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潤滑すべり条件下における金属及び PEEK 樹脂の焼付き挙動 赤垣 友治* 八木澤 崇広** Seizure Behaviors of Metal and PEEK under Oil Lubricated Sliding Contact Tomoharu AKAGAKI and Takahiro YAGISAWA * 機械工学科 ** 並木精密宝石(株) Abstract: The seizure behaviors of metal and polymer were studied under oil lubricated sliding contact. The experiments were carried out with a ball on ring wear tester. High carbon chromium steel (SUJ2) and Poly-ether-ether-ketone (PEEK) were used as the ball specimen with a diameter of 3/4”. The ring was a forging steel (SF540A). The sliding velocity was varied from 2 to 15m/s. The load was increased at a rate of 1N/s up to the maximum load of 1200N. The ring temperature was measured with a thermocouple located at 1mm blow the ring surface. The following conclusions were obtained. (1) SUJ2 transited clearly to seizure at a critical load depending on the sliding velocity. The critical load for transiting to seizure decreased with the increase of the slicing velocity. (2) PEEK didn’t transit to seizure at the lower sliding velocity less than 10m/s. At the higher sliding velocity of 15m/s, although the friction coefficient fluctuated as the load became high, PEEK didn’t clearly transit to seizure. Thus it was found that PEEK had a superior seizure-resistant property and a high potential for machine elements such as bearing material operating at high sliding velocity. Keywords: Seizure, SUJ2, PEEK, Oil Lubrication, Ring Temperature 1 . これまで水車発電機等に使用される大型すべり軸受材 料は,ホワイトメタル(WJ2)が主流であった.しかし, ホワイトメタルは,起動停止時に摩擦や摩耗が大きく, また油温の上昇や油の劣化により異常摩耗や焼付きを生 じる等の欠点を有する 1) .このため,近年製造される水 車発電機用の大型すべり軸受の材料が, WJ2 等の金属か PEEK PTFE 等の樹脂材料に急速に置き換わりつつ ある 2) PEEK は,高温・高強度で化学的にも安定して おり,成形性が良く,耐疲労性・耐クリープ性等の動的 耐久性にも優れている.PEEK 材料が大型すべり軸受を 含めて産業界で広く使用されるために,またそのメンテ ナンスのためには,種々の実験条件下で基本的な摩擦摩 耗特性や使用限界等が明らかにされなければならない. 現在,PEEK 材料の優れた摩擦摩耗特性に関する報告は 数多くあるが 3)-4) ,油潤滑,かつ高速・高面圧下のような 過酷なすべり条件下で摩擦摩耗特性や焼付き挙動を調べ た報告は少ない 5) .またその摩耗メカニズムや発生する 摩耗粒子に関する報告も少ない. そこで本研究では,樹脂材料として PEEK,金属材料 として高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を取り上げ,油潤滑, 高速,高荷重下で焼付き挙動を調べ,金属と樹脂の焼付 き挙動を比較検討した. 2 . 実験装置および方法 本研究で使用したボールオンリング型摩擦摩耗試験機 の概略図を図 1 に示す. Fig.1 Schematic diagram of experimental apparatus. Load Ring Ball Drain Lubricant Thermometer 八戸工業高等専門学校紀要 第 49 号  (2014.12) 1 Hachinohe National College of Technology NII-Electronic Library Service

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八戸工業高等専門学校紀要

第 49 号 (2014, 12)

