 1 個々の濃度の限度については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限度の使用」および本章の表 3.6.1 を参照。 2 他の混合物のデータをつなぎの原則に用いた場合は、その混合物のデータは 3.6.3.2 に照らして決定的なものでなけ ればならない。

Yes

Yes

区分 1

危険

当該混合物は、1つまたはそれ以上の区分2の発がん性物質を下記の濃度で含有するか?

(a) ≧ 0.1% 1 (b) ≧ 1.0% 1

区分 2

警告

当該混合物は、1つまたはそれ以上の区分1の発

がん性物質を下記の濃度で含有するか? ≧ 0.1% 1

混合物そのものについての試

験データが入手できるか? Yes

No

つなぎの原則は適用可能か?2 (判定基準 3.6.3.2 参照)

用量や、試験期間、観察、分析等そ

の他の要因(例えば、統計処理、試

験感度)を考慮しても、当該混合物

の発がん性試験系の結果が、決定的

であるか?

Yes 適切な区分に

分類する

危険 または

警告 または

区分外

上記参照: 混合物の個々の成分に基づく

分類

No

No

No

区分外

No Yes

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3.6.5.3 背景文書 3.6.5.3.1 国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)3によるヒトの発がん性リスクの証拠の強さの評価についてのモノグラフからの抜粋を以下の 3.6.5.3.1.1 および3.6.5.3.1.2 に示す 4。

3.6.5.3.1.1 ヒトに対する発がん性

3.6.5.3.1.1.1 ヒトの調査から得られた発がん性に関する証拠は、次の区分のいずれかに分類される。

(a) 発がん性の十分な証拠:作業部会によれば、物質、混合物、ばく露環境におけるばく露とヒト発がんとの因果関係が確立されたもの。すなわち、偶然性、偏り、交絡要因が排除された研究において、ばく露とがんとの間に陽性の関係が観察されることを意味する。

(b) 発がん性の限定的証拠:物質、混合物に対するばく露、またはばく露環境におけるばく露と

発がんとの間に陽性の関連性があると解釈され、その因果関係の信頼性を上記作業部会が認めているが、合理的信頼性を持って、偶然性、偏り、交絡要因が排除されていないものを意味する。

3.6.5.3.1.1.2 一部の事例においては、上記の区分は特定の臓器または組織における発がん性に関する

証拠の重要度の分類に使用される場合もある。 3.6.5.3.1.2 実験動物に対する発がん性 実験動物に対する発がん性に関する証拠は、次の区分のうちいずれかに分類される。

(a) 発がん性の十分な証拠:作業部会によれば、 (i) 複数種の動物または (ii) 1 種の動物に関

して別個の時期、別個の研究機関、もしくは別個のプロトコールの下で行われた複数の独立した研究において、当該物質または混合物と悪性新生物、または良性および悪性新生物の特有な組み合わせの発生率の増加との間に因果関係が確立されていること。

(b) 例外的に、単一種の動物に関する単回の研究によっても、悪性新生物の発生率、発生箇所、

腫瘍形態、発生時の年齢という観点から見て異常な程度の発生を示す場合は、発がん性の十

分な証拠になると考えられる。

(c) 発がん性の限定的証拠:データは発がん作用を示しているが、断定的な評価を下すには限定

的である場合、例えば、(i) 発がん性の証拠が単一の実験に限定される場合、(ii) 当該の研

究の設計、実施、解釈の妥当性に関して未解決の疑問がある場合、または、(iii) 当該物質ま

たは混合物が良性新生物もしくは不特定の新生物性の病変、あるいは一部の系統に高い比率

で自然発生することがある特定の新生物の発生数のみを増加させる場合である。 3.6.5.3.2 発がん性分類における重要な因子についての考え方の手引き* 本手引きは厳密な規則というよりは分析方法を提供するものである。この節ではいくつかの考察につい

て記述している。GHS で求めている証拠の重み付けは、証拠の強さの分析とともに発がん性の可能性を

決定する重要な因子を検討する包括的な方法である。IPCS の“Conceptual Framework for Evaluating a Mode of Action for Chemical carcinogenesis”(2001)、国際生命科学研究所(ILSI)の“Framework for Human Relevance Analysis of Information onCarcinogenic Modes of Action”(Meek et al., 2003; Cohen et al., 2003, 2004)および IARC(前文 12(b))が、国際的に統一された方法で実施可能な系統的な評価の

基礎を提供している。IPCS はまた 2004 年にも、ヒトに関連した枠組みをさらに発展させ明確にするた

――――――――――――― 3 IARC モノグラフからの抜粋は OECD 分類と表示の調和に関する中間報告から来ているものである。これらは

OECD 分類と表示の調和に関するタスクフォースで承認されたテキストではないが、ここでは追補として持ち出されている。

4 3.6.2.4 参照

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めのパネルを開催した。しかし国際的に入手可能な文書は、答えを与えることを意図したものでも、照

合されるべき判断基準のリストを提供するものでもない。 3.6.5.3.2.1 作用様式 発がん性評価に関する種々の国際的な文書ではすべて、作用式の結果および作用様式そのものあるい

は比較代謝の検討はケースバイケースで評価されなければならないとし、これらは分析評価方法の一部

であるとしている。実験結果のヒトに対する妥当性を調べるために、実験動物種とヒトの間の比較トキ

シコキネティクス/トキシコダイナミクス(毒物動態/毒性動力学)を考慮しながら、動物実験において

は、どのような作用様式も注意深く観察しなければならない。これによりある種の化学品の非常に特異

的な影響が割り引かれる可能性もあろう。細胞分化に与えるライフステージ依存性の影響はヒトと動物

の質的な違いに結びつく可能性もある。腫瘍発生のある作用様式がヒトでは機能しないと確定されるな

らば、その腫瘍に対する発がんの証拠は割り引かれるであろう。しかし化学品に対する証拠の重みづけ

評価は腫瘍形成に関与する他のいかなる作用も同様に評価することを求めている。 3.6.5.3.2.2 複数の動物実験での反応 いくつかの動物種での陽性反応は、化学品が発がん性であるという、証拠の重み付けに加わる。

3.6.2.5.2 のリストに含まれる全ての要因以上のものを考慮に入れて、2つ以上の動物種で陽性結果を示

す化学品は、動物試験の結果のヒトへの関連性が完全に評価されるまでは、暫定的に GHS 区分 1B に

分類してよいであろう。一方、少なくとも2つの独立した研究における一種での陽性結果、あるいは悪

性度の極めて強い証拠を示す 1 つの陽性結果もまた区分 1B になるであろう。 3.6.5.3.2.3 片方あるいは両性での反応 性特異的腫瘍の場合、当該物質の発がん性を検討する際には、他の部位で観察された全ての腫瘍形成

反応(多部位での反応やバックグラウンドを超えた発生率)をふまえて評価しなければならない。 もし、ある動物種の片方の性でのみ腫瘍が見られた場合には、反応が想定される作用様式と一致して

いるかどうか、作用様式を注意深く評価しなければならない。1 つの実験種の片性でのみ見られた影響

は、片性での反応を説明する作用様式と一致する明らかな病理-生理学的相違がない限り、両性で見ら

れた影響よりも説得力は低いであろう。 3.6.5.3.2.4 過剰な毒性あるいは局所作用の交絡的影響 重篤な毒性を伴う過剰用量でのみ生じる腫瘍は、通常、ヒトに対する発がん性の可能性は疑わしい。

加えて、試験物質が直接ばく露する部位のみ、および/あるいは過剰用量でのみで生じる腫瘍も、ヒトで

の発がん性の妥当性を注意深く評価する必要がある。例えば、刺激性あるいは腐食性を有するものの変

異原性のない化学品の胃チューブによる経口投与によってできた前胃腫瘍は妥当性が疑わしいであろう。

しかし、ヒトに対する発がん性の有無を明らかにするには、そのような決定は注意深く行わなければな

らない。投与遠位部位におけるいかなる他の腫瘍の発生も考慮されなければならない。 3.6.5.3.2.5 腫瘍のタイプ、腫瘍形成時間の減少 通常見られないタイプの腫瘍あるいは形成までに要する時間が減少した腫瘍は、たとえ腫瘍の発生頻度

が統計学的に有意でなかったとしても、化学品の発がん性に対する証拠の重み付けに加えられるであろう。 通常、トキシコキネティクスは少なくとも質的な観点からは動物とヒトで同じであると仮定されてい

る。一方、動物におけるある種の腫瘍は、試験に用いる動物種に特有なトキシコキネティクスやトキシ

コダイナミクスに関連している可能性があり、ヒトの発がん性の予測には使えないであろう。非常にわ

ずかながらそのような例が国際的に認められている。1 つの例は、α2u-グロブリン腎障害を誘発する化

合物による雄ラットでの腎腫瘍にはヒトでの妥当性がないというものである(IARC, Scientific Publication No147)。特殊な腫瘍タイプを割り引いて考えたとしても、動物実験における腫瘍形成の評

価においては専門家の判断がなされなければならない。

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――――――――――――――――――――― *参考文献 Cohen, S.M., J. Klaunig, M.E. Meek, R.N. Hill, T. Pastoor, L. Lehman-McKeeman, J.Bucher, D.G. Longfellow, J.

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Cohen, S.M., M.E. Mkke, J.E. Klaunig, D.E. Patton, P.A. Fenner-Crisp. 2003. The human1 relevance of information

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Meek, M.E., J.R. Bucher, S.M. Cohen, V. Dellarco, R.N. Hill, L. Lehman-McKeeman,D.G. Longfellow, T. Pastoor, J. Seed, D.E. Patton. 2003. A framework for human relevance analysis of information on carcinogenic modes of action.

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第 3.7 章

生殖毒性

3.7.1 定義および一般事項 3.7.1.1 生殖毒性

生殖毒性には、雌雄の成体の生殖機能および受精能力に対する悪影響に加えて、子の発生毒性も含ま

れる。下記に示された定義は、IPCS/EHC の文書番号 225、化学品へのばく露と関連する生殖に対する

健康リスクの評価原則における仮の定義に従って作成したものである。分類という目的から、遺伝子要

因に基づく子への遺伝的影響の誘発については、生殖細胞に対する変異原性という別の有害性クラスの

方がより適切であると思われるため、第 3.5 章「生殖細胞変異原性」に示してある。 本分類システムでは、生殖毒性は以下の2つの主項目に分けられている。

(a) 性機能および生殖能に対する悪影響 (b) 子の発生に対する悪影響

ある種類の生殖毒性の影響は、性機能および生殖能の損傷によるものであるか、または発生毒性によ

るものであるか明確に評価することはできない。それにもかかわらず、これらの影響を持つ化学品は、

一般的な危険有害性情報には生殖毒性物質と分類されるであろう。 3.7.1.2 性機能および生殖能に対する悪影響

化学品による性機能および生殖能を阻害するあらゆる影響。これには雌雄生殖器官の変化、生殖可能

年齢の開始時期、配偶子の生成および移動、生殖周期の正常性、性的行動、受精能/受胎能、分娩、妊娠

の予後に対する悪影響、生殖機能の早期老化、または正常な生殖系に依存する他の機能における変化な

どが含まれるが、必ずしもこれらに限られるわけではない。 授乳に対するまたは授乳を介した影響も生殖毒性に含められるが、この分類においては、別に扱って

いる(3.7.2.1 を参照)。なぜならば、特に授乳に対して悪影響を及ぼす化学品を分類することは、授乳

中の母親に対して有害性情報を提供するためにも望ましいからである。 3.7.1.3 子の発生に対する悪影響 発生毒性を広義にとらえると、胎盤、胎児あるいは生後の子の正常な発生を妨害するあらゆる作用が

含まれる。それは受胎の前のいずれかの親のばく露、胎児期における発生中の胎児のばく露、あるいは

出生後の性的成熟期までのばく露によるものがある。 ただし、発生毒性という分類においては、妊娠女

性および生殖能のある男女に対して有害性警告を提供することを第一の目的としていると考えることが

できる。したがって、分類するという目的のために、発生毒性とは本質的に妊娠中または親のばく露に

よって誘発される悪影響をいう。このような影響は、その生体の生涯のいかなる時点においても発現さ

れ得る。発生毒性の発現には主として(a)発生中の生体の死亡、(b)構造異常、(c)生育異常、および(d)機能不全が含まれる。

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3.7.2 物質の分類基準 3.7.2.1 有害性区分 生殖毒性の分類目的に照らし、物質は 2 種類の区分に振り分けられる。性機能および生殖能に対する

作用と発生に対する作用とは別の問題であると見なされている。更に、授乳に対する影響については、

別の有害性区分が割り当てられている。

図 3.7.1(a) 生殖毒性物質の有害性区分

図 3.7.1(b) 授乳影響の有害性区分

授乳に対するまたは授乳を介した影響 授乳に対するまたは授乳を介した影響は別の区分に振り分けられる。多くの物質には、授乳によって幼児に悪影響を及ぼす可能性についての情報がないことが認められている。ただし、女性によって吸収され、母乳分泌に影響を与える、または授乳中の子供の健康に懸念をもたらすに十分な量で母乳中に存在すると思われる物質(代謝物も含めて)は、哺乳中の乳児に対するこの有害性に分類して示すべきである。この分類は下記の事項をもとに指定される。

(a) 吸収、代謝、分布および排泄に関する試験で、当該物質が母乳中で毒性を持ちうる濃度で存在する可能性が認められた場合、または

(b) 動物を用いた一世代または二世代試験の結果より、母乳中への移行による子への悪影響ま

たは母乳の質に対する悪影響の明らかな証拠が得られた場合、または (c) 授乳期間中の乳児に対する有害性を示す証拠がヒトで得られた場合。

区分1:ヒトに対して生殖毒性があることが知られている、あるいはあると考えられる物質

この区分には、ヒトの性機能および生殖能あるいは発生に悪影響を及ぼすことが知られている物質、またはできれば他の補足情報もあることが望ましいが、動物試験によりその物質がヒトの生殖を阻害する可能性があることが強く推定される物質が含まれる。規制のためには、分類のための証拠が主としてヒトのデータによるものか(区分 1A)、あるいは動物データによるものなのか(区分 1B)によってさらに区別することもできる。

区分1A:ヒトに対して生殖毒性があることが知られている物質

この区分への物質の分類は、主にヒトにおける証拠をもとにして行われる。 区分1B:ヒトに対して生殖毒性があると考えられる物質

この区分への物質の分類は、主に実験動物による証拠をもとにして行われる。動物実験より得られたデータは、他の毒性作用のない状況で性機能および生殖能または発生に対する悪影響の明確な証拠があるか、または他の毒性作用も同時に生じている場合には、その生殖に対する悪影響が、他の毒性作用が原因となった2次的な非特異的影響ではないと見なされるべきである。ただし、ヒトに対する影響の妥当性について疑いが生じるようなメカニズムに関する情報がある場合には、区分 2 に分類する方がより適切である。

区分2:ヒトに対する生殖毒性が疑われる物質

この区分に分類するのは次のような物質である。できれば他の補足情報もあることが望ましいが、ヒトまたは実験動物から、他の毒性作用のない状況で性機能および生殖能あるいは発生に対する悪影響についてある程度の証拠が得られている物質、または、他の毒性作用も同時に生じている場合には、他の毒性作用が原因となった2次的な非特異的影響ではないと見なされるが、当該物質を区分1に分類するにはまだ証拠が十分でないような物質。例えば、試験に欠陥があり、証拠の信頼性が低いため、区分2とした方がより適切な分類であると思われる場合がある。

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3.7.2.2 分類の根拠 3.7.2.2.1 分類は、上記に概略を記した適切な判定基準、および証拠の重みの総合的評価をもとに行われる。生殖毒性物質としての分類は、生殖に対して、固有かつ特異的な性質の有害影響をもたらす化学品に適用されることを目的としており、もしそのような影響が単に他の毒性作用の非特異的な二次的影響として誘発されたにすぎないならば、化学品をそのように分類すべきではない。 3.7.2.2.2 発生中の子に対する毒性作用の評価では、母体に対する毒性が影響を及ぼしている可能性についても考慮することが重要である。 3.7.2.2.3 区分1A分類の重要な根拠となる、ヒトで得られた証拠は、ヒトの生殖に対する有害影響を示す信頼性のある証拠でなくてはならない。分類に用いる証拠は、理想的には、適切な対照群を設け、バランスのとれた評価が行われ、偏りまたは交絡要因について当然払うべき注意が払われているような、入念に実施された疫学的調査より得られたものにすべきである。ヒトから得られても厳密性を欠くデータは、実験動物を用いた試験により得られた十分なデータで補足すべきであり、区分 1B への分類も考えるべきである。 3.7.2.3 証拠の重み 3.7.2.3.1 生殖毒性物質としての分類は、証拠の重みの総合的評価をよりどころとして行われる。これはすなわち、生殖毒性の決定に関わるすべての入手可能な情報が一括して考慮されることを意味している。これには、ヒトでの疫学的調査や症例報告と共に、動物を用いた亜慢性、慢性および特定試験で生殖器官ならびに関連内分泌器官に対する毒性関連情報が得られる特異的生殖試験の結果も含まれる。当該物質自体に関する情報がわずかしかない場合には、試験対象である物質と化学的に関連性のある物質の評価も含まれることもある。入手可能な証拠に対する重みは、試験の質、結果の一貫性、作用の特徴および重篤度、群間差の統計的有意性のレベル、影響を受けるエンドポイントの数、投与経路がヒトとの関連性で妥当であるかどうか、および偏りが排除されているかによって異なってくる。陽性結果と陰性結果の両者を組み合わせて、証拠の重みが決定される。単一の陽性試験であっても、優れた科学的原則に従って実施され、また、統計的または生物学的に有意な陽性結果が得られたものならば、分類の正当性の判断理由となりうる(3.7.2.2.3 も参照)。 3.7.2.3.2 動物およびヒトでのトキシコキネティクスの試験、作用部位および作用メカニズムまたは作用機序の試験結果からも関連情報が得られることがあり、これによってヒトの健康に対する有害性に関する懸念が増えることもあれば減ることもある。もし、作用メカニズムまたは作用機序が明らかに特定され、それがヒトには関係ないことが最終的に実証されるならば、またはトキシコキネティクスの違いが著しく異なるためにヒトではこの有害性が発現されないことを明確に示すことができるならば、実験動物で生殖に有害影響を及ぼす物質であっても分類すべきでない。 3.7.2.3.3 実験動物を用いた生殖試験で、記録された作用が、毒性学的な重要性が低いかまたは最小限なものしかないと見なされるならば、必ずしも結果的に分類されるとは限らない。そうした作用の例として、例えば精液に関する測定項目のわずかな変化、または胎児の偶発的異常の発生率のわずかな変化、例えば骨格検査で測定されるような一般的な胎児奇形または胎児体重の比率のわずかな変化、または出生後の発生評価結果のわずかな違いなどがある。 3.7.2.3.4 動物試験より得られたデータは、原則的には、特異的な生殖毒性の明確な証拠を、その他の全身毒性を伴わない状況で示すべきである。ただし、発生毒性が母動物におけるその他の毒性影響と同時に起きる場合には、総合的な有害作用の潜在的影響について、できる限り評価すべきである。まず胚または胎児における有害影響を検討し、ついで母動物に対する毒性を評価し、こうした有害影響に影響していると思われるようなその他の要因も合わせて、証拠の重みの一部として評価することが望ましい方法である。一般的に、母動物に毒性を示す用量において認められる発生毒性を機械的に無視してしまうべきでない。母動物に毒性を示す用量で認められる発生毒性を無視してよいのは、因果関係を確立または否定するデータが利用できる場合だけで、それもケースバイケースで行われる。 3.7.2.3.5 適切な情報が入手されたならば、発生毒性が、母動物の介在する特異的メカニズムによるものなのか、それとも例えば母動物のストレスやホメオスタシスのかく乱のような非特異的な2次的メカニズムによるものなのかを判断するよう試みることが重要である。一般的に、胚または胎児に対する影響が2次的な非特異的影響であることが明確に実証されない限り、母体に対する毒性があることを胚または胎児に対する影響の知見を否定するのに用いるべきではない。特に子における影響が顕著である場合、例えば奇形のような非可逆的影響である場合にこれが当てはまる。また状況によっては、生殖毒性が母体に対する毒性の2次的結果であるとして、胚または胎児に対する作用を割り引いて考えることが合理的であることもある。例えば、その化学品の毒性が極めて高いために母動物が生長できず、重度の栄養障害があり幼児の哺育ができない、または衰弱したり瀕死の状態であったりする場合などである。

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3.7.2.4 母体に対する毒性 3.7.2.4.1 妊娠期間中から出生後の早期段階に至るまでの子の発達は、ストレスおよび母体のホメオスタシスのかく乱に関係した非特異的メカニズム、または母体が介在する特異的メカニズムを通して、母体における毒性作用に影響されうる。そのため、発生毒性に関する分類決定のために発生の結果を解釈する際には、母体に対する毒性が影響している可能性を考慮することが重要である。このことは、母体に対する毒性と発生への影響の関係が明らかでないために、困難な問題である。発生毒性作用に関する分類のための判定基準を解釈する場合、母体の毒性に帰すべき影響の程度を決定するために、利用可能なあらゆるデータを用い、専門家の判断と証拠の重みによる手法を利用すべきである。まず胚または胎児に対する有害影響を検討し、次に母体に対する毒性に加え、こうした作用に影響する可能性があると思われるその他の要因があれば、証拠の重みとして検討して、分類に関する結論に到達するのに役立てるべきである。 3.7.2.4.2 実際上の所見をもとに、母体に対する毒性は、その重篤度にもよるが、非特異的な2次的メ

カニズムによって発生に影響を及ぼし、胎児体重増加抑制、骨化遅延、ならびにある生物種の系統にお

いて組織吸収や奇形等の影響を誘発すると考えられている。しかしながら、発生に対する影響と母体に

対する一般的な毒性の関連性を検討している限られた研究においても、種間における一貫した、再現性

のある関連性を実証できていない。母体に対する毒性があったとしても発生に対する影響が認められた

場合、その発生に対する作用がケースバイケースで母体に対する毒性の2次作用であると確実に実証さ

れない限り、発生毒性の証拠であると見なされる。さらに、子に重大な毒性作用、例えば奇形、胚また は胎児致死、出生後の著しい機能障害等の不可逆的作用などが認められる場合には、(訳者注:生殖毒性

ありと)分類することを検討すべきである。 3.7.2.4.3 母体に対する毒性との関連性によってのみ発生毒性を生じるような化学品については、たと

え母体が介在する特異的メカニズムが示されているとしても、分類を機械的に否定すべきでない。そう

した場合には、区分 1 に分類するより区分 2 に分類する方がふさわしいと考えられることもある。ただ

し、化学品の毒性がきわめて高いために母動物が死亡したり重度の栄養失調となるか、または母動物が

衰弱して子の哺育ができない場合には、発生毒性は単に母体毒性に誘発された2次的結果にすぎないと

推測して、発生影響を無視する方が合理的である。例えば、胎児または子の体重のわずかな低下や骨化

の遅延などが母体に対する毒性との関連性で観察される場合には、必ずしも分類を行う必要はない。 3.7.2.4.4 母体に対する毒性評価に用いられる影響のいくつかを以下に示す。これらの影響に関するデ

ータが入手可能であれば、その統計的または生物学的有意性ならびに用量反応関係に照らして評価する

必要がある。 (a) 母体の死亡:対照群と比べて投与群母動物の死亡率が増加した場合、その増加に用量依存性があ

るならば、これは母体に対する毒性の証拠であると見なされる必要があり、被験物質の全身毒性を

表すものとされる。母動物の死亡率が 10%を超えているならば過度であると見なされ、その用量レ

ベルで得られたデータは通常、それより先の評価に考慮されるべきではない。 (b) 交尾率(交尾栓または精子が認められた動物数/交配した動物数×100)1

(c) 受胎率(着床が認められた動物数/交尾動物数×100)1

(d) 妊娠期間(出産に至る場合)

(e) 体重および体重変化:母動物の体重変化または調整(補正)後の母体体重に関するデータが利用

可能であるならば、これらは必ず評価に含めるべきである。試験開始時の母体体重より試験終了時

の母体体重から妊娠子宮重量(または、胎児体重合計値)を除いた値を差し引いた差である調整(補

正)後の母体平均体重の変化で、その作用が母体に対するものか、または子宮内に対する作用かが

わかることもある。ウサギでは、妊娠期間中に体重変動があるのが普通であるため、体重増加率は

母体に対する毒性の有効な指標とならない場合もある。 ────────────────

1 この指標は雄によっても影響されることが認められている。

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(f) 摂餌量および摂水量(該当する場合):投与群母動物で対照群と比べて平均摂餌量または摂水量の有意な低下が認められれば、特にその被験物質を飼料中または飲料水中に混入して投与した場合に、母体に対する毒性評価に有用となる。観察された作用が母体に対する毒性を反映しているかどうか、それとも、より単純に、飼料中または水中の被験物質の味が摂取に適していないためであるのかを決定する場合、摂餌量または摂水量の変化は、母体の体重と関連させて評価すべきである。

(g) 臨床評価(臨床症状、マーカー、血液学的検査および臨床化学検査等):投与群母動物で対照群に

比べて有意な毒性の臨床症状発生率の増加が認められれば、母体に対する毒性評価に有用となる。もしこれを母体に対する毒性評価の根拠として採用するならば、臨床症状の種類、発生率、程度および継続期間の長さが試験で報告されているべきである。母体に対する毒性の臨床症状として確実であるのは、昏睡、衰弱、自発運動亢進、直立反射の消失、歩行失調または呼吸困難などである。

(h) 剖検データ:剖検所見の発生率または重篤度の上昇が、母体に対する毒性の指標となることもあ

る。これには、肉眼または顕微鏡病理所見や、例えば臓器の絶対重量、体重に対する臓器重量比または脳に対する臓器重量比などの臓器重量データが含まれる。投与群母動物で対照群に比べて、標的臓器と推測される臓器平均重量に有意な変化が認められた場合、作用を受ける臓器に病理組織学的有害影響の所見が認められればそれが裏付けとなって、母動物に対する毒性の証拠であると見なしてよい。

3.7.2.5 動物データおよび実験データ 3.7.2.5.1 国際的に容認されている試験方法として何種類かが利用可能である。例えば、発生毒性試験方法(例:OECD テストガイドライン 414、ICH ガイドライン S5A 1993)、周産期および出生後の毒性試験方法(例:ICH S5B 1995)および一世代または二世代生殖毒性試験方法(例:OECD テストガイドライン 415、416、443)がある。 3.7.2.5.2 スクリーニング試験(例:OECD テストガイドライン 421 - 生殖/発生毒性スクリーニング試験、および 422 - 反復投与毒性試験と生殖/発生毒性スクリーニング試験を組み合わせた試験)も分類の判断に用いることができるが、これより得られる証拠の質は、完全な試験より得られた証拠より信頼性に劣ることは認識されている。 3.7.2.5.3 例えば重大な一般的毒性を伴わずに生じる有害影響または変化が短期または長期反復投与毒性試験で認められ、生殖腺の組織病理学的変化など、生殖機能を損なう見込みがあると判断されたならば、分類の根拠として採用されることもある。 3.7.2.5.4 In vitro 試験または哺乳類以外の動物での試験より得られた証拠、および構造活性相関(SAR)を用いて類似物質より得られた証拠は、分類手順に役立てられる。その性格上、そのデータの妥当性の評価には専門家の判断が採用されなければならない。妥当性を欠くデータは分類の第一義的裏付けとして採用すべきでない。 3.7.2.5.5 動物試験は、ヒトでのばく露があり得る経路に関連した適切な投与経路により実施することが望ましい。ただし実際には、生殖毒性試験は一般的に経口経路により実施され、そうした試験ではその物質の生殖毒性に関する有害性評価に適切となる。ただし、明確な作用メカ二ズムまたは作用機序が特定されたがヒトには該当しないこと、またはトキシコキネティクスの違いが著しいためにその有害性がヒトでは発現されないことが結論として実証できるならば、実験動物の生殖に有害影響を生じるような物質でも分類すべきでない。 3.7.2.5.6 静脈注射または腹腔内注射などの投与経路を用いる試験では、被験物質の生殖器官のばく露濃度が非現実的なほどに高濃度となってしまう場合、または、例えば刺激性などにより生殖器官に局所的損傷をもたらす場合には、細心の注意を払って解釈すべきであり、そうした試験だけでは通常分類の根拠とはならない。 3.7.2.5.7 それを超えると有害影響を誘発して分類の判定基準を外れるであろうと思われる限界用量の概念に関する一般的同意はなされている。しかし、OECD タスクフォース内部では、特定の用量を限界用量として判定基準に算入することは同意されていない。試験指針には限界用量を定めているものもあれば、またはヒトの予想ばく露濃度が高いために適切なばく露マージンが取れそうにない場合には、より高い用量が必要なこともあると述べた上で限界用量を認めているガイドラインもある。また、トキシ

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コキネティクスには種差があるために、ヒトの感受性の方が動物モデルより高いような状況では、特定の限界用量を設定することは適切でない場合もある。 3.7.2.5.8 原則として、動物試験できわめて高い用量段階(例えば、衰弱、重度の食欲不振、高い死亡率を生じるような用量)でのみ認められる生殖に対する有害影響は、例えばヒトの感受性の方が動物より高いことを示すトキシコキネティクスの情報のようなその他の情報が入手されて、その分類が適切であることを裏付けることがない限り、通常は分類の根拠とはならない。この分野の更なる手引きについては「母体に対する毒性」の項を参照されたい。 3.7.2.5.9 ただし、実際の「限界用量」の内容は、試験結果を得るために採用されている試験方法によって異なってくる。例えば経口経路による反復投与毒性に関する OECD テストガイドラインでは、ヒトで予想される反応から用量段階を高める必要性が示唆されない限りは、試験に採用する高い方の用量1000mg/kg が限界用量として推奨されている。 3.7.2.5.10 特定の用量を限界用量として判定基準に含めるには更なる議論が必要である。 3.7.3 混合物の分類基準 3.7.3.1 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類 混合物の分類は、当該混合物の個々の成分について入手できる試験データに基づき、成分のカットオ

フ値/濃度限界を使用して行われる。当該混合物そのものについて試験データが入手できる場合には、分類はケースバイケースで修正されることがある。このような場合、混合物そのものの試験結果は、生殖毒性試験系の用量や、試験期間、観察、分析などの他の要因(例えば、統計分析、試験感度)を考慮した上で確実であることが示されなければならない。分類が適切であることの証拠書類を保持し、要請に応じて示すことができるようにするべきである。 3.7.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則

(Bridging principle) 3.7.3.2.1 混合物そのものは生殖毒性有害性を決定する試験がなされていないが、当該混合物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、分類プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な限り最大限に用いることが可能になる。 3.7.3.2.2 希釈 試験された混合物が、他の成分の生殖毒性に影響を与えないと予想される希釈剤で希釈される場合、

新しい希釈された混合物は、試験された元の混合物と同等として分類してよい。 3.7.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの生殖毒性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産され

た同じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と実質的に同等とみなすことができる。ただし、試験されていないバッチの生殖毒性能が変化するような有意の変動があると考えられる理由がある場合はこの限りではない。このような場合には、新しい分類が必要である。 3.7.3.2.4 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 生殖毒性をもつ成分 B の濃度は、両方の混合物で同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。 (d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等である、すなわち、A と C は同じ有

害性区分に属し、かつ、B の生殖毒性に影響を与えることは予想されない。

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混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。 3.7.3.3 混合物の全成分についてまたは一部の成分だけについてデータが入手できた場合の混合物の

分類 3.7.3.3.1 混合物は、少なくとも 1 つの成分が区分 1 または区分 2 生殖毒性物質として分類され、区分 1と 2 それぞれについて表 3.7.1 に示したような適切なカットオフ値/濃度限界以上で存在する場合、生殖

毒性物質として分類される。 3.7.3.3.2 混合物は、少なくとも1つの成分が、授乳に対するまたは授乳を介した影響について分類され、

授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分のために表 3.7.1 に示したような適切なカット

オフ値/濃度限界以上で存在する場合、授乳に対するまたは授乳を介した影響について分類される。

表 3.7.1 混合物の分類基準となる生殖毒性物質成分のカットオフ値/濃度限界 a

成分の分類:

混合物の分類基準となるカットオフ値/濃度限界:

区分 1 生殖毒性物質 区分 2

生殖毒性物質

授乳に対するま

たは授乳を介し

た影響に関する

追加区分 区分 1A 区分 1B

区分 1A 生殖毒性物質 ≧0.1%(注記 1)

--

--

-- ≧0.3%(注記 2)区分 1B 生殖毒性物質

-- ≧0.1%(注記 1)

--

-- ≧0.3%(注記 2)

区分 2 生殖毒性物質 -- -- ≧0.1%(注記 3) -- -- -- ≧3.0%(注記 4) --

授乳に対するまたは授

乳を介した影響に関す

る追加区分

-- -- -- ≧0.1%(注記 1)

-- -- -- ≧0.3%(注記 2)

a この妥協の産物である分類方法は現行の危険有害性の情報伝達における相違を考慮して作成された。影響を受ける混合物の数が少なく、相違はラベル表示に限られ、さらなる調和により状況が良くなることが期待される。 注記 1:区分1生殖毒性成分あるいは授乳に対するまたは授乳を介した影響のための追加区分に分類さ

れる物質が 0.1%と 0.3%の間の濃度で混合物に存在する場合には、すべての規制所管官庁は、製品のSDSに情報の記載を要求することになろう。しかし、ラベルへの警告表示は任意となろう。一部の規制所管

官庁は、成分が 0.1%と 0.3%の間で混合物に存在する場合に表示を選択するであろうが、他の所管官庁

は、通常、この場合に表示を要求しないことになろう。

注記2:区分1生殖毒性成分あるいは授乳に対するまたは授乳を介した影響のための追加区分に分類さ

れる物質が≧0.3%の濃度で混合物に存在する場合には、一般に SDS とラベル表示の両方に記載するこ

とになろう。 注記3:区分2生殖毒性成分が 0.1%と 3.0%の間の濃度で混合物に存在する場合には、すべての規制所

管官庁は、製品の SDS に情報の記載を要求することになろう。しかし、表示は任意である。一部の規

制所管官庁は、成分が 0.1%と 3.0%の間で混合物に存在する場合に表示を選択するであろうが、他の所

管官庁は、通常、この場合には表示を要求しないことになろう。 注記4:区分2生殖毒性成分が≧3.0%の濃度で混合物に存在する場合には、一般に SDS と表示の両方

に記載することになろう。

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3.7.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 3.7.2 生殖毒性のラベル要素

区分 1

(区分 1A、1B)

区分 2 授乳に対するまたは

授乳を介した影響に

関する追加区分

シンボル 健康有害性 健康有害性 シンボルなし

注意喚起語 危険 警告 注意喚起語なし

危険有害性

情報 生殖能または胎児への

悪影響のおそれ

(もし判れば影響の内

容を記載する)(他の経

路からのばく露が有害

でないことが決定的に

証明されている場合、有

害なばく露経路を記載)

生殖能または胎児への

悪影響のおそれの疑い

(もし判れば影響の内

容を記載する)(他の経

路からのばく露が有害

でないことが決定的に

証明されている場合、

有害なばく露経路を記

載)

授乳中の子に害を及

ぼすおそれ

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3.7.5 分類判定論理 3.7.5.1 生殖毒性の判定論理

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとしてここに述べる。分

類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解する

ことを強く勧める。

3.7.5.1.1 物質の判定論理 3.7. 1

物質:当該物質に生殖毒性に関するデータがあるか?

No 分類できない

Yes

基準(3.7.2 参照)に従い、当該物質は (a) 人に対する生殖毒性があることが知られている

物質、または (b) 人に対して生殖毒性があると考えられる物質

か? 本判定基準の適用には、証拠の重み付けにおいて専門家

の判断が必要である。

No

Yes

区分 1

危険

Yes

区分 2

警告

区分外

No

基準(3.7.2 参照)に従い、当該物質は人に対する生殖

毒性が疑われる物質か? 本判定基準の適用には、証拠の重み付けにおいて専門家

の判断が必要である。

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3.7.5.1.2 混合物の判定論理 3.7.2 混合物の個々の成分に基づく分類 ケースバイケースでの分類の修正

―――――――――――――― 2 個々の濃度の限度については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限度の使用」および本章の表 3.7.1 を参照。 3 他の混合物のデータをつなぎの原則に用いた場合は、その混合物のデータは 3.7.3.2 に照らして断定的なものでなけ ればならない。

混合物: 混合物の分類は、成分のカットオフ値/濃度限界を用いて、当該混合物の個々の成分の入

手可能な試験データに基づいて行われる。混合物そのものについての入手可能な試験データ、ある

いはつなぎの原則に基づき、分類はケースバイケースで修正できる。以下のケースバイケースでの

分類の修正を参照。詳細は判定基準(3.7.3.1, 3.7.3.2, および 3.7.3.3)を参照。

当該混合物は、1つまたはそれ以上の区分1の生殖毒性物

質を下記の濃度で含有するか? (a) ≧ 0.1%2 (b) ≧ 0.3 %2

Yes

区分 1

危険

No

当該混合物は、1つまたはそれ以上の区分2の生殖毒性物質を下記の濃度で含有するか?

(a) ≧ 0.1%2 (b) ≧ 3.0 %2

Yes

区分 2

警告

No 区分外

混合物そのものについて

の試験データは入手でき

るか?

Yes 用量、試験期間、観察、分析

等その他の要因(例えば、統

計処理、試験感度)を考慮し

ても、当該混合物の生殖毒性

試験系の結果が、確実である

か?

適切な区分に 分類する

危険 または

警告 または

区分外

Yes

No

上記参照:当該混合物の個々の成分に基づ

く分類

つなぎの原則は適用可能か?3 (3.7.3.2.1-3.7.3.2.4 の判定基準参照)

No

Yes

No

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3.7.5.2 授乳に対するまたは授乳を介した影響の判定論理 3.7.5.2.1 物質の判定論理 3.7.3 3.7.5.2.2 混合物の判定論理 3.7.4 混合物の個々の成分に基づく分類

ケースバイケースでの分類の修正 Modified classification on

──────────────── 2 個々の濃度の限度については、第 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限度の使用」および本章の表 3.7.1 を参照。 3 他の混合物のデータをつなぎの原則に用いた場合は、その混合物のデータは 3.7.3.2 に照らして決定的なものでなければならない。

Yes

授乳に対するまたは

授乳を介した影響に

関する追加区分

追加のカテゴリー

として分類しない

混合物: 混合物の分類は、成分のカットオフ値/濃度限界を用いて、当該混合物の個々の成分の入手

可能な試験データに基づいて行われる。混合物そのものについての入手可能な試験データ、あるいは

つなぎの原則に基づき、分類はケースバイケースで修正できる。以下のケースバイケースでの分類の

修正を参照。詳細は判定基準(3.7.3.1, 3.7.3.2, および 3.7.3.3)を参照。

当該混合物は、1つまたはそれ以上の授乳に対するまたは授乳

を介した影響に分類される成分を含有するか? (a) ≧ 0.1%2 (b) ≧ 0.3 %2

Yes

区分外

混合物そのものについて

の試験データは入手でき

るか? Yes

用量、試験期間、観察、分析等

その他の要因(例えば、統計処

理、試験感度)を考慮しても、

当該混合物の生殖毒性試験系

の結果が、確実であるか?

Yes

No

授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分

授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分 シンボルなし 注意喚起語なし

区分外

No

No

No

当該物質は判定基準(3.7.2 参照)に従い授

乳中の子供の健康に対して懸念があるか?

No

つなぎの原則は適用可能か? 3 (3.7.3.2.1-3.7.3.2.4 の判定基準参照)

Yes

上記参照:当該混合物の個々の成分に基

づく分類

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第 3.8 章

特定標的臓器毒性

単回ばく露 3.8.1 定義および一般事項 3.8.1.1 本章の目的は、単回ばく露で起こる特異的な非致死性の特定標的臓器毒性を生ずる物質および混合物を分類する方法を規定することである。可逆的と不可逆的、あるいは急性および遅発性かつ第 3.1章から 3.7章および 3.10章において明確に扱われていない双方の機能を損ないうるすべての重大な健康への影響がこれに含まれる(3.8.1.6 参照)。 3.8.1.2 この分類は、ある物質または混合物が特定標的臓器毒性があるか、およびそれにばく露したヒ

トに対して健康に有害な影響を及ぼす可能性があるかどうかを確認する。 3.8.1.3 分類は、ある物質または混合物に対する単回ばく露がヒトにおける一貫性のある、かつ特定で

きる毒性影響を与えたこと、あるいは実験動物において、組織/臓器の機能または形態に影響する毒性学

的に有意な変化が示されたか、または生物の生化学的項目または血液学的項目に重大な変化が示され、

これらの変化がヒトの健康状態に関連性があるということについての信頼できる証拠が入手できるかに

依存する。この有害性クラスに関しては、ヒトのデータを優先的な証拠とすることが確認されている。 3.8.1.4 評価においては、単一臓器または生物学的システムにおける重大な変化だけでなく、いくつか

の臓器に対するそれほど重度でない一般的変化も考慮すべきである。 3.8.1.5 特定標的臓器毒性は、ヒトに関連するいずれの経路によっても、すなわち主として経口、経皮

または吸入によって起こりうる。 3.8.1.6 GHS における反復ばく露による特定標的臓器毒性の分類については、特定標的臓器毒性―反

復ばく露(第 3.9 章)で述べられているので、本章から除外されている。以下に記載されている他の特

定の毒性は、GHS において別に扱われ、ここには含まれていない。

(a) 急性致死/毒性(第 3.1 章)

(b) 皮膚腐食性/刺激性(第 3.2 章)

(c) 目に対する重篤な損傷性/眼刺激性(第 3.3 章)

(d) 皮膚および呼吸器感作性(第 3.4 章)

(e) 生殖細胞変異原性(第 3.5 章)

(f) 発がん性(第 3.6 章)

(g) 生殖毒性(第 3.7 章) および

(h) 吸入毒性(第 3.10 章)

3.8.1.7 この章における分類基準は、区分1および2の物質(3.8.2.1 参照)の基準、区分3の物質(3.8.2.2参照)の基準および混合物の区分(3.8.3 参照)の基準として体系化されている。図 3.8.1.参照。 3.8.2 物質の分類基準 3.8.2.1 区分1よび区分2の物質 3.8.2.1.1 物質は、勧告されたガイダンス値(3.8.2.1.9 参照)の使用を含む入手されたすべての証拠の

重み付けに基づく専門家の判断によって、急性と遅発性の影響に分けて分類される。そして、観察され

た影響の性質および重度によって区分1または2のいずれかに分類される。(図 3.8.1.)

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図 3.8.1 特定標的臓器毒性(単回ばく露)のための区分

区分 1:ヒトに重大な毒性を示した物質、または実験動物での試験の証拠に基づいて単回ばく露

によってヒトに重大な毒性を示す可能性があると考えられる物質

区分 1 に物質を分類するには、次に基づいて行う:

(a) ヒトの症例または疫学的研究からの信頼でき、かつ質の良い証拠、または、 (b) 実験動物における適切な試験において、一般的に低濃度のばく露でヒトの健康に関

連のある有意な、または強い毒性作用を生じたという所見。証拠の重み付けの評価の一環として使用すべき用量/濃度ガイダンス値は後述する(3.8.2.1.9 参照)。

区分 2:実験動物を用いた試験の証拠に基づき単回ばく露によってヒトの健康に有害である可能

性があると考えられる物質

物質を区分 2 に分類するには、実験動物での適切な試験において、一般的に中等度のば

く露濃度でヒトの健康に関連のある重大な毒性影響を生じたという所見に基づいて行

われる。ガイダンス用量/濃度値は分類を容易にするために後述する(3.8.2.1.9 参照)。

例外的に、ヒトでの証拠も、物質を区分 2 に分類するために使用できる(3.8.2.1.9 参照)。

区分3:一時的な特定臓器への影響

物質または混合物が上記に示された区分1または2に分類される基準に合致しない特定臓器への影響がある。これらは、ばく露の後、短期間だけ、ヒトの機能に悪影響を及ぼし、構造または機能に重大な変化を残すことなく合理的な期間において回復する影響である。この区分は、麻酔の作用および気道刺激性のみを含む。物質/混合物は、3.8.2.2において議論されているように、これらの影響に対して明確に分類できる。

注記:これらの区分においても、分類された物質によって一次的影響を受けた特定標的臓器/器官が明示されるか、または一般的な全身毒性物質であることが明示される。毒性の主標的臓器を決定し、その意義にそって分類する、例えば肝毒性物質、神経毒性物質のように分類するよう努力するべきである。そのデータを注意深く評価し、できる限り二次的影響を含めないようにすべきである。例えば、肝毒性物質は、神経または消化器官で二次的影響を起こすことがある。

3.8.2.1.2 分類した物質が障害を起こしたばく露経路を明示すべきである。 3.8.2.1.3 分類は、後述のガイダンス値を含む利用可能なすべての証拠の重み付けに基づいて、専門家

の判断によって決定する。 3.8.2.1.4 ヒトでの疾患の発生、疫学および実験動物を用いて実施した試験を含むすべてのデータの証

拠の重み付けは、分類を助ける特定標的臓器毒性影響を証明するために使用される。 3.8.2.1.5 特定標的臓器毒性を評価するために必要な情報は、ヒトにおける単回ばく露、例えば、家庭、

職場あるいは環境中でのばく露か、または実験動物を用いて実施した試験のいずれからも得られる。こ

の情報を提供するラットまたはマウスにおける標準的動物試験は急性毒性試験であり、標的組織/臓器に

及ぼす毒性影響の確認をするための臨床所見および詳細な肉眼および顕微鏡による検査を含んでいる。

他の動物種を用いて実施された急性毒性試験の結果も適切な情報となりうる。 3.8.2.1.6 例外的に、標的臓器毒性のヒトでの証拠を有するある種の物質は専門家の判断に基づいて区

分 2 に分類するのが適切な場合がある:それは(a)ヒトでの証拠の重み付けが区分 1 への分類を正当化

することが十分には確信できない場合、または(b)影響の性質および重篤度に基づく場合である。ヒト

における用量/濃度レベルは、分類において考慮すべきではなく、動物試験で入手されたいかなる証拠も、

区分 2 への分類と矛盾しないことである。換言すれば、物質について区分 1 への分類を保証する動物試

験データも入手されている場合、その物質は区分 1 として分類するべきである。

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3.8.2.1.7 区分1および2への分類を支持すると考えられる影響 3.8.2.1.7.1 物質への単回ばく露が、一貫した特定の毒性作用を示した場合には、分類への根拠となる。 3.8.2.1.7.2 ヒトでの経験/疾患の発生から得られる証拠は、通常、健康被害の報告に限定され、ばく露

条件が不確実であることがしばしばあり、実験動物で適切に実施された試験から得られるような科学的

な詳細情報が提供されないと理解されている。 3.8.2.1.7.3 実験動物における適切な試験の証拠は、臨床所見、肉眼および顕微鏡による病理組織学的

検査の形をとって多くのより詳しい内容を供給することができ、そして、生命への危険に至らない機能

障害を起こすかも知れない有害性を、しばしば明らかにすることができる。したがって、入手されたす

べての証拠およびヒトの健康状態への関連性は、分類の過程において考慮を払う必要がある。 ヒトまたは実験動物における関連性のある毒性影響の実例を以下に示す:

(a) 単回ばく露に起因する罹患;

(b) 中枢神経系抑制の徴候および特殊感覚器(例:視覚、聴覚および嗅覚)に及ぼす影響を含

む本質的に一時的なものにとどまらない呼吸器系、中枢または末梢神経系、他の器官、あ

るいはその他の器官系における重大な機能変化;

(c) 臨床生化学的検査、血液学的検査または尿検査の項目における一貫した重大で有害な変化

(d) 剖検時に観察され、またはその後の病理組織学的検査時に認められた、または確認され

た重大な臓器損傷;

(e) 再生能力を有する生体臓器における多発性またはびまん性壊死、線維症または肉芽腫形

成;

(f) 潜在的に可逆的であるが、臓器の著しい機能障害の明確な証拠を提供する形態学的変化;

(g) 再生が不可能な生体臓器における明白な細胞死(細胞の退化および細胞数の減少を含む)

の証拠

3.8.2.1.8 区分1および2への分類を支持しないと考えられる影響 分類を正当化しないと考えられる影響があることが認められている。ヒトまたは実験動物におけるこ

のような影響の実例を以下に示す:

(a) 毒性学的にはいくらかの重要性をもつかもしれないが、それだけでは「重大な」毒性を示

すものではない臨床所見、または体重増加量、摂餌量または摂水量のわずかな変化;

(b) 臨床生化学的検査、血液学的検査または尿検査の項目における軽度の変化または一時的な

影響で、このような変化または影響に疑いがある場合、または毒性学的意義がほとんどない

場合

(c) 臓器機能障害の証拠がない臓器重量の変化;

(d) 毒性学的に重要と考えられない適応反応;

(e) 物質が誘発する種特異的な毒性作用メカニズムで、合理的な確実性を持ってヒトの健康と

の関連性を持たないことが実証された場合は、分類を正当化すべきではない

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3.8.2.1.9 実験動物を用いて実施した試験で得られた結果に基づく区分1および2への分類を補助するガイダンス値 3.8.2.1.9.1 物質を分類すべきであるか否か、また、どのランク(区分 1 か、区分 2 か)に分類するかについての決定を下すことを助ける目的で、重大な健康影響を生じることが認められた用量/濃度「ガイダンス値」を示した。そのようなガイダンス値を提案する主要な論拠は、すべての化学品は潜在的に有毒であり、それ以上ではある程度の毒性影響が認められる妥当な用量/濃度があるはずだからである。 3.8.2.1.9.2 したがって、動物試験においては、分類を示す重大な毒性影響が認められた場合、提案されたガイダンス値に照らして、これらの影響の認められた用量/濃度の考察をすることは、分類の必要性を評価する有益な情報を提供する(毒性影響は、有害性と用量/濃度の結果であるから)。 3.8.2.1.9.3 重大な非致死性の毒性影響を生じる単回投与ばく露について提案されたガイダンス値の範囲は、以下に示すように急性毒性試験に適用されるものである。

表 3.8.1 単回ばく露に関するガイダンス値の範囲 a

ガイダンス値の範囲: ばく露経路 単位 区分 1 区分 2 区分 3

経口(ラット) mg/kg 体重 C≦300 2000≧C>300

ガイダンス値は、適用しない b

経皮(ラットまたはウサギ) mg/kg 体重 C≦1000 2000≧C>1000

吸入(ラット)気体 ppmV/4 時間 C≦2500 20000≧C>2500

吸入(ラット)蒸気 mg/l/4 時間 C≦10 20≧C>10 吸入(ラット) 粉塵/ミスト/ヒューム mg/l/4 時間 C≦1.0 5.0≧C>1.0 a 上記の表 3.8.1 に記載したガイダンス値および範囲は、あくまでもガイダンスとしてのためのものである。すなわち、証拠の重み付けの一環として、分類の決定を助けるためのものであって、厳密な境界値として意図されたものではない。 b この分類は主としてヒトのデータに基づいているので、ガイダンス値は示されていない。動物のデータは、証拠の重み付け評価に含まれうる。 3.8.2.1.9.4. 特定の毒性プロフィールは、ガイダンス値以下の用量/濃度、例えば、2000 mg/kg 体重以下の経口投与で起こることがありうるが、影響の性質から分類をしない決定をする結果となる場合もある。逆に、特定の毒性プロフィールは、動物試験においてガイダンス値以上の用量/濃度、例えば、2000 mg/kg 体重以上の経口投与で認められ、そして、その他の情報源からの補足情報、例えば、他の単回投与試験またはヒトでの症例経験など結論を支持するものがある場合は、証拠の重み付けを考慮して分類することが賢明であろう。 3.8.2.1.10 その他の考慮事項 3.8.2.1.10.1 ある物質が動物データの使用だけによって特徴付けられている場合(新規物質では典型的な事例で、しかしまた、多くの既存物質にも当てはまる)、分類の過程では、証拠の重み付け手法への寄与要素の 1 つとして、用量/濃度ガイダンス値を参照することが含まれるであろう。 3.8.2.1.10.2 物質に対する単回ばく露に確かに起因するとされる特定標的臓器毒性影響が明確に実証されたヒトのデータが入手できた場合、当該物質は分類できる。投与量が推定でしかなくても、ヒトの陽性データは、動物データに対して優先される。したがって、認められた特定標的臓器毒性がヒトとの関連性がない、または重要でないと考えて物質を分類しなかった場合、もしその後に、特定標的臓器毒性影響を示すヒトでの発症データが入手できれば、当該物質を分類すべきである。 3.8.2.1.10.3 特定標的臓器毒性について試験をされていない物質でも、場合によっては、検証された構造活性相関データ、および共通の重要な代謝物を生成することのような他の重要な要因の考慮からの実質的な支援も合わせて、すでに分類されている構造類似体から専門家の判断に基づいた外挿を用いて分類することも可能であろう。 3.8.2.1.10.4 一部の規制システムでは、特別な健康および安全保護のために、飽和蒸気濃度を追加要因として利用してもよいと認められている。

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3.8.2.2 区分3の物質 3.8.2.2.1 気道刺激性の基準 区分3としての気道刺激性の基準は以下の通りである。

(a) 咳、痛み、息詰まり、呼吸困難等の症状で機能を阻害する(局所的な赤化、浮腫、かゆみあ

るいは痛みによって特徴付けられる)ものが気道刺激性に含まれる。この評価は、主として

ヒトのデータに基づくと認められている。

(b) 主観的なヒトの観察は、明確な気道刺激性(RTI)の客観的な測定により支持されうる。(例:

電気生理学的反応、鼻腔または気管支肺胞洗浄液での炎症に関する生物学的指標)

(c) ヒトにおいて観察された症状は、他に見られない特有の反応または敏感な気道を持った個人に

おいてのみ誘発された反応であることより、むしろばく露された個体群において生じる典型

的な症状でもあるべきである。「刺激性」という単なる漠然とした報告については、この用語

は、この分類のエンドポイントの範囲外にある臭い、不愉快な味、くすぐったい感じや乾燥

といった感覚を含む広範な感覚を表現するために一般に使用されるので除外するべきである。

(d) 明確に気道刺激性を扱う検証された動物試験は現在存在しないが、有益な情報は、単回及び反

復吸入毒性試験から得ることができる。例えば、動物試験は、毒性の症候(呼吸困難、鼻炎等)

及び可逆的な組織病理(充血、浮腫、微少な炎症、肥厚した粘膜層)について有益な情報を提

供することができ、上記で述べた特徴的な症候を反映しうる。このような動物実験は証拠の重

み付けに使用できるであろう。

(e) この特別な分類は、呼吸器系を含むより重篤な臓器への影響は観察されない場合にのみ生じる

であろう。 3.8.2.2.2 麻酔作用の判定基準 区分3としての麻酔作用の判定基準は以下の通りである。

(a) 眠気、うとうと感、敏捷性の減少、反射の消失、協調の欠如およびめまいといったヒトにお

ける麻酔作用を含む中枢神経系の抑制を含む。これらの影響は、ひどい頭痛または吐き気と

しても現れ、判断力低下、めまい、過敏症、倦怠感、記憶機能障害、知覚や協調の欠如、反

応時間(の延長)や嗜眠に到ることもある。

(b) 動物試験において観察される麻酔作用は、嗜眠、協調・立ち直り反射の欠如、昏睡、運動失

調を含む。これらの影響が本質的に一時的なものでないならば、区分1また2に分類される

と考えるべきである。 3.8.3 混合物の分類基準

3.8.3.1 混合物は、物質に対するものと同じ判定基準、または以下に述べる判定基準を用いて分類され

る。物質と同じように、混合物は、単回ばく露、反復ばく露、またはその双方によって、特定標的臓器

毒性について分類される。

3.8.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類

物質に関する判定基準で述べたように、混合物についてヒトの経験または適切な実験動物での試験か

ら信頼できる質の良い証拠が入手された場合、当該混合物はこのデータの証拠の重みの評価によって分

類できる。混合物に関するデータを評価する際には、用量、試験期間、観察、または分析が、結論を不

確定にすることのないように注意を払うべきである。

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3.8.3.3 混合物そのものについてデータが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則(Bridging principles)

3.8.3.3.1 混合物そのものは特定標的臓器毒性有害性を決定する試験がなされていないが、当該混合物

の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分なデ

ータがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによって、

分類プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な限り

最大限に利用できるようになる。

3.8.3.3.2 希釈 試験された混合物が、毒性の最も低い成分と同等またはそれ以下の毒性分類に属する希釈剤で希釈さ

れ、希釈剤が他の成分の毒性に影響を与えないと予想されれば、新しい希釈された混合物は、試験され

た元の混合物と同等であると分類してもよい。

3.8.3.3.3 製造バッチ

混合物の試験された製造バッチの毒性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産された同

じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と実質的に同等とみなすことができる。ただし、試験され

ていないバッチの毒性が変化するような有意な変動があると考えられる理由がある場合はこの限りでは

ない。このような場合、新しい分類が必要である。

3.8.3.3.4 毒性の高い混合物の濃縮 区分1の試験された混合物で、毒性成分の濃度が増加する場合には、結果として濃縮された混合物は

追加試験なしで区分1に分類すべきである。

3.8.3.3.5 1つの有害性区分内の内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ有害性区分にある。混合

物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成分の濃度が混合物

A と B の中間である場合、混合物 C は、A および B と同じ有害性区分であると推定される。 3.8.3.3.6 本質的に類似した混合物

次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。

(c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

(d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等である、すなわち、AとCは同じ有

害性区分に属し、かつ、B の毒性に影響を与えることは予想されない。 混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。 3.8.3.3.7 エアゾール エアゾール形態の混合物は、添加された噴射剤が噴霧の際、混合物の毒性に影響しないという条件下

では、経口および経皮毒性について試験された非エアロゾル形態の混合物の分類と同じ有害性区分に分

類してよい。エアゾール化された混合物の吸入毒性に関する分類は、別個に考えるべきである。

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3.8.3.4 混合物の全成分について、または一部の成分だけについてデータが入手できる場合の混合物の

分類 3.8.3.4.1 当該混合物それ自体について信頼できる証拠または試験データがなく、つなぎの原則を用いて分類できない場合には、混合物の分類は成分物質の分類に基づいて行われる。この場合、混合物の少なくとも 1 つの成分が区分1または区分2特定標的臓器毒性物質として分類され、そして区分1または区分2それぞれについて以下の表 3.8.2 に示されるカットオフ値/濃度限界値以上で存在する場合、その混合物は、単回投与、反復投与、または双方について特定標的臓器毒性物質(特定の臓器指定)として分類される。

表 3.8.2 混合物の分類の分類基準となる特定標的臓器毒性物質として 分類された混合物成分の区分1および2のカットオフ値/濃度限界値 a

成分の分類 混合物の分類基準となるカットオフ値/濃度限界:

区分 1 区分 2 区分1 標的臓器毒性物質

≧1.0%(注記 1) 1.0%≦成分<10%(注記 3)

≧10%(注記 2) 区分2 標的臓器毒性物質

- ≧1.0%(注記 4) ≧10%(注記 5)

a この妥協の産物である分類方法は現行の危険有害性の情報伝達における相違を考慮して作成された。影響を受ける混合物の数が少なく、相違はラベル表示に限られ、さらなる調和により状況が良くなることが期待される。 注記 1:区分 1 の標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場合は、すべての規制所管官庁は、製品の SDS に情報の記載を要求することになろう。しかし、ラベルへの警告表示は任意となろう。ある規制所管官庁は、成分が 1.0%と 10%の間で混合物中に存在する場合に表示を選択し、他の所管官庁は通常この場合に表示を要求しないことになろう。 注記 2:区分 1 の標的臓器毒性物質が、10%以上の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、一般に SDS と表示の両方が対象となろう。 注記 3:区分 1 の標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、ある規制所管官庁は、この混合物を区分 2 の標的臓器毒性物質として分類するのに対して、他の所管官庁はそうしないことになろう。 注記 4:区分 2 の標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、すべての規制所管官庁は、製品の SDS に情報の記載を要求することになろう。しかし、ラベル表示は、任意となろう。ある規制所管官庁は、その成分が 1.0%と 10%の間で混合物中に存在する場合に表示を選択し、他の所管官庁は通常、この場合に表示を要求しないことになろう。 注記 5:区分 2 の特定標的臓器毒性物質が、10%以上の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、一般に SDS と表示の両方が対象となろう。 3.8.3.4.2 これらのカットオフ値およびその結果として生じる分類は、単回および反復投与標的臓器毒性物質の両方に同等にそして適切に適用されるべきである。 3.8.3.4.3 混合物は、単回および反復投与毒性のいずれかまたは両方について、独立して分類されるべきである。 3.8.3.4.4 複数の臓器系に影響を与える毒性物質が組合せて使用される場合は、増強作用または相乗作用を考慮するように注意を払うべきである。なぜなら、一部の物質は、混合物中の他の成分がその毒性影響を増強することが知られている場合、<1%の濃度で標的臓器毒性を引き起こす可能性があるからである。 3.8.3.4.5 区分3の成分を含む混合物の毒性を外挿する際には、注意を払うべきである。20%のカットオフ値が提案されてきた。しかしながら、区分3の成分によっては、このカットオフ値がさらに大きくなったり小さくなったりすることがあること、気道刺激性の影響はある濃度以下では生じないが、麻酔作用等他の影響はこの 20%の値以下でも生じうるということを認識するべきである。専門家の判断が行われるべきである。気道刺激性と麻酔作用は 3.8.2.2 に示された判定基準にしたがって別々に評価される。これらの有害性について分類するときは、影響が相加的でないという証拠がない限り、それぞれの成分の寄与について相加的に考えるべきである。

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3.8.3.4.6 区分3に相加的アプローチが使われる場合、混合物の「関連する成分」とは、≥1% (固体、

液体、粉じん、ミスト及び蒸気の場合の場合 w/w 、ガスの場合 v/v)の濃度で存在するものである。た

だし、気道刺激性または麻酔作用に関して混合物を分類するとき、<1% の濃度で存在する成分が関連し

ていると疑われる理由がある場合を除く。 3.8.4 危険有害性情報の伝達 3.8.4.1 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可し

た場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 3.8.3 単回ばく露による特定標的臓器毒性のラベル要素

区分 1 区分 2 区分 3

シンボル 健康有害性 健康有害性 感嘆符

注意喚起語 危険 警告 警告

危険有害性情報 臓器の障害

(もし判れば影響を受け

るすべての臓器を記載)

(他の経路からのばく露

が有害でないことが決定

的に証明されている場

合、有害なばく露経路を

記載)

臓器の障害のおそれ

(もし判れば影響を受け

るすべての臓器を記載)

(他の経路からのばく露

が有害でないことが決定

的に証明されている場

合、有害なばく露経路を

記載)

呼吸器への刺激のおそれ

または

眠気またはめまいのおそれ

3.8.5 単回ばく露による特定標的臓器毒性の判定論理

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。

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3.8.5.1 判定論理 3.8.1

――――――――――――――――――――――

1 区分 3 への分類は、区分 1 または区分 2(一時的でないさらに過酷な気道への影響または麻酔作用に基づく)への分類が確実にない場合のみ、行われる。3.8.2.2.1(e)(気道への影響)および 3.8.2.2.2(b)(麻酔作用)を参照。

物質: この物質について、単回ばく露による特定標的臓器毒性を評価する

データおよび/または情報があるか?

No 混合物: 混合物そのものまたはその成分について、単回

ばく露による特定標的臓器毒性を評価するデータ/情報が

あるか?

Yes

単回ばく露によって、 (a) 物質あるいは混合物は人に重大な毒性を与えうるか? または (b) 実験動物での試験の証拠を基に、ヒトに重大な毒性を与

える可能性があると考えられるか? 判定基準およびガイダンス値については 3.8.2 参照。判定基準の適

用に当っては、証拠の重み付け手法において専門家の判断が必要。

No

Yes

区分 2

警告

区分外

No

単回ばく露によって、 物質あるいは混合物は、実験動物での試験の証拠を基に、ヒト

の健康に有害である可能性があると考えられるか? 判定基準およびガイダンス値については 3.8.2 参照。判定基準の適

用に当っては、証拠の重み付け手法において専門家の判断が必要。

Yes

No 分類できない

分類できない

区分 1

危険

混合物そのものについて、単回ばく露による特定標的臓器

毒性を評価するデータ/情報があるか?

Yes

Yes

No 判定論理 3.8.2 参照

Yes

区分 3

警告

単回ばく露によって、 物質あるいは混合物は、一時的な麻酔作用または気道刺激性またはその

両方を与える可能性があるか 1? 判断基準については 3.8.2 と 3.8.3 参照。判定基準の適用に当たっては、証拠

の重み付け手法において専門家の判断が必要。

No

Yes

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3.8.5.2 判定論理 3.8.2

23

2 本章の 3.8.2 ならびに 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」を参照のこと。 3 説明ならびに手引きについては 3.8.3.4 ならびに表 3.8.2 を参照のこと。

つなぎの原則 3.8.3.3 が適用できるか? Yes

No

混合物は特定標的臓器毒性区分1に分類される成分を以

下の濃度で含んでいるか?2: (a) ≧ 1.0% (b) ≧ 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.8.2 を参照の

こと 3。

Yes

Yes

No

混合物は特定標的臓器毒性区分1に分類される成分を1

種類以上、以下の濃度で含んでいるか?2: ≧ 1.0 かつ < 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.8.2 を参照の

こと 3。

Yes

混合物は特定標的臓器毒性区分2に分類される成分を1

種類以上、以下の濃度で含んでいるか?2: (a) ≧ 1.0% (b) ≧ 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.8.2 を参照の

こと 3。

区分 2

警告

No

No

区分外

区分 1

危険

適切な区分

に分類する

区分 2

警告

Yes

区分 3

警告

混合物は、特定標的臓器毒性区分3に分類される成分を1

種類以上、20%以上の濃度で含んでいるか? これらの混合物を分類する際には 3.8.3.4.5 の注意を参照

のこと。

No

No

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第 3.9 章

特定標的臓器毒性

反復ばく露 3.9.1 定義および一般事項 3.9.1.1 この章の目的は、反復ばく露によって起こる特異的な特定標的臓器毒性を生ずる物質および混

合物を分類する方法を規定することである。可逆的、不可逆的、あるいは急性または遅発性の機能を損

ないうるすべての重大な健康への影響がこれに含まれる。

3.9.1.2 この分類は、ある物質または混合物が特定標的臓器毒性があるか、およびそれにばく露したヒ

トに対して健康に有害な影響を及ぼす可能性があるかどうかを確認する。

3.9.1.3 分類は、ある物質または混合物に対する反復ばく露がヒトにおける一貫性のある、かつ特定で

きる毒性影響を与えたこと、あるいは実験動物において組織/臓器の機能または形態に影響する毒性学的

に有意な変化が示されたか、または生物の生化学的項目または血液学的項目に重大な変化が示され、こ

れらの変化がヒトの健康状態に関連性があるということについて信頼できる証拠が入手できるかに依存

する。この有害性クラスに関しては、ヒトのデータを優先的な証拠とすることが確認されている。

3.9.1.4 評価においては、単一の臓器または生物学的システムにおける重大な変化だけでなく、いくつ

かの臓器に対するそれほど重度でない一般的変化も考慮すべきである。

3.9.1.5 特定標的臓器毒性は、ヒトに関連するいずれの経路によっても、すなわち主として経口、経皮

または吸入によって、起こり得る。

3.9.1.6 GHS における単回ばく露での非致死性毒性の分類については特定標的臓器毒性- 単回ばく露

(第 3.8 章)に述べられており、したがって本章からは除外されている。急性毒性、眼に対する重篤な

損傷性/眼刺激性、皮膚腐食性/刺激性、皮膚および呼吸器の感作性、発がん性、変異原性、生殖毒性な

どその他の個々の毒性については GHS で別個に扱われているため、本章には含まれない。

3.9.2 物質の分類基準 3.9.2.1 物質は、影響を生ずるばく露期間および用量/濃度を考慮に入れて勧告されたガイダンス値

(3.9.2.9 参照)の使用を含む、入手されたすべての証拠の重みに基づいて専門家の行った判断によって、

特定標的臓器毒性物質として分類される。そして、観察された影響の性質および重度によって2種の区

分のいずれかに分類される。

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図 3.9.1 特定標的臓器毒性(反復ばく露)のための区分

区分1:ヒトに重大な毒性を示した物質、または実験動物での試験の証拠に基づいて反復ばく露

によってヒトに重大な毒性を示す可能性があると考えられる物質

物質を区分1に分類するのは、次に基づいて行う: (a) ヒトの症例または疫学的研究からの信頼でき、かつ質の良い証拠、または、 (b) 実験動物での適切な試験において、一般的に低いばく露濃度で、ヒトの健康に関

連のある重大な、または強い毒性影響を生じたという所見。証拠評価の重み付け

の一環として使用すべき用量/濃度のガイダンス値は後述する(3.9.2.9 参照)。

区分2:動物実験の証拠に基づき反復ばく露によってヒトの健康に有害である可能性があると考

えられる物質

物質を区分2に分類するには、実験動物での適切な試験において、一般的に中等度の

ばく露濃度で、ヒトの健康に関連のある重大な毒性影響を生じたという所見に基づい

て行う。分類に役立つ用量/濃度のガイダンス値は後述する(3.9.2.9 参照)。 例外的なケースにおいてヒトでの証拠を、物質を区分2に分類するために使用できる

(3.9.2.6 参照)。

注記:いずれの区分においても、分類された物質によって最初に影響を受けた特定標的臓器/器官が明示されるか、または一般的な全身毒性物質であることが明示される。毒性の主標的臓器を

決定し(例えば肝毒性物質、神経毒性物質)、その目的にそって分類するよう努力すべきである。

そのデータを注意深く評価し、できる限り二次的影響を含めないようにすべきである。例えば、

肝毒性物質は、神経または消化器官に二次的影響を起こすことがある。

3.9.2.2 分類した物質が損傷を起こしたばく露経路を明示すべきである。

3.9.2.3 分類は、後述の手引きを含む、入手されたすべての証拠の重み付けに基づいて、専門家の判断

によって決定する。

3.9.2.4 ヒトでの疾患の発生情報、疫学情報および実験動物を用いて実施した試験結果を含む、すべて

のデータについての証拠の重み付けは、分類に役立つ特定標的臓器毒性影響を実証するために使用され

る。これは長年にわたって集められた大量の産業毒性学データを利用することになる。評価は、校閲さ

れ公表された研究論文および規制所管官庁が受理し得る追加データを含む、すべての既存データに基づ

くべきである。

3.9.2.5 特定標的臓器毒性を評価するために必要な情報は、ヒトにおける反復ばく露、例えば、家庭、

作業場あるいは環境中でのばく露、または実験動物を用いて実施した試験のいずれからも得られる。こ

の情報を提供するラットまたはマウスにおける標準的動物試験は 28 日間、90 日間または生涯試験(2

年間まで)であり、標的組織/臓器に対する毒性影響を確認するための血液学的検査、臨床化学的検査、

詳細な肉眼的および病理組織学的検査を含んでいる。その他の動物種を用いて実施された反復投与試験

のデータも利用し得る。また、その他の長期ばく露試験、例えば、発がん性試験、神経毒性試験または

生殖毒性試験も、分類評価のために使用する特定標的臓器毒性の証拠を提供するかもしれない。 3.9.2.6 例外的な場合に、特定標的臓器毒性のヒトでの証拠を有するある種の物質を、専門家の判断に

基づいて、区分2に分類するのが適切な場合がある:それは(a)ヒトでの証拠の重み付けが区分1への分

類を正当化することが十分には確信できない場合、または(b)影響の性質および重度に基づく場合である。

ヒトにおける用量/濃度レベルは、分類において考慮すべきではなく、動物試験で入手された証拠が、区

分2への分類と矛盾しないことである。換言すれば、物質について区分1への分類を保証する動物試験

データが入手されている場合、その物質は区分1に分類するべきである。

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3.9.2.7 分類を支持すると考えられる影響

3.9.2.7.1 一貫して特定できる毒性作用を有する物質に反復ばく露したという証拠がある場合には、分

類を支持する。

3.9.2.7.2 ヒトでの経験/疾患の発生から得られる証拠は、通常健康被害の報告に限定され、ばく露条件

については不確実なことがしばしばであり、実験動物で適切に実施された試験から得られるような科学

的な詳細情報は提供されないと理解されている。

3.9.2.7.3 実験動物での適切な試験からの証拠は、臨床所見、血液学検査、臨床化学検査、肉眼および

顕微鏡による病理組織学的検査の形で、はるかに詳細な内容を提供することができ、そして、これは生

命への危険には至らないが機能障害を起こすかもしれない有害性を、しばしば明らかにすることができ

る。したがって、入手されたすべての証拠およびヒトの健康との関連性は、分類の過程において考慮を

払う必要がある。ヒトまたは実験動物における関連のある毒性影響の例を、以下に示す。

(a) 反復あるいは長期ばく露に起因する罹患または死亡。比較的低い用量/濃度においても、

当該物質またはその代謝物の生物蓄積によって、あるいは反復ばく露によって解毒過程

が機能しなくなることによって、反復ばく露で罹患または死亡に至る可能性がある;

(b) 中枢神経系抑制、および特定の感覚器(例えば視覚、聴覚および嗅覚)に及ぼす影響を

含む、中枢または末梢神経系あるいはその他の器官系における重大な機能変化;

(c) 臨床生化学的検査、血液学的検査または尿検査の項目における、一貫した重大で有害な変

化;

(d) 剖検時に観察され、またはその後の病理組織学的検査時に認められ、または確認された、

重大な臓器損傷;

(e) 再生能力を有する生体臓器における多発性またはびまん性壊死、線維症または肉芽腫形

成;

(f) 潜在的に可逆的であるが、臓器の著しい機能障害の明確な証拠を提供する形態学的変化

(例えば、肝臓における重度の脂肪変化);

(g) 再生が不可能な生体臓器における明白な細胞死の証拠(細胞の退化および細胞数の減少

を含む);

3.9.2.8 分類を支持しないと考えられる影響: 分類を正当化しないと考えられている影響があることが認められている。ヒトまたは実験動物におけ

るこのような影響の例を、以下に示す;

(a) 毒性学的にはいくらか重要かもしれないが、それだけでは「有意な」毒性を示すもので

はない臨床所見、または体重増加量、摂餌量または摂水量のわずかな変化;

(b) 臨床生化学的検査、血液学的検査または尿検査の項目における軽度の変化または一時的

な影響で、このような変化または影響に疑いがある場合、または毒性学的意義がほとん

どない場合;

(c) 臓器機能障害の証拠のない臓器重量の変化;

(d) 毒性学的に重要と考えられない適応反応;

(e) 物質が誘発する種に特異な毒性メカニズムで、合理的確実性をもってヒトの健康との関

係性を持たないことが実証されたものは分類を正当化すべきでない。

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3.9.2.9 実験動物を用いて実施した試験で得られた結果に基づいた分類を補助するガイダンス値 3.9.2.9.1 実験動物を使って行われた研究において、実験のばく露時間および用量/濃度を参照すること

なく影響の観察にのみ依存することは、「すべての物質は潜在的に毒性を有し、毒性は用量/濃度および

ばく露時間の関数となる」という毒性学の基本概念の 1 つを無視していることになる。実験動物を使っ

た研究の大半においては、試験指針には上限値の用量が使われている。 3.9.2.9.2 物質を分類すべきであるか否か、また、どのランク(区分1か、区分2か)に分類するかに

ついての決定を下すことを助ける目的で、重大な健康影響を生じることが示されたことのある用量/濃度

を考察するための用量/濃度「ガイダンス値」を表 3.9.1 に掲げる。そのようなガイダンス値を提案する

主要な論拠は、すべての化学物質は潜在的に有毒であり、それ以上ではある程度の毒性影響が確認され

る妥当な用量/濃度が存在するに違いないからである。また、動物を用いて実施される反復投与試験は、

試験目的を最も効果的にするために、使用した最高用量で毒性を生ずるよう設計され、ほとんどの試験

では、少なくとも最高用量ではいくつかの毒性影響を示す。したがって、決定すべきことは、どのよう

な作用が生ずるかだけでなく、どのような用量/濃度で作用が生じるか、そして、それをヒトに対してど

のように関連づけるかである。

3.9.2.9.3 したがって、動物試験において、分類すべきかもしれない重大な毒性影響が認められた場合、

提案されたガイダンス値と比較して、試験したばく露期間およびこれらの影響が認められた用量/濃度を

考察することは、分類の必要性を評価するのを助けるための有益な情報を提供する(毒性影響は有害性

と、ばく露期間および用量/濃度との結果であるから)。

3.9.2.9.4 ガイダンス値またはそれ以下の用量/濃度で重大な毒性影響が観察されたかを参照すること

で、分類の決定が影響されることがある。

3.9.2.9.5 提案されたガイダンス値は、基本的にはラットを用いて実施した標準の 90 日間毒性試験で認

められた影響に基づいている。このガイダンス値は、「有効用量はばく露濃度およびばく露時間に正比例

する」という吸入についてのハーバー規則に類似した用量/ばく露時間外挿を用いて、より長期の、また

はより短期のばく露毒性試験に相当するガイダンス値を外挿する基礎として使用されうる。その評価は

ケースバイケースを原則に行うべきである。例えば、28 日間の試験については、下記のガイダンス値を

3倍して使用する。

3.9.2.9.6 したがって区分 1 への分類に当たっては、実験動物を使った 90 日間の反復投与試験におい

て、表 3.9.1 に示すガイダンス値(案)またはこれを下回る値で観察された重大な毒性影響が、分類を

正当化するものとなる。

表 3.9.1 区分 1 への分類を助けるガイダンス値 ばく露経路 単位 ガイダンス値(用量/濃度)

経口(ラット) mg/kg 体重/日 ≦10

経皮(ラットまたはウサギ) mg/kg 体重/日 ≦20

吸入(ラット)気体 ppmV/6 時間/日 ≦50

吸入(ラット)蒸気 mg/リットル/6 時間/日 ≦0.2

吸入(ラット)粉塵/ミスト/ヒューム mg/リットル/6 時間/日 ≦0.02 注記:「bw」は「体重」、「h」は「時間」、「d」は「日」を表す。

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3.9.2.9.7 区分2への分類については、実験動物を用いて実施した 90 日間反復投与試験で観察され、かつ表 3.9.2 に示すガイダンス値(案)の範囲内で起こることが認められた有意な毒性影響が、分類を正当化するものとなる。

表 3.9.2 区分 2 への分類を助けるガイダンス値 ばく露経路 単位 ガイダンス値範囲(用量/濃度)

経口(ラット) mg/kg 体重/日 10<C≦100

経皮(ラットまたはウサギ) mg/kg 体重/日 20<C≦200

吸入(ラット)気体 ppmV/6 時間/日 50<C≦250

吸入(ラット)蒸気 mg/リットル/6 時間/日 0.2<C≦1.0

吸入(ラット)粉塵/ミスト/ヒューム mg/リットル/6 時間/日 0.02<C≦0.2 注記:「bw」は「体重」、「h」は「時間」、「d」は「日」を表す。

3.9.2.9.8 3.9.2.9.6 および 3.9.2.9.7 に記載したガイダンス値および範囲は、あくまでもガイダンスとしてのためのものである。すなわち、証拠の重み付けの一環として、分類の決定を助けるためのものであって、厳密な境界値として意図されたものではない。 3.9.2.9.9 反復投与動物試験においてガイダンス値以下の用量/濃度、例えば 100mg/kg 体重/日以下の経口投与で、ある毒性が観察されても、この影響を受けやすいことが知られている特定系統の雄ラットだけに認められた腎毒性のように、影響の性質によっては分類しないと決定することもありうる。逆に、特定の毒性プロフィールが、動物試験においてガイダンス値以上の用量/濃度、例えば 100mg/kg 体重/日以上の経口投与で起こることがあり、そして他の情報源からの補足情報、例えば、他の長期投与試験またはヒトでの症例経験などその結論を支持するものがある場合は証拠の重み付けを考慮して、分類することが賢明であろう。 3.9.2.10 その他の考慮事項 3.9.2.10.1 物質が動物データのみによって特徴付けられる場合(新規物質に典型的な事例であるが、多くの既存物質も同様に)、分類プロセスには、証拠の重み付け手法への寄与要素の1つとして、用量/濃度ガイダンス値を参照することが含まれるであろう。 3.9.2.10.2 物質への反復または長期ばく露に確実に起因するとされる特定標的臓器毒性影響を示す、適正に実証されたヒトのデータが入手できた場合、その物質は分類できる。投与量が推定でしかなくても、ヒトの陽性データは動物データに優先する。したがって、ある物質が、動物試験のために提案された用量/濃度ガイダンス値、またはそれ以下の投与量で特定標的臓器毒性が認められず、分類されなかった場合、もしもその後に特定標的臓器毒性影響を示すヒトでの疾患の発生データが入手されれば、その物質を分類すべきである。 3.9.2.10.3 特定標的臓器毒性について試験をされていない物質でも、場合によっては、検証された構造活性相関データ、および共通の重要な代謝物を生成する等他の重要な要因の考慮からの実質的な支援も合わせて、すでに分類された構造類似体から専門家の判断に基づいて外挿して、分類することも可能であろう。 3.9.2.10.4 規制システムによっては、特別な健康および安全保護のために飽和蒸気濃度を追加要因として利用してもよいと認められている。 3.9.3 混合物の分類基準 3.9.3.1 混合物は、物質に対するものと同じ判定基準、または以下に述べる基準を用いて分類される。物質と同じように、混合物は、単回ばく露、反復ばく露、またはその双方によって、特定標的臓器毒性について分類される。

3.9.3.2 混合物そのものについて試験データが入手できる場合の混合物の分類

物質に関する判定基準で述べたように、混合物についてヒトでの経験または適切な実験動物での試験から信頼できる質の良い証拠が入手された場合、混合物はこのデータの証拠の重み付けによって分類できる。混合物に関するデータを評価する際には、用量、ばく露期間、観察、または分析が、結論を不確かにさせることのないように注意を払うべきである。

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3.9.3.3 混合物そのものについて試験データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原則

(Bridging principle) 3.9.3.3.1 混合物そのものは、特定標的臓器毒性を決定するために試験が行われていないが、当該混合

物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十分な

データがある場合、これらのデータは以下の合意されたつなぎの原則に従って使用される。これによっ

て、分類プロセスに動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に入手されたデータを可能な

限り最大限に用いることができる。

3.9.3.3.2 希釈

試験された混合物が、毒性の最も低い成分と同等以下の毒性分類に属する希釈剤で希釈され、希釈剤

が他の成分の毒性に影響を与えないことが予想されれば、新しい希釈された混合物は、試験された元の

混合物と同等であると分類してもよい。

3.9.3.3.3 製造バッチ

混合物の試験された製造バッチの毒性は、同じ製造業者によって、またはその管理下で生産された同

じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と実質的に同等とみなすことができる。ただし、試験され

ていないバッチの毒性が変化するような有意な変動があると考えられる理由がある場合はこの限りでは

ない。このような場合、新しい分類が必要である。

3.9.3.3.4 毒性の高い混合物の濃縮

試験された混合物が区分 1 に分類され、毒性成分の濃度が増加する場合には、結果として濃縮された

混合物は追加試験なしで区分 1 に分類すべきである。

3.9.3.3.5 1 つの有害性区分内の内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ有害性区分にある。試験

されていない混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成

分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は A および B と同じ有害性区分にあるとする。

3.9.3.3.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B

(ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。 (d) A と C の毒性に関するデータは利用でき、実質的に同等である、すなわち、A と C は同じ有

害性区分に属し、かつ、B の毒性に影響を与えることは予想されない。

混合物(i)または(ii)が既に試験によって分類されている場合には、他方の混合物は同じ有害性区分に

分類することができる。

3.9.3.3.7 エアゾール エアゾール形態の混合物は、添加された噴射剤が噴霧時に混合物の毒性に影響しないという条件下で

は、経口および経皮毒性について試験された非エアゾール形態の混合物と同じ有害性区分に分類してよ

い。エアゾール化された混合物の吸入毒性に関する分類は、個別に考慮されるべきである。

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3.9.3.4 混合物の全成分について、または一部の成分だけについてデータが入手できた場合の混合物の

分類 3.9.3.4.1 当該混合物自身について信頼できる証拠または試験データがなく、つなぎの原則を用いて分

類できない場合には、混合物の分類は成分物質の分類に基づいて行われる。この場合、少なくとも1つ

の成分が特定標的臓器毒性物質について区分1または区分2として分類され、そして区分1や区分2そ

れぞれについて以下の表 3.9.3 に示される適切なカットオフ値/濃度限界またはそれ以上の濃度で存在す

る場合、その混合物は、単回ばく露、反復ばく露、または両方について、特定標的臓器毒性物質(指定

された特定の器官臓器の)として分類される。

表 3.9.3 混合物の分類のための、特定標的臓器毒性物質として分類された 混合物の成分のカットオフ値/濃度限界 a

成分の分類: 混合物の分類のためのカットオフ値/濃度限界:

区分 1 区分 2 区分 1 標的臓器毒性物質

≧1.0%(注 1) 1.0%≦成分<10%(注 3) ≧10%(注 2) 1.0%≦成分<10%(注 3)

区分 2 標的臓器毒性物質

≧1.0%(注 4) ≧10%(注 5)

a この妥協の産物である分類方法は現行の危険有害性の情報伝達における相違を考慮して作成された。影響を受ける混合物の数が少なく、相違はラベル表示に限られ、さらなる調和により状況が良くなることが期待される。

注記1:区分 1 の特定標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場 合は、すべての規制所管官庁は、製品の SDS に情報の記載を要求することになろう。しかし、ラベル

への警告表示は任意となろう。ある規制所管官庁は、成分が 1.0%と 10%の間で混合物中に存在する場

合に表示を選択し、他の所管官庁は通常この場合にラベル表示を要求しないことになろう。 注記 2:区分 1 の特定標的臓器毒性物質が、10%以上の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、

一般に SDS と表示の両方が対象となろう。 注記 3:区分 1 の特定標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場

合には、ある規制所管官庁は、この混合物を区分 2 の標的臓器毒性物質として分類するのに対して、他

の所管官庁はそうしないことになろう。 注記 4:区分 2 の特定標的臓器毒性物質が 1.0%と 10%の間の濃度で成分として混合物中に存在する場

合には、すべての規制所管官庁は、製品の SDS に情報の記載を要求することになろう。しかし、ラベ

ル表示は、任意となろう。ある規制所管官庁は、その成分が 1.0%と 10%の間で混合物中に存在する場

合に表示を選択し、他の所管官庁は通常、この場合にラベル表示を要求しないことになろう。 注記 5:区分 2 の特定標的臓器毒性物質が、10%以上の濃度で成分として混合物中に存在する場合には、

一般に SDS と表示の両方が対象となろう。 3.9.3.4.2 これらのカットオフ値およびその結果として生じる分類は、単回および反復投与標的臓器毒

性物質の両方に同等にそして適切に適用されるべきである。 3.9.3.4.3 混合物は、単回および反復投与毒性のいずれかまたは両方について、独立して分類されるべ

きである。 3.9.3.4.4 複数の臓器系に影響を与える毒性物質が組合せて使用される場合は、増強作用または相乗作

用を考慮するように注意を払うべきである。なぜなら、一部の物質は、混合物中の他の成分がその毒性

影響を増強することが知られている場合、1%未満の濃度で特定標的臓器毒性を引き起こす可能性がある

からである。

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3.9.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 3.9.4 反復ばく露による特定標的臓器毒性のラベル要素

区分 1 区分 2

シンボル 健康有害性 健康有害性

注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 長期にわたる、または反復ばく露によ

る臓器の障害(判っていれば影響を受

けるすべての臓器名を記載)(他の経

路からのばく露が有害でないことが

決定的に証明されている場合、有害な

ばく露経路を記載)

長期にわたる、または反復ばく露によ

る臓器の障害のおそれ(判っていれば

影響を受けるすべての臓器名を記載)

(他の経路からのばく露が有害でな

いことが決定的に証明されている場

合、有害なばく露経路を記載)

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3.9.5 反復ばく露による特定標的臓器毒性の判定論理

以下に示す判定論理は、調和分類システムには含まれないが、追加の手引きとして、ここで述べる。

分類の責任者に対し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解す

ることを強く勧める。

3.9.5.1 判定論理 3.9.1

(次ページに続く)

1 本章の 3.9.2、表 3.9.1 および 3.9.2、ならびに 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」を参照のこと。

物質: この物質について、反復ばく露による特定標的臓器毒性を評価

するデータおよび/または情報があるか?

No 混合物: 混合物そのものまたはその成分について、反復ばく

露による特定標的臓器毒性を評価するデータ/情報があるか?

Yes

反復ばく露によって、 (a) 物質あるいは混合物はヒトに重大な毒性を与えうるか?

または (b) 実験動物での試験の証拠を基に、ヒトに重大な毒性を与える可 能性があると考えられるか?

判定基準およびガイダンス値については 3.9.2 参照 1。判定基準の適用に

当っては、証拠の重み付け手法において専門家の判断が必要。

No

Yes

区分 2

警告

区分外 No

反復ばく露によって、 物質あるいは混合物は、実験動物での試験の証拠を基に、ヒトの健

康に有害である可能性があると考えられるか? 判定基準およびガイダンス値については 3.9.2 参照 1。判定基準の適用に

当っては、証拠の重み付け手法において専門家の判断が必要。

Yes

No 分類できない

区分 1

危険

混合物そのものについて、反復ばく露による特定標的臓器毒性

を評価するデータ/情報があるか?

Yes

Yes

No 判定論理 3.9.2参照

分類できない

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3.9.5.2 判定論理 3.9.2

1 本章の 3.9.2、表 3.9.1 および 3.9.2、ならびに 1.3 章の 1.3.3.2「カットオフ値/濃度限界の使用」を参照のこと。 2 説明ならびに手引きについては 3.9.3.4 および 3.9.4 ならびに表 3.9.3 を参照のこと。

つなぎの原則(3.9.3.3 参照)が適用

できるか? Yes

No

混合物は特定標的臓器毒性区分1に分類される成分を1

種類以上、以下の濃度で含んでいるか?1: (a) ≧ 1.0% (b) ≧ 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.9.3 を参照の

こと 2。

Yes

Yes

No

混合物は特定標的臓器毒性区分1に分類される成分を1

種類以上、以下の濃度で含んでいるか?1: ≧ 1.0 かつ < 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.9.3 を参照の

こと 2。

区分 2

警告

Yes

混合物は特定標的臓器毒性区分2に分類される成分を1

種類以上、以下の濃度で含んでいるか?1: (a) ≧ 1.0% (b) ≧ 10%

カットオフ値/濃度限界の説明は本章の表 3.9.3 を参照の

こと 2。

区分 2

警告

No

No

区分外

区分 1

危険

適切な区分

に分類する

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第 3.10 章

吸引性呼吸器有害性 3.10.1 定義と一般的および特殊な問題 3.10.1.1 この章の目的は、ヒトに吸引性呼吸器有害性をもつ物質または混合物を分類する方法を示す

ことである。 3.10.1.2 誤嚥とは、液体または固体の化学品が口または鼻腔から直接、または嘔吐によって間接的に、

気管および下気道へ侵入することをいう。(訳者注:Aspiration を「誤嚥」、Aspiration Hazard を「吸

引性呼吸器有害性」と訳している) 3.10.1.3 吸引性呼吸器有害性は、誤嚥後に化学肺炎、種々の程度の肺損傷を引き起こす、あるいは死

亡のような重篤な急性の作用を引き起こす。 3.10.1.4 誤嚥は、原因物質が喉頭咽頭部分の上気道と上部消化官の岐路部分に入り込むと同時になさ

れる吸気により引き起こされる。 3.10.1.5 物質または混合物の誤嚥は、それを摂取した後に嘔吐した時も起こりうる。このことは、急

性毒性を有するため摂取後吐かせることを推奨している場合、表示に影響を及ぼすかもしれない。物質/混合物が誤嚥の危険性に分類される毒性も示す場合は、吐かせることについての推奨は修正する必要が

あるであろう。 3.10.1.6 特別な事項 3.10.1.6.1 化学品の誤嚥に関する医学文献レビューでは、ある炭化水素(石油留分)およびある種の塩

素化炭化水素は、ヒトに吸引性呼吸器有害性をもつことを明らかにした。一級アルコール、およびケト

ンは動物実験にのみ吸引性呼吸器有害性が示されている。 3.10.1.6.2 動物における吸引性呼吸器有害性を決定するための方法論は活用されているが、標準化され

たものはない。動物実験で陽性であるという証拠は、ヒトに対して、吸引性呼吸器有害性に分類される

毒性があるかもしれないという指針として役立つ程度である。吸引性呼吸器有害性に関する動物データ

を評価する際は、特別な配慮をしなければならない。 3.10.1.6.3 分類基準は動粘性率を参照している。以下に、粘性率と動粘性率の変換を示す。

粘性率 (mPa・s) ÷ 密度 (g/cm3) = 動粘性率 (mm2/s) 3.10.1.6.4 3.10.1.2 における吸引性呼吸器有害性の定義には呼吸器系への固体の侵入を含んでいるが、

区分 1 あるいは区分 2 に対する表 3.10.1 の(b)による分類は液体の物質及び混合物のみへの適用を意図

したものである。 3.10.1.6.5 エアゾール/ミスト製剤の分類 エアゾールおよびミスト製剤は通常、自己加圧式容器、引き金となる装置、ポンプなどで形成される

容器から噴霧される。これらの製剤の分類の鍵は、製剤が噴霧後に誤嚥されるほどに口内に溜まるかど

うかである。容器からのミストまたはエアゾールが微細であれば、口内には溜まらないかもしれないが、

製剤が(霧状ではなく)流れのようになって噴霧されれば、口内に溜まり誤嚥される可能性がある。通

常、引き金となる装置とポンプで形成される噴霧器によって噴霧されるミストは粗い粒子であるため、

口内に溜まり誤嚥される場合がある。ポンプ装置を取り外すことができ、直接内容物を飲み込むことが

可能な場合には、分類を考慮すべきである。

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3.10.2 物質の分類基準

表 3.10.1 :吸引性呼吸器有害性の区分

区分 判定基準 区分 1:ヒトへの吸引性

呼吸器有害性があると知

られている、またはヒト

への吸引性呼吸器有害性

があるとみなされる化学

区分 1 に分類される物質: (a) ヒトに関する信頼度が高く、かつ質の良い有効な証拠に基づ

く(注記1を参照);.または (b) 40℃で測定した動粘性率が 20.5 mm2/s以下の炭化水素の場

合。

区分 2:ヒトへの吸引性

呼吸器有害性があると推

測される化学品

40℃で測定した動粘性率が 14 mm2/s 以下で区分 1 に分類されない物

質であって、既存の動物実験、ならびに表面張力、水溶性、沸点およ

び揮発性を考慮した専門家の判断に基づく(注記 2 を参照)

注記 1:区分 1 に含まれる物質の例はある種の炭化水素であるテレビン油およびパイン油である。

注記 2:この点を考慮し、次の物質をこの区分に含める所管官庁もあると考えられる:3 以上 13 を超えない炭素原子で構成された一級のノルマルアルコール;イソブチルアルコールおよび 13 を超えない炭素原子で構成されたケトン。

3.10.3 混合物の分類基準 3.10.3.1 混合物そのものについてデータが利用できる場合の分類 混合物は、ヒトに関する信頼度が高く、かつ質の良い有効な証拠に基づき区分 1 に分類される。 3.10.3.2 混合物そのものについてデータが利用できない場合の混合物の分類:つなぎの原則(Bridging

Principles)

3.10.3.2.1 混合物そのものは吸引性呼吸器有害性を決定するための試験がなされていないが、当該混合

物の有害性を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物の両方に関して十

分なデータがある場合、これらのデータは以下のつなぎの原則に従って利用される。これによって、分

類プロセスで動物試験を追加する必要もなく、混合物の有害性判定に利用可能なデータを可能な限り最

大限に用いられるようになる。

3.10.3.2.2 希釈 試験された混合物が吸引性呼吸器有害性をもたない物質で希釈され、その物質が他の成分または混合

物の有害性に影響を与えないことが予想されれば、新しい希釈された混合物は、試験された元の混合物

と同等として分類してもよい。しかし、吸引性呼吸器有害性をもつ物質の濃度は 10%以下に下げるべき

ではない。 3.10.3.2.3 製造バッチ 混合物の試験された製造バッチの吸引性呼吸器有害性は、同じ製造業者によって、またはその管理下

で生産された同じ商品の試験されていない別のバッチの毒性と本質的に同等とみなすことができる。た

だし、吸引性呼吸器有害性が、粘性または濃度によりもたらされ、試験されていないバッチの有害性が

変化するような有意の変動があると考えられる理由がある場合はこの限りではない。このような場合に

は、新しい分類が必要である。 3.10.3.2.4 区分 1 の混合物の濃縮 試験された混合物が区分 1 に分類され、区分 1 である試験された混合物の成分の濃度が増加すれば、

結果として濃縮された混合物は、追加試験なしで区分 1 に分類するべきである。

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3.10.3.2.5 1つの有害性区分内での内挿

3 つの混合物(A、B および C)は同じ成分を持ち、A と B は試験され同じ有害性区分にある。試験

されていない混合物 C は混合物 A および B と同じ毒性学的に活性な成分を持ち、毒性学的に活性な成

分の濃度が混合物 A と B の中間である場合、混合物 C は A および B と同じ有害性区分にあるとする。 3.10.3.2.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A + B (ii) C + B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。

(c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。

(d) A と C の吸引毒性に関するデータは実質的に同等であり、すなわち A と C は同じ有

害性区分に属し、かつ、B の吸引毒性には影響を与えることは予想されない。 混合物(i)または(ii)が既に表 3.10.1 の判定基準によって分類されている場合には、他方の混合物は同

じ有害性区分に指定することができる。 3.10.3.3 混合物の全成分についてまたは一部の成分だけについてデータが利用できる場合の混合物の

分類 3.10.3.3.1 混合物の「関連する成分」は、≥ 1%の濃度で存在するものである。 3.10.3.3.2 区分 1 3.10.3.3.2.1 区分 1 の成分の濃度の合計が≥ 10%で、しかも 40°C における動粘性率が ≤ 20.5 mm2/s の時

に混合物は区分 1 と分類される。 3.10.3.3.2.2 混合物が 2 つ以上の相に明確に分離している場合、もしどの明確に分離している相においても、

区分 1 の成分の濃度の合計が≥ 10%で、しかも 40°C における動粘性率が ≤ 20.5 mm2/s の時には、混合物全

体としては区分 1 と分類される。 3.10.3.3.3 区分 2 3.10.3.3.3.1 区分 2 の成分の濃度の合計が≥ 10%で、しかも 40°C における動粘性率が ≤ 14 mm2/s の時に

混合物は区分 2 と分類される。

3.10.3.3.3.2 混合物をこの区分に分類する場合、表面張力、水溶解度、沸点、揮発性を検討する専門家判断

は不可欠であり、特に区分 2 の成分が水と混合されている場合にはそうである。 3.10.3.3.3.3 混合物が 2 つ以上の層に明確に分離している場合、もしどの明確に分離している層においても、

区分 2 の成分の濃度の合計が≥ 10%で、しかも 40°C における動粘性率が ≤ 14 mm2/s の時には、混合物全体

としては区分 2 と分類される。 3.10.4 危険有害性情報の伝達 3.10.4.1 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定

める。附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可し

た場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。下の表には、本章で述べられた判定基準に基づいて、吸引

性呼吸器有害性を引き起こすとされた、分類区分 1 と 2、物質および混合物について、ラベル要素を示

す。

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表 3.10.2 吸引性呼吸器有害性のラベル要素

区分 1 区分 2

シンボル 健康有害性 健康有害性

注意喚起語 危険 警告

危険有害性情報 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ

飲み込んで気道に侵入すると有害のおそれ

3.10.5 吸引性呼吸器有害性の判定論理 以下に示す判定は、GHS には含まれないが、追加の手引きとしてここに示す。分類の責任者に対し、

この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解することを強く勧める。 3.10.5.1 判定論理 3.10.1

(a) 例えば、ある種の炭化水素、テレピン油およびパイン油のように、ヒトに関して信頼度が高くかつ質の良い有効な証拠から、実際の経験があるか? または、

(b) 400Cで測定した場合の動粘性率が20.5mm2/s以下の炭化水素か?

物質: 当該物質に吸引性呼吸器有害性のデータがあるか?

Yes

Yes

No

No

混合物: 混合物そのもの、あるいはその成分に吸

引性呼吸器有害性のデータがあるか?

Yes

No

分類できない

混合物:ヒトに関して信頼度が高く、かつ質の良い

有効な証拠から、実際の経験に基づいて、混合物そ

のものが、吸引性呼吸器有害性を示すか? No

成分について、使用される

判定論理 3.10.2 参照

動物実験ならびに専門家の判定に基づき懸念される証拠はある

か? かつ40℃で測定した場合の動粘性率が14 mm2/s以下か?Yes

区分 1

危険

区分 2

警告

区分外

Yes

No

分類できない

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3.10.5.2 判定論理 3.10.2

当該混合物は、区分 1 に分類される物質を 10%以上含む

か? かつ 40℃で測定した場合の動粘性率が 20.5mm2/s以下であるか?(3.10.3.3.1 参照)

Yes

No

No

Yes

つなぎの原則は適用され

うるか?(3.10.3.2.1 から

3.10.3.2.5 参照)

No

Yes

適切な区分に 分類する

区分 1

危険

区分 2

警告

区分外

当該混合物は、区分 2 に分類される物質を 10%以上含む

か? かつ 40℃で測定した場合の動粘性率が 14mm2/s 以

下であるか?(3.10.3.3.2 参照)

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第 4 部

環境に対する有害性

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第 4.1 章

水生環境有害性

4.1.1 定義および一般事項

4.1.1.1 定義

急性水生毒性とは、物質への短期的な水生ばく露において、生物に対して有害な、当該物質の本質的

な特性をいう。

物質の利用性とは、物質が溶解性ないし解離性を有するようになる程度を意味する。金属の利用性と

は、金属化合物の金属イオン化した部分が同化合物の他の部分(分子)から解離する程度を意味する。

生物学的利用性とは、物質が生物に取り込まれ、生物内のある部位に分布する程度を意味する。これ

は物質の物理化学的特質、生物の体内組織および生理機能、ファーマコキネティクスならびにばく露の

経路に依存する。単なる利用性は、生物学的利用性の必要条件とはならない。

生物蓄積性とは、あらゆるばく露経路(すなわち、空気、水、底質/土壌および食物)からの、生物体内

への物質の取り込み、生物体内における物質の変化、および排泄からなる総体的な結果を意味する。

生物濃縮とは、水を媒体とするばく露による、生物体内への物質の取り込み・生物体内における物質

の変化および排泄からなる総体的な結果を意味する。

慢性水生毒性とは、水生生物のライフサイクルに対応した水生ばく露期間に、水生生物に悪影響を及

ぼすような、物質の本質的な特性を意味する。

複合混合物、または多成分物質もしくは複合物質とは、それぞれ異なる溶解性および物理化学的性質

を有する個々の物質の複合体からなる混合物を意味する。多くの場合、これらはある範囲の炭素鎖の長

さ/置換基の度数を持つ一連の類似物質として特徴付けられる。

分解とは、有機物分子がより小さな分子に、さらに 終的には二酸化炭素、水および塩類に分解する

ことを意味する。

ECxとは x%の反応を示す濃度をいう。

長期間(慢性)有害性は、分類の目的では、水生環境における化学品への長期間のばく露を受けた後

にその慢性毒性によって引き起こされる化学品の有害性を意味する。

NOEC(無影響濃度)とは、統計的に有意な悪影響を示す 低の試験濃度直下の試験濃度をいう。NOECではコントロール群と比べて有意な悪影響は見られない。 短期間(急性)有害性は、分類の目的では、化学品への短期の水生ばく露の間にその急性毒性によっ

て生物に引き起こされる化学品の有害性を意味する。

4.1.1.2 基本的要素

4.1.1.2.1 GHS において用いられる基本的要素は下記のとおり。

(a) 急性水生毒性

(b) 慢性水生毒性

(c) 潜在的な、または実際の生物蓄積性

(d) 有機化学品の(生物的または非生物的)分解

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4.1.1.2.2 国際的に調和された試験方法によるデータが望ましいが、実際には各国独自の方法より得られたデータでも、それが同等であると判断されたならば、使用してよいであろう。一般に、淡水種および海水種での毒性データは同等であると合意されている。これらについては、OECD テストガイドラインまたは GLP 原則によって同等とみなせる方法でデータが導かれることが望ましい。こうしたデータが入手できない場合には、入手された 良のデータをもとに分類を行うべきである。 4.1.1.3 急性水生毒性

急性水生毒性は通常、魚類の96時間LC50(OECDテストガイドライン203またはこれに相当する試験)、甲殻類の 48 時間 EC50(OECD テストガイドライン 202 またはこれに相当する試験)または藻類の 72 時間もしくは 96 時間 EC50(OECD テストガイドライン 201 またはこれに相当する試験)により決定される。これらの生物種はすべての水生生物に代わるものとしてみなされるが、例えば Lemna(アオウキクサ)等その他の生物種に関するデータも、試験方法が適切なものであれば、考慮されることもある。

4.1.1.4 慢性水生毒性 慢性毒性データは、急性毒性データほどは利用できるものがなく、一連の試験手順もそれほど標準化

されていない。OECD テストガイドライン 210(魚類の初期生活段階毒性試験)または 211(ミジンコの繁殖試験)および 201(藻類生長阻害試験)によって得られたデータは受け入れることができる(附属書 9 の A9.3.3.2 参照)。その他、有効性が確認され、国際的に容認された試験も採用できる。NOECまたは相当する ECxを採用するべきである。

4.1.1.5 生物蓄積性

生物蓄積性は通常、オクタノール/水分配係数を用いて決定され、一般的には OECD テストガイドライン 107、117 または 123 により決定された log Kowとして報告される。この値が生物蓄積性の潜在的な可能性を示しているのに対して、実験的に求められた生物濃縮係数(BCF)はより適切な尺度を与えるものであり、入手できれば BCF の方を採用すべきである。BCF は OECD テストガイドライン 305 に従って決定されるべきである。

4.1.1.6 急速分解性

4.1.1.6.1 環境中での分解は生物的分解と非生物的分解(例えば加水分解)とがあり、採用される判定基準はこの事実を反映している(4.1.2.11.3 参照)。易生分解性は OECD テストガイドライン 301(A-F)にある OECD の生分解性試験により も容易に定義づけできる。これらの試験で急速分解性とされるレベルは、ほとんどの環境中での急速分解性の指標とみなすことができる。これらは淡水系での試験であるため、海水環境により適合している OECD テストガイドライン 306 より得られる結果も取り入れることとされた。こうしたデータが利用できない場合には、BOD(5 日間)/ COD 比が 0.5 より大きいことが急速分解性の指標と考えられている。

4.1.1.6.2 加水分解などの非生物的分解、生物的および非生物的の両方の一次分解、非水系媒体中での分解性および環境中で証明された急速分解性はいずれも、急速分解性を判定する際に考慮されてよい。データの解釈に関する特別な手引きは、附属書9に示される。

4.1.1.7 その他の考慮事項

4.1.1.7.1 水生環境有害性に関して物質を分類するための調和されたシステムは、4.1.1.7.3 にリストされる既存のシステムが考慮されている。水生環境とは、水中に生息する水生生物およびそれらが構成している水域生態系として考えることができる。その範囲では、本提案は、例えばヒトの健康に対する影響のような、水生環境の範囲を超える影響を考慮する必要があるような水質汚染物質には言及しない。したがって、その物質の水生毒性が有害性の特定の基礎となるが、分解性および生物蓄積性の挙動に関するさらなる情報によって変更されることもある。

4.1.1.7.2 このスキームはすべての物質と混合物に適用することを意図しているが、例えば金属や難溶性の物質など一部の物質については特別な指針の必要性が認識されている。このような物質群についてのデータの解釈や下記に定める判定基準の適用などについての課題を対象とした2つの手引書(附属書9および 10 参照)が作成された。このエンドポイントは複雑であり、システムが広範囲に適用されることを考慮すると、これらの手引書は調和されたスキームを活用する際には1つの重要な要素となると考えられる。

4.1.1.7.3 EU における供給および使用スキーム、改正された GESAMP 危険有害性評価手順、IMO 海洋汚染物質のためのスキーム、欧州道路鉄道輸送スキーム(ADR/RID)、カナダおよび米国の駆除剤システムや米国陸上輸送スキームなど、現在使用されている既存の分類システムについて検討を行った。調和されたスキームは、包装された物品の供給および使用、ならびに複合一貫輸送スキームに使用する

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のが適切であると考えられており、水生毒性を扱う限りにおいて、その要素はばら積みの陸上輸送および MARPOL 条約 73/78 附属書Ⅱによるばら積みの海上輸送にも用いることができよう。

4.1.2 物質の分類基準

4.1.2.1 調和されたシステムは、3 つの短期間(急性)分類区分と 4 つの長期間(慢性)分類区分で構成されているが、その主要部分を成すのは 3 つの短期間(急性)分類区分と 3 つの長期間(慢性)分類区分である(表 4.1.1(a)および(b)を参照)。急性毒性および慢性毒性の分類区分は独立して適用される。急性区分 1~3 に分類するための判定基準は、急性毒性データ(EC50 または LC50)のみに基づいて定義される。慢性区分 1~3 に分類するための判定基準は段階的なアプローチに従う。すなわち、まず第一ステップで慢性毒性について得られた情報が長期間(慢性)有害性の区分に役立つかどうかを調べ、そして慢性毒性の十分なデータがない場合には、次のステップで、2 種類の情報すなわち急性毒性データと環境運命データ(分解性および生物蓄積性のデータ)を組み合わせることになる(図 4.1.1 を参照)。

4.1.2.2 調和されたシステムでは、利用できるデータからは正式の判定基準による分類ができないが、それにも関わらず何らかの懸念の余地がある場合に用いられるよう、分類の「セーフティネット」(区分:慢性4)を導入している。明確な判定基準が定められているわけではないが、例外が1つある。すなわち、水に難溶性の物質については、その毒性が証明されていなくてもその物質が速やかに分解せず、かつ生物蓄積性の可能性があるならば、分類されることがありうる。そのような難溶性物質に対しては、生物へのばく露レベルが低く、取込み速度も遅いため、短期試験では毒性を適切に評価できていない可能性がある。その物質が水生の長期間(慢性)有害性について分類する必要がないことを実証することによって、このように分類する必要性を否定できる。 4.1.2.3 急性毒性が 1mg/l を十分に下回るか、または慢性毒性が(急速分解性がない場合に)0.1mg/lを十分に下回り、(急速分解性がある場合は)0.01mg/l を十分に下回る物質は、濃度が低くても混合物の成分として混合物の毒性に関与する。単純加算法を適用する際にはその重み付けを増加させるべきである(表 4.1.1 の注記 2 と 4.1.3.5.5.5 項を参照)。 4.1.2.4 次の判定基準(表 4.1.1)に従って分類された物質は「水生環境有害性」の分類に入る。詳細な分類区分を表 4.1.2 に一覧表としてまとめた。

表 4.1.1 水生環境有害性物質の区分(注記 1)

(a) 短期間(急性)水生有害性 区分 急性 1(注記 2)

96 時間 LC50(魚類に対する)≦1mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)≦1mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)≦1mg/l(注記 3) 規制体系によっては、急性 1 をさらに細分して、L(E)C50≦0.1mg/l という、より低い濃度帯を含

む場合もある。 区分 急性 2

96 時間 LC50(魚類に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l(注記 3)

区分 急性 3 96 時間 LC50(魚類に対する)> 10mg/l だが ≦100mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)> 10mg/l だが ≦100mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)> 10mg/l だが ≦100mg/l(注記 3)

規制体系によっては、L(E)C50 が 100mg/l を超える、別の区分を設ける場合もある。

(次ページに続く)

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表 4.1.1 水生環境有害性物質の区分(注記 1)(続き) (b) 長期間(慢性)水生有害性(図 4.1.1 も参照)

(i) 慢性毒性の十分なデータが得られる、急速分解性のない物質(注記 4)

(ii) 慢性毒性の十分なデータが得られる、急速分解性のある物質

(iii) 慢性毒性の十分なデータが得られない物質

(c) 「セーフティネット」分類

区分 慢性 1:(注記 2) 慢性 NOEC または ECx(魚類に対する)≦0.1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(甲殻類に対する)≦0.1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(藻類または他の水生植物に対する)≦0.1mg/l

区分 慢性 2: 慢性 NOEC または ECx(魚類に対する)≦ 1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(甲殻類に対する)≦ 1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(藻類または他の水生植物に対する)≦ 1mg/l

区分 慢性 1(注記 2) 慢性 NOEC または ECx(魚類に対する)≦0.01mg/l または 慢性 NOEC または ECx(甲殻類に対する)≦0.01mg/l または 慢性 NOEC または ECx(藻類または他の水生植物に対する)≦0.01mg/l

区分 慢性 2 慢性 NOEC または ECx(魚類に対する)≦0.1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(甲殻類に対する)≦0.1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(藻類または他の水生植物に対する)≦0.1mg/l

区分 慢性 3 慢性 NOEC または ECx(魚類に対する)≦1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(甲殻類に対する)≦1mg/l または 慢性 NOEC または ECx(藻類または他の水生植物に対する)≦1mg/l

区分 慢性 1: (注記 2) 96 時間 LC50(魚類に対する)≦1mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)≦1mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)≦1mg/l(注記 3) であって急速分解性がないか、または実験的に求められた BCF≧500(またはデータがないときは logKow≧4)であること(注記 4 および 5)

区分 慢性 2: 96 時間 LC50(魚類に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)> 1mg/l だが ≦10mg/l(注記 3)であって急速分解性がないか、または実験的に求められた BCF≧500(またはデータがないときは logKow≧4)であること(注記 4 および 5)

区分 慢性 3: 96 時間 LC50(魚類に対する)> 10mg/l だが ≦100mg/l または 48 時間 EC50(甲殻類に対する)> 10mg/l だが ≦100mg/l または 72 または 96 時間 ErC50(藻類または他の水生植物に対する)>10mg/l だが≦100mg/l(注記 3)であって急速分解性がないか、または実験的に求められた BCF≧500(またはデータがないときは logKow≧4)であること(注記 4 および 5)

区分 慢性 4 水溶性が低く水中溶解度までの濃度で急性毒性がみられないものであって、急速分解性ではなく、生物蓄積性を示す logKow≧4 であるもの。他に科学的証拠が存在して分類が必要でないことが判明している場合はこの限りでない。そのような証拠とは、実験的に求められた BCF<500 であること、または慢性毒性 NOEC>1mg/l であること、あるいは環境中において急速分解性であることの証拠などである。

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注記 1: 魚類、甲殻類および藻類といった生物は、一連の栄養段階と分類群をカバーする代表種として試験されており、その試験方法は高度に標準化されている。その他の生物に関するデータも考慮されることもあるが、ただし同等の生物種およびエンドポイントによる試験であることが前提である。 注記 2: 物質を急性 1 または慢性 1 と分類する場合は、同時に、加算法を適用するための適切な毒性乗率 M(4.1.3.5.5.5 参照)を示す必要がある。 注記3: 藻類に対する毒性値ErC50 [すなわちEC50(生長率)]が、次に感受性の高い種より100倍以上小さく、この作用のみによって分類されることになる場合、この毒性が水生植物に対する毒性を代表しているかどうかについて考慮する必要がある。もし代表していないことが認められた場合には、分類すべきかどうかの決定には専門家の判断を用いる必要がある。分類はErC50により行う必要がある。EC50 を得た根拠が特定されず、かつErC50が記録されていないような状況では、入手されたEC50 低値によって分類すべきである。 注記4: 急速分解性の欠如は、易生分解性の欠如、または急速分解性が欠如していることについてのその他の証拠より判断する。実験的に求められたデータ、または推定により求められたデータのいずれにせよ、分解性に関する有用なデータが得られない場合は、その物質は急速分解性がないものとみなすべきである。 注記5: 生物蓄積性は、実験により求められたBCFが500以上であるか、またはそのようなBCFが求められていない場合にはlogKow≧4が適切な指標である。実測により求められたlogKow値の方が推定により求められたlogKow値より優先され、またlogKow値よりBCF実測値の方が優先される。

図4.1.1: 水生環境に対して長期間(慢性)有害性のある物質の分類

4.1.2.5 GHS では、水生生物に対する固有の主要な有害性は、物質の急性および慢性両方の毒性によって代表されると認識されており、その相対的な重要性は、施行されている特定の規制システムによって決まる。短期間(急性)有害性と長期間(慢性)有害性を区別することが可能であるため、この双方の性質についてはそれぞれ有害性レベルの段階によって有害性区分が定められている。適切な有害性区分を決定するには、通常、異なる栄養段階(魚類、甲殻類、藻類)について入手された毒性値のうちの 低値が用いられる。しかし、証拠の重み付けが用いられるような場合もある。急性毒性データはも容易に入手でき、試験も も標準化されている。

3 つの栄養段階すべてについて、慢性毒性の十分なデータが入手できるか?表4.1.1の注記2を参照

1 つまたは 2 つの栄養段階について、慢性毒性の十分なデータが入手できるか?

急性毒性の十分なデータが入手できるか?

急速分解性に関する情報に応じて、表 4.1.1 (b) (i)または表

4.1.1 (b) (ii)に示す基準に従って分類を行う

以下の両方、すなわち、

(a) (急速分解性に関する情報に応じて、表 4.1.1 (b) (i)

または表 4.1.1 (b) (ii)に示す基準に従って、 (b) (他の栄養段階について急性毒性の十分なデータが得

られる場合は)、表 4.1.1 (b) (iii)に示す基準に従って、 評価を行い、 も厳格な結果に合わせた分類を行う

表 4.1.1 (b) (iii)に示す基準に従って、分類を行う

Yes

Yes

Yes

No

No

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4.1.2.6 急性毒性は、ある物質の大量輸送の事故または大量漏出が原因となって、短期の危険が生じる場合の有害性を決定する重要な性質を表す。このために L(E)C50 値が 100mg/l に至る有害性区分が定められているが、特定の規制の枠組みにおいては 1000mg/l までの区分が用いられてもよい。急性区分 1 はさらに細分化して、例えば MARPOL 条約 73/78 附属書Ⅱに定められているように、特定の規制システムにおいては、急性毒性 L(E)C50≦0.1mg/l の区分を設けてもよい。その用途は、ばら積み輸送に関する規制システムに限られるであろうと予想される。 4.1.2.7 包装された物質の場合、主要な有害性は慢性毒性で決ると考えられているが、L(E)C50 値が≦1mg/l の急性毒性もまた有害であると考えられる。通常の使用および廃棄後に、水生環境中の物質濃度は 1mg/l までになることもあり得ると考えられる。これより高い毒性レベルの場合は、急性毒性そのものでは、長い時間スケールで影響を及ぼすような低濃度によって生じる根本的な有害性を説明できないと考えられる。したがって、慢性水生毒性のレベルに基づいて多くの有害性区分が定められている。しかし、多くの物質では慢性毒性データを利用できず、こうした場合は、慢性毒性を評価するのに入手できる急性毒性のデータを用いなければならない。急速分解性の欠如または生物蓄積性の可能性といった本質的な特性と急性毒性とを組み合わせて、物質を長期間(慢性)有害性区分に指定することもできよう。また、慢性毒性値が利用でき、NOECが水溶解度よりも大きいか1mg/lを超える場合、これは長期間(慢性)有害性区分慢性 1~3 に分類する必要はないことを意味する。同様に、L(E)C50>100mg/l の物質については、ほとんどの規制システムで、その毒性を分類する根拠になるほどではないと考えられている。 4.1.2.8 MARPOL 条約 73/78 附属書Ⅱの分類目標にも考慮した。この規則は船舶タンクによるばら積み輸送を対象としたもので、船舶からの操業に伴う排出を規制すること、およびふさわしい船型要件を指定することを目標としている。水圏生態系の保護も明らかに対象に含まれているが、それにとどまらない目標を目指している。したがって、物理化学的性質や哺乳類に対する毒性等の要因を考慮に加えた追加の有害性区分が用いられるかもしれない。 4.1.2.9 水生毒性 4.1.2.9.1 魚類、甲殻類および藻類といった生物は、一連の栄養段階および分類群をカバーする代表種として試験されており、その試験方法は高度に標準化されている。その他の生物に関するデータも考慮されることもあるが、ただし同等の生物種およびエンドポイントによる試験であることが前提である。藻類生長阻害試験は慢性試験ではあるが、その EC50 は分類の目的では急性値として扱われる。このEC50 は通常、生長速度阻害をもとに得られるべきである。生物量の減少にもとづく EC50(訳注:面積法による EC50)しか得られない場合、またはどの EC50が報告されているか示されていない場合でも、これらの数値を同様に使用してもよいであろう。 4.1.2.9.2 水生毒性試験はその性格上、試験対象物質を、使用している水媒体に溶かし、生物学的利用性のあるばく露濃度を試験期間中に安定して維持することを必要とする。物質によっては標準手順で試験することが困難であり、したがってそうした物質に関するデータの解釈に関して、および分類基準に適用する際にどのようにデータを利用すべきかについて、特別の指針が策定されるであろう。 4.1.2.10 生物蓄積性 実際の物質の水中濃度は低くても、長い時間スケールで毒性影響を発現しうるのが、水生生物への蓄

積である。生物蓄積性は、n-オクタノール/水分配係数により測定される。有機物質の分配係数と、魚類を用いた BCF により測定された生物濃縮性との関連性は、多くの科学文献により支持されている。GHS においてカットオフ値として log Kow≧4 を採用しているのは、現実的に生物濃縮性のあるような物質のみを識別するためである。log KowはBCF測定値の不完全な代替値にすぎないことから、BCF実測値が常に優先されるべきである。魚類における BCF<500 という値は生物濃縮性が低レベルであることを意味すると考えられる。毒性が身体への負荷に関係があることから、慢性毒性と生物蓄積性との間には何らかの関係が認められる。 4.1.2.11 急速分解性 4.1.2.11.1 急速分解性を示す物質は、環境から速やかに除去される。特に漏出や事故などの際には影響が起こることもありうるが、それは局所的で短期間のものになろう。急速分解性を示さないということは、水中において物質が時間的にも空間的にも広い範囲で毒性を発現する可能性があることを意味する。急速分解性を示す1つの方法として、物質が「容易に生分解可能」かどうかを決定するよう設計された生分解性スクリーニングテストを採用している。このスクリーニングテストに合格する物質は、水中環境で「速やかに」生分解する可能性のある物質であり、したがって残留する見込みは小さい。しか

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し、このスクリーニング試験に不合格となったとしても、必ずしもその物質が環境中で速やかに分解しないことを意味するわけではない。そのため、その物質が水中環境において生物的または非生物的に28 日間に 70%以上、実際に分解したことを示すデータを用いたさらなる基準が追加された。したがって、もし現実的な環境条件下で分解が実証できた場合、「急速分解性」の定義に適合するであろう。多くの分解データは分解の半減期という形で入手されるが、これらもまた急速分解性を定義するのに用いることができる。これらデータの解釈の詳細に関しては附属書9の手引書に記述されている。いくつかの試験はその物質の究極の生分解性、すなわち完全な無機化の達成を測定するものである。分解生成物が水生環境有害性という分類判定基準を満足しない限り、急速分解性の評価において、通常は一次生分解性を用いないであろう。 4.1.2.11.2 環境中の分解は生物学的な場合もあれば非生物学的(例えば加水分解)な場合もあり、用いられる判定基準はこの事実を反映しているということが認識されなければならない。それと同様に、OECD 試験で易生分解性の判定基準に適合しなくとも、その物質が現実の環境中で速やかに分解しないことを必ずしも意味するものではないことも認識されなければならない。したがって、こうした急速分解性が示されれば、その物質は急速分解性を示すと考えるべきである。加水分解による生成物が、水生環境有害性の分類基準を満たさないのであれば、加水分解性についても考慮に入れて良い。急速分解性の明確な定義を次項に示す。環境中の急速分解性についての別の証拠も考慮してよく、その物質が標準的試験で用いられる濃度レベルで微生物活性を阻害する場合には特に重要になろう。利用可能なデータ範囲とその解釈に関する指針は附属書9の手引きに示されている。 4.1.2.11.3 下記の判定基準にあてはまれば、物質は環境中で速やかに分解するとみなされる。

(a) 28 日間の易生分解性試験で下記のいずれかの分解レベルが達成された場合:

(i) 溶存有機炭素による試験:70%

(ii) 酸素消費量または二酸化炭素生成量による試験:理論的 高値の 60% その物質が構造的に類似した構成要素を持つ複合的な多成分物質であると認められない場合、これらの生分解レベルは、分解開始後 10 日以内に達成されなければならず、分解開始点は物質の 10%が分解された時点とする。多成分物質と認められる場合、附属書 9(A9.4.2.2.3)で説明するように、十分な根拠があれば、10 日間の時間ウィンドウ条件は免除され、28 日間の合格レベルが適用される。

(b) BOD または COD データしか利用できないような場合には、BOD5/COD が 0.5 以上となった 場合。

(c) 28 日間以内に 70%を超えるレベルで水生環境において分解(生物学的または非生物学的に) されることを証明するようなその他の有力な科学的証拠が入手された場合。

4.1.2.12 無機化合物および金属

4.1.2.12.1 無機化合物および金属については、有機化合物に適用される分解性の概念は限定された意味しか持たないか、または全く意味を持たない。これらの物質は分解というよりも、むしろ、通常の環境プロセスによって変換され、有毒な化学種の生物学的利用能を増加または減少させることがある。同様に、生物蓄積性データも注意して取扱わなければならない。これらの物質のデータを、分類基準の要求事項に適合させて、どのように使用するかに関しては特別な手引きが作成されることになろう。

4.1.2.12.2 難溶性の無機化合物と金属は、生物学的利用性のある無機化学種固有の毒性、およびこの無機化学種が溶液中に溶け込む速度と量に応じて、水生環境において急性毒性または慢性毒性をもつ可能性がある。これらの難溶性物質に関する試験手順は、附属書 10 に記載する。全ての証拠は分類判定の際に重み付けされなければならない。これは特に、変化/溶解プロトコールでボーダーラインの結果を示す金属にあてはまる。

4.1.2.13 QSAR の利用

実験によって導かれた試験データの方が好ましいが、実験データが入手できない場合には、水生毒性と log Kow についての、有効性が確認されている定量的構造活性相関(QSAR)を分類プロセスに利用することもできる。このような有効性が確認されている QSAR は、その作用機序および適用可能性がよく把握されている化学品に限定されるなら、合意された判定基準に適用できるであろう。信頼できる算定毒性値と log Kow の値は、上記のセーフティネットにおいて有効だろう。易生分解性を予測するための QSAR は、現在のところまだ急速分解性を予測するのに十分正確ではない。

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4.1.2.14 物質の分類基準の概要表

表4.1.2: 水生環境有害性物質の分類スキーム

分類区分

短期間(急性)有害性 (注記1)

長期間(慢性)有害性(注記2)

慢性毒性データが十分に入手できる場合 慢性毒性データが十分に入

手できない場合 (注記1)

急速分解性のない物質 (注記3)

急速分解性のある物質 (注記3)

区分:急性1 区分:慢性1 区分:慢性1 区分:慢性1 L(E)C50≦1.00 NOECまたはECx≦0.1 NOECまたは

ECx≦0.01 L(E)C50≦1.00で急速分解性

がないか、あるいは BCF≧500または、データが

ない場合logKow≧4

区分:急性2 区分:慢性2 区分:慢性2 区分:慢性2 1.00<L(E)C50≦10.0 0.1<NOECまたは

ECx≦1 0.01<NOECまたは

ECx≦0.1 1.00<L(E)C50≦10.0で急速

分解性がないか、あるいは BCF≧500または、データが

ない場合logKow≧4 区分:急性3 区分:慢性3 区分:慢性3 10.0<L(E)C50≦100 0.1<NOECまたは

ECx≦1 10.0<L(E)C50≦100で急速

分解性がないか、あるいは BCF≧500または、データが

ない場合logKow≧4

区分:慢性4(注記4) 例: (注記5) NOECs>1mg/lでない場合であって、急速毒性も急速分解性もなく、BCF≧500または、データがない時はlogKow≧4

注記1: 急性毒性値の帯域は、魚類、甲殻類または藻類あるいはその他の水生植物に対するL(E)C50 (mg/l)(または実験データがない場合にはQSAR推定値)に基づく。 注記2: 3つの栄養段階すべてで水溶解度または1mg/lを超える十分な慢性毒性データが存在する場合以

外は、物質はさまざまな長期間(慢性)区分に分類される。(「十分」というのは、データが対象のエン

ドポイントを十分にカバーしているという意味である。一般的にはこれは測定された試験データを意味

するが、不必要な試験を回避するため、ケース・バイ・ケースで、推定値、例えば(Q)SAR推定値、も

しくは明白な場合には専門家の判断ということもありうる)。 注記3: 慢性毒性値の帯域は、魚類、甲殻類に対するNOEC(mg/l)または等価ECx(mg/l)か、その他慢性

毒性に関して公認されている手段に基づく。 注記4: このシステムは、利用できるデータからは正式な判定基準による分類ができないが、それにも

関わらず何らかの懸念の余地がある場合に用いられるよう、分類の「セーフティネット」(区分 慢性4という。)を導入している。 注記 5: 溶解度の限界地点で急性毒性がないことが示されており、速やかに分解されず、生物蓄積性が

ある難溶性の物質については、その物質が水生の長期間(慢性)有害性に区分する必要がないと立証さ

れない場合は、この区分を適用すべきである。

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4.1.3 混合物の分類基準

4.1.3.1 混合物のための分類システムは、物質の分類のために用いるすべての分類区分、すなわち急性

区分 1~3 および慢性区分 1~4 をカバーしている。混合物の水生環境有害性を分類するために入手でき

るすべてのデータを用いるために、以下の仮定が設定され、必要に応じて適用される。 混合物の「考慮すべき成分」とは、急性 1または慢性 1と分類される成分については濃度 0.1%(w/w)

以上で存在するもの、および他の成分については濃度 1%(w/w)以上で存在するものをいう。ただし、

0.1%未満の成分でも、その混合物の水生環境有害性を分類することに関連すると予想される場合(例え

ば毒性が高い成分の場合など)は、この限りではない。

4.1.3.2 水生環境有害性を分類するアプローチは段階的であり、混合物そのものおよびその各成分につ

いて入手できる情報の種類に依存する。この段階的アプローチの要素には、 試験された混合物にもとづ

く分類、つなぎの原則(Bridging Principle)にもとづく分類、「分類済み成分の加算」または「加算式」

の使用、が含まれる。図 4.1.2 に従うべきプロセスの概略を示す。

図 4.1.2 短期間(急性)および長期間(慢性)水生環境有害性に関する

混合物の分類のための段階的アプローチ

混合物そのものに関する利用可能な水生毒性試験データ No Yes

No No

既知成分の利用

可能な有害性デ

ータを用いる

つなぎの原則を適用 (4.1.3.4 参照)

短期間(急性)/長期間(慢性)有害性に分類(4.1.3.3参照)

短期間 (急性 )/長期間

(慢性)有害性に分類

短期間(急性)/長期間(慢性)有害性に分類

有害性推定のた

めに十分な類似

の混合物のデー

タが利用可能

Yes

Yes

すべての分類に考

慮すべき成分につ

いて水生環境有害

性データまたは分

類データが利用可

短期間 (急性 )/長期間

(慢性)有害性に分類

以下のように加算法を適用

(4.1.3.5.5 参照) (a)「慢性」と分類された全

成分の含有率(%) (b)「急性」と分類された成

分の含有率(%) (c) 急性毒性データを有す

る成分の含有率(%):加算式(4.1.3.5.2 参照)を適用し、算出されたL(E)C50またはEqNOECmを適切な「急性」または「慢性」区分に変換

加算法または加算式 (4.1.3.5 参照)を適用 4.1.3.6 を適用

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4.1.3.3 混合物そのものについて入手できるデータがある場合の混合物の分類 4.1.3.3.1 混合物そのものが水生毒性を判定するために試験されている場合には、物質に関して合意さ

れた判定基準に従って、その情報を混合物の分類に用いることができる。その場合、分類は通常、魚類、

甲殻類、藻類/水生植物のデータに基づいて行うべきである(4.1.1.3 および 4.1.1.4 を参照)。混合物そ

のもの全体について急性または慢性の十分なデータがない場合は、「つなぎの原則」または「加算法」を

適用すべきである(4.1.3.4 および 4.1.3.5 並びに判定論理 4.1.5.2.2 を参照)。 4.1.3.3.2 混合物の長期間(慢性)有害性に係る分類を行うに当たっては、分解性や、一部のケースで

は生物蓄積性に関する追加の情報が必要である。混合物そのものについては分解性や生物蓄積性に関す

るデータはない。混合物の分解性や生物蓄積性の試験のデータは、通常は解釈するのが難しいので用い

られることがなく、そうした試験が有意義なのは単一の物質に対してだけである。 4.1.3.3.3 急性 1、2および 3の区分の分類

(a) 混合物そのもの全体について、L(E)C50≦100mg/l という急性毒性試験の十分なデータ(LC50

または EC50)が得られる場合:

混合物を急性 1、2 または 3 に分類する(表 4.1.1(a)を参照)。

(b) 混合物そのもの全体について、 L(E)C50 が>100mg/l または水溶解度より大きいという急性

毒性試験のデータ(LC50(s)または EC50(s))が得られる場合:

短期間(急性)有害性についての分類は不要である。

4.1.3.3.4 慢性 1、2 および 3 の区分の分類

(a) 試験された混合物のECXまたはNOECが≦1mg/lを示す混合物そのものについて、慢性毒性

(ECXまたはNOEC)の十分なデータが得られる場合

(i) 入手した情報から混合物の関連成分すべてが急速分解性があるとの結論が認められた場合、

表4.1.1(b)(ii)(急速分解性がある)に従って、その混合物を慢性1、2または3に分類する;

(ii) 他のすべてのケースでは、表4.1.1(b)(i)(急速分解性がない)に従って、その混合物を慢性

1、2または3に分類する;

(b) 試験された混合物のECX(s)またはNOEC(s)が>1mg/lまたは水溶解度より大きいことを示す

混合物そのもの全体について、慢性毒性(ECXまたはNOEC)の十分なデータが得られる場合

それでも懸念の余地がある場合を除き、長期間(慢性)有害性についての分類は不要である。 4.1.3.3.5 慢性4の区分の分類

それでも懸念の余地がある場合は: 表4.1.1(c)に従って、その混合物を慢性4(セーフティネット分類)に分類する。

4.1.3.4 混合物そのものについて水生試験毒性データが入手できない場合の混合物の分類:つなぎの原

則(Bridging Principles) 4.1.3.4.1 混合物そのものの水生環境有害性を決定する試験は行われていないが、当該混合物の有害性

を適切に特定するための、個々の成分および類似の試験された混合物に関して十分なデータがある場合、

以下のような合意されたつなぎの原則に従って、これらのデータが使用される。これによって、分類プ

ロセスのために、追加の動物試験を行う必要なく入手できるデータを可能な限り 大限に用いて、混合

物の有害性判定が可能になる。

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4.1.3.4.2 希釈

混合物が、試験された混合物または物質を、毒性が も低い元の成分と比べて水生環境有害性分類が同等以下でありかつ他の成分の水生環境有害性に影響を与えることが予想されない希釈剤で希釈されて作られたものである場合、その結果生じる混合物は元の試験された混合物または物質と同等のものとして分類してもよい。また代わりに、4.1.3.5 で説明した方法を適用することもできる。 4.1.3.4.3 製造バッチ

混合物の試験された製造バッチの水生環境有害性は、同じ製造業者によって生産されるか、またはその業者の管理下で生産された同じ製品の別の試験されていない製造バッチの有害性と実質的には同等とみなすことができる。ただし、その試験されていないバッチの水生環境有害性分類が変わってしまうような、有意な変動があると考えられる理由がある場合は、この限りではない。このような場合、新しい分類が必要である。 4.1.3.4.4 も重度の分類区分(慢性 1 および急性 1)に分類される混合物の濃縮

ある試験された混合物が慢性 1 または急性 1 に分類され、その混合物の慢性 1 または急性 1 に分類される成分がさらに濃縮される場合は、試験されていないより濃縮された混合物は、追加試験なしで、元の試験された混合物と同じ分類区分に分類すべきである。 4.1.3.4.5 有害性区分内での内挿

成分が同じ 3 つの混合物(A、B および C)については、混合物 A と混合物 B が試験されて同じ有害性区分に分類される場合および、試験されていない混合物 C が混合物 A および B と同じ毒性成分を持つが、その毒性成分の濃度が混合物 A と B の中間であるような場合、混合物 C は混合物 A および B と同じ有害性区分にあるとみなされる。この 3 種類の混合物において、成分内容は同じであることに注意すること。 4.1.3.4.6 本質的に類似した混合物 次を仮定する:

(a) 2 つの混合物: (i) A+B (ii) C+B

(b) 成分 B の濃度は、両方の混合物で本質的に同じである。 (c) 混合物(i)の成分 A の濃度は、混合物(ii)の成分 C の濃度に等しい。 (d) A と C の水生有害性のデータが得られており、これらが実質的に同等である、すなわち、

これらは同じ有害性区分に属し、かつ、B の水生毒性に影響を与えることはないと予想され

る。 混合物(i)または(ii)が既に試験データに基づいて分類されている場合は、他の混合物は同じ有害性

区分に分類されうる。 4.1.3.5 混合物のすべての成分、または一部の成分についてのみ毒性データが入手できる場合の混合物

の分類

4.1.3.5.1 混合物の分類は、その成分の分類の加算にもとづいて行われる。「急性」または「慢性」に分

類された成分の含有率は、そのままで、この加算法に用いられることになる。この加算法の詳細につい

ては 4.1.3.5.5 で説明する。 4.1.3.5.2 混合物は、分類済みの成分(急性 1、2、3 または慢性 1、2、3、4)と十分な試験データが

入手できる成分との組合せで構成されていることもある。混合物中の成分 2 種類以上について十分な毒

性データが入手できる場合には、毒性データの性質に応じて下記の加算式(a)または(b)に従って、これ

らの成分の毒性加算値を算出できる。

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∑Ci L ( E ) C 50m = ∑

Ci L ( E ) C 50i

n

(a) 急性水生毒性に基づく場合:

ここで、 Ci L(E)C50i n L(E)C50m

= 成分 i の濃度(重量パーセント) = 成分 i の LC50または EC50(mg/l) = 成分数(i は 1 からnまでの値をとる) = 混合物の中で試験データが存在している部分の L(E)C50

この毒性計算値を用いてその混合物の部分に短期間(急性)有害性区分を割り振り、その後これを

加算法に適用してもよい。

(b) 慢性水生毒性に基づく場合:

ここで、 Ci = 急速分解性のある成分iの濃度(重量パーセント); Cj = 急速分解性のない成分を含む成分jの濃度(重量パーセント);

NOECi = 急速分解性のある成分iのNOEC(あるいはその他慢性毒性に関して公認され

ている手段)(mg/l); NOECj = 急速分解性のない成分jのNOEC(あるいはその他慢性毒性に関して公認され

ている手段)(mg/l); n = 成分数(iとjは1からnまでの値をとる); EqNOECm = 混合物のうち試験データが存在する部分の等価NOEC;

等価毒性は、急速分解性のない成分は急速分解性のある物質よりも1つ「厳しい」有害性区分レベ

ルに分類されるという事実を反映している。

この等価毒性計算値を用いて、急速分解性物質の判定基準(表4.1.1(b)(ii))に基づいて、その混合

物の部分に長期間(慢性)有害性区分を割り振り、その後これを加算法に適用してもよい。

4.1.3.5.3 混合物の一部にこの加算式を適用する場合、同一分類群(すなわち、魚類、甲殻類または藻

類)について各物質の毒性値を用いて混合物のこの部分の毒性を計算し、得られた計算値の中の も高

い毒性値( 低毒性濃度、これら 3 つの分類群のうち感受性が も高い群で得られた値)を採用するこ

とが望ましい。ただし、同一分類群での各成分の毒性データが入手できない場合には、物質の分類に毒

性値を選択するのと同じやり方で各成分の毒性値を選択する。すなわち毒性の高い方の値(感受性が

も高い試験生物種で得られた値)を採用する。この計算された急性および慢性の毒性値を使い、物質の

分類に関する判定基準と同じ基準を用いて、この混合物の一部を急性 1、2 または 3 あるいは慢性 1、2 ま

たは 3と分類してもよい。 4.1.3.5.4 混合物の分類が 1 種類以上の方法で行われる場合、より保守的な(安全側の)結果となるよ

うな方法を採用すべきである。

nn NOECj

Cj

NOECi

Ci

EqNOECm

CjCi

1.0

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4.1.3.5.5 加算法 4.1.3.5.5.1 原則の説明 4.1.3.5.5.1.1 急性 1/慢性 1 から急性 3/慢性 3 に至る、物質の分類区分では、ある区分からひとつ区分

を移ると、その根拠となっている毒性判定基準には 10 倍の差がある。このため、毒性の高い等級に分

類されている物質が、より低い等級にある混合物の分類に寄与することがある。したがって、これら分

類区分の計算では、急性 1/慢性 1 から急性 3/慢性 3 の区分に分類される物質すべての関与を考慮する必

要がある。 4.1.3.5.5.1.2 ある混合物に急性区分 1 または慢性区分 1 として分類される成分が含まれている場合、

こうした成分では急性毒性濃度が 1mg/l よりはるかに低い場合、または慢性毒性濃度が(急速分解性が

ない時に)0.1mg/l よりはるかに低いか(急速分解性がある時に)0.01mg/l よりはるかに低い場合、濃

度が低くてもその混合物の毒性に関与するという事実に注意を払うべきである(1.3 章 1.3.3.2.1 有害性

物質および混合物の分類も参照のこと)。農薬中の活性成分は、しばしば有機金属化合物のような高い水

生毒性を有するが、同時に他の毒性も有する成分を含んでいる。そうした状況では、標準的なカットオ

フ値/濃度限界を適用すると、その混合物を「本来の毒性よりも低い区分に分類(過小評価)」してしま

うこともある。したがって、4.1.3.5.5.5 で説明するように、高い毒性をもつ物質を考慮するには、毒性

乗率 M を適用すべきである。 4.1.3.5.5.2 分類手順 一般的に、混合物に対するより厳しい分類は、厳しくない分類より優先して採用される。例えば、慢

性 1 の分類は慢性 2 の分類より優先される。その結果、分類結果が慢性 1 であれば、それで分類手順は

すでに完了している。慢性 1 よりも厳しい分類はありえないため、さらに分類手順を進める必要はない。 4.1.3.5.5.3 急性区分 1、2 および 3 への分類 4.1.3.5.5.3.1 まず急性 1 として分類されたすべての成分を検討する。これらの該当する M 因子をかけ

た成分の濃度(%)の合計が 25%以上ならば、その混合物は全体として急性区分 1 として分類される。計

算の結果、混合物の分類が急性 1 となった場合、分類プロセスはこれで完了である。 4.1.3.5.5.3.2 混合物が急性 1 に分類されない場合、その混合物が急性 2 として分類されないかを検討

する。該当する M 因子をかけて急性 1 として分類されるすべての成分の濃度(%)の合計の 10 倍と急性 2として分類されるすべての成分の濃度(%)の合計の総和が 25%以上ならば、その混合物は急性 2 として

分類される。計算の結果、混合物の分類が急性区分 2 となった場合、分類プロセスはこれで完了である。 4.1.3.5.5.3.3 混合物が急性 1 にも急性 2 にも分類されない場合、その混合物が急性 3 として分類され

ないかを検討する。該当する M 因子をかけて急性 1 として分類されるすべての成分の濃度(%)の合計の

100 倍と急性 2 として分類されるすべての成分の濃度(%)の合計の 10 倍および急性 3 として分類される

すべての成分の濃度(%)の合計の総和が 25%以上ならば、その混合物は急性 3 として分類される。 4.1.3.5.5.3.4 分類された成分濃度(%)をこのように加算して行う混合物の短期間(急性)有害性分類に

ついて、下記の表 4.1.3 に要約する。

表 4.1.3 分類された成分の濃度の加算による混合物の短期間(急性)有害性分類

分類される成分の濃度(%)の合計 混合物の分類

急性 1×M a ≧25% 急性 1 (M×10×急性 1)+急性 2 ≧25% 急性 2 (M×100×急性 1)+(10×急性 2)+急性 3 ≧25% 急性 3

a 毒性乗率Mの説明は、4.1.3.5.5.5 を参照

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4.1.3.5.5.4 慢性区分 1、2、3 および 4 への分類 4.1.3.5.5.4.1 まず慢性 1 に分類されたすべての成分について考える。これらの該当する M 因子をかけ

た成分の濃度(%)の合計が 25%以上ならば、その混合物は慢性区分 1 に分類される。計算の結果、混合

物の分類が慢性区分 1 となった場合、分類プロセスはこれで完了である。 4.1.3.5.5.4.2 混合物が慢性 1 に分類されない場合、その混合物が慢性 2 として分類されないかを検討

する。該当する M 因子をかけて慢性 1 として分類されたすべての成分の濃度(%)の合計の 10 倍と慢性 2として分類されたすべての成分の濃度(%)の合計の総和が 25%以上ならば、その混合物は慢性 2 として

分類される。計算の結果、混合物の分類が慢性区分 2 となった場合、分類プロセスはこれで完了である。 4.1.3.5.5.4.3 混合物が慢性 1 にも慢性 2 にも分類されない場合、その混合物が慢性 3 として分類され

ないかを検討する。該当する M 因子をかけて慢性 1 として分類されたすべての成分の濃度(%)の合計の

100 倍と慢性 2 として分類されたすべての成分の濃度(%)の合計の 10 倍および慢性 3 として分類された

すべての成分の濃度(%)の合計の総和が 25%以上ならば、その混合物は慢性 3 として分類される。 4.1.3.5.5.4.4 その混合物が慢性 1、2 または 3 のいずれにも分類されない場合、その混合物が慢性 4 と

して分類されないかを検討するべきである。慢性 1、2、3 および4に分類された成分の濃度(%)の合計

が 25%以上ならば、混合物は慢性4として分類される。 4.1.3.5.5.4.5 分類済み成分の濃度をこのように加算して行う混合物の長期間(慢性)有害性分類につ

いて、下記の表 4.1.4 に要約する。

表 4.1.4 分類された成分の濃度の加算による混合物の長期間(慢性)有害性分類

分類される成分の濃度(%)の合計 混合物の分類

慢性 1×M a ≧25% 慢性 1 (M×10×慢性 1)+慢性 2 ≧25% 慢性 2 (M×100×慢性 1)+(10×慢性 2)+慢性 3 ≧25% 慢性 3 慢性 1+慢性 2+慢性 3+慢性 4 ≧25% 慢性 4

a 毒性乗率 M の説明は、4.1.3.5.5.5 を参照 4.1.3.5.5.5 高い毒性をもつ成分を含む混合物

急性毒性が1mg/l よりはるかに低いか、または慢性毒性が(急速分解性がない時に)0.1mg/lよりはる

かに低いか、(急速分解性がある時に)0.01mg/lよりはるかに低い場合の急性区分1または慢性区分1の成分は、混合物の毒性に影響する可能性があり、分類手法に単純加算法を適用する際にはその重み付け

を増加させるべきである。急性1または慢性1として分類される成分が混合物に含まれている場合、

4.1.3.5.5.3 および4.1.3.5.5.4 に記載した段階的手法、単に含有率を加算するのではなく、急性区分1または慢性1に分類される成分の濃度に毒性乗率をかけた、重み付け加算を用いるべきである。すなわち、

表4.1.3 の左側欄の「急性1」の濃度および表4.1.4 の左側欄の「慢性1」の濃度に、適切な毒性乗率を

掛けることを意味する。こうした成分に適用される毒性乗率は、下記の表4.1.5にまとめたように、毒性

値を用いて定義される。したがって、急性/慢性1 の成分を含む混合物を分類するには、分類担当者はこ

の加算法を適用するために毒性乗率M の値を教えられておく必要がある。または、その混合物中の高毒

性成分すべてについては毒性データが入手でき、かつその他の成分については、個々の急性または慢性

毒性データが揃っていないような成分も含めて、毒性が低いかまたはなく、その混合物の環境有害性に

有意に影響しないという説得力のある証拠があれば、加算式(4.1.3.5.2)を用いてもよい。

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表 4.1.5 混合物中の高毒性成分に関する毒性乗率M

急性毒性 毒性乗率 M 慢性毒性 毒性乗率 M

L(E)C50値 NOEC 値 NRDa成分 RDb成分

0.1<L(E)C50≦1 1 0.01<NOEC≦0.1 1 -

0.01<L(E)C50≦0.1 10 0.001<

NOEC≦0.01 10 1

0.001<L(E)C50≦0.01 100 0.0001<

NOEC≦0.001 100 10

0.0001<L(E)C50≦0.001 1000 0.00001<

NOEC≦0.0001 1000 100

0.00001<L(E)C50≦0.0001 10000 0.000001<

NOEC≦0.00001 10000 1000

(以降 10 倍ずつ続く) (以降 10 倍ずつ続く) a 急速分解性がない b 急速分解性がある 4.1.3.6 利用可能な情報がない成分を含む混合物の分類 関連成分のうち 1 種類以上について急性または慢性水生毒性に関して利用可能な情報が揃っていない

混合物については、決定的な有害性区分に帰属させることはできないと結論付けられる。そのような状況では、混合物は既知成分のみにもとづいて分類され、「本混合物の成分 x%については水生環境有害性が不明である」という記述を追加しておくべきである。所管官庁はその追加的な記述をラベルまたはSDS あるいはその両方で伝達することを明記するかどうか、またその記述をどこにするかの選択を製造者/供給者に委ねるかどうかを決めることができる。 4.1.4 危険有害性情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表 4.1.6: 水生環境有害性物質のラベル要素

短期間(急性)水性有害性

区分急性 1 区分急性 2 区分急性 3

シンボル 環境 シンボルなし シンボルなし

注意喚起語 警告 注意喚起語なし 注意喚起語なし

危険有害性情報 水生生物に非常に強い毒性 水生生物に毒性 水生生物に有害

長期間(慢性)水性有害性

区分慢性 1 区分慢性 2 区分慢性 3 区分慢性 4

シンボル 環境 環境 シンボルなし シンボルなし

注意喚起語 警告 注意喚起語なし 注意喚起語なし 注意喚起語なし

危険有害性情報 長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性

長期継続的影響により水生生物

に毒性

長期継続的影響により水生生物

に有害

長期継続的影響により水生生物に有害のおそれ

4.1.5 水生環境有害性のある物質および混合物の判定論理 以下に示す判定論理は、GHS には含まれないが、追加の手引きとして、ここに示す。分類の責任者に対

し、この判定論理を使用する前および使用する際に判定基準についてよく調べ理解することを強く勧める。

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4.1.5.1 短期間(急性)水生有害性の分類

4.1.5.1.1 水生環境有害性のある物質および混合物の判定論理4.1.1

(次ページに続く)

―――――――――――――――――――――――

1 分類は実測データまたは計算値( 本章4.1.2.13 および附属書 9参照) または類似性判定(附属書9 の A9.6.4.5 参照)に基づいてよい。

2 表示の要件は規制体系ごとに異なる。一部の分類区分は、1つまたは 少数の規則のみでしか使用されない場合もある。

物質: 分類のために充分な情報(毒性、分解性、生物蓄積性)があ

るか 1?

急性: 以下の1つに該当するか? (a) 96 時間 LC50 (魚類) ≦1mg/l および/または (b) 48 時間 EC50 (甲殻類) ≦1mg/l, および/または (c) 72または 96時間ErC50 (藻類またはその他の水生植物) ≦1mg/l?

急性: 以下の1つに該当するか? (a) 96 時間 LC50 (魚類) ≦10mg/l および/または (b) 48 時間 EC50 (甲殻類) ≦10mg/l, および/または (c) 72 または 96 時間 ErC50 (藻類またはその他の水生植物) ≦10mg/l?

急性: 以下の1つに該当するか? (a) 96 時間 LC50 (魚類) ≦100mg/l および/または (b) 48 時間 EC50 (甲殻類) ≦100mg/l, および/または (c) 72 または 96 時間 ErC50 (藻類またはその他の水生植物 )

≦100mg/l?

判定論理 4.1.2から 、 混 合 物 のL(E)C50 で 評 価する

急性1

警告

急性 22

急性 32

急性では区分

Yes

No

No

No

Yes

Yes

Yes

No

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混合物: 混合物そのものについて、魚類、甲殻類、藻類/水生植物についての水生毒性データがあるか?

急性 96 時間 LC50 (魚類)、48 時間 EC50 (甲殻類)、あるいは72 または 96 時間 ErC50 (藻類またはその他の水生植物) ≦1mg/l か?

急性 96 時間 LC50 (魚類)、48 時間 EC50(甲殻類)、あるいは 72または 96 時間 ErC50(藻類またはその他の水生植物) ≦10mg/l か?

急性 96 時間 LC50 (魚類)、48 時間 EC50 (甲殻類)、あるいは 72または 96 時間 ErC50( 藻類またはその他水生植物)≦100mg/l か?

混合物/判定論理 4.1.2 の値

急性1

警告

急性 22

急性 32

急性では区分

(次ページに続く)

――――――――――――――――――

2 表示の要件は規制体系ごとに異なる。一部の分類区分は、1つまたは 少数の規則のみでしか使用されない場合もある。

No Yes

No

No

No

Yes

Yes

Yes

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――――――――――――――――――――――

2 表示の要件は規制体系ごとに異なる。一部の分類区分は、1つまたは少数の規則のみでしか使用されない場合もある。 3 すべての成分についての情報が揃っていない場合、ラベルに「混合物中x%の成分は、水生環境有害性が未知のもの

である」という記述を入れる。所管官庁はその追加的な記述をラベルまたはSDSあるいはその両方で伝達することを明記

するかどうか、またその記述をどこにするかの選択を製造者/供給者に委ねるかどうかを決めることができる。あるいは、

非常に毒性の強い成分を含む混合物の場合、当該成分についての毒性データが入手でき、他の成分が混合物の有害性に著

しい影響を及ぼさないものであれば、加算式を適用してもよい ( 4.1.3.5.5.5 参照)。この場合、およびすべての成分に

ついて毒性値が入手できた場合は、短期間(急性)分類は加算式に基づいてのみ行うことができる 4 毒性乗率Mの説明は4.1.3.5.5.5 を参照のこと

つなぎの原則が適用できるか?

以下のように加算法では入手できたすべての成分情報を使用する 3:(a) 毒性値が入手できた成分については加算式 (判定論理 4.1.2)を適用し、混合物のその部分について毒性

区分を決め、その情報を以下の加算法に用いる。 (b) 分類された成分は直接以下の加算法において用いる。

急性1に分類された成分の濃度(%)の合計:急性 1×M4≧25%か?

急性 1、2 に分類された成分の濃度(%)の合計:(急性 1×M4×10)+急性 2≧25%か?

急性 1、2、3 に分類された成分の濃度(%)合計:(急性 1×M4×100)+(急性 2×10)+急性 3≧25%か?

急性 1

警告

急性 22

急性では区分

なし

急性 32

適切な区分に分類する

No

No

Yes

No

No

Yes

Yes

Yes

Yes

No

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∑Ci L ( E ) C 50m = ∑

Ci L ( E ) C 50i

n

4.1.5.1.2 判定論理 4.1.2 混合物(加算法) 加算法を適用する:

ここで: Ci = 成分iの濃度(重量%) L(E)C50i = (mg/l)成分iのLC50またはEC50 n = 成分数で、iは1からnまでの値をとる L(E)C50m = 試験データのある混合物部分のL(E)C50

混合物の判定論理 4.1.1 の値

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4.1.5.2 長期間(慢性)水生有害性の分類 4.1.5.2.1 物質の判定論理4.1.3(a)

―――――――――――――――――――――― 5 GLP 原則に従った国際的に調和された試験方法(例えばOECD テストガイドラインまたはそれと同等なもの)を用いて

データを得るのが望ましいが、それらと同等なものとみなされれば、内国的な方法などの他の試験方法も用いても構わな

い(4.1.1.2.2および付属書9のA9.3.2を参照)。 6 図4.1.1を参照。 7 両方の方式でフローチャートをたどり、 も厳しい分類結果を選ぶ。 8 ただし、システムでは、利用できるデータからは正式の判定基準による分類ができないが、それにも関わらず何らか

の懸念の余地がある場合に用いられるよう、分類の「セーフティネット」(区分:慢性4)を導入している。

3 つの栄養段階すべてについて、慢性毒性の充分なデータがあるか?5,6

1 つまたは 2 つの栄養段階について、慢性毒性の充分なデータがあるか?5,6

慢性毒性のデータがない栄養段階について、急性毒性の充分なデータがあるか?5,6

にもかかわらず、何らかの懸念の余地があ

るか?8

判定論理 4.1.3(b)へ

判定論理 4.1.3(c)へ

慢性 4

シンボルなし 注意喚起語なし

No

No

No

Yes

Yes7

Yes

Yes

Yes7

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4.1.5.2.2 (3つの栄養段階すべてについて、慢性毒性の十分なデータが得られた場合の)物質の判定論

理4.1.3(b)5

―――――――――――――――――――――― 5 GLP 原則に従った国際的に調和された試験方法(例えばOECD テストガイドラインまたはそれと同等なもの)を用いて

データを得るのが望ましいが、それらと同等なものとみなされれば、各国独自の方法などの他の試験方法も用いても構わ

ない(4.1.1.2.2および付属書9のA9.3.2を参照)。

その物質に急速分 解 性 が あ るか?

NOEC≦0.01mg/l? NOEC≦0.1mg/l? NOEC≦1mg/l?

NOEC≦0.1mg/l?

NOEC≦1mg/l?

慢性 1

警告

表 4.1.5 による毒性乗率M を当てはめる

慢性 2

注意喚起語なし

慢性 3

シンボルなし 注意喚起語なし

長期間(慢性)有害性についての区分外

Yes

No No

Yes

No or

不明

No

Yes

Yes

No

Yes

Yes

No

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4.1.5.2.3 (3つの栄養段階すべてについて、慢性毒性の十分なデータが得られない場合の)物質の判定

論理4.1.3(c)5

―――――――――――――――――――――― 5 GLP 原則に従った国際的に調和された試験方法(例えばOECD テストガイドラインまたはそれと同等なもの)を用いて

データを得るのが望ましいが、それらと同等なものとみなされれば、内国的な方法などの他の試験方法も用いても構わな

い(4.1.1.2.2および付属書9のA9.3.2を参照)。

その物質に急速分解性があるか? L(E)C50≦ 1mg/l? L(E)C50≦ 10mg/l? L(E)C50≦ 100mg/l?

L(E)C50≦1mg/l および BCF≧500 (または、データがない場合 logKow≧4)?

L(E)C50≦10mg/l および BCF≧500 (または、データがない場合 logKow≧4)?

L(E)C50≦100mg/l および BCF≧500 (または、データがない場合 logKow≧4)?

慢性 1

警告

表 4.1.5 による 毒性乗率 M を当

てはめる

慢性 2

注意喚起語なし

慢性 3

シンボルなし 注意喚起語なし

長期間(慢性)有害性についての区分外

Yes

No

No

Yes Yes Yes

No

No

Yes

No or

unknown

Yes

No

Yes

No

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4.1.5.2.4 混合物についての判定論理4.1.4

―――――――――――――――――――――― 9 混合物の分解性や生物蓄積性の試験のデータは、通常は解釈するのが難しいので用いられることがなく、そうした試

験が有意義なのは単一の物質に対してだけである。このため混合物は、当初の段階で急速分解性のないものとみなされる。

とはいえ、入手した情報から混合物の関連成分すべてが急速分解性があるとの結論が認められた場合は、その混合物は、

分類目的のために急速分解性があると分類することができる。

10 関連成分のうち1種類以上について急性または慢性水生毒性に関して利用可能な情報が揃っていない混合物については、決定的な有害性区分に帰属させることはできないと結論づけられる。そのような状況では、混合物は既知成分のみにもとづいて分類され、「本混合物の成分x%については水生環境有害性が不明である」という記述を追加しておくべきである。所管官庁はその追加的な記述をラベルまたは SDS あるいはその両方で伝達することを明記するかどうか、またその記述をどこにするかの選択を製造者/供給者に委ねるかどうかを決めることができる。 11 混合物中の成分2種類以上について十分な毒性データが入手できる場合には、毒性データの性質に応じて、4.1.3.5.2

の加算式(a)または(b)に従って、これらの成分の毒性加算値を算出できる。この毒性計算値を用いてその混合物の部分に

急性または慢性の有害性区分を割り振り、その後これを加算法に適用してもよい。同一分類群(例えば魚類、甲殻類また

は藻類)について各成分の毒性値を用いて混合物のこの部分の毒性を計算し、得られた計算値の中の も高い毒性値(

低毒性濃度、これら3つの分類群のうち感受性が も高い群で得られた値)を採用することが望ましい(4.1.3.5.3を参照))。

混合物そのものについて、十分な毒性データがある

か?

個々の成分および試験された類似の混合物について、混合物の有害性を十分に特長づける十分なデータが得られているか?

関連成分のいくつかないしすべてについて、短期間(急性)区分または毒性の十分なデータが得られているか?10

急速分解性のない物質についての判定論理 4.1.3(4.1.5.2.1を参照)に従い、その混合物を長期間(慢性)有害性があると分類 9

つなぎの原則(4.1.3.4 を参照)を適用し、その混合物を長期間(慢性)有害性があると分類

慢性、ない場合は急性と分類される成分の濃度(%)を用いて、加算方法(4.1.3.5.5 を参照)を適用し、その混合物を長期間(慢性)有害性があると分類 11

十分なデータが不足しているために分類できない

No

No

Yes

Yes

Yes

No

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第4.2 章

オゾン層への有害性

4.2.1 定義 オゾン破壊係数(ODP)とは、ハロカーボンによって見込まれる成層圏オゾンの破壊の程度を、CFC-11

に対して質量ベースで相対的に表した積算量であり、ハロカーボンの種類ごとに異なるものである。

ODP の正式な定義は、等量の CFC-11 排出量を基準にした、特定の化合物の排出に伴う総オゾンの擾

乱量の積算値の比の値である。 モントリオール議定書とは、議定書の締約国によって調整および/または修正された、オゾン層破壊物

質に関するモントリオール議定書をいう。 4.2.2 分類基準1

物質または混合物は次表に従って区分1に分類される。

表4.2.1: オゾン層への有害性のある物質および混合物の基準

区分 基準

1 モントリオール議定書の附属書に列記された、あらゆる規制物質; または モントリオール議定書の附属書に列記された成分を、濃度≧0.1%で少なくとも1つ含むあらゆる混合物

4.2.3 危険有害性に関する情報の伝達 表示要件に関する通則および細則は、危険有害性に関する情報の伝達:表示(第 1.4 章)に定める。

附属書 1 に分類と表示に関する概要表を示す。附属書3には、注意書きおよび所管官庁が許可した場合

に使用可能な注意絵表示の例を示す。

表4.2.2: オゾン層への有害性のある物質および混合物のラベル要素

区分1

シンボル 感嘆符

注意喚起語 警告

危険有害性情報 オゾン層を破壊し、健康および環境に有害

1 本章の判定基準は、物質および混合物に適用されることを意図したものである。オゾン層有害性物質を含有する機器、

品目または(冷蔵機器やエアコンなどの)電気器具は、この判定基準の適用範囲外である。医薬品に関する 1.1.2.5

(a)(iii)に合わせて、GHS 分類および表示基準は意図的な吸入という点で医療用吸入器には適用されない。

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4.2.4 オゾン層有害性のある物質および混合物の判定論理 以下の判定論理は、GHS の一部ではないが、追加的なガイドラインとしてここに示す。分類の責任者

は判定論理の使用前および使用中にこの判定基準を学んでおくことを強く推奨する。

判定論理 4.2.1

物質: その物質がモントリオール議定書の附属書に列記されているか?

混合物: その物質に、モントリオール議定書の附属書に列記されている成分が、濃度≧0.1%で少なくとも1つ含まれるか?