潤滑すべり条件下における金属及び PEEK樹脂の焼付き挙動

赤垣 友治* ・ 八木澤 崇広**

Seizure Behaviors of Metal and PEEK under Oil Lubricated Sliding Contact

Tomoharu AKAGAKI and Takahiro YAGISAWA

* 機械工学科

** 並木精密宝石(株)

Abstract: The seizure behaviors of metal and polymer were studied under oil lubricated sliding contact. The experiments were carried out with a ball on ring wear tester. High carbon chromium steel (SUJ2) and Poly-ether-ether-ketone (PEEK) were used as the ball specimen with a diameter of 3/4”. The ring was a forging steel (SF540A). The sliding velocity was varied from 2 to 15m/s. The load was increased at a rate of 1N/s up to the maximum load of 1200N. The ring temperature was measured with a thermocouple located at 1mm blow the ring surface. The following conclusions were obtained. (1) SUJ2 transited clearly to seizure at a critical load depending on the sliding velocity. The critical load for transiting to seizure decreased with the increase of the slicing velocity. (2) PEEK didn’t transit to seizure at the lower sliding velocity less than 10m/s. At the higher sliding velocity of 15m/s, although the friction coefficient fluctuated as the load became high, PEEK didn’t clearly transit to seizure. Thus it was found that PEEK had a superior seizure-resistant property and a high potential for machine elements such as bearing material operating at high sliding velocity. Keywords: Seizure, SUJ2, PEEK, Oil Lubrication, Ring Temperature

1. 緒 言

これまで水車発電機等に使用される大型すべり軸受材

料は,ホワイトメタル(WJ2)が主流であった.しかし,ホワイトメタルは,起動停止時に摩擦や摩耗が大きく,

また油温の上昇や油の劣化により異常摩耗や焼付きを生

じる等の欠点を有する 1).このため,近年製造される水

車発電機用の大型すべり軸受の材料が,WJ2等の金属からPEEKやPTFE等の樹脂材料に急速に置き換わりつつある 2).PEEK は,高温・高強度で化学的にも安定しており,成形性が良く,耐疲労性・耐クリープ性等の動的

耐久性にも優れている.PEEK材料が大型すべり軸受を含めて産業界で広く使用されるために,またそのメンテ

ナンスのためには,種々の実験条件下で基本的な摩擦摩

耗特性や使用限界等が明らかにされなければならない.

現在,PEEK材料の優れた摩擦摩耗特性に関する報告は数多くあるが 3)-4),油潤滑,かつ高速・高面圧下のような

過酷なすべり条件下で摩擦摩耗特性や焼付き挙動を調べ

た報告は少ない 5).またその摩耗メカニズムや発生する

摩耗粒子に関する報告も少ない. そこで本研究では,樹脂材料として PEEK,金属材料として高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を取り上げ,油潤滑,

高速,高荷重下で焼付き挙動を調べ,金属と樹脂の焼付

き挙動を比較検討した.

2. 実験装置および方法

本研究で使用したボールオンリング型摩擦摩耗試験機

の概略図を図 1に示す.

Fig.1 Schematic diagram of experimental apparatus.

Load Ring

Ball

Drain

Lubricant

Thermometer

八戸工業高等専門学校紀要第 49 号  (2014.12) 1

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赤垣友治・八木澤崇広

本研究で使用した試験片の特性を表 1に示す.リング試験片は,直径 130mm,幅 20mmである.摩擦面は円筒研削仕上げを施した.ボール試験片は直径 3/4 インチで, SUJ2と PEEKの 2種類で市販品である.

Table.1 Properties of testing materials

Materials Hardness Rz (μm) Ring SF540A HV189±8 0.80±0.10

Ball SUJ2 HV785±15 0.05 PEEK HRR126 0.80

表 2 に実験条件を示す.実験は無負荷運転で空転トルクが安定したのを確認した後,回転しているリング試験

片にボール試験片を静かに押し当て,1N/sの割合で荷重を増加させた.実験は焼付きを生じるまで,または,本

実験装置に用いた圧縮コイルバネの最大荷重である

1177Nまで行った.リング温度はリング表面下 1mm位置に埋め込んだ φ0.5 の AC 熱電対で測定した.実験時に荷重と摩擦トルク及びリング温度を,ペンレコーダを

用いて連続的に記録すると共に,A/D変換器を用いて 0.5秒間隔でパソコンにデータを取り込んだ.