分類できない

分類できない

区分 1

警告

No

No

Yes

Yes

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附属書

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附属書 1

分類および表示のまとめ

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附属書 1

分類および表示のまとめ

注記: 危険有害性情報のコードについては附属書 3(第 1 節)でさらに説明されている。危険有害性情報の

コードは参照の目的だけに使用される。これらは危険有害性情報の一部ではないし、その代わりに用いるべ

きではない。

A1.1 爆発物(判定基準は第 2.1 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

爆発物

不安定

爆発物

(輸送では

不許可)

危険

不安定爆発物 H200

等級 1.1

爆発物:大量爆発危険性 H201

等級 1.2

爆発物:激しい飛散危険性 H202

等級 1.3

爆発物;火災、爆風または

飛散危険性 H203

等級 1.4

警告 火災または飛散危険性 H204

等級 1.5

絵表示

なし

危険 火災時に大量爆発のおそれ H205

等級 1.6 絵表示

なし

注意喚起

語なし 危険有害性情報なし なし

a (*) 隔離区分番号

等級 1.1、1.2 及び 1.3 に対する絵表示は副次危険性をもつ物質にも割り当てられるが、等級番号および

隔離番号は示さない(「自己反応性物質および混合物」および「有機過酸化物」も参照のこと)。

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- 248 -

A1.2 可燃性/引火性ガス(判定基準は第 2.2 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

可燃性/引火性ガス

1

危険 極めて可燃性/引火性の高い

ガス H220

2 絵表示

なし

要求され

ない 警告 可燃性/引火性の高いガス H221

自然発火性ガ

危険 空気に触れると自然発火する

おそれ H232

A (化学的に不

安定なガス)

追加的絵

表示なし 要求され

ない

追加的注

意喚起語

なし

追加的危険有害性情報: 空気が無くても爆発的に反応

するおそれ H230

B (化学的に不

安定なガス)

追加的絵

表示なし 要求され

ない

追加的注

意喚起語

なし

追加的危険有害性情報: 圧力および/または温度が上

昇した場合、空気が無くても

爆発的に反応するおそれ

H231

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、シンボル、番号、および境界線は白でなく黒でもよい。

背景色は両者とも赤のままである。

A1.3 エアゾール(判定基準は第 2.3 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有

害性ク

ラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

エアゾ

ール

1

危険 極めて可燃性/引火性の高いエア

ゾール 高圧容器:熱すると破裂のおそれ

H222 H229

2

警告 可燃性/引火性の高いエアゾール

高圧容器:熱すると破裂のおそれ

H223 H229

3 絵表示

なし

警告 高圧容器:熱すると破裂のおそれ H229

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、シンボル、番号、および境界線は黒または白で示す。背

景色は最初の2つは赤、3 番目は緑のままである。

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- 249 -

A1.4 支燃性/酸化性ガス(判定基準は第 2.4 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

支燃性/酸化性ガス

1

危険 発火または火炎助長のおそれ;酸化

性物質 H270

A1.5 高圧ガス(判定基準は第 2.5 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有

害性ク

ラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

高圧

ガス

圧縮ガス

警告 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ H280

液化ガス

警告 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ H280

深冷液化ガス

警告 深冷液化ガス;凍傷または傷害の

おそれ H281

溶解ガス

警告 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ H280

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、シンボル、番号、および境界線は黒でなく白でもよい。

背景色は両者とも緑のままである。この絵表示は毒性又は可燃性/引火性ガスには要求されない(表 A1.17および A1.2 の「a」も参照のこと)。

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- 250 -

A1.6 引火性液体(判定基準は第 2.6 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

引火性液

1

危険 極めて引火性の高い液体および蒸

気 H224

2

危険 引火性の高い液体および蒸気 H225

3

警告 引火性液体および蒸気 H226

4 絵表示なし 要求され

ない 警告 可燃性液体 H227

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、シンボル、番号、および境界線は白でなく黒でもよい。

背景色は両者とも赤のままである。

A1.7 可燃性固体(判定基準は第 2.7 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性

クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

可燃性固体

1

危険 可燃性固体 H228

2

警告 可燃性固体 H228

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- 251 -

A1.8 自己反応性物質および混合物(判定基準は第 2.8 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル規則

a

自己反応

性物質お

よび混合

タイプ A

(輸送が許可され

ないであろう) b危険 熱すると爆発のおそれ H240

タイプ B

危険 熱すると火災または爆発

のおそれ H241

タイプ

C と D

危険 熱すると火災のおそれ H242

タイプ E と F

警告 熱すると火災のおそれ H242

タイプ G 絵表示なし 要求されない 注意喚起

語なし 危険有害性情報なし なし

a タイプ B については、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則に基づく特別規則 181 条が適用される(所

管官庁の許可による爆発物ラベル適用除外。詳細は国連モデル規則の第 3.3 章を参照のこと)。 b 試験された包装容器での輸送は許可されないであろう(モデル規則の第 2.5 章 2.5.3.2.2 を参照のこと)。

A1.9 自然発火性液体(判定基準は第 2.9 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性

クラス 区分

絵表示 注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

自然発火性

液体 1

危険 空気に触れると自然発火 H250

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- 252 -

A1.10 自然発火性固体(判定基準は第 2.10 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性

クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

自然発火性

固体 1

危険 空気に触れると自然発火 H250

A1.11 自己発熱性物質および混合物(判定基準は第 2.11 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性

クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

自己発熱性

物質および

混合物

1

危険 自己発熱;火災のおそれ H251

2

警告 大量の場合

自己発熱;火災のおそれ H252

A1.12 水反応可燃性物質および混合物(判定基準は第 2.12 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性

クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

水反応可燃

性物質およ

び混合物

1

危険 水に触れると自然発火するおそれ

のある可燃性/引火性ガスを発生 H260

2

危険 水に触れると可燃性/引火性ガスを

発生 H261

3

警告 水に触れると可燃性/引火性ガスを

発生 H261

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、シンボル、番号、および境界線は白でなく黒でもよい。

背景色は両者とも青のままである。

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- 253 -

A1.13 酸化性液体(判定基準は第 2.13 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

酸化性液

1

危険 火災または爆発のおそれ;強酸化性

物質 H271

2

危険 火災助長のおそれ;酸化性物質 H272

3

警告 火災助長のおそれ;酸化性物質 H272

A1.14 酸化性固体(判定基準は第 2.14 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

酸化性固

1

危険 火災または爆発のおそれ;強酸化性

物質 H271

2

危険 火災助長のおそれ;酸化性物質 H272

3

警告 火災助長のおそれ;酸化性物質 H272

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- 254 -

A1.15 有機過酸化物(判定基準は第 2.15 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル規則 a

有機過酸

化物

タイプ A

(輸送が許可され

ないであろう) b危険 熱すると爆発のおそれ H240

タイプ B

危険 熱すると火災または爆

発のおそれ H241

タイプ

C と D

危険 熱すると火災のおそれ H242

タイプ E と F

警告 熱すると火災のおそれ H242

タイプ G 絵表示なし 要求されない 注意喚起

語なし危険有害性情報なし なし

a タイプ B については、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則に基づく特別規則 181 条が適用される(所

管官庁の許可による爆発物ラベル適用除外。詳細は国連モデル規則の第 3.3 章を参照のこと)。

b 試験された包装容器での輸送は許可されないであろう(モデル規則の第 2.5 章 2.5.3.2.2 を参照のこと)。

A1.16 金属腐食性(判定基準は第 2.16 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害

性クラス 区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

金属腐食

性 1

警告 金属腐食のおそれ H290

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- 255 -

A1.17 鈍感化爆発物(判定基準は第 2.17 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険有害性クラス 区分

絵表示 注意喚起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

鈍感化爆発物

1

適用なし

危険

火災、爆風または飛散危険

性;鈍感化剤が減少した場

合には爆発の危険性の増加 H206

2

適用なし 火災または飛散危険性;鈍

感化剤が減少した場合には

爆発の危険性の増加 H207

3

適用なし

警告

火災または飛散危険性;鈍

感化剤が減少した場合には

爆発の危険性の増加 H207

4

適用なし 火災の危険性;鈍感化剤が

減少した場合には爆発の危

険性の増加 H208

a 輸送における鈍感化爆発物の分類および表示は異なる方法による。輸送では、固体の鈍感化爆発物は等級

4.1(可燃性固体)に分類され等級 4.1 のラベルが貼付されなければならない(危険物輸送に関する国連勧

告、モデル規則の第 2.4 章 2.4.2.4 節を参照)。輸送目的では、液体の鈍感化爆発物はクラス 3(可燃性/引火性液体)に分類され、クラス 3 のラベルが貼付されなければならない(モデル規則、第 2.3 章、2.3.1.4を参照)。

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- 256 -

A1.18 急性毒性(判定基準は第 3.1 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

急性

毒性

1

経口

危険

飲み込むと生命に危険 H300

経皮 皮膚に接触すると生命に危険 H310

吸入 吸入すると生命に危険 H330

2

経口

危険

飲み込むと生命に危険 H300

経皮 皮膚に接触すると生命に危険 H310

吸入 吸入すると生命に危険 H330

3

経口

危険

飲み込むと有毒 H301

経皮 皮膚に接触すると有毒 H311

吸入 吸入すると有毒 H331

4

経口

要求され ない

警告

飲み込むと有害 H302

経皮 皮膚に接触すると有害 H312

吸入 吸入すると有害 H332

5

経口 絵表示 なし

要求され ない

警告

飲み込むと有害のおそれ H303

経皮 皮膚に接触すると有害のおそれ H313

吸入 吸入すると有害のおそれ H333

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則に基づくガスについては、絵表示下隅の番号 6 を 2 に置き換

える。

A1.19 皮膚腐食性/刺激性(判定基準は第 3.2 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険

有害性

クラス

区分

絵表示 注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

皮膚腐食性/刺激性

1

危険 重篤な皮膚の薬傷・眼

の損傷 H314

2

要求され ない

警告 皮膚刺激 H315

3a 絵表示 なし

要求され ない

警告 軽度の皮膚刺激 H316

a 必要とする所管官庁がある。

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- 257 -

A1.20 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性(判定基準は第 3.3 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険

有害性

クラス

区分

絵表示

注意喚起語 危険有害性情報 GHS

国連モデル

規則

眼に対する

重篤な損傷

性/眼刺激性

1

要求され ない

危険 重篤な眼の損傷 H318

2/2A

要求され ない

警告 強い眼刺激 H319

2B

絵表示 なし

要求され ない

警告 眼刺激 H320

A1.21 呼吸器感作性(判定基準は第 3.4 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険

有害性

クラス

区分

絵表示 注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

呼吸器

感作性

1

要求され ない

危険 吸入するとアレルギー、喘息ま

たは呼吸困難を起こすおそれ H334

1Aa

要求され ない

危険 吸入するとアレルギー、喘息ま

たは呼吸困難を起こすおそれ H334

1Ba

要求され ない

危険 吸入するとアレルギー、喘息ま

たは呼吸困難を起こすおそれ H334

a 細区分はデータが十分にあり、所管官庁によって要求されている場合に適用される。

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- 258 -

A1.22 皮膚感作性(判定基準は第 3.4 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚起語 危険有害性情報 GHS

国連モデル

規則

皮膚感作性

1

要求され ない

警告 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ

H317

1Aa

要求され ない

警告 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ H317

1Ba

要求され ない

警告 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ

H317

a 細区分はデータが十分にあり、所管官庁によって要求されている場合に適用される。

A1.23 生殖細胞変異原性(判定基準は第 3.5 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

生殖細胞

変異原性

1 (1A および 1B)

要求され ない

危険

遺伝性疾患のおそれ(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H340

2

要求され ない

警告

遺伝性疾患のおそれの疑い(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H341

A1.24 発がん性(判定基準は第 3.6 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

発がん性

1 (1A および 1B)

要求され ない

危険

発がんのおそれ(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H350

2

要求され ない

警告

発がんのおそれの疑い(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H351

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- 259 -

A1.25 生殖毒性(判定基準は第 3.7 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

生殖毒性

1

(1A およ

び 1B)

要求され ない

危険

生殖能または胎児への悪影響

のおそれ(もし判れば影響の

内容を記載する)(他の経路か

らのばく露が有害でないこと

が決定的に証明されている場

合、有害なばく露経路を記載)

H360

2

要求され ない

警告

生殖能または胎児への悪影響

のおそれの疑い(もし判れば

影響の内容を記載する)(他の

経路からのばく露が有害でな

いことが決定的に証明されて

いる場合、有害なばく露経路

を記載)

H361

追加区分

授乳に対す

るまたは授

乳を介した

影響

絵表示 なし

要求され ない

注意喚

起語 なし

授乳中の子に害を及ぼす

おそれ H362

A1.26 特定標的臓器毒性-単回ばく露(判定基準は第 3.8 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

特定標的

臓器毒性

-単回

ばく露

1

要求され ない

危険

<.....>の障害(もし判れば影響を受

ける全ての臓器を記載する)(他の経

路からのばく露が有害でないことが

決定的に証明されている場合、有害

なばく露経路を記載)

H370

2

要求され ない

警告

<…..>の障害のおそれ(もし判れば

影響を受ける全ての臓器を記載す

る)(他の経路からのばく露が有害で

ないことが決定的に証明されている

場合、有害なばく露経路を記載)

H371

3

要求され ない

警告

呼吸器への刺激のおそれ

または 眠気またはめまいのおそれ

H335

H336

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- 260 -

A1.27 特定標的臓器毒性-反復ばく露(判定基準は第 3.9 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚

起語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則

特定標的

臓器毒性

-反復

ばく露

1

要求され ない

危険

長期にわたる、または反復ばく露による<…..>の障害(もし判れば影響を受ける全ての臓器を記載する)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H372

2

要求され ない

警告

長期にわたる、または反復ばく露による<…..>の障害のおそれ(もし判れば影響を受ける全ての臓器を記載する)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害なばく露経路を記載)

H373

A1.28 吸引性呼吸器有害性(判定基準は第 3.10 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚起語 危険有害性情報 GHS

国連モデル

規則

吸引性

呼吸器

有害性

1

要求され ない

危険 飲み込んで気道に侵入すると

生命に危険のおそれ H304

2

要求され ない

警告 飲み込んで気道に侵入すると

有害のおそれ H305

A1.29(a) 水生環境有害性、短期間(急性)(判定基準は第 4.1 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚起語 危険有害性情報 GHS

国連モデル規

則 a

水生環境有害

性、短期間

(急性)

急性 1

警告 水生生物に非常

に強い毒性 H400

急性 2 絵表示なし 要求されない 注意喚起語なし 水生生物に毒性 H401

急性 3 絵表示なし 要求されない 注意喚起語なし 水生生物に有害 H402

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、区分 1 に関して、当該物質がモデル規則でカバーする他の危険有害性がある場合には、この絵表示は必要ない。他の危険有害性がない場合には、モデル規則クラス 9 のラベルと共にこの絵表示が必要とされる。

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A1.29(b) 水生環境有害性、長期間(慢性)(判定基準は第 4.1 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分

絵表示

注意喚起語 危険有害性情報 GHS

国連モデル

規則 a

水生環境有害

性、長期間

(慢性)

慢性 1

警告 長期継続的影響により水

生生物に非常に強い毒性 H410

慢性 2

注意喚起語

なし 長期継続的影響により水

生生物に毒性 H411

慢性 3 絵表示 なし

要求され ない

注意喚起語

なし 長期継続的影響により水

生生物に有害 H412

慢性 4 絵表示 なし

要求され ない

注意喚起語

なし 長期継続的影響により水

生生物に有害のおそれ H413

a 危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則では、区分 1 および 2 に関して、当該物質がモデル規則でカ

バーする他の危険有害性がある場合には、この絵表示は必要ない。他の危険有害性がない場合には、モ

デル規則クラス 9 のラベルと共にこの絵表示が必要とされる。

A1.30 オゾン層への有害性(判定基準は第 4.2 章を参照のこと)

分類 表示 コード

危険 有害性 クラス

区分 絵表示

注意喚起

語 危険有害性情報

GHS 国連モデル

規則 a

オゾン層

への有害性 1

要求され ない

警告 オゾン層を破壊し、健康およ

び環境に有害 H420

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- 263 -

附属書 2

(削除)

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- 265 -

附属書 3

危険有害性情報のコード

注意書きのコードと使用法

絵表示のコード

および注意絵表示の例

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- 267 -

附属書 3

第1節

危険有害性情報のコード

A3.1.1 序文 A3.1.1.1 危険有害性情報とは、危険有害性クラスおよび危険有害性区分に割り当てられた文言であっ

て、危険有害な製品の危険有害性の性質を、該当する程度も含めて記述する文言をいう。 A3.1.1.2 この節には GHS の危険有害性区分に適用される危険有害性情報にそれぞれ割り当てられた

推奨コードを含む。 A3.1.1.3 危険有害性情報のコードは参照するためのものである。コードは危険有害性情報の文言

の一部ではないので、文言の代わりに用いることはできない。 A3.1.2 危険有害性情報のコード A3.1.2.1 危険有害性情報には1つの文字と3つの数字からなる英数字コードが、下記のように割

り当てられている。 (a) 文字「H」(危険有害性情報“hazard statement”) (b) 危険有害性の種類を示す番号、割り当てられた危険有害性情報に対し下記のように番号 が付けられている:

-「2」物理的危険性

-「3」健康有害性

-「4」環境有害性

(c) 連続した2つの番号、物質や混合物の性質に起因する危険有害性をあらわす、例えば、

爆発性(コード 200 から 210)、可燃性(コード 220 から 230)他。 A3.1.2.2 割り当てられた危険有害性情報に使用するコードは、物理的危険性は表 A3.1.1 に、健康有害

性は表 A3.1.2 に、環境有害性は表 A3.1.3 に番号順に記載してある。 欄(1) 危険有害性情報コード 欄(2) 危険有害性情報

特別の指示がない限り、太字になっている文言がラベルに記載される。斜体の情

報は、もし情報があれば、危険有害性情報の一部として記載する。 例えば、「長期にわたる、または反復ばく露(他の経路からのばく露が有害でな

いことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)による臓器の障

害(もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)」

欄(3) 危険有害性クラスおよび該当する危険有害性クラスについての情報がある GHS 文 書の章

欄(4) 当該危険有害性情報が適用可能な危険有害性クラスでの区分 A3.1.2.3 それぞれの危険有害性情報に加え、いくつかの結合された危険有害性情報を表 A3.1.2 に示し

た。結合された情報に対するアルファベットと数によるコードは、それぞれの情報コードがプラス「+」によって結ばれている。例えば H300+H310 は、ラベルでは「飲み込んだり皮膚に接触すると生命に危

険」となる。

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- 268 -

A3.1.2.4 すべての割り当てられた危険有害性情報は、1.4.10.5.3.3 での決まりに当てはまらない限り、

ラベルに記載すべきである。所管官庁は記載の順序について決めてもよい。また、結合された危険有害

性情報が 2 つ以上の危険有害性を示している場合には、所管官庁は結合された危険有害性情報あるいは

それぞれの情報のどちらをラベルに記載するかを決めてもよいし、製造者/供給者に選択を委ねてもよい。

表 A3.1.1: 物理的危険性の危険有害性情報コード

コード (1)

物理的危険性 危険有害性情報 (2)

危険有害性クラス(GHS の章) (3)

区分 (4)

H200 不安定爆発物 爆発物(2.1 章) 不安定 爆発物

H201 爆発物;大量爆発危険性 爆発物(2.1 章) 等級 1.1

H202 爆発物;激しい飛散危険性 爆発物(2.1 章) 等級 1.2

H203 爆発物;火災、爆風または飛散危険性 爆発物(2.1 章) 等級 1.3

H204 火災または飛散危険性 爆発物(2.1 章) 等級 1.4

H205 火災時に大量爆発のおそれ 爆発物(2.1 章) 等級 1.5

H206 火災、爆風または飛散危険性;鈍感化剤が減少

した場合には爆発の危険性の増加 鈍感化爆発物(2.17 章) 1

H207 火災または飛散危険性;鈍感化剤が減少した場

合には爆発の危険性の増加 鈍感化爆発物(2.17 章) 2, 3

H208 火災危険性;鈍感化剤が減少した場合には爆発

の危険性の増加 鈍感化爆発物(2.17 章) 4

H220 極めて可燃性/引火性の高いガス 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 1

H221 可燃性/引火性の高いガス 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 2

H222 極めて可燃性/引火性の高いエアゾール エアゾール(2.3 章) 1

H223 可燃性/引火性の高いエアゾール エアゾール(2.3 章) 2

H224 極めて引火性の高い液体および蒸気 引火性液体(2.6 章) 1

H225 引火性の高い液体および蒸気 引火性液体(2.6 章) 2

H226 引火性の液体および蒸気 引火性液体(2.6 章) 3

H227 可燃性液体 引火性液体(2.6 章) 4

H228 可燃性固体 可燃性固体(2.7 章) 1,2

H229 高圧容器:熱すると破裂のおそれ エアゾール(2.3 章) 1,2,3

H230 空気が無くても爆発的に反応するおそれ 可燃性/引火性ガス(2.2 章) A(化学的

に不安定

なガス)

H231 圧力および/または温度が上昇した場合、空気が

無くても爆発的に反応するおそれ 可燃性/引火性ガス(2.2 章) B(化学的

に不安定

なガス)

H232 空気に触れると自然発火のおそれ 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 自然発火

性ガス

H240 熱すると爆発のおそれ 自己反応性物質および混合物(2.8章)

有機過酸化物(2.15 章) タイプ A

H241 熱すると火災または爆発のおそれ 自己反応性物質および混合物(2.8章) 有機過酸化物(2.15 章)

タイプ B

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コード

(1)

物理的危険性 危険有害性情報

(2)

危険有害性クラス(GHS の章)

(3)

区分

(4)

H242 熱すると火災のおそれ 自己反応性物質および混合物(2.8章)

有機過酸化物(2.15 章)

タイプ

C,D,E,F

H250 空気に触れると自然発火 自然発火性液体(2.9 章)

自然発火性固体(2.10 章)

1

H251 自己発熱;火災のおそれ 自己発熱性物質および混合物(2.11章) 1

H252 大量の場合自己発熱;火災のおそれ 自己発熱性物質および混合物(2.11章) 2

H260 水に触れると自然発火するおそれのある可燃性

/引火性ガスを発生

水反応可燃性物質および混合物

(2.12 章)

1

H261 水に触れると可燃性/引火性ガスを発生 水反応可燃性物質および混合物

(2.12 章)

2,3

H270 発火または火災助長のおそれ;酸化性物質 支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1

H271 火災または爆発のおそれ;強酸化性物質 酸化性液体(2.13 章)

酸化性固体(2.14 章)

1

H272 火災助長のおそれ;酸化性物質 酸化性液体(2.13 章)

酸化性固体(2.14 章)

2,3

H280 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ 高圧ガス(2.5 章) 高圧ガス

液化ガス

溶解ガス

H281 深冷液化ガス;凍傷または傷害のおそれ 高圧ガス(2.5 章) 深冷液化

ガス

H290 金属腐食のおそれ 金属腐食性物質(2.16 章) 1

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- 270 -

表 A3.1.2: 健康有害性の危険有害性情報コード

コード (1)

健康有害性 危険有害性情報 (2)

危険有害性クラス(GHS の章) (3)

区分 (4)

H300 飲み込むと生命に危険 急性毒性、経口(3.1 章) 1,2 H301 飲み込むと有毒 急性毒性、経口(3.1 章) 3 H302 飲み込むと有害 急性毒性、経口(3.1 章) 4 H303 飲み込むと有害のおそれ 急性毒性、経口(3.1 章) 5 H304 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそ

れ 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1

H305 飲み込んで気道に侵入すると有害のおそれ 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 2

H310 皮膚に接触すると生命に危険 急性毒性、経皮(3.1 章) 1,2 H311 皮膚に接触すると有毒 急性毒性、経皮(3.1 章) 3 H312 皮膚に接触すると有害 急性毒性、経皮(3.1 章) 4 H313 皮膚に接触すると有害のおそれ 急性毒性、経皮(3.1 章) 5 H314 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷 皮膚腐食性/刺激性(3.2 章) 1A,1B,1CH315 皮膚刺激 皮膚腐食性/刺激性(3.2 章) 2 H316 軽度の皮膚刺激 皮膚腐食性/刺激性(3.2 章) 3 H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ 感作性、皮膚(3.4 章) 1, 1A,1BH318 重篤な眼の損傷 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激

性(3.3 章) 1

H319 強い眼刺激 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激

性(3.3 章) 2A

H320 眼刺激 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激

性(3.3 章) 2B

H330 吸入すると生命に危険 急性毒性、吸入(3.1 章) 1,2 H331 吸入すると有毒 急性毒性、吸入(3.1 章) 3 H332 吸入すると有害 急性毒性、吸入(3.1 章) 4 H333 吸入すると有害のおそれ 急性毒性、吸入(3.1 章) 5 H334 吸入するとアレルギー、喘息または呼吸困難を

起こすおそれ 感作性、呼吸器(3.4 章) 1, 1A,1B

H335 呼吸器への刺激のおそれ 特定標的臓器毒性、単回ばく

露;気道刺激性(3.8 章) 3

H336 眠気またはめまいのおそれ 特定標的臓器毒性、単回ばく

露;麻酔作用(3.8 章) 3

H340 遺伝性疾患のおそれ(他の経路からのばく露が

有害でないことが決定的に証明されている場

合、有害な経路を記載する)

生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B

H341 遺伝性疾患のおそれの疑い(他の経路からのば

く露が有害でないことが決定的に証明されてい

る場合、有害な経路を記載する)

生殖細胞変異原性(3.5 章) 2

H350 発がんのおそれ(他の経路からのばく露が有害

でないことが決定的に証明されている場合、有

害な経路を記載する)

発がん性(3.6 章) 1A,1B

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コード (1)

健康有害性 危険有害性情報 (2)

危険有害性クラス(GHS の章) (3)

区分 (4)

H351 発がんのおそれの疑い(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

発がん性(3.6 章) 2

H360 生殖能または胎児への悪影響のおそれ(もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

生殖毒性(3.7 章) 1A,1B

H361 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い(もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

生殖毒性(3.7 章) 2

H362 授乳中の子に害を及ぼすおそれ 生殖毒性、授乳に対するまたは授乳を介したの影響(3.7 章)

追加区分

H370 臓器の障害 (もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章)

1

H371 臓器の障害のおそれ(もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章)

2

H372 長期にわたる、または反復ばく露による臓器の障害 (もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章)

1

H373 長期にわたる、または反復ばく露による臓器の障害のおそれ (もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる)(他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明されている場合、有害な経路を記載する)

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章)

2

H300 +

H310

飲み込んだり皮膚に接触すると生命に危険 急性毒性、経口(3.1 章)および急性毒性、経皮(3.1 章)

1, 2

H300 +

H330

飲み込んだり吸入すると生命に危険 急性毒性、経口(3.1 章)および急性毒性、吸入(3.1 章)

1, 2

H310 + H330

皮膚に接触したり吸入すると生命に危険 急性毒性、経皮(3.1 章)および急性毒性、吸入(3.1 章)

1, 2

H300 + H310

+ H330

飲み込んだり皮膚に接触したり吸入すると生命に危険

急性毒性、経口(3.1 章)および急性毒性、経皮(3.1 章)および 急性毒性、吸入(3.1 章)

1, 2

H301 +

H311

飲み込んだり皮膚に接触すると有毒 急性毒性、経口(3.1 章)および急性毒性、経皮(3.1 章)

3

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コード (1)

健康有害性 危険有害性情報 (2)

危険有害性クラス(GHS の章) (3)

区分 (4)

H301 +

H331

飲み込んだり吸入すると有毒 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 3

H311 + H331

皮膚に接触したり吸入すると有毒 急性毒性、経皮(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 3

H301 + H311

+ H331

飲み込んだり皮膚に接触したり吸入すると有毒 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、経皮(3.1 章)および 急性毒性、吸入(3.1 章)

3

H302

+ H312

飲み込んだり皮膚に接触すると有害 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、経皮(3.1 章) 4

H302 +

H332

飲み込んだり吸入すると有害 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 4

H312 + H332

皮膚に接触したり吸入すると有害 急性毒性、経皮(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 4

H302 + H312

+ H332

飲み込んだり皮膚に接触したり吸入すると有害 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、経皮(3.1 章)および 急性毒性、吸入(3.1 章)

4

H303 +

H313

飲み込んだり皮膚に接触すると有害のおそれ 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、経皮(3.1 章) 5

H303 +

H333

飲み込んだり吸入すると有害のおそれ 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 5

H313 +

H333

皮膚に接触したり吸入すると有害のおそれ 急性毒性、経皮(3.1 章)および

急性毒性、吸入(3.1 章) 5

H303 + H313

+ H333

飲み込んだり皮膚に接触したり吸入すると有害

のおそれ 急性毒性、経口(3.1 章)および

急性毒性、経皮(3.1 章)および 急性毒性、吸入(3.1 章)

5

H315

+ H320

皮膚および眼刺激 皮膚腐食性/刺激性(3.2 章)およ

び眼に対する重篤な損傷性/眼刺

激性(3.3 章)

2(皮膚)

/2B(眼)

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表 A3.1.3: 環境有害性の危険有害性情報コード

コード (1)

環境有害性 危険有害性情報 (2)

危険有害性クラス(GHS の章) (3)

区分 (4)

H400 水生生物に非常に強い毒性 水生環境有害性、急性有害性(4.1章)

1

H401 水生生物に毒性 水生環境有害性、急性有害性(4.1章)

2

H402 水生生物に有害 水生環境有害性、急性有害性(4.1章)

3

H410 長期継続的影響により水生生物に非常に強い

毒性 水生環境有害性、長期間有害性

(4.1 章) 1

H411 長期継続的影響により水生生物に毒性 水生環境有害性、長期間有害性

(4.1 章) 2

H412 長期継続的影響により水生生物に有害 水生環境有害性、長期間有害性

(4.1 章) 3

H413 長期継続的影響により水生生物に有害のおそれ 水生環境有害性、長期間有害性

(4.1 章) 4

H420 オゾン層を破壊し、健康および環境に有害 オゾン層への有害性(4.2 章) 1

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- 275 -

附属書 3

第 2 節

注意書きのコード

A3.2.1 序文 A3.2.1.1 注意書きは、危険有害性をもつ製品へのばく露、または、その不適切な保管や取扱いか

ら生じる被害を防止し、または 小にするために取るべき推奨措置について記述した文言(または

絵表示)を意味する(1.4.10.5.2 (c) 参照)。 A3.2.1.2 GHS には 5 種類の注意書きがある、すなわち一般、安全対策、応急措置(事故的な漏出やば

く露、応急措置および救急処置)、保管そして廃棄である。GHS のそれぞれの危険有害性クラスおよ

び区分に対する適当な文言の選択に関するアドバイスも含め、注意書きの使用手引は本付属書の第 3 節

を参照のこと。 A3.2.1.3 本節にはそれぞれの注意書きに対する推奨コードを含む。 A3.2.2 注意書きのコード化 A3.2.2.1 注意書きには 1 つの文字と 3 つの数字からなる英数字コードが、下記のように割り当て

られている。 (a) 文字「P」(注意書き“precautionary statement”) (b) 注意書きの文言の種類により 1 つの番号が割り当てられる -「1」一般的な注意書き -「2」安全対策の注意書き -「3」応急措置の注意書き

-「4」保管の注意書き -「5」廃棄の注意書き

(c) 2 つの数字(注意書きに対応した連続した数字) A3.2.2.2 注意書きのコードは参照するためのものである。コードは注意書きの文言の一部ではな

いので、文言の代わりに用いることはできない。 A3.2.2.3 割り当てられた注意書きに使用するコードは、一般的な注意書きは表 A3.2.1 に、安全対策の

注意書きは表 A3.2.2 に、応急措置の注意書きは表 A3.2.3 に、保管の注意書きは表 A3.2.4 に、廃棄の注

意書きは表 A3.2.5 に番号順に記載してある。 A3.2.3 注意書きコード表の構成 A3.2.3.1 それぞれの表は 5 つの欄に分割され下記の情報を含む。 欄(1) 注意書きコード

欄(2) 注意書き 欄(3) 危険有害性クラスおよび該当する場合のばく露経路、推奨される注意書きととも

に危険有害性クラスに関する情報がある GHS 文書の章を記載 欄(4) 当該危険有害性情報が適用可能な危険有害性クラスでの区分

欄(5) 該当する場合、注意書きの使用に関する条件

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A3.2.3.2 表の第 2 欄には注意書きの核となる部分を太字で示している。特別の指示がない限り、この

文言をラベルに使用すべきである。推奨されるラベル用文言の変更は所管官庁の選択による。 A3.2.3.3 第 2 欄の注意書きに斜線「/」がある時、これは分離された文言を選択しなければならないこ

とを示す。このような場合、製造者や供給者は選択するか、あるいは所管官庁は 1 つ以上の文言を規定

してもよいであろう。例えば、P280 の「保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること」を「保護

眼鏡を着用すること」あるいは「保護眼鏡あるいは保護面を着用すること」としてもよい。 A3.2.3.4 第 2 欄の注意書きに 3 つの句点「...」がある時、これらは全ての適用条件がそろってい

るわけではないことを示す。例えば、P241「防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用す

ること」の「...」は他の機器が特定される必要があるかもしれないことを示している。このような

場合、製造者や供給者は選択するか、あるいは所管官庁は も適当な文言を規定してもよいであろう。 A3.2.3.5 付加情報が必要あるいは情報が特定されなければならない場合は、第 5 欄に示されている。 A3.2.3.6 第 5 欄に斜体字が使用されている時は、注意書きの使用や割り当てに特別な条件が必要であ

ることを示している。これは注意書きの一般的な使用や特別な危険有害性クラスおよび/または区分への

使用条件に関わっている。例えば、P241「防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用する

こと」は、可燃性固体では「粉じん雲が発生する場合」のみ適用される。 A3.2.3.7 注意書き中のいくつかの文には四角括弧【….】があるが、これは括弧の中の文言は全ての場

合に当てはまるわけではなく、ある条件のときのみ使用されるべきものである。この場合、文言が使用

されるべき状況の説明は欄(5)に記載されている。例えば、P284 では「【換気が不十分の場合】呼吸

用保護具を着用すること」とある。この記述の使用には、「-四角括弧の文言は、化学品の使用時に関

する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している」という条件が付

く場合に使用されるであろう。適用条件は次のように解釈される:化学品に追加的な情報があり、安全

な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合には、括弧内の文言を使用しても良い。

この場合記述はつぎのようになる:「換気が不十分の場合、呼吸用保護具を着用すること」。しかし化

学品にそのような情報がない場合には、括弧内の文言は使用するべきではなく、注意書きは次のように

なる:「呼吸用保護具を着用すること」。 A3.2.3.8 使用者の言語への翻訳を容易にするために、この節の表における注意書きは個々の文言ある

いは部分的な文言に細分化されている。多くの例で見られるように GHS ラベルで必要とされる文章は

これらを結合したものである。これは本付属書で加算マーク「+」用いたコードで示されている。例え

ば、P305+P351+P338 はラベルでは「眼に入った場合:水で数分注意深く洗うこと。次にコンタクト

レンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。」となる。これらの

足し算的注意書きは本節の注意書き表の 後に記載されている。まず、個別の注意書きの翻訳が必要で

あり、これが足し算的注意書きを可能にする。

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表 A3.2.1 一般的注意書きのコード コード

(1)

一般的注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P101 医学的な助言が必要な時には、製品容器

やラベルを持っていくこと。

適宜 消費者製品

P102 子供の手の届かないところに置くこと。 適宜 消費者製品

P103 使用前にラベルをよく読むこと。 適宜 消費者製品

表 A3.2.2 安全対策注意書きのコード

コード

(1)

安全対策注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物

生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2

発がん性(3.6 章) 1A,1B,2

生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2

生殖毒性、授乳期または授乳を通

しての影響(3.7 章)

追加区分

P202 全ての安全注意を読み理解するまで取

り扱わないこと。

可燃性/引火性ガス(化学的に不安

定なガスを含む)(第 2.2 章)

A, B(化学的に不

安定なガス)

生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2

発がん性(3.6 章) 1A,1B,2

生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2

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コード (1)

安全対策注意書き (2)

危険有害性クラス(3)

区分(4)

使用の条件(5)

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源から遠ざけること。禁煙。

爆発物(2.1 章) 等級1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

可燃性/引火性ガス(2.2 章) 1,2エアゾール(2.3 章) 1,2,3引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4可燃性固体(2.7 章) 1,2自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプA,B,C,D,E,F

自然発火性液体(2.9 章) 1自然発火性固体(2.10 章) 1酸化性液体(2.13 章) 1,2,3酸化性固体(2.14 章) 1,2,3有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F 鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4

P211 裸火または他の着火源に噴霧しないこと。

エアゾール(2.3 章) 1,2

P212 密閉状態での加熱または鈍感化剤の減少を避ける

鈍感化爆発物(2.17 章) 1, 2, 3, 4

P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1 酸化性液体(2.13 章) 1,2,3

酸化性固体(2.14 章) 1,2,3P222 空気に接触させないこと。 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 自然発火性ガス -危険有害性情報の強調が必要と考えられる

場合 自然発火性液体(2.9 章) 1自然発火性固体(2.10 章) 1

P223 水と接触させないこと。 水反応可燃性物質および混合物(2. 12章)

1,2 -危険有害性情報の強調が必要と考えられる場合

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- 279 -

コード (1)

安全対策注意書き (2)

危険有害性クラス(3)

区分(4)

使用の条件(5)

P230 ...にて湿らせておくこと。 爆発物(2.1 章) 等級1.1,1.2,1.3,1.5

-爆発性の性質を抑制するために鈍感化剤で湿性化、希釈、溶解または懸濁された物質及び混合物に対して …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な物質

鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な物質

P231 不活性ガス/…で取扱い、保管すること。 自然発火性液体(2.9 章) 1 …不活性ガスが適当でない場合、製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液体またはガス

自然発火性固体(2.10 章) 1

水反応可燃性物質および混合物(2.12 章)

1,2,3 -物質または混合物が空気中の湿気と速やかに反応する場合 …不活性ガスが適当でない場合、製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液体またはガス

P232 湿気を遮断すること。 水反応可燃性物質および混合物(2. 12章)

1,2,3

P233 容器を密閉しておくこと。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -液体が揮発性で爆発危険性を増す可能性がある場合

自然発火性液体(2.9 章) 1自然発火性固体(2.10 章) 1鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3 -液体が揮発性で爆発危険性を増す可能性が

ある場合

特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章)

3

P234 他の容器に移し替えないこと。 爆発物(2.1 章) 等級1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプA,B,C,D,E,F

有機過酸化物(2.15 章) タイプA,B,C,D,E,F

金属腐食性物質(2.16 章) 1

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- 280 -

コード (1)

安全対策注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P235 涼しいところに置くこと。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -引火性液体区分 1 および他の引火性液体で揮発性が高く爆発危険性を増す場合

自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプA,B,C,D,E,F

-P411 がラベルに示されている場合には省略してもよい

自己発熱性物質および混合物(2.11 章)

1,2 -P413 がラベルに示されている場合には省略してもよい

有機過酸化物(2.15 章) タイプA,B,C,D,E,F

-P411 がラベルに示されている場合には省略してもよい

P240 容器を接地しアースを取ること 爆発物(2.1 章) 等級

1.1,1.2,1.3,1.4,1.5-爆発物が静電気的に敏感である場合

引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -液体が揮発性であり、爆発する環境をつくる

可能性があるとき 可燃性固体(2.7 章) 1,2 -固体が静電気的に敏感である場合 自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプ A,B,C,D,E,F

-静電気的に敏感であり、爆発する環境をつく

る可能性があるとき 有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F -静電気的に敏感であり、爆発する環境をつく

る可能性があるとき P241 防爆型の【電気機器/換気装置/照明機器

/….】を使用すること。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -液体が揮発性であり、爆発する環境をつくる

可能性があるとき -【】内の文章は、電気機器、換気装置、照明

機器あるいは他の機器を特定するために、必要

性がある場合に適切に使用される -国内規制でより詳細な規定がある場合には

この注意書きは省略しても良い 可燃性固体(2.7 章) 1,2 -粉じん雲が発生する可能性がある場合

-【】内の文章は、電気機器、換気装置、照明

機器あるいは他の機器を特定するために、必要

性がある場合に適切に使用される -国内規制でより詳細な規定がある場合には

この注意書きは省略しても良い

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- 281 -

コード (1)

安全対策注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P242 火花を発生させない工具を使用すること。

引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -液体が揮発性で爆発危険性を増す可能性がある場合および 少引火エネルギーが非常に低い場合(これは例えば二硫化炭素のように、少引火エネルギーが 0.1mJ 未満の部室や混

合物に適用される。) P243 静電気放電に対する措置を講ずること。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -液体が揮発性で爆発する環境をつくる可能

性があるとき -国内規制でより詳細な規定がある場合にはこの注意書きは省略しても良い

P244 バルブや付属品にはグリースおよび油を使用しないこと。

支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1

P250 粉砕/衝撃/摩擦/...のような取り扱い

をしないこと。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物

および等級 1.1,1.2,1.3,1.4、1.5

―爆発物が力学的に敏感である場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する乱暴な取扱い

P251 使用後を含め、穴を開けたり燃やしたりしないこと。

エアゾール(2.3 章) 1,2,3

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレ

ーを吸入しないこと。 急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2 製造者/供給者またな所管官庁が指定する適

用条件 特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2 特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章) 1,2 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C -粉じんやミストを吸入しないよう明示する

-使用中に吸入されうるほこりやミストの粒子が発生するかもしれない場合

生殖毒性、授乳期または授乳を通しての影響(3.7 章)

追加区分

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。

急性毒性-吸入(3.1 章) 3,4 -P260 がラベルに記載される場合には省略してもよい 製造者/供給者またな所管官庁が指定する適用条件

呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章)

3

P262 眼、皮膚、衣類につけないこと。 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2

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- 282 -

コード

(1)

安全対策注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P263 妊娠中および授乳期中は接触を避

けること。 生殖毒性、授乳期または授乳を通しての影響(3.7 章) 追加区分

P264 取扱後は…をよく洗うこと。 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3,4 …製造者/供給者または所

管官庁が指定する取扱後に

洗浄する体の部分

急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 皮膚刺激性(3.2 章) 2 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B 生殖毒性、授乳期または授乳を通しての影響(3.7 章) 追加区分 特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2 …製造者/供給者または所

管官庁が指定する取扱後に

洗浄する体の部分

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章) 1

P270 この製品を使用する時に、飲食また

は喫煙をしないこと。

急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3,4

急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2

生殖毒性、授乳期または授乳を通しての影響(3.7 章) 追加区分

特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章) 1

P271 屋外または換気の良い場所でのみ

使用すること。

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3,4

特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章) 3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章) 3

P272 汚染された作業衣は作業場から出

さないこと。

皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P273 環境への放出を避けること。 水生環境有害性、急性有害性(4.1 章) 1,2,3 -必要な時以外は

水生環境有害性、長期間有害性(4.1 章) 1,2,3,4

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- 283 -

コード (1)

安全対策注意書き (2)

危険有害性クラス(3)

区分(4)

使用の条件(5)

P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。

爆発物(2.1 章) 不安定爆発物および等級

1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な装具の種類

可燃性/引火性ガス(2.2 章) 自然発火性ガス

引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4可燃性固体(2.7 章) 1,2自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプA,B,C,D,E,F

自然発火性液体(2.9 章) 1自然発火性固体(2.10 章) 1自己発熱性物質および混合物(2.11章) 1,2水反応可燃性物質および混合物(2.12 章)

1,2,3

酸化性液体(2.13 章) 1,2,3

酸化性固体(2.14 章) 1,2,3有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F 鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4 -保護手袋/保護衣を指定すること

製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指定してもよい

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C -保護手袋/保護衣/保護面を指定すること 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指定してもよい

皮膚刺激性(3.2 章) 2 -保護手袋を指定すること製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指定してもよい

皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

重篤な眼の損傷性(3.3 章) 1 -保護眼鏡/保護面を指定すること 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指定してもよい

眼刺激性(3.3 章) 2A

生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指定してもよい 発がん性(3.6 章) 1A,1B,2

生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2

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- 284 -

コード

(1)

安全対策注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P282 耐寒手袋および保護面または保護眼鏡を着用するこ

と。

高圧ガス(2.5 章) 深冷液化ガス

P283 防火服または防炎服を着用すること。 酸化性液体(2.13 章) 1

酸化性固体(2.14 章) 1

P284 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用するこ

と。

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2 -【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用しても良い 製造者/供給者または所管官庁が指定する装具の種類

呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P231 +

P232

湿気を遮断し、不活性ガス/...下で取り扱い保管す

ること。

自然発火性液体(2.9 章) 1 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液体又はガス 自然発火性固体(2.10 章) 1

水反応可燃性物質および混合物

(2.12章)

1,2,3 -物質あるいは混合物が空気中の湿度と速やかに反応する場合 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液体又はガス

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- 285 -

表 A3.2.3 応急措置注意書きのコード

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P301 飲み込んだ場合: 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3,4 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1,2

P302 皮膚に付着した場合: 自然発火性液体(2.9 章) 1 自然発火性固体(2.10 章) 1 水反応可燃性物質および混合物(2.12 章) 1,2 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4 皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P303 皮膚(または髪)に付着した場合: 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P304 吸入した場合: 急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3,4,5 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章) 3 特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章) 3

P305 眼に入った場合: 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 眼に対する重篤な損傷性(3.3 章) 1 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B

P306 衣類にかかったっ場合: 酸化性液体(2.13 章) 1 酸化性固体(2.14 章) 1

P308 ばく露またはばく露の懸念がある場合: 生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2

発がん性(3.6 章) 1A,1B,2 生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2 生殖毒性、授乳に対するまたは授乳を介した影響(3.7 章) 追加区分 特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2

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- 286 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P310 ただちに医師/...に連絡すること。 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急処置に関する情報源

急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2 急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 眼に対する重篤な損傷性(3.3 章) 1 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1,2

P311 医師/...に連絡すること。 急性毒性-吸入(3.1 章) 3 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急処置に関する情報源

呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B 特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2

P312 気分が悪い時は医師/...に連絡すること。

急性毒性-経口(3.1 章) 4 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急処置に関する情報源

急性毒性-経口(3.1 章) 5 急性毒性-経皮(3.1 章) 3,4,5 急性毒性-吸入(3.1 章) 4 急性毒性-吸入(3.1 章) 5 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章) 3 特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章) 3

P313 医師の診察/手当を受けること。 皮膚刺激性(3.2 章) 2,3 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

眼刺激性(3.3 章) 2A,2B 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B 生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2 発がん性(3.6 章) 1A,1B,2 生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2 生殖毒性、授乳に対するまたは授乳を介した影響(3.7 章) 追加区分

P314 気分が悪い時は、医師の診察/手当を受けること。

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章) 1,2 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

P315 直ちに医師に診察/手当てを受けること。 高圧ガス(2.5 章) 深冷液化ガス 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

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- 287 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P320 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの…を見よ)。

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2 -緊急の解毒剤の投与が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

P321 特別な処置が必要である(このラベルの…を見よ)。

急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3 -緊急の解毒剤の投与が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4 -緊急の洗浄剤などを推薦する場合 …補足的な応急措置の説明

急性毒性-吸入(3.1 章) 3 -緊急の特別な処置が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C …補足的な応急措置の説明 製造者 /供給者または所管官庁が 指定する適切な洗浄剤がある場合

皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1 -緊急の処置が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

P330 口をすすぐこと。 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3,4 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P331 無理に吐かせないこと。 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1,2

P332 皮膚刺激が生じた場合: 皮膚刺激性(3.2 章) 2,3 P333 皮膚刺激または発疹が生じた場合: 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P334 冷たい水に浸すこと【または湿った包帯で覆うこと】。

自然発火性液体(2.9 章) 1 -【】内の文章は自然発火性液体及び固体に使用する 自然発火性固体(2.10 章) 1

水反応可燃性物質および混合物(2.12 章) 1,2 -「冷たい水に浸すこと」のみ使用する。【】内の文章は使用しない

P335 固着していない粒子を皮膚から払いのけること。

自然発火性固体(2.10 章) 1 水反応可燃性物質および混合物(2.12 章) 1,2

P336 凍った部分をぬるま湯でとかすこと。受傷部はこすらないこと。

高圧ガス(2.5 章) 深冷液化ガス

P337 眼の刺激が続く場合: 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B P338 コンタクトレンズを着用していて容易に外

せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 眼に対する重篤な損傷性(3.3 章) 1 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B

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- 288 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P340 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3,4 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章)

3

P342 呼吸に関する症状が出た場合: 呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B P351 水で数分間注意深く洗うこと。 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

眼に対する重篤な損傷性(3.3 章) 1 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B

P352 多量の水/…で洗うこと 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切で他の薬剤を推薦する場合

皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P353 皮膚を水【またはシャワー】で洗うこと。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 ―製造者/供給者または所管官庁が特定の化学品に対してそれが適当だとした場合には【】内の文章を含める

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P360 服を脱ぐ前に、直ちに汚染された衣類及

び皮膚を多量の水で洗うこと。 酸化性液体(2.13 章) 1 酸化性固体(2.14 章) 1

P361 汚染された衣類を直ちにすべて脱ぐこ

と。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P362 汚染された衣類を脱ぐこと。 急性毒性-経皮(3.1 章) 4 皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P363 汚染された衣類を再使用する場合には洗

濯をすること。 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P364 そして再使用する場合には洗濯をするこ

と。 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4

皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

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- 289 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P370 火災の場合: 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物 および等級 1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1 引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4 可燃性固体(2.7 章) 1,2 自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプ A,B,C,D,E,F

自然発火性液体(2.9 章) 1 自然発火性固体(2.10 章) 1 水反応可燃性物質および混合物

(2.12 章) 1,2,3

酸化性液体(2.13 章) 1,2,3 酸化性固体(2.14 章) 1,2,3 有機過酸化物(2.15 章) タイプ A,B,C,D,E,F鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3

P371 大火災の場合で大量にある場合: 酸化性液体(2.13 章) 1 酸化性固体(2.14 章) 1 鈍感化爆発物(2.17 章) 4

P372 爆発する危険性あり。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物および等級 1.1,1.2,1.3,1.5

等級 1.4 -輸送における爆発物区分1.4S(隔離区分)は除く

自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ A 有機過酸化物(2.15 章) タイプ A

P373 炎が爆発物に届いたら消火活動をしな

いこと。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物

および等級 1.1,1.2,1.3,1.5

等級 1.4 -輸送における爆発物区分

1.4S(隔離区分)は除く 自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ A 有機過酸化物(2.15 章) タイプ A

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- 290 -

コード (1)

応急措置注意書き(2)

危険有害性クラス (3)

区分(4)

使用の条件(5)

P375 爆発の危険性があるため、離れた距離から消火すること。

爆発物(2.1 章) 等級 1.4 -輸送における爆発物区分 1.4S(隔離区分)

自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ B酸化性液体(2.13 章) 1酸化性固体(2.14 章) 1有機過酸化物(2.15 章) タイプ B鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3

P376 安全に対処できるならば漏洩を止めること。 支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1P377 漏洩ガス火災の場合:漏えいが安全に停止されな

い限り消火しないこと。 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 1,2

P378 消火するために…を使用すること。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4 -水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な手段

可燃性固体(2.7 章) 1,2自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ B,C,D,E,F自然発火性液体(2.9 章) 1自然発火性固体(2.10 章) 1水反応可燃性物質および混合物(2.12章) 1,2,3酸化性液体(2.13 章) 1,2,3酸化性固体(2.14 章) 1,2,3有機過酸化物(2.15 章) タイプ B,C,D,E,F

P380 区域より退避させること。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物

および等級1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ A,B酸化性液体(2.13 章) 1酸化性固体(2.14 章) 1有機過酸化物(2.15 章) タイプ A,B鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4

P381 漏えいした場合、着火源を除去すること。 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 1,2

P390 物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。

金属腐食性物質(2.16 章) 1

P391 漏出物を回収すること。 水生環境有害性、急性有害性(4.1章)

1

水生環境有害性、長期間有害性(4.1章)

1,2

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- 291 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P301 +

P310

飲み込んだ場合:直ちに医師/…に連絡すること。 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急処置に関する情報源

吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1,2

P301 +

P312

飲み込んだ場合:気分が悪い時は医師/…に連絡す

ること。 急性毒性-経口(3.1 章) 4 …製造者/供給者または所管官庁

が指定する緊急処置に関する情報源

P302 +

P334

皮膚に付着した場合:冷たい水に浸すこと【または

湿った包帯で覆うこと】。 自然発火性液体(2.9 章) 1 ―【】内の文章は自然発火性液体

に使用すること。

P302 +

P352

皮膚に付着した場合:多量の水/…で洗うこと。 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切で他の薬剤を推薦する場合

皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P304 +

P312

吸入した場合:気分が悪い時は、医師/…に連絡す

ること。 急性毒性-吸入(3.1 章) 5 …製造者/供給者または所管官庁

が指定する緊急処置に関する情報源

P304 +

P340

吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しや

すい姿勢で休息させること。 急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3,4 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気

道刺激性(3.8 章) 3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻

酔作用(3.8 章) 3

P306 +

P360

衣類にかかった場合:服を脱ぐ前に、直ちに汚染さ

れた衣類及び皮膚を多量の水で洗うこと。 酸化性液体(2.13 章) 1

酸化性固体(2.14 章) 1 P308

+ P311

ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師/…に

連絡する事。 特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻

酔作用(3.8 章) 1,2 …製造者/供給者または所管官庁

が指定する緊急処置に関する情報源

P308 +

P313

ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の診察

/手当てを受けること。 生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2 …製造者/供給者または所管官庁が

選択する診察または手当て 発がん性(3.6 章) 1A,1B,2 生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2 生殖毒性、授乳に対するまたは授乳

を介した影響(3.7 章) 追加区分

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- 292 -

コード (1)

応急措置注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P332 +

P313

皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受け

ること。 皮膚刺激性(3.2 章) 2,3 -P333+P313 がラベル上にあると

きは省略しても良い 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

P333 +

P313

皮膚刺激または発疹が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。

皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

P336 +

P315

凍った部分をぬるま湯でとかすこと。受傷部はこす

らないこと。直ちに医師に診察/手当てを受けるこ

と。

高圧ガス(2.5 章) 深冷液化ガス 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察または手当て

P337 +

P313

眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受ける

こと。 眼刺激性(3.3 章) 2A,2B 製造者/供給者または所管官庁が選

択する診察または手当て

P342 +

P311

呼吸に関する症状が出た場合:医師/…に連絡する

こと。 呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B …製造者/供給者または所管官庁が

指定する緊急処置に関する情報源

P361 +

P364

汚染された衣類を直ちにすべて脱ぎ、再使用する場

合には洗濯をすること。 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3

P362 +

P364

汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯を

すること。 急性毒性-経皮(3.1 章) 4 皮膚刺激性(3.2 章) 2 皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

P370 +

P376

火災の場合:安全に対処できるならば漏洩を止める

こと。 支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1

P370 +

P378

火災の場合:消火するために…を使用すること。 引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4 -水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が

指定する適当な手段

可燃性固体(2.7 章) 1,2 自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ C,D,E,F 自然発火性液体(2.9 章) 1 自然発火性固体(2.10 章) 1 水反応可燃性物質および混合物(2.12章) 1,2,3 酸化性液体(2.13 章) 1,2,3 酸化性固体(2.14 章) 1,2,3 有機過酸化物(2.15 章) タイプ C,D,E,F

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- 293 -

コード (1)

応急措置注意書き(2)

危険有害性クラス (3)

区分(4)

使用の条件(5)

P301 +

P330 +

P331

飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P302 +

P335 +

P334

皮膚についた場合:固着していない粒子を皮膚から払いのけ、冷たい水に浸すこと【または湿った包帯で覆うこと】。

自然発火性固体(2.10 章) 1 -【】内の文章は自然発火性固体に使用する。

水反応可燃性物質および混合物(2.12章)

1,2 -「冷たい水に浸すこと」のみ使用する。【】内の文章は使用しない。

P303 +

P361 +

P353

皮膚(または髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類をすべて脱ぐこと。皮膚を水【またはシャワー】で洗うこと。

引火性液体(2.6 章) 1,2,3 ―製造者/供給者または所管官庁が特定の化学品に対してそれが適当だとした場合には【】内の文章を含める

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C

P305 +

P351 +

P338

眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。

皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C眼に対する重篤な損傷性(3.3 章) 1眼刺激性(3.3 章) 2A,2B

P370 +

P380 +

P375

火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性があるため、離れた距離から消火すること。

爆発物(2.1 章) 等級 1.4 -輸送における爆発物区分 1.4S(隔離区分)に対して

鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3

P371 +

P380 +

P375

大火災の場合で大量にある場合:区域より退避させ、爆発の危険性があるため、離れた距離から消火すること。

酸化性液体(2.13 章) 1

酸化性固体(2.14 章) 1

鈍感化爆発物(2.17 章) 4

P370

+ P372

+ P380

+ P373

火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動をしないこと。

爆発物(2.1 章) 不安定爆発物 および等級

1.1,1.2,1.3,1.5 等級 1.4 -輸送における爆発物区分 1.4S

(隔離区分)は除く 自己反応性物質および混合物(2.8章) タイプ A有機過酸化物(2.15 章) タイプ A

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- 294 -

コード (1)

応急措置注意書き(2)

危険有害性クラス (3)

区分(4)

使用の条件(5)

P370 +

P380 +

P375 【+

P378】

火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性があ

るため、離れた距離から消火すること。【消火する

ために…を使用すること。】

自己反応性物質および混合物(2.8章)

タイプ B ―【】内の文章は水がリスクを大

きくする場合に使用する。 …製造者/供給者または所管官庁が

指定する適当な手段 有機過酸化物(2.15 章) タイプ B

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- 295 -

表 A3.2.4 保管注意書きのコード

コード

(1)

保管注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P401 …にしたがって保管すること。 爆発物(2.1 章)

不安定爆発物および等級

1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

…製造者/供給者または所管官庁が 特定する適用できる国際/国/都道府県/市町村の規則

鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4

P402 乾燥した場所に保管すること。 水反応可燃性物質および混合物(2.12章) 1,2,3

P403 換気の良い場所で保管すること。 可燃性/引火性ガス(2.2 章) 1,2

支燃性/酸化性ガス(2.4 章) 1

高圧ガス(2.5 章) 圧縮ガス

液化ガス

深冷液化ガス

溶解ガス

引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4 -引火性液体区分 1 および他の引火性液体で揮発性が高く爆発する環境をつくる可能性があるとき

自己反応性物質および混合物(2.8

章)

タイプ

A,B,C,D,E,F

-温度が管理されている自己反応性物質および混合物または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する

有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3 -化学品が揮発性で有害な環境をつくりだす場合

特定標的臓器毒性、単回ばく露、

気道刺激性(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、

麻酔作用(3.8 章)

3

P404 密閉容器に保管すること。 水反応可燃性物質および混合物(2.12章) 1,2,3

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- 296 -

コード (1)

保管注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P405 施錠して保管すること。 急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3 急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3 急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C 生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2 発がん性(3.6 章) 1A,1B,2 生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2 特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2 特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激性(3.8章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用(3.8 章) 3 吸引性呼吸器有害性(3.10 章) 1,2

P406 耐腐食性/耐腐食性内張りのある...

容器に保管すること。 金属腐食性物質(2.16 章) 1 -P234 がラベルに記載されている

場合には省略しても良い …製造者/供給者または所管官庁が指定する他の互換性がある材料

P407 積荷またはパレット間にすきまをあ

けること。 自己発熱性物質および混合物(2.11 章) 1,2

P410 日光から遮断すること。 エアゾール(2.3 章) 1,2,3 -危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則の包装指示P200 にしたがっている運送用ガスシリンダーに充填されている場合には削除しても良い、ただしガスが(遅い)分解や高分子化が起こさず、または所管官庁が他の方法を示さない場合に限る。

高圧ガス(2.5 章) 圧縮ガス 液化ガス 溶解ガス

自己発熱性物質および混合物(2.11 章) 1,2

有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F

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- 297 -

コード (1)

保管注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P411 …0C 以下の温度で保管すること。 自己反応性物質および混合物(2.8 章) タイプ

A,B,C,D,E,F- 温 度 管 理 が 必 要 な 場 合(GHS2.8.2.3 または 2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温度計を用いて指定した温度

有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F

P412 500C 以上の温度にばく露しないこと。 エアゾール(2.3 章) 1,2,3 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用可能な温度計を用いる

P413 …kg 以上の大量品は、...0C 以下の温度

で保管すること。 自己発熱性物質および混合物(2.11 章) 1,2 …製造者/供給者または所管官庁が

指定する適用可能な計測器を用いた量と温度

P420 隔離して保管すること。 自己反応性物質および混合物(2.8 章) タイプ

A,B,C,D,E,F

自己発熱性物質および混合物(2.11 章) 1,2 酸化性液体(2.13 章) 1 酸化性固体(2.14 章) 1 有機過酸化物(2.15 章) タイプ

A,B,C,D,E,F

P402 +

P404

乾燥した場所または密閉容器に保管するこ

と。 水反応可燃性物質および混合物(2.12 章) 1,2,3

P403 +

P233

換気の良い場所で保管すること。容器を密閉

しておくこと。

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2,3 -化学品が揮発性で有害な環境を作る可能性があるとき

特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激

性(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、単回ばく露、麻酔作用

(3.8 章)

3

P403 +

P235

換気の良い場所で保管すること。涼しいとこ

ろに置くこと。

引火性液体(2.6 章) 1,2,3 -引火性液体区分 1 および揮発性があり爆発する環境を作る可能性のある液体

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- 298 -

コード (1)

保管注意書き (2)

危険有害性クラス (3)

区分 (4)

使用の条件 (5)

P410 +

P403

日光から遮断し、換気の良い場所で保管するこ

と。 高圧ガス(2.5 章) 圧縮ガス

液化ガス 溶解ガス

-P410 は、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則の包装指示P200 にしたがっている運送用ガスシリンダーに充填されている場合には削除しても良い。ただしガスが(遅い)分解や高分子化が起こさず、または所管官庁が他の方法を示さない場合に限る。

P410 +

P412

日光から遮断し、500C 以上の温度にばく露しな

いこと。 エアゾール(2.3 章) 1,2,3 製造者/供給者または所管官

庁が指定する適用可能な温度計を用いる

表 A3.2.5 廃棄注意書きのコード

コード

(1)

廃棄注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P501 内容物/容器を…に廃棄すること。 爆発物(2.1 章) 不安定爆発物

および等級

1.1,1.2,1.3,1.4,1.5

…国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

引火性液体(2.6 章) 1,2,3,4

自己反応性物質および混合物(2.8 章) タイプ A,B,C,D,E,F

水反応可燃性物質および混合物(2.12 章) 1,2,3

酸化性液体(2.13 章) 1,2,3

酸化性固体(2.14 章) 1,2,3

有機過酸化物(2.15 章) タイプ A,B,C,D,E,F 鈍感化爆発物(2.17 章) 1,2,3,4急性毒性-経口(3.1 章) 1,2,3,4

急性毒性-経皮(3.1 章) 1,2,3,4

急性毒性-吸入(3.1 章) 1,2

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- 299 -

コード

(1)

廃棄注意書き

(2)

危険有害性クラス

(3)

区分

(4)

使用の条件

(5)

P501 (続き)

内容物/容器を...に廃棄すること。 皮膚腐食性(3.2 章) 1A,1B,1C …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

呼吸器感作性(3.4 章) 1,1A,1B

皮膚感作性(3.4 章) 1,1A,1B

生殖細胞変異原性(3.5 章) 1A,1B,2

発がん性(3.6 章) 1A,1B,2

生殖毒性(3.7 章) 1A,1B,2

特定標的臓器毒性、単回ばく露(3.8 章) 1,2

特定標的臓器毒性、単回ばく露、気道刺激

性(3.8 章)

3

特定標的臓器有害性、単回ばく露、麻酔作

用(3.8 章)

3

特定標的臓器毒性、反復ばく露(3.9 章) 1,2

吸引性呼吸器毒性(3.10 章) 1,2

水生環境有害性、急性有害性(4.1 章) 1,2,3

水生環境有害性、長期間有害性(4.1 章) 1,2,3,4

P502 回収またはリサイクルに関する情報につ

いて製造者または供給者に問い合わせる

オゾン層への有害性(4.2 章) 1

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- 300 -

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- 301 -

附属書 3

第 3 節

注意書きの使用

A3.3.1 序文 A3.3.1.1 この節は、各 GHS 危険有害性クラスと区分に対する適切な記述の選定に関する支援を含む、

GHS と一致する注意書きの使用に関する手引きを提供する。 A3.3.1.2 注意書きを割り当てる出発点は化学製品の危険有害性の分類である。GHS の中での危険有害

性を分類するシステムは関係する化学品の固有の特性に基づく(1.3.2.2.1)。しかしながら、あるシス

テムでは、通常の取扱い、通常使用または予見できる誤用の条件下では各々のリスクが除外されるとい

う情報が提示されるのであれば、表示は、消費者製品ラベル上の慢性の有害性には要求されないことも

ある(附属書 5 参照)。ある種の危険有害性記述が必要でないのであれば、対応する注意書きもまた必

要ではない(A5.1.1)。 A3.3.1.3 この節の警句を割り当てるための手引きは、関連する GHS 危険有害性分類基準および危険有

害性の種別に関連する基本的な 小の警句を提供するために開発されてきた。 A3.3.1.4 既存の注意書きは、この附属書の開発のための基礎として 大限使用されてきた。これらの既

存のシステムには、IPCS 国際化学品安全性カード (ICSC)コンパイラーズガイド、米国規格 (ANSI Z129.1)、欧州分類と表示指令、緊急対応ガイドブック(ERG 2004)および米国環境保護庁表示検査マニ

ュアルがある。 A3.3.1.5 この節の目標は注意書きのより一貫した使用を促進することである。これらの使用が安全な取

扱いを強化し、主要な概念と手法が訓練と教育活動において重視されることとなる。 A3.3.1.6 この節は、途上の文書とみなされるものであり、ゆえに、時がたてば更なる改良と開発の対象

となるべきものである。下記にある表の基本的な概念および原理は残るであろう。 A3.3.2 注意書きの割り当て A3.3.2.1 この附属書は適切な注意書きの選択を手引する表を提示する。表にはすべての区分に対応する

注意行動が含まれている。特別な危険有害性クラスに関するすべての特定の要素を使用すべきである。

ある種の危険有害性クラスまたは区分に特に関連しない一般要素もまた必要に応じて使用すべきである。 A3.3.2.2 注意警句の適用において柔軟に対応するため、記述を組み合わせることはラベルの空間を節約

し警句を読みやすくするために奨励される。警句を組み合わせることは、例えば、「熱、火花、および

裸火から離し、涼しく換気の良い場所で保管すること。」のような、注意行動が類似である危険有害性

の異なる種別のためにも有益である。 A3.3.2.3 注意書きは、GHS に調和した危険有害性伝達要素(絵表示、注意喚起語および危険有害性情

報)を伴った、GHS に一致したラベル上に表記するべきである。使用の指示のような追加の補助情報は、

製造業者/販売業者、または所管官庁の指示にて与えられることもできる(第 1.2章および第 1.4章の 1.4.6. 3 節を参照)。いくつかの特殊な化学品のためには、補足の応急処置、処置方法もしくは特殊解毒剤また

は洗浄剤が要求されるであろう。毒物センターもしくは臨床医または専門家の診察がそのような場合に

求められるべきであり、かつ、ラベル上に含まれるべきである。 A3.3.3 一般的な注意書き A3.3.3.1 一般的な注意書きは、人の健康または環境に有害と分類されるすべての物質と混合物に適用さ

れるべきである。この目的のために、使用者または利用者の 3 グループ(一般市民、商業的使用者、産

業労働者)に必要な情報および情報の出所について考慮されるべきである。

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- 302 -

A3.3.3.2 それぞれの製品について使用前にラベルの注意書き、特定の安全手引きおよび使用前の各製品の安全データシートを見ることは、表示の要求事項であり労働安全衛生における手順の一部でもある。 A3.3.3.3 安全対策、応急措置、保管および廃棄に関する注意処置を正確に履行するために、製品の組成に関する情報を手元に持つことも必要である。そうすることによって、更なる専門家の判断を必要とする際に、容器上に表示された情報、ラベルや安全データシートの情報を生かすことができる。 A3.3.3.4 GHS ラベル上の下記の一般的注意書きは与えられた条件下で適切である。

一般市民 GHS ラベル、補足のラベル情報

P101 医学的な助言が必要な時には:製品容器やラベルを持っていくこと。

P102 子供の手の届かないところに置くこと。

P103 使用前にラベルをよく読むこと。

産業労働者 GHS ラベル、補足のラベル情報、安全データシート、作業場指示

上記にないもの

A3.3.4 注意書きの表の構成 A3.3.4.1 表には注意書きの核心部分を太字で示す。特別の指示がない限りこの文言がラベルに記載される。しかしながら、すべての場合にまったく同一の言葉の組合せを強制することは不要である。推奨する表現の変更については所管官庁の決定による。明瞭で簡潔な言語は注意行動の情報を伝えるためにきわめて重要である。 A3.3.4.2 “場合”あるいは“明示する”で始まる斜体の文言は、注意書きの適用のための注釈であり、ラベルに表示されることは意図していない。 A3.3.4.3 注意書きに斜線「/」がある時、これは分離された文言を選択しなければならないことを示す。このような場合、製造者や供給者は選択するか、あるいは所管官庁は 1 つ以上の適当な文言を規定してもよいであろう。例えば、「保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること」は「保護眼鏡をつけること」または「保護眼鏡およ保護面をつけること」としてもよい。 A3.3.4.4 注意書きに 3 つの句点「...」がある時、これらは全ての適用条件がそろっているわけではないことを示す。このような場合、製造者や供給者は選択するか、あるいは所管官庁は も適当な文および言を規定してもよいであろう。例えば、「防爆型の【電気/換気/照明/...】機器を使用すること」の「...」は、他の機器が特定される必要があるかもしれないことを示している。 A3.3.4.5 多くの場合推奨される注意書きは独立している。例えば、爆発危険性の警句は健康有害性に関するものを制限しない、また危険性と有害性の両方に分類されるものは、どちらに対しても注意書きを持つべきである。 A3.3.4.6 物質または混合物が、いくつかの健康有害性に分類される場合には、一般的に、 も厳格な注意書きセットが適用されるべきである。これは主として予防対策に適用される。“対応”に関する警句に関して、迅速な行動が必須であろう。例えば、化学品が発がん性および急性毒性であれば、急性毒性のための応急処置の手段は長期の影響のための処置に優先するであろう。さらに、事故的なばく露が起きた場合、たとえ中毒の急性症状を伴っていなくても、遅効性の健康影響への医学的手当ては必要であろう。 A3.3.4.7 種々の読解力の人々を保護するために、情報を一種類以上で伝えるように注意絵表示と注意書きの双方を含むことは有用であろう(1.4.4.1(a))。しかしながら、絵表示の防護効果は限定されており、附属書 3 の例は記述されるすべての予防観点をカバーしていないことに注意すべきである。絵表示は有用であるが、誤解されることがありえ、訓練に代替するものではない。 A3.3.5 危険有害性クラス/区分による注意書きの表 A3.3.5.1 この表には、GHS の各危険有害性クラスおよび区分に対して推奨される注意書きが、一般的注意書き(A3.2.2.1 参照)を除き、種類ごとに記載されている。各注意書きのすぐ上には使用されるコードが付けられている。

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- 303 -

爆発物

(第 2.1 章) シンボル 爆弾の爆発

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 不安定爆発物 危険 H200 不安定爆発物

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 P250 粉砕/衝撃/摩擦/…のような取り扱いをしないこ

と。

-爆発物が力学的に敏感である場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する乱暴

な取扱い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定する適用

できる国際/国/都道府県/市町村の規則

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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爆発物

(第 2.1 章) シンボル 爆弾の爆発

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 等級 1.1 危険 H201 爆発物; 大量爆発危険性 等級 1.2 危険 H202 爆発物; 激しい飛散危険性 等級 1.3 危険 H203 爆発物; 火災、爆風または飛散危険性

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P230 …にて湿らせておくこと。 -爆発性を減少あるいは抑制するために鈍感剤で湿らせ、希釈、溶解あるいは懸濁させた物質および混合物の場合(鈍感化爆発物) …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な物質 P234 他の容器に移し替えないこと。 P240 容器を接地しアースを取ること。 -爆発物が静電気的に敏感である場合 P250 粉砕/衝撃/摩擦/…のような取り扱いをしないこ

と。

-爆発物が力学的に敏感である場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する乱暴

な取扱い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定する適用

できる国際/国/都道府県/市町村の規則

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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爆発物

(第 2.1 章) シンボル 爆弾の爆発

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 等級 1.4 警告 H204 火災または飛散危険性

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P234 他の容器に移し替えないこと。 P240 容器を接地しアースを取ること。 -爆発物が静電気的に敏感である場合 P250 粉砕/衝撃/摩擦/…のような取り扱いをしないこ

と。

-爆発物が力学的に敏感である場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する乱暴

な取扱い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。 -輸送における爆発物区分 1.4S(隔離区分)は除く P370+P380+P375 火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性

があるため、離れた距離から消火すること。 -輸送における爆発物区分 1.4S(隔離区分)に対して

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定する適用

できる国際/国/都道府県/市町村の規則

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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爆発物

(第 2.1 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 等級 1.5 危険 H205 火災時に大量爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源から遠ざけるこ

と。禁煙。 P230 ….にて湿らせておくこと。 -爆発性を減少あるいは抑制するために鈍感剤で湿らせ、希釈、溶解あるいは懸濁させた物質および混合物の場合(鈍感化爆発物) …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切な物質 P234 他の容器に移し替えないこと。 P240 容器を接地しアースを取ること。 -爆発物が静電気的に敏感である場合 P250 粉砕/衝撃/摩擦/…のような取り扱いをしないこと。

-爆発物が力学的に敏感である場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する乱暴な取扱い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定す

る適用できる国際/国/都道府県/市町村の規

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示す

る)に従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する

内容物、容器またはその両者に適用する廃

棄物要件

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- 307 -

可燃性/引火性ガス

(第 2.2 章) (可燃性/引火性ガス)

シンボル 炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H220 極めて可燃性/引火性の高いガス

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。

P377 漏洩ガス火災の場合: 漏洩が安全に停止されない限り消火しないこ

と。 P381 漏えいした場合、着火源を除去すること。

P403 換気の良い場所で保管すること。

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- 308 -

可燃性/引火性ガス

(第 2.2 章)

(可燃性/引火性ガス) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 警告 H221 可燃性/引火性の高いガス

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。

P377 漏洩ガス火災の場合: 漏洩が安全に停止されない限り消火しないこ

と。 P381 漏えいした場合、着火源を除去すること。

P403 換気の良い場所で保管すること。

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可燃性/引火性ガス

(第 2.2 章)

(自然発火性ガス) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 自然発火性ガス 危険 H232 空気に触れると自然発火のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P222 空気に接触させないこと。 -危険有害性情報の強調が必要と考えられる場合 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

注記:この表は、自然発火性ガスに関連する注意書きのみ示している。燃焼性に関する注意書きについては可燃性/引火性ガスのそれぞれの表を参照のこと。

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可燃性/引火性ガス

(第 2.2 章)

(化学的に不安定なガス) シンボル

追加的シンボルなし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 A 追加的な注意喚起語なし H230 空気が無くても爆発的に反応するおそれ B 追加的な注意喚起語なし H231 圧力および/または温度が上昇した場合、空気が無くても爆発的に反応するおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わな

いこと。

注記:この表は、化学的に不安定なガスに関連する注意書きのみ示している。燃焼性に関する注意書きについては可燃性/引火性ガスのそれぞれの表を参照のこと。

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エアゾール

(第 2.3 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H222 極めて可燃性/引火性の高いエアゾール H229 高圧容器:熱すると破裂のおそれ 2 警告 H223 可燃性/引火性のエアゾール H229 高圧容器:熱すると破裂のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P211 裸火または他の着火源に噴霧しないこと。 P251 使用後も含め、穴をあけたり燃やしたりしない

こと。

P410 + P412 日光から遮断し、50 ºC 以上の温度にばく露しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用可

能な温度計を用いる

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- 312 -

エアゾール

(第 2.3 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 警告 H229 高圧容器:熱すると破裂のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P251 使用後も含め、穴をあけたり燃やしたりしない

こと。

P410 + P412 日光から遮断し、50 ºC 以上の温度にばく露しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用可

能な温度計を用いる

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- 313 -

支燃性/酸化性ガス

(第 2.4 章) シンボル 円上の炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H270 発火または火災助長のおそれ;酸化性物質

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 P244 バルブや付属品にはグリースおよび油を使用し

ないこと。

P370 + P376 火災の場合:安全に対処できるならば漏洩を止

めること。

P403 換気の良い場所で保管すること。

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高圧ガス

(第 2.5 章) シンボル ガスボンベ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 圧縮ガス 警告 H280 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ 液化ガス 警告 H280 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ 溶解ガス 警告 H280 高圧ガス;熱すると爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P410 + P403 日光から遮断し、換気の良い場所で保管するこ

と。 -P410 は、危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則の包装指示 P200 にしたがっている運送用ガスシリンダーに充填されている場合には削除しても良い、ただしガスが(遅い)分解や高分子化が起こさず、または所管官庁が他の方法を示さない場合に限る。

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- 315 -

高圧ガス

(第 2.5 章) シンボル ガスボンベ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 深冷液化ガス 警告 H281 深冷液化ガス;凍傷または傷害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P282 耐寒手袋および保護面または保護眼鏡を着用す

ること。

P336+P315 凍った部分をぬるま湯でとかすこと。受傷部は

こすらないこと。直ちに医師の診察/手当てを受

けること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

P403 換気の良い場所で保管すること。

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- 316 -

引火性液体

(第 2.6 章) シンボル

炎 危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H224 極めて引火性の高い液体および蒸気 2 危険 H225 引火性の高い液体および蒸気 3 警告 H226 引火性液体および蒸気

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源から遠ざけること。禁煙。

P233 容器を密閉しておくこと。 -液体が揮発性で爆発する環境をつくる可能性があるとき P240 容器を接地しアースを取ること。 -液体が揮発性で爆発する環境を作る可能性があるとき P241 防爆型の【電気/換気/照明/…】機器を使用すること。 -液体が揮発性で爆発する環境をつくる可能性があるとき -【】内の文章は、電気機器、換気装置、照明機器あるいは他の機器を特定するために、必要性がある場合に適切に使用される -国内規制でより詳細な規定がある場合にはこの注意書きは省略しても良い P242 火花を発生させない工具を使用すること。 -液体が揮発性で爆発する環境をつくる可能性があるときおよび 少引火エネルギーが非常に低い場合(これは例えば二硫化炭素のように、少引火エネルギーが 0.1mJ 未満の部室や混合物に適用される。) P243 静電気放電に対する予防措置を講ずること。

-液体が揮発性で爆発する環境をつくる可能性があるとき -国内規制でより詳細な規定がある場合にはこの注意書きは省略しても良い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な装具の種類

P303 + P361 + P353 皮膚(または髪)に付着した場合:直ちに汚

染された衣類をすべて脱ぐこと。皮膚を流水

【またはシャワー】で洗うこと。 ―製造者/供給者または所管官庁が特定の化学品に対してそれが適当だとした場合には【】内の文章を含める P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用するこ

と。 -水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する

適当な手段

P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼

しいところに置くこと。 -引火性液体区分 1 および揮発性があり爆発する環境をつくる可能性がある他の液体

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示

する)に従って 製造者/供給者または所管官庁が指定す

る内容物、容器またはその両者に適用す

る廃棄物要件

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- 317 -

引火性液体

(第 2.6 章) シンボル

なし 危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 4 警告 H227 可燃性液体

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P403 換気の良い場所で保管すること。 -引火性液体区分 1 および他の引火性液体で揮発性が高く爆発する環境をつくる可能性があるとき

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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可燃性固体

(第 2.7 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H228 可燃性固体 2 警告 H228 可燃性固体

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。-禁煙。 P240 容器を接地しアースを取ること。 -固体が静電気的に敏感である場合 P241 防爆型の【電気/換気/照明/…】機器を使用するこ

と。 -粉じん雲が発生する可能性のある場合

-【】内の文章は、電気機器、換気装置、照明

機器あるいは他の機器を特定するために、必要

性がある場合に適切に使用される -国内規制でより詳細な規定がある場合にはこの注意書きは省略しても良い P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段.

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自己反応性物質および混合物

(第 2.8 章) シンボル 爆弾の爆発

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ A 危険 H240 熱すると爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 . P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発する環境をつくる可能性があるとき P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性化学品または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 320 -

自己反応性物質および混合物

(第 2.8 章) シンボル

爆弾の爆発および炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ B 危険 H241 熱すると火災または爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 . P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発危険性を増す可能性がある場合 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P380+P375【+P378】 火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性

があるため、離れた距離から消火すること。【消

火するために…を使用すること。】 ―【】内の文章は水がリスクを大きくする場合に使用する。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性化学品または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 321 -

自己反応性物質および混合物

(第 2.8 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ C 危険 H242 熱すると火災のおそれ タイプ D 危険 H242 熱すると火災のおそれ タイプ E 警告 H242 熱すると火災のおそれ タイプ F 警告 H242 熱すると火災のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 . P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発危険性を増す可能性がある場合 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性化学品または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 322 -

自然発火性液体

(第 2.9 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H250 空気に触れると自然発火

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P222 空気に接触させないこと。 -危険有害性情報の強調が必要と考えられる場合 P231+P232 湿気を遮断し、不活性ガス/…下で取り扱い保管

すること。 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、製

造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液

体又はガス P233 容器を密閉しておくこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P302 + P334 皮膚に付着した場合:冷たい水に浸すこと【ま

たは湿った包帯で覆うこと】。 -【】内の文章は自然発火性液体に使用すること P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段.