Table.2 Experimental conditions

Sliding velocity (m/s) 2.0, 4.1, 10.2, 15.0 Load (N) 0 ~ 1177

Lubricant None-additive turbine oil

ISO VG46 Flow rate (cc/min.) 64.5

Oil temperature (℃) 30±3

3. 実験結果及び考察

3.1 荷重と摩擦係数,リング温度の関係 図 2~4に,摩擦係数とリング温度の測定結果の一例を示す.図 2は,すべり速度 10.2m/sで SUJ2と摩擦した場合である.摩擦係数は,実験開始直後には 0~0.16の間で変動するが,その後約 0.03 で一定となった.しかし,荷重 174Nにおいて突然,摩擦係数が 0.03から 0.29へ急激に増加し,焼付きを生じた.リング温度は,実験開

始時に 30℃,焼付き発生時に 38℃で注目すべき変化は示さなかった.図 3は,すべり速度 10.2m/sで PEEKと摩擦した場合である.摩擦係数は,実験開始直後には0~0.08の間で変動するが,その後緩やかに減少し約 0.02で一定となった.SUJ2 を同条件で摩擦した場合に比べ,初期摩擦における摩擦係数が約 1/2 で小さいことがわかる.また,摩擦状態が安定した定常域においても,摩擦係数

が約 0.02で小さい.リング温度は最終的に 120℃まで達したが,摩擦係数は変化がなかった.図 4は,すべり速度 15.0m/sでPEEKと摩擦した場合である.摩擦係数は,実験開始直後から緩やかに減少し 0.03 以下で安定した.しかし,リング温度が約 130℃を超え,PEEKのガラス転移温度(143℃)に近づくと摩擦係数が不安定になり始め,0.02~0.04で変動した.また,約 160℃を超えると激しい油煙が発生した.しかし,SUJ2 の場合の様な急激な摩擦係数の増加はなく,最大荷重 1177Nまで焼付きに遷移しなかった.

Fig.2 Friction and temperature curves for SUJ2 at 10m/s.

Fig.3 Friction and temperature curves for PEEK at 10m/s.

Fig.4 Friction and temperature curves for PEEK at 15m/s.

0 20 40 60 80 100 120 140 160 1800

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0

10

20

30

40

50

60

Load (N)

Fric

tion

coe

ffic

ient

SUJ2, 10.2m/s Seizure

Friction coefficient

Ring temperature

Ring

tem

pera

ture

(℃)

0 200 400 600 800 1000 12000

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

Load (N)

Fric

tion

coe

ffic

ient

Ring

tem

pera

ture

(℃)

PEEK, 15.0m/s

Friction coefficient

Ring temperatureOil smoke

0 200 400 600 800 1000 12000

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0

20

40

60

80

100

120

Load (N)

Fric

tion

coe

ffic

ient

Ring

tem

pera

ture

(℃)

PEEK, 10.2m/s

Friction coefficient

Ring temperature

2

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潤滑すべり条件下における金属及び PEEK樹脂の焼付き挙動

3.2 摩擦係数とすべり速度の関係 図 5~6に,各すべり速度における荷重と摩擦係数の関係を示す.図 5は SUJ2の場合で,すべてのすべり速度で焼付きを生じた.すべり速度 2.0,4.1,10.2,15.0m/sに対して,焼付き荷重は各々,荷重 575,334,174,25Nである.このように,すべり速度が増加すると,焼付き

を生じる荷重は,小さくなる.図 6は,PEEKの場合である.すべり速度 2.0,4.1,10.2m/s では焼付きを生じることなく,摩擦係数が各々0.035,0.025,0.02で安定した.15.0m/s の高速下では,荷重が約 800N でリング温度が約 130℃を越えると,摩擦係数が不安定になり0.02~0.04 で変動した.また,荷重が更に増加し,約1050N,リング温度が約 160℃を越えると,激しい油煙が発生した.しかし,急激な摩擦係数の増大は見られず,

荷重 1177Nまで焼付きを生じなかった. 以上のように,PEEK は高速,高荷重下でリング温度が~

130℃を超えると,摩擦係数が変動し焼付きの様相を示すが,それ以下の温度では焼付きを生じない優れたトライボロジー

特性を有することがわかる.

Fig.5 Relationship between friction coefficient and load for SUJ2.

Fig.6 Relationship between friction coefficient and load for PEEK.

3.3 焼付き限界曲線 図 7 にすべり速度と焼付き荷重の関係(焼付き限界曲線)を示す.図に示した実線はこれ以上の荷重では焼付

きを生じる SUJ2の限界を示し,一点鎖線はこれ以上の荷重では摩擦係数が不安定になる PEEKの限界(リング温度~130℃)を示している.SUJ2は,すべり速度の増加と共に焼付き開始荷重が低下している.これは,高速

下では摩擦熱が大きく油膜が薄くなり,油膜破断を起こ

し易くなるためであると思われる.PEEK は,2.0 ~ 15.0m/s のいずれのすべり速度においても焼付きを生じなかったが,15.0m/s においてはリング温度約 160℃において激しい油煙が発生し,実験を中止した. このように,すべり速度 2.0~15.0m/s の低速域から高速域において,SUJ2 は低荷重下で容易に焼付きを生じる.これに対し,本実験条件範囲では PEEKの焼付き限界曲線を求めることができなかった.PEEKは金属に比較して,非焼付き領域(安全作動領域)が非常に広い優

れた材料であると言える.

Fig.7 Relationship between seizure load and sliding velocity.

3.4 リング温度とすべり速度の関係 図 8,9に各すべり速度における荷重とリング試験片温度の関係を示す.図 8より,SUJ2は,すべり速度 2.0,4.1,10.2,15.0m/sで,それぞれリング温度が約 45,40,35,30℃で,焼付きを生じ実験を終了した.このように金属の場合,低い温度で焼付きに遷移することがわかる.

また,焼付きへの遷移が急激に起こるので,リング温度

変化が追従できていないことがわかる.すなわち,金属

の場合,わずかな油膜破断により凝着が起こり直ちに焼

付きに遷移すると言える. 図 9に示すように,PEEKは,各々のすべり速度に対して約 60,80,120,180℃まで上昇した.120℃以下の場合には,安定して低い摩擦係数(0.02 ~ 0.04)を維持

0 100 200 300 400 500 6000

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

Load (N)

Fric

tion

coe

ffic

ient

: 2.0 (m/s)

: 4.1 (m/s)

: 10.2 (m/s)

: 15.0 (m/s)

Seizure SUJ2

0 200 400 600 800 1000 12000

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

0.08

Load (N)

Fric

tion

coe

ffic

ient

2.0 (m/s)

4.1 (m/s)

10.2 (m/s)

15.0 (m/s)

PEEK

2 4 6 8 10 12 14 16 18

200

400

600

800

1000

1200

1400

0

PEEK

SUJ2

Load

(N

)

Sliding velocity (m/s)

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4 赤垣友治・八木澤崇広

した.15.0m/s では,リング温度がガラス転移温度を超え~180℃まで達していた.このように,高温に達するとPEEKの摩擦係数は不安定になり,また油煙が発生し危険な状態になると言える.いずれにしても,PEEKの焼付きに対する耐久性は,金属をはるかに凌駕していると

言える.

Fig.8 Relationship between ring temperature and load for SUJ2.

Fig.9 Relationship between ring temperature and load for PEEK.

3.5 摩耗痕の SEM観察 図 10に,ボール及びリング摩耗痕のSEM写真を示す.

(a)~(d)はボール摩耗痕,(e)~(h)はリング摩耗面である.図中の矢印は,相手面の摩擦方向を示す.SUJ2 で焼付きを生じた場合,(a)に示すように摩擦出口領域に多数のリング材料の移着物のせり出し層が観察される.また,

内部では(b)に示すように,リング移着物の割れと表面剥離が特徴的に観察される.その剥離により,約 50μm以下のプレート状摩耗粒子が発生することがわかる.この

ように,金属の焼付きにおいては,激しい移着と破断が

起きることがわかる.リングからボールへの移着は,X線分析により確認している.PEEKの場合,(c)に示すよ

うに,摩耗痕は比較的滑らかであるが,(d)に示すように,表面層の流動により生成されたと思われる薄いフィルム

層が特徴的に観察された.このような流動層は摩耗面全

体で観察された.このフィルム状流動層の破断によって

10μ以下の微細な摩耗粒子が発生することがわかる. (d)より,実験前の円筒研削仕上げによるリング突起部が潰されて平らになっていることがわかる.