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- 323 -

自然発火性固体

(第 2.10 章) シンボル

炎 危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H250 空気に触れると自然発火

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P222 空気に接触させないこと。 -危険有害性情報の強調が必要と考えられる場合 P231+P232 湿気を遮断し、不活性ガス/…下で取り扱い保管

すること。 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、製

造者/供給者または所管官庁が指定する適当な液

体又はガス P233 容器を密閉しておくこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P302+P335+P334 皮膚についた場合:固着していない粒子を皮膚

から払いのけ、冷たい水に浸すこと【または湿

った包帯で覆うこと】。 -【】内の文章は自然発火性固体に使用すること P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

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- 324 -

自己発熱性物質および混合物

(第 2.11 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H251 自己発熱;発火のおそれ 2 警告 H252 大量の場合自己発熱;火災のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P235 涼しい所に置くこと。 -P413がラベルに示されている場合には省略してもよい P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P407 積荷またはパレット間にすきまをあけること。

P413 …kg 以上の大量品は、…°C 以下の温度で保管す

ること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適用

可能な計測器を用いた量と温度 P420 隔離して保管すること。

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- 325 -

水反応可燃性物質および混合物

(第 2.12 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H260 水に触れると自然発火するおそれのある可燃性/引火性ガスを発生 2 危険 H261 水に触れると可燃性/引火性ガスを発生

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P223 水と接触させないこと。 -危険有害性情報の強調が必要と考えられる場合 P231+P232 湿気を遮断し、不活性ガス/…下で取り扱い保管

すること。 -物質あるいは混合物が空気中の水分と速やかに反応する場合 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、

製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

液体又はガス P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P302+P335+P334 皮膚についた場合:固着していない粒子を皮膚

から払いのけ、冷たい水に浸すこと P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P402 + P404 乾燥した場所または密閉容器に保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 326 -

水反応可燃性物質および混合物

(第 2.12 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 警告 H261 水に触れると可燃性/引火性ガスを発生

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P231+P232 湿気を遮断し、不活性ガス/…下で取り扱い保管

すること。 -物質あるいは混合物が空気中の水分と速やかに反応する場合 …もし「不活性ガス」が適当でない場合には、

製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

液体又はガス P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P402 + P404 乾燥した場所または密閉された容器中で保管す

ること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 327 -

酸化性液体

(第 2.13 章) シンボル 円上の炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H271 火災または爆発のおそれ;強酸化性物質

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類 P283 防火服または防炎服を着用すること。

P306 + P360 衣類にかかった場合:服を脱ぐ前に、直ちに汚

染された衣類および皮膚を多量の水で洗うこ

と。 P371 + P380 + P375 大火災の場合で大量にある場合:区域より退避

させ、爆発の危険性があるため、離れた距離か

ら消火すること。 P370 + P378 火災の場合:消火するために..を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 328 -

酸化性液体

(第 2.13 章) シンボル 円上の炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 危険 H272 火災助長のおそれ;酸化性物質 3 警告 H272 火災助長のおそれ;酸化性物質

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

―水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 329 -

酸化性固体

(第 2.14 章) シンボル 円上の炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H271 火災または爆発のおそれ;強酸化性物質

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類 P283 防火服または防炎服を着用すること。

P306 + P360 衣類にかかった場合:服を脱ぐ前に、直ちに汚

染された衣類および皮膚を多量の水で洗うこ

と。 P371 + P380 + P375 大火災の場合で大量にある場合:区域より退避

させ、爆発の危険性があるため、離れた距離か

ら消火すること。 P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 330 -

酸化性固体

(第 2.14 章) シンボル 円上の炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 危険 H272 火災助長のおそれ;酸化性物質 3 警告 H272 火災助長のおそれ;酸化性物質

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P220 衣類および可燃物から遠ざけること。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P378 火災の場合:消火するために...を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 331 -

有機過酸化物

(第 2.15 章) シンボル 爆弾の爆発

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ A 危険 H240 熱すると爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。

P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発する環境をつくる可能性があるとき

P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P372+P380+P373 火災の場合:爆発する危険性あり。区域より退

避させること。炎が爆発物に届いたら消火活動

をしないこと。

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性物質および

混合物または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する

P410 日光から遮断すること。

P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 332 -

有機過酸化物

(第 2.15 章) シンボル

爆弾の爆発 および炎

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ B 危険 H241 熱すると火災または爆発のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。

P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発する環境をつくる可能性があるとき

P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370 + P380+P375【+P378】 火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性

があるため、離れた距離から消火すること。【消

火するために…を使用すること。】 ―【】内の文章は水がリスクを大きくする場合に使用する。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性物質および混合物または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する P410 日光から遮断すること。

P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 333 -

有機過酸化物

(第 2.15 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 タイプ C 危険 H242 熱すると火災のおそれ タイプ D 危険 H242 熱すると火災のおそれ タイプ E 警告 H242 熱すると火災のおそれ タイプ F 警告 H242 熱すると火災のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。

P234 他の容器に移し替えないこと。 P235 涼しいところに置くこと。 -P411がラベルに示されている場合には省略してもよい P240 容器を接地しアースを取ること。 -静電気的に敏感で、爆発する環境をつくる可能性があるとき

P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適当な

装具の種類

P370+P378 火災の場合:消火するために…を使用すること。

-水がリスクを増大させる場合 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適当

な手段

P403 換気の良い場所で保管すること。 -温度が管理されている自己反応性物質および混合物または有機過酸化物は、濃縮およびそれに伴う凍結が起きるので、除外する P410 日光から遮断すること。

P411 …℃以下の温度で保管すること。 -温度管理が必要な場合(GHS2.8.2.3 または2.15.2.3 により)あるいは他の方法が必要と考えられる場合 …製造者/供給者または所管官庁が適用可能な温

度計を用いて指定した温度 P420 隔離して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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金属腐食性物質

(第 2.16 章) シンボル 腐食性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 警告 H290 金属腐食のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P234 他の容器に移し替えないこと。

P390 物的被害を防止するためにも流出したものを吸

収すること。

P406 耐腐食性/耐腐食性内張りのある…容器に保管す

ること。 -P234 がラベルにある場合省略しても良い …製造者/供給者または所管官庁が指定する他の

互換性がある材料

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- 335 -

鈍感化爆発物

(第 2.17 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H206 火災、爆風または飛散危険性;鈍感化剤が減少した 場合には爆発の危険性の増加 2 危険 H207 火災または飛散危険性;鈍感化剤が減少した場合には 爆発の危険性の増加 3 警告 H207 火災または飛散危険性;鈍感化剤が減少した場合には 爆発の危険性の増加

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P212 密閉状態での加熱または鈍感化剤の減少を避け

る P230 …にて湿らせておくこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な物質 P233 容器を密閉しておくこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。

P370+P380+P375 火災の場合:区域より退避させ、爆発の危険性

があるため、離れた距離から消火すること。

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定する適用

できる国際/国/都道府県/市町村の規則

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 336 -

鈍感化爆発物

(第 2.17 章) シンボル

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 4 警告 H208 火災危険性;鈍感化剤が減少した場合には爆発 の危険性の増加

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P210 熱、高温のもの、火花、裸火および他の着火源

から遠ざけること。禁煙。 P212 密閉状態での加熱または鈍感化剤の減少を避け

る P230 …にて湿らせておくこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な物質 P233 容器を密閉しておくこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。

P371+P380+P375 大火災の場合で大量にある場合:区域より退避

させ、爆発の危険性があるため、離れた距離か

ら消火すること。

P401 ...にしたがって保管すること。 …製造者/供給者または所管官庁が特定する適用

できる国際/国/都道府県/市町村の規則

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 337 -

急性毒性-経口

(第 3.1 章) シンボル どくろ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 危険 H301 飲み込むと有毒

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師/…に連絡すること。

…製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である。 (このラベルの...を参照) -緊急の解毒剤の投与が必要な場合 …補足的な応急措置の説明 P330

口をすすぐこと

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 338 -

急性毒性-経口

(第 3.1 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 4 警告 H302 飲み込むと有害

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P301 + P312 飲み込んだ場合:気分が悪い時は医師/…に連絡

すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P330 口をすすぐこと。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 339 -

急性毒性-経口

(第 3.1 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 5 警告 H303 飲み込むと有害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P312 気分が悪い時は医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

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- 340 -

急性毒性-経皮

(第 3.1 章) シンボル どくろ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H310 皮膚に接触すると生命に危険 2 危険 H310 皮膚に接触すると生命に危険

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P262 眼、皮膚、または衣類に付けないこと。 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。 P280 保護手袋/保護衣を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水/…で洗うこと。

…製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切

で他の薬剤を推薦する場合 P310 直ちに医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である(このラベルの…を参

照)。 ―緊急の洗浄剤などを推薦する場合 …補足的な応急措置の説明 P361+ P364 汚染された衣類を直ちにすべて脱ぎ、再使用す

場合には洗濯をすること。

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 341 -

急性毒性-経皮

(第 3.1 章) シンボル どくろ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 危険 H311 皮膚に接触すると有毒

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P280 保護手袋/保護衣を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水/…で洗うこと。

…製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切

で他の薬剤を推薦する場合 P312 気分が悪い時は医師/…に連絡する。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である(このラベルの…を参

照)。 ―緊急の洗浄剤などを推薦する場合 …補足的な応急措置の説明 P361+ P364 汚染された衣類を直ちにすべて脱ぎ、再使用す

場合には洗濯をすること。

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 342 -

急性毒性-経皮

(第 3.1 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 4 警告 H312 皮膚に接触すると有害

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P280 保護手袋/保護衣を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水/…で洗うこと。

…製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切

で他の薬剤を推薦する場合 P312 気分が悪い時は医師/…に連絡する。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である(このラベルの…を見

よ)。 ―緊急の洗浄剤などを推薦する場合 …補足的な応急措置の説明 P362+ P364 汚染された衣類を脱ぎ、再使用す場合には洗濯

をすること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 343 -

急性毒性-経皮

(第 3.1 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 5 警告 H313 皮膚に接触すると有害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P312 気分が悪い時は医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

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- 344 -

急性毒性-吸入

(第 3.1 章) シンボル どくろ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H330 吸入すると生命に危険 2 危険 H330 吸入すると生命に危険

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P271 屋外または換気の良い場所でのみ使用するこ

と。 P284 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用す

ること。 -【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用しても良い 製造者/供給者または所管官庁が指定する装具の

種類

P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸

しやすい姿勢で休息させること。 P310 直ちに医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P320 特別な治療が緊急に必要である (このラベルの

…を参照) ―緊急の解毒剤の投与が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

P403 + P233 換気の良いところで保管すること。容器を密閉

しておくこと。 -化学品が揮発性で有害な環境を作る可能性があるとき P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

Page 351: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

- 345 -

急性毒性-吸入

(第 3.1 章) シンボル どくろ

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 危険 H331 吸入すると有毒

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避

けること。 -P260がラベルに記載される場合には省略して

もよい 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P271 屋外または換気の良い場所でのみ使用するこ

と。

P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸

しやすい姿勢で休息させること。 P311 医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である。 (このラベルの...を参

照) -緊急の特別な処置が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

P403 + P233 換気の良いところで保管すること。容器を密閉

しておくこと。 -化学品が揮発性で有害な環境を作る可能性があるとき

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 346 -

急性毒性-吸入

(第 3.1 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 4 警告 H332 吸入すると有害

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避

けること。 -P260がラベルに記載される場合には省略してもよい 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

P271 屋外または換気の良い場所でのみ使用するこ

と。

P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸

しやすい姿勢で休息させること。 P312 気分が悪い時は医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

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- 347 -

急性毒性-吸入

(第 3.1 章) シンボル

なし 危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 5 警告 H333 吸入すると有害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P304 + P312 吸入した場合:気分が悪い時は、医師/…に連絡

すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

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- 348 -

皮膚腐食性/刺激性

(第 3.2 章) シンボル 腐食性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1A から 1C 危険 H314 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じんまたはミストを吸入しないこと。 -使用中に吸入されうるほこりやミストの粒子

が発生するかもしれない場合 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P301+ P330 + P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 P303 + P361 + P353 皮膚(または髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類

をすべて脱ぐこと。皮膚を水【またはシャワー】で洗うこ

と。 ―製造者/供給者または所管官庁が特定の化学品に対してそれが適当だとした場合には【】内の文章を含める P363 汚染した衣類を再使用する場合には洗濯すること。 P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿

勢で休息させること。 P310 直ちに医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急処置に関

する情報源 P321 特別な処置が必要である(このラベルの...を参照) 。 …補足的な応急措置の説明 製造者/供給者または所管官庁が指定する適切な洗浄剤が

ある場合 P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次に、コ

ンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外す

こと。その後も洗浄を続けること。

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 349 -

皮膚腐食性/刺激性

(第 3.2 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 警告 H315 皮膚刺激

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P280 保護手袋を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P302 + P352 皮膚についた場合:多量の水/…で洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切

で他の薬剤を推薦する場合 P321 特別な処置が必要である(このラベルの...を参

照) 。 …補足的な応急措置の説明 製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合 P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受

けること。 -P333+P313 がラベル上にあるときは省略しても良い 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て P362+P364 汚染された衣類を脱ぎ、再使用す場合には洗濯

をすること。

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- 350 -

皮膚腐食性/刺激性

(第 3.2 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 警告 H316 軽度の皮膚刺激

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受

けること。 -P333+P313 がラベル上にあるときは省略しても良い 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

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- 351 -

眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

(第 3.3 章) シンボル 腐食性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H318 重篤な眼の損傷

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P280 保護眼鏡/保護面を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。

次に、コンタクトレンズを着用していて容易に

外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続ける

こと。 P310 直ちに医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

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- 352 -

眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

(第 3.3 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2A 警告 H319 強い眼刺激

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P280 保護眼鏡/保護面を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。

次に、コンタクトレンズを着用していて容易に

外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続ける

こと。 P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受け

ること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

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- 353 -

眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

(第 3.3 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2B 警告 H320 眼刺激

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分

P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。

次に、コンタクトレンズを着用していて容易に

外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続ける

こと。 P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受け

ること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

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- 354 -

感作性-呼吸器

(第 3.4 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1, 1A, 1B 危険 H334 吸入するとアレルギー、喘息または呼吸困難を起こすおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避

けること。 -P260がラベルに記載される場合には省略して

もよい 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P284 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用す

ること。 -【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用しても良い 製造者/供給者または所管官庁が指定する装具の

種類

P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸

しやすい姿勢で休息させること。 P342 + P311 呼吸に関する症状が出た場合:医師/…に連絡す

ること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

Page 361: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

- 355 -

感作性-皮膚

(第 3.4 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1, 1A, 1B 警告 H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避

けること。 -P260がラベルに記載される場合には省略して

もよい 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 P280 保護手袋を着用すること。 製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を指

定してもよい

P302 + P352 皮膚についた場合:多量の水/…で洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する適切

な洗浄剤がある場合、または明らかに水が不適切

で他の薬剤を推薦する場合 P333 + P313 皮膚刺激または発疹が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て P321 特別な処置が必要である(このラベルの...を参

照) 。 …補足的な応急措置の説明 製造者/供給者または所管官庁が指定する適切な

洗浄剤がある場合 P362+P364 汚染された衣類を脱ぎ、再使用す場合には洗濯

をすること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

Page 362: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

- 356 -

生殖細胞変異原性

(第 3.5 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H340 遺伝性疾患のおそれ <...> 2 警告 H341 遺伝性疾患のおそれの疑い <…>

<...>には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に

証明されている場合、有害な経路を記載する。

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202 すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わ

ないこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 …製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を

指定してもよい

P308 + P313 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の

診察/手当を受けること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

Page 363: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

- 357 -

発がん性

(第 3.6 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H350 発がんのおそれ <...> 2 警告 H351 発がんのおそれの疑い < …>

<...> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的

に証明されている場合、有害な経路を記載する。

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202 すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わ

ないこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 …製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を

指定してもよい

P308 + P313 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の

診察/手当を受けること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 358 -

生殖毒性

(第 3.7 章) シンボル

健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H360 生殖能または胎児への悪影響のおそれ <...> <<...>> 2 警告 H361 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い <...> <<...>>

<...>には、もし判れば影響の内容を記載する。 <<...>> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的 に証明されている場合、有害な経路を記載する。

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202 すべての安全注意を読み理解するまで取り扱わ

ないこと。 P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用するこ

と。 …製造者/供給者または所管官庁が装具の種類を

指定してもよい

P308 + P313 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の

診察/手当を受けること。 製造者/供給者または所管官庁が選択する診察ま

たは手当て

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

Page 365: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

- 359 -

生殖毒性

(第 3.7 章) (授乳に対するまたは授乳を介した影響)

シンボル なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 (追加) 注意喚起語なし H362 授乳中の子に害を及ぼすおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 P260 粉じん/ミストを吸入しないこと。 ‐使用中に吸入されるほこりやミストの粒子が

発生するかもしれない場合 P263 妊娠中および授乳期中は接触を避けること。 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P308 + P313 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の

診察/手当を受けること。 …製造者/供給者または所管官庁が選択する診察

または手当て

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- 360 -

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

(第 3.8 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H370 <<...>>の場合、 <...>の障害

<...> には、もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる

<<...>> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明 されている場合、有害な経路を記載する

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P308+ P311 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師/…に連絡する事。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P321 特別な処置が必要である(このラベルの...を参

照)。 -緊急の処置が必要な場合 …補足的な応急措置の説明

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 361 -

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

(第 3.8 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 警告 H371 <<...>>の場合、 <...>の障害のおそれ。

<...> には、もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる

<<...>> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明 されている場合、有害な経路を記載する

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分

P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P308+ P311 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師/…に連絡する事。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 362 -

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

(第 3.8 章) シンボル 感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 3 警告 H335 呼吸器への刺激のおそれ、または、 H336 眠気またはめまいのおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避

けること。 -P260がラベルに記載される場合には省略しても良い …製造者/供給者または所管官庁が指定する適用

条件 P271 屋外または換気の良い場所でのみ使用するこ

と。

P304 + P340 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸

しやすい姿勢で休息させること。 P312 気分が悪い時は医師/…に連絡すること。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源

P403 + P233 換気の良いところで保管すること。容器を密閉

しておくこと。 -化学品が揮発性で有害な環境を作る可能性があるとき P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 363 -

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

(第 3.9 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H372 長期にわたる、または反復ばく露<<...>>による臓器 <...> の障害

<...> には、もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる

<<...>> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明 されている場合、有害な経路を記載する

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

件 P264 取扱い後は…をよく洗うこと。 …製造者/供給者または所管官庁が指定する取扱

後に洗浄する体の部分 P270 この製品を使用する時に、飲食または喫煙をし

ないこと。

P314 気分が悪い時は、医師の診察/手当を受けること。

…製造者/供給者または所管官庁が選択する診断

または手当て

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 364 -

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

(第 3.9 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 警告 H373 長期にわたる、または反復ばく露<<...>>による臓器<...>の障害のおそれ

<...> には、もしわかればすべての影響を受ける臓器を挙げる

<<...>> には、他の経路からのばく露が有害でないことが決定的に証明 されている場合、有害な経路を記載する

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P260 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しな

いこと。 製造者/供給者または所管官庁が指定する適用条

P314 気分が悪い時は、医師の診察/手当を受けること。

…製造者/供給者または所管官庁が選択する診察

または手当て

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 365 -

吸引性呼吸器有害性

(第 3.10 章) シンボル 健康有害性

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 危険 H304 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ 2 警告 H305 飲み込んで気道に侵入すると有害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P301 + P310 飲み込んだ場合:直ちに医師/…に連絡すること。

…製造者/供給者または所管官庁が指定する緊急

処置に関する情報源 P331 無理に吐かせないこと。

P405 施錠して保管すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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水生環境有害性-短期間(急性)有害性

(第 4.1 章) シンボル

環境

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 警告 H400 水生生物に非常に強い毒性

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P273 環境への放出を避けること。 -必要な時以外は

P391 漏出物を回収すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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水生環境有害性-短期間(急性)有害性

(第 4.1 章) シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 2 注意喚起語なし H401 水生生物に毒性 3 注意喚起語なし H402 水生生物に有害

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P273 環境への放出を避けること。 -必要な時以外は

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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- 368 -

水生環境有害性-長期間(慢性)有害性

(第 4.1 章) シンボル

環境

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報 1 警告 H410 長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性 2 注意喚起語なし H411 長期継続的影響により水生生物に毒性

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P273 環境への放出を避けること。 -必要な時以外は

P391 漏出物を回収すること。

P501 内容物/容器を...に廃棄すること。 …国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って 製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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水生環境有害性-長期間(慢性)有害性

(第 4.1 章)

シンボル

なし

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報

3 注意喚起語なし H412 長期継続的影響により水生生物に有害 4 注意喚起語なし H413 長期継続的影響により水生生物に有害のおそれ

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P273

環境への放出を避けること。

-必要な時以外は

P501

内容物/容器を...に廃棄すること。

…国際/国/都道府県/市町村の規則(明示する)に

従って

製造者/供給者または所管官庁が指定する内容

物、容器またはその両者に適用する廃棄物要件

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オゾン層への有害性

(第 4.2 章)

シンボル

感嘆符

危険有害性区分 注意喚起語 危険有害性情報

1 警告 H420 オゾン層の破壊により健康および環境に有害

注意書き

安全対策 応急措置 保管 廃棄

P502

回収またはリサイクルに関する情報について製

造者または供給者に問い合わせる

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- 371 -

附属書 3

第 4節

絵表示のコード

A3.4.1 序文

A3.4.1.1 絵表示とは、特定の情報を伝達することを意図したシンボルと境界線、背景のパターンまたは色

のような図的要素から構成されるものをいう。

A3.4.1.2 本節では、輸送以外の分野に対して GHS で規定される絵表示に割り当てられた推奨されるコー

ドについて述べる。

A3.4.1.3 絵表示のコードは参照の目的で使用されるように意図されている。これは絵表示の一部ではなく、

ラベルまたは安全データシートの第 2 節に記載するべきではない。

A3.4.2 絵表示のコード化

A3.4.2.1 輸送分野以外の分野に対するGHS絵表示には次のようなアルファベットと数字を組み合わせた

コードが割り当てられる:

(a) 文字「GHS」;および

(b) 連続した番号「01」、「02」、「03」などを以下の表 A3.4.1 のように割り当てる。

表 A3.4.1

コード 危険有害性絵表示 シンボル

GHS01

爆弾の爆発

GHS02

GHS03

円上の炎

GHS04

ガスボンベ

GHS05

腐食性

GHS06

どくろ

GHS07

感嘆符

GHS08

健康有害性

GHS09

環境

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附属書 3

第 5 節

注意書絵表示の例

A3.5.1 注意絵表示(ピクトグラム)

欧州連合 (1992 年 6 月 24 日付け理事会指令 92/58/EEC) から

南アフリカ標準局 (SABS 0265:1999) から

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附属書 4

安全データシート (SDS)

作成指針

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附属書 4 SDS 作成指針

A4.1 序文 A4.1.1 本文書は化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)の要求に基づく手引きを提供するものである。SDS は、第 1.5 章に説明があるように GHS における危険有害性情報の伝達の重要な要素の1つである。本手引き文書の使用により、所管官庁(CA)の要求事項の遵守を支援し、GHS に従った SDS の作成を可能にする。 A4.1.2 この手引き文書が使用されるか否かは SDS に対する輸入国の要求事項にかかっている。GHS が世界中に適用されれば、いずれは完全に調和された状況となることが期待されている。 A4.1.3 特に言及しない場合は、本附属書で言及しているすべての章、節および表は、GHS の本文に含まれている。 A4.2 SDS 作成のための一般的な手引き A4.2.1 適用範囲と実施 安全データシート(SDS)は、GHS の物理化学的危険性、健康または環境に対する有害性の調和した区分

に適合するすべての物質とその混合物に対し、また、混合物の基準(第 1.5 章の表 1.5.1 参照)に規定されている SDS のカットオフ値を超える濃度で、発がん性、生殖毒性、または特定標的臓器毒性の基準を満たす物質を含有するすべての混合物に対して作成される。所管官庁(CA)は、危険有害性としての分類基準は満たさないが一定の濃度(第 3.2 章参照)で危険有害性物質を含有する混合物についても SDS を要求することができる。また所管官庁は GHS のクラス/エンドポイントの危険有害性物質として分類されない物質または混合物に対して SDS を要求することができる。SDS は情報提供にとって広く受け入れられている効果的な手法であり、GHS 分類基準に合致しないか、または含まれない物質または混合物の情報提供に用いられることができる。 A4.2.2 一般的手引き A4.2.2.1 SDS の作成にあたっては、SDS は、対象とする人に物質または混合物の危険有害性情報を提供

するものであり、また物質または混合物の安全な保管、取扱いと廃棄についての情報を提供するものでな

くてはならないことを念頭におく必要がある。SDS にはばく露による潜在的健康影響と、物質または混合

物を扱う際の作業方法に関する情報が含められている。また SDS にはその物質または混合物についての使

用、保管、取扱いと緊急事態対策に関する物理化学的特性または環境影響に由来する危険有害性情報が含

まれている。この手引きの目的とするところは GHS の下で要求される各必須項目の内容の整合性と正確

さにあり、このために作成された安全データシートによって、使用者は作業場における健康保護と安全、

および環境保全に関連した必要措置を採ることができるようになる。SDS に盛り込まれる情報は明確かつ

簡潔に書かれていなければならない。この SDS は対象とする使用者の特定の必要性をできるだけ深く考慮

に入れながら、適格者が作成しなければならない。物質と混合物を上市する者は、適格者が SDS の再教育

講座及び研修に定期的に参加することを確保しなければならない。 A4.2.2.2 SDS の作成にあたっては、作業場の対象者をはっきりと念頭において一貫した完全な形で情報が提供されるべきである。しかしながら、SDS の全体または一部が、地域社会の構成員に対すると同様に、労働者、雇用者、健康と安全の専門家、救急隊員、関係行政機関に対する情報提供のために使用されることが考慮すべきである。 A4.2.2.3 SDS で用いられる言葉は専門用語、頭文字語と略語の使用を避けて易しく明確かつ正確であるべきである。あいまいで紛らわしい表現を使用すべきではない。「危険かもしれない」、「健康への影響なし」、「ほとんどすべての条件下で使用しても安全」、または「無害」などを使うことも推奨できない。ある特性についての情報が重要ではないか、または技術的理由から情報の提供ができないことがある。その場合には各項目にその理由が明確に記載されなければならない。特定の危険が存在しない旨を記載する場合には、安全データシートは、分類するにあたって、情報がない場合と否定的な試験結果がある場合とを区別すべきである。

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A4.2.2.4. 安全データシートの発行日は明確に記載すべきである。発行日は、SDS が公開された日である。これは SDS の認定および公表まで完了した後すぐである。改訂された SDS は、バージョン番号、改訂番号、差し替えた日またはどのバージョンを差し替えたかの表示と同様に、発行日を明確に記載すべきである。 A4.2.3 SDS の様式 A4.2.3.1 SDS の情報は、次の 16 項目を使用し、下に示す順序で記載するべきである(1.5.3.2.1.参照)

1. 物質等および会社情報

2. 危険有害性の要約

3. 組成および成分情報

4. 応急措置

5. 火災時の措置

6. 漏出時の措置

7. 取扱いおよび保管上の注意

8. ばく露防止および保護措置

9. 物理的および化学的性質

10. 安定性および反応性

11. 有害性情報

12. 環境影響情報

13. 廃棄上の注意

14. 輸送上の注意

15. 適用法令

16. その他の情報 A4.2.3.2 SDS は長さの決まった文書ではない。SDS の長さはその物質の危険有害性と入手可能な情報に相応の長さにすべきである。 A4.2.3.3 SDS のページにはすべてページ数を付け、SDS の終わりを示す何らかの表示(例えば、1/3 のように)をすべきである。他の方法として、各ページにページ数を付けるとともに次ページの有無を示してもよい。(例えば「次ページに続く」あるいは「SDS 終わり」)

A4.2.4 SDS の内容 A4.2.4.1 SDS の内容に関する一般情報は 1.5.3.3.で見ることができる。さらに実際的な情報は以下に述べる。 A4.2.4.2 本附属書の第 4.3 節で概説されている 少限の情報は、該当しまた入手できる場合には SDS の関連する項目に記載すべきである1。この情報が入手できない場合または欠けている場合、このことをはっきりと記述すべきである。SDS はいかなる空欄も残すべきではない。 A4.2.4.3 また SDS には取得されたデータの概要/結論を含むべきである。これによってこの分野の専門家でなくても危険有害な物質/混合物の危険有害性のすべてを認識するのが容易になる。 A4.2.4.4 略語が混乱や理解不足を招くおそれがあるため、略語の使用は推奨できない。

1 「該当する」とは、SDSを添付する製品について、情報が該当するということをいう。 「入手できる」とは、SDS を作成する供給者等が、情報を入手できるということをいう。

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A4.2.5 他の情報の要求事項 A4.2.5.1 SDS の作成のための情報の要求事項が存在する。 少限の情報の要求事項は A4.3 で概説されている。 A4.2.5.2 少限の情報の要求事項(A4.2.4.2 参照)に加えて、SDS には追加情報を含めることができる。ひとつの物質の性質および/または使用法についての関連追加情報がある場合にはその情報は SDS に含めるべきである。追加情報要求事項に関するさらなる助言については、A4.3.16 を参照すること。 A4.2.6 単位 数と量は製品が供給される地域において適切な単位で記述すべきである。一般的には、国際単位系(SI)を用いるべきである。 A4.3 SDS の作成のための必要情報 本章では SDS に必要な GHS の 小限の情報要求事項について説明する。追加情報が所管官庁によって

要求されることがある。 A4.3.1 第 1 節:物質等および会社情報 物質または混合物を特定し、供給者名、推奨される使用法、本節にある緊急連絡を含む供給者の詳細な

連絡先の情報を提供すること。 A4.3.1.1 GHS の製品特定名 物質または混合物の特定 (GHS の製品特定名) はラベル表示と完全に一致すべきである。物質または混合物の若干性質の異なるもの単一の共通した SDS でカバーする場合には、すべての名称および若干性質の異なるものが SDS に一覧されるかまたは含まれる物質の範囲が SDS に明確に示されるべきである。 A4.3.1.2 他の特定手段 物質または混合物は別称、製品番号、会社の製品コード、または他の独自の識別方法によって特定する

ことができる。該当する場合には、物質または混合物がラベル表示されているか一般に知られている他の名称または別称を使用すること。 A4.3.1.3 化学品の推奨用途と使用上の制限 例えば難燃化剤、抗酸化剤などの物質または混合物の実際の働きについて簡単な説明を含む推奨もしく

は意図された用途を示すこと。使用上の制限は、供給者は法令に定めのない推奨も含めてできるだけ多く記載すべきである。 A4.3.1.4 供給者の詳細 供給者の名称、省略のない住所、電話番号を SDS に記載すべきである。

A4.3.1.5 緊急電話番号 すべての SDS には緊急時情報提供を記載すべきである。作業時間(例えば月曜日から金曜日、午前 8

時から午後 6 時、あるいは 24 時間営業)などのあらゆる制約、または特定情報の限界 (例えば医学的緊急

事態、または輸送緊急事態) など何らかの制約がある場合、明確に記述すべきである。 A4.3.2 第 2 節:危険有害性の要約 本節では、物質または混合物の危険有害性とこれらの危険有害性に関連する適切な警告情報 (注意喚起

語、危険有害性情報および注意書き)を記載する。本節では、A4.2.4.3 に記述されているデータの簡単な要

約/結論を含むべきである。 A4.3.2.1 物質または混合物の分類 A4.3.2.1.1 本小節では物質または混合物の危険有害性分類を示す。

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A4.3.2.1.2 物質または混合物が GHS の第 2 部、第 3 部または第4部に従って分類される場合には、一

般にその分類は危険有害性を示す適切な危険有害性クラスおよび区分/細区分(例えば、引火性液体 区分 1および皮膚腐食性 区分 1A)によって伝えられる。しかし、分類が同じクラス内で危険有害性情報が異な

る場合には、分類はその相違を反映していなければならない。例えば、ばく露の経路は以下のように急性

毒性分類の違いとなる:急性経口毒性区分 1、急性経皮毒性区分 1 および急性吸入毒性区分 1。物質ある

いは混合物が1つのクラスで複数の区分に分類される場合には、全ての分類は伝達されなければならない。 A4.3.2.2 注意書きを含む GHS ラベル要素 A4.3.2.2.1. 分類に基づいて適切なラベル要素:注意喚起語、危険有害性情報および注意書きを示す。 A4.3.2.2.2. 絵表示 (または危険有害性シンボル) には白黒の図により記載するか、例えば、「炎」、「どく

ろ」のようなシンボルの名称を用いてもよい。 A4.3.2.3 結果として分類されないその他の危険有害性 結果として分類されないものの物質の全般的な危険有害性に結びつく他の危険有害性についての情報を

示すこと。例えば、硬化または処理中の空気汚染、粉じん爆発危険、窒息、凍結、または土壌生息生物に

対する危険有害性のような環境上の影響など。粉じん爆発危険性の場合には「拡散した場合、爆発可能性

のある粉じん-空気混合物を形成する可能性あり」という文章が適当である。 A4.3.3 第 3 節:組成および成分情報 この節では、製品の成分を示すこと。それ自体は分類されており、なおかつ物質の分類に寄与する不純

物と分解防止添加物の成分を示すことが含まれる。本節では錯化合物に関する情報を提供してもよい。 注記:成分に関する情報については、営業秘密(CBI) についての所管官庁の規則が製品特定の規則に優先される。該当する場合には成分に関する営業秘密情報が省略されていることを示すこと。 A4.3.3.1 物質 A4.3.3.1.1 物質の化学的特定名 物質の特定には一般的な化学名が用いられる。化学名は GHS の製品特定名と同一であることがある。

注記:「一般的な化学名」は、必要に応じて、例えば CAS 名または IUPAC 名でよい。 A4.3.3.1.2. 物質の慣用名と別名 必要に応じて慣用名と別名を記載すべきである。

A4.3.3.1.3 物質の CAS 番号とその他の特定名 ケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)の登録番号は、唯一の化学的特定名を与える。そして利

用可能である場合には示すべきである。例えば、欧州委員会(EC)番号といった国または地域に特有の他の

特定名を追加することができる。 A4.3.3.1.4 それ自体分類されており、なおかつ物質の分類に資する不純物と分解防止添加物 それ自体分類されており、なおかつ物質の分類に寄与するすべての不純物または分解防止添加物を特定

すること。

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A4.3.3.2 混合物 A4.3.3.2.1 混合物については、GHS の基準において健康または環境に有害で、かつカットオフ値を超え

て含有されている、すべての危険有害性成分の物質の特定名と、(A4.3.3.1.3 の意味の範囲内の)特定番号、

濃度または濃度範囲を示すこと。製造者または供給者は、危険有害性のない成分も含めて、すべての成分

を示してもよい。 A4.3.3.2.2 混合物の成分の濃度範囲に関して以下のように記述すべきである。

(a) 正確な百分率が降順により重量または体積で表示、または

(b) 適切な国の所管官庁によって受け入れられる場合には降順により重量または体積を百 分率の範囲で表示

A4.3.3.2.3 成分割合比率を用いる場合、健康および環境に対する有害性については、混合物全体の影響

を示すことができるならば、その成分の も高濃度のものの影響を記載すべきである。 注記:「成分割合比率」は、混合物における成分の濃度または百分率範囲を意味する。 A4.3.4 第 4 節:応急措置 この節では、訓練を受けていない対応者が、高度な装置を用いずに、かつ使用できる医薬品の選択肢が

少ない中で行う初期手当について記載する。医療が必要ならばその緊急度も含めてその指示を記載するべ

きである。ばく露経路による急性影響に関する情報、救急治療法、特別な医学的監視を必要とする遅発影

響に対する指示が有用であろう。 A4.3.4.1 必要な応急措置の説明 A4.3.4.1.1 それぞれのばく露経路ごとの応急処置を指示すること。小項目を用いて各経路 (例えば、吸入、

皮膚、眼および経口摂取) を示すこと。予想される急性の症状と発症が遅い症状について記載すること。 A4.3.4.1.2 以下の場合に助言を行うこと (a) 速やかな治療が必要でありまたばく露後に遅発影響のおそれがある場合

(b) ばく露した人を新鮮な空気のあるところへの搬出が推奨される場合

(c) ばく露した人から衣服と靴を脱がせることとその処理が推奨される場合 (d) 応急処置に対処するための個人用保護具 (PPE) が推奨される場合 A4.3.4.2 も重要な急性と発症の遅い症状/影響

必要に応じて、ばく露に由来する も重要な急性および遅発症状/影響についての情報を提供すること。 A4.3.4.3 必要に応じた速やかな治療と必要とされる特別な治療の指示 必要に応じて遅発効果に対する臨床検査と医学的な監視、特定の解毒剤の詳細(知られている場合)およ

び禁忌についての情報を提供すること。 A4.3.5 第 5 節:火災時の措置 本節は、物質または混合物によって、もしくはその近傍から発生した火災消火に当たる際の要求事項を

示す。 A4.3.5.1 適切な消火剤 適切なタイプの消火用機器についての情報を提供すること。さらに消火用機器が物質または混合物にか

かわる特定の状況において不適であるかどうかを示すこと(例えば、爆発可能性のある粉じん-空気混合

物の形成を起こしうる高圧媒体を避ける)。

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A4.3.5.2 化学品から生じる特定の危険性 物質または混合物が燃える際に有害な燃焼副産物が発生するなど、化学品から生じる恐れのある特定の

危険有害性について助言すること。例えば

(a) 「燃焼する際に一酸化炭素の毒性ガス発生のおそれがある」または

(b) 「燃焼する際に硫黄と窒素の酸化物が発生する」。 A4.3.5.3 消防士用の特別な防具と予防措置 A4.3.5.3.1 消火活動において遵守すべきすべての予防措置について助言すること。例えば、「格納容器は

水噴霧によって低温に保つ」など。 A4.3.6 第 6 節:漏出時の措置 本節では、この節にある、人、施設および環境に与える有害影響の予防または 小限に抑えるための流

出、漏れ、放出に対する適切な対応について勧告する。漏出量が危険有害性に影響のある場合、多量あるいは少量での対処の違いを示すこと。囲い込んで回収する方法には異なった処置が求められることを示してもよい。 A4.3.6.1 人への予防措置、防具、および応急処置法 A4.3.6.1.1 非緊急事態要員に対して 以下のような物質または混合物の不測の流出および放出に関する助言を提供すること。

(a) 皮膚、眼および個人の衣服の汚染を防止するため、適切な保護具の着用(個人の保護具を含

む、SDS の第 8 節参照)

(b) 着火源の除去および充分な換気 および

(c) 危険区域から避難または専門家に助言を求める必要性などの応急処置 A4.3.6.1.2 緊急事態要員に対して 防護服の適切な素材(例えば、「適切」ブチレン、「不適切」PVC)に関する情報を提供する。 A4.3.6.2 環境上の予防措置 下水溝、地表水と地下水から離して置くなど物質または混合物の不測の流出と放出に関連する環境上の

予防措置について助言すること。 A4.3.6.3 封じ込めと流出物洗浄の方法および用具 A4.3.6.3.1 流出を封じ込めて浄化する方法について適切な助言をすること。適切な封じ込め技術には以

下のものがある。:

(a) 土手を作る2、下水溝を覆う および

(b) 被覆措置3 A4.3.6.3.2 適切な洗浄方法には以下のものを含むこと。

(a) 中和方法

2 “土手 (bund)”とは、タンクまたはパイプ作業から漏れや流出の際に、貯めておける液体の量を超えた際に回収する液体回収設備の提供をいう。土手が築かれる範囲は、水/油の分離の設備を持つべき回収タンクに排出されるべきである。 3 覆いまたは防護を用意(例えば、損壊または流出を防止)

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(b) 汚染除去方法

(c) 吸着材

(d) 洗浄方法

(e) 真空装置による吸い取り方法 および

(f) 封じ込め/浄化に必要な装置(適切な場合、防爆器具や装置の使用も含める) A4.3.6.3.3 流出と放出などについての他のすべての事柄を提供する。例えば不適切な封じ込めまたは洗

浄方法を含む。 A4.3.7 第 7 節:取扱いおよび保管 本節では、物質または混合物による、人、施設、環境に対する潜在的な危険有害性を 小限にするため

の安全な取扱いに関する手引きを提供する。物質または混合物の意図された使用と特性に適切な予防措置

に重点を置くこと。 A4.3.7.1 安全な取扱のための予防措置 A4.3.7.1.1 以下の助言を行うこと:

(a) 物質または混合物の安全な取扱いを可能にすること

(b) 混触危険性物質または混合物の取扱いの防止 および

(c) 物質や混合物の性質を変えることによって新たなリスクを生む操作および条件、さらに

適当な対策に注意をはらう

(d) 物質または混合物の環境への放出の 少化 A4.3.7.1.2 一般的な衛生についての助言を提示することは望ましい。例えば

(a) 「作業域内での飲食と喫煙の禁止」

(b) 「使用後の手洗い」 および

(c) 「食事する場所に入る前の、汚染された衣類と防具の取り外し」

A4.3.7.2 混触危険性を含む、安全な保管条件 物理化学的特性に基づいて提供する助言が、SDS の第 9 節(物理化学的特性)と矛盾していないことを

確認すること。もし関連すれば、以下を含めた特定の保管要求事項について助言すること。

(a) 以下を回避する方法

(i) 爆発性

(ii) 腐食性条件

(iii) 燃焼危険性

(iv) 混触危険性物質または混合物

(v) 揮発性条件 および

(vi) 潜在的発火源(電気設備を含む)

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(b) 以下の影響の制御方法

(i) 気象条件

(ii) 大気圧

(iii) 温度

(iv) 直射日光

(v) 湿度 および

(vi) 振動

(c) 以下を用いた物質または混合物の品質維持方法

(i) 安定化剤 および

(ii) 抗酸化剤

(d) 以下を含めたその他の情報提供

(i) 換気要求事項

(ii) 保管室/容器のための特別な設計

(iii) 保管条件下での数量制限(関連がある場合) および

(iv) 輸送容器の適合性

A4.3.8 第 8 節:ばく露制御および保護措置 本手引きにおいては、「職業ばく露限界」という用語は作業場の空気中の限界値または生物学的限界値を

意味する。また、この文書の目的上、「ばく露の管理」は、使用中に労働者と環境へのばく露を 小限にするために講じるべきすべての特別な防護と予防策をいう。物質または混合物へのばく露と物質または混合物の危険有害性に関連するリスクを 小限にするために必要な工学的制御方法は本節で詳細に記載されるべきである。 A4.3.8.1 管理パラメーター A4.3.8.1.1 入手できる場合には、物質と混合物の各成分についての注釈を含めて職業性ばく露限界値(作業場の空気中の限界値または生物学的限界値)を示す。物質または混合物を意図して使用するときに、空気

の汚染が生ずる場合は、これらの入手できる職業性ばく露限界値もまた示すべきである。SDS が供給され

ている国または地域における職業性ばく露限界値が存在する場合には、これを示すべきである。職業性ば

く露限界値の出所を SDS において記載すべきである。職業性ばく露限界値を示す場合には、SDS の第 3節-組成/成分情報に記載されている物質の特性を使用すべきである。 A4.3.8.1.2 入手できる場合には、物質および混合物の成分ごとの生物学的限界値を注釈つきで示す。可

能であれば生物学的限界値はその SDS が供給されている国や地域に関連づけるべきである。生物学的限界

値の出所を SDS において記載するべきである。生物学的限界値を示す場合、SDS の第 3 項で指定されて

いる物質の特性を使用すべきである。 A4.3.8.1.3 特定の使用に関連して安全を確保するために、危険有害性の程度に応じた管理が推奨される場

合には、効果的なリスク管理を可能とするために充分な詳細情報が提供されるべきである。特定の危険有

害性の程度に応じた管理(コントロールバンディング)を行うにあたっての状況及び限界が明確にされる

べきである。 A4.3.8.2 適切な工学的管理方法 適切なばく露管理対策の説明は、物質または混合物の使用状態に関連づけるべきである。適切なリスク

評価を実施するために十分な情報が提供されるべきである。特別な工学的管理方法が必要である場合を示し、特定の型を明記する。その例には以下のものがある。:

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(a) 必要ならば工学的管理方法を用いて「職業的ばく露標準を下回る空気濃度を維持する」

(b) 「~する場合、局所排気装置を用いる」

(c) 「密閉系のみで使用」

(d) 「スプレー塗装ブースまたは密閉系のみで使用」

(e) 「人が材料に接触しないように機械的な操作にする」

(f) 「爆発性粉塵の操作管理を行う」

ここで提供される情報は、SDS の第 7 節-取扱いおよび保管で提供される情報を補足するものであるべ

きである。 A4.3.8.3 個人用保護衣 (PPE) などの個人保護措置 A4.3.8.3.1 個人用保護具は良好な労働衛生の手順と矛盾しない工学的管理方法、換気、隔離を含めた他の管理手法と併用されるべきである。特定の火災/化学用 PPE についての情報提供は、SDS の第 5 節(火災時の措置)も参照のこと。 A4.3.8.3.2 以下を含め、物質または混合物へのばく露による疾病または傷害の起こる可能性を 小限に

するために必要な個人用保護具 (PPE) を特定すること。:

(a) 眼/顔面の保護:物質または混合物による危険有害性と接触の可能性に基づいて、必要な眼の

保護または顔面保護具を特定する。

(b) 皮膚の保護:物質または混合物に関する危険有害性と接触の可能性に基づいて、着用する保

護具を指定する(例えば手袋、長靴、防護服の型)。

(c) 呼吸器の保護:危険有害性とばく露の可能性に基づいて、空気浄化装置と適切な空気浄化部

品(カートリッジまたは吸収缶)または呼吸装置を含めて、適切な呼吸器の種類を特定する。

(d) 高熱の危険性:高熱の危険性を有する材料に対して、着用する保護具を特定する。これにあ

たっては PPE の材質に特別の配慮をはらうべきである。

A4.3.8.3.3 皮膚、眼または肺のばく露防止のための手袋または他の保護衣に対して、特別な要求事項が

挙げられることがある。該当する場合には PPE の種類を明確に記載すべきである。例えば、「PVC 手袋」

または「ニトリルゴム手袋」、加えて、手袋の材料の厚さおよび透過時間など。人工呼吸器には、特別な要

求事項がありえる。 A4.3.9 第 9 節:物理的および化学的性質と安全特性 A4.3.9.1 附属書 4 の本節は SDS 作成者へ手引きを提供し、また情報を提供するためにある。この手引き

は情報を SDS にどのように表すかについては規定していない。この手引きは下記のように 3 つの表に分か

れている。

A4.3.9.2 表 A4.3.9.1 は、第 1.5 章、表 1.5.2 に明記されている物理的および化学的性質に関するガイダ

ンスである。SDS 作成者ははっきりと表 1.5.2 に明記されている物理的および化学的性質について記載/確認しなければならない。表 1.5.2 で要求されている特定の物理的および化学的性質が該当しないあるいは特

定の小項目のなかのこれらが入手できない場合には、そのことを明示するべきである。

A4.3.9.3 表 A4.3.9.2 では SDS には要求されていない性質/安全特性および試験結果を列挙したが、物質

または混合物が各物理的危険性クラスに分類されたときには情報伝達することが有用であろう。特定の物

理的危険性に関係しているとみなされながら分類に至らなかったデータ(例えば判定基準に近い陰性の試

験結果)もまた情報伝達することが有用であろう。

A4.3.9.4 表 A4.3.9.3 ではさらに SDS には要求されていない性質/安全特性および試験結果を列挙したが、

物質または混合物に関して情報伝達することが有用であろう。本表には記載されていない物質または混合

物の他の物理的性質/安全特性もまた情報伝達することが有用であろう。

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注記: 表 A4.3.9.1、A4.3.9.2 および A4.3.9.3 の性質は分割してもしなくてもよい(すなわちリストとして)。性質の順序も適当と見なされれば変更しても良い。

A4.3.9.5 一般に、SDS の本節で与えられる情報は温度及び気圧が標準状態(温度 20°C、絶対気圧 101.3 kPa)のものとするべきである。他の条件を適用する場合には、それらを各性質とともに示すべきである。

A4.3.9.6 SDS のデータは適当な単位で示されなければならない。データが危険性クラスと関連する場合には、測定単位は当該危険性クラスの判定基準に特定されているものにするべきである。

A4.3.9.7 情報または与えられた数値の解釈が関係する場合には、測定方法(例えば引火点での開放/密閉カップ)を示すか、または値は計算されたものかどうかを記述する。

A4.3.9.8 混合物の場合、混合物全体として有効なデータがあるときには、それを示すべきである。混合物全体としてのデータを入手できない場合には、 も関連する成分のデータを示してもよく、さらにこのデータはどの成分に該当するものであるかを明示するべきである。

A4.3.9.9 他の適当な物理的または化学的性質もしくは安全特性は、下記のリストされたものに加えて、SDS の本節に含めてもよい。

表 A4.3.9.1:基本的な物理的および化学的性質

この表には基本的な物理的および化学的性質と安全特性を示した。要求されている関連情報は本表に示されているすべての性質に関して示されるべきである。例えば短い記述、値、単位、条件(例えば温度、圧力)、方法などである。

もし特定の性質または安全特性に該当しない場合にも(「注釈/手引き」欄における適用性についての各情報に基づく)、それらは「該当しない」との記述とともに SDS に記載されるべきである。

特定の性質または安全特性に関する情報が無い場合にも、それらは「入手できない」との記述とともにSDS に記載されるべきである。データが入手できない理由に関して、例えば「融解した」、「分解した」、「溶解した」など、短い説明が適切になされたほうが良い。

性質 注釈/手引き

物理状態 − 一般に標準状態下 − ガス、液体および固体の定義は第 2.1 章を参照

色 − 供給された物質または混合物の色を示す − 異なる色を持つような混合物のわずかな色の差異を1つの SDSでカバーする場

合には、色を記述するために「さまざまな」という言葉を使うことができる(混

合物のわずかな違いに対する SDS に関しては A4.3.1.1 を参照)

臭い − よく知られているまたは文献に記述がある臭いならば、その性質を記載する − 入手可能であれば臭いの閾値を示す(定性的または定量的に)

融解点/凝固点 − ガスは該当しない − 標準圧力下 − 融点が測定方法の範囲を超えていた場合には、何度まで融点が観察できなかっ

たかを示す − 融解前または融解中に分解や昇華が起きたかどうか示す − ワックスやペーストでは、代わりに軟化温度/範囲を示してもよい − 混合物で融点/凝固点を測定するのが技術的に可能ではない場合にはそれを示す

沸点または初留

点および沸点範

− 一般的に標準圧力下(沸点が非常に高いまたは沸騰前に分解が起きる場合には、

より低い圧力下での沸点が示されてもよい) − 沸点が測定方法の範囲を超えていた場合には、何度まで沸点が観察できなかっ

たかを示す − 沸騰前または沸騰中に分解が起きたかどうか示す − 混合物で沸点または沸点範囲を測定するのが技術的に可能ではない場合にはそ

れを示す;その場合沸点が も低い成分の沸点も示す

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性質 注釈/手引き

可燃性 − ガス、液体および固体が該当する − 物質または混合物が点火性かどうか示す(たとえ可燃性に分類されない場合で

も、火がつきかねないまたは火がつく) − もし入手可能で適当であれば、さらなる情報を追加的に示してもよい、例えば、

• 点火の影響が通常の燃焼以上(例えば爆発)か • 非標準状態下での点火可能性 など

− 表 A4.3.9.2 に従い各危険性分類に基づいた可燃性に関してのより具体的な情報を示してもよい

爆発下限界及び爆発上限界 /可燃限界

− 固体は該当しない − 引火性液体には少なくとも爆発下限を示す:

• もし引火点が約> -25 °C の場合、標準温度では 爆発上限を測定するのは

可能ではないであろう;そのような場合上昇させた温度での爆発上限を示す

ことを勧める • もし引火点が> +20 °C の場合、同様のことが爆発下限及び爆発上限にもい

える 注記:世界の地域により「爆発限界」または「可燃限界」という用語が使用されているが、同じ意味と推測される

引火点 − ガス、エアゾールおよび固体は該当しない − 試験方法に関する情報など、第 2.6 章 2.6.4.2 を参照 混合物: − 入手可能であれば混合物自体の値を示し、それがない場合には も低い引火点

を持つ物質の引火点を示す、一般にはそれらが主として引火点に寄与するため

自然発火点 − ガスおよび液体のみが該当する 混合物: − 入手可能であれば混合物自体の値を示す、それがない場合には も低い自然発

火温度をもつ成分の自然発火温度を示す

分解温度 − 自己反応性物質及び混合物、有機過酸化物および分解可能性のある物質及び混合物が該当する

− 下記事項を示す • 適用される容量とともに SADT(自己加速分解温度)、または • 分解開始温度(試験方法及び判定基準のマニュアルの 20.3.3.3 参照)

− 示された温度が SADT かまたは自己分解開始温度かを示す − もし分解が観察されない場合には、どの温度まで自己分解が観察されなかった

かを示す、例えば「x °C/°F まで自己分解は観察されず」

pH − ガスは該当しない − 水性液体および溶液が該当する(pH は定義により水媒体と関連している;他の

媒体での測定では pH は得られない) − 水中での試験物質の濃度を示す − pH が≤ 2 または ≥ 11.5 の時は、酸/アルカリ予備について表 A4.3.9.3 を参照

動粘性率 − 液体のみが該当する − 単位として mm2/s が望ましい(吸引性呼吸器有害性の分類基準はこの単位に基

づいているため) − 追加的に動粘度を示してもよい。動粘性率は密度によって動粘度と関連してい

る:

)/(

)()/(

32

cmg

smPasmm

密度

動粘度動粘性率

− 非ニュートン液体については、チキソトロピーまたはレオペクシー動態について示す

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性質 注釈/手引き

溶解度 − 一般に標準温度下 − 水への溶解を示す − 他の(非極性)溶媒への溶解度も含まれてよい − 混合物の場合、それの全部または一部が水または他の溶媒に溶解または混和す

るのかを示す n-オクタノール /水分配係数(log値)

− 無機およびイオン性液体は該当しない − 一般に混合物は該当しない − 計算できるかもしれない(QSAR 使用-定量的構造活性相関) − 値は試験によるものかまたは計算によるものかを示す

蒸気圧 − 一般に標準温度下 − 追加的に 50 °C における揮発性液体の蒸気圧を示す(第 1.2 章の定義に基づき

ガスと液体の境界を明確にするため) − 若干組成の異なる液体混合物または液化ガス混合物を1つの SDS でカバーす

る場合には、蒸気圧の範囲を示す − 液体混合物または液化ガス混合物では、蒸気圧の範囲または混合物の蒸気圧が

主としてもっとも揮発性の大きな成分によって決まる場合には少なくともこれらの蒸気圧を示す

− 液体混合物または液化ガス混合物では、蒸気圧は成分の活性係数を用いて計算してもよい

− 飽和蒸気濃度(SVC)を追加的に示してもよい。飽和蒸気濃度は次のように推算できる:

2.987)()/( 3 mbarhPainVPmmlinSVC 0412.0)()/( MWmbarhPainVPlmginSVC

ここで • VP は蒸気圧 • MW は分子量

密度および /または相対密度

− 液体と固体のみが該当する − 一般に標準状態下 − 適当に示す

• 絶対密度および/または • 参照として 4 °C の水を基準とした相対密度(ときに比重と呼ばれる)

− 密度の変動が起きる場合には範囲で示してもよい、例えばバッチ製造による、または若干組成の異なる物質または混合物を1つの SDS でカバーする場合

注記:明確にするために、絶対密度(単位を示す)および/または相対密度(単位なし)の報告がある場合には SDS に記載するべきである。

相対ガス密度 − ガスと液体のみが該当する − ガスでは参照として 20 °C の空気(=MW/29)を基準とした相対密度を示す − 液体では参照として 20 °C の空気(=MW/29)を基準とした相対蒸気密度を示

す − 液体では追加的に 20 °C の蒸気/空気-混合物の相対密度(空気=1)を示しても

よい。これは次のように計算する: )29MW(10VP341D 6

20m ここで

• Dm は 20 °C の蒸気/空気-混合物の相対密度 • VP20 は 20 °C の蒸気圧(mbar) • MW は分子量

粒子特性 − 固体のみが該当する − 粒子サイズを示す(中央値及び範囲) − 入手可能で適当であれば、他の性質を追加的に示してもよい、例えば

• 粒径分布(範囲) • 形およびアスペクト比 • 比表面積

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表 A4.3.9.2::物理的危険性クラスに関連するデータ(補遺)

この表では、SDS には要求されていないものの、物質または混合物を各物理的危険性クラスに分類する際

に情報伝達することが有用であろう性質/安全特性および試験結果を記載している。特定の物理的危険性に

関連すると思われるが分類結果には至らない(例えば判定基準に近い否定的な結果)データも情報伝達す

ることが有用であろう。短い説明、値、単位、条件(例えば温度、圧力)、方法のような、どのような関

連情報でも含める。 データが関連する危険性クラスの名称をデータとともに示してもよい。これは SDS の第 2 節において分類

結果はすでに示されているので必須ではない。データは表 A4.3.9.1 のデータと同様の方法で示してもよい。 他に特記されていなければ、表に参照されている試験方法は危険物輸送に関する国連勧告、試験方法及び判定基準のマニュアル(以後、試験方法及び判定基準のマニュアルという)に記載されている。

章 危険性クラス 性質/安全特性/試験結果および注釈/手引き 2.1 爆発物 − 一般には国連ギャップ試験で測定される衝撃に対する感度を示す:試験 1

(a)および/または試験 2 (a)(試験方法及び判定基準のマニュアルの 11.4節または 12.4 節)(少なくとも+または-で示す)

− 密閉状態での熱の影響を示す、一般にはケーネン試験で測定する: 試験

1 (b) および/または試験 2 (b) (試験方法及び判定基準のマニュアルの

11.5 節または 12.5 節)(限界径を示すことが望ましい) − 密閉状態での点火の影響を示す、一般には試験 1 (c)および/または試験 2

(c) (試験方法及び判定基準のマニュアルの 11.6 節または 12.6 節)で測

定する(少なくとも+または-で示す) − 打撃に対する感度を示す、一般には試験 3 (a)で測定する(試験方法及び

判定基準のマニュアルの 13.4 節)(限界衝撃エネルギーを示すことが望ま

しい) − 摩擦に対する感度を示す、一般には試験 3 (b)で測定する(試験方法及び判

定基準のマニュアルの 13.5 節)(限界負荷を示すことが望ましい) − 熱安定性を示す、一般には試験 3 (c)で測定する(試験方法及び判定基準の

マニュアルの 13.6 節)(少なくとも+または-で示す) − 追記、この項目は第 2.1 章 2.1.3 の注記に基づき除外されている物質およ

び混合物、さらに密閉状態で加熱された場合にプラスの影響を示す物質お

よび混合物にも該当する − 割り当てられている等級に基づいた、または除外されている物質または混合

物に基づいた包装(タイプ、サイズ、物質または混合物の正味量)を示す 2.2 可燃性/引火性

ガス 単一の可燃性/引火性ガス: − 表 A4.3.9.1 に基づいて示されているように、爆発/可燃限界に関するデー

タがないことを示す必要がある − ISO 10156 により TCi (窒素と混合した時の、空気中で燃えない可燃性/

引火性ガスの 大%濃度)を示す 可燃性/引火性ガス混合物: − 試験されている場合には爆発/可燃限界を示す(ISO 10156 により計算さ

れ可燃性/引火性と分類された場合には、区分 1 とならざるを得ない) 2.3 エアゾール − 1 % を超える可燃性成分を含むまたは燃焼熱が少なくとも 20 kJ/g であ

り、さらに可燃性に関する分類手順を踏まないということで(第 2.3 章

2.3.2.2 の注記を参照)、エアゾールがエアゾール区分 1 に分類されていな

い場合には、可燃性成分の合計%(容量)を示す 2.4 支燃性/酸化性

ガス 単一の支燃性/酸化性ガス: − ISO 10156 による Ci (酸素当量係数)を示す 支燃性/酸化性混合ガス − 試験された混合ガスには「支燃性/酸化性ガス区分 1(ISO 10156 による試

験)」または ISO 10156 により計算された酸化力(OP)を示す

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章 危険性クラス 性質/安全特性/試験結果および注釈/手引き 2.5 高圧ガス 単一のガス:

− 臨界温度を示す 混合ガス:: − 擬臨界温度を示す;これは成分の臨界温度の分子加重平均として以下のよ

うに求められる:

n

1i iCriti Tx

ここで • xiは成分 i の分子比率 • TCrit i は成分 i の臨界温度

2.6 引火性液体 − 沸点および引火点は表 A4.3.9.1 に示されているので、追加的なデータは必要ない

− 第 2.6 章 2.6.2 の注記 2 にしたがい試験 L.2(試験方法及び判定基準のマニュアルの 32.5.2 節)に基づいた除外を考慮する場合には、持続的な燃焼性についての情報を示す

2.7 可燃性固体 − 燃焼速度(または金属粉の燃焼時間)を示す、一般に試験 N.1 で測定する(試験方法及び判定基準のマニュアルの 33.2.1 節)

− 湿潤部分を超えたかどうかを示す 2.8 自己反応性物

質および混合物

− SADT (自己加速分解温度)について、表 A4.3.9.1 の分解エネルギーの項目を参照

− 分解エネルギーを示す(値および測定方法) − 爆発の性質を示す(はい/部分的/いいえ)、関連する包装も − 爆燃の性質を示す(はい急速に/はいゆっくりと/いいえ)、関連する包装も − 密閉状態での熱の影響を示す(激しく/中くらい/低い/いいえ)、関連する包装も

− 該当すれば爆発力を示す(低くない/低い/ない) 2.9 自然発火性液

体 − 自然発火またはろ紙を黒く焦がすかどうか示す、一般に試験 N.3 で測定す

る(試験方法及び判定基準のマニュアルの 33.3.1.5 節)(例えば「空気中で液体が自然発火する」または「空気中で液体がろ紙を黒く焦がす」)

2.10 自然発火性固体

− 注いでいる時またはそれから 5 分以内に自然発火が起きるかどうか示す、一般に試験 N.2 で測定する(試験方法及び判定基準のマニュアルの33.3.1.4 節)(例えば「固体は空気中で自然発火する」)

− 時間の経過とともに自然発火性が変わるかどうかを示す、例えばゆっくりした酸化によって保護面が形成される

2.11 自己発熱性物質および混合物

− 自然発火が起きるかどうか示す、スクリーニングデータおよび/または使用された方法(一般に試験 N.4、試験方法及び判定基準のマニュアルの33.3.1.6 節)を含め、得られた 大温度上昇を記す

− もし適当で、入手可能であれば、第 2.11 章、2.11.4.2 に従ったスクリーニングテストの結果を示す

2.12 水反応可燃性物質および混合物

− もし知られていれば、発生するガスを特定する − 発生したガスが自然に発火するかどうかを示す − 例えばガスが自然発火するなど試験が完結しない場合を除いて、ガス発生

速度を示す、一般に試験 N.5(試験方法及び判定基準のマニュアルの33.4.1.4 節)で測定する

2.13 酸化性液体 − セルロースと混ぜて自然発火が起きるかどうか示す、一般には試験 O.2(試験方法及び判定基準のマニュアルの 34.4.2 節)で測定する(例えば「セルロースとの混合物(試験 O.2 用に調整)は自然発火する」)

2.14 酸化性固体 − セルロースと混ぜて自然発火が起きるかどうか示す、一般には試験 O.1 または試験 O.3(試験方法及び判定基準のマニュアルの 34.4.1 節または34.4.3 節)で測定する(例えば「セルロースとの混合物(試験 O.1 または試験 O.3 用に調整)は自然発火する」)

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章 危険性クラス 性質/安全特性/試験結果および注釈/手引き 2.15 有機過酸化物 − SADT (自己加速分解温度)について、表 A4.3.9.1 の分解エネルギーの

項目を参照 − 入手可能であれば分解エネルギーを示す(値および測定方法) − 爆発の性質を示す(はい/部分的/いいえ)、関連すれば包装も − 爆燃の性質を示す(はい急速に/はいゆっくりと/いいえ)、関連すれば包装

も − 密閉状態での熱の影響を示す(激しく/中くらい/いいえ)、関連すれば包装

も − 可能であれば爆発力を示す(低くない/低い/ない)

2.16 金属腐食性物

質 − 入手可能であれば、物質または混合物でどの金属が腐食したかを示す(例

えば「アルミニウムに腐食性」または「鋼に腐食性」など) − 入手可能であれば、腐食速度およびそれが鋼またはアルミニウムのどちら

に言及しているかを示す、一般に試験 C.1 で測定する(試験方法及び判定基準のマニュアルの 37.4 節)

− 適切に、同梱可能または混触危険に関する SDS の他節の参照を含める(例

えば 7 節の同梱可能または 10 節の混触危険物質) 2.17 鈍感化爆発物 − どのような鈍感化剤が使われているか示す

− 発熱分解エネルギーを示す − 補正燃焼速度 Acを示す

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表 A4.3.9.3:さらなる安全特性(補足)

この表では、物質または混合物に関して SDS では要求されていないものの情報伝達が有用であろう、さらなる性質/安全

特性および試験結果を示している。この表では特定されていない他の物質または混合物の物理的性質/安全特性も情報伝達が

有用であろう。短い記述、値、単位(例えば温度、圧力)、方法などそれぞれ適切にすべての関連情報を含める。

安全特性および/または

試験結果 注釈/手引き

機械的感度 − (試験方法及び判定基準のマニュアル、附属書 6、3.3 節 (c))にしたがって≥ 500 J/g の

発熱分解エネルギーを持った物質または混合物が該当する

− 衝撃に対する感度を示す、一般に試験 3 (a)によって測定される(試験方法及び判定基準

のマニュアルの 13.4 節 )(限界衝撃エネルギーを示すことがのぞましい)

− 摩擦に対する感度を示す、一般に試験 3 (b)によって測定される(試験方法及び判定基準

のマニュアルの 13.5 節 )(限界負荷を示すことがのぞましい)

SAPT(自己加速重合温

度) − 自己重合し、それによって危険な量の熱およびガスまたは蒸気を発生する物質や混合物が

該当する

− SAPT が与えられている容量を示す

爆発性粉じん/空気混合

の形成 − ガスおよび液体は該当しない

− 完全に酸化された物質(例えば二酸化ケイ素)のみ含む固体は該当しない

− SDS の 2 節に基づき、爆発性の粉じん/空気混合物が形成される可能性があるとき、関連

する安全特性は追加的に以下のようなものであろう

• 爆発下限/爆発 少濃度

• 少発火エネルギー

• 爆燃指数 (Kst)

• 大爆発圧力

− もし表 A4.3.9.1 に基づいて示された粒子特性と異なる場合には、データを適用する粒子

特性を示す

注記 1: 爆発性粉じん/空気混合物を形成する能力は、例えば VDI*2263-1「粉じん火災お

よび粉じん爆発;危険-評価-保護対策;粉じんの安全特性の測定に関する試験方法」また

は ISO/IEC80079-20-2「爆発雰囲気-第 20.2 部:物質の特性-燃焼粉じん試験法」(準備中)

注記 2: 爆発特性は試験された粉じんに特有のものである。通常それらは、たとえ類似の

ものであっても、他の粉じんに拡大することはできない。特別な物質の微細な粉じんは粗い

粉じんよりも強く反応する傾向がある。 酸/アルカリ予備 − 極端な pH(pH ≤2 または≥11.5)をもつ物質や混合物が該当する

− 皮膚および眼への有害性の評価を行う場合には、酸/アルカリ予備を示す A4.3.10 第 10 節:安定性および反応性 A4.3.10.1 反応性 A4.3.10.1.1 本節では物質または混合物の反応性に関する危険性について記載する。可能な場合、全体として、物質または混合物についての特定の試験データを明記する。しかしながらそのデータが物質または混合物の予想される危険を適切に示す場合には、その情報もまた化学品のクラスまたはグループに関する一般データに基づいてもよい。 A4.3.10.1.2 混合物についてのデータが入手できない場合には、成分のデータが提供されるべきである。混触禁止の判定にあたっては物質、格納容器および物質または混合物が輸送、保管、使用の途中のばく露可能性がある不純物を考慮に入れること。 A4.3.10.2 化学的安定性 物質または混合物が標準大気および予測される保管および取扱いの温度と圧力条件下で安定か不安定か

を示すこと。その製品を維持するために使用される、またはその必要がある安定剤を記述する。その製品の物理的外観におけるあらゆる変化に関する安全性の重要性を示す。 ―――――――――――――― * VDI は「ドイツ技術者協会」を表す

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A4.3.10.3 危険有害反応可能性 該当する場合には物質または混合物が反応または重合して、過剰な圧力または熱を放出する、または危

険有害な状態になるかを記載すること。いかなる条件下でその危険有害反応が起こりうるかを記載するこ

と。 A4.3.10.4 避けるべき条件 危険有害な状況を招く可能性のある熱、圧力、衝撃、静電放電、振動または他の物理的応力などの諸条

件を示すこと。 A4.3.10.5 混触禁止物質 物質または混合物と一緒に反応を起こして有害な状況 (例えば爆発、有毒ガスまたは可燃性物質の放出、

極度な放熱)を起こす物質または特定の物質の種類を示すこと。 A4.3.10.6 有害な分解生成物 使用、保管、加熱の結果生じる既知の合理的に予測可能な有害な分解生成物を示すこと。有害な分解生

成物は、SDS の第 5 節(火災時の措置)に含まれるべきである。 A4.3.11 第 11 節:有害性情報 A4.3.11.1 本節では主として医学の専門家、産業衛生・安全の専門家、および毒物研究者によって使用さ

れる。さまざまな毒物学的 (健康) 影響についての簡潔で完結した分かりやすい説明とその影響を特定す

るために利用したデータが提供されるべきである。GHS 分類においてデータを提供するべき関係する有害

性は以下のとおりである。

(a) 急性毒性

(b) 皮膚腐食性/刺激性

(c) 眼に対する重篤な損傷/刺激性

(d) 呼吸器または皮膚感作性

(e) 生殖細胞変異原性

(f) 発がん性

(g) 生殖毒性

(h) 特定標的臓器毒性-単回ばく露

(i) 特定標的臓器毒性-反復ばく露 および

(j) 吸引性呼吸器有害性

これらの危険有害性は常に SDS に記載するべきである。 A4.3.11.2 SDS の中に記載されている健康影響は物質または混合物の分類について使用された諸研究で

記述されたものと整合しているべきである。

A4.3.11.3 物質または混合物に関してかなりの量の試験データがある場合には、例えばばく露経路ごとに

結果をまとめることが望ましい。(A4.3.11.1.参照)。

A4.3.11.4 本節のデータは使用される物質または混合物に適用されるべきである。毒性データは混合物に

ついて説明すべきである。その情報が利用できない場合には、GHS の分類およびその有害な成分の毒性の

性質が提供されるべきである。

A4.3.11.5 支持するデータなしに「毒性がある」とか「正しく使用すれば安全である」などという一般的

な説明は、誤解を招き、健康影響の説明をしていないため、適切でない。「該当しない」、「関係がない」と

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いった表現または健康影響の記入欄を空欄にしておくと混乱と誤解を招くので使用するべきでない。情報

がない場合、健康影響にはその旨を明確に記載するべきである。健康影響は正確に説明されかつ関連する

事項との違いを説明するべきである。例えばアレルギー性接触性皮膚炎と刺激性接触皮膚炎はお互いに区

別されるべきである。

A4.3.11.6 これら危険有害性のすべてのデータが入手できない場合、データが入手できない旨の説明を付して SDS に示されるべきである。関連する否定的データもまた情報提供すること(A4.2.2.3 参照)。物質あるいは混合物が分類判定基準に合致しないことを示すデータがある場合には、入手できるデータに基づいて評価された物質あるいは混合物は判定基準に合致しないということを SDS に記載するべきである。さらに物質あるいは混合物が他の理由により分類されなかった場合には、例えばデータ採取が技術的に不可能である、あるいはデータが確定的でないなど、このことも SDS にはっきりと記載するべきである。

A4.3.11.7 可能性のあるばく露経路の情報 可能性のあるそれぞれのばく露経路、すなわち経口摂取 (飲み込み)、吸入または皮膚/眼のばく露を通

じた物質または混合物のばく露と影響についての情報を提供する。この健康影響が知られていない場合に

はその旨を記載するべきである。 A4.3.11.8 物理的、化学的および毒物学的特性に関連する症状 物質または混合物とその成分または既知の副生物に対するばく露に関連する潜在的な健康への悪影響と

症状を記載すること。意図する用途に関連したばく露による、物質または混合物の物理的、化学的および

毒物学的な特性に関連する症状についての情報提供を行うこと。 低レベルの初期症状から重度のばく露

結果までを記載すべきである。例えば、「失神または意識不明への進行に至る前に頭痛とめまいが起こるこ

とがある;重度のばく露により昏睡または死に至ることがある」とする。 A4.3.11.9 短期および長期ばく露による遅発的・速効的影響ならびに慢性的影響 短期および長期ばく露の後に遅発影響または速効影響が予測できるかどうかについての情報を提供する

こと。物質または混合物への人へのばく露に関連する急性および慢性の健康影響についても情報提供すること。人のデータが入手できない場合には、動物のデータを要約すべきで、その際には動物種を明示するべきである。SDS には毒性学的データが人によるものか動物によるものかを示すべきである。 A4.3.11.10 毒性の数値化(急性毒性の推定など) 傷害を及ぼすおそれのある用量、濃度およびばく露条件について情報を提供すること。可能であれば、

悪影響を及ぼすおそれのあるばく露期間も含め、用量と症状・影響との関連づけを行うべきである。 A4.3.11.11 相互作用

関連性が認められかつ速やかに入手できる場合には、相互作用についての情報を含めるべきである。 A4.3.11.12 特定の化学的データがない場合 物質または混合物の危険有害性についての情報は必ずしも入手できるとは限らない。特定の物質または

混合物についてのデータが入手できない場合には必要に応じてその物質の同類のデータを用いてもよい。一般的なデータが使用されるかデータが利用できない場合には、その旨を SDS に明記すべきである。

A4.3.11.13 混合物

混合物全体として健康影響について試験されていない場合には、A4.3.3.2.1 において示されている各々の成分についての情報を提供すべきであり、混合物は、GHS において記述されている方法を使用し分類されるべきである。(第 1.3.2.3 節およびその後の章) A4.3.11.14 混合物対成分情報 A4.3.11.14.1 各成分は体内において互いに反応を起こし吸収、代謝および排泄の速度を変えることがある。

その結果毒性作用に変化が生じ混合物の総合的な毒性がその成分と異なる可能性がある。

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A4.3.11.14.2 各成分の濃度がその混合物に由来する総合的健康影響に対して充分な原因となっているか

どうかを考察する必要がある。以下の場合を除いて、毒性影響の情報を、各成分について示すべきである。

(a) 情報に重複がある場合には、繰り返し記載する必要はない。例えば2つの成分がとも

に嘔吐と下痢を引き起こす場合には二度記載する必要はない。総合的に見てその混合

物が嘔吐と下痢を起こすとして記載される。

(b) 考えている濃度でこれら影響が起こりそうにない場合。例えば、弱い刺激性物質が非

刺激性溶液中に希釈される場合にその混合物全体が刺激を起こさないことがある。

(c) 成分間で生じる相互作用を予測するのは極めて難しく、相互作用についての情報が利

用できない場合には仮定をすべきではなく、それに代えて各成分の健康影響を個別に

示すべきである。

A4.3.11.15 その他の情報

GHS の分類基準により要求されない場合でも有害な健康影響についての他の関連情報を含めるべきで

ある。 A4.3.12. 第 12 節:環境影響情報 A4.3.12.1 この節で提供すべき情報は、物質または混合物が、環境に放出される場合に環境に及ぼす影響

の評価を可能にするものである。この情報は漏洩時の取扱い、廃棄物処理方法、放出の管理、事故流出時

対策および輸送に役立つ。 A4.3.12.2 多様な環境毒物学的(環境)性質に関するまとまった包括的な記述およびそれらの性質の同定

に使用されたデータが提供されるべきである。データを示すべき基本的な性質には以下のものがある:

(a)毒性

(b)残留性と分解性

(c)生物蓄積性

(d)土壌中の移動度

(e)他の有害影響 これらの性質は常に SDS に記載するべきである。生物種、媒体、装置、試験継続期間及び試験条件を明

記するべきである。(これら危険有害性のすべてのデータが入手できない場合、データが入手できない旨の

説明を付して SDS に示されるべきである。) A4.3.12.3 生物蓄積性、残留性および分解性など、いくつかの生態毒性をあらわす特性は物質に特異的で

ある。入手可能で適切である場合には、混合物に含まれる該当する各物質(すなわち SDS の第 3 節記載

が要求されているもの)について情報を提供するべきである。 A4.3.12.4 危険有害性分類判定基準に関連して A4.3.12.5 から A4.3.12.9 にあるデータの概要も記載する

べきである。これら分類のためのデータが入手できない時は、それぞれ該当する性質についてその旨を

SDS に記載するべきである。物質あるいは混合物が分類判定基準に合致しないことを示すデータがある場

合には、入手できるデータに基づいて評価された物質あるいは混合物は判定基準に合致しないということ

を SDS に記載するべきである。さらに物質あるいは混合物が他の理由により分類されなかった場合には、

例えばデータ採取が技術的に不可能である、あるいはデータが確定的でないなど、このことも SDS にはっ

きりと記載するべきである。 A4.3.12.5 毒性 毒性情報は水中または陸上の生物の試験データを用いて提供できる。これには魚類、甲殻類、藻類およ

び他の水生植物についての急性および慢性の両者の関連する利用可能なデータを含むべきである。その上

に入手可能であれば、鳥類、ハチ類、植物種などその他の生物(土壌中に生息する微小・大型生物)の毒性

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データを含むべきである。物質または混合物が微生物の生命に対して阻害作用がある場合には下水処理場

に及ぼす影響の可能性を言及すべきである。 A4.3.12.6 残留性と分解性 残留性と分解性は、物質または混合物の特有の成分が、例えば酸化または加水分解といった生分解の過

程または他の過程のいずれかを経て、環境中において分解する性質である。分解半減期が引用される場合、

これらの半減期が無機化または一次分解についてのものかどうか示されなければならない。物質または混

合物の特有の成分が下水処理場で分解する可能性(A4.3.12.8 参照)も言及すべきである。 A4.3.12.7 生物蓄積性 生物蓄積性は、物質または混合物の特定の成分が生物相中に濃縮し 終的に食物連鎖を通り抜ける性質

である。生物蓄積性を評価する適切な試験結果を示すべきである。利用可能である場合には、この能力は

オクタノール/水分配係数(Kow)と生物濃縮係数(BCF)についての参考資料を含めるべきである。 A4.3.12.8 土壌中の移動性 土壌中の移動性は、環境に放出された場合に、物質または混合物の成分が、自然力により地下水に、ま

たは放出場所から離れた場所に移動する性質である。入手可能な場合は、土壌中の移動性について示すべ

きである。移動性の情報は、吸着試験や浸出試験のような適正な移動性データで決定できる。たとえば Koc値はオクタノール/水分配係数(Kow)から予測できる。浸出および移動性はモデルで予測できる。 注記:物質または混合物の真のデータが入手できる場合は、このデータモデルと予測に優先する。 A4.3.12.9 他の有害影響 環境に対するその他の有害影響についての情報が利用可能な場合には含めるべきである。これに該当す

るものには環境運命(ばく露)、オゾン層破壊の可能性、光化学的オゾン発生の可能性、内分泌かく乱の可

能性または地球温暖化の可能性などがある。 A4.3.13 第 13 節:廃棄上の注意 A4.3.13.1 廃棄方法 A4.3.13.1.1 国の所管官庁の要求事項と整合性を保ちながら安全で環境的に望ましい廃棄物管理の選択

肢を決定するために、物質または混合物もしくはその廃棄物用容器の適切な廃棄、リサイクルまたは埋立

てについての情報の提供を行うこと。廃棄、リサイクルまたは埋立てに関わる人の安全については SDSの第 8 節-ばく露制御および保護措置の情報を参照すること。 A4.3.13.1.2 廃棄物用容器と廃棄方法を特定すること。 A4.3.13.1.3 廃棄方法に影響を及ぼす可能性のある物理的/化学的特性について議論すること。 A4.3.13.1.4 下水への廃棄は推奨しないこと。 A4.3.13.1.5 該当する場合には、焼却または埋立てに関する特別な注意事項を示すこと。

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A4.3.14 第 14 節:輸送に関する情報 本節では、物質または混合物の陸上、鉄道、海上および航空による輸送/出荷ための基本的な分類情報を

提供する。情報が入手できないか該当しない場合にはその旨を記載すべきである。 A4.3.14.1 国連番号 国連モデル規則4による国連番号(すなわち、物質または物品の4桁の番号)を提供すること。 A4.3.14.2 国連出荷名 国連モデル規則4による国連出荷正式名を提供すること。物質または混合物について、国連による適切

な出荷名は GHS の製品特定名または国または地域の特定名として表されない場合、この節で示すべきで

ある。 A4.3.14.3 輸送時の危険性クラス 国連モデル規則4に従って物質が示す も顕著な危険性に従って物質または混合物に割り当てられる輸

送クラス(及び付随的なリスク)を記載すること。 A4.3.14.4 該当する場合、容器等級 該当する場合には国連モデル規則4による容器等級番号を示すこと。容器等級番号は危険の程度に従っ

て特定の物質に割り当てられる。 A4.3.14.5 環境有害性 物質または混合物が IMDG-code5による海洋汚染物質として知られているか否か、もし知られている場

合には「海洋汚染物質」または「重大な海洋汚染物質」であるかを示すこと。また、物質または混合物が、

国連モデル規則4、ADR6、RID7、ADN8に従って、環境有害性があるか否かもまた示すこと。 A4.3.14.6 使用者のための特別予防措置 使用者が認識しておく必要のある、または輸送に関連して守るべき特別予防措置のすべてに関する情報

を提供すること。 A4.3.14.7 MARPOL73/78 付属書 II9 および IBC Code10によるバラ積み輸送 この節は、荷を IMO の方法すなわち MARPOL73/78 付属書 II および IBC Code にしたがってバラ積

み輸送するときにのみ適用される。 製品名が A4.3.1.1 で与えられるものと異なる場合には、発送文書で要求されているように IBC Code17章または 18 章、あるいは IMO MEPC.2/Circular 新版で付与される名前の一覧にしたがう。 4 UN モデル規則とは、危険物輸送に関する国連勧告の 新版に付随したモデル規則をいう。 5 IMDG Code とは、改訂された、国際海洋危険物コードをいう。 6 ADR とは、改訂された、道路での危険物の国際輸送に関する欧州協定をいう。 7 RID とは、改訂された、鉄道による危険物の国際輸送に関する欧州協定をいう。 8 ADN とは、改訂された、内陸水路による危険物の国際輸送に関する欧州協定をいう。 9 MARPOL 73/78 とは、1973 年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する 1978 の議定書をいう。 10 IBC Codeとは、危険化学品のばら積み運送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則をいう。

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A4.3.15 第 15 節:適用法令 物質または混合物について SDS のどこにも示されていない他の規制情報をすべて記載すること(例えば、

物質または混合物が、モントリオール議定書 11、ストックホルム条約 12またはロッテルダム条約 13の対象

であるかどうか)。 A4.3.15.1 該当製品に特有な安全、健康および環境に関する規制 該当する安全、健康および環境規則の下における物質または混合物(その成分を含める)の規制状況につ

いて国または地域に関連する情報を提供すること。物質が供給される国または地域におけるあらゆる禁止

または制限であるかどうかを含むべきである。 A4.3.16 第 16 節:その他の情報 本節では、SDS の作成に関連する情報を提供すること。これには、以下のような SDS の作成と改訂に

関する情報を含め、SDS の第 1 節から第 15 節にない他の情報を盛り込むべきである。 (a) SDS の 新改訂版作成の日付。SDS に改訂が加えられる時にはそれが他で示されてい

ない場合には SDS の旧版で変更された箇所を明確すること。供給者は変更の説明を保

管し、要求に応じて提供すべきである。 (b) SDS で用いられている略語と頭字語の意味/凡例 および (c) SDS 作成に用いられたデータの主要な文献参照と出典

注記:SDS に文献参照が必要ない場合でも、要求があれば、文献一覧を本節に含めることができる。 ―――――――――――――― 11 モントリオール議定書は、改訂あるいは修正された、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書をいう。 12 ストックホルム条約は、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約をいう。 13 ロッテルダム条約は、国際貿易の対象となる特定の有害な物質および駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約をいう。

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附属書 5

危害の可能性に基づく

消費者製品の表示

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附属書 5

危害の可能性に基づく消費者製品の表示

A5.1 序

A5.1.1 化学品の分類および表示に関する世界調和システムは、対象化学品に固有な危険有害性の評価に

基づいている。しかし、消費者製品の慢性的な健康有害性についての情報を提供するのに先だって、通常

の使用条件または予見される誤使用における消費者のばく露可能性に関する追加データを考慮に入れる

システムもあることが認められている。したがって、こうしたシステムは、製品へのばく露に由来するリ

スク評価、すなわち危害の可能性に関する評価に基づいて情報を提供するシステムといえる。ばく露評価

および危害の可能性を判断した結果、予想されるばく露によって危害が生じる可能性がある程度以下であ

ることが明らかになった場合は、慢性的な健康有害性に関する情報を消費者製品の表示に含めなくてもよ

い。このような種類のシステムは、1998 年の GHS の作業範囲の設定文書 1においても認められている。

「GHS の構成要素の適用は、製品の種類またはライフサイクルの段階によって異なってもよい。いったんある化学品を分類すれば、起こりうる影響を考慮して特定の製品または利用状況において必要な情報やその他の対策を決定することが可能になる。」

A5.1.2 GHS の作業では、この種の手法についてはまだ調和が図られていない。したがって所管官庁に

よって、この手法を採用するための特別な手続きが開発され、適用されなければならないであろう。しか

し、こうした手法が現在まで用いられてきて、今後も用いられ続けていくことを認識した上で、本附属書

は、そうした手法が実際上どのように機能するかについて追加的ガイダンスを示すものである。

A5.1.3 ある種の消費者製品に対しては、この種の手法においてラベルに含めるべき情報を決定するため

にばく露評価が用いられる。規制機関および製造業者は、ばく露データを入手し、または日常的な使用や

予見される誤使用に基づいて仮定的なばく露データを取得する。次にこれらの仮定に基づいて、慢性的な

健康有害性を消費者製品のラベルに含めるか、そしてどのような予防措置を取るべきかをリスクに基づく

手法の下で決定する。したがって、こうした決定は、特定の消費者のばく露状況下で起こる危害の可能性

に関する検討に基づいて行われるものである。

A5.1.4 あるシステムでは、消費者製品のラベルは危険有害性とリスクの組合せに基づいている。しかし、

急性の有害性と物理的危険性はラベルに記載されていても、リスクに基づく慢性的な健康影響の表示はな

されていないことがある。この理由の1つは、ある消費者製品へのばく露は短時間のものと想定され、し

たがって、そうしたばく露が慢性的な健康影響を生じるには十分でないと考えられるからである。こうし

た想定は、例えば建設作業員が定常的に用いる塗料や接着剤など、消費者製品が作業場で使用される場合

にはあてはまらないであろう。

A5.1.5 化学品固有の危険有害性はすべての部門に対して特定できるが、ばく露、それゆえリスクに関す

る情報は GHS が対象とする部門間で著しく異なっている。この情報を利用者に伝達する媒体もまた多様

である。ある場合、特に消費者の利用状況では、ラベルが唯一の情報源であるが、また他の場合、特に作

業場においては、ラベルは SDS および作業者の訓練などにより補完される包括的なシステムの一部でし

かない。輸送においては、ラベルが基本的な情報を伝達するが、追加情報が輸送関連文書によって提供さ

れる。

A5.2 一般原則

A5.2.1 GHS では、個々のリスク評価の手法については扱われておらず、また調和も図られていないが、

次のような一般原則が存在する。

(a) すべての化学品は GHS の分類判定基準に基づいて分類されるべきである。

危険有害性を分類し、情報を提供する第 1 段階は、常に物質および混合物に関する GHS の判

定基準に基づく固有の危険有害性の分類であるべきである。

1. IOMC による世界調和システム(GHS)の予想される適用とその明確化(IFCS/ISG3/98.32B)

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(b) リスクに基づく表示は、所管官庁によって、消費者の製品使用状況における化学品の慢性的な健康有害性に関してのみ適用されることができる。急性の健康有害性、環境有害性、物理的危険性は、固有の危険有害性に基づいて表示を行うべきである。

危険有害性の分類は、急性の健康影響および環境影響、物理的危険性の表示に直結すべきである。リスク評価を含む表示方法は、慢性的な健康有害性、例えば発がん性、生殖毒性、反復ばく露による特定標的臓器毒性などにのみ適用すべきである。これを適用できる唯一の化学品は、消費者のばく露量とばく露期間が一般に限定されている消費者製品のみであろう。

(c) 消費者のばく露およびリスクの可能性の推定は、ばく露またはリスクを過小評価する可能性を最小限に抑えるため、慎重かつ保護的な仮定に基づくべきである。

ばく露の評価または推定は、データまたは慎重な仮定に基づくべきである。

リスク評価と動物データのヒトへの外挿においても、不確実性係数を設定して、慎重に安全側の余裕を見込むべきである。

A5.2.2 米国消費者製品安全委員会による、リスクに基づく表示の例

A5.2.2.1 一般に、消費者は化学品の影響に関する情報を製品ラベルに頼っている。他の部門では、製品情報を拡充または詳細化し、提供された危険有害性情報にリスクを関連付けるための他の情報源(例えば安全データシートや輸送文書)を持っているのに対し、消費者部門は一般にそうではない。

A5.2.2.2 上述のように、GHS の一般原則は、ラベルの情報はすべての部門において化学品固有の性質(危険有害性)に基づくというものである。GHS の危険有害性に基づく表示の根拠については本文書で先に述べたが、これは他部門の製品だけでなく消費者製品にも適用されよう。

A5.2.2.3 特に、化学品の固有の危険有害性に関する消費者の「知る権利」の原則は重要であり、多くの利害関係者によって広く支持されている。危険有害性情報は、より危険有害性の低い化学品の使用を選択する動機になる。製品が使用される際のばく露を正確に予測することは不可能であろうし、また消費者保護措置は他のより体系化された部門に比べて確実性が低い。

A5.2.2.4 他方、ある研究 2-7によると、すべての潜在的な危険有害性についてあまりにも多くの情報がラベルに表示されると、消費者の注意が散漫になることもあると指摘されている。傷害を起こしやすい特定の危険有害性に重点を置いた警告が消費者保護を高めるという証拠もあるようである。

A5.2.2.5 消費者が適切な保護措置を講じるのに必要な情報を確実に得られるようにするため、リスクに基づく表示方法は、可能性または蓋然性のあるばく露を分析し、ばく露による実際のリスクに関する情報を伝達する。製品は特定の使用のために設計されているので、その使用、ならびに予見される使用および事故における消費者のばく露を推定することができる。

A5.2.2.6 以下に述べる手順は GHS において調和が図られたものではなく、米国消費者製品安全委員会指針 8 およびリスク評価を実施するための他の国際的、国内的指針 9-11 に従ったものである。米国では、消費者向けの慢性有害性表示のために評価される物質または製品は、2 段階のテストを充足しなければならない。第一に、該当する物質または製品は、適用対象となる慢性有害性のいずれかを示さなければならない。すなわち、特定の判定基準に基づいて慢性有害性に分類されなければならない。第二に、該当する物質または製品が、「合理的に予見される取り扱いまたは使用、もしくは幼児による摂取」の最中あるいはその結果として、重大な疾病もしくは危害を引き起こす可能性を持つかどうかを判断するためのリスク評価を行わなければならない。リスク評価の結果、リスクが非常に低いことが示されれば、該当する物質または製品には慢性有害性についての表示をする必要はない。言い換えれば、ある物質にその慢性影響に関して表示が付されるか否かは、その物質が有害性をもつかだけでなく、ばく露とリスクにも依存する。

A5.2.2.7 ばく露評価の範囲は、危険有害性によって異なる。例えば、発がん性以外の慢性エンドポイントについては、「無毒性量(NOAEL)」から「1 日許容摂取量(ADI)」が算定されるであろう。ばく露を慎重に評価するためには、消費者がその消費者製品全部を 1 日で使い切ること、または消費者がばく露を受ける有害な物質/混合物のすべてが吸収されることを仮定する。その結果生じるばく露が「1日許容摂取量」よりも低いレベルであれば、有害性に関する情報の伝達は必要ないであろう。ばく露レベルが ADIより高い場合は、表示に関する最終的な決定を行う前に、より精度の高い定量的評価を行うこともできる。より精度の高いデータが入手できない場合、または精度の高い分析を行わない場合は、当該有害性をラベルで伝達することになろう。

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A5.2.2.8 発がん性物質に関しては、既定モデルとして多段階モデルを用いた線形外挿法に基づいて、発

がん性物質へのばく露から発がんに至るまでのユニットリスクを算定できる。生涯を通じてのばく露量は、

最悪の場合のシナリオ(製品に含まれる物質のすべてが日/週/月単位の使用毎に標的組織に達するという

ようなシナリオ)を仮定するか、または使用中の実際のばく露量を定量するか、もしくはこれらの手法を

組み合わせて算定することができる。

A5.2.2.9 所管官庁は、こうした手法を消費者製品の慢性影響に関する表示に適用する際、どのレベルの

リスクなら許容できるかを決める必要があるだろう。例えば CPSC は、「合理的に予見できる取り扱いと

使用」によるばく露からの生涯の超過リスクが 100 万分の1を超える場合に、発がん有害性の表示を勧告

している。

参考文献

1. ILO. 1999. Current Sector Uses of Risk Communication, IOMC/ILO/HC3/99.7.

2. A. Venema, M. Trommelen, and S. Akerboom. 1997. Effectiveness of labelling of household chemicals, Consumer Safety Institute, Amsterdam.