SUJ2 と摩擦し焼付きを生じたリング表面は,(e)に示すようにリング表面に形成されたリング自らの移着層の

割れと(f)に示すような激しい凝着破断の痕跡を示し摩擦に激しさを示す.PEEKと摩擦したリング表面(h)は,摩擦前の表面(g)と比べて,塑性流動により研削傷が平滑化していることがわかる.

(a) Overview of wear scar in SUJ2 ball

(b) Enlargement of inside area in (a)

0 100 200 300 400 500 60020

25

30

35

40

45

50

55

60

Load (N)

Ring

tem

pera

ture

(℃) 2.04 (m/s)

4.08 (m/s)10.2 (m/s)

15.0 (m/s) SUJ2

0 200 400 600 800 1000 12000

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

Load (N)

Ring

tem

pera

ture

(℃)

2.04 (m/s)

4.08 (m/s)

10.2 (m/s)

15.0 (m/s)PEEK

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5潤滑すべり条件下における金属及び PEEK樹脂の焼付き挙動

(c) Overview of wear scar of PEEK ball

(d) Enlargement of inside region in (c)

(e) Wear scar of SF540A ring rubbed against SUJ2

(f) Enlargement of inside region showing adhesive fracture in (e).

(g) Original surface of SF540A ring before friction

(h) Wear scar of ring rubbed against PEEK

Fig.10 SEM micrographs of wear scars of ball and ring. The arrow indicated the direction of relative motion of counterface. (a), (b): SUJ2 ball (10.2m/s, seizure); (c), (d) : PEEK ball (10.2m/s, non-seizure); (e), (f) : SF540A ring rubbed against SUJ2 (10.2m/s, seizure); (g), (h): SF540A ring rubbed against PEEK (10.2m/s, non- seizure)

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4. 結論

(1) SUJ2 の場合,荷重を増加させると,ある荷重で急激に摩擦係数が増大し焼付きを生じた.焼付き

開始荷重は,すべり速度の増加と共に減少した. (2) PEEK の場合,すべり速度 2.0~15.0m/s の範

囲では,いずれも急激な摩擦係数の増大がなく,焼

付きを生じることはなかった.しかし,リング温度

約 130℃を超えると摩擦係数が不安定になり,さらに約 160℃を超えると激しい油煙を発生した.

(3) SUJ2 摩耗表面では,リング材料の移着により

形成された摩耗痕出口部のせり出し層と約 50μm以下の移着層の剥離が特徴的に観察された.PEEK摩耗表面では,表面層の流動により生成されたと思わ

れる薄いフィルム層が特徴的に観察された. (4) SUJ2 と摩擦したリング摩耗表面では,摩耗

痕は粗く,深い条痕と表面層の割れ,剥離,凝着破

断の痕跡が観察された.PEEK と摩擦したリング摩耗表面では,塑性流動による研削加工傷の平滑化の

接触の痕跡が見られるだけであった. (5) PEEK は,金属に比較して優れた耐焼付き特

性を有し,トライボ材料として高いポテンシャルを

有する.

参 考 文 献

1) 赤垣友治,加藤康司,川畑雅彦:トライボロジスト,39-11,(1994),

pp.979-986. 2) 宇野修悦,安藤雅敏,南波聡,向井一馬:トライボロジスト,42-2,(1996),

pp.129-134. 3) 田中久一郎,山田良穂,上田誠一:日本潤滑学会予稿集,(1985),

281-284. 4) 赤垣友治,加藤康司,川畑雅彦:トライボロジー会議予稿集,(1999),

pp.117-118. 5) T.Akagaki,M.Kawabata,K.Kato:Proc. Int. Conf. HYDRO (2002),

pp.61-68.

(原稿受付:2014年 9月 30日)

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