3. Leen Petre. 1994. Safety information on dangerous products: consumer assessment, COFACE, Brussels, Belgium.

4. European Commission. 1999. DGIII Study on Comprehensibility of labels based on Directive 88/379/EEC on Dangerous Preparations.

5. Magat, W.A., W.K. Viscusi, and J. Huber, 1988. Consumer processing of hazard warning information, Journal of Risk and Uncertainty, 1, 201-232.

6. Abt Associates, Inc. 1999. Consumer Labelling Initiative: Phase II Report, Cambridge, Massachusetts, Prepared for US EPA.

7. Viscusi, W.K. 1991. Toward a proper role for hazard warnings in products liability cases, Journal of Products Liability, 13, 139-163.

8. US Consumer Product safety Commission. 2001. Code of Federal Regulations, Subchapter C – Federal Hazardous Substances Act Regulations, 16, Part 1500.

9. Saouter, E., G. Van Hoof, C. Pittinger, and T. Feijtel. 2000. A retrospective analysis of the environmental profile of laundry detergents, submitted to: International Journal of life cycle analysis, October 2000.

10. IPCS. 2001. Principles for evaluating health risks to reproduction associated with exposure to chemicals, Environmental Health Criteria No.225.

11. IPCS. 2000. Human exposure assessment, Environmental Health Criteria No.214.

12. IPCS. 1999. Principles for assessment of risks to human health from exposure to chemicals, Environmental Health Criteria No.210.

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附属書 6

理解度に関する試験方法

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附属書6

理解度に関する試験方法 1

A6.1 本試験方法は、化学品の危険有害性に関するラベルおよび安全データシート(SDS)に関する理

解度の評価方法の提供を目的としている。また、開発途上国における労働者および消費者の要求に対応

することに特に焦点を当てて、手法を開発した。本試験方法の開発にあたっては、知識のレベルの違い

や文化的経験における相違を考慮に入れ、できるだけ世界的規模で適用できる手法を提供することに重

点を置いた。

A6.2 試験方法の概要 A6.2.1 本試験方法は本附属書に記載されている多数の作業と指示書で編成されているが、おおむね、4

つの部分から構成されている。

(a) 作業 1:フォーカスグループの主な目的は、作業 2~11 で使用される試験方法が多様な文化や

背景によらず理にかなったものであることを確認することである。対象集団のすべての区分

(表 A6.2 を参照)にその使用が推奨されているが、ラベルおよび SDS が作成された状況とは

異なる文化的背景を持つ労働者および地域社会構成員のグループでこの作業を開始することが

必須である。

(b) 作業 2~8:一般的な質問(作業 2)、ラベルおよび安全データシートに関する質問、実習

(作業 3~8)から構成されている。被験者が労働者であるかどうか、安全データシートを利用

しているかどうかにより、これらの作業のうちいくつかの要素は適用されない場合がある。

(c) 作業 9:模擬実習である。2種類あり、ひとつは作業者向けを目的としていて製造に関わるほ

とんどの人々に適用できる。もうひとつの種類(作業 9a)は消費者に適用される。

(d) 作業 10: 終試験後の質問であり、質問(作業 2~8)と模擬実習(作業 9)への参加者全員

に適用される。また、グループ実習(作業 11)への参加者にも適用される。質問は、訓練と過

去の経験に焦点が置かれ、自由形式の評価と試験手順についてのコメントの機会が与えられる。

(e) 作業 11:それ以前の作業に含まれているすべての要素を含んだ、労働者向けのグループ実習

であり、グループ学習という状況下における理解度に関する試験が目的である。作業 2~10 ま

でを補完することを意図しているが、作業1、2~8、9 までとは異なった被験者で実行される。

A6.2.3 理解度に関する試験の 1 ヶ月後と 12 ヶ月後にさらに追跡試験を行うことが、提案されている。

この試験は、 初の試験と同じ被験者で繰り返すべきである。人的資源や実務の状況に応じて、 初に

完了した全ての作業についての再試験は省くことができる場合がある。繰り返し試験は、記憶力を計る

上で重要であり、また危険有害性情報に接するという実際的な利点もある。 A6.2.4 表 A6.1 では、本試験方法での作業、作業内の主な活動、各作業の目標および各作業から得

られる成果が要約されている。 ―――――――――― 1 GHS を促進する国際的な取り組みのひとつである国際労働機関(ILO)の危険有害性情報伝達に関する作業班のため

に、ケープタウン大学の学際的チームによって開発された

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A6.2.5 本試験方法は自己充足型パッケージとして作成されているが、地域的な優先事項および必要性か

ら作業を選択して使用することも可能な場合がある。さらに、世界的に危険有害性情報の伝達が調和す

ることに伴い、試験に対する新たな必要性も生じるうることが認識されている。本試験方法は、同じ試

験様式で適用された試験材料(ラベルおよび SDS)を用いて、時とともに新しい試験優先事項を考慮し、

改訂されうる。例えば、新しい危険有害性シンボルの図が考慮される場合、新しいシンボルを含むよう

に作業 4 を改訂することもできる。

A6.3 附属書 6 および試験方法の利用 A6.3.1 各作業は、特定の理解度に関する試験目的についての実際の試験の質問表である。作業の割り付

けは、理解度に関する試験の管理者用に指示事項を質問表に明記して作成されている。特定の作業に関

する説明書となる詳細な手引きが、各作業に附随して、ただし別の形式で、示されている。説明書には、

各作業に使用されている各種ラベルや SDS および各作業の成果と必要時間数の概要が説明されている。 A6.3.2 作業が冗長になるのを避けるため、説明書の項に対する指示の詳細さは失わないようにして、作

業の本文では作業の指示は 小にとどめてある。作業 3~11 で主な指示が示されている箇所では、管理を

容易にするために、影をつけたボックス内に太字で表になっている。被験者に対して読み上げる本文す

べてには、イタリック書体が使用されている。

A6.3.3 幾つかの作業(作業 3、4、6、7、8 および 9)では、ラベルや SDS の無作為な選択が必要とさ

れる。面接者には、無作為なラベルまたは SDS の選択を効率良く行うために、カードの入った箱が提供

される。面接者は、各関連作業用に印が付けられた特定のカードの入った箱を持つこととなる。

A6.3.4 ラベルと安全データシートが提供されるが、これらは適用国における規範的な形式および既存の

表現に適合させるべきである。GHS は、危険有害性の伝達の内容と割り付けに関してある程度の標準化

をもたらすが、その国の伝統、形式、サイズおよび好みとの関係で、まだかなり多様なものが出現する

だろう。試験に使用されたラベルおよび SDS は、可能な限りその国の典型的な使用パターンを反映しな

ければならない。それゆえ、ラベルおよび SDS のサンプルがこの説明書とともに提供されるが、使用者

は、実験上デザインに求められている範囲内で、被験者に対してできるだけ典型的なものに見えるよう

な材料を選択することが推奨される。 A6.3.5 危険有害性情報の伝達の理解度を測るために必要な比較的複雑な試験手順を単純化する試みの一

方で、試験方法は注意深い管理および品質管理が要求される。面接者の訓練はそれゆえ非常に重要であ

る。これに関する詳細は作業 1 と 2 用の説明書に記載してある。

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表 A6.1 理解度に関する試験:作業ごとの課題と結果 作業 内容 目標 成果

作業 1 フォーカス

グループ 特定の対象集団に関する状況、言語および文化的解釈に合わせて調査手法

を構築する。

言葉の文化的な固有の定義を特定する。

順位付け、危険有害性に応じた色の使用および漠然とした変化の定量的評

価が、文化的に転用可能性かどうかを試験する。

一連の作業に使用された試験方法は、見た目の妥当性と代替方法を特定す

ることを指向している。

項目の文化的使用から生じる試験状況下における潜在的偏向を識別する。

難解な言葉に対する文化的に一貫性のある説明。 その国の状況下での適切な色の使用。 理解度に関する試験を偏向させる文化的要因の説明。

色盲試験方法の検証。

非西洋人に対する心理測定尺度の解釈。

前後関係に基づく試験。

作業者の経験を知る手段。

「ダミー」記号。

作業 2 一般面接 理解度の分析の基礎としての人口統計及び他のデータを把握する。

一連の試験の幾つかに必要な色と視覚的鋭敏度の適性を明らかにする。

理解度に関する評価の解釈に重要な労働経験のデータ収集を行う。

結果と分析の研究を関連させるための適切な人口統計及び他のデ

ータ。

色覚と視力の評価。

理解度に関する役割演技演習。

作業 3 ラベルと

SDS に関す

る記憶、読

み取り、理

ラベルや SDS に関する被験者の熟知度を評価する。

被験者のラベル要素に対する記憶を試験する。

ラベル要素を見るのに使う順序を評価する。

注意喚起語、色、シンボルおよび危険有害性情報の理解度について試験す

る。

被験者へのラベルの影響を評価する。

- 自分自身、配偶者または子供にとっての危険有害性の順位付け

- 化学品の使用、貯蔵および廃棄の目的

理解度に関する質問の後、順位付けや報告が変わるかどうか。

被験者が適切な SDS を正しく識別できるか。 被験者が化学名、健康有害性、物理化学的危険性および保護服の使用に関

する情報を正しく識別できるか。

ラベルと SDS への先験的な熟知度の確認。

各種ラベル書体の影響の評価。 要素の分かりにくい用語の確認。 非常に分かりやすい情報の確認。 危険有害性の順位付けとラベルを見た結果として行動する意志。 訓練の代用としての被験者の危険有害性の認識についての理解度に関する詳細な質問の効果。 ホーソン効果の影響の測定。 自分自身への危険有害性の順位付けと親族・配偶者への危険有害性の順位付けの違いの比較。 被験者が、意味のある方法でラベルのデータを適切な SDS に結びつけることができるかの確認。

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表 A6.1 理解度に関する試験:作業ごとの課題と結果 作業 内容 目標 成果

作業 4 危険有害性

に関する評

価と理解 注意喚起

語、色およ

びシンボル

被験者に関連した危険有害性の程度の順位付けについて試験する。

- 注意喚起語、色、およびシンボル

- シンボルおよび複数のシンボルの組み合わせ

- シンボル、色、および注意喚起語の選択組み合わせ 注意喚起語、色、およびシンボルに関する理解試験を行う。 注意を喚起する注意喚起語、色、およびシンボルの機能に関する意見を調査する。 被験者のラベルに対する認識により化学品の使用、貯蔵または廃棄に関して説明された取扱いに影響があるかどうか試験する。

危険有害性要素のラベル表示の理由につき、被験者の見解を調査する。

注意喚起語、色、およびシンボルは、危険有害性の程度を表示する能力、総合性、要素の単独と選択された組み合わせの両方で評価される。 順位付けの見た目の妥当性に関する品質管理評価。 注意を喚起するためのラベル要素の機能。 ラベルは注意を喚起する点において高位置に格付けされ、そのラベルの機能が下記事項を促進させる。 被験者に更なる情報、特に健康有害性の情報の確認を促す。

安全な方法で行動することに対する報告概念の影響。

作業 5 文字表記が

ある場合と

ない場合の

危険有害性

シンボルの

理解

危険有害性クラスを表すシンボルに関する被験者の理解について試験する。 危険有害性クラスの概念に関する被験者の理解を試験する。 生殖、発がん性、突然変異といった文字表記の追加により危険有害性クラスを表す指定シンボルの理解が向上するかどうかを確認する。

注意喚起語の追加により、クラスを表すシンボルの理解が向上するかど

うかを確認する。

危険有害性クラスの正しいシンボルを識別する能力。

シンボルがよく機能しない危険有害性クラスおよび危険有害性クラスのラベルとしてよく機能しないシンボルの識別。 不明瞭な解釈を与えるシンボルの識別。 生殖、発がん性、突然変異有害性のシンボルへの文字表記の追加の有効性。

危険有害性クラスを表示するシンボルへの注意喚起語追加の

有効性。 作業 6 シンボルま

たは/絵表示

のサイズ、

配置、背景

色および境

界線

シンボルのサイズ、境界線、配置の変更による影響に関して試験する。 背景色の変更および枠に関連した絵表示中の図のサイズの変更による影響に関して試験する。

シンボルのサイズ、枠および配置の影響。 - 化学名を識別できるか - リスク認識 - シンボルへの注意の代用としてのシンボルの想起 - 危険有害性情報の代用としての危険有害性の想起 - 説明された取扱い方法 - 読み上げの順序

自分自身への危険有害性の順位付けと親族・配偶者への危険有害性の順位付けに違いがあるかどうかの比較。

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表 A6.1 理解度に関する試験:作業ごとの課題と結果 作業 内容 目標 成果

作業 7 絵表示の理

解-追加試験

(駆除剤)

下記情報を識別できる被験者の能力を試験する。

- 化学名 - 健康有害性 被験者の有害性の順位付けを評価する。 被験者の絵表示の理解について試験する。

被験者の一連の読み取りを評価する。

絵表示の理解度:理解、有害性の順位付け、注意、主要情報の入手。

自分自身への有害性ランキングと親族・配偶者への有害性ランキングに違いがあるかどうかの比較。

作業 8 データ構成

による安全

データシー

ト(SDS)の理解度

被験者の、SDS からの安全情報を識別する能力を試験する。

SDS に関する危険有害性情報の理解について試験する。

被験者の SDS に関する読み取りおよび SDS の要素の読み取りに関する一連の報告を評価する。 どの情報が役立ち、適切でかつ理解できるか評価する。 SDS 情報が、安全な取扱い方法に関係しているかどうか評価する。 上記に関して、異なった構成の SDS 情報の影響について評価する。

異なった観点から評価した SDS 危険有害性情報の理解:

(a) 健康有害性情報の解釈

(b) 他者に対する理解度の自己評価

(c) 被験者が第三者にどのように危険有害性情報を説明するの

かについての採点

(d) これら4つの理解度測定についての合意が評価される SDS 情報を構成する種々の方法の影響が評価される。 SDS 開発のさらなる展望の領域を特定化するための副要素の有効性および適切さに関する主観評価。

作業 9 模擬実習:

ラベルと

SDS の使用

の影響、安

全な化学品

の措置に関

するシンボ

ルおよび注

意喚起語の

影響

化学品が取り扱われる模擬実習に関連した安全措置を評価する。

安全措置が、注意喚起語「危険」や危険有害性シンボル(どくろマー

ク)の掲示により向上するかどうか評価する。

化学品に対する過去の経験が、安全措置、安全措置に関する注意喚起

語、シンボルの影響に関して重要な役割をしているかどうかを識別す

る。

課題実行前および実行中のラベル、SDS の使用に関する実際の行

動の観察。

安全行動は、PPE(個人保護具)の使用および他の予防衛生実習

を含む。

ラベル要素(「危険」を使うまたは使わない;異なったサイズの

危険有害性シンボル)、および SDS の割り付け(規制情報の下の

健康有害性データに対する、明示的な健康有害性の表題)の変更

による影響。

理解度と調査対象となる実習、実験条件の関係。

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表 A6.1 理解度に関する試験:作業ごとの課題と結果 作業 内容 目標 成果

作業 10 試験後の面

接/模擬実習

後の面接

化学品との過去の関連経歴と訓練につき確認する。

シンボル、注意喚起語、色、危険有害性の重大さの程度の順位付けについ

ての危険有害性情報の簡単な説明の効果と理解について試験する。 被験者からの化学品情報に関するニーズを認識する。

作業 3~9 に対する反応を層別して分析して得られる、訓練と過

去の経験に起因した変化。 結果は、訓練が長期的にもっと詳細な評価の対象となるべきかど

うかの指摘する際の一助となる。

化学品情報に関するニーズについての質問に対する反応は、化学

品安全面での GHS の取組に有効である。

作業 11 グループ学

習と理解

危険有害性の伝達に関する学習が、個人よりもグループ環境によって違う

かどうか試験する。

質問を受けた時、グループ活動の被験者が、個人被験者と明らかに違った

回答を提示するかどうか試験する。

グループ学習対個人学習の効果に関する精度管理の評価。 個人と明らかに違った反応を示したグループは、試験様式の訂正

の必要性を提示する。

危険有害性の伝達の一要素として、将来どのように訓練に取り組

むべきかの示唆。

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A6.3.6 同意:本方法の作業を実施する前に、参加者はまず十分に説明を受けた上で同意するべきであ

る。手続を説明するとともに、実習の目的を参加者に説明することになる。参加者は、参加を強制され

るべきではなく、いつでも参加を取止める権利を有することを知らされるべきである。試験内容の仮定

が明示されることはないように、同意手続において提供される情報は十分に一般的なものである。 A6.3.7 同意手続に関しては、作業 1(フォーカスグループ)、2(一般面接)および 10(模擬実習)の

初の項に概要が説明されている。同一被験者が作業のすべてを完了するかどうかは別として、要求時

に3つの同意手続すべてが適用される。実習目的を注意することによって被験者に明らかな先入観を与

えることを避けるために、模擬に関する同意手続はむしろ説明の必要によるものである。 A6.3.8 参加者への報酬または補償に関する方針:この研究への参加者には、何らかの形で、研究参加に

対する補償または奨励金が与えられる。研究参加者には試験への同意時に何らかの形での補償が研究終

了時に提供される旨を伝えられるべきである。補償は、文化的妥当性やその地で入手できるものにより

異なる。食事(昼食)、帽子/キャップ、マグカップ、食料(砂糖、米、コーンミール)、証明書等が示

唆されている(他の研究例より)。参加者への補償に関する適切な方針に関しては、本試験方法の利用

国にその開発を委ねられる。

A6.4 集団の抽出

A6.4.1 対象集団

A6.4.1.1 対象集団に関して、下記表 A6.2 に概要が説明されている。主に大人の労働者で、直接または

間接的に化学品を使用、配送または管理している典型的な集団である。子供もまた重要な潜在的対象者

である。子供が理解しやすい安全に関するメッセージを提供する機能が非常に重要なことは認識されて

いるが、評価のために専門的な方法が要求されるため、本説明書で取り組むことは不可能である。将来

のある時点で、理解度に関する試験が、子供向けに拡大される可能性はある。 A6.4.1.2 代表例となる人々を獲得する方法についての提案の概略が説明書の項の作業 1 および2に説明

されている。大学生は以前の危険有害性の伝達の研究において頻繁に利用されていること及び今回の研

究で特定された対象集団の代表とも考えられていないことから利用すべきではない。 A6.4.2 フォーカスグループ

A6.4.2.1 作業 2~11 で使用される試験方法が多様な文化や状況を超越して識別可能であることを確認す

るというフォーカスグループの目的を考慮すると、フォーカスグループの参加者は、評価される対象集

団としてできるだけ典型的であるべきである。特に、ラベルや SDS が作成された環境とは異なる文化か

らの労働者と構成員から成る対象集団は重要視するべきである。これは主に、知識のあるなしを問わず、

農作業者、非農業労働者および地域社会/住民/消費者に適用され、その文化的および言語的背景が危険有

害性の伝達の複雑さを形成する可能性のあるグループである。フォーカスグループに関する区分が下記

表 A6.2 に推奨されている。 A6.4.2.2 少なくとも2つのフォーカスグループが、区分ごとに推奨される。しかし、ある区分における

フォーカスグループ(例:知識がない農作業者)の結果が類似したグループ(例:知識がない非農業労

働者)に非常に似ている場合には、それ以上のグループの試験は省略することができる。これは、試験

者が、追加試験から期待される結果に相違が見られないという確信がある場合のみに行われるべきであ

る。一般的には、複数のフォーカスグループからの所見に一貫性があれば、いったん、主評価に直接進

行することを推奨する(作業 2 より先へ進む)。所見に大いに相違が見られる場合または試験方法の残

りの部分を伝えるのに情報が不十分な場合、そのような情報が得られるまでフォーカスグループを集め

続けることを推奨する。そのような状況下では、結果が一貫性を持つまたは明瞭となるまで、試験には

区分ごとに2つ以上のグループが必要となろう。 A6.4.2.3 フォーカスグループの参加者は、作業 2~11 での試験時とは全く違う労働者であるべきである。というのも、フォーカスグループそのものを通してある種の学習が行われるためである。グループは可能な限り、すべての参加者が少なくともひとつの共通語で意思疎通できる程度には言語に関して均一であることを目標とするべきである。

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A6.5 質問表および実験計画法

A6.5.1 労働者と非労働者の互いに異なる部分母集団は、試験の経験も異なり、それが危険有害性の伝達

内容の理解力に影響を与える。作業 2~8 および 10 では、異なった実験条件下での理解が試験される。

実務的な容易さを合わせて考えた参加集団サイズの計算によれば、被試験被験者の 小人数は下記表

A6.2 に示された構成人数である。作業 6(ラベルの書体および割付の理解度への影響)および 9(模擬試

験)は、種々のラベルの種類の比較(各 8~11 層)を含んでいる。ゆえに、各層内で十分な事例を形成

するために、これらの作業に対して多人数が必要とされる。他の面接用作業(3、4、5、7 および 8)は、

ほとんど階層を持たず(1ないし 大 4)、被験者も少なくてすむ。本方法の利用者は、参加者全員に対

してすべての作業を適用することを選択することもできるが、その場合、推奨される 少参加人数は、

表 A6.2 の作業 6 および 9 に対しての人数となる。作業 2 および 10 は、指示されている通り、参加者全

員により完成されなければならない。

A6.5.2 試験の全期間から見ると(表 A6.3 参照)、異なった被験者にモジュールの幾つかのみを完成さ

せることにより、方法を細分化することが実務的な理由から必要かもしれない。この方法だと、より多

くの参加者が研究を補強することになるが、評価に関してある特定部分のみを完成することとなる。こ

の場合、被験者全員が、他にいくつ作業を完成したかに関係なく作業 2 および 10 を完成しなければなら

ない。例えば、作業集団は以下のように細分化され、構成されてもよい。

(a) 作業 2、3、8 および 10

(b) 作業 2、4 および 10

(c) 作業 2、5、6、7 および 10

(d) 作業 2 および 11

(e) 作業 9、2 および 10

しかし、可能なら、参加者は本試験方法に含まれる試験項目のすべてを与えられ、その取組に対して

適切に補償されるのが望ましい。

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表 A6.2:参加集団 サイズ– 推奨数

a 模擬試験の実施が現実的には困難な場合、人的資源が得られかつ実際に実行可能な場所でのみ模擬試

験を行うことを提案する。

A6.5.3 可能な限り、副次的なグループの選択は無作為に行い、可能な限り参加集団の代表となるように

するべきである。これは結果を一般化するために非常に重要である。試験の連続期間の理由から、試験

方法の別の部分を完成するために同じ副次的なグループ内から異なる参加者が選ばれたとしても、参加

者の選択に関しては代表性に重点が置かれるべきである。しかし、無作為選択は実際には、達成が非常

に難しいことが確認されている。それにもかかわらず、選択を行う場合、可能な限り参加集団の一般的

代表となるようにするよう努めるべきである。

A6.5.4 作業を進める上で、グループ内で被験者を無作為に選択することは必須であり、それに関して妥

協するべきではない。無作為化は、比較の内部有効性に必要で、これは研究結果の一般化に必要な参加

集団の無作為選択とは異なる。

A6.5.5 模擬研究: 模擬研究は、比較的人的資源要素の強い実習であるので、模擬実習は、農業/非農業労

働者、輸送関係者および消費者といった限られた対象集団でのみ行うことが提案されている。しかし、

人的資源が許すならば、これら模擬実習は、要望に応じて他の社会層にも簡単に適用することができる。

区分 副区分 フォーカスグループ:

作業1

面接::作業 2, 6 & 10;

模擬実習作業 9

面接作業:

3, 4, 5, 7, 8.

対象集団 1:作業

場 a) 経営管理者

集団 1:製造管理者、エンジ

ニアリング、技術 任意 30-50a 25

集団 2::工業、農業の監督管

理者 任意 30-50a 25

b) 労働者 集団:農作業

者 3. 知識あり 低1グループ 100 50 4. 知識なし 低1グループ 100a 50

集団: 農業

以外の労働者 5. 知識あり 低1グループ 100 50 6. 知識なし 低1グループ 100a 50

対象集団 2: 輸送

集団 7.:輸送関係者 任意 30-50 25

対象集団 3: 地域住人/消費者/一般市民

集団 8: 知識あり 低1グループ 100 50 集団 9: 知識なし 低1グループ 100a 50

集団 10:小売業者および卸

業者 任意 30-50a 25

対象集団 4:緊急

時対応者 集団 11: 保健専門員、技術

扶助員および緊急時対応者 任意 30-50a 25

対象集団 5:その

他 集団 12:施行/規制 任意 30-50a 25

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A6.5.6 混成および相互干渉 A6.5.6.1 試験計画には環境の制御が必要である。この理由から、参加者が他の参加者の実験材料を見聞

きできる場所設定は避けるべきである。このような設定は、個々の相違の扱いが評価の鍵である比較を

無効化するからである。実験的な設定でのそのような事例は、混成と呼ばれる。 A6.5.6.2 混成を回避するために、試験が行われている間、参加者は互いに接触を避けるべきである。試

験チームの側にとって、被験者同士が接触しないようにすることは相当な努力を要するが、困難といえ

ども、混成の可能性を 小限にするためにあらゆる努力をはらうべきである。 A6.5.6.3 混成とは別ではあるが関連性のある問題が相互干渉である。実験グループが実験状況に関係な

く干渉を起こす傾向が見られる。例えば、各工場労働者が、試験が行われる1週間前に詳細な危険有害

性安全訓練を受けた時に起こる可能性がある。これは、種々の危険有害性の伝達要素の効果を遮蔽する

結果となり、異なるラベルや SDS の様式の効果に対する過小評価につながる可能性がある。これを防ぎ

ようがない場合、相互干渉が起きる可能性を知っておくべきである。 A6.5.7 グループ学習

作業 11 は、グループ学習状況下での理解度に関する試験に含まれている。これは(上記表 A6.2 の集

団 3~6 の)労働者のみに適用され、作業 2~8 を完成する労働者とは違った参加集団を必要とする。合

計 10 グループが試験されるべきであり、そのうち 5 グループが工場作業者で、5 グループが農作業者で

あるべきである。グループは、知識レベルに関しては均一で、知識のあるグループとないグループの数

がほぼ同じ状態を目指さなければならない。各グループは6人以上 10 人以下でなければならない。 A6.5.8 状況 A6.5.8.1 意味と理解に関する正確な評価にとって、理解度に関する試験が実行される状況は非常に重要

である。これは、正式な教育をほとんど受けておらず、危険有害性情報の理解を向上させるために状況

を手がかりとして使う労働者の間では特に重要である。この理由から、この方法における試験の大部分

では、ラベルや SDS の要素よりも完全なラベルが使用される。一方、高等教育を受けた被験者は、むし

ろ個々の要素に反応する方が概念的により易しいと感じるかもしれないが、そのような要素の解釈は、

現実社会の学習状況とほとんど関連がない。この理由から、すべての試験は実際のラベルと SDS を用い

て行われる。 A6.5.8.2 できるだけ現実感を出すために、容器に貼られたラベルを使用する。各容器に異なったラベル

を貼付するのは、試験者に不必要な負担を負わせることとなるので、標準的な容器に貼付し、試験の後

に剥がすことを提案する。この手順が面接者にとって過度な負担となる場合、助手が必要となろう。理

解の可能性を 大に引き出すために、被験者、特に低レベルの正式教育のみを受け、かなり状況情報に

頼っている労働者にあらゆる視覚的な手がかりを提供することが重要である。ゆえに、いかなる時もラ

ベルを容器に貼付して提供するべきである。ベルクロ帯(マジックテープ)の容器への貼付により、手

順はかなり単純化されよう。 A6.5.8.3 理解の機会を標準化するために、実際にラベルに名称が記されている化学品は、擬似物質が本

物の物質のように見えるように作られている。これは、特定の化学品に慣れていない参加者に不利にな

らないような状況を保つことを目的としている。 A6.5.8.4 既に述べたように、使用者は実験計画のできる範囲内で、被験者にとって試験材料が本物らし

く見えるようにした方がよい。

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A6.5.9 副研究の標本数 副研究の標本数は、二面アルファエラー値 0.1 およびべき乗数 0.8 として計算されるが、実務的実行可

能性を考慮して調節される。本試験方法の初期実験的導入段階でこれらの概算が確認される。特に、模

擬実習が想定される場合、主に予測される実務的制約のために、相対的に少人数の被験者および少数の

対象集団が選択される。 A6.5.10 翻訳 A6.5.10.1 言語は危険有害性の伝達の重要なポイントである。本試験方法はできるだけ言語の違いを考

慮に入れるよう努めているが、粗末で標準に満たない翻訳は試験に大きな誤りをもたらす可能性がある。

この理由から、正確な翻訳への細心の注意が必要であり、下記手順に従って実施されるべきである。 (a) 英語(本文書の言語)の流暢な人員 2 名が別々に質問表を目標言語(対象集団の言

語)に翻訳する。 (b) この2つの訳文を別のもう一組の翻訳者が各々、英語へ再翻訳する。

A6.5.10.2 再翻訳は、初回で 5%以下の誤訳を目標とするべきである。誤訳を解明し、それにより不明

瞭さを直すべきである。可能なら、2つを合わせた翻訳は、各質問表から正しく翻訳および再翻訳した

すべての要素を含むよう努力すべきである。 A6.5.10.3 後者が不可能な場合、誤訳の割合の低い翻訳を優先させるべきである。誤訳が 5%を超える

場合、2回目の再翻訳が必要である。 A6.5.11 面接のタイミングおよびフォーカスグループ A6.5.11.1 面接およびフォーカスグループに関して、面接を受ける者と雇用者(これが当てはまる場

合)双方にとり、都合の良い時間を設定しなければならない。農業従事者にとって大切な繁忙期(例:

植え付け、耕作、農薬散布、収穫期)には、面接に出席する要請をすべきではない。労働者は勤務時間

内に面接を受けるべきで、参加のために経済的損失を被るべきではない。労働者が、自分の自由時間

(昼食、または労働時間後)に、適切な補償なしに参加することは奨励されない。労働者が昼食休憩時

間に参加することに同意した場合、その時間は適切で、しかも妥当な報酬が与えられなければならない

(別に自由時間を与えられる、昼食が供給される等)。 A6.5.11.2 表 A6.3 は、南アフリカの2工場での初期実験的導入に基づく各作業の完成に要する時間の概

算を表したものである。作業と作業管理者の技量によって、総試験時間は 20 分から 2 時間と差が出る。

知識がない労働者の場合、試験時間は長くなる。

表 A6.3:危険有害性の伝達の理解度に関する 試験に要するおおよその時間

作業 時間(分)

1 60-120

2 30-45

3 45-75

4 75-105

5 20-30

6 20-30

7 20-30

8 45-75

9 30

10 30-45

11 120-180

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A6.5.12 反応の評価とコード化 A6.5.12.1 理解度に関する試験に対する反応の評価は、反応の正しさに関しての専門的な判断を必要と

する。ジンバブエでの過去の経験では、自由形式の反応の内容分析は、観察者の手法が十分に標準化さ

れたところでは実行可能であることを示している。 A6.5.12.2 本試験方法には、理解に関して要求される評価を行う一連の専門家が必要である。下記に概

要を説明した手順に沿って研究を始める前に、専門家委員会が特定されるべきである。

(a) 経験の範囲を考慮して委員を選定する。それには(1 人またはそれ以上の)被雇用者、雇用

者、従業者、およびコード化と評価の分野での熟練した研究者が含まれるべきである。 (b) 表にある各作業の質問に対する潜在的な反応特性を点検するために、委員とともにワークシ

ョップを開催する。GHS 手続書類を点検して、どんな反応が下記の区分に相当するかに関

して合意に到達することを目指す。

(i) 正: 意味が同一である、または GHS の構成概念の意図に完全に一致する。これは

GHS の意味することと 100%同じではないが安全行動や予防措置の基礎として満足で

きる反応を含む。

(ii) 部分的に正: 意味するところの要素は部分的には正しいが、適切な安全行動や予防措

置を保証するに不十分である。

(iii) 誤: 提示された意味が完全に間違っているかまたは GHS の意図した意味との関連が

非常に薄い。

(iv) 反意 (重大な混乱): 提示された意味が間違っているばかりか GHS システムの意図に

対して反対の理解を示している。そのような重大な混乱は、結果として危険な態度又

は行動となる可能性がある。

(v) 答えられない/知らない (c) 5~10 人の被験者を相手に質問を導く。選択した区分に関連した結果を点検する。

(d) 結果が重大な不一致を示す場合、区分について同意に達するまで上記の手順を繰り返す。

A6.5.12.3 必要に応じて、各作業の質問に対する反応に関し、さらなるコード化が各作業について討論

される。 A6.5.13 分析 これら作業に関して提出される分析は、種々の社会層に関連した簡単な比率計算および平均値である。

もっと複雑な分析が計画され、違う作業で示されるかもしれない。理解度に関する総合評価は、種々の

社会層の被験者からまとめた結果により行われるが、階層や他の人口統計学的要因など理解度に作用す

ることが知られている重み付けで調整されなければならない。 A6.5.14 フィードバックおよび追跡 被験者全員に、理解度の評価の結果を見る機会と面接および試験手順に関してのフィードバックを提

供すべきである。 A6.5.15. 追跡評価 これらの評価への参加被験者は、GHS 危険有害性情報に関する記憶力と中期間および長期間での同情

報にふれた場合の利点を評価するために、1ヶ月後と 1 年後に再面接を受けるべきである。人的資源や

実務に応じて、 初に完了したすべての作業についての再試験は省くことができる場合がある。

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附属書 7

GHSラベル要素の配置例

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附属書 7

GHSラベル要素の配置例

以下は図解のために準備した例で、今後GHS小委員会で議論と検討が行われる。 例1:引火性液体区分 2の組合せ包装

外装容器:引火性液体輸送標札を付した箱 * 内装容器: GHS 危険有害性警告ラベルを附したプラスチック・びん **

* 外装容器には国連輸送標札のみが必要。 ** 「危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則」に定める引火性液体の絵表示は、内装容器に

表示する GHS 絵表示に替えて使用することができる。

注意喚起語 (1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報

(1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

2-メチルフラマリン UNXXXX

2-メチルフラマリン 製品特定名 (1.4.10.5.2(d) 参照)

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例 2:特定標的臓器毒性物質区分 1および引火性液体区分 2の組合せ容器

外装容器:引火性液体輸送標札を付した箱 * 内装容器: GHS 危険有害性警告ラベルを附したプラスチック・びん **

製品特定名

(1.4.10.5.2(d) 参照)

**

注意喚起語(1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

* 外装容器には国連輸送標札のみが必要。

** 「危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則」に定める引火性液体の絵表示は、内装容器に表示する GHS 絵表示に替えて使用することができる。

塗料 UN1263

塗料 (フラマリン、レッドクロモミウム)

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例 3:皮膚刺激性物質区分2および眼刺激性物質区分2Aの組合せ容器 外装容器:輸送標札が不要な箱 * 内装容器: GHS 危険有害性警告ラベルを付したプラスチック・ びん

* 輸送標札がない場合に、所管官庁によっては外装容器に GHS ラベルを要求することがある。

製品特定名

(1.4.10.5.2(d) 参照)

注意喚起語(1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

ブラーゼン溶液

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例 4: 引火性液体区分 2の単一容器 (200 リットルドラム)

注記: GHS ラベルと「危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則」に定める引火性液体の標 札および表示は組み合わせた形式で表示することができる。

製品特定名

(1.4.10.5.2(d) 参照)

注意喚起語 (1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

2―メチルフラマリン UNXXXX

2―メチルフラマリン

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例 5: 特定標的臓器毒性物質区分 1および引火性液体区分 2の単一容器

注記: GHS ラベルと「危険物輸送に関する国連勧告・モデル規則」に定める引火性液体の標札および表示は組み合わせた形式で表示することができる。

製品特定名

(1.4.10.5.2(d) 参照)

注意喚起語(1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

塗料 UN1263

塗料 (メチルフラマリン、レッドクロモ

ミウム)

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例 6:皮膚刺激性物質区分 2および 眼刺激性物質区分 2Aの単一容器

製品特定名

(1.4.10.5.2(d) 参照)

注意喚起語(1.4.10.5.2(a) 参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2(b) 参照)

注意書き (1.4.10.5.2(c) 参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2(e) 参照)

ブラーゼン溶液

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例 7:輸送および他の GHS 情報が単一包装上に付される時の追加手引き

(a) 輸送および他の GHS 情報が単一容器(例えば、200 l ドラム)上に付される場合には、

異なった分野の必要性に対応する方法で配置されるよう考慮しなければならない。

(b) 輸送絵表示は緊急事態において直ちに情報を伝えなければならない。くすんでいる、

または部分的に不鮮明な条件でも、離れた所からでも見えなければならない。

(c) 輸送関連絵表示は識別するのを助けるために、非輸送目的にのみ意図される絵表示より

外見において明瞭である。

(d) 輸送絵表示は他の情報から識別するために、GHS ラベルから分離した表示板に配置さ

れてもよい、または、包装上の他の GHS 情報と隣接して配置されてもよい。

(e) 絵表示はそれらの大きさを調整することにより識別されてもよい。一般的に、非輸送絵

表示の大きさは他のラベル要素の文章の大きさとつりあっているべきである。これは一

般的に輸送関連絵表示より小さいが、そのような大きさの調整は非輸送絵表示の明瞭さ

とわかりやすさに影響を与えるべきではない。

以下は、そのようなラベルをどのように付すのかの例である。

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複数の危険有害性を表示するために隣接する3つの表示板を用いた単一容器

製品の分類は、(a) 引火性液体・区分2 (b) 吸入による急性毒性・区分4 (c) 特定標的臓器毒性・区分2である。

コード 製品名

会社名 危険

子供の手の届かないように保管すること

使用前にラベルを読むこと 町名 国名、 県名、市名、郵便番号、 電話番号 緊急連絡先電話番号

使用法 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

引火性の高い液体および蒸気。 吸入すると有害。 長期にわたる、または、反復ばく露による肝臓及び腎臓の障害のおそれ。

国連番号 品名

容器を密閉しておくこと。 熱/火花/裸火から遠ざけること-禁煙。 屋外または換気のよい場所でのみ使用すること。 ヒューム/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入しないこと。 [指定された]保護手袋および保護眼鏡/保護面を着用すること。 容器および受器は地面に置く/固定すること。

火災の場合には、[指定された]消火剤を用いること。

救急処置

吸入した場合: 空気の新鮮な場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息

させること。 医師に連絡すること。

[UPC]

充填重量 XXXX ロット番号: XX 総重量: XXXX 充填日: XXXX 有効期限: XXXXXX

涼しい所/換気の良い場所で貯蔵すること。

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例 8::小さな包装のラベル例

形/サイズおよび使用方法による制限からラベルを貼ることができない小さい直接容器が、GHSラベルで要求されているすべての情報が表示できる外容器に容れられている

試験用試薬として使用される製品のガラスアンプルを容れた段ボール箱、それぞれのアンプルは

0.5g 含む

試薬の作業用液体は、アンプルの頭部を除去し、下半分(製品を含む)を必要量の脱イオン水の中に入れることで作成する。したがって、作業用液体を汚染する可能性のあるラベルをアンプルに貼り付けることができない。これが続いて起きる反応に影響を与える可能性がある。サイズおよび形状により、直接容器(ガラスアンプル)に GHS の該当表示要素をすべて記載するのは不可能である。

外側の段ボール箱の面積は大きく、要求される GHS ラベル要素を読みやすい大きさで記載でき

る。

ラベルのないガラスアンプルはラベル用のタグを端につけたポリエチレンスリーブで密閉される-アンプルは使用直前、すなわち作業用液体を調整するまでポリエチレンスリーブから外さない。タグの端にあるラベル用の面積はすべての要求されるラベル要素を含むには十分ではない。表示には 小限以下を含む:

・ タグの端の片面に製品特定名、注意喚起語および供給者の名称および電話番号

・ タグの端のもう一方の片面に危険有害性絵表示

これは、使用者が製品の本体(関連した SDS の確認を可能にする)、その危険有害性(製品は危険有害であり取扱い/貯蔵が適当に行われる必要があることを示す)および供給者の名称/連絡先(緊急時に必要ならば)に気づくことを確実にする。端のタグの両面に安全情報を確実に示すために、注意喚起語および絵表示は同じ面にはしない。

内包装: 小限の GHS ラベル要素が記載されているスリーブ

30 mm

15 mm

7 mm

BLAHZENIC ACID Company XYZ Phone + 000 0000000

SIGNAL WORD 片面

20 mm

READ FULL LABEL

ポリエチレンスリーブ

反対面

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- 430 -

外包装: 外包装にはすべての要求される GHS ラベル要素(危険有害性情報および注意喚起語)

が表示される

製品特定名 (1.4.10.5.2 (d)参照)

注意喚起語 (1.4.10.5.2 (a)参照)

危険有害性情報 (1.4.10.5.2 (b)参照)

所管官庁が指定する追加情報があればここに記

載する。

供給者名称 (1.4.10.5.2 (e)参照)

注意書き (1.4.10.5.2 (c)参照)

BLAHZENIC

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- 431 -

附属書 8

世界調和システムにおける

分類例

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- 432 -

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- 433 -

附属書 8

世界的調和システムにおける分類例

A8.1 分類に関する提案

下記の分類に関する提案はGHS 区分によるものである。本文書には、各健康有害性クラスの提案および入手

可能なすべての科学的証拠の詳細に関する簡単な記述が含まれる。

標準および標準外動物研究に基づき、この物質には急性毒性および腐食性の両方の分類が提案される。

分類案 GHS: 急性経口毒性 - 区分 4

急性経皮(皮膚)毒性 - 区分 3

皮膚刺激性/腐食性 - 区分 1C

眼刺激性/重篤な眼に対する損傷 - 区分 1

引火性液体 - 区分 4

A8.2 物質の特定

1.1 EINECS 名称

EINECS に無い場合

は IUPAC 名

グロバリンハーゼキシルシステモール

CAS No. 999-99-9

EINECS No. 222-222-2

1.2 同義語

(ISO 名がある場合記

入する)

2-ハザノール

グローバルエチレン

1.3 分子式 CXHYOZ

1.4 構造式

1.5 純度 (w/w)

1.6 重要な不純物または添

加物

1.7 既知の使用法 工業: 表面コーティング溶剤および洗浄液。Globalexyl UNoxy ILOate 用の化学

媒介

一般: トイレクリーナー

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- 434 -

A8.3 物理化学的特性 物理化学危険性として区分4 引火性液体の分類が提案される。

2.1 物理的形状 液体

2.2 分子量 146.2

2.3 融点/範囲 (°C) -45

2.4 初留点/沸点範囲 (°C) 208.3

2.5 分解温度

2.6 蒸気圧 (Pa(°C)) 7

2.7 比重 (g/cm3) 0.887~0.890

2.8 蒸気密度 (空気=1) 5.04

2.9 脂溶性 (mg/kg, °C)

2.10 水溶性 (mg/kg, °C) わずかに水溶性がある (0.99% w/w)

2.11 分配係数 (log Pow)

2.12 引火性 引火点 (°C) 爆発限界 (%,v/v) 自然発火温度 (°C)

クローズドカップ法:81.7 オープンカップ法:90.6 下限:1.2 上限:8.4

2.13 爆発性 データがない

2.14 酸化特性

2.15 他の物理化学的特性 A8.4 健康および環境特性 A8.4.1 急性毒性 A8.4.1.1 経口

GHS 区分4(300-2000 mg/kg)の分類とする証拠が示されている。

種類 LD50 (mg/kg) 観察および備考 文献

ラット 1480 詳細な情報がない。 2

ラット 1500 (雄) 740 (雌)

mg/kg 単位のLD50値は、EGHE の既知の比重 0.89 g/cm3を用いてml/kg 値から計算した。

8

A8.4.1.2 吸入 約 0.5mg/l の飽和蒸気濃度に対してばく露された実験動物に、死亡または明白な毒性の徴候はなかった。ゆえ

に、入手可能なデータからは分類するのに十分な根拠が示されない。

種類 LC50 (mg/l) ばく露時間 (時)

観察および備考 文献

ラット > 83 ppm. (ほぼ0.5 mg/l に相当)

4 83 ppmでは、死亡、臨床的症状または肉眼的病変は起きない。(85 ppmが室温で飽和蒸気濃度であると記載されている)

3

ラット 記述されていない。

6 実験動物は、室温で(85 ppm と想定される)飽和蒸気濃度でばく露された。死亡は起きず、臨床病理学的症状は観察されなかった。

8

ラット 記述されていない。

8 室温では、(85 ppmと想定される)”飽和蒸気濃度” に対するばく露で死亡が起きなかった。

2

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- 435 -

A8.4.1.3 経皮

GHS 区分 3 (200-1000 mg/kg)の分類とすることの根拠が示されている。

種類 LD50 (mg/kg) 観察および備考 文献

ラット 790 詳細な情報がない。 2

ウサギ

(5/性/

グループ)

720 (雄)

830 (雌)

実験動物は、24 時間 3560 mg/kg までばく露された。2 匹以外全ては適用期間中に死亡した。ばく露後に、局所毒性(紅斑、浮腫、壊死および斑状出血)が、動物の数は記述されてないが報告されており、14 日間の適用後観察期間中ずっと続いた。観察期間の終わりに、動物の数は記述されてないが潰瘍形成についても言及されていた。

8

A8.4.2 皮膚刺激性/腐食性 この物質の刺激性に関し、矛盾した報告がある。皮膚刺激性試験を目的とした急性経皮研究と同じ報告書の

中で、報告者は、観察の最終日(7日目)にまだ生存していた 6 匹の処置済みのウサギ中、3 匹に軽い~中程度

の紅斑に加えて「壊死」が観察されたと記述している。軽い浮腫も研究過程の間中観察されたが、7 日間の観察

期間内で消退した。この研究で、動物のうち 1 匹は全く皮膚反応の証拠を見せず、他の動物に微かな程度から

中程度の皮膚刺激性が観察された記述があるので、動物のうち 3 匹の「壊死」の観察は若干の驚きである。ウ

サギを用いた急性経皮(皮膚)毒性の研究でも「壊死」および潰瘍形成の記述を含む皮膚の徴候について報告

されたが、病気に冒された動物の数については示されていない。これらの所見と対照的に、古くて簡単な研究

報告には、ウサギには皮膚刺激性の特性がほとんどないか皆無であると明示されている。 同様に矛盾した皮膚刺激性の所見が、近い関係の物質で観察されており、その物質に対して壊死と皮膚刺激

性がないとの両方の報告がなされている。加えて、二次文献には、他の幾つかの類似した物質が「中程度」の

皮膚刺激性を起こし、これらの物質グループへの長期のばく露は熱傷の原因となることが示されている。しか

し、より短い連鎖の類似物質は、皮膚刺激性物質になるとは考えられていない。 急性経皮・皮膚刺激性の研究において報告された壊死は無視できないと考えられ、さらに構造的に類似した

物質での所見もあり、分類が正当化される。GHS 分類では、腐食性として3つの区分がある。これらのデータ

は、区分に容易に整合しないが、4 時間のばく露時間の後壊死病斑が起きたことが観察されているので、区分1

C が適切である。著しく短いばく露が皮膚腐食性を引き起こすことを示す証拠はない。

種類 動物の数

ばく露時間(時)

濃度 (w/w)

包帯: (閉塞性、半閉塞性、解放性)

観察および備考 (刺激性・可逆性の程度と性質の特定)

文献

ウサギ 6 4 0.5 mlで100%

閉塞性 動物の 1 匹には刺激性の徴候が見られず、1 日目に他の 1 匹に微かな紅斑(悪性度1)が見られ、7 日目に消退した。包帯をはずした後、4匹に軽い~中程度の紅斑(悪性度 1~2)が、軽い~顕著な程度の浮腫(悪性度 1~3)が見られた。ばく露後 7 日目に浮腫は消退した。適用場所での「壊死」が、1 日目から観察期間最終日の 7 日目までに 6 匹中 3 匹に起きたと報告されている。7 日目に 6 匹中 4 匹に皮膚の剥離が観察されている。

8

ウサギ(アルビノ)

5 24 100% (容量は記載されていない。)

記述されていない。

この不十分な研究報告では、皮膚刺激性の徴候は、ほとんどまたは全く見られない。

2

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A8.4.3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性

この有害性に推奨される標準規定よりかなり低用量の試験物質にばく露されたウサギでの研究のみ入手可能

であった。比較的重篤(例えば結膜発赤悪性度 3)であるが、可逆的影響が見られた。標準的な試験状態では、

眼に対する影響が非常に強く、よって GHS 区分 1(眼に対する不可逆的影響)とする証拠が示されているであ

ろう。

種類 動物の数

濃度 (w/w)

観察および備考 (刺激性・重篤な病変・可逆性の程度と性質の特定) 文献

ウサギ 6 0.005 mlで 100%

滴下から 1 時間後に結膜の発赤(悪性度 3)および分泌物(悪性度 2.8)が観察された。角膜混濁、虹彩、結膜発赤、結膜浮腫および分泌物に関する 24 時間、48 時間および 72 時間の平均結果は全て約 0.5 だった。すべての病変は 7 日目までに消退した。

8

ウサギ 60 1 および 5%

量は記載されてないが 5%の液を滴下したウサギの眼において重篤な損傷が観察されたとする二次文献があるが、その報告で記述されている文献にそのようなデータがないので、裏付けることができない。

1

A8.4.4 皮膚感作性および呼吸器感作性

データがない。関連した付加的な証拠(例えば構造活性相関)もなく、分類は提案されない。

A8.4.5 単回または反復ばく露による特定標的臓器毒性 A8.4.5.1 単回ばく露による毒性 この物質が単回ばく露によって特異的、非特異的な特定標的臓器毒性を起こす可能性があるかどうかについて信頼できる情報がない。ゆえに、単回ばく露特定標的臓器毒性のGHS 分類は提案されない。 A8.4.5.2 反復ばく露による毒性 A8.4.5.2.1 経口 反復経口投与の研究あるいは人での証拠が得られず、ゆえに分類も提案されない。

A8.4.5.2.2 吸入

0.43mg/l(約 72 ppm)という飽和蒸気濃度に近いばく露レベルでの 13 週間に渡るラットの吸入に関する研究において、有害毒性の証拠は無かった。GHS の基準に基づく分類に合致する十分な証拠が示されなかった。

種類 濃度

mg/l

ばく露時間(時)

処置期間

観察および備考(グループサイズ・NOEL・主な毒物学的影響の有意性)

文献

ラット (F344)

20/性/グループ

(プラス 10/ 性/グループ - 4 週間リカバリーグループ)

0.12, 0.24 および 0.425

6 13 週間5d/wk

死亡は起きなかった。体重増加抑制が高用量の雄・雌及び中用量の雌に観察された。血液または尿検査のパラメータには毒物学的に有意な変化は無かった。高用量の雌には、アルカリ・フォスファターゼの増加が見られた。高用量と中用量の雄には、絶対的および相対的な腎臓重量に、統計的に有意な増加が見られた。高用量の雌に、絶対的な肝臓重量に少量の増加(12%)が観察された。しかし、観察した臓器に、肉眼的または組織病理的な変化はなかった。

3

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A8.4.5.2.3 経皮 11 日間、444 mg/kg を経皮ばく露したウサギに関して、数量化表示されていないが、血液変化が報告された。しかし提供された情報が限られているため、この研究からは結果が引き出せず、分類も提案されなかった。

種類 投与 mg/kg

ばく露時間(時)

処置期間 観察および備考 (グループサイズ・NOEL・主な毒物学的重要性の特定化)

参照

ウサギ 0, 44, 222 & 444

6 11日間に9 回投与がなされた。

これは、二次文献で報告された未刊行の研究である。数量表示がないが、血液のパラメータにおける減少が最高用量のウサギにみられた。局所的作用についての記述はない。

1

A8.4.6 発がん性 (慢性毒性研究を含む) データがない – 分類提案はない。

A8.4.7 生殖細胞変異原性 エームス(Ames)、細胞遺伝学、遺伝子突然変異に関する in vitro の試験で陰性の結果が二次文献で報告さ

れている。in vivo のデータは得られていない。これらのデータからは分類はできない。 in vitro 研究

試験 細胞の型 濃度 範囲 観察および備考 文献

Ames サルモネラ (菌株に関する記述はない。)

0.3-15 mg/プレート

代謝活性化の有無において陰性。これは二次文献に記述された未刊行の研究であり、これより詳細な情報が得られない。

5

IVC CHO 0.1-0.8 mg/ml (-S9), 0.08-0.4 mg/ml (+S9)

代謝活性化の有無において陰性。これは二次文献に記述された未刊行の研究であり、これより詳細な情報が得られない。

6

遺伝子突然変異

CHO 記述なし 陰性。これは二次文献に記述された未刊行の研究であり、これより詳細な情報が得られない。

7

SCE CHO 記述なし 陰性。これは二次文献に記述された未刊行の研究であり、これより詳細な情報が得られない。

7

A8.4.8 生殖毒性-受精 データがない – 分類提案はない。

A8.4.9 生殖毒性 わずかに母体毒性を誘引するレベルでの吸引ばく露を受けたラットまたはウサギにおける発生毒性の証拠は

ない。より短い連鎖の関連物質が発生毒性に分類されることが知られているが、連鎖の長さが増加するに従い、

この有害性は減少し、この有害性に関する証拠はない。分類の提案はない。

種類 経路 投与 ばく露 観察および備考 文献

ラット 吸入 21, 41 & 80 ppm (0.12, 0.24 & 0.48 mg/l)

妊娠期間 6~15 日

物質は、ほぼ飽和蒸気濃度まで試験された。

ばく露期間中、摂餌量の減少に関連する母体の体重増加の減少が、中用量および高用量のグループに見られた。発生毒性の証拠はなかった。

4

ウサギ 吸入 21, 41 & 80 ppm (0.12, 0.24 および 0.48 mg/l)

妊娠期間 6~18 日

物質は、ほぼ飽和蒸気濃度まで試験された。ばく露期間中、高用量のウサギに、絶対体重の減少が観察された。発生毒性の証拠はなかった。

4

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A8.5 文献

1. Patty, F. (Ed.) (1994). Industrial Hygiene and Toxicology. 4th Ed. pxxxx-xx New York:

Wiley-Interscience.

2. Smyth, H.F., Carpenter, C.P., Weil, C.S. and Pozzani, U.S. (1954). Range finding toxicity data. Arch. Ind. Hyg. Occup. Med.

3. Fasey, Headrick, Silk and Sundquist (1987). Acute, 9-day, and 13-week vapour inhalation studies on

Globalene Hazexyl Systemol. Fundamental and Applied Toxicology. 4. Wyeth, Gregor, Pratt and Obadia (1989). Evaluation of the developmental toxicity of

Globalene Hazexyl Systemol in Fischer 344 rats and New Zealand White rabbits.

Fundamental and Applied Toxicology.

5. Etc.

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附属書 9

水生環境有害性に関する手引き

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附属書9 水生環境有害性に関する手引き

目次

頁 A9.1 序 …………………………………………………………………………………………………… 443 A9.2 調和された分類スキーム ………………………………………………………………………… 446

A9.2.1 適用範囲 446 A9.2.2 分類区分および分類基準 446 A9.2.3 根拠 446 A9.2.4 適用 447 A9.2.5 データの利用可能性 448 A9.2.6 データの品質 448

A9.3 水生毒性 ………………………………………………………………………………………….. 449 A9.3.1 序 449 A9.3.2 試験の説明 449 A9.3.3 水生毒性の概念 451 A9.3.4 証拠の重み 453 A9.3.5 試験困難な物質 453 A9.3.6 データの質の解釈 458

A9.4 分解性 .................................................................................................................................. 458 A9.4.1 序 458 A9.4.2 分解性データの解釈 459 A9.4.3 解釈についての一般的な問題 463 A9.4.4 判定スキーム 465

A9.5 生物蓄積性 …………………………………………………………………………………………. 466 A9.5.1 序 466 A9.5.2 生物濃縮性データの解釈 466 A9.5.3 BCF および Kow値に関して特別な注意が必要な化学品クラス 466 A9.5.4 矛盾するデータおよびデータの欠如 471 A9.5.5 判定スキーム 471

A9.6 QSAR の使用 ……………………………………………………………………………………….. 472 A9.6.1 経緯 472 A9.6.2 有害性の過小評価を起こす実験技術上の誤差 472 A9.6.3 QSAR モデル化の課題 473 A9.6.4 水生環境有害性分類への QSAR の使用 474

A9.7 金属および金属化合物の分類 …………………………………………………………………….. 476 A9.7.1 序 476 A9.7.2 分類への水生毒性データおよび溶解度データの適用 478 A9.7.3 環境における変換に関する評価 479 A9.7.4 生物蓄積性 479 A9.7.5 金属および金属化合物に関する分類基準の適用 480

付属資料Ⅰ 有機物質の分解性の測定 485 付属資料Ⅱ 水生環境中の分解性に影響する因子 491 付属資料Ⅲ 有機物質の BCF および Kow測定のための実験法および推定法の基本原理 495 付属資料Ⅳ 有機物質の生物濃縮性に対する体外および体内要因の影響 499 付属資料Ⅴ テストガイドライン(試験指針) 501 付属資料Ⅵ 参考文献 505

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附属書9 水生環境への有害性に関する手引き 1

A9.1 序

A9.1.1 水生環境に有害な物質を特定するための判定基準のセットを開発するにあたり、環境に対する有害性を正しく定義するのに必要となる詳細な事項は、何らかの適切な手引きを必要とするであろう複合システムとなることが合意された。したがって、本文書の目的は以下の2つである;

(a) このシステムがどのように機能するかについての説明と手引きを提供すること

(b) 分類基準を適用する際に用いられるデータの解釈に対する手引きを提供すること A9.1.2 有害性分類スキームは、本来有する特性を介した水生環境への危険性を有するような物質を特定することを目的として開発された。ここでは水生環境とは、淡水および海洋中の生態系、ならびにそこに生息する生物体と解釈される。ほとんどの物質について、入手できるデータの大部分はこの環境コンパートメントを扱っている。この定義は、適用範囲に水中底質、あるいは水中食物連鎖の頂点にある高位の生物がまだ含まれていないため、選択された判定基準である程度はカバーされているとはいえ、限界がある。 A9.1.3 適用範囲の点で限界はあるものの、このコンパートメントは多くの有害物質を 終的に受け入れる環境である点で無防備なものであり、そこに住む生物は高感受性であると広く理解されている。さらに、環境有害性の特定を追求するどのようなシステムでも、種または個体群中のそれぞれの個体に対するよりは、むしろ生態系に対するより広範な影響という意味での影響を特定することを追求せねばならないことから、このコンパートメントは複雑でもある。以下の各節に詳しく説明されるように、物質の有害性について も適切に説明できる特定の性質の限定されたデータセットが選択されている。すなわち、急性水生毒性、慢性水生毒性(chronic aquatic toxicity)、分解性の欠如、および潜在的な、または実際の生物蓄積性である。これらのデータを水生有害性の判定の手段として選択する根拠については、A9.2 節に詳述する。 A9.1.4 この段階では、本附属書は物質への判定基準の適用に限定される。物質という用語は広範囲な化学品に対して用いられ、その化学品の多くは、柔軟性のない判定基準にもとづいた分類システムに対して困難な課題をもたらすものである。このため、以降の各節は、こうした課題に対して、使用経験と明確な科学的根拠にもとづいてどのように対処できるかについての、いくつかの手引きを与えるものである。調和された判定基準は決まった構造をもつ物質を分類するのに も容易に適用できる(1.2 節の定義を参照のこと)が、この区分の対象となる物質が「複合混合物」とされる場合もしばしばある。ほとんどの例では、こうした物質は炭素鎖の長さ/置換基の数または置換度が一定の範囲内にある一連の同族物質として特徴づけることができる。水生生物に対する本質的有害性、生物蓄積性および分解性を評価するためのデータが得られるように、試験のための特別な方法論が開発されている。こうした特性については別々の節で、より具体的な指針が示されている。本指針の目的にそって、こうした物質は「複合物」または「多成分物質」と呼ばれる。 A9.1.5 これらの各性質(すなわち、急性水生毒性、慢性水生毒性、分解性、生物蓄積性)は専門家にとっても、解釈上複雑な問題を提起することがある。国際的に合意されたテストガイドラインが存在し、いかなる新規データにも採用されることになっているが、分類に使用できるデータの多くはこうした標準試験に従って作成されていないことがある。たとえ標準試験法が採用されていても、たとえば複合物、加水分解性不安定物質、ポリマー等のように、結果を分類スキームの範囲内で使用しなければならない場合に、解釈上複雑な問題を提起する物質もある。したがって、標準の、ならびに標準でない試験生物種、海水および淡水、様々な試験期間と多様なエンドポイントを採用したデータが入手できる。分解データには生物的なものもあれば非生物的なものもあり、環境との関連性も違うことがある。多くの有機化合物では、生物蓄積性はオクタノール/水分配係数で示すことができる。しかし、この生物蓄積性はその他多くの要因に影響されるので、こうした要因についても考慮することが必要となる。 A9.1.6 世界調和システムの明確な目標は、判定基準の共通セットに合意した上で、いったん分類されたら、その分類が世界的に受け入れられるように共通のデータセットも使用されるべきであるということである。これを実現させるためには、まず判定基準を適用するのに使用できるデータのタイプおよび質についての共通の理解、それゆえデータを判定基準に対して評価する場合の共通の解釈がなければならない。 ――――――――― 1 OECD Environment, Health and safety Publications, Series on Testing and Assessment, No 27, Environment directorate, Organization for economic Co-operation and Development, April 2001.

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- 444 -

この理由により、判定基準の論理的基礎についての共通の理解およびデータ解釈への共通のアプローチが

達成できるようなやり方で、判定基準を展開し説明することを追求する、透明性のある手引きの作成が必

要であると感じられるようになった。「化学品の全領域」に調和システムを適用する場合、製造業者や供

給業者自身による分類、すなわち必ずしも常に行政の監視を受けるとは限らないが、国境を越えて適用さ

れる分類に依存することが大きいので、こうした手引きは特に重要である。したがって本手引きは、読者

に多くの重要な領域について情報を提供し、その結果として一貫性のあるやり方での分類に導き、真に調

和された自律的なシステムを確立することを求めている。

A9.1.7 第一に、本手引きは判定基準に関する詳細な説明、選択された判定基準の論理的根拠、およびこ

のスキームが実際どのように機能するかについての概観を示す(A9.2 節)。この節では、データの一般的

な入手源、信頼性の判定基準を適用する必要性、データセットが不完全な場合、またはデータセットが大

きくて分類が多義的になる場合の分類の方法、およびその他一般的に遭遇する分類上の問題について述べ

る。 A9.1.8 第二に、本手引きは、非標準的なデータの使用を含めて、利用できるデータベースから得られる

データの解釈、および個々の性質に適用される特別な信頼性の判定基準について、詳細な専門的助言を示

す。「試験困難物質」、すなわち標準的な試験法が適用されないか、または解釈上の困難を生じる物質にお

けるデータ解釈の問題について説明がなされ、適切な解決法についての助言が示される。本システムは、

可能な限り、入手できる も良い既存データおよび規制目的のために必要なデータに依存するので、試験

よりむしろデータ解釈の方に重点がおかれる。核となる4つの特性、すなわち急性および慢性水生毒性(A 9.3節)、分解性(A9.4 節)および生物蓄積性(A9.5 節)は個別に取り扱う。 A9.1.9 解釈上の問題の範囲は広大となる可能性があり、その結果、つねに解釈は分類を担当する者の能

力と専門知識に依存することになる。しかし、共通に起こる困難な問題をいくつか特定して、信頼できる

一貫性のある結果を達成する手助けとなる、受け入れられる専門的判断を選び出す手引きを示すことは可

能である。こうした困難な問題は以下に述べる、部分的に重複したいくつかの課題に分類できる。

(a) 現行の試験手順をいくつかのタイプの物質に適用する際の困難

(b) こうした「試験困難な」物質とその他の物質から得られたデータを解釈する際の困難

(c) 広範囲な情報源から得られた多様なデータセットの解釈における困難

A9.1.10 有機物の多くについては、適切な OECD ガイドラインと分類基準を適用すれば、試験とデータ

解釈に問題は何も起こらない。しかし、試験される物質のタイプによって性格づけられる、いくつかの典

型的な解釈上の問題が存在する。これらは一般に「試験困難物質」と呼ばれている。

(a) 難溶性の物質:これらの物質は、溶液の調製、濃度の維持および水生毒性試験中の濃度の維持と

確認に問題を生じるため試験が困難である。その上、こうした物質について入手されるデータの多

くは、水に対する溶解度を超える濃度の「溶液」を用いて作成されてきており、その結果、分類の

ための真の L(E)C50または NOEC を決定する際に解釈上の大きな問題となる。水およびオクタノー

ル中の溶解度が低く、分析方法の感度が十分でないことが加わる場合には、分配挙動の解釈もまた

問題である。水に対する溶解度は測定が難しく、また単に検出限界より小さいと記録されているこ

とも多く、水生毒性と生物蓄積性のいずれの試験でも解釈上の問題を起こす。生分解性の試験では、

溶解度が低いと生物学的利用性が低くなり、予測される生分解速度より低くなることがある。した

がって特別な試験方法または採用する手順の選択が極めて重要となり得る。

(b) 不安定な物質:試験系内で速やかに分解(または反応)する物質は、試験上および解釈上の問題を

生じる。正しい方法論が使われているか、試験されたのはその物質なのかまたは分解/反応生成物で

あるか、および得られたデータは親物質の分類に適しているかを判定する必要がある。

(c) 揮発性物質:開放系で用いた場合に試験上の問題を生じることが明らかな物質は、ばく露濃度を適

切に維持して評価すべきである。方法によっては生分解性試験中の被験物質の濃度低下が避けられ

ず、結果が誤って解釈されてしまうこともある。

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(d) 複合的または多成分物質:たとえば炭化水素混合物等の物質は、溶解して均一な溶液にできないこ

とが多く、また多成分であるために濃度測定が不可能となる。したがって、水和性の分画(WAFS)の水生毒性試験から得られたデータを使用すること、およびそうしたデータを分類スキームに利用

することを検討する必要がある。混合物の各成分の挙動が異なる場合、生分解性、生物蓄積性、分

配特性、および水に対する溶解性はいずれも解釈上の問題を生じる。

(e) ポリマー:これらの物質は広範囲な分子量域を有し、その一部分しか水に溶けないことが多い。水

に可溶な分画を測定する特殊な方法が使え、試験データを分類基準と対応させて解釈する際には、

これらのデータを使用する必要がある。

(f) 無機化合物および金属:媒体と相互作用しうる物質は、pH や水の硬度等の要因によって、一定範

囲の水生毒性を生じうる。あるレベルでは有益となるような必須元素の試験からも解釈上困難な問

題が生じる。金属および無機金属化合物では、有機化合物に適用されるような分解性の概念は限定

された意味、または無意味である。同様に、生物蓄積性データも注意して扱う必要がある。

(g) 界面活性物質:これらの物質はエマルジョンを形成することがあり、注意を払って溶液を調製して

も、その生物学的利用性を確認することは困難である。ミセルが形成されると、外見上「溶液」が

調製された時にも、生物学的に利用できる分画を過大に推定する結果になる。これは、水溶性、分

配係数、生物蓄積性および水生毒性試験のそれぞれで解釈上重大な問題となる。

(h) 解離性物質:これらは、媒体中の対イオンのレベルによって、イオン化の程度が変化しうる。たと

えば酸および塩基は、pH によって著しく異なる分配特性を示す。

(i) 着色物質:これらは入射光を遮断するので、藻類/水生植物の試験では問題を生じる。

(j) 不純物:製造バッチ間で、含有率(%)や化学的特性が異なる不純物を含む物質もある。こうした

不純物の毒性と水に対する溶解度のいずれかまたは両方が親物質のそれより大きい場合、解釈上の 問題が生じ、毒性データに無視できない影響を及ぼす可能性がある。

A9.1.11 これらは、データの妥当性の確立、データの解釈、およびデータを分類スキームに適用する際に

遭遇するいくつかの問題の代表例となる。これらの問題、および関連する事項をどう扱うかについての詳

しい手引きを、以下の各節で述べる。急性および慢性の水生毒性に関するデータの解釈については A9.3節で扱う。この節は、上述の「試験困難物質」で遭遇する特別な解釈上の問題を扱っており、分類スキー

ムにおいて、いつどのようにデータを使用できるかについての助言も与えている。さらに、用いる試験デ

ータの全般的な説明およびそのようなデータの作成に適した試験の方法論も扱っている。

A9.1.12 広範囲に及ぶ分解性データが入手可能であり、これらは急速分解性の判定基準に従って解釈さ

れなければならない。このため、標準的でない試験法で得られたデータをどのように用いるかについての

手引きが必要とされる。たとえば半減期が与えられた場合、あるいは一次分解、土壌中での分解速度など

のデータの扱い方、ならびにそれらを水中での分解に外挿することの適切さ、および環境中での分解速度

についての手引きがある。分類基準と関連して分解性を評価するための推定方法についての簡単な説明も

含まれている。その手引きは A9.4 節に示す。

A9.1.13 生物蓄積のポテンシャルを測定できる方法は A9.5 節に記述される。この節では、分配係数の判

定基準と生物濃縮係数(BCF)の関係を説明し、既存データの解釈に関する手引き、すなわち実験データ

が入手できない場合に QSAR を利用して分配係数を推定する方法を示し、そして特に試験困難な物質につ

いて上記で特定された問題を扱う。高分子量物質の取扱いで遭遇する問題についても述べる。

A9.1.14 QSAR を使用することについての一般的な問題、すなわち関心のある3つの特性それぞれにつ

いて、QSAR がいつどのように利用できるかを述べた節も含まれている。一般的なアプローチとして、実

験データが入手できる場合には、QSAR データよりも実験データの方を使用すべきであることは広く受け

入れられている。このため、QSAR データの利用は信頼できるデータが得られない場合のみに限られる。

しかしすべての物質が QSAR による推定の利用に適しているというわけではなく、本手引きの A9.6 節で

この問題について取りあげる。

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A9.1.15 後に、金属および金属化合物の分類に関連する特殊な問題に一節が割かれている。明らかにこのような化合物については、生分解性およびオクタノール/水分配係数といった多くの特定の判定基準は適用できないが、分解による崩壊がないという原則や、生物蓄積は重要なコンセプトとして残される。したがって別のアプローチを適用する必要がある。金属および金属化合物は媒体との相互作用を受け、その媒体は金属イオンの溶解度や、水相との分配、および水相に存在する金属イオンの種類に影響する。水相で毒性が問題となるのは、一般に溶解している金属イオンである。物質と媒体との相互作用はイオンレベルを、ひいては毒性を増加することもあれば減少することもある。このため、金属イオンがその物質から生成されて水に溶け出すかどうか、もしそうなら、金属イオンは問題を生じるほど速やかに形成されるかどうかを検討することが必要である。このタイプの試験での結果を解釈するためのスキームは A9.7 節に示されている。

A9.1.16 本手引きは、広く多様な状況において判定基準をどのように適用するかに関する有用な助言を与えてはいるが、それでも単なる手引きに過ぎない。分類の際に生じるあらゆる状況を網羅することは望めない。したがって、これはシステムの基本的な原則、たとえばリスクベースよりも有害性ベースをまた確定された判定基準の一部について説明しているにすぎない、変更の可能性のある文書とみなさなければならない。さらに本手引きは、見かけでは確定している判定基準でも広く多様な非標準的状況に、適用できるようにする解釈を含んだ、スキームを使用する上で蓄積された経験の貯蔵所でもある。 A9.2 調和された分類スキーム

A9.2.1 適用範囲

EU の供給および使用システム、カナダおよび米国の殺虫剤システム、GESAMP 有害性評価手順、IMO海洋汚染物質に関するスキーム、欧州道路鉄道輸送スキーム(RID/ADR)および米国陸上輸送等、既存の有害性分類システムを考慮して判定基準が策定された。これらのシステムには、化学品の供給およびそれに続く使用、化学品の海上輸送、ならびに道路および鉄道による化学品輸送が含まれている。したがって、調和された判定基準はこれらすべてのシステムに共通のやり方で、危険有害性をもつ化学品を特定することを意図している。すべての異なった分野(輸送、供給および使用)についてのニーズを取り扱うために、2種類の異なったクラス、すなわち3つの区分から構成される短期間(急性)水性有害性クラス、および4つの区分から構成される長期間(慢性)水性有害性クラスを作成する必要があった。急性分類区分クラスは、包装された物品を考える場合には通常は使用しない2種類の短期間(急性)有害性区分(急性2および3)についての規定を定めている。ばら積みで輸送される物質の場合、想定される量が大量であるために独自に生じてくる規制上の多くの決定がある。そうした状況では、たとえば使用する船舶のタイプについて決定が求められる場合、すべての短期間(急性)有害性区分および長期間(慢性)有害性区分を考慮することが重要であると考えられる。以下の各節でこうした有害性区分を定義するのに用いられる判定基準について詳しく説明する。

A9.2.2 分類区分および分類基準

急性および慢性水生毒性の有害性区分とそれに関連する判定基準は、4.1 章の 4.1.2.4、および表 4.1.1に規定されている。

A9.2.3 根拠

A9.2.3.1 分類のための調和システムは、水生生物に対する本質的な有害性は、物質の急性毒性および慢性または長期間毒性の両方によって表されることを認めており、その相対的な重要性は、関係する特定の規制制度によって決まる。短期間(急性)有害性と長期間(慢性)有害性とは区別することができるので、有害性区分は、特定された有害性のレベルにおいて段階を示している両方の特性について定義される。慢性1と特定された有害性が慢性2によるものより重大であるのは明らかである。短期間(急性)有害性と長期間(慢性)有害性は明らかに異なったタイプの有害性を代表しているため、その相対的な重大さについて比較することはできない。物質の分類のためには両方の有害性クラスを独立に適用して、すべての規制システムの根拠を確立すべきである。

A9.2.3.2 判定基準によって定義された主要な有害性クラスは、長期間(慢性)有害可能性に大きく関係している。これは環境中での化学品に関する 優先の関心事を反映している。すなわち生じた影響は通常は致死レベル以下で、たとえば繁殖に対する影響、および長期ばく露により生じる影響なのである。特に包装された物品については環境への放出が量的に限られるので、長期間(慢性)有害性が主要な関心事であると認識されている一方、慢性毒性データは作成に経費がかかり、一般にほとんどの物質で容易には入手されないことも認めなければならない。他方、急性毒性データは容易に入手できることが多く、または高度に標準化されたプロトコールによって作成することができる。したがって、十分な慢性試験データが

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得られない場合は、急性有害性、長期間(慢性)有害性のどちらも定義する上で、中心的特性として利用されているのは急性毒性なのである。それでも、慢性毒性データが入手できる場合には、長期間(慢性)有害性区分を定義するには、慢性毒性データの方を優先すべきであると認識されている。 A9.2.3.3 慢性毒性と物質固有の運命特性を組み合わせが物質の潜在的な有害性に反映する。速やかに分解しない物質は、より長期ばく露が生じる可能性が高いため、速やかに分解する物質に比べて厳しい区分に分類されるべきである(A9.3.3.2.2)。

A9.2.3.4 急性毒性値それ自体は、有害性を立証するために単独かつ直接に使用しては、十分に正確な慢性毒性予測とはならないと認識されているが、生物蓄積性(すなわち log Kow ≧4、ただし BCF<500 でない場合)または長期ばく露の可能性(すなわち急速分解性がない)のいずれかと組み合わせれば、分類の目的では適切な代用として使用できると考えられている。急性毒性及び有意な程度で生物蓄積性を有する物質は、急速分解性を有していても通常はかなりの低濃度で慢性毒性を示す。同様に、速やかに分解しない物質には、長期ばく露が生じる可能性が高くなり、この場合もまた、長期毒性が十分に考えられることになる。したがって、たとえば、十分な慢性試験のデータがない場合は、以下の判定基準に適合するなら、慢性1が指定されるべきである。

(a) 適切な水生生物種に対する L(E)C50が 1mg/l 以下、かつ生物蓄積の可能性がある(log Kow ≧4ただし BCF<500 でない)。

(b) 適切な水生生物種に対する L(E)C50が 1mg/l 以下、かつ急速分解性がないこと。

A9.2.3.5 このシステムの中心的要素についての正確な定義はそれぞれ A9.3 節、A9.4 節、ならびに A9.5 節で説明する。

A9.2.3.6 難溶性の物質は通常、水に対する溶解度が 1mg/l 未満の物質であるとみなされているが、これらの物質のなかに、溶解する限界濃度で実施された毒性試験で、急性毒性が発現しないものがある。しかし、こうした物質が BCF≧500、または BCF データがない場合に log Kow ≧4(生物蓄積性の可能性を示唆している)であり、さらにその物質が急速分解性ではない場合、慢性4という安全ネットの分類が適用される。このようなタイプの物質では、短期試験におけるばく露期間では短すぎて、試験生物種の体内で物質が定常状態濃度に到達しないことがある。このため、短期(急性)試験で急性毒性が認められなかったとしても、特に分解性が低いと水生環境中ではばく露期間が延長されることになるので、急速分解性がなく生物蓄積性のある物質が慢性作用を生じる可能性を考える必要がある。

A9.2.3.7 水生毒性を決定する際に、水系生態系に存在しているすべての生物種を試験することは不可能である。したがって、ある範囲の栄養段階と分類群ごとに、代表する生物種が選ばれる。選択された分類群、すなわち魚類、甲殻類、および水生植物はほとんどの有害性プロフィールで「基本セット」になっており、有害性を十分に有効に表現するための 少のデータセットとなっている。入手された毒性値のうち低の値が通常、有害性区分の決定に用いられる。環境中には広範囲な生物種が存在していることを考え

れば、これら 3 種類の試験では不十分な代用データにしかなり得ず、したがって慎重を期すという意味で、低値を有害性区分の決定に採用している。これを実施するにあたり、生物種の感受性の範囲は数桁のオ

ーダーにわたる可能性があること、したがってこれらの生物種より感受性が高い種も低い種も、環境中に存在していることは認識されている。このため、データが少ない場合には、試験した中で も感受性の高い生物種を用いることで、慎重ではあるが受け入れられる有害性の定義が得られる。毒性の 低値を分類の根拠に用いることが適切でないかもしれない状況もある。これが該当するのは、たとえば大量のデータセットが入手されている場合等、通常よりも正確に感受性分布を決定できる場合である。このような大量のデータセットは相応の注意を払って評価すべきである。

A9.2.4 適用

A9.2.4.1 一般論として、ある物質を分類すべきかどうかを決定するには、以下のデータ項目について適切なデータベース、およびその他のデータ源を検索しなければならない。

(a) 水に対する溶解性

(b) 急性水生毒性(L(E)C50)

(c) 慢性水生毒性(NOECまたは同等のECx)

(d) 入手された分解性データ(特に易生分解性の証拠)

(e) 水中での安定性データ

(f) 魚類における生物濃縮係数(BCF)

(g) オクタノール/水分配係数(log Kow)

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水に対する溶解度および水中での安定性のデータは、判定基準では直接には用いられていないが、これ

らは他の特性のデータ解釈において貴重な参考データとなるので重要である(A9.1.10 節参照)。

A9.2.4.2 分類のためには、まず始めに入手された水生毒性データをレビューすべきである。入手されたすべてのデータを考慮して、分類に必要な品質基準に適合するデータを選択することが必要となる。国際的に標準化された方法において要求される品質基準に適合するデータが入手されていない場合には、分類が可能かどうかを決定するために、入手されているすべてのデータを検証する必要がある。データから溶解度の高い物質について急性水生毒性が L(E)C50>100mg/lで、かつ慢性水生毒性が 1mg/l を上回ることが示されたならば、その物質は有害であるとは分類されない。試験では影響が認められず、このため水生毒性が水に対する溶解値より大きい値と記録される、すなわちその試験媒体中での水に対する溶解度の範囲内では急性毒性はないとされるケースも多い。そのような場合に、試験媒体中での水に対する溶解度が 1mg/l 以上であれば、分類を適用する必要はない。

9.2.4.3 慢性水性毒性データが得られる場合、カットオフ値は物質が速やかに分解するかどうかによって決まる。従って、速やかに分解しない物質や、分解性についての情報がない物質については、カットオフ・レベルは急速分解性を確認できる物質よりも高くなる(4.1章、表4.1.1および表4.1.2参照)。 A9.2.4.4 水生毒性データの 低値が 100mg/l 以下で、かつ慢性毒性の十分なデータが入手できない場合、第一にその毒性が該当するのはどの有害性区分であるかを決定し、次に慢性クラスまたは急性クラスを適用すべきかどうかについて判定する必要がある。これは単に、分配係数 log Kow および分解に関して入手されたデータを検討することで達成できる。もし、log Kow ≧4 であるか、またはその物質は急速分解性がないと考えられるならば、適切な長期間(慢性)有害性および対応する短期間(急性)有害性区分が別々に適用される。ただし、log Kow は生物蓄積の可能性について も容易に入手できる指標ではあるものの、実験的に求められた BCF の方が望ましいことに注意するべきである。BCF が入手されているなら、分配係数でなくこちらを用いるべきである。そのような状況では、BCF ≧500 ということは適切な長期間(慢性)有害性クラスに分類するのに十分な程度の生物蓄積性であることを示す。もしその物質が急速分解性を有し、かつ生物蓄積性が低い(BCF<500、または BCF がなければ log Kow<4)ならば、慢性毒性のデータが慢性毒性を有すると示さない限り、長期間(慢性)有害性区分に指定されるべきではない。(A9.2.4.3 参照)。

A9.2.4.5 難溶性の物質、すなわち一般に試験媒体中での水に対する溶解度が 1mg/l未満である物質で、水生毒性が認められていない物質については、慢性4を適用する必要があるかを判定するためにさらに検討を加えるべきである。たとえば、もしその物質が急速分解性でなく、かつ生物蓄積の可能性がある(BCF≧500、または BCF がなければ log Kow ≧4)ならば、慢性4を適用すべきである。

A9.2.5 データの利用可能性

ある物質の分類に使用されるデータは、規制の目的で必要なデータ、および関連文献から導き出すことができるが、適切な出発点として利用できる国際的に認められた数々のデータベースも存在している。こうしたデータベースの品質や包括性には大きな差があり、どのデータベースでも単独では分類を行うのに必要な情報がすべて揃うわけではない。水生毒性を専門としているデータベースもあれば、環境運命に詳しいデータベースもある。化学品供給業者には、入手できるデータの規模と信頼性を判定するために必要な調査や確認をし、適切な有害性区分の指定にそのデータを用いる義務がある。

A9.2.6 データの品質

A9.2.6.1 入手されたデータの正確な使い方については、関連する節で説明するが、一般的な規則として、標準的な国際ガイドラインおよび GLP に準拠して作成されたデータは、他の種類のデータよりも望ましいとされている。しかし同様に、入手された 良のデータに基づいても分類できることを十分に認識することも重要である。したがって、上に述べた品質基準を満たすデータが入手できない時であっても、用いるデータが無効であると考えられない限り、分類をすることが可能である。このプロセスを支援するために、品質の得点付けガイドが策定されており、多くの場で広く用いられている。得点付けガイドは一般に以下の分類を充足している。

(a) 公的データ源から得られたデータで、EU 水質モノグラフ、USEPA クライテリアなど、規制所管官庁により有用性を確認済みのもの。これらのデータは、分類の目的には有効であるとみなすことができる。しかし、これらが唯一の利用できるデータであると考えるべきではなく、さらに関連報告書の日付に十分注意を払う必要がある。新たに入手できるデータがまだ考慮されていないこともある。

(b) 国際的に承認されたガイドライン(例:OECD テストガイドライン)またはそれと同等の品質の国内ガイドラインから得られたデータ。以降の各節に掲げられたデータ解釈上の問題があることを留意事項として、こうしたデータを分類に用いることができる。

(c) 上に述べたガイドラインに厳密には従ってはいないが、一般に容認された科学的な原則および手順に従っているデータ、または発表前に校閲されているデータ。こうしたデータについて、実験の詳細がすべて記録されていない場合、有効性の判定には何らかの判断が必要かもしれない。通常、こ

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うしたデータは、分類スキームの中で用いられてもよい。

(d) 標準的なガイドラインから著しく逸脱した、または信頼性がないと思われる試験手順により求めたデータは、分類に用いるべきではない。

(e) QSAR データ。QSAR の使用状況および有効性については、関連の各節で議論する。

(f) ハンドブック、総説、引用等のように、データの品質を直接には評価できない二次的な情報源から求めたデータ。データ品質 1、2 および 3 からのデータが入手できない場合に、こうしたデータが使えるかどうかを判断するため精査すべきである。こうしたデータは、その品質が評価できる程度に詳細である必要がある。これらのデータを分類目的に受け入れることが可能かどうかを判断する際には、データ品質に影響しているかも知れない試験中の問題および報告された結果の有意性について、特定された有害性のレベルに関し、十分な考慮を払うべきである(A9.3.6.2.3 を参照)。

A9.2.6.2 分類は不完全な毒性データセットに基づいてなされることもある。たとえば 3 つの栄養段階す

べてについてのデータが入手できない場合である。このようなケースでは、分類は「暫定的」であるとみ

なされ、入手される追加情報の入手が必要になる。一般に、入手されたすべてのデータが、分類を決定す

る前に考慮される必要がある。品質の良いデータが入手できない場合には、より品質の劣るデータでも考

慮する必要がある。そのような状況では、真の有害性レベルについての判断がなされることが必要となる。

たとえば、特定の生物種または分類群に関して良品質のデータが入手されている場合、同じ種または分類

群について得られるかもしれない、他の品質の劣るデータに優先して、そうしたデータを採用すべきであ

る。しかし、栄養段階すべてについての基礎的なデータセットに、必ずしも良品質のデータが揃っている

とは限らない。良品質のデータが入手されていない栄養段階については、品質が劣るデータを検討するこ

とが必要となろう。しかし、こうしたデータを考慮するには、有効な結果に達する可能性に影響したと思

われる問題についても考える必要がある。たとえば、加水分解性の不安定な化学品のデータなど、試験の

詳細および実験の設計が、その有用性の評価に決定的になるデータもある。そうした問題については、A9.3節でさらに説明する。

A9.2.6.3 通常、有害性の特定、ひいては分類は、対象の物質を試験して直接得られた情報をもとになさ

れるであろう。しかし、このことが試験に困難を生じ、または結果が常識にそぐわないこともある。たと

えば、保存びんの中では安定であっても、水と混合すると速やかに(またはゆっくりと)反応して、もと

の化学品とは異なる性質の分解生成物を生じさせる物質もある。この場合、分解が速やかであるなら、実

際に試験されたのは分解生成物であるため、入手されたデータは分解生成物の有害性を特定することもし

ばしばある。こうしたデータが通常の方法で親物質を分類するのに用いられることもありうる。しかし、

分解がより遅い場合、親物質を試験することが可能であり、有害性データが正常なやり方で作成される。

遅れて起こる分解は、短期間(急性)ないし長期間(慢性)有害性区分を適用すべきかを決める際に考慮

される。しかし、試験された物質が分解して、より有害な生成物を生じることも起こり得る。こうした場

合には、親物質の分類では分解生成物の有害性、および通常の環境条件で分解生成物が形成される速度を

十分に考慮しなければならない。 A9.3 水生毒性

A9.3.1 序

物質の水生環境に対する有害性を特定する基礎は、その物質の水生毒性である。分類は、魚類、甲殻類、

および藻類/水生植物の毒性データを入手することに基づいている。こうした分類群は、有害性を特定する

ための水中動物相および植物相の代表として、広く受け入れられている。規制所管官庁や化学企業がこれ

を受け入れているので、こうした特定の分類群に関するデータは見つけられる可能性が高い。分解性およ

び生物蓄積性についての挙動に関するその他の情報は、水生有害性をよりよく描写するのに利用される。

この節では、生態毒性に関する適切な試験について説明し、データを評価し試験結果の組み合わせを分類

に用いるいくつかの基本概念を示し、分類の困難な物質を扱う手法をまとめ、データ品質の解釈について

簡単な考察を加える。

A9.3.2 試験の説明

A9.3.2.1 本調和システムで物質を分類する目的では、淡水生物種と海水生物種の毒性データは同等とみ

なすことができる。イオン化する有機化合物や有機金属化合物等、ある種の物質では淡水環境と海洋環境

では現れる毒性が異なることも指摘しておかなければならない。分類の目的は水生環境の有害性を記述す

ることなので、 も高い毒性が示された結果が選ばれなければならない。

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A9.3.2.2 健康および環境に対する有害性を判定するための GHS 判定基準は、中立の試験方法であるが、他方、科学的に正当であり、対象のエンドポイントについての既存システムについて先に述べた国際的な手順および判定基準に従って正当性が確認され、かつ相互に受け入れられるデータを作成できるなら、異なる手法も許容されるべきである。システム案(OECD 1998)では以下のようにされている。

「急性毒性は通常、魚類1種での 96 時間 LC50値(OECD テストガイドライン 203 または同等のもの)、甲殻類 1 種での 48 時間 EC50値(OECD テストガイドライン 202 または同等のもの)または藻類 1 種での 72 時間または 96 時間 EC50値(OECD テストガイドライン 201 または同等のもの)により決定される。こうした生物種はすべての水生生物種の代表であるとみなされるが、ウキクサ Lemna 等、その他の種に関するデータも、試験方法が妥当なものであれば、考慮されることもある。」

慢性試験では一般的に、長時間続くばく露が行われる。その期間は水生生物種の繁殖周期に応じて、数日間から 1 年間、またはそれ以上に至る。慢性試験は、成長、生存、繁殖および発育に関する特定のエンドポイントを評価するように実施してもよい。

「慢性毒性データは、急性データに比べて入手し難く、試験手順の範囲もそれほど標準化されていない。OECD テストガイドライン 210(魚類の初期生活段階毒性試験)、202 Part 2 または 211(ミジンコの繁殖試験)および 201(藻類生長阻害試験)に従って得られたデータは受け入れられる。他の、正当性が確認され、国際的に受け入れられている試験も使用できよう。NOEC または同等のL(E)Cx を用いるべきである。」

OECDの文書には標準的な生態毒性試験のデータ分析のための主な統計手法について記載したものがある(OECD 2006) A9.3.2.3 分類の例として引用した OECD ガイドラインには、改正されているものや更新が予定されているものもあることを指摘しておかなければならない。こうした改正により試験条件がわずかながら変更されることもある。したがって、分類のための調和された判定基準を策定した専門家グループは、試験期間について、あるいは使用生物種についてさえも、ある程度の柔軟性を持たせるよう試みた。

A9.3.2.4 魚類、甲殻類、および藻類を用いた、受け入れられる試験を実施するためのガイドラインは多くの資料に見出される(OECD, 1999; EPA, 1996; ASTM, 1999; ISO EU)。OECD モノグラフ No.11 工業用化学品および駆除剤の水生毒性試験に関する詳細レビュー文書は、広範囲な試験法の優れた集大成であり、また試験指針の資料である。この文書はまた、適切な試験方法論の情報源でもある。 A9.3.2.5 魚類を用いた試験

A9.3.2.5.1 急性試験

急性試験は一般に、体重 0.1-5g の大きさの幼稚仔を用いて 96 時間の試験期間で実施される。こうした試験で観察するエンドポイントは死亡率である。このサイズより大きい魚または 96 時間より短い試験期間では、一般的に感度が落ちる。しかし、幼稚仔で 96 時間の受け入れられるデータが入手できない場合、またはこれら魚のサイズまたは試験期間が異なる試験結果が、より有害性の高い区分における分類に影響する際には、分類のためにこれらの結果を採用することもできよう。分類には、OECD テストガイドライン 203 (魚類 96 時間 LC50)またはこれと同等のガイドラインに従った試験を採用すべきである。

A9.3.2.5.2 慢性試験

魚類を用いた慢性試験または長期試験は、受精卵、胚、幼稚仔または繁殖行動の認められる成魚で開始できる。OECD テストガイドライン 210 (魚類の初期生活段階毒性試験)、魚類ライフサイクル試験(US EPA 850.1500)またはこれらと同等の試験法が分類スキームで用いられる。試験期間は試験の目的により大きく異なる(7 日程度から 200 日以上に至るまで)。観察するエンドポイントとしては、孵化率、成長(体長および体重変化)、産卵数、および生存率がある。技術的には OECD ガイドライン 210 (魚類の初期生活段階毒性試験)は「慢性」試験ではなく、感受性の高いライフステージにおける亜慢性試験である。この試験は慢性毒性の予測指標として広く受け入れられており、本調和システムでは分類の目的のためにこのようなものとして採用されている。魚類初期生活段階毒性データは、魚類ライフサイクル試験や魚類繁殖試験よりはるかに多く入手できる。

A9.3.2.6 甲殻類を用いた試験

A9.3.2.6.1 急性試験

甲殻類を用いた試験は、一般に第一齢幼体(訳者注:孵化後 24 時間以内のもの)から開始する。ミジンコ類の場合には、48 時間の試験期間が採用されている。その他の甲殻類、たとえばアミやその他の種類では、96 時間が基準である。観察するエンドポイントは死亡率、または死亡率の代用としての遊泳阻害で

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ある。遊泳阻害とは、軽い刺激に対する無応答として定義されている。OECD テストガイドライン 202 Part 1 (ミジンコ急性試験)または US EPA OPPTS 850.1035 (アミ類急性毒性試験)あるいはこれらと同等のガイドラインを分類に用いるべきである。

A9.3.2.6.2 慢性試験

甲殻類を用いた慢性試験もまた、一般に第一齢幼体から開始し、成熟期および繁殖期まで継続される。ミジンコ類の場合、成熟および 3 回の産仔には 21 日間で十分である。アミでは 28 日必要である。観察するエンドポイントとして、 初の産仔までの期間、雌 1 頭あたりの産仔数、成長および生存率がある。OECD テストガイドライン 202 Part 2(訳者注:現行ではテストガイドライン 211) (ミジンコの繁殖試験)または US EPA OPPTS 850.1350 (アミ類慢性毒性試験)あるいはこれらと同等のガイドラインを分類スキームに用いるべきである。

A9.3.2.7 藻類/植物を用いた試験

A9.3.2.7.1 藻類を用いた試験

藻類を栄養添加培地中で培養して被験物質にばく露する。OECD テストガイドライン 201(藻類生長阻害試験)と同等の試験を用いるべきである。標準的な試験方法では、試験期間中(通常は 3-4 日間)の指数増殖を確認するために、植種原の細胞濃度を採用している。

藻類試験は、急性・慢性の両方のエンドポイントが得られる短期試験である。この試験で観察するエンドポイントとして望ましいのは藻類生長速度阻害である。この理由は、生長速度阻害は試験のデザインに依存しないのに対し、バイオマス法は試験生物種の生長速度や、試験期間やその他の試験のデザインの内容にも依存するためである。エンドポイントがバイオマスの減少のみ、または特定されないで報告されている場合は、この値は同等のエンドポイントとして解釈される場合がある。 A9.3.2.7.2 大型水生植物を用いた試験

水生毒性試験に も多く用いられる維管束植物はウキクサ(Lemna gibba および Lemna minor)であ

る。ウキクサ試験は短期試験であり、急性および亜慢性のエンドポイントが与えられるが、本調和システ

ムでの分類には急性 EC50のみが使用される。この試験は 14 日間以内であり、藻類に用いるのと同様な栄

養添加培地中で実施されるが、栄養強度が増加されることもある。観察するエンドポイントは生じた葉状

体の数の変化に基づいている。Lemna に関する OECD テストガイドライン (作成中(訳者注:テストガ

イドライン 221))および US EPA 850.4400(水生植物毒性試験、Lemna)を用いるべきである。

A9.3.3 水生毒性の概念

この節では、分類の際の急性毒性および慢性毒性の使用について、またばく露方式、藻類毒性試験および QSAR の利用についての特別な考察について取りあげる。水生毒性の概念についてさらに詳しい議論としては、Rand (1996)を参照できる。

A9.3.3.1 急性毒性

A9.3.3.1.1 分類の目的において急性毒性は、短期ばく露で生物種に有害性のある物質の本来の性質である。急性毒性は一般に、試験生物種の 50%に対して致死的である濃度(LC50)として、試験生物種の 50%に測定可能な有害作用を及ぼす濃度として(例えば、ミジンコの遊泳阻害)、または対照(未処置)生物の反応と比べて試験(処置群)生物の反応(例:藻類の生長速度)が 50%低下する濃度として表現される。 A9.3.3.1.2 急性毒性が 1ppm(1mg/l)以下であると判定された物質は、一般的に非常に強い毒性であると認められている。こうした物質の取扱、使用、または環境中への放出は高度の有害性をもたらし、またこうした物質は慢性 1 および/または急性1に分類されている。十進法による毒性区分の帯域が、急性 1 より上の急性毒性区分用として受け入れられている。すなわち、急性毒性が 1-10ppm(1-10mg/l)として測定された物質は急性 2 に、10-100ppm(10-100mg/l)として測定された物質は急性 3 に、および100ppm(100mg/l)を超える物質は実質的に毒性はないとみなされる。

A9.3.3.2 慢性毒性

A9.3.3.2.1 分類の目的において慢性毒性は、生物種のライフサイクルに関連して決定されたばく露期間中に、物質がその生物種に有害作用を及ぼす物質固有の特性をいう。こうした慢性作用には通常、一連の亜致死的なエンドポイントが含まれており、一般に無影響濃度(NOEC)または同等の影響濃度(ECx)として表される。観察するエンドポイントとして典型的なものには、生存、成長、または繁殖がある。慢性毒性のばく露期間は、測定するエンドポイントおよび用いる生物種によって広く異なる。

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A9.3.3.2.2 慢性毒性に基づく分類については、速やかに分解する物質と速やかに分解しない物質とでは区別がなされている。慢性毒性値が≦0.01mg/lである場合、速やかに分解する物質は慢性1の区分に分類される。十進法による毒性区分の帯域が、このカテゴリーより上の慢性毒性区分用として受け入れられている。慢性毒性値が0.01mg/lから0.1mg/lである物質は慢性毒性区分の慢性2に、0.1mg/lから1.0mg/lである物質は慢性毒性区分の慢性3に分類され、1.0mg/l以上の物質では実質的に毒性がないとみなされる。速やかに分解しない物質、または急速分解性についての情報がない場合は、次の2つの慢性区分が用いられる: 慢性毒性値が≦0.1mg/lである場合は慢性1、慢性毒性値が0.1mg/lから1.0mg/lである場合は慢性2とする。

A9.3.3.2.3 特定の分野では慢性毒性データは急性毒性データよりも一般的ではないため、慢性毒性データが十分に存在しないときは、分類のスキームにおいては、慢性毒性の可能性は、急性毒性、分解性の無さ及び/または、潜在的ないしは実際の生物蓄積性を適切に組み合わせることによって判断される。しかし、十分な慢性毒性データが存在する場合は、急性毒性と分解性及び/または生物蓄積性との組み合わせに基づく分類よりも、慢性毒性データを優先的に利用すべきである。このことから、以下に述べる一般的なアプローチを採用すべきである。

(a) 3 つのすべての栄養段階について十分な慢性毒性データが得られる場合は、適切な長期間(慢性)有害性区分の決定に直接このデータを利用できる。

(b) 1 つまたは 2 つの栄養段階について十分な慢性毒性データが得られる場合は、他の栄養段階につ

いて急性毒性データが得られるどうかを検証するべきである。慢性毒性データのある栄養段階について潜在的な分類がなされ、それが急性毒性データを用いてなされた他の栄養段階について潜在的な分類と比較される。 終的な分類は も厳しい結果に従って実施されるべきである。

(c) 慢性毒性データを用いて慢性区分を解除あるいは格下げするには、使用された NOEC(または同

等の ECx)が、急性毒性データと分解性及び/または生物蓄積性との組み合わせに基づくすべての分類群について、慢性毒性区分から除外し、あるいは格下げするのに適切であることを証明しなければならない。これは多くの場合、急性毒性で も感受性が高いとされた種に対する長期NOEC を用いて達成される。このため、分類が魚の急性 LC50に基づいている場合は、一般的に、無脊椎動物の毒性試験から得た長期 NOEC を使って、この区分を解除あるいは格下げすることはできない。この場合、NOEC は通常、同一種の魚あるいは同等かより大きな感受性をもった魚の長期試験から導出される必要がある。同様に、複数の分類群について急性毒性を用いて分類された場合、それぞれの分類群から得た NOEC が必要となる。慢性 4 に分類された物質の場合は、それぞれの分類群について、NOEC または同等の ECx が 1mg/l より大きいかもしくは物質の水溶解度を上回るという十分な証拠が提供されるべきである。

A9.3.3.2.4 藻類/Lemna を用いる試験は、分類の解除あるいは格下げに用いてはならない。なぜなら (a) 藻類およびウキクサを用いた試験は長期試験ではない (b) 一般的に慢性毒性と急性毒性の比が小さい、および (c) エンドポイントが他の生物における急性のエンドポイントよりも一貫性がある

からである。 ただし、単一の藻類/水生植物試験で認められた急性毒性(L(E)C50)のみを用いて分類された場合で、

他の藻類を用いた一連の試験からこの分類群での慢性毒性(NOEC)が、より厳しくない分類区分に相当するか、もしくは 1mg/l を超えるという証拠が得られている場合には、これらのデータを分類区分の解除もしくは格下げの検討に用いてもよい。現時点では、水生植物に対する標準化された慢性毒性試験法がまだ開発されていないため、このアプローチを水生植物に適用することはできない。

A9.3.3.3 ばく露方式

急性および慢性の両方の試験、および淡水と塩水の両方の媒体に、4 種類のばく露条件が採用されている。すなわち、止水、止水-交換(半止水)、再循環、および流水である。どの種類の試験を採用するかの選択は、被験物質の性質、試験期間、試験生物種、および規制所管官庁による要求項目による。

A9.3.3.4 藻類試験用の培地

藻類を用いる試験は、栄養添加培地中で実施されるが、ある種の一般的成分、すなわち EDTA またはその他のキレート剤の使用について注意を払う必要がある。有機化合物の毒性を試験する場合、微量のEDTA等のキレート剤が培地中の複合微量成分として必要である。これを加えないと、藻類の生長は著しく阻害され、試験の有用性が損なわれる。しかしキレート剤は、金属被験物質の見かけの毒性を低下させること

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がある。したがって金属化合物の場合には、高濃度のキレート剤を加えた試験結果、または鉄に対して化学量論的に過剰なキレート剤を加えた試験結果を厳密に評価しなければならない。フリーのキレート剤、特に EDTA のような強力なキレート剤は重金属の毒性を著しく低下させるかもしれない。しかしながら、培地に鉄が不足している場合には、藻類の生長は鉄で制限されることになり、したがって、鉄および EDTAのない、あるいは減少させた試験の結果は注意して扱わなければならない。

A9.3.3.5 QSAR の利用

分類を目的とし、なおかつ実験データが無い場合には、非電解性、非親電子性、また非反応性の物質であるならば、魚類、ミジンコ、および藻類に対する急性毒性を予測するのに、QSAR に頼ることが可能である(QSAR の利用に関する A9.6 節参照)。有機リン化合物等の物質の場合には問題が残る。これらは、体内レセプターと相互作用をし、または細胞内タンパク質とスルフヒドリル結合を形成できる官能基等、特殊なメカニズムにより作用する。基本的な麻酔メカニズムで作用する化学品については、信頼できるQSAR が導かれている。こうした化学品とは、たとえば炭化水素、アルコール、ケトン、およびある種の脂肪族塩素化炭化水素など、低反応性の非電解質であり、これらはその生物学的作用をその分配係数の関数として生じる。有機化学品ならば何でも、麻酔作用を生じることができる。しかし、化学品が電解質であったり、または麻酔以外のメカニズムが導かれる特殊な官能基を含んでいるならば、分配係数のみによる毒性の算定をすると、毒性を著しく過小評価することになろう。親化合物の急性水生毒性に関するQSAR は、毒性のある代謝物または分解物が急性試験の期間よりもずっと後になって生成する場合には、これら代謝物または分解物の作用を予測するのには利用できない。 A9.3.4 証拠の重み

A9.3.4.1 分類の基本的な基盤として 高品質のデータを用いるべきである。一次のデータ源に基づいて分類するのが望ましい。試験条件が明瞭かつ完全に表現されていることが不可欠である。

A9.3.4.2 1つの分類群について複数の試験結果が入手されたならば、どれが も高感度であり高品質であるかの決定をせねばならない。GLP 試験の代わりに非 GLP でもより高感度の所見の得られている試験を採用することについては、ケースバイケースで判断しなければならない。標準的でない、または非 GLPの指針に従って実施された試験から得られた結果が強毒性を示唆している場合には、その結果を分類に使用できるべきであるが、こうした試験が、無視できる毒性を示した場合には、より注意深い検討が必要となろう。試験が困難な物質から得られる結果は、見かけ上、真の毒性より弱い毒性を示すこともあれば、強い毒性を示すこともある。こうしたケースでの分類には専門家の判断が必要であろう。

A9.3.4.3 同一の分類群について複数の受け入れられる試験結果が入手された場合、一般に、 も高感度の結果(L(E)C50値または NOEC 値が 低値の結果)を分類に採用する。しかし、これはケースバイケースで扱わなければならない。同一生物種についてより大きなデータセット(4 個以上の数)が入手されたときは、毒性値の幾何平均値をその生物種を代表する毒性値として用いてもよい。平均値を推定する際、分類群が同一でも異なった種の試験や、または異なったライフステージで行われた試験、あるいは条件または試験期間が異なる試験を組み合わせることは望ましくない。

A9.3.5 試験困難な物質

A9.3.5.1 妥当な水生毒性試験は、ガイドラインで勧告されている試験条件下において被験物質が水媒体中で溶解することを必要とする。さらに、試験期間を通じて、生物学的に利用できるばく露濃度が維持されなければならない。ある種の物質は水系での試験が困難であり、そうした物質の試験を支援するための指針が作成されている(DoE 1996; ECETOC 1996; US EPA 1996)。OECD ガイダンス文書は試験困難な物質および混合物の水生毒性試験に関するよい情報源である。

A9.3.5.2 それにもかかわらず、今日において 良と考えられている方法論には従っていないが、分類基準に適用するのに適した情報を得ることのできる試験方法論を用いたと思われる多くの試験データが存在している。そうしたデータを解釈するには特別の手引きが必要であるが、 終的にはデータの妥当性判定に専門家の判断を用いなければならない。こうした試験困難な物質とは、溶解度が低い、揮発性である、または光変換、加水分解、酸化、あるいは生物学的分解等のプロセスにより速やかな分解を受ける物質である。藻類を試験する場合、着色物質は細胞成長に必要な光を弱めて、試験のエンドポイントに干渉することもある。同様に、溶解度以上の濁った分散状態で試験された物質は、誤った毒性の測定を起こすことがあろう。水相に被験物質を加える場合、粒子状物質または金属等の固体では問題が生じることがある。石油の蒸留分画も添加時に問題を生じることがあり、また L(E)C50値を決定するための適切な濃度を設定する際に解釈上困難な問題を生じる。「試験困難な物質および混合物の水生毒性試験に関する指針」原案は、試験上困難を生じる可能性の高い多くのタイプの物質について、より一般的な特性を説明している。

(a) 安定性:被験物質の濃度が設定濃度の 80%より低くなると予測されるときは、試験を有効とするた

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めには、被験物質を液交換するようなばく露方式が求められる。半止水または流水条件が望ましい。このため藻類の試験については、標準的ガイドラインが一般に止水条件で実施されるので、特有の問題が生じる。甲殻類および魚類では別のばく露方式も可能であるが、国際的に了承されたガイドラインに記載されている止水条件での試験が実施されることが多い。これらの試験において、あるレベルの分解、その他の関連因子も許容しなければならず、毒性濃度の計算には適切な考慮を払わねばならない。こうしたことの取扱いについてのアプローチを A9.3.5.6 に示す。分解が起こる場合には、試験で記録された毒性に対する分解生成物の毒性の影響も考慮することが重要である。そのデータを分類に使用できるかどうかについては、専門家の判断が必要であろう。

(b) 分解:化合物が試験条件下で壊れる、または分解する場合は、既知の、あるいは想定される分解生

成物の考察も含めて、分類のための毒性計算に専門家の判断が必要である。親物質およびすべての

有毒分解物の濃度測定が望ましい。分解物に比較的毒性がないことが予測されるならば、親物質の

濃度を維持するため、試験液を交換するばく露方式が望ましい。

(c) 飽和:単一成分の物質に関しては、溶解度以下の濃度範囲で測定された毒性反応のみから分類すべ

きであり、溶解度を超える物質負荷に基づくべきでない。水への溶解度を超えた濃度において毒性

を示すデータが入手されることがしばしばあり、こうしたデータは妥当でないと考えられることが

多いが、何らかの解釈も可能である。これらの問題は一般に、溶解度の低い物質の試験にあてはま

り、こうしたデータをどう解釈するかについての手引きは A9.3.5.7 に記載する(「試験困難な物質

および混合物の水生毒性試験に関する手引き」も参照のこと)。

(d) 試験媒体の変動:試験困難な物質が確実に溶解するよう特別な手段が必要であろう。試験媒体を変

えると見かけの毒性が増加または減少し、これによって被験物質の分類レベルも変わる可能性があ

るので、このような手段は、試験媒体を著しく変更しないようなものとするべきである。

(e) 複合物質:本分類スキームの対象となる物質の多くは、現実的には混合物であるが、この場合ばく

露濃度の測定が困難であり、また測定が不可能な場合もある。石油蒸留画分、ポリマー、不純物を

多く含む物質等は、毒性濃度の測定が困難であり、検証も不可能なので、特有の問題が生じる。典

型的な試験手順はしばしば「水可溶性画分(WSF)」または「水和画分(WAF)」の生成に依存し

ており、データは添加率で報告されている。こうしたデータを分類基準に用いてもよかろう。

A9.3.5.3 有機化合物の分類では、試験濃度を安定にし、分析して測定してあることが望ましい。濃度が

測定されている方が望ましいが、ある状況において設定濃度だけが妥当なデータとして入手されている場

合は、設定濃度に基づいて分類する場合もある。物質が実質的に分解し、または水相から消失する可能性

がある場合は、データ解釈には注意が必要であり、もし妥当かつ可能であるならば、試験中の毒物の消失

分を考慮して分類すべきである。その他に、金属が特有の問題を提起するが、これについては別に述べる。

表 A9.3.1 に、試験困難物質のいくつかの性質、およびその分類との関連性についてまとめた。

A9.3.5.4 ほとんどの試験困難な状況において、実際の試験濃度は、設定上の、または期待される試験濃

度より低くなる傾向がある。試験困難な物質の急性毒性値(L(E)C50)が 1mg/l より低いと見積もられた

場合、急性1(および適合する場合には慢性1)の分類が保証されたと確信してよい。しかし、急性毒性

推定値が 1mg/l を超える場合には、その毒性推定値は毒性を過小に示している傾向がある。そのような状

況で、試験困難な物質での試験結果を分類に用いることができるかを決定するには、専門家の判断が必要

である。急性毒性の推定値が 1mg/l より大きく、かつ試験濃度が測定されていない場合で、試験の困難さ

の性格が実際の試験濃度に大きく影響していると考えられる場合には、相当の注意を払ってその試験を分

類に用いるべきである。

A9.3.5.5 以下の各項では、こうした解釈上の問題について詳しい手引きを示している。解釈を行うにあ

たっては、これはあくまでも手引きであり、厳密かつ固定的な法則を適用できないことを念頭に置くべき

である。試験の困難さの性質の多くは、試験にその妥当性を判定するに十分な情報があるか、また分類基

準を適用するのに用いられるように毒性レベルを決定できるかどうか、その両方の判定に専門家の判断が

必ず必要であることを意味している。

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A9.3.5.6 不安定な物質

A9.3.5.6.1 試験手順は、被験物質が試験媒体中で不安定であることの影響を 小限に抑えるよう適用するのが理想であるが、現実には、ある種の試験では、試験期間を通じて濃度を維持することはほとんど不可能なことである。一般にそのような不安定さの原因は、酸化、加水分解、光分解および生分解である。光分解や生分解は比較的コントロールが容易であるが、多くの既存の試験法ではこうしたコントロールがなされていないことがしばしばである。それにもかかわらず、ある種の試験、特に魚類を用いた急性および慢性毒性試験では、不安定による損失を 小限に抑えるようばく露方式が選べるようになっており、またこのことは試験データの妥当性を決定する際に考慮されるべきである。

A9.3.5.6.2 試験中のばく露レベルの決定に不安定さが1つの要因となっている場合、データの解釈に不可欠な前提条件は、試験期間を通じて適切な複数の時点で測定されたばく露濃度があることである。少なくとも試験開始時と終了時に濃度測定の分析値が得られていないならば、正当な解釈ができず、その試験は分類目的には妥当でないと考えるべきである。分析データが入手された場合には、以下のようないくつかの実用規則が解釈上の手引きとして考えられる。

(a) 試験開始時および終了時の測定値がある場合(ミジンコ急性試験および藻類急性試験では標準の要件)、分類の目的では、L(E)C50値を開始時および終了時の各濃度の幾何平均に基づいて計算してよい。試験終了時の濃度が分析上の検出限界より低い場合、濃度は検出限界の半分の値であると考える。

(b) 試験媒体交換期間の開始時と終了時の測定値がある場合(半止水条件での試験で入手される)、

更新期間ごとの幾何平均を計算し、そのデータから全ばく露期間にわたる平均ばく露量を算出すべきである。

(c) 毒性が分解生成物に帰属でき、その生成物の濃度が既知である場合、分類のための L(E)C50は、

分解生成物濃度の幾何平均値に基づいて計算してから、親物質に逆算してもよい。

(d) 同様の原則が慢性毒性試験での測定値にも適用できよう。

A9.3.5.7 難溶性の物質

A9.3.5.7.1 難溶性の物質は、一般に水に対する溶解度が 1mg/l 未満の物質であるとされているが、これらの物質は試験媒体に難溶であることが多く、予測される低い濃度では、しばしば溶解濃度は測定困難であることが示される。多くの物質では試験媒体中の真の溶解度は知られず、純水中で検出限界以下であるとして記録されることが多い。にもかかわらず、そうした物質でも毒性を示すことがあり、毒性が認められなかった場合には、その結果が分類のために妥当であるとみなせるかの判断がなされなければならない。判断は慎重な側に寄せるべきで、有害性を過小評価することがあってはならない。

A9.3.5.7.2 理想的には、適切な溶解技術を採用し、水に対する溶解度の範囲内で濃度を正確に測定した試験を採用すべきである。そのような試験データが入手できれば、他のデータより優先して用いるべきである。しかし、以前のデータを考慮する場合などは特に、毒性レベルが水に対する溶解度より上で記録されている物質や、溶解度が分析方法の検出限界より下で記録されている場合等が普通に見られる。したがって、この両者の状況では、測定されたデータから実際のばく露濃度を検証することはできない。分類するのに、そのようなデータしか入手できない場合には、一般的な手引きとして以下のような実用的な規則が考えられる。

(a) 急性毒性が水に対する溶解度より上の濃度で記録されている場合、分類目的での L(E)C50は水に対する溶解度の測定値以下であると考えてよい。その場合、慢性1および/または急性1の各区分を適用すべきであると思われる。この決定をする際、溶けなかった過剰の物質が試験生物体に物理的な影響を及ぼした可能性に十分注意を払うべきである。そのことが観察された影響の原因であると思われた場合には、その試験は分類のためには妥当でないとみなすべきである。

(b) 水に対する溶解度より高い値のレベルでの急性毒性の記録がない場合、分類のための L(E)C50は水に対する溶解度測定値より大きいとみなしてよい。その場合、慢性4を指定すべきかどうかについて検討すべきである。その物質は急性毒性を示さないという判定をする際には、 大の溶解濃度を達成するのに用いた手段について十分な配慮がなされるべきである。その手段が適切であるとみなせない場合には、その試験は分類目的には妥当でないと考えるべきである。

(c) 水に対する溶解度がその分析法の検出限界より低く、かつ急性毒性が記録されている場合には、分類のための L(E)C50は分析の検出限界より小さいとみなしてよい。毒性が記録されていない場合には、分類のための L(E)C50は水に対する溶解度より大きいとみなしてよい。上述の品質判定基準には十分な考慮を払うべきである。

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(d) 慢性毒性データが入手された場合には、同じ一般則を適用すべきである。原則として、水に対す

る溶解度で、または 1mg/l より上の濃度で、影響が認められないデータのみを考慮する必要があ

る。この場合にも、濃度測定の考察によってこうしたデータの妥当性を確認できないならば、

高溶解濃度の達成に用いた手段が適切なものであるか検討しなければならない。

A9.3.5.8 濃度低下に関与するその他の要因

その他にも多くの要因が、濃度低下に関与している可能性があり、正しい試験の設計により回避できる

要因もあるが、こうした要因が関与したデータを解釈しなければならない場合がしばしばある。

(a) 沈殿:これはさまざまな理由によって、試験中に生じることがある。見かけ上粒子が見えなくと

も、物質が実際には溶解しておらず、試験中に凝集して沈殿する、というのが一般的な説明であ

る。この場合、分類のための L(E)C50 または NOEC は試験終了時の濃度に基づくと考えてよい。

同様に、媒体との反応により沈殿が生じることもある。このことについては、上述の不安定さの

ところで考察した。

(b) 吸着:これはたとえば log Kow値の大きい物質等、吸着性の高い物質で起こる。これが起こると

きは濃度低下が通常速やかであり、ばく露は試験終了時の濃度で もよく記述できる。

(c) 生物蓄積:物質が試験生物体内に蓄積することで濃度低下が起こることがある。水に対する溶解

度が低く、それに関連して log Kowが高い場合には特に重要であろう。分類のための L(E)C50ま

たは NOEC は、試験の開始時濃度および終了時濃度の幾何平均値から計算してもよいであろう。

A9.3.5.9 試験媒体の変動

A9.3.5.9.1 強酸および強塩基は pH を変化させるので、有毒であるように思われるかもしれない。しか

し一般に、水系での pH 変化は試験媒体の緩衝システムによって阻止されるのが普通である。塩について

のデータが得られていないならば、その塩は一般に陽イオンまたは陰イオンと同じ様に、すなわち も厳

しい分類がなされたイオンと同じに、分類される。作用濃度がイオン種のうち 1 種類だけに関係している

ならば、その塩の分類では、作用濃度に分子量の比(MWsalt/MWion)を掛けて補正することで、分子量の

差を考慮に加えるべきである。

A9.3.5.9.2 ポリマーは一般に水系では利用性はない。分散性ポリマーその他の高分子量物質は、試験系

を攪乱して酸素取り込みを妨害し、機械的または二次的な影響を生じる。これらの物質のデータを検討す

る際には、このような要因を考慮する必要がある。しかし、ポリマーの多くは複合物質のように挙動し、

原体ポリマーから浸出するかなり分子量の低い画分を有する。これについては、以下に考察する。 A9.3.5.10 複合物質

A9.3.5.10.1 複合物質は、しばしば同族の系列である一定範囲の化学構造で特徴づけられるが、水に対す

る溶解度、その他の物理化学的性質は広範囲にわたる。水に添加すると、溶解した部分と溶解していない

部分の間で平衡に達するが、これは物質の負荷量によって決定される。この理由により、このような複合

物質は通常 WSF または WAF として試験され、L(E)C50は添加濃度または設定濃度をもとに記録される。

溶解部分はそれ自体が各成分の複雑な混合物なので、分析上に補助的に用いるデータは入手できないこと

が多い。この毒性パラメータは時に致死添加濃度に関連した LL50で表される。WSF または WAF から得

られるこの添加レベルは、直接分類基準に用いてもよい。

A9.3.5.10.2 ポリマーは特別な種類の複合物質の代表であり、ポリマーの種類および溶解/分散挙動につい

ての考察が必要である。ポリマーは、変化せずそのままの形で溶解することもあれば(真の溶解度は粒子

サイズに関係している)、分散することや、または低分子量画分で構成される部分が溶液となることもあ

る。 後のケースでは、ポリマーの試験は、低分子量物質が原体ポリマーから浸出する可能性、およびこ

の浸出物が毒性かどうかの試験となる。したがって、ポリマー添加量がそれによって生じる浸出物の特性

を も適切に決定し、これによって毒性はこの添加量に関連づけられる点で、複合混合物の場合と同じよ

うに考えることができる。

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表 A9.3.1 試験困難な物質の分類

特性 困難さの内容 分類のための妥当性 水に対する溶解度が低い

求められるばく露濃度の達成/維持。 ばく露濃度の分析。

見かけ上の溶解度より上の濃度で毒性反応が認められている場合には、影響が化学的な毒性によるものか、または物理的影響によるものかを確認するのに専門家の判断が求められる。影響は認められない場合には、完全な飽和溶解度が達成されていることを示す必要がある。

低濃度で毒性 求められるばく露濃度の達成/維持。ばく露濃度の分析。

毒性値が 1mg/l 未満である場合にこれに分類される

揮発性 ばく露濃度の維持 および測定。

信頼のおける濃度測定をもとに分類すること。

光分解性 ばく露濃度の維持。 分解生成物の毒性。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。主要な分解生成物の毒性を判定すること。

加水分解性で不安定

ばく露濃度の維持。分解生成物の毒性。分解半減期を試験で採用しているばく露方式と比較すること。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。また主要な分解生成物の毒性を取りあげる必要性あり。

酸化性 ばく露濃度の達成、維持および測定。化学構造の変化した物質、または分解生成物の毒性。分解半減期を試験で採用しているばく露方式と比較すること。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。また主要な分解生成物の毒性を取りあげる必要性あり。

腐食 /変換を受ける (金属 /金属化合物について)

ばく露濃度の達成、維持および測定。 水相からの分配の半減期と試験で採用しているばく露方式の比較。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。また主要な分解生成物の毒性を取りあげる必要性あり。

生分解性 ばく露濃度の維持。分解生成物の毒性。分解の半減期と試験で採用しているばく露方式の比較。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。また主要な分解生成物の毒性を取りあげる必要性あり。

吸着性 ばく露濃度の維持。ばく露濃度の分析。被験物質の利用可能性の減少による毒性の低下。

分類は利用性のある物質の測定濃度をもとに行うこと。

キレート化 媒体中のキレート化画分およびキレート化していない部分の区別。

分類は生物学的利用性のある物質の生長阻害をもとに行うこと。

着色 光の減衰(藻類では問題) 分類では、毒性作用を、光量の減衰による生長阻害と区別しなければならない。

疎水性 ばく露濃度を一定に維持すること。

分類では測定濃度を用いること。

イオン化 ばく露濃度の維持。分解生成物の毒性。分解半減期と試験に用いたばく露方式の比較。

分類には専門家の判断が必要であり、測定濃度をもとに分類すること。また主要な分解生成物の毒性を取りあげる必要性あり。

多成分物質 代表的な試験バッチの調製。 複合混合物と同一として考慮すべきである。

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A9.3.6 データの質の解釈 A9.3.6.1 標準化

水生生物を用いた毒性試験の結果に影響を及ぼす要因は多い。たとえば、試験水の性質、実験の設計、

被験物質の化学的性質、および試験生物種の生物学的性質等がある。したがって、水生毒性試験を実施す

る際には標準化された試験手順を採用して、こうした非本質的な変動の影響を減らすことが重要である。

試験を標準化する、またこれらの標準を国際的に調和させる目的は、試験の変動性を減少させ、試験結果

の正確性、再現性および一貫性を改善することである。

A9.3.6.2 データの序列

A9.3.6.2.1 分類は、高品質の一次データに基づくべきである。OECD テストガイドラインまたはそれと

同等のもの、および優良試験所実施基準(GLP)に従ったデータが も望ましい。標準的な試験生物種を

用いて実施された国際的に調和された試験法から得られるデータの方が望ましいが、広く承認されている

国際的または国内の試験方法またはそれと同等の方法、たとえば ISO または ASTM で規定された方法で

実施された試験の結果もまた使用してもよい。承認されたガイドラインに従っているようでも、GLP への

対応に欠けている試験から得られたデータも、適切な GLP データが無い場合には使用してよい。

A9.3.6.2.2 Pedersen ら (1995) はデータ品質を得点付けするシステムを提案しているが、これは例えば

US-EPA の AQUIRE データベースに使用されているような、その他多くの現用システムと互換性がある。

データの品質についての考察は Mensink ら (1995)も参照のこと。Pedersen らが報告しているデータ品

質得点付けシステムは信頼性ランキングスキームを含んでいるが、これは本調和スキームに従って分類す

る際に用いるモデルとなり得る。Pedersen の述べている 初の三段階のデータは、優先データに関する

ものである。

A9.3.6.2.3 本調和スキームのもとでの分類のためのデータは、一次情報源から得られているべきである。

しかし、多くの国家や規制所管官庁は、世界的に調和されたスキームにより分類を実施するので、分類で

は国家所管官庁および専門家パネルのレビューを採用する余地を持たせるべきである。ただしこのレビュ

ーは一次データ源にもとづいている必要がある。こうしたレビューには、証拠の重みおよびなされる分類

決定のために、十分に詳述された試験条件の要約を含むべきである。たとえば一次データの入手が可能な

GESAMP 等の、実績の認められたグループによって作成されたレビューを用いることもできよう。

A9.3.6.2.4 実験に基づいた試験データが無い場合には、水生毒性に関する定量的構造活性相関(QSAR)

を用いてもよい。試験データが有効である場合には、常に QSAR より優先される。

A9.4 分解性

A9.4.1 序

A9.4.1.1 分解性は、物質の環境に対する潜在的有害性を決定する、重要な本質的特性の1つである。非

分解性物質は環境中に残留し、結果として生物相に対する長期間な有害作用の可能性を有している。反対

に、分解性の物質は、下水、汚水処理施設、または環境中で除去されるであろう。

物質の分類は主に物質の本来の性質に基づいて行われる。しかし分解の程度は、分子本来の抵抗性だけ

でなく、物質を受け入れる環境コンパートメントの実際の条件、たとえば酸化還元電位、pH、適切な微生

物の存在、物質の濃度、および他の基質の存在と濃度に依存する。したがって、水生有害性を分類する観

点から分解性について解釈するには、その物質本来の特性と環境中で優先する状態とを比較考慮して、長

期間の有害影響の可能性に関する結論を導く、詳細な判定基準が必要である。この節の目的は、有機物質

の分解性に関するデータを解釈するための手引きを提示することである。この手引きは、水生環境におけ

る分解に関する上述の見地の分析に基づいている。この手引きをもとに、既存の分解性データを物質の分

類目的に使用するための、詳細な判定スキームが提案されている。本手引きに含まれる分解性データのタ

イプは、易生分解性データ、水中、底質中および土壌中での物質変換に関するシミュレーションデータ、

BOD5/COD データ、ならびに水生環境における急速分解性を評価する技術である。さらに、嫌気的分解性、

本質的生分解性、下水処理施設シミュレーション試験データ、加水分解や光分解等の非生物的物質変換デ

ータ、揮発等の除去プロセス、また 後には野外研究やモニタリング調査から得られたデータについても

考察している。

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A9.4.1.2 分解という用語は 4.1 章に、有機分子がより小さい分子に、 終的には二酸化炭素、水および塩類に分解すること、と定義されている。無機化合物および金属については、有機化合物に適用される分解性の概念は、その意味が限られるか、または意味をもたない。むしろ物質は、通常の環境プロセスで変換されて、毒性分子種の生物学的利用性を増加させることもあれば、低下させることもある。したがってこの節では、有機物質および有機金属のみを扱う。水相からの環境中への分配については A9.7 節で述べる。

A9.4.1.3 物質の分解性に関するデータは、標準化された試験によって、またはその他の研究から入手されるし、分子構造から推定できることもある。こうした分解性データを分類の目的で解釈するには、試験データの詳しい評価が必要とされることが多い。手引きについてはこの節に示し、さらに詳しいことは、利用できる方法について(付属資料 A9.I)、および水生環境での分解に影響する要因について(付属資料A9.II)説明している2つの付属資料に見出すことができる。

A9.4.2 分解性データの解釈

A9.4.2.1 急速分解性

物質の水生有害性の分類は通常、それらの物質の環境特性に関する既存データをもとに行われる。分類を促進することを主な目的として試験データが提供されることはまれにしかない。広範囲に及ぶデータが揃っていても、分類基準に必ずしも直接適合するわけではないことがほとんどである。結果的に、既存の試験データを水生有害性の分類と関係付けて解釈することに関する手引きが必要とされる。調和された判定基準にもとづいて、分解データを解釈するための手引きが、下記のように水生環境における「急速分解性」という表現によりあらわされる 3 種類のデータについて作成された(A9.1.8, A9.1.9, A9.1.2.3.1 からA9.2.3.4 ならびに 4.1 章パラグラフ 4.1.2.11.3 における定義を参照)。

A9.4.2.2 易生分解性

A9.4.2.2.1 易生分解性については、OECD テストガイドライン No.301 (OECD, 1992)に定義されている。標準的な OECD の易生分解性試験または同様な試験での易生分解性とされるレベルよりも高いレベルで分解する有機化合物はすべて易生分解性であり、したがって急速分解性でもあるとみなされるべきである。しかし文献にある試験データの多くは、その試験が易生分解性試験の要件を満たしていることを証明するために評価されるべきすべての条件を、特定しているとは限らない。したがって、データを分類の目的で使用する前に、その有意性に関して専門家による判断が必要とされる。しかし、被験物質の易生分解性について結論づける前に、少なくとも下記のパラメータについて考慮すべきである。

A9.4.2.2.2 被験物質の濃度

OECD の易生分解性試験では比較的高い被験物質濃度が用いられている(2-100mg/l)。しかし多くの物質は、このように高い試験濃度では植種源に対して毒性となり、より低い非毒性濃度条件では速やかに分解するのに、この試験では分解性が低くなることがある。微生物を用いる毒性試験(例えば OECD テストガイドライン 209 活性汚泥呼吸阻害試験、ISO 9509 硝化阻害試験、または ISO 11348 発光バクテリア阻害試験)で被験物質の毒性を実証してもよい。ある物質について、阻害が易分解性でないことの理由となっていると思われる場合には、可能なら被験物質について、より低い無毒性濃度を採用した試験の結果を採用するべきである。環境的に現実に近い微生物相と被験物質を現実的な非毒性低濃度で用いた、河川水分解試験ができるなら一般に望ましいとされるが、上に述べたような低濃度試験の結果を、ケースバイケースで、急速分解性の分類基準に関して考慮することもできよう。

A9.4.2.2.3 試験期間(時間ウィンドウ)

調和された判定基準(4.1.2.11.3 参照)には、易生分解性試験すべてについて、10 日間以内に易生分解性とされるレベルを達成するという一般的要件が含まれている。これは、MITI I 試験(OECD テストガイドライン 301C)以外の OECD 易生分解性試験(OECD テストガイドライン 301C)に 10 日間の時間ウィンドウが適用されるということと一致していない。クローズドボトル試験(OECD テストガイドライン 301D)では、10 日後に測定されなかった時には、かわりに 14 日間の時間ウィンドウを採用してもよい。さらに、生分解性試験に関して限られた情報しか入手できないことが多い。したがって、実用的なアプローチとして、10 日間の試験で情報が得られない場合には、28 日後に達成された分解率(%)を易生分解性評価に直接採用することもある。ただし、このことは既存の試験データ、および 10 日間のウィンドウが適用されない試験で得られたデータに対してのみ、受け入れられるべきである。

十分な根拠がある場合は、複合的で多成分な物質については 10 日間の時間ウィンドウ条件は免除され、28 日以内の易生分解性試験が適用される。このような物質の成分は、その も高純度の商用の試料でも、異なる鎖の長さ、枝分かれの数や位置もしくは立体異性体を含んでいる。それぞれの個別成分に対して試

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験を実施するのはコストがかさみ、実用的でない可能性がある。複合的で多成分な物質に対して試験を実施し、個々の構造体について連続的な生分解が起きると予想される場合は、試験結果の解釈に 10 日間の時間ウィンドウを適用すべきではない。しかしながら、個別の物質に対する生分解性試験が全体の生分解性(すなわち、すべての成分についての分解性)に関する価値ある情報を提供するものかどうか、あるいはその代わりに、複合的で多成分な物質の構成物質の中から慎重に選択された個別の成分の分解性の調査が必要となるかどうかについては、個別に評価されるべきである。

A9.4.2.3 BOD5/COD

5 日間生化学的酸素要求量(BOD5)に関する情報は、他に分解性に関する測定データが得られていない場合にのみ、分類の目的で使用されよう。このように易生分解性試験や、水生環境中での分解性に関するシミュレーション試験から得られるデータの方が優先される。BOD5試験は伝統的な生分解性試験であり、現在では易生分解性試験によって、とって替わられている。したがって、BOD5 試験は今日、物質の易生分解性を評価するために実施するべきではない。しかし、他に分解性データが入手できない場合には、古い試験データが用いられることもある。化学構造がわかっている物質については理論的酸素要求量(ThOD)を計算でき、この数値の方を化学的酸素要求量(COD)の代わりに用いるべきである。

A9.4.2.4 その他説得力ある科学的証拠

A9.4.2.4.1 水生環境での急速分解性は、4.1 章 4.1.2.11.3(a)および(b)で参照される以外のデータによって証明されることもある。そのデータは、生分解性および/または非生分解性のデータでありうる。一次分解に関するデータは、分解生成物が水生環境に対して有害であると分類されない、すなわちこれらが分類基準を満たさないことを、証明できる場合にのみ使用できる。

A9.4.2.4.2 4.1 章 4.1.2.11.3 の判定基準(c)を満たすには、その物質が水生環境において 28 日以内 70%より高いレベルで分解する必要がある。ほとんどの水生環境では物質濃度が低いことが多いので合理的なことであるが、一次の反応速度を推定すると、分解速度は 28 日間の間、比較的一定になる。これは、ほとんどの水生環境では物質の濃度が低いことを考えれば合理的である。したがって、分解に関する要件は、平均の分解速度定数 k>-(ln 0.3 – ln 1)/28=0.043/day -1 で満たされる。これは分解の半減期 t1/2<ln 2/0.043=16 日に相当する。

A9.4.2.4.3 さらに、分解プロセスは温度に依存するため、環境中での分解を推定する際には、このパラメータも考慮するべきである。環境の面から見て現実に即した温度を採用した試験から得られたデータを評価に用いるべきである。さまざまな温度で実施された試験から得られたデータを比較する必要がある場合、伝統的な Q10 アプローチを用いてもよい。すなわち、温度が 10℃低下する毎に分解速度を半分にするのである。

A9.4.2.4.4 データがこの判定基準を満たしているかの評価は、ケースバイケースで、専門家の判断で行うべきである。水生環境における急速分解性を証明するのに用いられる可能性のある多様なタイプのデータを解釈するための手引きを下記に示す。一般に、水中での生分解シミュレーション試験から得られたデータだけが直接適用できると考えられている。しかし、他の環境コンパートメントから得られたシミュレーション試験データも同様に考慮してもよいが、そのようなデータは一般に、使用する前により多くの科学的な判断が必要となる。

A9.4.2.4.5 水中シミュレーション試験

水中シミュレーション試験は実験室内で実施される試験であるが、環境条件をシミュレートし、自然サンプルを植種原として用いる。水中シミュレーション試験の結果は、河川での現実に近い環境条件をシミュレートしている場合、すなわち以下のような場合には直接、分類のために採用してよい。

(a) 物質濃度が一般的な水生環境に対して現実的である(数μg/l の範囲にあることが多い)、

(b) 関連した水生環境からの植種原を用いている、

(c) 植種原の濃度が現実的である(1ml あたり生菌数 103-106個)、

(d) 温度が現実的である(例えば、5℃-25℃)、および

(e) 究極の分解まで測定されている(すなわち、無機化度、または生分解経路全体での個々の分解度の測定)。

こうした条件下で 28 日間に少なくとも 70%分解される物質、すなわち半減期が 16 日間より短い物質

は急速分解性であると考えられる。

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A9.4.2.4.6 野外調査

実験室でのシミュレーション試験に匹敵するものは、野外調査、あるいはメソコスムでの実験である。

そのような研究では、環境中または環境閉鎖系における化学品の運命または影響が調査されることもある。

こうした実験から得られた運命データが、急速分解性の可能性を評価するのに用いられることもある。し

かしそれは、究極分解することが実証できる必要があるため、困難なことが多い。このことは、非分解性

中間体は生じないことを示す物質収支を作成し、他のプロセス、たとえば底質への吸着や水生環境からの

揮発によって、水系システムから除去される分を考慮すれば証拠付けできるかもしれない。

A9.4.2.4.7 モニタリングデータ

モニタリングデータは、水生環境からの汚染物の除去を示すかもしれない。しかし、こうしたデータを

分類の目的で使用することは非常に難しい。使用する前に、以下の観点で検討するべきである。

(a) この除去は分解の結果なのか、あるいは、希釈、コンパートメント間の分配(吸着、揮発)

等、のプロセスの結果であるのか? (b) 非分解性中間体が生成することはないか?

究極分解の結果である除去が、急速分解性の判断基準を満たすことを証明できる場合のみ、こうしたデ

ータを分類の目的で使用することを考慮すべきである。一般に、モニタリングデータは、水生環境中での

難分解性または急速分解性を証明する裏付け証拠としてのみ用いるべきである。

A9.4.2.4.8 本質的生分解性試験

本質的生分解性に関する試験(OECD テストガイドライン 302)で 70%以上の分解をする物質は、究

極生分解性の可能性がある。しかし、こうした試験では 適条件を採用しているので、本質的に生分解性

のある物質でも、環境中で急速分解性があるとは推論できない。本質的生分解性試験で 適条件を使用す

れば、微生物の馴化が誘発され、自然環境に比べて生分解性が向上する。したがって一般に、陽性結果が

得られても、環境中での急速分解性の証拠と解釈すべきでない 2。

A9.4.2.4.9 下水処理施設シミュレーション試験

下水処理施設(STP)内の条件をシミュレートする試験(例えば OECD テストガイドライン 303)か

ら得られた結果は、水生環境中での分解を評価するのには使用できない。その主な理由は、STP における

微生物相は環境中の生物相とは著しく異なっていること、基質組成にかなりの違いがあること、および廃

水中に存在する速やかに無機化される有機物が共代謝によって被験物質の分解を促進すること、である。

A9.4.2.4.10 土壌および底質中の分解データ

非吸着性の物質(すなわち非親油性物質)は、程度に多少差はあるものの、土壌中と表層水中とで同様

の分解度が見られると主張されてきた。親油性物質では、吸着による部分的な不動化のために、水中より

土壌中の方が一般に分解度が低いと予想される。このため、土壌中シミュレーション試験で、ある物質が

急速分解性であることが認められた場合、水生環境でも急速分解性である可能性がきわめて高い。したが

―――――――――――――― 2 慢性4に関する OECD 判定基準にそった分解性の解釈について、環境有害性分類に関する EU の作業班が検討している

が、それは本質的生分解性試験によるある種のデータを、分類基準を満たしていても、ケースバイケースで分類しないとい

う根拠に使用できるかどうかということである。

関連した本質的生分解性試験には Zahn Wellen 試験(OECD TG 302 B)と MITI II 試験(OECD TG 302 C)がある。使

用条件は以下のとおりである。

(a) 事前にばく露した(適応した)微生物を用いてはならない。

(b) それぞれの試験において、適応時間は限られるべきであり、試験の指標は無機化であり、合格レベルおよびそれに

到達する時間はそれぞれ以下のようである。

(i) MITI II 合格レベル>60%(14 日以内)

(ii) Zahn Wellen 試験>70%(7日以内)

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って、土壌中での急速分解性が実験的に測定されることは、以下の場合には、表層水中での急速分解性の十分な証拠となると提案されている。

(a) 土壌微生物の事前のばく露(事前の馴化)を行わなかった、

(b) 試験した物質の濃度は環境的に現実に即したものである。

(c) その物質は 28 日間以内に半減期 16 日未満(分解速度定数>0.043 day-1に相当)で究極分解に至る。

底質中における好気的条件下での分解に関するデータについても、同様な論拠が有効であると考えられている。 A9.4.2.4.11 嫌気的分解性データ

嫌気的分解に関するデータは、ある物質を急速分解性であるとみなすべきかを決定するのには使用できない。一般に水生環境は、その中に水生有害性分類に採用されているような水生生物種が生活している、好気的コンパートメントであるとみなされているからである。

A9.4.2.4.12 加水分解

加水分解に関するデータ(例:OECD テストガイドライン 111)は、pH4-pH9 の範囲内で測定された半減期 t1/2の 高値が 16 日より短い場合にのみ、分類において考慮できよう。しかし、加水分解は究極分解ではなく、様々な分解中間生成物が形成され、その中には分解が遅いものもあろう。生成された加水分解生成物が、水生環境に有害であるとする分類基準を満たさないと満足に証明できる場合にのみ、加水分解試験のデータを考慮できる。

ある物質が急速に加水分解されるならば(例えば t1/2<2,3 日)、このプロセスは生分解性試験で測定される分解の一部となる。加水分解は生分解における物質変換の初期プロセスでありうる。

A9.4.2.4.13 光化学的分解

光化学的分解に関する情報(例えば OECD, 1997)を分類の目的で使用するのは難しい。水生環境での実際の光化学的分解度は、局所条件(例えば水深、懸濁固体、濁度)に依存し、分解生成物の有害性は通常わからない。光化学的分解をもとに徹底した評価のための十分な情報が得られることは、おそらく極めて稀である。

A9.4.2.4.14 分解の推定

A9.4.2.4.14.1 加水分解の半減期を概算で予測するために、ある種の QSAR が開発されているが、これは実験データが全く入手できない場合にのみ考慮されるべきである。しかし、加水分解は究極分解を考慮していないので(この節の「加水分解」参照)、加水分解の半減期は、細心の注意を払ってのみ、分類に関して使用できる。さらに、これまでに考案された QSAR はその適用性にはやや限界があり、限られた数の化合物群についてしか加水分解ポテンシャルを予測できない。たとえば、HYDROWIN(バージョン 1.67、Syracuse Research Corporation)という QSAR プログラムは、分子構造が(正確に)決定された既存 EU物質の 1/5 未満の物質しか加水分解ポテンシャルを推測できない。(Niemelä 2000)

A9.4.2.4.14.2 一般に、有機物質の生分解度を推定する定量的評価法(QSAR)はまだ、急速分解性を予測するには精度が不十分である。しかし、こうした方法により得られた結果は、ある物質が急速分解性でないことを予測するのに使ってもよい。たとえば、生分解確率プログラム(例:BIOWIN バージョン 3.67、Syracuse Research Corporation)で、線形あるいは非線形の方法で推定された確率が 0.5 未満である場合、その物質は急速分解性ではないとみなされるべきである(OECD, 1994; Pedersen ら、1995 およびLangenberg ら、1996)。さらに、たとえば構造が類似している物質の分解データが入手された場合は、専門家の判断に加えてその他の(Q)SAR 法を用いることもできるが、その判断は細心の注意を払って行うべきである。一般に、有用な分解データが入手できない場合に、デフォルトの分類を適用するよりも、物質が急速分解性ではないという QSAR による予測の方が、分類のためにはよりよい考証であるとみなされている。

A9.4.2.4.15 揮発

化学品が水生環境から揮発によって除去されることもある。揮発の本質的なポテンシャルは、その物質のヘンリー定数(H)により決定される。水生環境からの揮発は、問題となっている特定の水系の環境条件、たとえば水深、(風速および水流量に依存する)ガス交換係数、および水本体の層構造などに高度に依存している。揮発は水相からの物質除去の一例でしかないので、物質の水生有害性の分類に関する分解

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評価に、ヘンリー定数を使用することはできない。しかし、たとえば環境温度で気体であるような物質については、この観点でさらに検討されてもよい(Pedersen ら、1995 も参照のこと)。

A9.4.2.5 分解データが入手できない場合

分解性に関する有用なデータが入手されていない場合 - 実験による測定データか、推定データかに

かかわらず - その物質は急速分解性ではないとみなすべきである。

A9.4.3 解釈についての一般的な問題

A9.4.3.1 複雑な物質

化学品を水生環境に対して有害であると分類するための、調和された判定基準は単一の物質に焦点を合

わせている。ある種の本質的な複合物質は、多成分物質である。これらの典型的なものは自然起源である

が、時には考慮に加える必要がある。鉱物油または植物材料から生成または抽出された物質がその例であ

る。こうした複雑な物質は、規制の場合には通常、単一物質とみなされる。ほとんどの場合、これらは炭

素鎖の長さまたは置換度が一定範囲内にある類似物質群として定義されている。そのような場合、分解性

が大きく異なることは予想されず、分解度は、その複合物質についての諸試験で確定される。ただ1つ例

外は分解に境界線が見出される場合で、なぜならこの場合、個々の物質のあるものは急速に分解し、他の

ものは急速には分解しないからである。その場合、複合物質に含まれる個々の成分の分解性をより詳しく

評価する必要がある。それほどの急速分解性をもたない成分がその複合物質の相当部分を占める場合(例

えば 20%以上、または有害成分の場合はより低い含量)には、その物質は急速分解性ではないとみなされ

るべきである。

A9.4.3.2 物質の適用性

A9.4.3.2.1 環境中で有機物質の分解が起こるのは、水系コンパートメント中か、または土壌あるいは底

質の水相中においてである。もちろん加水分解には水の存在が必要である。微生物の活動性は、水の存在

に依存する。さらに、生分解には微生物が物質と直接接触する必要がある。したがって、微生物を取り巻

いている水相中での物質の溶解は、バクテリアや菌類および基質と接触する、 も直接的な方法である。

A9.4.3.2.2 物質の分解性を調べるための現行の標準的な方法は、易溶解性の被験物質のために開発され

ている。しかし、有機物質の多くは水に僅かしか溶解しない。標準的な試験では被験物質濃度として 2-100mg/l が要求されるので、水への溶解度が低い物質については十分な利用性が満たされていないことが

ある。連続的に混合を続ける、またはばく露時間を延長する試験、あるいは水に対する溶解度よりも低い

物質濃度が採用されている特殊な設計の試験法ならば、僅かにしか溶解しない化合物にも適用できるかも

しれない。

A9.4.3.3 28 日より短い試験期間

A9.4.3.3.1 基準(例えば MITI, 1992)に規定された 28 日間以前に終了した試験で分解が報告されるこ

ともある。もちろん、こうしたデータも、易生分解性とされるレベル以上の分解が達成されているならば、

直接、適用できる。分解レベルがそれより低い場合には、その結果は注意して解釈しなければならない。

1つの可能性は、試験期間が短すぎたということ、そうして 28 日の生分解性試験でなら、おそらく化学

品の構造が分解されていたであろう、ということである。短期間で本質的な分解が起こるならば、そうし

た状況は BOD5/COD≧0.5 という判定基準、または 10 日間の時間ウィンドウ内での分解に関する要件と

比較できよう。そのような場合には、以下のいずれかの条件が合えば、物質は易分解性(したがって、急

速分解性)であるとみなしてもよい。

(a) 究極生分解性が 5 日間で 50%を超える、または

(b) この期間中の究極分解の速度定数が 0.1 day-1(半減期 7 日間に相当)より大きい。

A9.4.3.3.2 こうした判定基準は、試験が 28 日以前に、かつ易生分解性とされるレベルに達する前に終了

されても、速やかな無機化が起こったのだということを確認するために提案されている。易生分解性とさ

れる規定されたレベルに従っていない試験データの解釈は、細心の注意を払ってなさなければならない。

易生分解性とされるレベルより低い生分解性となったのは、その物質の部分分解によるものであり、完全

な無機化によるものでないのかどうかを検討することが不可欠である。観察された生分解性について、部

分分解が可能性のある解釈であるなら、その物質は易生分解性であるとみなすべきではない。

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A9.4.3.4 一次生分解

一部の試験においては、例えば被験物質に特異的な、または被験物質を含む物質集団に特異的な化学分析によって分解を追跡するような、親化合物の消失(すなわち、一次分解)のみを測定する。一次生分解性に関するデータは、生じた分解生成物が水生環境に対して有害であるとする分類基準に適合しないことが十分に証明できる場合にのみ、急速分解性の証拠に使用してよい。

A9.4.3.5 スクリーニング試験での矛盾する結果

A9.4.3.5.1 同一の物質に関して多くの分解データが入手されている状況では、結果が矛盾する可能性が生じる。一般に、ある物質について 1 種類の適切な生分解性試験を何回か実施して得られた結果が矛盾していた場合、「証拠の重みアプローチ」による解釈ができる。これはすなわち、ある物質に対して易生分解性試験で陽性(すなわち、易生分解性とされるレベルよりも高い分解性)と陰性の両方の結果が得られたならば、その物質の易生分解性を判定するのに、品質が も高く、記録証拠が も適切なデータを使用すべきであることを意味している。しかし、たとえ陰性結果も得られていたとしても、科学的品質が良好で試験条件がよく記録されている、すなわち事前にばく露されていない(非馴化の)植種原を使用することも含めて、ガイドラインの判定基準が充足されているならば、易生分解性試験における陽性結果の方が有意であると考えることもできる。様々なスクリーニング方法のどれ1つとして、すべてのタイプの物質を試験するのには適してない。ある特定の物質に適していない試験手順を用いて得られた結果は、採用を判定する前に、注意して評価すべきである。

A9.4.3.5.2 このように、スクリーニング試験から得られた矛盾した生分解性データを説明する、以下のような多くの要因がある。

(a) 植種原

(b) 被験物質の毒性

(c) 試験条件

(d) 被験物質の溶解度

(e) 被験物質の揮発

A9.4.3.5.3 被験物質の分解に植種原がどの程度適しているかは、能力のある分解者の存在と量に依存する。植種原がその被験物質にばく露されたことのある環境から採取されている場合、その植種原が馴化しているかもしれず、そのことは、ばく露されていない環境から採取した植種原より分解能力が大きいことで証拠立てられる。植種原は可能な限り非ばく露環境から採取しなければならないが、物質が普遍的・大量に使用されていて、広くまたはある程度継続的に放出されている場合には、非ばく露環境からの採取は困難であるか、または不可能である。結果が矛盾しているならば、その微生物集団の馴化度の違いが原因となっているかどうかを明らかにするために、植種原の起源を確認すべきである。

A9.4.3.5.4 先に述べたように、多くの物質は、易生分解性試験での比較的高い試験濃度で、植種原に対して毒性または阻害作用を示す。特に修正 MITI (I)試験(OECD テストガイドライン 301C)およびマノメータ呼吸測定試験(OECD テストガイドライン 301F)では高い濃度(100mg/l)が規定されている。 も低い試験濃度はクローズドボトル試験(OECD テストガイドライン 301D)で規定されており、ここでは 2-10mg/l が用いられる。毒性作用の影響の可能性については、易生分解性試験に毒性対照を加えること、または試験濃度を微生物に対する毒性試験データと比較することで評価できよう。たとえば呼吸阻害試験(OECD テストガイドライン 209)、硝化阻害試験(ISO 9509)、またはその他の微生物毒性試験が使用できなければ、生物発光阻害試験(ISO 11348)がある。矛盾する結果が見出された場合、その原因が被験物質の毒性であるかもしれない。その物質が環境的に現実性のある濃度で阻害しないならば、スクリーニング試験で測定した分解の 高値を分類の根拠として用いてよい。その場合にシミュレーション試験データが入手されているならば、こうしたデータを考慮することは特に重要である。なぜなら、そうしたデータならば、その物質が阻害を示さない低濃度が採用されているため、環境的に現実性のある条件下での、その物質の生分解半減期をより高い信頼性をもって示すことができるからである。

A9.4.3.5.5 被験物質の溶解度が試験で用いる濃度より低い場合、このパラメータは測定された実際の分解性に対して限定要因であるかもしれない。そのような場合、被験物質の濃度が も低い試験、すなわち、クローズドボトル 試験(OECD テストガイドライン 301D)であることが多いが、それの結果が優先されるべきである。一般に、溶解度が低い物質の生分解性を試験するのには、DOC ダイアウェイ試験(OECD テストガイドライン 301A)および修正 OECDスクリーニング 試験(OECD テストガイドライン 301E)は適切でない(例えば OECD テストガイドライン 301)。

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A9.4.3.5.6 揮発性物質は、クローズドボトル試験(OECD テストガイドライン 301D)、MITI(I)試験(OECD テストガイドライン 301C)およびマノメータ呼吸測定試験(OECD テストガイドライン 301F)など、閉鎖系の試験系でのみ試験すべきである。その他の試験法による結果の評価には注意が必要であり、かつ、そうした結果は、たとえば物質収支推定値により、被験物質の移動が揮発によるものでないことを実証できる場合にのみ考慮すべきである。

A9.4.3.6 シミュレーション試験データにおける変動

ある種の優先度の高い化学品については、多くのシミュレーション試験データが入手できよう。そうしたデータは、土壌、底質または表層水のような環境媒体中における一連の半減期を与えていることがしばしばある。同一の物質で実施されたシミュレーション試験で求められた半減期が異なっていることが観察された場合には、試験条件の違いが反映されていると考えられるが、そうした条件はいずれも環境的に適切なものである。分類には、証拠の重みアプローチを採用し、かつ採用した試験法がどの程度環境条件に関して現実的でありかつ関連性があるかを考慮して、そのような研究から得られた一連の半減期測定値のうち、大きい数値の方から適切な半減期を選択すべきである。一般に、水生環境中における急速分解性の評価に関しては、河川水のシミュレーション試験データの方が、水中の底質または土壌中でのシミュレーション試験データよりも望ましいとされる。

A9.4.4 判定スキーム

水生環境における急速分解性に関する判定、および水生環境に対して有害な化学品の分類を促進するための一般的な手引きとして、下記の判定スキームが使用できよう。

以下の項目のうち、少なくとも1つを満たさなければ、物質は急速分解性ではないと考えられる。

(a) その物質が、28 日間の易生分解性試験において、易生分解性であると証明される。入手された試験データから評価できる場合には、生分解開始から 10 日以内に試験の易生分解性とされるレベル(DOC 除去率 70%または理論的酸素要求量 60%)が達成される。それが可能でなければ、この易生分解性とされるレベルをできれば 14 日間の時間ウィンドウ以内、または試験終了後に評価すべきである。

(b) 物質が表層水中のシミュレーション試験 3で、半減期<16 日(28 日以内に 70%より高い分解に相当する)で究極分解されることが証明される。

(c) 物質が水生環境中において半減期<16 日(28 日以内に 70%より高い分解に相当する)で初期段階の分解を受け(生分解ないし非生物分解によって)、かつ分解生成物は水生環境に対して有害であるという分類基準を充足しないことが証明できる。

上述のデータが入手できない場合、以下の判定基準のいずれかが立証されれば、急速分解性と認めてよい。

(d) 底質中または土壌中のシミュレーション試験 3で、物質が半減期<16 日(28 日以内に 70%より高い分解に相当する)で究極分解されることが証明できる。

(e) BOD5および COD データしか入手できない場合、BOD5/COD 比が 0.5 以上である。さらに半減期が 7 日間未満であれば、28 日間より短い期間で行う易生分解性試験にも同様な基準が適用される。

上述のどのタイプのデータも入手できないならば、その物質は急速分解性ではないとみなすべきである。この決定は、以下の判定基準のいずれかを満たすことで支持される。

(i) 本質的生分解性試験で、その物質が本質的に分解性でないと認められる。

(ii) 科学的に有意な QSAR、たとえば Biodegradation Probability Program、によって、その物質がゆっくり生分解されると予測され、急速分解性のスコアが(線形ないし非線形のモデルで)0.5 未満である。

(iii) 間接的証拠、たとえば構造的に類似した物質による知見から、その物質が急速分解性ではないと思われる。

(iv) 分解性に関するその他のデータが入手できない。

―――――――――――― 3 シミュレーション試験は、低濃度の化学品、現実的な温度さらに事前にその化学品にばく露されていない環境中の微生物群を採用するなど、現実の環境条件を反映していなくてはならない。

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A9.5 生物蓄積性

A9.5.1 序

A9.5.1.1 生物蓄積は、環境への潜在的有害性を決定する、物質本来の重要な特性の1つである。物質の生体内への生物蓄積それ自体は有害ではないが、生物濃縮および生物蓄積は、身体への負荷をもたらし、その結果、毒性影響が導かれたり、あるいは導かれなかったりする。化学物質の人の健康および環境への影響のための調和された統合有害性分類システム(OECD, 1998)では、「生物蓄積の可能性」という用語が与えられている。しかし生物濃縮と生物蓄積とは区別すべきである。ここでは、生物濃縮とは、水系でのばく露による生物体内での物質の取り込み、変換および排泄のネットと定義されているのに対し、生物蓄積はすべての経路(すなわち、空気、水、堆積物/土壌、および食物)のばく露を包含している。 後に、食物連鎖による生物濃縮(biomagnification)は、栄養連鎖が高位であるほど生物の体内濃度が高くなるような、食物連鎖による物質の蓄積および移動と定義されている(European Commission, 1996)。ほとんどの有機物質では、水系からの取り込み(生物濃縮)が、支配的な取り込み経路であると信じられている。また、調和された分類基準は、生物濃縮係数(またはオクタノール/水分配係数)を生物蓄積性の可能性の尺度として用いている。こうした理由により、今回の手引きは、生物濃縮性のみについて考察し、食物またはその他の経路による取り込みについては議論しない。

A9.5.1.2 物質の分類は、主にその本来の性質に基づいている。しかし生物濃縮の程度は、生物学的利用可能な程度、被験生物の生理学的状態、ばく露濃度の定常的維持、ばく露期間の長さ、被験生物の体内における代謝、および体内からの排泄等の要因によっても影響される。したがって化学品を分類する上で、生物濃縮性について解釈するには、物質本来の特性の評価と共に、生物濃縮係数(BCF)を測定した実験条件の評価も必要である。指針に基づいて、分類のために生物濃縮データまたは log Kowを適用するための判定スキームが開発されている。本節では有機化合物および有機金属を中心として論じる。金属の生物蓄積についても、A9.7 節で検討する。

A9.5.1.3 物質の生物濃縮性に関するデータは、標準的な試験から得られることもあれば、その分子構造から推定されることもある。分類を目的としたこれら生物濃縮性データの解釈には、試験データの詳細な評価がしばしば必要となる。この評価を容易にするために、2つの付属資料を加える。これらの付属資料は、採用できる試験方法について(附属書 9 付属資料 III)、および生物濃縮性に影響する要因について(附属書 9 付属資料 IV)述べる。 後に、生物濃縮性および Kow を測定するための標準的な実験方法のリスト(附属書 9 付属資料 V)および参考文献リスト(附属書 9 付属資料 VI)を添付する。

A9.5.2 生物濃縮性データの解釈

A9.5.2.1 物質の環境有害性分類は通常、その物質の環境特性に関する既存のデータに基づいている。分類を速やかに行うことを主な目的とした試験データは、稀にしか作成されない。広範な試験データが入手されることがしばしばあるが、それらは必ずしも分類判断基準に適合しない。したがって、有害性分類との関連で既存の試験データを解釈することについて手引きが必要になる。

A9.5.2.2 有機物質の生物濃縮性は、生物濃縮性実験によって実験的に測定できる。実験では、BCF は定常状態における水中濃度に対する生物体内濃度として測定されるか、または取り込み速度定数(k1)および排泄速度定数(k2)から推定される(OECD 305, 1996)。一般に、有機物質が生物濃縮する可能性は、主にその物質の親油性に関係している。親油性の尺度は n-オクタノール/水分配係数(Kow)であり、親油性の非イオン性有機物質において、生物体内で代謝または生物変換がわずかしか進行しない物質では、Kow

は生物濃縮係数と関連づけられている。したがって Kow値は、log BCF と log Kowの間の経験的な関係に基づいて、有機物質の生物濃縮の推定にしばしば用いられる。ほとんどの有機物質に対しては、Kow 算出のための推定方法が利用できる。このため、ある物質の生物濃縮性に関するデータは、(1) 実験的に測定する、(2) 実験的に測定された Kow値から推定する、または(3) 定量的構造活性相関(QSAR)を用いて導かれた Kow 値から推定する、ことによって求められる。こうしたデータの解釈に関する手引きについて、各化学品族の評価に関する手引きと共に以下に示すが、これには特別の注意が必要である。

A9.5.2.3 生物濃縮係数(BCF)

A9.5.2.3.1 生物濃縮係数は生物体内と、定常状態における周囲の媒体、この場合は水中との化学品の濃

度比(重量ベース)として定義される。したがって BCF は定常状態における濃度測定値として、実験的

に導くことができる。しかし BCF は取り込みと排泄の一次反応速度定数の比としても計算でき、この方

法でならば平衡状態を必要としない。

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A9.5.2.3.2 魚類での生物濃縮を実験的に測定する各種のテストガイドラインが作成され採用されているが、 も一般的に適用されているのは OECD テストガイドライン(OECD 305, 1996)である。

A9.5.2.3.3 実験から導かれた高品質の BCF 値は、分類目的には も望ましいとされ、その他の代替データ、たとえば Kow値等より優先される。

A9.5.2.3.4 高品質データとは、適用された試験法に関する有意性判定基準が満たされており、そしてそのことが記述されている、たとえばばく露濃度、酸素および温度に関する変数が一定に維持されていること、および定常状態に到達したことの記載がある、等として定義されている。的確な説明が記載され(例えば優良試験所規準(GLP)による)、有意性判定基準が満たされていると確認できるなら、その実験は高品質の試験であるとみなされる。さらに、水中および魚組織中の化学品とその代謝物を定量するために、適切な分析法を用いなくてはならない(詳細は付属資料 III 第 1 節参照)。

A9.5.2.3.5 低品質の、または品質が不明な BCF 値は、誤った、低すぎる値を与えるかもしれない。たとえば、魚および水中の被験物質の濃度測定値を適用しても、測定までのばく露時間が短すぎ、定常状態にまだ達してない場合がある(OECD 306(1996)平衡達成時間の推定について、を参照)。したがって、このようなデータは使用前に注意して評価し、代わりに Kowを採用することも検討すべきである。

A9.5.2.3.6 魚類についての BCF 値がない場合には、他の種の BCF 値に関する高品質データを用いてもよい(例えばムラサキイガイ、カキ、ホタテガイについて測定された BCF 値(ASTM E 1022-94))。微細藻類の BCF 報告値は注意して使用すべきである。

A9.5.2.3.7 たとえば log Kow値が 6 より大きいような、高度に親油性の物質では、実験的に求めた BCF値は log Kowが大きいほど低くなる傾向がある。このような非線形性の概念的な説明は、主として、膜の浸透速度の減少、または体内脂質の大きな分子に対する溶解性の低下と関連づけられている。このようにして、生物体内ではこれらの物質の生物学的利用可能性および取り込みの低下が起こるであろう。別の原因として、平衡に達しなかった、水相中の有機物に吸着したために生物学的利用可能性が低下した、および分析誤差等、実験技術上の要因が考えられる。このため、親油性が高い物質の BCF 値に関する実験データを評価する際は、親油性が低い方の物質より不確実性レベルがはるかに高いので、特に注意が必要である。

A9.5.2.3.8 異なった試験生物種における BCF

A9.5.2.3.8.1 分類に用いられる BCF 値は、全身についての測定に基づいている。すでに述べたように、分類に 適なデータとは、小型魚類を用いる OECD 305 試験法、またはこれと同等の国際的な方法によって導かれた BCF 値である。小型種では大型種よりも体重に対する鰓表面積の比が大きいため、大型種より小型種の方が早く定常状態に到達する。このため、BCF 報告値が定常状態における魚および水中の測定濃度のみをもとに決定されているときには、生物濃縮研究に用いられる生物(魚類)のサイズは、取り込み段階に要する時間との関係で非常に重要である。したがって、たとえばサケの成魚等、大型魚類を生物濃縮試験に使っているときには、取り込み期間が十分に長く、定常状態が達成されているかどうか、または動力学的な取り込み速度定数が正確に決定できるような一定の状態にあるかを評価すべきである。

A9.5.2.3.8.2 さらに、分類に既存データを用いる場合には、何か他の魚種または他の水生生物種(例えばアサリ)から、および魚のいろいろな臓器について、BCF 値が求められていることがある。そこで、こうしたデータを相互に、また判定基準と比較するための、何らかの共通の基盤または標準化が必要となるであろう。魚あるいは他の水生生物の体内脂質含量と、BCF 測定値の間には密接な関係があることが認められている。したがって、異なった魚種の間で BCF 値を比較する場合、または特定臓器についての BCF 値を全身の BCF 値に換算する場合、BCF 値を共通の脂質含量に対して表現することが一般的なアプローチである。もし例えば、文献中に全身の BCF 値または特定臓器の BCF が示されているならば、その魚類中または臓器の相対的な脂質含量(試験動物種の代表的な脂質含量に関する文献/テストガイドライン参照のこと)を用いて、脂質含量%に対する BCF 値を算出することが第一段階である。第二段階では、共通のデフォルト脂質含量を想定して、典型的な水生動物種(すなわち小型魚種)の全身の BCF を計算する。デフォルト値 5%は、OECD 305(1996)で採用されている小型魚種の平均脂質含量を代表していることから、この数値が も多く用いられている(Pedersen ら、1995)。

A9.5.2.3.8.3 一般に、この共通の脂質含量に対して表記された BCF の 高有効値を用いて、調和された分類基準の BCF 500 というカットオフ値と関連させて、湿体重量あたりの BCF 値を決定する。(4.1 章、表 4.1.1 を参照のこと)

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A9.5.2.3.9 放射性標識物質の使用

A9.5.2.3.9.1 放射性標識された被験物質を使用すれば、水および魚サンプルの分析が容易になる。しかし、特有の分析法を組み合わせて用いなければ、総放射能測定値は親化合物だけでなく、考えられる代謝生成物、および有機分子として魚組織中に取り込まれた、考えられる代謝をうけた炭素の存在を反映している可能性がある。したがって、放射性標識された被験物質を用いて決定された BCF 値は、通常、過大評価されている。

A9.5.2.3.9.2 放射性標識物質を用いる場合、分子の安定な部分が標識されることが も多いが、このことが BCF 測定値に代謝物の BCF が含まれる理由である。物質によっては、代謝物が も毒性が強く、生物濃縮性が も高いこともある。したがって、水生有害性(生物濃縮性も含めて)を解釈するには、親物質だけでなく、代謝物の測定も重要になることがある。

A9.5.2.3.9.3 放射性標識物質を用いる実験では、しばしば、魚の胆嚢に高い放射性標識濃度が見出される。これは、肝臓内での生物学的変換、およびその後の胆嚢中への代謝物の排泄によって起こると解釈されている(Comotto ら, 1979; Wakabayashi ら, 1987; Goodrich ら, 1991; Toshima ら, 1992)。魚が摂餌しないと、胆嚢内容物は腸内に排出されず、胆嚢内に高濃度の代謝物が蓄積されることがある。したがって、BCF 測定値に給餌方法が大きく影響することがある。文献には、放射性標識化合物を用いており、そして魚に給餌していない多くの試験が見られる。結果的に高濃度の放射性物質が胆嚢内に検出される。こうした試験では、ほとんどの例で生物濃縮が過大に推定されている。したがって、放射性標識化合物が用いた実験を評価する際は、給餌方式についても評価することが不可欠である。

A9.5.2.3.9.4 残留放射能の点から BCF が 1000 以上と記録されているならば、定常状態で魚組織中の合計残留放射能の 10%以上を占めている分解生成物を同定および定量することが、たとえば殺虫剤などについて、OECD テストガイドライン 305(1996)では強く勧告されている。代謝物の同定も定量も可能でないならば、生物濃縮性の評価は放射性標識 BCF 測定値にもとづいて行うべきである。生物蓄積性の高い物質(BCF≧500)について、親化合物についての BCF、および放射性測定値による BCF だけが入手された場合は、分類に関しては後者を採用すべきである。

A9.5.2.4 オクタノール/水分配係数(Kow)

A9.5.2.4.1 有機物質では、実験から求められた高品質の Kow 値、またはレビューにおいて評価され「推奨値」として指定された数値が、その他の Kow測定よりも望ましい。高品質の実験データが入手できない場合には、log Kowのための有効性評価済みの構造活性相関(QSAR)を分類プロセスに使用してもよい。こうした有効性評価済み QSAR は、その適用性がよく確かめられている化学品にのみ限定されているならば、合意済みの判定基準に対して変更することなく使用してよい。たとえば強酸や強塩基のような物質、溶出液と反応する物質や、界面活性作用のある物質では、QSAR により推定された Kow値、または n-オクタノールと水とに対する個別の溶解性をもとにした推定値が、分析による Kowの測定のかわりに与えられるべきである(EEC A.8., 1992; OECD 117, 1989)。解離性物質ではイオン化していない形態(遊離酸または遊離塩基)について、遊離酸については pK より低い、および遊離塩基については pK より高い pHの適切な緩衝液を用いてのみ、測定を行うべきである。

A9.5.2.4.2 Kowの実験的測定

Kow値を実験的に測定するには、たとえばフラスコ振騰法や HPLC 等、いくつかの異なった試験法が、標準のガイドラインに記載されている。たとえば OECD テストガイドライン 107 (1995), OECD テストガイドライン 117 (1989), EEC A.8 (1992), EPA-OTS (1982), EPA-FIFRA (1982), ASTM (1993)等がある。フラスコ振騰法は log Kowが-2 ~ 4 の範囲内になる場合に推奨される。フラスコ振騰法は、水および n-オクタノールに可溶な、本質的に純粋な物質にのみ適用される。水中溶解速度が遅い、高度に親油性の物質には、低速攪拌法を用いて得られたデータの方が、一般により信頼性が高い。さらに、フラスコ振騰法の実験では、微小滴の生成に伴う実験的な困難があるが、これは、オクタノールおよび被験物質が低速で攪拌された反応容器内で平衡に達する低速攪拌法によって、ある程度まで克服できる。低速攪拌法(作成中の OECD テストガイドライン 123)を用いることで、log Kowが 8.2 までの化合物の Kowを、正確かつ精密に測定できる。フラスコ振騰法と同様に、低速攪拌法は水および n-オクタノールに可溶な本質的に純粋な物質にのみ適用される。HPLC 法は分析カラムを用いる方法であり、log Kow値が 0 から 6 の範囲内となる場合に推奨される。HPLC 法の方がフラスコ振騰法に比べて、被験物質中の不純物の存在による影響を受けにくい。log Kowを測定する方法には他にジェネレータ・カラム法 (USEPA, 1985)がある。

実験的な Kowの測定は、たとえば極めて水溶性の高い物質や極めて親油性の物質および界面活性剤など、必ずしも可能というわけではないため、QSAR により導いた Kowを採用してもよい。

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A9.5.2.4.3 QSAR を用いた log Kowの決定

Kowの推定値が見出された場合には、それを推定した方法を考慮する必要がある。Kowの推定のために、数々の QSAR が考案され、また現在でも開発されている。実験的に導いたデータが入手できないならば、市販されている 4 種の PC プログラム(CLOGP, LOGKOW (KOWWIN), AUTOLOGP, SPARC)がリスク評価に多く用いられている。CLOGP, LOGKOW および AUTOLOGP は、置換基の寄与を加算に基づいているのに対し、SPARC はより基本的な化学構造のアルゴリズムを基盤としている。SPARC のみが一般的な方法で、無機化合物または有機金属化合物に採用できる。界面活性物質、錯体形成化合物および混合物の log Kow推定には、特別な方法が必要である。QSAR 推定法の有意性評価に関する US EPA/EC 合同プロジェクトでは CLOGP が推奨されている(US EPA/EC 1993)。Pedersen ら(1995) は、CLOGP および LOGKOW プログラムを、その信頼性、市販されていること、および使用上の簡便さの理由から、分類目的に推奨している。分類の目的には以下の推定法が推奨されている(表 A9.5.1)。

表 A9.5.1 Kow推定に推奨されている QSAR

モデル log Kow の範囲

使用できる物質

CLOGP log Kow<0 – log Kow>9a

このプログラムは、C, H, N, O, ハロゲン, P または S を含む有機化合物の log Kowを計算する。

LOGKOW (KOWWIN)

-4 <log Kow <8b

このプログラムは C, H, N, O, ハロゲン, Si, P, Se, Li, Na, Kまたは Hg を含む有機化合物の log Kowを計算する。界面活性物質(例:アルコールエトキシレート)、染料および解離物質にもこのプログラムで予測できるものもある。

AUTOLOGP log Kow>5 このプログラムは C, H, N, O, ハロゲン, P および S を含む有機化合物の log Kowを計算する。AUTOLOGP の適用性を拡張するために改良が行われている。

SPARC log Kow>5の物質では、KOWWINおよび CLOGPよりも優れた結果が得られる。

SPARC は観察データから得られた知識に由来する決定論的モデルというよりむしろ化学的な熱力学原理にもとづいたメカニズムモデルである。このため、SPARC は QSAR を用いる他のモデル(すなわち KOWWIN, CLOGP, AUTOLOGP)とは、トレーニング用の化学品セットについては log Kow 測定データが必要でないという点で異なっている。無機化合物や有機金属化合物に一般的な方法で適用できるのは、SPARCだけである。

a Niemelä は実験的に求められた log Kow値と推定値を比較する有意性評価研究を行い、log Kowの範囲が 0 以下から 9 以上までの多数の有機化合物の log Kow について、このプログラムが正確に予測することを確認した(n=501, r2=0.967) (TemaNord 1995: 581) b log Kow 推定値を実験値に対して分散プロットし、13058 物質について検討したところ(Syracuse Research Corporation, 1999)、LOGKOWは log Kowが-4から8の範囲にある化合物について有効であると評価されている。 A9.5.3 BCF および Kow値に関して特別な注意が必要な化学品クラス

A9.5.3.1 BCF の決定または測定を困難にする可能性のある特定の物理化学的性質がある。こうした物質には、その生物濃縮性が当該物質の他の物理化学的性質とは一貫しないようなものもある。たとえば立体障害や物理化学的なパラメータの記述を不適切にするもの、またはたとえば界面活性等のように log Kow

の測定と使用の両方を不適切にしてしまうようなものがある。

A9.5.3.2 試験困難な物質

A9.5.3.2.1 物質には、水系システムでの試験が困難なものもあり、こうした物質の試験を支援するために手引きが作成されている(DoE, 1996; ECETOC 1996; US EPA 1996; OECD, 2000)。試験困難な物質および混合物の水生毒性試験に関する OECD ガイダンス文書(OECD、2000)はまた生物濃縮試験の情報源として、またこれらの物質の試験から有意な結論が得られるようにするために必要なステップについても、適切な情報源である。試験困難な物質は、溶解性が低いか、揮発性であるか、または光変換や加水分解、酸化または生分解等のプロセスのために急速分解性をもつ。

A9.5.3.2.2 有機化合物の生物濃縮には、その物質が脂質に可溶であり、水中に存在し、そして魚の鰓を通過して移動可能であることが要件となる。したがって、こうした存在および移動可能性を変化させるような物質の性質は、予測値と比べて、物質の実際の生物濃縮を変化させる。たとえば、易生分解性の物質は、水環境中には短時間しか存在しない。同様に、揮発および加水分解は濃度を低下させ、また物質が生

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物濃縮に利用される時間を短縮させる。物質の実際のばく露濃度を低下させる可能性のあるさらに重要なパラメータは、一般に粒子状物質ないし表面への吸着である。生物体内で速やかに変換され、このために予測されるよりも低い BCF 値を導くことが示された物質もたくさんある。ミセルまたは凝集体を形成する物質は、単純な物理化学的特性から予測されるよりも生物濃縮の程度が低くなるであろう。分散剤を使用することによって形成されたミセル内に含まれている疎水性物質にも、このことがあてはまる。したがって、生物蓄積の試験に分散剤を用いることは望ましくない。

A9.5.3.2.3 一般に、試験困難な物質には、親物質に基づいた BCF および Kowの測定値が、生物濃縮性を決定するために不可欠である。さらに、求められた BCF 値の有意性評価には、被験物質濃度の正しい記録が不可欠である。

A9.5.3.3 溶解性の低い物質および複合物質

溶解性の低い物質には特別の注意が必要である。こうした物質の溶解性は検出限界より低いと記録されていることが多く、生物濃縮性を解釈する際に問題となる。こうした物質では、生物濃縮性は log Kowの実験による測定または log Kowの QSAR 推定に基づくべきである。

多成分物質が水に完全には溶解しない場合、混合物の成分を実際的に可能な限り同定し、その成分について入手された情報を用いて、生物濃縮性が決定できる可能性を検討するよう試みることが重要である。生物蓄積性のある成分がその複合物質のかなりの部分(例えば 20%以上、有害成分ではより低い含量)を占めるときには、その複合物質は生物蓄積性であるとみなされるべきである。

A9.5.3.4 分子量の大きい物質

ある分子量を超えると、物質が生物濃縮する可能性は減少する。これはおそらく、物質が鰓膜を通過する際の立体障害によるものと思われる。分子量のカットオフ限界として 700 が適用できるのではないか、と提案されている(例えば European Commission, 1996)。しかし、このカットオフ値は批判の対象になっており、間接的な水の影響の可能性がある物質を考慮から除外して、別のカットオフ値 1000 が提案されている(CSTEE, 1999)。一般に巨大分子については、その想定される代謝物または環境中での分解生成物の生物濃縮性を考慮すべきである。したがって、巨大分子量分子の生物濃縮性に関するデータは、評価に注意が必要であり、親化合物、および想定される代謝物ならびに環境中での分解生成物の両方について完全に有効であると考えられる場合にのみ、そのデータを用いるべきである。

A9.5.3.5 界面活性剤

A9.5.3.5.1 界面活性剤は、親油性部分( も多いのはアルキル鎖)と親水性部分(極性の頭部基)から構成されている。頭部基の電荷により、界面活性剤は陰イオン、陽イオン、非イオン、および両性の界面活性剤に細分化される。頭部基は多様であるため、界面活性剤は構造的に多様な群に属する物質であり、化学構造よりむしろ界面活性によって定義される。したがって、界面活性剤の生物蓄積性は、界面活性剤全体としてでなく、異なった小分類(陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、または両性)に関して考慮すべきである。界面活性物質はエマルジョンを形成することもあり、その場合には生物学的利用可能性を確かめることは困難である。ミセルが形成されると、外見上溶液となっていても、生物学的に利用可能な部分が変化する可能性があり、生物蓄積性の解釈上の問題が生じる。

A9.5.3.5.2 実験的に求めた生物濃縮係数

界面活性剤に対する BCF 測定値から、BCF はアルキル鎖が長いほど増加し、また頭部基のついている部位、ならびに他の構造的特徴に依存することが示されている。

A9.5.3.5.3 オクタノール/水分配係数(Kow)

界面活性剤のオクタノール/水分配係数は、エマルジョンが形成されるため、フラスコ振騰法や低速攪拌法では測定できない。さらに、界面活性剤分子は水相中で殆ど例外なくイオンとしてのみ存在するが、それに対して、オクタノール中に溶解するには対イオンとペアを作らねばならない。したがって、Kow を実験的に測定しても、イオン性界面活性剤の分配の特性を記述するわけではない(Tolls, 1998)。その一方で、陰イオン性および非イオン性界面活性物質は、親油性が高いほど生物濃縮性も高いことが示されている(Tolls, 1998)。Tolls(1998)は、ある界面活性剤については、LOGKOW を用いて推定した log Kow

値で生物蓄積性を表すことができるが、他の界面活性剤では、この log Kow推定値に Roberts(1989)の方法を用いて「補正」が必要であることを示した。これらの結果は、log Kow推定値と生物濃縮の関係についてのデータ品質は、関係している界面活性剤の種類や特定のタイプに依存することを示している。したがって、log Kowにもとづいた生物濃縮性の分類は注意して用いるべきである。

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A9.5.4 矛盾するデータおよびデータの欠如

A9.5.4.1 矛盾する BCF データ

同一の物質に対して多数の BCF データが入手された状況では、矛盾する結果が生じる可能性がある。一

般に、ある適切な生物濃縮性試験で何回か試験されて、同一物質について、適切な生物濃縮性試験で何回か

試験が行われ、矛盾する結果が得られた場合は「証拠の重みアプローチ」によって解釈すべきである。これ

はすなわち、ある物質について、500 以上と 500 未満の両方の BCF データが、実験による測定で得られて

いる場合には、 高の品質かつ記録資料が揃っているデータを、その物質の生物濃縮性判定に用いるべきで

あることを意味している。それでも差がある場合、たとえば異なった魚種について高品質の BCF 値が入手

されている場合には、一般には分類の根拠として有効な値のうち も高いものを用いるべきである。

同一生物種の同一ライフステージに関して、より大きなデータセット(4 件以上の数値)が入手された

場合には、その種を代表する BCF 値として、BCF 値の相乗平均を使用してもよい。

A9.5.4.2 矛盾する log Kowデータ

同一の物質に対して複数の log Kowデータが入手された状況では、矛盾する結果が生じる可能性がある。

ある物質に対して 4 以上と 4 未満の両方の log Kow値が得られたならば、その物質の生物濃縮性の決定に

は 高品質かつ記録が 適であるデータを採用すべきである。それでも違いがあるならば、一般に有効な

値のうち 高のものを優先すべきである。このような状況では、QSAR で推定された log Kow値を、ガイ

ダンスとして用いることもできよう。

A9.5.4.3 専門家の判断

BCF や log Kowの実験データも、log Kowの予測データも入手できないならば、水系環境中での生物濃縮

性は専門家の判断で評価されることもある。これは、その分子の構造を、生物濃縮または log Kowの実験

データまたは Kow予測値が入手できた別の物質の構造と比較することに基づくであろう。

A9.5.5 判定スキーム

A9.5.5.1 上述の考察と結論をもとに、物質が水生生物中に生物濃縮性があるかどうかの判定を容易にす

る、1つの判定スキームが考案された。

A9.5.5.2 分類目的のためには、高品質の実験による BCF 値が究極的に望ましいものである。低品質の、

または不確かな品質のBCF値は、たとえばばく露期間が短すぎて定常状態に達しなかったなどの理由で、

誤った、あるいは低すぎる値をあたえる可能性があるので、log Kowに関するデータが入手されれば、この

ような BCF データを使用すべきでない。魚類の BCF が入手できないならば、別の種(例えばイガイ)に

関する高品質の BCF データを採用してもよい。

A9.5.5.3 有機物質では、実験から導かれた高品質の Kow 値、あるいは排泄によって評価され「推奨値」

として指定された数値が望ましい。高品質の実験データが入手できないならば、log Kowとして、有意性評

価された構造活性相関(QSAR)を分類のために用いることもできる。こうした有意性評価された QSARは、その適用性が十分に判定されている化学品に限るなら、分類基準に関して修正することなく使用でき

よう。強酸、強塩基、金属錯体、および界面活性物質等の物質では、Kow の分析測定のかわりに、QSARによる Kowの推定値、または n-オクタノールならびに水に対する個々の溶解度に基づいた推定値を求め

るべきである。

A9.5.5.4 データが入手されたが、有意性評価がなされていないならば、専門家の判断を採用すべきであ

る。

A9.5.5.5 したがって、物質に水生生物における生物濃縮性があるかどうかは、以下のスキームに従って

判定できる。

(a) 有効/高品質な実験から得られた BCF 値 あり

(i) BCF≧500:その物質には生物濃縮の可能性がある

(ii) BCF<500:その物質には生物濃縮の可能性はない

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(b) 有効/高品質な実験から得られた BCF 値 なし

有効/高品質な実験から得られた log Kow値 あり

(i) log Kow ≧4:その物質には生物濃縮の可能性がある

(ii) log Kow<4:その物質には生物濃縮の可能性はない

(c) 有効/高品質な実験から得られた BCF 値 なし

有効/高品質な実験から得られた log Kow値 なし

log Kow値の推定に有意性の評価された QSAR を使用 使用可

(i) log Kow≧4:その物質には生物濃縮の可能性がある

(ii) log Kow<4:その物質には生物濃縮の可能性はない

A9.6 QSAR の使用

A9.6.1 経緯

A9.6.1.1 水生毒性分野における定量的構造活性相関(QSAR)は、チューリッヒの Overton(Lipnick, 1986)およびマールブルグの Meyer(Lipnick, 1989a)の研究にまで遡ることができる。彼らは、物質がオタマジャクシおよび小型魚類に麻酔作用を及ぼす効力が、オリーブオイルと水の間で測定した分配係数と直接比例していることを示した。Overton は 1901 年に著したモノグラフ”Studien über die Narkose(麻酔に関する研究)”で、このような相関性は、生物体内の何らかの分子的な部位において標準モル濃度またはモル容積で生じている毒性を反映していると主張した(Lipnick, 1991a)。さらに、取り込みが水からなのか気体吸入によるのかに関係なく、このことは多様な生物に対して同一濃度または容積に相当すると結論づけた。この相関性は麻酔学分野では Meyer-Overton 理論として知られるようになった。

A9.6.1.2 ポモナ大学の Corwin Hansch および共同研究者らは、n-オクタノール/水を標準的な分配システムとして使用することを提案し、そしてこの分配係数は化学構造から直接推定できる、加算的かつ構成的な性質であることを発見した。さらに、試験結果の統計解析を前提として、QSAR を導くために回帰分析が利用できることを見出した。このアプローチを用いて、これらの研究者らは 1972 年に、log (1/C) = A log Kow + Bの形をとった 137のQSARモデルを報告した。この場合Kowはn-オクタノール/水分配係数、C は非電解質かつ非反応性の単純な有機化合物が、動物の全身、臓器、細胞、場合によっては純粋な酵素に及ぼす影響に対する、標準的な生物反応を生じる化学品のモル濃度である。これらの公式のうち 5 つは5 種類の単純な一価アルコールの毒性を 5 種類の魚類と関連づけたもので、ほぼ同一の勾配および切片を有し、Könemann によって 1981 年に発見されたものと実質上、一致している。後者は Hansch の先行研究を知らなかったように思われる。Könemann らは、このような単純な非反応性かつ非電解性の物質はすべて、魚類を用いた急性毒性試験では麻酔薬のメカニズムで作用して、 小のまたはベースラインの毒性となることを示した(Lipnick, 1989b)。

A9.6.2 有害性の過小評価を起こす実験技術上の誤差

A9.6.2.1 それ以外の非電解性の物質は、こうした QSAR で予測されるよりも毒性が高いことはあるが、試験の技術的な誤差を除けば、毒性が低くなることはない。こうした試験の技術的な誤差としては、実験中に揮発しがちな炭化水素等の化合物、あるいは急性の試験期間では、水相(水槽中の試験溶液)中の濃度と、麻酔作用を起こす体内の疎水性部位との間に定常状態の平衡的な分配を達成するのに適していない、非常に親水性の高い化合物、などから得られたデータがある。このような単純な非反応性かつ非電解性の物質の log Kowと log C の QSAR プロットは、試験期間中にこうした平衡に達している限りは線形の関係を示す。この点を超えると、双線形の関係が観察され、 も毒性の高い物質は平衡が達成された log Kow

が 高となる物質である(Lipnick, 1995)。

A9.6.2.2 試験の際のもう1つの問題とは、水溶解性によるカットオフによって起こるものである。影響を生じるのに必要な毒性濃度が、その化合物の水溶解度より高いと、水に飽和していたとしても、何の影響も観察されないであろう。予測される毒性濃度が水溶解度に近い化合物もまた、試験期間が平衡的な分配が達成するのに十分でないときは、影響は見られないであろう。界面活性剤についても、臨界ミセル濃度より高い濃度で毒性が予測されるなら、同様なカットオフが観察される。こうした化合物は、個別に試験した場合にはこれらの条件下で毒性が認められないこともあるが、混合物の毒性に対する寄与はなお存在している。log Kow 値が同じ化合物でも、水に対する溶解性の差は、融点に関連する融合エンタルピーの違いを反映する。融点は、結晶格子の安定度を反映するものであり、分子間水素結合、コンホメーションの柔軟性の欠如、および対称性によって左右される。化合物は対称的であるほど、融点は高くなる(Lipnick, 1990)。

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A9.6.3 QSAR モデル化の課題

A9.6.3.1 適切な QSAR を選択するということは、そのモデルが、未試験の化学品の毒性または生物活性について、信頼できる予測値を与えるということを意味している。一般的に言えば、対象物質に構造が類似している化学品の厳密に定義されたセットから QSAR が導かれているのでなければ、化学構造の複雑さが増すほど信頼性は低下する。厳密に定義された化学品群から導かれた QSAR モデルは、医薬品の開発に一般的に採用されており、たとえば、新しいリード化合物が見つかっており、活性の 適化(および毒性の低下)をさせるため、僅かな構造の修正を行いたい場合に用いられる。全体的に、その目標は外挿よりむしろ内挿による推定を行うことである。

A9.6.3.2 たとえば、エタノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、および n-ノナノールについて、 ファットヘッドミノーを用いた 96 時間の LC50 試験データが揃っているならば、n-プロパノールおよびn-ペンタノールについて、このエンドポイントの毒性値を、ある程度の信頼度をもって予測できる。反対にメタノールでは、試験されたどの物質よりも炭素原子数が少なく、外挿となるので、予測の信頼性は劣ることになろう。実際、このような同族体グループにおける 初のメンバー物質の挙動は、一般的にも変則的であり、その系列の他のメンバー物質からのデータを用いて予測すべきではない。分岐型アルコールの毒性でさえ、問題とされるエンドポイントによっては、不合理な外挿になる。こうした外挿結果は、親化合物の性質に反して、特定のエンドポイントに対する毒性が代謝物の生成に関与する程度に応じて、さらに信頼性が低くなる。また、毒性が特定の受容体結合メカニズムに介在されている場合、化学構造がわずかに変化しただけで、劇的な作用が観察されることもある。

A9.6.3.3 こうした予測結果の有意性を究極的に支配するのは、ある特定の生物学的なエンドポイントについて QSAR を導き出すのに用いられた化合物群が、共通の分子機構によってどの程度まで作用しているか、である。多くの、そして恐らくほとんどの例で、QSAR はこうした機構モデルを示すことはなく、単に相関的なモデルを示すだけである。真に有意な機構モデルは、共通の分子機構により作用する、一連の化学品群から導かれるはずであり、問題となっている機構の一段階または複数段階に直接関連している 1個または複数のパラメータを用いた公式に適合するはずである。このようなパラメータまたは特性はより一般的には分子的ディスクリプタ-として知られている。また、こうした共通に使用される分子的ディスクリプタ-の多くは、直接の物理的な解釈がない場合もあることを留意しておくことも重要である。相関モデルについては、こうした限界を考えると、データの統計的適合性が機構モデルよりも劣るように思われる。機構は完全には把握されていなくてもよいが、このアプローチにおいて信頼性をもてるだけの十分な情報がわかっていることもある。相関モデルの場合、各モデルが定義される厳密さが増すほど、その予測の信頼性も増す。たとえばアクリレート等の求電子物質のカテゴリーを指定すれば、この範囲内では反応性の程度が同様であり、「新規」化学品について、log Kowパラメータのみにもとづいたモデルを用いて毒性の推定が可能である。

A9.6.3.4 一例として、水酸基と共役している二重結合または三重結合を含む一級および二級アルコール(すなわちアリルまたはプロパギルアルコール)は、対応する飽和化合物に関する QSAR に対して予測されるよりも毒性が高い。このような挙動は、至る所に存在する酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼによる代謝活性化によって、対応するα,β-不飽和アルデヒドおよびケトンに代謝され、これがミカエル型のアクセプター機構により求電子物質として作用するという求電子物質前駆体機構によるものとされている(Veith ら, 1989)。アルコールデヒドロゲナーゼ阻害物質が存在すると、これらの化合物は他のアルコール類と同様に挙動し、機構による仮説と一致して、過剰な毒性を示さない。

A9.6.3.5 こうした一連の類似化合物から外れると、状況は一気に、さらに複雑化する。たとえば、単純なベンゼン誘導体を考えてみる。クロロベンゼン類は一連の類似化合物と同様であるとみなしてよい。3種類のジクロロベンゼン異性体の毒性にはそれほど大きな違いがあるとは思われないため、これら異性体のうち1つに関する試験データをもとにしたクロロベンゼン類に関する QSAR は妥当であるように思われる。ベンゼン環に他の官能基が置換された場合はどうか? 脂肪族アルコールとは異なり、水酸基をベンゼン環に付加するとフェノールが生成されて、もはや中性ではなく、結果的に生じる負の電荷が共鳴により安定化することにより、イオン化性のある酸性化合物となる。この理由で、フェノールは真の麻酔薬として作用しない。フェノールに電子吸引性の置換基(例えば塩素原子)を付加すると、こうした化合物は酸化的リン酸化の脱共役剤として作用する化合物となる(例えば除草剤のジノセブ)。アルデヒド基を置換すると、こうした化合物は、リジンのε-アミノ基のような、アミノ基と反応してシッフ塩基付加物を生成するので、求電子機構により毒性が増加する。同様にベンジルクロライドは、求電子物質としてスルフヒドリル基と共有結合付加物を生成する。試験していない化合物の予測を試みる際には、これらの、ならびに他の多くの官能基の化学的反応性と、それらの間の相互作用について注意深く検討すべきであり、これらを化学文献から証拠揃えする努力を払わねばならない(Lipnick, 1991b)。

A9.6.3.6 予測を行うのに QSAR を用いるには限界があことから、まだ試験していない化合物自体について何らかの機構についての情報が入手されていない限り、試験の代替手段としてよりも、試験優先順位設定の手段として採用するのが 善である。実際、環境放出および環境ばく露が分かっていても予測が不可能であるということ自体が、試験を実施する、あるいは判定が必要な化学品クラスについて新しい QSAR

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を開発するきっかけとなるであろう。こうしたデータセットからの統計解析、たとえば回帰分析等によって、QSAR モデルを導くことができる。 も一般的に採用されている分子的指標である log Kowを、 初の企てとして試みてもよい。

A9.6.3.7 反対に、メカニズムに基づいた QSAR モデルの導出には、分子機構、およびどのようなパラメータがこうした作用を適切にモデル化できるか、の理解または作業仮説が必要である。これは、分子機構ではなく、生物学的/生理学的反応と関連づけられた、作用機序に関する仮説とは違うことを留意しておくことが重要である。

A9.6.4 水生環境有害性分類への QSAR の使用

A9.6.4.1 水生環境に関する分類の目的には、以下のような物質本来の特性が関係する。

(a) n-オクタノール/水分配係数 log Kow

(b) 生物濃縮係数 BCF

(c) 分解性-非生物的および生物的分解

(d) 魚類、ミジンコおよび藻類に対する急性水生毒性

(e) 魚類およびミジンコに対する長期毒性

A9.6.4.2 試験データが有効であり、QSAR は分類のためのデータの欠損を補うのに用いられるという前提で、常に試験データの方が QSAR による予測より優先される。利用できる QSAR の信頼性および適用範囲は多様であるので、これらエンドポイントそれぞれの予測にさまざまな制限が適用される。それにもかかわらず、試験された化合物が、ある QSAR モデルの予測のための有用性にある程度信頼できるような化学品のクラスまたは構造タイプ(上記参照)に属しているならば、この予測結果を実験データと比較してみる価値がある。これは、測定データ中の実験技術上の誤差(揮発、平衡に達するのに不十分な試験期間、水溶解度によるカットオフ)を検出するのに、このようなアプローチを用いることは珍しいことではないからである。実験技術上の誤差の多くは物質を実際の毒性より低く分類してしまう原因となる。

A9.6.4.3 2 種類以上の QSAR が適用できるか、またはそう思われる場合には、予測データを実測データと(上述のように)比較するのと同じように、さまざまなモデルの予測を比較することは有用である。それらのモデル間に相違がなければ、その結果は予測の有意性を高めることになる。もちろんこれは、すべてのモデルが類似した化合物のデータと統計的方法を用いて開発されたことも意味している。他方、予測値が全く違っていたならば、結果についてさらに検証する必要がある。用いたモデルのいずれも有効な予測値を与えなかった可能性も常にある。第一段階として、各予測モデルを導いた化学品の構造および特性を検証して、こうしたモデルは、予測が必要とされる構造および特性の両方に関して類似している化学品をもとに作成されているかどうかを判定しなければならない。あるデータセットに、そのモデルの導出に用いられた適切な類似物質が含まれていれば、モデルの予測値に対してその化合物のデータベース中の測定値を検証すべきである。結果がモデル全体に十分適合するのであれば、それが も信頼できるモデルであると思われる。また、そのような類似物質に関する試験データが含まれているモデルがないならば、問題の化学品を試験することが推奨される。

A9.6.4.4 米国 EPA は 近ウェブサイトに「HPV チャレンジプログラムにおける化学品カテゴリーの策定」というドラフト文書を提示し、「…米国 HPV リストにあるすべての化学品のスクリーニング情報データセット(SIDS)を自主的に編纂し…化学品の物理化学的性質、環境運命、および人と環境に対する影響の初期評価に必要な基礎的スクリーニングデータを[提供する]」ために、化学品区分を用いることを提案している(US EPA 1999)。このリストは「毒性物質管理法の 1990 年インベントリー更新規則(IUR)のために報告された約 2,800 種の HPV 化学品」からなっている。

A9.6.4.5 提案されている1つのアプローチは「…科学的に正当であるならば…密接な関連性のある化学品を、個々の化学品として試験するよりも、グループとして、または区分として考えることである。この区分によるアプローチでは、SIDS のエンドポイントごとにあらゆる化学品を試験する必要はない。」というものである。こうした限定的な試験が適正であると判断されるのは「… 終データセットは、理想的には区分に含まれる物質間の内挿「ここに強調を付言」により、まだ試験していないエンドポイントの評価を可能にするものでなければならない」ことが前提となっている。こうした区分を定義し、データを作成するプロセスが提案のなかで説明されている。

A9.6.4.6 検討されている第二の、それほどデータにたよらないアプローチ(US EPA, 2000a)は「…より詳しく特性化されている化学品(「類似物質」)に密接に関連した単一化学品に SAR 原則を適用する」ことである。提案されている第三のアプローチは、「…生態毒性値を作成する SAR にもとづくコンピュータプログラムである、ECOSAR(US EPA, 2000b)に用いられている[のと類似している]…個々の化学品[に対する]…類似物質によるアプローチと区分によるアプローチの組み合わせ…」を用いる方法である。

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この資料ではまた、米国 EPA 新規化学品プログラム内での SAR 使用の経緯、およびこうした SAR アプローチのためにどのようにデータを収集し解析するかについて詳述している。

A9.6.4.7 北欧閣僚会議は「環境有害性分類」と題する報告書を発行した(Pederson ら, 1995)。これはデータ収集および解釈に関する情報と共に、「水に対する溶解性および急性水生毒性の QSAR 推定」という題の節(5.2.8)も記載されている。この節では、log Kow も含めた物理化学的性質の推定についても論じている。分類目的のためには、先の OECD ガイドライン(OECD, 1995)に引用されているように、「少の急性水生毒性」予測のための推定方法が推奨されており、これは、「アルコール、ケトン、エーテル、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アリール等、中性の、非反応性・非イオン化性の有機化合物…、および芳香族炭化水素、ハロゲン化された芳香族および脂肪族炭化水素、ならびにスルフィドやジスルフィドにも用いることが可能である」。この北欧の文書には、これらの方法のいくつかをコンピュータで利用するためのディスクも含まれている。

A9.6.4.8 欧州化学品生態毒性および毒性センター(ECETOC)は「化学品の環境運命および影響の評価における QSAR」と題する報告書を発行している。これは QSAR を「…データの有意性の確認、または優先順位の設定、リスク評価および分類のためにデータの欠落を補充する」ために用いることについて述べている(ECETOC, 1998)。環境運命および水生毒性予測のための QSAR の説明がされている。この報告書は「…対象となっている[エンドポイント]のための一貫性のあるデータセットが…十分に定義された化学構造の範囲(ドメイン)[が必要であり] …それから訓練用セットを開発する」と述べている。この文書はまた、機構に基づいたモデルの長所、QSAR 開発における統計解析の使用、および「かけ離れたデータ」をどう評価するかに付いて論じている。

A9.6.4.9 n-オクタノール/水分配係数(Kow)

A9.6.4.9.1 化学構造から直接 log Kowを計算するために、CLOGP(US EPA, 1999)、LOGKOW(US EPA, 2000a)、および SPARC(US EPA, 2000b)等のコンピュータ化された方法が利用できる。CLOGP および LOGKOW は官能基の関与を加算する方法であるのに対し、SPARC はより基礎的な化学構造アルゴリズムに基づいている。水中で加水分解またはその他の反応を受ける可能性のある化合物について計算値を使用する際には注意が必要である。こうした変化は、このような反応性化学品に関する水生毒性試験データを解釈する際に考慮されなければならない。無機化合物および有機金属化合物には、SPARC だけが一般的な方法で採用できる。界面活性物質、キレート形成化合物、および混合物の log Kowまたは水生毒性を推定するには、特別な方法が必要である。

A9.6.4.9.2 ペンタクロロフェノールおよび類似化合物については、イオン化および非イオン化(中性)の両方の形態について log Kow値を計算できる。こうした数値は特定の反応性分子(例えばベンゾトリクロリド)について計算できる可能性もあるが、反応性およびその後の加水分解についても考慮する必要がある。また、こうしたイオン化しうるフェノールについては、pKa が第二のパラメータである。有機金属化合物の log Kow値を計算するのに特定のモデルを用いることができるが、こうした化合物のあるものは、実際には水中でイオン対として存在しているものもあるので、注意して使用する必要がある。

A9.6.4.9.3 極めて親油性の高い化合物では、log Kow 6から6.5までの測定はフラスコ振騰法で行えるが、低速撹拌法を用いれば log Kowを約 8 まで拡大できる(Bruijn ら, 1989)。これらの方法で測定できる範囲を越えて外挿する際にも、計算が有用であると考えられる。もちろん、毒性等に関する QSAR モデルが log Kow値の低い化学品にもとづいているならば、予測それ自体も外挿となることに留意しておく必要がある。実際、生物濃縮性については、数値が高いときには log Kowとの関係が非線形になることが知られている。log Kow値の低い化合物では、官能基の関与の考え方も適用できるが、そうした物質、特に log Kow値がマイナスの物質では、親油性部位への分配が起ったとしても、僅かであり、Overton が述べているように、これらの物質は浸透圧作用によって毒性を生じるため、有害性分類目的にはそれほど有用ではない(Lipnick, 1986)。

A9.6.4.10 生物濃縮係数 BCF

A9.6.4.10.1 実験的に測定された BCF が入手されたなら、これらの数値を分類に用いるべきである。生物濃縮試験の測定は、純粋サンプルを用いて、水に対する溶解度の範囲内の試験濃度で、また水中濃度と魚組織中濃度の平衡が定常状態を達成するのに十分な試験期間で実施しなければならない。さらに、期間を延長して生物濃縮試験をすると、log Kowとの相関性は水平となり、 終的には減少する。環境条件下では、親油性の高い化学品の生物濃縮は食物ならびに水からの取り込みの組み合せによって起こり、log Kow6 で食物からの取り込みに切り替わる。そうでなければ、log Kow値は QSAR モデルと共に、有機化合物の生物濃縮性を予測するパラメータとして用いることができる。こうした QSAR からのずれは、化学品が魚体内で代謝される程度の差を反映している傾向がある。したがって、フタレート等の化学品は、この理由によって生物濃縮が予測されるより著しく低くなることがある。さらに、BCF 予測値を、放射性化合物を用いた BCF 値と比較するには注意が必要である。なぜなら、こうして検出された組織中濃度は、親化合物と代謝物の混合、また共有結合した親化合物または代謝物の分も含んでいることあるからである。

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A9.6.4.10.2 実験による log Kowを も優先して使用すべきである。しかし、旧来のフラスコ振騰法では5.5 以上の値は信頼できず、多くの場合、計算値の平均値を使用するか、または低速攪拌法で測定し直した方がよい(Bruijn ら, 1989)。測定データの精度に、理にかなった疑いがあるなら、log Kow計算値を使用すべきである。

A9.6.4.11 分解性 - 非生物的分解および生分解

水相中の非生物的分解についての QSAR は、特定の化学品群およびメカニズムについての厳密に定義された線形自由エネルギー関係(LFER)である。たとえば、こうした LFER は、芳香環にいろいろに置換基を有する塩化ベンジルの加水分解に利用できる。こうした厳密に定義された LFER モデルは、必要なパラメータが問題の置換基について入手できるなら、非常に信頼性が高くなる。光分解、すなわち UV により生じた反応性分子種との反応は、大気コンパートメントについて推定値から外挿できることもある。こうした非生物的プロセスは通常は有機化合物の完全分解までには至らないが、しばしば重要な開始点であり、また律速でありうる。生分解性を計算するための QSAR は、化合物に固有のもの(OECD, 1995)であるか、または BIODEG 等の官能基関与モデルのいずれかである(Hansch と Leo, 1995; Meylan とHoward, 1995; Hilal ら, 1994; Howard ら, 1992; Boethling ら, 1994; Howard と Meylan 1992; Loonenら, 1999)。有意性の評価された化合物クラス固有のモデルは適用範囲が極めて限られているのに対し、官能基関与モデルの適用範囲はより広い可能性がある。しかし、モデルとなる下部構造を含む化合物に限定されている。有意性評価研究から、現在利用できる官能基関与モデルによる生物分解性予測は「易生分解性でない」ことの予測に用いられること(Pederson ら, 1995; Langenberg ら, 1996; US EPA, 1993)、したがって、水生有害性分類上「急速分解性でない」ことと関連づけられることが示唆されている。

A9.6.4.12 魚、ミジンコおよび藻類に対する急性水生毒性

非反応性かつ非電解質の有機化合物の急性水生毒性(ベースライン毒性)は、その log Kow値から極めて高いレベルの信頼性をもって予測できるが、ただし求電子、前求電子、または特殊な機能をもつ官能基(上記参照)の存在が検出されなかったことが前提である。こうした特殊な毒性物質については、適切なQSAR を予測的な方法で選択しなければならないという問題が残る。これは、関連性のある作用機序を特定するための直接で簡単な判定基準がまだないので、適切なモデルを選択するために、専門家の経験的判断を用いる必要があるからである。したがって、もし適切でない QSAR が採用されると、予測値に何桁もの誤差が生じ、ベースライン毒性の場合には、毒性が高い方よりむしろ低い方に予測されることになろう。

A9.6.4.13 魚およびミジンコに対する長期毒性

魚およびミジンコに対する慢性毒性の計算値を、急性毒性実験データに基づいた分類を否定するのに用いてはならない。魚およびミジンコに対する長期毒性を計算するのに利用できる有意性判定済みのモデルは少ししかない。これらのモデルは、log Kow相関関係のみに基づいており、その適用性は非反応性、非電解質の有機化合物に限られ、また、長期ばく露条件下で特殊な作用機序をもつ化学品には適していない。信頼できる慢性毒性値の推定は、慢性毒性機構を非特異的なものと特異的なものの間で正しく区別することに依存している。さもないと、予測された毒性は何桁も誤る可能性がある。多くの化合物では慢性試験で得られた過剰毒性 4 が急性試験での過剰毒性と相関している場合があるものの、必ずしもそれが該当しない場合もあることに、注意しなければならない。

A9.7 金属および金属化合物の分類

A9.7.1 序

A9.7.1.1 物質を分類するための調和システムは有害性に基づくシステムであり、有害性を特定する根拠は物質の水生毒性、ならびに分解性および生物蓄積作用についての情報である(OECD 1998)。 本文書は、ある物質が水相中に溶解している際の、その物質に伴う有害性のみを扱っているので、これに由来するばく露は、当該物質の水への溶解度と、水生環境中の生物種における当該物質の生物学的利用能によって制限される。したがって、金属および金属化合物に関する有害性分類スキームも、金属および金属化合物が利用されうる(すなわち例えば M-NO3として存在する場合の M+のように、溶存金属イオンとして存在する)場合に示される有害性に限定され、食物中の金属のように、水相中には溶解していないが、なお生物学的に利用されうるであろう金属および金属化合物に対するばく露を考慮に入れるものではない。本節では、毒性を持つ、または有機物であって生物蓄積性もしくは残留性の有害性を持つ可能性のある金属化合物の非金属イオン(例えば CN-)は考慮しない。このような金属化合物については、その非金属イオンの有害性についても検討しなければならない。

4 過剰毒性、Te=(ベースライン毒性予測値)/毒性実測値。

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A9.7.1.2 金属またはその化合物を添加した後、溶液中に存在する金属イオンのレベルは、その溶出の程度すなわち水への溶解度と、媒体との相互作用によって水に溶解しうる形態への変化を起こす程度という主に 2 種類の過程によって決定される。本手引きの目的に照らして「変化」と呼ぶ、この後者の過程が起こる速度とその程度は、様々な化合物および金属自体の間で大きく異なることがあり、適切な有害性クラスを決定するにあたって重要な要素となる。変換に関するデータが入手できた場合、分類決定においてはそれを考慮に入れるべきである。この速度を測定するためのプロトコールは附属書 10に記載されている。

A9.7.1.3 一般的に言って、物質が溶解する速度が、その本質的な毒性の決定に関係するとは考えられていない。しかし、金属および多くの難溶性の無機金属化合物に関しては、通常の溶解技術によって溶解を達成させることが非常に難しいので、溶解と変化の 2つの過程は区別しにくくなる。したがって、化合物が十分に難溶性であって、可溶化させる通常の試みによって溶解するレベルが、入手された L(E)C50を超えない場合に考慮しなければならないのは、変化の速度および程度である。この変化は多くの要因によって影響されるが、その中で無視できないものは媒体の pH 値、水硬度、温度などの性質であろう。これらの性質に加えて、試験を行った微粒子の粒径や比表面積、媒体に対してばく露された時間、そして言うまでもなく媒体内における当該物質の容積または表面積負荷など、他の要素もまたすべて、水中に溶解された金属イオンのレベルを決めるのに役割を果たす。したがって一般に、附属書 10 にある標準プロトコールに従って行われた変化のデータのみが、分類の目的に対して信頼できると考えられる。

A9.7.1.4 このプロトコールは、溶解したイオンのレベルが、添加される物質の負荷に直接関係付けられるように、主要な変動要因を標準化することを目的にしている。分類に適した有害性クラスを決定するのに使用できるのは、得られた L(E)C50に相当する金属イオンのレベルを達成させる、この負荷レベルである。この試験方法については附属書 10 に詳述されている。この試験プロトコールによるデータを使用するにあたって適用される戦略、およびこの戦略を機能させる上で必要となるデータの要件について後に述べる。

A9.7.1.5 易溶性および難溶性の金属および金属化合物の分類を検討するにあたっては、数多くの要素について理解しなければならない。第 4.1 章で定義したように、「分解」という用語は有機分子の分解を意味するものである。無機化合物および金属については、有機化合物について考慮され、用いられている分解性の概念が意味をなさず、あるいは限定的な意味しか持たないことは明らかである。むしろ、物質は通常の環境過程によって、有毒物質種の生物学的利用可能性を増加または減少させるように変化させられる可能性がある。同様に、log Kowもまた蓄積性の尺度と考えることはできない。それにもかかわらず、物質または有毒な代謝物/反応生成物が速やかに環境から消失せず、および/または生物蓄積するという考え方は、有機物質に対してと同様に、金属および金属化合物にも当てはまることである。

A9.7.1.6 可溶性の形態への分化は、pH 値、水硬度、およびその他の変動要因によって影響を受け、多少

とも毒性を持つ特別な形態の金属イオンを生成することがある。それに加えて、金属イオンは数多くの作

用(例えば無機物化や分配)によって水相において利用不可能な形態に変換される可能性もある。時にこ

れらの過程が慢性毒性の分類評価における分解と同じ位、速やかに起こることもある。しかし、水相から

他の環境媒体への金属イオンの分配は、必ずしも生物学的に利用できなくなったことを意味するわけでは

なく、またこの金属が恒久的に利用できなくなったことを意味するものでもない。

A9.7.1.7 水相からの金属イオンの分配の程度、または金属がより毒性の低い、もしくは無毒性の形態に

転換された、あるいは転換されうる程度に関する情報は、十分に広範囲な、環境上ありうる条件全体に対

しては、入手できないことがしばしばあるので、したがって分類の助けとするために数多くの仮定を置く

ことが必要となろう。こうした仮定は、入手されたデータが他のように示している場合には、変更してよ

い。第一に、金属イオンは、一度水に導入されると、水相から速やかには分配されず、したがってこれら

の化合物は判定基準に適合しない、と仮定すべきである。この背景にあるのは、金属の分化は起こりうる

が、その分化種は環境上ありうる条件下で利用可能である、という前提である。前述のように、このこと

は常に成り立つわけではないので、28 日の試験期間において生物学的利用可能性の変化を示唆する証拠が

得られた場合は、慎重に検討すべきである。金属および無機金属化合物の生物蓄積は複雑な過程であり、

生物蓄積性データは注意して使用すべきである。生物蓄積性の判定基準を適用する際は、入手されたすべ

てのデータを十分に考慮して、ケースバイケースで判断する必要がある。

A9.7.1.8 慎重なプローチの例となるもう 1 つの前提特定の金属化合物について、測定されたあるいは計

算された溶解度データが存在しない際、当該物質が L(E)C50のレベルで毒性を引き起こす十分な溶解度を

有し、したがって他の可溶性塩類と同じ様に分類することができる、という仮定である。これもまた明ら

かに必ずしも当てはまらない場合があるので、適切な溶解度データを得ることが賢明であろう。

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A9.7.1.9 本節では、金属および金属化合物を扱う。本手引きの中では、金属および金属化合物は次のように特徴付けられており、したがって有機金属は本節の範囲外にある。

(a) 元素の状態 M0では水に溶解しないが、利用能のある形態に変化しうる金属。これはすなわち、元素状態の金属が水または希薄な水性電解質と反応して、溶解性の陽イオン性もしくは陰イオン性の生成物を形成し、その過程で金属が中性ないしゼロ酸化の状態から、より酸化数の高い状態へ酸化もしくは変化されることを意味する。

(b) 酸化物や硫化物などの単純な金属化合物においては、この金属は既に酸化された状態で存在し、したがってそうした金属が水性媒体に導入されても、さらに金属の酸化が起こることは考えられない。

しかし、酸化状態に変化は起こらなくとも、媒体との相互作用によってより可溶性の形態が得られる可能性はある。難溶性の金属化合物は、その溶解度積を計算でき、かつ溶解によって少量の利用できる形態を生じる化合物と考えることができる。しかし、例えば水酸化アルミニウムのように、変化/溶解試験の過程で析出する金属化合物の溶解度積など、数多くの要因によって 終的な溶解濃度が影響されることを認識すべきである。

A9.7.2 分類への水生毒性データおよび溶解度データの適用

A9.7.2.1 水生毒性データの解釈

A9.7.2.1.1 承認されたプロトコールに従って実施された水生毒性試験は、通常、分類の目的に対して有意なデータとして受入れられるべきである。分類を目的とした水生毒性データポイントの評価に共通する一般的な問題については、A9.3 章もまた参照すべきである。

A9.7.2.1.2 金属の錯体形成と分化

A9.7.2.1.2.1 溶液中における特定金属の毒性は、主に(しかし、厳密に限定されずに)溶存する自由金属イオンのレベルによって決定されるように思われる。アルカリ度、イオン強度、pH 値を含む非生物的な要素は、(i)水中における金属の化学種に影響する(したがってその利用可能性に影響する)こと、および(ii)利用される金属の生物組織による取り込みと結合に影響することの2つの方法で、金属の毒性に影響しうる。

A9.7.2.1.2.2 金属の分化が重要な場合には、毒性を引き起こす可能性が強いものも含め、金属の様々な形態の濃度をモデル化することが可能であろう。試験物質の錯化および非錯化フラクションを区別してばく露濃度を定量するための分析法は、常に利用できるわけではない、もしくは経済的でないであろう。

A9.7.2.1.2.3 試験媒体中および自然環境中における、金属の有機および無機配位子への錯体化は、金属の分化モデルから見積もることができる。MINTEQ (Brown と Allison, 1987), WHAM (Tipping, 1994)並びに CHESS (Santore と Driscoll, 1995)などの pH 値、硬度、DOC、および無機物質を含む、金属の分化モデルは、金属イオンの非錯化および錯化フラクションを算定するのに使用できる。またその代わりに、生物学的配位子モデル(BLM)を用いて、生物レベルにおける毒性影響の原因となる金属イオン濃度を算定することもできる。この BLM モデルは現在のところ、ある限られた金属、生物、およびエンドポイントについてのみ、有意性が確認されている(Santore と Di Toro, 1999)。媒体内における金属錯体形成の特性分析に用いられたモデルおよび算定式に関しては、自然環境に戻して検討できるような形で、常に明確に記録、報告を行うべきである(OECD, 2000)。

A9.7.2.2 溶解度データの解釈

A9.7.2.2.1 溶解度に関して入手されたデータについて考察する場合、その正当性、および金属化合物の有害性の特定に向けた適用性を評価すべきである。特に、データが作られた時の pH 値は判っていなければならない。

A9.7.2.2.2 既存データの評価

既存データは次の 3種類のうちいずれかの形になる。すなわち、一部の十分に研究された金属に関しては、種々の無機金属化合物について溶解度積または溶解度データが存在するであろう。また、溶解度と pH値との関係が知られている可能性もある。しかし、多くの金属または金属化合物に関しては、入手できる情報が、例えば、難溶性である、などの記述的なものでしかないことがありうる。不幸にして、このような記述的な表現に対する溶解度の範囲についての(一貫性のある)手引きは非常に少ないように思われる。こうした情報が入手できる唯一の情報である場合、変化/溶解プロトコール(附属書 10)を用いて溶解度データをとる必要があると思われる。

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A9.7.2.2.3 金属化合物の溶解度を評価するためのスクリーニングテスト

溶解度データがない場合、変化/溶解プロトコール(附属書 10)に述べるように、金属化合物について、

24 時間の高負荷試験に基づいて溶解度を評価する、単純な「スクリーニングテスト」を用いることができ

る。スクリーニングテストの役割は、可溶性形態との区別が困難なように、溶解または速やかな変化を受

け、したがって溶存イオン濃度に基づいて分類されるような金属化合物を特定することにある。変化/溶

解プロトコールに詳述されているスクリーニングテストによるデータが入手できる場合は、試験された

pH 範囲における溶解度の 大値を用いるべきである。pH 範囲の全域についてデータが入手できない場合

は、その 大溶解度が適切な熱力学的分化モデルまたはその他の適切な手法によって得られたものかを確

認すべきである(A9.7.2.1.2.3 を参照)。この試験が金属化合物のみを対象にしていることを念頭に置くべ

きである。

A9.7.2.2.4 金属および金属化合物の溶解度を評価するためのフルテスト

この分析方法の 初の手順は、スクリーニング試験の場合と同様、分析を行うべき pH 値の評価である。

通常、フルテストは溶液中における溶解した金属イオンの濃度が 大になる pH 値で実施すべきである。

その場合、pH 値はスクリーニング試験と同様の手引きに従って選ばれる。

フルテストによるデータに基づき、3 種類の負荷量(1 mg/l の「低負荷」、10 mg/l の「中負荷」、および

100mg/l の「高負荷」)それぞれについて、7 日後の溶液中の金属イオン濃度を算定することができる。試

験の目的が物質の長期間(慢性)有害性の評価である場合、低負荷の試験は適切な pH 値で 28 日間まで

延長することができる。

A9.7.2.3 水生毒性データと溶解度データの比較

物質を分類すべきか否かの決定は、水生毒性データと溶解度データを比較することによって行われる。

溶解濃度が L(E)C50を超える場合、それが入手された唯一のデータであれば、毒性および溶解度データが

同一の pH 値におけるものであるか否かに関係なく、その物質は分類を行うべきである。全 pH 値域にわ

たって溶解濃度が L(E)C50を超えることがないことを示す他の溶解度データが入手できる場合は、当該の

物質をその可溶性形態について分類すべきではない。このことは、環境毒性試験または適切な生物学的利

用可能性影響度モデルによる追加データの利用も含んでいる。

A9.7.3 環境における変化に関する評価

A9.7.3.1 環境における、ある金属物質から同じ金属の別の化学種への変化は、有機化合物に適用される

ような分解に基づくものではなく、毒性のある化学種の利用可能性および生物学的利用可能性を増減させ

る可能性があるものである。しかし、自然に起こる地球化学的な過程の結果として、金属イオンは水相か

ら分配しうるものである。水相滞留時間や、水-底質界面でのプロセス(沈積および再可動化)についての

データはかなりあるが、まだ意味のあるデータベースに統合されてはいない。しかしながら、上記 A9.7.1で述べた原則および前提を用いることで、この手法を分類に取り入れることは可能であろう。

A9.7.3.2 このような評価の手引きを示すことは非常に困難であり、通常はケースバイケースのアプロー

チにおいて対処すべきものであろう。しかし、以下の事項は考慮できる。

(a) 利用可能性を持たない形態への種分化。ただし、逆方向の変化が起こる可能性も考慮しな

ければならない。

(b) 対象の金属化合物の溶解性よりも大幅に溶解性が低い金属化合物への変化

ある程度の慎重さが求められる。A9.7.1.5 および A9.7.1.6 を参照。

A9.7.4 生物蓄積性

A9.7.4.1 log Kow は、非極性有機物などあるタイプの有機化合物については、BCF の良好な予測尺度と

なるが、これはもちろん、無機金属化合物などの無機物質には当てはまらない。

A9.7.4.2 金属の取り込みおよび排泄速度のメカニズムは非常に複雑かつ多様であり、現在のところこれ

を記述する一般的なモデルはない。かわりに、分類基準に従った金属の生物蓄積性を、専門家の判断に基

づいて、ケースバイケースで評価すべきである。

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A9.7.4.3 生物濃縮係数 BCF は生物蓄積性の尺度であるが、金属および非有機金属化合物について測定さ

れた BCF の値を解釈するには、多くの複雑な要素がある。ある金属および無機金属化合物に関しては、

水中濃度と、ある水生生物における BCF との関係が逆相関なので、生物濃縮性データは慎重に使用しな

ければならない。このことは、特に生物学的に必須の金属に当てはまることである。生物学的に必須の金

属は、その金属を必須としている生体内で能動的に制御される。生体の栄養的な要求度が環境濃度より高

い場合もあるので、この能動的な制御の結果として BCF の値は高くなり、BCF と水中における当該金属

濃度には逆相関の関係になる。環境における濃度が低い場合には、栄養面での必要性を満たすために金属

を取り込む自然な結果として BCF の値が高くなることが予想され、この事例においては正常な現象とみ

なすことができる。加えて、生体内の濃度が生体によって制御されていれば、測定された BCF の値は外

部の濃度が上昇するにつれて低下することになろう。外部の濃度が非常に高くなって一定の限界値を超え

るか、または制御メカニズムを圧倒するようになると、これは当該の生体に危害を及ぼすものとなる。ま

た、金属が、ある生物にとっては必須であっても、他の生物には必須でない場合がある。したがって、金

属が必須でない場合、または必須金属の生物蓄積度が栄養レベルを超える場合には、生物蓄積性および環

境上の問題について特に配慮すべきである。

A9.7.5 金属および金属化合物に関する分類基準の適用

A9.7.5.1 金属および金属化合物に関する分類戦略の概要

A9.7.5.1.1 金属および金属化合物の分類のためのスキームについては、以下の記述並びに図 A9.7.1 の総

括図を参照されたい。このスキームには、データを分類目的で使用するための、いくつかの段階がある。

新たなデータを生成することは本分類スキームの趣旨ではない。有意なデータがない場合は、入手できた

すべてのデータを活用し、専門家の判断を仰ぐ必要があろう。

以下の各節において L(E)C50に関する言及は、金属または金属化合物のクラスを選択する際に用いるデ

ータポイントへの言及を意味する。

A9.7.5.1.2 金属化合物の L(E)C50 データについて考慮する場合には、分類の根拠として用いられるデー

タポイントを、分類すべき金属化合物分子の重量で表すようにすることが重要である。これは分子量補正

として知られる作業である。したがって、大半のデータは例えば金属 mg/l のように表されるが、この値

は次のように、対応する金属化合物の重量に対応して調整を行う必要がある。

金属化合物の L(E)C50 =金属の L(E)C50 ×(金属化合物の分子量/金属の原子量)

NOEC データもまた、対応する金属化合物の重量に対応するように補正する必要があろう。

A9.7.5.2 金属の分類戦略

A9.7.5.2.1 対象となる金属イオンの L(E)C50が 100mg/l より大きい場合、当該の金属については分類ス

キームの中でさらに考慮する必要はない。

A9.7.5.2.2 対象となる金属イオンの L(E)C50が 100mg/l 以下である場合、そのイオンが当該金属から生

成される速度と程度について入手されたデータを考慮しなければならない。そうしたデータは、有意かつ

有益なものであって、変化/溶解プロトコール(附属書 10)を用いて生成されるべきである。

A9.7.5.2.3 こうしたデータが入手できない場合、すなわち金属イオンへの変化が起こらないことを示す十分な有効性を持つ明確なデータが存在しない場合は、これらの可溶性形態に関する既知の分類可能な毒性が十分に懸念を生じうるものと考えられるので、安全側の分類(慢性4)を適用すべきである。

A9.7.5.2.4 溶解プロトコールによるデータが入手できる場合は、以下に示す規則に従ってその結果を、

分類を助けるために使用すべきである。

A9.7.5.2.4.1 7 日間の変化試験

7 日間(またはこれより短期間)の試験後における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 の値を超える場合、

金属のためのデフォルトの分類を次の分類で置き換える。

(a) 低負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 以上であれば、急性1に分類する。水相

からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性

1にも分類する。

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(b) 中負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 以上であれば、急性2に分類する。水相

からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性

2にも分類する。

(c) 高負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50以上であれば、急性3に分類する。水相か

らの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方に関する証拠が存在しなければ、慢性3

にも分類する。 A9.7.5.2.4.2 28 日間の変化試験

A9.7.5.2.4.1 に述べた手順で慢性1への分類を行う結果になれば、この金属は追加情報の如何に関係な

く分類されることになるので、それ以上の評価は必要ない。

この他のすべての事例において、変化/溶解試験によって分類を訂正すべきことを示す追加データが生成されるかもしれない。慢性2、3または4に分類された物質について、低負荷率における合計 28 日間の試験後の溶存金属イオン濃度が長期の NOEC 以下の値であれば、その分類結果は撤回される。

A9.7.5.3 金属化合物の分類戦略

A9.7.5.3.1 対象となる金属イオンの L(E)C50が 100mg/l を超える場合、当該の金属化合物については分

類スキームの中でさらに考慮する必要はない。

A9.7.5.3.2 溶解度 L(E)C50であれば、可溶性イオンに基づいて分類を行う。

A9.7.5.3.2.1 水溶解度(例えば 24 時間の溶解度スクリーニング試験などで測定された値、または例えば

溶解度積などから見積られた値)が溶存金属イオンの L(E)C50以上であるようなすべての金属化合物は、易

溶性の金属化合物とみなされる。溶解度が測定される際の条件は急性毒性試験の条件と大幅に異なること

があるので、溶解度が急性毒性値に近い化合物については注意を払うべきである。こうした場合には、溶

解度スクリーニング試験の結果が優先される。

A9.7.5.3.2.2 易溶性金属化合物は、L(E)C50(必要なら分子量に対する補正をする)に基づいて以下のよう

に分類される。

(a) 溶存金属イオンの L(E)C50 が 1mg/l 以下であれば、急性1に分類する。水相からの速やか

な分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性1にも分類す

る。 (b) 溶存金属イオンの L(E)C50が 1mg/l より大きく 10mg/l 以下であれば、急性2に分類する。

水相からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、

慢性2にも分類する。

(c) 溶存金属イオンのL(E)C50が 10mg/lより大きく 100mg/l以下であれば、急性3に分類する。

水相からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、

慢性3にも分類する。

A9.7.5.3.3 溶解度 <L(E)C50,であれば、デフォルトの慢性4に分類する。

A9.7.5.3.3.1 分類基準において、難溶性金属化合物は、既知の溶解度(例えば 24 時間の溶解度スクリー

ニング試験などで測定された値、または例えば溶解度積などから見積られた値)が可溶性金属イオンの

L(E)C50未満であるような化合物と定義される。難溶性金属化合物の可溶性形態金属のL(E)C50が100 mg/l以下であって、かつ当該の物質を難溶性物質であるとみなしうる場合は、デフォルトの安全側の分類(慢

性4)を適用すべきである。

A9.7.5.3.3.2 7 日間の変化試験

デフォルトの安全側の分類に分類された難溶性金属化合物については、7 日間の変化/溶解試験から入手

できる追加情報も使用することができる。こうしたデータは、低、中、高負荷率における変化レベルも含

むべきである。

7 日間(またはこれより短期間)の試験後における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 の値を超える場合、

金属のためのデフォルト分類を次の分類で置き換える。

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(a) 低負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 以上であれば、急性1に分類する。水相

からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性

1にも分類する。 (b) 中負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50 以上であれば、急性2に分類する。水相

からの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性

2にも分類する。 (c) 高負荷率における溶存金属イオン濃度が L(E)C50以上であれば、急性3に分類する。水相か

らの速やかな分配および生物蓄積性の欠如の双方について証拠が存在しなければ、慢性3

にも分類する。

A9.7.5.3.3.3 28 日間の変化試験

A9.7.5.3.3.2 に述べた手順で慢性1へ分類される結果になったときは、この金属は追加情報の如何に関

係なく分類されることになるため、それ以上の評価は必要ない。

この他のすべての事例において、28 日間の変化/溶解試験によって分類を訂正すべきことを示す追加デ

ータが生成されるかもしれない。慢性2、3または4に分類された物質について、低負荷率における合計

28 日間の試験後の溶存金属イオン濃度が長期の NOEC 以下の値であれば、その分類結果は撤回される。

A9.7.5.4 粒子径と表面積

A9.7.5.4.1 試験物質の粒子径または表面積における変動が、一定の時間ウィンドウ内に放出される金属

イオンのレベルに著しい変化を引き起こす可能性があることから、粒子径、なかんずく表面積は決定的な

パラメータである。したがって、負荷レベルのみに基づく相対的な分類が行えるように、変化試験のため

に粒子径または表面積は一定とされる。一般に、生成された分類データは、変化の程度を判定するのに、

市販されている も粒子径の小さな試料を用いている。特別な金属粉について生成されたデータは塊状形

態の分類に適さないとみなされる場合がある。例えば、試験粉末が構造的に別の物質 (たとえば別の結晶

構造) であることが明らかな場合、または試験粉末が特別な工程によって得られたものであって、塊状の

金属からは生成できないような場合、この塊状物質の分類は、データが入手できるなら、より代表的な粒

子径もしくは表面積を持つ物質の試験データに基づくことができる。この物質の粉末は、粉末に関して生

成されたデータに基づいて別個に分類されることになろう。しかし、通常の環境においては、同一の金属

について2つを超える分類案が示されることは予想されない。

A9.7.5.4.2 粒子径がデフォルトの直径 1mm を下回る金属は、ケースバイケースで試験されてもよい。た

とえば、別個の生産技術によって生産された金属粉や、金属粉が塊状形態よりも高い溶解度(または反応

性)を示し、その結果より厳しい区分への分類になる場合である。 A9.7.5.4.3 次の表に示すように、試験を行う粒子径は評価対象となる物質によって異なる。

種別 粒子径 備考

金属化合物 市販通常製品のうち 小 大 1 mm

金属 - 粉末 市販通常製品のうち 小 様々な結晶/形態上の性質がある場合には、別

個のデータを考慮する必要も考えられる。

金属 - 塊状 1 mm 十分な正当性があれば、デフォルト値を変更す

ることができる。

A9.7.5.4.4 一部の形態の金属に関しては、変化/溶解プロトコール(OECD 2001)を用いて、指定された

時間間隔後の金属イオン濃度を、試験される形態の表面積負荷の関数として、相関を得ることが可能であ

ろう。そのような場合、Skeaff ら(2000)が提案している臨界表面積の考え方(付録 VI 第 5 部「金属およ

び金属化合物」参照)を用いて、様々な粒子径を持つ金属の溶存金属イオン濃度レベルを見積ることが可

能となるであろう。すなわち、この相関性および適切な毒性データとの連結によって、媒体に L(E)C50を

与える物質の臨界表面積を特定し、次に有害性の同定に用いられる低、中、高負荷値にこの臨界表面積を

変化することが可能となる。この手法は分類には通常用いられないが、ラベル表示および川下製品におけ

る決定に際して有効な情報を提供するかもしれない。

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図 A9.7.1: 金属および金属化合物の分類手順

この欄は金属化合物にのみ適用

NO (金属)

金属または金属化合物

可溶性金属イオンの L(E)C50 >100mg/L である。

入手されたデータによる金属 化合物の溶解度 ≧ L(E)C50

24 時間の変化/溶解スクリーニングテス

トで濃度が溶存形態の L(E)C50 以上であ

ることが示された

7 日間の変化/溶解フルテストによる

データが入手できている。

低負荷率での濃度が 溶存形態の L(E)C50 以上である。

中負荷率での濃度

が 溶 存 形 態 の L(E)C50 以上であ

る。

高負荷率での濃度

が 溶 存 形 態 の

L(E)C50 以上であ

る。

分類は行わない

金属イオンの L(E)C50 に

分子量補正(A9.7.5.1 参

照)を行った値に基づき、

急性および慢性毒性に分

急性 1 に分類

急性 2 に分類

急性 3 に分類

速やかな分配および生物蓄積性の欠如

の双方について証拠が存在しなければ 慢性 1 にも分類

NO (金属化合物)

YES

NOまたはデータなし

YES

YES

(1) 速やかな分配および生物蓄積性の

欠如の双方について証拠が存在しない

か、または (2) 28 日間の低負荷による変化/溶解フ

ルテストによって、濃度が溶存形態の長

期 NOEC 以下でない場合は、 慢性 2 にも分類

28 日間の変化/溶解フルテストによっ

て、濃度が溶存形態の長期 NOEC 以下で

ない場合は、慢性 4 に分類

NO

YES

NO

NO

NO

YES

YES

YES (1) 速やかな分配および生物蓄積性の

欠如の双方について証拠が存在しない

か、または (2) 28 日間の低負荷による変化/溶解フ

ルテストによって、濃度が溶存形態の長

期 NOEC 以下でない場合は、 慢性 3 にも分類

NO

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附属書9

附属資料Ⅰ

有機物質の分解性の測定

1. 有機物質は、非生物的または生物的プロセスのいずれか、あるいはその組み合わせによって分解され

る。分解性を測定するための数多くの標準的手順、または試験が使用できる。これら試験法のうちいくつ

かの一般原則について下記に説明する。分解性試験法についての包括的なレビューを提示する意図ではな

く、水生有害性分類に関連して、手法を並べたものに過ぎない。

2. 非生物分解

2.1 非生物分解は、化学的変換と光化学変換を含んでいる。非生物的変換からは通常、別の有機化合物が

生成されるが、完全な無機化を起こすことはない(Schwarzenbach ら, 1993)。化学変換は、光および生

物体の介在なしに起こる変換であると定義されているが、光化学変換には光が必要である。

2.2 水生環境に関連した化学変換プロセスの例として、加水分解、求核置換反応、脱離反応、酸化および

還元反応がある(Schwarzenbach ら, 1993)。これらのうちで加水分解は、 も重要であると見なされる

場合が多く、また国際的なテストガイドラインが一般的に利用できる唯一の化学変換である。化学品の非

生物分解試験は一般的に、標準化された条件下での変換速度の測定という形で行われる。

2.3 加水分解

2.3.1 加水分解は、求核物質 H2O または OH-と化学品との反応であり、化学品の(離脱)グループが OH基と交換される。化合物の多く、特に酸誘導体は加水分解を受けやすい。加水分解は生物的にも非生物的

にもおこなわれるが、試験に関しては非生物加水分解のみが考慮される。加水分解は異なった pH、すな

わち中性、酸性または塩基触媒の加水分解で、異なったメカニズムが起こり、加水分解速度は pH にきわ

めて依存している。

2.3.2 現時点では、非生物加水分解を評価するのに、一般に利用できるガイドラインは、OECD テスト

ガイドライン 111「pH の関数としての加水分解」(OPPTS 835.2110 に該当する)および OPPTS 835.2130 「pH および温度の関数としての加水分解」の 2 種類である。OECD テストガイドライン 111 では、純粋

な緩衝液中において pH を変えた場合の全体的な加水分解速度を測定する。この試験は二段階、すなわち

加水分解速度が未知である化学品について実施する予備試験、および加水分解的に不安定なことがわかっ

ている化学品および予備試験で急速な加水分解が認められた化学品について実施する、より詳しい試験と

に分けられる。予備試験では、環境中で通常見られる pH(pH4, 7 および 9)範囲にした、温度 50℃の緩

衝液中で、化学品の濃度を 5 日間後に測定する。その化学品の濃度が 10%未満であれば、加水分解的に安

定であると見なすが、そうでない場合には詳しい試験を実施する。詳しい試験段階では、3 種類の pH(4, 7 および 9)条件において、その化学品濃度を時間の関数として測定し、全体的な加水分解速度を測定す

る。加水分解速度は各種温度条件で測定し、環境的に関連性のある温度に内挿または外挿できるようにす

る。OPPTS 835.2130 試験は実験のデザインでは OECD テストガイドライン 111 にほぼ同一であるが、

データ処理に主な違いがある。

2.3.3 試験で測定される加水分解定数は、加水分解以外にも、所定の試験条件下で生じる光を伴わないそ

の他すべての非生物的変換を含んでいることに注意しなければならない。天然水と純水の間の加水分解速

度には良好な一致が認められている(OPPTS 835.2110)。

2.4 光分解

2.4.1 水中での光分解に関する OECD ガイダンス文書にある定義によると、水中での化合物の光変換は、

一次または二次の光変換の形をとっており、一次の光変換(光分解)はさらに、直接光分解および間接光

分解に分けられる。直接光変換(光分解)は、化学品が光を吸収し、その直接の結果として変換を受ける

場合をいう。間接光変換とは、別の励起された分子種がエネルギーや電子または水素原子をその化学品に

移動させ、これによって変換を誘発する場合である(増感光分解)。二次の光変換とは、化学品と反応性

の短命な分子種、たとえば励起されたフミン酸、フルボ酸または硝酸塩等の励起分子種の反応により、光

の存在下で生成されたヒドロキシラジカルや過酸化ラジカルまたは一重項酸素等の分子種との間に化学

反応が生じる場合である。

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2.4.2 水中の化学品の光変換に関して、現在利用できるガイドラインは日光による、OECD テストガイド

ライン 316 水中での直接光分解による化学品の光変換および OPPTS 835.5270 間接光分解スクリーニング試験だけである。OECD テストガイドライン 316 と同様 OPPTS 835.2210 試験は段階的アプローチを採用

している。第 1 段階では、モル吸収率測定値から 大の直接光分解速度定数( 小半減期)を算出する。

第 2 段階には2つのフェーズがある。フェーズ 1 では、化学品を日光で光分解し、およその速度定数を得

る。フェーズ 2 では、その化学品が実際にばく露された光の強度を測定するアクチノメータを用いて、よ

り正確な速度定数を測定する。測定したパラメータから、温度および緯度が異なる場合の実際の直接光分

解速度が計算できる。この分解速度が適用できるのは、水の 上部の層、たとえば一番上の 50cm 以内で、

水が純水かつ空気が飽和している場合のみであるが、このような状態は環境中では実現しないことは明ら

かである。しかし、自然界の水系およびその他の関連要因を組み入れたコンピュータプログラムを用いれ

ば、この結果を他の環境条件にも拡張できる。

2.4.3 OPPTS 835.5270 スクリーニング試験は、フミン系物質を含む水の中での化学品の間接光分解に関

するものである。この試験の原理とは、自然の日光にさらされた自然水系では、光変換速度の測定値には

直接および間接両方の光変換が含まれるが、純水中では直接の光変換しか起こらない、ということである。

したがって、純水中の直接光分解速度と、自然水系中の総合的な光分解の差は、附属書 9 の手引きに定め

られた定義によれば、間接光分解と二次光分解の合計である。この試験法を実際に応用するには、市販さ

れているフミン系物質を用いて、自然水系を模した合成腐植水を作成する。間接光変換速度の測定値は、

それが測定された季節と緯度にのみ有意であること、およびその結果を他の緯度や季節に換算することは

不可能であることに注意が必要である。

3. 生分解性

3.1 試験法の簡単な説明だけを下記に示す。詳しい情報は、包括的な「生分解性試験に関する詳細レビュ

ー文書」 (OECD, 1995)を参照されたい。

3.2 易生分解性

3.2.1 有機物質の易生分解性を測定する標準的試験法が、OECD (OECD テストガイドライン 301A-F)、EU (C.4 テスト)、 OPPTS (835.3110)および ISO (9408, 9439, 10707)等、多くの機関により開発されて

いる。

3.2.2 易生分解性試験は厳格な試験であり、生分解および馴化が生じる機会が限定されている。このよう

な仕様を確実なものにしている、基礎的な試験条件は次のものである。

(a) 被験物質濃度が高い(2-100mg/l)こと

(b) 被験物質だけが炭素およびエネルギーの供給源であること

(c) 植種源の濃度は低いか中程度である(生菌数 104-108個/mL)こと

(d) 植種源の事前の馴化を許さないこと

(e) 分解が生じる時間ウィンドウは 10 日間であり、試験期間は 28 日(MITI I 法(OECD テス

トガイドライン 301C)を除いて)とすること

(f) 試験温度は<25℃のこと、および

(g) 合格レベルは 70%(DOC 除去)または 60%(酸素要求量または CO2発生量)で、完全な

無機化が認められること(被験物質の残存炭素は、成長しているバイオマスに取り込まれ

たと考えられる)

3.2.3 こうした易生分解性試験の1つでの陽性結果は、その物質が環境中で急速分解性であることを示す

(OECD テストガイドライン)。

3.2.4 従来からの BOD5試験(例えば EU C.5 テスト)によって、物質が易生分解性であるかどうかが示

されることもある。この試験では、5 日間の相対的生化学的酸素要求量を理論的酸素要求量(ThOD)と

比較するか、または ThOD が利用できない場合には化学的酸素要求量(COD)と比較する。この試験は 5日間で完了するので、提案された有害性分類基準で定められている 50%という合格レベルは、易生分解性

試験の合格レベルより低い。

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3.2.5 海水中の生分解性スクリーニング試験(OECD テストガイドライン 306)は、易生分解性試験の

海水条件に対応するとみなしてよい。OECD テストガイドライン 306 の合格レベル(すなわち DOC 除

去が>70%または理論的酸素要求量が>60%)に達する物質は、易生分解性であるとみなしてよい。なぜ

なら分解性は通常、海水中では、淡水での分解性試験より低くなるからである。

3.3 本質的生分解性

3.3.1 本質的生分解性試験は、ある物質に生分解の可能性があるかどうかを評価するよう設計されている。

こうした試験の例として、OECD テストガイドライン 302A-C の各試験、EU C.9 および C.12 の各試験、

および ASTM E 1625-94 試験等がある。

3.3.2 本質的生分解性の評価を目的とした基本的な試験の条件は以下のものである。

(a) 試験期間中に馴化させるよう、被験物質の植種源に対する長いばく露時間

(b) 高い微生物濃度

(c) 好適な物質/バイオマスの比率

3.3.3 本質的生分解性試験での陽性結果は、その物質が環境中で無限には存続しないことを意味するが、

速かで完全な生分解を推論することはできない。結果から 70%を超える無機化が示された場合、究極の生

分解の可能性を意味し、20%を超える分解は本質的な一次生分解を示す。また 20%以下の分解は、その

物質は難分解性であることを意味している。したがって、陰性の結果は、非生分解性(難分解性)と考え

るべきであることを意味している(OECD テストガイドライン)。

3.3.4 本質的生分解性試験の多くは、被験物質の消失のみを測定する。このような結果は、一次の生分解

だけで、総合的な無機化は示されない。したがって、多少にかかわらず、難分解性の分解生成物が生成し

ている可能性もある。物質の一次生分解は、環境中における本質的生分解性を示すものではない。

3.3.5 OECD の各本質的生分解性試験は、そのアプローチの点で極めて違いが大きく、特に MITI II 試

験(OECD テストガイドライン 302C)は、相当する MITI I 易生分解性試験(OECD テストガイドラ

イン 301C)より 3 倍程度高いだけの植種源濃度を採用している。また、Zahn-Wellens 試験(OECD テストガイドライン 302B)は、比較的「弱い」本質的生分解性試験である。しかし、こうした試験で認め

られる分解性は易生分解性試験で認められる分解性よりそれほど強くはないにもかかわらず、その結果は

易生分解性試験および水生環境における条件に外挿することはできない。

3.4 水系シミュレーション試験

3.4.1 シミュレーション試験は、ある水生環境における分解をシミュレートしようと試みる。水生環境に

おける分解のシミュレーションのための標準的な試験法の例としては、ISO/DS14592「表層水または表層

水/底質懸濁物のフラスコ振騰バッチテスト」(Nyholm と Toräng, 1999)、フラスコ振騰ダイアウェイ試

験法による生分解性の ASTM E 1279-89(95)試験、および同様な OPPTS 835.3170 試験が挙げられる。こ

れらの試験法は河川ダイアウェイ試験として参照されることが多い。

3.4.2 水生環境の条件をシミュレートできるようにする試験の特徴は以下のものである。

(a) 自然水(および底質)サンプルを植種源として使用 および

(b) 一次反応の分解速度になるような低い被験物質濃度(1-100μg/l)。

3.4.3 放射性標識された被験物質の使用は、本質的分解の測定を容易にするので、推奨されている。化学

分析によって、被験物質の除去だけを測定すると、初期の分解だけしか測定されない。分解の動力学の観

察から、分解の速度定数を導き出すことができる。被験物質濃度が低いので、一次反応の分解速度が優先

すると推定できる。

3.4.4 試験はまた、底質コンパートメント中の条件をシミュレートして、自然界の底質を用いて実施して

もよい。さらに、サンプルを滅菌することによって、試験条件下における非生物分解も測定できる。

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3.5 STP シミュレーション試験

下水処理施設(STP)における分解性をシミュレートする試験もある。たとえば OECD テストガイド

ライン 303A “Coupled Unit”試験、ISO 11733「活性汚泥シミュレーション試験」、EU C.10 試験等が

ある。 近になって、低濃度の有機汚染物質を用いる、新しいシミュレーション試験が提案された(Nyholm

ら, 1996)。

3.6 嫌気的分解性

3.6.1 嫌気的生分解性のための試験法は、被験物質が嫌気的条件化で生分解を受ける本来の可能性を測定

する。こうした試験法の例は、ISO 11734:1995(E)試験、ASTM E 1196-92 試験、および OPPTS 835.3400試験等である。

3.6.2 嫌気的分解性は、8 週間までの試験期間で、下に示すような試験条件で測定される。

(a) 酸素の存在しない状態(初期は純粋な窒素雰囲気)で密閉容器内での試験実施

(b) 消化された汚泥の使用

(c) 試験温度 35℃ および

(d) ヘッドスペースのガス圧を測定(CO2および CH4の生成)

3.6.3 本質的生分解はガスの生成によって判定される。しかし、親化合物の残存量を測定して初期段階の

分解も測定できる。

3.7 土壌および底質中の分解

3.7.1 物質の多くは 終的に土壌または底質コンパートメントに行き着くので、こうした環境中における

物質の分解性評価が重要かもしれない。標準的な方法として、土壌中の本質的生分解性に関する OECD テストガイドライン 304A 試験があり、これは OPPTS 835.3300 試験に相当する。

3.7.2 土壌中の本質的な分解性が測定できるようにする特殊な試験の特徴は以下のものである。

(a) 自然界から得た土壌サンプルを、追加の植種源なしで使用する

(b) 放射性標識された被験物質を用いる、および

(c) 放射性標識された二酸化炭素の生成量を測定する。

3.7.3 底質中の生分解を測定するための標準的な方法は、OPPTS 835.3180「底質/水ミクロコズム生分

解性試験」である。底質および水を含むミクロコズムを試験地点から採取し、その系に被験物質を加える。

親化合物の消失(すなわち初期段階の分解)、そして可能であれば代謝物の出現、あるいは本質的生分解

の測定を行ってもよい。

3.7.4 2つの OECD テストガイドラインが土および水堆積物中の好気性および嫌気性変換を扱っている

(それぞれテストガイドライン 307 および 308)。実験は、被験物質の現実的な濃度を含む、環境的に現実

に近い条件下での、被験物質変換速度、および変換生成物の物質種、ならびに生成と減少の各速度を測定

するために行なわれる。被験物質の変換の測定に採用する分析方法に依存して、完全な無機化、あるいは

初期段階の分解のいずれかが測定される。

3.8 生分解性推定の方法

3.8.1 近年になって、物質の環境特性を推定する可能性が発展してきており、その中で、有機物質の生分

解性を予測する方法も開発された(例えば Syracuse Research Corporation の Biodegradability Probability Program, BIOWIN)。方法についてのレビューは OECD (1993)および Langenberg ら

(1996)によって行われた。そのレビューによれば、基の寄与を見る方法が も成功しているように思われ

る。そのうちでも、Biodegradability Probability Program (BIOWIN)は適用範囲が広いように思われ

る。このプログラムでは、環境微生物の混合集団の存在下で、生分解が遅いか速いかを定性的に推定する。

このプログラムの応用範囲については、US EPA/EC による(Q)SAR 評価に関する合同プロジェクト

(OECD, 1994)および Pedersen ら(1995)が評価している。この後者について下記に簡略に述べる。

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3.8.2 実験的に測定された生分解性データの有意性確認のためのセットを MITI(1992)のデータから選

び出したが、正確な分解データが入手されていない物質や、上述のプログラムの開発にすでに使用されて

いる物質は除外した。このようにして有意性確認用セットは 304 物質から構成された。これらの物質の生

分解性について、プログラムの( も信頼性が高い)非線形推定モジュールを用いて推定し、結果を測定

データと比較した。162 種の物質が「速やかに」分解すると予測されたが、MITI I 試験では、41 種(25%)

だけが実際に易分解性であった。142 種は「ゆっくり」分解すると予測されたが、MITI I 試験で実際に

急速分解性でないとされたのは 138 種(97%)であった。したがって、このプログラムは、分解実験デー

タが得られず、かつプログラムによる推定が、その物質は「ゆっくりと」分解されるとなる場合にのみ、

有害性分類に使用できると結論づけられた。そうした場合、物質は速かな分解性ではないとみなすことが

できる。

3.8.3 EU に届け出された新規物質についての、実験データおよび QSAR データを使用した、(Q)SAR の

評価に関する US EPA/EC 合同プロジェクトでも、同様な結論が得られた。易生分解性試験で実験的に試

験された 115 の新規物質について、QSAR 予測を解析したものに基づいて評価した。この解析に含まれた

物質のうち、9 種だけが易生分解性であった。採用された QSAR の方法については、US EPA/EC 合同プ

ロジェクトの 終報告書(OECD, 1994)でも十分には記述されていないが、予測のほとんどは、後にな

って Biodegradation Probability Program (BIOWIN)に組み込まれた方法によって行われた可能性が高

い。

3.8.4 EU TGD (EC, 1996)においても、Biodegradation Probability Program を用いた、生分解性の推

定は控えめに使うのみとすることが推奨されている。すなわち、このプログラムで速かな生分解性が予測

される場合、その結果を考慮に加えるべきではなく、反対に生分解性が遅いと予測されたならば、考慮し

てもよい(EC, 1996)。

3.8.5 したがって、Biodegradation Probability Program の結果を控えめに使うことは、分解性に関する

実験データが入手できない多数の物質のいくつかについて生分解性を評価する必要を満たすかもしれな

い。

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附属書9

附属資料Ⅱ

水生環境中の分解性に影響する因子

1. 序

1.1 OECD の分類基準は、水生環境に対する有害性のみを考慮している。しかし、有害性分類は主に、

環境中の条件に類似していることは極めて稀なような実験室条件で、試験を実施して作成されたデータに

基づいている。したがって、水生環境での有害性の予測のために、実験室での試験データの解釈を考える

べきである。

1.2 有機物質の生分解性に関する試験結果の解釈は、OECD 生分解性試験に関する詳細レビュー文書 (OECD, 1995)で検討されている。

1.3 環境中の状態は、標準化された試験系における条件とは特徴的に非常に異なっているので、実験室で

の試験から得られた分解性データを環境に外挿することを困難にしている。差異の中でも、以下の要因は

分解性に著しい影響を及ぼす。

(a) 生物体に関連した要因(分解能力をもつ微生物の存在)

(b) 物質に関連した要因(物質濃度および他の基質の存在) および

(c) 環境関連要因(物理化学的条件、栄養分の存在、物質の生物学的利用性)

これらの各点について、以下にさらに議論する。

2. 分解能力をもつ微生物の存在

2.1 水生環境における生分解は、分解能力のある微生物が十分な数で存在することに依存している。自然

界の微生物集団はきわめて多様なバイオマスで構成されており、「新規」物質が十分高濃度で導入される

と、バイオマスはその物質を分解するよう馴化することもある。多くの場合、微生物集団の馴化は、本来

その物質を分解する能力を有する特定の分解者の増殖によって起こる。しかし、酵素の誘導、遺伝物質の

交換および毒性に対する耐性の獲得等、その他のプロセスもかかわることがある。

2.2 馴化は「ラグ(遅れ)」相で起こる。これはばく露開始から著しい分解が開始されるまでの時間であ

る。ラグ相の長さが、分解能力の高い分解者が 初から存在しているかどうかに依存することは明らかな

ように思われる。このことはまた微生物集団の経緯、すなわち集団が以前にその物質にばく露されたかど

うか、に依存する。これはすなわち、人工物質が使用され、何年間も至るところで放出されていると、分

解能力の高い分解者が見つかる可能性が高くなることを意味している。これが特にあてはまるのは、たと

えば生物学的な下水処理施設等からの排出を受けている環境である。汚染されていない水系から得た植種

源を用いる試験に比べて、汚染された水系から植種源を得ている試験の方が、分解結果により一貫性が見

られることが多い(OECD, 1995; Nyholm と Ingerslev, 1997)。

2.3 水生環境での馴化性が、実験室における試験での馴化性と比較できるかを決定するいくつかの要因が

ある。そうした要因のうち、馴化性が依存するのは下記のような要因である。

(a) バイオマス中の分解能力の高い分解者の初期の数(%および数)

(b) 固着するための表面の存在

(c) 基質の濃度および利用性 および

(d) 他の基質の存在

2.4 ラグ相の長さは、分解能力の高い分解者の初期の数および有毒な物質の場合には、これら分解者の生

存および回復に依存する。標準的な易生分解性試験では、植種源は下水処理施設から採取されている。こ

こでは汚染物質の負荷量が一般に環境中より多いので、分解能力の高い分解者の比率および数は、より汚

染されていない水生環境中に比べて大きいであろう。しかし、水生環境では分解能力の高い分解者の初期

の数が、実験室での試験より小さいので、ラグ相が水生環境でどの程度長くなるかを推定するのは困難で

ある。

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2.5 長期間にわたる場合には、分解能力の高い分解者は、適切な基質が十分な濃度で存在していれば増殖

するので、その初期濃度は重要ではない。しかし、短期間での分解性を問題にする場合は、分解能力のあ

る微生物の初期濃度を考慮する必要がある(Scow, 1982)。

2.6 フロック、凝集物および付着した微生物が存在することによっても、たとえば微生物共同体による微

生物ニッチの形成等により、馴化が増強される。このことは、下水処理施設、底質あるいは土壌中など多

様な環境における馴化能力を考える場合には重要である。しかし、易生分解性試験および水生環境中の微

生物の総数は、ほぼ同じ桁数である(易生分解性試験では生菌数は 104-108 個/ml、表層水中では 103-

106個/ml またはそれ以上)(Scow, 1982)。

2.7 環境条件への外挿を考える場合、貧栄養環境と富栄養環境を区別することは有益であろう。貧栄養条

件で成育している微生物は、低濃度(mgC/L 程度)の有機基質を無機化することができ、通常は富栄養条

件にある生物体より基質に対する親和性は大きいが、成長速度は低く発生回数は多い(OECD, 1995)。さ

らに貧栄養微生物は濃度が 1mg/l を超える化学品を分解することができず、高濃度では抑制されることさ

えある。これとは反対に富栄養微生物は、無機化の開始前に高濃度の基質を必要とし、貧栄養微生物より

も高濃度で成育している。このように、水生環境における分解の低い閾値は、その微生物集団が貧栄養集

団か富栄養集団かに依存する。しかし、貧栄養微生物と富栄養微生物とが異なった種であるか、またそれ

ぞれに貧栄養的な生活方法と富栄養的な生活方法しかないのかは不明である(OECD, 1995)。ほとんどの

汚染物質は廃水の放出によって直接水生環境に到達し、したがって受け入れる環境はほとんどが富栄養と

なる。

2.8 上述の議論から、高度にばく露されている環境、すなわち連続的に物質を受け入れている環境(生産

量の低い化学品よりも生産量の大きい化学品で、より多く起こる)において、分解能力の高い分解者の存

在する機会が 高となると結論づけてよいだろう。こうした環境は富栄養となることが多く、したがって、

分解が始まる前に比較的高濃度の物質が必要となることもある。その一方で、清潔な水系では分解能力の

高い微生物種、特に生産量の低い化学品として、まれにしか放出されない化学品を分解する能力のある微

生物種が欠乏しているであろう。

3. 基質関連要因

3.1 被験物質の濃度

3.1.1 ほとんどの実験室での試験で、被験物質は、水生環境で予測される数μg/l 域の濃度に比べて、極

めて高濃度(2-100mg/l)で添加される。一般に、基質が約 10μg/l という閾値より低い濃度で存在する

ときは、微生物の増殖が支持されず、維持のためのエネルギー要求量さえ満たされない(OECD, 1995)。このように低い閾値レベルの理由は、酵素的反応を開始する十分な刺激が足りないためであると思われる

(Scow, 1982)。これは一般に水生環境での多くの物質の濃度が、分解性微生物の初期の基質にかろうじ

てなりえるレベルでしか存在していないことを意味している。

3.1.2 さらに、分解の反応速度は、Monod の式における飽和定数(Ks)と物質濃度(So)に依存する。

飽和定数は、 大比増殖速度の 50%の比増殖速度となる基質濃度である。飽和定数よりはるかに低い基質

濃度は、ほとんどの水生環境では普通の状況であるが、この状態では分解は一次反応またはロジスティッ

ク速度論で説明できる(OECD, 1995)。微生物密度が低い(103-105個/ml)状態が優先的である場合(例

えば貧栄養水系)、集団はさらに低い速度で増殖するが、これはロジスティック速度論で典型的なもので

ある。微生物密度がそれより高い場合(例えば富栄養水系)には、細胞増殖を支えられるほど基質濃度は

高くなく、一次反応速度論が適用される、すなわち、分解速度は物質濃度に比例する。実際には、データ

の不確実性のために、この2つの種類の分解速度論を区別することは不可能であろう(OECD, 1995)。

3.1.3 まとめとして、低濃度(すなわち 10μg/l 以下)の物質は、おそらく水生環境中で主要な基質とし

て分解されることはないと思われる。濃度がそれより高ければ、易分解性物質はほぼ物質濃度に比例した

分解速度で、環境中の主要物質として分解されると思われる。二次基質としての物質の分解については以

下で述べる。

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3.2 その他の基質の存在

3.2.1 標準的な試験では、被験物質はその微生物に対して単一の基質として添加されるが、環境中では、

他の基質が多数存在している。自然水系では、溶存有機炭素濃度は、しばしば 1-10mgC/l の範囲で、す

なわち汚染物質よりも 1000 倍高い濃度で検出される。しかし、こうした有機炭素の多くは比較的難分解

性であり、岸辺から遠いほど難分解性物質の比率が高くなる。

3.2.2 自然水系のバクテリアは、藻類の浸出液を主な栄養源としている。こうした浸出液は速かに無機化

され(数分間以内)、自然界の微生物集団には高い分解能力があることを実証している。したがって、微

生物群が自然水系中の多様な基質を争奪するので、微生物間に淘汰圧が生じ、速やかに無機化される基質

を栄養源にできる日和見微生物種が増殖し、より特殊化した微生物種の増殖は抑えられる。種々の人工物

質を分解する能力のある微生物を単離した経験は、こうした微生物はしばしば比較的ゆっくりと増殖し、

より増殖の速いバクテリアとの競合のなかで、複雑な炭素源で生存していることを示している。環境中に

分解能力を有する微生物が存在している場合、ある人工基質が連続的に放出されて、環境中濃度がその増

殖を支えるのに十分になれば、その数は増加するであろう。しかし、水生環境中の有機汚染物質の多くは

低い濃度で存在し、二次基質として分解されるだけで、増殖を支えていないであろう。

3.2.3 他方、速やかに無機化される物質が高濃度で存在すれば、共代謝により人工分子の初期変換を促進

することがある。そして共代謝された物質は、さらなる分解、および無機化を受けやすくなる。このよう

に他の基質の存在が、物質が分解される可能性を高めることもある。

3.2.4 したがって、自然界の水系中に多様な基質が存在しており、そのなかには速やかに無機化される基

質もあることが、一方では微量の汚染物質を分解する能力を有する微生物の増殖を阻害する場合がある、

他方、こうした存在は、初期の共代謝によって分解を促進し、次いで、さらに無機化しやすくする場合も

ある、と結論づけられる。自然条件下でのこれらのプロセスの相対的な重要性は、環境条件および物質の

両者によって異なり、一般則はまだ確立できていない。

4. 環境関連要因

4.1 環境についての各要因は、特定の分解プロセスより、むしろ一般的な微生物活動をコントロールして

いる。しかし、この影響の重要性は、生態系や微生物種の違いによって異なっている(Scow, 1982)。

4.2 酸化還元ポテンシャル

分解性に影響する環境関連要因として も重要なものの1つは、おそらく酸素の存在であると思われる。

酸素含量およびそれに関連して、酸化還元ポテンシャルが、水相中、底質上層部中、および下水処理施設

の各部分に存在している好気的生物、および底質中や下水処理施設の各部分に存在している嫌気的生物な

ど、水生環境中における多様な種類の微生物の存在を決定している。ほとんどの水相中では、好気的条件

が優先しており、生分解性の予測は好気的試験の結果に基づくべきである。しかし、ある水生環境では、

富栄養化および生成した有機物の腐植のために、一年のある期間、酸素含量が極めて低くなることもあり

うる。こうした期間中は、好気的生物は化学品を分解できないが、もしその化学品が嫌気的条件下で分解

されうるならば、嫌気的プロセスがとってかわることもある。

4.3 温度

もう1つ重要なパラメータは温度である。ほとんどの実験試験(標準の好気的易生分解性試験)は 20-25℃で実施されるが、嫌気的試験は、汚泥リアクター内の条件をより適切に模している、35℃で行われ

ることもある。環境中では、微生物活動は 0℃以下から 100℃の温度範囲で見出される。しかし、 適温

度は多分 10-30℃の範囲内にあり、おおまかにいえば、この範囲内で温度が 10℃上昇するごとに分解速

度は倍増する(de Henau, 1993)。この 適温度範囲の外では、分解者の活動は急激に低下するが、ある

特殊化した微生物種(好熱細菌および好冷細菌)は繁殖する。実験条件から外挿する場合、年間のほとん

どの期間、氷で覆われており、冬期には分解がほとんど、またはまったく期待されないような水生環境も

あることを考慮すべきである。

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4.4 pH

環境中で見られる、ほぼすべての pH 域で、活性のある微生物が見いだせる。しかし、細菌集団として

は、弱アルカリ性の状態が活動に も適しており、 適 pH 範囲は 6-8 である。5 より低い pH では、細

菌の代謝活性は著しく低下する。真菌類集団にとっては、弱酸性の状態の方が活動に適切であり、 適 pH範囲は 5-6 である(Scow, 1982)。したがって、微生物の分解活動にとって 適なのは、おそらく pH 5-8 の範囲であり、これは水生環境で も多く見られる pH 範囲である。

4.5 栄養塩の存在

微生物の増殖には無機栄養塩(窒素およびリン)の存在がしばしば必要になる。しかし、微生物の増殖

は基質によって限定されることが多いので、水生環境で無機栄養塩類が活性の限定要因となることは稀で

ある。しかし、栄養塩類の存在は一次生産者の増殖そして、また無機化されやすい浸出物の利用性に影響

する。

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附属書9

附属資料Ⅲ

有機物質の BCF および Kow測定のための実験法および推定法の基本原理

1. 生物濃縮係数(BCF)

1.1 定義

生物濃縮係数は、定常状態における化学品の生物体内濃度と周囲の媒体、この場合には水中の濃度の比

と定義されている。BCF は定常状態において直接、実験的に測定でき、また定常状態である必要なしに、

取り込みと排出の一次速度定数の比から計算できる。

1.2 BCF の実験による測定のための適切な方法

1.2.1 魚類における生物濃縮の実験的測定のために種々のテストガイドラインが作成され、採用されてい

る。 も一般的に適用されているのは、OECD テストガイドライン(OECD 305, 1996)および ASTM 標

準ガイド(ASTM E 1022-94)である。OECD 305 (1996)は改訂され、その前の版である OECD 305A-

E (1981)から差し替えられた。流水試験法(OECD 305, 1996)が望ましいが、半止水試験法(ASTM E 1022-94)も認められている。ただし、死亡率および試験条件の維持に関する有意性判定基準が充足され

ていることを前提とする。親油性物質(log Kow>3)では、流水法の方が望ましい。

1.2.2 OECD 305 および ASTM ガイドラインの原則は同様ではあるが、記載されている実験条件は、特

に以下の点で異なっている。

(a) 試験水の供給方法(止水、半止水、または流水)

(b) 排泄試験を実施する必要性

(c) BCF 算出の数学的方法

(d) サンプリング回数:水中濃度の測定回数および魚サンプル数

(e) 魚の脂質含量測定の必要性

(f) 取り込み相の 少時間

1.2.3 一般に、この試験法は2つの段階からなっている。すなわち、ばく露(取り込み)段階とばく露後

(排泄)段階である。取り込み段階では、1 種類の魚種の各群を、 低 2 種類の濃度の被験物質にばく露

する。28 日以内に定常状態に達しなければ、28 日のばく露期間が必要とされている。定常状態に達する

のに必要な時間は、Kow – k2相関をもとに設定してもよい(例えば log k2 = 1.47-0.41 log Kow (Spacieと Hamelink, 1982)、または log k2 =1.69-0.53log Kow (Gobas ら, 1989))。したがって、たとえば 95%定常状態に予測される時間(d)は-ln(1-0.95)/k2によって計算してもよいが、ただし生物濃縮が一次

反応速度論に従うことが前提である。排泄段階では、被験物質を含まない媒体中に魚を移す。試験の両段

階を通じて、魚体中の被験物質濃度を追跡する。BCF は魚湿体重の関数として表わされる。有機物質の多

くについて、生物濃縮性と親油性の間に有意な関係があり、さらに、試験魚体内の脂質含量とそれらの物

質の生物濃縮実測値にも、同様な関係がある。したがって、親油性の高い物質について試験結果を変動さ

せる、このような原因を軽減するために、生物濃縮は、体重の他に脂質含量に関連させて表記すべきであ

る(OECD 305(1996), ECETOC(1995))。ここで示したガイドラインは、生物濃縮は一次反応プロセ

ス(1 コンパートメントモデル)によって、したがって BCF=k1/k2(k1:一次取り込み速度、k2:一次排

泄速度(対数線形近似による))で近似できるという仮定に基づいている。排泄が二段階速度論に従う場

合、すなわち2つの顕著に異なる排泄速度が見られる場合は、k1/k2という近似は BCF を著しく低く推定

することになる。二次反応速度論が示されたら、BCF は CFish/CWater の関係から推定してよいが、これは

魚-水系で「定常状態」に達していることを前提とする。

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1.2.4 サンプル調製および保存の詳細と共に、試験溶液中および生物試料中の物質を定量するために、精度、正確性および感度がわかっている適切な分析方法が利用できなければならない。これらがなければ、正しい BCF の決定は不可能である。放射性標識された被験物質を用いれば、水および魚サンプルの分析を容易にできる。しかし、特異的な分析法と組み合わせなければ、全放射能の測定は潜在的に、親化合物、可能性のある代謝物、および有機分子として魚組織内に組み入れられた、可能性のある代謝された炭素の存在を反映している。真の BCF を決定するためには、親物質を可能性のある代謝物から明確に区別することが不可欠である。放射性標識された物質を試験に用いるならば、全放射能レベル(すなわち親化合物と代謝物)を分析することも可能であるし、または親化合物を別個に分析できるようサンプルを精製してもよい。

1.2.5 log Kowが 6 より大きい範囲では、log Kowが増加するほど測定された BCF データが小さくなる傾向がある。このような非線形の概念的な説明は、生物変換、膜透過速度の低下、あるいは巨大分子の体内脂質への溶解性の低下等によるものとされている。その他の要因として、平衡に達していなかった、水相中の有機物への吸着による生物学的利用性の低下、ならびに分析誤差などの実験技術上の誤りが考えられる。さらに、log Kowが 6 より大きい物質の BCF についての実験データを評価する際は、log Kowが 6 より低い物質について決定された BCF 値より、不確実性レベルがはるかに高くなるので、注意をはらわなければならない。

2. log Kow

2.1 定義と一般的考察

2.1.1 n-オクタノール/水分配係数の対数値(log Kow)は、物質の親油性の指標である。このことから、log Kowは環境中運命の評価において重要なパラメータである。たとえば土壌、底質への吸着および生物体内への生物蓄積等、多くの分配プロセスが log Kowにより影響される。

2.1.2 生物濃縮と log Kowの関係の根拠は、魚体内の脂質相と水の間の分配プロセスと、n-オクタノールと水間の分配プロセスとの類似である。Kow を用いる理由は、魚組織中にある脂質の満足できる代用物となるオクタノールの能力から生じている。log Kowと、タラ肝油およびトリオレインへの物質の溶解性との間には、高度に有意な関係が存在している(Niimi, 1991)。トリオレインは、淡水魚の脂質に見出される、も存在量の多いトリアシルグリセロールの 1 つである(Henderson と Tocher, 1987)。

2.1.3 n-オクタノール/水分配係数(Kow)の測定は、EU 圏内で新規物質または優先既存物質の届け出のために提出しなければならない基本データセットの必要条件である。たとえば極めて水溶性の高い物質や極めて親油性の高い物質などの場合、実験による Kowの測定は必ずしも可能ではないので、QSAR から求めた Kow を採用してもよい。しかし、実験による測定が可能ではない物質(たとえば界面活性剤等)にQSAR を用いるには細心の注意をはらうべきである。

2.2 実験による Kow値決定のための適切な方法

2.2.1 Kowの実験による測定には、フラスコ振騰法および HPLC 法という 2 つの異なった方法が、例えばOECD 107 (1995)、 OECD 117 (1983)、EEC A.8. (1992)、 EPA-OTS (1982)、 EPA-FIFRA (1982)、 ASTM (1993)等の標準ガイドラインに記載されている。標準ガイドラインにしたがって、フラスコ振騰法または HPLC 法を採用して得られたデータだけが推奨されるわけではない。極めて親油性が高い物質は、水に対する溶解が遅いので、低速攪拌法を用いて得られたデータの方が一般に信頼性が高い(De Bruijn ら, 1989; Tolls と Sijm, 1993; OECD ガイドライン 123)。

2.2.2 フラスコ振騰法

この方法の基本原理は、2 つの異なった相、すなわち水および n-オクタノールの中での物質の溶解性を測定することである。分配係数を測定するためには、この系すべての相互作用している成分間の平衡が達成されて、その後でこれら二相中に溶解している物質の濃度を測定しなければならない。フラスコ振騰法は、log Kow値が-2 から 4 の範囲にある場合に適用できる(OECD 107, 1995)。フラスコ振騰法は、水および n-オクタノール中に溶解する基本的に純粋な物質にのみ適用され、20-25℃の範囲内の一定温度(±1℃)において実施しなければならない。

2.2.3 HPLC 法

HPLC 法は、長鎖の炭化水素(例:C8、C18)がシリカに化学的に結合している、市販されている固定相を充填した分析カラムでおこなわれる。こうしたカラムに注入された物質は、液体の移動相と炭化水素固定相間の分配度の違いによって、異なった速度でカラム上を移動する。HPLC 法は、強酸および強塩基、金属錯体、界面活性物質、あるいは溶出液と反応する物質には適用できない。HPLC 法は log Kow値が 0

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-6 の範囲にある場合に適用できる(OECD 117, 1989)。HPLC 法の方がフラスコ振騰法よりも被験物質中の不純物の存在に対する影響が少ない。

2.2.4 低速攪拌法

低速攪拌法では、log Kowが 8.2までの化合物のKowを正確かつ精密に測定できる(De Bruijnら, 1989)。親油性の高い化合物では、フラスコ振騰法では実験上の誤差(微小滴の形成)を生じる傾向があり、またHPLC 法では Kow値の推定値を得るために検量範囲を超えて Kowを外挿する必要がある。

分配係数を決定するためには、水、n-オクタノールおよび被験物質が相互に平衡に達して、その後この二相中の被験物質濃度が測定される。フラスコ振騰法での微小滴形成による実験上の困難さは、低速攪拌法では水、オクタノールおよび被験物質がゆるやかに攪拌されるリアクター内で平衡に達するので、ある程度克服される。攪拌によりオクタノールおよび水の間に多少の層流が生じ、微小滴が形成されることなく、二相間の物質の交換が行われる。

2.2.5 ジェネレータカラム法

log Kow測定のためのもう1つの、非常に汎用性の高い方法は、ジェネレータカラム法である。この方法では、オクタノール相と水相間で物質を分配させるのにジェネレータカラムが用いられる。カラムには固体担体が充填され、一定濃度の被験物質を加えた n-オクタノールで飽和されている。被験物質は、オクタノール飽和されたジェネレータカラムから、水を用いて溶出される。カラム内にある水溶液は、オクタノール相から水相に分配された被験物質の平衡濃度を表している。ジェネレータカラム法がフラスコ振騰法より基本的に優れている点は、前者はミクロエマルジョンの生成が完全に防止されていることである。したがって、この方法は log Kowが 4.5 より低い物質と同様に、log Kowが 4.5 を超える物質での Kowの測定に特に有用である(Doucette と Andren, 1987 および 1988, Shiu ら, 1988)。ジェネレータカラム法の欠点は、精巧な装置が必要なことである。ジェネレータカラム法の詳しい説明は”Toxic Substances Control Act Test Guidelines” (USEPA 1985)に示されている。

2.3 log Kow 決定のための QSAR の使用(A9.6「QSAR の使用」も参照のこと)

2.3.1 Kowを推定するために、多数の QSAR が開発され、また現在も開発され続けている。一般的に用いられている方法は、フラグメント定数に基づいている。このフラグメントによるアプローチは、与えられた分子について、個々の分子フラグメントの親油性を単純に加算することに基づいている。リスクアセスメントに関する欧州委員会の技術指針(European Commission, 1996)パートⅢでは、実験的に求められたデータがない場合に、3 種類の市販されている PC プログラムが推奨されている。

2.3.2 CLOGP(Daylight Chemical Information Systems, 1995)は 初、ドラッグデザインのために開発された。このモデルは Hansch と Leo の計算法(Hansch と Leo, 1979)をもとにしている。このプログラムは、C、 H、 N、 O、 ハロゲン、 P または S を含む有機化合物の log Kowを計算する。塩類および形式電荷のある化合物の log Kowは計算できない(ただしニトロ化合物および窒素酸化物を除く)。フェノール、アミン、あるいはカルボン酸などのイオン化する物質の log Kow計算結果は、中性またはイオン化していない形態を表しており、pH 依存的である。一般的にこのプログラムでは、log Kowが 0-5 の範囲で、明確な推定値が得られる(European Commission, 1996, part III)。しかし、Niemelä (1993)が実験的に測定した log Kow値を、推定値と比較しておこなった有意性評価研究では、このプログラムは多数の有機化合物の log Kowを、0以下から 9以上という log Kow範囲で正確に推定することが示された(n=501, r2=0.967)。7000 種以上の物質の同様な有意性評価研究では、CLOGP プログラム(PC version 3.32, EPA version 1.2)の結果は r2 = 0.89, s.d. = 0.58, および n = 7221 であった。これらの有意性は、CLOGP プログラムが、実験データが入手できない場合に、信頼できる log Kowの推定に用いられることを示している。キレート化合物および界面活性剤では、CLOGP プログラムの信頼性には限界があるとされている(OECD, 1993)。しかし、非イオン系界面活性物質(LAS)については、調整された CLOGP 値を推定するための補正方法が提案されている(Roberts, 1989)。

2.3.3 LOGKOW または KOWWIN(Syracuse Research Corporation)は、構造フラグメントと補正係数を採用している。このプログラムは、C、 H、 N、 O、 ハロゲン、 Si、 P、 Se、 Li、 Na、 K または Hg を含む、有機化合物の log Kowを計算する。(窒素酸化物やニトロ化合物のような)形式電荷を有する化合物の log Kowも計算できる。フェノール、アミン、カルボン酸などのイオン化する物質の log Kow

計算結果は、中性または非イオン化された形態を表しており、したがって pH 依存的である。ある種の界面活性物質(例えばアルコールエトキシレート(Tolls, 1998))、染料および解離物質は、LOGKOW プログラムで予測されよう(Pedersen ら, 1995)。一般に、このプログラムは 0-9 の log Kow域で明確な予測値を与える(TemaNord 1995: 581)。CLOGP プログラムと同様に、LOGKOW プログラムも有意性が確

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認されており(表 2)、信頼性、市販で入手できること、および使用の簡便さの理由で、分類目的に推奨されている。

2.3.4 AUTOLOGP(Devillers ら, 1995)は、文献から収集された 800 種類の有機化学品をまとめた、不均一なデータセットから導かれた。このプログラムは、C、 H、 N、 O、 ハロゲン、 P および S を含む有機化学品の log Kow値を計算する。塩の log Kow値は計算できない。また、ニトロ化合物を除いて、形式電荷を有する化合物には log Kowが計算できないものもある。フェノール、アミン、カルボン酸などのイオン化する物質の log Kow値を計算できるが、pHへの依存性については注意が必要である。AUTOLOGPの適用性を拡大するための改良作業が進行中である。現在入手されている情報によれば、AUTOLOGP は特に非常に親油性の高い物質(log Kow>5)で、正確な数値が得られる(European Commission, 1996)。

2.3.5 SPARC. SPARC モデルは、まだジョージア州アセンズにある EPA の環境研究所で開発中であり、公に利用できるようになっていない。SPARC は観察データから得られた知識に基づいた決定論的モデルというより、むしろ化学熱力学の原理に基づいたメカニズムモデルである。したがって、SPARC は、QSARを用いるモデル(すなわち、KOWWIN、LOGP)と違って、化学品の訓練用セットには log Kowの測定値を必要としない。EPA は要請があれば、このモデルを CAS 番号のリストで稼動させることもある。SPARCは log Kow値が 5 より大きい化合物では、KOWWIN および CLOGP より優れた結果を与える。無機化合物または有機金属化合物に一般的なやり方で採用できるのは SPARC だけである。

本附属書の表 1に、フラグメント化の方法論に基づいた log Kow推定方法の概要を示した。log Kowの推定法は他にもあるが、これらはケースバイケースのみで使用されるべきで、また適切な科学的根拠をつけてのみ使用されるべきである。 表 1. フラグメント化の方法論に基づいた log Kow推定方法の概要(Howard と Meylan, 1997)

方法 方法論 統計

CLOGP Hansch & Leo (1979), CLOGP Daylight (1995)

フラグメント+補

正係数

合計 n=8942, r2=0.917, sd=0.482 バリデーション:n=501, r2=0.967 バリデーション:n=7221, r2=0.89 sd=0.58

LOGKOW (KOWWIN) Meylan & Howard (1995), SRC

140 フラグメント

260 補正係数

キャリブレーション:n=2430, r2=0.981, sd=0.219, me=0.161 バリデーション:n=8855, r2=0.95, sd=0.427, me=0.327

AUTOLOGP Devillers ら(1995)

Rekker & Manhold (1992)による 66の原子およ

び置換基の関与

キャリブレーション:n=800, r2=0.96, sd =0.387

SPARC EPA (ジョージア州ア

センズ)により開発中

基本的な化学品構

造アルゴリズムに

基づいている

訓練用セットの化学品に log Kow測定値は必要ない

Rekker & De Kort (1979)

フラグメント+

補正係数

キャリブレーション:n=1054, r2=0.99 バリデーション:n=20, r2=0.917, sd=0.53, me=0.40

Niemi ら(1992) MCI キャリブレーション:n=2039, r2=0.77 バリデーション:n=2039, r2=0.49

Klopman ら(1994) 98 フラグメント+

補正係数

キャリブレーション:n=1663, r2=0.928, sd=0.3817

Suzuki & Kudo (1990)

424 フラグメント 合計:n=1686, me=0.35, バリデーション:n=221, me=0.49

Ghose ら(1988) ATOMLOGP

110 フラグメント キャリブレーション:n=830, r2=0.93, sd=0.47 バリデーション:n=125, r2=0.87, sd=0.52

Bodor & Huang (1992)

分子軌道法 キャリブレーション:n=302, r2=0.96, sd=0.31, me=0.24バリデーション:n=128, sd=0.38

Broto ら(1984) ProLogP

110 フラグメント キャリブレーション:n=1868, me=計算値 0.4

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附属書9

附属資料Ⅳ

有機物質の生物濃縮性に対する体外および体内要因の影響

1. 取り込みに影響する要因

親油性化合物の取り込み速度は、主に生物体の大きさの関数である(Sijm と Linde, 1995)。分子サイ

ズ等の外部要因、生物学的利用性に影響する要因、および各種の環境要因も、取り込み速度に非常に重要

である。

1.1 生物体の大きさ

大きい魚体の方が体重に対する鰓表面積の比が相対的に小さいので、小型魚に比べて大型魚の方がより

低い取り込み速度定数(k1)が予測される(Sijm と Linde, 1995; Opperhuizen と Sijm, 1990)。魚によ

る物質の取り込みは、鰓を通過する水流、鰓表皮における水性拡散層を通しての拡散、鰓表皮を通る浸透、

鰓の血流量、および血液成分の結合力によっても支配される(ECETOC, 1995)。

1.2 分子サイズ

イオン化された物質は、水相中の pH が物質取り込みに影響するので、膜を容易に透過することはない。

かなりの断面積を持つ物質(Opperhuizen ら, 1985; Anliker ら, 1988)、または鎖長の長い(>4.3nm)化

合物(Opperhuizen, 1986)では、膜透過性が失われると予測されている。分子のサイズによって膜透過

性が失われると、取り込みは完全に失われる結果になる。生物濃縮に対する分子量の影響は、その物質の

拡散係数への影響で、取り込み速度定数が減少することによる(Gobas ら, 1986)。

1.3 利用性

物質が生物体内に生物蓄積できるためには、それが水中に存在して、魚の鰓を通した移動のための利用

性をもつことが必要である。自然界および実験の両方の条件下で、この利用性に影響する要因は、BCF の

予測値と比べて、実際の生物濃縮を変化させる。生物濃縮試験中には魚に給餌するので、かなり高濃度の

溶解している、および粒子状の有機物が予測され、これが、実際に鰓を通して直接取り込まれる化学品の

フラクションを減少させる。McCarthy と Jimenez (1985)は、溶解している腐植物質に親油物質が吸

着することが、物質の利用性を低下させ、物質の親油性の大きいほど利用性が低下することを示した

(Shrap と Opperhuizen, 1990)。さらに、溶解している、または粒子状の有機物質または表面に対する

吸着は、一般に BCF(およびその他の物理化学的性質)の測定を妨害する場合があり、このため BCF の

決定および適切な解釈を困難にする。魚における生物濃縮は、水中にある化学品の利用できるフラクショ

ンに直接関係しているので、親油性の高い物質の場合には、被験物質が利用性をもつ濃度を、取り込み期

間中、比較的狭い範囲内に維持することが必要である。

易生分解性の物質は試験水中に短期間しか存在せず、したがって、このような物質の生物濃縮性は有意

でないかもしれない。同様に、揮発および加水分解は、物質濃度を低下させ、物質が生物濃縮のための利

用性をもつ時間を短縮させるであろう。

1.4 環境因子

生物の生理学的特性に影響する環境パラメータもまた、物質の取り込みを左右する。たとえば、水中の

酸素含量が低下すると、魚は呼吸需要を満たせるよう、より多量の水を鰓から通過させなければならない

(McKim と Goeden, 1982)。ただし、Opperhuizen と Schrap (1987)が指摘したように、種依存性があ

る。さらに、親油性物質の取り込み速度定数に、温度が影響することも示されている(Sijm ら, 1993)が、

温度変化について一貫性のある影響を見出さなかった研究者もある(Black ら, 1991)。

2. 排泄速度に影響する要因

排泄速度は、主に生物体の大きさ、脂質含量、その生物体の生物変換プロセスおよび被験物質の親油性

の関数である。

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2.1 生物体の大きさ

取り込み速度と同様に、排泄速度も生物体の大きさに依存する。小型生物(例えば幼魚)の方が大型生

物より鰓表面積の体重に対する比が大きいので、未成熟/成熟段階の魚よりも、幼生段階の魚の方が、定常

状態に、ひいては「毒性用量平衡」に早く到達することが示された(Peterson と Kristensen, 1998)。定

常状態に達するのに必要な時間は k2に依存するので、生物濃縮試験に用いる魚のサイズは、定常状態を達

成するのに必要な時間に重要な関係を持っている。

2.2 脂質含量

分配の関係から定常状態において、脂質含量の多い生物は、脂質の少ない生物よりも高濃度の親油性物

質を蓄積する傾向がある。したがって、身体に対する負荷はしばしば、ウナギのような「脂肪の多い」魚

の方が、タラのような「脂肪の少ない」魚より大きい。さらに、脂質「プール」が親油性の高い物質の貯

蔵場所として作用することもある。絶食またはその他の生理学的変化が脂質バランスを変化させ、こうし

た物質を放出させて、遅発的な影響が出る結果になることもある。

2.3 代謝

2.3.1 一般に、代謝または生物体内変換は、親化合物をより水溶性の高い代謝物への変換に導く。その結

果、より親水性の高い代謝物が親化合物よりも容易に身体から排泄されるであろう。化合物の化学構造が

変化した場合、その化合物の多くの性質も変化する。結果的に代謝物は生物体内で、組織内分布、生物蓄

積性、難分解性、および排泄経路と排泄速度の点で違った挙動をすることになる。生物変換はまた、化合

物の毒性を変化させることもある。こうした毒性の変化は、生物体にとって有益であることもあれば有害

となることもある。生物変換は、生物体内の濃度が、毒性反応が現れる程度に高くなるのを防止すること

もある(解毒)。ただし、たとえばベンゾ(a)ピレンで知られているように、親化合物よりも毒性の高い

代謝物が形成されることもある(生体内活性化)。

2.3.2 陸生生物は進化した生物変換システムを備えており、このシステムは一般に水生環境に棲息する生

物よりも優れている。この違いの理由は、鰓呼吸生物では化合物を比較的容易に、水中に排泄できるので、

異物質の生物変換がそれほど重要ではないという事実によるものと思われる(Van Dem Berg ら, 1995)。水生生物における生物変換の能力に関しては、異物の生物変換能力は一般に、軟体動物<甲殻類<魚類の

順で増加する(Wofford ら, 1981)。

3. 物質の親油性

魚では、k2(排泄速度定数)と log Kow (または BCF)の間に負の線形関係が何人かの研究者により示さ

れている(例えば Spacie と Hamelink, 1982; Gobas ら, 1989; Petersen と Kristensen, 1998)が、k1(取

り込み速度定数)の方が多少、物質の親油性との関連性が低い(Connel, 1990)。したがって、結果とし

て得られるBCFは一般的に物質の親油性が高いほど大きくなる、すなわち強い代謝を受けない物質では、

log BCF と log Kowに相関性がある。

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附属書9

附属資料Ⅴ

テストガイドライン

1. 言及されているガイドラインのほとんどは、これらを発行している団体の編纂文書に示されている。

主な参照文書は以下の通り。

(a) EC guidelines: Comission Regulation (EC) No 440/2008 of 30 May 2008 laying down test meshods pursuant to Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council on the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH);

(b) ISO guidelines: 各国の標準化機構、あるいは国際標準化機構(ISO)から入手できる。

(ホームページ:http://www.iso.ch/)

(c) OECD guidelines for the testing of chemicals. OECD, Paris, 1993. 定期的に更新。 (ホームページ:http://www.oecd.org/env/testguidelines);

(d) OPPTS guidelines: US-EPA のホームページ(http://www. epa.gov/ opptsfrs/ home/guidelin.htm) (e) ASTM: ASTM のホームページ:(http://www.astm.org)”standards”でさらに検索できる。

2. 水性毒性に関するテストガイドライン 1

OECD Test Guideline 201 (1984) Alga, Growth Inhibition Test OECD Test Guideline 202 (1984) Daphnia sp. Acute Immobilisation Test and Reproduction Test OECD Test Guideline 203 (1992) Fish, Acute Toxicity Test OECD Test Guideline 210 (1992) Fish, Early-Life Stage Toxicity Test OECD Test Guideline 211 (1998) Daphnia magna Reproduction Test OECD Test Guideline 212 (1998) Fish, Short-term Toxicity Test on Embryo and Sac-Fry Stages OECD Test Guideline 215 (2000) Fish, Juvenile Growth Test OECD Test Guideline 221Lemna sp. Growth inhibition test EC C.1: Acute Toxicity for Fish (1992) EC C.2: Acute Toxicity for Daphnia (1992) EC C.3: Algal Inhibition Test (1992) EC C.14: Fish Juvenile Growth Test (2001) EC C.15: Fish, Short-term Toxicity Test on Embryo and Sac-Fry Stages (2001) EC C.20: Daphnia Magna Reproduction Test (2001)

OPPTS Testing Guidelines for Environmental Effects (850 Series Public Drafts):

850.1000 Special consideration for conducting aquatic laboratory studies 850.1000 Special consideration for conducting aquatic laboratory studies 850.1010 Aquatic invertebrate acute toxicity, test, freshwater daphnids 850.1010 Aquatic invertebrate acute toxicity, test, freshwater daphnids 850.1020 Gammarid acute toxicity test 850.1020 Gammarid acute toxicity test 850.1035 Mysid acute toxicity test 850.1035 Mysid acute toxicity test 850.1045 Penaeid acute toxicity test 850.1045 Penaeid acute toxicity test 850.1075 Fish acute toxicity test, freshwater and marine 850.1075 Fish acute toxicity test, freshwater and marine 850.1300 Daphnid chronic toxicity test 850.1300 Daphnid chronic toxicity test

1 以下のリストは、新しいガイドランの採用、あるいはその原案の推敲に応じて、定期的に更新する必要があろう。

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850.1350 Mysid chronic toxicity test 850.1350 Mysid chronic toxicity test 850.1400 Fish early-life stage toxicity test 850.1400 Fish early-life stage toxicity test 850.1500 Fish life cycle toxicity 850.1500 Fish life cycle toxicity 850.1730 Fish BCF 850.1730 Fish BCF 850.4400 Aquatic plant toxicity test using Lemna spp. Tiers I and II 850.4400 Aquatic plant toxicity test using Lemna spp. Tiers I and II 850.4450 Aquatic plants field study, Tier III 850.4450 Aquatic plants field study, Tier III 850.5400 Algal toxicity, Tiers I and II 850.5400 Algal toxicity, Tiers I and II

3. 生物的および非生物的分解に関するテストガイドライン 2

ASTM E 1196-92

ASTM E 1279-89 (95) Standard test method for biodegradation by a shake-flask die-away method

ASTM E 1625-94 Standard test method for determining biodegradability of organic chemicals in semi-continuous activated sludge (SCAS)

EC C.4. A to F: Determination of ready degradability. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1992)

EC C.5. Degradation: biochemical oxygen demand. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1992)

EC C.7. Degradation: abiotic degradation: hydrolysis as a function of pH. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1992)

EC C.9. Biodegradation: Zahn-Wellens test. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1988)

EC C.10. Biodegradation: Activated sludge simulation tests. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1998)

EC C.11 Biodegradation: Activated sludge respiration inhibition test. Directive 67/548/EEC, Annex V. (1988)

EC C.12. Biodegradation: Modified SCAS test. Directive 67/548/EEC, Annex V.(1998)

ISO 9408 (1991). Water quality – Evaluation in an aqueous medium of the “ultimate” biodegradability of organic compounds – Method by determining the oxygen demand in a closed respirometer

ISO 9439 (1990). Water quality – Evaluation in an aqueous medium of the “ultimate” biodegradability of organic compounds – Method by analysis of released carbon dioxide

ISO 9509 (1996). Water quality – Method for assessing the inhibition of nutrification of activated sludge micro-organisms by chemicals and wastewaters.

ISO 9887 (1992). Water quality – Evaluation of the aerobic biodegradability of organic compounds in an aqueous medium – Semicontinuous activated sludge method (SCAS) ISO 9888 (1991). Water quality – Evaluation of the aerobic biodegradability of organic compounds in an aqueous medium – Static test (Zahn-Wellens method)

ISO 10707 (1994). Water quality – Evaluation in an aqueous medium of the “ultimate” biodegradability of organic compounds – Method by analysis of biochemical oxygen demand (closed bottle test) ISO 11348 (1997). Water quality – Determination of the inhibitory effect of water samples on the light emission of Vibrio fischeri (Luminescent bacteria test)

ISO 11733 (1994). Water quality – Evaluation of the elimination and biodegradability of organic compounds in an aqueous medium – Activated sludge simulation test

ISO 11734 (1995). Water quality – Evaluation of the “ultimate” anaerobic biodegradability of organic compounds in digested sludge – Method by measurement of the biogas production

――――――――――― 2 以下のリストは、新しいガイドラインの採用、あるいはその原案の推敲に応じて、定期的に更新する必要があろう。

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ISO/DIS 14592 (1999). Water quality – Evaluation of the aerobic biodegradability of organic compounds at low concentrations in water. Part 1: Shake flask batch test with surface water or surface water/sediment suspensions (22.11.1999)

OECD Test Guideline 111 (1981). Hydrolysis as a function of pH. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 209 (1984). Activated sludge, respiration inhibition test. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 301 (1992). Ready biodegradability. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 302A (1981). Inherent biodegradability: Modified SCAS. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 302B (1992). Zahn-Wellens/EMPA test. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 302C (1981). Inherent Biodegradability. Modified MITI test (II). OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 303A (1981). Simulation test –aerobic sewage treatment: Coupled units test.

OECD guidelines for testing of chemicals.

OECD Test Guideline 304A (1981). Inherent biodegradability in soil. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 306 (1992). Biodegradability in seawater. OECD guidelines for testing of chemicals

OECD Test Guideline 307: Aerobic and Anaerobic Transformation in Soil. OECD guidelines for testing of chemicals.

OECD Test Guideline 308: Aerobic and Anaerobic Transformation in Aquatic Sediment Systems. OECD guidelines for testing of chemicals.

OECD Test Guideline 309: Aerobic Mineralisation in Surface Water – Simulation Biodegradation Test. OECD guidelines for testing of chemicals.

OPPTS 835.2110 Hydrolysis as a function of pH

OPPTS 835.2130 Hydrolysis as a function of pH and temperature

OPPTS 835.2210 Direct photolysis rate in water by sunlight

OPPTS 835.3110 Ready biodegradability

OPPTS 835.3170 Shake flask die-away test

OPPTS 835.3180 Sediment/water microcosm biodegradability test

OPPTS 835.3200 Zahn-Wellens/EMPA test

OPPTS 835.3210 Modified SCAS test

OPPTS 835.3300 Soil biodegradation

OPPTS 835.3400 Anaerobic biodegradability of organic chemicals

OPPTS 835.5270 Indirect photolysis screening test: Sunlight photolysis in waters containing dissolved humic substances

4. 生物蓄積に関するテストガイドライン 3

ASTM, 1993. ASTM Standards on Aquatic Toxicology and Hazard Evaluation. Sponsored by ASTM Committee E-47 on Biological Effects and Environmental Fate. American Society for Testing and Materials. 1916 Race Street, Philadelphia, PA 19103. ASTM PCN: 03-547093-16., ISBN 0-8032-1778-7

ASTM E 1022-94. 1997. Standard Guide for Conducting Bioconcentration Tests with Fishes and Saltwater Bivalve Molluscs. American Society for Testing and Materials

EC, 1992. EC A.8. Partition coefficient. Annex V (Directive 67/548/EEC). Methods for determination of physico-chemical properties, toxicity and ecotoxicity

EC, 1998. EC.C.13 Bioconcentration: Flow-through Fish Test

EPA-OTS, 1982. Guidelines and support documents for environmental effects testing. Chemical fate test guidelines and support documents. United States Environmental Protection Agency. Office of Pesticides and Toxic Substances, Washington, D.C. 20960. EPA 560/6-82-002. (1982 年 8 月および更新

3 以下のリストは、新しいガイドラインの採用、あるいはその原案の推敲に応じて、定期的に更新する必要があろう。

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版)。および Code of Federal Regulations も参照。Protection of the Environment Part 790 から 後まで。1993 年 7 月 1 日改訂。これらのテストガイドラインの 新改訂版についての ONLINE 情報:US National Technical Information System

EPA-FIFRA, 1982. The Federal Insecticide, Fungicide and Rodenticide Act. Pesticide Assessment Guidelines, subdivision N: chemistry: Environmental fate, and subdivision E, J & L: Hazard Evaluation. Office of Pesticide Programs. US Environmental Protection Agency, Washington D.C. (1982 および更新版)。これらのテストガイドラインの 新改訂版についての ONLINE 情報: US National Technical Information System

OECD Test Guideline 107, 1995. OECD Guidelines for Testing of Chemicals. Partition Coefficient (n-octanol/water): Shake Flask Method

OECD Test Guideline 117, 1989. OECD Guidelines for Testing of Chemicals. Partition Coefficient (n-octanol/water), High Performance Liquid Chromatography (HPLC) Method

OECD Test Guideline 305, 1996. Bioconcentration: Flow-through Fish Test. OECD Guidelines for Testing of Chemicals

OECD Test Guideline 305 A-E, 1981. Bioaccumulation: OECD Guidelines for Testing of Chemicals

OECD Test Guideline 123: Partition Coefficient (1-Octanol/Water): Slow-Stirring Method. OECD guidelines for testing of chemicals

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附属書9

附属資料Ⅵ

参考文献

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附属書10

水性媒体中の

金属および金属化合物の

変化/溶解に関する手引き

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附属書10

水性媒体中の金属および金属化合物の変化/溶解に関する手引き1

A10.1 序文

A10.1.1 この試験の手引きは、一般に環境中に生じる条件を再現した一連の標準的な実験的条件の下で、金属および難水溶性の金属化合物が、利用性のある水溶性イオン性やその他の金属を含んだ物質種を生成する速度と程度を決定するために考案されたものである。これらが決定されれば、その情報を、水溶性物質種が由来する金属または難水溶性金属化合物の、短期および長期の水生毒性を評価するのに用いることができる。この手引きは、金属並びに難水溶性の無機金属化合物(SSIMs)の毒性試験およびデータ解釈の確立に向けた OECD の下での国際的な努力の成果である(本附属書の参考文献 1 および附属書 9 のA9.7 章を参照)。OECD とEU 内における 近の会議と討議の結果、数種の金属と金属化合物について、本手引きの基礎となる実験作業が行われ、報告された(本附属書の参考文献5~11)。

A10.1.2 金属および難溶性金属化合物の短期および長期の水生毒性に関する評価は、(a)標準的な水性媒体中における変化または溶解によって生成される、溶液中の金属イオン濃度と、(b)水溶性金属塩に関して測定された、適切な標準的環境毒性データ(急性および慢性毒性値)とを比較することになっている。本文書は、こうした変化/溶解試験を実施するための指針を提供するものである。こうした変化/溶解プロトコールの結果を用いて、環境有害性の分類を行うための戦略については、この手引きの範囲ではなく、附属書9のA9.7を参照されたい。

A10.1.3 本手引きに関しては、金属および難溶性金属化合物の変換が、試験との関係で以下のように定義、特徴

付けられている。

(a) 金属M0は、元素状態では水に溶けないが、変換されて利用性のある形態をとることがある。これ

は、元素状態の金属が媒体と反応して可溶性の陽イオン性または陰イオン性の生成物を形成し、そ

の過程においてこの金属が中性もしくはゼロ酸化状態からより高い酸化数の状態に酸化、もしくは

変換することを意味している。

(b) 酸化物や硫化物などの単純な金属化合物においては、金属は既に酸化された状態で存在するので、

そうした化合物が水性媒体に導入されても、さらに金属酸化が起こることはありそうもない。しか

し、酸化状態に変化はなくても、媒体との相互作用によって、より可溶性の形態を生成することは

ある。難溶性の金属化合物は、その溶解度積を算定することが可能であり、かつ溶解によって少量

の利用性のある形態を生成する化合物と考えることができる。しかし例えば水酸化アルミニウムの

ように、 終的な溶液濃度は変換/溶解試験の過程で析出する金属化合物の溶解度積などの、数多

くの要因によって影響されることは認識すべきである。

A10.2 原則

A10.2.1 この試験の手引きは、pHの緩衝能力を持つ水性媒体中で、様々な量の被験物質を攪拌し、一定時間ごと

にサンプルをとって水溶液の分析を行い、水中に溶存する金属イオンの濃度を測定するという、単純な実験手続に

基づく、標準的な実験室での変化/溶解プロトコールとして意図されたものである。以下のテキストでは、2つの異

なったタイプの試験について述べる。

A10.2.2 変化/溶解のスクリーニング試験:難溶性金属化合物

A10.2.2.1 難溶性金属化合物に関しては、金属化合物の溶解限度によって、または変化/溶解のスクリーニング試

験によって溶存する金属の 高濃度を決定できる。単回添加で行われるこのスクリーニング試験の意図は、溶解ま

たは速やかな変換をうけてその環境毒性が可溶性形態のそれと区別できないような化合物を特定することにある。

――――――――――――― 1 OECD Environment. Health and Safety Publications, Series on Testing and Assessment, No.29, Environment Directorate,

Organisation for Economic Co-operation and Development, April 2001.

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A10.2.2.2 市販されている も小さな代表粒子サイズを持つ難溶性金属化合物が、100mg/lの単回添加で水性媒体

に加えられる。これによる溶解は、24 時間の攪拌によって達成される。24 時間の攪拌の後、溶解した金属イオン

の濃度が測定される。

A10.2.3 変化/溶解の詳細試験:金属および難溶性金属化合物

A10.2.3.1 変化/溶解の詳細試験は、様々な用量での添加が行われた水相において、一定の時間の後に金属および

金属化合物の溶解または変換のレベルを決定するためのものである。通常は塊状または粉末状の金属が3種類の異

なる添加量(1、10、100mg/l)で水性媒体に加えられる。100mg/lの単回添加は、溶解性の金属物質種の著しい放

出が予想されない場合に行われる。変化/溶解は、微粒子の磨耗を起こさない、標準化された攪拌作業によって得ら

れるものである。短期の変化/溶解のエンドポイントは、7 日間の変化/溶解期間の後に得られる溶存金属イオン濃

度に基づくものである。長期の変化/溶解のエンドポイントは、1mg/lの単回添加を用いる28日間の変化/溶解試験

によって得られるものである。

A10.2.3.2 pH は変化/溶解に著しく影響するので、スクリーニング試験も詳細試験も原則的には溶液中の溶存金

属イオン濃度が 大になる pH 値で行うべきである。酸性湖に対する長期的な影響の可能性を考慮するために 5.5~8.5のpH値を用いるべき28日間の詳細試験を除き、一般の環境に見出される条件に照らせば、6~8.5の範囲の

pH値を用いなければならない。

A10.2.3.3 加えて、試験サンプル粒子の表面積は変化/溶解の速度と程度に大きく影響するので、粉末は市販され

ている中で も小さな代表粒子径のものを試験し、塊状のものは通常取り扱われ、使用される大きさのものを試験

する。こうした情報がない場合は、直径 1mm のデフォルト値を用いるべきである。塊状の金属の場合は、十分な

根拠がある場合を除いて、このデフォルト値を超えるべきではない。似たようなサンプルを比較し、特徴付けるた

めに、比表面積を測定すべきである。

A10.3 試験の適用範囲

上記の試験はすべての金属および難溶性の無機金属化合物に適用できる。一部の水反応性金属のような例外は根

拠を明らかにすべきである。

A10.4 被験物質に関する情報

変化/溶解試験では市販されている状態の物質を用いるべきである。試験結果を正しく解釈できるようにするため

に、被験物質に関して次に示す情報を得ることが重要である。

(a) 物質の名称、化学式、市販の用途

(b) 調製のための物理化学的な方法

(c) 試験に用いる製品バッチの特定

(d) 化学的特性:全体の純度(%)および特定の不純物(%またはppm)

(e) 密度(g/cm3)または比重

(f) 比表面積の測定値(m2/g)-BET N2吸脱着法、または同等の技術によって計測された値

(g) 貯蔵期間および品質期限

(h) 既知の溶解度データおよび溶解生成物

(i) 危険有害性の特定と安全な取り扱いのための注意点

(j) 安全データシート(SDS)またはこれに相当するもの

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A10.5 試験方法についての解説

A10.5.1 試験器具と試薬

A10.5.1.1 次に示す器具および試薬は、試験の実施に必要なものである。

(a) 予備洗浄および酸洗いされた密閉式ガラスサンプル瓶(A10.5.1.2)

(b) 変化/溶解媒体(ISO6341)(A10.5.1.3)

(c) 緩衝能のある試験溶液(A10.5.1.4) (d) 攪拌設備:回転式振騰器、放射状羽根車(インペラー)、実験室用振騰器、または同等の器

具(A10.5.1.5)

(e) 適切なフィルター(例えば0.2μmのアクロディスク)または固液分離用遠心機(A10.5.1.7) アクロディスクフィルターは、時間 0 においてサンプル内で微量金属の濃度が高まることを避ける

ために、未使用の媒体で少なくとも3回洗浄すべきである。

(f) 温度制御キャビネットやウォーターバスなど、反応器の温度を20℃~23℃の範囲内で±1.5℃ まで制御できる装置 (g) シリンジまたは自動ピペット

(h) +0.2pH単位の範囲内で容認可能な結果が得られるpHメータ

(i) 温度表示機能付の溶存酸素メータ

(j) 温度計または熱電対

(k) 望ましくは 小慢性環境毒性の参照値の 5 倍低い定量限界(LOQ)を備えた、許容精度を有する金属

分析用の分析装置 (例えば原子吸光分光計、軸方向誘導結合プラズマ分光計)

A10.5.1.2 すべてのガラス製の試験容器は、標準の実験方法によって注意深く洗浄し、酸洗浄(HClなど)を行い、

次いで脱イオン水ですすがなければならない。試験容器の大きさと形状(1 または 2 リットル反応器)は、指定さ

れた攪拌によって溢れ出すことなく 1~2 リットルの水性媒体を入れるのに十分なものであるべきである。空気緩

衝を用いる場合(pH8 で行われる試験)は、上部空間/液体比率を増大させることによって(例えば 1 リットルの

媒質に対して2.8リットルのフラスコ)、媒質の空気緩衝能力を向上させることが勧められる。

A10.5.1.3 標準の変換/溶解用の媒体としては、ISO6341 に基づく標準人工調整水を用いるべきである 2。この媒

体は、試験に使用する前に、濾過(0.2μm)によって滅菌処理を行うべきである。(pH8で実施される試験用の)

標準の変換/溶解媒体の化学組成は次のとおりである。

NaHCO3 :65.7mg/l KCl :5.75mg/l CaCl2・2H2O :294mg/l MgSO4・7H2O :123mg/l

低いpH値または高いpH値で実施される試験のための、調整された化学組成はA10.5.1.7に示す。

A10.5.1.4 媒質内の全有機炭素濃度は、2.0mg/lを超えるべきではない。

―――――――――――― 2 危険有害性分類を目的とする場合、溶解/変化プロトコールの結果が金属および金属化合物に関する既存の環境毒性

データと比較される。しかし、データの検証などを目的とする場合は、完了した変換試験の水性媒体を直接、OECD202および 203 のミジンコ及び魚類の環境毒性試験に用いることが適切なことがあるかもしれない。変化媒体における

CaCl2・2H2O及びMgSO4・7H2Oの濃度を ISO6341の媒体の5分の1にまで下げれば、生成された変化媒体はまた(微

量栄養素を添加すれば直ちに)OECD201の藻類環境毒性試験において利用できる。

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A10.5.1.5 金属化合物の溶解度または変化が高濃度の含有塩素もしくはその他の海水に固有の化学的性質によっ

て著しく影響されると予想され、また海生生物種での毒性データが入手できる場合は、淡水媒体に加え、基準化さ

れた海水試験媒体も考慮されてよい。海水を考慮する際、標準の海水媒体の化学組成は次のとおりである。

NaF :3mg/l SrCl2・6 H2O :20mg/l H3BO3 :30mg/l KBr :100mg/l KCl :700mg/l CaCl2・2 H2O :1.47g/l Na2SO4 :4.0g/l MgCl2・6 H2O :10.78g/l NaCl :23.5g/l Na2SiO3・9 H2O :20mg/l NaHCO3 :200mg/l

塩分濃度は34±0.5g/kg、またpHは8.0±0.2とすべきである。また人工調整塩水からは微量金属を取り除いて

おくべきである(ASTM E 729-96)。

A10.5.1.6 変化/溶解試験は、定められたpH域内において、溶液中の溶存金属イオン濃度が 大になるpH値にお

いて実施すべきである。スクリーニング試験と 7 日間の詳細試験では、6~8.5 の範囲内の pH 域を用い、28 日間

の詳細試験では5.5~8.5までのpH域を用いるべきである。(A10.2.3.2)

A10.5.1.7 pH8における緩衝は空気との平衡によって得ることができ、1週間の試験期間においては、CO2がpHを平均で±0.2pH単位の範囲内に維持するに十分な自然の緩衝機能を果たす(附属書10の参考文献7)。上部空間

/液体の比率を引き上げることで媒体に対する空気の緩衝能力を改善できる。

下はpH7から6まで、上はpH8から8.5までのpH調整および緩衝については、表A10.1に推奨される媒質の

化学組成と上部空間に通すべき空気中のCO2濃度、ならびにpHの計算値を示す。

表A10.1 試験溶媒の推薦組成 媒体の化学組成 NaHCO3 6.5 mg/l 12.6mg/l 64.75mg/l 194.25mg/l

KCl 0.58mg/l 2.32mg/l 5.75mg/l 5.74mg/l

CaCl2・2H2O 29.4mg/l 117.6mg/l 294mg/l 29.4mg/l

MgSO4・7H2O 12.3mg/l 49.2mg/l 123.25mg/l 123.25mg/l

試験容器内のCO2濃度(大気緩衝) 0.50% 0.10% 0.038% (大気) 0.038% (大気)

pHの計算値 6.09 7.07 7.98 8.5

注記 1:pHはFACT (Facility for the Analysis of Chemical Thermodynamics) システム (http://www.crct.polymtl.ca/fact/fact.htm)を用いて計算したものである。

注記 2:プロトコールは pH 範囲 6.0-8.0 についてのみ有用性が確認されているが、本表は pH5.5 を得るのを妨げ

るものではない。pH8.5の組成は、金属存在下では実験的には確認されていない。 A10.5.1.8 溶存金属成分の化学変化および変換の速度に与える影響がわずかであれば、同等の代替緩衝法を使用し

てもよい。酸やアルカリを使用した試験中はpH値は変更されるべきではない。

A10.5.1.9 変化/溶解の詳細試験においては、被験物質の表面状態維持ならびに試験中に形成された固体反応生成

物の被覆の状態を維持しながら、被験物質に対する水性媒体の流れを維持するのに十分な攪拌を行うべきである。

このことは、水性媒体1リットルの場合には、次の器具を使用することで達成できよう。

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(a) 1リットル反応器の底から5cmに羽根をもつ、速度200r.p.m.に設定された放射状羽根車。この放射状

羽根車は、PVC コーティングされた直径 8mm 長さ 350mm のスチール棒に幅 40mm 高さ 15mm の

ポリプロピレン製羽根を2枚固定したものからなる。

(b) 1.0~3.0リットルのゴム栓付きフラスコで、速度100r.p.m.に設定された回転式攪拌器または実験室用

振騰器に設置されたもの。

表面状態の維持と溶液の均質化が図れるものであれば、この他の低速攪拌方法も用いることができる。

A10.5.1.10 固体・液体分離方法の選択は、溶存金属イオンのフィルターへの吸着が起こるか、および A10.5.1.9に述べた攪拌方法によって懸濁が生じるかに依存する。他方、懸濁は粒子径分布および粒子密度に依存する。約

6g/cm3を超える密度を持ち、50%粒子径の範囲が<8μm の固形物については、経験上A10.5.1.9 に述べた低速攪

拌方法によって懸濁は生じえないことが示されている。したがって、例えば直径25mmの0.2μm親水性ポリエー

テルサルフォン(PES)メンブレンシリンジフィルター(0.8μm のプレフィルターを設置してもよい)を用いて

のサンプルの濾過によって、実質的に固形物を除かれた溶液が得られる。

しかし、懸濁が起こっている場合は、溶液サンプルを採取する攪拌を中止して、約5分間静置し、懸濁物を沈殿

させるのが有効である。

A10.5.2 必須条件

A10.5.2.1 分析方法

全溶存金属分析のための適切な検証済の分析方法は、こうした研究には不可欠である。分析上の検出限界は、環

境毒性試験による適切な慢性あるいは長期の毒性値より低くするべきである。

分析の検証に関する次の事項は、報告すべき 低事項である。

(a) 分析方法の検出限界および定量限界

(b) 適用される分析範囲内における分析上の直線性が保たれる範囲

(c) 変換媒体からなるブランクラン(試験中に行うことができる)

(d) 変換媒体が溶存金属イオンの測定に与えるマトリックス効果

(e) 変換試験終了後のマスバランス(%)

(f) 分析の再現性

(g) 溶存金属イオンのフィルターへの吸着性(固体金属と溶出イオンとを分離するために濾過法が用い

られる場合)

A10.5.2.2 適切な溶媒pH値の決定

文献上の関連データが存在しない場合は、A10.2.3.2 および A10.5.1.6 に示した pH 域内で、変化/溶解が 大に

なるpH値で試験を行うために、予備スクリーニング試験を実施する必要があろう。

A10.5.2.3 変化データの再現性

A10.5.2.3.1 各サンプル採取時に、3つの試験容器からそれぞれ2回の繰り返しサンプリングを行う標準の試験設

定において、分布の狭い粒子径(例えば37~44μm)および全表面積範囲で試験された物質を定常的に添加する場

合には、容器内の変換データの変動は 10%未満、容器間の変動は 20%未満とするべきである(本附属文書、参考

文献5)。

A10.5.2.3.2 変化試験の再現性を評価するために、以下の手引きが与えられている。試験結果を利用して、繰り返

し試験容器または繰り返しサンプルの数を変えたり、微粒子をさらに選別することによって、 終の試験条件を調

整して再現性を高めることができる。予備試験もまた被験物質の変化速度の一次評価に利用できるほか、サンプル

採取頻度を定めるのにも利用できる。

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A10.5.2.3.3 変化/溶解媒体調製の際は、約30分間の攪拌をして水性媒体を緩衝雰囲気と平衡にさせることにより、

媒体のpH値を目的のpH値(空気緩衝またはCO2緩衝)に調整すべきである。物質を添加する前に少なくとも3サンプル(例えば 10~15ml)を試験媒体から採取し、コントロールおよびバックグラウンドとしての溶存金属濃

度を測定する。

金属または金属化合物(例えば媒質 1 リットル中に 100mg の固形物質)を含む、少なくとも 5 個の試験容器を

A10.5.1.9 に述べたように 20~23℃の温度域で±1.5℃に管理しながら攪拌し、24 時間後に各試験容器からシリン

ジで3 回ずつサンプルを採取する。固形物質と溶液はA10.5.1.10 に述べたようにメンブレンフィルターで分離し、

溶液は微量に金属を含むHNO31~2滴を滴下してpHを1に酸性化した後に全溶存金属濃度を分析する。

A10.5.2.3.4 同一の試験容器内および異なる試験容器間で溶存金属濃度の測定値の平均値および変動係数を計算

する。

A10.5.2.3.5 変化データの再現性を確保するため、以下の点が推奨される。

(a) 新しい実験室ではトレーニングセットを用いること;

(b) 特定の表面条件を有する1つの金属粉を標準管理に使用すること;

(c) 関連する化学品に対して責任を担う実験室が1つか2つあること 粉末に固有の表面積を確認する必要があろう。

A10.5.3 試験の実施

A10.5.3.1 溶解スクリーニング試験難溶性金属化合物

A10.5.3.1.1 溶解媒体を調製し、この媒体を少なくとも3個の試験容器に入れる(試験容器の数は予備試験で得ら

れた再現性に依存する)。水性媒体と空気、あるいは緩衝システム(A10.5.1.6~A10.5.1.8参照)と平衡にさせるた

め 30 分間の攪拌の後に、この媒体の pH 値、温度、溶存酸素濃度を測定する。次に少なくとも 2 回、10~15mlのサンプルを(固形物の添加前の)試験媒体から採取し、コントロールおよびバックグラウンドとしての溶存金属

濃度を測定する。

A10.5.3.1.2 試験容器に金属化合物を 100mg/l の用量で添加し、試験容器に蓋をして、急速かつ激しく攪拌する。

24時間の攪拌後、各試験容器においてpH値、温度、溶存酸素濃度を測定し、各試験容器から2ないし3回の溶液

サンプルをシリンジで採取し、上記A10.5.1.10に述べたように、この溶液をメンブレンフィルターに通し、酸性に

調整し(例えば1%のHNO3)、全溶存金属濃度を分析する。

A10.5.3.2 詳細試験金属および金属化合物

A10.5.3.2.1 A10.5.3.1.1を反復する。

A10.5.3.2.2 7 日間の試験では、1、10、100mg/l の物質負荷量を、それぞれ、水性媒体の入ったいくつかの試験

容器に添加する(試験容器の数はA10.5.2.3に述べたようにその再現性に依存する)。試験容器に蓋をして、A10.5.1.9に述べたように攪拌する。28日間の試験を行う場合は、1mg/lの添加試験が28日間まで延長されることになるが、

7日間と28日間の試験では同一のpH値を選ばなければならない。しかし、7日間の試験は6以上のpH値でしか

実施されないため、5.5~6 までの pH 域をカバーするには別個の 28 日間試験が必要となる。添加物質を加えない

コントロール試験を(すなわち、ブランク試験溶液)を並行して実施することもまた有効であろう。定められた時

間間隔で(例えば2時間、6時間、1、4、7日間など)、各試験容器についてpH値、温度、溶存酸素濃度を測定し、

各試験容器から少なくとも 2 回、溶液サンプル(例えば 10-15ml)をシリンジで採取する。固形物と溶存成分は

上記のA10.5.1.10 に述べた方法で分離する。この溶液は酸性に調整し(例えば1%のHNO3)、溶存金属濃度を分

析する。当初の 24 時間が経過して後、採取した媒体と同量の新たな溶解媒体を溶液に補充すべきである。以降の

サンプル採取ではこの操作を繰り返す。試験溶液から採取する 大量は当初の試験溶液量の20%を超えるべきでは

ない。3回続けての全溶存金属濃度データポイントが15%以下しか変化しなかった場合には、試験を中断すること

ができる。10および100mg/lの添加における 長試験期間は7日間で(短期試験)、1mg/lの添加における 長試

験期間は28日間である(長期試験)。

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A10.5.4 試験条件

A10.5.4.1 変化/溶解試験は、20-23℃の範囲内で、±1.5℃以内に管理された室温下で実施するべきである。

A10.5.4.2 変化/溶解試験は、A10.2.3.2 およびA10.5.1.6 に述べたpH 域内で実施される。試験溶液のpH 値は、

各溶液のサンプル採取間隔ごとに記録すべきである。pH値は、大半の試験では一定(±0.2単位)に保たれると予

想されるが、100mg/l の添加量で行う反応性微粉末の試験では、細かく分散した状態での、物質固有の性質によっ

て、いくらかの短期的なpH値の変動が見られた(本附属書 参考文献7)。

A10.5.4.3 反応容器内における水性媒体の上部空間は、大半の事例において溶存酸素濃度を大気飽和状態

(8.5mg/l)の 70%である約 6.0mg/l 以上に維持するのに適切な大きさであるべきである。しかし、一部の事例に

おいては、水溶液上部の空間における酸素分子の利用性によってではなく、固体と溶液との界面への溶存酸素の移

動、および同界面からの反応生成物の除去によって、反応速度が律速になることもある。この場合、平衡状態の回

復を待つ以外できることはほとんどない。

A10.5.4.4 化学的および生物学的な汚染、ならびに蒸発を抑えるために、変化/溶解反応はできる限り、密閉され

た容器で、かつ暗所で実施しなければならない。

A10.6 試験結果の取り扱い

A10.6.1 スクリーニング試験

24時間の溶存金属平均濃度を計算する(信頼区間を含む)。

A10.6.2 詳細試験:変化/溶解の程度を測定する

A10.6.2.1 短期試験

様々な短期テスト(7日間)において測定される溶存金属濃度は、時間に対してプロットし、できれば変化/溶解

速度を決定する。次に示す速度論モデルは変化/溶解曲線を解釈する際に使用できる。

(a) 直線モデル:

Ct =C0+kt、mg/l

ここで、 C0 = 時間 t=0における全溶存金属濃度初期値(mg/l) Ct = 時間 tにおける全溶存金属濃度(mg/l) k = 一次速度定数、mg/l・日 (b) 一次モデル: Ct =A(1-e(-kt))、mg/l

ここで、 A = 見かけの平衡時における溶存金属濃度限界(mg/l)=定数 Ct = 時間 tにおける全溶存金属濃度(mg/l) k = 一次の速度定数、1/日

(c) 二次モデル:

Ct =A(1-e(-at))+B(1-e(-bt))、mg/l

ここで、 Ct = 時間 tにおける全溶存金属濃度(mg/l) a = 一次の速度定数、1/日 b = 二次の速度定数、1/日 C = A+B = 溶存金属濃度限界(mg/l)

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(d) 反応速度式:

Ct =a [1-e-bt-(c/n){1+(be-nt-ne-bt)/(n-b)} ]、mg/l

ここで、

Ct = 時間 tにおける全溶存金属濃度(mg/l) a = 回帰係数(mg/l) b、c、d = 回帰係数(1/日) n = c+d

この他の反応速度式もまた適用できる(本附属書 参考文献7、8)。

変化試験における各繰り返しサンプル容器について、これらのモデルパラメータを回帰分析によって推計するこ

とができる。この手法は、同一繰り返しの連続測定間で自己相関による問題が起こるのを回避するためのものであ

る。これらの係数の平均値は、少なくとも3つの繰り返し試験容器を用いている場合は、標準偏差の分析を用いて

比較できる。決定係数、r2は、モデルの「適合度」の尺度として評価される。

A10.6.2.2 長期試験

1mg/l の添加量での 28 日間の試験から測定される溶存金属濃度を時間に対してプロットし、可能であれば

A10.6.1およびA10.6.2に述べたように、変化/溶解速度を決定する。

A10.7 試験報告

試験報告には、以下の情報を含むべきである(ただしこれらに限定されるわけではない)。(A10.4 および

A10.5.2.1を参照)

(a) スポンサーおよび試験機関の明示

(b) 被験物質の説明

(c) 試験媒体の組成と金属添加量の説明

(d) 用いた試験媒体の緩衝方法およびpH値の確認(A10.2.3.2およびA10.5.1.6~A10.5.1.8)、分析方法

の説明

(e) 試験器具および手順に関する詳細な説明

(f) 標準の金属溶液の調製

(g) 分析手法の検証結果

(h) 金属濃度、pH値、温度、酸素濃度の分析結果

(i) 様々な時間間隔で行った試験および分析の日時

(j) さまざまな時間間隔における溶存金属濃度の平均値(信頼区間を含む)

(k) 変化曲線(時間の関数としての全溶存金属濃度)

(l) 変化/溶解速度論による結果(解析された場合)

(m) 推定された反応速度式(解析された場合)

(n) 実験計画からの逸脱があった場合、その記録、および起こった理由

(o) 結果に影響を与えた可能性のある状況

(p) 記録および生データの参照

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附属書10

付録

参考文献

1. "Draft Report of the OECD Workshop on Aquatic Toxicity Testing of Sparingly Soluble Metals, Inorganic Metal Compounds and Minerals", Sept. 5-8, 1995, Ottawa

2. OECD Metals Working Group Meeting, Paris, June 18-19, 1996 3. European Chemicals Bureau. Meeting on Testing Methods for Metals and Metal Compounds, Ispra,

February 17-18, 1997 4. OECD Metals Working Group Meeting, Paris, October 14-15, 1997 5. LISEC1 Staff, "Final report “transformation/dissolution of metals and sparingly soluble metal compounds

in aqueous media - zinc", LISEC no. BO-015 (1997) 6. J.M. Skeaff2 and D. Paktunc, "Development of a Protocol for Measuring the Rate and Extent of

Transformations of Metals and Sparingly Soluble Metal Compounds in Aqueous Media. Phase I, Task 1: Study of Agitation Method." Final Report, January 1997. Mining and Mineral Sciences Laboratories Division Report 97-004(CR)/Contract No. 51545

7. Jim Skeaff and Pierrette King, "Development of a Protocol For Measuring the Rate and Extent of Transformations of Metals and Sparingly Soluble Metal Compounds in Aqueous Media. Phase I, Tasks 3 and 4: Study of pH and of Particle Size/Surface Area.", Final Report, December 1997. Mining and Mineral Sciences Laboratories Division Report 97-071(CR)/Contract No. 51590

8. Jim Skeaff and Pierrette King, Development of Data on the Reaction Kinetics of Nickel Metal and Nickel Oxide in Aqueous Media for Hazard Identification, Final Report, January 1998. Mining and Mineral Sciences Laboratories Division Report 97-089(CR)/Contract No. 51605

9. LISEC Staff, "Final report “transformation/dissolution of metals and sparingly soluble metal compounds in aqueous media - zinc oxide", LISEC no. BO-016 (January, 1997)

10. LISEC Staff, "Final report “transformation/dissolution of metals and sparingly soluble metal compounds in aqueous media - cadmium", LISEC no. WE-14-002 (January, 1998)

11. LISEC Staff, "Final report “transformation/dissolution of metals and sparingly soluble metal compounds in aqueous media - cadmium oxide", LISEC no. WE-14-002 (January, 1998)

関連文献

1. OECD Guideline for testing of chemicals, Paris (1984). Guideline 201 Alga, Growth Inhibition test 2. OECD Guideline for testing of chemicals, Paris (1984). Guideline 202 :Daphnia sp. Acute immobilisation

test and Reproduction Test 3. OECD Guideline for testing of chemicals, Paris (1992). Guideline 203 : Fish, Acute Toxicity Test 4. OECD Guideline for testing of chemicals, Paris (1992). Guideline 204 : Fish, Prolonged Toxicity Test : 14-

Day study3 5. OECD Guideline for testing of chemicals, Paris (1992). Guideline 210 : Fish, Early-Life Stage Toxicity

Test 6. International standard ISO 6341 (1989 (E)). Determination of the inhibition of the mobility of Daphnia

magna Straus (Cladocera, Crustacea)

1 LISEC, Craenevenne 140, 3600 Genk, Belgium.

2 CANMET, Natural Resources Canada, 555 Booth St., Ottawa, Canada K1A 0G1

3 本テストガイドラインは無効とされたが、2014年4月2日迄は引き続き使用しても良い。

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化学品の分類および表示に関する世界調和システム

化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)は、1992 年リオ・デ・ジャネイロでの国連環境開発

会議におけるアジェンダ 21 の決議に基づいて、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)そして国際

連合の協力によって開発された。

GHS は危険有害性の種類によって化学品を分類し、ラベルや安全データシートを含めた調和された危険有害

性情報の要素を提案している。その目的は化学品の物理的危険有害性や毒性に関する情報を、ヒトの健康や

環境の保護を増進するために、これらの化学品を取り使い、輸送しあるいは使用する際に利用できるようにする

ことである。GHS は、国家、地域あるいは世界レベルで化学品に関する法規制の調和の基礎ともなり、貿易を

容易にする重要な因子でもある。

GHS の主たる対象は政府、地域の機関そして国際機関ではあるが、GHS はまた最終的に採用された要求事

項を実施するであろう工業界に対しても十分な内容とガイダンスを含んでいる。

GHS は、2002 年 12 月に危険物輸送ならびに化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専

門家委員会によって採択され、実施における経験を得て、定期的に更新され、改訂されそして改善されている。

2002 年ヨハネスブルクで採択された持続可能な開発に関する世界首脳サミット(WSSD)の実施計画では、出

来る限り早期に GHS を実施するよう国々に呼び掛けている。

本 GHS 改訂 6 版では、特に以下のようなさまざまな新しいあるいは改訂された項目を含んでいる; 特に鈍感化

爆発物に関する新しい危険性クラスおよび自然発火性ガスに関する新しい危険性区分; いくつかの危険有害

性クラス(爆発物、単回ばく露による特定標的臓器毒性、吸引性呼吸器有害性および水生環境有害性)に関し

て判断基準を明確にするためのさまざまな規定; 安全データシート(9 節)に含まれる追加情報; 改訂され、さ

らに合理化された注意書きおよび小さな包装のラベルに対応した附属書 7 の新しい例など。

GLOBALLY HARMONIZED SYSTEM OF CLASSIFICATION AND LABELLING OF CHEMICALS

The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS) has been

developed through cooperation between the International Labour Organization (ILO), the Organization for

Economic Co-operation and Development (OECD) and the United Nations on the basis of a mandate

given in Agenda 21 by the 1992 United Nations Conference on Environment and Development (UNCED)

in Rio de Janeiro.

The GHS addresses classification of chemicals by types of hazard and proposes harmonized hazard

communication elements, including labels and safety data sheets. It aims at ensuring that information on

the physical hazards and toxicity of chemicals is available in order to enhance the protection of human

health and the environment during the handling, transport and use of these chemicals. The GHS also

provides a basis for harmonization of rules and regulations on chemicals at national, regional and

worldwide level, which is also an important factor for trade facilitation.

While Governments, regional institutions and international organizations are the primary audiences for

the GHS, it also contains sufficient context and guidance for those in industry who will ultimately be

implementing the requirements which have been adopted.

Page 530: 01 改訂6版GHS本文 序 - mhlw...i ST/SG/AC.10/30/Rev.6 化学品の分類および表示に関する 世界調和システム(GHS) 改訂6 版 国際連合 ニューヨーク

Adopted in December 2002 by the Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods and the

Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals, the GHS is regularly updated,

revised and improved as experience is gained in its implementation. The Plan of Implementation of the

World Summit on Sustainable Development (WSSD), adopted in Johannesburg in 2002, encourages

countries to implement the GHS as soon as possible.

This sixth revised edition of the GHS contains various new or revised provisions including, inter alia, a

new hazard class for desensitized explosives and a new hazard category for pyrophoric gases;

miscellaneous provisions intended to clarify the criteria for some hazard classes (explosives, specific

target organ toxicity following single exposure, aspiration hazard and hazardous to the aquatic

environment); additional information to be included in the Safety Data Sheets (section 9); revised and

further rationalized precautionary statements and a new example in Annex 7 addressing labelling of small

packagings.